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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B60B 27/00 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
B60B27/00 E
B60B27/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021207477
(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公開番号】P2023092320
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】柴田 将利
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-030802(JP,A)
【文献】特開2001-253203(JP,A)
【文献】実開昭53-030610(JP,U)
【文献】特開2018-198586(JP,A)
【文献】特開平08-225024(JP,A)
【文献】実開平01-060976(JP,U)
【文献】実開昭57-086802(JP,U)
【文献】特開2018-057284(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0351704(US,A1)
【文献】中国実用新案第202952768(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の車輪を備える作業車であって、
車体に支持される車軸の端部に形成されたフランジと、
前記フランジに脱着可能な状態で前記車輪に設けられたハブ部と、が備えられ、
前記ハブ部の車輪回転軸芯に沿う方向での中心と、前記車輪に備えられた接地部の車輪回転軸芯に沿う方向での中心とが車輪回転軸芯に沿う方向に位置ずれするように構成され、
前記ハブ部は、両側部のうちの一方の第1側部が前記フランジに当たる状態で前記フランジに連結する第1連結状態と、前記両側部のうちの他方の第2側部が前記フランジに当たる状態で前記フランジに連結する第2連結状態と、に切り換えて前記フランジに連結可能に構成されており
前記ハブ部に、前記ハブ部の周縁部から車輪回転軸芯に沿う方向に延びるリング部が備えられ、
前記リング部は、前記ハブ部を前記フランジに連結するために前記ハブ部に取り付けられる複数本のハブ連結ボルトよりも前記ハブ部の外周側において前記ハブ部の全周囲に亘って設けられ、
前記ハブ部と前記接地部とを連結するスポーク部が前記リング部に連結されている作業車。
【請求項2】
左右一対の車輪を備える作業車であって、
車体に支持される車軸の端部に形成されたフランジと、
前記フランジに脱着可能な状態で前記車輪に設けられたハブ部と、が備えられ、
前記ハブ部の車輪回転軸芯に沿う方向での中心と、前記車輪に備えられた接地部の車輪回転軸芯に沿う方向での中心とが車輪回転軸芯に沿う方向に位置ずれするように構成され、
前記ハブ部は、両側部のうちの一方の第1側部が前記フランジに当たる状態で前記フランジに連結する第1連結状態と、前記両側部のうちの他方の第2側部が前記フランジに当たる状態で前記フランジに連結する第2連結状態と、に切り換えて前記フランジに連結可能に構成されており、
前記ハブ部に、前記ハブ部の周縁部から車輪回転軸芯に沿う方向に延びるリング部が備えられ、
前記ハブ部と前記接地部とを連結するスポーク部が前記リング部に連結されており、
前記車軸を支持する車軸ケースが備えられ、
前記車軸ケースは、前記車軸に沿う方向に2つの分割車軸ケースに分割され、前記2つの分割車軸ケースのうち前記フランジに隣り合う方の第1分割車軸ケースの周縁部を前記2つの分割車軸ケースのうち前記第1分割車軸ケースに対して前記フランジが位置する側とは反対側の第2分割車軸ケースに前記車軸に沿う方向に締め付け連結する連結ボルトが備えられ、
前記ハブ部が前記第1連結状態で前記フランジに連結されると、前記リング部が前記第1分割車軸ケースと係合し、
前記連結ボルトに、前記第1分割車軸ケースにおける周縁部に位置する頭部が備えられ、
前記第1分割車軸ケースの周方向に沿う方向での前記頭部の両横側において前記第1分割車軸ケースから前記リング部の内部に向かって突出する突起部が備えられ、
前記突起部の先端が前記頭部の先端よりも前記ハブ部側に位置している作業車。
【請求項3】
前記車軸を支持する車軸ケースが備えられ、
前記車軸ケースは、前記車軸に沿う方向に2つの分割車軸ケースに分割され、
前記2つの分割車軸ケースのうち前記フランジに隣り合う方の第1分割車軸ケースの周縁部を前記2つの分割車軸ケースのうち前記第1分割車軸ケースに対して前記フランジが位置する側とは反対側の第2分割車軸ケースに前記車軸に沿う方向に締め付け連結する連結ボルトが備えられ、
前記フランジの前記連結ボルトに対応する部位に、前記連結ボルトを締め付け操作する工具を前記連結ボルトに向けて前記車軸に沿う方向に挿通させる切欠き部が備えられている請求項に記載の作業車。
【請求項4】
前記車軸ケースを操向軸芯まわりに揺動操向可能に支持する車体側車軸ケースが備えられ、
前記車体側車軸ケースの外周部に突設され、前記車軸ケースに備えられたナックルアームの揺動操作限界を設定するストッパーが備えられ、
前記ストッパーは、前記外周部のうち車体横内側に向く部分に突設されている請求項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の車輪を備える作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対の車輪を備える作業車としては、たとえば、特許文献1に示される乗用型田植機がある。この乗用型田植機では、左右一対の車輪(前車輪、後車輪)が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-127287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば、乗用型田植機にあっては、苗植付条の間隔を変更して植え付け作業を行う際、車輪が通る箇所と苗植付箇所とが一致しないように、左右の車輪の接地中心間の距離(トレッド)を変更することが好ましい。
【0005】
本発明は、左右車輪のトレッド変更を簡単な作業で行える作業車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、左右一対の車輪を備える作業車であって、
車体に支持される車軸の端部に形成されたフランジと、前記フランジに脱着可能な状態で前記車輪に設けられたハブ部と、が備えられ、前記ハブ部の車輪回転軸芯に沿う方向での中心と、前記車輪に備えられた接地部の車輪回転軸芯に沿う方向での中心とが車輪回転軸芯に沿う方向に位置ずれするように構成され、前記ハブ部は、両側部のうちの一方の第1側部が前記フランジに当たる状態で前記フランジに連結する第1連結状態と、前記両側部のうちの他方の第2側部が前記フランジに当たる状態で前記フランジに連結する第2連結状態と、に切り換えて前記フランジに連結可能に構成されており前記ハブ部に、前記ハブ部の周縁部から車輪回転軸芯に沿う方向に延びるリング部が備えられ、前記リング部は、前記ハブ部を前記フランジに連結するために前記ハブ部に取り付けられる複数本のハブ連結ボルトよりも前記ハブ部の外周側において前記ハブ部の全周囲に亘って設けられ、前記ハブ部と前記接地部とを連結するスポーク部が前記リング部に連結されている
【0007】
本構成によると、ハブ部を第1連結状態でフランジに連結した状態における車体の左右中心箇所から接地部の中心までの距離と、ハブ部を第2連結状態でフランジに連結した状態における車体の左右中心箇所から接地部の中心までの距離と、が相違するので、ハブ部を第1連結状態でフランジに連結することによって車輪を車軸に支持する支持状態と、ハブ部を第2連結状態でフランジに連結することによって車輪を車軸に支持する支持状態とに車輪の支持状態を切り換えるだけの簡単な作業で左右車輪のトレッドを変更することができる。
本構成によると、ハブ部がリング部によって補強されるので、ハブ部の剛性を高めて車輪を車軸にしっかり支持させることができる。ハブ部を補強するリング部にスポーク部が支持されるので、スポーク部の支持強度が高まり、車輪の剛性を高めることができる。
別の本発明は、左右一対の車輪を備える作業車であって、
車体に支持される車軸の端部に形成されたフランジと、前記フランジに脱着可能な状態で前記車輪に設けられたハブ部と、が備えられ、前記ハブ部の車輪回転軸芯に沿う方向での中心と、前記車輪に備えられた接地部の車輪回転軸芯に沿う方向での中心とが車輪回転軸芯に沿う方向に位置ずれするように構成され、前記ハブ部は、両側部のうちの一方の第1側部が前記フランジに当たる状態で前記フランジに連結する第1連結状態と、前記両側部のうちの他方の第2側部が前記フランジに当たる状態で前記フランジに連結する第2連結状態と、に切り換えて前記フランジに連結可能に構成されており、前記ハブ部に、前記ハブ部の周縁部から車輪回転軸芯に沿う方向に延びるリング部が備えられ、前記ハブ部と前記接地部とを連結するスポーク部が前記リング部に連結されており、前記車軸を支持する車軸ケースが備えられ、前記車軸ケースは、前記車軸に沿う方向に2つの分割車軸ケースに分割され、前記2つの分割車軸ケースのうち前記フランジに隣り合う方の第1分割車軸ケースの周縁部を前記2つの分割車軸ケースのうち前記第1分割車軸ケースに対して前記フランジが位置する側とは反対側の第2分割車軸ケースに前記車軸に沿う方向に締め付け連結する連結ボルトが備えられ、前記ハブ部が前記第1連結状態で前記フランジに連結されると、前記リング部が前記第1分割車軸ケースと係合し、前記連結ボルトに、前記第1分割車軸ケースにおける周縁部に位置する頭部が備えられ、前記第1分割車軸ケースの周方向に沿う方向での前記頭部の両横側において前記第1分割車軸ケースから前記リング部の内部に向かって突出する突起部が備えられ、前記突起部の先端が前記頭部の先端よりも前記ハブ部側に位置している。
本構成によると、連結ボルトのうち第1分割車軸ケースから露出している部分が第1分割車軸ケースの外方からリング部によって覆われるで、リング部を連結ボルトに対するカバーに活用して泥土などを連結ボルトに付着し難くできる。
本構成によると、リング部の内部に泥土などが入り込み、入り込んだ泥土などがリング部およびハブ部の回転によって回動力を付与されても、泥土などが連結ボルトの頭部に擦れることが突起部によって防止されるので、頭部を泥土などによって摩滅されないように突起部によって保護できる。
【0008】
本発明においては、
前記車軸を支持する車軸ケースが備えられ、前記車軸ケースは、前記車軸に沿う方向に2つの分割車軸ケースに分割され、前記2つの分割車軸ケースのうち前記フランジに隣り合う方の第1分割車軸ケースの周縁部を前記2つの分割車軸ケースのうち前記第1分割車軸ケースに対して前記フランジが位置する側とは反対側の第2分割車軸ケースに前記車軸に沿う方向に締め付け連結する連結ボルトが備えられ、前記フランジの前記連結ボルトに対応する部位に、前記連結ボルトを締め付け操作する工具を前記連結ボルトに向けて前記車軸に沿う方向に挿通させる切欠き部が備えられていると好適である。
【0009】
本構成によると、フランジの外径を第1分割車軸ケースの外径と同じあるいはほぼ同じ、あるいは第1分割車軸ケースの外径よりも大きくしても、工具を切欠き部に通して連結ボルトに向かわせて連結ボルトの締め付けを行えるので、外径が大きいフランジにボス部を連結して車輪を車軸にしっかり支持させることができる。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
本発明においては、
前記車軸ケースを操向軸芯まわりに揺動操向可能に支持する車体側車軸ケースが備えられ、前記車体側車軸ケースの外周部に突設され、前記車軸ケースに備えられたナックルアームの揺動操作限界を設定するストッパーが備えられ、前記ストッパーは、前記外周部のうち車体横内側に向く部分に突設されていると好適である。
【0017】
本構成によると、左右車輪のトレッドを狭い方に変更することによって車輪と車体側車軸ケースとの間隔が狭くなり、かつ、ナックルアームが揺動操作限界に達するまで車輪を操向操作した際、車輪のうち車軸ケースよりも内側に入り込む部分がストッパーおよびナックルアームに当らないようにしながら、車輪を操向限界まで操向操作することが可能になり、車輪の操向操作可能な揺動範囲を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】乗用型田植機の側面図である。
図2】ハブ部を第1連結状態でフランジに連結した状態の前車輪の断面図である。
図3】ハブ部を第2連結状態でフランジに連結した状態の前車輪の断面図である。
図4】フランジおよび車軸ケースを示す側面図である。
図5】ハブ部を第1連結状態でフランジに連結した状態の前車輪の斜視図である。
図6】ハブ部を第2連結状態でフランジに連結した状態の前車輪の斜視図である。
図7】ナックルアームの操作限界を示す説明図である。
図8】上部リンクの支持構造を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、乗用型田植機(「作業車」の一例)の車体に関し、図1,2,3などに示される矢印Fの方向を「車体前方」、矢印Bの方向を「車体後方」、矢印Uの方向を「車体上方」、矢印Dの方向を「車体下方」、矢印Lの方向を「車体左方」、矢印Rの方向を「車体右方」とする。
【0020】
〔乗用型田植機の全体〕
図1に示されるように、乗用型田植機は、左右一対の操向かつ駆動可能な前車輪1、左右一対の駆動可能な後車輪2が備えられた車体3を有している。車体3の前部に、エンジン(図示せず)を備える原動部4が形成されている。車体3の後部に、運転座席5、前車輪1を操向操作するステアリングホィール6を備える運転部7が形成されている。車体3の後部に、苗植付装置8が連結されている。車体後部への苗植付装置8の連結は、車体フレーム9の後部から後方に向けて上下揺動操作可能に延びるリンク機構10が備えられ、リンク機構10の遊端部に苗植付装置8を連結することによって行われている。苗植付装置8には、車体横幅方向に並ぶ複数の苗植付機構8a、苗植付機構8aの苗植え運動に連動させて車体横幅方向に往復移送され、複数の苗植付機構8aに苗供給する苗載台8bが備えられている。本実施形態では、8つの苗植付機構8aが備えられているが、7つ以下、9つ以上の苗植付機構8aを備えるものでもよい。
【0021】
〔前車輪の構成〕
図2,3に示されるように、左右一対の前車輪1それぞれの支持構造には、車体3に支持される前車軸11の端部に形成され、前車輪1を脱着するフランジ12が備えられている。前車軸11は、車軸芯Yの周りで駆動可能に車軸ケース20に支持されている。
【0022】
左右一対の前車輪1のそれぞれは、図2,5,6に示されるように、前車輪1の車輪回転軸芯Xを有するハブ部13、ハブ部13に複数本のスポーク部14を介して連結された接地部15を備えている。接地部15は、ゴム製である。本実施形態では、4本のスポーク部14を備えているが、3本、あるいは、5本以上のスポーク部14を備えるものでもよい。また、スポーク部14としは、アーム形状の他、円板状のスポーク部の採用が可能である。
【0023】
図2,5に示されるように、ハブ部13とスポーク部14との連結は、ハブ部13の周縁部から車輪回転軸芯Xに沿う方向に延びるリング部16が備えられ、リング部16とスポーク部14とを連結することによって行われている。ハブ部13とスポーク部14とにわたり、ハブ部13とスポーク部14との連結を補強する補強部材17が連結されている。
【0024】
ハブ部13は、両側部のうちの一方の第1側部13aがフランジ12に当たる状態でフランジ12に連結する第1連結状態(図2参照)と、両側部のうちの他方の第2側部13bがフランジ12に当たる状態でフランジ12に連結する第2連結状態(図3参照)と、に切り換えてフランジ12に連結可能に構成されている。ハブ部13のフランジ12への第1連結状態での連結、および、ハブ部13のフランジ12への第2連結状態での連結は、ハブ部13の周方向での複数箇所に備えられた連結孔13cのそれぞれを挿通させた連結ボルト18(ハブ連結ボルト)をフランジ12に備えられているねじ孔12a(図4参照)に係合させ、ハブ部13をフランジ12に連結ボルト18によって車輪回転軸芯Xに沿う方向に締め付け連結することによって行うように構成されている。ハブ部13をフランジ12に第1連結状態で連結する場合、および、ハブ部13をフランジ12に第2連結状態で連結する場合、フランジ12の側部に備えられた位置決め突部12bがハブ部13に備えられた位置決め開口13eに係入し、車輪回転軸芯Xと車軸芯Yとの位置合わせが行われる。
【0025】
図2に示されるように、ハブ部13の車輪回転軸芯Xに沿う方向での中心13dと、接地部15の車輪回転軸芯Xに沿う方向での中心15aと、が車輪回転軸芯Xに沿う方向に位置ずれするように構成されている。図2に示されるように、ハブ部13がフランジ12に第1連結状態で連結されることによって前車輪1が前車軸11に支持された場合における車体3の横幅方向での中心箇所3aから接地部15の中心25aまでの距離をL1とし、図3に示されるように、ハブ部13がフランジ12に第1連結状態で連結されることによって前車輪1が前車軸11に支持された場合における車体3の中心箇所3aから接地部15の中心15aまでの距離をL2とすると、距離L1が距離L2よりも短くなる。
【0026】
たとえば、車体3に連結する苗植付装置を変更するなどによって苗植付条の間隔を変更する場合、ハブ部13をフランジ12に第1連結状態で連結する支持姿勢と、ハブ部13をフランジ12に第2連結状態で連結する支持姿勢とに左右一対の前車輪1の前車軸11への支持姿勢を変更することにより、前車輪1が通る箇所と苗植付箇所とを一致させないように左右の前車輪1のトレッドを変更することができる。
【0027】
尚、左右の後車輪2のトレッド変更は、後車輪2の筒形ハブ部を後車軸19(図1参照)にスライド調節し、後車軸19に対する後車輪2の位置決めを行う筒部材を後車軸19に取付けることによって行うように構成されている。
【0028】
図2に示されるように、前車軸11の車体3への支持は、前車軸11を車軸ケース20に回転可能に持し、車体横幅方向に延びる状態で車体フレーム9に支持される車体側車軸ケース21の横端部に車体上下向きの支持部21aを備え、支持部21aに車軸ケース20を支持することによって行われている。
【0029】
図2に示されるように、車軸ケース20は、前車軸11に沿う方向に2つの分割車軸ケースに分割されている。2つの分割車軸ケースの連結は、2つの分割車軸ケースのうちフランジ12に隣り合う第1分割車軸ケース20aの周縁部としてのフランジ部23と、2つの分割車軸ケースのうち第1分割車軸ケース20aに対してフランジ12が位置する側とは反対側の第2分割車軸ケース20bの周縁部としてのフランジ部24とを分割車軸ケースの周方向に並ぶ複数の連結ボルト22によって連結することにって行われている。複数の連結ボルト22のそれぞれは、第1分割車軸ケース20aのフランジ部23に備えられた連結孔を挿通させて第2分割車軸ケース20bのフランジ部24に備えられたねじ孔に係合させ、第1分割車軸ケース20aを第2分割車軸ケース20bに前車軸11に沿う方向に締め付け連結するように構成されている。
【0030】
図4に示されるように、フランジ12のうち複数の連結ボルト22のそれぞれに対応する部位に切欠き部25が備えられている。連結ボルト22を締め付け操作、あるいは緩め操作する工具26(たとえば連結ボルト22とインパクトレンチ(図示せず)とを連結するインパクトソケット)をフランジ12の横外側方から切欠き部25に差し入れることにより、工具26が切欠き部25を前車軸11に沿う方向に挿通して連結ボルト22に向かって進み、工具26を連結ボルト22に連結することができる。
【0031】
図2に示されるように、ハブ部13がフランジ12に第1連結状態で連結された際、リング部16が第1分割車軸ケース20aと係合するように構成されている。リング部16と第1分割車軸ケース20aとの係合は、第1分割車軸ケース20aの周縁部(フランジ部23)がリング部16に入り込むようにリング部16が第1分割車軸ケース20aの周縁部に外嵌する状態で行われる。図2,4に示されるように、複数の連結ボルト22のそれぞれに、第1分割車軸ケース20aのフランジ部23に位置する頭部22aが備えられている。第1分割車軸ケース20aの周方向に沿う方向での頭部22aの両横側において、第1分割車軸ケース20aのフランジ部23からリング部16の内部に向かって突出する突起部27が備えられている。突起部27は、突起部27の先端が連結ボルト22の頭部22aの先端よりもハブ部側に位置する状態で備えられている。泥土がリング部16の内部に入り込んでハブ部13およびリング部16によって回動力を付与されても、泥土が頭部22aに擦れることが突起部27によって防止される。
【0032】
図2,7に示されるように、車軸ケース20は、車体側車軸ケース21の端部に備えられた車体上下向きの支持部21aに操向軸芯Pまわりで揺動可能に支持されている。車軸ケース20に備えられたナックルアーム28と、車体3の横幅方向での中央部に車体上下向き軸芯Z周りに車体左右方向に揺動可能に支持されたピットマンアーム38とがタイロッド29によって連結されている。ステアリングホィール6からピットマンアーム38およびタイロッド29を介して伝達される操向操作力によってナックルアーム28が揺動操作され、車軸ケース20がナックルアーム28によって操向軸芯P周りに揺動操作されるように構成されている。前車輪1は、ステアリングホィール6の回転操作によって操向軸芯P周りに揺動操向操作される。
【0033】
図7に示されるように、ナックルアーム28は、車軸ケース20から後向きに延ばされている。車体側車軸ケース21の支持部21aにおける外周部にストッパー30が突設され、前車輪1の後部が操向軸芯P周りに車体内側に向かって揺動する前車輪1の操向操作が行われた際、ナックルアーム28がストッパー30に当り、ナックルアーム28の揺動操作限界がストッパー30によって設定されるように構成されている。ナックルアーム28のストッパー30への当りは、ナックルアーム28に備えられた位置決め突部31がストッパー30に当たることによって行われる。位置決め突部31は、ナックルアーム28から上向きに突設されている。位置決め突部31は、ナックルアーム28に一体形成された支持部に圧入したピン部材によって構成されている。ストッパー30によって設定されるナックルアーム28の揺動操作限界としては、線Dで示されるデットポイントの手前の揺動操作位置が設定されている。ナックルアーム28がデットポイントを越えて揺動することがストッパー30によって防止される。
【0034】
ストッパー30は、支持部21aにおける外周部のうち車体横内側に向く内向き部分21Zに突設されている。ハブ部13がフランジ12に第1連結状態で連結される連結姿勢で前車輪1が前車軸11に支持され、車体3の中心箇所3aから接地部15の中心15aまでの距離L1が距離L2よりも短くなっても、前車輪1のスポーク部14がストッパー30およびナックルアーム28に当たることを回避しつつナックルアーム28のデットポイント越えを防止することができる。
【0035】
図1に示されるように、後車軸ケース32は、車体フレーム9から後方に向かって上下揺動可能に延びる上部リンク33および下部リンク34の後部に支持されている。後車軸ケース32と車体フレーム9とにわたってサスペンションバネ35が設けられている。上部リンク33の車体フレーム9への支持は、図8に示されるように、車体フレーム9に支持されるブラケット36に支持筒36aを介して支軸37を支持し、上部リンク33の前端部に備えられたボス部33aを支軸37に回転可能に支持することによって行われている。
【0036】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、本発明は、前車輪1の支持構造に適用された例を示したが、後車輪の支持構造に適用するものでもよい。また、遊転型の車輪、あるいは、操向操作が不能な車輪に適用するものでもよい。
【0037】
(2)上記した実施形態では、切欠き部25を備えた例を示したが、フランジ12の外径を車軸ケース20の外径よりも小さくし、切欠き部25を備えないものでもよい。
【0038】
(3)上記した実施形態では、リング部16を備えた例を示したが、リング部16を備えないものでもよい。
【0039】
(4)上記した実施形態では、ストッパー30を設けた例を示したが、ストッパー30を備えないものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、左右一対の車輪を備える作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 前車輪(車輪)
3 車体
12 フランジ
13 ハブ部
13a 第1側部
13b 第2側部
13d 中心
14 スポーク部
15 接地部
15a 中心
16 リング部
18 連結ボルト(ハブ連結ボルト)
20 車軸ケース
20a 第1分割車軸ケース
20b 第2分割車軸ケース
21 車体側車軸ケース
21Z 内向き部分(部分)
22 連結ボルト
22a 頭部
23 フランジ部(周縁部)
27 突起部
28 ナックルアーム
30 ストッパー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8