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  • 特許-緩衝器の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】緩衝器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/46 20060101AFI20241108BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
F16F9/46
F16F9/32 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021119671
(22)【出願日】2021-07-20
(65)【公開番号】P2023015719
(43)【公開日】2023-02-01
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井藤 孝典
(72)【発明者】
【氏名】門倉 皓介
(72)【発明者】
【氏名】飯田 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】門司 健人
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-196885(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/067733(JP,A1)
【文献】特開2014-126194(JP,A)
【文献】実開平02-090442(JP,U)
【文献】国際公開第2017/122385(WO,A1)
【文献】実開平04-077039(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/46
F16F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、
該外筒の内部に設けられ、作動流体が封入されるシリンダと、
該シリンダ内に摺動可能に嵌合されるピストンと、
一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの外部へ突出するピストンロッドと、
前記シリンダの外周に軸方向へ移動可能に嵌合されるセパレータチューブと、
該セパレータチューブの外周に設けられるリザーバと、
前記セパレータチューブの側壁に設けられる開口と、
前記外筒の側壁に設けられ、前記開口と対向する位置に開口する取付孔と、
該取付孔に取り付けられる減衰力調整機構と、
を備える緩衝器の製造方法であって、
前記シリンダの外周に前記セパレータチューブを嵌合するチューブ嵌合工程と、
前記シリンダ及び前記セパレータチューブを前記外筒内に挿入するシリンダ挿入工程と、
前記外筒内に挿入した前記セパレータチューブの前記開口と前記外筒の前記取付孔とを位置合わせする位置合わせ工程と、
前記減衰力調整機構を位置合わせした前記開口と前記取付孔とに挿入する機構部挿入工程と、
前記外筒内に挿入した前記シリンダを移動させて前記外筒の底部に突き当てる突き当て工程と、
前記シリンダ内に作動流体を充填する充填工程と、
前記外筒を密閉する密閉工程と、
を有することを特徴とする緩衝器の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝器の製造方法であって、
前記開口は、前記セパレータチューブの側壁から外側へ突出する枝管を有し、
前記シリンダ挿入工程では、前記シリンダを前記外筒内に偏心させて挿入し、
前記位置合わせ工程では、前記シリンダを、前記外筒に対して同軸となるように移動させることを特徴とする緩衝器の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の緩衝器の製造方法であって、
前記セパレータチューブには、該セパレータチューブと前記外筒との間に配置され、前記リザーバ内の作動流体の流れの方向を制御するバッフル部材が設けられることを特徴とする緩衝器の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の緩衝器の製造方法であって、
前記外筒は、シリンダ挿入口の内径が、底部側の内径よりも小さいことを特徴とする緩衝器の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の緩衝器の製造方法であって、
前記突き当て工程では、前記減衰力調整機構によって前記セパレータチューブの軸方向の移動が抑制されることを特徴とする緩衝器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンロッドのストロークにより生じる作動流体の流れを制御して減衰力を調整する減衰力調整式緩衝器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、減衰力調整機構を、セパレータチューブの開口に嵌合された通路部材に押し当てながら外筒の取付孔に取り付けることにより、セパレータチューブの開口と外筒の取付孔とが自動調心されるようにした緩衝器の製造方法(以下「従来の製造方法」と称する)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-196885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の製造方法では、セパレータチューブの開口と外筒の取付孔との位置合わせのため、セパレータチューブの開口と減衰力調整機構のバルブ部材との間にボス及び通路部材を介在させるため、部品点数が増えて製造コストが増大する。また、シリンダの軸心からメインバルブの着座面(シート部)までの距離が長くなるため、減衰力調整機構の高さ、即ち、減衰力調整機構のベースシェル3の側壁からの突出長さが長くなり、緩衝器の大型化を招く。
【0005】
本発明は、緩衝器を小型化することが可能な緩衝器の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の緩衝器の製造方法は、外筒と、該外筒の内部に設けられ、作動流体が封入されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌合されるピストンと、一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの外部へ突出するピストンロッドと、前記シリンダの外周に軸方向へ移動可能に嵌合されるセパレータチューブと、該セパレータチューブの外周に設けられるリザーバと、前記セパレータチューブの側壁に設けられる開口と、前記外筒の側壁に設けられ、前記開口と対向する位置に開口する取付孔と、該取付孔に取り付けられる減衰力調整機構と、を備える緩衝器の製造方法であって、前記シリンダの外周に前記セパレータチューブを嵌合するチューブ嵌合工程と、前記シリンダ及び前記セパレータチューブを前記外筒内に挿入するシリンダ挿入工程と、前記外筒内に挿入した前記セパレータチューブの前記開口と前記外筒の前記取付孔とを位置合わせする位置合わせ工程と、前記減衰力調整機構を位置合わせした前記開口と前記取付孔とに挿入する機構部挿入工程と、前記外筒内に挿入した前記シリンダを移動させて前記外筒の底部に突き当てる突き当て工程と、前記シリンダ内に作動流体を充填する充填工程と、前記外筒を密閉する密閉工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、緩衝器の小型化が可能な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る緩衝器の断面図である。
図2図1における要部拡大図である。
図3】本実施形態におけるシリンダ挿入工程の説明図である。
図4】本実施形態における位置合わせ工程及び機構部挿入工程の説明図である。
図5】本実施形態における突き当て工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
以下、図1に示される減衰力調整機構51(機構部)がベースシェル3(外筒)の下端部4の側壁に横付けされた、所謂、制御バルブ横付型の減衰力調整式油圧緩衝器1(以下「緩衝器1」と称する)の製造方法を説明する。便宜上、図1における上下方向をそのまま「上下方向」と称する。また、図2における左側を「シリンダ側」と称し、図2における右側を「制御バルブ側」と称する。
【0010】
図1に示されるように、緩衝器1は、ベースシェル3の内側にシリンダ2が設けられた複筒構造をなし、ベースシェル3とシリンダ2との間には、リザーバ11が形成される。シリンダ2内には、シリンダ2内をシリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの2室に区画するピストン12が摺動可能に嵌装される。ピストン12には、ピストンロッド13の下端が連結される。ピストンロッド13の上端側は、シリンダ上室2Aを通過し、シリンダ2の上端に取り付けられたロッドガイド14に挿通されてシリンダ2の外部へ突出する。
【0011】
ピストン12には、シリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとを連通する伸び側通路15及び縮み側通路16が設けられる。縮み側通路16には、シリンダ下室2Bからシリンダ上室2Aへの作動液の流通を許容する逆止弁17が設けられる。他方、伸び側通路15には、シリンダ上室2A側の圧力が設定圧力に達したときに開弁し、当該シリンダ上室2A側の圧力をシリンダ下室2B側へ逃がすディスクバルブ18が設けられる。
【0012】
シリンダ2の下端部には、シリンダ下室2Bとリザーバ11とを区画するベースバルブ31が設けられる。図5に示されるように、ベースバルブ31は、下端が開口する有蓋円筒形に形成される。ベースバルブ31の蓋部36には、シリンダ下室2Bとリザーバ11とを連通する伸び側通路32及び縮み側通路33が設けられる。伸び側通路32には、リザーバ11側からシリンダ下室2B側への作動液の流通を許容する逆止弁34が設けられる。他方、縮み側通路33には、シリンダ下室2B側の圧力が設定圧力に達したときに開弁し、当該シリンダ下室2B側の圧力をリザーバ11側へ逃すディスクバルブ35が設けられる。なお、シリンダ2内には作動液が封入され、リザーバ11内には作動液及びガスが封入される。
【0013】
ベースバルブ31(蓋部36)の上端には、小径部37が形成される。小径部37(軸)は、シリンダ2の下端部43(孔)に嵌合される。シリンダ2の下端面44は、ベースバルブ31の小径部37と円筒部38との間に形成された環状の突当面39に突き当てられる。ベースバルブ31(円筒部38)の下端面40は、ベースシェル3の底部5に形成された凹形の着座部6に着座される。シリンダ2は、シリンダ2の下端部43に嵌合されたベースバルブ31の下端面40が、ベースシェル3の着座部6に着座することにより、ベースシェル3に対して同軸に位置決めされる。なお、ベースシェル3の着座部6とベースバルブ31の下端面40とは、曲率半径が同一の曲面からなる。
【0014】
図1に示されるように、シリンダ2の外周には、上下一対のシール部材45,45を介してセパレータチューブ21が取り付けられる。シリンダ2とセパレータチューブ21との間には、環状通路22が形成される。環状通路22は、シリンダ2の側壁に設けられた通路23によりシリンダ上室2Aに連通される。図2に示されるように、セパレータチューブ21の下端側の側壁には、制御バルブ側に突出されて先端が開口する円筒形の枝管24(開口)が設けられる。ベースシェル3の下端部4の側壁には、枝管24と対向する取付孔7が設けられる。取付孔7は、枝管24と同軸に配置され、枝管24の外径よりも大きい内径を有する。
【0015】
ベースシェル3の下端部4の側壁には、取付孔7を囲むように略円筒形のバルブケース52が設けられる。バルブケース52には、減衰力調整機構51が収容される。減衰力調整機構51は、減衰力を発生させる背圧型のメインバルブ53と、該メインバルブ53が当接するジョイント部材71と、メインバルブ53の背部に形成されて内圧がメインバルブ53に対して閉弁方向へ作用する背圧室54と、該背圧室54を形成するパイロットケース61と、を有する。
【0016】
また、減衰力調整機構51は、背圧室54の内圧を調整してメインバルブ53の開弁圧力を制御するパイロットバルブ56と、パイロットバルブ56が離着座可能に当接するパイロットボディ57と、パイロットバルブ56の下流側に設けられるフェイルセーフバルブ58と、パイロットバルブ56の開弁圧力を制御するソレノイド59と、を有する。ここで、パイロットバルブ56、フェイルセーフバルブ58、及びソレノイド59については、従来構造がそのまま適用される。よって、明細書の記載を簡潔にするため、これらの詳細な説明を省略する。
【0017】
ジョイント部材71は、セパレータチューブ21の枝管24(開口)の内周に嵌合(挿入)される接続部72と、該接続部72の上端に設けられたフランジ部73と、を有する。フランジ部73の制御バルブ側の端面には、メインバルブ53の外周縁部が離着座可能に当接する環状のシート部74(着座面)が形成される。ジョイント部材71のシート部74の内周側には、環状凹部75が形成される。フランジ部73は、取付孔7の内径よりも小さく、かつパイロットケース61の外径よりも大きい外径を有する。ジョイント部材71は、フランジ部73の外周面76が、取付孔7及びバルブケース52の内周面と一定間隔をあけて対向するように設けられる。フランジ部73の外周縁部には、バルブケース52内(メインバルブ53の外周)の環状通路55とリザーバ11とを連通する複数個(図2に2個のみ表示)の切欠き部77が形成される。
【0018】
ジョイント部材71には、ジョイント部材71の中央を軸心方向(図2における「上下方向」)へ貫通する通路79が設けられる。通路79は、下端が環状通路22に開口する大内径部80と、上端がジョイント部材71の上端面82(制御バルブ側の端面)の中央に開口する小内径部81と、を有する。ジョイント部材71は、大内径部80と環状凹部75とを連通する複数本(図2に2本のみ表示)の通路84を有する。なお、ジョイント部材71の接続部72とセパレータチューブ21の枝管24との間は、接続部72の外周に設けられたシール部材83によりシールされる。また、枝管24には、バッフルプレート28が装着される。バッフルプレート28は、メインバルブ53の外周に形成された環状通路55からリザーバ11へ排出された作動流体の流れを制御することで、エアレーションの発生を抑止する。
【0019】
パイロットケース61の制御バルブ側の端面には、パイロットボディ57が嵌合されるパイロットボディ嵌合部62が形成される。パイロットボディ嵌合部62の底部には、凹部63が設けられる。凹部63の底部中央には、ピン部64の上端側が突出する。ピン部64の下端面65は、ジョイント部材71の上端面82に当接される。ピン部64の中央には、ジョイント部材71の通路79に連通される通路66が形成される。背圧室54へ作動液を導入する通路66の、シリンダ側(ジョイント部材71側)の端部には、導入オリフィス67が設けられる。
【0020】
ジョイント部材71は、ロックナット97によってパイロットケース61と締結される。パイロットケース61の外周縁部には、ジョイント部材71の上端面82の、シート部74よりも外周部分に突き当てられる突当部85が設けられる。本実施形態では、ロックナット97の締結部(雄ねじ部68及び雌ねじ部92)に生じる横力を、パイロットケース61の突当部85とジョイント部材71の上端面82との間に発生した摩擦力により低減することができる。
【0021】
流路を確保するため、突当部85及びジョイント部材71の外周部には、それぞれ切欠き部86及び77が設けられている。切欠き部86は、メインバルブ53を開弁させ、環状通路55及び切欠き部77を経由してリザーバ11へ流れる作動液の流れを確保する。また、パイロットケース61の外周面には、雄ねじ部68が形成される。該雄ねじ部68に、ソレノイド59のヨーク91の内周面に形成された雌ねじ部92を螺合させて締め付けることにより、パイロットケース61とヨーク91とがねじ締結される。
【0022】
ヨーク91は、シリンダ側の円筒部93がバルブケース52のヨーク嵌合部94に嵌合され、バルブケース52に結合される。ヨーク91は、円筒部93の端面がバルブケース52のヨーク突当面95に当接されることで、バルブケース52に対して軸方向へ位置決めされる。ヨーク91の円筒部93とバルブケース52との間は、円筒部93の外周に設けられたシール部材96によりシールされる。また、バルブケース52にヨーク91を固定するには、バルブケース52に螺合させたロックナット97を締め付けて、ヨーク91の外周に装着した止め輪98を圧縮する。
【0023】
次に、前述した緩衝器1の製造方法を説明する。
まず、上下両端部にシール部材45,45が装着されたセパレータチューブ21を、シリンダ2の外周に摺動可能に嵌合させる。このとき、シリンダ2の下端面44からセパレータチューブ21の下端面25までの軸方向長さL1(図3参照)を、製品(完成品)におけるシリンダ2の下端面44からセパレータチューブ21の下端面25までの軸方向長さL2(図5参照)よりも短くしておく(L2>L1)。
【0024】
次に、シリンダ2の下端部43にベースバルブ31を取り付ける。そして、セパレータチューブ21の枝管24(開口)にバッフルプレート28を取り付けることにより、シリンダ2、セパレータチューブ21、ベースバルブ31、及びバッフルプレート28からなるシリンダアセンブリ10を構成する。次に、ベースシェル3の上端部8の開口からシリンダアセンブリ10を挿入する。
【0025】
ここで、ベースシェル3の上端部8(シリンダ挿入口)の内側半径R1(図4参照)は、シリンダアセンブリ10の軸心からバッフルプレート28の隔壁29の頂部までの距離H1(図4参照)よりも小さい(H1>R1)。これにより、シリンダアセンブリ10を、ベースシェル3との同軸を維持しつつベースシェル3に挿入すると、バッフルプレート28(隔壁29)がベースシェル3の小径の上端部8に干渉し、バッフルプレート28の破損や挿入不良の虞がある。そこで、本実施形態では、図3に示されるように、シリンダアセンブリ10の軸心をベースシェル3の軸心に対してずらした状態(偏心させた状態)で、バッフルプレート28とベースシェル3との干渉を回避しながら、シリンダアセンブリ10をベースシェル3に挿入する。
【0026】
次に、シリンダアセンブリ10(シリンダ2)を、ベースシェル3(外筒)に対して同軸となるように移動させ、さらに、セパレータチューブ21の枝管24(開口)の軸心が、ベースシェル3の取付孔7の軸心、換言すれば、ベースシェル3に接合されたバルブケース52の軸心におおよそ一致するように、シリンダアセンブリ10をベースシェル3に対して周方向に位置合わせする。この状態では、図4に示されるように、シリンダアセンブリ10のベースバルブ31の下端面40は、ベースシェル3の底部5の着座部6から離間されている。
【0027】
次に、図4に示されるように、減衰力調整機構51をベースシェル3に接合されたバルブケース52内に挿入し、減衰力調整機構51のジョイント部材71の接続部72を、シリンダアセンブリ10のセパレータチューブ21の枝管24内に嵌合させる。この状態で、シリンダアセンブリ10のシリンダ2のみをベースシェル3に対して下方向へ押し付ける。このとき、セパレータチューブ21は、枝管24にジョイント部材71の接続部72が嵌合されているので、減衰力調整機構51、延いてはベースシェル3に対する軸方向への移動が抑止される。
【0028】
よって、シリンダ2は、セパレータチューブ21に対して摺動しながら下方向へ移動し、図5に示されるように、シリンダアセンブリ10のベースバルブ31の下端面40が、ベースシェル3の底部5の着座部6に着座される。なお、シリンダ2の移動時におけるセパレータチューブ21に対する軸心のブレは、減衰力調整機構51の内機部品により吸収される。次に、バルブケース52にロックナット97を取り付け、該ロックナット97を締め付けることにより、減衰力調整機構51の内機部品に軸力を作用させる。
【0029】
そして、シリンダ2、セパレータチューブ21、及び減衰力調整機構51内に作動液を充填した後、ベースシェル3(外筒)の上端部8(開口)を密閉する。
【0030】
ここで、従来の製造方法では、枝管(開口)と取付孔との位置合わせのため、セパレータチューブの枝管と減衰力調整機構のメインボディ(シート部材)との間にボス及び通路部材を介在させており、部品点数の増大により製造コストが増加する。また、部品を介在させた分だけ、シリンダの軸心からメインバルブの着座面(シート部)までの距離が長くなるため、減衰力調整機構のベースシェル3の側壁からの突出長さが長くなり、緩衝器の大型化を招いていた。
【0031】
これに対し、本実施形態では、減衰力調整機構51のメインバルブ53が着座されるシート部74、環状通路22の作動液をメインバルブ51へ流通させる通路84、及び環状通路22の作動液をパイロットバルブ56へ流通させる通路79をジョイント部材71に形成することにより、ジョイント部材71を減衰力調整機構51と一体化した。
本実施形態によれば、ジョイント部材71の接続部72を、シリンダアセンブリ10のセパレータチューブ21の枝管24(開口)に嵌合させることにより、減衰力調整機構51をセパレータチューブ21の枝管24に接続したので、従来の製造方法においてセパレータチューブの枝管と減衰力調整機構(シート部材)との介在させていたボス及び通路部材が不要となり、部品点数が減少して製造コストを削減することができる。
また、部品点数の減少により組立工数も減少するので、製造工程を能率化することができる。
さらに、シリンダ2の軸心からメインバルブ53が着座するシート部74(着座面)までの距離を短くすることができるので、減衰力調整機構51の高さを低く、即ち、ベースシェル3の側壁からの突出量を短くすることが可能であり、緩衝器1を小型化することができる。
また、本実施形態では、シリンダアセンブリ10の軸心をベースシェル3の軸心に対してずらした状態(偏心させた状態)で、シリンダアセンブリ10をベースシェル3に挿入させるので、ベースシェル3の上端部8の開口(シリンダ挿入口)の内径が下端部4の内径よりも小さい場合であっても、バッフルプレート28とベースシェル3との干渉を回避しながら、シリンダアセンブリ10をベースシェル3に挿入することができる。これにより、バッフルプレート28の破損や挿入不良を回避することが可能であり、緩衝器1の品質を確保することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 緩衝器、2 シリンダ、3 ベースシェル(外筒)、5 底部、7 取付孔、11 リザーバ、12 ピストン、13 ピストンロッド、21 セパレータチューブ、24 枝管(開口)、51 減衰力調整機構
図1
図2
図3
図4
図5