(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】回転角度センサとこれを用いたパークロックセンサ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/14 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
G01D5/14 E
(21)【出願番号】P 2021188772
(22)【出願日】2021-11-19
【審査請求日】2023-01-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】石川原 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】大山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】守屋 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-198067(JP,A)
【文献】特開2004-197765(JP,A)
【文献】国際公開第2010/098472(WO,A1)
【文献】特開2020-165450(JP,A)
【文献】特開2012-37466(JP,A)
【文献】特開2002-174638(JP,A)
【文献】特開2011-112438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01P 3/00-3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心の周りを回転し、所定の方向に磁化された中央磁性体及び一対の側方磁性体と、
前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体によって形成される磁場を検知する磁場検知素子と、を有し、
前記中央磁性体は磁石であり、前記一対の側方磁性体は前記中央磁性体によって磁化された軟磁性体であり、
前記中央磁性体は、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の回転方向に関し、前記一対の側方磁性体の間に前記一対の側方磁性体から離間して配置され、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体のそれぞれは径方向に並ぶ一対の磁極を有し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の径方向外側の前記磁極は互いに逆であり、
前記一対の側方磁性体のそれぞれについて、
前記側方磁性体の磁化方向を示し、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを前記側方磁性体の磁化方向ベクトル、
前記回転中心と前記側方磁性体の中心を結ぶ線の延長線上にあって、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを基準ベクトルとすると、
前記磁化方向ベクトルは基準ベクトルに対して前記中央磁性体側に回転している、回転角度センサ。
【請求項2】
回転中心の周りを回転し、所定の方向に磁化された中央磁性体及び一対の側方磁性体と、
前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体によって形成される磁場を検知する磁場検知素子と、を有し、
前記一対の側方磁性体は磁石であり、前記中央磁性体は前記一対の側方磁性体によって磁化された軟磁性体であり、
前記中央磁性体は、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の回転方向に関し、前記一対の側方磁性体の間に前記一対の側方磁性体から離間して配置され、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体のそれぞれは径方向に並ぶ一対の磁極を有し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の径方向外側の前記磁極は互いに逆であり、
前記一対の側方磁性体のそれぞれについて、
前記側方磁性体の磁化方向を示し、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを前記側方磁性体の磁化方向ベクトル、
前記回転中心と前記側方磁性体の中心を結ぶ線の延長線上にあって、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを基準ベクトルとすると、
前記磁化方向ベクトルは基準ベクトルに対して前記中央磁性体側に回転している、回転角度センサ。
【請求項3】
回転中心の周りを回転し、所定の方向に磁化された中央磁性体及び一対の側方磁性体と、
前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体によって形成される磁場を検知する磁場検知素子と、を有し、
前記中央磁性体は前記一対の側方磁性体より磁化方向の長さが長く、
前記中央磁性体は、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の回転方向に関し、前記一対の側方磁性体の間に前記一対の側方磁性体から離間して配置され、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体のそれぞれは径方向に並ぶ一対の磁極を有し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の径方向外側の前記磁極は互いに逆であり、
前記一対の側方磁性体のそれぞれについて、
前記側方磁性体の磁化方向を示し、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを前記側方磁性体の磁化方向ベクトル、
前記回転中心と前記側方磁性体の中心を結ぶ線の延長線上にあって、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを基準ベクトルとすると、
前記磁化方向ベクトルは基準ベクトルに対して前記中央磁性体側に回転している、回転角度センサ。
【請求項4】
回転中心の周りを回転し、所定の方向に磁化された中央磁性体及び一対の側方磁性体と、
前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体によって形成される磁場を検知する磁場検知素子と、
前記回転中心の周りを回転し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体を支持する支持体と、を有し、
前記支持体は平板であり、前記支持体の側面は、円弧状の曲面部と、前記曲面部の両端を結ぶ平面部とを有し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体は前記平面部に支持され、
前記中央磁性体は、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の回転方向に関し、前記一対の側方磁性体の間に前記一対の側方磁性体から離間して配置され、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体のそれぞれは径方向に並ぶ一対の磁極を有し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の径方向外側の前記磁極は互いに逆であり、
前記一対の側方磁性体のそれぞれについて、
前記側方磁性体の磁化方向を示し、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを前記側方磁性体の磁化方向ベクトル、
前記回転中心と前記側方磁性体の中心を結ぶ線の延長線上にあって、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを基準ベクトルとすると、
前記磁化方向ベクトルは基準ベクトルに対して前記中央磁性体側に回転している、回転角度センサ。
【請求項5】
回転中心の周りを回転し、所定の方向に磁化された中央磁性体及び一対の側方磁性体と、
前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体によって形成される磁場を検知する磁場検知素子と、
前記回転中心の周りを回転し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体を支持する支持体と、を有し、
前記支持体は平板であり、前記支持体の側面は、円弧状の曲面部と、前記曲面部の両端を結ぶ平面部とを有し、
前記平面部に支持された軟磁性体を有し、前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体は前記軟磁性体に支持され、
前記中央磁性体は、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の回転方向に関し、前記一対の側方磁性体の間に前記一対の側方磁性体から離間して配置され、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体のそれぞれは径方向に並ぶ一対の磁極を有し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の径方向外側の前記磁極は互いに逆であり、
前記一対の側方磁性体のそれぞれについて、
前記側方磁性体の磁化方向を示し、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを前記側方磁性体の磁化方向ベクトル、
前記回転中心と前記側方磁性体の中心を結ぶ線の延長線上にあって、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを基準ベクトルとすると、
前記磁化方向ベクトルは基準ベクトルに対して前記中央磁性体側に回転している、回転角度センサ。
【請求項6】
前記軟磁性体は平板であり、前記中央磁性体は前記一対の側方磁性体より磁化方向の長さが長い、請求項5に記載の回転角度センサ。
【請求項7】
前記軟磁性体は平板部と、前記平板部から径方向外側に突き出す突出し部と、を有し、前記中央磁性体は前記突出し部に支持され、前記一対の側方磁性体は前記平板部に支持されている、請求項5に記載の回転角度センサ。
【請求項8】
前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体は形状及び寸法が等しい、請求項7に記載の回転角度センサ。
【請求項9】
回転中心の周りを回転し、所定の方向に磁化された中央磁性体及び一対の側方磁性体と、
前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体によって形成される磁場を検知する磁場検知素子と、
前記回転中心の周りを回転し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体を支持する支持体と、を有し、
前記支持体は平板であり、前記支持体の側面は、円弧状の曲面部と、前記曲面部の両端を結ぶ平面部とを有し、
前記支持体に支持された支持部材を有し、前記支持部材は、前記平面部に支持された第1の平板部と、前記第1の平板部か
ら径方向外側に突き出す第2の平板部と、前記第1の平板部から径方向内側に突き出し、前記支持体のいずれかの平面に支持された第3の平板部と、を有し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体は前記第1の平板部または前記第2の平板部に支持され、
前記中央磁性体は、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の回転方向に関し、前記一対の側方磁性体の間に前記一対の側方磁性体から離間して配置され、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体のそれぞれは径方向に並ぶ一対の磁極を有し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の
前記径方向外側の前記磁極は互いに逆であり、
前記一対の側方磁性体のそれぞれについて、
前記側方磁性体の磁化方向を示し、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを前記側方磁性体の磁化方向ベクトル、
前記回転中心と前記側方磁性体の中心を結ぶ線の延長線上にあって、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを基準ベクトルとすると、
前記磁化方向ベクトルは基準ベクトルに対して前記中央磁性体側に回転している、回転角度センサ。
【請求項10】
回転中心の周りを回転し、所定の方向に磁化された中央磁性体及び一対の側方磁性体と、
前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体によって形成される磁場を検知する磁場検知素子と、
前記回転中心の周りを回転し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体を支持する支持体と、を有し、
前記支持体は、平板部と、前記平板部から突き出す3つのステーとを有し、前記平板部の側面は、円弧状の曲面部と、前記曲面部の両端を結ぶ平面部とを有し、前記3つのステーは前記平面部から突き出し、前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体は前記3つのステーにそれぞれ支持され、
前記中央磁性体は、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の回転方向に関し、前記一対の側方磁性体の間に前記一対の側方磁性体から離間して配置され、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体のそれぞれは径方向に並ぶ一対の磁極を有し、前記中央磁性体と前記一対の側方磁性体の径方向外側の前記磁極は互いに逆であり、
前記一対の側方磁性体のそれぞれについて、
前記側方磁性体の磁化方向を示し、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを前記側方磁性体の磁化方向ベクトル、
前記回転中心と前記側方磁性体の中心を結ぶ線の延長線上にあって、前記側方磁性体の中心を始点として、前記回転中心から離れる方向を向くベクトルを基準ベクトルとすると、
前記磁化方向ベクトルは基準ベクトルに対して前記中央磁性体側に回転している、回転角度センサ。
【請求項11】
前記ステーはL字状に折り曲げられた帯状の部材であり、前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体は、前記ステーの先端の近傍で、前記ステーの前記回転中心と反対側を向く面にそれぞれ支持されている、請求項10に記載の回転角度センサ。
【請求項12】
前記ステーは前記平板部と同じ厚さを有し、前記平板部と一体形成される、請求項11に記載の回転角度センサ。
【請求項13】
前記磁化方向ベクトルと前記基準ベクトルのなす角度は90°未満である、請求項1から12のいずれか1項に記載の回転角度センサ。
【請求項14】
前記一対の側方磁性体のそれぞれについて、前記磁化方向ベクトルと前記基準ベクトルのなす角度をθ、前記中央磁性体の中心と前記回転中心とを結ぶ直線と前記基準ベクトルのなす角度をφとすると、θ=φである、請求項1から13のいずれか1項に記載の回転角度センサ。
【請求項15】
前記一対の側方磁性体のそれぞれについて、前記磁化方向ベクトルと前記基準ベクトルのなす角度をθ、前記中央磁性体の中心と前記回転中心とを結ぶ直線と前記基準ベクトルのなす角度をφとすると、θ<φである、請求項1から13のいずれか1項に記載の回転角度センサ。
【請求項16】
前記一対の側方磁性体のそれぞれについて、前記磁化方向ベクトルと前記基準ベクトルのなす角度をθ、前記中央磁性体の中心と前記回転中心とを結ぶ直線と前記基準ベクトルのなす角度をφとすると、θ>φである、請求項1から13のいずれか1項に記載の回転角度センサ。
【請求項17】
前記一対の側方磁性体は、前記中央磁性体の中心と前記回転中心とを結ぶ直線に関して鏡対称である、請求項1から16のいずれか1項に記載の回転角度センサ。
【請求項18】
前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体は磁石である、請求項3から12のいずれか1項に記載の回転角度センサ。
【請求項19】
前記中央磁性体及び前記一対の側方磁性体は直方体である、請求項1から1
8のいずれか1項に記載の回転角度センサ。
【請求項20】
請求項1から
19のいずれか1項に記載の回転角度センサを有するパークロックセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度センサとこれを用いたパークロックセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転体の回転角度を検知する回転角度センサが知られている。特許文献1には、回転する支持体の回転中心の周りに配置された3つの磁石と、3つの磁石で形成される磁場を検知する磁場検知素子と、を有する回転角度センサが開示されている。3つの磁石の形状は、支持体の回転中心とそれぞれの磁石の中心を通る線に関し線対称である。また、3つの磁石の磁化方向はそれぞれ、支持体の回転中心と磁石の中心を通る線と平行である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された回転角度センサでは、一つの磁石から出た磁束線(磁力線)は、隣接する磁石から一旦離れ、その後隣接する磁石に向かう経路を通る。このため、磁束線が広がりやすくなり、磁場検知素子の設置位置において十分な磁場強度を確保することが困難となる可能性がある。従って、磁石の大型化が必要となり、回転角度センサのコスト削減や小型化が制約される可能性がある。
【0005】
本発明は小さな磁石で十分な磁場検知性能を有する回転角度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転角度センサは、回転中心の周りを回転し、所定の方向に磁化された中央磁性体及び一対の側方磁性体と、中央磁性体及び一対の側方磁性体によって形成される磁場を検知する磁場検知素子と、を有し、中央磁性体は、中央磁性体と一対の側方磁性体の回転方向に関し、一対の側方磁性体の間に当該一対の側方磁性体から離間して配置され、中央磁性体と一対の側方磁性体のそれぞれは径方向に並ぶ一対の磁極を有し、中央磁性体と一対の側方磁性体の径方向外側の磁極は互いに逆である。一対の側方磁性体のそれぞれについて、側方磁性体の磁化方向を示し、側方磁性体の中心を始点として、回転中心から離れる方向を向くベクトルを側方磁性体の磁化方向ベクトル、回転中心と側方磁性体の中心を結ぶ線の延長線上にあって、側方磁性体の中心を始点として、回転中心から離れる方向を向くベクトルを基準ベクトルとすると、磁化方向ベクトルは基準ベクトルに対して中央磁性体側に回転している。
一態様では、中央磁性体は磁石であり、一対の側方磁性体は中央磁性体によって磁化された軟磁性体である。
一態様では、一対の側方磁性体は磁石であり、中央磁性体は一対の側方磁性体によって磁化された軟磁性体である。
一態様では、中央磁性体は一対の側方磁性体より磁化方向の長さが長い。
一態様では、回転角度センサは、回転中心の周りを回転し、中央磁性体と一対の側方磁性体を支持する支持体を有し、支持体は平板であり、支持体の側面は、円弧状の曲面部と、曲面部の両端を結ぶ平面部とを有し、中央磁性体と一対の側方磁性体は平面部に支持されている。
一態様では、回転角度センサは、回転中心の周りを回転し、中央磁性体と一対の側方磁性体を支持する支持体を有し、支持体は平板であり、支持体の側面は、円弧状の曲面部と、曲面部の両端を結ぶ平面部とを有し、平面部に支持された軟磁性体を有し、中央磁性体及び一対の側方磁性体は軟磁性体に支持されている。
一態様では、回転角度センサは、回転中心の周りを回転し、中央磁性体と一対の側方磁性体を支持する支持体を有し、支持体は平板であり、支持体の側面は、円弧状の曲面部と、曲面部の両端を結ぶ平面部とを有し、支持体に支持された支持部材を有し、支持部材は、平面部に支持された第1の平板部と、第1の平板部から径方向外側に突き出す第2の平板部と、第1の平板部から径方向内側に突き出し、支持体のいずれかの平面に支持された第3の平板部と、を有し、中央磁性体と一対の側方磁性体は第1の平板部または第2の平板部に支持されている。
一態様では、回転角度センサは、回転中心の周りを回転し、中央磁性体と一対の側方磁性体を支持する支持体を有し、支持体は、平板部と、平板部から突き出す3つのステーとを有し、平板部の側面は、円弧状の曲面部と、曲面部の両端を結ぶ平面部とを有し、3つのステーは平面部から突き出し、中央磁性体及び一対の側方磁性体は3つのステーにそれぞれ支持されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小さな磁石で十分な磁場検知性能を有する回転角度センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る回転角度センサ(φ≠θ)の概念図である。
【
図4】第1の実施形態に係る回転角度センサ(φ=θ)の概念図である。
【
図5】第2の実施形態に係る回転角度センサの概念図である。
【
図6】第3の実施形態に係る回転角度センサの概念図である。
【
図7】第4の実施形態に係る回転角度センサの概念図である。
【
図8】第5の実施形態に係る回転角度センサの概念図である。
【
図9】第6の実施形態に係る回転角度センサの概念図である。
【
図10】回転角度センサを有するパークロックセンサの概念図である。
【
図11】実施例と比較例の回転角度センサの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下の説明において、「周方向」は支持体2の回転中心Cを基準とする回転方向、すなわち、支持体2の回転中心Cを中心とする円の接線に沿った方向である。「径方向」は支持体2の回転中心Cを基準とする方向、すなわち、支持体2の回転中心Cを通る直線に沿った方向である。「角度位置」は支持体2の回転中心Cを基準とする角度、すなわち、支持体2の回転中心Cを原点とする極座標における角度である。また、図面において、中央磁性体3と側方磁性体4A,4Bとを結ぶ破線は、磁束線(磁力線)を概念的に示したものである。
【0010】
(第1の実施形態)
図1,2は本発明の第1の実施形態に係る回転角度センサ1Aの概略構成を示している。回転角度センサ1Aは、支持体2と、支持体2に支持された中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bと、磁場検知素子5と、を有している。支持体2は非磁性の金属や樹脂などで形成され、支持体2を不図示の回転軸に固定するための穴21が、支持体2の中心に設けられている。支持体2は不図示の回転軸と回転中心Cを共有し、回転中心Cの周りを回転軸とともに回転可能である。従って、支持体2の回転角度を検知することで回転軸の回転角度を検知することができる。支持体2を磁性金属などの磁性材料で形成して、支持体2にヨークとしての集磁機能を付与し、磁場検知素子5の設置位置における磁束密度を強めることもできる。
【0011】
支持体2には、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4B(以下、第1の側方磁性体4A、第2の側方磁性体4Bという場合がある)が支持されている。支持体2は円板であり、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bは、支持体2のいずれか一方の平面に支持されている。中央磁性体3は周方向に関し、一対の側方磁性体4A,4Bの間に配置されている。中央磁性体3の中心の角度位置と第1の側方磁性体4Aの中心の角度位置との差と、中央磁性体3の中心の角度位置と第2の側方磁性体4Bの中心の角度位置との差は等しい。すなわち、中央磁性体3は第1の側方磁性体4Aと第2の側方磁性体4Bの中間に位置している。但し、中央磁性体3の中心の角度位置と第1の側方磁性体4Aの中心の角度位置との差と、中央磁性体3の中心の角度位置と第2の側方磁性体4Bの中心の角度位置との差は90°以下である。第1の側方磁性体4Aと第2の側方磁性体4Bの形状と寸法は同一である。また、第1の側方磁性体4Aの中心と第2の側方磁性体4Bの中心の径方向位置、すなわち回転中心Cからの距離は等しい。これに対して、中央磁性体3の径方向(磁化方向)長さは一対の側方磁性体4A,4Bの径方向長さより大きく、中央磁性体3の中心の径方向位置は、一対の側方磁性体4A,4Bの中心の径方向位置より内側にある。
【0012】
中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bは全て磁石であり、ネオジムなどの磁性材料で形成されている。中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bは所定の方向に磁化されている。中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bの径方向外側の磁極は互いに逆である。本実施形態では中央磁性体3の径方向外側の磁極がS極、一対の側方磁性体4A,4Bの径方向外側の磁極がN極であるが、中央磁性体3の径方向外側の磁極がN極、一対の側方磁性体4A,4Bの径方向外側の磁極がS極であってもよい。中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bは直方体である。従って、中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bの磁化方向は直方体のいずれかの辺と平行である。
【0013】
磁場検知素子5は、支持体2が磁場検知素子5に対して相対回転できるように、所定の固定部(図示せず)に設けられている。磁場検知素子5は、中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bによって形成される磁場を検知する。磁場検知素子5は好ましくは、回転角度センサ1Aの角度検知範囲αの中央に設けられている。角度検知範囲αは、第1の側方磁性体4Aの中心と回転中心Cを結ぶ直線と、第2の側方磁性体4Bの中心と回転中心Cを結ぶ直線とに挟まれ、磁場検知素子5が設けられた、180°以下の角度範囲である。磁場検知素子5は、径方向の磁場強度を検知する素子と、周方向の磁場強度を検知する素子とを有している。素子の種類は限定されず、ホール素子のほか、AMR素子、TMR素子などの磁気抵抗効果素子を用いることができる。回転角度センサ1Aの演算部(図示せず)は、これらの素子が検知した磁場強度から合成磁場の角度を算出する。中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bによって形成される磁場の分布は予め求められているので、合成磁場の角度から支持体2の回転角度を検知することができる。
【0014】
上述の説明から明らかなように、第1の側方磁性体4Aと第2の側方磁性体4Bは、中央磁性体3の中心と回転中心Cとを結ぶ直線(以下に説明する第1の直線L1)に関し鏡対称である。これによって、磁場の分布が第1の直線L1に関し鏡対称になり、測定精度が改善される。また、第1の側方磁性体4Aについて説明したことは一対の側方磁性体4A,4Bのそれぞれについて適用されるので、以下の説明では第1の側方磁性体4Aについて説明する。ただし、第1の側方磁性体4Aと第2の側方磁性体4Bが、第1の直線L1に関し鏡対称でない構成も本発明に含まれることに留意されたい。
【0015】
ここで、以下の説明に用いる用語について説明する。
-第1の直線L1:中央磁性体3の中心Pと回転中心Cとを結ぶ直線
-第2の直線L2:側方磁性体4A,4Bの中心Qと回転中心Cとを結ぶ直線
-基準ベクトルV1:第2の直線L2の延長線上にあって、側方磁性体4A,4Bの中心Qを始点として回転中心Cから離れる方向を向くベクトル
-磁化方向ベクトルV2:側方磁性体4A,4Bの中心Qを始点として回転中心Cから離れる方向を向き、側方磁性体4A,4Bの磁化方向を示すベクトル
-θ:磁化方向ベクトルV2と基準ベクトルV1のなす角度(単位:°)
-φ:第1の直線L1と基準ベクトルV1のなす角度(または、第1の直線L1と第2の直線L2がなす角度(単位:°)
中央磁性体3の磁化方向は第1の直線L1と平行であるので、第1の直線L1は中央磁性体3の磁化方向と平行である。
【0016】
図2(a)、2(b)はそれぞれ、
図1(a)、1(b)の部分拡大図であって、中央磁性体3、第1の側方磁性体4A、第1の直線L1、第2の直線L2、基準ベクトルV1、磁化方向ベクトルV2、角度θ、φを示している。説明の便宜上、
図2には基準ベクトルV1と直交する直線L3も示している。
図3は比較例の回転角度センサ101の概略構成を示しており、θ=0°である。これに対し、本実施形態では、磁化方向ベクトルV2が基準ベクトルV1と異なる方向を向いており(θ≠0°)、より詳細には磁化方向ベクトルV2は基準ベクトルV1に対して、中央磁性体3側に(または中央磁性体3に向かって、または中央磁性体3に近づく方向に)回転している。
図1(a)では、磁化方向ベクトルV2と基準ベクトルV1の角度差が小さく、θ<φである。
図1(b)では、磁化方向ベクトルV2と基準ベクトルV1の角度差が大きく、θ>φである。ただし、後述するように、角度θが大きすぎるとセンサの回転角度検知性能が低下するため、θは最大で90°未満とすることが好ましい。すなわち、角度θは、基準ベクトルV1と、これと直交する直線L3との間で挟まれる角度範囲θ
A(ただし、θ=0°とθ=90°を除く)から選択することができる。90°未満という制限、すなわち角度範囲θ
Aの上限は回転角度センサの構成によって変わり得るため、これ以外の値とすることもできる。角度範囲θ
Aの上限は例えば、40°、50°、60°、70°、80°等、適宜定めることができる。
【0017】
図2を参照すると、磁化方向ベクトルV2が中央磁性体3側に回転しているため、磁束線が短くなり、磁場検知位置における磁場強度を強めることが容易である。比較例では磁化方向ベクトルV2が基準ベクトルV1と重なるため、磁束線が長くなる。このため、磁場検知位置における磁場強度を確保するために、磁石サイズの増加などが必要となる。これに対し、本実施形態では、従来の回転角度センサよりも磁石サイズを縮小し、回転角度センサ1Aのコストダウンや小型化が容易となる。
【0018】
前述の通り、角度θは角度範囲θAから選択することができる。角度θが小さい場合は磁束線の広がる範囲が拡大するため、角度検知範囲αが増加する。従って、大きな角度検知範囲αが要求される用途では、角度θを小さくすることが好ましい。一方、角度θが大きい場合は磁束線の広がる範囲が限定されるため、角度検知範囲αは減少するが、検知精度は向上する。従って、角度検知範囲αは小さくてよいが、高い検知精度が要求される用途では、所定の範囲内で角度θを大きくすることが好ましい。
【0019】
図4に示す例では、磁化方向ベクトルV2は第1の直線L1と平行である(φ=θ)。中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bは同一の方向に磁化されている。換言すれば、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bでは、直方体の3つの軸のうちの一つの軸が互いに平行である。この様な配置は特に製造工程の面から有利である。中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bを互いに異なる向きに配置するためには、位置決め(角度θの制御)のための治具や角度θの測定装置などが必要となる。これに対して、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bを同じ向きに配置する場合、製造設備や製造工程が簡素化され、位置決め精度も確保しやすい。
【0020】
角度検知範囲αは、一対の側方磁性体4A,4Bの角度位置を調整することでも調整できる。図示は省略するが、角度φを大きくして側方磁性体4A,4Bを中央磁性体3から遠ざけることで、角度検知範囲αを増加させることができる。一方、角度φを小さくして側方磁性体4A,4Bを中央磁性体3に近づけることで、角度検知範囲αが減少させることができる。但し、角度φは0°<φ≦90°の範囲であることが望ましい。
【0021】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。他の実施形態は、支持体2の構成、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bの構成などが第1の実施形態と異なり、説明を省略した構成、効果は第1の実施形態と同じである。
【0022】
(第2の実施形態)
図5は第2の実施形態に係る回転角度センサ1Bの概念図であり、
図5(a)は回転角度センサ1Bの正面図、
図5(b)は回転角度センサ1Bの側面図、
図5(c)は回転角度センサ1Bの斜視図を示している。支持体2は、第1の実施形態の円板を、回転中心Cを通らない直線で切断して得られる形状、ないし、D字状の切欠きを有する円形状である。支持体2の側面は、円弧状の曲面部22と、曲面部22の両端を結ぶ平面部23とを有している。中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bは平面部23に支持されている。中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bは例えば接着剤で平面部23に固定される。中央磁性体3は一対の側方磁性体4A,4Bより磁化方向の長さが長い。本実施形態の回転角度センサ1Bは、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bを支持する構造物が不要であるため、構成が単純である。また、第1の実施形態では中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bを円板状の支持体2に取り付けているため、支持体2と中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bとからなる構造物の重心が回転中心Cからずれる。このため、用途によっては、偏心の影響が、支持体2が取り付けられる回転軸にまで及ぶ可能性がある。偏心は、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bの一部またはすべての材料を変える(例えば、比重約7.4g/cm
3のネオジムの代わりに、比重約4.8g/cm
3のフェライトを用いる)ことでも調整することができるが、本実施形態では、支持体2の材料、平面部23の回転中心Cからの位置などを調整することで、偏心をさらに抑制することができる。
【0023】
(第3の実施形態)
図6(a)は第3の実施形態に係る回転角度センサ1Cの概念図であり、
図1と同様、回転角度センサ1Cの正面図を示している。支持体2の構成は第2の実施形態と同じである。すなわち、支持体2は平板であり、平板の側面は、円弧状の曲面部22と、曲面部22の両端を結ぶ平面部23とを有している。支持体2の構成の詳細については第2の実施形態を参照されたい。回転角度センサ1Cは、平面部23に支持された軟磁性体6をさらに有している。中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bは軟磁性体6に支持されている。軟磁性体6は平板であり、NiFeなどの材料で製造することができる。中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bは軟磁性体6の所定の位置に固定される。中央磁性体3は一対の側方磁性体4A,4Bより、磁化方向の長さが長い。中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bは磁力によって固定してもよく、その場合、中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bを非磁性の樹脂で封止してもよい、中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bは接着剤によって固定してもよい。本実施形態では、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bと軟磁性体6を、一つの組立体として、予め準備することができる。従って、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bの支持体2への取付けを、回転角度センサ1Cが取り付けられる製品の製造工場で行う必要がある場合でも、取付作業を容易に行うことができる。軟磁性体6はヨークとして機能するため、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bと軟磁性体6を通る循環磁束が形成され、磁束強度を強めることができる。
【0024】
図6(b)は第3の実施形態の変形例に係る回転角度センサ1Cの概念図であり、
図1と同様、回転角度センサ1Cの正面図を示している。本変形例では、軟磁性体6は平板部61と、平板部61から径方向外側に概ね直角に突き出す突出し部62と、を有している。すなわち、軟磁性体6は全体としてT字状の形状を有している。中央磁性体3は突出し部62に支持され、一対の側方磁性体4A,4Bは平板部61に支持されている。本変形例では、第3の実施形態と比べて中央磁性体3の磁化方向の長さを短くすることができるため、高価な磁石の体積を減らし、コストダウンを図ることができる。特に、本変形例では、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bの形状及び寸法が等しい。中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bとして同じ磁石を使用することができるので、製造工程が単純化される。
【0025】
(第4の実施形態)
図7は第4の実施形態に係る回転角度センサ1Dの概念図であり、
図7(a)は回転角度センサ1Dの正面図、
図7(b)は回転角度センサ1Dの側面図、
図7(c)は回転角度センサ1Dの斜視図を示している。支持体2の構成は第2の実施形態と同じである。すなわち、支持体2は平板であり、平板の側面は、円弧状の曲面部22と、曲面部22の両端を結ぶ平面部23とを有している。支持体2の構成の詳細については第2の実施形態を参照されたい。本実施形態の回転角度センサ1Dは、支持体2に支持された支持部材7をさらに有している。支持部材7は、平面部23に支持された第1の平板部71と、第1の平板部71から径方向外側に突き出す第2の平板部72と、第1の平板部71から径方向内側に突き出す第3の平板部73と、を有し、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bは第2の平板部72に支持され、第3の平板部73は支持体2のいずれか一方の平面に支持されている。中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bは第1の平板部71に支持されてもよい。第1の平板部71と第2の平板部72、及び第2の平板部72と第3の平板部73は互いに直交している。第3の平板部73には穴74が設けられ、支持体2の穴
74と対向する位置にねじ穴24が切られている。支持部材7は
、穴74を貫通
しねじ穴24に累合するねじ8によって
、支持体2に固定される。第1の平板部71は支持体2の裏面と揃えられているが、支持体2から張り出していてもよい。支持部材7は樹脂で作成することができ、且つ強度を確保できる限り薄く形成することができるため、コストダウンが可能となる。
【0026】
(第5の実施形態)
図8は第5の実施形態に係る回転角度センサ1Eの概念図であり、
図8(a)は回転角度センサ1Eの正面図、
図8(b)は回転角度センサ1Eの側面図、
図8(c)は回転角度センサ1Eの斜視図を示している。支持体2は、平板部25と、平板部25から突き出す3つのステー26~28とを有している。平板部25の構成は第2の実施形態と同じである。すなわち、平板部25は平板であり、平板の側面は、円弧状の曲面部22と、曲面部22の両端を結ぶ平面部23とを有している。3つのステー26~28は、平板部25から突き出し、L字状に折り曲げられた、帯状の部材である。中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bは3つのステー26~28にそれぞれ支持されている。中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bはステー26~28の先端の近傍で、ステーの回転中心Cと反対側を向く面29にそれぞれ支持されている。ステー26~28は平板部25と同じ厚さを有し、平板部25と一体形成される。ステー26~28は強度が確保できる限り薄くすることができるため、平板部25も薄く形成することができる。ステー26~28は折り曲げず、直線状の部材でもよい。その場合、中央磁性体3及び一対の側方磁性体4A,4Bは、磁極面ではなく、2つの磁極面と直交する側面でステー26~28に取り付けられる。ステー26~28は折り曲げ加工で作ることができるため、ステー26~28を含む支持体2は金属で形成することが望ましいが、樹脂で形成することもできる。ステー26~28を含む支持体2は非磁性金属で形成することができるが、磁性金属などの磁性材料で形成して、支持体2にヨークとしての集磁機能を付与し、磁場検知素子5の設置位置における磁束密度を強めることもできる。
【0027】
(第6の実施形態)
図9(a)は第6の実施形態に係る回転角度センサ1Fの概念図であり、
図1と同様、回転角度センサ1Fの正面図を示している。中央磁性体3は上述の実施形態と同様、磁石であるが、一対の側方磁性体4A,4Bは軟磁性体とされている。軟磁性体は中央磁性体3によって磁化されており、一種の磁石として振舞う。軟磁性
体はNiFeなどの材料から形成される。本実施形態では一対の側方磁性体4A,4Bとして磁石を用いる必要がないため、高価な磁石の体積を減らし、コストダウンを図ることができる。本実施形態では、支持体2は円板であるが、支持体2の構成は何ら制限されず、第2~第5の実施形態と組わせることができる。
【0028】
図9(b)は第6の実施形態の変形例に係る回転角度センサ1Fの概念図であり、
図1と同様、回転角度センサ1Fの正面図を示している。本変形例では、一対の側方磁性体4A,4Bは磁石であり、中央磁性体3は一対の側方磁性体4A,4Bによって磁化された軟磁性体である。本変形例も第6の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0029】
(第7の実施形態)
図10は、上述した回転角度センサ1Aを有するパークロックセンサ9の概念図を示している。パークロックセンサ9は自動車の自動変速機11のパークロック装置12に使用される。パークロック装置12は、シフトレバーをパーキング位置に操作したときに、自動変速機11の出力軸13をロックして車輪の回転を阻止する。出力軸13には第1の歯車14が一体的に形成されている。第1の歯車14の近傍には支点15Aを中心に揺動可能なパーキングポール15が設けられている。パーキングポール15には、第1の歯車14と対向し第1の歯車14と係合可能な第2の歯車16が形成されている。パーキングポール15は駆動装置17の動きにより、第2の歯車16が第1の歯車14に係合する位置と、第2の歯車16が第1の歯車14から離脱した位置を移動することができる。シフトレバーがパーキング位置に操作されると、モータ18の駆動により回転軸19が回転する。駆動装置17は回転軸19に接続されており、回転軸19の回転をパーキングポール15の搖動運動に変換する。この様なパークロック装置12においては、パークロック装置12の制御のために回転軸19の回転角度を検知する必要がある。この目的で、パークロックセンサ9が回転軸19に設けられている。本実施形態においては、上述の回転軸はモータ18と駆動装置17の間の回転軸19である。
【0030】
(実施例)
まず、実施例と比較例について、支持体2の回転角度と磁場検知素子5の設置位置での磁束密度との関係、及び支持体2の回転角度と回転角度センサの角度誤差との関係を求めた。結果を
図11に示す。角度誤差は、各角度位置における、検知された回転角度と実際の回転角度との差である。比較例の回転角度センサは
図3に示す比較例とほぼ同じであり、円形の支持体2の外周縁部に沿って中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bを配置している。より詳細には、中央磁性体3と一対の側方磁性体4A,4Bが軟磁性体のヨークに取り付けられ、ヨークがボルト8で支持体2に固定されている。実施例は
図6に示す第4の実施形態とほぼ同じである。実施例は比較
例より最小磁束密度が大きく、角度誤差が小さい。しかも、磁石の総体積は比較例と比べて約40%減少している。
【0031】
次に、角度θの調整可能範囲を求めた。具体的には、一対の側方磁性体4A,4Bの中
心と回転中心Cをそれぞれ結ぶ直線の間の角度(2φ)を様々に変えながら、調整可能範囲、すなわち回転角度検知可能なθの上限値を求めた。結果を
図12に示す。角度θが上限値を超えると磁束のベクトル角度が360°以上回転してしまい、回転角度が検知できない。角度φが小さい場合、角度θの調整可能範囲は小さく、例えば、φ=20°の場合、約30°である。角度φが大きくなるに従い、角度θの調整可能範囲も増加する。しかし、角度φがさらに大きくなると角度θの調整可能範囲は減少する。この様にして求めた回転角度検知可能なθの上限値は最大で82.5°(2φ=70°)である。ただし、θの上限値は中央磁性体3と側方磁性体のサイズにもよるため、上記の値は一例である。大きな調整可能範囲を得る場合2φは60~80°(φは30~40°)程度であることが好ましい。
【符号の説明】
【0032】
1A~1F 回転角度センサ
2 支持体
3 中央磁性体
4A,4B 側方磁性体
5 磁場検知素子
6 軟磁性体
7 支持部材
9 パークロックセンサ
26~28 ステー
C 回転中心