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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】塗布容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20241108BHJP
   B65D 47/42 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B65D47/20 300
B65D47/42 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021153403
(22)【出願日】2021-09-21
(65)【公開番号】P2023045152
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2024-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】紅谷 翔太
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-99967(JP,A)
【文献】特開平10-120046(JP,A)
【文献】実開平5-24574(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 47/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部を有する有底筒状の容器本体と、
前記口部に装着されると共に、前記容器本体の内側に連通する吐出孔が形成された中栓と、
前記吐出孔に上方付勢状態で下方移動可能に設けられた塗布栓と、を備え、
前記塗布栓は、
前記中栓の内側における前記吐出孔の第1開口周縁部に、下方に向けて離反可能に当接する第1シール部と、
前記中栓の外側における前記吐出孔の第2開口周縁部に、上方から当接可能に設けられた第2シール部と、を有し、
前記第1シール部が前記第1開口周縁部に当接した状態から、前記第2シール部が前記第2開口周縁部に当接するまでの、前記塗布栓の上下方向のストロークを調整するストローク調整機構を備える、ことを特徴とする塗布容器。
【請求項2】
前記ストローク調整機構として、前記中栓は、
前記第1開口周縁部を有して前記口部に装着される第1中栓部材と、
前記第2開口周縁部を有すると共に前記第1中栓部材に対し回転可能に係合し、回転によって前記第1中栓部材に対し上下方向に変位する第2中栓部材と、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の塗布容器。
【請求項3】
前記ストローク調整機構として、前記塗布栓は、
前記第1シール部を有して前記吐出孔に上方付勢状態で下方移動可能に設けられた第1塗布栓部材と、
前記第2シール部を有すると共に前記第1塗布栓部材に対し上下移動可能に係合する第2塗布栓部材と、
前記第2塗布栓部材が前記第1塗布栓部材に対し上方移動した状態において、前記第2塗布栓部材の下方移動を規制する規制状態と、当該規制状態を解除する規制解除状態とに切り替え可能な切替機構と、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬液等の内容物を例えば人体の頭皮や皮膚等の被塗布部に対して塗布する塗布容器が知られている。下記特許文献1に記載された塗布容器は、オーバーキャップを取り外すと、塗布ヘッドが引き上げられ、この状態で容器を反転すると、一定量の内容物が、塗布ヘッド内に流入する。この状態で頭皮などの塗布すべき面に塗布ヘッドを押し当てると、先端部に設けられたスリット弁が開くと共に、塗布ヘッドが押し下げられて、塗布ヘッド内の一定量の内容物が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-260581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の塗布容器では、1回の使用(押し付け)毎の吐出量は一定になっており、使用者の好みや使用部分(頭皮等)の状況に応じて1回の吐出量を切り替えることはできなかった。また、内容物の種類によっては粘性が異なり、同じ塗布容器であっても1回の吐出量にばらつきが生じることがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、所望の吐出量を設定することができる塗布容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る塗布容器は、口部を有する有底筒状の容器本体と、前記口部に装着されると共に、前記容器本体の内側に連通する吐出孔が形成された中栓と、前記吐出孔に上方付勢状態で下方移動可能に設けられた塗布栓と、を備え、前記塗布栓は、前記中栓の内側における前記吐出孔の第1開口周縁部に、下方に向けて離反可能に当接する第1シール部と、前記中栓の外側における前記吐出孔の第2開口周縁部に、上方から当接可能に設けられた第2シール部と、を有し、前記第1シール部が前記第1開口周縁部に当接した状態から、前記第2シール部が前記第2開口周縁部に当接するまでの、前記塗布栓の上下方向のストロークを調整するストローク調整機構を備える、ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る塗布容器によれば、塗布栓を被塗布部に押し付けると、付勢に抗して塗布栓が下方移動する。そうすると、塗布栓の第1シール部が、中栓の内側における吐出孔の第1開口周縁部から離反し、吐出孔と容器本体の内側とが連通する。これにより、容器本体の内容物が、中栓の吐出孔から吐出される。被塗布部への押し付けによって、さらに塗布栓が下方移動すると、塗布栓の第2シール部が、中栓の外側における吐出孔の第2開口周縁部に当接することで、吐出孔と容器本体の内側との連通が遮断される。容器本体の内容物は、第1シール部が第1開口周縁部から離反し、第2シール部が第2開口周縁部に当接するまで吐出し続けるため、この間の塗布栓の上下方向のストロークを調整することで、所望の吐出量に設定することができる。
【0008】
(2)前記ストローク調整機構として、前記中栓は、前記第1開口周縁部を有して前記口部に装着される第1中栓部材と、前記第2開口周縁部を有すると共に前記第1中栓部材に対し回転可能に係合し、回転によって前記第1中栓部材に対し上下方向に変位する第2中栓部材と、を有しても良い。
【0009】
この場合には、第2中栓部材を回転させると、第1中栓部材に対し第2中栓部材が上下方向に変位する。これにより、第1開口周縁部と第2開口周縁部との上下方向の間隔を変更し、塗布栓の上下方向のストロークを調整できる。また、第2中栓部材の回転による上下方向の変位を目視することで、使用者が塗布栓の上下方向のストロークの違いを確認しながら1回の吐出量を調整することができる。
【0010】
(3)前記ストローク調整機構として、前記塗布栓は、前記第1シール部を有して前記吐出孔に上方付勢状態で下方移動可能に設けられた第1塗布栓部材と、前記第2シール部を有すると共に前記第1塗布栓部材に対し上下移動可能に係合する第2塗布栓部材と、前記第2塗布栓部材が前記第1塗布栓部材に対し上方移動した状態において、前記第2塗布栓部材の下方移動を規制する規制状態と、当該規制状態を解除する規制解除状態とに切り替え可能な切替機構と、を有しても良い。
【0011】
この場合には、第2塗布栓部材を上下移動させると、第1塗布栓部材に対し第2塗布栓部材が上下方向に変位する。これにより、第1シール部と第2シール部との上下方向の間隔を変更し、塗布栓の上下方向のストロークを調整できる。また、切替機構によって、第2塗布栓部材の下方移動を規制する規制状態とすることで、塗布栓を被塗布部に押し付けたときに、第2塗布栓部材が下方に押し込まれないようにし、意図せずに塗布栓の上下方向のストロークが変更されないようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る塗布容器によれば、所望の吐出量を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る塗布容器の第1状態を示す縦断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る塗布容器の第2状態を示す縦断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る塗布容器の第1状態を示す縦断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る塗布容器の第2状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る塗布容器を説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示す塗布容器1は、内容物が収容される有底筒状の容器本体2と、容器本体2の口部10に装着されると共に、容器本体2の内側に連通する吐出孔3aが形成された中栓3と、吐出孔3aに上方付勢状態で下方移動可能に設けられた塗布栓4と、を備えている。なお、内容物としては特に限定されるものではないが、例えば人体や皮膚等に塗布される育毛剤、消炎、鎮痛、鎮痒等の効果を有する薬剤、化粧料等の液体が挙げられる。
【0016】
図1において、容器本体2、中栓3、及び塗布栓4は、それぞれの中心軸線が共通軸上に配置されている。本実施形態では、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿う上下方向において、塗布栓4側を上方、その反対側(容器本体2側)を下方という。また、容器軸Oから見た平面視で容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0017】
容器本体2の口部10は、容器本体2のうち口部10以外の部位(肩部、胴部及び底部)よりも径が小さく形成されている。図示の例では、容器本体2の口部10の外周面に、口部10、中栓3、及び塗布栓4を覆う図示しないオーバーキャップが螺着可能な雄ネジが形成されている。なお、オーバーキャップの装着方法は、螺着に限定されるものではなく、例えば、容器本体2の口部10に対してアンダーカット嵌合させることにより装着しても構わない。
【0018】
中栓3は、容器本体2の口部10に装着された筒状の第1中栓部材20と、第1中栓部材20に対し容器軸O回りに回転可能に係合した有頂筒状の第2中栓部材30と、を備えている。
【0019】
第1中栓部材20は、筒状の吐出筒21と、筒状の嵌合筒部22と、円環状の鍔部23と、筒状のシール筒部24と、を有している。吐出筒21、嵌合筒部22、鍔部23、及びシール筒部24は、容器軸Oを共通軸とする同軸上に配置されている。吐出筒21は、容器本体2の内側に連通する吐出孔3aを形成している。吐出筒21における吐出孔3aの下端の周囲には、上方に向かうに従って縮径するテーパ状の第1開口周縁部25が形成されている。
【0020】
鍔部23は、容器本体2の口部10の上端開口縁に配置され、その内径側が吐出筒21の下端に連設されている。鍔部23の外径側は、嵌合筒部22の上端に連設されている。嵌合筒部22は、鍔部23から下方に延在し、その内周面は口部10の外周面にアンダーカット嵌合している。シール筒部24は、鍔部23の内径側から下側に延在し、その外周面は口部10の内周面に密着している。
【0021】
第2中栓部材30は、第1中栓部材20の吐出筒21を径方向外側から囲繞する係合筒31と、係合筒31の上端に連設され、吐出筒21の上端開口縁を覆う被覆頂壁32と、を備えた有頂筒状に形成されている。係合筒31は、容器軸Oと同軸の円筒状に形成されている。係合筒31のうち、吐出筒21を囲む部分の内周面には、吐出筒21の外周面に形成された雄ネジに螺合する雌ネジが形成されている。
【0022】
被覆頂壁32は、係合筒31の上端から径方向内側に延在する円環状に形成されている。被覆頂壁32の内周縁には、吐出筒21の内周面に嵌合する嵌合筒33が下方に垂設されている。吐出孔3aは、吐出筒21及び嵌合筒33の内周面によって形成されている。嵌合筒33の外周面には、径方向外側に向かって突起33aが設けられている。突起33aは、吐出筒21の内周面の上端部とその下側の2箇所から径方向内側に突設された環状のシール突部21aに当接(摺接)可能とされている。突起33aがシール突部21aに当接することで、吐出筒21と嵌合筒33との隙間から内容物が外部に流出することを防止できる。
【0023】
被覆頂壁32の内周縁の上面には、中栓3の外側における吐出孔3aの第2開口周縁部34が形成されている。具体的に、被覆頂壁32の内周縁の上面には、下方に窪む段部が設けられ、当該段部の底壁が環状の第2開口周縁部34となっている。なお、当該段部の底壁(第2開口周縁部34)は、水平面でも傾斜面でもよく、平担面でも湾曲面でもよい。
【0024】
第2中栓部材30は、容器軸O回りの回転によるネジ送りによって、第1中栓部材20に対し上下方向に変位する。本実施形態の第2中栓部材30は、突起33aが上側のシール突部21aに当接するまで、第1中栓部材20に対し上方に変位可能とされている。なお、吐出筒21と係合筒31との間には、突起33aが上側のシール突部21aに当接した状態で、周方向において当接する図示しない回転量規制部が設けられている。
【0025】
塗布栓4は、中栓3の内側に嵌装された塗布栓本体40(第1塗布栓部材)と、塗布栓本体40に装着された塗布栓カバー50(第2塗布栓部材)と、を備えている。塗布栓本体40は、吐出孔3aに上下動可能に挿入されたヘッド部41と、中栓3とヘッド部41とを連結しヘッド部41を上方付勢するバネ部42と、を備えている。ヘッド部41は、容器軸Oと同軸の円柱状に形成されている。
【0026】
ヘッド部41の周壁には、塗布栓カバー50が嵌合する嵌合溝部41aが形成されている。嵌合溝部41aは、ヘッド部41の周壁の外周面の下端部に配設されている。ヘッド部41の周壁の下端には、フランジ41bが連設されている。フランジ41bは、ヘッド部41の周壁の下端から径方向外側に延びる円板状に形成されている。フランジ41bの外径側の上面には、第1開口周縁部25と上下方向で対向する第1シール部43が形成されている。
【0027】
第1シール部43は、第1開口周縁部25に対応して、上方に向かうに従って縮径するテーパ状に形成されている。第1シール部43は、バネ部42の上方付勢を受け、中栓3の第1開口周縁部25に当接している。この状態において、第1シール部43は、吐出孔3aと容器本体2の内側との連通を遮断している。また、第1シール部43は、バネ部42の付勢に抗して塗布栓4が下方移動したときに、第1開口周縁部25から離反し、吐出孔3aと容器本体2の内側とを連通させる。
【0028】
バネ部42の上端は、フランジ41bの外径側の下面に連設されている。本実施形態のバネ部42は、ヘッド部41と一体で形成された樹脂バネであるが、ヘッド部41と別体で形成された金属バネや樹脂バネ等であってもよい。バネ部42の下端は、中栓3のシール筒部24に固定された固定部44に連設されている。固定部44は、容器軸Oと同軸の環状に形成され、シール筒部24の内周面にアンダーカット嵌合している。
【0029】
塗布栓カバー50は、容器軸Oと同軸の有頂筒状に形成され、ヘッド部41に外装されている。塗布栓カバー50は、ヘッド部41よりも軟材質で形成されている。例えば、ヘッド部41が、ポリプロピレン等の硬質の樹脂材で形成されている場合、塗布栓カバー50は、低密度ポリエチレン、エラストマー、シリコンゴム等の比較的軟らかい材質から形成されている。なお、塗布栓カバー50を、ヘッド部41と同等又は硬い材質で形成してもよい。
【0030】
塗布栓カバー50は、上下方向に延びる筒状の周壁部51と、周壁部51の上端開口を閉塞する円板状の頂壁部52と、を備えている。頂壁部52の上面には、ブロック状の突起部55が形成されている。突起部55は、周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では90°間隔で4つ)設けられている。周壁部51の下端の内径側には、嵌合突部53が突設されている。嵌合突部53は、ヘッド部41の周壁に形成された嵌合溝部41aにアンダーカット嵌合している。
【0031】
周壁部51の外周面の上端部には、第2シール部54が設けられている。第2シール部54は、周壁部51から径方向外側に延在する円環状に形成されている。第2シール部54の下面は、中栓3の第2開口周縁部34と上下方向で対向している。ヘッド部41が押し込まれ、第2シール部54が第2開口周縁部34に当接すると、ヘッド部41の下方移動が規制され、吐出孔3aが閉塞される。
【0032】
塗布容器1は、第1シール部43が第1開口周縁部25に当接した状態から、第2シール部54が第2開口周縁部34に当接するまでの、塗布栓4の上下方向のストロークを調整するストローク調整機構5を備えている。本実施形態のストローク調整機構5は、上述した中栓3の第1中栓部材20及び第2中栓部材30によって構成され、第2中栓部材30の容器軸O回りの回転によって、塗布栓4の上下方向のストロークを、図1に示すS1の位置と図2に示すS2の位置で使用することができる。なお、塗布栓4の上下方向のストロークを、図1に示すS1から図2に示すS2の間で任意に調整する場合、上下のシール突部21aの間にある窪みをなくし、同一内径として突起33aが任意の位置で摺接できるようにしてもよい。
【0033】
次に、上述のように構成された塗布容器1を利用して、被塗布部に内容物を塗布する場合について説明する。
【0034】
内容物を塗布する場合には、先ず、図示しないオーバーキャップを容器本体2の口部10から取り外す。次に、容器本体2を持ち、容器本体2が上側で塗布栓4が下側の倒立状態とする。なお、倒立状態とは、塗布栓4が斜め下を向いた傾倒姿勢を含む。この倒立状態では、バネ部42の付勢によって、第1シール部43が第1開口周縁部25に当接しており、吐出孔3aと容器本体2の内側との連通が遮断されている。
【0035】
この状態で、塗布栓4を被塗布部に押し付ける。被塗布部に塗布栓4を押し付けたとき、バネ部42が変形して塗布栓4が下方移動(容器本体2側へ移動)する。バネ部42の付勢に抗して塗布栓4が下方移動すると、吐出孔3aを遮断している第1シール部43が第1開口周縁部25から離反することで、吐出孔3aと容器本体2の内側とが連通する。これにより、容器本体2の内側の内容物が、吐出孔3aを通り、中栓3と塗布栓4の隙間から吐出される。
【0036】
塗布栓4の被塗布部へのさらなる押し付けによって、第2シール部54が第2開口周縁部34に当接すると、塗布栓4の下方移動が規制され、塗布栓4が押し込み限界となる。このとき、第2シール部54が、第2開口周縁部34に当接することで、吐出孔3aと容器本体2の内側との連通が遮断される。これにより、内容物の吐出が止まり、被塗布部に対して過剰に内容物が塗布されることを防止できる。
【0037】
塗布容器1の内容物は、第1シール部43が第1開口周縁部25から離反し、第2シール部54が第2開口周縁部34に当接するまで吐出し続ける。したがって、塗布栓4の上下方向のストロークを調整することで、塗布容器1の1回の使用(押し付け)毎の吐出量を、所望の吐出量に設定することができる。
【0038】
例えば、塗布容器1の1回の吐出量を減少させたい場合、図1に示す状態から、図2に示す状態に、塗布栓4の上下方向のストロークを変更する。具体的には、第1中栓部材20に対して第2中栓部材30を反時計回りに回転させ、ネジ送りによって、第2中栓部材30を上方に変位させる。これにより、第1開口周縁部25と第2開口周縁部34との上下方向の間隔を広げ、塗布栓4の上下方向のストロークをS1からS2に変更し、ストローク量を減少させることで1回の吐出量を減少させることができる。
【0039】
また、塗布容器1の1回の吐出量を元の吐出量に戻したい(増加させたい)場合、図2に示す状態から、図1に示す状態に、塗布栓4の上下方向のストロークを変更する。具体的には、第1中栓部材20に対して第2中栓部材30を時計回りに回転させ、ネジ送りによって、第2中栓部材30を下方に変位させる。これにより、第1開口周縁部25と第2開口周縁部34との上下方向の間隔を狭くし、塗布栓4の上下方向のストロークをS2からS1に変更し、1回の吐出量を増加させることができる。
【0040】
このように、上述した本実施形態の塗布容器1は、口部10を有する有底筒状の容器本体2と、口部10に装着されると共に、容器本体2の内側に連通する吐出孔3aが形成された中栓3と、吐出孔3aに上方付勢状態で下方移動可能に設けられた塗布栓4と、を備え、塗布栓4は、中栓3の内側における吐出孔3aの第1開口周縁部25に、下方に向けて離反可能に当接する第1シール部43と、中栓3の外側における吐出孔3aの第2開口周縁部34に、上方から当接可能に設けられた第2シール部54と、を有し、第1シール部43が第1開口周縁部25に当接した状態から、第2シール部54が第2開口周縁部34に当接するまでの、塗布栓4の上下方向のストロークを調整するストローク調整機構5を備える。この構成によれば、所望の吐出量に設定することができる塗布容器1が得られる。
【0041】
また、本実施形態では、ストローク調整機構5として、中栓3は、第1開口周縁部25を有して口部10に装着される第1中栓部材20と、第2開口周縁部34を有すると共に第1中栓部材20に対し回転可能に係合し、回転によって第1中栓部材20に対し上下方向に変位する第2中栓部材30と、を有する。この構成によれば、第2中栓部材30を回転させると、第1中栓部材20に対し第2中栓部材30が上下方向に変位する。これにより、第1開口周縁部25と第2開口周縁部34との上下方向の間隔を変更し、塗布栓4の上下方向のストロークを調整できる。また、第2中栓部材30の回転による上下方向の変位を目視することで、使用者が塗布栓4の上下方向のストロークの違いを確認しながら1回の吐出量を調整することができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0043】
図3に示すように、第2実施形態の塗布容器1では、ストローク調整機構5が塗布栓4に設けられている点で、上記実施形態と異なる。また、それに付随して、第2実施形態の塗布容器1では、中栓3が第1中栓部材20のみから構成され、吐出筒21の上端部に第2開口周縁部34が形成されている点で、上記実施形態と異なる。
【0044】
塗布栓4は、第1シール部43を有して吐出孔3aに上方付勢状態で下方移動可能に設けられた塗布栓本体40と、第2シール部54を有すると共に塗布栓本体40に対し上下移動可能に係合する塗布栓カバー50と、塗布栓カバー50が塗布栓本体40に対し上方移動した状態において、塗布栓カバー50の下方移動を規制する規制状態と、当該規制状態を解除する規制解除状態とに切り替え可能な切替機構6と、を備えている。
【0045】
塗布栓本体40のヘッド部41の外周面には、アンダーカット嵌合突起41cが、上下方向に間隔をあけて複数(図3に示す例では4つ)形成されている。対して、塗布栓カバー50の周壁部51の内周面には、複数のアンダーカット嵌合突起41cに対して選択的に嵌合可能な凸部51aが、上下方向に間隔をあけて複数(図3に示す例では2つ)形成されている。
【0046】
切替機構6は、塗布栓本体40のヘッド部41の頂面に形成されたすり割り状の通し溝41dと、塗布栓カバー50の内側に形成され、容器軸O回りの回転によって、図3に示すようにヘッド部41の頂面に乗り上げた規制状態と、図4に示すようにヘッド部41の通し溝41dに没入する規制解除状態とに変位可能な規制片56と、によって構成されている。
【0047】
通し溝41dは、ヘッド部41の頂面に対し一定の深さで、径方向に直線状に延びている。規制片56は、矩形の板状に形成され、径方向に間隔をあけて一対で設けられると共に、径方向において同一直線状に配置されている。規制片56の厚みは、通し溝41dの幅以下となっている。規制片56は、塗布栓カバー50の内側において、頂壁部52と周壁部51との角部に矩形のリブ状に突設されている。
【0048】
上記構成において、塗布容器1の1回の吐出量を減少させたい場合、例えば、図3に示す状態から、図4に示す状態に、塗布栓4の上下方向のストロークを変更する。具体的には、塗布栓本体40に対して塗布栓カバー50を容器軸O回りに回転させ、規制片56をヘッド部41の通し溝41dに対向させる。そして、塗布栓本体40に対して塗布栓カバー50を下方移動させ、規制片56をヘッド部41の通し溝41dに没入させると共に、複数のアンダーカット嵌合突起41cに対する凸部51aの嵌合位置を下方に変更する。これにより、第1シール部43と第2シール部54との上下方向の間隔を狭くし、塗布栓4の上下方向のストロークをS3からS4に変更し、1回の吐出量を減少させることができる。
【0049】
また、塗布容器1の1回の吐出量を元の吐出量に戻したい(増加させたい)場合、図4に示す状態から、図3に示す状態に、塗布栓4の上下方向のストロークを変更する。具体的には、塗布栓本体40に対して塗布栓カバー50を引き上げて、複数のアンダーカット嵌合突起41cに対する凸部51aの嵌合位置を上方に変更する。次に、塗布栓本体40に対して塗布栓カバー50を容器軸O回りに回転させ、規制片56をヘッド部41の頂面に乗り上げた規制状態とする。これにより、第1シール部43と第2シール部54との上下方向の間隔を広げ、塗布栓4の上下方向のストロークをS4からS3に変更し、1回の吐出量を増加させることができる。
【0050】
このように第2実施形態では、ストローク調整機構5として、塗布栓4は、第1シール部43を有して吐出孔3aに上方付勢状態で下方移動可能に設けられた塗布栓本体40と、第2シール部54を有すると共に塗布栓本体40に対し上下移動可能に係合する塗布栓カバー50と、塗布栓カバー50が塗布栓本体40に対し上方移動した状態において、塗布栓カバー50の下方移動を規制する規制状態と、当該規制状態を解除する規制解除状態とに切り替え可能な切替機構6と、を有する。この構成によれば、塗布栓カバー50を上下移動させると、塗布栓本体40に対し塗布栓カバー50が上下方向に変位する。これにより、第1シール部43と第2シール部54との上下方向の間隔を変更し、塗布栓4の上下方向のストロークを調整できる。また、切替機構6によって、塗布栓カバー50の下方移動を規制する規制状態とすることで、塗布栓4を被塗布部に押し付けたときに、塗布栓カバー50が下方に押し込まれないようにし、意図せずに塗布栓4の上下方向のストロークが変更されないようにすることができる。
【0051】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0052】
例えば、第1実施形態において、第2中栓部材30は、ネジ送りによって、第1中栓部材20に対し上下方向に無段階に変位する構成について説明したが、この構成に限定されない。例えば、吐出筒21の外周面及び係合筒31の内周面のいずれか一方にクランク溝(上下方向に段差を有する階段状の溝)が形成され、他方に当該クランク溝に係合する係合突起が形成されている構成であっても構わない。この場合、第2中栓部材30は、第1中栓部材20に対し、クランク溝の段数に応じて多段階に上下方向に変位する。
【0053】
また、例えば、塗布栓4の上下方向のストロークの調整は、上述したように使用者が使用する度に行っても良いし、また、第2実施形態のように塗布栓カバー50の内側に切替機構6があり視認が難しい場合、工場での組み立て時に行っても構わない。
【0054】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…塗布容器、2…容器本体、3…中栓、3a…吐出孔、4…塗布栓、5…ストローク調整機構、6…切替機構、10…口部、20…第1中栓部材、21…吐出筒、21a…シール突部、22…嵌合筒部、23…鍔部、24…シール筒部、25…第1開口周縁部、30…第2中栓部材、31…係合筒、32…被覆頂壁、33…嵌合筒、33a…突起、34…第2開口周縁部、40…塗布栓本体(第1塗布栓部材)、41…ヘッド部、41a…嵌合溝部、41b…フランジ、41c…アンダーカット嵌合突起、41d…通し溝、42…バネ部、43…第1シール部、44…固定部、50…塗布栓カバー(第2塗布栓部材)、51…周壁部、51a…凸部、52…頂壁部、53…嵌合突部、54…第2シール部、55…突起部、56…規制片、O…容器軸
図1
図2
図3
図4