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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】低融点コポリアミド粉末
(51)【国際特許分類】
   C09D 177/02 20060101AFI20241108BHJP
   C09D 177/04 20060101ALI20241108BHJP
   C09D 177/06 20060101ALI20241108BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20241108BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C09D177/02
C09D177/04
C09D177/06
C09D163/00
C09D5/03
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021522413
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 FR2019052522
(87)【国際公開番号】W WO2020084252
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】1859818
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カンタン・ピノー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-イヴ・ロゼ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-シャルル・デュロン
(72)【発明者】
【氏名】赤木 雅子
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表昭55-500236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
C08G 69/00 - 69/50
B05D 1/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にコーティングを形成するためのコポリアミドベースの粉末であって、20℃において測定して0.8(g/100g)-1以上の固有粘度を有し、前記コポリアミドが、160℃以下の融点を有し、かつ
前記コポリアミドが、(i)少なくとも二種のα,ω-アミノカルボン酸、又は二種のラクタム、又は一種のラクタム及び一種のα,ω-アミノカルボン酸の縮合物であるコポリアミド;(ii)少なくとも一種のα,ω-アミノカルボン酸又はラクタム、少なくとも一種の2~36個の炭素原子を有し、飽和環化されていてもよい、脂肪族ジアミン、及び少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸の縮合物であるコポリアミド;並びに、(iii)脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合並びに前記のものとは異なる脂肪族ジアミンから選択される少なくとも一種の他の脂肪族ジアミン及び前記のものとは異なる脂肪族ジカルボン酸の縮合によって生じるコポリアミドからなる群から選択されるコポリアミドである、粉末。
【請求項2】
前記コポリアミドが、コポリアミド6/11、コポリアミド6/12、コポリアミド6.6/11、コポリアミド6.6/12、コポリアミド6.10/11、コポリアミド6/12/11、コポリアミドPip.12/12(Pipはピペラジンを表す)、コポリアミド6/6.6/12、コポリアミド6/Pip.12/12又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
前記コポリアミドが、粉末の総質量に対して、80質量%以上の量で存在する、請求項1又は2に記載の粉末。
【請求項4】
前記コポリアミドの融点より低い融点を有する第二ポリマーも含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項5】
前記第二ポリマーが、第二コポリアミド及び/又はエポキシ樹脂である、請求項4に記載の粉末。
【請求項6】
前記第二ポリマーが、130℃以下の融点を有する、請求項4又は5に記載の粉末。
【請求項7】
前記第二ポリマーが、粉末の総質量に対して、10質量%以下の量で存在する、請求項4~6のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項8】
顔料又は染料、クレーター防止剤又は展着剤、還元剤、酸化防止剤、補強充填剤、UV安定剤、流動化剤、及び腐食防止剤からなる群から選択される1種以上の添加剤も含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項9】
前記添加剤の質量が、粉末の総質量に対して、0~30%である、請求項8に記載の粉末。
【請求項10】
前記コポリアミドが、150℃以下の融点を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項11】
(g/100g)-1単位で0.9以上の固有粘度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項12】
10~400μmの体積中央径Dv50を有するコポリアミドベースの粒子を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の粉末を溶融させる工程及び溶融物からフィルムを形成する工程を含むフィルムを得るための方法。
【請求項14】
表面をコーティングするための、請求項1~12のいずれか一項に記載の粉末の使用であって、前記コーティングが、0.8(g/100g)-1以上の固有粘度を有する、使用。
【請求項15】
前記表面が、任意選択で処理された金属表面である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記コーティングが、100~550μmの厚さを有するフィルムである、請求項14又は15に記載の使用。
【請求項17】
表面をコーティングする方法であって、以下の工程:
- 前記表面を、請求項1~12のいずれか一項に記載の粉末に接触して置く工程;
- 前記粉末を溶融させる工程;を含む、方法。
【請求項18】
前記表面を粉末に接触して置く工程が、以下の工程:
- 前記表面を、コポリアミドの融点より高い温度に加熱する工程;
- 前記表面を、粉末を含む流動層に沈める工程;を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記表面を粉末に接触して置く工程が、以下の工程:
- 粉末を電気的に帯電させる工程;
- 前記表面上に、電気的に帯電した粉末を噴霧する工程;
- 粉末で被覆された前記表面を、コポリアミドの融点より高い温度に加熱する工程;を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記表面を粉末に接触して置く工程が、以下の工程:
- 前記表面をコポリアミドの融点より高い温度に加熱する工程;
- 前記表面上に粉末を噴霧する工程;を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~12のいずれか一項に記載の粉末を溶融させることによって得られるコーティングで被覆された表面を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低融点コポリアミドベースの粉末及び表面をコーティングするためのこれらの粉末の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
金属表面のコーティングは、産業に極めて広く普及しており、とりわけ、動力車及び流体移送区域並びに電気及び電子産業において、様々な幅広い用途がある。
【0003】
ポリアミドは、金属表面又は他の表面のコーティングに一般に使用されている。
【0004】
例えば、EP 0 866 736には、分岐アミンを含むポリアミドから形成された粉末を使用してアルミニウム又は鉄基材をコーティングする方法が記載されている。
【0005】
US 2002/0031614には、熱可塑性又は架橋可能なコポリアミドベースのホット-メルト接着剤でコーティングする方法が記載されている。
【0006】
FR 2304998は、エポキシ化合物をコポリアミドと反応させることによって得られる粉体プラスチックコーティングに関する。
【0007】
N’Negue Mintsaらの“A new UV-curable powder coating based on a α,ω-unsaturated copolyamide 6/11/12”(European Polymer Journal, 2009, vol. 45, pages 2043-2052)の論文及びN’Negue Mintsaの“Production of a polyamide-based “UV powder” coating”(INSA de Rouen, 2008)の論文には、コポリアミド6/11/12及び光開始剤を含むコーティング粉末が記載されている。
【0008】
US 4 172 161には、少なくとも30重量%のラウリルラクタムを含有する粉末のコポリアミドを使用したガラス瓶のコーティングが記載されている。
【0009】
ポリアミドはマスチックにおいても使用されてもよい。
【0010】
US 2015/0024130及びUS 2013/0177704には、電子デバイスをカプセル化するためのコポリアミド樹脂を含む粉末のマスチックが記載されている。
【0011】
コーティング用途において、被覆される表面は、感熱性であってもよい。例えば、表面は、亜鉛-アルミニウム合金などの感熱性の金属からなってもよく、感熱性化学処理を経てもよい。これらの表面の感熱性は、被覆される表面を損傷するかもしれない、高いコーティング塗布温度の使用を不可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】EP 0 866 736
【文献】US 2002/0031614
【文献】FR 2304998
【文献】US 4 172 161
【文献】US 2015/0024130
【文献】US 2013/0177704
【非特許文献】
【0013】
【文献】N’Negue Mintsaらの“A new UV-curable powder coating based on a α,ω-unsaturated copolyamide 6/11/12”(European Polymer Journal, 2009, vol. 45, pages 2043-2052)
【文献】N’Negue Mintsaの“Production of a polyamide-based “UV powder” coating”(INSA de Rouen, 2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、例えば、230℃以下の、比較的低い温度で塗布を可能にして、同時に、良好な機械特性を有するコーティングを形成することができる、特に金属表面をコーティングするための、ポリアミドコーティング粉末を提供する本当のニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、第一に、0.8(g/100g)-1以上の固有粘度を有し、表面にコーティングを形成するためのコポリアミドベースの粉末であって、コポリアミドが160℃以下の融点を有する粉末に関する。
【0016】
実施態様によると、コポリアミドは、コポリアミド6/11、コポリアミド6/12、コポリアミド6.6/11、コポリアミド6.6/12、コポリアミド6.10/11、コポリアミド6/12/11、コポリアミドPip.12/12(Pipはピペラジンを表す)、コポリアミド6/6.6/12、コポリアミド6/Pip.12/12又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
実施態様によると、コポリアミドは、粉末の総質量に対して、80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上の量で存在する。
【0018】
実施態様によると、粉末は、コポリアミドの融点より低い融点を有する第二のポリマーも含む。
【0019】
実施態様によると、第二のポリマーは、第二コポリアミド及び/又はエポキシ樹脂である。
【0020】
実施態様によると、第二のポリマーは、130℃以下の融点を有する。
【0021】
実施態様によると、第二のポリマーは、粉末の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下の量で存在する。
【0022】
実施態様によると、粉末は、顔料又は染料、クレーター防止剤又は展着剤、還元剤、酸化防止剤、補強充填剤、UV安定剤、流動化剤、及び腐食防止剤からなる群から選択される1種以上の添加剤も含む
【0023】
実施態様によると、添加剤の質量は、粉末の総質量に対して、0~30%、好ましくは0~10%、より好ましくは0~5%である。
【0024】
実施態様によると、コポリアミドは、150℃以下の融点、好ましくは145℃以下の融点を有する。
【0025】
実施態様によると、粉末は、(g/100g)-1単位で、0.9以上、好ましくは1以上の固有粘度を有する。
【0026】
実施態様によると、粉末は、10~400μm、好ましくは50~200μmの体積中央径Dv50を有するコポリアミドベースの粒子を含む。
【0027】
本発明は、上記の粉末を溶融させることによって得られてもよいフィルムにも関する。
【0028】
本発明は、表面のコーティングのための上記粉末の使用であって、コーティングが0.8(g/100g)-1以上の固有粘度を有する使用にも関する。
【0029】
実施態様によると、表面は任意選択で処理された金属表面である。
【0030】
実施態様によると、コーティングは、100~550μm、好ましくは200~500μmの厚さを有するフィルムである。
【0031】
本発明は、表面、好ましくは金属表面をコーティングする方法にも関し、以下の工程を含む:
- 表面に上記の粉末を接触させて置く工程;
- 粉末を溶融させる工程。
【0032】
実施態様によると、粉末を表面に接触させて置く工程は以下の工程を含む:
- コポリアミドの融点より高い温度、好ましくはコポリアミドの融点より少なくとも30℃高い温度で表面を加熱する工程;
- 表面を、粉末を含む流動層に沈める工程。
【0033】
実施態様によると、表面を粉末に接触させて置く工程は以下の工程を含む:
- 粉末を電気的に帯電させる工程;
- 電気的に帯電した粉末を表面に噴霧する工程;
- 粉末で被覆された表面をコポリアミドの融点より高い温度、好ましくはコポリアミドの融点より少なくとも30℃高い温度で加熱する工程。
【0034】
実施態様によると、表面を粉末に接触させて置く工程は以下の工程を含む:
- 表面をコポリアミドの融点より高い温度、好ましくはコポリアミドの融点より少なくとも30℃高い温度に加熱する工程;
- 粉末を表面に噴霧する工程。
【0035】
本発明は、上記粉末を溶融させることによって得られてもよいコーティングで被覆された表面を含む物品にも関する。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、上記のニーズを満足することを可能にする。本発明は、より具体的には、比較的低温での塗布(したがって、感熱性の金属表面などの感熱性表面のコーティングに適している)、及び増加した厚さ及び良好な機械特性を有するコーティングの製造の両方を可能にするポリアミド粉末を提供する。
【0037】
これは、0.8(g/100g)-1以上の固有粘度を有する、低融点(すなわち160℃未満)のコポリアミドをベースとする粉末を用いて達成される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、ここから、制限のない方法において、以下の明細書により詳細に記載される。
【0039】
他で示さない限り、すべての量に関するパーセントは、質量パーセントである。
【0040】
本発明において、用語「コポリアミドベースの」は、「1種以上のコポリアミドをベースとする」ことを意味すると理解されるべきである。これは、すべての他の成分(例えば用語「エポキシ樹脂」は「1種以上のエポキシ樹脂」を意味すると理解されるべきである)についてのケースで同様である。
【0041】
粉末
第一の態様によると、本発明は、0.8(g/100g)-1以上の固有粘度を有するコポリアミドベースの粉末であって、コポリアミドが160℃以下の融点を有する粉末に関する。この粉末は、表面にコーティングを形成することを目的とする。
【0042】
融点は、規格ISO11357-3プラスチック-示差走査熱量測定(DSC)パート3によって測定されてもよい。
【0043】
固有粘度は、ウベローデ管を使用して測定される。測定は、20℃で、m-クレゾール中、0.5%(m/m)の濃度で75mgのサンプルに対して行われる。固有粘度は(g/100g)-1の単位で表され、以下の式に位したがって計算される:
固有粘度=ln(t/t)×1/C (C=m/p×100)
ここで、tは溶液の流動時間であり、tは溶媒の流動時間であり、mは粘度が決定されるサンプルの質量であり、pは溶媒の質量である。この測定は25℃に代えて測定温度が20℃である事実を別として、規格ISO307に対応する。
【0044】
用語「コポリアミド」は、少なくとも2種類の異なるモノマーの重合の生成物を意味し:
- アミノ酸又はアミノカルボン酸型のモノマー、好ましくはα,ω-アミノカルボン酸;
- 置換されてもよい、主環に3個から18個の炭素原子を含有するラクタム型のモノマー;
- 2個から36個の炭素原子、好ましくは4個から18個の炭素原子を含有する脂肪族のジアミンと4個から36個の炭素原子、好ましくは4個から18個の炭素原子を含有するカルボン二酸との反応由来の「ジアミン二酸」のモノマー;及び
- それらの混合物(アミノ酸型のモノマーとラクタム型のモノマーの混合物である場合、異なる炭素数を含有するモノマーである);から選択される。
【0045】
本明細書のコポリアミドにおいて、用語「モノマー」は、「繰り返し単位」の意味として理解されるべきである。実際には、ポリアミド(PA)の繰り返し単位が二酸とジアミンの組み合わせからなる場合、特別である。それは、ジアミンと二酸の組み合わせが、すなわち(等モル量での)ジアミン、二酸のペアと言われ、モノマーに対応すると考えられる。これは、個別には、二酸又はジアミンが構造単位のみであり、それ自身で重合されるには十分でないという事実によって説明される。
【0046】
アミノ型のモノマー:
α,ω-アミノ酸の例として、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、N-へプチル-11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸などの4個から18個の炭素原子を含有するものが挙げられる。
【0047】
ラクタム型のモノマー:
ラクタムの例として、置換されてもよい、主環に3個から18個の炭素原子を含有するものが挙げられる。例えば、β,β-ジメチルプロピオラクタム、α,α-ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、ラクタム6としても知られるカプロラクタム、ラクタム8としても知られるカプリルラクタム、オエナントラクタム、及びラクタム12としても知られるラウリルラクタムが挙げられる。
【0048】
「ジアミン二酸」型のモノマー:
ジカルボン酸の例として、4個から36個の炭素原子を含有する酸が挙げられる。例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、イソフタル酸、コハク酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、テレフタル酸、スルホイソフタル酸のナトリウム又はリチウム塩、二量体化脂肪酸(これらの二量体化脂肪酸は、少なくとも98%の二量体含有量を有し、好ましくは水素化されている)及びドデカン二酸 HOOC-(CH10-COOH及びテトラデカン二酸が挙げられる。
【0049】
用語「脂肪酸二量体」又は「二量体化脂肪酸」はより具体的には、脂肪酸(通常、18個の炭素原子を含有する、しばしばオレイン酸及び/又はリノレン酸の混合物である)の二量体化反応の生成物を意味する。好ましくは、0~15%のC18の一酸(monoacid)、60%~99%のC36の二酸、及び0.2%~35%の三酸(triacid)又はC54以上のポリ酸(polyacid)を含む混合物である。
【0050】
ジアミンの例として、2個から36個の炭素原子、好ましくは4個から18個の炭素原子を含有し、アリール化及び/又は飽和環化されていてもよい、脂肪族ジアミンが挙げられる。挙げられる例は、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン(Pipと略される)、アミノエチレンピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ジアミンポリオール、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタメチレンジアミン(MPMD)、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、メタ-キシレンジアミン及びビス-p-アミノシクロヘキシルメタンを含む。
【0051】
ジアミン二酸の例として、1,6-ヘキサメチレンジアミンと6個から36個の炭素原子を含有する二酸との縮合由来のジアミン二酸及び1,10-デカメチレンジアミンと6個から36個の炭素原子を含有する二酸との縮合由来のジアミン二酸がより具体的に挙げられる。
【0052】
「ジアミン二酸」型のモノマーの例として、特に:6.6、6.10、6.11、6.12、6.14、6.18:のモノマーが挙げられてもよい。デカンジアミンとC6~C36の二酸との縮合由来のモノマー、特に:10.10、10.12、10.14、10.18:のモノマーが挙げられる。数字の表記X.Yにおいて、従来通り、Xはジアミン残基由来の炭素原子の数を表し、Yは二酸残基由来の炭素原子の数を表す。
【0053】
コポリアミドは好ましくは、以下のモノマー:4.6、4.T、5.6、5.9、5.10、5.12、5.13、5.14、5.16、5.18、5.36、6、6.6、6.9、6.10、6.12、6.13、6.14、6.16、6.18、6.36、6.T、9、10.6、10.9、10.10、10.12、10.13、10.14、10.16、10.18、10.36、10.T、11、12、12.6、12.9、12.10、12.12、12.13、12.14、12.16、12.18、12.36、12.Tの少なくとも一つ及びそれらの混合物を含む。
【0054】
上記様々な種類のモノマーから生成されるコポリアミドの例として、少なくとも二種のα,ω-アミノカルボン酸、又は二種のラクタム、又は一種のラクタム及び一種のα,ω-アミノカルボン酸の縮合物に由来するコポリアミドが挙げられる。また、少なくとも一種のα,ω-アミノカルボン酸(又はラクタム)、少なくとも一種のジアミン及び少なくとも一種のジカルボン酸の縮合物に由来するコポリアミドも挙げられる。また、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合物並びに前記のものとは異なる脂肪族ジアミンから選択される少なくとも一種の他のモノマー及び前記のものとは異なる脂肪族二酸の縮合物に由来するコポリアミドも挙げられる。
【0055】
特に有利な方法では、本発明によるコポリアミドは、コポリアミド6/11、コポリアミド6/12、コポリアミド6.6/11、コポリアミド6.6/12、コポリアミド6.10/11、コポリアミド6/12/11、コポリアミドPip.12/12、コポリアミド6/6.6/12、コポリアミド6/Pip.12/12またはそれらの組み合わせである。
【0056】
数字の表記Xにおいて、Xは、アミノ酸又はラクタム残基由来の炭素原子の数を表す。数字の表記X/Y、ポリアミド(PA) Z.Z’/Y等は、X、Y、Z.Z’等が上記のホモポリアミド単位を表すコポリアミドに関する。
【0057】
用語「コポリアミドベース」は、粉末が少なくとも50質量%のコポリアミドを含むことを意味する。しかしながら、実施態様において、粉末は、55質量%以上、又は60質量%以上、又は65質量%以上、又は70質量%以上、又は75質量%以上、又は80質量%以上、又は85質量%以上、又は90質量%以上、又は95質量%以上、又は98質量%以上、又は99質量%以上、又は99.5質量%以上の量のコポリアミドを含む。
【0058】
本発明によるコポリアミドは、160℃以下の融点を有する。好ましくは、コポリアミドは、150℃以下、より好ましくは145℃以下の融点を有する。コポリアミドは、また、155℃以下、又は140℃以下、又は135℃以下、又は130℃以下、又は125℃以下の融点を有していてもよい。
【0059】
本発明による粉末は、0.8以上の固有粘度を有する。有利には、0.9以上、より好ましくは1以上の固有粘度を有する。特定の実施態様において、粉末は、0.85以上、又は0.95以上、又は1.05以上、又は1.1以上、又は1.15以上、又は1.2以上、又は1.25以上、又は1.3以上の固有粘度を有する。前記において、固有粘度は、(g/100g)-1の単位で表される。
【0060】
好ましくは、粉末のコポリアミドベースの粒子の体積中央径Dv50は、10~400μm、より好ましくは50~200μmである。本発明の粉末のコポリアミドベースの粒子のDv50は、10~50μm、又は50~100μm、又は100~150μm、又は150~200μm、200~250μm、250~300μm、300~350μm、350~400μmであってもよい。
【0061】
Dv50は累積粒子径分布の(体積で)50番目の百分位数の粒子径に対応する。それは、レーザー粒子径分析によって決定されてもよい。
【0062】
粉末は、また、160℃以下の融点を有するコポリマー以外には、コポリアミドの融点より低い融点を有する第二のポリマーを含んでもよい。
【0063】
第二のポリマーの存在は、コーティングの適用の間に、粉末のより良い熱伝導を可能にし、粉末粒子の溶融を改善してもよい。具体的には、第二のポリマーの粒子は、コーティングプロセス中に、コポリアミドの粒子の前に溶解することが可能である。第二の溶融したポリマーは、その後、コポリアミドの粒子の凝集を可能にし、それらの溶融を向上させるだろう。これは、第二のポリマーを含まない粉末で得られるコーティングと比較する場合に、増加した厚さのコーティングを得ることを可能にしてもよい。加えて、特に、金属表面の場合に、第二のポリマーの存在は、表面へのコーティングの接着を向上させることを可能にしてもよく、申し分のない外観を有するコーティングの製造に役に立ってもよい。
【0064】
第二のポリマーは、上述のコポリアミドなどの第二のコポリアミドであってもよい。特に第二のコポリアミドは、コポリアミド6/6.6/11/12、コポリアミド6/11、コポリアミド6/12、コポリアミド6.6/11、コポリアミド6.6/12、コポリアミド6.10/11、コポリアミド6/12/11、コポリアミドPip.12/12、コポリアミド6/6.6/12、コポリアミド6/Pip.12/12またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0065】
第二のポリマーは、また、エポキシ樹脂であってもよい。本発明に使用されてもよいエポキシ樹脂の例は、スルホンアミド樹脂である。本発明に使用されてもよいエポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエステル、ノボラック樹脂グリシジルエーテル、ノボラッククレゾールエポキシ樹脂、ノボラックフェノール性エポキシ樹脂、ノボラックアルキルフェノール性エポキシ樹脂、エポキシアクリル樹脂、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールADジグリシジルエーテル、プロピレングリコール又はペンタエリスリトールなどのポリオールのジグリシジルエーテル、脂肪族又は芳香族のカルボン酸とエピクロロヒドリンとの反応により得られたエポキシ樹脂、脂肪族又は芳香族アミンとエピクロロヒドリンとの反応により得られたエポキシ樹脂、ヘテロ環状エポキシ樹脂、スピロ核を含有するエポキシ樹脂、及びエポキシ基を含有する変性樹脂も挙げられる。上記エポキシ樹脂は単独又は組み合わせて使用されてもよい。
【0066】
第二のポリマーは、これらのエポキシ樹脂の混合物であってもよい。
【0067】
第二のポリマーは、155℃以下、又は150℃以下、又は145℃以下、又は、140℃以下、又は135℃以下、又は130℃以下、又は125℃以下、又は120℃以下、又は115℃以下、又は110℃以下の融点を有してもよい。好ましくは、第二ポリマーは、130℃以下の融点を有する。
【0068】
好ましくは、第二ポリマーは、粉末の総質量に対して、10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の量で存在する。例えば、第二のポリマーは、粉末の総質量に対して、質量で0~1%、又は1%~2%、又は2%~3%、又は3%~4%、又は4%~5%、又は5%~6%、又は6%~7%、又は7%~8%、又は8%~9%、又は9%~10%の範囲に存在してもよい。
【0069】
本発明による粉末は、顔料又は染料、クレーター防止剤又は展着剤、還元剤、酸化防止剤、補強充填剤、UV安定剤、流動化剤、腐食防止剤又はそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の添加剤も含んでもよい。これらの添加剤は、好ましくは、粉末の総質量に対して、0~30%、より好ましくは0~10%、更により好ましくは0~5%、例えば、0~5%、又は5%~10%、又は10%~15%、又は15%~20%、又は20%~25%、又は25%~30%の質量で存在する。
【0070】
補強充填剤は、ポリアミドベースの粉末を調整するのに適切な任意の種類のものであってもよい。しかしながら、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、ケイ酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、ドロマイト、炭酸マグネシウム、石英、窒化ホウ素、カオリン、珪灰石、二酸化チタン、ガラスビーズ、マイカ、カーボンブラック、石英、マイカ及び緑泥石の混合物、長石、及びカーボンナノチューブ及びシリカなどの分散したナノメートル充填剤からなる群から選択される充填剤が好ましい。特に好ましい方法において、充填剤は炭酸カルシウムである。
【0071】
顔料は、当業者に知られる任意の種類のものであってよい。好ましくは、顔料は、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化コバルト、チタン酸ニッケル、二硫化モリブデン、アルミニウムフレーク、酸化鉄、酸化亜鉛、フタロシアニン及びアントラキノン誘導体などの有機顔料、及びリン酸亜鉛からなる群から選択される。
【0072】
染料は、当業者に知られる任意の種類のものであってよい。好ましくは、本発明による染料は、アゾ染料、アントラキノン染料、インディゴベースの染料、トリアリールメタン染料、塩素染料、及びポリメチン染料からなる群から選択される。
【0073】
クレーター防止剤及び/又は展着剤は、当業者に知られる任意の種類のものであってよい。好ましくは、クレーター防止剤及び/又は展着剤は、ポリアクリレート誘導体からなる群から選択される。
【0074】
UV安定剤は、当業者に知られる任意の種類のものであってよい。好ましくは、UV安定剤は、レゾルシノール誘導体、ベンゾトリアゾール、フェニルトリアジン及びサリチレートからなる群から選択される。
【0075】
酸化防止剤は、当業者に知られる任意の種類のものであってよい。好ましくは、酸化防止剤は、ヨウ化カリウムと組み合わせたヨウ化銅、フェノール誘導体及びヒンダードアミンからなる群から選択される。
【0076】
流動化剤は、当業者に知られる任意の種類のものであってよい。好ましくは、流動化剤は、アルミナ及びシリカからなる群から選択される。
【0077】
腐食防止剤は、当業者に知られる任意の種類のものであってよい。好ましくは、腐食防止剤は、リンケイ酸塩及びホウケイ酸塩からなる群から選択される。
【0078】
実施態様において、本発明による粉末は、コポリアミド、任意選択で第二ポリマー、及び任意選択で1種以上の上記添加剤から本質的になる又はからなる。
【0079】
本発明は、また、上記の粉末の溶融によって得られてもよいフィルムにも関する。好ましくは、フィルムは、100~550μm、より好ましくは、200~500μmの厚さを有する。実施態様において、フィルムは、100~150μm、又は150~200μm、又は200~250μm、又は250~300μm、又は300~350μm、又は350~400μm、又は400~450μm、又は450~500μm、又は500~550μmの厚さを有する。
【0080】
粉末を製造する方法
本発明による粉末は、溶融状態で、特に混合機中で、構成要素(すなわち、160℃以下の融点を有するコポリアミド並びにコポリアミドの融点より低い融点を有する第二のポリマー、顔料又は染料、クレーター防止剤又は展着剤、還元剤、酸化防止剤、補強充填剤、UV安定剤、流動化剤及び腐食防止剤などの他の任意の構成要素)の混合によって調製されてもよい。粉末がコポリアミドのみを含む場合、前記コポリアミドは溶融される。混合物(又はコポリアミド単独)はその後、凝固させられた後、製粉される。
【0081】
別法として、例えば、ポリマーの構成要素(160℃以下の融点を有するコポリアミドを含む)構成要素のいくつかのみでは、溶融混合され、その後凝固の後に製粉される。得られた粒子は、その後粉末形態で他の構成要素、例えば顔料、と乾燥-混合される。
【0082】
好ましくは、溶融混合の工程の温度は150℃~300℃であり、より好ましくは180℃~270℃である。
【0083】
製粉工程は、任意の方法によって行われてもよい。好ましくは、製粉は、ハンマーミル、ナイフミル、ディスクミル、エアー-ジェットミル、及び低温ミルからなる群から選択される。
【0084】
精製方法は、また、所望の粒子径を有する粉末粒子を選別する工程を含んでもよい。
【0085】
表面のコーティングへの使用
別の態様によると、本発明は、表面をコーティングするための上記粉末の使用に関する。表面は、全面又は一部被覆されてもよい。本発明によると、コーティングは、0.8(g/100)-1以上の固有粘度を有する。固有粘度は、上記のとおり決定される。コーティングの固有粘度は、粉末の固有粘度とは異なってもよい。特に、コーティングの固有粘度は、1以上の高分子量化反応が、コーティングの塗布の間に、多少行われ得る又は再開され得るという事実により、粉末の固有粘度より高くてもよい。
【0086】
表面のコーティングのための本発明による粉末の使用は、マスチックまたは接着剤としての使用とは異なる。具体的には、塗布の後、コーティングは、本質的に変形しない固体層をしばしば形成する。さらに、コーティングは、二つの基材同士を接着させることに使用されない。
【0087】
表面は、好ましくは金属表面である、用語「金属表面」は、1種以上の金属を含む、本質的にからなる、又はからなる表面を意味する。
【0088】
金属表面は、任意の種類のものであってよい。好ましくは、金属表面は、通常の又は亜鉛メッキされた鋼鉄部品、アルミニウム部品、又はアルミニウム合金部品からなる群から選択された一部の表面である。
【0089】
表面、好ましくは金属表面、より好ましくは通常の鋼鉄、アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面は、当業者によく知られる1以上の表面処理を行うことができ、好ましくは、粗い脱脂、アルカリ脱脂、ブラッシング、ショット-ブラスティング又はサンドブラスティング、細かい脱脂、温すすぎ(hot rinsing)、リン酸脱脂、鉄/亜鉛/トリ-カチオンリン酸塩処理、クロメート処理、冷すすぎ(cold rinsing)、及びクロムすすぎからなる群から選択される。従って、粉末は、処理又は未処理の金属表面をコーティングするために使用されてもよい。
【0090】
本発明は、特に、感熱性表面、特に感熱性金属表面のコーティングに有利である。本発明の目的のための、用語「感熱」は、「250℃より高い温度の塗布によって十分に機能を果たしにくい」ことを意味する。そのような表面は、例えば、亜鉛及びアルミニウムの合金を含む表面である。それらは、また、感熱性処理を経た表面であってもよい。本発明は、250℃より低い温度の塗布によって、機能を果たしにくい表面のコーティングを可能にし、例えば、本発明は、230℃より高い温度の塗布によって機能を果たしにくい表面のコーティングを可能にしてもよい。
【0091】
有利には、被覆される目的の表面は、滑らか又はショットブラスト脱脂鋼鉄、リン酸脱脂鋼鉄、鉄又は亜鉛リン酸鋼鉄、ゼンジミア亜鉛メッキ鋼鉄、電気-亜鉛メッキ鋼鉄、バス-亜鉛メッキ鋼鉄、電気泳動-処理鋼鉄、クロメート鋼鉄、陽極酸化鋼鉄、コランダムサンドブラスト鋼鉄、脱脂アルミニウム、滑らか又はショットブラストアルミニウム、クロメートアルミニウム、鋳鉄及びその他の金属合金からなる群から選択される。
【0092】
特定の実施態様において、コーティングは、0.85以上、又は0.9以上、又は0.95以上、又は1.05以上、又は1以上、又は1.1以上、又は1.15以上、又は1.2以上、又は1.25以上、又は1.3以上の固有粘度を有する。前記において、固有粘度は(g/100g)-1の単位で表される。
【0093】
好ましくは、コーティングは、100~500μm、より好ましくは200~500μmの厚さを有するフィルムである。実施態様において、フィルムは100~150μm、又は150~200μm、又は200~250μm、又は250~300μm、又は300~350μm、又は350~400μm、又は400~450μm、又は450~500μm、又は500~550μmの厚さを有する。
【0094】
本発明の主題は、また、以下の工程を含む、表面をコーティングするための方法でもある:
- 上記の粉末を表面に接触させて置く工程;
- 粉末を溶融させる工程。
【0095】
粉末は、当業者によく知られる多くのコーティング技術によって表面上に塗布される、又は表面と接触させて置かれてもよい。好ましくは、本発明によるコーティングは、流動層に沈める工程、静電噴霧工程及び温かい粉化(hot dusting)工程からなる群から選択される方法によって行われる。
【0096】
コーティングは、特に、流動層に沈める工程によって行われてもよい。したがって、表面を粉末に接触して置く工程は、以下の工程を含んでもよい:
- 表面をコポリアミドの融点より高い温度に加熱する工程;
- 表面を粉末を含む流動層に沈める工程。
【0097】
被覆された表面は、本発明による粉末の溶融を可能にする温度に予熱される。表面はその後、本発明による粉末を含む流動層に沈められる。粉末は表面に接触して溶融し、その上にコーティングを形成する。被覆された表面は、その後、好ましくは、例えば、周囲の空気中で冷却される。
【0098】
好ましくは、組成物の流動化のための流動化エアーは、冷たく、清潔で、オイルを含まない。
【0099】
好ましくは、表面の加熱温度は、250℃以下、より好ましくは230℃以下である。したがって、表面加熱温度は、150~250℃、好ましくは170℃~230℃であってもよい。
【0100】
また、好ましくは、表面の加熱は、コポリアミドの融点より少なくとも30℃高く、より好ましくはコポリアミドの融点より30~120℃高い温度で行われる。
【0101】
好ましくは、流動層中に表面を沈める継続時間は、1~10秒、より好ましくは3~7秒である。流動層中へ表面を沈める工程は、1回以上(各浸漬は好ましくは1~10秒、より好ましくは3~7秒の継続時間を有する)行われてもよい。
【0102】
別法として、コーティングは、静電噴霧によって行われてもよい。そして、表面を粉末に接触させて置く工程は、以下の工程を含んでもよい:
- 粉末を電気的に帯電させる工程;
- 表面上に、電気的に帯電した粉末を噴霧する工程;
- 粉末で被覆された表面を、コポリアミドの融点より高い温度に加熱する工程。
【0103】
静電噴霧工程によるコーティングは、表面上に、特に室温で、静電気的に帯電した粉末粒子を堆積させる工程からなる。粉末は、噴霧装置のノズルを通じたその通過の間に静電気的に帯電されてもよい。したがって帯電された組成物は、その後、ゼロ電位に接続された、被覆された表面を含む物品上に噴霧され得る。被覆された物品は、その後組成物の溶融を可能にする温度で、オーブン中に置かれ得る。
【0104】
粉末噴霧装置は任意の種類のものであってよい。好ましくは、ノズルが、負又は正の極性の約10~100kvの高電位にされる。このマイクは、粉末噴霧装置は、コロナ効果及び/又は摩擦電化によって粉末を智電する静電ガンである。
【0105】
好ましくは、噴霧装置中の粉末流速度は、10~200g/分、より好ましくは50~120g/分である。
【0106】
好ましくは、粉末の静電塗布の温度は15℃~25℃である。
【0107】
好ましくは、オーブン中に表面を置いておく時間は3~15分である。
【0108】
有利には、粉末で被覆された表面の加熱温度は、250℃以下、より好ましくは230℃以下であってもよい。したがって、表面加熱温度は150から250℃、好ましくは170~230℃であってもよい。
【0109】
粉末で被覆された表面の加熱温度は、好ましくはコポリアミドの融点より少なくとも30℃高く、より好ましくはコポリアミドの融点より30~60℃高くてもよい。
【0110】
表面はその後、例えば室温まで冷却される。
【0111】
他の実施態様において、コーティングは、温かい粉化によって行われる。粉末を表面に接触して置く工程は以下の工程を含む:
- 表面をコポリアミドの融点より高い温度に加熱する工程;
- 粉末を表面上に噴霧する工程。
【0112】
表面加熱温度は、流動層に沈めることによるコーティングと関連して上記のとおりであってもよい。特に、好ましくは、コポリアミドの融点より少なくとも30℃、より好ましくはコポリアミドの融点より30~120℃高い。
【0113】
その後表面は、例えば室温に冷却されてもよい。噴霧された粉末は、静電気的に帯電してもよい又はしていなくてもよい。
【0114】
表面をコーティングするための粉末の使用と関連した上記の特性(特に、表面、コーティングの固有粘度及びコーティングフィルムの厚さに関する)は、コーティング方法に同じ方法で適用されてもよい。
【0115】
別の態様によると、本発明は、上記の粉末を溶融させて得られてもよいコーティングで被覆された表面を含む物品に関する。
【0116】
この物品は、好ましくは:
- 特に配管、付属品、ポンプ又はバルブの形態の流体の移送
- 特にスプラインシャフト、スライドドアレール又はバネの形態の動力車
- 特に皿洗いバスケット又はバネの形態の針金細工:の物品を対象とする。
【実施例
【0117】
以下の実施例は、限定することなく本発明を説明する。
【0118】
コポリアミド粉末の合成
出発材料(すなわちコポリアミド)を14Lのオートクレーブに、水、酸化防止剤(Irganox 1098)及びリン酸と共に導入した。媒体を、連続して4回、真空下及び窒素導入することによって不活性の状態にした。媒体をその後、280℃の温度で3時間、自己生成の圧力下で撹拌、加熱した。大気圧への減圧を、その後、2時間の傾斜で適用し、温度がだんだんと230℃に下がった。媒体を、その後、窒素を勢いよく流しながら撹拌し、所望の撹拌トルクに達するまで粘度を増大させた。媒体が、その後、棒状のダイを通じて水浴に移され、その後造粒機に入った。
【0119】
顆粒をその後粉末形態に冷凍ミルした。Dv50は100μmである。
【0120】
組成物の調製(コーティング粉末)
以下の組成物を、以下の表に記載された量(部で示される)で成分の乾燥混合によって調製した:
【表1】
【0121】
【表2】
Pip=ピペラジン
【0122】
使用したポリアミドは、以下の融点及び固有粘度を有する:
【表3】
【0123】
コーティングの処方及び特性
コーティングを、上記様々な組成物(粉末)を流動層に沈めることによって金属上に堆積させた。
【0124】
流動層中に沈めることによるコーティングの塗布のパラメーターは以下のとおりである:
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
コーティングの厚さ、外観、(20°及び60°の角度での)光沢、固有粘度及び機械特性(破壊応力、降伏点及び破壊時の伸長)を決定した。
【0127】
固有粘度を上記のとおりに測定した。光沢を規格ISO 2813によって測定した。破壊応力、降伏点及び破壊時の伸長を規格ISO 527-3によって測定した。
【0128】
結果を下記表に並べた。
【表6】
【0129】
【表7】
ND=決定されない
【0130】
組成物11及び12が比較例に相当する。
【0131】
コーティングの固有粘度が0.8(g/100g)-1未満の場合、得られたコーティングフィルムが脆く、良好な機械特性を有しないことが判明した。また、コーティング粉末が比較的高い融点(186℃)を有するポリアミド粉末である場合、低温(230℃)でコーティングの塗布は不可能であることが判明した。