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特許7584405改変されたサイトメガロウイルスタンパク質及び安定化された複合体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】改変されたサイトメガロウイルスタンパク質及び安定化された複合体
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/045 20060101AFI20241108BHJP
   C12N 15/38 20060101ALI20241108BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241108BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241108BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241108BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241108BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241108BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 39/245 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C07K14/045
C12N15/38 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K39/245
A61P31/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021521000
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 IB2019058777
(87)【国際公開番号】W WO2020079586
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】62/746,804
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリト,エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】ボトムリー,マシュー ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】カーフィ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラモウリ,スマナ
(72)【発明者】
【氏名】ルイスィ,ケイト
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/181142(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/182983(WO,A1)
【文献】特表2003-509013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C07K 14/045
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の変異体ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ポリペプチドを含む複合体であって、前記1つ以上の変異体HCMVポリペプチドが
(a)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有する、pUL128ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号13に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号13の少なくともアミノ酸残基28~171を含む複合体形成断片である、
配列番号7に関連して番号付けして残基140にフェニルアラニン(F)を有し、残基150にシステイン(C)を有する、gLポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号7に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号7の少なくともアミノ酸残基31~278を含む複合体形成断片である、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)及び残基95にシステイン(C)を有する、pUL130ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号17に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号17の少なくともアミノ酸残基26~214を含む複合体形成断片である、
(b)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有する、pUL128ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号13に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号13の少なくともアミノ酸残基28~171を含む複合体形成断片である、
配列番号7に関連して番号付けして残基150にシステイン(C)を有する、gLポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号7に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号7の少なくともアミノ酸残基31~278を含む複合体形成断片である、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)及び残基95にシステイン(C)を有する、pUL130ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号17に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号17の少なくともアミノ酸残基26~214を含む複合体形成断片である、
(c)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有する、pUL128ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号13に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号13の少なくともアミノ酸残基28~171を含む複合体形成断片である、
配列番号7に関連して番号付けして残基145にロイシン(L)を有し、残基150にシステイン(C)を有する、gLポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号7に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号7の少なくともアミノ酸残基31~278を含む複合体形成断片である、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)及び残基95にシステイン(C)を有する、pUL130ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号17に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号17の少なくともアミノ酸残基26~214を含む複合体形成断片である、
(d)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有する、pUL128ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号13に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号13の少なくともアミノ酸残基28~171を含む複合体形成断片である、
配列番号7に関連して番号付けして残基224にバリン(V)を有し、残基150にシステイン(C)を有する、gLポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号7に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号7の少なくともアミノ酸残基31~278を含む複合体形成断片である、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)及び残基95にシステイン(C)を有する、pUL130ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号17に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号17の少なくともアミノ酸残基26~214を含む複合体形成断片である、
(e)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有する、pUL128ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号13に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号13の少なくともアミノ酸残基28~171を含む複合体形成断片である、
配列番号7に関連して番号付けして残基224にバリン(V)を有する、gLポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号7に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号7の少なくともアミノ酸残基31~278を含む複合体形成断片である、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基95にシステイン(C)を有する、pUL130ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号17に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号17の少なくともアミノ酸残基26~214を含む複合体形成断片である、
(f)配列番号13に関連して番号付けして残基77にイソロイシン(I)を有し、残基103にイソロイシン(I)を有する、pUL128ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号13に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号13の少なくともアミノ酸残基28~171を含む複合体形成断片である、及び
配列番号7に関連して番号付けして残基140にフェニルアラニン(F)を有し、残基145にロイシン(L)を有する、gLポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号7に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号7の少なくともアミノ酸残基31~278を含む複合体形成断片である、
(g)配列番号13に関連して番号付けして残基77にイソロイシン(I)を有し、残基103にイソロイシン(I)を有する、pUL128ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号13に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号13の少なくともアミノ酸残基28~171を含む複合体形成断片である、及び
配列番号7に関連して番号付けして残基140にフェニルアラニン(F)を有し、残基145にロイシン(L)を有し、残基224にバリン(V)を有する、gLポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号7に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号7の少なくともアミノ酸残基31~278を含む複合体形成断片である、あるいは
(h)配列番号7に関連して番号付けして残基140にフェニルアラニン(F)を有する、gLポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号7に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号7の少なくともアミノ酸残基31~278を含む複合体形成断片である、及び
配列番号21に関連して番号付けして残基52にフェニルアラニン(F)を有し、残基67にバリン(V)を有する、pUL131ポリペプチド若しくはその断片であって、前記断片が、(i)配列番号21に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む複合体形成断片、又は(ii)配列番号21の少なくともアミノ酸残基19~129を含む複合体形成断片
である、複合体。
【請求項2】
同一条件で対照複合体と比較して増大した熱安定性を有する、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
請求項1から2のいずれか一項に記載の複合体及び任意選択で非抗原成分を含む免疫原性組成物。
【請求項4】
請求項1から2のいずれか一項に記載の複合体をコードする1つ以上の作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【請求項5】
請求項4に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項6】
請求項4に記載の単離された核酸分子又は請求項5に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項7】
請求項6に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、複合体を作製する方法。
【請求項8】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に対する免疫応答を誘起する方法において使用するための請求項3に記載の免疫原性組成物であって、前記方法が免疫学的有効量の前記免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む、前記免疫原性組成物。
【請求項9】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の細胞への進入を阻害する方法において使用するための請求項1に記載の複合体を含む組成
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、電子的に提出されたASCIIテキストファイルフォーマット(名称:VU66664_SeqLstg_ST25.txt、サイズ:195,489バイト、作成日:2018年10月15日)の配列表を含む。
【0002】
発明者又は共同発明者による開示
発明者、本発明者ら、又は発明者(複数可)から主題を入手した者は、Chandramouliら、2017 Science Immunology 2(12): eaan1457、Protein Data Bank (PDB) ID 5VOB、及び2018年4月18日出願の国際特許出願PCT/IB2018/000491を開示した。
【0003】
発明の分野
本発明はヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に対するワクチン接種の分野にあり、特に変異体gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aポリペプチド、並びにgH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aポリペプチドのうち2つ以上を含む安定化されたHCMV複合体であって、2つのポリペプチドのうち少なくとも1つが変異体である複合体、並びに免疫原性組成物又はワクチン組成物におけるそれらの使用を提供する。
【背景技術】
【0004】
サイトメガロウイルス(CMV)は、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)又はヘルペスウイルスとして知られているウイルスファミリーに属するウイルスの属である。ヒトに感染する種はHCMV又はヒトヘルペスウイルス-5(HHV-5)として一般に知られている。ヘルペスウイルス科の中でHCMVはベータヘルペスウイルス(Betaherpesvirinae)サブファミリーに属し、これは他の哺乳動物からのサイトメガロウイルスも含む。
【0005】
HCMVは身体全体に見出され得るが、HCMV感染は唾液腺に関連していることが多い。一般的な人口集団の多くにおける抗体の存在によって示されるように、HCMVは米国における成人の50%~80%(世界では40%)に感染している。HCMV感染は典型的には健常者では気付かれないが、免疫力の低下した者、例えばHIV感染者、臓器移植のレシピエント、又は新生児にとっては致命的であり得る(Mocarskiら、Cytomegalovirus in FIELDS VIROLOGY、David M Knipe and Peter M Howley編、Philadelphia, Pa., USA: Lippincott Williams and Wilkins, 2006)。HCMVは発育中の胎児に最も高頻度で伝播するウイルスである。感染の後、HCMVは宿主の寿命の間、体内に潜伏し、時として潜伏状態から再活性化する能力を有している。
【0006】
HCMVはその後の人生における免疫パラメーターに大きな影響を有しているようであり、罹患率の増大及び最終的な死亡率に寄与し得る(Simanekら、Seropositivity to Cytomegalovirus, Inflammation, All-Cause and Cardiovascular Disease-Related Mortality in the United States, 2011 PLoS ONE 6: e16103)。
【0007】
現在までに、実験室株及び臨床的分離株の両方のゲノムを含む20を超える異なるHCMV株のゲノムがシーケンシングされている。例えば、HCMVの以下の株がシーケンシングされている。Towne(NCBI GenInfo (GI) 識別番号 239909366)、AD169(GI:219879600)、Toledo(GI:290564358)、及びMerlin(GI:155573956)。HCMV AD169株、Towne株、及びMerlin株は、American Type Culture Collection(それぞれATCC VR538、ATCC VR977、及びATCC VR1590)から入手することができる。
【0008】
HCMVは未知の数の膜タンパク質複合体を含む。ウイルスエンベロープ中の既知の糖タンパク質の中で、gH及びgLは、いくつかの異なる複合体、即ちダイマーgH/gL、トリマーgH/gL/gO(gCIII複合体としても知られている)及びペンタマーgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131A(後のタンパク質はpUL131とも称される)における存在のために、特に興味の対象として現れている。HCMVは、エンドサイトーシス及び低pH依存性融合によって上皮細胞及び内皮細胞に進入するためにペンタマー複合体を用いると考えられるが、線維芽細胞にはgH/gL又は場合によりgH/gL/gOが関与するプロセスで原形質膜における直接融合によって進入すると考えられる。gH/gL及び/又はgH/gL/gO複合体は線維芽細胞への感染には十分であるが、内皮細胞及び上皮細胞への感染にはペンタマー複合体が必要である(Ryckman, BJ,ら、Characterization of the Human Cytomegalovirus gH/gL/UL128-131 Complex That Mediates Entry into Epithelial and Endothelial Cells, 2008 J. Virol. 82: 60-70)。
【0009】
ペンタマー複合体はCMVワクチン接種の主な標的と考えられる。内皮細胞への進入にはウイルス遺伝子UL128、UL130、及びUL131が必要である(Hahnら、Human Cytomegalovirus UL131-128 Genes are Indispensable for Virus Growth in Endothelial Cells and Virus Transfer of Leukocytes, 2004 Journal of Virology 78(18): 10023-10033)。線維芽細胞に適合化された非内皮細胞向性株は、これら3つの遺伝子のうち少なくとも1つに変異を含む。例えばTowne株はUL130遺伝子にフレームシフトを生じる2塩基対の挿入を含み、AD169はUL131遺伝子に1塩基対の挿入を含む。Towne及びAD169は両方とも内皮細胞内での増殖に適合することができ、両方の場合にUL130又はUL131遺伝子におけるフレームシフト変異は修復された。
【0010】
Geniniら(Serum antibody response to the gH/gL/pUL128-131 five-protein complex of human cytomegalovirus (HCMV) in primary and reactivated HCMV infections, 2011 J. Clin. Vir. 52: 113-118.)は、一次感染及び再活性化されたHCMV感染におけるHCMVのペンタマー複合体に対する血清抗体の応答を開示している。応答は、それぞれ1つのHCMV遺伝子を運搬する1つ以上のアデノウイルスベクター及び並行して対照アデノウイルスベクターに感染させた固定又は溶解した上皮(ARPE-19)細胞を用いる間接的な免疫蛍光(IFA)及びELISAの両方によって決定した。結果の特異性は、複合体の2つ、3つ、又は4つのタンパク質を認識するヒト中和モノクローナル抗体の反応性によって決定した。一次感染14例において、UL128-131遺伝子産物へのIgG抗体セロコンバージョンが感染の発症後2~4週以内に一貫して検出され、抗体は少なくとも12か月持続した。UL128-131遺伝子産物へのIgG抗体応答は一般にgHへの応答より優れており、(上皮細胞において判定して)中和抗体応答に続くようであった。再活性化感染においては、抗体応答はブースター応答を想起させる傾向を示した。IgG抗体はHCMV血清陽性の健常な成人対照で検出されたが、HCMV血清陰性の個体では検出されなかった。
【0011】
Kinzlerら(Expression and reconstitution of the gH/gL/gO complex of human cytomegalovirus, 2002 J. Clin. Vir. 25(Supp.2): 87-95)は組換えバキュロウイルスを使用して昆虫細胞中でgH、gL、及びgOを共発現したが、gH/gL/gO三元複合体を産生することはできなかった。その代わりに、gH/gLヘテロダイマー、gH/gLヘテロマルチマー、及びgOホモマルチマーのみが検出された。対照的に、哺乳動物細胞におけるgH、gL、及びgOの共発現は、HCMV感染細胞中で形成されるgH/gL/gO複合体と極めて類似した高分子量の複合体を産生した。細胞表面の免疫蛍光は、トランスフェクトした細胞の表面上でこれらの複合体が発現され呈示されていることを示した。
【0012】
米国特許第7,704,510号は、pUL131Aが上皮細胞向性に必要なこと、pUL128及びpUL130がgH/gLと複合体を形成し、この複合体がビリオンに組み込まれること、並びにこの複合体は内皮細胞及び上皮細胞への感染に必要であるが、線維芽細胞への感染には必要ではないことを開示している。また、抗CD46抗体が上皮細胞へのHCMVの感染を阻害することが見出された。
【0013】
WO2014/005959(米国公開特許公報第2016-0159864号としても公開されている)は、ポリペプチドgH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aを含む精製されたHCMVペンタマー複合体並びに免疫原性組成物又はワクチンにおけるその使用を開示している。
【0014】
一般に、中等温度好性生命体である枯草菌(Bacillus subtilis)からのリパーゼA酵素について最近示されたように、好中温性生命体からのタンパク質の可撓性とそのタンパク質の熱安定性との間には逆相関が存在する(Rathiら、Structural rigidity and protein thermostability in variants of Lipase A from Bacillus subtilis, 2015 PLOS ONE 19(7): e0130289; DOI: 10.1371/journal.pone.0130289; 24頁を参照)。抗原の安定性の増大は既に、例えば呼吸器合胞体ウイルス融合タンパク質の融合前コンフォメーション(McLellanら、Structure-Based Design of a Fusion Glycoprotein Vaccine for Respiratory Syncytial Virus, 2013 Science 342(6158): 592-598.)及び髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)ファクターH結合タンパク質(fHbp)(Rossiら、Meningococcal Factor H Binding Protein Vaccine Antigens with Increased Thermal Stability and Decreased Binding of Human Factor H, 2016 Infect. Immun. 84(6): 1735-1742.)について、免疫原性の改善に関連付けられている。
【0015】
HCMV複合体、例えばペンタマー複合体の熱安定性の改善は、以下の利点を有することが期待される。(i)その調製及び生成を容易にする。(ii)抗原としての使用に影響し、より良い免疫原性を提供する。したがって、免疫原性組成物又はワクチンにおける好適な使用のための向上した熱安定性を有するHCMV複合体、具体的にはペンタマー複合体の開発に対するニーズがある。さらに、HCMV複合体上の中和エピトープに極めて近接したグリカンは、エピトープの接近可能性を制限すると考えられる。したがって、免疫原性組成物又はワクチンにおける使用に適したより接近しやすいエピトープを有する(任意選択で向上した熱安定性も有する)脱グリコシル化されたHCMV複合体、具体的にはペンタマー複合体の開発に対するニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aポリペプチドのうち2つ以上を含む安定化されたHCMV複合体(例えばgH/gL、gH/gL/gO、又はgH/gL/UL128/UL130/pUL131A複合体)であって、2つのポリペプチドのうち少なくとも1つが変異体である複合体の組換え発現、並びに免疫原性組成物又はワクチン組成物におけるその使用に基づいている。これらを作製し使用する方法が提供される。変異体ポリペプチド及びこれらをコードする核酸分子、並びに抗体、発現ベクター、及び宿主細胞も提供される。
【0017】
本発明の一態様では、1つ以上の安定化変異を含むHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片が提供される。本発明の別の態様では、1つ以上の安定化変異を含むHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片が提供される。本発明のさらなる態様では、1つ以上の安定化変異を含むHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片が提供される。本発明のさらなる態様では、1つ以上の安定化変異を含むHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片が提供される。本発明のさらなる態様では、1つ以上の安定化変異を含むHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片が提供される。
【0018】
本発明のさらなる態様では、gHポリペプチド、gLポリペプチド、pUL128ポリペプチド、pUL130ポリペプチド、及びpUL131Aポリペプチドを含むHCMVポリペプチドのペンタマー複合体であって、少なくとも1つのポリペプチドは1つ以上のアミノ酸安定化変異を含む複合体が提供される。本発明のさらなる態様では、このペンタマー複合体は非変異体ペンタマー複合体と比較して増大した安定性を有する。本発明のさらなる態様では、HCMVポリペプチドのそのペンタマー複合体を含む免疫原性組成物が提供される。
【0019】
本発明のさらなる態様では、gHポリペプチド及びgLポリペプチドを含むHCMVポリペプチドのgH/gL複合体であって、ポリペプチドの少なくとも1つは1つ以上の安定化変異を含む複合体が提供される。本発明のさらなる態様では、このgH/gL複合体は非変異体gH/gL複合体と比較して増大した安定性を有する。本発明のさらなる態様では、HCMVポリペプチドのこのgH/gL複合体を含む免疫原性組成物が提供される。
【0020】
本発明のさらなる態様では、gHポリペプチド、gLポリペプチド、及びgOポリペプチドを含むHCMVポリペプチドのgH/gL/gO複合体であって、gH及びgLポリペプチドのうち少なくとも1つは1つ以上のアミノ酸安定化変異を含む複合体が提供される。本発明のさらなる態様では、このgH/gL/gO複合体は非変異体gH/gL/gO複合体と比較して増大した安定性を有する。本発明のさらなる態様では、HCMVポリペプチドのこのgH/gL/gO複合体を含む免疫原性組成物が提供される。
【0021】
本発明のさらなる態様では、本発明の複合体は高収率で産生される。例えば、増殖培地中で本発明の宿主細胞を増殖させるステップを含むプロセスでは、本発明のタンパク質複合体は増殖培地の1lあたり0.4mgを超えるレベル(例えば増殖培地の1lあたり0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2、2.5、3、3.5、4、4.5、若しくは5mg又はそれ超)まで集積し得る。
【0022】
本発明は以下を提供する。
実施形態1. 1つ以上の安定化変異を含むHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態2. 前記安定化変異が1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、1つ以上の脱グリコシル化変異、又はそれらの1つ以上の組合せを含む、実施形態1に記載のHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態3. 安定化変異が1つ以上の空洞充填変異を含む、実施形態1又は2に記載のHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態4. 配列番号1で説明される配列に関連するアミノ酸残基A102、A372、A352、及びL257のうち1つ以上が、又は他のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置において、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態3に記載のHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態5. 安定化変異が1つ以上の疎水性変異を含む、実施形態1から4のいずれかに記載のHCMV gHポリペプチド。
実施形態6. 配列番号1で説明される配列に関連するアミノ酸残基H252、K404、R255、E355、H480、S601、及びR405のうち1つ以上が、又は他のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置において、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態5に記載のHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態7. 安定化変異が1つ以上の親水性変異を含む、実施形態1から6のいずれかに記載のHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態8. アミノ酸残基G358及びH275のうち1つ以上がセリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リシン(K)、ヒスチジン(H)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態7に記載のHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態9. 安定化変異が1つ以上のジスルフィド架橋変異を含む、実施形態1から8のいずれかに記載のHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態10. アミノ酸残基V109及び/又はL111がシステイン(C)で置換されている、実施形態9に記載のHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態11. 安定化変異が1つ以上の脱グリコシル化変異を含む、実施形態1から10のいずれかに記載のHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態12. アミノ残基N55、N62、N67、N192、N641、及びN700のうち1つ以上がグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態11に記載のHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態13. アミノ酸配列を含むHCMV gHポリペプチドであって、(a)配列が配列番号1と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基A102、A372、A352、及びL257のうち1つ以上がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV gHポリペプチド。
実施形態14. アミノ酸配列を含むHCMV gHポリペプチドであって、(a)配列が配列番号1と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基H252、K404、R255、E355、H480、S601、及びR405のうち1つ以上がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV gHポリペプチド。
実施形態15. アミノ酸配列を含むHCMV gHポリペプチドであって、(a)配列が配列番号1と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基G358及びH327のうち1つ以上がセリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リシン(K)、ヒスチジン(H)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV gHポリペプチド。
実施形態16. アミノ酸配列を含むHCMV gHポリペプチドであって、(a)配列が配列番号1と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基V109及び/又はL11がシステイン(C)で置換されている、HCMV gHポリペプチド。
実施形態17. アミノ酸配列を含むHCMV gHポリペプチドであって、(a)配列が配列番号1と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基N55、N62、N67、N192、N641、及びN700のうち1つ以上がグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV gHポリペプチド。
実施形態18. アミノ酸残基A102、A372、A352、及びL257のうち1つ以上の、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態19. アミノ酸残基H252、K404、R255、E355、H480、S601、及びR405のうち1つ以上の、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態20. アミノ酸残基G358及びH327のうち1つ以上の、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(Y)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リシン(K)、ヒスチジン(H)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態21. アミノ酸残基V109及び/又はL11のシステイン(C)による置換をさらに含む、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態22. アミノ酸残基N55、N62、N67、N192、N641、及びN700のうち1つ以上の、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態23. 実施形態1から22のいずれかに記載のHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片をコードする核酸分子。
実施形態24. 1つ以上の安定化変異を含むHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態25. 前記安定化変異が1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、1つ以上の脱グリコシル化変異、又はそれらの組合せを含む、実施形態24に記載のHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態26. 安定化変異が1つ以上の空洞充填変異を含む、実施形態25に記載のHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態27. 配列番号7で説明される配列に関連するアミノ酸残基H177、G224、G140、G145、D146、G218、L119、C233、及びP272のうち1つ以上が、又は他のHCMV gLポリペプチドにおける対応する位置において、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態26に記載のHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態28. 安定化変異が1つ以上の疎水性変異を含む、実施形態24から27のいずれかに記載のHCMV gLポリペプチド。
実施形態29. 配列番号7で説明される配列に関連するアミノ酸残基H267、H236、H245、G161、及びC233のうち1つ以上が、又は他のHCMV gLポリペプチドにおける対応する位置において、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態28に記載のHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態30. 安定化変異が1つ以上のジスルフィド架橋変異を含む、実施形態24から29のいずれかに記載のHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態31. アミノ酸残基G161、D163、G224、G218、R166、G140、R160、及びA150のうち1つ以上がシステイン(C)で置換されている、実施形態30に記載のHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態32. 安定化変異が1つ以上の脱グリコシル化変異を含む、実施形態24から31のいずれかに記載のHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態33. N74がグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態32に記載のHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態34. アミノ酸配列を含むHCMV gLポリペプチドであって、(a)配列が配列番号5と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基H177、G224、G140、G145、D146、G218、L119、C233、及びP272のうち1つ以上がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV gLポリペプチド。
実施形態35. アミノ酸配列を含むHCMV gLポリペプチドであって、(a)配列が配列番号7と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基H267、H236、H245、G161、及びC233のうち1つ以上がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV gLポリペプチド。
実施形態36. アミノ酸配列を含むHCMV gLポリペプチドであって、(a)配列が配列番号7と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基G161、D163、G224、G218、R166、G140、R160、及びA150のうち1つ以上がシステイン(C)で置換されている、HCMV gLポリペプチド。
実施形態37. アミノ酸配列を含むHCMV gLポリペプチドであって、(a)配列が配列番号7と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基N74がグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV gLポリペプチド。
実施形態38. アミノ酸残基H177、G224、G140、G145、D146、G218、L119、C233、及びP272のうち1つ以上の、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号7のアミノ酸配列を含むHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態39. アミノ酸残基H267、H236、H245、G161、及びC233のうち1つ以上の、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号7のアミノ酸配列を含むHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態40. アミノ酸残基G161、D163、G224、G218、R166、G140、R160、及びA150のうち1つ以上の、システイン(C)による置換をさらに含む、配列番号7のアミノ酸配列を含むHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態41. 残基N74の、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号7のアミノ酸配列を含むHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態42. 実施形態24から41のいずれかに記載のHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片をコードする核酸分子。
実施形態43. 1つ以上の安定化変異を含むHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態44. 前記安定化変異が1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の組合せを含む、実施形態43に記載のHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態45. 前記安定化変異が1つ以上の空洞充填変異を含む、実施形態40に記載のHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態46. 配列番号13で説明される配列に関連するアミノ酸残基G123、V77、L103、及びQ119のうち1つ以上が、又は他のHCMV pUL128ポリペプチドにおける対応する位置において、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態45に記載のHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態47. 安定化変異が1つ以上の疎水性変異を含む、実施形態43から46のいずれかに記載のHCMV pUL128ポリペプチド。
実施形態48. 配列番号13で説明される配列に関連するアミノ酸残基G145、H90、及びG112のうち1つ以上が、又は他のHCMV pUL128ポリペプチドにおける対応する位置において、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態47に記載のHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態49. 安定化変異が1つ以上のジスルフィド架橋変異を含む、実施形態43から48のいずれかに記載のHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態50. アミノ酸残基R142、N99、Y98、A124、G126、L159、D45、V88、M48、G107、R51、D106、及びS83のうち1つ以上がシステイン(C)で置換されている、実施形態49に記載のHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態51. アミノ酸配列を含むHCMV pUL128ポリペプチドであって、(a)配列が配列番号13と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基G123、V77、L103、及びQ119のうち1つ以上がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV pUL128ポリペプチド。
実施形態52. アミノ酸配列を含むHCMV pUL128ポリペプチドであって、(a)配列が配列番号13と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基G145、H90、及びG112のうち1つ以上がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV pUL128ポリペプチド。
実施形態53. アミノ酸配列を含むHCMV pUL128ポリペプチドであって、(a)配列が配列番号13と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基R142、N99、Y98、A124、G126、L159、D45、V88、M48、G107、R51、D106、及びS83のうち1つ以上がシステイン(C)で置換されている、HCMV pUL128ポリペプチド。
実施形態54. アミノ酸残基G123、V77、L103、及びQ119のうち1つ以上の、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号13のアミノ酸配列を含むHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態55. アミノ酸残基G145、H90、及びG112のうち1つ以上の、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号13のアミノ酸配列を含むHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態56. アミノ酸残基R142、N99、Y98、A124、G126、L159、D45、V88、M48、G107、R51、D106、及びS83のうち1つ以上の、システイン(C)による置換をさらに含む、配列番号13のアミノ酸配列を含むHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態57. 実施形態43から56のいずれかに記載のHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片をコードする核酸分子。
実施形態58. 1つ以上の安定化変異を含むHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態59. 前記安定化変異が1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、1つ以上の脱グリコシル化変異、又はそれらの1つ以上の組合せを含む、実施形態58に記載のHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態60. 安定化変異が1つ以上の空洞充填変異を含む、実施形態59に記載のHCMV pUL130ポリペプチド。
実施形態61. 配列番号17で説明される配列に関連するアミノ酸残基D165及びH209のうち1つ以上が、又は他のHCMV pUL130ポリペプチドにおける対応する位置において、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態60に記載のHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態62. 安定化変異が1つ以上の疎水性変異を含む、実施形態58から61のいずれかに記載のHCMV pUL130ポリペプチド。
実施形態63. 配列番号17で説明される配列に関連するアミノ酸残基G116、G135、H150、及びH209のうち1つ以上が、又は他のHCMV pUL130ポリペプチドにおける対応する位置において、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態62に記載のHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態64. 安定化変異が1つ以上のジスルフィド架橋変異を含む、実施形態54から63のいずれかに記載のHCMV pUL130ポリペプチド。
実施形態65. 配列番号17で説明される配列に関連するアミノ酸残基G116、H150、P64、S178、P62、E95、Y204、N211、I213、Y56、及びT167のうち1つ以上が、又は他のHCMV pUL130ポリペプチドにおける対応する位置において、システイン(C)で置換されている、実施形態64に記載のHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態66. 安定化変異が1つ以上の脱グリコシル化変異を含む、実施形態54から65のいずれかに記載のHCMV pUL130ポリペプチド。
実施形態67. 配列番号17で説明される配列に関連するアミノ酸残基N85、N118、及びN201のうち1つ以上が、又は他のHCMV pUL130ポリペプチドにおける対応する位置において、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態66に記載のHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態68. アミノ酸配列を含むHCMV pUL130ポリペプチドであって、(a)配列が配列番号17と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基D165及びH209のうち1つ以上がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV pUL130ポリペプチド。
実施形態69. アミノ酸配列を含むHCMV pUL130ポリペプチドであって、(a)配列が配列番号17と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基G116、G135、H150、及びH209のうち1つ以上がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV pUL130ポリペプチド。
実施形態70. アミノ酸配列を含むHCMV pUL130ポリペプチドであって、(a)配列が配列番号17と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基G116、H150、P64、S178、P62、E95、Y204、N211、I213、Y56、及びT167のうち1つ以上がシステイン(C)で置換されている、HCMV pUL130ポリペプチド。
実施形態71. アミノ酸配列を含むHCMV pUL130ポリペプチドであって、(a)配列が配列番号17と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基N85、N118、及びN201のうち1つ以上がグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV pUL130ポリペプチド。
実施形態72. アミノ酸残基D165及びH209のうち1つ以上の、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号17のアミノ酸配列を含むHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態73. アミノ酸残基G116、G135、H150、及びH209のうち1つ以上の、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号17のアミノ酸配列を含むHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態74. アミノ酸残基G116、H150、P64、S178、P62、E95、Y204、N211、I213、Y56、及びT167のうち1つ以上の、システイン(C)による置換をさらに含む、配列番号17のアミノ酸配列を含むHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態75. アミノ酸残基N85、N118、及びN201のうち1つ以上の、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号17のアミノ酸配列を含むHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態76. 実施形態58から75のいずれかに記載のHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片をコードする核酸分子。
実施形態77. 1つ以上の安定化変異を含むHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態78. 前記安定化変異が1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、1つ以上の脱グリコシル化変異、又はそれらの1つ以上の組合せを含む、実施形態77に記載のHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態79. 安定化変異が1つ以上の空洞充填変異を含む、実施形態78に記載のHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態80. 配列番号21で説明される配列に関連するアミノ酸残基G99、S86、及びS90のうち1つ以上が、又は他のHCMV pUL131Aポリペプチドにおける対応する位置において、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態79に記載のHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態81. 安定化変異が1つ以上の疎水性変異を含む、実施形態77から80のいずれかに記載のHCMV pUL131Aポリペプチド。
実施形態82. 配列番号21で説明される配列に関連するアミノ酸残基H69、H35、H64、D38、V85、Y52、及びA67のうち1つ以上が、又は他のHCMV pUL131Aポリペプチドにおける対応する位置において、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態81に記載のHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態83. 安定化変異が1つ以上の親水性変異を含む、実施形態77から82のいずれかに記載のHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態84. アミノ酸残基R118がセリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リシン(K)、ヒスチジン(H)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態83に記載のHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態85. 安定化変異が1つ以上のジスルフィド架橋変異を含む、実施形態77から84のいずれかに記載のHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態86. 配列番号21で説明される配列に関連するアミノ酸残基H64及びW37のうち1つ以上が、又は他のHCMV pUL131Aポリペプチドにおける対応する位置において、システイン(C)で置換されている、実施形態85に記載のHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態87. 安定化変異が1つ以上の脱グリコシル化変異を含む、実施形態77から86のいずれかに記載のHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態88. 配列番号21で説明される配列に関連するアミノ酸残基N81が、又は他のHCMV pUL131Aポリペプチドにおける対応する位置において、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、実施形態87に記載のHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態89. アミノ酸配列を含むHCMV pUL131Aポリペプチドであって、(a)配列が配列番号21と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基G99、S86、及びS90のうち1つ以上がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV pUL131Aポリペプチド。
実施形態90. アミノ酸配列を含むHCMV pUL131Aポリペプチドであって、(a)配列が配列番号21と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基H69、H35、H64、D38、V85、Y52、及びA67のうち1つ以上がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV pUL131Aポリペプチド。
実施形態91. アミノ酸配列を含むHCMV pUL131Aポリペプチドであって、(a)配列が配列番号21と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基R118がセリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リシン(K)、ヒスチジン(H)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV pUL131Aポリペプチド。
実施形態92. アミノ酸配列を含むHCMV pUL131Aポリペプチドであって、(a)配列が配列番号21と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基H64及びW37のうち1つ以上がシステイン(C)で置換されている、HCMV pUL131Aポリペプチド。
実施形態93. アミノ酸配列を含むHCMV pUL131Aポリペプチドであって、(a)配列が配列番号21と少なくとも90%同一であり、(b)アミノ酸残基N81がグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている、HCMV pUL131Aポリペプチド。
実施形態94. アミノ酸残基G99、S86、及びS90のうち1つ以上の、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態95. アミノ酸残基H69、H35、H64、D38、V85、Y52、及びA67のうち1つ以上の、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態96. アミノ酸残基R118の、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リシン(K)、ヒスチジン(H)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態97. アミノ酸残基H64及びW37のうち1つ以上の、システイン(C)による置換をさらに含む、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態98. アミノ酸残基N81の、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸による置換をさらに含む、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
実施形態99. 実施形態77から98のいずれかに記載のHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片をコードする核酸分子。
実施形態100. 実施形態1から22のいずれかに記載のHCMV gHポリペプチドに特異的な単離された抗体又はその抗原結合性断片。
実施形態101. 実施形態24から41のいずれかに記載のHCMV gLポリペプチドに特異的な単離された抗体又はその抗原結合性断片。
実施形態102. 実施形態43から56のいずれかに記載のHCMV pUL128ポリペプチドに特異的な単離された抗体又はその抗原結合性断片。
実施形態103. 実施形態58から75のいずれかに記載のHCMV pUL130ポリペプチドに特異的な単離された抗体又はその抗原結合性断片。
実施形態104. 実施形態77から98のいずれかに記載のHCMV pUL131Aポリペプチドに特異的な単離された抗体又はその抗原結合性断片。
実施形態105. 実施形態1から22のいずれかに記載のHCMV gHポリペプチド、並びにHCMV gLポリペプチド、HCMV pUL128ポリペプチド、HCMV pUL130ポリペプチド、及びHCMV pUL131Aポリペプチドのうち少なくとも1つを含む複合体。
実施形態106. 実施形態1から22のいずれかに記載のHCMV gHポリペプチド、HCMV gLポリペプチド、HCMV pUL128ポリペプチド、HCMV pUL130ポリペプチド、及びHCMV pUL131Aポリペプチドを含む、実施形態105に記載の複合体。
実施形態107. 実施形態24から41のいずれかに記載のHCMV gLポリペプチド、並びにHCMV gHポリペプチド、HCMV pUL128ポリペプチド、HCMV pUL130ポリペプチド、及びHCMV pUL131Aポリペプチドのうち少なくとも1つを含む複合体。
実施形態108. 実施形態24から41のいずれかに記載のHCMV gLポリペプチド、並びにHCMV gHポリペプチド、HCMV pUL128ポリペプチド、HCMV pUL130ポリペプチド、及びHCMV pUL131Aポリペプチドを含む、実施形態107に記載の複合体。
実施形態109. 実施形態43から56のいずれかに記載のHCMV pUL128ポリペプチド、並びにHCMV gHポリペプチド、HCMV gLポリペプチド、HCMV pUL130ポリペプチド、及びHCMV pUL131Aポリペプチドのうち少なくとも1つを含む複合体。
実施形態110. 実施形態43から56のいずれかに記載のHCMV pUL128ポリペプチド、並びにHCMV gHポリペプチド、HCMV gLポリペプチド、HCMV pUL130ポリペプチド、及びHCMV pUL131Aポリペプチドを含む、実施形態109に記載の複合体。
実施形態111. 実施形態58から75のいずれかに記載のHCMV pUL130ポリペプチド、並びにHCMV gHポリペプチド、HCMV gLポリペプチド、HCMV pUL128ポリペプチド、及びHCMV pUL131Aポリペプチドのうち少なくとも1つを含む複合体。
実施形態112. 実施形態58から75のいずれかに記載のHCMV pUL130ポリペプチド、並びにHCMV gHポリペプチド、HCMV gLポリペプチド、HCMV pUL128ポリペプチド、及びHCMV pUL131Aポリペプチドを含む、実施形態111に記載の複合体。
実施形態113. 実施形態77から98のいずれかに記載のHCMV pUL131Aポリペプチド、並びにHCMV gHポリペプチド、HCMV gLポリペプチド、HCMV pUL128ポリペプチド、及びHCMV pUL130ポリペプチドのうち少なくとも1つを含む複合体。
実施形態114. 実施形態77から98のいずれかに記載のHCMV pUL131Aポリペプチド、並びにHCMV gHポリペプチド、HCMV gLポリペプチド、HCMV pUL128ポリペプチド、及びHCMV pUL130ポリペプチドを含む、実施形態113に記載の複合体。
実施形態115. 実施形態1から22のいずれかに記載のHCMV gHポリペプチド、実施形態24から41のいずれかに記載のHCMV gLポリペプチド、実施形態43から56のいずれかに記載のHCMV pUL128ポリペプチド、実施形態58から75のいずれかに記載のHCMV pUL130ポリペプチド、及び実施形態77から98のいずれかに記載のHCMV pUL131Aポリペプチドを含む複合体。
実施形態116. 改変HCMV ペンタマー複合体である実施形態105から115のいずれかに記載の複合体であって、
((i))
(a) 配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド、及び配列番号17に関連して番号付けして残基95にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド、
(b) 配列番号7に関連して番号付けして残基74にグルタミン(Q)を有するgLポリペプチド、
(c) 配列番号7に関連して番号付けして残基140にフェニルアラニン(F)を有するgLポリペプチド、
(d) 配列番号7に関連して番号付けして残基145にロイシン(L)を有するgLポリペプチド、
(e) 配列番号21に関連して番号付けして残基52にフェニルアラニン(F)及び残基67にバリン(V)を有するpUL131ポリペプチド、
(f) 配列番号7に関連して番号付けして残基233にバリン(V)を有するgLポリペプチド、
(g) 配列番号3に関連して番号付けして残基358にアルギニン(R)を有するgHポリペプチド、
(h) 配列番号7に関連して番号付けして残基150にシステイン(C)を有するgLポリペプチド、及び配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド、
(i) 配列番号13に関連して番号付けして残基83にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド、及び配列番号17に関連して番号付けして残基167にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド、
(j) 配列番号7に関連して番号付けして残基160にシステイン(C)を有するgLポリペプチド、及び配列番号17に関連して番号付けして残基56にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド、
(k) 配列番号7に関連して番号付けして残基166にシステイン(C)を有するgLポリペプチド、及び配列番号17に関連して番号付けして残基62にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド、
(l) 配列番号13に関連して番号付けして残基98にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド、及び配列番号17に関連して番号付けして残基204にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド、
(m) 配列番号21に関連して番号付けして残基86にフェニルアラニン(F)を有するpUL131ポリペプチド、
(n) 配列番号13に関連して番号付けして残基48にシステイン(C)及び残基107にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド、
(o) 配列番号13に関連して番号付けして残基77にイソロイシン(I)を有するpUL128ポリペプチド、
(p) 配列番号13に関連して番号付けして残基145にロイシン(L)を有するpUL128ポリペプチド、又は
(q) それらの組合せ
を含み、
((ii))改変HCMV ペンタマー複合体が対照のHCMVペンタマー複合体と比較して増大した熱安定性を有する、
複合体。
実施形態117. ((i))(q)及び((ii))を含む実施形態116に記載の改変HCMV ペンタマー複合体であって、組合せ(q)が
(1) (a)並びに(b)、(c)、(d)、(f)、及び(g)のうち1つ
(2) (c)及び(e)、又は
(3) (d)及び(e)
を含む、改変HCMV ペンタマー複合体。
実施形態118. 実施形態105から117のいずれかに記載の複合体を含む免疫原性組成物。
実施形態119. HCMV gBポリペプチドをさらに含む、実施形態118に記載の免疫原性組成物。
実施形態120. 非抗原成分をさらに含む、実施形態118又は119に記載の免疫原性組成物。
実施形態121. 非抗原成分が免疫学的有効量のアジュバントである、実施形態120に記載の免疫原性組成物。
実施形態122. アジュバントがAS01、水中油エマルジョン、アルミニウム塩、TLR7アゴニスト(TLR7a)、アルミニウム塩にコンジュゲートしたTLR7a(アラム-TLR7a)、又はそれらの組合せである、実施形態121に記載の免疫原性組成物。
実施形態123. 非抗原成分並びに
(i) 実施形態1から22のいずれかに記載のHCMV gHポリペプチド、
(ii) 実施形態24から41のいずれかに記載のHCMV gLポリペプチド、
(iii) 実施形態43から56のいずれかに記載のHCMV pUL128ポリペプチド、
(iv) 実施形態58から75のいずれかに記載のHCMV pUL130ポリペプチド、及び
(v) 実施形態77から98のいずれかに記載のHCMV pUL131Aポリペプチド
のうち少なくとも1つを含む組成物。
実施形態124. 実施形態105から117のいずれかに記載の複合体をともにコードする1つ以上の作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列を含む核酸分子。
実施形態125. 実施形態124に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
実施形態126. 実施形態23、42、57、76、99、及び124のいずれかに記載の核酸分子を含む発現ベクター。
実施形態127. それぞれの発現ベクターが実施形態23、42、57、76、及び99に記載の核酸分子の1つ以上を含み、複数の発現ベクターが実施形態105から117のいずれかに記載の複合体をともにコードする、複数の発現ベクター。
実施形態128. 第1の発現ベクターがHCMV gHポリペプチド及びHCMV gLポリペプチドをコードし、第2の発現ベクターがHCMV pUL128ポリペプチド、HCMV pUL130ポリペプチド、及びHCMV pUL131Aポリペプチドをコードする、実施形態127に記載の複数の発現ベクター。
実施形態129. 実施形態23、42、57、76、99、及び124のいずれかに記載の核酸分子を含む宿主細胞。
実施形態130. 核酸分子が宿主細胞のゲノムに組み込まれている、実施形態129に記載の宿主細胞。
実施形態131. 実施形態125又は126に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
実施形態132. 実施形態127に記載の複数の発現ベクターを含む宿主細胞。
実施形態133. 実施形態129から132のいずれかに記載の宿主細胞を含む細胞培養物。
実施形態134. 実施形態129から133のいずれかに記載の宿主細胞を培養するステップを含む、改変HCMV ポリペプチド又は改変HCMV 複合体を作製する方法。
実施形態135. 培養培地を実施形態100から104のいずれかに記載の抗体と接触させるステップをさらに含む、実施形態134に記載の方法。
実施形態136. 改変HCMV ポリペプチド又は改変HCMV 複合体を培養培地から単離するステップをさらに含む、実施形態134又は135に記載の方法。
実施形態137. HCMV複合体が改変HCMV ペンタマー複合体である、実施形態134から136のいずれかに記載の方法。
実施形態138. 実施形態124に記載の核酸分子を宿主細胞ゲノムに導入するステップを含む、HCMV複合体を作製する方法。
実施形態139. 表1B、2B、3B、4B、5B、22、及び23に列挙された変異のいずれか1つ以上を含む、改変HCMV ポリペプチド。
実施形態140. 免疫学的有効量の実施形態118から122のいずれかに記載の免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む、サイトメガロウイルス(CMV)に対する免疫応答を誘起する方法。
実施形態141. 免疫応答がCMVに対する中和抗体の産生を含む、実施形態140に記載の方法。
実施形態142. 実施形態140又は141に記載の方法によって産生され、
(A) 実施形態1から22のいずれかに記載のHCMV gHポリペプチドに特異的である、
(B) 実施形態24から41のいずれかに記載のHCMV gLポリペプチドに特異的である、
(C) 実施形態43から56のいずれかに記載のHCMV pUL128ポリペプチドに特異的である、
(D) 実施形態58から75のいずれかに記載のHCMV pUL130ポリペプチドに特異的、又は
(E) 実施形態77から98のいずれかに記載のHCMV pUL131Aポリペプチドに特異的である、
抗体又はその抗原結合性断片。
実施形態143. 実施形態100から104及び142のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片を含む医薬組成物。
実施形態144. 非抗原成分をさらに含む、実施形態143に記載の医薬組成物。
実施形態145. 細胞を実施形態105から117のいずれかに記載の複合体、実施形態118から122のいずれかに記載の免疫原性組成物、又は実施形態100から104及び142のいずれかに記載の抗体若しくはその抗原結合性断片と接触させるステップを含む、細胞へのCMVの進入を阻害する方法。
実施形態146. サイトメガロウイルス(CMV)に対する免疫応答の誘起における使用のための、実施形態118から122のいずれかに記載の免疫原性組成物。
実施形態147. 細胞へのCMVの進入の阻害における使用のための、実施形態118から122のいずれかに記載の免疫原性組成物。
実施形態147. 細胞へのCMVの進入の阻害における使用のための、実施形態143又は144に記載の医薬組成物。
実施形態148. サイトメガロウイルス(CMV)に対する免疫応答を誘起するための、実施形態118から122のいずれかに記載の免疫原性組成物の使用。
実施形態149. 細胞へのCMVの進入を阻害するための、実施形態118から122のいずれかに記載の免疫原性組成物の使用。
実施形態133. 細胞へのCMVの進入を阻害するための、実施形態100から104及び142のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片の使用。
実施形態150. 細胞へのCMVの進入を阻害するための、実施形態143又は144に記載の医薬組成物の使用。
実施形態151. サイトメガロウイルス(CMV)に対する免疫応答を誘起するための医薬の製造のための、実施形態118から122のいずれかに記載の免疫原性組成物の使用。
実施形態152. サイトメガロウイルス(CMV)に対する免疫応答を誘起するための医薬の製造のための、実施形態118から122のいずれかに記載の免疫原性組成物の使用であって、医薬が投与するために調製される、使用。
実施形態153. 細胞へのCMVの進入を阻害するための医薬の製造のための、実施形態118から122のいずれかに記載の免疫原性組成物の使用。
実施形態154. 細胞へのCMVの進入を阻害するための医薬の製造のための、実施形態100から104及び142のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片の使用。
実施形態155. 細胞へのCMVの進入を阻害するための医薬の製造のための、実施形態143又は144に記載の医薬組成物の使用。
実施形態156. 1つ以上の変異体ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ポリペプチドを含む複合体であって、前記1つ以上の変異体HCMVポリペプチドが
(a)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
配列番号7に関連して番号付けして残基140に空洞充填変異体を有し、残基150にシステイン(C)を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)及び残基95にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(b)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
配列番号7に関連して番号付けして残基150にシステイン(C)を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)及び残基95にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(c)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
配列番号7に関連して番号付けして残基145に空洞充填変異体を有し、残基150にシステイン(C)を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)及び残基95にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(d)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
配列番号7に関連して番号付けして残基224に空洞充填変異体を有し、残基150にシステイン(C)を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)及び残基95にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(e)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
配列番号7に関連して番号付けして残基224に空洞充填変異体を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基95にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(f)配列番号13に関連して番号付けして残基77に空洞充填変異体を有し、残基103に空洞充填変異体を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号7に関連して番号付けして残基140に空洞充填変異体を有し、残基145に空洞充填変異体を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(g)配列番号13に関連して番号付けして残基77に空洞充填変異体を有し、残基103に空洞充填変異体を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号7に関連して番号付けして残基140に空洞充填変異体を有し、残基145に空洞充填変異体を有し、残基224に空洞充填変異体を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(h)配列番号7に関連して番号付けして残基140に空洞充填変異体を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号21に関連して番号付けして残基52にリパッキング疎水性変異体を有し、残基67にリパッキング疎水性変異体を有するpUL131ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(i)配列番号21に関連して番号付けして残基86に空洞充填変異体を有するpUL131ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、又は
(j)配列番号13に関連して番号付けして残基83にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基167にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド若しくはその複合体形成断片
である、複合体。
実施形態157. 配列番号7に関連して番号付けして残基140における前記空洞充填変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はロイシン(L)である、実施形態156に記載の複合体。
実施形態158. 前記空洞充填変異体がフェニルアラニン(F)である、実施形態157に記載の複合体。
実施形態159. 配列番号7に関連して番号付けして残基145における前記空洞充填変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はロイシン(L)である、実施形態156に記載の複合体。
実施形態160. 配列番号7に関連して番号付けして残基145がロイシン(L)である、実施形態159に記載の複合体。
実施形態161. 配列番号7に関連して番号付けして残基224における前記空洞充填変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はロイシン(L)である、実施形態156に記載の複合体。
実施形態162. 配列番号7に関連して番号付けして残基224がバリン(V)である、実施形態161に記載の複合体。
実施形態163. 配列番号13に関連して番号付けして残基77における前記空洞充填変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はロイシン(L)である、実施形態156に記載の複合体。
実施形態164. 配列番号13に関連して番号付けして残基77がイソロイシン(I)である、実施形態163に記載の複合体。
実施形態165 配列番号13に関連して番号付けして残基103における前記空洞充填変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はロイシン(L)である、実施形態156に記載の複合体。
実施形態166. 配列番号13に関連して番号付けして残基103がイソロイシン(I)である、実施形態165に記載の複合体。
実施形態167. 配列番号21に関連して番号付けして残基52における前記リパッキング疎水性変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、又はプロリン(P)である、実施形態156に記載の複合体。
実施形態168. 配列番号21に関連して番号付けして残基52がフェニルアラニン(F)である、実施形態167に記載の複合体。
実施形態169. 配列番号21に関連して番号付けして残基67における前記リパッキング疎水性変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、又はプロリン(P)である、実施形態156に記載の複合体。
実施形態170. 配列番号21に関連して番号付けして残基67がバリン(V)である、実施形態169に記載の複合体。
実施形態171. 配列番号21に関連して番号付けして残基86における前記空洞充填変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はロイシン(L)である、実施形態156に記載の複合体。
実施形態172. 配列番号21に関連して番号付けして残基86がフェニルアラニン(F)である、実施形態171に記載の複合体。
実施形態173. 同一条件で対照複合体と比較して増大した熱安定性を有する、実施形態156から172のいずれかに記載の複合体。
実施形態174. 1つ以上の変異体HCMVポリペプチドを含むHCMVペンタマー複合体である、実施形態156から173のいずれかに記載の複合体。
実施形態175. 実施形態156から174のいずれかに記載の複合体及び任意選択で非抗原成分を含む免疫原性組成物。
実施形態176. 実施形態156から174のいずれかに記載の複合体をコードする1つ以上の作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
実施形態177. 実施形態176に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
実施形態178. 実施形態176に記載の単離された核酸分子又は実施形態177に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
実施形態179. 実施形態178に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、複合体を作製する方法。
実施形態180. ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に対する免疫応答を誘起する方法であって、免疫学的有効量の実施形態175に記載の免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む方法。
実施形態181. ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の細胞への進入を阻害する方法であって、前記細胞を実施形態174に記載の複合体と接触させるステップを含む方法。
実施形態182. サイトメガロウイルス(CMV)に対する免疫応答を誘起するための、実施形態175に記載の免疫原性組成物の使用。
実施形態183. 細胞(例えば上皮細胞)へのCMVの進入を阻害するための、実施形態175に記載の免疫原性組成物の使用。
実施形態184. サイトメガロウイルス(CMV)に対する免疫応答を誘起するための医薬の製造のための、実施形態175に記載の免疫原性組成物の使用。
実施形態185. サイトメガロウイルス(CMV)に対する免疫応答を誘起するための医薬の製造のための、実施形態175に記載の免疫原性組成物の使用であって、医薬が投与するために調製される、使用。
実施形態186. 細胞(例えば上皮細胞)へのCMVの進入を阻害するための医薬の製造のための、実施形態175に記載の免疫原性組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131A(各々の位置が標識によって示されている)を含むHCMVペンタマー複合体(ペンタマー)の結晶構造を表す図である。特に、図1は、ペンタマーのカートゥーン表示の2つの180°回転図を提供する。ジスルフィド結合及びモデル化Asn結合型オリゴマンノースが黒いスティックとして表わされている。
図2A図2Aは、gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aを含むHCMVペンタマー複合体を表す図である。5つの境界面が枠で囲まれ、拡大サブパネルが提供されて主な残基との相互作用の詳細を示している。ジスルフィドが黒いスティックとして示され、極性接触は黒い破線として示されている。UL130-UL131A、UL128-UL130-UL131A、gL-UL130、gL-UL128、及びgH-gL境界面が図2A内に表され、それらの境界面の各々の拡大描写がそれぞれ図2B~2Fに示されている。
図2B図2Bは、図2AからのUL130-UL131A境界面のサブパネルの拡大図を提供する。図2Bは、pUL130のα2及びα3ヘリックス並びにpUL130 残基L69、Y113、及びN118を示す。pUL130α3ヘリックスの配置が矢印で示されている。図2Bはまた、pUL131Aのα3ヘリックス並びにpUL131A 残基D66、H69、及びL71も示す。ジスルフィドは黒いスティックとして示され、極性接触が黒い破線として示されている。
図2C図2Cは、図2AからのUL128-UL130-UL131A境界面のサブパネルの拡大図を提供する。図2Cは、pUL128のα1及びα2ヘリックス、β1、β4、β5、及びβ6シート並びにpUL128 残基D45、K92、及びL103を示す。図2Cは、pUL130のβ5、β4、及びβ6シートを示す(各々の位置が矢印で示されている)。図2Cはまた、pUL130 残基H209も示す。図2Cは、pUL131Aのα1、α2、及びα3ヘリックス並びにpUL131A 残基H35を示す。pUL131Aα1及びα2ヘリックスの位置が矢印で示されている。ジスルフィドは黒いスティックとして示され、極性接触が黒い破線として示されている。
図2D図2Dは、図2AからのgL-UL130境界面のサブパネルの拡大図を提供する。図2Dは、gLのβ1及びβ2シート並びにgL 残基L82、Y152、R160、Y162、及びR166を示す。図2Dはまた、pUL130のα1ヘリックス及びβ3シート並びにpUL130 残基Y56、P58、F59、L60、Y61、P62、P64、P65、R66、及びL99も示す。ジスルフィドは黒いスティックとして示され、極性接触が黒い破線として示されている。
図2E図2Eは、図2AからのgL-UL128境界面のサブパネルの拡大図を提供する。図2Eは、gLのα4、α3、及びα2ヘリックス並びにβ2及びβ1シート、並びにgL 残基L101、L106、L122、V137、及びD157を示す。図2Eはまた、pUL128のα3ヘリックス並びにpUL128 残基R142、L146、L150、L159、V161、及びC162も示す。図2Eはまた、pUL130 残基Q97も示す。ジスルフィドは黒いスティックとして示され、極性接触が黒い破線として示されている。
図2F図2Fは、図2AからのgH-gL境界面のサブパネルの拡大図を提供する。図2Fは、gHのβ1、β3、β4、及びβ5シート並びにgHのα1ヘリックスを示す(各々の位置が矢印で示されている)。図2Fはまた、gH 残基C95も示す。図2Fは、gLのβ5、β4、及びβ3シート(各々の位置が矢印で示されている)並びにgLのα1及びα6ヘリックスを示す。図2Fはまた、gL 残基C47及びC54も示す。ジスルフィドは黒いスティックとして示され、極性接触が黒い破線として示されている。
図3A図3は、HCMVペンタマー複合体(ペンタマー)の立体構造柔軟性を表す図である。図3Aは、ペンタマー-8I21 Fabの4.0Å及び3.0Å分解能のgHベースの重ね合わせの側面図及び上面図を示す図である。
図3B図3は、HCMVペンタマー複合体(ペンタマー)の立体構造柔軟性を表す図である。図3Bは、ペンタマー-9I6 Fabと3.0Å分解能ペンタマー-8I21 Fab複合体の間の重ね合わせの側面図を示す。ULの強固なアーム運動のための蝶番として役目を果たすと考えられるgHヘリックスリンカーの位置を強調する、45°の回転後の枠で囲まれた領域がサブパネルに示されている。
図3C図3は、HCMVペンタマー複合体(ペンタマー)の立体構造柔軟性を表す図である。図3Cは、ペンタマー-9I6複合体及び3.0Å分解能ペンタマー-8I21 Fab複合体のpUL130/pUL131Aベースの重ね合わせを示す。
図4A図4Aは、ペンタマー複合体内の空洞及び本発明の安定化変異が行われ得る位置を表す図である。空洞は線で埋め尽くされた不規則な形によって示され、安定化変異位置はドットによって示されている(図4Aのドットは位置のみを表し、すなわち図4Aのドットの数と本発明の安定化変異の数の間に1:1の関係はない)。図4Aはまた、UL境界面及びgH-gL-UL境界面も枠で特定する。
図4B図4Bは、図4AからのgH-gL-UL境界面の拡大図を提供する。図4Bは、gH-gL-UL境界面内の空洞を表す。空洞は線で埋め尽くされた不規則な形によって示されている。
図4C図4Cは、図4AからのUL境界面の拡大図を提供する。図4Cは、UL境界面内の空洞を表す。空洞は線で埋め尽くされた不規則な形によって示されている。
図5A図5Aは、安定化変異の存在によるHCMVペンタマー複合体内の空洞充填を表す。5つの空洞充填変異が示され、各々はpUL128、pUL130、pUL131A、gL、及びgHペンタマー複合体サブタンパク質の1つの中にある。サブパネルが5つの空洞充填変異ごとに提供されている。空洞は線で埋め尽くされた不規則な形によって示されている。
図5B図5Bは、図5AからのUL128 G123W空洞充填変異サブパネルの拡大図を提供する。G123W側鎖の位置及び空洞内のその存在が矢印で示されている。空洞は線で埋め尽くされた不規則な形によって示されている。
図5C図5Cは、図5AからのUL130 D165W空洞充填変異サブパネルの拡大図を提供する。D165W側鎖の位置及び空洞内のその存在が矢印で示されている。空洞は線で埋め尽くされた不規則な形によって示されている。
図5D図5Dは、図5AからのUL131 G99W空洞充填変異サブパネルの拡大図を提供する。G99W側鎖の位置及び空洞内のその存在が矢印で示されている。空洞は線で埋め尽くされた不規則な形によって示されている。
図5E図5Eは、図5 AからのgL H177W空洞充填変異サブパネルの拡大図を提供する。H177W側鎖の位置及び空洞内のその存在が矢印で示されている。空洞は線で埋め尽くされた不規則な形によって示されている。
図5F図5Fは、図5AからのgH A102W空洞充填変異サブパネルの拡大図を提供する。A102W側鎖の位置及び空洞内のその存在が矢印で示されている。空洞は線で埋め尽くされた不規則な形によって示されている。
図6A図6Aは、HCMVペンタマー複合体内のジスルフィド架橋変異を表す。16のジスルフィド架橋変異及び結果として生じる8つのジスルフィド結合/架橋(架橋システイン残基)が示され、(1)~(8)と番号付けされている。ジスルフィド結合がスティックによって表されている。図6Aの上のサブパネルは、ジスルフィド結合(1)、(2)、(3)、(4)、(7)、及び(8)を示す。図6Bの下のサブパネルは、ジスルフィド結合(5)及び(6)を示す。
図6B図6Bは、図6Aからの上のサブパネルの拡大図を提供する。ジスルフィド結合がスティックによって表されている。(1)は、ジスルフィド架橋変異pUL130 G116C及びpUL130 H150Cから生じるイントラ-ジスルフィド結合を示す。(2)は、ジスルフィド架橋変異gL G161C及びpUL130 P64Cから生じるインター-ジスルフィド結合を示す。(3)は、ジスルフィド架橋変異pUL130 S178C及びpUL131A H64Cから生じるインター-ジスルフィド結合を示す。(4)は、ジスルフィド架橋変異gL D163C及びpUL130 P62Cから生じるインター-ジスルフィド結合を示す。(7)は、ジスルフィド架橋変異pUL128 R142C及びpUL130 E95Cから生じるインター-ジスルフィド結合を示す。(8)は、ジスルフィド架橋変異gL R166C及びpUL130 P62Cから生じるインター-ジスルフィド結合を示す。
図6C図6Cは、図6Aからの下のサブパネルの拡大図を提供する。ジスルフィド結合がスティックによって表されている。(5)は、ジスルフィド架橋変異gH V109C及びgL G224Cから生じるインター-ジスルフィド結合を示す。(6)は、ジスルフィド架橋変異gH L111C及びgL G218Cから生じるインター-ジスルフィド結合を示す。
図7図7は、ペンタマー上の5つの重複していない中和エピトープの位置を楕円形で表す図である(部位1、2、3、4、及び5)。部位4の標識は、部位6の上に部位4が重複していることを意味する「4/6」として示され、部位3の標識は、部位7の上に部位3が重複していることを意味する「3/7」として示される。図7はさらに、ペンタマー表面の11個のグリカンを表す。各グリカンの一般的な位置が長方形で示されている。特に、図7の左側に示されるペンタマー分子面には10個のグリカンを認める(gHに6個、gLに1個、及びULに4個のグリカン)。図7の右側に示されたペンタマー分子の他の面には、pUL130に、部位2に隣接して位置する1個(11番目)のグリカンを認める。図7の右側に示された他のグリカンは図7の左側にも示されている。それらの長方形内には、炭素原子を表す、窒素原子を表す、酸素原子を表す、及び水素原子を表す球がある。
図8図8は、上皮細胞を使用した中和抗体アッセイの結果を提供する図である。図8は、x軸に沿って列挙された免疫原性量の、7つのペンタマー複合体(実施例5.2及び表25にさらに記載される)のうちの1つ及びAS01Eアジュバントを含む組成物の第2回投与が筋肉内に投与された3週間後(3wp2)にマウスから採取された血清試料の幾何平均抗体価(GMT)を表す。y軸は、101~106のスケールで中和抗体(nAb)力価(GMT、95%信頼区間(CI))を提供する。検出下限(LLOD)は破線により示されている。セット2_20は最も高いnAb力価を有し、力価はセット2_36、セット2_21、及び対照(「ペンタ(LSG)」)より高かった(星(*)によって表されたp値<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
モノクローナル抗体(mAb)の抗原結合性断片(Fab)と組み合わせたポリペプチドgH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131AからできたHCMVペンタマー複合体の結晶構造が本明細書で明らかになる。本発明者らは結晶構造を解析し、(i)複合体のドメインのいくつかの間の小さな境界面の存在、(ii)ドメイン境界面におけるいくつかの空洞の存在、及び(iii)複合体の固有の可撓性又は運動性を特徴付けする。本発明者らはまた、ペンタマー複合体の熱安定性を向上させるポリペプチドの改変(即ちポリペプチドgH、gL、pUL128、pUL130、及び/又はpUL131Aの改変)を特徴付けし、本明細書に記載する。特に、本発明者らは、本明細書に記載したように改変した場合に、それを含む複合体の熱安定性を向上させるHCMVペンタマー複合体のポリペプチドのそれぞれにおける特定のアミノ酸を提供する。理論に縛られることは望まないが、本発明のアミノ酸改変は複合体のコンフォメーションの可撓性を低減させることによって複合体の熱安定性を向上させると考えられる。これは、例えば(A)本発明の変異体アミノ酸(本明細書に記載する安定化変異に起因するアミノ酸)が元のアミノ酸(言及した非変異体タンパク質配列の中に本来存在するアミノ酸)より長い側鎖を有し、改変されたアミノ酸の側鎖の原子がドメイン境界面間の埋もれた空洞及び/又はタンパク質コア空洞を満たすために起こると考えられる。このように、長い側鎖を有する変異体アミノ酸の構造的特徴は、ドメイン境界面間の埋もれた空洞及び/又はタンパク質コア空洞の充填に影響し、複合体の安定性の向上をもたらす。そのような変異は本明細書で「空洞充填変異」と称し、得られる変異体アミノ酸は「空洞充填変異体」と称することができる。本発明のアミノ酸改変は、(B)近隣の残基との接触を増大すること及び/又はタンパク質の中若しくはタンパク質の間の荷電した残基の望ましくないクラスターを置き換えることを介して複合体を「リパッキング」することによって複合体の熱安定性を向上させると、さらに考えられる。そのような変異は本明細書で「リパッキング変異」と称し、得られるアミノ酸は「リパッキング変異体」と称することができる。特定のリパッキング変異は本明細書で「疎水性変異」又は「親水性変異」と称し、得られる変異体アミノ酸はそれぞれ「疎水性変異体」又は「親水性変異体」と称することができる。このように、疎水性又は親水性である言及した変異体アミノ酸の構造的特徴はその近隣の残基との接触の増大を生じ、及び/又は荷電した残基の望ましくないクラスターの低減を生じて、複合体の安定性の向上をもたらす。さらに、本発明のアミノ酸改変は(C)複合体全体にジスルフィド架橋を導入することによって、複合体の熱安定性を向上させると考えられる。これは、新たに導入されたジスルフィド架橋がポリペプチドを係止し(束縛し)、それによりポリペプチドの運動性を低減させるために起こると考えられる。このように、システイン又はその他の構造的にジスルフィド結合を形成することができる残基である変異体アミノ酸の構造的特徴は、ジスルフィド架橋の導入を生じて、複合体の安定性の向上をもたらす。そのような変異は本明細書で「ジスルフィド架橋変異」と称し、得られるアミノ酸は「ジスルフィド架橋変異体」と称することができる。このように、本発明は、1つ以上の変異体アミノ酸がA~Cの少なくとも1つ及びそれによる複合体の熱安定性の向上をもたらす、任意選択でHCMV複合体(例えばペンタマー、gH/gL、又はgH/gL/gO複合体)の中の改変HCMVペンタマー複合体タンパク質(gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131A)を提供する。HCMVペンタマー複合体の結晶構造及びその中和エピトープの解析により、本発明者らは中和エピトープに近接し、同様にそれぞれのHCMVペンタマーエピトープ(複数可)の接近可能性を制限していると予想されるさらなるグリカンを選択した。したがって本発明者らは、HCMV複合体に脱グリコシル化変異の1つ以上を導入することによって、対応するエピトープ(複数可)が非変異体のエピトープと比較してより接近しやすくなると予想している。特に、同定されたグリカンの1つ以上を除去することによって、対応するエピトープが「脱マスク」され、抗原性が増大すると考えられる。本発明者らは具体的に、同定されたアスパラギン残基を既知の手法を用いて任意の非アスパラギンアミノ酸(例えばグルタミン)で置換し、それによりその位置におけるN連結グリコシル化を防止し、それにより対応するエピトープを脱マスクすることを提案する。このように、本発明は、任意選択でHCMV複合体(例えばペンタマー、gH/gL、又はgH/gL/gO複合体)の中の改変HCMVペンタマー複合体タンパク質(gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131A)を提供し、1つ以上の変異体アミノ酸は脱グリコシル化をもたらす。そのような脱グリコシル化はエピトープを脱マスクし、エピトープを例えば中和抗体又は抗体断片により接近しやすくすることができる。
【0025】
本発明のポリペプチドは変異体であり、したがって非変異体(例えば野生型又は対照)ポリペプチドと比較して異なる構造を有する。したがって同様に、本発明の複合体は少なくとも1つの変異体HCMV gH、gL、UL128、UL130、及びpUL131Aポリペプチドを含むので、本発明のポリペプチドを含む複合体は非変異体複合体(例えば野生型又は対照複合体)と比較して異なる構造を有する。さらに、本発明の複合体は非変異体(例えば野生型又は対照)複合体と比較して増大した熱安定性を有し得るという点で、本発明の複合体は非変異体複合体と比較して異なる機能を有し得る。
【0026】
したがって、本発明の目的は、向上した熱安定性及び/又はより接近可能なエピトープを有する複合体(例えばペンタマー、gH/gL、又はgH/gL/gO複合体)を形成する利点を提示する、本明細書で定義するHCMV gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aポリペプチドを提供することである。本発明は任意のHCMV株に由来するポリペプチドに適用可能であるが、理解を容易にするために、本明細書におけるアミノ酸位置に言及する場合には、他に記述しない限り番号付けはMerlin株に由来するポリペプチドのアミノ酸配列に関連して与えられる。特に、他に記述しない限り、gHアミノ酸位置は配列番号1のMerlin gHの配列に関連して与えられ、gLアミノ酸位置は配列番号7のMerlin gLの配列に関連して与えられ、pUL128アミノ酸位置は配列番号13のMerlin pUL128の配列に関連して与えられ、pUL130アミノ酸位置は配列番号17のMerlin pUL130の配列に関連して与えられ、pUL131Aアミノ酸位置は配列番号21のMerlin pUL131Aの配列に関連して与えられ、gOアミノ酸位置は配列番号25のMerlin gOの配列に関連して与えられる。しかし本発明はMerlin株に限定されない。本発明の教示を用いれば、他の任意のHCMV株のポリペプチドにおける同等のアミノ酸位置は、容易に入手できるアラインメントアルゴリズム(例えばデフォルト設定を用いるBLAST、デフォルト設定を用いるClustalW2、又はデフォルトパラメーターを用いる、Corpetによって開示されたアルゴリズム(Multiple Sequence Alignment with Hierarchical Clustering, 1998 Nucleic Acids Research 16(22): 10881-10890))を用いてアミノ酸配列をアラインすることによって、当業者には容易に決定することができる。したがって、「HCMVポリペプチド」に言及する場合には、(Merlin株に加えて)任意の株からのHCMVポリペプチドとして理解されるべきである。アミノ酸残基の位置の実際の番号は、実際の配列アラインメントに応じて他の株からのポリペプチドについて調節する必要があろう。
【0027】
「配列番号###の残基##に対応する」又は「配列番号###の残基##に対応する」又は「配列番号###の残基##に関連する」又は「配列番号###の「X」に対応する位置における」又は「配列番号###の残基##の場所に対応する場所における」又は「配列番号###の残基##に関連して番号付けされた」配列内の場所、配列内の位置、残基、又はアミノ酸は、特に特許請求の範囲内で、明確さのために本発明の意味において用いられてアミノ酸配列の中の特定の位置を同定する手段を提供する例示的な語句である。さらに、これらの語句は、例えば言及した配列番号###のアミノ酸配列を有するタンパク質と同じ又は同様の機能を有するポリペプチドをコードするが本質的に異なる構造を有するアミノ酸配列を包含するために用いられる(即ち、包含されるポリペプチドは言及したタンパク質と同じ又は同様の機能を有するが、包含されるポリペプチドと言及したタンパク質は異なるアミノ酸配列を有する)。例として、「配列番号21のpUL131Aの配列のP45に対応するアミノ酸残基」における変異を含むポリペプチドは、少なくとも配列番号21のpUL131Aの配列のP45に変異を有するポリペプチド(Merlin株)、配列番号23のpUL131Aの配列のP45に変異を有するポリペプチド(Towne株)、及び配列番号24のpUL131Aの配列のP49に変異を有するポリペプチド(AD169株)を包含することになる(これらの全ては以下の配列番号21、23、及び24の多重配列アラインメントで下線を付している。シグナル配列残基にも下線を付している)。
【0028】
「HCMV複合体」又は単に「複合体」は、本発明の意味において、HCMVポリペプチドgH、gL、pUL128、pUL130、pUL131Aのうち少なくとも1つ又はそれらの複合体形成断片を含む2つ以上の会合したタンパク質の群を意味する。本発明の意味におけるHCMV複合体又は「複合体」は、例えばgH/UL115、gH/gL(例えばgH/gLヘテロダイマー又はヘテロダイマーのgH/gLダイマー)、gH/gL/gO、及びペンタマー複合体を含む。本発明の意味における「変異体HCMV複合体」又は単に「変異体複合体」は、HCMVポリペプチドgH、gL、pUL128、pUL130、pUL131Aのうち少なくとも1つ又はそれらの複合体形成断片を含む2つ以上の会合したタンパク質の群であり、少なくとも1つのHCMVポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の安定化変異体アミノ酸残基を含む。
【0029】
「ペンタマー複合体」は、本発明の意味において、5つの異なるHCMVポリペプチドgH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aを含むHCMV複合体を意味する。本明細書では一般にgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131Aペンタマー(又はgH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aを含むペンタマー複合体)と称するが、5つのポリペプチドのそれぞれが全長のポリペプチドである必要はない。用語「ペンタマー複合体」はまた、gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aポリペプチドの複合体形成断片によって形成されたペンタマーを包含する。
【0030】
用語「複合体サブタンパク質」又は単に「サブタンパク質」は、本発明の意味において、言及したHCMV複合体の中に存在するHCMVポリペプチドを意味するために用いられ得る。例えば、HCMVペンタマー複合体の「サブタンパク質」は、gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aのうち任意の1つを意味し、本例では「HCMVペンタマー複合体タンパク質」と同義である。さらなる例では、「gH/gL複合体サブタンパク質」は、gH又はgLポリペプチドを意味する。
【0031】
HCMVポリペプチドの「複合体形成断片」は、本発明の意味において、複合体の他のHCMVポリペプチドと複合体(例えばペンタマー複合体、gH/gLダイマー、及びgH/gL/gOトリマー)を形成する能力を保持したポリペプチドの任意の一部又は部分を意味する。本明細書で使用される場合、変異体ポリペプチドの「複合体形成断片」は、1つ以上の変異体アミノ酸残基を含む(即ち変異体タンパク質の断片は変異(複数可)を含む)。本発明の複合体(例えばペンタマー複合体)を形成する能力は、タンパク質の精製を実施し、非還元PAGE、ウェスタンブロット、及び/又はサイズ排除クロマトグラフィーによってタンパク質を分析することによって、試験することができる。タンパク質が複合体の一部を形成するならば、タンパク質は全て未変性のPAGEゲル上で単一のバンドとして存在し、及び/又はサイズ排除クロマトグラムで単一のピークとして存在し得る。
【0032】
「向上した熱-安定性」又は「向上した熱安定性」又は「より高い熱安定性」又は「増大した熱安定性」又は単に「向上した安定性」又は「より高い安定性」又は「増大した安定性」は、本発明の意味において、複合体(例えばペンタマー複合体)が同一条件下において安定化変異を何ら含まない同じ複合体よりも少なくとも低いアンフォールディング速度を有する(換言すれば、複合体が同一条件下において非変異体複合体よりも遅くアンフォールディングする)ことを意味する。本明細書で使用される「条件」は、例えば実験条件及び生理学的条件を含む。本発明の安定化された複合体を含む組成物は、非変異体複合体を含む組成物と比較して延長された保存期間を有していることが特定され得る。例えば参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許公開第2011/0229507A1号、アジュバントを介する安定性の増大を論じ、pH、水和、及び温度の条件を変更して抗原の安定性を評価したClappら、Vaccines with Aluminum-Containing Adjuvants: Optimizing Vaccine Efficacy and Thermal Stability, 2011 J. Pharm. Sci. 100(2): 388-401、並びにRossiら、2016 Infect. Immun. 84(6): 1735-1742を参照されたい。本明細書における安定性はデルタ安定性(d安定性又はdS)スコアリング法によって提供され得る。これは、in silico変異体タンパク質の相対的な熱安定性と対応する野生型又は非変異体タンパク質の熱安定性との間の計算で決定される差異である。d安定性を決定する方法は実施例3で提供され、例えば既知のツール、例えばMolecular Operating Environment(MOE)ソフトウェア(REF: Molecular Operating Environment(MOE)ソフトウェア; Chemical Computing Group Inc.社、WorldWideWeb(www).chemcomp.comで入手可能)を含む。dSはkcal/molで測定される。低いdS値は高いタンパク質安定性を示し、逆に高いdS値は低いタンパク質安定性を示す。本発明の変異体ポリペプチドは同一の実験条件下において非変異体ポリペプチドと比較して高い相対的熱安定性(kcal/molで)を有していることが特定され得る。本発明の変異体ポリペプチドは同一の実験条件下において非変異体ポリペプチドよりも低いdS値を有していることもさらに特定され得る。同一の実験条件下において非変異体ポリペプチドと比較して低いdS値を有する変異体ポリペプチドは非変異体ポリペプチドよりも安定であることが、本発明から理解される。安定性の向上は、例えばBruylantsら(Differential Scanning Calorimetry in Life Sciences: Thermodynamics, Stability, Molecular Recognition and Application in Drug Design, 2005 Curr. Med. Chem. 12: 2011-2020)及びCalorimetry Sciences Corporationの「Characterizing Protein stability by DSC」(Life Sciences Application Note, Doc. No. 20211021306 February 2006)で論じられている差動走査熱量測定 (DSC)を用いて、又は差動走査蛍光定量法(DSF)によって、評価することができる。安定性の増大は、DSC又はDSFによって評価して熱遷移中点(Tm)の少なくとも約2℃の上昇として特徴付けされ得る。例えばThomasら、Effect of single-point mutations on the stability and immunogenicity of a recombinant ricin A chain subunit vaccine antigen, 2013 Hum. Vaccin. Immunother. 9(4): 744-752を参照されたい。熱安定性の「有意な」増大又は向上は、複合体の計算された(例えば実施例4.7で提供するプロトコールによって計算された)Tmにおける少なくとも約5℃の上昇として定義される。
【0033】
「変異」は、本発明の意味において、アミノ酸残基の別のアミノ酸残基による置換を意味する。核酸配列に関連しては、この置換はコーディング領域の対応するコドンの中のミスセンス変異を介して生じる(そのような1つの変異体核酸配列によってコードされる変異体ポリペプチドは、「ミューテイン」と称し得る)。本明細書で使用される用語「変異」は、非天然生成アミノ酸又はアミノ酸アナログをポリペプチドに導入する改変をも含む。本明細書で使用される「変異」は、同じ化学構造を有する天然又は合成によって産生されたアミノ酸によるアミノ酸残基の置換である「同一変異」を含まない。例として、配列番号1の配列の102位におけるアラニンのアラニンによる置換(A102A)は本明細書で使用される「同一変異」であり、本発明の意味における「変異」の中に入らない。したがって、本発明の変異は同一変異を除外するという前提で明確にされ得る。
【0034】
「安定化変異」又は「安定化変異体」は、本発明の意味において、ペンタマー複合体の形成に際してそのような変異を含まないHCMVポリペプチドとともに形成されたペンタマー複合体と比較して向上された熱-安定性を有する複合体を生じるHCMVポリペプチドにおける任意の変異を意味する。本発明の意味における安定化変異は、特に空洞充填変異、リパッキング変異(これは疎水性変異及び親水性変異を含む)、及びジスルフィド架橋変異を包含する。本発明の安定化変異は、変異したタンパク質の抗原としての使用に対して有害ではない。特に、安定化変異は、少なくとも本明細書に記載したHCMV複合体に結合することができる抗体及び/又は前記HCMV複合体の生物学的効果を中和することができる抗体の産生を誘発することができる全てのエピトープを阻止しない。さらに、本発明の安定化変異は、変異体ポリペプチドが複合体を形成することを妨害しない。「安定化された複合体」は、本発明の意味において、少なくとも1つの安定化変異を含む少なくとも1つのポリペプチドを含む複合体(例えばペンタマー複合体)を意味する。
【0035】
本明細書で使用される用語「アミノ酸」、「残基」、及び「アミノ酸残基」は全て、少なくとも1つのアミノ基(-NH2)及び少なくとも1つのカルボキシル基(-COOH)を含む有機化合物を意味する。しかし明確にするため、特に特許請求の範囲では、野生型又は非変異体配列の中の特定の位置に存在するアミノ酸(例えば野生型アミノ酸)は「アミノ酸」と称し、変異体配列の中の対応する位置に存在する化合物(変異体アミノ酸)は「残基」と称し得る(即ち、ミスセンス変異に起因するアミノ酸は「残基」と称し得る)。
【0036】
「非変異体」は、本発明の意味において、言及した分子(例えば配列、ポリペプチド、又は複合体)が本発明の安定化変異又は脱グリコシル化変異を含まないことを意味する。このように、用語「非変異体」は「野生型」構造を包含するが、これは例えば切り取られた野生型ポリペプチドをも包含する。例えば、配列番号3のアミノ酸配列を有するHCMV gHポリペプチドは、少なくともこれが切り取られており、したがって「野生型」HCMV gH構造を有しないので、「非変異体」ポリペプチドである。さらに例えば配列番号9又は配列番号29のアミノ酸配列を有するHCMV gLポリペプチドは、本発明の意味において「非変異体」ポリペプチドである。明らかにするため、「非変異体」は本明細書では構造への言及として用い、機能への言及としては用いない。非変異体ポリペプチドは、例えば野生型の機能を有するとして記載され得る(例えば配列番号3を含むHCMV gHポリペプチド)。
【0037】
「空洞充填変異」は、本発明の意味において、第1のアミノ酸(例えば野生型アミノ酸)の第1のアミノ酸より長い側鎖を有する第2のアミノ酸による置換を意味する。そのような第2のアミノ酸は「空洞充填変異体」と称し得る。換言すれば、本明細書における空洞充填変異は残基によるアミノ酸の置換であって、残基がそのアミノ酸より長い側鎖を有する置換である。長い側鎖を有するそのようなアミノ酸残基は、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、及びロイシン(L)を含む。
【0038】
「リパッキング変異」は、本発明の意味において、第1のアミノ酸残基(例えば野生型アミノ酸)の、ポリペプチド中の近隣の残基との相互作用を増大させる第2のアミノ酸残基による置換を意味する。そのような第2のアミノ酸は「リパッキング変異体」と称し得る。リパッキング変異は、例えば(1)(例えば疎水性アミノ酸によって)疎水性相互作用又は(極性又は荷電(即ち親水性)アミノ酸によって)水素結合の形成を増強する、又は(2)(例えば同様に荷電した残基のクラスターを除去することによって)近隣の残基の望ましくない又は反発的な相互作用を低減させる、アミノ酸置換を含む。本発明の意味におけるリパッキング変異は、特に疎水性変異及び親水性変異を包含する。
【0039】
「疎水性変異」は、本発明の意味において、第1のアミノ酸残基(例えば野生型アミノ酸)の、疎水性側鎖を有する第2のアミノ酸残基による置換を意味する。そのような第2のアミノ酸は「疎水性変異体」又は「疎水性リパッキング変異体」と称し得る。疎水性側鎖を有するそのようなアミノ酸残基は、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)を含む。チロシン(Y)も疎水性と分類され得る。
【0040】
「親水性変異」は、本発明の意味において、第1の残基(例えば野生型アミノ酸残基)の、親水性側鎖を有する第2のアミノ酸による置換を意味する。そのような第2のアミノ酸は「親水性変異体」又は「親水性リパッキング変異体」と称し得る。「親水性側鎖」は、極性側鎖を有するアミノ酸への置換及び荷電側鎖を有するアミノ酸への置換の両方を包含する。極性アミノ酸側鎖は親水性であるが荷電しておらず、荷電アミノ酸側鎖は親水性でかつ荷電していることが、当技術で一般に理解されている。「極性変異」は、本発明の意味において、第1のアミノ酸残基(例えば野生型アミノ酸)の、極性側鎖を有する第2のアミノ酸残基による置換を意味する。極性側鎖を有するアミノ酸残基は、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、及びグルタミン(Q)を含む。「荷電変異」は、本発明の意味において、第1のアミノ酸残基(例えば野生型アミノ酸)の、荷電側鎖を有する第2のアミノ酸残基による置換を意味する。荷電側鎖を有するアミノ酸残基は、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リシン(K)、ヒスチジン(H)、及びアスパラギン酸(D)を含む。
【0041】
「ジスルフィド架橋変異」は、本発明の意味において、システイン(C)残基によるアミノ酸残基の置換であって、ポリペプチドの中又はポリペプチドの間にジスルフィド架橋を形成する置換を意味する。本発明は、1つのジスルフィド架橋変異(即ち、1つのアミノ酸のシステインによる置換)からなる個別のタンパク質(例えばgH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131A)を含む。ジスルフィド架橋は2つの残基の間で形成され、「イントラ-ジスルフィド架橋」(同じポリペプチドの中の2つの残基の間で形成される)又は「インター-ジスルフィド架橋」(2つの残基の間で形成され、第1の残基は第1のポリペプチドの中に、第2の残基は第2のポリペプチドの中にある)のいずれかである。したがって、ジスルフィド架橋変異のみを用いてタンパク質の複合体の安定性を増大させるためには、ジスルフィド架橋変異は対(2の倍数)で複合体に導入しなければならず、ジスルフィド架橋変異の少なくとも1対のそれぞれは複合体サブタンパク質の1つ以上の中にある。複合体は2n個のジスルフィド架橋変異を含むことが特定され得、ここで「n」は0を含む任意の正の整数である。複合体は2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、又はそれ以上の2の倍数のジスルフィド架橋変異を含むことがさらに特定され得る。例えば、本発明は1対のジスルフィド架橋変異からなる安定化されたペンタマー複合体を包含し、第1のジスルフィド架橋変異は配列番号17の配列を有するpUL130のG116Cに対応する残基にあり、第2のジスルフィド架橋変異は配列番号17の配列を有するpUL130のH150Cに対応する残基にある(下の表21を参照)。さらに例えば、本発明は1対のジスルフィド架橋変異からなる安定化されたペンタマー複合体を包含し、第1のジスルフィド架橋変異は配列番号7の配列を有するgLのD163Cに対応する残基にあり、第2のジスルフィド架橋変異は配列番号17の配列を有するpUL130のP62Cに対応する残基にある(下の表21を参照)。さらに例えば、本発明は2対のジスルフィド架橋変異からなる安定化されたペンタマー複合体を含み、ジスルフィド架橋変異の第1の対は配列番号7の配列を有するgLのD163Cに対応する残基における第1のジスルフィド架橋変異及び配列番号17の配列を有するpUL130のP62Cに対応する残基における第2のジスルフィド架橋変異からなり、ジスルフィド架橋変異の第2の対は配列番号1の配列を有するgHのV109Cに対応する残基における第3のジスルフィド架橋変異及び配列番号7の配列を有するgLのG224Cに対応する残基における第4のジスルフィド架橋変異からなる(下の表21を参照)。例えば1つのリパッキング変異及び1つのジスルフィド架橋変異を含む本発明の安定化された複合体については、安定性の増大を生じるには1つのリパッキング変異のみで十分であり得るので、ジスルフィド架橋変異の対を特定する必要はないことを当業者であれば認識することになる。
【0042】
「脱グリコシル化変異(複数可)」は、本発明の意味において、アスパラギンアミノ酸(例えば野生型アスパラギンアミノ酸)の第2のアミノ酸による置換であって、それによりその残基の場所におけるアスパラギン窒素原子へのグリカンの付加を防止する(即ち、その場所におけるN連結グリコシル化を防止する)置換を意味する。そのような第2のアミノ酸は、「脱グリコシル化変異体」と称し得る。第2のアミノ酸は任意の非アスパラギン残基であってよい。したがって、脱グリコシル化変異を含むポリペプチド又は複合体はグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)残基を含み、非変異体(例えば野生型又は対照)ポリペプチド又は複合体はそれぞれ、アスパラギン(N)残基を含むことが特定され得る。本発明のHCMVポリペプチド、又はその複合体形成断片、又はHCMV複合体は1つ以上の脱グリコシル化変異を含み得、又は1つ以上の安定化変異(即ち空洞充填変異、リパッキング変異、及び/又はジスルフィド架橋変異)と1つ以上の脱グリコシル化変異の組合せを含み得る。
【0043】
「抗原性」は本明細書において抗体と組み合わされる、例えば中和抗体と結合する、抗原の能力を意味するために使用される。したがって「抗原性の増大」又は「抗原性の増強」は、例えば中和抗体の、非変異体抗原への結合親和性と比較した変異体抗原への結合親和性の増大を包含する。結合親和性の増大は解離定数(Kd)値(nMで)の低下として提供され得る。一般に例えばMaら、Envelope Deglycosylation Enhances Antigenicity of HIV-1 gp41 Epitopes for Both Broad Neutralizing Antibodies and Their Unmutated Ancestor Antibodies, 2011 PLoS Path. 7(9), e1002200を参照されたい。
【0044】
「免疫原性」は本明細書において免疫応答を誘起する抗原の能力を意味するために使用される。一般に例えばMaら、2011 PLoS Path. 7(9), e1002200を参照されたい。
【0045】
本開示及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈によって他が明確に指示されない限り、複数形を含む。即ち、他に指示がなければ「a」は「1つ以上」を意味する。
【0046】
用語「約」又は「ほぼ」は、およそ、前後、又はあたりを意味する。用語「約」又は「ほぼ」は、当業者によって決定される特定の値についての許容できる文脈上の誤差範囲内をさらに意味し、これはその値がどのように測定され又は決定されたか、即ち特定の目的(例えば媒地中の複合体の量)に必要な正確さの程度又は測定システムの制限にある程度依存することになる。用語「約」又は「ほぼ」が数値範囲と併せて使用される場合には、これは説明される数値の上又は下の境界を延長することによってその範囲を改変する。例えば「約5.5~6.5mg/ml」は、数値範囲の境界が5.5の下及び6.5の上に延長され、それにより問題の特定の値が範囲内と同じ機能性の結果を達成することを意味する。例えば、「約」及び「ほぼ」は、当技術の慣習に従って標準偏差の1倍以内又は1倍超を意味し得る。或いは、「約」及び「ほぼ」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、より好ましくは1%までの範囲を意味し得る。
【0047】
用語「及び/又は」は、語句、例えば「A及び/又はB」において使用される場合、「A及びB」、「A又はB」、「A」、及び「B」を含むことが意図されている。同様に、用語「及び/又は」は、語句、例えば「A、B、及び/又はC」において使用される場合、以下の実施形態、即ち「A、B、及びC」、「A、B、又はC」、「A又はC」、「A又はB」、「B又はC」、「A及びC」、「A及びB」、「B及びC」、「A(単独)」、「B(単独)」、及び「C(単独)」のそれぞれを包含することを意図している。
【0048】
他に特定しない限り、指定「A%~B%」、「A~B%」、「A%からB%」、「AからB%」、「A%~B」、「A%からB」の全てには、それらの通常の習慣的な意味が与えられている。一部の実施形態では、これらの指定は同義である。
【0049】
用語「含む(comprising)」は「含む(including)」並びに「からなる(consisting)」を包含し、例えばXを「含む(comprising)」組成物は排他的にXからなってよく、又は追加の何かを含み得る(例えばX+Y)。用語「含む」及び「有する」は、本明細書で遷移的語句として使用する場合にはオープンエンドであり、用語「からなる」は本明細書で遷移的語句として使用する場合にはクローズドである(即ち列挙されたものに限定されそれ以上のものはない)。
【0050】
単語「実質的に」は「完全に」を除外しない。例えば、「実質的に」Yを含まない組成物は、完全にYを含まなくてよい。必要な場合には、単語「実質的に」は本発明の定義から省略され得る。
【0051】
「有効量」は、例えば「治療有効量の抗原及び/又はアジュバント」において、言及した効果又は結果を惹起するために十分な量を意味する。「有効量」は記述した目的に関連する既知の手法を用いて実験的に、及び日常的な様式で、決定することができる。
【0052】
具体的に記述しない限り、2つ以上の成分を混合するステップを含むプロセスはいかなる特定の混合の順序も必要としない。したがって成分は任意の順序で混合することができる。3つの成分があれば、2つの成分を互いに組み合わせて、その組合せを第3の成分と組み合わせてよい、等である。同様に、方法のステップが番号付けられている場合(例えば(1)、(2)、(3)等、又は(i)、(ii)、(iii))、ステップの番号付けはそのステップを番号順に(即ちステップ1、次いでステップ2、次いでステップ3等)実施しなければならないことを意味しない。単語「次いで」は、方法のステップの順序を特定するために用いられ得る。
【0053】
ポリヌクレオチドを記載するために本明細書で使用される「組換え」は、その起源又は操作によって、(1)本来それが付随するポリヌクレオチドの全部又は一部に付随しない、及び/又は(2)本来それが連結されるポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドに連結されている、半合成又は合成起源のゲノム、cDNA、RNA(mRNAを含む)のポリヌクレオチドを意味する。タンパク質又はポリペプチドに関連して使用される用語「組換え」は、組換えポリヌクレオチドの発現によって産生されるポリペプチドを意味する。核酸分子が、本来それが付随しない別のポリヌクレオチドに作動可能に連結されている場合には、その核酸分子は「異種」と称し得る(即ち、その核酸分子は少なくともそのポリヌクレオチドに対して異種である)。同様に、ポリペプチドが、本来それが付随しない別のタンパク質と接触し又はこれとの複合体中にある場合には、そのポリペプチドは「異種」と称し得る(即ち、そのポリペプチドはそのタンパク質に対して異種である)。さらに、宿主細胞が、それが天然には含まない核酸分子又はポリペプチドを含む場合には、その核酸分子及びポリペプチドは「異種」と称し得る(即ち、その核酸分子はその宿主細胞に対して異種であり、そのポリペプチドはその宿主細胞に対して異種である)。
【0054】
ポリペプチド配列の間の配列同一性は、好ましくはNeedleman-Wunschグローバルアラインメントアルゴリズム(Needleman and Wunsch, A General Method Applicable to the Search for Similarities in the Amino Acid Sequence of Two Proteins, 1970 J. Mol. Biol. 48(3): 443-453)を用いるペアワイズアラインメントアルゴリズムにより、デフォルトパラメーター(例えばEBLOSUM62スコアリングマトリックスを用いて、ギャップオープニングペナルティ=10.0、ギャップエクステンションペナルティ=0.5とする)を用いて決定する。このアルゴリズムはEMBOSSパッケージ(Riceら、EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, 2000 Trends Genetics 16: 276-277)におけるニードルツールで都合よく実行される。配列同一性は、本発明のポリペプチド配列の全長にわたって計算すべきである。
【0055】
gHポリペプチド
UL75遺伝子によってコードされるHCMV糖タンパク質H(gH)は、感染性に重要な、アルファ-、ベータ-、及びガンマ-ヘルペスウイルスのメンバーの中で保存されているビリオン糖タンパク質である。
【0056】
HCMV Merlin株からのgHは742アミノ酸からなっていることが報告されている(NCBI GI:52139248(これはNCBI GenBank受託番号YP_081523.1でもある)、配列番号1)。HCMV Towne株からのgH(NCBI GI:138314、これはNCBI UniProtKB受託番号P17176.1でもある。配列番号5)も742アミノ酸からなっている(配列番号5)。HCMV AD169株からのgHはNCBI UniProtKB受託番号P12824.1として公開されている(本明細書において配列番号6)。HCMV gHは6個のNグリコシル化部位を(残基55、62、67、192、641、及び700に)有していることが報告されており、そのN末端における疎水性のシグナル配列(配列番号1のアミノ酸残基1~23)、細胞外空間の中に細胞から突出するエクトドメイン(配列番号1の残基24~717)、疎水性のTMドメイン(配列番号1の残基718~736)、及びC末端の細胞質ドメイン(配列番号1の残基737~742)からなっている。
【0057】
gHのエクトドメインは、疎水性のTMを欠くgHの部分に対応する。エクトドメインの場所及び長さは、所与の配列の配列番号1とのペアワイズアラインメントに基づいて、例えば目的のgHポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号1にアラインさせ、配列番号1の残基24~717にアラインする配列を同定することによって、予測することができる。同様に、TMドメイン及びC末端ドメインの場所は、目的のgHポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号1にアラインさせ、配列番号1の残基718~736及び残基737~742にそれぞれアラインする配列を同定することによって、予測することができる。或いは、エクトドメイン、シグナル配列、及びTMドメインの場所及び長さは、所与のgHタンパク質配列の長さに沿う疎水性のコンピュータ解析に基づいて予測することができる。シグナル配列及びTMドメインは最高レベルの疎水性を有しており、これら2つの領域は疎水性がより低いエクトドメインの傍にある。TMドメインが存在しないことは、改変されたポリペプチドが脂質二重層の中に存在し得ないことを意味する。一部の実施形態ではgHポリペプチドは全長の天然TMドメインを欠いており、他の実施形態ではgHポリペプチドは天然TMドメインの一部を保持することはできるが、タンパク質が脂質二重層の中に存在することを可能にするほど十分ではない。このように、ポリペプチドは天然のgH TMドメインの10アミノ酸まで(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸)を含むことができる。
【0058】
典型的には、gHポリペプチドのN末端シグナル配列は宿主細胞のシグナルペプチダーゼによって切断されて成熟gHタンパク質を産生する。好ましい実施形態では、本発明に従って変異させたHCMV gHポリペプチドは、N末端シグナル配列を欠いている。N末端配列を欠くHCMV gHポリペプチドの例は、配列番号2である。さらに好ましい実施形態では、本発明に従って変異させたHCMV gHポリペプチドは、N末端シグナル配列、膜貫通(TM)ドメイン、及びC末端ドメインを欠いている。全長のUL75遺伝子配列の発現は、gHを含む可溶性複合体の精製を妨げる。むしろ、gHを含む複合体は、gHのTMドメインの少なくとも一部を省略することによって、高い収率及び純度で精製することができる。例えば、gHのN末端シグナル配列及びエクトドメイン(又はgHエクトドメインの大部分)のみをコードし、TMドメインをコードしない構築物を使用して、容易に精製できる形態のgHを発現させることができる(例えば米国公開特許公報第2016-0159864号としても公開されているWO2014/005959を参照)。前記構築物はgHのエクトドメインの大部分(例えば70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又はそれ超)をコードし得るが、TMドメインは全く又は小部分のみしかコードしない。本発明のgHポリペプチドはgHエクトドメインの全体又は切り取られた形態のgHエクトドメイン(例えば配列番号1のエクトドメインの残基716又は717を含まず、TMドメイン又はC末端ドメインも含まない配列番号3又は4からなるgHポリペプチド)を含み得る。前記切り取られた形態のエクトドメインは、全長のHCMV gHタンパク質に対してそのN末端及び/又はC末端における1~20アミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20アミノ酸残基)を欠くことがある。代替の実施形態では、本発明に従って変異させたHCMV gHポリペプチドは、N末端シグナル配列、TMドメイン、及びC末端ドメインを欠いている。本発明における使用のための好ましいHCMV gHポリペプチドの例は配列番号3であり、これは配列番号1のgHの配列の切り取られたエクトドメインを有し、膜貫通(TM)ドメインを欠き、C末端細胞質ドメインを欠いている。配列番号3は配列番号1のアミノ酸残基1~715からなる。本発明の好ましいgHタンパク質の例は配列番号4であり、これは配列番号1のgHの配列のN末端シグナル配列を欠き、切り取られたエクトドメインを有し、TMドメインを欠き、C末端ドメインを欠いている。配列番号4は配列番号1のアミノ酸残基24~715からなる。
【0059】
実施例の中で示すように、gHポリペプチドは、配列番号1のgHのアミノ酸配列に関連して番号付けして6つのアスパラギン残基、N55、N62、N67、N192、N641、及びN700においてグリコシル化されている(N連結グリコシル化を介してグリカンを含む)。本発明における使用のためのHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片は、配列番号1のgHの配列に関連して番号付けして残基55、62、67、192、641、及び700に位置するアスパラギンのうち1つ以上において脱グリコシル化変異を含み得る。脱グリコシル化変異はグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)であってよい。特に、脱グリコシル化変異はグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、又はアラニン(A)であってよい。さらに特に、脱グリコシル化変異はグルタミン(Q)であってよい。
【0060】
本発明のgHタンパク質は追加のアミノ酸残基、例えばN末端又はC末端の延長を含み得る。そのような延長は、gHタンパク質の検出(例えばモノクローナル抗体による検出のためのエピトープタグ)及び/又は精製(例えばニッケルキレート樹脂上での精製を可能にするポリヒスチジンタグ)を容易にすることができる1つ以上のタグを含み得る。例えば、本発明のgHタンパク質はC末端の延長に融合した切り取られたgHエクトドメインを含み得る(例えば米国公開特許公報第2016-0159864号としても公開されているWO2014/005959を参照)。
【0061】
本発明のgHタンパク質は配列番号1に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号1で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のgHタンパク質は配列番号2に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号2で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のgHタンパク質は配列番号3に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号3で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のgHタンパク質は配列番号4に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号4で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のgHタンパク質は配列番号5に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号5で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のgHタンパク質は配列番号6に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号6で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。好ましいgHタンパク質又はその断片は、(i)HCMV gLと二量化することができ、(ii)トリマーgH/gL/gO複合体の部分を形成し、(iii)ペンタマーgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131A複合体の部分を形成し、(iv)配列番号1、2、3、4、5、又は6からの少なくとも1つのエピトープを含み、及び/又は(v)HCMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで誘発することができる。gHの例示的な複合体形成断片は配列番号2の残基Arg1~Leu125を含み、これは、全長のgL(おそらくgLの可撓性C末端をリンカーとして用いて)、全長のpUL128、全長のpUL130、及び全長のpUL131Aとの複合体の中にある場合に、それにも関わらず図7に記載する5つのコンフォメーショナルエピトープ部位を維持する、切り取られたHCMVペンタマー複合体を形成し得る。
【0062】
本発明のHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の安定化変異、好適には、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。配列番号1、配列番号2、配列番号3、若しくは配列番号4で説明される配列を有するgHポリペプチドのいずれか、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、若しくは配列番号4と少なくとも90%同一の配列を有する任意のgHポリペプチドは、本明細書で同定され定義される任意の1つ以上の安定化変異を好適に含み得る。したがって、一部の実施形態では、配列番号1で説明される配列を有するHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。代替の実施形態では、配列番号2で説明される配列を有するHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。さらなる代替の実施形態では、配列番号3で説明される配列を有するHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。さらなる代替の実施形態では、配列番号4で説明される配列を有するHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。
【0063】
実施例3にさらに詳細に述べ、図2A図2Fに図示するように、本発明者らはペンタマー複合体の結晶構造において、gH/gL/ULの境界面におけるいくつかの空洞を同定した。したがって、その目的がHCMV gHポリペプチドにおけるそのような境界面で観察された空洞を充填することである任意の空洞充填変異は、前記複合体の他の成分と会合した場合に、複合体(例えばペンタマー、gH/gL、又はgH/gL/gO複合体)の安定性に有利に寄与することが期待される。同様に、その目的がHCMV gHポリペプチドにおける近隣の残基の間の接触を増大させることである任意のリパッキング変異、例えば任意の疎水性変異又は任意の親水性変異は、前記複合体の他の成分と会合した場合に、複合体(例えばペンタマー、gH/gL、又はgH/gL/gO複合体)の安定性に有利に寄与することが期待される。同様に、その目的がHCMV gHポリペプチド中にイントラ-ジスルフィド架橋を、及び/又はHCMV gHポリペプチドと複合体の他の成分(例えばHCMVペンタマー複合体のHCMV gL、HCMV pUL128、HCMV pUL130、又はHCMV pUL131Aポリペプチド)のいずれかとの間にインター-ジスルフィド架橋を導入することである任意のジスルフィド架橋変異は、向上した熱安定性を有する複合体に有利に寄与することが期待される。
【0064】
空洞充填及び/又はリパッキング及び/又はジスルフィド架橋のために変異するHCMV gHポリペプチド中の関連するアミノ酸残基の同定は、例えば分子グラフィックスソフトウェアの補助を受ける三次元構造の目視検討又は任意の適切なin silico変異原法を用いることの両方のよって実施し得る。例えば、ソフトウェア、例えば(Chemical Computing Group Inc.社によって編集された)Molecular Operating Environment(MOE)によってアミノ酸配列を系統的に解析し、その変異が熱安定性を向上させることが予測されるポリペプチド中の特定の領域又は特定のアミノ酸を同定することが可能になる。
【0065】
HCMV gHポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸残基を、参照としてのみ配列番号1として説明される配列を用いて表1で提供する。他のHCMV gHポリペプチド、例えば配列番号2、配列番号3、若しくは配列番号4で説明される配列を有するポリペプチド、又はMerlin株とは異なるHCMV株に由来するgHポリペプチドの中の同様の位置における変異も、本発明において意図している。他のHCMV gHポリペプチド中のそのような同様の位置を決定することは、当業者の能力の範囲内である。所与のHCMVポリペプチドの中の同等のアミノ酸の位置は、容易に入手可能で公知のアラインメント及びアルゴリズム(例えばBLAST又はClustalW2)を用いてアミノ酸配列をアラインすることによって決定することができる。アミノ酸の位置の実際の番号は、実際の配列アラインメントに応じて他のHCMV gHポリペプチドについて調節しなければならないであろう。
【0066】
【表1-1】
【0067】
したがって、一部の実施形態では、空洞充填のためにHCMV gHポリペプチド中で変異するアミノ酸は、配列番号1で説明される配列のA102、A372、A352、若しくはL257であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV gHポリペプチドは、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号1の102、372、352、及び257に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0068】
疎水性変異のためにHCMV gHポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号1で説明される配列のH252、K404、R255、E355、H480、S601、若しくはR405であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV gHポリペプチドは、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸による、252位、404位、255位、355位、480位、601位、及び405位における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0069】
親水性変異のためにHCMV gHポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号1で説明される配列のG358若しくはH275であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、及びグルタミン酸(E)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV gHポリペプチドは、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、及びグルタミン酸(E)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号1のG358及びH275に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。極性変異のためにHCMV gHポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号1で説明される配列のG358若しくはH275であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、及びグルタミン(Q)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV gHポリペプチドは、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、及びグルタミン(Q)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号1のG358及びH275に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。荷電変異のためにHCMV gHポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号1で説明される配列のG358若しくはH275であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残
基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、アミノ酸残基アルギニン(R)又はグルタミン酸(E)によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV gHポリペプチドは、アルギニン(R)又はグルタミン酸(E)による、配列番号1のG358及びH275に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0070】
ジスルフィド架橋変異のためにHCMV gHポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号1で説明される配列のV109若しくはL111であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置にある。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMVポリペプチドは、システイン(C)による配列番号1のV109に対応する残基、又はシステイン(C)による配列番号1のL111に対応する残基のうち少なくとも1つの置換、好適には両方の置換を含む。
【0071】
したがって、一部の実施形態では、脱グリコシル化のためにHCMV gHポリペプチド中で変異するアミノ酸は、配列番号1で説明される配列のN55、N62、N67、N192、N641、及びN700であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV gHポリペプチドは、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号1の55、62、67、192、641、及び700に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0072】
【表1-2】
【0073】
gLポリペプチド
UL115遺伝子によってコードされるHCMV糖タンパク質L(gL)は、ウイルスの複製に必須であると考えられる。gLの全ての既知の機能特性はそのgHとの二量化に直接付随している。gL/gH複合体は、ウイルスの宿主細胞への進入に繋がるウイルス膜と原形質膜との融合に必要である。HCMV Merlin株(NCBI GI:39842115(これはNCBI GenBank受託番号AAR31659.1でもある)、配列番号7)及びHCMV Towne株(NCBI GI:239909463、これはNCBI GenBank受託番号ACS32410.1でもある。本明細書では配列番号11)からのgLは、278アミノ酸の長さであることが報告されている。HCMV AD169株(NCBI GI:2506510、これはNCBI UniProtKB受託番号P16832.2でもある。本明細書では配列番号12)からのgLは、278アミノ酸の長さであることが報告されており、そのN末端(アミノ酸残基1~35)にシグナル配列を含み、(残基74及び114に)2つのNグリコシル化部位を有し、TMドメインを欠いている(Rigoutsosら、In silico pattern-based analysis of the human cytomegalovirus genome, 2003 J. of Virology 77: 4326-44)。22~39種の臨床分離株並びにAD169の実験室株からの全長のgL遺伝子のシーケンシングにより、Towne及びToledoは分離株の中でアミノ酸配列の変動が2%未満であることを明らかにした(Rasmussenら、The Genes Encoding the gCIII Complex of Human Cytomegalovirus Exist in Highly Diverse Combinations in Clinical Isolates, 2002 J. of Virology 76: 10841-10888)。典型的には、gLタンパク質のN末端シグナル配列が宿主細胞のシグナルペプチダーゼによって切断されて成熟gLポリペプチドが産生される。本発明における使用のためのgLポリペプチドはN末端シグナル配列を欠いてよい。N末端配列を欠くHCMV gLポリペプチドの例は配列番号8であり、これは配列番号7のアミノ酸残基31~278からなっている。本発明における使用のための好ましいgLポリペプチドの例は配列番号9又は10であり、これらはプロテアーゼ認識部位と考えられる部位にLSG変異を含み、前記変異はプロテアーゼ切断を低減させる。本発明における使用のための好ましいgLポリペプチドの例は配列番号29又は30であり、これらはプロテアーゼ認識部位と考えられる部位にIDG変異を含み、前記変異はプロテアーゼ切断を低減させる。
【0074】
実施例中に示すように、gLポリペプチドは1つのアスパラギン残基、即ち配列番号7のgLのアミノ酸配列に関連して番号付けしてN74においてグリコシル化されている(N連結グリコシル化を介してグリカンを含む)。本発明における使用のためのHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片は、配列番号7のgLの配列に関連して番号付けして残基74において脱グリコシル化変異を含み得る。脱グリコシル化変異はグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)であってよい。特に、脱グリコシル化変異はグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、又はアラニン(A)であってよい。さらに特に、脱グリコシル化変異はグルタミン(Q)であってよい。
【0075】
本発明のgLタンパク質は配列番号7に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号7で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のgLタンパク質は配列番号8に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号8で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のgLタンパク質は配列番号9に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号9で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のgLタンパク質は配列番号10に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号10で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のgLタンパク質は配列番号11に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号11で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のgLタンパク質は配列番号12に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号12で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のgLタンパク質は配列番号29に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号29で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のgLタンパク質は配列番号30に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号30で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。好ましいgLタンパク質又はその断片は、(i)HCMV gHと二量化することができ、(ii)トリマーgH/gL/gO複合体の部分を形成し、(iii)ペンタマーgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131A複合体の部分を形成し、(iv)配列番号7、8、9、10、11、12、29、又は30からの少なくとも1つのエピトープを含み、及び/又は(v)HCMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで誘発することができる。gLの例示的な複合体形成断片は配列番号7の残基Thr76~Tyr169を含み、これは全長のpUL128、全長のpUL130、及び全長のpUL131Aとの複合体(即ち、gHは存在しない)の中にある場合に、それにも関わらず図7に記載する5つのコンフォメーショナルエピトープ部位を維持する、切り取られたHCMVペンタマー複合体を形成し得る。
【0076】
本発明のHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の安定化変異、好適には、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号29、若しくは配列番号30で説明される配列を有するgLポリペプチドのいずれか、又は配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号29、若しくは配列番号30と少なくとも90%同一の配列を有する任意のgLポリペプチド、又はその複合体形成断片は、本明細書で同定され定義される任意の1つ以上の安定化変異を好適に含み得る。したがって、一部の実施形態では、配列番号7で説明される配列を有するHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。代替の実施形態では、配列番号8で説明される配列を有するHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。さらなる代替の実施形態では、配列番号9で説明される配列を有するHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。さらなる代替の実施形態では、配列番号10で説明される配列を有するHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。さらなる代替の実施形態では、配列番号29で説明される配列を有するHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。さらなる代替の実施形態では、配列番号30で説明される配列を有するHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。
【0077】
実施例3にさらに詳細に述べ、図2A図2Fに図示するように、本発明者らはペンタマー複合体の結晶構造において、gH/gL/ULの境界面におけるいくつかの空洞を同定した。したがって、その目的がHCMV gLポリペプチドにおけるそのような境界面で観察された空洞を充填することである任意の空洞充填変異は、前記複合体の他の成分と会合した場合に、複合体(例えばペンタマー、gH/gL、又はgH/gL/gO複合体)の安定性に有利に寄与することが期待される。同様に、その目的がHCMV gLポリペプチドにおける近隣の残基の間の接触を増大させることである任意のリパッキング変異、例えば任意の疎水性変異又は任意の親水性変異は、前記複合体の他の成分と会合した場合に、複合体(例えばペンタマー、gH/gL、又はgH/gL/gO複合体)の安定性に有利に寄与することが期待される。同様に、その目的がHCMV gLポリペプチド中にイントラ-ジスルフィド架橋を、及び/又はHCMV gLポリペプチドと複合体の他の任意の成分(例えばHCMVペンタマー複合体のHCMV gH、HCMV pUL128、HCMV pUL130、又はHCMV pUL131Aポリペプチド)との間にインター-ジスルフィド架橋を導入することである任意のジスルフィド架橋変異は、向上した熱安定性を有する複合体に有利に寄与することが期待される。
【0078】
空洞充填及び/又はリパッキング及び/又はジスルフィド架橋のために変異するHCMV gLポリペプチド中の関連するアミノ酸残基の同定は、例えば分子グラフィックスソフトウェアの補助を受ける三次元構造の目視検討又は任意の適切なin silico変異原法を用いることの両方によって実施し得る。例えば、ソフトウェア、例えば(Chemical Computing Group Inc.社によって編集された)Molecular Operating Environment(MOE)によってアミノ酸配列を系統的に解析し、その変異が熱安定性を向上させることが予測されるポリペプチド中の特定の領域又は特定のアミノ酸を同定することが可能になる。
【0079】
HCMV gLポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸残基を、参照としてのみ配列番号7として説明される配列を用いて表2で提供する。他のHCMV gLポリペプチド、例えば配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号29、若しくは配列番号30で説明される配列を有するポリペプチド、又はMerlin株とは異なるHCMV株に由来するgLポリペプチドの中の同様の位置における変異も、本発明において意図している。他のHCMV gLポリペプチド中のそのような同様の位置を決定することは、当業者の能力の範囲内である。所与のHCMV gLポリペプチドの中の同等のアミノ酸の位置は、容易に入手可能で公知のアラインメント及びアルゴリズム(例えばBLAST又はClustalW2)を用いてアミノ酸配列をアラインすることによって決定することができる。アミノ酸の位置の実際の番号は、実際の配列アラインメントに応じて他のHCMV gLポリペプチドについて調節しなければならないであろう。
【0080】
したがって、一部の実施形態では、脱グリコシル化のためにHCMV gLポリペプチド中で変異するアミノ酸は、配列番号7で説明される配列のN74であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gLポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、このアミノ酸残基の変異は、このアミノ酸を、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV gLポリペプチドは、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号7の74に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0081】
【表2-1】
【0082】
したがって、一部の実施形態では、空洞充填のためにHCMV gLポリペプチド中で変異するアミノ酸は、配列番号7で説明される配列のH177、G224、G140、G145、D146、G218、L119、C233、若しくはP272であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gLポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV gLポリペプチドは、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号7の177、224、140、145、146、218、119、233、及び272に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0083】
疎水性変異のためにHCMV gLポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号7で説明される配列のH267、H236、H245、G161、若しくはC233であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gLポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、プロリン(P)、及びチロシン(Y)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV gLポリペプチドは、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号7の267、236、245、161、及び233に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0084】
ジスルフィド架橋変異のためにHCMV gLポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号7で説明される配列のG161、D163、G224、G218、R166、G140、R160、若しくはA150であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gLポリペプチドにおける対応する位置にある。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV gLポリペプチドは、G161C、D163C、G224C、G218C、R166C、G140C、R160C、A150C、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0085】
【表2-2】
【0086】
pUL128ポリペプチド
HCMV Merlin株からのpUL128(又は単に「UL128」)は、130アミノ酸からなり、未成熟終止を惹起する1ヌクレオチド置換を含むことが報告されている(NCBI GI:39842124(これはNCBI GenBank受託番号AAR31668.1でもある)、配列番号13)。HCMV Towne株(NCBI GI:39841882(これはNCBI GenBank受託番号AAR31451.1でもある)、配列番号15)及びAD169株(NCBI GI:59803078(これはNCBI UniProtKB受託番号P16837.2でもある)、配列番号16)からのpUL128は、171アミノ酸からなっていることが報告されている。配列番号13の未成熟終止のため、配列番号15及び17は配列番号13の全長にわたって75%の同一性しか共有していない。pUL128は配列番号13の残基1~27に位置するN末端シグナル配列を有していることが予測されるが、TMドメインを欠いていることが予測される。典型的には、pUL128ポリペプチドのN末端シグナル配列は宿主細胞のシグナルペプチダーゼによって切断されて成熟pUL128ポリペプチドを産生する。本発明における使用のためのpUL128ポリペプチドは、N末端シグナル配列を欠いていてよい。N末端配列を欠くHCMV pUL128ポリペプチドの例は配列番号14であり、これは配列番号13のアミノ酸残基28~130からなっている。
【0087】
本発明のpUL128タンパク質は配列番号13に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号13で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のpUL128タンパク質は配列番号14に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号14で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のpUL128タンパク質は配列番号15に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号15で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のpUL128タンパク質は配列番号16に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号16で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。好ましいpUL128タンパク質又はその断片は、(i)ペンタマーgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131A複合体の部分を形成し、(ii)配列番号13、14、15、又は16の少なくとも1つのエピトープを含み、及び/又は(iii)HCMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで誘発することができる。
【0088】
本発明のHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の安定化変異、好適には、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。配列番号13、配列番号14、配列番号15、若しくは配列番号16で説明される配列を有するpUL128ポリペプチドのいずれか、又は配列番号13、配列番号14、配列番号15、若しくは配列番号16と少なくとも90%同一の配列を有する任意のpUL128ポリペプチド、又はその複合体形成断片は、本明細書で同定され定義される任意の1つ以上の安定化変異を好適に含み得る。したがって、一部の実施形態では、配列番号13で説明される配列を有するHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。代替の実施形態では、配列番号14で説明される配列を有するHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。さらなる代替の実施形態では、配列番号15で説明される配列を有するHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。さらなる代替の実施形態では、配列番号16で説明される配列を有するHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。
【0089】
実施例3にさらに詳細に述べ、図2A図2Fに図示するように、本発明者らはペンタマー複合体の結晶構造において、gH/gL/ULの境界面におけるいくつかの空洞を同定した。したがって、その目的がHCMV pUL128ポリペプチドにおけるそのような境界面で観察された空洞を充填することである任意の空洞充填変異は、前記複合体の他の成分と会合した場合に、複合体(例えばペンタマー複合体)の安定性に有利に寄与することが期待される。同様に、その目的がHCMV pUL128ポリペプチドにおける近隣の残基の間の接触を増大させることである任意のリパッキング変異、例えば任意の疎水性変異又は任意の親水性変異は、前記複合体の他の成分と会合した場合に、向上した熱安定性を有する複合体(例えばペンタマー複合体)の安定性に有利に寄与することが期待される。同様に、その目的がHCMV pUL128ポリペプチド中にイントラ-ジスルフィド架橋を、及び/又はHCMV pUL128ポリペプチドと複合体の他の成分(例えばHCMVペンタマー複合体のHCMV gH、HCMV gL、HCMV pUL130、又はHCMV pUL131Aポリペプチド)のいずれかとの間にインター-ジスルフィド架橋を導入することである任意のジスルフィド架橋変異は、向上した熱安定性を有する複合体に有利に寄与することが期待される。
【0090】
空洞充填及び/又はリパッキング及び/又はジスルフィド架橋のために変異するHCMV pUL128ポリペプチド中の関連するアミノ酸残基の同定は、例えば分子グラフィックスソフトウェアの補助を受ける三次元構造の目視検討又は任意の適切なin silico変異原法を用いることの両方によって実施し得る。そのような方法は当業者には既知である。例えば、ソフトウェア、例えば(Chemical Computing Group Inc.社によって編集された)Molecular Operating Environment(MOE)によってアミノ酸配列を系統的に解析し、その変異が熱安定性を向上させることが予測されるポリペプチド中の特定の領域又は特定のアミノ酸を同定することが可能になる。
【0091】
HCMV pUL128ポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸残基を、参照としてのみ配列番号13として説明される配列を用いて表3で提供する。他のHCMV pUL128ポリペプチド、例えば配列番号14で説明される配列を有するポリペプチド、又はMerlin株とは異なるHCMV株に由来するgLポリペプチド、例えば配列番号15又は配列番号16の中の同様の位置における変異も、本発明において意図している。他のHCMV pUL128ポリペプチド中のそのような同様の位置を決定することは、当業者の能力の範囲内である。所与のHCMV pUL128ポリペプチドの中の同等のアミノ酸の位置は、容易に入手可能で公知のアラインメント及びアルゴリズム(例えばBLAST又はClustalW2)を用いてアミノ酸配列をアラインすることによって決定することができる。アミノ酸の位置の実際の番号は、実際の配列アラインメントに応じて他のHCMV pUL128ポリペプチドについて調節しなければならないであろう。
【0092】
【表3-1】
【0093】
したがって、一部の実施形態では、空洞充填のためにHCMV pUL128ポリペプチド中で変異するアミノ酸は、配列番号13で説明される配列のG123、V77、L103、若しくはQ119であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV pUL128ポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV pUL128ポリペプチドは、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号13の123、77、103、及び119に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0094】
疎水性変異のためにHCMV pUL128ポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号13で説明される配列のG145、H90、若しくはG112であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV pUL128ポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV pUL128ポリペプチドは、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号13の145、90、及び112に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0095】
ジスルフィド架橋変異のためにHCMV pUL128ポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号13で説明される配列のR142、N99、Y98、A124、G126、L159、D45、V88、M48、G107、R51、D106、若しくはS83であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV pUL128ポリペプチドにおける対応する位置にある。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV pUL128ポリペプチドは、R142C、N99C、Y98C、A124C、G126C、L159C、D45C、V88C、M48C、G107C、R51C、D106C、S83C、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0096】
【表3-2】
【0097】
pUL130ポリペプチド
pUL130(又は単に「UL130」)は、HCMV UL131A-128遺伝子座の中心かつ最大(214コドン)の遺伝子である。HCMV Merlin株からのpUL130の配列は公衆で入手可能(NCBI GI: 39842125(これはNCBI GenBank受託番号AAR31669.1でもある)本明細書では配列番号17)である。HCMV Towne株からのpUL130の配列は公衆で入手可能(NCBI GI:239909473(これはNCBI ACS32420.1でもある)本明細書では配列番号19)である。同様に、HCMV AD169株からのpUL130の配列は公衆で入手可能(NCBI UniprotKB受託番号P16772で、本明細書では配列番号20)である。Merlin及びTowneのpUL130の配列は、それぞれ214及び229のアミノ酸からなっている。配列番号17のMerlin pUL130の配列は、想定されるケモカインドメイン(アミノ酸46~120)の中の2つの潜在的なN連結グリコシル化部位(Asn85及びAsn118)を含む親水性タンパク質に先行する残基1~25に25アミノ酸の長さのN末端シグナル配列、並びに特有のC末端領域の終端に近いさらなるNグリコシル化部位(Asn201)を含む。pUL130はTMドメインを欠いていることが予想される。
【0098】
典型的には、pUL130ポリペプチドのN末端シグナル配列は宿主細胞のシグナルペプチダーゼによって切断されて成熟pUL130タンパク質を産生する。本発明における使用のためのpUL130ポリペプチドは、N末端シグナル配列を欠いていてよい。N末端配列を欠くHCMV pUL130ポリペプチドの例は配列番号18であり、これは配列番号17のアミノ酸残基26~214からなっている。
【0099】
実施例中に示すように、pUL130ポリペプチドは3つのアスパラギン残基、即ち配列番号17のpUL130のアミノ酸配列に関連して番号付けしてN85、N118、及びN201においてグリコシル化されている(N連結グリコシル化を介してグリカンを含む)。本発明における使用のためのHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片は、配列番号17のpUL130の配列に関連して番号付けして残基85、118、及び201に位置するアスパラギンの1つ以上において脱グリコシル化変異を含み得る。脱グリコシル化変異はグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)であってよい。特に、脱グリコシル化変異はグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、又はアラニン(A)であってよい。さらに特に、脱グリコシル化変異はグルタミン(Q)であってよい。
【0100】
本発明のpUL130タンパク質は配列番号17に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号17で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のpUL130タンパク質は配列番号18に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号18で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のpUL130タンパク質は配列番号19に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号19で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のpUL130タンパク質は配列番号20に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号20で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。好ましいpUL130タンパク質又はその断片は、(i)ペンタマーgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131A複合体を形成することができ、(ii)配列番号17、18、19、又は20の少なくとも1つのエピトープを含み、及び/又は(iii)HCMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで誘発することができる。pUL130の例示的な複合体形成断片は配列番号17の残基Thr45~Val214を含み、これは全長のpUL131Aとの複合体(即ち、gH、gL、又はpUL128は存在しない)の中にある場合に、それにも関わらず図7に記載する5つのコンフォメーショナルエピトープ部位を維持する、切り取られたHCMVペンタマー複合体を形成し得る。或いは、pUL130の複合体形成断片は配列番号17の残基Thr45~Val214を含み、これは配列番号21の残基Gln19~Asn129を含むpUL131Aの複合体形成断片との複合体(即ち、gH、gL、又はpUL128は存在しない)の中にある場合に、それにも関わらず図7に記載する5つのコンフォメーショナルエピトープ部位を維持する、切り取られたHCMVペンタマー複合体を形成し得る。
【0101】
本発明のHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の安定化変異、好適には、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。配列番号17、配列番号18、配列番号19、若しくは配列番号20で説明される配列を有するpUL130ポリペプチドのいずれか、又は配列番号17、配列番号18、配列番号19、若しくは配列番号20と少なくとも90%同一の配列を有する任意のpUL130ポリペプチド、又はその複合体形成断片は、本明細書で同定され定義される任意の1つ以上の安定化変異を好適に含み得る。したがって、一部の実施形態では、配列番号17で説明される配列を有するHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。代替の実施形態では、配列番号18で説明される配列を有するHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。代替の実施形態では、配列番号19で説明される配列を有するHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。代替の実施形態では、配列番号20で説明される配列を有するHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。
【0102】
実施例3にさらに詳細に述べ、図2A図2Fに図示するように、本発明者らはペンタマー複合体の結晶構造において、gH/gL/ULの境界面におけるいくつかの空洞を同定した。したがって、その目的がHCMV pUL130ポリペプチドにおけるそのような境界面で観察された空洞を充填することである任意の空洞充填変異は、前記複合体の他の成分と会合した場合に、複合体(例えばペンタマー複合体)の安定性に有利に寄与することが期待される。同様に、その目的がHCMV pUL130ポリペプチドにおける近隣の残基の間の接触を増大させることである任意のリパッキング変異、例えば任意の疎水性変異又は任意の親水性変異は、前記複合体の他の成分と会合した場合に、複合体(例えばペンタマー複合体)の安定性に有利に寄与することが期待される。同様に、その目的がHCMV pUL130ポリペプチド中にイントラ-ジスルフィド架橋を、及び/又はHCMV gHポリペプチドと複合体の他の成分(例えばHCMVペンタマー複合体のHCMV gH、HCMV gL、HCMV pUL128、又はHCMV pUL131Aポリペプチド)のいずれかとの間にインター-ジスルフィド架橋を導入することである任意のジスルフィド架橋変異は、向上した熱安定性を有する複合体に有利に寄与することが期待される。
【0103】
空洞充填及び/又はリパッキング及び/又はジスルフィド架橋のために変異するHCMV pUL130ポリペプチド中の関連するアミノ酸残基の同定は、例えば分子グラフィックスソフトウェアの補助を受ける三次元構造の目視検討又は任意の適切なin silico変異原法を用いることの両方によって実施し得る。そのような方法は当業者には既知である。例えば、ソフトウェア、例えば(Chemical Computing Group Inc.社によって編集された)Molecular Operating Environment(MOE)によってアミノ酸配列を系統的に解析し、その変異が熱安定性を向上させることが予測されるポリペプチド中の特定の領域又は特定のアミノ酸を同定することが可能になる。
【0104】
HCMV pUL130ポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸残基を、参照としてのみ配列番号17として説明される配列を用いて表4で提供する。他のHCMV pUL130ポリペプチド、例えば配列番号18、配列番号19、配列番号20で説明される配列を有するポリペプチド、又はMerlin株とは異なるHCMV株に由来するpUL130ポリペプチドの中の同様の位置における変異も、本発明において意図している。他のHCMV pUL130ポリペプチド中のそのような同様の位置を決定することは、当業者の能力の範囲内である。所与のHCMV pUL130ポリペプチドの中の同等のアミノ酸の位置は、容易に入手可能で公知のアラインメント及びアルゴリズム(例えばBLAST又はClustalW2)を用いてアミノ酸配列をアラインすることによって決定することができる。アミノ酸の位置の実際の番号は、実際の配列アラインメントに応じて他のHCMV pUL130ポリペプチドについて調節しなければならないであろう。
【0105】
【表4-1】
【0106】
したがって、一部の実施形態では、空洞充填のためにHCMV pUL130ポリペプチド中で変異するアミノ酸は、配列番号17で説明される配列のD165若しくはH209であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV pUL130ポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV pUL130ポリペプチドは、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号17の165及び209に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0107】
疎水性変異のためにHCMV pUL130ポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号17で説明される配列のG116、G135、H150、若しくはH209であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV pUL130ポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV pUL130ポリペプチドは、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号17のG116、G135、H150、及びH209に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0108】
ジスルフィド架橋変異のためにHCMV pUL130ポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号17で説明される配列のG116、H150、P64、S178、P62、E95、Y204、N211、I213、Y56、若しくはT167であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV pUL130ポリペプチドにおける対応する位置にある。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV pUL130ポリペプチドは、G116C、H150C、P64C、S178C、P62C、E95C、Y204C、N211C、I213C、Y56C、T167C、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0109】
したがって、一部の実施形態では、脱グリコシル化のためにHCMV pUL130ポリペプチド中で変異するアミノ酸は、配列番号17で説明される配列のN85、N118、及びN201であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV pUL130ポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV pUL130ポリペプチドは、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号17の85、118、及び201に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0110】
【表4-2】
【0111】
pUL131Aポリペプチド
pUL131Aの機能は、内皮細胞中だけでなく、上皮細胞中におけるHCMVの複製にも必要である。HCMV Merlin株(NCBI GI:39842126(これはNCBI GenBank受託番号AAR31670.1でもある)、配列番号21)及びTowne株(NCBI GI:239909474(これはNCBI GenBank受託番号ACS32421.1でもある)、配列番号23)及びAD169株(NCBI GI:219879712(これはNCBI GenBank受託番号DAA06452.1でもある)、配列番号24)からのpUL131Aは、それぞれ129、129、及び76アミノ酸からなっていることが報告されている。pUL131AはN末端シグナル配列を含み、これは配列番号21の残基1~18に位置しており、TMドメインを欠いている。AD169株からのUL131Aは、フレームシフトを惹起する1塩基対の挿入を含むことが報告されている(Wang and Shenk, Human Cytomegalovirus UL131 Open Reading Frame Is Required for Epithelial Cell Tropism, 2005 J. Virol. 79: 10330-10338)。配列番号21はN末端の28アミノ酸にわたって配列番号24と96%同一であるが、AD169 UL131A遺伝子におけるフレームシフトのために配列番号21の全長にわたって配列番号24と36%しか同一でない。
【0112】
典型的には、pUL131AポリペプチドのN末端シグナル配列は宿主細胞のシグナルペプチダーゼによって切断されて成熟pUL131Aタンパク質を産生する。本発明における使用のためのpUL131Aポリペプチドは、N末端シグナル配列を欠いていてよい。N末端配列を欠くHCMV pUL131Aポリペプチドの例は配列番号22であり、これは配列番号21のアミノ酸残基19~129からなっている。
【0113】
実施例中に示すように、pUL131Aポリペプチドは配列番号21のgHのアミノ酸配列に関連して番号付けしてアスパラギン残基N81においてグリコシル化されている(N連結グリコシル化を介してグリカンを含む)。本発明における使用のためのHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片は、配列番号21のpUL131Aの配列に関連して番号付けして残基81に位置するアスパラギンにおいて脱グリコシル化変異を含み得る。脱グリコシル化変異はグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)であってよい。特に、脱グリコシル化変異はグルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、又はアラニン(A)であってよい。さらに特に、脱グリコシル化変異はグルタミン(Q)であってよい。
【0114】
本発明のpUL131Aタンパク質は配列番号21に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号21で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のpUL131Aタンパク質は配列番号22に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号22で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のpUL131Aタンパク質は配列番号23に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号23で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。本発明のpUL131Aタンパク質は配列番号24に対する種々の程度の同一性、例えば配列番号24で引用される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。好ましいpUL131Aタンパク質は、(i)ペンタマーgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131A複合体を形成することができ、(ii)配列番号21、22、23、又は24の少なくとも1つのエピトープを含み、及び/又は(iii)HCMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで誘発することができる。pUL131Aの例示的な複合体形成断片は配列番号21の残基Gln19~Asn129を含み、これは全長のpUL130との複合体(即ち、gH、gL、又はpUL128は存在しない)の中にある場合に、それにも関わらず図7に記載する5つのコンフォメーショナルエピトープ部位を維持する、切り取られたHCMVペンタマー複合体を形成し得る。或いは、pUL131Aの複合体形成断片は配列番号21の残基Gln19~Asn129を含み、これは配列番号17の残基Thr45~Val214を含むpUL130の複合体形成断片との複合体(即ち、gH、gL、又はpUL128は存在しない)の中にある場合に、それにも関わらず図7に記載する5つのコンフォメーショナルエピトープ部位を維持する、切り取られたHCMVペンタマー複合体を形成し得る。
【0115】
本発明のHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の安定化変異、好適には、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。配列番号21、配列番号22、配列番号23、若しくは配列番号24で説明される配列を有するpUL131Aポリペプチドのいずれか、又は配列番号21、配列番号22、配列番号23、若しくは配列番号24と少なくとも90%同一の配列を有する任意のpUL131Aポリペプチド、又はその複合体形成断片は、本明細書で同定され定義される任意の1つ以上の安定化変異を好適に含み得る。したがって、一部の実施形態では、配列番号21で説明される配列を有するHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。代替の実施形態では、配列番号22で説明される配列を有するHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。代替の実施形態では、配列番号23で説明される配列を有するHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。代替の実施形態では、配列番号24で説明される配列を有するHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片は、1つ以上の空洞充填変異、1つ以上の疎水性変異、1つ以上の親水性変異、1つ以上のジスルフィド架橋変異、又はそれらの1つ以上の任意の組合せを含む。
【0116】
実施例3にさらに詳細に述べ、図2A図2Fに図示するように、本発明者らはペンタマー複合体の結晶構造において、gH/gL/ULの境界面におけるいくつかの空洞を同定した。したがって、その目的がHCMV pUL131Aポリペプチドにおけるそのような境界面で観察された空洞を充填することである任意の空洞充填変異は、前記複合体の他の成分と会合した場合に、複合体(例えばペンタマー複合体)の安定性に有利に寄与することが期待される。同様に、その目的がHCMV pUL131Aポリペプチドにおける近隣の残基の間の接触を増大させることである任意のリパッキング変異、例えば任意の疎水性変異又は任意の親水性変異は、前記複合体の他の成分と会合した場合に、複合体(例えばペンタマー複合体)の安定性に有利に寄与することが期待される。同様に、その目的がHCMV pUL131Aポリペプチド中にイントラ-ジスルフィド架橋を、及び/又はHCMV gHポリペプチドと複合体の他の成分(例えばHCMVペンタマー複合体のHCMV gH、HCMV gL、HCMV pUL128、又はHCMV pUL130ポリペプチド)のいずれかとの間にインター-ジスルフィド架橋を導入することである任意のジスルフィド架橋変異は、向上した熱安定性を有する複合体に有利に寄与することが期待される。
【0117】
空洞充填及び/又はリパッキング及び/又はジスルフィド架橋のために変異するHCMV pUL131Aポリペプチド中の関連するアミノ酸残基の同定は、例えば分子グラフィックスソフトウェアの補助を受ける三次元構造の目視検討又は任意の適切なin silico変異原法を用いることの両方によって実施し得る。そのような方法は当業者には既知である。例えば、ソフトウェア、例えば(Chemical Computing Group Inc.社によって編集された)Molecular Operating Environment(MOE)によってアミノ酸配列を系統的に解析し、その変異が熱安定性を向上させることが予測されるポリペプチド中の特定の領域又は特定のアミノ酸を同定することが可能になる。
【0118】
HCMV pUL131Aポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸残基を、参照としてのみ配列番号21として説明される配列を用いて表5で提供する。他のHCMV pUL131Aポリペプチド、例えば配列番号22、配列番号23、配列番号24で説明される配列を有するポリペプチド、又はMerlin株とは異なるHCMV株に由来するpUL131Aポリペプチドの中の同様の位置における変異も、本発明において意図している。他のHCMV pUL131Aポリペプチド中のそのような同様の位置を決定することは、当業者の能力の範囲内である。所与のHCMV pUL131Aポリペプチドの中の同等のアミノ酸の位置は、容易に入手可能で公知のアラインメント及びアルゴリズム(例えばBLAST又はClustalW2)を用いてアミノ酸配列をアラインすることによって決定することができる。アミノ酸の位置の実際の番号は、実際の配列アラインメントに応じて他のHCMV pUL130ポリペプチドについて調節しなければならないであろう。
【0119】
【表5-1】
【0120】
したがって、一部の実施形態では、空洞充填のためにHCMV pUL131Aポリペプチド中で変異するアミノ酸は、配列番号21で説明される配列のG99、S86、若しくはS90であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV pUL131Aポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV pUL131Aポリペプチドは、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、及びロイシン(L)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号21の99、86、又は90に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0121】
疎水性変異のためにHCMV pUL131Aポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号21で説明される配列のH69、H35、H64、D38、V85、Y52、若しくはA67であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV pUL131Aポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、これらのアミノ酸残基の変異は、それらのいずれか、及び/又はそれらの1つより多く、場合によりそれらの全てを、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV pUL131Aポリペプチドは、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びプロリン(P)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号21の69、35、64、38、85、52、及び67に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0122】
親水性変異のためにHCMV pUL131Aポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号21で説明される配列のR118であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、このアミノ酸残基の変異は、これを、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、及びグルタミン酸(E)からなる群から選択されるアミノ酸によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV pUL131Aポリペプチドは、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、及びグルタミン酸(E)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号21のR118に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。極性変異のためにHCMV pUL131Aポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号21で説明される配列のR118であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、このアミノ酸残基の変異は、これを、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、及びグルタミン(Q)からなる群から選択されるアミノ酸によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV pUL131Aポリペプチドは、セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、及びグルタミン(Q)からなる群から選択されるアミノ酸による、R118位における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。荷電変異のためにHCMV pUL131Aポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号21で説明される配列のR118であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、このアミノ酸残基の変異は、これを、アルギニン(R)又はグルタミン酸(E)によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV gHポリペプチドは、アミノ酸アルギニン(R)又はグルタミン酸(E)による、配列番号21のR118に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0123】
ジスルフィド架橋変異のためにHCMV pUL131Aポリペプチド中で変異する好適な非限定的で例示的なアミノ酸は、配列番号21で説明される配列のH64若しくはW37であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置にある。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMVポリペプチドは、システイン(C)による配列番号21のH64に対応する残基、又はシステイン(C)による配列番号21のW37に対応する残基のうち少なくとも1つの置換、好適には両方の置換を含む。
【0124】
したがって、一部の実施形態では、脱グリコシル化のためにHCMV pUL131Aポリペプチド中で変異するアミノ酸は、配列番号21で説明される配列のN81であるか、又は異なるHCMV株由来のHCMV gHポリペプチドにおける対応する位置にある。好適には、このアミノ酸残基の変異は、これを、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸残基によって置換することからなり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明のHCMV pUL131Aポリペプチドは、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、及びアスパラギン酸(D)からなる群から選択されるアミノ酸による、配列番号21の81位における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0125】
【表5-2】
【0126】
gOポリペプチド
UL74遺伝子によってコードされるHCMV糖タンパク質O(gO)は、分子シャペロンとして作用し、gH/gLのER輸送及びビリオンへの組込みを増大させることが報告されている。gOはgH/gLに対する結合に関してpUL128~131Aと競合するがgH/gLから放出されるため、gH/gL(pUL128~131Aを欠く)がビリオンに組み込まれることが提唱されている(Ryckmanら、Human Cytomegalovirus TR Strain Glycoprotein O Acts as a Chaperone Promoting gH/gL Incorporation into Virions but Is Not Present in Virions、2010 Journal of Virology 84: 2597~2609)。他のウイルス遺伝子と比較して、HCMV gOは異なるHCMV株間で著しく変動的であり、22~39の臨床分離株並びに実験室株AD169、Towne、及びToledoの間のgOアミノ酸配列の変異性(variability)は45%に達した(すなわち、異なる単離株間のgOアミノ酸配列の同一性はわずか55%であった)(Rasmussenら、The Genes Encoding the gCIII Complex of Human Cytomegalovirus Exist in Highly Diverse Combinations in Clinical Isolates、2002 J. Virol. 76: 10841~10888)。HCMV株Merlin(NCBI GI:39842082(NCBI GenBank受託番号AAR31626.1でもある)、本明細書では配列番号25)、AD169(NCBI GI:136968(NCBI UniProtKB受託番号P16750.1でもある)、本明細書では配列番号28)、及びTowne(NCBI GI:239909431(NCBI GenBank受託番号ACS32378.1でもある)、本明細書では配列番号27)からのgOは、それぞれ472、466、及び457個のアミノ酸からなることが報告されている。配列番号25と73%のアミノ酸類似性を共有するHCMV株AD169のgOは、18のN-グリコシル化部位(残基75、83、87、103、130、157、162、171、219、242、288、292、350、385、392、399、433、及び454における)を有し、そのN末端に成熟ポリペプチドには存在しない切断可能なシグナル配列(アミノ酸残基1~30からなることが予測される)を含み得る。Rigoutsosら(In silico pattern-based analysis of the human cytomegalovirus genome、2003 J. Virol. 77: 4326~4344)はTMドメイン(領域10~28及び190~212における)並びにコイルドコイル領域(残基240~272)の存在を予測した。
【0127】
典型的には、gOタンパク質のN末端シグナル配列は宿主細胞シグナルペプチダーゼによって切断されて成熟gOタンパク質を産生する。本発明のHCMV膜複合体におけるgOタンパク質はN末端シグナル配列を欠いていてもよい。本発明の望ましいgOタンパク質の一例は、N末端シグナル配列を欠き、配列番号25のアミノ酸残基31~472からなる配列番号26である。
【0128】
本発明のgOタンパク質は配列番号25と様々な程度の同一性、例えば配列番号25に示される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。本発明のgOタンパク質は配列番号26と様々な程度の同一性、例えば配列番号26に示される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。本発明のgOタンパク質は配列番号27と様々な程度の同一性、例えば配列番号27に示される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。本発明のgOタンパク質は配列番号28と様々な程度の同一性、例えば配列番号28に示される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。本発明のgOヌクレオチド配列は配列番号39と様々な程度の同一性、例えば配列番号39に示される配列と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。望ましいgOタンパク質又はその断片は、(i)トリマーgH/gL/gO複合体の部分を形成することができる、(ii)ペンタマーgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131A複合体の部分を形成することができない、(iii)配列番号25、26、27、若しくは28の少なくとも1つのエピトープを含む、且つ/又は(iv)HCMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoにおいて誘発することができる。
【0129】
複合体
別の態様では、本発明は本明細書に記載される変異したHCMVポリペプチド又はその複合体形成断片を含むペンタマー複合体を提供する。そのような複合体は、例えば(i)1つ以上の安定化変異を含む上記HCMV gHポリペプチドのいずれか、(ii)1つ以上の安定化変異を含む上記HCMV gLポリペプチドのいずれか、(iii)1つ以上の安定化変異を含む上記HCMV pUL128ポリペプチドのいずれか、(iv)1つ以上の安定化変異を含む上記HCMV pUL130ポリペプチドのいずれか、及び(v)1つ以上の安定化変異を含む上記HCMV pUL131Aポリペプチドのいずれかを含む。そのような複合体は、例えば(vi)上記HCMV gH、gL、pUL130、及びpUL131A 脱グリコシル化変異のいずれかをさらに含んでもよい。
【0130】
別の態様では、本発明は本明細書に記載される変異したHCMVポリペプチド又はその複合体形成断片を含むgH/gL複合体を提供する。そのような複合体は、例えば(i)1つ以上の安定化変異を含む上記HCMV gHポリペプチドのいずれか、及び/又は(ii)1つ以上の安定化変異を含む上記HCMV gLポリペプチドのいずれかを含む。そのような複合体は、例えば(iii)上記HCMV gH及びgL 脱グリコシル化変異のいずれかをさらに含んでもよい。
【0131】
別の態様では、本発明は本明細書に記載される変異したHCMVポリペプチド又はその複合体形成断片を含むgH/gL/gO複合体を提供する。そのような複合体は、例えば(i)1つ以上の安定化変異を含む上記HCMV gHポリペプチドのいずれか、及び/又は(ii)1つ以上の安定化変異を含む上記HCMV gLポリペプチドのいずれかを含む。そのような複合体は、例えば(iii)上記HCMV gH及びgL 脱グリコシル化変異のいずれかをさらに含んでもよい。
【0132】
別の態様では、本発明は本明細書に記載される変異したHCMVポリペプチド又はその複合体形成断片を含むペンタマー複合体を提供する。そのような複合体は、例えば(i)1つ以上の脱グリコシル化変異を含む上記HCMV gHポリペプチドのいずれか、(ii)脱グリコシル化変異を含む上記HCMV gLポリペプチドのいずれか、(iii)1つ以上の脱グリコシル化変異を含む上記HCMV pUL130ポリペプチドのいずれか、及び(iv)脱グリコシル化変異を含む上記HCMV pUL131Aポリペプチドのいずれかを含む。そのような複合体は、例えば(vi)上記HCMV gH、gL、pUL130、及びpUL131A 安定性変異(stability mutation)のいずれかをさらに含んでもよい。
【0133】
別の態様では、本発明は本明細書に記載される変異したHCMVポリペプチド又はその複合体形成断片を含むgH/gL複合体を提供する。そのような複合体は、例えば(i)1つ以上の脱グリコシル化変異を含む上記HCMV gHポリペプチドのいずれか、及び/又は(ii)脱グリコシル化変異を含む上記HCMV gLポリペプチドのいずれかを含む。そのような複合体は、例えば(iii)上記HCMV gH及びgL 安定性変異のいずれかをさらに含んでもよい。
【0134】
別の態様では、本発明は本明細書に記載される変異したHCMVポリペプチド又はその複合体形成断片を含むgH/gL/gO複合体を提供する。そのような複合体は、例えば(i)1つ以上の脱グリコシル化変異を含む上記HCMV gHポリペプチドのいずれか、及び/又は(ii)脱グリコシル化変異を含む上記HCMV gLポリペプチドのいずれかを含む。そのような複合体は、例えば(iii)上記HCMV gH及びgL 安定性変異のいずれかをさらに含んでもよい。
【0135】
組成物
別の態様では、本発明は、変異体ポリペプチド又はその変異体複合体形成断片を含む組成物であって、変異体ポリペプチド又は変異体断片がHCMV gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aのうちの少なくとも1つであり、変異体ポリペプチド又は変異体断片が少なくとも1つの安定化変異を含む、組成物を提供する。別の態様では、本発明は、変異体ポリペプチド又はその変異体複合体形成断片を含む組成物であって、変異体ポリペプチド又は変異体断片がHCMV gH、gL、pUL130、及びpUL131Aのうちの少なくとも1つであり、変異体ポリペプチド又は変異体断片が少なくとも1つの脱グリコシル化変異を含む、組成物を提供する。別の態様では、本発明は、少なくとも1つの変異体ポリペプチド又はその変異体複合体形成断片を有する複合体を含む組成物であって、変異体ポリペプチド又は変異体断片がHCMV gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aのうちの少なくとも1つであり、変異体ポリペプチド又は変異体断片が少なくとも1つの安定化変異を含む、組成物を提供する。別の態様では、本発明は、少なくとも1つの変異体ポリペプチド又はその変異体複合体形成断片を有する複合体を含む組成物であって、変異体ポリペプチド又は変異体断片がHCMV gH、gL、pUL130、及びpUL131Aのうちの少なくとも1つであり、変異体ポリペプチド又は変異体断片が少なくとも1つの脱グリコシル化変異を含む、組成物を提供する。本発明の複合体としてはgH/gL、gH/gL/gO、及びペンタマー複合体が挙げられる。本発明の組成物は免疫原性組成物であってもよい。本発明の組成物はワクチン組成物であってもよい。そのような組成物は哺乳動物(例えばヒト、げっ歯類、モルモット、又はマカク)において抗体を産生させるために使用することができる。
【0136】
本発明は本明細書に記載される安定化したHCMV複合体(例えばペンタマー複合体)を含む医薬組成物を提供する。同様に本発明は、本発明の安定化したHCMV複合体(例えばペンタマー複合体)を薬学的に許容される担体と組み合わせるステップを含む医薬組成物を作製する方法を提供する。
【0137】
抗原に加えて、本発明の免疫原性組成物及び医薬組成物は典型的には、本発明に関連して使用される場合アジュバントであっても薬学的に許容される担体であってもよい「非抗原成分」を含む。そのような担体の徹底的な議論はRemington: The Science and Practice of Pharmacyにおいて入手可能である。薬学的に許容される担体としては、それ自体では中和抗体の産生を誘導しない任意の担体が挙げられる。好適な担体は典型的には、大きく、緩やかに代謝される高分子、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、スクロース、トレハロース、ラクトース、及び脂質凝集体(例えば油滴又はリポソーム)である。無菌パイロジェンフリーリン酸緩衝生理食塩水は典型的な担体である。そのような担体は当業者に周知である。非抗原成分は希釈剤、例えば水、生理食塩水、グリセロール等であってもよい。加えて、非抗原成分は補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質等であってもよい。本発明の非抗原成分には、特に複数回用量形態においてパッケージングされる場合、抗菌薬が含まれる。本発明の非抗原成分としては洗浄剤、例えばTWEEN(登録商標)(ポリソルベート)、例えばTWEEN80(登録商標)が挙げられる。洗浄剤は一般に低レベル、例えば0.01%未満で存在する。本発明の非抗原成分としては張性を与えるナトリウム塩(例えば塩化ナトリウム)が挙げられる。1.0±2mg/ml NaClの濃度が典型的である。本発明の非抗原成分としては緩衝液、例えばリン酸緩衝液が挙げられる。本発明の非抗原成分としては、例えば概ね15~30mg/ml(例えば25mg/ml)の糖アルコール(例えばマンニトール)又は二糖(例えばスクロース若しくはトレハロース)が挙げられる。
【0138】
組成物のpHは通例6~8の間、より好ましくは6.5~7.5の間(例えば約7)である。安定なpHは緩衝液、例えばトリス緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、又はヒスチジン緩衝液の使用によって維持してもよい。したがって、組成物は一般に緩衝液を含むことになる。組成物は無菌及び/又はパイロジェンフリーであってもよい。組成物はヒトに関して等張であってもよい。組成物は免疫学的有効量の参照抗原(複数可)を含む。「免疫学的有効量」とは、対象に投与された場合、抗原に対する抗体応答を誘発するのに有効な量である。この量は、処置される個体の健康状態及び体調、年齢、個体の免疫系の抗体を合成する能力、所望される保護の程度、ワクチンの処方、処置を行う医師による医学的状況の評価、並びに他の関連する要因に応じて変動する可能性がある。量は慣例的な試験によって決定することができる比較的広い範囲にあることが予期される。本発明の組成物の抗原含量は全体として1用量当たりのタンパク質の質量に換算して表される。抗原1つ当たり10~500μg(例えば50μg)の用量は有用であり得る。免疫原性組成物は免疫学的アジュバントを含んでもよい。
【0139】
組成物は、特に複数回用量形態においてパッケージングされる場合、抗菌薬を含んでもよい。抗菌薬、例えばチオメルサール及び2-フェノキシエタノールはワクチンに一般的に見出されるが、水銀不含保存剤を使用すること又は保存剤を一切使用しないことのいずれかが望ましい。組成物は洗浄剤、例えばポリソルベート、例えばポリソルベート80を含んでもよい。洗浄剤は一般に低レベル、例えば0.01%未満で存在する。組成物は張性を与えるナトリウム塩(例えば塩化ナトリウム)を含んでもよい。10+2mg/ml、例えば約9mg/ml NaClの濃度が典型的である。
【0140】
本発明の組成物は全体として対象に直接投与することになる。直接送達は非経口注射(例えば皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、若しくは組織の間質空間への)、又は任意の他の好適な経路によって遂行され得る。例えば大腿又は上腕に対する筋肉内投与が望ましい。注射は針(例えば皮下注射針)を介してもよいが、無針注射が代替的に使用されてもよい。
【0141】
本発明のワクチンは予防的(すなわち疾患を防止するため)であっても治療的(すなわち疾患の症状を軽減するか又は取り除くため)であってもよい。
【0142】
発現系
一態様では、本発明は、本発明の変異体HCMVポリペプチド(複数可)を発現させる方法を提供する。本発明における使用に好適な発現系は、例えばDoyle(High Throughput Protein Expression and Purification: Methods and Protocols in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、Humana Press、Doyle編、2008)に詳細に記載されている。必要とされる宿主において核酸分子を維持、増幅、及び発現させてポリペプチドを産生するのに好適な系又はベクターが使用され得る。適切なヌクレオチド配列は、例えばSambrook(J. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 3rd. Cold Spring Harbor Laboratory Press、2000)に記載されている技法によって発現系に挿入され得る。一般に、所望のペプチドをコードするDNA配列が形質転換された宿主細胞におけるRNAに転写されるために、コード遺伝子は制御エレメント、例えばプロモーター、及び任意選択でオペレーターの制御下に置くことができる。
【0143】
好適な発現系の例としては、例えば細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス、例えばバキュロウイルス、パポバウイルス、例えばSV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、及びレトロウイルスに由来するベクター、又はそれらの組合せ、例えばコスミド及びファージミドを含むプラスミド及びバクテリオファージ遺伝子エレメントに由来するベクターを含む、例えば染色体系、エピソーム系、及びウイルス由来系が挙げられる。ヒト人工染色体(HAC)もまた、プラスミドにおいて含有及び発現することができるよりも大きいDNAの断片を送達するために用いられ得る。好適な発現系としては、微生物、例えば組換えバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換した細菌;酵母発現ベクターを用いて形質転換した酵母;ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)を感染又はトランスフェクトした昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、すなわちCaMV、タバコモザイクウイルス、すなわちTMV)又は細菌発現ベクター(例えばTi若しくはpBR322プラスミド)を用いて形質転換した植物細胞系;或いは動物細胞系が挙げられる。無細胞翻訳系もまた本発明のタンパク質を産生するために用いることができる。好ましくは、本発明のタンパク質は真核細胞、例えば哺乳動物細胞において産生される。
【0144】
組換えポリペプチドは一過性に発現しても安定に発現してもよい。好ましくは、組換えタンパク質は安定に発現する。例えば、目的のペプチドを安定に発現する細胞株は、ウイルス複製起点及び/又は内因性発現エレメントを含有し得る発現ベクターと、同じ又は別個のベクター上の選択マーカー遺伝子とを使用してトランスフェクトされ得る。ベクターの導入後、細胞を富化培地において1~2日間成長させ、その後選択培地に切り替えてもよい。選択マーカーの目的は選択に対する耐性を付与することであり、その存在は導入された配列を成功裏に発現する細胞の成長及び回収を可能にする。安定に形質転換された細胞の耐性クローンは細胞型に適切な組織培養技法を使用して増殖させてもよい。
【0145】
発現のための宿主(又は宿主細胞)として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野で公知であり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、ベビーハムスター腎臓(BHK)、サル腎臓(COS)、C127、3T3、BHK、ヒト胎児腎臓(HEK)293、Bowes黒色腫、及びヒト肝細胞癌(例えばHep G2)細胞、並びにいくつかの他の細胞株を含むがこれらに限定されない、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が挙げられる。哺乳動物細胞における発現は、産生されるタンパク質が本来の哺乳動物グリコシル化パターンを有し、したがって感染性HCMV粒子に存在するエピトープを保有することになるため好ましい。したがって、哺乳動物細胞における本発明の膜タンパク質複合体の産生は、天然に存在するHCMV粒子に感染中に結合することができる抗体の産生をもたらすことができる。
【0146】
バキュロウイルス系では、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料はキット形式において、とりわけInvitrogen、San Diego CAから市販されている(「MaxBac」キット)。これらの技法はSummersら(Summers及びSmith、A manual of methods for baculovirus vectors and insect cell culture procedures、Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No. 1555、1987)に完全に記載されている。この系における使用に特に好適な宿主細胞としては、昆虫細胞、例えばショウジョウバエ(Drosophila)S2(すなわち安定にトランスフェクトしたショウジョウバエS2細胞の組換えバキュロウイルス感染による)及びスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞が挙げられる。一部の実施形態では、本発明のタンパク質は昆虫細胞において産生されない。当技術分野で公知の多くの植物細胞培養及び全植物遺伝子発現系が存在する。好適な植物細胞遺伝子発現系の例としては、米国特許第5,693,506号、米国特許第5,659,122号、米国特許第5,608,143号に記載されているものが挙げられる。特に、全再生植物を得るためにプロトプラストが単離及び培養され得る全ての植物が利用できるため、移入した遺伝子を含有する全植物が回収される。サトウキビ、テンサイ、綿、果樹及び他の樹木、マメ科植物、並びに野菜の全ての主要な種を含むがこれらに限定されない事実上全ての植物は培養細胞又は組織から再生することができる。
【0147】
原核発現系の例としては、レンサ球菌(streptococci)、ブドウ球菌(staphylococci)、大腸菌(E. coli)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、及び枯草菌(Bacillus subtilis)を宿主細胞として使用するものが挙げられる。
【0148】
真菌発現系の例としては、酵母(例えばS.セレビシエ(cerevisiae))及びアスペルギルス(Aspergillus)を宿主細胞として使用するものが挙げられる。
【0149】
HEK293細胞は、リン酸カルシウム法及びポリエチレンイミン(PEI)法を含む様々な技法による高いトランスフェクション能力のため、本発明のHCMVタンパク質の一過性発現に好適である。HEK293の有用な細胞株はEBVのEBNA1タンパク質を発現する細胞株、例えば293-6Eである(Loignonら、Stable high volumetric production of glycosylated human recombinant IFNalpha2b in HEK293 cells、2008 BMC Biotechnology 8:65)。形質転換されたHEK293細胞は本発明の高レベルのタンパク質複合体を成長培地に分泌し、したがってそのようなタンパク質複合体の成長培地からの直接の精製を可能にすることが示されている。
【0150】
CHO細胞は、長期の安定な遺伝子発現及びタンパク質の高収率を可能にするため、免疫原又は抗原としての使用のための本発明のHCMVタンパク質の工業的生産に特に好適な哺乳動物宿主である。
【0151】
一部の実施形態では、本発明の変異体HCMVポリペプチド(複数可)又は変異体複合体はそれらが発現する細胞から分泌される。本発明の他の実施形態では、本発明の変異体ポリペプチドも変異体複合体も分泌されない。例えば大腸菌では、非分泌タンパク質が封入体に蓄積し得る。組換えタンパク質を封入体から精製する方法は当技術分野で周知である。
【0152】
トランスフェクションはリン酸カルシウム、電気穿孔を使用することを含む種々の方法によって、又は陽イオン性脂質を、細胞膜と融合して積荷を内部に届けるリポソームを産生する材料と混合することによって実行することができる。
【0153】
核酸分子
本発明は本明細書に記載される変異したHCMV gHポリペプチド、変異したHCMV gLポリペプチド、変異したHCMV pUL128ポリペプチド、変異したHCMV pUL130ポリペプチド、及び/又は変異したHCMV pUL131Aポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する組換え核酸分子を提供する。本発明の組換え核酸分子はベクター(例えば発現ベクター)内に存在してもよく、1つ以上の制御エレメント(例えばプロモーター及び/又はエンハンサー)に作動可能に連結されてもよい。前記組換え核酸の一例は、本発明のgLポリペプチド、本発明のgHポリペプチド、本発明のpUL128ポリペプチド、本発明のpUL130ポリペプチド、及び本発明のpUL131Aポリペプチドをコードする単一分子であり得る。前記組換え核酸のさらなる一例は、本発明のgLポリペプチド及び本発明のgHポリペプチドをコードし、任意選択で本発明のgOポリペプチドをさらにコードする単一分子であり得る。本発明は、本発明の1つ以上の変異したポリペプチドをコードする複数の組換え核酸分子も提供する。例えば、一実施形態では、本発明は2つの核酸分子:本発明のgHポリペプチド及び本発明のgLポリペプチドをコードする第1の分子、並びに本発明のpUL128タンパク質、本発明のpUL130タンパク質、及び本発明のpUL131Aポリペプチドをコードする第2の分子を提供する。例えば、一実施形態では、本発明は3つの核酸分子:本発明のgLタンパク質をコードする第1の組換え核酸分子、本発明のgHタンパク質をコードする第2の組換え核酸分子、及び1つ以上の追加のHCMVタンパク質、例えばgO、pUL128、pUL130、又はpUL131Aをコードする第3の組換え核酸分子を提供する。例えば、一実施形態では、本発明は5つの核酸分子:本発明のgLタンパク質をコードする第1の組換え核酸分子、本発明のgHタンパク質をコードする第2の組換え核酸分子、本発明のpUL128タンパク質をコードする第3の組換え核酸分子、本発明のpUL130タンパク質をコードする第4の組換え核酸分子、及び本発明のpUL131Aタンパク質をコードする第5の組換え核酸分子を提供する。好ましくは、本発明の組換え核酸分子(複数可)は、(a)自己複製RNA分子ではない、(b)アルファウイルスレプリコンではない、(c)いかなるアルファウイルス非構造タンパク質、例えばNSP1、NSP2、NSP3、及びNSP4もコードしない、(d)内部リボソーム進入部位(IRES)、例えばEMCV若しくはEV71を含有しない、且つ/又は(e)ウイルス2A部位、例えばFMDVを含有しない。したがって、複合体における個々のポリペプチドそれぞれをコードする配列は単一核酸分子に存在することも、2つ以上の核酸分子に分布することもできる。
【0154】
一実施形態では、本発明は、(i)本発明のgLタンパク質をコードする第1の組換え核酸分子、(ii)本発明のgHタンパク質をコードする第2の組換え核酸分子、(iii)本発明のpUL128タンパク質をコードする第3の組換え核酸分子、(iv)本発明のpUL130タンパク質をコードする第4の組換え核酸分子、及び(v)本発明のpUL131Aタンパク質をコードする第5の組換え核酸分子を含む複数の組換え核酸を提供する。例えばWO2014/005959号(米国公開特許公報第2016-0159864号としても公開されている)を参照のこと。好ましくは、前記第1、第2、第3、第4、及び/又は第5の組換え核酸分子(複数可)は、(a)自己複製RNA分子ではない、(b)アルファウイルスレプリコンではない、(b)いかなるアルファウイルス非構造タンパク質、例えばNSP1、NSP2、NSP3、及びNSP4もコードしない、(c)内部リボソーム進入部位(IRES)、例えばEMCV若しくはEV71を含有しない、且つ/又は(d)ウイルス2A部位、例えばFMDVを含有しない。
【0155】
本発明のgHタンパク質をコードする核酸分子は配列番号1と様々な程度の同一性、例えば配列番号1の配列と少なくとも89% 90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。本発明のgHタンパク質をコードする核酸分子は配列番号3と様々な程度の同一性、例えば配列番号3の配列と少なくとも89% 90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。本発明のgLタンパク質をコードする核酸分子は配列番号7と様々な程度の同一性、例えば配列番号7の配列と少なくとも89% 90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。本発明のgLタンパク質をコードする核酸分子は配列番号9と様々な程度の同一性、例えば配列番号9の配列と少なくとも89% 90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。本発明のgLタンパク質をコードする核酸分子は配列番号29と様々な程度の同一性、例えば配列番号29の配列と少なくとも89% 90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。本発明のpUL128タンパク質をコードする核酸分子は配列番号13と様々な程度の同一性、例えば配列番号13の配列と少なくとも89% 90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。本発明のpUL130タンパク質をコードする核酸分子は配列番号17と様々な程度の同一性、例えば配列番号17の配列と少なくとも89% 90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。本発明のpUL131Aタンパク質をコードする核酸分子は配列番号21と様々な程度の同一性、例えば配列番号21の配列と少なくとも89% 90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有することができる。
【0156】
本発明の組換え核酸分子は、任意選択でイントロンを含むDNA、及び/又はcDNAを含んでもよい。一部の遺伝子はイントロンが存在する場合、より効率的に発現する。ゲノムUL128及びUL131A遺伝子はそれぞれ2つのエクソンからなるが、UL130はいかなるイントロンも含有しない。本発明の組換え核酸分子はリボ核酸(RNA)、例えばmRNAを含んでもよく、但し本発明のRNA分子(複数可)は、(a)自己複製RNA分子ではない、(b)アルファウイルスレプリコンではない、(c)いかなるアルファウイルス非構造タンパク質、例えばNSP1、NSP2、NSP3、及びNSP4もコードしない、(d)内部リボソーム進入部位(IRES)、例えばEMCV若しくはEV71を含有しない、且つ/又は(e)ウイルス2A部位、例えばFMDVを含有しない。本発明の核酸分子は、宿主細胞内での発現に関してコドン最適化された、例えば細菌又は哺乳動物宿主細胞内での発現に関してコドン最適化されたポリヌクレオチド配列(DNA又はRNA)を含んでもよい。
【0157】
本発明は、本発明の核酸分子を含むベクターを提供する。本発明のベクターは宿主細胞内での発現に好適なプロモーター及びターミネーターを含む発現ベクターであり得る。そのようなプロモーター及びターミネーターは、例えば米国公開特許公報第2015/0322115号及び同第2015/0359879号によって記載されている。前記組換え核酸分子はプラスミドであってもよく、細胞のゲノムに組み込まれてもよい。これらのベクターにおけるプロモーターはHCMVプロモーター又は非HCMVプロモーターであり得る(例えば米国公開特許公報第2015/0322115号及び同第2015/0359879号を参照のこと)。
【0158】
当業者に本発明の組換えHCMV核酸の産生を説明するのに十分な例示的な手順は、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989; Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Press、2001; Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates、1992(及び2003年の補足);並びにAusubelら、Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、第4版、Wiley & Sons、1999に見出すことができる。
【0159】
本発明は、本発明の1つ以上の変異したHCMV gH、gL、pUL128、pUL13、及び/又はpUL131Aポリペプチドを含むHCMV複合体(例えばHCMVペンタマー複合体)を、前記1つ以上の変異したポリペプチドをコードする1つ以上の組換え核酸分子を発現系に導入すること、前記1つ以上の核酸分子を前記発現系において発現させること、及び前記HCMV複合体を精製することによって発現させる方法も提供する。一部の実施形態では、この方法は細胞に本発明の変異したHCMV gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aポリペプチドをコードする第1の核酸構築物をトランスフェクトするステップを含む。一部の実施形態では、この方法は細胞に本発明のHCMV gHポリペプチドをコードする第1の核酸構築物、本発明のHCMV gLポリペプチドをコードする第2の核酸構築物、及び本発明の1つ以上の追加のHCMV糖タンパク質をコードする1つ以上の第3の核酸構築物をトランスフェクトするステップを含んでもよい。一部の実施形態では、この方法は細胞に本発明のgHポリペプチド及び本発明のgLポリペプチドをコードする第1の核酸構築物、並びに本発明のHCMV pUL128、HCMV pUL130、及びHCMV pUL131Aポリペプチドをコードする第2の核酸構築物をトランスフェクトするステップを含んでもよい。前記HCMV複合体は哺乳動物細胞において発現させてもよい。前記単離されたHCMV膜タンパク質複合体は任意選択で精製してもよい。
【0160】
細胞
本発明は、本発明の単数又は複数の核酸分子を発現する細胞であって、完全HCMVゲノムを含まない細胞も提供する。前記細胞は本発明の前記単数又は複数の核酸分子を用いて安定に形質転換してもよい。好ましくは、前記細胞は哺乳動物細胞、例えば293-6E細胞(米国公開特許公報第2016/0159864号としても公開されているWO2014/005959号を参照のこと)又はCHO細胞(WO2016/116904号を参照のこと)である。
【0161】
本発明は、本発明の複合体を産生する細胞であって、以下がない細胞も提供する:(i)HCMVゲノムの含有、及び/又は(ii)HCMVビリオンの産生、及び/又は(iii)任意の非エンベロープHCMVタンパク質の発現。理想的には、細胞は(i)、(ii)、又は(iii)のうちの1つを欠き、好ましくは2つを欠き、より好ましくは(i)、(ii)、及び(iii)の3つ全てを欠く。したがって、本発明の細胞はHCMVゲノムを含有しない、且つ/又はHCMVビリオンを産生しない、且つ/又はいかなる非エンベロープHCMVタンパク質も発現しないと規定してもよい。
【0162】
抗体
本発明の改変ポリペプチド(及びその変異体構築物形成断片)は構造が非変異体ポリペプチドとは異なるが免疫原性特性又はエピトープ(複数可)を維持するため、本発明のさらなる目的は変異体ポリペプチド及びその変異体断片をポリペプチド/抗体相互作用において利用することである。非変異体ポリペプチドのポリペプチド/抗体相互作用は、例えばWO2014/005959号(米国公開特許公報第2016/0159864号としても公開されている);Macagnoら、Isolation of Human Monoclonal Antibodies that Potently Neutralize Human Cytomegalovirus Infection by Targeting Different Epitopes on the gH/gL/UL128-131A complex、2010 J. Virol. 84(2): 1005~1013;及びGernaら、Monoclonal antibodies to different components of the human cytomegalovirus (HCMV) pentamer gH/gL/pUL128L and Trimer gH/gL/gO as well as antibodies elicited during primary HCMV infection prevent epithelial cell syncytium formation、2016 J. Virol. 90(14): 6216~6223によって記載されている。米国特許第9,527,902号も参照のこと。本発明以前に、ペンタマー複合体の種々のコンフォメーショナルエピトープは公知であった。例えばMacagnoら(2010 J. Virol. 84: 1005~1013)は、内皮、上皮、及び骨髄細胞のHCMV感染を中和するヒトモノクローナル抗体のパネルを単離した。UL128遺伝子産物において保存されたエピトープに結合した抗体というただ1つの例外が存在したが、他の全ての抗体はgH/gL/UL128~131A複合体の2つ以上のタンパク質の発現を必要としたコンフォメーショナルエピトープに結合した。好ましくは、本発明のペンタマー複合体は、Macagnoら(2010 J. Virol. 84: 1005~1013)によって同定されている、且つ/又は本明細書の実施例によってさらに記載される1つ以上のコンフォメーショナルエピトープを保有する。
【0163】
本発明は、本発明の改変HCMV gH、gL、pUL128、pUL130、若しくはpUL131Aポリペプチド又は複合体を認識する抗体を提供する。本発明の抗体は本発明の単離されたポリペプチド又はそれを含む単離された複合体を抗原として使用して産生してもよい。好ましくは、本発明の抗体は中和抗体である。本発明の抗体は、所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であっても、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)であっても、標識抗体であっても、抗体断片であってもよい。「抗体断片」又は「抗原結合性断片」とは、完全抗体が結合する抗原と結合する完全抗体の一部を含む、完全抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と称されるそれぞれが単一の抗原結合部位を有する2つの同一な抗原結合性断片、及び名称が容易に結晶化する能力を表す残りの「Fc」断片を生み出す。ペプシン処理は、2つの抗原接合部位を有し依然として抗原と架橋することができるF(ab')2断片を生じる。
【0164】
或いは、本発明のHCMVポリペプチド又はHCMV複合体はin vitro選択方法、例えば多様な抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイを使用して抗体を同定するために使用してもよい。本発明は、本発明の単離されたHCMVポリペプチド又はHCMV複合体を使用して抗体を産生させる方法も提供する。本発明の抗体はヒト抗体であってもヒト化抗体であってもよい。本発明の抗体は診断アッセイにおいて使用されてもよく、直接又は間接的に標識されてもよい。一部の実施形態では、本発明の抗体は療法、例えばHCMV感染症の処置において使用されてもよく、抗原の生物活性を阻害又は中和することができる中和抗体の形態であってもよい。
【0165】
複合体の単離及び精製
本発明の複合体は好ましくは単離された形態において調製及び使用される。「単離された」という用語は本明細書で使用する場合、その天然環境から取り出されていることを意味する。したがって、「単離されたHCMV膜タンパク質複合体」はHCMV感染細胞の表面のHCMV膜タンパク質複合体も、感染性HCMVビリオン内のHCMV膜タンパク質複合体も、抗体(又は抗体断片)に結合したHCMV膜タンパク質複合体も包含しない。実施例並びに例えばWO2014/005959号(米国公開特許公報第2016/0159864号としても公開されている、及びWO2016/116904号)に記載されている発現方法を使用して、本発明の複合体は高収率で生産することができる。例えば、本発明の細胞を成長培地中で成長させるステップを含む方法では、本発明のタンパク質複合体は成長培地1リットル当たり0.4mg超(例えば成長培地1リットル当たり0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2、2.5、3、3.5、4、4.5、若しくは5mg、又はそれ以上)のレベルまで蓄積し得る。
【0166】
本発明は、本発明のHCMV膜複合体を精製する方法を提供する。本発明のそのような方法はゲル電気泳動によって決定して質量で総タンパク質の85%超、86%超、87%超、88%超、89%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、又は95%超の純度のHCMV膜タンパク質複合体の生産を可能にする。これらの高レベルの純度は複合体を診断用途における免疫原又はワクチン製剤における抗原としての使用に好適にする。本発明のHCMV膜タンパク質複合体は様々なレベルの純度、例えば質量で総タンパク質の少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%で調製することができる、すなわち複合体は組成物中の総タンパク質量の少なくとも80%を構成する。組成物はポリアクリルアミドを含まなくてもよい。
【0167】
本発明は、本発明のHCMV複合体(例えばHCMVペンタマー複合体)を精製する方法を提供する。本発明のある実施形態では、前記精製は1つ以上のクロマトグラフィーステップを含む。前記1つ以上のクロマトグラフィーステップはアフィニティークロマトグラフィー、例えばNi2+アフィニティークロマトグラフィー及び/又はサイズ排除クロマトグラフィーを含む。本発明のある実施形態では、前記1つ以上のクロマトグラフィーステップはイオン交換クロマトグラフィーを含む。例えばWO2014/005959号(米国公開特許公報第2016/0159864号としても公開されている)、WO2016/116904号、及びWO2015/181142号を参照のこと。したがって、本発明のポリペプチドは例えばポリペプチドの単離のためのタグ(例えばアフィニティータグ、例えばstrepタグ、mycタグ、ポリヒスチジンタグ、又はそれらの組合せ)を含んでもよい(公知のタグ及びバイオテクノロジー用途のためのそれらの使用を要約しているKimpleら、Overview of Affinity Tags for Protein Purification、2015 Curr. Protoc. Protein. Sci. 73: Unit-9.9. doi:10.1002/0471140864.ps0909s73を参照のこと)。
【0168】
アジュバント
本発明のワクチン及び免疫原性組成物は抗原に加えてアジュバントを含んでもよい。アジュバントとは抗原に対する免疫応答を増強及び調節するためにワクチンにおいて使用される「非抗原成分」である。しかしながら、アジュバントは増大した反応原性をもたらすおそれがある。アジュバントとしては(これらに限定されないが)、AS01、水中油型エマルジョン(例えばMF59及びAS03)、リポソーム、サポニン、TLR2アゴニスト、TLR3アゴニスト、TLR4アゴニスト、TLR5アゴニスト、TLR6アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR8アゴニスト、TLR9アゴニスト、アルミニウム塩、ナノ粒子、微小粒子、ISCOMS、フッ化カルシウムと有機化合物との複合物、又はそれらの組合せが挙げられる。例えば米国公開特許公報第2015/0093431号及びWO2011/027222号(米国公開特許公報第2012/0237546号としても公開されている)を参照のこと。特定の実施形態では、本発明のワクチン又は免疫原性組成物は抗原及びアジュバントを含み、アジュバントはAS01、水中油型エマルジョン(例えばMF59及びAS03、並びにB亜型及びE亜型を含むそれらのそれぞれの亜型)、アルミニウム塩(例えばリン酸アルミニウム及び水酸化アルミニウム)、サポニン(例えばQS21)、Toll様受容体のアゴニスト(TLRa)(例えばTLR4a及びTLR7a)、又はそれらの組合せ(例えばAlum-TLR7a(Buonsantiら、Novel adjuvant Alum-Tlr7a significantly potentiates immune response to glycoconjugate vaccines、2016 Sci. Rep. 6:29063 (DOI: 10.1038/srep29063))である。「TLRアゴニスト」とは、直接のリガンドとして又は内因性若しくは外因性リガンドの生成により間接的に、TLRシグナル伝達経路を介したシグナル伝達応答を引き起こすことができる成分を意味する(Sabroeら、Toll-like Receptors in Health and Disease: Complex Questions Remain、2003 J. Immunol. 171(4): 1630~1635)。例えば、TLR4アゴニストはTLR-4シグナル伝達経路を介したシグナル伝達応答を引き起こすことができる。TLR-4アゴニストの好適な例はリポ多糖、好適にはリピドAの非毒性誘導体、詳細にはモノホスホリルリピドA、又はより詳細には3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である。本明細書に記載されるアジュバントは本明細書に記載される抗原(複数可)のいずれかと組み合わされてもよい。
【0169】
以下の実施形態が本発明において企図される:
配列番号1の配列に関連して決定される場所における変異、すなわち:
A102W、A102F、A102Y、A102V、A102I、A102L、A372W、A372F、A372Y、A372V、A372I、A372L、A352W、A352F、A352Y、A352V、A352I、A352L、L257W、L257F、L257Y、L257V、L257I、L257L、H252W、H252F、H252M、H252C、H252A、H252L、H252I、H252V、H252P、H252Y、K404W、K404F、K404M、K404C、K404A、K404L、K404I、K404V、K404P、K404Y、R255W、R255F、R255M、R255C、R255A、R255L、R255I、R255V、R255P、R255Y、E355W、E355F、E355M、E355C、E355A、E355L、E355I、E355V、E355P、E355Y、H480W、H480F、H480M、H480C、H480A、H480L、H480I、H480V、H480P、H480Y、S601W、S601F、S601M、S601C、S601A、S601L、S601I、S601V、S601P、S601Y、R405W、R405F、R405M、R405C、R405A、R405L、R405I、R405V、R405P、R405Y、
G358S、G358T、G358C、G358Y、G358N、G358Q、G358R、G358E、G358K、G358H、G358D、H275S、H275T、H275C、H275Y、H275N、H275Q、H275R、H275E、H275K、H275H、H275D、
V109C、L111C、
N55Q、N55S、N55T、N55A、N55E、N55D、N62Q、N62S、N62T、N62A、N62E、N62D、N67Q、N67S、N67T、N67A、N67E、N67D、N192Q、N192S、N192T、N192A、N192E、N192D、N641Q、N641S、N641T、N641A、N641E、N641D、N700Q、N700S、N700T、N700A、N700E、又はそれらの組合せ
を含むHCMV gHポリペプチド又はその複合体形成断片。
【0170】
配列番号7の配列に関連して決定される場所における変異、すなわち:
H177W、H177F、H177Y、H177V、H177I、H177L、G224W、G224F、G224Y、G224V、G224I、G224L、G140W、G140F、G140Y、G140V、G140I、G140L、G145W、G145F、G145Y、G145V、G145I、G145L、D146W、D146F、D146Y、D146V、D146I、D146L、G218W、G218F、G218Y、G218V、G218I、G218L、L119W、L119F、L119Y、L119V、L119I、L119L、C233W、C233F、C233Y、C233L、P272W、P272F、P272Y、P272V、P272I、P272L、H267W、H267F、H267M、H267C、H267A、H267L、H267I、H267V、H267P、H267Y、H236W、H236F、H236M、H236C、H236A、H236L、H236I、H236V、H236P、H236Y、H245W、H245F、H245M、H245C、H245A、H245L、H245I、H245V、H245P、H245Y、G161W、G161F、G161M、G161C、G161A、G161L、G161I、G161V、G161P、G161Y、C233W、C233F、C233M、C233C、C233A、C233L、C233I、C233V、C233P、C233Y、
G161C、D163C、G224C、G218C、R166C、G140C、R160C、A150C、
N74Q、N74S、N74T、N74A、N74E、及びN74D、又はそれらの組合せ
を含むHCMV gLポリペプチド又はその複合体形成断片。
【0171】
配列番号13の配列に関連して決定される場所における変異、すなわち:
G123W、G123F、G123Y、G123V、G123I、G123L、V77W、V77F、V77Y、V77I、V77L、L103W、L103F、L103Y、L103V、L103I、L103L、Q119W、Q119F、Q119Y、Q119V、Q119I、Q119L、G145W、G145F、G145M、G145C、G145A、G145L、G145I、G145V、G145P、G145Y、H90W、H90F、H90M、H90C、H90A、H90L、H90I、H90V、H90P、H90Y、G112W、G112F、G112M、G112C、G112A、G112L、G112I、G112V、G112P、G112Y、
R142C、N99C、Y98C、A124C、G126C、L159C、D45C、V88C、M48C、G107C、R51C、D106C、S83C、又はそれらの組合せ
を含むHCMV pUL128ポリペプチド又はその複合体形成断片。
【0172】
配列番号17の配列に関連して決定される場所における変異、すなわち:
D165W、D165F、D165Y、D165L、H209W、H209F、H209Y、H209L、
G116W、G116F、G116M、G116C、G116A、G116L、G116I、G116V、G116P、G116Y、G135W、G135F、G135M、G135C、G135A、G135L、G135I、G135V、G135P、G135Y、H150W、H150F、H150M、H150C、H150A、H150L、H150I、H150V、H150P、H150Y、H209W、H209F、H209M、H209C、H209A、H209L、H209I、H209V、H209P、H209Y、
G116C、H150C、P64C、S178C、P62C、E95C、Y204C、N211C、I213C、Y56C、T167C,
N85Q、N85S、N85T、N85A、N85E、N85D、N118Q、N118S、N118T、N118A、N118E、N118D、N201Q、N201S、N201T、N201A、N201E、及びN201D、又はそれらの組合せ
を含むHCMV pUL130ポリペプチド又はその複合体形成断片。
【0173】
配列番号21の配列に関連して決定される場所における変異、すなわち:
G99W、G99F、G99Y、G99V、G99I、G99L、S86W、S86F、S86Y、S86V、S86I、S86L、S90W、S90F、S90Y、S90V、S90I、S90L、H69W、H69F、H69M、H69C、H69A、H69L、H69I、H69V、H69P、H69Y、H35W、H35F、H35M、H35C、H35A、H35L、H35I、H35V、H35P、H35Y、H64W、H64F、H64M、H64C、H64A、H64L、H64I、H64V、H64P、H64Y、D38W、D38F、D38M、D38C、D38A、D38L、D38I、D38V、D38P、D38Y、V85W、V85F、V85M、V85C、V85A、V85L、V85I、V85V、V85P、V85Y、Y52W、Y52F、Y52M、Y52C、Y52A、Y52L、Y52I、Y52V、Y52P、Y52Y、A67W、A67F、A67M、A67C、A67A、A67L、A67I、A67V、A67P、A67Y、
R118S、R118T、R118C、R118Y、R118N、R118Q、R118R、R118E、R118K、R118H、R118D、
H64C、W37C、
N81Q、N81A、N81T、N81A、N81E、及びN81D、又はそれらの組合せ
を含むHCMV pUL131Aポリペプチド又はその複合体形成断片。
【0174】
[実施例]
上記の教示を踏まえて、本発明の多くの変更形態及び変形形態が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明が具体的に記載されている以外に実施され得ることを当業者であれば認識すると理解されるべきである。例示的な実施形態及び実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0175】
[実施例1]
哺乳動物細胞におけるペンタマー複合体の発現
野生型又はセレノメチオニン標識(SeMet)ペンタマーの発現は、一方のベクターがgH及びgL(それぞれ、配列番号3及び7の配列を有する)をコードし、他方がpUL128、pUL130及びpUL131A(それぞれ、配列番号13、17、及び21の配列を有する)をコードする、Hofmannら(Expression of the Human Cytomegalovirus Pentamer Complex for Vaccine use in a CHO System、2015 Biotech. & Bioeng. 112(12): 2505~2515頁)に概説されている2ベクター戦略により、2つのベクターの一過性又は安定なトランスフェクションを通じて293GnTi-細胞で実施した。
【0176】
抗ペンタマーFab発現のために、重鎖Fab断片及び完全長軽鎖をそれぞれ哺乳動物pRS5a発現ベクター(Novartis AG)にクローニングした。重鎖FabのC末端には切断可能な二重Strepタグが存在した。製造者の推奨に従ってExpifectamine 293トランスフェクションキット(ThermoFisher)を使用することにより、抗体の重鎖のFab断片及び完全長軽鎖をコードする2つのベクターを1:1比でトランスフェクトして、抗ペンタマーFabを293Expi細胞(Invitrogen Inc.)に一過性に発現させた。
【0177】
[実施例2]
ペンタマー複合体の精製
ペンタマー精製のために、発現培地をStrepTrap HPカラム(GE Lifesciences)に直接充填し、製造者の推奨に従って溶出緩衝液(IBA Lifesciences)中0.1M Tris pH8.0、150mM NaCl及び2.5mMデスチオビオチンを使用してタンパク質を溶出した。溶出物をTEVプロテアーゼ(ThermoFisher)と4℃で一晩インキュベートした。試料を、イオン交換クロマトグラフィーのためにMonoS10/30カラム(GE Lifesciences)に充填する前に、20mM Hepes pH7で3倍希釈して総塩濃度を50mMに低下させた。10カラム容量で0から1M NaClへの直線勾配によりタンパク質をカラムから溶出した。タンパク質を濃縮し、Superose 6 10/300カラムに充填し、溶出ピークを1mg/mL超に濃縮した。
【0178】
Fab精製のために、発現培地を10倍濃縮し、10kDaカットオフでタンジェンシャルフロー濾過システム(Millipore)を使用して緩衝液を25mM Tris pH8.0、150mM NaCl及び1mM EDTAに交換した。試料をその後StrepTrap HPカラムに充填し、上記したペンタマー精製と同様に溶出した。Strepタグを、製造者の推奨に従ってPreScissionプロテアーゼ(GE Lifesciences)を使用して切断した。切断したFabを次いで、25mM Tris pH8.0及び150mM NaClを含有する緩衝液で平衡化したS200カラム(GE Lifesciences)でサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
【0179】
結晶化のためのペンタマー-Fab複合体精製のために、MonoSカラムから溶出したペンタマーを2倍モル過剰の精製Fabとインキュベートし、室温で少なくとも15分間インキュベートした。試料をその後Superose 6 10/300カラムに充填して、ペンタマー-Fab複合体を過剰なFabから分離した。ピーク画分をプールし、>5mg/mLに濃縮した。
【0180】
[実施例3]
ペンタマー複合体の結晶化
結晶化実験のために、精製された野生型又はセレノメチオン標識(SeMet)ペンタマーを、Fabとの複合体形成の前にEndo Hf(New England Biolabs)を使用して製造者のガイドラインに従って脱グリコシル化した。最初の結晶ヒットは、ペンタマーと、モノクローナル抗体(mAb)8I21及び9I6(Macagnoら、(2010 J. Virol. 84:1005~1013頁)の断片抗原結合(Fab)の間の複合体に関して得られ、これらは20℃で、0.1μlタンパク質及び0.1μlの20%エタノール、0.1M Tris pH8.5を含有する液滴中に小さな微結晶として現れた。その後の実験でエタノールを揮発性が少ないイソプロパノールと置き換え、この結晶化条件を最適化するためにベンズアミジンを添加剤として使用した(Hampton Research添加剤スクリーニングから)。WT又はSeMet-ペンタマー-8I21 Fab結晶の最良の結晶は、10%(wt/vol)PEG400、10%イソプロパノール、2%(wt/vol)ベンズアミジン及び0.1M Tris pH8.2を含有するリザーバーを使用して得た。9I6 Fabとの複合体におけるペンタマーの結晶ヒットは、0.1M MES pH6.5及び15%(wt/vol)PEGメチルエーテル500で最初に得た。これらの結晶を様々な添加剤を用いて成長のために最適化した。最良の回析結晶は、10%(wt/vol)PEGメチルエーテル500、0.1M MES pH6.2及び10μMフェノールを含有するリザーバーを使用して得た。
【0181】
3.1結果 - 結晶構造
ペンタマー構造は、長さ180Å及びクロスオーバー30~80Åのらせん形をとる(図1)。複合体のgH/gL部分は、他のヘルペスウイルスgH/gLと類似したドメイン構成及び構造を有し、4つのgHドメイン(D-I~D-IV)は互いの最上部に積み重なり、最もN末端のもの(D-I)はgLとコフォールディングしている。ULのポリペプチド鎖は高度に相互接続し、N末端gLの伸長に結合する緩やかにカーブしたサブ複合体を形成する。ペンタマー表面の解析は、11のN-結合型グリコシル化部位、すなわちgHの6つ、gLの1つ、及びULの残りの4つを明らかにする。
【0182】
構造比較は、HCMV gHとγ-ヘルペスウイルスエプスタインバーウイルス(EBV)のgHとの密接な類似性を明らかにしているが、HCMV gHは、EBV gH/gLの棒状の立体構造というよりむしろα-ヘルペスウイルス水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)及び単純ヘルペスウイルス-2(HSV-2)gH/gLを連想させる長靴形をとる。EBV gHとHCMV gHの間の大きな違いは、後者におけるgHからの残基と相互作用する3つの追加のN末端βストランドの存在である。
【0183】
ULは、反対の末端で2つの小さな球状ドメインに隣接された中心コアドメインを形成する(図1及び2A~2F)。コアドメインはpUL130 C末端及びpUL131Aによって形成され、両方ともN末端αヘリックスとこれに続く類似した長さの3つのβストランドからなる(図2A~2F)。ストランドは、1つの面がヘリックスによって覆われた大きくてやや平坦な逆平行βシートに組み立てられる。UL128のN末端は、最初の80残基がCC型ケモカインフォールドをとる、ペンタマーの先端部に位置する球状のドメインを形成するが、C末端UL128は50Åの長いリンカーによってgH/gLに固定され、末端ヘリックスは、gLの3つのαヘリックス及び2つのβストランドによって形成される疎水性の溝でドッキングする。
【0184】
10P3(部位4)及び15D8(部位1)はULの凹面に結合し、10F7(部位2)はUL130/UL131Aβシートに沿ってペンタマーの他の面で結合する。
【0185】
9I6 CDRは、UL128(ケモカインドメインの残基47~52、並びにα2β4β5β6の残基92~93及び106~109)と、UL131A(残基23~24及び27~31)との両方と接している。エピトープは、公開されているNS-EMデータ及びマッピング試験と一致する。これは、おそらくUL130及びUL131Aのコフォールディングのために、部位5抗体が3つのUL全てを結合に必要とすることを示唆している。
【0186】
ペンタマー-8I21 Fab複合体の主な特徴は、Fabの長いHCDR3とUL130ケモカインドメインの間の相互作用である。HCDR3の先端部でArg104及びTrp105は、N末端UL130-α1ヘリックス及びUL130/gLβシートからの疎水性及び極性残基からなる間隙に突き出し、それぞれUL130 Ser47及びgL Asp156とのH結合を確立している。HCDR3 Trp105のアラニンへの変異は、150倍を超える結合親和性の減少をもたらし、相互作用におけるその重要な役割と一致した。複合体を安定化させるいくつかの他の相互作用としては、HCDR3 Arg107のグアニジニウム基とUL130 Tyr46のヒドロキシル基の間の水素結合、及びHCDR3の主鎖カルボニル酸素とLCDR3 Trp94及びTrp97の側鎖の間のH結合が挙げられる。
【0187】
まとめ
ペンタマー構造は、一部のドメイン間の小さな境界面の存在、及びドメイン境界面におけるいくつかの空洞の存在を示す(図2)。ペンタマー-nAb複合体のネガティブ染色電子顕微鏡法(NS-EM)からのデータ(以前に公開された、Ciferriら、Antigenic Characterization of the HCMV gH/gL/gO and Pentamer Cell Entry Complexes Reveals Binding Sites for Potently Neutralizing Human Antibodies、2015 PLOS Path DOI:10.1371/journal.ppat.1005230参照)、質量分析に連結された水素重水素交換(HDX-MS)からのデータ、及び2つの異なる中和抗体との複合体において解かれたペンタマー結晶構造の重ね合わせ(superposition)の解析を行った。まとめると、この情報は、ペンタマータンパク質複合体の固有の柔軟性の存在を明らかにした。具体的には、ULは、蝶番又は「肩」として役目を果たすgH D-I/D-IIリンカーヘリックスを軸とする剛体回転に耐える(undergo)。結果として、ULは強固なアームとして動くことができ、最大30Å変位する(図3)。HDX-MSデータはまた、ペンタマーへの抗体の結合がエピトープ(又は抗体の結合に直接関与する領域)から遠く離れたペプチドにどう影響を与え得るかを示し、抗体によって結合されるとペンタマー複合体が安定化され得ることを示唆した。
【0188】
本明細書で明らかにされたペンタマー構造は、複合体のgH及びgL成分がEBV gH/gLと密接な構造的類似性を有し、一方ULは、反対の末端でUL128及びUL130ケモカインドメインに隣接されたα/βコアドメインを特徴とすることを示した。特に、HCMV gLは、EBV及びHSV gLでは欠けている固有のN末端伸長を有し、UL128 C末端α3ヘリックス及びUL130ケモカインドメインに対するドッキング部位を形成する。
【0189】
ペンタマー構造の特性には、比較的小さな境界面及び一部のドメイン間の空洞が挙げられ、複合体の固有の柔軟性を示唆している。構造比較は、ULの大きな変位をもたらす、gH D-I/D-IIリンカーヘリックスを軸とするgH/gL D-Iドメイン及びULアームの大きな剛体回転を明らかにした。8I21エピトープはペンタマー-9I6 Fab複合体では同じままであるが、抗体結合は、別々の、その上異なる立体構造状態でペンタマーを安定化させると考えられる。実際に、単一粒子再構築は、8I21及び9I6 Fab複合体と比べて10F7 Fabに結合されたペンタマーにおけるULの大きな剛体回転を明らかにしている。この考えと一致して、ペンタマー-Fab複合体のHDX-MS解析は、抗体がその対応するエピトープから離れたペンタマーの領域を安定化させることを示している。したがって、HDX-MSと結晶学的データの組合せは、より安定な複合体を生成するために変異が導入され得るペンタマーの領域を明らかにする(例えば、呼吸器合胞体ウイルス融合タンパク質の融合前立体構造のより大きな安定性が免疫原性の改善に関連していることを示した、McLellanら、2013 Science 342: 592~598頁参照)。
【0190】
細胞結合分析と合わせたペンタマー-Fab複合体のこの構造の解析は、抗体媒介HCMV中和のメカニズムへの新たな洞察を提供する。本発明者らは、ペンタマーが成人網膜色素上皮細胞(ARPE-19)及びヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)細胞に結合するが、MRC-5細胞には結合しないことを示す。
【0191】
ペンタマーをmAb 15D8(部位1)、10P3(部位4)、2C12及び9I6(部位5)又は7I13(部位6)とプレインキュベートすると、内皮細胞へのペンタマー結合を阻害した(図6A~6C)。対照的に、mAb 4N10及び8I21(それぞれ、部位3及び7)並びに10F7(部位2)は、細胞へのペンタマー結合に影響を与えなかった。故に、本発明者らのデータは、ペンタマー特異的抗体がウイルス感染中に複数のペンタマー機能の妨害を通じてHCMVを中和する可能性があることを示唆している。本発明者らは、ペンタマーの先端部に位置するUL128及びUL131A 残基に結合する抗体(9I6、部位5)、UL128-α3ヘリックスに結合する抗体(15D8、部位1)、並びにUL128-α2β4β5β6をUL128-α3に連結するリンカーに近接して結合する抗体(10P3、部位4及び6)が、細胞へのペンタマー結合を妨げることを示す。したがって、これらの抗体は、直接競合又は立体障害のどちらかによってペンタマーと細胞表面受容体との相互作用を阻害する可能性があり、抗体結合部位は、細胞表面受容体結合のためのペンタマーの表面の部位に対応していると考えられる。
【0192】
対照的に、ULアームの肘(4N10及び8I21、それぞれ部位3及び7)及びUL130/UL131Aβシートの溶媒曝露側(10F7、部位2)への抗体結合は細胞へのペンタマー結合に影響を与えず、異なる中和メカニズムを示唆した。8I21は、長い重鎖CDR3(HCDR3)でUL130の正に帯電した表面に結合し、同時にUL130ケモカインドメインの溝に突き出し、UL130 N末端残基と接している。これらは両方とも、ケモカインにおける受容体結合に関与している。UL130のこの部位は、細胞表面で又は進入後段階で共受容体に結合すると考えられる。したがって、部位2及び部位3/7抗体は、細胞へのペンタマー結合に影響を与えることなくこれらの相互作用及びプロセスを妨げ得る。
【0193】
理論に縛られることを望むものではなく、中和mAbの構造的及び機能的特徴に基づき、本発明者らは、HCMV進入のペンタマー媒介活性化のための潜在的メカニズムを提案する。本発明者らは、細胞受容体がUL128並びに部位1及び4/6中和抗体に対するエピトープの近位で表面に結合することを示唆する。受容体結合は今度は、UL128リンカーによって媒介されるgH/gL D-Iの回転、及びgL 3ヘリックスバンドルとのUL128-α3相互作用をもたらし得る。D-Iの再配置は、EBV gH/gLにおけるgB結合に関与するD-I/D-II溝の幅に影響を与え、最終的に膜融合をトリガーする可能性がある。
【0194】
結論として、ペンタマーの本明細書に記載された構造は、強力で広範な中和mAbの結合部位を明らかにし、重要な機能部位及び抗体治療薬のための標的の位置を示唆する。構造はまた、抗体結合時のULの動的再配置も明らかにし、細胞進入中のリガンド誘導立体構造変化のメカニズムを示唆する。最後に、本明細書に報告されたHCMVペンタマーの構造的、生化学的及び細胞ベースの機能分析は、少なくともペンタマー活性のメカニズム及び抗原設計のための原子レベルのフレームワークを提供する。
【0195】
3.2ペンタマーエピトープをマスクするグリカン及び脱グリコシル化変異の解析
ペンタマー上の7つの中和エピトープ(部位1~7)は以前に同定され、広くマッピングされている(例えば、Macagnoら、2010 J. Virol. 84: 1005~1013頁及び米国特許第9,527,902号参照)。部位のうち5つは重複していない(部位1、2、3、4、及び5)が、部位3は部位7と重複し、部位4は部位6と重複している。それらの7つの部位に結合する抗体も知られており、これには例えば、部位1に結合することが知られる15D8抗体、部位2に結合することが知られる10F7抗体、部位3に結合することが知られる4N10抗体、部位4に結合することが知られる10P3抗体、部位5に結合することが知られる9I6及び2C12抗体、部位6に結合することが知られる7I13抗体、及び部位7に結合することが知られる8I21抗体(例えば、Macagnoら、2010 J. Virol. 84: 1005~1013頁及び米国特許第9,527,902号参照)が挙げられる。上記のように得られたペンタマー構造を使用して、本発明者らは、Fab結合時の示差的HDX取り込みによりペンタマーエピトープ配列(ペンタマー上の中和エピトープのアミノ酸残基)を最初にマッピングして、より大きな特異度で部位1、4、5、及び2エピトープを特徴付けた(15D8、10P3、2C12、及び10F7 Fabを、それぞれ部位1、4、5、及び2に結合する代表的な中和抗体として使用した)。2番目に、本発明者らはX線構造、HDX-MSデータ、及びEMフィッティング結果を手動で調査し、解析して、部位1エピトープ配列は配列番号13の配列に関連して番号付けされたpUL128 残基149~171に対応し、部位4エピトープ配列は配列番号13の配列に関連して番号付けされたpUL128 残基56~72及び131~148に対応し、部位5エピトープ配列は配列番号21の配列に関連して番号付けされたpUL131A 残基31~40及び42~56に対応し、部位2エピトープ配列は配列番号21の配列に関連して番号付けされたpUL131A 残基92~122に対応することを提案した。ペンタマー構造の表面におけるこれらのエピトープ配列の各々の位置は、図7に示されている(楕円形で示された一般的な位置)。
【0196】
ペンタマーの表面の11個のグリカンの一般的な位置も図7に示されている(長方形で示された位置、それらの長方形内には、炭素原子を表す、窒素原子を表す、酸素原子を表す、及び水素原子を表す球がある)。ペンタマーの1つの面には10個ある(gHに6個、gLに1個、及びULに4個のグリカン)(図7の左側に示されたペンタマー面参照)。ペンタマーの他の面は、UL130の1個のグリカン(図7の右側に示された、部位2に隣接する)、並びに露出したアルギニン及びリシン残基のクラスターを含む正に帯電した領域を特徴とする。ペンタマー-8I21 Fab構造は、2個のグリカン(配列番号17の配列に関するpUL130-Asn85及びpUL130-Asn118に結合したもの)が8I21エピトープと隣接していることを明らかにする。得られた構造情報及び本発明者らのその解析に基づき、本発明者らは、UL130-Asn85及びpUL130-Asn118グリカンがエピトープの接近可能性を制限していると(すなわち、グリカンがエピトープを「マスクしている」又は「遮蔽している」と)考える。本発明者らはそれ故に、これらのグリカンの一方又は両方を除去することがエピトープをより近づきやすくすると予想する。特に、グリカンを除去することがエピトープを「脱マスクする」と。
【0197】
本発明者らは、中和エピトープに近接近しており、その上それぞれのエピトープの接近可能性を制限すると予想される追加のグリカン、すなわち、配列番号1に関連して番号付けされたgH-Asn55、gH-Asn62、gH-Asn67、gH-Asn192、gH-Asn641、及びgH-Asn700 ;配列番号7に関連して番号付けされたgL-Asn74 ;配列番号17に関連して番号付けされたpUL130-Asn201(pUL130-Asn85及びpUL130-118に加えて);並びに配列番号21に関連して番号付けされたpUL131A-Asn81におけるグリカンを選択した。本発明者らはそれ故に、上に列挙したグリカンの1つ以上を除去することにより、対応するエピトープ(複数可)はより近づきやすくなると予想する。特に、グリカンの除去はエピトープを「脱マスクする」ことになると。本発明者らは、具体的に、その位置でのN-結合型グリコシル化を防ぎ、それによりペンタマーのエピトープを脱マスクするために、公知の手法を使用して任意のアスパラギン以外のアミノ酸(例えば、グルタミン)で上に列挙したアスパラギン残基を置換することを提案する。脱グリコシル化変異がエピトープを脱マスクする及び/又はエピトープをより近づきやすくするか否かは、公知の手法を使用して変異体ポリペプチド又は変異体複合体の抗原性を非変異体ポリペプチド又は複合体の抗原性と比較することによりアッセイすることができる(例えば、Zhouら、Quantification of the Impact of the HIV-1- Glycan Shield on Antibody Elicitation、2017 Cell Reports 19:719~732頁;及びMaら Envelope Deglycosylation Enhances Antigenicity of HIV-I gp41 Epitopes for Both Broad Neutralizing Antibodies and Their Unmutated Ancestor Antibodies、2011 PLoS Path. 7(9)、e1002200参照)。エピトープへの中和抗体の結合の増強(すなわち、抗原性の増大)は、脱グリコシル化変異がエピトープを脱マスクする及び/又はエピトープをより近づきやすくする効果を有することを示すものである(同上)。
【0198】
脱グリコシル化及び結果として生じるエピトープの脱マスクが様々な抗原の免疫原性に対して有する公知の正の効果に基づき、理論に縛られることを望むものではないが、本明細書に記載された脱グリコシル化変異によるHCMVペンタマーエピトープの脱マスキングにより、変異体HCMVポリペプチド(又はその断片)又は変異体HCMV複合体は、それぞれ非変異体(例えば、野生型)ポリペプチド又は複合体と比較して免疫原性が増大することになると考えられる(Liuら、Unmasking Stem-Specific Neutralizing Epitopes by Abolishing N-Linked Glycosylation Sites of Influenza Virus Hemagglutinin Proteins for Vaccine Design、2016 J. of Virol. 90(19): 8496~8508頁; Zhouら、2017 Cell Reports 19:719~732頁;及びMaら、2011 PLoS Path. 7(9)、e1002200参照)。脱グリコシル化後の抗原性の増大は、脱グリコシル化による免疫原性の増大に関する許容可能な概念実証となっている(例えば、Maら、2011 PLoS Path. 7(9)、e1002200参照)。
【0199】
3.3ペンタマー複合体安定性に関与するアミノ酸のコンピュータ解析
手動の調査に加えて、上記のセクション3.1からの構造の解析を、分子グラフィックスプログラムPymol(PyMOL Molecular Graphics System、バージョン1.8 Schrodinger, LLC、WorldWideWeb(www).pymol.orgで入手可能)及びCrystallographic Object-Oriented Toolkit(「Coot」)(Emsleyら、2010、WorldWideWeb(www)2.mrc-lmb.cam.ac.uk/Personal/pemsley/coot/で入手可能)を使用して行なった。その後、Molecular Operating Environment(MOE)ソフトウェア(参照: Molecular Operating Environment(MOE)ソフトウェア; Chemical Computing Group Inc.、WorldWideWeb(www).chemcomp.comで入手可能)を使用した。特に、MOE内の「タンパク質設計」モジュールの「残基スキャニング」及び「試料配列」バリアントを、上記のセクションに記載したように得たペンタマー複合体結晶構造に適用した。「残基スキャニング」シミュレーションは、入力タンパク質の残基の全て又はサブセットを順次変異させる。「試料配列」は、指定された残基の全てをランダムに変異させる。MOEを使用して単一及び多重点変異の両方を生成した。
【0200】
さらに、MOE内の「タンパク質設計」モジュールのin silico「ジスルフィドスキャン」バリアントを、上記のセクションに記載したように得たペンタマー複合体の結晶構造に適用した。このツールを用いて残基の周囲環境を解析して、ジスルフィド結合を形成するのに十分近接した他の残基(複数可)の存在を評価した。大まかに言えば、2つのアミノ酸のβ炭素が互いに5Å以内であれば、2個の残基はジスルフィド結合を形成するのに十分近接していると特徴付けた。そのような残基の対を選択したら、MOEを利用して両方の残基をシステインに変異させ、結果として生じた、タンパク質複合体の安定性に対する影響を特徴付けた。
【0201】
各MOEプロトコールからの結果をまとめ、手動で調査した。上記の全てのMOEプロトコールに関して、デルタ安定性採点方法(dSとして示され、kcal/molとして測定される)を使用して、各変異案の影響を安定性について点数化した。MOEでは、dSは、野生型又は非変異体タンパク質に関するある特定の変異の相対的熱安定性として定義され、dSのより負の値は、より安定な変異を示す。この採点方法は、変異したときの立体構造変化、及び野生型又は非変異体に関する変化の両方を考慮している。さらに、dSは、折り畳まれた状態及び折り畳まれていない状態の両方で変異体タンパク質とその野生型(又は非変異体)の間の安定性の差から予測される。
【0202】
【表6】
【0203】
【表7】
【0204】
【表8】
【0205】
【表9】
【0206】
【表10】
【0207】
【表11】
【0208】
【表12】
【0209】
【表13】
【0210】
【表14】
【0211】
[実施例4]
変異体ペンタマー複合体の安定化アッセイ
4.1少なくともgHに関する複合体安定性の特徴付け
gHの構造解析は、gH N末端領域(gLとの境界面付近)及びgHエクトドメインのC末端に主に局在化したいくつかの埋もれた空洞の存在を明らかにした。配列番号3のgHの配列に関連して、野生型(WT)gHの残基A102は、gLαヘリックス(配列番号7のgLの配列に関連して、gL 残基216~234でできた)と平行して走る短いαヘリックス(gH 残基100~108でできた)に位置する。gH A102のメチル(CH3)側鎖基は、明らかな空洞が存在するgLαヘリックスとの境界面の方を向いている。本発明者らはそれ故に、gH A102の空洞充填変異がこの埋もれた境界面環境内でのより良いパッキングに寄与し得ることを示唆する。さらに、gH 残基H480は表面で部分的に露出していることが観察され、故に、残基の周囲環境とのより好ましいパッキングを導入するためにリパッキング変異(repacking mutation)の標的部位として本発明者らによって同定される。また、gH-gL境界面における2つの追加のジスルフィド架橋の導入を考慮すると(表11の変異V109C(gH)-G224C(gL)及びL111C(gH)-G218C(gL)参照)、本発明者らは、ジスルフィド架橋変異を導入し、それにより、より強固な様式でgHをgL 残基216~234においてgLαヘリックスとともに固定することによってこの領域が安定化されることも示唆する。
【0212】
4.2少なくともgLに関する複合体安定性の特徴付け
gL内の埋もれた空洞の局在は、N末端からC末端の埋もれた領域全体に及ぶ。特に、gL 残基H177(配列番号7のgLの配列に関連して番号付けされた)はgL内で中心に位置し、3つの構造、すなわちその側面の1つのループ、その下部の1つのループ、及び最上部のαヘリックスの間に挟まれている。gL H177の側鎖は、これらの2つのループ内の領域の大部分をカバーする空洞の方を向いている。したがって、本発明者らは、この領域を安定化させるために疎水性の空洞充填残基へのH177の変異 (すなわち、gL H177での空洞充填変異の導入)を提案する。同様に、gL 残基G224及びその周囲環境において、gHヘリックス-ループ-ヘリックスモチーフ(配列番号3の108~122に対応するgH 残基)とgLαヘリックス(配列番号7の216~234に対応するgL 残基)の間に大きな空洞が埋もれて観察され得るため、本発明者らは、領域を安定化させるためにそこ(gL 残基G224)に空洞充填変異を導入することを提案する。また、gH 残基92~101(配列番号3に関連して番号付けされた)のgHヘリックス-ループ-ヘリックス領域とgL 残基228~242(配列番号7に関連して番号付けされた)あたりのgLヘリックス-ループ-ヘリックス領域の間の境界面にも、gL C233の側鎖の前に空洞がある。本発明者らはそれ故に、gL 残基C233に空洞充填変異又は疎水性変異を導入することを提案する。最後に、gL-UL130境界面は、主鎖及び側鎖の水素結合及び大きな側鎖の疎水性接触でできている。この領域の構造解析に一部基づき、本発明者らは、これらの2つのサブユニットをともに固定するための、ジスルフィド架橋変異によるgL-UL130境界面へのジスルフィド結合の挿入を示唆する(例えば、配列番号17のP64に対応するUL130 残基でのP64C変異との、配列番号7のG161に対応するgL 残基でのG161C変異による)。
【0213】
4.3少なくともUL128に関する複合体安定性の特徴付け
配列番号13のG123に対応するUL128 残基は大きな埋もれた空洞の下に位置し、pUL128とpUL130とpUL131Aの間の境界面で30残基の小さなドメイン中に埋もれている。少なくとも残基G123は大きな埋もれた空洞の下に位置するため、本発明者らは、複合体安定性を増大させるためにUL128 G123で空洞充填変異を作ることを提案する。さらに、小さなUL128 G145残基(配列番号13に関連して番号付けされた)は、gL 3ヘリックスバンドルにドッキングする最後のUL128 C末端αヘリックスに位置し、それ故に、リパッキング変異を導入してgL-UL128境界面での相互作用を増加させ、それにより複合体安定性を増大させるための本発明者に同定された標的である。最後に、UL128のN末端ドメインをgLに連結する50Å長のリンカーに沿った残基UL128 R142及びUL130 E95(それぞれ、配列番号13のUL128の配列及び配列番号17のUL130の配列に関連して番号付けされた)の環境及び三次元配置のために、本発明者らは、UL128をUL130に固定し、故にUL領域の安定性の増大及び全体的に複合体の安定性の増大に寄与するように、UL128 R142C及びUL130 E95Cジスルフィド架橋変異を複合体に導入することを提案する。
【0214】
4.4少なくともUL130に関する複合体安定性の特徴付け
pUL130-pUL131A境界面において、pUL130 残基H209(配列番号17のpUL130の配列に関連して番号付けされた)はpUL131A H35(配列番号21のpUL131Aの配列に関連して番号付けされた)の方に向いている。これに基づき本発明者らは、プロトン化された場合、これらのヒスチジンは互いに反発することにより、立体構造変化を引き起こし、又はこの領域に柔軟性を与えることを示唆する。したがって、本発明者らは、ULのこの領域の柔軟性を低下させ、複合体安定性を増大するために、UL130 H209に対応する残基にリパッキング変異を導入することを提案する。さらに、大きな埋もれた空洞がpUL130 H209付近で検出され、本発明者らはそこに空洞充填及びリパッキング変異のどちらか一方又は両方を複合体安定性の増大のために導入することを提案する。また、pUL130-pUL131A境界面において、配列番号17の配列のH150に対応するpUL130 残基はpUL131A H69(配列番号21に関連して番号付けされた)の方に向いており、そのため本発明者らは、このUL領域の柔軟性の低下及び複合体安定性の増大のために、pUL130 H150にリパッキング変異を導入することを同様に提案する。
【0215】
4.5少なくともpUL131Aに関する複合体安定性の特徴付け
pUL130-pUL131A境界面(αβ-コア)において、pUL131A G99(配列番号21のpUL131Aの配列に関連して番号付けされた)は平坦な、130-131が混合した大きなβシートの周辺ストランドにあり、そのC-b骨格原子(すなわち、G99側鎖の最初の炭素原子)は、pUL130及びpUL131Aヘリックス並びに大きな埋もれた空洞が位置する埋もれた領域の方を向いている。本発明者らは、複合体安定性を増強する空洞充填変異の導入のためにpUL131A G99を標的にする。同様に、pUL131A 残基S86(配列番号21のpUL131Aの配列に関連して番号付けされた)はpUL131Aヘリックスに位置し、平坦な大きなpUL130-pUL131A混合βシートの方を向いている。したがって、本発明者らは、複合体安定性の増大のためにpUL131A S86に空洞充填変異を導入することを提案する。同様に、pUL131A 残基H64(配列番号21のpUL131Aの配列に関連して番号付けされた)はpUL130-pUL131A混合αβ-コア間の埋もれた環境の方を向いており、そのため本発明者らは、複合体の熱安定性を増大させる相互作用を導入するためにpUL131A H64のリパッキング変異(具体的には、疎水性変異)を、例えば、かさ高いより疎水性の残基(例えばトリプトファン(W))で導入することを提案する。
【0216】
4.6安定化変異体の設計
上記のセクションで示したように、本発明者らはコンピュータ解析(上記実施例3.3に要約)を行い、そのデータを手動調査及び操作によって処理し(上記実施例4.1~4.5に要約)、それにより、単独で又は組み合わせた場合にそれらの変異を含む複合体の安定性を改善するように、gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131A内に変異を設計した。理論に縛られることを望むものではないが、(A)ドメイン境界面間の埋もれた空洞を、野生型タンパク質で見出されるものより長い側鎖でできたアミノ酸からの原子で充填すること、(B)隣接残基の接触を増大させる若しくは荷電残基の好ましくないクラスターを交換すること、及び/又は(C)構造全体にわたりイントラ-ジスルフィド架橋若しくはインター-ジスルフィド架橋を導入することによって、立体構造の柔軟性は低下し、複合体の全体的な熱安定性は増大すると考えられる。A~Cの1つ以上をもたらす本発明者が設計した例示的な変異体を、以下の表15~21に列挙する。
【0217】
以下の表は、特定のペンタマー複合体サブユニット内の特定の変異を例示するためにまとめられているが、設計された変異体はこれらの変異の組合せ(「積み重なった変異」、すなわち、1つのポリペプチド内の変異の組合せ(例えば、gH内のいくつかの変異)、並びに異なるポリペプチド内の変異の組合せ(例えば、両方とも1つを超える変異を含み得る変異体gH及び変異体gL)を含む。例として、本発明者が設計した変異体HCMVペンタマー複合体は、以下の表20及び21内に列挙された任意の1つ以上の変異を含む。
【0218】
【表15】
【0219】
【表16】
【0220】
【表17】
【0221】
【表18】
【0222】
【表19】
【0223】
【表20】
【0224】
上記の表15~20は、複合体サブユニットに(例えば、ペンタマー複合体サブユニットタンパク質gH、gL、pUL128、pUL130、及びpUL131Aの1つに)導入するジスルフィド架橋変異を例示しているが、ジスルフィド架橋は2個の残基間(同じポリペプチド内の2個のシステイン残基(イントラ-ジスルフィド架橋)、又は2個のシステイン残基、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドの各々で1個のシステインの間(インター-ジスルフィド架橋))で形成されるため、本発明者らは、それを含む複合体の安定性を増大させる、設計したジスルフィド架橋変異の組合せの概要を以下の表21で提供する(ジスルフィド架橋変異のグループとして一番左の列に番号付けされている)。表21に提供されたジスルフィド架橋変異の組合せは、積み重ねられてもよく(例えば、グループ番号1に列挙された変異がグループ番号2に列挙された変異と組み合わされてもよい)、又は上記の表15~20に列挙した少なくとも1つの空洞充填変異及び/若しくはリパッキング変異と組み合わされてもよい。
【0225】
【表21】
【0226】
4.7少なくとも1つの設計された変異体を含む複合体を発現させ、精製する
HCMVペンタマー複合体は、示差走査蛍光定量(DSF)アッセイにおいて2つの熱転移中間点(Tm)値(2つのピーク)を有することに反映される二峰性のアンフォールディングを示す(より低い第1の温度値を「Tm1」と呼び、より高い第2の温度値を「Tm2」と呼ぶ)。本発明の空洞充填、リパッキング、ジスルフィド架橋、又は脱グリコシル化変異は、複合体の1つ又はいくつかのTmピークをシフトさせ(すなわち、上昇又は低下させ)得る。Tm値の上昇(すなわち、DSFアッセイの結果として生じるシグモイドグラフにおけるTmピークの右へのシフト)は、ゼロより大きな温度変化を意味する(正のTmシフト)。Tm値の低下(すなわち、Tmピークの左へのシフト)は、ゼロ未満の温度変化を意味する(負のTmシフト)。HCMVペンタマー複合体に関して、本発明の変異はTm1及びTm2のただ1つ、又は両方をシフトさせ得る。これらの実験に関して、変異又は変異の組合せが安定化、中立、又は脱安定化となるか否かは、Tm1シフト、Tm2シフト、又は両方のサイズに依存する。Tm1及びTm2の少なくとも1つの、対照と比較して少なくとも2℃の上昇は、HCMV複合体の熱安定性の増大とみなされる(すなわち、変異又は変異の組合せが、対照と比較して少なくとも2℃のTm1シフト又はTm2シフトをもたらすならば、それらは「安定化」と言われる)。Tm1及びTm2の少なくとも1つの、対照と比較して少なくとも5℃の上昇は、複合体の熱安定性の著しい増大とみなされる(すなわち、変異又は変異の組合せが、対照と比較して少なくとも5℃のTm1シフト又はTm2シフトをもたらすならば、それらは「著しい安定化」と言われる)。Tm1シフト及びTm2シフト値の両方が対照と比較して2℃~-2℃の間にあるとき(エンドポイントを含まない)、変異又は変異の組合せは「中立」と言われる。Tm1シフト及びTm2シフト値の少なくとも1つが対照と比較して-2℃以下であるとき、変異又は変異の組合せは「脱安定化」と言われる。ここで、例えば、アッセイにおけるタンパク質の不十分な発現又は量のために、Tm1シフト、Tm2シフト若しくは両方、及び/又は安定性についてのいかなる影響も評価することができないならば、変異体又は変異体の組合せは「不確定」と分類される。
【0227】
改変HCMVペンタマー複合体を、上記の実施例1及び2に記載したように発現させ、精製した。HCMVペンタマー複合体は各々、少なくとも1つの改変サブユニットポリペプチドgH、gL、UL128、UL130、及びpUL131Aを含み、改変サブユニットポリペプチドは表22~23に列挙する変異を含んだ。精製変異体HCMVペンタマー複合体を、Nanotemper Prometheus NT.48装置を使用して示差走査蛍光定量(DSF)アッセイで評価した。芳香族残基、例えばTyr及びTrpの固有の蛍光を、280nm波長で励起し、発光スペクトルを温度傾斜(25~85℃)にわたって、330nm(折り畳まれた状態を表す)及び350nm(折り畳まれていない状態を表す)で測定して得た。装置のソフトウェアを使用して蛍光比(350nm/330nm)の差異をプロットし、曲線の変曲点に対応する温度を変異体HCMVペンタマー複合体の融解温度(Tm)とみなした。各変異体HCMVペンタマー複合体のTm1及びTm2を、対照(非変異体)HCMVペンタマー複合体の対応するTm1又はTm2と比較した。利用した対照複合体は、gH複合体形成断片、及びプロテアーゼ認識部位内に変異を有するgLポリペプチドを含むHCMVペンタマー複合体であった(具体的には、gHポリペプチドは配列番号4の配列を含み、gLポリペプチドは配列番号10の配列を含み、pUL128ポリペプチドは配列番号14の配列を含み、pUL130ポリペプチドは配列番号18の配列を含み、pUL131Aポリペプチドは配列番号22の配列を含んだ)。可能な場合、対照と比較したTm1及び/又はTm2の任意の変化(シフト)を算出し、表22及び23に要約する。表22及び23の残基番号は、それぞれ配列番号3のgHの配列、配列番号7のgLの配列、配列番号13のpUL128の配列、配列番号17のpUL130の配列、及び配列番号21のpUL131Aの配列に関連するものである。算出したTmの少なくとも5℃の上昇は、複合体の熱安定性の著しい増大とみなされる。表22及び23に記載した安定化変異体HCMVペンタマー複合体を、Bio-layer Interferometry(BLI)技術及び10P3抗体を使用して野生型コンフォメーショナルエピトープの存在についてアッセイした。表22及び23に列挙した複合体は全て、10P3抗体によって認識される野生型HCMVペンタマー複合体コンフォメーショナルエピトープを維持する。
【0228】
4.8ペンタマー複合体の安定性に対する設計された変異の効果
これらの方法によって産生した一部の変異体HCMVペンタマー複合体は対照より熱に安定であったが、他は効果が中立又は脱安定化であった。gL及びpUL130ポリペプチド内、pUL128及びpUL130ポリペプチド内、又はpUL128ポリペプチドだけの内部にジスルフィド変異を含む変異体HCMVペンタマー複合体は、対照と比較して熱安定性が増大した(表22)。同様に、gLポリペプチド、pUL128ポリペプチド、又はpUL131ポリペプチドに空洞充填変異を含む変異体HCMVペンタマー複合体は、対照と比較して熱安定性が増大した(表22)。
【0229】
1つのタイプの変異(表23のカラムA参照)を第2のタイプの変異(表23のカラムB参照)と積み重ねる(組み合わせる)こともまた安定化となった(表23)。特に、gL内の空洞充填変異をpUL128及びpUL130内のジスルフィド架橋変異と組み合わせること、pUL128及びpUL130内のジスルフィド架橋変異をgL内の脱グリコシル化変異と組み合わせること、gH内のリパッキング(親水性)変異をpUL128及びpUL130内のジスルフィド架橋変異と組み合わせること、gL内のリパッキング(疎水性)変異をpUL128及びpUL130内のジスルフィド架橋変異と組み合わせること、並びにpUL131内の2つのリパッキング(疎水性)変異をgL内の空洞充填変異と組み合わせることは、全て安定化となった(表23)。
【0230】
理論に縛られることを望むものではないが、これらの空洞充填、リパッキング、及びジスルフィド架橋変異は、局所相互作用を最適化すること又は立体構造柔軟性を低下させることによりHCMVペンタマー複合体の熱安定性を増強すると考えられる。同様に、これらの脱グリコシル化変異は、HCMVペンタマー複合体エピトープをより近づきやすくすると考えられる。
【0231】
【表22】
【0232】
【表23】
【0233】
[実施例5]
変異体ペンタマー複合体のさらなる安定化アッセイ
5.1少なくとも1つの設計された変異体を含む複合体を発現させ、精製する
改変HCMVペンタマー複合体を、上記の実施例に記載したように発現させ、精製した。HCMVペンタマー複合体は各々、少なくとも1つの改変サブユニットポリペプチドgH、gL、UL128、UL130、及びpUL131Aを含み、改変サブユニットポリペプチドは表24に列挙する変異を含んだ。精製変異体HCMVペンタマー複合体を、Nanotemper Prometheus NT.48装置を使用して示差走査蛍光定量(DSF)アッセイで評価した。芳香族残基、例えばTyr及びTrpの固有の蛍光を、280nm波長で励起し、発光スペクトルを温度傾斜(25~85℃)にわたって、330nm(折り畳まれた状態を表す)及び350nm(折り畳まれていない状態を表す)で測定して得た。装置のソフトウェアを使用して蛍光比(350nm/330nm)の差異をプロットし、曲線の変曲点に対応する温度を変異体HCMVペンタマー複合体の融解温度(Tm)とみなした。各変異体HCMVペンタマー複合体のTm1及びTm2を、同じ実験条件下で対照(非変異体)HCMVペンタマー複合体の対応するTm1又はTm2と比較した。利用した対照複合体は、gH複合体形成断片、及びプロテアーゼ認識部位内に変異を有するgLポリペプチドを含むHCMVペンタマー複合体であった(具体的には、gHポリペプチドは配列番号4の配列を含み、gLポリペプチドは配列番号10の配列を含み、pUL128ポリペプチドは配列番号14の配列を含み、pUL130ポリペプチドは配列番号18の配列を含み、pUL131Aポリペプチドは配列番号22の配列を含んだ)。
【0234】
対照と比較したTm1及び/又はTm2の任意の変化(シフト)を算出し、表24に要約した。表24の残基番号は、それぞれ配列番号3のgHの配列、配列番号7のgLの配列、配列番号13のpUL128の配列、配列番号17のpUL130の配列、及び配列番号21のpUL131Aの配列に関連するものである。実施例4にあるように、また+/-0.3℃の標準偏差を考慮すると、「安定化」結果は、Tm1、Tm2、又は両方のシフトが少なくとも2℃である場合であり; Tm1又はTm2のどちらかの少なくとも5℃の上昇は、複合体の熱安定性の著しい安定化増大とみなされ;「中立」結果は、Tm1及びTm2シフトの両方が-2℃~2℃の間にある場合であり;「脱安定化」結果は、Tm1又はTm2シフトのどちらかが-2℃以下である場合である。表24に記載した安定化変異体HCMVペンタマー複合体を、Bio-layer Interferometry(BLI)技術及び10P3、8I21、916、10F7、13H11又はMSL-109、及び15D8抗体を使用して野生型コンフォメーショナルエピトープの存在についてアッセイした。表24に列挙した複合体は全て、10P3、8I21、9I6、10F7、13H11又はMSL-109、及び15D8抗体によって認識される野生型HCMVペンタマー複合体コンフォメーショナルエピトープを維持する。
【0235】
識別番号176について、以前に評価したA及びB列の変異にC列のジスルフィド変異を積み重ねることは、著しい安定化となる。識別番号177について、以前に評価したA列のジスルフィド変異に以前に評価したB列のジスルフィド変異を積み重ねることは、著しい安定化となる。識別番号178について、以前に積み重ね、評価したA列(空洞充填)及びB列(ジスルフィド)の変異にC列のジスルフィド変異を積み重ねることは、著しい安定化となる。識別番号179及び180について、空洞充填変異gL_G22Vは以前に別の変異と積み重ねておらず、熱安定性に対する効果を評価しなかった。空洞充填変異gL_G22Vを、以前に評価したB及びC列(識別番号179の)又はB列(識別番号180の)のジスルフィド変異と積み重ねることは、著しい安定化となる。識別番号181及び182に関して、空洞充填変異体UL128_V77Iは以前に別の変異と積み重ねておらず、熱安定性に対する効果を評価しなかった。同様に、識別番号181、182、及び184に関して、空洞充填変異gL_G140F及びgL_G145Lは以前に組み合わせておらず、熱安定性に対する効果を評価しなかった。識別番号181について、A列の空洞充填変異をB列の空洞充填変異と積み重ねることは、安定化となる。識別番号182について、A列の3つの空洞充填変異をB列の空洞充填変異と積み重ねることは、安定化となる。識別番号183について、A列の以前に評価したリパッキング疎水性変異を、以前に評価したB列の空洞充填変異に積み重ねることは、安定化となる。識別番号184について、A列の3つの空洞充填変異を積み重ねることは、脱安定化となる。識別番号184の3つの空洞充填変異の積み重ねは脱安定化となるが、識別番号184の変異体を識別番号182のB列の空洞充填変異と組み合わせると安定化となることを見出したことは驚きであった。表24の変異体HCMVペンタマー複合体の1つを除く全てが対照より熱安定性であり、一部は著しい安定化となる。
【0236】
【表24】
【0237】
5.2少なくとも1つの設計された変異体を含む追加の複合体を発現させ、精製し、抗原性及び免疫原性を確認する
改変HCMVペンタマー複合体を、上記の実施例に記載したように発現させ、精製した。HCMVペンタマー複合体は各々、少なくとも1つの改変サブユニットポリペプチド(gH、gL、UL128、UL130、及び/又はpUL131A)を含み、改変サブユニットポリペプチドは表25に列挙する変異を含んだ。精製変異体HCMVペンタマー複合体を、Nanotemper Prometheus NT.48装置(NanoDSF)を使用して示差走査蛍光定量(DSF)アッセイで熱安定性について評価した。芳香族残基、例えばTyr及びTrpの固有の蛍光を、280nm波長で励起し、発光スペクトルを温度傾斜(25~85℃)にわたって、330nm(折り畳まれた状態を表す)及び350nm(折り畳まれていない状態を表す)で測定して得た。装置ソフトウェアを使用して蛍光比(350nm/330nm)の差異をプロットし、曲線の変曲点に対応する温度を変異体HCMVペンタマー複合体の融解温度(Tm)とみなした。各変異体HCMVペンタマー複合体のTm1及びTm2を、同じ実験条件下で対照(非変異体)HCMVペンタマー複合体の対応するTm1又はTm2と比較した。利用した対照複合体は、gH複合体形成断片、及びプロテアーゼ認識部位内に変異を有するgLポリペプチドを含む、公知のHCMVペンタマー複合体(WO 2016/116904の「LSG変異体ペンタ」)であった(具体的には、gHポリペプチドは配列番号4の配列を含み、gLポリペプチドは配列番号10の配列を含み、pUL128ポリペプチドは配列番号14の配列を含み、pUL130ポリペプチドは配列番号18の配列を含み、pUL131Aポリペプチドは配列番号22の配列を含んだ)。
【0238】
対照と比較したTm1及び/又はTm2の任意の変化(シフト)を算出し、表25に要約した。表25の残基数は、それぞれ配列番号3のgHの配列、配列番号7のgLの配列、配列番号13のpUL128の配列、配列番号17のpUL130の配列、及び配列番号21のpUL131Aの配列に関連するものである。実施例4にあるように、また+/-0.3℃の標準偏差を考慮すると、「安定化」結果は、Tm1、Tm2、又は両方のシフトが少なくとも2℃である場合であり; Tm1又はTm2のどちらかの少なくとも5℃の上昇は、複合体の熱安定性の著しい安定化増大とみなされ;「中立」結果は、Tm1及びTm2シフトの両方が-2℃~2℃の間にある場合であり;「脱安定化」結果は、Tm1又はTm2シフトのどちらかが-2℃以下である場合である。結果は、空洞充填変異より熱安定性に対して高い影響を有するジスルフィド結合変異により、全ての変異体は融解温度(Tm)が上昇するというものである。特に、
- 配列番号21に従って番号付けされたS86F変異を有するpUL131ポリペプチドを含む変異体HCMVペンタマー複合体(セット1_154)は、対照と比較して熱安定性が増大するが、それは中立な合計Tmシフトのみであった。
- 配列番号7に従って番号付けされたG140F及びG145L変異を有するgLポリペプチドを含み、並びに配列番号13に従って番号付けされたV77I及びL103I変異を有するpUL128ポリペプチドを含む変異体HCMVペンタマー複合体(セット2_36)は、著しい安定化となる量で対照と比較して熱安定性が増大する。
- 配列番号7に従って番号付けされたA150C変異を有するgLポリペプチド、配列番号13に従って番号付けされたR142C変異を有するpUL128ポリペプチド、並びに配列番号17に従って番号付けされたP64C及びE95C変異を有するpUL130ポリペプチドを含む変異体HCMVペンタマー複合体(セット2_20)は、著しい安定化となる量で対照と比較して熱安定性が増大する。
- 配列番号7に従って番号付けされたA150C及びG140F変異を有するgLポリペプチド、配列番号13に従って番号付けされたR142C変異を有するpUL128ポリペプチド、並びに配列番号17に従って番号付けされたP64C及びE95C変異を有するpUL130ポリペプチドを含む変異体HCMVペンタマー複合体(セット2_21)は、著しい安定化となる量で対照と比較して熱安定性が増大する。
- 配列番号7に従って番号付けされたA150C及びG145L変異を有するgLポリペプチド、配列番号13に従って番号付けされたR142C変異を有するpUL128ポリペプチド、並びに配列番号17に従って番号付けされたP64C及びE95C変異を有するpUL130ポリペプチドを含む変異体HCMVペンタマー複合体(セット 2_22)は、著しい安定化となる量で対照と比較して熱安定性が増大する。
- 配列番号13に従って番号付けされたS83C変異を有するpUL128ポリペプチド、及び配列番号17に従って番号付けされたT167C変異を有するpUL130ポリペプチドを含む変異体HCMVペンタマー複合体(セット1_72)は、著しい安定化となる量で対照と比較して熱安定性が増大する。
【0239】
【表25】
【0240】
表25の安定化変異体HCMVペンタマー複合体の抗原性を、公知の部位特異的モノクローナル抗体(MAb)15D8(部位1)、2F4(部位2)、8I21(部位3及び7)、10P3(部位4及び6)、9I6(部位5)、及び3G16(gHに特異的)を利用してOctet-Bio-layer Interferometry(Octet-BLI)によって確認した。全てのMAbは、表25の各変異体HCMVペンタマー複合体に結合し、それにより変異体複合体のコンフォメーショナルエピトープ完全性及び抗原性を確認した。
【0241】
表25の変異体HCMVペンタマー複合体及び対照HCMVペンタマー複合体(全7グループ)の各々0.03μgを、AS01Eアジュバント(モノホスホリルリピドA(MPL)及びQS21の各々2.5μgを含有するリポソームベースのアジュバント)とともに製剤化した。1、22、及び43日目に、組成物50μLの3回の別個の投与をC57BL/6マウス(1グループあたり12匹)の後肢に筋肉内投与し、21及び42日目に全てのマウスに最終でない採血を行い、64日目に全てのマウスに全採血及び最終採血を行った。以下の表のレジメン参照。
【0242】
【0243】
2回目の投与を投与した3週間後に採取した血清試料(3wp2)を、ARPE-19上皮細胞、TB40ウイルス株、及びCederlaneモルモット補体を利用して公知の方法に従って行われる中和アッセイで補体によりテストした。幾何平均抗体価(GMT)をエンドポイントとして使用し、中和アッセイは、7つ全てのHCMVペンタマー複合体の免疫原性を確認した(図8)。特に、結果は、6つの変異体HCMVペンタマー複合体の1つで免疫したマウス由来の全ての試料が、対照ペンタマーで免疫したマウス由来の力価を上回る中和抗体(nAb)力価を有することを示した(図8)。
【0244】
3回目の投与を投与した3週間後に採取した試料は、同じ中和アッセイプロトコール下で類似した結果の傾向を示すことが予想される。
【0245】
配列の説明
アミノ酸配列はN-末端からC-末端への方向で書かれ、核酸配列は5’-から3’への方向で書かれている。
配列番号1 - HCMV Merlin株からの全長gHポリペプチドのアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1~23) (NCBI GI No.:52139248;NCBI受託番号YP_081523.1)。
配列番号2 - HCMV Merlin株からのgHポリペプチドの、シグナル配列を欠くアミノ酸配列(したがって、成熟gHポリペプチド)。配列番号2は配列番号1のアミノ酸24~742を表す。
配列番号3 - HCMV Merlin株からのgHポリペプチドの、膜貫通(TM)ドメイン及びC-末端細胞質ドメイン並びにエクトドメイン 残基716及び717を欠くアミノ酸配列。配列番号3は、配列番号1のアミノ酸1~715からなる(予想されるシグナル配列 残基1~23)。WO 2014/005959 (米国特許公開第2016/0159864号公開されている)を参照。
配列番号4 - HCMV Merlin株からの成熟gHポリペプチドのアミノ酸配列であり、また、TMドメイン及びC-末端細胞質ドメインを欠く。配列番号4は、配列番号1のアミノ酸24~715からなる。
配列番号5 - HCMV Towne株からの全長gHポリペプチドのアミノ酸配列(NCBI GI No.:138314;NCBI受託番号P17176.1)。
配列番号6 - HCMV AD169株からの全長gHポリペプチドのアミノ酸配列(NCBI GI No.:138313;NCBI受託番号P12824.1)。
配列番号7 - HCMV Merlin株からの全長gLポリペプチドのアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1~30) (NCBI GI No.:39842115;NCBI GenBank受託番号AAR31659.1)。
配列番号8 - HCMV Merlin株からの成熟gLポリペプチドの、シグナル配列を欠くアミノ酸配列。配列番号8は、配列番号7のアミノ酸31~278からなる。
配列番号9 - HCMV Merlin株からの全長gLポリペプチドの、プロテアーゼ認識部位と思われる部位の変異を含むアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1-30)。配列番号9は、配列番号7、並びにクリッピング変異(clipping mutation)A96L、N97S、及びS98Gからなる。WO2016/116904を参照。
配列番号10 - HCMV Merlin株からの成熟gLポリペプチドの、プロテアーゼ認識部位と思われる部位の変異を含むアミノ酸配列。配列番号10は、配列番号9の残基31~278からなる。WO2016/116904参照。
配列番号11 - HCMV Towne株からの全長gLポリペプチドのアミノ酸配列(NCBI GI No.:239909463;NCBI GenBank受託番号ACS32410.1)。
配列番号12 - HCMV AD169株からの全長gLポリペプチドのアミノ酸配列(NCBI GI No.:2506510;NCBI受託番号P16832.2)。
配列番号13 - HCMV Merlin株からの全長pUL128ポリペプチドのアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1~27) (NCBI GI No.:39842124;NCBI GenBank受託番号AAR31668.1)。
配列番号14 - HCMV Merlin株からの成熟pUL128ポリペプチドの、シグナル配列を欠くアミノ酸配列。配列番号14は、配列番号13のアミノ酸28~171からなる。
配列番号15 - HCMV Towne株からの全長pUL128ポリペプチドのアミノ酸配列(NCBI GI No.:39841882;NCBI GenBank受託番号AAR31451.1)。
配列番号16 - HCMV AD169株からの全長pUL128ポリペプチドのアミノ酸配列(NCBI GI No.:59803078;NCBI受託番号P16837.2)。
配列番号17 - HCMV Merlin株からの全長pUL130ポリペプチドのアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1~25) (NCBI GI No.:39842125;NCBI受託番号AAR31669.1)。
配列番号18 - HCMV Merlin株からの成熟pUL130ポリペプチドの、シグナル配列を欠くアミノ酸配列。配列番号18は、配列番号17のアミノ酸26~214からなる。
配列番号19 - HCMV Towne株からの全長pUL130ポリペプチドのアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1~25) (NCBI GI No.:239909473;NCBI受託番号ACS32420.1)。
配列番号20 - HCMV AD169株からの全長pUL130ポリペプチドのアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1~25)。(NCBI UniProtKB受託番号P16772.1)。
配列番号21 - HCMV Merlin株からの全長pUL131Aポリペプチドのアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1-18) (NCBI GI No.:39842126;NCBI受託番号AAR31670.1)。
配列番号22 - HCMV Merlin株からの成熟pUL131Aポリペプチドのアミノ酸配列。配列番号22は、配列番号21のアミノ酸19~129からなる。
配列番号23 - HCMV Towne株からの全長pUL131Aポリペプチドのアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1-18) (NCBI GI No.:239909474;NCBI受託番号ACS32421.1)。
配列番号24 - HCMV AD169株からの全長pUL131Aポリペプチドのアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1-18). (NCBI GI No.:219879712;NCBI GenBank受託番号DAA06452.1)。
配列番号25 - HCMV Merlin株からの全長gOポリペプチドのアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1-30)。(NCBI GI No.:39842082;NCBI GenBank受託番号AAR31626.1)。
配列番号26 - HCMV Merlin株からの成熟gOポリペプチドのアミノ酸配列。配列番号26は、配列番号25のアミノ酸31~472からなる。
配列番号27 - HCMV Towne株からの全長gOポリペプチドのアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1-30)。(NCBI GI No.:239909431;NCBI受託番号ACS32378.1)。
配列番号28 - HCMV AD169株からの全長gOポリペプチドのアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1-30)。(NCBI GI No.:136968;NCBI UniProtKB受託番号P16750.1)。
配列番号29 - HCMV Merlin株からの全長gLポリペプチドの、プロテアーゼ認識部位と思われる部位の変異を含むアミノ酸配列(予想されるシグナル配列 残基1-30)。配列番号29は、配列番号7、並びにクリッピング変異A96I、N97D、及びS98Gからなる(これはまた、下線を引いている)。WO2016/116904を参照。
配列番号30 - HCMV Merlin株からの成熟gLポリペプチドの、プロテアーゼ認識部位と思われる部位の変異を含むアミノ酸配列。配列番号30は、配列番号29の残基31~278からなる(IDG変異体クリッピング残基を含む)。WO2016/116904を参照。
配列番号31 - 配列番号1の全長gHのアミノ酸配列をコードする核酸配列(NCBI GenBank受託番号AY446894.2の塩基対109224~111452に対応する配列(3’から5’への方向でコードされている))。
配列番号32 - 配列番号3のgHのアミノ酸配列をコードする核酸配列(哺乳動物での発電にコドン最適化されている)。
配列番号33 - 配列番号7の全長gLのアミノ酸配列をコードする核酸配列。
配列番号34 - 配列番号9の全長LSG gLのアミノ酸配列をコードする核酸配列。
配列番号35 - 配列番号29の全長IDG gLのアミノ酸配列をコードする核酸配列。
配列番号36 - 配列番号13の全長pUL128のアミノ酸配列をコードする核酸配列。
配列番号37 - 配列番号17の全長pUL130のアミノ酸配列をコードする核酸配列。
配列番号38 - 配列番号21の全長pUL131Aのアミノ酸配列をコードする核酸配列。
配列番号39 - 配列番号25の全長gOのアミノ酸配列をコードする核酸配列(GenBank受託番号AY446894.2の塩基対108848~107454に対応)。
配列番号40 - 配列番号3のHCMV Merlin株のgHのアミノ酸配列に対応し、さらにG358R変異を含む(下線を引いている)。予想されるシグナル配列 残基1~23。
配列番号41 - 配列番号4のHCMV Merlin株のgHのアミノ酸配列に対応し、さらにG358R変異を含む。
配列番号42 - 配列番号9のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにN74Q変異を含む。予想されるシグナル配列 残基1~30。
配列番号43 - 配列番号10のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにN74Q変異を含む。
配列番号44 - 配列番号9のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにG140F変異を含む。予想されるシグナル配列 残基1~30。
配列番号45 - 配列番号10のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにG140F変異を含む。
配列番号46 - 配列番号9のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにG145L変異を含む。また、予想されるシグナル配列 残基1~30には下線を引いている。
配列番号47 - 配列番号10のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにG145L変異を含む。
配列番号48 - 配列番号9のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにA150C変異を含む。また、予想されるシグナル配列 残基1~30には下線を引いている。
配列番号49 - 配列番号10のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにA150C変異を含む。
配列番号50 - 配列番号9のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにR160C変異を含む。また、予想されるシグナル配列 残基1~30には下線を引いている。
配列番号51 - 配列番号10のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにR160C変異を含む。
配列番号52 - 配列番号9のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにR166C変異を含む。また、予想されるシグナル配列 残基1~30には下線を引いている。
配列番号53 - 配列番号10のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにR166C変異を含む。
配列番号54 - 配列番号9のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにC233V変異を含む。予想されるシグナル配列 残基1~30。
配列番号55 - 配列番号10のHCMV Merlin株のgLのアミノ酸配列に対応し、さらにC233V変異を含む。
配列番号56 - 配列番号13のHCMV Merlin株のpUL128のアミノ酸配列に対応し、さらに変異M48C及びG107Cを含む。予想されるシグナル配列 残基1~27。このシグナル配列は、残基12において配列番号13のシグナル配列と異なる。
配列番号57 - 配列番号14のHCMV Merlin株のpUL128のアミノ酸配列に対応し、さらに変異M48C及びG107Cを含む。
配列番号58 - 配列番号13のHCMV Merlin株のpUL128のアミノ酸配列に対応し、さらに変異V77Iを含む。予想されるシグナル配列 残基1~27。このシグナル配列は、残基12において配列番号13のシグナル配列と異なる。
配列番号59 - 配列番号14のHCMV Merlin株のpUL128のアミノ酸配列に対応し、さらに変異V77Iを含む。
配列番号60 - 配列番号13のHCMV Merlin株のpUL128のアミノ酸配列に対応し、さらに変異S83Cを含む。予想されるシグナル配列 残基1~27。このシグナル配列は、残基12において配列番号13のシグナル配列と異なる。
配列番号61 - 配列番号14のHCMV Merlin株のpUL128のアミノ酸配列に対応し、さらに変異S83Cを含む。
配列番号62 - 配列番号13のHCMV Merlin株のpUL128のアミノ酸配列に対応し、さらに変異Y98Cを含む。予想されるシグナル配列 残基1~27。このシグナル配列は、残基12において配列番号13のシグナル配列と異なる。
配列番号63 - 配列番号14のHCMV Merlin株のpUL128のアミノ酸配列に対応し、さらに変異Y98Cを含む。
配列番号64 - 配列番号13のHCMV Merlin株のpUL128のアミノ酸配列に対応し、さらに変異L103Iを含む。予想されるシグナル配列 残基1~27。このシグナル配列は、残基12において配列番号13のシグナル配列と異なる。
配列番号65 - 配列番号14のHCMV Merlin株のpUL128のアミノ酸配列に対応し、さらに変異L103Iを含む。
配列番号66 - 配列番号13のHCMV Merlin株のpUL128のアミノ酸配列に対応し、さらに変異R142Cを含む。予想されるシグナル配列 残基1~27。このシグナル配列は、残基12において配列番号13のシグナル配列と異なる。
配列番号67 - 配列番号14のHCMV Merlin株のpUL128のアミノ酸配列に対応し、さらに変異R142Cを含む。
配列番号68 - 配列番号17のHCMV Merlin株のpUL130のアミノ酸配列に対応し、さらに変異Y56Cを含む。予想されるシグナル配列 残基1~25。
配列番号69 - 配列番号18のHCMV Merlin株のpUL130のアミノ酸配列に対応し、さらに変異Y56Cを含む。
配列番号70 - 配列番号17のHCMV Merlin株のpUL130のアミノ酸配列に対応し、さらに変異P62Cを含む。予想されるシグナル配列 残基1~25。
配列番号71 - 配列番号18のHCMV Merlin株のpUL130のアミノ酸配列に対応し、さらに変異P62Cを含む。
配列番号72 - 配列番号17のHCMV Merlin株のpUL130のアミノ酸配列に対応し、さらに変異P64Cを含む。予想されるシグナル配列 残基1~25。
配列番号73 - 配列番号18のHCMV Merlin株のpUL130のアミノ酸配列に対応し、さらに変異P64Cを含む。
配列番号74 - 配列番号17のHCMV Merlin株のpUL130のアミノ酸配列に対応し、さらに変異E95Cを含む。予想されるシグナル配列 残基1~25。
配列番号75 - 配列番号18のHCMV Merlin株のpUL130のアミノ酸配列に対応し、さらに変異E95Cを含む。
配列番号76 - 配列番号17のHCMV Merlin株のpUL130のアミノ酸配列に対応し、さらに変異T167Cを含む。予想されるシグナル配列 残基1~25。
配列番号77 - 配列番号18のHCMV Merlin株のpUL130のアミノ酸配列に対応し、さらに変異T167Cを含む。
配列番号78 - 配列番号17のHCMV Merlin株のpUL130のアミノ酸配列に対応し、さらに変異Y204Cを含む。予想されるシグナル配列 残基1~25。
配列番号79 - 配列番号18のHCMV Merlin株のpUL130のアミノ酸配列に対応し、さらに変異Y204Cを含む。
配列番号80 - 配列番号21のHCMV Merlin株のpUL131Aのアミノ酸配列に対応し、さらに変異Y52F及びA67Vを含む。予想されるシグナル配列 残基1~18。
配列番号81 - 配列番号22のHCMV Merlin株のpUL131Aのアミノ酸配列に対応し、さらに変異Y52F及びA67Vを含む。
配列番号82 - 配列番号21のHCMV Merlin株のpUL131Aのアミノ酸配列に対応し、さらに変異S86Fを含む。予想されるシグナル配列 残基1~18。
配列番号83 - 配列番号22のHCMV Merlin株のpUL131Aのアミノ酸配列に対応し、さらに変異S86Fを含む。
【0246】
本明細書において言及されている全ての特許及び刊行物は、明示的に参照により全体として本明細書に組み込まれる。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]1つ以上の変異体ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ポリペプチドを含む複合体であって、前記1つ以上の変異体HCMVポリペプチドが
(a)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
配列番号7に関連して番号付けして残基140に空洞充填変異体を有し、残基150にシステイン(C)を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)及び残基95にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(b)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
配列番号7に関連して番号付けして残基150にシステイン(C)を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)及び残基95にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(c)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
配列番号7に関連して番号付けして残基145に空洞充填変異体を有し、残基150にシステイン(C)を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)及び残基95にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(d)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
配列番号7に関連して番号付けして残基224に空洞充填変異体を有し、残基150にシステイン(C)を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基64にシステイン(C)及び残基95にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(e)配列番号13に関連して番号付けして残基142にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
配列番号7に関連して番号付けして残基224に空洞充填変異体を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基95にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(f)配列番号13に関連して番号付けして残基77に空洞充填変異体を有し、残基103に空洞充填変異体を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号7に関連して番号付けして残基140に空洞充填変異体を有し、残基145に空洞充填変異体を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(g)配列番号13に関連して番号付けして残基77に空洞充填変異体を有し、残基103に空洞充填変異体を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号7に関連して番号付けして残基140に空洞充填変異体を有し、残基145に空洞充填変異体を有し、残基224に空洞充填変異体を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(h)配列番号7に関連して番号付けして残基140に空洞充填変異体を有するgLポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号21に関連して番号付けして残基52にリパッキング疎水性変異体を有し、残基67にリパッキング疎水性変異体を有するpUL131ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、
(i)配列番号21に関連して番号付けして残基86に空洞充填変異体を有するpUL131ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、又は
(j)配列番号13に関連して番号付けして残基83にシステイン(C)を有するpUL128ポリペプチド若しくはその複合体形成断片、及び
配列番号17に関連して番号付けして残基167にシステイン(C)を有するpUL130ポリペプチド若しくはその複合体形成断片
である、複合体。
[実施形態2]配列番号7に関連して番号付けして残基140における前記空洞充填変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はロイシン(L)である、実施形態1に記載の複合体。
[実施形態3]前記空洞充填変異体がフェニルアラニン(F)である、実施形態2に記載の複合体。
[実施形態4]配列番号7に関連して番号付けして残基145における前記空洞充填変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はロイシン(L)である、実施形態1に記載の複合体。
[実施形態5]配列番号7に関連して番号付けして残基145がロイシン(L)である、実施形態4に記載の複合体。
[実施形態6]配列番号7に関連して番号付けして残基224における前記空洞充填変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はロイシン(L)である、実施形態1に記載の複合体。
[実施形態7]配列番号7に関連して番号付けして残基224がバリン(V)である、実施形態6に記載の複合体。
[実施形態8]配列番号13に関連して番号付けして残基77における前記空洞充填変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はロイシン(L)である、実施形態1に記載の複合体。
[実施形態9]配列番号13に関連して番号付けして残基77がイソロイシン(I)である、実施形態8に記載の複合体。
[実施形態10]配列番号13に関連して番号付けして残基103における前記空洞充填変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はロイシン(L)である、実施形態1に記載の複合体。
[実施形態11]配列番号13に関連して番号付けして残基103がイソロイシン(I)である、実施形態10に記載の複合体。
[実施形態12]配列番号21に関連して番号付けして残基52における前記リパッキング疎水性変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、又はプロリン(P)である、実施形態1に記載の複合体。
[実施形態13]配列番号21に関連して番号付けして残基52がフェニルアラニン(F)である、実施形態12に記載の複合体。
[実施形態14]配列番号21に関連して番号付けして残基67における前記リパッキング疎水性変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、システイン(C)、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、又はプロリン(P)である、実施形態1に記載の複合体。
[実施形態15]配列番号21に関連して番号付けして残基67がバリン(V)である、実施形態14に記載の複合体。
[実施形態16]配列番号21に関連して番号付けして残基86における前記空洞充填変異体がトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はロイシン(L)である、実施形態1に記載の複合体。
[実施形態17]配列番号21に関連して番号付けして残基86がフェニルアラニン(F)である、実施形態16に記載の複合体。
[実施形態18]同一条件で対照複合体と比較して増大した熱安定性を有する、実施形態1から17のいずれかに記載の複合体。
[実施形態19]1つ以上の変異体HCMVポリペプチドを含むHCMVペンタマー複合体である、実施形態1から18のいずれかに記載の複合体。
[実施形態20]実施形態1から19のいずれかに記載の複合体及び任意選択で非抗原成分を含む免疫原性組成物。
[実施形態21]実施形態1から19のいずれかに記載の複合体をコードする1つ以上の作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
[実施形態22]実施形態21に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
[実施形態23]実施形態21に記載の単離された核酸分子又は実施形態22に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
[実施形態24]実施形態23に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、複合体を作製する方法。
[実施形態25]ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に対する免疫応答を誘起する方法であって、免疫学的有効量の実施形態20に記載の免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む方法。
[実施形態26]ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の細胞への進入を阻害する方法であって、前記細胞を実施形態1に記載の複合体と接触させるステップを含む方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図7
【配列表】
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