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特許7584374取引管理装置、取引管理方法、及び取引管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】取引管理装置、取引管理方法、及び取引管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20241108BHJP
【FI】
G06Q10/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021124244
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2023019485
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土田 百華
(72)【発明者】
【氏名】岩宮 章介
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【審査官】前田 侑香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/038626(WO,A1)
【文献】特開平11-149509(JP,A)
【文献】特開2019-53583(JP,A)
【文献】特開2002-133123(JP,A)
【文献】特開2004-164245(JP,A)
【文献】特開2003-91664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受注した商品を発注して納品する取引を管理するための、制御部を備えた取引管理装置であって、
前記制御部は、
ある商品について入力された新規取引データと、前記ある商品と同一の商品についての予め設定された基準となる基準取引データとを対比して、前記新規取引データの入力時における当該新規取引データの前記基準取引データに対する差分又は大小関係に関する差分情報を生成する差分情報生成手段
を備える
ことを特徴とする取引管理装置。
【請求項2】
前記差分情報が、
発注した商品についての発注先への支払予定日から、当該商品の仕入予定日又は当該商品の取引の売上計上日を差し引いた期間を示す支払サイトの差分又は大小関係に関する情報を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の取引管理装置。
【請求項3】
前記差分情報が、
諸掛費用を除いたネット粗利の差分又は大小関係に関する情報を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の取引管理装置。
【請求項4】
前記差分情報が、
1取引あたりの金利の差分又は大小関係に関する情報を含む、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の取引管理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記差分情報が、前記基準取引データに比べてキャッシュフローの相対的な悪化を示す相対悪化情報である場合には、エラー情報を出力するエラー情報出力手段
を備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の取引管理装置。
【請求項6】
前記エラー情報出力手段は、
前記差分情報が前記相対悪化情報である場合、他の発注先に関する情報を含むエラー情報を出力する
ことを特徴とする請求項5に記載の取引管理装置。
【請求項7】
前記基準取引データが、
読出し可能な取引データのうち、直近の取引データである
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の取引管理装置。
【請求項8】
前記基準取引データが、
読出し可能な取引データに基づき算出された平均的な取引に関する取引データである
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の取引管理装置。
【請求項9】
前記基準取引データが、
デフォルトで設定された取引データである
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の取引管理装置。
【請求項10】
制御部を備えた取引管理装置において実行される、受注した商品を発注して納品する取引を管理するための取引管理方法であって、
前記制御部において実行される、
ある商品について入力された新規取引データと、前記ある商品と同一の商品についての予め設定された基準となる基準取引データとを対比して、前記新規取引データの入力時における当該新規取引データの前記基準取引データに対する差分又は大小関係に関する差分情報を生成する差分情報生成ステップ
を含む
ことを特徴とする取引管理方法。
【請求項11】
制御部を備えた取引管理装置において実行される、受注した商品を発注して納品する取引を管理するための取引管理プログラムであって、
前記制御部において実行させるための、
ある商品について入力された新規取引データと、前記ある商品と同一の商品についての予め設定された基準となる基準取引データとを対比して、前記新規取引データの入力時における当該新規取引データの前記基準取引データに対する差分又は大小関係に関する差分情報を生成する差分情報生成ステップ
を含む
ことを特徴とする取引管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取引管理装置、取引管理方法、及び取引管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、製品を受注後に生産を行う業態において、上記製品に要したコスト額を管理し、管理されたコスト額が、設定された予定コスト額を上回った場合に、警告情報を表示し、ユーザに注意を促すことが可能なシステムが開示されている(例えば、請求項38参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2003/081492号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、商社や卸売業等においては、受注した商品を発注して納品する取引形態がある。ここで、納品は、仕入れて納品したり、発注した商品を直送したりすることにより行われる。このような取引形態においては、通常、担当者(例えば営業担当者)は、第1の取引先から受注した商品の受注金額に諸掛費用を勘案して発注金額を決定し、第2の取引先に発注する。このような取引を行うことにより、商社や卸売業等においては、粗利を得ることができる。
【0005】
しかしながら、粗利は、通常、受注した商品を第1の取引先に納品することでなされる売上計上段階になるまで正確に把握することができない。そのため、営業担当者等の担当者は、受注及び発注を行った段階において粗利を把握することができない。また、一般的に、粗利の把握は、営業担当者以外の者、例えば経理担当者によってなされるため、営業担当者は、売上計上後に把握される粗利を把握しようとしないことも多々あった。
【0006】
したがって、受注した商品を発注して納品する取引においても、新規取引時において粗利等のキャッシュフロー(以下、「C/F」とも表記する)を把握できるようにすることが求められている。そして、営業担当者が、新規取引時にキャッシュフローを把握できるようになれば、より健全な取引に生かせるようになることが期待される。
【0007】
本発明は、上述の問題(要求)に鑑みてなされたものであって、新規取引時においてキャッシュフローに関する情報をユーザが手間を要することなく入手することができる取引管理装置、取引管理方法、及び取引管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る取引管理装置は、受注した商品を発注して納品する取引を管理するための、制御部を備えた取引管理装置であって、前記制御部は、ある商品について入力された新規取引データと、前記ある商品と同一の商品についての予め設定された基準となる基準取引データとを対比して、前記新規取引データの入力時における当該新規取引データの前記基準取引データに対する差分又は大小関係に関する差分情報を生成する差分情報生成手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る取引管理装置は、前記差分情報が、発注した商品についての発注先への支払予定日から、当該商品の仕入予定日又は当該商品の取引の売上計上日を差し引いた期間を示す支払サイトの差分又は大小関係に関する情報を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る取引管理装置は、前記差分情報が、諸掛費用を除いたネット粗利の差分又は大小関係に関する情報を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る取引管理装置は、前記差分情報が、1取引あたりの金利の差分又は大小関係に関する情報を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る取引管理装置は、前記制御部は、前記差分情報が、前記基準取引データに比べてキャッシュフローの相対的な悪化を示す相対悪化情報である場合には、エラー情報を出力するエラー情報出力手段を備えることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係る取引管理装置は、前記エラー情報出力手段は、前記差分情報が前記相対悪化情報である場合、他の発注先に関する情報を含むエラー情報を出力することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る取引管理装置は、前記基準取引データが、読出し可能な取引データのうち、直近の取引データであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る取引管理装置は、前記基準取引データが、読出し可能な取引データに基づき算出された平均的な取引に関する取引データであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る取引管理装置は、前記基準取引データが、デフォルトで設定された取引データであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る取引管理方法は、制御部を備えた取引管理装置において実行される、受注した商品を発注して納品する取引を管理するための取引管理方法であって、前記制御部において実行される、ある商品について入力された新規取引データと、前記ある商品と同一の商品についての予め設定された基準となる基準取引データとを対比して、前記新規取引データの入力時における当該新規取引データの前記基準取引データに対する差分又は大小関係に関する差分情報を生成する差分情報生成ステップを含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る取引管理プログラムは、制御部を備えた取引管理装置において実行される、受注した商品を発注して納品する取引を管理するための取引管理プログラムであって、前記制御部において実行させるための、ある商品について入力された新規取引データと、前記ある商品と同一の商品についての予め設定された基準となる基準取引データとを対比して、前記新規取引データの入力時における当該新規取引データの前記基準取引データに対する差分又は大小関係に関する差分情報を生成する差分情報生成ステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、新規取引時においてキャッシュフローに関する情報をユーザが手間を要することなく入手することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係る取引管理装置を含む取引管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、図1の取引管理システム1000において、取引管理装置100が実行する取引管理方法の処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、図2のステップS201で登録されるチェック区分マスタの構成の一例を模式的に示す図である。
図4図4は、図2のステップS203~S204で受け付けがなされる一対の受注データ及び発注データの第1の例を模式的に示す図であり、図4(a)は、受注データの例を、図4(b)は、発注データの例を示す図である。
図5図5は、図2のステップS205において基準取引データの読出しに際し参照される取引データテーブルの例を模式的に示す図であり、図5(a)は、受注データテーブルを示し、図5(b)は、発注データテーブルを示す図である。
図6図6は、図2のステップS205の結果抽出された基準取引データの例を模式的に示す図であり、図6(a)は、基準取引データに含まれる受注データを示し、図6(b)は、基準取引データに含まれる発注データを示す図である。
図7図7は、図2のステップS206で差分情報を取得するために用いられる金利及びネット粗利の計算ロジック例を説明するために用いられる図である。
図8図8は、図6に示す基準取引データについて、図7の計算ロジックを適用した場合の結果を説明するために用いられる図である。
図9図9は、図4に示す新規取引データについて、図7の計算ロジックを適用した場合の結果を説明するために用いられる図である。
図10図10は、図2のステップS203~S204で受け付けがなされる一対の受注データ及び発注データの第2の例を模式的に示す図であり、図10(a)は、受注データの例を、図10(b)は、発注データの例を示す図である。
図11図11は、図10に示した新規取引データについて、金利及びネット粗利を計算した結果を説明するために用いられる図である。
図12図12は、図2のステップS203~S204で受け付けがなされる一対の受注データ及び発注データの第3の例を模式的に示す図であり、図12(a)は、受注データの例を、図12(b)は、発注データの例を示す図である。
図13図13は、図12に示した新規取引データについて、金利及びネット粗利を計算した結果を説明するために用いられる図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は本実施形態により限定されるものではない。
【0022】
[1.構成]
本実施形態に係る取引管理装置を含む取引管理システムの構成の一例について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る取引管理装置を含む取引管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0023】
図1に示す取引管理システム1000は、情報処理装置としての取引管理装置100と、サーバ200と、取引管理装置100及びサーバ200を通信可能に接続するネットワーク300とを含んでいる。
【0024】
取引管理装置100は、受注した商品を発注して納品する取引を管理するための情報処理装置であり、例えば市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータで構成される。この取引管理装置100は、例えば、取引を管理する部門(例えば、営業部門又は受注部門若しくは発注部門)に1台設置されている。なお、取引管理装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。また、取引管理装置100は、取引管理システム1000内において複数台設置されていてもよく、複数台の取引管理装置100の間で同期をとることで1台の取引管理装置100として機能してもよい。
【0025】
取引管理装置100は、制御部102と、通信インターフェース部104と、記憶部106と、入出力インターフェース部108とを備えている。取引管理装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0026】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置及び専用線等の有線又は無線の通信回線を介して、取引管理装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、取引管理装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。したがって、通信インターフェース部104は、他の情報処理装置(例えば取引先の情報処理装置)からの情報等を、ネットワーク300を介して又はネットワーク300及びサーバ200を介して受け付けることが可能に構成されているとともに、所定の情報処理装置(例えば取引先の情報処理装置)に対して所定の情報を出力することが可能に構成されている。
【0027】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブル、及びファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラム(本発明のプログラムを含む)が記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び光ディスク等を用いることができる。また、この記憶部106には、本発明のプログラムを実施するために用いられる各種のデータが書き出し/読み出し可能に格納されている。
【0028】
入出力インターフェース部108には、入力装置112及び出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。
【0029】
制御部102は、取引管理装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0030】
さらに図1を参照しながら、記憶部106及び制御部102の構成について詳述する。
【0031】
記憶部106は、図1に示されるように、チェック区分マスタ106aと、取引データ記憶領域106bと、差分情報記憶領域106cと、エラー情報記憶領域106dとを含む。また、記憶部106は、その他のマスタやデータ記憶領域を備えていてもよい。
【0032】
チェック区分マスタ106aは、後述するチェック区分ごとに、基準取引データに関する情報を登録したマスタである。チェック区分マスタ106aの構成例については、図3を用いて後述する。
【0033】
取引データ記憶領域106b、差分情報記憶領域106c及びエラー情報記憶領域106dは、それぞれ、後述する取引データ、差分情報及びエラー情報を記憶するための領域であり、必要に応じて各データを出力可能に保持する。取引データ記憶領域106bにおいて、取引データは、テーブルの形態で格納されていることが好ましい。
【0034】
制御部102は、図1に示されるように、複数のモジュールを備えている。図1に示す例では、制御部102は、差分情報生成部102aと、エラー情報出力部102bとを備えている。
【0035】
差分情報生成部102aは、後述する差分情報を生成する差分情報生成手段として機能するモジュールである。エラー情報出力部102bは、後述する差分情報を生成するエラー情報出力手段として機能するモジュールである。各部の機能は、後述する処理内容を実現する機能を含む。
【0036】
[2.処理]
次に、図1に示す取引管理システム1000において実行される取引管理方法を例示的に説明する。
【0037】
図2は、図1の取引管理システム1000において、取引管理装置100が実行する取引管理方法の処理手順を示すフローチャートである。この図2に示す処理は、概略的には、受注した商品を発注して納品する取引を管理するに際し、ユーザによって新規取引データが入力されると、基準取引データとの差分情報を自動的に生成し、C/Fが相対的に悪化する場合には、ユーザへ向けてエラー情報を出力するというものであり、本処理の大部分は、取引管理装置100の制御部102において実行される。なお、以下では、商社の営業担当者が取引管理装置100のユーザであり、新規取引データとして一対の受注データ及び発注データを入力する場合を例として挙げて説明する。
【0038】
図2において、まず、ステップS201では、必要なマスタの設定を受け付ける。既にマスタが構築されている場合には、斯かるマスタの編集(メンテナンス)を受け付けてもよい。マスタが構築されており、メンテナンスの必要がない場合には、本ステップはスキップされる。また、マスタの設定及びメンテナンスは特定のユーザ(例えば、管理者、サービスマン)のみが行えるようにしてもよい。
【0039】
マスタとしては、図3を用いて後述するチェック区分マスタが挙げられる。また、必要に応じてその他のマスタ(例えば、第1の取引先としての発注元(請求先)を登録した請求先マスタ、第2の取引先としての発注先(支払先)を登録した支払先マスタ、商品を登録した商品マスタ等)を用意することが好ましい。なお、マスタの名称は便宜上のものであり、任意の名称を採用できる。また、マスタの構成例は、後述するものに限られることはなく、例えば、請求先マスタとチェック区分マスタとが統合されていてもよいし、請求先マスタと支払先マスタとが統合されていてもよい。また、既存のマスタが存在する場合には、ステップS201において、既存のマスタへのアクセス(参照)を可能に設定してもよい。
【0040】
図3は、図2のステップS201で登録されるチェック区分マスタの構成の一例を模式的に示す図である。
【0041】
図3に例示されるチェック区分マスタは、予め設定された基準となる基準取引データに関する情報を登録したマスタである。チェック区分マスタには、複数のチェック区分を登録することが可能であり、図3に示す例では、3種類のチェック区分に関する基準取引データに関する情報が登録されている。この場合、図2のステップS201では、複数のチェック区分の中から一のチェック区分が選択的に設定される。ここで、基準取引データとは、後述する差分情報を取得するための基準となる取引データである。基準取引データに関する情報は、商品ごとに設定される。ただし、商品が異なっても納期や支払いパターンが同じであるなどの理由で、異なる商品について同じ基準取引データが採用されてもよい。
【0042】
チェック区分は、予め設定する基準取引データを識別可能な情報であれば任意に設定可能であるが、好ましくは、基準取引データをどのように設定したか又は後述するキャッシュフローの基準値をどのように設定したかを判別可能な名称を含むことが好ましい。
【0043】
図3に示す例では、チェック区分「前回取引」は、基準取引データとして、読出し可能な取引データのうち、直近の取引データを採用したことを示す区分である。読出し可能な取引データとは、例えば、一対の受注データと発注データの群が登録されたテーブルであり、受注データと発注データの対を特定できる限りにおいて、受注データのテーブルと、発注データのテーブルとが個別に読み出し可能であってもよい。直近の取引データとは、例えば、読出し可能な取引データにおいて、取引日(例えば受注日)が最も新しい取引データであってもよいし、取引が完了した実績のある取引データであって、取引日(例えば売上予定日、実績においては売上計上日)が最も新しい取引データであってもよい。直近の取引データにおいて、取引が完了している場合又は取引の完了が見込まれる場合には、当該取引データについて、キャッシュフロー、具体的には粗利や金利を把握できる。すなわち、チェック区分「前回取引」は、前回取引データとの差分情報を取得したい場合に選択される。このチェック区分「前回取引」は、取引ごとに回収条件・支払条件が変動するが、大きな変動がない場合に設定されることが考えられる。
【0044】
チェック区分「平均値」は、基準取引データとして、読出し可能な取引データに基づき算出された平均的な取引に関する取引データを採用したことを示す区分である。平均的な取引として、すべての取引の平均値を算出してもよいし、予め設定された期間における取引の平均値を算出するようにしてもよいし、直近から予め設定された数の取引の平均値を算出するようにしてもよい。ここで、平均値には、少なくとも、後述するサイト基準が含まれることが好ましい。平均値としては、ユーザが算出したものが登録されてもよいし、取引管理装置100が自動的に算出したものが登録されてもよいが、ユーザの手間を削減する観点からは後者が好ましい。チェック区分「平均値」は、取引データの平均値との差分情報を取得したい場合に選択される。このチェック区分「平均値」は、取引ごとに回収条件・支払条件が変動し、変動の幅が大きい場合に設定されることが考えられる。
【0045】
チェック区分「基準値」は、基準取引データとして、デフォルトで設定された取引データを採用したことを示す区分である。デフォルトで設定される取引データとは、例えば、過去の実績から、キャッシュフローが良好であった取引又は理想的なものとして想定される取引をデータ化した固有値が考えられる。デフォルトで設定された取引データは固有値であることが好ましいが、読出し可能な取引データの中から、後述する回収サイトが最も長期間であった取引データが自動的に抽出して基準取引データとして更新するように構成してもよい。ここで、固有値には、少なくとも、後述するサイト基準が含まれることが好ましい。固有値としては、ユーザが任意に設定したものが登録されてもよいし、取引管理装置100が、読出し可能な取引データの中から、後述する回収サイトが最も長期間であった取引データを自動的に抽出して基準取引データとして更新するように構成してもよい。チェック区分「基準値」は、取引データの平均値との差分情報を取得したい場合に選択される。このチェック区分「基準値」は、社内規定がある場合(例えば、支払先への支払期間が契約により予め定まっている場合や過度の支払い遅延の禁止規定がある場合)や、理想的な取引形態が予め定まっている場合等に設定されることが考えられる。
【0046】
そして、チェック区分マスタには、図3に例示されるように、チェック区分ごとに、請求先(発注元)に関する情報(例えば、請求先の会社名)、改訂日に関する情報(例えば、改訂月)、利率(年利)に関する情報(例えば、乗算用の数値又はその百分率)、サイト基準に関する情報、支払先(発注先)に関する情報等が登録される。請求先(発注元)とは、受注に係る商品の請求先(発注元)である。支払先(発注先)とは、発注に係る商品の支払先(発注先)である。改訂日とは、チェック区分に対応する基準取引データに関する情報を登録した日付である。取引管理装置100が基準取引データを特定するように構成されている場合には、改訂日を自動的に更新するようにしてもよい。利率(年利)とは、一般的には、発注に係る商品についての発注金額の支払いまでに要する期間(以下、「支払サイト」ともいう)と、受注に商品についての受注金額の回収までに要する期間(以下、「回収サイト」ともいう)との差分において生じ得る金利の1年(365日)あたりの利率であり、支払サイトが回収サイトを上回る場合、金利はマイナスで計上され、支払サイトが回収サイトを下回る場合、金利はプラスで計上される。支払サイトは、具体的には、支払予定日から、仕入予定日(直送による納品の場合は売上予定日)を差し引くことで算出される期間である。回収サイトは、具体的には、回収予定日から売上予定日を差し引くことで算出される期間である。なお、支払予定日、仕入予定日、売上予定日、回収予定日は、過去の取引においては、それぞれ、支払日、仕入日、売上日、回収日として管理される。サイト基準とは、基準取引データにおける支払サイトが示す期間である。
【0047】
上述したようにして、ステップS201のマスタの設定又はメンテナンスが完了した状態となる。以下では、チェック区分マスタにおいて、チェック区分「前回取引」が選択されている場合を例に挙げて説明する。
【0048】
次に、ステップS202では、新規の取引データの入力がなされるのを待機する。ステップS202の判別は、例えば図示しない取引入力画面が起動されるかどうかによって行われる。新規の取引データの入力がなされない場合には(ステップS202でNo)、ステップS201に戻って、マスタの設定若しくはメンテナンス又は新規の取引データの入力を待機する。
【0049】
新規の取引データの入力がなされる場合には(ステップS202でYes)、一対の受注データと発注データを受け付ける(ステップS203,S204)。一対の受注データは、取引入力画面において、まず、受注データを受け付けた後、発注データの受け付けるように構成されていることが好ましい。なお、取引データは、受注データと発注データとを統合したデータであってもよい。
【0050】
図4は、図2のステップS203~S204で受け付けがなされる一対の受注データ及び発注データの例を模式的に示す図であり、図4(a)は、受注データの例を、図4(b)は、発注データの例を示す図である。
【0051】
図4(a)に示す受注データは、商品に関する情報、請求先(発注元)に関する情報、受注日に関する情報、受注金額に関する情報といった通常の受注データに含まれる情報を含み、さらに、回収サイトに関する情報を含む。回収サイトは、請求先との取り決めによって定まっている場合には、その期間を示す日数が入力される。他方で、回収サイトは自動的に計算されるように構成されていてもよい。この場合、受注データは、図4(a)に示すように、回収予定日及び売上予定日に関する情報を含むことが好ましい。回収予定日は、例えば、受注に係る商品の受注金額についての請求先からの入金予定日である。売上予定日は、例えば、受注に係る商品の納品予定日である。売上予定日として、後述する発注データに含まれる売上予定日が自動的に反映されるように構成されることが好ましい。
【0052】
図4(b)に示す発注データは、商品に関する情報、支払先(発注先)に関する情報、発注日に関する情報、発注金額に関する情報といった通常の発注データに含まれる情報を含み、さらに、支払サイトに関する情報を含む。支払サイトは、支払先との取り決めによって定まっている場合には、その期間を示す日数が入力される。他方で、支払サイトは自動的に計算されるように構成されていてもよい。この場合、発注データは、図4(b)に示すように、支払予定日及び売上予定日に関する情報を含むことが好ましい。支払予定日は、例えば、発注に係る商品の発注金額についての支払先への入金予定日(自社にとっては出金予定日)である。売上予定日は、例えば、発注に係る商品の仕入予定日であり、発注に係る商品を請求先(発注元)へ直接発送する場合には、納品予定日としてもよい。発注データにおける商品に関する情報及び発注日に関する情報は、対応する受注データにおける商品に関する情報及び発注日に関する情報がデフォルトで反映されるように構成されていることが好ましい。
【0053】
そして、一対の受注データ及び発注データ(新規取引データ)を受け付けると、基準取引データの読出しを行う(ステップS205)。基準取引データは、受け付けた新規取引データの商品と同一の商品についての基準取引データである。チェック区分マスタにおいて、チェック区分「前回取引」が選択されている場合は、基準取引データとして、読み出し可能な取引データから直近の取引データが抽出される。直近の取引データの抽出に先立って、チェック区分マスタに登録されているサイト基準に関する情報や支払先に関する情報を読みだして、後述するステップS206の差分情報の取得に要する一部の処理を並行して進めることが好ましい。
【0054】
ステップS205の基準取引データの抽出を、図面を用いて説明する。図5は、図2のステップS205において基準取引データの読出しに際し参照される取引データテーブルの例を模式的に示す図であり、図5(a)は、受注データテーブルを示し、図5(b)は、発注データテーブルを示す図である。図6は、図2のステップS205の結果抽出された基準取引データの例を模式的に示す図であり、図6(a)は、基準取引データに含まれる受注データを示し、図6(b)は、基準取引データに含まれる発注データを示す図である。ステップS205の処理では、まず、図5に示したような取引データテーブルを読み出し、次いで、直近の取引データを特定することにより、基準取引データ(図6に示す例では、受注日「YYYY/4/15」の受注データ及び発注日「YYYY/4/15」の発注データ)が定まることとなる。
【0055】
続くステップS206では、差分情報の取得を行う。差分情報の取得は、具体的には、ステップS203~S205で入力された新規取引データと、ステップS205で読出した基準取引データとを対比することによって行われる。差分情報の例としては、以下に説明する支払サイト差分情報、ネット粗利差分情報、金利差分情報が挙げられる。
【0056】
ここで、差分情報は、少なくとも、支払サイトの差分又は大小関係に関する支払サイト差分情報を含むことが好ましい。支払サイト差分情報は、基準取引データに含まれる支払サイトと、新規取引データに含まれる発注データの支払サイトとを対比することで取得される。これに代えて、チェック区分マスタに登録されているサイト基準と、新規取引データに含まれる発注データの支払サイトとを対比することで取得されてもよい。
【0057】
また、差分情報は、ネット粗利(正味の粗利)の差分又は大小関係に関するネット粗利差分情報を含むことが好ましい。ここで、ネット粗利は、通常、受注金額から発注金額を差し引くことで算出される売上粗利から、諸掛費用を差し引き、さらに、金利を差し引くことで算出できる。しかしながら、新規取引データの入力段階においては諸掛費用を見積もることが困難である場合も少なくない。そこで、本実施形態では、ネット粗利を、売上粗利から金利を差し引くことで見積もることとする。すなわち、本実施形態においては、ネット粗利差分情報は、諸掛費用を除いたネット粗利の差分又は大小関係に関する情報である。ネット粗利差分情報は、基準取引データから算出されるネット粗利と、新規取引データから算出されるネット粗利とを対比することで取得される。なお、諸掛費用を見積もることができる場合には、諸掛費用を考慮してネット粗利差分情報を取得することが好ましい。
【0058】
また、差分情報は、1取引あたりの金利の差分又は大小関係に関する金利差分情報を含むことも好ましい。ここで、金利は、取引金額に対して、期間に応じた1日当たりの利率(年利)が示す数値を乗じることによって算出される。期間は、回収サイトから支払サイトを差し引くことで算出される。1日当たりの利率(年利)が示す数値とは、利率(年利)が示す数値の365日に対する商である。金利は、回収サイトが支払サイトを下回る場合(すなわち、回収サイト-支払サイト>0の場合)、取引金額として仕入金額(すなわち発注金額)を用い、プラスの値として計上される(ネット粗利の算出に際してはマイナスで計上される)。演算プログラム上では、回収サイトが支払サイトと同じである場合(すなわち、回収サイト-支払サイト=0の場合)も同様に扱われる。他方で、回収サイトが支払サイトを上回る場合(すなわち、回収サイト-支払サイト<0の場合)、取引金額として売上金額(すなわち受注金額)を用い、マイナスの値として計上される(ネット粗利の算出に際してはプラスで計上される)。
【0059】
図7は、図2のステップS206で差分情報を取得するために用いられる金利及びネット粗利の計算ロジック例を説明するために用いられる図である。図7中、式(1)は、金利の算出のために用いられる期間を算出するために用いられる式である。式(2)及び式(3)は、金利の算出のために用いられる式であり、式(1)で算出された期間が正の値を示すか又は負の値を示すかによっていずれかの式が用いられる。式(4)は、売上粗利を算出するために用いられる式である。式(5)は、本実施形態において、諸掛費用を除いたネット粗利を算出するために用いられる式である。
【0060】
図8は、図6に示す基準取引データ(直近の取引データ)について、図7の計算ロジックを適用した場合の結果を説明するために用いられる図である。図9は、図4に示す新規取引データについて、図7の計算ロジックを適用した場合の結果を説明するために用いられる図である。図2のステップS206では、図8及び図9に示される結果を取得し、それら結果を対比することにより、差分情報としてのネット粗利差分情報や金利差分情報を取得することができる。
【0061】
続いて、ステップS207では、キャッシュフロー(C/F)が悪化するかどうかを判別する。具体的には、ステップS206で取得した差分情報が、基準取引データに比べてキャッシュフローの相対的な悪化を示す相対悪化情報であるかどうかを判別する。例えば、支払サイト差分情報が、新規取引データの方が基準取引データよりも支払サイトが小さいことを示す場合、キャッシュフローの相対的な悪化を示すと判別できる。これは、支払サイトが相対的に短期間化することにより、早期に発注金額の支払いを済ませる必要があり、金利が高くなること、ネット粗利が低くなることが見込まれるからである。同様に、ネット粗利情報及び金利差分情報が、それぞれ、金利が高くなること、ネット粗利が低くなることを示す場合、キャッシュフローの相対的な悪化を示すと判別できる。
【0062】
ステップS207の判別の結果、キャッシュフロー(C/F)が悪化しないと判別された場合には(ステップS207でNo)、後述するステップS208~S211の処理(エラー情報出力に係る処理)をスキップして、本処理を完了する。したがって、ユーザは、エラー情報出力に係る処理がなされなかったことに基づき、新規取引時においてキャッシュフローに関する情報として基準取引データに比べてキャッシュフローが改善されたことを、手間を要することなく入手することができることとなる。
【0063】
他方、キャッシュフロー(C/F)が悪化すると判別された場合には(ステップS207でYes)、さらに、ステップS208において、発注先(支払先)が同一であるかどうかを判別する。具体的には、新規取引データに含まれる発注データの発注先(支払先)と、基準取引データに含まれる発注データの発注先(支払先)とが同一であるかどうかを判別する。これに代えて、新規取引データに含まれる発注データの発注先(支払先)と、チェック区分マスタに登録されている支払先(発注先)とが同一であるかどうかを判別してもよい。
【0064】
そして、ステップS208の判別の結果、発注先(支払先)が同一である場合には(ステップS208でYes)、ステップS209に進んで、エラー情報を出力する。ステップS209で出力されるエラー情報としては、「前回取引より支払サイトが早期化しています。よろしいですか?」といった警告メッセージの表示や、基準取引データに関する情報に含まれる支払サイトに関する情報(例えば、「前回支払サイト:90日です。」)や、基準取引データから算出されるネット粗利情報(例えば、「前回ネット粗利:200,205円です。」)若しくは金利情報(例えば、「前回金利:205円です。」)の表示、又はこれらの組み合わせた表示が挙げられる。これにより、ユーザは、新規取引データの入力段階において、キャッシュフロー(C/F)の改善を促されることとなる。具体例を挙げると、発注先への支払サイトの長期化(具体的には、支払いの先延ばし)の交渉、受注元への回収サイトの短期化(具体的には、入金の早期化)の交渉を検討に加えることができる。そして、ステップS210に進む。
【0065】
また、ステップS208の判別の結果、発注先(支払先)が同一でない場合には(ステップS208でNo)、ステップS211に進んで、エラー情報を出力する。ステップS211で出力されるエラー情報は、他の発注先に関する情報を含む。好ましくは、ステップS211で出力されるエラー情報は、ステップS209で出力されるエラー情報と、他の発注先に関する情報とを含む。他の発注先に関する情報は、チェック区分マスタに登録されている支払先(発注先)に関する情報から取得してもよいし、基準取引データに含まれる発注データの支払先(発注先)に関する情報から取得してもよい。他の発注先に関する情報として、例えば、「前回取引先:B社です。」)が表示される。これにより、ユーザは、新規取引データの入力段階において、キャッシュフロー(C/F)の改善を促されることとなる。具体例を挙げると、発注先の変更、発注先への支払サイトの長期化(具体的には、支払予定日の先延ばし)の交渉、受注元への回収サイトの短期化(具体的には、入金の早期化)の交渉を検討に加えることができる。そして、ステップS210に進む。
【0066】
エラー情報の出力がなされた後のステップS210において、取引データの更新がなされたかどうかを判別する。具体的には、ユーザがステップS205~S206で入力した受注データ及び発注データのいずれかにおいて、入力事項を変更したかどうかを判別する。そして、取引データの更新がなされた場合には(ステップS210でYes)、再度、差分情報を取得すべく、ステップS205に戻る。他方、取引データの更新がなされない場合、例えばユーザにとって受け入れ可能なキャッシュフローであった場合には(ステップS210でNo)、本処理を完了する。
【0067】
ここで、図2の処理の流れの具体例を、図面を用いて説明する。
【0068】
第1の具体例は、図4に示したような新規取引データが入力された場合である(ステップS203~S205)。図4に示す新規取引データと、図6に示した基準取引データとが対比され、差分情報が取得される。支払サイト差分情報の取得のために、基準取引データの支払サイト「90日」と新規取引データの支払サイト「120日」とが対比される。これにより、支払サイト差分情報として「+30日」が得られる。これは、新規取引データの支払サイトが基準取引データの支払サイトに比べて長期化していることを示し、それゆえ、キャッシュフロー(C/F)の悪化は見込まれない。このことは、基準取引データについて、金利及びネット粗利を計算した結果(図8参照)と、図4に示した新規取引データについて、金利及びネット粗利を計算した結果(図9参照)とを比較することでより明らかとなる。そのため、エラー情報出力処理(ステップS208~S211)はスキップされる。
【0069】
第2の具体例は、新規取引データとして、図10に示すような新規取引データ(図4に示した新規取引データとは別のデータ)が入力された場合である(ステップS203~S205)。支払サイト差分情報の取得のために、基準取引データの支払サイト「90日」と、図10に示す新規取引データの支払サイト「60日」とが対比される。これにより、支払サイト差分情報として「-30日」が得られる。これは、新規取引データの支払サイトが基準取引データの支払サイトに比べて短期化していることを示し、それゆえ、キャッシュフロー(C/F)の悪化が見込まれることとなる。このことは、基準取引データについて、金利及びネット粗利を計算した結果(図8参照)と、図10に示した新規取引データについて、金利及びネット粗利を計算した結果(図11参照)とを比較することでより明らかとなる。そのため、エラー情報出力処理(ステップS208~S211)が実行される。
【0070】
第3の具体例は、新規取引データとして、図12に示すような新規取引データ(図4図10に示した新規取引データとは別のデータ)が入力された場合である(ステップS203~S205)。支払サイト差分情報の取得のために、基準取引データの支払サイト「90日」と、図12に示す新規取引データの支払サイト「60日」とが対比される。これにより、支払サイト差分情報として「-30日」が得られる。これは、新規取引データの支払サイトが基準取引データの支払サイトに比べて短期化していることを示し、それゆえ、キャッシュフロー(C/F)の悪化が見込まれることとなる。このことは、基準取引データについて、金利及びネット粗利を計算した結果(図8参照)と、図12に示した新規取引データについて、金利及びネット粗利を計算した結果(図13参照)とを比較することでより明らかとなる。また、基準取引データの支払先「B社」と、図12に示す新規取引データの支払先「C社」とを比較すると、両者が異なることが分かる。そのため、エラー情報出力処理においては、ステップS211にて他の支払先(発注先)として、基準取引データの「B社」が提示されることとなる。これにより、ユーザは、支払サイトが60日のC社へ発注するよりも、支払サイトが90日のB社へ発注することで、又は、C社へB社の支払サイトよりも長期化した支払サイトとなるよう交渉することで、キャッシュフローの悪化を防ぐことができることを把握することができる。
【0071】
以上詳細に説明したように、図2に示した取引管理方法の処理手順によれば、受注した商品を発注して納品する取引を管理するに際し、取引管理装置100は、ある商品について入力された新規取引データと、前記ある商品と同一の商品についての予め設定された基準となる基準取引データとを対比して、前記新規取引データの入力時における当該新規取引データの前記基準取引データに対する差分又は大小関係に関する差分情報を生成する(ステップS206)(差分情報生成手段)。これにより、ユーザは、新規取引時においてキャッシュフローに関する情報を、手間を要することなく取引管理装置100から入手することができるようになる。その結果、ユーザは、キャッシュフローに関する情報に基づき、新規取引の変更の要否を検討することができる。
【0072】
ここで、前記差分情報が、発注した商品についての発注先への支払予定日から、当該商品の仕入予定日又は当該商品の取引の売上計上日を差し引いた期間を示す支払サイトの差分又は大小関係に関する情報を含むことが好ましい。これにより、キャッシュフローが基準取引データに比べて相対的に悪化するかどうかを見込むことができる。また、前記差分情報が、諸掛費用を除いたネット粗利の差分又は大小関係に関する情報を含むことも好ましい。キャッシュフローが基準取引データに比べて相対的に悪化するかどうかをより的確に把握することができる。また、前記差分情報が、1取引あたりの金利の差分又は大小関係に関する情報を含むことも好ましい。キャッシュフローが基準取引データに比べて相対的に悪化するかどうかをより的確に把握することができる。
【0073】
また、図2の処理によれば、前記差分情報が、前記基準取引データに比べてキャッシュフローの相対的な悪化を示す相対悪化情報である場合には、エラー情報が出力される(ステップS209,S211)(エラー情報出力手段)。さらに、前記差分情報が前記相対悪化情報である場合、他の発注先に関する情報を含むエラー情報が出力される。これらにより、ユーザは、新規取引時においてキャッシュフローが基準取引データに比べて相対的に悪化することに関する情報を、手間を要することなく入手することができるようになる。その結果、ユーザは、キャッシュフローに関する情報に基づき、新規取引の変更を検討することができる。
【0074】
さらに、図2の処理によれば、チェック区分マスタにおいてチェック区分を選択することにより前記基準取引データを変更できる。ここで、前記基準取引データが、読出し可能な取引データのうち、直近の取引データであってもよいし、読出し可能な取引データに基づき算出された平均的な取引に関する取引データであってもよいし、デフォルトで設定された取引データであってもよい。このように基準取引データを変更できるので、取引状態に応じて基準取引データを設定することが可能となる。なお、チェック区分マスタにおいてチェック区分を設けることなく、一の基準取引データを設定してもよい。
【0075】
なお、上述した説明では、取引データが、一対の受注データと発注データとで構成される場合を例に挙げたが、受注データと発注データとが統合された受発注データであってもよい。また、受注データを複数に分けて受注データごとに異なる発注先を設定した発注データを紐付けるようにしてもよい。
【0076】
また、上述した説明では、実際に生じる取引に応じて新規取引データの入力が行われる場合を想定したが、仮想的な取引に応じた新規取引データを入力してシミュレーションを行う場合にも適用可能である。
【0077】
[3.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0078】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0080】
[4.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0081】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0082】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0083】
また、取引管理装置100及び取引管理システム1000に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0084】
例えば、取引管理装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて取引管理装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0085】
また、このコンピュータプログラムは、取引管理装置100に対して任意のネットワーク(例えばネットワーク300)を介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0086】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。したがって、本明細書で説明した処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体もまた本発明を構成することとなる。
【0087】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0088】
記憶部106に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、及び、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0089】
また、取引管理装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、取引管理装置100は、当該装置に本明細書で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0090】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、受注した商品を発注して納品する取引(例えば商社や卸売業における取引形態)を管理する際において有用である。
【符号の説明】
【0092】
100 取引管理装置
102 制御部
102a 差分情報生成部
102b エラー情報出力部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a チェック区分マスタ
106b 取引データ記憶領域
106c 差分情報記憶領域
106d エラー情報記憶領域
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ
300 ネットワーク
1000 取引管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13