IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イワフジ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-樹木処理装置 図1
  • 特許-樹木処理装置 図2
  • 特許-樹木処理装置 図3
  • 特許-樹木処理装置 図4
  • 特許-樹木処理装置 図5
  • 特許-樹木処理装置 図6
  • 特許-樹木処理装置 図7
  • 特許-樹木処理装置 図8
  • 特許-樹木処理装置 図9
  • 特許-樹木処理装置 図10
  • 特許-樹木処理装置 図11
  • 特許-樹木処理装置 図12
  • 特許-樹木処理装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】樹木処理装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 23/083 20060101AFI20241108BHJP
   A01G 23/08 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A01G23/083
A01G23/08 501A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021108674
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006199
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2024-02-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)株式会社国際農業社、農村ニュース新聞、令和2年10月19日付週刊第8面 (2)一般社団法人林業機械化協会、機械化林業、令和3年4月15日付4月号裏表紙 (3)イワフジ工業株式会社、ハーベスタGPH-45Aカタログ
(73)【特許権者】
【識別番号】508150337
【氏名又は名称】イワフジ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】千田 薫
(72)【発明者】
【氏名】小原 英樹
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-29516(JP,A)
【文献】特表2006-500939(JP,A)
【文献】米国特許第6202719(US,B1)
【文献】実開平2-58135(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 23/083
A01G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持した樹木を材長方向に送出する送材部を備えた樹木処理装置であって、
前記送材部は、
フレームと、
前記フレームに支持される駆動スプロケットおよび従動スプロケットと、
前記駆動スプロケットを駆動させる駆動源と、
前記駆動スプロケットおよび前記従動スプロケットに掛け回される無端状のクローラチェーンと、を有し、
前記クローラチェーンは、
複数のクローラリンクと、
隣接するクローラリンクを連結するシャフトと、
前記シャフトの外側に嵌められるとともに、前記駆動スプロケットおよび前記従動スプロケットに係合するローラーと、
前記シャフトと前記ローラーとの間に配置されるベアリングと、を有し、
前記ベアリングは合成樹脂で形成されている、
樹木処理装置。
【請求項2】
前記フレームには、
前記ローラーが転動しながら接触するように、前記クローラチェーンの走行方向に沿ってスライドレールが配置されている、
請求項1に記載の樹木処理装置。
【請求項3】
前記クローラリンクには、
前記シャフトが挿通されるシャフト保持部が設けられており、
前記フレームには、
前記シャフト保持部に摺接するように、前記クローラチェーンの走行方向に沿ってスライダーが配置されている、
請求項1または請求項2に記載の樹木処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造材作業を行う樹木処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハーベスタあるいはプロセッサ等と呼ばれる樹木処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。樹木処理装置は、油圧ショベル等のベースマシンに設けられた作業アームに取り付けられて造材作業に用いられる。樹木処理装置のうちプロセッサを用いた造材作業では、伐採された樹木の枝払い作業と、枝払いされた樹木(材)を任意の長さに切断して丸太を形成する切断作業が連続して行われる。ハーベスタを用いた造材作業では、立木の伐倒作業を行うこともできる。
【0003】
樹木処理装置は、主に把持部、送材部、測長部、枝払い部、および切断部を有している。把持部は、造材作業の対象となる樹木に複数の送材部を押し付けて樹木を把持する。送材部は、樹木に押し付けられた状態でクローラチェーンを駆動走行させることにより、樹木を材長方向に送出する。
【0004】
測長部は、樹木(材)を送出させた長さ、つまり材の長さを計測(測長)する。測長部によって材の長さを計測し、予め設定した長さまで材を送出したところで送材部は材の送出を停止する。
【0005】
枝払い部は、送材部によって勢いよく送出される樹木の枝にカッタを当接させて枝払いを行う。切断部は設定された長さまで送出された樹木(材)を切断することにより、所望の長さの丸太を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-157075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、送材部は、クローラチェーンを樹木に押し付けた状態で、クローラチェーンを駆動走行させるため、クローラチェーンの可動部や、クローラチェーンが摺接する部分に大きな負荷が掛かり、強い摩擦力が生じていた。
【0008】
この摩擦力は、送材部を駆動させる動力を損失させるとともに、送材部から発生する騒音の原因となっていた。また、摩擦力を低減させるために供給されるチェーンオイルの消費量が増大することとなっていた。
【0009】
本発明の目的は、クローラチェーンの可動部の摩擦力を低減させることにより、送材部を駆動させる動力の損失を抑制するとともに、騒音およびチェーンオイルの消費量を抑制することができる樹木処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の樹木処理装置は、
把持した樹木を材長方向に送出する複数の送材部を備えた樹木処理装置であって、
前記送材部は、
フレームと、
前記フレームに支持される駆動スプロケットおよび従動スプロケットと、
前記駆動スプロケットを駆動させる駆動源と、
前記駆動スプロケットおよび前記従動スプロケットに掛け回される無端状のクローラチェーンと、を有し、
前記クローラチェーンは、
複数のクローラリンクと、
隣接するクローラリンクを連結するシャフトと、
前記シャフトの外側に嵌められるとともに、前記駆動スプロケットおよび前記従動スプロケットに係合するローラーと、
前記シャフトと前記ローラーとの間に配置されるベアリングと、を有し、
前記ベアリングは合成樹脂で形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹木処理装置によれば、送材部を駆動させる動力の損失を抑制できるとともに、騒音およびチェーンオイルの消費量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に係る樹木処理装置が取り付けられたベースマシンの側面図である。
図2図2は、樹木処理装置の側面図である。
図3図3は、樹木処理装置の上面図である。
図4図4は、樹木処理装置によって伐倒造材作業を行う状態を示す図である。
図5図5は、樹木処理装置によって造材作業を行う状態を示す図である。
図6図6は、樹木処理システムによって造材作業を行う状態を示す平面図である。
図7図7は、樹木処理装置の油圧回路の概略構成を示す図である。
図8図8は、送材部の正面図である。
図9図9は、図8のA―A線における断面図である。
図10図10は、図8のB―B線における断面図である。
図11図11は、クローラチェーンの一部を示す図である。
図12図12は、図11のC―C線における断面図である。
図13図13は、図11のD―D線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態にかかる樹木処理装置は、
把持した樹木を材長方向に送出する複数の送材部を備えた樹木処理装置であって、
前記送材部は、
フレームと、
前記フレームに支持される駆動スプロケットおよび従動スプロケットと、
前記駆動スプロケットを駆動させる駆動源と、
前記駆動スプロケットおよび前記従動スプロケットに掛け回される無端状のクローラチェーンと、を有し、
前記クローラチェーンは、
複数のクローラリンクと、
隣接するクローラリンクを連結するシャフトと、
前記シャフトの外側に嵌められるとともに、前記駆動スプロケットおよび前記従動スプロケットに係合するローラーと、
前記シャフトと前記ローラーとの間に配置されるベアリングと、を有し、
前記ベアリングは合成樹脂で形成されている(第1の構成)。
【0014】
上記構成によれば、クローラリンクを連結するシャフトと、シャフトの外側に嵌められるローラーとの間に、合成樹脂製のベアリングが配置されている。
これにより、クローラチェーンを樹木に押し付けながら駆動走行させる際に生じる、クローラチェーンの可動部の摩擦力を低減させることができ、送材部を駆動させる動力の損失を抑制できるとともに、騒音およびチェーンオイルの消費量を抑制することができる。
【0015】
上記第1の構成において、前記フレームには、
前記ローラーが転動しながら接触するように、前記クローラチェーンの走行方向に沿ってスライドレールが配置されていてもよい(第2の構成)。
【0016】
上記構成によれば、送材部は、ローラーが転動しながら接触するスライドレールを有している。
このため、クローラチェーンのローラーが回転および接触する部分に生じる摩擦力を低減させることができ、送材部を駆動させる動力の損失を抑制できるとともに、騒音およびチェーンオイルの消費量を抑制することができる。
【0017】
上記第1または第2の構成において、前記クローラリンクには、
前記シャフトが挿通されるシャフト保持部が設けられており、
前記フレームには、
前記シャフト保持部に摺接するように、前記クローラチェーンの走行方向に沿ってスライダーが配置されていてもよい(第3の構成)。
【0018】
上記構成によれば、送材部は、シャフト保持部に摺接するスライダーを有している。
このため、クローラチェーンを樹木に押し付けた際に生じる負荷をローラーだけでなくシャフト保持部にも分散させることができ、ローラーに加わる圧力を低減させることができるとともに、ローラーの摩耗を低減させることができる。
【0019】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係る樹木処理装置100を詳しく説明する。
【0020】
図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。図中、矢印Fは前方を示し、矢印Bは後方を示す。矢印Lは左方を示し、矢印Rは右方を示す。矢印Uは上方を示し、矢印Dは下方を示す。
【0021】
本明細書では、立木または立木を伐倒した枝付きの木(全木材)を樹木Wとし、枝払いが行われた全幹材を材Wとし、材を玉切りしたものを丸太WLとするが、これらを区別せずに樹木W、または材Wとして説明する場合がある。
【0022】
[全体構成]
図1は、実施形態1に係る樹木処理装置100が取り付けられたベースマシン200の側面図である。図1に示すように、樹木処理装置100がベースマシン200に取り付けられることで樹木処理システム300が構成される。
【0023】
ベースマシン200は、油圧ショベルであり、下部走行体110、上部旋回体120、作業アーム130、および運転室150を備えている。なお、ベースマシンは油圧ショベルに限らない。例えばホイール式のベースマシンが用いられてもよい。
【0024】
下部走行体110は、無限軌道装置112を有している。無限軌道装置112は、駆動輪で履帯を循環させて走行するための装置である。
【0025】
上部旋回体120は、下部走行体110に対して旋回自在に支持されている。上部旋回体120は、油圧アクチュエータを備えた旋回装置114により下部走行体110に対して旋回駆動される。
【0026】
作業アーム130は、上部旋回体120から延びて屈曲動作および伸長動作を行う多関節アームである。先端には、樹木処理装置100が取り付けられている。作業アーム130は、油圧制御で動作し、樹木処理装置100の方向や位置を変更させる。作業アーム130は、ブーム131、アーム133、および樹木処理装置100の先端アーム135を有している。
【0027】
ブーム131は、上部旋回体120の前側において起伏可能に支持されている。ブーム131は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ141によって起伏可能である。
【0028】
アーム133は、ブーム131の先端において上下方向に揺動可能となるように連結されている。アーム133は、油圧アクチュエータであるアームシリンダ143によって揺動可能である。
【0029】
樹木処理装置100の先端アーム135は、アーム133の先端において上下方向に揺動可能となるように連結されている。先端アーム135は、アーム133の先端の第1支持ピン136と、リンク部材138の一端に設けた第2支持ピン137とに連結されている。リンク部材138の他端はアーム133の先端に連結されている。リンク部材138には、バケットシリンダ145の先端が連結されている。
【0030】
ブーム131、アーム133、および先端アーム135は、ブームシリンダ141、アームシリンダ143、およびバケットシリンダ145によって起伏が可能である。また、ブーム131、アーム133、および先端アーム135の旋回は、旋回装置114により上部旋回体120を旋回させることによって行われる。
【0031】
運転室150は、上部旋回体120に設けられている。オペレータは、運転室150に搭乗して、運転室150内の操作機器を操作することで、下部走行体110の走行操作、上部旋回体120の旋回操作、作業アーム130の駆動操作、および樹木処理装置100の操作などを行う。
【0032】
樹木処理装置100は、ハーベスタであり、立木である樹木Wを把持して伐倒するとともに、樹木Wを材長方向に送り出しながら造材作業を行う装置である。樹木処理装置100は、樹木Wの枝を切断する枝払い機能や、樹木Wを所定長さで切断する切断機能も備えている。樹木処理装置100の駆動を制御する制御部60は、ベースマシン200の運転室150に配置されている。
【0033】
図2は、樹木処理装置100の側面図である。図3は、樹木処理装置100の上面図である。図2および図3に示すように、樹木処理装置100は、樹木処理装置本体11、把持部20、チルト部25、送材部30、測長部38(図8参照)、枝払い部40、切断部45、および制御部60を有している。
【0034】
樹木処理装置本体11は、樹木処理装置100の基体をなす部分である。樹木処理装置本体11は、チルト部25のチルトアーム27、およびローテータ13を介して、先端アーム135に取り付けられている。
【0035】
把持部20は、複数の送材部30を開閉させて、樹木Wを把持または開放する部分である。把持部20は、開閉機構21を有している。開閉機構21は、開閉用油圧シリンダ23(図7参照)によって作動し、複数の送材部30を開閉させて、樹木Wを把持または開放する。
【0036】
チルト部25は、立木Wの伐倒および樹木Wの把持を行うために樹木処理装置100の姿勢を切り換える部分である。チルト部25は、チルトアーム27を有している。チルトアーム27には、樹木処理装置本体11が起倒可能に取り付けられている。チルト部25は、チルト用油圧シリンダ28(図5図7参照)によって作動し、チルトアーム27に対して樹木処理装置本体11を起倒させる。樹木処理装置本体11は、チルト部25によって、上下方向に向けた第1姿勢P1(図4a参照)と、水平方向に向けた第2姿勢P2とに姿勢を切り換えることができる(図2および図4b参照)。
【0037】
送材部30は、把持した樹木Wを材長方向に送出する部分である。本実施形態では、送材部30は2基設けられている。2基の送材部30は、図3に示すように、相互に対向するように把持部20の開閉機構21に設けられている。送材部30は、それぞれフレーム31、送材用駆動モータ34、およびクローラチェーン35を有している。
【0038】
フレーム31は、開閉機構21に取り付けられている。クローラチェーン35は、フレーム31に支持された駆動スプロケット32および従動スプロケット33(図9参照)に掛け回されている。送材用駆動モータ34は、駆動スプロケット32を回転駆動させることによりクローラチェーン35を走行させる。2基の送材部30を樹木Wに押し付けるようにして樹木Wを把持し、2基のクローラチェーン35を同方向に駆動走行させることにより、把持した樹木Wを材長方向に送出することができる。
【0039】
2基の送材部30の間隔は変化させることが可能である。樹木Wを送出する際、樹木Wの位置によって樹木Wの径が変化するため、樹木Wの径の大きさに対応して送材部30の間隔が油圧力によって変化する。また、樹木Wの径が大きくなって送材部30を押し広げる力が作用した場合には、送材部30が開閉機構21の油圧力に抗して外側に開くことが可能になっている。
【0040】
測長部38は、送材部30に取り付けられており(図8参照)、樹木Wの送出量を計測する。測長部38は、エンコーダ39を有している。測長部38は、エンコーダ39によって駆動スプロケット32(送材用駆動モータ34)の回転を検知することにより、クローラチェーン35の走行量を検知する。
【0041】
枝払い部40は、送材部30によって送出される樹木Wの枝払いを行う部分である。枝払い部40は、開閉体41およびカッタ43を有している。開閉体41は、開閉可能であり、閉じた状態では把持部20によって把持された樹木Wの外周面を取り囲むように配置される。開閉体41は、開閉体用油圧シリンダ42(図7参照)によって作動する。カッタ43は、開閉体41の一方の側部に取り付けられている。カッタ43は、送材部30によって送出される樹木Wの表面に摺接して樹木Wの枝を切断する。なお、開閉体41の動作は、制御部60から入力される制御信号に応じて開閉動作を行ってもよいが、把持部20に連動して動作するようにしてもよい。
【0042】
切断部45は、送材部30によって所定長さ送出された材Wを切断して玉切りする部分である。切断部45は、送材部30に対して、枝払い部40とは反対側の端部に設けられている。切断部45は、カットソウ46を有している(図5参照)。切断部45は、制御部60から入力される制御信号に応じてカットソウ46が駆動されて切断動作が実行される。
【0043】
図4は、樹木処理装置100によって伐倒造材作業を行う状態を示す図である。図4aは、樹木処理装置100によって立木Wを伐倒する状態を示している。図4bは、樹木処理装置100によって樹木Wを方向D1に向けて送材しながら枝払いを行う状態を示している。
【0044】
図4aに示すように、樹木処理装置100によって立木Wを伐倒する場合、チルト部25を作動させて、樹木処理装置本体11の姿勢を上下方向に向けた第1姿勢P1の状態にする。第1姿勢P1では、枝払い部40が上方となり、切断部45が下方となる。この第1姿勢P1のまま、把持部20を作動させて2基の送材部30で立木Wの根元付近を把持し、その状態で切断部45のカットソウ46を作動させて立木Wの根元を切断する。
【0045】
続いて図4bに示すように、切断した樹木Wを2基の送材部30で把持した状態のまま、チルト部25を作動させて、樹木処理装置本体11の姿勢を水平方向に向けた第2姿勢P2に切り換える。これにより、樹木処理装置100によって立木Wを伐倒することができる。
【0046】
樹木処理装置100によって立木Wを伐倒した後、続いて2基の送材部30のクローラチェーン35を同一方向に駆動走行させ、樹木Wを方向D1に向けて送材する。このとき、枝払い部40のカッタ43を送材部30によって送り出される樹木Wの表面に摺接させて樹木Wの枝を切断する。
【0047】
本実施形態では、2基の送材部30に設けられた測長部38(エンコーダ39)(図8参照)により、送出された樹木Wの移動量をそれぞれ検知し、エンコーダ39からの検知信号に基づいて、樹木Wの切り口WPから切断部45までの長さを計測(測長)する。そして、予め設定した長さまで材Wを送出したところで送材部30を停止させ、切断部45で材Wを切断することにより、所望の長さの丸太WLを形成する。
【0048】
図5は、樹木処理装置100によって造材作業を行う状態を示す図である。図5では、切断部45で材Wを切断する状態を示している。切断部45は、カットソウ46、カットソウ用駆動モータ47(図7参照)、およびカットソウ用油圧シリンダ48(図7参照)を有している。
【0049】
カットソウ46は、チェーンソウであり、ソウバー461およびソウチェーン463を有している。ソウバー461は、ソウチェーン463を案内する板状部材である。ソウバー461は、支持軸465によって揺動可能に支持されている。ソウチェーン463は、ソウバー461およびスプロケット(図示せず)に掛け回されている。スプロケットには、カットソウ用駆動モータ47(図7参照)が連結されている。カットソウ用駆動モータ47は、油圧モータである。作動油によってカットソウ用駆動モータ47が回転することにより、ソウチェーン463が回転駆動されて切断動作が実行される。
【0050】
カットソウ用油圧シリンダ48(図7参照)は、カットソウ46を材Wの径方向に進退するように揺動させるアクチュエータである。作動油によってカットソウ用油圧シリンダ48が伸縮することにより、カットソウ46が材Wの径方向に進退するように揺動されて切断動作が実行される。
【0051】
図5では、切断部45で玉切りされた丸太WLが、クローラチェーン35で把持された材Wから離脱している状態を示している。クローラチェーン35で把持された材Wには、新たな切り口WPが形成されている。次の丸太WLを形成する場合には、送材部30で材Wを送出させながら、測長部38(エンコーダ39)により新たな切り口WPから切断部45(カットソウ46)までの長さを計測(測長)する。予め設定した長さまで材Wを送出したところで送材部30を停止させ、切断部45で材Wを切断することにより、所望の長さの丸太WLを形成する。
【0052】
図6は、樹木処理システム300によって造材作業を行う状態を示す平面図である。図6aに示すように、送材部30で材Wを送出させながら、切り口WPから切断部45までの長さを計測する。材Wには、先に切断部45で切断された切り口WPが形成されている。材Wの長さが予め設定した長さLPに到達したところで、送材部30を停止させる。
【0053】
図6aに示した状態において、切断部45で材Wを切断することにより、図6bに示すように、所望の長さの丸太WLを形成することができる。新たに形成された切り口WPの位置は、切断部45のカットソウ46の位置に一致している。続いて同じ樹木Wから丸太WLを形成する場合には、新たに形成された切り口WPを基準にして、同様に材長LPの計測と玉切りを行うことにより、連続的に丸太WLを形成することができる。
【0054】
図7は、樹木処理装置100の油圧回路50の概略構成を示す図である。図7に示すように、油圧回路50では、作動油タンク51および油圧ポンプ部52から供給される作動油によって、ローテータ13、把持部20、チルト部25、送材部30、枝払い部40、および切断部45の駆動が行われるように構成されている。本実施形態では、図示しない操作レバー等を操作することや、制御部60からの制御信号によって、ローテータ13、把持部20、チルト部25、送材部30、枝払い部40、および切断部45の駆動制御を行うことが可能になっている。
【0055】
ローテータ13は、ローテータ用駆動モータ14を有している。作動油によってローテータ用駆動モータ14が正転、逆転、および停止することにより、樹木処理装置100の方向を制御することができる。
【0056】
把持部20は、開閉機構21を作動させる開閉用油圧シリンダ23を有している。作動油によって開閉用油圧シリンダ23が伸縮することにより、2基の送材部30を開閉させて、樹木Wを把持または開放する。
【0057】
チルト部25は、チルト用油圧シリンダ28を有している。作動油によってチルト用油圧シリンダ28が伸縮することにより、チルトアーム27に対して樹木処理装置本体11を起倒させ、樹木処理装置本体11の姿勢を第1姿勢P1(図4a参照)と第2姿勢P2とに切り換えることができる(図2および図4b参照)。
【0058】
送材部30は、2基の送材用駆動モータ34を有している。作動油によって送材用駆動モータ34を同期して回転させることにより、クローラチェーン35を駆動させて樹木Wを送出する。また、材Wを所定長さ送出させた位置において材Wを切断部45で玉切りできるように、送材用駆動モータ34を駆動、減速、および停止させる駆動制御が行われる。
【0059】
枝払い部40は、開閉体41を開閉させる開閉体用油圧シリンダ42を有している。作動油によって開閉体用油圧シリンダ42が伸縮することにより、開閉体41を開閉させて、把持部20によって把持された樹木Wを抱持する。
【0060】
切断部45は、カットソウ用駆動モータ47およびカットソウ用油圧シリンダ48を有している。作動油によってカットソウ用駆動モータ47が回転することにより、カットソウ46が駆動されて切断動作が実行される。また、作動油によってカットソウ用油圧シリンダ48が伸縮することにより、カットソウ46が材Wの径方向に進退するように揺動されて切断動作が実行される。
【0061】
[送材部]
続いて、送材部30の構成について詳細に説明する。図8は、送材部30の正面図である。図9は、図8のA―A線における断面図である。図10は、図8のB―B線における断面図である。また、図11は、クローラチェーン35の一部を示す図である。図12は、図11のC―C線における断面図である。図13は、図11のD―D線における断面図である。図8から図13では、クローラチェーン35を走行させて樹木Wを走行させる一方向をD1とし(図4b参照)、方向D1に直交し、かつクローラチェーン35に平行な一方向をD2とし、方向D1および方向D2に直交する1方向をD3として説明する。
【0062】
図8に示すように、送材部30は、フレーム31、駆動スプロケット32(図9参照)、従動スプロケット33(図9参照)、送材用駆動モータ34、およびクローラチェーン35を有している。送材部30の側面のうち、クローラチェーン35が樹木Wに押し付けられる側面を樹木接触面30A(図9および図10参照)とすると、図8は樹木接触面30Aとは反対側の面が見えている。
【0063】
フレーム31は、送材部30の基体をなす部分であり、開閉機構21に取り付けられている。フレーム31には、駆動スプロケット32および従動スプロケット33が支持されている(図9参照)。クローラチェーン35は、駆動スプロケット32および従動スプロケット33に掛け回されている。
【0064】
送材用駆動モータ34は、フレーム31に取り付けられており、駆動軸がフレーム31を貫通して駆動スプロケット32(図9参照)に連結されている。送材用駆動モータ34は、作動油によって駆動される油圧モータであり、制御部60から入力される制御信号に応じて正転、逆転、および停止する。送材用駆動モータ34が駆動スプロケット32を回転駆動させることによりクローラチェーン35が駆動走行される。
【0065】
図8及び図9に示すように、クローラチェーン35は、複数のクローラリンク36が無端状に連結されて構成されている。本実施形態のクローラチェーン35は、走行方向D1と直交する方向D2において、3列のクローラリンク36が配置されている。3列のクローラリンク36は千鳥状に配置されており、シャフト364によって相互に連結されている(図10参照)。
【0066】
各クローラリンク36の外面には、複数のスパイク37が列設されている。スパイク37は、2基の送材部30で樹木Wを把持して送出する際の駆動力の伝動部であり、かつ滑り止めである。2基の送材部30のそれぞれの樹木接触面30Aによって樹木Wを挟むように把持し、2基のクローラチェーン35をそれぞれ樹木Wに強く押し付けた状態で同方向に駆動走行させることにより、把持した樹木Wを材長方向に送出することができる。
【0067】
ここで、複数のスパイク37の配置について説明する。図11に示すように、本実施形態に係る各クローラリンク36には、それぞれ4本のスパイク37が配置されている。各スパイク37は、走行方向D1において間隔(d1)をあけて配置されている。また各スパイク37は、方向D2において間隔(d2)をあけて配置されている。このように、各スパイク37が、走行方向D1および方向D2において重ならないように配置されていることにより、送材部30で樹木Wを把持して送出する際に駆動力を伝動しやすく、かつ滑りにくくすることができる。また、仮に一時的にスパイク37が樹木Wに対して滑った場合でも、各スパイク37が方向D2において分散して配置されているため、各スパイク37が樹木Wの表面の広い範囲に接触しやすくなり、滑りを止めやすく、駆動力を樹木Wに伝達させやすくすることができる。なお、各スパイク37の走行方向D1における間隔(d1)はそれぞれ同じ寸法でなくてもよく、各スパイク37の方向D2における間隔(d2)もそれぞれ同じ寸法でなくてもよい。
【0068】
次に、クローラチェーン35の各部の構成について詳細に説明する。図11から図13に示すように、クローラチェーン35は、複数のクローラリンク36、複数のクローラリンク36を連結するシャフト364の他、ブッシュ365、ベアリング366、ローラー367、外リンク368を有している。
【0069】
クローラリンク36は、クローラリンク本体361およびシャフト保持部362を有している。クローラリンク36は、金属で一体に形成されている。クローラリンク本体361は、板状の部分であり、樹木接触面30A側となる一方の面に複数のスパイク37が設けられている。
【0070】
シャフト保持部362は、クローラリンク本体361の面のうち、スパイク37が設けられている面とは反対側の面に設けられている。シャフト保持部362は、クローラリンク36を連結するシャフト364が挿通される部分である。図12に示すように、シャフト保持部362は、走行方向D1において、クローラリンク本体361の先端側と後端側にそれぞれ設けられている。また、図13に示すように、シャフト保持部362は、方向D2において間隔を空けて配置されている。シャフト保持部362には、シャフト364およびブッシュ365が挿通される貫通孔363が設けられている。
【0071】
シャフト364は、複数のクローラリンク36を連結する部材である。シャフト364は金属で形成されている。シャフト364の外側には、ブッシュ365、ベアリング366、およびローラー367が嵌められている。シャフト364は、千鳥状に配置された3列のクローラリンク36のシャフト保持部362に挿通されることにより、方向D2において3列に配置されるクローラリンク36を相互に連結するとともに、走行方向D1に配置される複数のクローラリンク36を無端状に連結する。シャフトの364の両端には、外リンク368が取り付けられて、シャフト364の位置が固定される。
【0072】
ブッシュ365は、金属製の管状の部材である。ブッシュ365は、シャフト364の外側に嵌められて、クローラリンク36のシャフト保持部362に挿通される。ブッシュ365の素材として、例えばS45Cを用いることができる。
【0073】
ベアリング366は、ブッシュ365とローラー367の間に嵌められている。ベアリング366は、合成樹脂で形成されており、ブッシュ365とローラー367の間の摩擦力を軽減するために設けられている。ベアリング366の素材は特に限定されないが、摩擦係数が小さく、かつ、大きい負荷が掛かった状態で摩耗しにくい材質であることが好ましい。ベアリング366に適した素材として、例えばMCナイロンを挙げることができる。
【0074】
ローラー367は、ベアリング366の外側に嵌められている。ローラー367は、駆動スプロケット32および従動スプロケット33に係合して、クローラチェーン35に駆動力を伝達する部材である。ローラー367の素材として、例えばS45Cを用いることができる。
【0075】
シャフト364に嵌められるブッシュ365とローラー367との間に、合成樹脂製のベアリング366が配置されていることにより、クローラチェーン35を樹木Wに押し付けながら駆動走行させる際に生じる、クローラチェーン35の可動部の摩擦力を低減させることができる。これにより、送材部30を駆動させる動力の損失を抑制することができる。また、送材中の騒音を抑制できるとともに、クローラチェーン35に供給するチェーンオイルの消費量を抑制することができる。
【0076】
また、フレーム31には、クローラチェーン35の走行方向D1に沿ってスライドレール345が配置されている(図10図13参照)。スライドレール345は、クローラチェーン35のローラー367が転動しながら接触するように配置されている。スライドレール345に適した素材として、例えばS45Cを挙げることができる。
【0077】
スライドレール345を設けることにより、クローラチェーン35のローラー367が転動しながら接触する部分に生じる摩擦力を低減させることができ、送材部30を駆動させる動力の損失を抑制できるとともに、騒音およびチェーンオイルの消費量を抑制することができる。
【0078】
さらにフレーム31には、クローラチェーン35の走行方向D1に沿ってスライダー346が配置されている(図10および図13参照)。スライダー346は、クローラリンク36のシャフト保持部362に摺接するように配置されている。スライダー346に適した素材として、例えばMCナイロンを挙げることができる。
【0079】
スライダー346を設けることにより、クローラチェーン35を樹木Wに押し付けた際に生じる負荷をローラー367だけでなくシャフト保持部362にも分散させることができ、ローラー367に加わる圧力を低減させることができるとともに、ローラー367の摩耗を低減させることができる。
【0080】
[変形例]
本発明に係る樹木処理装置は、上記説明した実施形態に限定されない。本実施形態では、エンコーダは2基設けられるとしたが、1基ないし3基以上設けられていてもよい。
【0081】
また、クローラチェーンを構成するクローラリンクの形状は、上記説明した実施形態に限定されない。
【0082】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、造材作業を行う樹木処理装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
100 樹木処理装置
200 ベースマシン
300 樹木処理システム
30 送材部
31 フレーム
32 駆動スプロケット
33 従動スプロケット
34 送材用駆動モータ(駆動源)
35 クローラチェーン
36 クローラリンク
364 シャフト
366 ベアリング
367 ローラー
W 樹木、材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13