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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】EGRバルブ
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/74 20160101AFI20241108BHJP
   F02M 26/67 20160101ALI20241108BHJP
   F02M 26/72 20160101ALI20241108BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20241108BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20241108BHJP
【FI】
F02M26/74 311
F02M26/67 301
F02M26/72
F02M26/74 301
F16J15/18 A
F16J15/3204 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021180841
(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公開番号】P2023069174
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
(72)【発明者】
【氏名】中島 一真
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-180622(JP,A)
【文献】特開2013-7266(JP,A)
【文献】特開2005-282520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/74
F02M 26/67
F02M 26/72
F16J 15/18
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGRガスの流路を有するハウジングと、
前記流路に設けられた弁座と、
前記弁座に着座可能に設けられた弁体と、
前記弁体を前記弁座に対し移動させるために前記弁体と一体的に設けられた弁軸と、
前記弁体と共に前記弁軸を駆動させるための駆動手段と、
前記ハウジングと前記弁軸との間に設けられ、軸方向に一端と他端を有し、前記弁軸を駆動可能に支持するための軸受と、
前記ハウジングと前記弁軸との間にて前記軸受に隣接して設けられ、軸方向に一端と他端を有し、前記他端の側にて前記弁軸と接触するシール部を有し、前記ハウジングと前記弁軸との間をシールするためのシール部材と、
前記ハウジングに設けられ、前記シール部材を保持する組付孔と、
前記ハウジングと前記弁軸との間にて前記組付孔に保持された前記シール部材に隣接して設けられ、軸方向に一端と他端を有し、前記流路から前記組付孔へのデポジットの侵入を防止するためのデポガード部と、
前記軸受の前記他端に前記シール部材の前記一端が隣接して配置され、前記シール部材の前記他端及び前記シール部に前記デポガード部の前記一端が隣接して配置され、前記デポガード部の前記他端が前記流路に面して配置されることと
を備えたEGRバルブにおいて、
前記シール部材の前記他端には、前記デポガード部の前記一端へ向けて突出すると共にその一端に対し変形しながら接触して前記シール部材と前記デポガード部との間をシールするためのシール突部が設けられる
ことを特徴とするEGRバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載のEGRバルブにおいて、
前記シール突部は、その先端部が前記弁軸へ向けて傾斜し収束するようにリップ状に形成される
ことを特徴とするEGRバルブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のEGRバルブにおいて、
前記デポガード部は、前記組付孔に保持されるデポガード部材により構成される
ことを特徴とするEGRバルブ。
【請求項4】
請求項3に記載のEGRバルブにおいて、
前記組付孔の一部であって前記デポガード部材が保持される部位の内径が、前記組付孔の一部であって前記シール部材が保持される部位の内径よりも大きく設定される
ことを特徴とするEGRバルブ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のEGRバルブにおいて、
前記組付孔の一部であって前記シール部材が保持される部位と、前記シール部材との間に、前記シール部材の前記一端の側と前記他端の側とを連通させる少なくとも一つの連通路が設けられる
ことを特徴とするEGRバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、EGR装置を構成し、EGR通路におけるEGRガス流量を調節するために使用されるEGRバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される「EGRバルブ」が知られている。このEGRバルブは、EGRガスの流路を有するハウジングと、流路に設けられた弁座と、弁座に着座可能に設けられた弁体と、弁体を弁座に対し移動させるために弁体と一体的に設けられた弁軸と、弁体と共に弁軸を軸方向へストローク運動させるための駆動手段と、ハウジングと弁軸との間に設けられ、軸方向に一端と他端を有し、弁軸をストローク運動可能に支持するための軸受と、ハウジングと弁軸との間にて軸受に隣接して設けられ、軸方向に一端と他端を有し、他端の側にて弁軸と接触するシール部を有し、ハウジングと弁軸との間をシールするためのシール部材と、ハウジングと弁軸との間にてシール部材に隣接して設けられ、軸方向に一端と他端を有し、ハウジングと弁軸との間をデポジットからガードするためのデポガード部と、軸受の他端にシール部材の一端が隣接して配置され、シール部材の他端及びシール部にデポガード部の一端が隣接して配置され、デポガード部の他端が流路に面して配置されることとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-7266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のEGRバルブでは、シール部材とデポガード部
との間の隙間に、EGRガスやEGRガスから生じる凝縮水が浸入して滞留するおそれがあった。また、滞留した凝縮水によりハウジングが腐食すると、シール部材の外周からEGRガス及び凝縮水が軸受や駆動手段の側へ漏洩し、EGRバルブに駆動不良が生じるおそれがあった。
【0005】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、シール部材とデポガード部との間の隙間へのEGRガス及び凝縮水の浸入を抑制し、凝縮水によるハウジングの腐食を抑制することを可能としたEGRバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、EGRガスの流路を有するハウジングと、流路に設けられた弁座と、弁座に着座可能に設けられた弁体と、弁体を弁座に対し移動させるために弁体と一体的に設けられた弁軸と、弁体と共に弁軸を駆動させるための駆動手段と、ハウジングと弁軸との間に設けられ、軸方向に一端と他端を有し、弁軸を駆動可能に支持するための軸受と、ハウジングと弁軸との間にて軸受に隣接して設けられ、軸方向に一端と他端を有し、他端の側にて弁軸と接触するシール部を有し、ハウジングと弁軸との間をシールするためのシール部材と、ハウジングに設けられ、シール部材を保持する組付孔と、ハウジングと弁軸との間にて組付孔に保持されたシール部材に隣接して設けられ、軸方向に一端と他端を有し、流路から組付孔へのデポジットの侵入を防止するためのデポガード部と、軸受の他端にシール部材の一端が隣接して配置され、シール部材の他端及びシール部にデポガード部の一端が隣接して配置され、デポガード部の他端が流路に面して配置されることとを備えたEGRバルブにおいて、シール部材の他端には、デポガード部の一端へ向けて突出すると共にその一端に対し変形しながら接触してシール部材とデポガード部との間をシールするためのシール突部が設けられることを趣旨とする。
【0007】
上記技術の構成によれば、シール部材の他端には、デポガード部の一端へ向けて突出すると共にその一端に対し変形しながら接触してシール部材とデポガード部との間をシールするシール突部が設けられるので、ハウジングとシール部材とデポガード部との間に隙間が形成されても、その隙間がシール突部により閉塞され、その隙間への流体の流れが遮断される。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、シール突部は、その先端部が弁軸へ向けて傾斜し収束するようにリップ状に形成されることを趣旨とする。
【0009】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、シール突部の先端部が弁軸へ向けて傾斜し収束するようにリップ状に形成されるので、シール突部とデポガード部との初期接触圧を小さくすることが可能となる。また、流路の側からシール突部に正圧が作用するときは、そのシール突部とデポガード部材との接触圧を大きくすることが可能となる。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、デポガード部は、組付孔に保持されるデポガード部材により構成されることを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、シール部材とデポガード部材をそれぞれ流路の側から組付孔へ組み付けることが可能となる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項3に記載の技術において、組付孔の一部であってデポガード部材がされる部位の内径が、組付孔の一部であってシール部材が保持される部位の内径よりも大きく設定されることを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、請求項3に記載の技術の作用に加え、デポガード部材が保持される組付孔の部位の内径が、シール部材が保持される部位の内径よりも大きく設定されるの。従って、万が一、ハウジングとシール部材とデポガード部との間の隙間に凝縮水が浸入しても、その凝縮水が、デポガード部材が保持される内径の大きい部位へ流れ、ハウジングとシール部材との間に凝縮水が介在し難くなる。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、請求項1乃至4のいずれかに記載の技術において、組付孔の一部であってシール部材が保持される部位と、シール部材との間に、シール部材の一端の側と他端の側とを連通させる少なくとも一つの連通路が設けられることを趣旨とする。
【0015】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の技術の作用に加え、シール部材が保持される組付孔の部位とシール部材との間に、シール部材の一端の側と他端の側とを連通させる連通路が設けられる。従って、流路の側からシール突部に負圧が作用し、シール突部が負圧に引かれて変形し、デポガード部又はデポガード部材の一端から離れると、軸受の側(大気の側)から新気が連通路及び隙間を介して流路の側へ流れ、連通路及び隙間が掃気される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の技術によれば、ハウジングとシール部材とデポガード部との間の隙間へのEGRガス及び凝縮水の浸入を抑制することができ、凝縮水によるハウジングの腐食を抑制することができる。
【0017】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、シール突部をデポガード部又はデポガード部材の一端に密着させることができ、シール突部によるシール性を向上させることができる。
【0018】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、シール突部とデポガード部材との間の接触代を調整し易くすることができる。
【0019】
請求項4に記載の技術によれば、請求項3に記載の技術の効果に加え、凝縮水によるハウジングの腐食をより一層抑制することができる。
【0020】
請求項5に記載の技術によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の技術の効果に加え、ハウジングとシール部材とデポガード部又はデポガード部材との間の隙間及び連通路にEGRガスや凝縮水が浸入しても、流路からシール突部に作用する吸気負圧を利用してその凝縮水等を掃気により流路へ排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係り、全閉時のEGRバルブを示す正断面図。
図2】第1実施形態に係り、図1の一点鎖線四角で囲った部分を示す拡大断面図。
図3】第1実施形態に係り、ハウジングに取り付ける前のリップシールを示す断面図。
図4】第1実施形態に係り、図3のリップシールの一部を示す拡大断面図。
図5】第1実施形態に係り、EGRバルブの一部を示す拡大断面図。
図6】第1実施形態に係り、EGRバルブの一部を示す拡大断面図。
図7】第1実施形態の対比例に係り、EGRバルブの一部を示す図5図6に準ずる拡大断面図。
図8】第2実施形態に係り、EGRバルブの一部を示す図5図6に準ずる拡大断面図。
図9】第2実施形態に係り、EGRバルブの一部を示す図8のA-A線断面図。
図10】第3実施形態に係り、EGRバルブ一部を示す図2に準ずる拡大断面図。
図11】別の実施形態に係り、EGRバルブの一部を示す図6に準ずる拡大断面図。
図12】別の実施形態に係り、EGRバルブの一部を示す図9に準ずる断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、EGRバルブを具体化したいくつかの実施形態について説明する。周知のようにEGRバルブは、エンジンから排気通路へ排出される排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路へ流すEGR通路に設置され、EGR通路のEGRガス流量を調節するために使用される。以下の説明では、上記の設置状態を想定して説明する。
【0023】
<第1実施形態>
先ず、EGRバルブを具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
[EGRバルブの構成について]
図1に、この実施形態の全閉時のEGRバルブ1を正断面図により示す。このEGRバルブ1は、ポペットバルブとして、かつ、電動バルブとして構成される。図1に示すように、EGRバルブ1は、EGRガスの流路2を有するハウジング3と、流路2に設けられた弁座4と、弁座4に着座可能に設けられた弁体5と、弁体5を弁座4に対し移動させるために弁体5と一体的に設けられた弁軸6と、弁体5と共に弁軸6を駆動(ストローク運動)させるためのステップモータ7と、ハウジング3と弁軸6との間に設けられ、弁軸6を駆動(ストローク運動)可能に支持するためのスラスト軸受8と、ハウジング3と弁軸6との間にてスラスト軸受8に隣接して設けられ、ハウジング3と弁軸6との間をシールするためのリップシール9と、リップシール9に隣接して設けられ、ハウジング3と弁軸6との間へのデポジットの侵入を防止するためのデポガードプラグ10とを備える。
【0025】
図1に示すように、スラスト軸受8は、軸方向に一端8aと他端8bを有し、リップシール9よりもステップモータ7に近い側(図1の上側)に配置される。図1に示すように、デポガードプラグ10は、リップシール9よりも流路2に近い側(図1の下側)に配置される。ステップモータ7は、この開示技術における「駆動手段」の一例に相当する。リップシール9は、この開示技術における「シール部材」の一例に相当する。デポガードプラグ10は、この開示技術における「デポガード部」及び「デポガード部材」の一例に相当する。ハウジング3には、弁軸6を組み付けると共に、リップシール9とデポガードプラグ10を圧入より保持する組付孔3aが設けられる。組付孔3aは、流路2に開口する開口部3aaを有する。スラスト軸受8、リップシール9及びデポガードプラグ10は、弁軸6を中心にして組付孔3aに保持される。デポガードプラグ10は、組付孔3aの開口部3aaの近傍にて圧入により保持される。デポガードプラグ10と弁軸6との間には、通気を許容する微細な隙間が設けられる。
【0026】
この実施形態では、ハウジング3は金属材(例えば、アルミ)により形成される。ハウジング3に形成された流路2の両端は、EGRガスが導入される入口2aと、EGRガスが導出される出口2bとなっている。弁座4は、流路2の途中に設けられ、流路2に連通する弁孔4aを有する。
【0027】
弁軸6は、ステップモータ7と弁体5との間に設けられ、図1において、ハウジング3を垂直に貫通して配置される。弁体5は、弁軸6の下端部に固定され、円錐形状をなし、その円錐面が弁座4に対して当接又は離間するようになっている。弁軸6の上端部には、スプリング受11が一体に設けられる。
【0028】
ステップモータ7は、コイル21を含むステータ22と、ステータ22の内側に設けられたマグネットロータ23と、マグネットロータ23の中心に設けられた出力軸12とを含む。これらの部材12,21~23等が樹脂製のケーシング24によりモールドされて覆われる。ケーシング24には、横へ突出したコネクタ25が一体に形成される。コネクタ25には、コイル21から延びる端子26が設けられる。
【0029】
出力軸12は、外周に雄ネジ12aを有する。出力軸12の下端部は、弁軸6の上端部に設けられたスプリング受11に連結される。マグネットロータ23は、ロータ本体27と、ロータ本体27の外周に一体的に設けられた円筒状のプラスチックマグネット28とを含む。ロータ本体27の上端部外周には、ケーシング24との間に第1のラジアル軸受29が設けられる。プラスチックマグネット28の下端部内周には、スラスト軸受8との間に第2のラジアル軸受30が設けられる。これら上下のラジアル軸受29,30によりマグネットロータ23がステータ22の内側にて回転可能に支持される。ロータ本体27の中心には、出力軸12の雄ネジ12aに螺合する雌ネジ27aが形成される。マグネットロータ23と、下側の第2のラジアル軸受30との間には、第1の圧縮スプリング31が設けられる。スプリング受11と、第2のラジアル軸受30との間には、弁軸6をマグネットロータ23へ向けて付勢する、すなわち、弁体5を弁座4に着座させる閉弁方向へ付勢する第2の圧縮スプリング32が設けられる。
【0030】
図1に示すように、弁体5が弁座4に着座した全閉状態において、マグネットロータ23が一方向へ回転することにより、出力軸12の雄ネジ12aとロータ本体27の雌ネジ27aとの螺合関係により、第2の圧縮スプリング32の付勢力に抗して、出力軸12が一方向へ回転しながらスラスト方向である図1の下方向へストローク運動する。この出力軸12のストローク運動により、弁軸6と共に弁体5が図1の下方向へストローク運動し、弁体5が弁座4から離れて開弁する。
【0031】
一方、弁体5が弁座4から最大限に離れた全開状態(図示略)において、マグネットロータ23が反対方向へ回転することにより、出力軸12の雄ネジ12aとロータ本体27の雌ネジ27aとの螺合関係と、第2の圧縮スプリング32の付勢力により、出力軸12が反対方向へ回転しながらスラスト方向である図1の上方向へストローク運動する。この出力軸12のストローク運動により、弁軸6と共に弁体5が図1の上方向へストローク運動し、弁体5が弁座4に近付いて閉弁し、図1に示す全閉状態となる。
【0032】
[リップシールとデポガードプラグについて]
図2に、図1の一点鎖線四角S1で囲った部分を拡大断面図により示す。図3に、ハウジング3に取り付ける前のリップシール9を断面図により示す。図4に、図3のリップシール9の一部を拡大断面図により示す。図2図4は、EGRバルブ1が、弁軸6を水平にして横向きに設置された状態を想定して示す(後述する図5図10も同様)。図1図2に示すように、リップシール9は、ハウジング3と弁軸6との間にて、ハウジング3と弁軸6との間をシールするために設けられる。このリップシール9は、ハウジング3の組付孔3aに圧入される。弁軸6は、リップシール9の中心を貫通する。ハウジング3と弁軸6とリップシール9との間には、流路2に連通する空間としてのリップシール室15が形成される。
【0033】
図2図4に示すように、この実施形態で、リップシール9は、ゴム材により略二重筒状に形成され、ハウジング3の組付孔3aに保持するための保持部16と、保持部16の内側にて先端17aの内周が弁軸6の外周に弾性接触しシールするためのリップ部17とを含む。リップシール9は、軸方向に一端9aと他端9bを有し、リップ部17は、他端9bの側にて弁軸6の外周面に接触する。リップシール9の一端9aは、スラスト軸受8の側(ステップモータ7の側)へ向き、リップシール9の他端9bは、デポガードプラグ10の側(流路2の側)へ向いて配置される。リップ部17は、弁軸6の外周面に接触するように、その先端部が弁軸6へ向けて傾斜し収束するようにリップ状に形成される。リップ部17の先端17aも、デポガードプラグ10の側(流路2の側)へ向いて配置される。リップシール9は、金属製の補強環18をインサート成形することにより形成される。ここで、リップ部17の先端17aは、リップ部17が弁軸6の外周面と接触し始める先端を意味する。この実施形態では、リップ部17の先端17aがリップシール9の他端9b(保持部16の先端でもある)よりもリップシール9の内側に配置され、リップ部17の基端はリップシール9の一端9a(保持部16の基端でもある)の側に繋がる。リップ部17は、この開示技術における「シール部」の一例に相当する。図1図2に示すように、デポガードプラグ10は、軸方向に一端10aと他端10bを有し、ハウジング3と弁軸6との間にて組付孔3aに圧入により組み付けられ、リップシール9に隣接して配置される。
【0034】
図1図4に示すように、この実施形態において、補強環18は、略筒状をなす。保持部16は、ゴム材により補強環18を内包するように略筒状に形成され、組付孔3aに保持される。リップ部17は、ゴム材により保持部16と一体に形成される。この実施形態では、ゴム材として、フッ素ゴムを使用することができる。一般的には、保持部16に使用されるフッ素ゴムの標準的な硬度は「Hs70~90」となっている。保持部16において、補強環18の外周は、外周面が組付孔3aの内周面に接触する外周膜部19により覆われる。
【0035】
図2に示すように、スラスト軸受8の他端8bは、リップシール9の一端9aに隣接して配置される。リップシール9の他端9b及びリップ部17の先端17aは、デポガードプラグ10の一端10aに隣接して配置される。また、デポガードプラグ10の他端10bは、流路2に面して配置される。
【0036】
ここで、図2図4に示すように、リップシール9の他端9bには、シール突部40が設けられる。このシール突部40は、デポガードプラグ10の一端10aへ向けて突出すると共にその一端10aに対し変形しながら接触してリップシール9とデポガードプラグ10との間をシールする。デポガードプラグ10の一端10aは、円環状の平面をなしている。シール突部40は、デポガードプラグ10の円環状の一端10aの全周に対し連続的に接触するように、その先端部が弁軸6へ向けて傾斜し収束するようにリップ状に形成される。
【0037】
[リップシールとデポガードプラグの組み付けについて]
この実施形態では、リップシール9とデポガードプラグ10を組付孔3aに組み付けるに際し、最初にリップシール9を開口部3aaから組付孔3aに圧入により組み付ける。その後、デポガードプラグ10を開口部3aaから組付孔3aに圧入により組み付ける。このとき、図5図6に示すように、リップシール9のシール突部40の先端に、デポガードプラグ10の一端10aが接触するように、かつ、リップシール9の保持部16の端面(他端9b)にデポガードプラグ10の一端10aが接触しないようにデポガードプラグ10を組付孔3aに圧入する。この場合、リップシール9の保持部16の端面(他端9b)とデポガードプラグ10の一端10aとの間の隙間は、図5に示す最小隙間G1と、図6に示す最大隙間G2との間で調整することができる。これら隙間G1,G2があることで、保持部16の端面(他端9b)にデポガードプラグ10との接触による応力集中が生じない。また、図5図6に示す状態では、ハウジング3とリップシール9とデポガードプラグ10との間に部品隙間36が形成されるものの、その部品隙間36がシール突部40により閉塞され、その部品隙間36へのEGRガス等の流体の流れが遮断される。図5及び図6には、EGRバルブ1の一部を拡大断面図により示す。
【0038】
[EGRバルブの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRバルブ1の構成によれば、EGRバルブ1が、エンジンの排気通路から吸気通路へEGRガスを流すためのEGR通路に設置された状態において、リップシール9(シール部材)は、その一端9aがステップモータ7の側(スラスト軸受8の側)へ向き、その他端9bが流路2の側(デポガードプラグ10の側)へ向くと共に、リップ部17の先端17aが流路2の側へ向いて配置される。ここで、EGRバルブ1の弁体5が弁座4から離間する開弁時には、流路2の側からデポガードプラグ10(デポガード部材)と弁軸6との間の隙間を通じて、リップシール9のリップシール室15にEGRガスが侵入するが、リップ部17の先端17aの弁軸6への弾性接触による締め代により、リップ部17と弁軸6との間がシールされる。この結果、リップシール9のシール機能を担保することができる。
【0039】
また、この実施形態の構成によれば、ハウジング3の組付孔3aにリップシール9を圧入することにより、保持部16が組付孔3aに保持されると共に、ハウジング3と弁軸6との間がシールされる。このシール状態において、リップシール9では、補強環18の外周にて外周膜部19の外周面が組付孔3aの内周面に密着する。また、リップシール9の他端9bには、デポガードプラグ10の一端10aへ向けて突出すると共にその一端10aに対し変形しながら接触してリップシール9とデポガードプラグ10との間をシールするためのシール突部40が設けられる。ここで、ハウジング3とリップシール9とデポガードプラグ10との間に部品隙間36が形成されるものの、その部品隙間36がシール突部40により閉塞され、その部品隙間36へのEGRガス等の流体の流れが遮断される。このため、ハウジング3とリップシール9(シール部材)とデポガードプラグ10(デポガード部(デポガード部材))との間の部品隙間36へのEGRガス及び凝縮水の浸入を抑制することができ、凝縮水によるハウジング3の腐食を抑制することができる。
【0040】
[対比例について]
ここで、リップシール9の他端9bにシール突部40を設けない対比例について説明する。図7に、第1実施形態の対比例に係り、EGRバルブの一部を、図5図6に準ずる拡大断面図により示す。図7に示すように、この対比例では、リップシール9を組付孔3aに圧入により組み付けた後、デポガードプラグ10を開口部3aaから組付孔3aに圧入し、デポガードプラグ10の一端10aをリップシール9の他端9bに押し当てる。そして、リップシール9を最終位置まで組付孔3aに圧入することで、リップシール9とデポガードプラグ10との間に隙間ができないようにすることができる。しかし、この場合には、部品公差によっては、組付孔3aの内周壁とリップシール9の保持部16の外周壁との間の滑り抵抗(圧入抵抗)が大きくなることがある。この場合、保持部16の先端部(二点鎖線楕円S2で囲む部分)が、異常に変形した状態で組付孔3aに組み付けられることがある。その結果、保持部16の変形部分に応力集中が生じ、亀裂等の不具合が発生するおそれがある。更に、応力を受けた状態でリップシール9が組付孔3aに組み付いられているため、リップ部17の先端17aも応力の影響を受け変形する可能性があり、リップ部17のシール性能及び信頼性が低下するおそれがある。
【0041】
これに対し、この実施形態の構成によれば、リップシール9の保持部16の先端(他端9b)にシール突部40が設けられ、そのシール突部40を介してリップシール9とデポガードプラグ10が接触するので、リップシール9の他端9bが異常変形することがなく、その部分に応力集中が生じることがなく、亀裂等の不具合の発生を未然に防止することができる。この結果、リップ部17の先端17aが不要な応力の影響を受けなくなり、リップ部17のシール性能及び信頼性を担保することができる。
【0042】
この実施形態の構成によれば、リップシール9(シール部材)とデポガードプラグ10(デポガード部材)を、それぞれ流路2の側から開口部3aaを介して組付孔3aへ組み付けることが可能である。すなわち、開口部3aaから組付孔3aにリップシール9を圧入により組み付けた後、同じく開口部3aaから組付孔3aにデポガードプラグ10を圧入により組み付けることができる。この際、リップシール9を組付孔3aに組み付けた後、デポガードプラグ10の組付孔3aに対する圧入深さを適宜調節することができる。このため、シール突部40とデポガードプラグ10との間の接触代を調整し易くすることができる。
【0043】
この実施形態の構成によれば、シール突部40の先端部が弁軸6へ向けて傾斜し収束するようにリップ状に形成されるので、シール突部40とデポガードプラグ10(デポガード部材)との初期接触圧を小さくすることが可能となる。このため、シール突部40をデポガードプラグ10の一端10aに密着させることができ、シール突部40によるシール性を向上させることができる。
【0044】
<第2実施形態>
次に、EGRバルブを具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0045】
[組付孔の構成について]
この実施形態のEGRバルブ1は、組付孔3aの構成の点で第1実施形態と異なる。図8に、この実施形態のEGRバルブ1の一部を、図5図6に準ずる拡大断面図により示す。図9に、この実施形態のEGRバルブ1の一部を、図8のA-A線断面図により示す。この実施形態では、図8図9に示すように、組付孔3aの一部であってリップシール9(シール部材)の保持部16が圧入される部位と、リップシール9の保持部16との間に、リップシール9の一端9aの側と他端9bの側とを連通する一つの連通路41が設けられる。この実施形態では、組付孔3aの内周面に軸方向に伸びる溝を形成することで、この連通路41が設けられる。EGRバルブ1に関するその他の構成は、第1実施形態のそれと同じである。
【0046】
[EGRバルブの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRバルブ1の構成によれば、第1実施形態と異なり、次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、組付孔3aの一部であってリップシール9の保持部16が圧入される部位と、保持部16との間に、リップシール9の一端9aの側と他端9bの側とを連通する一つの連通路41が設けられる。ここで、図8に示すように、ハウジング3とリップシール9とデポガードプラグ10との間には、部品隙間36が形成される。この部品隙間36は、連通路41を介してスラスト軸受8の側、すなわち大気の側へ連通する。一方、ハウジング3と弁軸6とリップシール9との間には、流路2に連通するリップシール室15が形成される。また、部品隙間36が、シール突部40により閉塞され、その部品隙間36へのEGRガス等の流体の流れが遮断される。
【0047】
そして、流路2に、エンジンの吸気負圧が作用すると、その吸気負圧が流路2からリップシール室15を介してシール突部40に作用する。このとき、そのシール突部40が、吸気負圧に引かれて変形し、デポガードプラグ10の一端10aから離れ、図8に二点鎖線の矢印で示すように、新気が大気側から連通路41及び部品隙間36を介してリップシール室15及び流路2の側へ流れ、連通路41及び部品隙間36が掃気される。このため、ハウジング3とリップシール9とデポガードプラグ10との間の部品隙間36及び連通路41にEGRガスや凝縮水が浸入しても、流路2からシール突部40に作用する吸気負圧を利用してその凝縮水等を掃気によりリップシール室15を介して流路2へ排出することができる。
【0048】
<第3実施形態>
次に、EGRバルブを具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0049】
[組付孔等の構成について]
この実施形態のEGRバルブ1は、組付孔3a等の構成の点で前記第1実施形態と異なる。図10に、この実施形態のEGRバルブ1の一部を、図2に準ずる拡大断面図により示す。この実施形態では、図10に示すように、組付孔3aの一部であってデポガードプラグ10が圧入される部位の内径D1が、組付孔3aの一部であってリップシール9が圧入される部位の内径D2よりも大きく設定される。これら、内径D1,D2の設定に合わせて、デポガードプラグ10の外径が、リップシール9の外径よりも大きく設定される。
【0050】
[EGRバルブの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRバルブ1の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を有する。すなわち、この実施形態では、デポガードプラグ10(デポガード部材)が圧入される組付孔3aの部位の内径D1が、リップシール9(シール部材)が圧入される組付孔3aの部位の内径D2よりも大きく設定される。従って、万が一、ハウジング3とリップシール9とデポガードプラグ10との間の部品隙間36に凝縮水が浸入しても、その凝縮水が、デポガードプラグ10が圧入される組付孔3aの内径D1が大きい部位へ流れ易くなり、ハウジング3とリップシール9との間に凝縮水が介在し難くなる。このため、凝縮水によるハウジング3の腐食をより一層抑制することができる。
【0051】
[別の実施形態]
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0052】
(1)前記各実施形態では、図5及び図6に示すように、シール突部40を、デポガードプラグ10(デポガード部又はデポガード部材)の円環状の一端10aの全周に対し連続的に接触するように、その先端部が弁軸6へ向けて傾斜し収束するようにリップ状に形成した。これに対し、図11に示すように、シール突部40を、デポガードプラグ10の円環状の一端10aの全周に対し連続的に接触するように断面半楕円形状に形成することもできる。図11には、EGRバルブ1の一部を、図6に準ずる拡大断面図により示す。
【0053】
(2)前記第2実施形態では、図8及び図9に示すように、組付孔3aの内周面に軸方向に伸びる溝を一つ形成することで一つの連通路41を設けた。これに対し、図12に示すように、リップシール9の保持部16の外周面に軸方向に伸びる複数の溝を形成することで複数の連通路41を設けることもできる。図12には、EGRバルブ1の一部を、図9に準ずる拡大断面図により示す。
【0054】
(3)前記各実施形態では、この開示技術のEGRバルブを、ポペットバルブとして、かつ、電動バルブとして構成し具体化したが、この開示技術のEGRバルブを、ポペットバルブではなく二重偏心弁として、かつ、電動バルブとして構成し具体化することもできる。
【0055】
(4)前記各実施形態では、デポガード部を、ハウジング3とは別に形成して組付孔3aに組み付けられたデポガード部材としてのデポガードプラグ10により構成した。これに対し、デポガード部を、組付孔に対応してハウジングと一体に形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この開示技術は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンに設けられるEGR装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 EGRバルブ
2 流路
3 ハウジング
3a 組付孔
4 弁座
5 弁体
6 弁軸
7 ステップモータ(駆動手段)
8 スラスト軸受
8a 一端
8b 他端
9 リップシール(シール部材)
9a 一端
9b 他端
10 デポガードプラグ(デポガード部、デポガード部材)
10a 一端
10b 他端
17 リップ部(シール部)
40 シール突部
41 連通路
D1 内径
D2 内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12