(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】雪止め金具、それを用いた施工構造および施工方法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/10 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
E04D13/10 B
(21)【出願番号】P 2021128366
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】服部 貴志
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-003074(JP,A)
【文献】特開2016-166477(JP,A)
【文献】特開平10-115061(JP,A)
【文献】登録実用新案第3114342(JP,U)
【文献】特開2011-179253(JP,A)
【文献】特開平10-131401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00- 3/40
E04D 13/00-15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒棟方向に施工された既設屋根材の表面側を覆うカバー屋根材に設置する雪止め金具であって、
前記既設屋根材は、棟側の既設屋根材の軒側端を軒側の既設屋根材の棟側端に重ね軒棟方向に連続するようずらして屋根葺きされ、
前記カバー屋根材は、前記既設屋根材の軒側端部で折り返されて前記既設屋根材の裏面側まで延設された軒側挿入片を備え
てなり、
前記雪止め金具は、
前記雪止め金具を設置するカバー屋根材の前記軒側挿入片と1つ軒側の前記カバー屋根材の間に差し込まれる固定片と、
前記カバー屋根材に設置された際に、前記固定片より軒側に位置する
、前記固定片よりも高さ形状が高い立上部とを含み、
前記固定片は、
前記固定片から上方に突設され、前記軒側挿入片と前記既設屋根材の裏面側との間に挿入されて係止される係止部を含む、雪止め金具。
【請求項2】
前記雪止め金具が前記カバー屋根材に設置された際に、
前記係止部は、前記軒側挿入片を内包する内包部と、前記既設屋根材の裏面側へ突出する突出部と、を含む、請求項1に記載の雪止め金具。
【請求項3】
前記カバー屋根材の前記軒側挿入片を前記既設屋根材の軒側から挿入して前記既設屋根材を覆うように施工され、軒棟方向に連続する2つの前記カバー屋根材において、軒側のカバー屋根材の棟側端は、前記棟側のカバー屋根材の前記軒側挿入片の棟側端よりも棟側まで伸びている第1の場合、または、伸びていない第2の場合があり、
前記固定片の裏面は
、前記第1の場合には軒側の前記カバー屋根材
、または
、前記第2の場合には軒側の前記既設屋根材の表面に当接し、
前記突出部は、
棟側の前記既設屋根材の裏面と当接する、請求項2に記載の雪止め金具。
【請求項4】
前記係止部は、前記固定片から棟側以外が切り出され、前記切り出されていない棟側を谷折りに折り曲げて、前記立上部が立ち上がる方向と同じ上方へ前記固定片のうちの前記係止部以外の部分から離れるように突出され、
前記固定片のうちの前記係止部以外の部分から離れるように突出された部位の裏面側と前記固定片との間に前記内包部が形成され、前記部位の表面側で前記突出部が形成される、請求項2または請求項3に記載の雪止め金具。
【請求項5】
1の前記雪止め金具に対して、複数の前記係止部が設けられている、請求項1~請求項4のいずれかに記載の雪止め金具。
【請求項6】
前記固定片に、前記雪止め金具が前記カバー屋根材に設置される際の目印が設けられている、請求項1~請求項5のいずれかに記載の雪止め金具。
【請求項7】
前記目印は、前記固定片を補強するリブである、請求項6に記載の雪止め金具。
【請求項8】
前記立上部が立ち上がる方向を上にして前記雪止め金具を平面に載置してその上方から見た平面視で、
前記固定片の棟側は、中心から両端に向かって傾斜するように山型に形成されている、請求項1~請求項7のいずれかに記載の雪止め金具。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれかに記載の雪止め金具を、既設屋根材の表面側を覆うカバー屋根材に設置した施工構造。
【請求項10】
請求項1~請求項8のいずれかに記載の雪止め金具を、既設屋根材の表面側を覆うカバー屋根材に設置する施工方法であって、
前記雪止め金具の固定片の裏側に接着剤を塗布し、
前記接着剤が塗布された固定片を、1つ軒側の前記カバー屋根材と前記軒側挿入片との間に前記係止部の軒側端部が前記軒側挿入片の棟側端部より棟側まで位置するよう軒側から差し込んだ後に、軒側に引き戻して、前記軒側挿入片と前記既設屋根材の裏面側との間に前記係止部を挿入する、雪止め金具の施工方法。
【請求項11】
前記雪止め金具の前記固定片に、前記雪止め金具が前記カバー屋根材に設置される際の目印が設けられ、
前記接着剤が塗布された固定片を、前記目印が前記カバー屋根材で覆われて見えなくなるまで差し込んだ後に、前記目印が前記カバー屋根材から見える位置まで引き戻して、前記軒側挿入片と前記既設屋根材の裏面側との間に前記係止部を挿入する、請求項10に記載の雪止め金具の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積雪地域などにおいて、屋根に取り付けて使用される雪止め金具に関し、特に、既設屋根材等に穴を開けたり釘を打ち込むことなく、かつ、軒棟方向の長さを抑えて薄い板厚であっても強度を確保できるとともに防水性の低下を抑制することができ、安定して強固に既設屋根材等に固定することのできる雪止め金具、それを用いた施工構造および施工方法に関する。なお、本発明に係る雪止め金具が施工されて取り付けられる屋根材等には、既設屋根材の表面側を覆うカバー屋根材を含む。このようなカバー屋根材の一例として、本願出願人を含めて出願された特開2021-017709号公報に開示された既設屋根の改修用屋根材がある。
【背景技術】
【0002】
雪国など積雪地域では、屋根上に積もった雪が軒先から滑り落ちることを防止するために、屋根の上に雪止め具を取り付けることが行なわれている。 このような雪止め金具を既設の瓦屋根に施工する場合、上方の瓦の引き起し量は、瓦の整合性が損なわれない程度に抑えられていることから、任意の瓦との間に形成された小さな空間に雪止め金具の基板を差し込むと、係止片が瓦を固定する釘の頭部に干渉し、円滑に差し込むことができないという問題点があった。一方、このような釘を用いないで既設の瓦屋根に雪止め金具を施工する場合は基板の係止片を瓦の棟側端縁に係合させるだけであり、確実に係合していない場合には脱落する可能性があるという問題点があった。
【0003】
特開平10-102704号公報(特許文献1)は、これら2つの問題点を解決する雪止め金具を開示する。この特許文献1に開示された雪止め金具は、瓦に載置可能な基板と、この基板の前端に固着されて積雪の滑落に抵抗する雪止め板と、からなり、前記基板の後端には、瓦の棟側端縁に係合可能な係止片が形成され、また、係止片には、瓦を固定する釘の頭部との干渉を回避する切欠部が形成されていることを特徴とする。ところが、この特許文献1に開示された雪止め金具は、ドリルで瓦に穴を開けて釘を打ち込むことにより雪止め金具を瓦ごと野地板に固定するために、手間がかかる上、屋根材等が粉砕された際に塵が発生するという問題点がある。
【0004】
特開2011-179253号公報(特許文献2)は、このような釘等を用いないで既設屋根材に施工することのできる雪止め金具を開示する。この特許文献2に開示された雪止め金具は、屋根面に対して立設状態に配される雪止め部に、屋根の野地板若しくは屋根板に取付する取付板部を設け、この取付板部の先端部に、下方へ下がる段差部を形成してこの段差部より先端側を前記野地板に重合取付し得る段差取付面部に形成すると共に、この段差取付面部に釘孔を形成し、前記段差部に切り出し縁を形成し、この切り出し縁を介して段差部から下方へ切り出されて取付板部の基端側へと突出する切り出し片部を前記段差取付面部と連設状態に設け、この切り出し片部と前記取付板部との間に前記屋根板を挿入する挿入用間隙を形成して、この挿入用間隙に屋根板を挿入することで屋根板に前記切り出し片部を引っ掛けし得るように構成した雪止め金具において、前記段差取付面部の上面に、この段差取付面部より上方へ突出する突起部を設け、この突起部は、段差取付面部の先端側が低く、基端側に向かうにしたがって徐々に突出高さが増す形状に形成したことを特徴とする。この特許文献2に開示された雪止め金具によると、既設屋根材に施工する場合に屋根板の重合部を人為的に広げるような手間は不要で、重合部に段差取付面部を差し込むと、突起部により屋根板の重合部が押し広げられて段差部が引っ掛からずに差し込まれるので、既設屋根材への施工作業が非常に容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-102704号公報
【文献】特開2011-179253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された雪止め具は釘等を用いないために、特許文献1に開示された雪止め金具のような施工作業に手間がかかる上に屋根材等が粉砕された際に塵が発生するという問題点は解決されるものの、以下の問題点がある。特許文献2に開示された雪止め金具は、その一部を既設屋根材の隙間に差し込み、切り出し片部を下側(軒側)の屋根材の棟側端部に引っ掛けて施工するので、引っ掛け部分と雪を止める立上部との距離(雪止め金具の軒棟方向の長さ)が長くなるために、板厚を厚くして強度を確保する必要があることに加えて、上下(軒側棟側)重なる屋根材どうしの隙間が大きくなり防水性が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、既設屋根材等に穴を開けたり釘を打ち込むことなく、かつ、軒棟方向の長さを抑えて薄い板厚であっても強度を確保できるとともに防水性の低下を抑制することができ、安定して強固に既設屋根材等に固定することのできる雪止め金具、それを用いた施工構造および施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る雪止め金具、それを用いた施工構造および施工方法は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のある局面に係る雪止め金具は、既設屋根材の表面側を覆うカバー屋根材に設置する雪止め金具であって、前記カバー屋根材は、前記既設屋根材の軒側端部で折り返されて前記既設屋根材の裏面側まで延設された軒側挿入片を備え、固定片と、前記カバー屋根材に設置された際に、前記固定片より軒側に位置する立上部とを含み、前記固定片は、前記軒側挿入片と前記既設屋根材の裏面側との間に挿入されて係止される係止部を含む。
【0009】
好ましくは、前記雪止め金具が前記カバー屋根材に設置された際に、前記係止部は、前記軒側挿入片を内包する内包部と、前記既設屋根材の裏面側へ突出する突出部と、を含むように構成することができる。
さらに好ましくは、前記固定片の裏面は、1つ軒側の前記カバー屋根材または1つ軒側の前記既設屋根材の表面に当接し、前記突出部は、前記既設屋根材の裏面と当接するように構成することができる。
【0010】
さらに好ましくは、前記係止部は、前記固定片から棟側以外が切り出され、前記切り出されていない棟側を谷折りに折り曲げて、前記立上部が立ち上がる方向と同じ上方へ前記固定片のうちの前記係止部以外の部分から離れるように突出され、前記固定片のうちの前記係止部以外の部分から離れるように突出された部位の裏面側と前記固定片との間に前記内包部が形成され、前記部位の表面側で前記突出部が形成されるように構成することができる。
【0011】
さらに好ましくは、1の前記雪止め金具に対して、複数の前記係止部が設けられているように構成することができる。
さらに好ましくは、前記固定片に、前記雪止め金具が前記カバー屋根材に設置される際の目印が設けられているように構成することができる。ここで、前記目印は、前記固定片を補強するリブであるように構成することができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記立上部が立ち上がる方向を上にして前記雪止め金具を平面に載置してその上方から見た平面視で、前記固定片の棟側は、中心から両端に向かって傾斜するように山型に形成されているように構成することができる。
また、本発明の別の局面に係る雪止め金具の施工構造は、上述したいずれかの雪止め金具を、既設屋根材の表面側を覆うカバー屋根材に設置した施工構造である。
【0013】
また、本発明のさらに別の局面に係る雪止め金具の施工方法は、上述したいずれかの雪止め金具を、既設屋根材の表面側を覆うカバー屋根材に設置する施工方法であって、前記雪止め金具の固定片の裏側に接着剤を塗布し、前記接着剤が塗布された固定片を、1つ軒側の前記カバー屋根材と前記軒側挿入片との間に前記係止部の軒側端部が前記軒側挿入片の棟側端部より棟側まで位置するよう軒側から差し込んだ後に、軒側に引き戻して、前記軒側挿入片と前記既設屋根材の裏面側との間に前記係止部を挿入する。
【0014】
好ましくは、前記雪止め金具の前記固定片に、前記雪止め金具が前記カバー屋根材に設置される際の目印が設けられ、前記接着剤が塗布された固定片を、前記目印が前記カバー屋根材で覆われて見えなくなるまで差し込んだ後に、前記目印が前記カバー屋根材から見える位置まで引き戻して、前記軒側挿入片と前記既設屋根材の裏面側との間に前記係止部を挿入するように構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、既設屋根材等に穴を開けたり釘を打ち込むことなく、かつ、軒棟方向の長さを抑えて薄い板厚であっても強度を確保できるとともに防水性の低下を抑制することができ、安定して強固に既設屋根材等に固定することのできる雪止め金具、それを用いた施工構造および施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る雪止め金具100の斜視図である。
【
図2】
図1に示す雪止め金具100の(A)上面図(平面図)、(B)側面図、(C)2C-2C断面図である。
【
図3】
図2に示す2部材で構成される雪止め金具100と異なり1部材で構成される雪止め金具200の側面図である。
【
図4】カバー屋根材に設置された雪止め金具100の施工構造を説明するための図(その1)である。
【
図5】カバー屋根材に設置された雪止め金具100の施工構造を説明するための図(その2)である。
【
図6】カバー屋根材に設置する雪止め金具100の施工方法を説明するための図(その1)である。
【
図7】カバー屋根材に設置する雪止め金具100の施工方法を説明するための図(その2)である。
【
図8】カバー屋根材に設置する雪止め金具100の施工方法を説明するための図(その3)である。
【
図9】カバー屋根材に設置する雪止め金具100の施工方法において用いられる接着剤塗布ノズルの形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る雪止め金具、それを用いた施工構造および施工方法を、図面に基づき詳しく説明する。
まず、
図1~
図3を参照して本実施の形態に係る雪止め金具100の構造について説明して、その後に、
図4~
図5を参照して本実施の形態に係る雪止め金具100の施工構造について説明して、さらにその後に、
図6~
図9を参照して本実施の形態に係る雪止め金具100の施工方法について説明する。
【0018】
なお、本実施の形態に係る雪止め金具には、
図1~
図2に示す2部材構成からなる雪止め金具100と、
図3に示す1部材構成からなる雪止め金具200とがある。これらの雪止め金具100と雪止め金具200では、部材数が異なるのみでその他の構成および作用効果は同じであり対応する構成については同じ符号を付しているために、雪止め金具100を代表させて説明して、雪止め金具200について同じ構成および同じ作用効果は繰り返さない場合がある。
【0019】
また、本実施の形態に係る雪止め金具100は、
図4等に示すように既設屋根材1000の表面側を覆うカバー屋根材1010に設置される。このカバー屋根材1010は、既設屋根材1000の軒側端部で折り返されて既設屋根材1000の裏面側まで延設された軒側挿入片1010Hを備える。このようなカバー屋根材1010の一例として、上述したように、特開2021-017709号公報に開示された既設屋根の改修用屋根材がある。
図4(B)に示すように、一例ではあるが、このカバー屋根材1010は、棟側差し込み部(図示せず)と化粧面部1010Aと軒側折り返し部(後述する)とが一体的に形成され、化粧面部1010Aに流水制御手段(谷折り線1010B1と棟側の第1斜面1010C1と山折り線1010B2と軒側の第2斜面1010C2との組み合わせを少なくとも1組は備えて第1斜面1010C1の棟側に形成される谷折り線1010B1で流水制御)が形成されていてもよい。軒側折り返し部は、第2斜面1010C2から略90度折れ曲がる第1屈曲部1010Dと、第1屈曲部1010Dから延設された垂直部1010Eと、垂直部1010Eからこのカバー屋根材1010の裏面側へ略90度折れ曲がる第2屈曲部1010Fと、第2屈曲部1010Fから延設された軒側差し込み部1010Gと、軒側差し込み部1010Gの棟側端部で上方(表面)側へ折り返されてヘミング加工された軒側挿入片1010Hとを備える。
【0020】
<雪止め金具の構造>
図1に示すこの雪止め金具100の斜視図、
図2に示すこの雪止め金具100の2面図および
図4に示すカバー屋根材1010に設置されたこの雪止め金具100の施工構造を参照して、本実施の形態に係る雪止め金具100の構造について詳しく説明する。なお、これらの図に示すように、この雪止め金具100は、軒棟方向の長さを抑えてあるために(特に、特許文献2に開示された雪止め金具に比較して軒棟方向の長さを抑えてあるために)、薄い板厚であっても強度を確保できるとともに(後述するようにリブを設けてさらに高い強度を確保できるとともに)防水性の低下を抑制できる点で好ましい。
【0021】
この雪止め金具100は、固定片110と、カバー屋根材1010に設置された際に、固定片110より軒側に位置する立上部120と、さらに固定片110と立上部120との間に位置する連結部130とを備える。そして、特徴的であるのは、固定片110は、カバー屋根材1010の軒側挿入片1010Hと既設屋根材1000の裏面側との間に挿入されて係止される係止部114を含む。
【0022】
このように、係止部114が、カバー屋根材1010の軒側挿入片1010Hと既設屋根材1000の裏面側との間に挿入されて、固定片110が係止されることにより、既設屋根材等(ここでは既設屋根材1000およびカバー屋根材1010)に穴を開けたり釘を打ち込むことなく雪止め金具100を既設屋根材等(ここではカバー屋根材1010)に設置することができる。また、連結部130は必ずしも必須の構成ではないが、連結部130を備えることで、立上部120の形状は、固定片110の形状(本実施の形態においては横長形状)に影響されることなく、立上部120の既存の形状を含め自由に設計することができる。なお、以下においては、特に限定しない限り、屋根材等および既設屋根材等とは、既設屋根材1000およびカバー屋根材1010を含むものとして説明する。
【0023】
この雪止め金具100においては、雪止め金具100がカバー屋根材1010に設置された際に、上述した係止部114は、カバー屋根材1010の軒側挿入片1010Hを内包する内包部114Fと、既設屋根材1000の裏面側へ突出する突出部114BD(第1斜面114B、山折り線114Cおよび第2斜面114D)と、を含む。なお、
図1の斜視図においては、他の図と比較して、本発明をより容易に理解するために、第2斜面114Dの軒棟方向の長さを強調して長く描いている。
【0024】
さらに、この雪止め金具100においては、雪止め金具100がカバー屋根材1010に設置された際に、上述した固定片110の裏面(
図2(B)における下側の面)は、1つ軒側のカバー屋根材1010(より詳しくは
図4(B)におけるカバー屋根材1013)または1つ軒側の既設屋根材1000(より詳しくは
図4(B)における既設屋根材1003)の表面(より詳しくは
図4(B)における上側)に当接し、突出部114BDは、既設屋根材(より詳しくは
図4(B)における既設屋根材1002)の裏面(より詳しくは
図4(B)における下側)と当接する。
【0025】
このように雪止め金具100が施工されることにより、屋根に固定されている既設屋根材1000(より詳しくは
図4(B)に示す既設屋根材1002)と1つ軒側のカバー屋根材1010(より詳しくは
図4(B)に示すカバー屋根材1013)または既設屋根材1000(より詳しくは
図4(B)に示す既設屋根材1003)とでサンドイッチ状にさらに強固にこの雪止め金具100を屋根材等に設置することができる。
【0026】
ここで、この雪止め金具100の固定片110が備える係止部114は、固定片110から棟側以外が切り出し線114Eで切り出され、切り出されていない棟側を谷折り線114Aで折り曲げて、立上部120が立ち上がる方向と同じ上方へ固定片110から離れるように突出されている。そして、固定片110から離れるように突出された部位の裏面側と固定片110との間に内包部114Fが形成され、この部位の表面側で突出部114BD(第1斜面114B、山折り線114Cおよび第2斜面114D)が形成されている。
【0027】
このような雪止め金具100の構造は、簡易な工作により実現することができるために、この雪止め金具100の製造コストを抑えることができる。さらに、このような雪止め金具100の構造であると、後述する施工方法において、切り出しによって上下方向(表裏方向)にできた隙間から接着剤が広がる(下側(裏側)に塗布した接着剤がその隙間から上側(表側)にも広がる)ために、この雪止め金具100を屋根材等に強固に接着することができる。なお、係止部114の形状はこのような形状(固定片110から切り出し線114Eで切り出されて棟側の谷折り線114Aで折り曲げて上方へ固定片110から離れるように突出された形状)に限定されるものではなく、固定片110の棟側端部を軒側かつ上側に折り返したような形状であっても構わない。たとえば、
図2(B)に示す側面視において、固定片110の棟側端部が略横U字形状に軒側へ折り返されていたり、略横V字形状に軒側へ折り返されていたりする形状が例示できる。また、係止部114の形状は、折り曲がった形状には限定されず、側面から見たときに直線の形状であってもよい。
【0028】
この雪止め金具100は、1つの雪止め金具100に対して、複数の係止部114(ここでは4個)が設けられている。ここで、固定片110は、このように複数の係止部114が設けられるために、立上部120(および連結部130)より幅広に形成されている(W(1)>W(2))。このように、複数の係止部114により屋根材等に係止されること(引っかかること)により、より安定して雪止め金具100を屋根材等に固定することができる。なお、係止部114の数は、4つには限定されず、例えば3つであってもよい。
【0029】
この雪止め金具100においては、固定片110に、雪止め金具100がカバー屋根材1010に設置される際の目印が設けられている。後述する施工方法において、この雪止め金具100の屋根材等への挿入時(
図8(A)に示す状態の時)および引き戻し時(係止時)(
図8(B)に示す状態の時)における雪止め金具100の位置合わせを容易に行うことができる。また、この目印の一例として、この雪止め金具100においては、リブ112Rが固定片110に設けられている。なお、目印としては、このようなリブ112Rではなく、基準線などを設けたり、色分けなどを施したりすることが挙げられる。
【0030】
このようにリブ112Rを固定片110に設けることにより、上述した
図8(A)および
図8(B)に示す状態の時における位置合わせの目印として機能したり、固定片110の強度を向上させるように機能したりすることに加えて、後述する施工方法において、このリブ112Rが接着剤塗布の目印として機能したり、余分な接着剤溜めとして機能したりすることができる。
【0031】
この雪止め金具100においては、立上部120が立ち上がる方向を上にして雪止め金具100を平面に載置してその上方から見た平面視(
図2(A))で、固定片110の棟側は、中心から両端に向かって傾斜するように山型に形成された頂点112Pを備える。この雪止め金具100において固定片110の棟側がこのような形状を備えることにより、固定片110の棟側に水が溜まるのを防止するように機能したり、後述する施工方法において、挿入準備時に山型の頂点112Pを位置合わせに用いて
図5に示す位置のカバー屋根材1010に雪止め金具100を挿入するための準備を容易に行うことができたり、挿入時(
図8(A)に示す状態の時)に平面視で固定片110が頂点112Pから傾斜しているために雪止め金具100をカバー屋根材1010に容易に挿入することができたりするので、施工性が向上するように機能したりすることができる。
【0032】
これらの
図1~
図2に示す雪止め金具100は、施工時においてカバー屋根材1010の軒側挿入片1010Hと既設屋根材1000の裏面側との間に挿入されて係止される係止部114により屋根に固定される固定片110(この固定片110の一部が連結部130でもある)と、逆V字形に形成される雪止め凸部を形成する逆V字形の立上部120(この立上部120の一部が連結部130でもある)との2部材で構成されている。そして、連結部130において、3重の板状物(固定片110側の1枚の連結片130Mと立上部120側の2枚の上側連結片120Uおよび下側連結片120D)を連結具134(たとえばリベット)で連結して雪止め金具100の全体形状を保持している。
【0033】
立上部120は、底面122と、底面122から延設された軒側の軒側傾斜面124と、軒側傾斜面124から延設された棟側の棟側傾斜面126と、底面122から延設され連結具134の挿入穴が開けられた下側連結片120Dと、棟側傾斜面126から延設され連結具134の挿入穴が開けられた上側連結片120Uとを備える。連結部130は、固定片110と一体的に構成され、立上部120側に連結具134の挿入穴が開けられた連結片130Mを備えるとともに、立上部120と固定片110との間の平面部132とを備え、その平面部132には、立上部120から固定片110への方向に沿って平行する2本のリブ132Rが設けられている。このリブ132Rも上述したリブ112Rと同じく、連結部130を補強する機能に加えて、後述する施工方法において、このリブ132Rが接着剤塗布の目印として機能したり、余分な接着剤溜めとして機能したりすることができる。なお、この連結部130の平面部132に設けられたリブ132Rも上述した固定片110の平面部112に設けられたリブ112Rも、断面視で略V字形状を備える。
【0034】
図2に示す雪止め金具100に対して、
図3に示す雪止め金具200は、固定片110と連続する平面で立上部120が延設されており、固定片110と立上部120とが1部材で構成されている。そして、連結部130において、2重の板状物(立上部120側の2枚の上側連結片120Uおよび下側連結片120D)を連結具(たとえばリベット)134で連結して雪止め金具200の全体形状を保持している。ここで、雪止め金具100(自体)の特徴については、雪止め金具200についても同じであって、その施工構造も施工方法も同じである。
【0035】
図2に示す2部材構成は、立上部120とそれ以外の固定片110および連結部130が別部材であるために別々に加工が可能であるために加工が容易である可能性を有する点で好ましく、
図3に示す1部材構成は、1つの部材であるために製造コストが低減できたり軽量化できたりする可能性を有する点で好ましい。
ここで、これらの雪止め金具100または雪止め金具200は、細長い矩形平板の金属板を切り出し加工、折曲加工、リブ形成加工および(連結具134を挿入するための)穴開け加工することによって形成され、連結具134で全体形状を保持している。これらの雪止め金具100または雪止め金具200を形成する金属板の材質、強度およびその材質の厚み等については、特に限定されるものではない。すなわち、上述した雪止め金具(自体の)構造上の特徴、後述する施工構造の特徴および施工方法の特徴を備え、これらの特徴に基づく作用効果を発現できるとともに、雪止め金具本来の作用効果である屋根上に積もった雪が軒先から滑り落ちることを防止することができる材質等であれば特に限定されるものではない。
【0036】
<雪止め金具の施工構造>
次に、
図4および
図5を参照して、このような特徴を備えた雪止め金具100または雪止め金具200の施工構造について説明する。ここで、
図1~
図3を用いた説明については、この施工構造において繰り返して説明しない場合がある。また、施工構造については雪止め金具100も雪止め金具200も共通するために、以下の施工構造についての説明においては雪止め金具100を代表させて説明する。なお、
図4および
図5においては、既設屋根材1000(たとえば既設化粧スレート)が金属製のカバー屋根材1010によりカバーされて改修された状態を示している。カバー屋根材1010の用途は、限定されるものではないが、主として改修用途である。
【0037】
また、
図4においては、屋根下地1100を記載するとともに、その屋根下地1100と既設屋根材1000との間の防水シート1200を記載して、既設屋根材1000を固定するビス1005を記載して、さらに、既設屋根材1000については、棟側から軒側へ向けて(ずらして)葺設されたことを明確にするために、1001、1002、1003、1004の符号をかっこ書きで付して、カバー屋根材1010については、棟側から軒側へ向けて(ずらして)葺設されたことを明確にするために、1011、1012、1013の符号をかっこ書きで付している。ここで、
図4(B)は、
図4(A)において矢示4Bで示した領域の拡大図である。
【0038】
なお、既設屋根材1000へのカバー屋根材1010の施工構造等については、上述した特開2021-017709号公報に開示された施工構造等に準ずる。
本実施の形態に係る雪止め金具の施工構造は、屋根材の表面に(より詳しくは
図4および
図5においては既設屋根材1000が金属製のカバー屋根材1010によりカバーされて改修された状態である屋根に)、雪止め金具100を固定した構造である。本実施の形態に係る施工構造においては、上述した構造を備える雪止め金具100を用いて、既設屋根材1000に設けられたカバー屋根材1010の軒側挿入片1010Hと既設屋根材1000の裏面側との間にこの雪止め金具100の固定片110の係止部114が挿入されて係止されて、雪止め金具100を屋根材等に固定することになる。
【0039】
より詳しくは、
図4(特に
図4(B)の拡大図)に示すように、この施工構造は、雪止め金具100の固定片110の裏面(
図2(B)における下側の面)は、1つ軒側のカバー屋根材1010(より詳しくは
図4(B)におけるカバー屋根材1013)における棟側端部の表面(より詳しくは
図4(B)における上側)または1つ軒側の既設屋根材1000(より詳しくは
図4(B)における既設屋根材1003)における軒棟方向の中程の表面(より詳しくは
図4(B)における上側)に当接し(ここではカバー屋根材1013における棟側端部の表面に当接しているがカバー屋根材1013の軒棟方向の長さが短い場合等には既設屋根材1003における軒棟方向の中程の表面に当接することもある)、突出部114BDは、既設屋根材(より詳しくは
図4(B)における既設屋根材1002)の裏面側(より詳しくは
図4(B)における下側)と当接している。そして、この雪止め金具100の固定片110の内包部114Fが、カバー屋根材1010の軒側挿入片1010Hを内包するようにして、すなわち、係止部114が、カバー屋根材1010の軒側挿入片1010Hと既設屋根材1000の裏面側との間に挿入されて、固定片110が係止されている。このようにして、既設屋根材等(ここでは既設屋根材1000およびカバー屋根材1010)に穴を開けたり釘を打ち込むことなく雪止め金具100を既設屋根材等(ここではカバー屋根材1010)に設置することができる。
【0040】
次に、既設屋根材1000が金属製のカバー屋根材1010によりカバーされて改修された場合の雪止め金具100の施工構造(特に取付位置)について、
図5を参照して説明する。
図5に示すように、既設屋根材1000が、幅寸法(桁方向寸法)が既設屋根材1000の整数倍(たとえば2倍)である金属製のカバー屋根材1010でカバーされており(既設屋根材1000の働き幅L(1)としてカバー屋根材1010の働き幅L(2)とするとたとえばL(2)=L(1)×2)、カバー屋根材1010どうしの端縁対向位置(軒棟方向に垂直な方向で対向する位置)が、たとえば既設屋根材1000の略中央に配置されている。このように既設屋根材1000にカバー屋根材1010が施工されている屋根において、カバー屋根材1010のジョイント部(カバー屋根材1010どうしの端縁対向位置)を起点として、既設屋根材1000の働き幅L(1)の半分(L(1)/2)の間隔で、かつ、軒棟方向に千鳥配置になる位置において、上述したように、係止部114が、カバー屋根材1010の軒側挿入片1010Hと既設屋根材1000の裏面側との間に挿入されて、固定片110が係止されることにより、雪止め金具100が屋根材等に固定される。この場合において、固定片110が、カバー屋根材1010のジョイント部(カバー屋根材1010どうしの端縁対向位置)に挿入されることになる位置(
図5に点線で示す雪止め金具の設置不可の位置)には雪止め金具100を設けることは、軒棟方向に垂直な方向におけるカバー屋根材1010の連続性が途切れているために、好ましくない。
【0041】
<雪止め金具の施工方法>
次に、
図6~
図9を参照して、上述した特徴を備えた雪止め金具100または雪止め金具200の施工方法について説明する。ここで、
図1~
図5を用いた説明については、この施工方法において繰り返して説明しない場合がある。以下に説明する施工方法を実行することにより、上述した施工構造を実現することができる。また、この施工方法についても、上述した施工構造と同様に、雪止め金具100も雪止め金具200も共通するために、以下の施工方法についての説明においても雪止め金具100を代表させて説明する。なお、
図7および
図8においても、
図4および
図5と同じく、既設屋根材1000(たとえば既設化粧スレート)が金属製のカバー屋根材1010によりカバーされて改修された状態を示している。
【0042】
・接着剤塗布ステップ
雪止め金具100の固定片110の裏側(裏面)の
図6に示す位置に接着剤を塗布することが好ましい。雪止め金具100の固定片110の裏側(裏面)に接着剤を塗布することにより、雪止め金具100を屋根材等により強固に係止することができる。なお、この
図6においては、固定片110の裏側(裏面)のみならず連結部130の裏側(裏面)にも接着剤を塗布している。ここで、固定片110の内包部114F以外の平面部112の裏側(裏面)へ接着剤を塗布することが好ましいが、固定片110の内包部114Fおよび連結部130の裏側(裏面)への接着剤の塗布は、必須ではない。また、雪止め金具100の裏側ではなく、1つ軒側のカバー屋根材1010(より詳しくは
図4(B)におけるカバー屋根材1013)の表側に接着剤を塗布することも可能である。カバー屋根材1013の表側に接着剤を塗布する場合、カバー屋根材1013の表側において雪止め金具100が取り付けられた時に、雪止め金具100と当接する部分(例えば、雪止め金具100の平面部132と対応する部分、即ち、カバー屋根材1013の表面のうち、棟側の屋根材1002及びカバー屋根材1012よりも軒側であって、これら棟側の屋根材1002及びカバー屋根材1012によって覆われていない部分)に接着剤を塗布しておいてもよい。なお、係止部114が雪止め金具100を屋根材等に強固に係止することができる場合、接着剤塗布ステップは必要ではない。
【0043】
・位置決めステップ
雪止め金具100の表裏を返して、
図5に示す位置であって、カバー屋根材1010の軒側先端に位置合わせする。このとき、平面視で固定片110が頂点112Pから傾斜しており、この雪止め金具100の山型の頂点112Pを位置合わせに用いることができるために施工性が向上する。
・挿入準備ステップ
カバー屋根材1010の軒側先端に雪止め金具100の固定片110を挿入する(差込む、押込む)ために準備する。このとき、
図7(B)に示すように雪止め金具100を屋根材等に対してその傾斜に沿って挿入するように準備すると(屋根材等の傾斜に平行に挿入しようと準備すると)、雪止め金具100の固定片110の裏面に塗布した接着剤(特に固定片110において最も立上部120とは逆側の開放側の裏面に塗布した接着剤S)がカバー屋根材1010を汚損する可能性がある。これを避けるために、
図7(A)に示すように、雪止め金具100を屋根材等の傾斜に対して角度α(deg)だけ傾けて(立てて)挿入するように準備すると、雪止め金具100の固定片110に塗布した接着剤(特に固定片110において最も立上部120の逆側の開放側の裏面に塗布した接着剤S)がカバー屋根材1010を汚損する可能性を回避することができる。また、この挿入ステップにおいて、カバー屋根材1010の軒側先端を必要に応じて(バール等の工具を用いて)持ち上げることにより、カバー屋根材1010の軒側先端に雪止め金具100の固定片110を挿入しやすい(差込みやすい、押込みやすい)ように準備することができる点で好ましい。
【0044】
・挿入ステップ
接着剤が塗布された固定片110を、
図8(A)の白抜き矢示で示すように、目印であるリブ112Rがカバー屋根材1010で覆われて見えなくなるまでカバー屋根材1010の軒側先端から挿入する。このとき、
図8(A)に示すように、雪止め金具100の固定片110における係止部114(より詳しくは第2斜面114Dの端部)が、カバー屋根材1010の軒側挿入片1010Hの棟側先端位置を越えて棟側に到達する。なお、
図8は挿入準備ステップの説明ではなく挿入ステップを説明するための図であるために、
図7(A)に示す角度α(deg)を考慮して記載していない。ここで、
図8(A)および
図8(B)においては、それぞれ
図4(B)に対応する拡大図を併せて示している。
【0045】
・引き戻しステップ
挿入ステップの後、カバー屋根材1010の軒側先端から挿入させた固定片110を、
図8(B)の黒塗り矢示で示すように、目印であるリブ112Rがカバー屋根材1010で覆われておらず見えるまでカバー屋根材1010の軒側先端から引き戻す。このとき、
図8(B)に示すように、雪止め金具100の固定片110における係止部114が軒側挿入片1010Hを係止する。より詳しくは、内包部114Fに軒側挿入片1010Hの棟側端部が収まり(この状態で軒側挿入片1010Hの棟側端部の折返し部(所謂ヘミング加工された部分)が突出部114BDの裏面側に収まり、第2斜面114Dに引っ掛かることでより安定して係止される)、係止部114が軒側挿入片1010Hを係止する。このようにして、係止部114が、カバー屋根材1010の軒側挿入片1010Hと既設屋根材1000の裏面側との間に挿入されて、固定片110が係止されることにより、既設屋根材等(ここでは既設屋根材1000およびカバー屋根材1010)に穴を開けたり釘を打ち込むことなく雪止め金具100を既設屋根材等(ここではカバー屋根材1010)に設置することができる。
【0046】
なお、上述した施工方法を実行した後(引き戻しステップ完了後)において、接着剤塗布ステップにおける接着剤の塗布量が不足していた場合、および/または、部分的に接着剤の塗布を忘れた場合には、
図9に示す特殊な形状のノズル300を用いて接着剤を塗布することがある。ここで、
図9(A)はノズル300の全体斜視図を、
図9(B)はその断面斜視図を、それぞれ示している。
【0047】
図9に示すノズル300は、扁平形状であるが、ストロー形状であっても構わない。このノズル300は、内側に雌ねじ(図示しない)を備え接着剤が入った容器の先端の雄ねじを螺合させる開口部310と、縮径部330と、扁平部340と、先端扁平開口部350とを備える。また、開口部310の外周には雄ねじ320が設けられ、接着剤の容器に付属していた蓋材、または、それとは別の蓋材の雌ねじを螺合させて接着剤の容器を密閉することができる。
【0048】
このようなノズル300を用いて、上述した施工方法を実行した後(引き戻しステップ完了後)においても、固定片110の平面部112の表面に接着剤を塗布することができるために、このような接着剤塗布ステップにおける接着剤塗布不足等に適切に対応することができて、この雪止め金具100を屋根材等に強固に接着することができる。
以上のようにして、本実施の形態に係る雪止め金具、それを用いた施工構造および施工方法によると、既設屋根材等に穴を開けたり釘を打ち込むことなく、かつ、軒棟方向の長さを抑えて薄い板厚であっても強度を確保できるとともに防水性の低下を抑制することができ、安定して強固に既設屋根材等に固定することのできる雪止め金具、それを用いた施工構造および施工方法を提供することができる。
【0049】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、屋根上に積もった雪が軒先から滑り落ちることを防止するための雪止め金具、それを用いた施工構造および施工方法に好ましく、既設屋根材等に穴を開けたり釘を打ち込むことなく、安定して強固に既設屋根材等に固定することができる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0051】
100 雪止め金具(2部材構成)
110 固定片
120 立上部
130 連結部
134 連結具(リベット)
200 雪止め金具(1部材構成)
1000 屋根材
1010 カバー屋根材
1100 屋根下地
1200 防水シート