IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特許7584364位置特定方法、位置特定システム及びプログラム
<>
  • 特許-位置特定方法、位置特定システム及びプログラム 図1
  • 特許-位置特定方法、位置特定システム及びプログラム 図2
  • 特許-位置特定方法、位置特定システム及びプログラム 図3
  • 特許-位置特定方法、位置特定システム及びプログラム 図4
  • 特許-位置特定方法、位置特定システム及びプログラム 図5
  • 特許-位置特定方法、位置特定システム及びプログラム 図6
  • 特許-位置特定方法、位置特定システム及びプログラム 図7
  • 特許-位置特定方法、位置特定システム及びプログラム 図8
  • 特許-位置特定方法、位置特定システム及びプログラム 図9
  • 特許-位置特定方法、位置特定システム及びプログラム 図10
  • 特許-位置特定方法、位置特定システム及びプログラム 図11
  • 特許-位置特定方法、位置特定システム及びプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】位置特定方法、位置特定システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
G01S7/497
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021110742
(22)【出願日】2021-07-02
(65)【公開番号】P2023007719
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小島 弘義
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-135224(JP,A)
【文献】特開平08-161508(JP,A)
【文献】特開2017-026551(JP,A)
【文献】特開平09-079844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検知測距装置の光源から対象物へ光を照射したときの反射光の輝度パターンに基づいて、輝度が異なる点群の境界を抽出するステップと、
前記境界に線分または曲線を割り当てるステップと、
前記線分または前記曲線に基づいて目標位置を特定するステップと、
を有し、
前記目標位置を特定するステップでは、
割り当てた前記線分または前記曲線の交点を抽出し、複数の前記交点を頂点とするエリア内の所定の位置を前記目標位置として特定する、
位置特定方法。
【請求項2】
前記目標位置は、前記エリアの幾何学的特徴に基づく位置又は前記エリアの重心又は中心である、
請求項に記載の位置特定方法。
【請求項3】
特定した前記目標位置と、前記目標位置が本来検出されるべき位置とのずれ量を算出するステップ、
をさらに有する請求項1から請求項の何れか1項に記載の位置特定方法。
【請求項4】
前記対象物には、周囲とは異なる反射率を有する既知の形状の領域が設けられ、前記対象物は前記光源との位置関係が既知の位置に設置される、
請求項1から請求項の何れか1項に記載の位置特定方法。
【請求項5】
光検知測距装置の光源から対象物へ光を照射したときの反射光の輝度パターンに基づいて、輝度が異なる点群の境界を抽出する手段と、
前記境界に線分または曲線を割り当てる手段と、
前記線分または前記曲線に基づいて目標位置を特定する手段と、
を備え、
前記目標位置を特定する手段は、
割り当てた前記線分または前記曲線の交点を抽出し、複数の前記交点を頂点とするエリア内の所定の位置を前記目標位置として特定する、
位置特定システム。
【請求項6】
周囲とは異なる反射率を有する領域が設けられた対象物と、
前記対象物へ光を照射して前記対象物までの距離を計測する光検知測距装置と、
をさらに備える請求項5に記載の位置特定システム。
【請求項7】
コンピュータに、
光検知測距装置の光源から対象物へ光を照射したときの反射光の輝度パターンに基づいて、輝度が異なる点群の境界を抽出するステップと、
前記境界に線分または曲線を割り当てるステップと、
前記線分または前記曲線に基づいて目標位置を特定するステップと、
を有し、
前記目標位置を特定するステップでは、
割り当てた前記線分または前記曲線の交点を抽出し、複数の前記交点を頂点とするエリア内の所定の位置を前記目標位置として特定する処理、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置特定方法、位置特定システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物との位置関係を高精度に検出し、位置関係の検出結果を利用して移動体やロボットの制御を行う技術が提供されている。対象物との位置関係を検出する技術として、LiDAR(Light Detection and Ranging)が知られている。LiDARとは、レーザ光を対象物へ走査しながら照射し、反射光の輝度に基づいて、対象物までの距離や方向などを計測する技術である。反射光は離散的な点群で構成され、各点までの計測値に基づいて、点群が示す2次元又は3次元の形状を得ることができる。LiDARで取得する計測値には、反射光を検出するセンサ等の製作誤差や計測装置の設置誤差の影響により誤差が含まれる。このような誤差を補正するために校正が行われる。例えば、特許文献1には、光ビームを出射する光源と、光の受光位置に応じた信号を出力する受光器とを備え、対象物で反射された光ビームを受光した受光器の出力信号に基づいて、該対象物までの距離を計測する距離計測センサを校正する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-79844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定の目標位置を設定し、LiDARによって計測されるセンサから目標位置までの距離および方向の計測値を、センサから目標位置までの正確な距離および方向と比較して両者の誤差を算出することができれば、算出した誤差の分だけLiDARによる計測値を補正等することにより、LiDARによる計測精度を向上することができる。このような方法で校正を行う場合、LiDARによる計測で得られる反射光の離散的な点群から目標位置を精度よく特定する必要がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決することができる位置特定方法、位置特定システム及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の位置特定方法は、光検知測距装置の光源から対象物へ光を照射したときの反射光の輝度パターンに基づいて、輝度が異なる点群の境界を抽出するステップと、前記境界に線分または曲線を割り当てるステップと、前記線分または前記曲線に基づいて目標位置を特定するステップと、を有し、前記目標位置を特定するステップでは、割り当てた前記線分または前記曲線の交点を抽出し、複数の前記交点を頂点とするエリア内の所定の位置を前記目標位置として特定する。
【0007】
本開示の位置特定システムは、光検知測距装置の光源から対象物へ光を照射したときの反射光の輝度パターンに基づいて、輝度が異なる点群の境界を抽出する手段と、前記境界に線分または曲線を割り当てる手段と、前記線分または前記曲線に基づいて目標位置を特定する手段と、を有し、前記目標位置を特定する手段は、割り当てた前記線分または前記曲線の交点を抽出し、複数の前記交点を頂点とするエリア内の所定の位置を前記目標位置として特定する。
【0008】
本開示のプログラムは、コンピュータに、光検知測距装置の光源から対象物へ光を照射したときの反射光の輝度パターンに基づいて、輝度が異なる点群の境界を抽出するステップと、前記境界に線分または曲線を割り当てるステップと、前記線分または前記曲線に基づいて目標位置を特定するステップと、を有し、前記目標位置を特定するステップでは、割り当てた前記線分または前記曲線の交点を抽出し、複数の前記交点を頂点とするエリア内の所定の位置を前記目標位置として特定する処理、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
上述の位置特定方法、位置特定システム及びプログラムによれば、LiDARによって計測した点群データに基づいて、所定の目標位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る校正支援システムの一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。
図3】実施形態に係る校正手順を説明する第1の図である。
図4】実施形態に係る校正手順を説明する第2の図である。
図5】実施形態に係る校正手順を説明する第3の図である。
図6】実施形態に係る校正手順を説明する第4の図である。
図7】実施形態に係るターゲットの他の例を示す第1の図である。
図8】実施形態に係るターゲットの他の例を示す第2の図である。
図9】実施形態に係るターゲットの他の例を示す第3の図である。
図10】実施形態に係るターゲットの他の例を示す第4の図である。
図11】実施形態に係る校正支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図12】実施形態に係る校正支援装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る校正支援システムについて、図1図12を参照して説明する。
以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。「XXまたはYY」とは、XXとYYのうちいずれか一方の場合に限定されず、XXとYYの両方の場合も含み得る。これは選択的要素が3つ以上の場合も同様である。「XX」および「YY」は、任意の要素(例えば任意の情報)である。
【0012】
<実施形態>
(構成)
図1は、実施形態に係る校正支援システムの一例を示すブロック図である。
校正支援システム1は、校正支援装置10と、光検知測距装置20と、ターゲット30と、を含む。光検知測距装置20は、所定範囲を走査可能なレーザの光源と、反射光を検出するセンサなどを有する。光検知測距装置20は、ターゲット30へレーザ光を照射し、ターゲット30までの距離や方向を測定するライダー(LiDAR:Light Detection And Ranging)計測装置である。ターゲット30は、光検知測距装置20が光を照射する目標となる、例えば、校正用の板である。ターゲット30の表面には、周囲とは異なる反射率を有する所定の形状をしたパターン領域31が設けられている。パターン領域31の形状は、直線、円、多角形などの図形やそれらを組み合わせた幾何学模様であり、線分や曲線が割り当て容易なものであれば、任意の形状とすることができる。光検知測距装置20は、ターゲット30までの距離および方向を計測し、計測データを生成する。計測データは、離散的な点それぞれについての位置情報と反射光の輝度情報とを含んでいる。位置情報とは、例えば、光検知測距装置20(例えば、反射光を検出するセンサ)を原点とする3次元座標系における各点の座標情報である。校正支援装置10と光検知測距装置20とは、通信可能に接続されている。光検知測距装置20は、生成した計測データを校正支援装置10へ出力する。校正支援装置10は、コンピュータで構成されており、光検知測距装置20から計測データを取得すると、LiDARによって得られる距離や方向の校正に必要な補正量(後述する「ずれ量」)を算出する。
【0013】
校正支援装置10は、データ取得部11と、設定受付部12と、制御部13と、位置特定部131と、ずれ量算出部132と、出力部14と、記憶部15と、を備える。
データ取得部11は、光検知測距装置20から計測データを取得する。
設定受付部12は、ユーザから入力された各種の設定情報を受け付ける。例えば、設定受付部12は、パターン領域31における目標位置Pの既知の正確な位置情報(光検知測距装置20からの位置および方向)の設定を受け付ける。目標位置Pとは、例えば、パターン領域31の重心、中心など、パターン領域31の形状に基づいて幾何学的に特定しやすい位置であることが好ましい。目標位置Pは校正の基準点として用いられる。
【0014】
制御部13は、光検知測距装置20の計測データを校正するための補正量を算出する処理を実行する。この処理は、目標位置Pを特定する処理と、目標位置Pの真の位置情報とLiDAR計測によって得られた位置情報とのずれ量を算出する処理と、で構成されている。制御部13は、位置特定部131と、ずれ量算出部132と、を備える。
位置特定部131は、光検知測距装置20による計測データに基づいて、パターン領域31における目標位置Pを特定し、特定した目標位置Pの位置情報を算出する。
ずれ量算出部132は、設定受付部12が受け付けた目標位置Pの正確な位置情報と位置特定部131が算出した目標位置Pの位置情報との差を算出する。この差は、目標位置Pの真の位置とLiDARによる計測結果とのずれ量であるから、ある任意の点に対するLiDARによる計測結果に対して、このずれ量の分だけを補正すれば、この点についての真の位置情報を得ることができる。
【0015】
出力部14は、位置特定部131が特定した目標位置Pの位置情報や、ずれ量算出部132が算出したずれ量などを表示装置や電子ファイル、他の装置などへ出力する。
記憶部15は、種々の情報を記憶する。例えば、記憶部15は、目標位置Pの正確な位置情報などを記憶する。
【0016】
(目標位置Pの特定)
図2図6を参照して、目標位置Pを特定する処理について説明する。図2にパターン領域31の一例を示す。図2に例示するパターン領域31は十字の形状である。また、ユーザは、目標位置Pを十字の中心に設定する。光検知測距装置20がターゲット30のパターン領域31を含む範囲へレーザ光を照射すると、図示するような離散的な点群データが得られる。点群データを構成する一つ一つの点は、レーザ光が実際に当たった位置で反射された反射光である。パターン領域31は、ターゲット30のパターン領域31以外の領域とは異なる反射率となっている。従って、点群データのうちパターン領域31で反射した光と、それ以外の領域で反射した光とは異なる輝度(明るさ、濃淡)を有している。例えば、パターン領域31が反射率の高い材料で形成されていれば、パターン領域31からの反射光の輝度は、他の領域からの反射光の輝度よりも高くなる。この性質を利用すると、反射光の輝度に基づいて、パターン領域31とそれ以外の領域とを区別し、パターン領域31の形状を認識することができる。
【0017】
まず、図3に示すように、パターン領域31を光検知測距装置20の計測範囲に設置し、計測範囲に対してレーザ光を走査しながら照射する。光検知測距装置20は、反射光の点群データに基づいて、各点の位置情報を算出し、各点についての位置情報と反射光の輝度情報を含む計測データを校正支援装置10へ出力する。データ取得部11は、計測データを取得する。
【0018】
制御部13は、計測データに含まれる位置情報に基づいて、反射光に対応する各点を3次元空間上にマッピングし、輝度情報に基づいて、マッピングした各点を異なる態様で示した画像データ40を作成する。図4に、作成された画像データ40の一例を示す。図4では、反射光の輝度の異なる点を異なる色で示し、パターン領域31の形状を疑似的に重畳して表示している(パターン領域31の形状は、画像データ40には表示されない。)。位置特定部131は、画像データ40に基づいて、輝度が異なる点群の境界を抽出する。これにより、パターン領域31の幾何学形状が抽出される。
【0019】
位置特定部131は、抽出した境界に線分又は曲線を割り当てる。この様子を図5に示す。図5の線分51~54は、輝度の境界線に割り当てられた線分の一例である。線分を割り当てると、位置特定部131は、割り当てた線分の交点を算出する。この様子を図6に示す。図6の点61~64は、交点の一例である。位置特定部131は、点61~64を頂点とする四角形を抽出する。そして、位置特定部131は、抽出した四角形の重心(四角形の重心は十字形状の中心に等しい。)を計算して、画像データ40上の目標位置Pの位置を特定する。重心などの幾何学的な特徴点を目標位置Pとして定めることで、輝度の境界を抽出して特定した図形(この例の場合は四角形)から容易に目標位置Pを特定することができる。ただし、目標位置Pは、重心などの幾何学的な特徴点に限定されず、四角形の内外における計算可能な任意の点を目標位置Pに設定することができる。
【0020】
次に、位置特定部131は、画像データ40上の反射光に対応する各点と特定した目標位置Pの位置関係と、光検知測距装置20から取得した計測データに含まれる各点の位置情報から、光検知測距装置20の座標系における目標位置Pの位置情報を算出する。これにより、実際の環境における目標位置Pの位置情報を算出することができる。
【0021】
ずれ量算出部132は、設定受付部12が受け付けた目標位置Pの正確な位置情報と位置特定部131が算出した実際の環境における目標位置Pの位置情報との差である「ずれ量」を算出する。ずれ量は、XYZの各座標軸方向の誤差として表現されてもよいし、XYZの各座標軸方向の誤差に加えて、ロー、ピッチ、ヨーの各座標軸回りの角度の誤差の6つのパラメータについての誤差として表現されてもよい。6自由度に対応するずれ量を算出することにより、光検知測距装置20のターゲット30への向きと、光検知測距装置20の据え付け位置のずれを特定することができ、これらを補正することで、光検知測距装置20による計測精度を向上することができる。
【0022】
図7図10に、パターン領域31の形状の他の例を示す。図7に、矩形のパターン領域31における十字以外の範囲に反射率が異なる領域を配置した例を示す。この場合も、目標位置Pは十字の中心に設定されているとする。図7の例の場合も、図2図6の例と同様にして、位置特定部131は、輝度が異なる点群の境界を抽出し、境界に線分51a~54aを割り当て、割り当てた線分51a~54aの交点61a~64aを抽出し、これらの交点61a~64aを頂点とする四角形内の重心を目標位置Pとして特定する。
【0023】
図8に、パターン領域31として反射率が異なる円形の領域を設けた例を示す。目標位置Pは円形の中心に設定されている。図8の例の場合、位置特定部131は、輝度が異なる点群の境界を抽出し、境界に曲線51bを割り当て、割り当てた曲線51bによって形成されるエリア内の中心を目標位置Pとして特定する。
【0024】
図9に、上下方向が反対の2つの三角形を、各三角形の一つの頂点が重なるように配置して、2つの三角形の領域の反射率をそれ以外の領域とは異なるようにしてパターン領域31を配置した例を示す。目標位置Pは2つの三角形の頂点が重なる点に設定されている。図9の例の場合、位置特定部131は、輝度が異なる点群の境界を抽出し、境界に線分51c~54cを割り当て、割り当てた線分51c~54cの交点を抽出し、その交点を目標位置Pとして特定する。
【0025】
図9の例において、目標位置Pをそれぞれの三角形の重心に設定し、位置特定部131が2つの目標位置を特定し、ずれ量算出部132が2つの目標位置の各々についてずれ量を算出するようにしてもよい。複数の目標位置に対してずれ量を算出することにより、より精緻に校正できるようになる可能性がある。また、図7図8の例では、ある図形の内部に目標位置Pを設定したが、位置を特定することができれば、図形の外側に目標位置Pを設定してもよい。目標位置Pをパターン領域31の外側に設定する例を図10に示す。例えば、図10のパターン領域31について、境界に割り当てた直線53dと、直線54dと、直線52dまたは直線54dを延長した線と、で形成される三角形の重心を目標位置Pとして設定する。この例の場合、位置特定部131は、割り当てた線分と延長した線分を用いてできる図形の幾何学的な特徴に基づいて目標位置Pを特定することができる。また、パターン領域31は立体的に構成されていてもよい。
【0026】
(動作)
次に図11を参照して、校正支援装置10の動作について説明する。
図11は、実施形態に係る校正支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
パターン領域31が設けられたターゲット30を光検知測距装置20の測定範囲に設置する。ユーザは、ターゲット30を設置した状態における光検知測距装置20から目標位置Pまでの真の位置情報(距離や方向)を校正支援装置10へ入力する。設定受付部12は、真の位置情報を取得し(ステップS1)、記憶部15に記録する。次にユーザが、光検知測距装置20を操作して、パターン領域31を含む範囲について位置情報の計測を行う(ステップS2)。光検知測距装置20は、計測データを生成し、校正支援装置10へ出力する。計測データには、点群を構成する各点の位置情報と輝度情報とが含まれている。校正支援装置10では、データ取得部11が計測データを取得し(ステップS3)、記憶部15に記録する。次に、制御部13が、計測データを記憶部15から読み出して、計測データに含まれる各点の位置情報に基づいて反射光の点群に対応する点を3次元空間にマッピングした画像データ40を作成する(ステップS4)。制御部13は、計測データに含まれる各点の輝度情報に基づいて、マッピングした点に輝度に応じた色を設定するなどして、パターン領域31からの反射光とそれ以外の領域からの反射光を異なる態様で表示した画像データ40を作成する(図4)。例えば、画像データ40は、各画素に対して奥行きの情報と輝度情報を含める距離画像であってもよい。
【0027】
次に、位置特定部131が画像データ40に表示された反射光の輝度パターンに基づいて、輝度が異なる点群の境界を抽出する(ステップS5)。位置特定部131は、画像データ40の各点に付された色に基づいて、パターン領域31からの反射光に対応する点と、それ以外の領域からの反射光に対応する点とを識別し、両者の境界を抽出する。
【0028】
次に、位置特定部131は、抽出した境界に線分等を割り当てる(ステップS6)。例えば、抽出された境界が直線であれば、位置特定部131は、抽出した境界に沿って、線分を割り当てる(例えば、図5の線分51~54)。例えば抽出された境界が曲線であれば、位置特定部131は、抽出した境界に沿って線分を割り当てる(例えば、図8の曲線51b)。
【0029】
次に、位置特定部131は、割り当てた線分や曲線に基づいて目標位置Pを特定する(ステップS7)。例えば、位置特定部131は、割り当てた線分等によって形成されるエリア内の位置を目標位置Pとして特定してもよい(図8)。例えば、位置特定部131は、割り当てた線分等の交点を抽出し、複数の交点を頂点とするエリア内の位置を目標位置Pとして特定してもよい(図6図7図10)。例えば、位置特定部131は、割り当てた線分等の交点を抽出し、その交点を目標位置Pとして特定してもよい(図9)。例えば、位置特定部131は、割り当てた線分等を延長し、延長した線分等によって形成されるエリア内の位置を目標位置Pとして特定してもよい(図10)。
【0030】
画像データ40上で目標位置Pを特定すると、位置特定部131は、実際の環境における目標位置Pの位置情報を算出する(ステップS8)。例えば、位置特定部131は、画像データ40における目標位置Pとその周囲に存在する1つ又は複数の点P´との位置関係を算出し、算出した位置関係を、光検知測距装置20が計測した計測データに含まれる点P´に対応する反射光が示す位置情報に適用して、光検知測距装置20から見たときの目標位置Pの位置情報を算出する。
【0031】
次に、ずれ量算出部132は、ステップS7算出された目標位置Pの位置情報とステップS1で設定された目標位置Pの真の位置情報との差を計算して、ずれ量を算出する(ステップS9)。出力部14は、ずれ量算出部132によって算出されたずれ量の情報を表示装置などに出力する。
【0032】
例えば、光検知測距装置20は、マニピュレータを備えたロボット(図示せず)に据え付けられている。ロボットの制御装置は、マニピュレータが稼働する範囲の障害物や作業対象物の位置情報を光検知測距装置20によって計測し、障害物を回避して作業対象物へマニピュレータを移動させて作業を行う。このような場合に、ステップS8で出力されたずれ量を用いると、光検知測距装置20をロボットへの据え付けるときに発生した傾きや据え付け位置のずれを修正することができる。据え付けをやり直した後に再度、ステップS1~S8を実施して、ずれ量が補正されたかどうかを確認し、ずれ量が許容範囲内となるまで据え付け位置の修正を繰り返してもよい。また、据え付け位置の修正では、修正しきれないずれ量については、光検知測距装置20の光学系の製造誤差の可能性がある。例えば、ユーザは、ステップS8で出力されたずれ量を補正するソフトウェアをロボットの制御装置に組み込んで、このソフトウェアによって光検知測距装置20の計測結果を補正し、補正後の位置情報に基づいて、マニピュレータの動作を制御するように構成することができる。例えば、原子力プラントで、マニピュレータを備えるロボットを遠隔操縦して作業するような場合に、本実施形態の校正支援システム1を用いて校正を行った光検知測距装置20をロボットに搭載することにより、正確に3次元的な周囲環境の把握が可能となり、操縦性や干渉防止(安全)性能が向上する。
【0033】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、LiDARの計測結果を用いてターゲット30内の任意の目標位置Pを特定することができる。目標位置Pを特定することができれば、特定した目標位置PのLiDAR計測に基づく位置情報と目標位置Pの真の位置情報とを比較することにより、LiDARによって得られる計測位置のずれ量を把握することができる。ずれ量を把握することにより、光検知測距装置20の据え付けを修正してずれ量を低減し、計測精度を向上することができる。あるいは、ずれ量を把握することにより、LiDARによる計測結果の補正方法が分かるので、計測結果を補正するソフトウェアを用いることで、LiDARの計測精度を向上することができる。
【0034】
図12は、実施形態に係る校正支援装置のハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。上述の校正支援装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能(データ取得部11、設定受付部12、制御部13、位置特定部131、ずれ量算出部132)は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0035】
校正支援装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0036】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0037】
<付記>
各実施形態に記載の位置特定方法、位置特定システム及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0038】
(1)第1の態様に係る位置特定方法は、光検知測距装置20の光源から対象物へ光を照射したときの反射光の輝度パターンに基づいて、輝度が異なる点群の境界を抽出するステップ(S4)と、前記境界に線分または曲線を割り当てるステップと(S5)、前記線分または前記曲線に基づいて目標位置を特定するステップと(S6)、を有する。
これにより、光検知測距装置20の構成に必要な補正量(ずれ量)を算出するための基準となる位置を特定することができる。
【0039】
(2)第2の態様に係る位置特定方法は、(1)の位置特定方法であって、前記目標位置を特定するステップでは、割り当てた前記線分または前記曲線によって形成されるエリア内の所定の位置を前記目標位置として特定する。
線分または曲線を割り当てて、線分などで形成されるエリア(図形、幾何学模様)を抽出することで、そのエリアの形状や外縁に基づいて、エリア内に設定された目標位置Pを特定することができる。
【0040】
(3)第3の態様に係る位置特定方法は、(1)の位置特定方法であって、前記目標位置を特定するステップでは、割り当てた前記線分または前記曲線の交点を抽出し、複数の前記交点を頂点とするエリア内の所定の位置を前記目標位置として特定する。
線分または曲線の交点を抽出し、その交点を頂点とするエリア(図形、幾何学模様)を抽出することで、抽出したエリアの形状や外縁に基づいて、エリア内に設定された目標位置Pを特定することができる。
【0041】
(4)第4の態様に係る位置特定方法は、(2)または(3)の位置特定方法であって、前記目標位置は、前記エリアの重心又は中心である。
エリアの重心又は中心に目標位置Pを設定することで、例えば、計測誤差などの影響で、抽出されるべき正方形が歪んで平行四辺形や台形として抽出されたとしても、(重心や中心であれば、それら歪みや誤差などにあまり影響されずに)目標位置Pの近似値を特定することができる。エリアの重心又は中心に目標位置Pを設定することで、幾何学的な計算により、目標位置Pを特定することができる。
【0042】
(5)第5の態様に係る位置特定方法は、(1)の位置特定方法であって、前記目標位置を特定するステップでは、割り当てた前記線分または前記曲線の交点を抽出し、前記交点を前記目標位置として特定する。
これにより、図形の頂点などを目標位置Pとして設定した場合に、目標位置Pを特定することができる。
【0043】
(6)第6の態様に係る位置特定方法は、(1)~(5)の位置特定方法であって、特定した前記目標位置と、前記目標位置が本来検出されるべき位置とのずれ量を算出するステップ、をさらに有する。
ずれ量を算出することにより、光検知測距装置20を校正することができる。
【0044】
(7)第7の態様に係る位置特定方法は、(1)~(6)の位置特定方法であって、前記対象物(ターゲット30)には、周囲とは異なる反射率を有する既知の形状の領域(パターン領域31)が設けられ、前記対象物は前記光源との位置関係が既知の位置に設置される。
反射率を有する既知の形状の領域を設けることにより、輝度が異なる点群の境界を抽出することが可能になり、光源との位置関係が既知の位置に設置することにより、ずれ量の算出が可能になる。
【0045】
(8)第8の態様に係る位置特定システム(校正支援システム1)は、光検知測距装置20の光源から対象物(ターゲット30)へ光を照射したときの反射光の輝度パターンに基づいて、輝度が異なる点群の境界を抽出する手段(位置特定部131)と、前記境界に線分または曲線を割り当てる手段(位置特定部131)と、前記線分または前記曲線に基づいて目標位置を特定する手段(位置特定部131)と、を備える。
【0046】
(9)第9の態様に係る位置特定システム(校正支援システム1)は、(9)の位置特定システムであって、周囲とは異なる反射率を有する領域(パターン領域31)が設けられた対象物(ターゲット30)と、前記対象物へ光を照射して前記対象物までの距離を計測する光検知測距装置20と、をさらに備える。
【0047】
(10)第10の態様に係るプログラムは、コンピュータに、光検知測距装置の光源から対象物へ光を照射したときの反射光の輝度パターンに基づいて、輝度が異なる点群の境界を抽出するステップと、前記境界に線分または曲線を割り当てるステップと、前記線分または前記曲線に基づいて目標位置を特定するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・校正支援システム
10・・・校正支援装置
11・・・データ取得部
12・・・設定受付部
13・・・制御部
131・・・位置特定部
132・・・ずれ量算出部
14・・・出力部
15・・・記憶部
20・・・光検知測距装置
30・・・ターゲット
31・・・パターン領域
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12