IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社京三製作所の特許一覧

<>
  • 特許-校正装置 図1
  • 特許-校正装置 図2
  • 特許-校正装置 図3
  • 特許-校正装置 図4
  • 特許-校正装置 図5
  • 特許-校正装置 図6
  • 特許-校正装置 図7
  • 特許-校正装置 図8
  • 特許-校正装置 図9
  • 特許-校正装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】校正装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 3/00 20060101AFI20241108BHJP
   B61L 23/04 20060101ALI20241108BHJP
   B61L 19/06 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G01D3/00 C
B61L23/04
B61L19/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021095694
(22)【出願日】2021-06-08
(65)【公開番号】P2022187613
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】磯 吉孝
(72)【発明者】
【氏名】小林 和弘
(72)【発明者】
【氏名】太田 匡哉
(72)【発明者】
【氏名】寺島 光哉
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-20603(JP,A)
【文献】特開平8-178787(JP,A)
【文献】特開2000-65668(JP,A)
【文献】特開2002-162251(JP,A)
【文献】特開2005-114697(JP,A)
【文献】特開2000-28651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 3/00-3/10
G01D 18/00-21/02
G08C 13/00-25/04
B61L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ケーブル接続端子、通信ケーブル接続端子、及び補正値を記憶するメモリを有するCPUボードと、計測ケーブル接続端子を有する計測ボードと、を内蔵し、前記計測ケーブル接続端子から入力される被計測信号に係る所定の物理量を前記計測ボードが計測して、当該計測結果を前記メモリに記憶された補正値を参照して前記CPUボードが補正することで結果出力とする計測処理を行い、前記CPUボードが、前記計測処理の結果出力を含む外部との通信を前記通信ケーブル接続端子を介して行う計測装置、を校正する校正装置であって、
前記電源ケーブル接続端子に接続する校正用電源ケーブルと、
前記通信ケーブル接続端子に接続する校正用通信ケーブルと、
前記計測ケーブル接続端子に接続する校正用計測ケーブルと、
前記校正用電源ケーブルを介して規定の電源電力を出力する電源電力出力部と、
前記所定の物理量に係る基準信号を生成して前記校正用計測ケーブルを介して出力する基準信号生成出力部と、
前記校正用通信ケーブルを介して、前記CPUボードから前記計測処理の結果を入力するとともに、前記メモリに記憶された前記補正値を更新させる校正処理を実行する制御部と、
を備える校正装置。
【請求項2】
前記計測ボードは、前記CPUボードからのレンジ切替指示に従って計測レンジを変更し、
前記制御部は、前記CPUボードに前記レンジ切替指示を行わせる制御と、当該レンジ切替指示によって変更される計測レンジに応じた前記基準信号を前記基準信号生成出力部に生成させる制御とを、前記校正処理に含めて実行する、
請求項1に記載の校正装置。
【請求項3】
前記計測ボードには、計測する物理量が異なる複数種類があり、
前記校正用計測ケーブルには、前記計測ボードの種類に応じた複数種類があり、
前記複数種類の校正用計測ケーブルが共通接続可能な基準信号出力端子、を更に備える、
請求項1又は2に記載の校正装置。
【請求項4】
前記計測装置は、第1の計測ボードスロットと、第2の計測ボードスロットとを備え、
前記計測装置には、前記第1の計測ボードスロットに装着される前記計測ボードの種類と、前記第2の計測ボードスロットに装着される前記計測ボードの種類と、の組み合わせに応じて予め定められた複数種類があり、
前記基準信号出力端子には、前記第1の計測ボードスロットに装着されている前記計測ボードに接続するための前記校正用計測ケーブルが接続される第1の端子と、前記第2の計測ボードスロットに装着されている前記計測ボードに接続するための前記校正用計測ケーブルが接続される第2の端子とがあり、
前記制御部は、
校正対象の前記計測装置の種類を当該計測装置と通信を行って検知することと、
前記第1の端子及び前記第2の端子に接続されたそれぞれの前記校正用計測ケーブルの種類を検知することと、
1)前記検知された前記計測装置の種類に対応付けられている、前記第1の計測ボードスロット及び前記第2の計測ボードスロットに装着される前記計測ボードの種類の組み合わせと、2)前記検知された前記第1の端子及び前記第2の端子に接続されたそれぞれの前記校正用計測ケーブルの種類とが、適合しているか否かを判定することと、
を前記校正処理の前処理として実行する、
請求項3に記載の校正装置。
【請求項5】
前記計測装置は、第1の計測ボードスロットと、第2の計測ボードスロットとを備え、
前記計測装置には、前記第1の計測ボードスロットに装着される前記計測ボードの種類と、前記第2の計測ボードスロットに装着される前記計測ボードの種類と、の組み合わせに応じて予め定められた複数種類があり、
前記基準信号出力端子には、前記第1の計測ボードスロットに装着されている前記計測ボードに接続するための前記校正用計測ケーブルが接続される第1の端子と、前記第2の計測ボードスロットに装着されている前記計測ボードに接続するための前記校正用計測ケーブルが接続される第2の端子とがあり、
前記制御部は、
校正対象の前記計測装置の種類をユーザの操作入力に従って選択することと、
前記第1の端子及び前記第2の端子に接続されたそれぞれの前記校正用計測ケーブルの種類を検知することと、
1)前記選択された前記計測装置の種類に対応付けられている、前記第1の計測ボードスロット及び前記第2の計測ボードスロットに装着される前記計測ボードの種類の組み合わせと、2)前記検知された前記第1の端子及び前記第2の端子に接続されたそれぞれの前記校正用計測ケーブルの種類とが、適合しているか否かを判定することと、
を前記校正処理の前処理として実行する、
請求項3に記載の校正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置を校正する校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、転てつ機や軌道回路、踏切しゃ断機といった鉄道沿線設備の状態を監視し、異常やその兆候を速やかに検出するための様々な手法が開発されている。その1つとして、監視したい鉄道沿線設備に所定の計測項目の物理量を計測する計測装置(計測器)を設置し、計測値を遠隔で監視する監視システムがある。この種の監視システムは、計測値の信頼性を確保するため、定期的に計測装置を校正する必要がある。例えば、特許文献1には、校正期限が切れることのないように校正に関する管理を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-217885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、計測装置の校正を管理するものであるが、校正自体はメーカーにて実施することを想定している。そのため、校正にあたっては、校正対象の計測装置を予備品と交換してメーカーに送り、当該計測装置がメーカーから返送されたら、予備品と交換して再度設置する作業が必要となる。或いは、校正済みの交換用計測装置を所定数量用意しておき、校正対象の計測装置と交換する作業が必要となる。いずれにせよ、従来の技術では、計測装置を交換する作業が発生していた。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、計測装置を交換することなく、現地に設置された計測装置を現地で校正することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、電源ケーブル接続端子、通信ケーブル接続端子、及び補正値を記憶するメモリを有するCPUボードと、計測ケーブル接続端子を有する計測ボードと、を内蔵し、前記計測ケーブル接続端子から入力される被計測信号に係る所定の物理量を前記計測ボードが計測して、当該計測結果を前記メモリに記憶された補正値を参照して前記CPUボードが補正することで結果出力とする計測処理を行い、前記CPUボードが、前記計測処理の結果出力を含む外部との通信を前記通信ケーブル接続端子を介して行う計測装置、を校正する校正装置であって、前記電源ケーブル接続端子に接続する校正用電源ケーブルと、前記通信ケーブル接続端子に接続する校正用通信ケーブルと、前記計測ケーブル接続端子に接続する校正用計測ケーブルと、前記校正用電源ケーブルを介して規定の電源電力を出力する電源電力出力部と、前記所定の物理量に係る基準信号を生成して前記校正用計測ケーブルを介して出力する基準信号生成出力部と、前記校正用通信ケーブルを介して、前記CPUボードから前記計測処理の結果を入力するとともに、前記メモリに記憶された前記補正値を更新させる校正処理を実行する制御部と、を備える校正装置である。
【0007】
第1の発明によれば、校正対象の計測装置においてCPUボードが備える電源ケーブル接続端子に校正用電源ケーブルを接続し、通信ケーブル接続端子に校正用通信ケーブルを接続するとともに、計測ボードが備える計測ケーブル接続端子に校正用計測ケーブルを接続することで、当該計測装置に校正装置を接続することができる。そして、校正用電源ケーブルを介して計測装置に電源電力を供給し、校正用計測ケーブルを介して計測ボードに基準信号を出力することで、計測ボード及びCPUボードに計測処理を行わせることができる。また、当該基準信号に基づく物理量の計測値を、計測処理の結果として校正用通信ケーブルを介して入力するとともに、当該計測処理の結果に基づいて、CPUボードの補正値を校正用通信ケーブルを介して更新させることができる。これによれば、計測装置が設置された現地にて当該計測装置に校正装置を接続し、校正を行うことが可能となる。したがって、計測装置を交換することなく、現地に設置された計測装置を現地で校正することが可能となる。
【0008】
また、第2の発明は、前記計測ボードは、前記CPUボードからのレンジ切替指示に従って計測レンジを変更し、前記制御部は、前記CPUボードに前記レンジ切替指示を行わせる制御と、当該レンジ切替指示によって変更される計測レンジに応じた前記基準信号を前記基準信号生成出力部に生成させる制御とを、前記校正処理に含めて実行する、第1の発明の校正装置である。
【0009】
第2の発明によれば、計測レンジに応じた基準信号を発生させて計測ボード及びCPUボードに計測処理を行わせ、当該計測処理の結果に基づいて補正値を更新させて、計測装置の校正を行うことができる。
【0010】
また、第3の発明は、前記計測ボードには、計測する物理量が異なる複数種類があり、前記校正用計測ケーブルには、前記計測ボードの種類に応じた複数種類があり、前記複数種類の校正用計測ケーブルが共通接続可能な基準信号出力端子、を更に備える、第1又は第2の発明の校正装置である。
【0011】
第3の発明によれば、校正用計測ケーブルが共通接続可能な校正装置の基準信号出力端子に対し、ユーザ(校正を行う作業者)が、校正対象の計測装置が備える計測ボードの種類に応じた校正用計測ケーブルを差し替えて接続することで、当該計測装置を校正することができる。
【0012】
また、第4の発明は、前記計測装置は、第1の計測ボードスロットと、第2の計測ボードスロットとを備え、前記計測装置には、前記第1の計測ボードスロットに装着される前記計測ボードの種類と、前記第2の計測ボードスロットに装着される前記計測ボードの種類と、の組み合わせに応じて予め定められた複数種類があり、前記基準信号出力端子には、前記第1の計測ボードスロットに装着されている前記計測ボードに接続するための前記校正用計測ケーブルが接続される第1の端子と、前記第2の計測ボードスロットに装着されている前記計測ボードに接続するための前記校正用計測ケーブルが接続される第2の端子とがあり、前記制御部は、校正対象の前記計測装置の種類を当該計測装置と通信を行って検知することと、前記第1の端子及び前記第2の端子に接続されたそれぞれの前記校正用計測ケーブルの種類を検知することと、1)前記検知された前記計測装置の種類に対応付けられている、前記第1の計測ボードスロット及び前記第2の計測ボードスロットに装着される前記計測ボードの種類の組み合わせと、2)前記検知された前記第1の端子及び前記第2の端子に接続されたそれぞれの前記校正用計測ケーブルの種類とが、適合しているか否かを判定することと、を前記校正処理の前処理として実行する、第3の発明の校正装置である。
【0013】
第4の発明によれば、校正対象の計測装置の第1の計測ボードスロットに装着されている計測ボードの種類に応じて校正用計測ケーブルを差し替えて第1の端子に接続し、第2の計測ボードスロットに装着されている計測ボードの種類に応じて校正用計測ケーブルを差し替えて第2の端子に接続することで、当該計測装置に校正装置を接続することができる。そして、校正装置は、計測装置との通信を行って検知した校正対象の種類の計測装置において第1の計測ボードスロット及び第2の計測ボードスロットに装着される計測ボードの種類の組み合わせと、第1の端子及び第2の端子に接続されたそれぞれの校正用計測ケーブルの種類とが適合しているか否かの判定を、校正処理の前処理として実行することができる。
【0014】
また、第5の発明は、前記計測装置は、第1の計測ボードスロットと、第2の計測ボードスロットとを備え、前記計測装置には、前記第1の計測ボードスロットに装着される前記計測ボードの種類と、前記第2の計測ボードスロットに装着される前記計測ボードの種類と、の組み合わせに応じて予め定められた複数種類があり、前記基準信号出力端子には、前記第1の計測ボードスロットに装着されている前記計測ボードに接続するための前記校正用計測ケーブルが接続される第1の端子と、前記第2の計測ボードスロットに装着されている前記計測ボードに接続するための前記校正用計測ケーブルが接続される第2の端子とがあり、前記制御部は、校正対象の前記計測装置の種類をユーザの操作入力に従って選択することと、前記第1の端子及び前記第2の端子に接続されたそれぞれの前記校正用計測ケーブルの種類を検知することと、1)前記選択された前記計測装置の種類に対応付けられている、前記第1の計測ボードスロット及び前記第2の計測ボードスロットに装着される前記計測ボードの種類の組み合わせと、2)前記検知された前記第1の端子及び前記第2の端子に接続されたそれぞれの前記校正用計測ケーブルの種類とが、適合しているか否かを判定することと、を前記校正処理の前処理として実行する、第3の発明の校正装置である。
【0015】
第5の発明によれば、校正対象の計測装置の第1の計測ボードスロットに装着されている計測ボードの種類に応じて校正用計測ケーブルを差し替えて第1の端子に接続し、第2の計測ボードスロットに装着されている計測ボードの種類に応じて校正用計測ケーブルを差し替えて第2の端子に接続することで、当該計測装置に校正装置を接続することができる。そして、校正装置は、校正対象としてユーザが選択した種類の計測装置において第1の計測ボードスロット及び第2の計測ボードスロットに装着される計測ボードの種類の組み合わせと、第1の端子及び第2の端子に接続されたそれぞれの校正用計測ケーブルの種類とが適合しているか否かの判定を、校正処理の前処理として実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】計測装置を適用した監視システムの概略構成例を示す図。
図2】計測装置のタイプ毎に内蔵する計測ボードの組み合わせを示す図。
図3】計測装置の装置構成例を示す模式図。
図4】計測装置の筐体背面を示す図。
図5】校正装置の装置構成例を示す模式図。
図6】校正装置の機能構成例を示すブロック図。
図7】校正装置を用いた計測装置の校正手順を説明するフローチャート。
図8】変形例における校正用計測ケーブルの構成例を示す図。
図9】変形例における校正装置の機能ブロック図。
図10】変形例の校正装置を用いた計測装置の校正手順を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付す。
【0018】
本実施形態の校正装置は、鉄道沿線設備に設置された計測装置を校正するためのものである。計測装置は、当該鉄道沿線設備の状態監視のために設置され、その監視システムを構成する。
【0019】
図1は、鉄道沿線設備の一例である転てつ機7に係る監視システムの概略構成例を示す図である。例えば、図1に示す転てつ機7の監視システムは、中央装置9と、転てつ機7のそれぞれに設置された計測装置1と、がネットワークNを介して通信可能に接続されて構成されている。
【0020】
計測装置1は、転てつ機7の状態監視に必要な物理量を計測し、計測値を中央装置9へ送信する。状態監視に必要な物理量は、例えば、転てつ機7のモータを駆動させる駆動電流や駆動電圧が挙げられる。駆動電流を物理量として計測する場合には、計測値は電流値となる。駆動電圧を物理量として計測する場合には、計測値は電圧値となる。
【0021】
中央装置9は、転てつ機7毎にその計測装置1からの計測値を収集し、当該転てつ機7の検査等を行う。
【0022】
ここで、図1では転てつ機7の監視システムを例示したが、例えば、軌道回路、踏切しゃ断機、ホームドアといった他の鉄道沿線設備にも適宜計測装置が設置され、その監視システムが構成されている。そして、計測装置1は、それが設置された鉄道沿線設備の状態監視に必要な物理量を計測して、中央装置9に送信する。
【0023】
1.計測装置の構成について
本実施形態では、計測装置1は、所定の物理量を計測するための計測ボードを2つ内臓した構成とされ、内蔵する組み合わせの異なるものが複数(例えば3タイプ)用意される。そして、鉄道沿線設備には、当該鉄道沿線設備に適したタイプの計測装置1、つまり、その状態監視に必要な物理量の計測ボード130を内蔵した計測装置1が選択的に設置される。本実施形態では、計測装置1は、2つの計測ボード130を内蔵して構成される。一方の計測ボードを第1の計測ボード130aと称し、他方の計測ボードを第2の計測ボード130bと称して説明する。計測ボード130には複数の種類があるため、第1の計測ボード130aとなる計測ボード130にも複数の種類が採り得るし、第2の計測ボード130bとなる計測ボード130にも複数の種類が採り得る。
【0024】
図2は、計測装置1のタイプ毎(1型/2型/3型)に、第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130bの組み合わせを表形式で示す図である。本実施形態では、計測装置1は、図2に示すように、(1)第1の計測ボード130aとして直流電流計測を行う計測ボード(DCA)を内蔵し、第2の計測ボード130bとして直流交流電圧計測を行う計測ボード(ADV)を内蔵したタイプ(1型)と、(2)第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130bとして交流電流計測を行う2つの計測ボード(ACA)を内蔵したタイプ(2型)と、(3)第1の計測ボード130aとして交流電流計測を行う計測ボード(ACA)を内蔵し、第2の計測ボード130bとして直流交流電圧計測を行う高調波除去フィルタ付きの計測ボード(ADV)を内蔵したタイプ(3型)と、の3タイプが用意される。
【0025】
図3は、計測装置1の装置構成例を示す模式図である。また、図4は、計測装置1の筐体背面を示す図である。
【0026】
図3に示すように、計測装置1は、その筐体10内に、CPUボード110と、第1の計測ボード130aと、第2の計測ボード130bと、を内蔵する。より詳細には、計測装置1は、図4に示すように、筐体10の背面側に開口するCPUボードスロット11と、第1の計測ボードスロット13aと、第2の計測ボードスロット13bと、を備える。そして、CPUボード110がCPUボードスロット11に装着され、第1の計測ボード130aが第1の計測ボードスロット13aに装着され、第2の計測ボード130bが第2の計測ボードスロット13bに装着された構成となっている。
【0027】
CPUボード110は、電源回路と、通信回路と、計測装置1の制御を担う制御回路とを備える。また、CPUボード110は、接続端子として、電源ケーブル接続端子111及び通信ケーブル接続端子113を有する。電源ケーブル接続端子111には電源ケーブル31が接続され、電源ケーブル31を介して規定の電源電力が計測装置1に供給される。また、通信ケーブル接続端子113にはネットワークNに繋がる通信ケーブル33が接続され、通信ケーブル33を介して外部(例えば中央装置9)との間が通信可能に接続される。
【0028】
計測ボード130(130a,130b)は、対応する物理量を計測する計測回路を備える。また、計測ボード130は、接続端子として計測ケーブル接続端子131を有する。計測ケーブル接続端子131には計測ケーブル35が接続され、計測対象の物理量に係る信号(以下「被計測信号」という)が、計測用プローブ2を介して計測ボード130に入力される。
【0029】
計測ケーブル35には、計測対象の物理量に応じた複数種類がある。直流電流計測を行う計測ボード(DCA)用のケーブルと、直流交流電圧計測を行う計測ボード(ADV)用のケーブルと、交流電流計測を行う計測ボード(ACA)用のケーブルとである。直流交流電圧計測を行う高調波除去フィルタ付きの計測ボード(ADV)用のケーブルは、直流交流電圧計測を行う計測ボード(ADV)用のケーブルと同じである。
【0030】
何れの種類の計測ケーブル35も、端部に設けられているオス型コネクタは同じである。但し、オス型コネクタに対して、ケーブル芯線が挿入されているコネクタピンは、被計測信号に応じて異なっている。例えば、オス型コネクタを8ピンとした場合、直流電流計測に係る被計測信号のケーブル芯線が挿入されているピンの組み合わせと、交流電流計測に係る被計測信号のケーブル芯線が挿入されているピンの組み合わせとは異なる。
【0031】
一方、計測ボード130側の計測ケーブル接続端子131は、何れの種類の計測ボード130においても同じメス型コネクタである。但し、計測ボード130の種類に応じて、使用するコネクタピンが異なっている。例えば、メス型コネクタを8ピンとした場合、直流電流計測を行う計測ボード130において使用するピンの組み合わせと、交流電流計測を行う計測ボード130において使用するピンの組み合わせとは異なる。
【0032】
したがって、計測ボード130には、何れの種類の計測ケーブル35も接続すること自体は可能であるが、使用するためには、適切な計測ケーブル35を接続する必要がある。計測ボード130には、当該計測ボード130の種類に応じた計測ケーブル35を接続して使用する必要がある。対応しない種類の計測ケーブル35が接続された場合には、計測ボード130側で被計測信号が検知できないことになる。
【0033】
2.計測処理について
計測装置1は、計測ケーブル接続端子131を介して対応する計測用プローブ2から入力される被計測信号に係る所定の物理量を計測ボード130が計測し、当該計測結果をCPUボード110が補正することで結果出力とする計測処理を行う。また、計測ボード130は、CPUボード110からのレンジ切替指示に応じて、物理量の計測レンジを切り替えて変更する。そのために、CPUボード110は、計測ボード130に計測レンジを変更するためのレンジ切替指示を行う。
【0034】
本実施形態では、第1の計測ボード130aが、計測ケーブル接続端子131からの被計測信号に基づく物理量を計測する。そして、CPUボード110が、当該計測結果を第1の計測ボード130aに係る補正値に基づいて補正することで、第1の計測ボード130aに係る計測値を取得する。これが計測処理である。第1の計測ボード130aに係る補正値は、第1の補正値121aとしてCPUボード110のメモリ120(図6を参照)に記憶されている。計測処理において、CPUボード110がメモリ120から第1の補正値121aを読み出して利用する。第1の計測ボード130aとCPUボード110とは、協同して随時計測処理を実行する。また、第1の計測ボード130aは、CPUボード110からのレンジ切替指示に応じて、計測する物理量の計測レンジを切り替える。
【0035】
同様に、第2の計測ボード130bが、計測ケーブル接続端子131からの被計測信号に基づく物理量を計測する。そして、CPUボード110が、当該計測結果を第2の計測ボード130bに係る補正値に基づいて補正することで、第2の計測ボード130bに係る計測値を取得する。第2の計測ボード130bに係る補正値は、第2の補正値121bとしてCPUボード110のメモリ120(図6を参照)に記憶されている。計測処理において、CPUボード110がメモリ120から第2の補正値121bを読み出して利用する。第2の計測ボード130bとCPUボード110とは、協同して随時計測処理を実行する。また、第2の計測ボード130bは、CPUボード110からのレンジ切替指示に応じて、計測する物理量の計測レンジを切り替える。
【0036】
そして、CPUボード110は、外部の中央装置9との通信を通信ケーブル接続端子113を介して行い、第1の計測ボード130aに係る計測値及び第2の計測ボード130bに係る計測値を随時中央装置9へ送信する。
【0037】
3.校正装置の構成について
図5は、校正装置5の装置構成例を示す模式図であり、校正対象の計測装置1を併せて示している。図5に示すように、校正装置5は、電源ケーブル接続端子111に接続する校正用電源ケーブル61と、通信ケーブル接続端子113に接続する校正用通信ケーブル63と、計測ケーブル接続端子131に接続する校正用計測ケーブル65と、商用電源に接続する商用電源ケーブル67と、を備える。
【0038】
より詳細には、校正装置5は、校正用電源ケーブル61用の端子51と、校正用通信ケーブル63用の端子53と、商用電源ケーブル67用の端子57と、を備えており、対応するケーブル61,63,67がそれぞれ接続されている。また、校正装置5は、校正用計測ケーブル65が共通接続可能な基準信号出力端子として、第1の計測ボード130a用の第1の端子55aと、第2の計測ボード130b用の第2の端子55bと、を備えており、校正用計測ケーブル65がそれぞれ接続されている。
【0039】
校正用計測ケーブル65には、計測ボード130に応じた複数種類がある。直流電流計測を行う計測ボード(DCA)用のケーブルと、直流交流電圧計測を行う計測ボード(ADV)用のケーブルと、交流電流計測を行う計測ボード(ACA)用のケーブルとである。直流交流電圧計測を行う高調波除去フィルタ付きの計測ボード(ADV)用のケーブルは、直流交流電圧計測を行う計測ボード(ADV)用のケーブルと同じである。
【0040】
何れの種類の校正用計測ケーブル65も、両端部に設けられているオス型コネクタは、例えば、計測ケーブル35のオス型コネクタと同じものとすることができる。但し、計測ケーブル35と同様、種類に応じて、ケーブル芯線が挿入されているコネクタピンが異なっている。例えば、オス型コネクタを8ピンとした場合、直流電流計測に係る被計測信号のケーブル芯線が挿入されているピンの組み合わせと、交流電流計測に係る被計測信号のケーブル芯線が挿入されているピンの組み合わせとは異なる。
【0041】
一方、校正装置5側の第1の端子55a及び第2の端子55bは、何れの種類の校正用計測ケーブル65も接続可能な同じメス型コネクタである。校正装置5は、校正処理において、校正対象の計測装置1の種類(より詳細には、第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130bの組み合わせ)に応じて、使用するコネクタピンを内部的に自動変更する。
【0042】
したがって、校正装置5側の第1の端子55a及び第2の端子55bには、何れの種類の校正用計測ケーブル65も接続すること自体は可能であるが、校正処理で使用するためには、適切な校正用計測ケーブル65を接続する必要がある。不適切な種類の校正用計測ケーブル65が接続された場合には、校正装置5は計測値の信号を検知できないことになる。
【0043】
計測装置1の校正を行う際には、電源ケーブル接続端子111から電源ケーブル31を外し、通信ケーブル接続端子113から通信ケーブル33を外し、第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130bの各計測ケーブル接続端子131から計測ケーブル35を外す(図3参照)。その上で、電源ケーブル接続端子111に校正用電源ケーブル61を接続し、通信ケーブル接続端子113に校正用通信ケーブル63を接続し、各計測ケーブル接続端子131に当該計測ボード130の種類に応じた校正用計測ケーブル65を接続する(図5参照)。また、商用電源ケーブル67を商用電源に接続する。
【0044】
例えば、図2に示した1型の計測装置1を校正する場合であれば、図5に示すように、第1の計測ボード130aの計測ケーブル接続端子131と第1の端子55aとをDCA用の校正用計測ケーブル65で接続し、第2の計測ボード130bの計測ケーブル接続端子131と第2の端子55bとをADV用の校正用計測ケーブル65で接続する。
【0045】
これにより、校正時には商用電源ケーブル67を介して商用電源から規定の電源電力が校正装置5に供給され、校正用電源ケーブル61を介して内蔵の電源電力出力部510(図6を参照)から規定の電源電力が計測装置1に供給される。また、校正装置5が校正用通信ケーブル63を介して計測装置1と通信可能に接続される。そして、第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130bには、後述する基準信号生成出力部520(図6を参照)から、校正用計測ケーブル65を介して、その種類に対応した物理量に係る基準信号が出力される。計測装置1から校正装置5へは、計測装置1が基準信号を計測処理した計測値が校正用通信ケーブル63を介して入力される。
【0046】
図6は、校正装置5の機能構成例を示すブロック図であり、校正対象の計測装置1を併せて示している。図6に示すように、計測装置1を構成するCPUボード110において、搭載するメモリ120には、第1の計測ボード130aでの物理量の計測に用いる第1の補正値121aと、第2の計測ボード130bでの物理量の計測に用いる第2の補正値121bと、が記憶されている。これら補正値121a,121bを適正な値に修正・更新することが校正処理の目的である。
【0047】
そして、図6に示すように、校正装置5は、電源電力出力部510と、基準信号生成出力部520と、インターフェース部530と、を備える。また、校正装置5は、操作部540と、表示部550と、通信部560と、制御部570と、記憶部580と、を備える。校正装置5は、一種の制御装置、或いはコンピュータ装置ということもできる。
【0048】
電源電力出力部510は、校正時の計測装置1に電源電力を供給するためのものであり、バッテリー等を用いて構成される。
【0049】
基準信号生成出力部520は、校正対象の計測装置1において、第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130bが計測する物理量に係る基準信号を生成する。本実施形態では、校正対象となり得る3タイプの計測装置1は、物理量として直流及び交流の電圧・電流を計測するものであるため(図2を参照)、基準信号生成出力部520は、直流及び交流の任意の電圧・電流を発生させる信号源で構成される。
【0050】
具体的には、基準信号生成出力部520は、制御部570の制御のもと、第1の計測ボード130aが計測する物理量について、所定の計測レンジに応じた基準信号を生成する。そして、生成した基準信号をインターフェース部530へ出力することで、第1の端子55aに接続された校正用計測ケーブル65を介して当該基準信号を第1の計測ボード130aへ出力する。同様に、制御部570の制御のもと、第2の計測ボード130bが計測する物理量について、所定の計測レンジに応じた基準信号を生成する。そして、生成した基準信号をインターフェース部530へ出力することで、第2の端子55bに接続された校正用計測ケーブル65を介して当該基準信号を第2の計測ボード130bへ出力する。
【0051】
インターフェース部530は、基準信号生成出力部520からの第1の計測ボード130a向けの基準信号を、第1の端子55aから第1の計測ボード130aへ出力する。また、インターフェース部530は、基準信号生成出力部520からの第2の計測ボード130b向けの基準信号を、第2の端子55bから第2の計測ボード130bへ出力する。このインターフェース部530は、第1の端子55a及び第2の端子55bにそれぞれ接続された校正用計測ケーブル65の種類、つまり、当該校正用計測ケーブル65が図5に示した4本のうちのどの種類の計測ボード用のものなのかを示す検知信号を随時制御部570へ出力する。接続されたオス型コネクタのピンの位置や数から、当該校正用計測ケーブル65の種類を判別することで実現できる。
【0052】
操作部540は、ユーザが各種操作を入力するためのものであり、例えばキーボードやマウス、タッチパネル等で実現できる。
【0053】
表示部550は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置によって実現され、制御部570からの表示信号に基づく各種表示を行う。
【0054】
通信部560は、ネットワークに接続して外部(例えば、校正対象の計測装置1)との通信を行う。図5の校正用通信ケーブル63や端子53がこれに含まれる。
【0055】
制御部570は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の電子部品によって実現され、装置各部との間でデータの入出力制御を行う。そして、所定のプログラムやデータ、操作部540からの操作入力信号等に基づいて各種の演算処理を行い、校正装置5の動作を制御する。
【0056】
本実施形態では、制御部570は、記憶部580から校正プログラム581を読み出して実行し、計測装置1の校正に係る処理を行う。具体的には、制御部570は、校正処理として、A)計測ボード130a,130bに対するレンジ切替指示をCPUボード110に行わせる制御、B)当該レンジ切替指示に係る計測レンジに応じた基準信号を基準信号生成出力部520に生成させて該当する計測ボード130a,130bへ出力させる制御、C)計測ボード130a,130bが当該基準信号に基づいて計測した物理量の計測値に基づいて、メモリ120に記憶された第1の補正値121a及び第2の補正値121bを更新させる制御等を行う。また、制御部570は、当該校正処理の前処理として、D)第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130bに対応した校正用計測ケーブル65が第1の端子55a及び第2の端子55bに接続されているかどうかを判別するための適合判定を行う。
【0057】
記憶部580は、ICメモリやハードディスク、光学ディスク等の記憶媒体により実現される。この記憶部580には、校正装置5を動作させ、校正装置5が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、当該プログラムの実行中に使用されるデータ等が予め記憶され、或いは処理の都度一時的に記憶される。例えば、記憶部580には、校正プログラム581が格納されている。
【0058】
4.校正処理について
図7は、校正装置5を用いた計測装置1の校正手順を説明するフローチャートである。校正にあたっては、制御部570は、記憶部580から校正プログラム581を読み出して実行する。すなわち、制御部570は先ず、ユーザの操作入力を受け付けて、校正する計測装置1のタイプを選択する(ステップS1)。本実施形態では、例えば、計測装置1の3つのタイプ(1型/2型/3型)を選択肢として提示した選択画面を表示部550に表示する制御を行い、何れか1つの選択操作を受け付けることで実現できる。
【0059】
続いて、制御部570は、ステップS1で選択されたタイプに従って校正対象の計測装置1と校正装置5との間のケーブル接続図を表示部550に表示する制御を行い、接続を促す(ステップS3)。ユーザは、表示されたケーブル接続図を見ながら電源ケーブル接続端子111から電源ケーブル31を外して校正用電源ケーブル61に差し替え、通信ケーブル接続端子113から通信ケーブル33を外して校正用通信ケーブル63に差し替え、各計測ケーブル接続端子131から計測ケーブル35を外して第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130bの種類に応じた校正用計測ケーブル65に差し替えることで、校正対象の計測装置1に校正装置5を接続する(ステップS5)。
【0060】
その後は、制御部570は、ユーザの校正開始操作を待機する。例えば、校正開始ボタンを表示部550に表示する制御を行い、その押下操作を校正開始操作として受け付けることで実現できる。
【0061】
校正開始操作を受け付けたならば(ステップS9:YES)、制御部570は、校正処理の前処理を実行する(ステップS10~ステップS11)。ここで、ステップS5でのユーザの接続作業の過程で第1の端子55a及び第2の端子55bに校正用計測ケーブル65が接続されると、インターフェース部530は、当該校正用計測ケーブル65の種類を端子55a,55b毎に判別して、判別した各種類を示す検知信号を制御部570へ出力する。ステップS10では、制御部570は、当該検知信号に基づいて、第1の端子55a及び第2の端子55bにそれぞれ接続された校正用計測ケーブル65の種類を検知する。続くステップS11では、制御部570は、ステップS10での検知結果をもとに、第1の端子55a及び第2の端子55bにそれぞれ接続された校正用計測ケーブル65の種類と、ステップS1で選択されたタイプの計測装置1が内蔵する計測ボードの種類の組み合わせと、が適合しているか否かの適合判定を行う。
【0062】
そして、適合判定の結果が適合していないとの判定である場合は(ステップS13:NO)、校正を中止して(ステップS15)、本処理を終える。中止に際しては、制御部570は、校正対象の計測装置1のタイプと校正用計測ケーブル65の種類とが合っていない旨のメッセージを表示部550に表示する制御を行い、確認を促す。
【0063】
一方、ステップS11での適合判定の結果が適合しているとの判定である場合は(ステップS13:YES)、制御部570は、第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130b毎に、校正処理を実行する(ステップS17)。
【0064】
第1の計測ボード130aの場合を例に挙げてステップS17の校正処理を説明する。制御部570は先ず、校正対象の計測装置1と通信を行い、校正用通信ケーブル63を介して第1の計測ボード130aに対するレンジ切替指示をCPUボード110に行わせる制御を行う。また、制御部570は、第1の計測ボード130aが計測する物理量に係る基準信号であって、前段の処理でCPUボード110に行わせたレンジ切替指示に係る計測レンジに応じた基準信号を基準信号生成出力部520に生成させる。そして、制御部570は、生成させた基準信号を、第1の端子55aから校正用計測ケーブル65を介して第1の計測ボード130aへと出力させる。これを受けて、第1の計測ボード130a及びCPUボード110が計測処理を行い、基準信号に基づく物理量の計測値を取得する。そして、CPUボード110は、校正装置5との通信を行い、当該計測値を校正用通信ケーブル63を介して制御部570へ出力する。その後は、以上の処理を第1の計測ボード130aが計測する物理量の計測レンジ毎に繰り返すことで、当該計測レンジ毎の計測値を得る。また、CPUボード110は、メモリ120から第1の補正値121aを読み出し、校正前の補正値として制御部570へ出力する。
【0065】
続いて、制御部570は、CPUボード110からの計測レンジ毎の計測値をもとに校正後の補正値を決定する。そして、制御部570は、決定した補正値を校正前の補正値とともに表示部550に表示する制御を行ってユーザに提示し、ユーザの確定操作を受け付ける。
【0066】
確定操作がなされたならば、制御部570は、校正対象の計測装置1と通信を行い、校正用通信ケーブル63を介して決定した補正値をCPUボード110へ出力する。これを受けて、CPUボード110は、メモリ120の第1の補正値121aを制御部570からの補正値で書き換えて更新する。そして、第2の計測ボード130bについても同様の要領で校正処理を行い、メモリ120の第2の補正値121bを書き換えて更新する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、校正対象の計測装置1が設置された現地にて当該計測装置1の校正作業を完結させることができる。これによれば、計測装置を交換することなく、現地に設置された計測装置を現地で校正することが可能となる。
【0068】
なお、本発明を適用可能な形態は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0069】
図8は、本変形例における校正用計測ケーブルの構成例を示す図である。また、図9は、本変形例における校正装置5Aの機能ブロック図である。各図や以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同一の符号を付する。
【0070】
図8に示すように、本変形例の校正用計測ケーブル65Aは、一端部に校正装置側コネクタ651を備え、他端部に計測装置側コネクタ653を備える。校正装置側コネクタ651は、校正装置5Aが備える第1の計測ボード130a用の第1の端子55aや第2の計測ボード130b用の第2の端子55bと接続するためのものであり、計測装置側コネクタ653は、計測装置1において第1の計測ボード130aや第2の計測ボード130bが有する計測ケーブル接続端子131と接続するためのものである。図8では、校正用計測ケーブル65AをADV用のものとし、計測装置側コネクタ653を1型の計測装置1が内蔵する第2の計測ボード130bの計測ケーブル接続端子131に接続し、校正装置側コネクタ651を校正装置5Aの第2の端子55bに接続する状態を示している。
【0071】
校正装置側コネクタ651は、例えば、25本のピンを有し、1番~16番の各ピンが校正用計測ケーブル65Aを構成する16本のケーブル芯線とそれぞれ接続されている。また、残りピンのうちの17番~20番の各ピンが、校正用計測ケーブル65Aの種類(当該校正用計測ケーブル65Aがどのタイプの計測装置1に対応しているのか)を検知するために用いられる。例えば、図8のADV用の校正用計測ケーブル65Aでは、17番のピンが19番のピンと折り返し配線によって接続された構成となっている。同様の要領で、例えば、DCA用の校正用計測ケーブル65Aでは、その校正装置側コネクタ651において17番のピンが18番のピンと折り返し配線によって接続され、ACA用の校正用計測ケーブル65Aでは、その校正装置側コネクタ651において17番のピンが20番のピンと折り返し配線によって接続された構成となっている。したがって、校正装置5Aは、17番のピンに検知用の確認信号を出力した場合に18番のピンから確認信号が入力されたのであればDCA用、19番のピンから確認信号が入力されたのであればADV用、20番のピンから確認信号が入力されたのであればACA用であるとして、第1の端子55a及び第2の端子55bに接続された校正用計測ケーブル65Aの種類を検知することができる。
【0072】
一方、計測装置側コネクタ653は、8本のピンを有する。そして、校正用計測ケーブル65Aの16本のケーブル芯線が2本ずつ1組にされて1番~8番の各ピンに接続されており、校正装置5Aから各組の2本のケーブル芯線のうちの一方である出力用のケーブル芯線を介して計測装置1(第1の計測ボード130a又は第2の計測ボード130b)へ出力された基準信号が、他方の入力用のケーブル芯線を介して校正装置5Aに折り返し入力(フィードバック入力)される構成となっている。例えば、図8では、ADV用の校正用計測ケーブル65Aと、校正対象である1型の計測装置1が内蔵する第2の計測ボード130bとの接続例を示しているので、校正処理に際し基準信号生成出力部520(図9を参照)によって生成された基準信号(基準電圧)が、当該ADV用の校正用計測ケーブル65Aの出力用のケーブル芯線を介して、当該1型の計測装置1の第2の計測ボード130bへ出力される。そして、当該基準信号が、対応する入力用のケーブル芯線を介して校正装置5Aに折り返し入力(フィードバック入力)される。
【0073】
ここで、校正装置5Aにおいて基準信号生成出力部520が基準電圧を生成し、校正用計測ケーブル65Aを経由して計測装置1に入力する構成では、ケーブルを伝播する間に信号の電圧降下が発生してしまい、実際に第2の計測ボード130bに印加される電圧が基準電圧と一致しない事態が生じ得る。そこで、本変形例では、校正装置5Aにおいて制御部570Aが、基準信号の調整処理を行う。すなわち、ADV用の校正用計測ケーブル65Aであれば、先ず、基準信号生成出力部520が生成・出力した基準信号と、校正装置5Aへと折り返し入力された基準信号と、から電圧降下を求める。そして、求めた電圧降下に基づいて、第2の計測ボード130bに印加される電圧が基準電圧となるように、基準信号生成出力部520が生成・出力する基準信号を調整する制御を行う。
【0074】
なお、校正用計測ケーブル65Aにおいて出力用及び入力用のケーブル芯線を組にし、計測装置側コネクタ653によって基準信号を折り返して校正装置5Aに入力する構成は、必須の構成ではない。例えば、電圧降下を無視できる場合は、ADV用の校正用計測ケーブル65Aを出力用のケーブル芯線のみで構成するとしてもよい。
【0075】
図10は、本変形例の校正装置5Aを用いた計測装置1の校正手順を説明するフローチャートである。図10において、上記実施形態と同様の処理手順には同一の符号を付する。図10に示すように、本変形例では、制御部570Aは、ユーザの操作入力を受け付けて行うタイプの選択(図7のステップS1)の処理はせずに、ステップS3の処理を行う。
【0076】
また、制御部570Aは、ユーザの校正開始操作を受け付けた場合(ステップS9:YES)に行う校正処理の前処理として、先ず、校正対象の計測装置1と通信を行い、当該計測装置1の種類を検知する(ステップS21)。例えば、CPUボード110に対し、校正用通信ケーブル63を介して内蔵する第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130bの種類の問い合わせを出力する。これに応答し、CPUボード110は、第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130bのそれぞれの種類を校正用通信ケーブル63を介して制御部570Aへ出力する。そして、制御部570Aは、第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130bの種類の組み合わせから、校正対象の計測装置1のタイプを検知する。
【0077】
続いて、制御部570Aは、第1の端子55a及び第2の端子55bに接続されたそれぞれの校正用計測ケーブル65Aの種類を検知する(ステップS23)。具体的には、制御部570Aは、先ず、インターフェース部530Aを介して第1の端子55aから図8を参照して説明した校正装置側コネクタ651の17番のピンに確認信号を出力する。そして、インターフェース部530Aを介して第1の端子55aから入力された確認信号が、18番~20番のどのピンから入力されたのかによって第1の端子55aに接続された校正用計測ケーブル65Aの種類を検知する。また、同様の要領で、制御部570Aは、インターフェース部530Aを介して第2の端子55bから校正装置側コネクタ651の17番のピンに確認信号を出力する。そして、インターフェース部530Aを介して第2の端子55bから入力された確認信号が、18番~20番のどのピンから入力されたのかによって第2の端子55bに接続された校正用計測ケーブル65Aの種類を検知する。
【0078】
そして、制御部570Aは、ステップS21で検知したタイプの計測装置1に係る第1の計測ボード130a及び第2の計測ボード130bの種類の組み合わせと、ステップS23で検知した第1の端子55aに接続された校正用計測ケーブル65A及び第2の端子55bに接続された校正用計測ケーブル65Aの種類の組み合わせと、が適合しているか否かの適合判定を行う(ステップS25)。
【0079】
その後は、ステップS13に移行し、上記した実施形態と同様の要領で、適合していなければ(ステップS13:NO)校正を中止し(ステップS15)、適合している場合は(ステップS13:YES)校正処理を実行する(ステップS17)。またここでの校正処理に際し、制御部570Aは、上記した基準信号の調整処理を行う。
【符号の説明】
【0080】
1 計測装置、13a 第1の計測ボードスロット、13b 第2の計測ボードスロット、110 CPUボード、111 電源ケーブル接続端子、113 通信ケーブル接続端子、120 メモリ、121a 第1の補正値,121b 第2の補正値、31 電源ケーブル、33 通信ケーブル、130a 第1の計測ボード、130b 第2の計測ボード、131 計測ケーブル接続端子、2 計測用プローブ、35 計測ケーブル、5,5A 校正装置、55a 第1の端子、55b 第2の端子、61 校正用電源ケーブル、63 校正用通信ケーブル、65,65A 校正用計測ケーブル、651 校正装置側コネクタ、653 計測装置側コネクタ、510 電源電力出力部、520 基準信号生成出力部、530,530A インターフェース部、540 操作部、550 表示部、560 通信部、570,570A 制御部、580 記憶部、581 校正プログラム、7 転てつ機、9 中央装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10