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特許7584399運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241108BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20241108BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20241108BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/09
B60W50/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021213196
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023097060
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 一郎
(72)【発明者】
【氏名】小池 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小森 賢二
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-051547(JP,A)
【文献】特開2015-130069(JP,A)
【文献】特開2005-078414(JP,A)
【文献】特開2020-149204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/09
B60W 50/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が道路を走行中に接触を回避すべき対象である回避対象を認識する回避対象認識部と、
前記自車両と前記回避対象とのすれ違いの際における、前記自車両の操舵を支援する操舵制御部と、
前記すれ違いの際における、前記自車両と前記回避対象との間の距離を示す第1マージンを検出するとともに、前記自車両と、前記自車両に対して前記回避対象とは反対側の道路境界との間の距離を示す第2マージンを検出するマージン検出部と、
前記マージン検出部によって検出された前記第1マージンおよび前記第2マージンに基づいて、次回以降の前記すれ違いの際における前記操舵制御部が前記自車両の操舵を支援する度合いを変更するレベル変更部と、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記レベル変更部は、
前記マージン検出部によって検出された前記第1マージンおよび前記第2マージンが第1閾値以上である場合、前記操舵を支援する度合いを小さくし、
前記マージン検出部によって検出された前記第1マージンおよび前記第2マージンのうちの少なくとも一方が第1閾値未満である場合、前記操舵を支援する度合いを大きくする、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記マージン検出部によって検出された前記第1マージンおよび前記第2マージンのうちの少なくとも一方が前記第1閾値よりも小さい第2閾値未満である場合、出力装置に警告を出力させる警告出力制御部を更に備える、
請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記マージン検出部は、前記すれ違いの際における、前記自車両と前記回避対象との間の最短距離を、前記第1マージンとして検出する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記自車両が走行可能な前記道路の幅を示す走行可能幅を検出する走行可能幅検出部を更に備え、
前記レベル変更部は、前記走行可能幅検出部によって検出された前記走行可能幅が所定幅より大きい場合、前記操舵を支援する度合いを変更しない、
請求項1から4のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
コンピュータが、
自車両が道路を走行中に接触を回避すべき対象である回避対象を認識し、
前記自車両と前記回避対象とのすれ違いの際における、前記自車両の操舵を支援し、
前記すれ違いの際における、前記自車両と前記回避対象との間の距離を示す第1マージンを検出するとともに、前記自車両と、前記自車両に対して前記回避対象とは反対側の道路境界との間の距離を示す第2マージンを検出し、
検出された前記第1マージンおよび前記第2マージンに基づいて、次回以降の前記すれ違いの際における前記自車両の操舵を支援する度合いを変更する、
運転支援方法。
【請求項7】
コンピュータに、
自車両が道路を走行中に接触を回避すべき対象である回避対象を認識させ、
前記自車両と前記回避対象とのすれ違いの際における、前記自車両の操舵を支援させ、
前記すれ違いの際における、前記自車両と前記回避対象との間の距離を示す第1マージンを検出させるとともに、前記自車両と、前記自車両に対して前記回避対象とは反対側の道路境界との間の距離を示す第2マージンを検出させ、
検出された前記第1マージンおよび前記第2マージンに基づいて、次回以降の前記すれ違いの際における前記自車両の操舵を支援する度合いを変更させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自車両が対向車両とすれ違う際に、運転手の運転を支援する運転支援装置が開示されている。例えば、特許文献1には、道路幅が狭い道路(狭路)を自車両が走行する際に、自車両や対向車両の位置に応じて自車両のステアリングを制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-149204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、運転手の運転特性を考慮せずにステアリング制御を行うため、操舵支援を適切に行えない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、運転手の運転特性を考慮して操舵支援を適切に行うことができる運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る運転支援装置は、自車両が道路を走行中に接触を回避すべき対象である回避対象を認識する回避対象認識部と、前記自車両と前記回避対象とのすれ違いの際における、前記自車両の操舵を支援する操舵制御部と、前記すれ違いの際における、前記自車両と前記回避対象との間の距離を示すマージンを検出するマージン検出部と、前記マージン検出部によって検出された前記マージンに基づいて、次回以降の前記すれ違いの際における前記操舵制御部が前記自車両の操舵を支援する度合いを変更するレベル変更部と、を備えるものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記レベル変更部は、前記マージン検出部によって検出された前記マージンが第1閾値以上である場合、前記操舵を支援する度合いを小さくし、前記マージン検出部によって検出された前記マージンが第1閾値未満である場合、前記操舵を支援する度合いを大きくするものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記マージン検出部によって検出された前記マージンが前記第1閾値よりも小さい第2閾値未満である場合、出力装置に警告を出力させる警告出力制御部を更に備えるものである。
【0009】
(4):上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記マージン検出部は、前記すれ違いの際における、前記自車両と前記回避対象との間の最短距離を、前記マージンとして検出するものである。
【0010】
(5):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記自車両が走行可能な前記道路の幅を示す走行可能幅を検出する走行可能幅検出部を更に備え、前記レベル変更部は、前記走行可能幅検出部によって検出された前記走行可能幅が所定幅より大きい場合、前記操舵を支援する度合いを変更しないものである。
【0011】
(6):この発明の一態様に係る運転支援方法は、コンピュータが、自車両が道路を走行中に接触を回避すべき対象である回避対象を認識し、前記自車両と前記回避対象とのすれ違いの際における、前記自車両の操舵を支援し、前記すれ違いの際における、前記自車両と前記回避対象との間の距離を示すマージンを検出し、検出された前記マージンに基づいて、次回以降の前記すれ違いの際における前記自車両の操舵を支援する度合いを変更するものである。
【0012】
(7):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、自車両が道路を走行中に接触を回避すべき対象である回避対象を認識させ、前記自車両と前記回避対象とのすれ違いの際における、前記自車両の操舵を支援させ、前記すれ違いの際における、前記自車両と前記回避対象との間の距離を示すマージンを検出させ、検出された前記マージンに基づいて、次回以降の前記すれ違いの際における前記自車両の操舵を支援する度合いを変更させるものである。
【発明の効果】
【0013】
(1)~(7)の態様によれば、運転手の運転特性を考慮して操舵支援を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る運転支援装置を利用した車両システム1の構成図である。
図2】自車両と対向車両とのすれ違いを示す図である。
図3】操舵支援の介入レベルの変更を説明するための図である。
図4】第1実施形態に係る運転支援装置100によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る運転支援装置を利用した車両システム1の構成図である。
図6】走行可能幅の検出を説明するための図である。
図7】第2実施形態に係る運転支援装置100によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0016】
<第1実施形態>
[全体構成]
図1は、第1実施形態に係る運転支援装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0017】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection And Ranging)14と、ソナー15と、物体認識装置16と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、運転操作子80と、運転支援装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0018】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し車両の周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0019】
レーダ装置12は、車両の周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、車両の任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0020】
LIDAR14は、車両の周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、車両の任意の箇所に取り付けられる。なお、LIDAR14は、車両の進行方向に対して横方向及び縦方向にスキャンすることにより、車両から対象までの距離を検出する。
【0021】
ソナー15は、車両の周辺に超音波を放射し、車両から所定距離以内に存在する物体による反射又は散乱を検出することによって、当該物体までの距離又は位置などを検知する。ソナー15は、例えば、車両の前端部および後端部に設けられバンパー等に設置される。
【0022】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、LIDAR14、およびソナー15のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を運転支援装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、LIDAR14、およびソナー15の検出結果をそのまま運転支援装置100に出力してよい。なお、物体認識装置16の機能を運転支援装置100に組み込み、車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。物体認識装置16によって認識される物体には、車両が道路を走行中に接触を回避すべき対象である回避対象と、道路と道路以外の部分との境界である道路境界とが含まれる。
【0023】
HMI30は、車両の乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0024】
車両センサ40は、車両の速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両の向きを検出する方位センサ等を含む。
【0025】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイール82と、その他の操作子(アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、異形ステア、およびジョイスティック等)を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、運転支援装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
【0026】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、例えば運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0027】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、例えば運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。
【0028】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、運転支援装置100から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0029】
運転支援装置100は、運転手による車両の運転を支援する装置である。運転支援装置100は、例えば、回避対象認識部110と、操舵制御部120と、マージン検出部130と、レベル変更部140と、警告出力制御部150とを備える。回避対象認識部110、操舵制御部120、マージン検出部130、レベル変更部140、および警告出力制御部150は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0030】
回避対象認識部110は、物体認識装置16から出力される認識結果に基づき、自車両が道路を走行中に接触を回避すべき対象である回避対象を認識する。回避対象は、例えば、対向車両や歩行者などの交通参加者、電柱や駐車車両、放置物体などの静的障害物、道路境界などである。
【0031】
操舵制御部120は、自車両と回避対象(対向車両など)とのすれ違いの際における、自車両の操舵を支援する。操舵支援は、運転手によって行われる操舵操作をアシストする動作であり、ステアリング装置220を制御することによって行われる。例えば、操舵制御部120は、運転手がステアリングホイール82を軽い力で操作できるようにアシストする。
【0032】
マージン検出部130は、自車両と回避対象(対向車両など)とのすれ違いの際における、自車両と回避対象との間の距離を示すマージンを検出する。例えば、マージン検出部130は、自車両と回避対象との間の距離を、ソナー15の検知結果に基づいて検出してもよい。マージン検出部130の検出方法はこれに限るものではなく、他のセンサを用いてマージンを検出してもよい。また、マージン検出部130は、すれ違いの際における、自車両と回避対象との間の最短距離を、マージンとして検出してもよい。
【0033】
レベル変更部140は、マージン検出部130によって検出されたマージンに基づいて、次回以降のすれ違いの際における操舵制御部120が自車両の操舵を支援する度合いを変更する。例えば、レベル変更部140は、自車両の操舵支援を介入させる度合いを示す介入レベルを変更することで、操舵操作に対するアシスト力を変更することができる。以下、本実施形態の介入レベルの変更処理について、詳細に説明する。
【0034】
[操舵支援の介入レベルの変更処理]
図2は、自車両と対向車両とのすれ違いを示す図である。図2において、上方向をX方向とし、右方向をY方向とする。自車両310は+X方向に走行しており、対向車両320は-X方向に走行している。
【0035】
自車両310の運転手が運転に慣れていない場合、車線の中央を走行するのではなく、左右の何れかに寄って走行する可能性がある。このため、自車両310と、自車両310が道路を走行中に接触を回避すべき対象(回避対象)との距離を検出する必要がある。図2の例において、回避対象は、対向車両320、電柱330、道路境界340Lおよび340Rである。道路境界340Lおよび340Rは、例えば、白線、ガードレール、壁、または段差などである。自車両310と回避対象との間の距離を検出するため、自車両310は、マージン検出部130によってマージンM1およびM2を検出する。
【0036】
マージンM1は、自車両310の右側のマージンである。図2の例において、マージンM1は、自車両310と対向車両320とのすれ違い時における、自車両310と対向車両320との間のY方向の距離を示す。マージンM2は、自車両310の左側のマージンである。図2の例において、マージンM2は、自車両310と道路境界340Lとの間のY方向の距離を示す。なお、自車両310が電柱330とすれ違う場合には、マージンM2は、自車両310と電柱330との間の距離を示すこととなる。マージンM1およびM2は、例えば、ソナー15の検知結果に基づいて検出してもよい。
【0037】
例えば、マージンM1が小さい場合、自車両310と対向車両320との距離が近いため、自車両310が対向車両320に接触しないようにステアリングホイール82を左に操作する必要がある。この際、操舵制御部120は、運転手がステアリングホイール82を左に操作し易いようにアシストする。
【0038】
一方、マージンM2が小さい場合、自車両310と道路境界340Lとの距離が近いため、自車両310が壁、ガードレール、または電柱330などに接触しないようにステアリングホイール82を右に操作する必要がある。この際、操舵制御部120は、運転手がステアリングホイール82を右に操作し易いようにアシストする。
【0039】
図3は、操舵支援の介入レベルの変更を説明するための図である。本実施形態の操舵支援においては、前述したように、自車両310が右側に寄っている場合(マージンM1が小さい場合)、操舵制御部120は、運転手がステアリングホイール82を左に操作し易いようにアシストする。また、自車両310が左側に寄っている場合(マージンM2が小さい場合)、操舵制御部120は、運転手がステアリングホイール82を右に操作し易いようにアシストする。
【0040】
しかしながら、操舵支援を適切に行うためには、運転手の運転特性を考慮して操舵支援の介入の度合い(介入レベル)を変更することが好ましい。例えば、運転スキルの低い未熟な運転手の場合、自車両310の左右のマージンM1およびM2の少なくとも一方を十分確保せずに運転する場合がある。このような運転手の場合には、操舵制御部120は操舵支援の介入の度合いを大きくする。一方、運転スキルの高い熟練の運転手の場合、自車両310の左右のマージンM1およびM2を十分確保した上で運転する場合がある。このような運転手の場合、操舵制御部120は操舵支援の介入の度合いを小さくする。
【0041】
そこで、レベル変更部140は、運転手の運転特性に応じて操舵支援の介入レベルを変更する。具体的に、操舵制御部120は、操舵支援の介入レベルが高いほど、運転手の操舵操作に対するアシスト力が大きくなるようにステアリング装置220を制御する。
【0042】
例えば、図3に示されるように、道路あるいは車線内を左側または右側に寄って走行する傾向のある運転手に対し、運転が改善しない場合には、操舵支援の介入レベルを高くすることにより、運転手の操舵操作に対するアシスト力を大きくする。一方、運転が改善した場合には、操舵支援の介入レベルを低くすることにより、運転手の操舵操作に対するアシスト力を小さくする。これによって、運転支援装置100は、運転手の運転特性を考慮して操舵支援を適切に行うことができる。
【0043】
[運転支援装置のフローチャート]
図4は、第1実施形態に係る運転支援装置100によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートは、運転手が自車両310の運転を開始したことに応じて実行される。まず、運転支援装置100のレベル変更部140は、操舵支援の介入レベルをデフォルトの値に設定する(ステップS101)。
【0044】
次に、回避対象認識部110は、自車両310が道路を走行中に接触を回避すべき対象である回避対象(対向車両320、電柱330、道路境界340Lおよび340R等)を認識する。マージン検出部130は、自車両310と回避対象とのすれ違いの際における、自車両310と回避対象との間の距離を示すマージンM1およびM2を検出する。例えば、マージン検出部130は、自車両310が回避対象とすれ違う際における、自車両310と回避対象との間の最短距離を、マージンとして検出する。レベル変更部140は、マージン検出部130によって検出されたマージンM1およびM2が第1閾値TH1以上であるか否かを判定する(ステップS102)。第1閾値TH1は予め設定された値であり、例えば30[cm]程度の値である。
【0045】
マージンM1およびM2のいずれも第1閾値TH1以上である場合、レベル変更部140は、操舵支援の介入レベルを下げる(ステップS103)。このように、運転手が自車両310の左右のマージンを十分確保して運転した場合には、次回以降のすれ違い時における、運転手の操舵操作に対するアシスト力を小さくする。ステップS103に示される介入レベルの変更処理が完了すると、後述するステップS108の処理に進む。
【0046】
一方、マージンM1およびM2のうちの少なくとも一方が第1閾値TH1未満である場合、レベル変更部140は、マージン検出部130によって検出されたマージンM1およびM2のいずれも、第1閾値TH1よりも小さい第2閾値TH2以上であるか否かを判定する(ステップS104)。第2閾値TH2は予め設定された値であり、例えば10[cm]程度の値である。
【0047】
マージンM1およびM2のいずれも第2閾値TH2以上である場合、レベル変更部140は、操舵支援の介入レベルを上げる(ステップS105)。このように、運転手が自車両310の左右のマージンを十分確保せずに運転した場合には、次回以降のすれ違い時における、運転手の操舵操作に対するアシスト力を大きくする。ステップS105に示される介入レベルの変更処理が完了すると、後述するステップS108の処理に進む。
【0048】
一方、マージンM1およびM2のうちの少なくとも一方が第2閾値TH2未満である場合、レベル変更部140は、操舵支援の介入レベルを上げる(ステップS106)。この場合、マージンが第2閾値TH2(10[cm]程度の値)未満であるため、自車両310が回避対象に接触してしまう可能性がある。このため、ステップS106において、レベル変更部140は、ステップS105よりも操舵支援の介入レベルを大きく上げるようにしてもよい。このように、自車両310の左右のマージンが極めて不十分な場合には、次回以降のすれ違い時における、運転手の操舵操作に対するアシスト力をより大きくする。
【0049】
また、この場合、左右のマージンが十分確保されていないことに運転手が気付いていないか、意図的に運転手が左右のマージンを十分確保せずに運転している可能性があるため、警告出力制御部150はHMI30に、運転手に向けての警告を出力させる(ステップS107)。
【0050】
例えば、警告出力制御部150は、左または右に寄り過ぎていることを示すメッセージを、HMI30に含まれるスピーカに出力させてもよい。警告の出力方法はこれに限られず、例えば、警告出力制御部150は、左または右に寄り過ぎていることを示すメッセージを、HMI30に含まれる表示装置に表示させてもよい。これによって、自車両310の左右のマージンが極めて不十分であることを運転手に知らせることができる。ステップS107に示される警告処理が完了すると、後述するステップS108の処理に進む。
【0051】
次に、レベル変更部140は、運転を終了するか否かを判定する(ステップS108)。例えば、レベル変更部140は、運転手が自車両310のエンジンを停止した場合に、運転を終了すると判定する。運転を終了すると判定した場合、本フローチャートによる処理を終了する。一方、運転を終了すると判定しなかった場合、前述のステップS102の処理に戻る。
【0052】
なお、操舵制御部120は、図4のフローチャートによる処理で決定された操舵支援の介入レベルに応じて、次回のすれ違いの際における自車両310の操舵支援を行う。具体的には、操舵制御部120は、操舵支援の介入レベルが高いほど、運転手の操舵操作に対するアシスト力が大きくなるように、ステアリング装置220を制御する。これによって、運転手の運転特性を考慮して操舵支援を適切に行うことができる。
【0053】
以上の通り説明した第1実施形態によれば、操舵制御部120は、自車両310と回避対象(対向車両320等)とのすれ違いの際における、自車両の操舵を支援し、マージン検出部130は、すれ違いの際における、自車両310と回避対象との間の距離を示すマージンM1およびM2を検出し、レベル変更部140は、マージン検出部130によって検出されたマージンM1およびM2に基づいて、次回以降のすれ違いの際における操舵制御部120が自車両310の操舵を支援する度合いを変更する。これにより、運転支援装置100は、運転手の運転特性を考慮して操舵支援を適切に行うことができる。
【0054】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、道路の走行可能幅に関わらず操舵支援の介入レベルを変更するものであった。一方、第2実施形態においては、道路の走行可能幅が所定幅より大きい場合には、操舵を支援する度合いを変更しないことで、運転支援装置100の処理負荷を低減させるというものである。以下、第2実施形態の詳細について説明する。
【0055】
[全体構成]
図5は、第2実施形態に係る運転支援装置を利用した車両システム1の構成図である。図5において、図1の各部に対応する部分には同一の符号を付し、説明を省略する。第2実施形態の運転支援装置100Aは、走行可能幅検出部160を備える。
【0056】
走行可能幅検出部160は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI、ASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め運転支援装置100AのHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで運転支援装置100AのHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0057】
[走行可能幅の検出処理]
図6は、走行可能幅の検出を説明するための図である。図6において、上方向をX方向とし、右方向をY方向とする。自車両310は+X方向に走行しており、対向車両320は-X方向に走行している。
【0058】
走行可能幅検出部160は、自車両310が走行可能なY方向の道路の幅を示す走行可能幅Wを検出する。図6に示される例において、走行可能幅Wは、対向車両320と道路境界340Lとの間の距離である。例えば、走行可能幅検出部160は、LIDAR14の検知結果に基づいて走行可能幅Wを検出してもよい。走行可能幅検出部160の検出方法はこれに限るものではなく、他のセンサを用いて走行可能幅Wを検出してもよい。
【0059】
走行可能幅Wが十分大きい場合、自車両310が回避対象(対向車両320、電柱330、壁、またはガードレール等)に近づきすぎてしまったり、回避対象に接触してしまったりする可能性は低い。このため、本実施形態において、レベル変更部140は、走行可能幅検出部160によって検出された走行可能幅Wが所定幅より大きい場合、介入レベルを変更しないこととする。これによって、第1実施形態よりも、運転支援装置100Aの処理負荷を低減させることができる。
【0060】
[検出装置のフローチャート]
図7は、第2実施形態に係る運転支援装置100Aによって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートは、運転手が自車両310の運転を開始したことに応じて実行される。まず、運転支援装置100Aのレベル変更部140は、操舵支援の介入レベルをデフォルトの値に設定する(ステップS200)。
【0061】
次に、走行可能幅検出部160は、例えばLIDAR14の検知結果に基づいて、走行可能幅Wを検出する。レベル変更部140は、走行可能幅検出部160によって検出された走行可能幅Wが所定幅W1以下であるか否かを判定する(ステップS201)。所定幅W1は予め設定された値であり、例えば275[cm]程度の値である。走行可能幅Wが所定幅W1より大きいと判定した場合、レベル変更部140は、操舵支援の介入レベルを変更しないと判定し(ステップS202)、ステップS209の処理に進む。
【0062】
一方、走行可能幅Wが所定幅W1以下であると判定した場合、レベル変更部140は、介入レベルの変更処理を行うべく、ステップS203の処理に進む。なお、図7におけるステップS203~ステップS209の処理は、図4におけるステップS102~ステップS108と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
以上の通り説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することに加えて、レベル変更部140は、走行可能幅検出部160によって検出された走行可能幅Wが所定幅W1より大きい場合、操舵を支援する度合いを変更しないという特徴を有する。すなわち、レベル変更部140は、所定幅以下の狭路、または対向車両320等とのすれ違いによって狭路と同等の状況になる場合にのみ、自車両310の左右のマージンに基づいて次回以降の操舵介入の度合い(介入レベル)を調整する。これにより、運転支援装置100Aの処理負荷を低減させることができる。
【0064】
なお、上記説明した実施形態は、操舵支援の機能を有する運転支援装置を備えた車両に対して適用することとしたが、操舵操作を完全に自動化するものではない自動運転機能を備える車両に対しても適用することができる。
【0065】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
自車両が道路を走行中に接触を回避すべき対象である回避対象を認識し、
前記自車両と前記回避対象とのすれ違いの際における、前記自車両の操舵を支援し、
前記すれ違いの際における、前記自車両と前記回避対象との間の距離を示すマージンを検出し、
検出された前記マージンに基づいて、次回以降の前記すれ違いの際における前記自車両の操舵を支援する度合いを変更する、
運転支援装置。
【0066】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 車両システム
30 HMI
100 運転支援装置
110 回避対象認識部
120 操舵制御部
130 マージン検出部
140 レベル変更部
150 警告出力制御部
160 走行可能幅検出部
220 ステアリング装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7