(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02F 1/20 20060101AFI20241108BHJP
F01M 1/08 20060101ALI20241108BHJP
F01P 3/08 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
F02F1/20
F01M1/08 B
F01P3/08 B
(21)【出願番号】P 2021175705
(22)【出願日】2021-10-27
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 順平
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-031764(JP,A)
【文献】特開2009-013800(JP,A)
【文献】特許第6435408(JP,B2)
【文献】特開平08-068322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00- 1/42
F02F 7/00
F01M 1/00- 9/12
F01P 1/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックと、
前記シリンダブロック内にオイルを噴射するオイルジェットと、
クランクシャフトを収めるクランクケースと、
を備え、
前記クランクケースは、前記オイルジェットを配置するための凹部を備え、
前記オイルジェットは、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間で挟み込んで固定し、
前記凹部の高さ方向及び幅方向は、少なくとも前記オイルジェット
の本体部の高さ及び幅と略同一の形状を有し、
前記凹部は、前記シリンダブロックにおける複数のシリンダボア間に設けられ、
前記オイルジェットは、前記凹部を境として各側に設けられる各シリンダボアに対して、ノズルを有する、
内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関において、ピストンの冷却を目的として、ピストンを収納するシリンダブロックのシリンダボアに向けてオイルを下方から噴出させるオイルジェットを備えることは広く行われている。
【0003】
特許文献1には、ボルト締結によってオイルジェットが組付けられているエンジンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術によれば、オイルジェット本体の差し込み部で中心を決めた後に、さらにボルトで回転方向を決めることで、オイルジェットの位置決めをする必要があり、オイルジェットの取付けが煩雑になっていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、オイルジェットの取付けの煩雑さを解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本願発明の内燃機関は、シリンダブロックと、前記シリンダブロック内にオイルを噴射するオイルジェットと、クランクシャフトを収めるクランクケースと、を備え、前記クランクケースは、前記オイルジェットを配置するための凹部を備え、前記オイルジェットは、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの間で挟み込んで固定し、前記凹部の高さ方向及び幅方向は、少なくとも前記オイルジェットの本体部の高さ及び幅と略同一の形状を有し、前記凹部は、前記シリンダブロックにおける複数のシリンダボア間に設けられ、前記オイルジェットは、前記凹部を境として各側に設けられる各シリンダボアに対して、ノズルを有する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、オイルジェットがクランクケースとシリンダブロックで挟み込まれて固定されるので、オイルジェットそのもののボルト締結が不要となり、オイルジェットの取付けの煩雑さを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる自動車のエンジンの要部の構成を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、シリンダボアとオイルジェットとの関係を底面視により示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、内燃機関の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
ここで、
図1は実施の形態にかかる自動車のエンジン100の要部の構成を示す縦断面図、
図2はシリンダボア5とオイルジェット16との関係を底面視により示す模式図、
図3は
図2のA-A断面を示す図である。
【0018】
図1に示すように、自動車の内燃機関であるエンジン100は、シリンダブロック1と、シリンダブロック1の下部に設けられたクランクケース2と、を備える。
【0019】
クランクケース2は、クランクシャフト15を収めるものである。クランクケース2は、クランクキャップ3(
図2および
図3参照)を介してクランクシャフト15を回転自在に保持する。
【0020】
図3に示すように、シリンダブロック1とクランクケース2とを締結するボルト18の群は、クランクキャップ3を介してクランクケース2の下方からシリンダブロック1に挿通している。そして、シリンダブロック1には、ボルト18がねじ込まれるタップ穴を形成したボス部が形成されている。
【0021】
シリンダブロック1は、内部に、円柱形の空洞4を形成する。シリンダブロック1の空洞4は、内部に、円筒形のシリンダボア5を配置する。シリンダボア5は、内筒部5aを有する。シリンダボア5の内筒部5aは、ピストン6を摺動可能に収納する。
【0022】
また、クランクケース2内の空洞4は、内部に、クランクシャフト15を配置する。クランクシャフト15は、クランクジャーナル15a、クランクジャーナル15aに隣接するクランクピン15b及びクランクピン15bと同一平面状に配置されるバランスウェイト15cから構成される。クランクピン15bとピストン6のピストンピン6aとがコンロッド14でそれぞれ回動自在に接続されることにより、シリンダボア5内におけるピストン6の往復運動はクランクシャフト15の回転運動に変換される。
【0023】
図2に示すように、シリンダブロック1には、クランクシャフト15の軸線方向に並んだ4つの気筒7が形成されている。シリンダブロック1およびクランクケース2はアルミの鋳造品である。ただし、各気筒7の内面(シリンダボア5の内筒面5b)は、鋳込みによって固定された鉄製のライナーによって構成されている。
【0024】
更に、エンジン100は、シリンダボア5の下方であってクランクケース2内に、シリンダブロック1のシリンダボア5の内筒部5aにオイルを噴射するためのオイルジェット16を配置する。オイルジェット16は、シリンダブロック1に設けられたオイルを流すための油路であるメインギャラリー17(
図3参照)に接続されている。
図2に示すように、オイルジェット16は、隣接する2つの気筒7を構成するシリンダボア5とシリンダボア5との間に設けられる。
【0025】
オイルジェット16は、本体部16bと、本体部16bからシリンダボア5の内部に向けて延びるノズル16aとを有している。本体部16bには、オイルの圧力が所定値になるとオイルをノズル16aに流すリリーフバルブを内蔵している。本実施形態では、オイルジェット16は、二股に分岐したノズル16aを有する。オイルジェット16は、二股に分岐したノズル16aによって、各々のシリンダボア5に対して、オイルを噴射する。
【0026】
次に、オイルジェット16の取付け構造について説明する。
【0027】
図3に示すように、クランクケース2は、シリンダブロック1に対向する面に、オイルジェット16の本体部16bの形状と略同一の形状である凹部20を有している。なお、凹部20は、少なくともオイルジェット16の本体部16bの高さと略同一の高さを有していればよい。凹部20は、シリンダブロック1のシリンダボア5とシリンダボア5との間に位置するように設けられる。凹部20は、クランクケース2における、シリンダブロック1のシリンダボア5とシリンダボア5との間に対向する位置に、ザグリおよび穴加工を行うことによって形成される。
【0028】
そして、オイルジェット16は、本体部16bを凹部20に配置される。凹部20に配置されたオイルジェット16の本体部16bは、メインギャラリー17に接続された状態で、シリンダブロック1とクランクケース2との間で挟み込んで固定される。ここで、凹部20は、オイルジェット16の本体部16bの形状(高さ)と略同一であることから、オイルジェット16の本体部16bの上面が凹部20の開口面と面一となり、オイルジェット16の本体部16bがシリンダブロック1とクランクケース2とのそれぞれとで接触面を有することになるので、ボルト等を不要としてより強固に固定される。
【0029】
このように本実施形態によれば、クランクケース2には、オイルジェット16の本体部16bを配置する凹部20を、オイルジェット16の本体部16bの形状と略同一の形状とし、ザグリおよび穴加工を行うことによって形成する。これにより、オイルジェット16の本体部16bをシリンダブロック1とクランクケース2とのそれぞれとで挟み込むことで固定されるので、オイルジェット16の取付けの煩雑さを解消することができるとともに、部品代の削減を図ることができる。より詳細には、オイルジェット16の本体部16bをクランクケース2に位置決めするための穴加工は1か所であり、オイルジェット16の本体部16bをクランクケース2に固定するためのねじ加工を不要とすることができる。
【0030】
また、シリンダブロック1のシリンダボア5とシリンダボア5との間に、オイルジェット16を設置することで、従来は2個必要であったオイルジェットを、二股に分岐したノズル16aを有するオイルジェット16に集約することができ、部品削減を図ることができる。
【0031】
また、オイルジェット16の本体部16bの側面は、オイルジェット16の本体部16bの形状と略同一の凹部20に接触することになるので、回り止めを形成することができる。
【0032】
更に、上記の説明においては、本発明は自動車の内燃機関において実施するものとして説明を行ったが、本発明は、自動車の他、二輪車、列車、船舶その他の任意の輸送機器において実施してもよい。更に、ガソリンエンジンの他、ディーゼルエンジン等の内燃機関に適用してもよい。
【0033】
したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内であれば、以上説明したものを含め、上記実施の形態に種々の変更を加えたものとして実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のような本発明は、オイルジェットの取付けの煩雑さを解消することができるという効果を有し、例えば自動車のエンジンへの適用において有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 シリンダブロック
2 クランクケース
5 シリンダボア
15 クランクシャフト
16 オイルジェット
16a ノズル
20 凹部
100 内燃機関