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特許7584408遺伝性障害のための遺伝子発現を改変するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】遺伝性障害のための遺伝子発現を改変するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/90 20060101AFI20241108BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C12N15/90 Z ZNA
C12N15/90 104Z
C12N15/09 110
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021523850
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 US2019058857
(87)【国際公開番号】W WO2020092557
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】62/754,548
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/755,755
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/756,175
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/799,615
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521162883
【氏名又は名称】ブルーアレル, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バルテス, ニコラス
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/203275(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入遺伝子と、内因性遺伝子内の部位を標的とする少なくとも1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼとを含む、前記導入遺伝子を前記内因性遺伝子に組み込むための組み合わせ物であって、
前記導入遺伝子が、
i.第1および第2のスプライスドナー配列、
ii.第1および第2の部分コード配列、ならびに
iii.第1および第2のプロモーター、
を含み、
前記導入遺伝子が、前記内因性遺伝子内に組み込まれ、
前記第1のスプライスドナー配列が、前記第1の部分コード配列に作動可能に連結されており、前記第2のスプライスドナー配列が、前記第2の部分コード配列に作動可能に連結されており、
前記第1の部分コード配列が、前記第1のプロモーターに作動可能に連結されており、前記第2の部分コード配列が、前記第2のプロモーターに作動可能に連結されており、
前記第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2の部分コード配列、ならびに第1および第2のプロモーターが、頭対頭(head-to-head)配向で配向されている、組み合わせ物。
【請求項2】
前記導入遺伝子が、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼの第1および第2の標的部位をさらに含み、前記標的部位が、前記第1および第2のスプライスドナー配列に隣接する、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項3】
前記導入遺伝子が、前記第1および第2のスプライスドナー配列に隣接する第1および第2の相同アームをさらに含む、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
前記導入遺伝子が、アデノ随伴ウイルスベクター内に保有される、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
前記導入遺伝子が、前記内因性遺伝子のイントロン内、またはエキソン-イントロン接合部に組み込まれる、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項6】
前記導入遺伝子が、ATXN2遺伝子もしくはSNCA遺伝子のイントロン内、またはエキソン-イントロン接合部に組み込まれる、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項7】
前記導入遺伝子が、非病原性ATXN2遺伝子のエキソン1によって産生されるペプチドをコードする第1および第2の部分コード配列を含む、請求項に記載の組み合わせ物。
【請求項8】
前記導入遺伝子が、非病原性SNCA遺伝子のエキソン2によって産生されるペプチドをコードする第1および第2の部分コード配列を含む、請求項に記載の組み合わせ物。
【請求項9】
前記ヌクレアーゼが、CRISPR/Cas12aヌクレアーゼ、またはCRISPR/Cas9ヌクレアーゼである、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項10】
前記第1および第2の部分コード配列が、同じアミノ酸配列をコードする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項11】
前記第1および第2の部分コード配列が、核酸配列において異なるが、同じアミノ酸配列をコードする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項12】
前記導入遺伝子が、ベクターに保有され、前記ベクターの形式が、二本鎖直鎖DNA、二本鎖環状DNA、またはウイルスベクターから選択される、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項13】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターから選択される、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項14】
前記導入遺伝子が、4.7kb以下である、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項15】
前記内因性遺伝子が、前記部分コード配列の野生型遺伝子である、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項16】
前記内因性遺伝子が、異常または病原性であり、前記部分コード配列が、前記内因性遺伝子の機能性バージョンから産生される部分タンパク質をコードする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項17】
前記第1および第2の部分コード配列が、対応する前記内因性遺伝子と比較して、核酸配列において異なる、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項18】
前記内因性遺伝子が、SOD1、TRPV4、CHRNA1、CHRND、CHRNE、CHRNB1、PRPS1、LRRK2、STIM1、FGFR3、MECP2、SNCA、ATXN1、ATXN2、ATXN3、CACNA1A、ATXN7、TBP、HTT、AR、FXN、DMPK、PABPN1、ATXN8、RHO、またはC9orf72から選択される、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項19】
前記導入遺伝子が、第1および第2のターミネーターをさらに含む、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項20】
導入遺伝子を含む、前記導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込むための組成物であって、
前記導入遺伝子が、
i.第1および第2のスプライスドナー配列、
ii.第1および第2の部分コード配列、ならびに
iii.第1および第2のプロモーター、を含み、
前記組成物は、前記内因性遺伝子内の部位を標的とする少なくとも1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼと組み合わせて投与されることを特徴とし、
前記導入遺伝子が、前記内因性遺伝子内に組み込まれ、
前記第1のスプライスドナー配列が、前記第1の部分コード配列に作動可能に連結されており、前記第2のスプライスドナー配列が、前記第2の部分コード配列に作動可能に連結されており、
前記第1の部分コード配列が、前記第1のプロモーターに作動可能に連結されており、前記第2の部分コード配列が、前記第2のプロモーターに作動可能に連結されており、
前記第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2の部分コード配列、ならびに第1および第2のプロモーターが、頭対頭配向で配向されている、組成物。
【請求項21】
内因性遺伝子内の部位を標的とする少なくとも1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼを含む、導入遺伝子を前記内因性遺伝子に組み込むための組成物であって、
前記導入遺伝子が、
i.第1および第2のスプライスドナー配列、
ii.第1および第2の部分コード配列、ならびに
iii.第1および第2のプロモーター、を含み、
前記組成物は、前記導入遺伝子と組み合わせて投与されることを特徴とし、
前記導入遺伝子が、前記内因性遺伝子内に組み込まれ、
前記第1のスプライスドナー配列が、前記第1の部分コード配列に作動可能に連結されており、前記第2のスプライスドナー配列が、前記第2の部分コード配列に作動可能に連結されており、
前記第1の部分コード配列が、前記第1のプロモーターに作動可能に連結されており、前記第2の部分コード配列が、前記第2のプロモーターに作動可能に連結されており、
前記第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2の部分コード配列、ならびに第1および第2のプロモーターが、頭対頭配向で配向されている、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、先の出願および同時係属出願である2018年11月1日に出願されたUSSN62/754,548、2018年11月5日に出願されたUSSN62/755,755、2018年11月6日に出願されたUSSN62/756,175、および2019年1月31日に出願されたUSSN62/799,615に対する優先権を主張し、これらの各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に援用される。当該ASCIIコピーは、2019年10月29日に作成されたSEQ_LISTING_BA2018-5_P12988という名前で、507,904バイトのサイズである。
【0003】
本文書は、ゲノム編集および遺伝子治療の分野である。より具体的には、本文書は、内因性遺伝子の標的化修飾、または導入遺伝子からの遺伝子発現と共に内因性遺伝子発現の低減に関する。
【背景技術】
【0004】
単一遺伝子障害(monogenic disorder)は、その例としては鎌状赤血球症(ヘモグロビン-β遺伝子)、嚢胞性線維症(嚢胞性線維症膜貫通伝導調節因子遺伝子)、およびテイ・サックス病(β-ヘキソサミニダーゼA遺伝子)が挙げられる、単一の遺伝子における1つ以上の変異によって引き起こされる。単一遺伝子障害は、欠陥遺伝子を機能性コピーで置き換えることが治療上の利益をもたらす可能性があるため、遺伝子治療に対する関心が高まってきた。しかしながら、効果的な療法を生み出す上での1つの妨げとしては、遺伝子の機能性コピーのサイズが挙げられる。ウイルスを使用するものを含む多くの送達方法には、サイズ制限があり、大きな導入遺伝子の送達を妨げる。さらに、多くの遺伝子は、複数のタンパク質をコードする単一の遺伝子をもたらす、選択的スプライシングパターンを有する。欠陥遺伝子の領域を修正する方法は、単一遺伝子障害を治療するための追加の手段を提供し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
遺伝子編集は、遺伝性障害に見出される変異を修正するために有望であるが、機能獲得変異によって引き起こされるもの、または正確な修復が必要な場合を含む、個々の障害に対する効果的な療法を創出する上で多くの課題が残されている。これらの課題は、脊髄小脳失調症2およびパーキンソン病などの障害で見られ、この障害は、機能獲得変異と関連付けられる。
【0006】
一態様では、本明細書に記載の方法は、機能獲得障害を治療するための新規なアプローチを提供し、病原性アレル(複数可)および非病原性アレル(複数可)がサイレンシングされ、タンパク質発現がサイレンシング耐性のコード配列を使用して置き換えられる。これらの方法は、1つ以上のアイソフォームを産生する遺伝子に対して使用することができる。一実施形態では、レアカッティング(rare-cutting)エンドヌクレアーゼまたはトランスポゾンを使用して、サイレンシング配列およびサイレンシング耐性の完全または部分コード配列を含む導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込むことができる(図12~17)。導入遺伝子がサイレンシング耐性部分コード配列を含む場合、導入遺伝子は、部分コード配列に作動可能に連結されたスプライスアクセプターまたはスプライスドナーをさらに含むことができる。導入遺伝子は、(遺伝子の5’領域を標的とする場合)サイレンシング耐性コード配列に作動可能に連結されたプロモーター、または(遺伝子の3’領域を標的とする場合)サイレンシング耐性コード配列に作動可能に連結されたターミネーターをさらに含むことができる。機能獲得変異は、HD(ハンチントン病)、SBMA(球脊髄性筋萎縮症)、SCA1(脊髄小脳失調症1型)、SCA2(脊髄小脳失調症2型)、SCA3(脊髄小脳失調症3型またはマシャド・ジョセフ病)、SCA6(脊髄小脳失調症6型)、SCA7(脊髄小脳失調症7型)、脆弱X症候群、脆弱XE精神遅滞、フリードライヒ運動失調症、筋強直性ジストロフィー1型、筋強直性ジストロフィー2型、脊髄小脳失調症8型、脊髄小脳失調症12型、球脊髄性筋萎縮症、JPH3、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、遺伝性運動性感覚性ニューロパチーIIC型、シナプス後スローチャネル先天性筋無力症候群、PRPS1過活動性、パーキンソン病、細管集合体ミオパチー、軟骨無形成症、ルブスX連鎖精神遅滞症候群、ならびに常染色体優性網膜色素変性症からなる群から選択される疾患をもたらす変異であり得る。
【0007】
別の態様では、本明細書に記載の方法は、遺伝子の5’末端で見出される変異を修正するための新規なアプローチを提供する。本方法は、部分的に、複数の修復経路を通した組み込みと互換性のある、バイモジュール(bimodule)の双方向導入遺伝子の設計に基づく。本明細書に記載の導入遺伝子は、相同組換え(homologous recombination、HR)経路、非相同末端結合(non-homologous end joining、NHEJ)経路、または相同組換えと非相同末端結合経路との両方によって、あるいは転位(transposition)を通して、遺伝子に組み込むことができる。さらに、任意の場合における組み込みの結果(HR、NHEJフォワード、NHEJリバース、フォワード転位、またはリバース転位)は、標的遺伝子のタンパク質産物の正確な修正(correction)/改変をもたらし得る。本明細書に記載の導入遺伝子を使用して、目的の遺伝子の5’領域の変異を修正(fix)または導入することができる。これらの方法は、遺伝子の正確な編集が必要な場合、または標的とされる変異した内因性遺伝子が、標準的なベクターまたはウイルスベクターのサイズ容量を超えているために合成コピーによって「置き換える」ことができない場合に、特に有用である。本明細書に記載の方法は、応用研究(例えば、遺伝子治療)または基礎研究(例えば、動物モデルの創出、または遺伝子機能の理解)のために使用することができる。
【0008】
本明細書に記載の方法は、現在のインビボ送達ビヒクル(例えば、アデノ随伴ウイルスベクターおよび脂質ナノ粒子)と適合性があり、遺伝子産物(特に、機能獲得変異を有するもの、および複数のアイソフォームを産生するもの)の正確な改変を達成することで、いくつかの課題に対処する。
【0009】
一実施形態では、本文書は、導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込むための方法を特徴とする。本方法は、導入遺伝子の送達を含むことができ、導入遺伝子は、第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2のコード配列、ならびに1つの双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーターを保有する(図1)。別の態様では、導入遺伝子は、第1および第2のターミネーターも含み得る。一部の実施形態では、第1および第2のターミネーターは、単一の双方向ターミネーターで置き換えることができる。本方法は、内因性遺伝子内の部位を標的とするレアカッティングエンドヌクレアーゼを投与することをさらに含む。本方法の結果、導入遺伝子が内因性遺伝子と組み込まれ、配向(例えば、フォワードまたはリバース)に関係なく、組み込みは、内因性遺伝子から産生されるタンパク質のアミノ酸配列の正確な修飾をもたらすであろう(図3および4)。本方法は、CRISPR、TALエフェクターヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼを含む、任意の好適なレアカッティングエンドヌクレアーゼの使用を含むことができる。レアカッティングエンドヌクレアーゼは、内因性遺伝子のイントロンまたはエキソン内の配列を標的とすることができる。内因性遺伝子は、ATXN2遺伝子を含むことができ、レアカッティングエンドヌクレアーゼは、ATXN2遺伝子のイントロン1またはエキソン1を標的とすることができる。一部の実施形態では、CRISPRヌクレアーゼは、CRISPR/Cas12aヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas9ヌクレアーゼであり得る。他の実施形態では、第1および第2のコード配列は、レポーター遺伝子、精製タグ、または内因性遺伝子によってコードされるアミノ酸と相同であるアミノ酸をコードすることができる。第1および第2のコード配列は、同じ核酸配列を保有することによって、または異なる核酸配列を保有することによって(例えば、コドン縮重を使用して)、同じアミノ酸をコードする。導入遺伝子は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター)上で合成され得る。または、導入遺伝子は、非ウイルスベクター上で合成され得る。上に記載の実施形態は、両方の産物が依然として所望の結果をもたらす一方で、導入遺伝子のフォワードまたはリバースのいずれかの方向への標的化組み込みをもたらし得る。
【0010】
一実施形態では、本文書は、導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込むための方法を特徴とする。この方法は、導入遺伝子の送達を含み得、導入遺伝子は、第1および/または第2の相同アーム、第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼの標的部位、第1および第2のプロモーターまたは1つの双方向プロモーター、第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2のコード配列、ならびに、任意選択的に、第1および第2のターミネーターを保有する。一部の実施形態では、第1および第2のターミネーターは、単一の双方向ターミネーターで置き換えることができる。本方法は、内因性遺伝子内の部位および導入遺伝子内の2つの部位を標的とするレアカッティングエンドヌクレアーゼを投与することをさらに含む。本方法の結果、導入遺伝子が内因性遺伝子と組み込まれ、配向(例えば、フォワードまたはリバース)に関係なく、組み込みは、内因性遺伝子から産生されるタンパク質のアミノ酸配列の正確な修飾をもたらすであろう。本方法は、CRISPR、TALエフェクターヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼを含む、任意の好適なレアカッティングエンドヌクレアーゼの使用を含むことができる。レアカッティングエンドヌクレアーゼは、内因性遺伝子のイントロンまたはエキソン内の配列を標的とすることができる。内因性遺伝子は、ATXN2遺伝子を含むことができ、レアカッティングエンドヌクレアーゼは、ATXN2遺伝子のイントロン1またはエキソン1を標的とすることができる。一部の実施形態では、CRISPRヌクレアーゼは、CRISPR/Cas12aヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas9ヌクレアーゼであり得る。他の実施形態では、第1および第2のコード配列は、レポーター遺伝子、精製タグ、または内因性遺伝子によってコードされるアミノ酸と相同であるアミノ酸をコードすることができる。第1および第2のコード配列は、同じ核酸配列を保有することによって、または異なる核酸配列を保有することによって(例えば、コドン縮重を使用して)、同じアミノ酸をコードする。導入遺伝子は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター)上で合成され得る。または、導入遺伝子は、非ウイルスベクター上で合成され得る。上に記載の実施形態は、両方の産物が依然として所望の結果をもたらす一方で、導入遺伝子のフォワードまたはリバースのいずれかの方向への標的化組み込みをもたらし得る。
【0011】
さらなる実施形態では、本文書は、二本鎖ポリヌクレオチドを特徴とする。二本鎖ポリヌクレオチドは、第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2のコード配列、双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーターを含むことができる。二本鎖ポリヌクレオチドは、第1および/または第2の相同アーム、第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位、ならびに第1および第2のターミネーターをさらに含むことができる。一部の実施形態では、第1および第2のターミネーターは、単一の双方向ターミネーターで置き換えることができる。二本鎖ポリヌクレオチド上のコード配列は、逆相補(reverse complementary)の配向であり得る。コード配列は、同じアミノ酸配列をコードすることができる。コード配列は、同じヌクレオチド配列、または異なる核酸配列(例えば、コドン縮重に起因する)から構成され得る。第1および第2のプロモーターは、互いに逆相補の配向であってもよい。
【0012】
さらなる実施形態では、本文書は、導入遺伝子をATXN2に組み込む方法を特徴とする。本方法は、ATXN2遺伝子内の部位を標的とするレアカッティングエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、レアカッティングエンドヌクレアーゼによる切断後にATXN2遺伝子内に組み込まれる導入遺伝子とを投与することを含み得る。別の実施形態では、レアカッティングエンドヌクレアーゼは、タンパク質(例えば、Cas9もしくはCas12aタンパク質、またはTALENタンパク質)、またはリボ核タンパク質複合体(例えば、Cas9またはCas12aと共に、対応するgRNA)の形態で送達され得る。導入遺伝子は、誘導多能性幹細胞、プルキンエ細胞、顆粒細胞、ニューロン細胞、またはグリア細胞を含む細胞に組み込むことができる。ATXN2遺伝子内に組み込まれる導入遺伝子は、ATXN2遺伝子のエキソン1のコード配列を保有することができる。導入遺伝子は、ATXN2遺伝子のイントロン1またはエキソン1の中に組み込むことができる。導入遺伝子は、コード配列の上流に、プロモーターをさらに含むことができる。導入遺伝子の組み込みは、CRISPR、TALエフェクターヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼを含む任意の好適なレアカッティングエンドヌクレアーゼを使用して促進され得る。導入遺伝子は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター)上で合成され得る。あるいは、導入遺伝子は、非ウイルスベクター上で合成され得る。
【0013】
別の実施形態では、本文書は、内因性遺伝子の発現を修飾する方法を特徴とし、本方法は、導入遺伝子を投与することを含み、導入遺伝子は、第1および第2のプロモーター、または双方向プロモーター、当該内因性遺伝子の発現を低減する第1の核酸配列、ならびに当該内因性遺伝子によって産生されるタンパク質と相同性を有するタンパク質をコードする第2の核酸配列を含む。第2の核酸配列は、第1の核酸配列と比較して、異なる核酸配列を含み得る(例えば、コドン縮重または配列の欠如に起因する)。本明細書に記載の導入遺伝子は、第1および第2の核酸配列に作動可能に連結された第1および第2のターミネーターをさらに含むことができる。導入遺伝子は、少なくとも1つのアレルが機能獲得変異を含む場合に使用され得る。機能獲得変異は、HD(ハンチントン病)、SBMA(球脊髄性筋萎縮症)、SCA1(脊髄小脳失調症1型)、SCA2(脊髄小脳失調症2型)、SCA3(脊髄小脳失調症3型またはマシャド・ジョセフ病)、SCA6(脊髄小脳失調症6型)、SCA7(脊髄小脳失調症7型)、脆弱X症候群、脆弱XE精神遅滞、フリードライヒ運動失調症、筋強直性ジストロフィー1型、筋強直性ジストロフィー2型、脊髄小脳失調症8型、脊髄小脳失調症12型、球脊髄性筋萎縮症、JPH3、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、遺伝性運動性感覚性ニューロパチーIIC型、シナプス後スローチャネル先天性筋無力症候群、PRPS1過活動性、パーキンソン病、細管集合体ミオパチー、軟骨無形成症、ルブスX連鎖精神遅滞症候群、ならびに常染色体優性網膜色素変性症からなる群から選択される疾患をもたらす変異であり得る。導入遺伝子は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターを含むウイルスベクターに保有され得る。導入遺伝子は、4.7kb以下のサイズであり得る。導入遺伝子は、非ウイルスベクター上にあり得る。導入遺伝子は、細胞のゲノムに組み込まれ得る。
【0014】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって通常理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を使用して本発明を実施することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体において参照により援用される。矛盾する場合、定義を含めて、本明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は、単に例示であり、限定することを意図するものではない。
【0015】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に示される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込む方法であって、
a.導入遺伝子を投与することであって、前記導入遺伝子が、
i.第1および第2のスプライスドナー配列、
ii.第1および第2の部分コード配列、ならびに
iii.1つの双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーター、を含む、導入遺伝子を投与することと、
前記内因性遺伝子内の部位を標的とする少なくとも1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼを投与することと、を含み、
前記導入遺伝子が、前記内因性遺伝子内に組み込まれる、方法。
(項目2)
前記第1のスプライスドナーが、前記第1の部分コード配列に作動可能に連結され、前記第2のスプライスドナーが、前記第2の部分コード配列に作動可能に連結される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1の部分コード配列が、前記第1のプロモーターに作動可能に連結され、前記第2の部分コード配列が、前記第2のプロモーターに作動可能に連結される、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記第1および第2の部分コード配列が、双方向プロモーターに作動可能に連結される、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記第1および第2のスプライスドナー、第1および第2の部分コード配列、ならびに第1および第2のプロモーターが、頭対頭(head-to-head)配向で配向される、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記導入遺伝子が、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼの第1および第2の標的部位をさらに含み、前記標的部位が、前記第1および第2のスプライスドナーに隣接する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記導入遺伝子が、前記第1および第2のスプライスドナーに隣接する第1および第2の相同アームをさらに含む、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記導入遺伝子が、アデノ随伴ウイルスベクター内に保有される、項目5に記載の方法。
(項目9)
前記導入遺伝子が、前記1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼの第1および第2の標的部位をさらに含み、前記標的部位が、前記第1および第2のスプライスドナーに隣接する、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記第1および第2の標的部位が、前記第1および第2の相同アームに隣接する、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記導入遺伝子が、前記内因性遺伝子のイントロン内、またはエキソン-イントロン接合部に組み込まれる、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記導入遺伝子が、ATXN2遺伝子もしくはSNCA遺伝子のイントロン内、またはエキソン-イントロン接合部に組み込まれる、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記導入遺伝子が、非病原性ATXN2遺伝子のエキソン1によって産生されるペプチドをコードする第1および第2の部分コード配列を含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記導入遺伝子が、非病原性SNCA遺伝子のエキソン2によって産生されるペプチドをコードする第1および第2の部分コード配列を含む、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記ヌクレアーゼが、CRISPR/Cas12aヌクレアーゼ、またはCRISPR/Cas9ヌクレアーゼである、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記第1および第2の部分コード配列が、同じアミノ酸をコードする、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記第1および第2のコード配列が、核酸配列において異なるが、同じアミノ酸をコードする、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記導入遺伝子が、ベクターに保有され、前記ベクターの形式が、二本鎖直鎖DNA、二本鎖環状DNA、またはウイルスベクターから選択される、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターから選択される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記導入遺伝子が、4.7kb以下である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記内因性遺伝子が、前記部分コード配列の野生型遺伝子である、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記内因性遺伝子が、異常または病原性であり、前記部分コード配列が、前記内因性遺伝子の機能性バージョンから産生される部分タンパク質をコードする、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記第1および第2の部分コード配列が、対応する前記内因性遺伝子と比較して、核酸配列において異なる、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記内因性遺伝子が、SOD1、TRPV4、CHRNA1、CHRND、CHRNE、CHRNB1、PRPS1、LRRK2、STIM1、FGFR3、MECP2、SNCA、ATXN1、ATXN2、ATXN3、CACNA1A、ATXN7、TBP、HTT、AR、FXN、DMPK、PABPN1、ATXN8、RHO、またはC9orf72から選択される、項目1に記載の方法。
(項目25)
前記導入遺伝子が、第1および第2のターミネーターをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目26)
導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込む方法であって、
a.導入遺伝子を投与することであって、前記導入遺伝子が、
i.スプライスドナー配列、
ii.部分コード配列、
iii.プロモーター、
iv.1つのRNA干渉カセット、ならびに
v.任意選択的に、第1および第2の相同アームまたは左右のトランスポゾン末端、を含む、導入遺伝子を投与することと、
b.前記内因性遺伝子内の部位を標的とする少なくとも1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼまたはトランスポザーゼを投与することと、を含み、
前記導入遺伝子が、前記内因性遺伝子内に組み込まれる、方法。
(項目27)
導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込む方法であって、
a.導入遺伝子を投与することであって、前記導入遺伝子が、
i.左右のトランスポゾン末端、
ii.第1および第2のスプライスドナー配列、
iii.第1および第2の部分コード配列、
iv.1つの双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーター、ならびに
v.任意選択的に、第1および第2のターミネーター、を含む、導入遺伝子を投与することと、
b.トランスポザーゼを投与することと、を含み、
前記導入遺伝子が、前記内因性遺伝子内に組み込まれる、方法。
(項目28)
導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込む方法であって、
a.導入遺伝子を投与することであって、前記導入遺伝子が、
i.スプライスアクセプター配列、
ii.部分コード配列、
iii.ターミネーター、および
iv.1つのRNA干渉カセット、ならびに
v.任意選択的に、第1および第2の相同アーム、または左右のトランスポゾン末端、を含む、導入遺伝子を投与することと、
b.前記内因性遺伝子内の部位を標的とする少なくとも1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼまたはトランスポザーゼを投与することと、を含み、
前記導入遺伝子が、前記内因性遺伝子内に組み込まれる、方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】内因性遺伝子への標的化挿入および5’末端の修復のための例示的な導入遺伝子の図である。TS1:標的部位1、SD1:スプライスドナー部位1、CDS1:コード配列1、P1:プロモーター1、TS2:標的部位2、SD2:スプライスドナー部位2、CDS2:コード配列2、P2:プロモーター2、HA1:相同アーム1、HA2:相同アーム2、T1:ターミネーター1、T2:ターミネーター2、AS1:追加配列1、AS2:追加配列2。
図2】例示的な遺伝子のイントロンへの導入遺伝子の組み込みを示す図である。導入遺伝子は、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼの2つの標的部位、2つのスプライスドナー配列、2つのコード配列(1.1および1.2)、ならびに2つのプロモーターを含む。組み込みは、非相同末端結合(NHEJ)を介して進行する。ATG:開始コドン、TAA:停止コドン
図3】例示的な遺伝子への導入遺伝子の組み込みを示す図である。導入遺伝子は、2つの相同アーム、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼの2つの標的部位、2つのスプライスドナー配列、2つのコード配列(1.1および1.2)、ならびに2つのプロモーターを含む。組み込みは、相同組換え(HR)または非相同末端結合(NHEJ)のいずれかを介して進行する。
図4】導入遺伝子の例示的な遺伝子への組み込みを示す図である。導入遺伝子は、2つの相同アーム、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼの2つの標的部位、2つのスプライスドナー配列、2つのコード配列(1.1および1.2)、ならびに2つのプロモーターを含む。組み込みは、相同組換え(HR)または非相同末端結合(NHEJ)のいずれかを介して進行する。
図5】本明細書に記載の導入遺伝子の組み込み後に産生される遺伝子産物の図である。導入遺伝子内の第1および第2の部分コード配列が内因性遺伝子のコード配列と相同である場合、RNAヘアピンおよびdsRNAが形成され得る(上)。内因性遺伝子のコード配列との相同性を低減させて、第1および第2の部分コード配列をコドン調整した場合、RNA対合が低減され得る(下)。T1:転写産物1、T2:転写産物2、T3:転写産物3、+1:RNA合成開始部位、S:センス、AntiS:アンチセンス。
図6】ATXN2遺伝子のエキソン1~3の図である。ATXN2遺伝子に組み込むためのpB1012-D1およびpBA1141の導入遺伝子も示されている。
図7】ATXN2遺伝子内のpB1012-D1またはpBA1141の導入遺伝子の組み込み結果の図である。
図8】例示的な遺伝子のエキソンへの導入遺伝子の組み込みを示す図である。導入遺伝子は、2つの相同アーム、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼの2つの標的部位、2つのスプライスドナー配列、2つのコード配列(1.1および1.2)、ならびに2つのプロモーターを含む。組み込みは、相同組換え(HR)または非相同末端結合(NHEJ)のいずれかを介して進行する。
図9】サイレンシング配列およびサイレンシング耐性コード配列を含む導入遺伝子の図である。2つのシナリオが示される。シナリオ1は、WTタンパク質の置換物を産生しながら、内因性遺伝子の両方のアレルをサイレンシングするためのアプローチを示す図である。シナリオ2は、タンパク質の置換物を産生しながら、2つのアレルをサイレンシングするアプローチを示す図であり、一方は機能獲得変異を有するアレルであり、他方はWT配列を有するアレルである。サイレンシング配列は、RNAiカセットであり得る。サイレンシング耐性CDSは、結合を阻止するためにサイレンシング標的配列内に変異を有することができる。あるいは、CDSは、配列を除去することができる。
図10】1つのアレルにおける機能獲得変異を有する細胞中のSOD1アレルをサイレンシングするための導入遺伝子の構造を示す図である。導入遺伝子は、置換SOD1タンパク質を発現するためのコドン調整配列も含む。
図11】例示的な内因性遺伝子のサイレンシングおよび内因性遺伝子のタンパク質産物の置換のための導入遺伝子の構造の例を示す図である。
図12】タンパク質産生を置き換えながら、機能獲得アレルをサイレンシングするための一般的なアプローチを示す図である。RNAiカセットによるサイレンシングを阻止するための変異を有する部分コード配列が、遺伝子に組み込まれる。遺伝子の5’または3’末端に組み込まれた場合、結果として、結果1:内因性遺伝子のサイレンシング、結果2:内因性遺伝子内のアレルのうちの1つの修飾、結果3:組み込み事象由来の新しいタンパク質の産生が得られる場合があり、ここでmRNAが、サイレンシング耐性であり、タンパク質産物が、元の遺伝子と同じまたは異なる配列を含む。
図13】内因性遺伝子の発現をサイレンシングし、タンパク質産生を置き換えるための導入遺伝子の図である。CDS1およびCDS2は、内因性遺伝子の部分コード配列であり得る。CDSは、RNAiカセットの対応する標的に変異を含むか、または配列が除外され得る。組み込みのための標的は、イントロン内にあってもよいが、イントロンの内因性スプライスドナー配列の後にある。また、組み込みのための標的は、イントロン-エキソン接合部にあり得る。
図14】内因性遺伝子の発現をサイレンシングし、タンパク質産生を置き換えるための導入遺伝子の図である。CDS1およびCDS2は、内因性遺伝子の完全コード配列であり得る。CDSは、RNAiカセットの対応する標的に変異を含むか、または配列が除外され得る。組み込みのための標的は、イントロン内にあってもよいが、イントロンの内因性スプライスドナー配列の後にある。また、組み込みのための標的は、イントロン-エキソン接合部にあり得る。
図15】内因性遺伝子の発現をサイレンシングし、タンパク質産生を置き換えるための導入遺伝子の図である。CDS1およびCDS2は、内因性遺伝子の完全コード配列であり得る。CDSは、RNAiカセットの対応する標的に変異を含むか、または配列が除外され得る。組み込みのための標的は、エキソン内にあってもよい。
図16】内因性遺伝子の発現をサイレンシングし、タンパク質産生を置き換えるための導入遺伝子の図である。CDS1およびCDS2は、内因性遺伝子の完全コード配列であり得る。CDSは、RNAiカセットの対応する標的に変異を含むか、または配列が除外され得る。組み込みのための標的は、5’UTR内にあってもよい。組み込みのための標的は、5’UTR領域内のイントロンであってもよいが、CDSに作動可能に連結されたスプライスアクセプターが必要である。
図17】内因性遺伝子の発現をサイレンシングし、タンパク質産生を置き換えるための導入遺伝子の図である。CDS1およびCDS2は、内因性遺伝子の部分コード配列であり得る。CDSは、RNAiカセットの対応する標的に変異を含むか、または配列が除外され得る。組み込みの標的は、開始コドンと停止コドンとの間の任意の場所であってもよいが、内因性スプライスアクセプター内ではなく、または最後の内因性スプライス(slice)アクセプターの下流ではない。
図18】本明細書に記載の導入遺伝子の組み込みを検出するゲルの画像である。1:1kbラダー、2:1594bpの予想サイズを有するpBA1141の3’HR接合部、3:1775bpの予想サイズを有するpBA1141の3’HR接合部、4:1775bpの予想サイズを有するpBA1141の3’HR接合部、5:2067bpの予想サイズを有するpBA1141の3’NHEJリバース、6:813bpの予想サイズを有するpBA1142の3’NHEJフォワード接合部、7:1225bpの予想サイズを有するpBA1143の3’HR接合部、8:1407bpの予想サイズを有するpBA1143の3’HR接合部、9:1225bpの予想サイズを有するpBA1143の3’HR接合部、10:1407bpの予想サイズを有するpBA1143の3’HR接合部、11:1kbラダー、12:プライマーoNJB201+oNJB190によるWTのDNA対照、13:プライマーoNJB202+oNJB191によるWTのDNA対照、14:プライマーoNJB197+oNJB191によるWTのDNA対照、15:プライマーoNJB202+oNJB211によるWTのDNA対照、16:1kbラダー、17:pBA1141+Cas9トランスフェクションのゲノムDNA対照、18:pBA1142トランスフェクションのゲノムDNA対照、19:pBA1143+Cas9トランスフェクションのゲノムDNA対照、20:pBA1141+Cas12aトランスフェクションのゲノムDNA対照、21:pBA1142+Cas12aトランスフェクションのゲノムDNA対照、22:pBA1143+Cas12aトランスフェクションのゲノムDNA対照、23:WT対照、24:DNAなしの対照。
【発明を実施するための形態】
【0017】
内因性遺伝子のコード配列を修飾するための方法および組成物が本明細書に開示される。一部の実施形態では、方法は、導入遺伝子を内因性遺伝子に挿入することを含み、導入遺伝子は、内因性遺伝子のコード配列を置換する部分コード配列を提供する。また、置換タンパク質を発現すると共に、内因性遺伝子の発現を低減するための方法および組成物も、本明細書に開示される。
【0018】
一実施形態では、本文書は、導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込み、mRNAまたはタンパク質産物を修飾する方法を特徴とする。本方法は、導入遺伝子を投与することを含み、導入遺伝子は、第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2の部分コード配列、1つの双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーター、ならびに、任意選択的に、第1および第2のターミネーターを含み、導入遺伝子は、内因性遺伝子内の部位を標的とする少なくとも1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼと共に投与され、導入遺伝子は、内因性遺伝子内に組み込まれる。内因性遺伝子は、ヒト細胞を含む真核細胞内にあってもよい。導入遺伝子は、第1の部分コード配列に作動可能に連結された第1のスプライスドナーを有することができ、第2のスプライスドナーは、第2の部分コード配列に作動可能に連結され得る。また、第1の部分コード配列は、第1のプロモーターに作動可能に連結され得、第2の部分コード配列は、第2のプロモーターに作動可能に連結され得る。あるいは、第1および第2の部分コード配列は、双方向プロモーターに作動可能に連結され得る。第1および第2のスプライスドナー、第1および第2の部分コード配列、ならびに第1および第2のプロモーターを有する導入遺伝子は、頭対頭配向(head-to-head orientation)で配向され得る。これらの導入遺伝子は、アデノ随伴ウイルスベクター内に保有され、標的二本鎖切断へのNHEJ媒介組み込みを介して内因性遺伝子に組み込まれ得る。導入遺伝子は、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼの第1および第2の標的部位をさらに含み得、標的部位は、第1および第2のスプライスドナーに隣接する。あるいは、導入遺伝子は、第1および第2のスプライスドナーに隣接する左右の相同アームをさらに含み得る。導入遺伝子は、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼの第1および第2の標的部位の両方を有することができ、標的部位は、第1および第2のスプライスドナーに隣接する。第1および第2の標的部位は、第1および第2の相同アームに隣接することができる。本方法に記載の導入遺伝子は、内因性遺伝子のイントロン内またはエキソン-イントロン接合部に組み込むことができる。内因性遺伝子は、ATXN2またはSNCAであってもよく、組み込みのための部位は、ATXN2遺伝子またはSNCA遺伝子のイントロン内、またはエキソン-イントロン接合部であってもよい。ATXN2に組み込まれるとき、導入遺伝子は、非病原性ATXN2遺伝子のエキソン1によって産生されるペプチドをコードする第1および第2の部分コード配列を含むことができる。SNCAに組み込まれるとき、導入遺伝子は、非病原性SNCA遺伝子のエキソン2によって産生されるペプチドをコードする第1および第2の部分コード配列を含むことができる。組み込みは、CRISPR/Cas12aヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas9ヌクレアーゼの使用を介して生じ得る。第1および第2の部分コード配列は、同じアミノ酸をコードすることができる。第1および第2のコード配列は、核酸配列において(例えば、コドン縮重を通して)異なっていてもよいが、依然として同じアミノ酸をコードする。本方法に記載の導入遺伝子は、ベクターに保有され得、ベクターの形式は、二本鎖直鎖DNA、二本鎖環状DNA、またはウイルスベクターから選択される。導入遺伝子は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターから選択されるウイルスベクターに保有され得る。導入遺伝子は、4.7kb以下の全長を有し得る。本方法は、標的内因性遺伝子によって産生されるペプチドをコードする部分コード配列を有する導入遺伝子を使用することを含み得る。部分コード配列は、標的内因性遺伝子のWTバージョンであり得、標的内因性遺伝子は、異常遺伝子、または病原性変異を含む遺伝子であり得る。宿主遺伝子は、一実施形態では、タンパク質の発現が異常である、言い換えれば、タンパク質が、発現しない、機能性タンパク質よりも低いレベルもしくは高いレベルで発現する、またはタンパク質もしくはその一部が非機能性で宿主において障害をもたらすように発現する、遺伝子である。この方法で使用される導入遺伝子は、対応する内因性遺伝子と比較して核酸配列が異なる第1および第2の部分コード配列を有することができる。言い換えれば、部分コード配列は、内因性遺伝子に対して最小限の相同性を有するように(コドン縮重を介して)修飾され得る。この方法を使用して、SOD1、TRPV4、CHRNA1、CHRND、CHRNE、CHRNB1、PRPS1、LRRK2、STIM1、FGFR3、MECP2、SNCA、ATXN1、ATXN2、ATXN3、CACNA1A、ATXN7、TBP、HTT、AR、FXN、DMPK、PABPN1、ATXN8、RHO、またはC9orf72を含む機能獲得障害に関与する遺伝子を修飾することができる。
【0019】
別の実施形態では、本文書は、導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込み、mRNAまたはタンパク質産物を修飾する方法を特徴とする。本方法は、導入遺伝子を投与することを含み、導入遺伝子は、左右のトランスポゾン末端、第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2の部分コード配列、1つの双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーター、ならびに、任意選択的に、第1および第2のターミネーターを含み、導入遺伝子は、内因性遺伝子内の部位を標的とする少なくとも1つのトランスポザーゼと共に投与され、導入遺伝子は、内因性遺伝子内に組み込まれる。内因性遺伝子は、ヒト細胞を含む真核細胞内にあってもよい。導入遺伝子は、第1の部分コード配列に作動可能に連結された第1のスプライスドナーを有することができ、第2のスプライスドナーは、第2の部分コード配列に作動可能に連結され得る。また、第1の部分コード配列は、第1のプロモーターに作動可能に連結され得、第2の部分コード配列は、第2のプロモーターに作動可能に連結され得る。あるいは、第1および第2の部分コード配列は、双方向プロモーターに作動可能に連結され得る。第1および第2のスプライスドナー、第1および第2の部分コード配列、ならびに第1および第2のプロモーターを有する導入遺伝子は、頭対頭配向(head-to-head orientation)で配向され得る。導入遺伝子は、第1および第2のスプライスドナーに隣接する左右のトランスポゾン末端をさらに含み得る。トランスポザーゼは、CRISPRトランスポザーゼであってもよく、CRISPRトランスポザーゼは、Cas12kまたはCas6タンパク質を含む。これらの導入遺伝子は、アデノ随伴ウイルスベクター内に保有され得る。本方法に記載の導入遺伝子は、内因性遺伝子のイントロン内またはエキソン-イントロン接合部に組み込むことができる。内因性遺伝子は、ATXN2またはSNCAであってもよく、組み込みのための部位は、ATXN2遺伝子またはSNCA遺伝子のイントロン内、またはエキソン-イントロン接合部であってもよい。ATXN2に組み込まれるとき、導入遺伝子は、非病原性ATXN2遺伝子のエキソン1によって産生されるペプチドをコードする第1および第2の部分コード配列を含むことができる。SNCAに組み込まれるとき、導入遺伝子は、非病原性SNCA遺伝子のエキソン2によって産生されるペプチドをコードする第1および第2の部分コード配列を含むことができる。第1および第2の部分コード配列は、同じアミノ酸をコードすることができる。第1および第2のコード配列は、核酸配列において(例えば、コドン縮重を通して)異なっていてもよいが、依然として同じアミノ酸をコードする。本方法に記載の導入遺伝子は、ベクターに保有され得、ベクターの形式は、二本鎖直鎖DNA、二本鎖環状DNA、またはウイルスベクターから選択される。導入遺伝子は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターから選択されるウイルスベクターに保有され得る。導入遺伝子は、4.7kb以下の全長を有し得る。本方法は、標的内因性遺伝子によって産生されるペプチドをコードする部分コード配列を有する導入遺伝子を使用することを含み得る。部分コード配列は、標的内因性遺伝子のWTバージョンであり得、標的内因性遺伝子は、異常遺伝子、または病原性変異を含む遺伝子であり得る。この方法で使用される導入遺伝子は、対応する内因性遺伝子と比較して核酸配列が異なる第1および第2の部分コード配列を有することができる。言い換えれば、部分コード配列は、内因性遺伝子に対して最小限の相同性を有するように(コドン縮重を介して)修飾され得る。この方法を使用して、SOD1、TRPV4、CHRNA1、CHRND、CHRNE、CHRNB1、PRPS1、LRRK2、STIM1、FGFR3、MECP2、SNCA、ATXN1、ATXN2、ATXN3、CACNA1A、ATXN7、TBP、HTT、AR、FXN、DMPK、PABPN1、ATXN8、RHO、またはC9orf72を含む機能獲得障害に関与する遺伝子を修飾することができる。
【0020】
本文書はまた、導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込み、mRNAまたはタンパク質産物を修飾する方法を特徴とする。本方法は、導入遺伝子を投与することを含み、導入遺伝子は、スプライスアクセプター配列、部分コード配列、ターミネーター、および1つのRNA干渉カセットを含み、導入遺伝子は、内因性遺伝子内の部位を標的とする少なくとも1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼまたはトランスポザーゼと共に投与され、導入遺伝子は、内因性遺伝子内に組み込まれる。部分コード配列は、RNAiカセットによるサイレンシングを阻止する変異を含むことができる。内因性遺伝子は、ヒト細胞を含む真核細胞内にあってもよい。導入遺伝子は、部分コード配列に作動可能に連結されたスプライスアクセプターを有することができる。また、部分コード配列は、ターミネーターに作動可能に連結され得る。内因性遺伝子は、ヒト細胞を含む真核細胞内にあってもよい。導入遺伝子は、部分コード配列に作動可能に連結されたスプライスアクセプターを有することができる。また、部分コード配列は、ターミネーターに作動可能に連結され得る。これらの導入遺伝子は、アデノ随伴ウイルスベクター内に保有され、NHEJ媒介性の標的二本鎖切断への組み込みまたは相同組換えを介して内因性遺伝子に組み込まれ得る。導入遺伝子は、左右の相同アームをさらに含み得る。本方法に記載の導入遺伝子は、内因性遺伝子のイントロン内またはイントロン-エキソン接合部に組み込むことができる。RNAiカセットは、内因性遺伝子と相同性を有する配列に作動可能に連結されたプロモーターであり得る。RNAiカセットは、shRNAまたはsiRNAを生成することができる。RNAiカセットは、内因性遺伝子と相同的な配列を含むことができ、導入遺伝子内の部分コード配列は、内因性遺伝子と同じ配列を含むことができるが、RNAiカセットの標的部位は、組み込まれた導入遺伝子(例えば、同義の単一ヌクレオチド多型、挿入または欠失を有する)による発現のサイレンシングを阻止するように変異され得る。組み込みは、CRISPR/Cas12aヌクレアーゼもしくはCRISPR/Cas9ヌクレアーゼの使用を介して、またはCRISPR関連トランスポザーゼとの使用を介して生じ得る。CRISPR関連トランスポザーゼが使用される場合、導入遺伝子は、相同アームの代わりに、左右のトランスポゾン末端を含み得る。CRISPR関連トランスザーゼ(transpose)は、Cas6タンパク質またはCas12kタンパク質を含み得る。本方法に記載の導入遺伝子は、ベクターに保有され得、ベクターの形式は、二本鎖直鎖DNA、二本鎖環状DNA、またはウイルスベクターから選択される。導入遺伝子は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターから選択されるウイルスベクターに保有され得る。導入遺伝子は、4.7kb以下の全長を有し得る。本方法は、標的内因性遺伝子によって産生されるペプチドをコードする部分コード配列を有する導入遺伝子を使用することを含み得る。部分コード配列は、標的内因性遺伝子のWTバージョンであり得、標的内因性遺伝子は、異常遺伝子、または病原性変異を含む遺伝子であり得る。この方法を使用して、CACNA1A、ATXN3、SOD1、TRPV4、CHRNA1、CHRND、CHRNE、CHRNB1、PRPS1、LRRK2、STIM1、FGFR3、MECP2、SNCA、ATXN1、ATXN2、CACNA1A、ATXN7、TBP、HTT、AR、FXN、DMPK、PABPN1、ATXN8、RHO、またはC9orf72を含む、機能獲得障害に関与する遺伝子を修飾することができる。
【0021】
本文書はまた、導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込み、mRNAまたはタンパク質産物を修飾する方法を特徴とする。本方法は、導入遺伝子を投与することを含み、導入遺伝子は、スプライスアクセプター配列、第1および第2の部分コード配列、ターミネーター、ならびに1つのRNA干渉カセットを含み、導入遺伝子は、内因性遺伝子内の部位を標的とする少なくとも1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼまたはトランスポザーゼと共に投与され、導入遺伝子は、内因性遺伝子内に組み込まれる。第1および第2の部分コード配列は、RNAiカセットによるサイレンシングを阻止する変異を含むことができる。内因性遺伝子は、ヒト細胞を含む真核細胞内にあってもよい。導入遺伝子は、第1の部分コード配列に作動可能に連結された第1のスプライスアクセプター、および第2の部分コード配列に作動可能に連結された第2のスプライスアクセプターを有することができる。また、第1の部分コード配列は、第1のターミネーターに作動可能に連結され得、第2の部分コード配列は、第2のターミネーターに作動可能に連結され得る。部分コード配列は、2つのターミネーター間のRNAiカセットを用いて、尾対尾配向(tail-to-tail orientation)であり得る。これらの導入遺伝子は、アデノ随伴ウイルスベクター内に保有され、NHEJ媒介性の標的二本鎖切断への組み込みまたは相同組換えを介して内因性遺伝子に組み込まれ得る。導入遺伝子は、左右の相同アームをさらに含み得る。本方法に記載の導入遺伝子は、内因性遺伝子のイントロン内またはイントロン-エキソン接合部に組み込むことができる。RNAiカセットは、内因性遺伝子と相同性を有する配列に作動可能に連結されたプロモーターであり得る。RNAiカセットは、shRNAまたはsiRNAを生成することができる。RNAiカセットは、内因性遺伝子に相同的な配列を含むことができ、導入遺伝子内の部分コード配列は、内因性遺伝子と同じ配列を含むことができるが、RNAiカセットの標的部位は、サイレンシングを阻止するように変異され得る。組み込みは、CRISPR/Cas12aヌクレアーゼもしくはCRISPR/Cas9ヌクレアーゼの使用を介して、またはCRISPR関連トランスポザーゼとの使用を介して生じ得る。CRISPR関連トランスポザーゼが使用される場合、導入遺伝子は、相同アームの代わりに、左右のトランスポゾン末端を含み得る。CRISPR関連トランスポーズは、Cas6タンパク質またはCas12kタンパク質を含み得る。本方法に記載の導入遺伝子は、ベクターに保有され得、ベクターの形式は、二本鎖直鎖DNA、二本鎖環状DNA、またはウイルスベクターから選択される。導入遺伝子は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターから選択されるウイルスベクターに保有され得る。導入遺伝子は、4.7kb以下の全長を有し得る。本方法は、標的内因性遺伝子によって産生されるペプチドをコードする部分コード配列を有する導入遺伝子を使用することを含み得る。部分コード配列は、標的内因性遺伝子のWTバージョンであり得、標的内因性遺伝子は、異常遺伝子、または病原性変異を含む遺伝子であり得る。この方法を使用して、CACNA1A、ATXN3、SOD1、TRPV4、CHRNA1、CHRND、CHRNE、CHRNB1、PRPS1、LRRK2、STIM1、FGFR3、MECP2、SNCA、ATXN1、ATXN2、CACNA1A、ATXN7、TBP、HTT、AR、FXN、DMPK、PABPN1、ATXN8、RHO、またはC9orf72を含む、機能獲得障害に関与する遺伝子を修飾することができる。
【0022】
本文書はまた、導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込み、mRNAまたはタンパク質産物を修飾する方法を特徴とする。本方法は、導入遺伝子を投与することを含み、導入遺伝子は、スプライスドナー配列、部分コード配列、プロモーター、およびRNA干渉カセットを含み、導入遺伝子は、内因性遺伝子内の部位を標的とする少なくとも1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼまたはトランスポザーゼと共に投与され、導入遺伝子は、内因性遺伝子内に組み込まれる。部分コード配列は、RNAiカセットによるサイレンシングを阻止する変異を含むことができる。例えば、RNAiカセットが、内因性遺伝子によって産生される転写産物内の配列を標的とするように設計されている場合、部分コード配列(導入遺伝子内に見出される)は、内因性遺伝子および対応するRNAi標的と同じコード配列を含んでもよく、それによって修飾された内因性遺伝子をRNAiカセットによる同じ干渉に供する。修飾された内因性遺伝子のサイレンシングを最小化または阻止するために、導入遺伝子内の部分コード配列を変異させることができる。内因性遺伝子は、ヒト細胞を含む真核細胞内にあってもよい。導入遺伝子は、部分コード配列に作動可能に連結されたスプライスドナーを有し得る。また、部分コード配列は、プロモーターに作動可能に連結され得る。これらの導入遺伝子は、アデノ随伴ウイルスベクター内に保有され、NHEJ媒介性の標的二本鎖切断への組み込みまたは相同組換えを介して内因性遺伝子に組み込まれ得る。導入遺伝子は、左右の相同アームをさらに含み得る。本方法に記載の導入遺伝子は、内因性遺伝子のイントロン内またはエキソン-イントロン接合部に組み込むことができる。RNAiカセットは、内因性遺伝子と相同性を有する配列に作動可能に連結されたプロモーターであり得る。RNAiカセットは、shRNAまたはsiRNAを生成することができる。RNAiカセットは、内因性遺伝子に相同的な配列を含むことができ、導入遺伝子内の部分コード配列は、内因性遺伝子と同じ配列を含むことができるが、RNAiカセットの標的部位は、サイレンシングを阻止するように変異され得る。内因性遺伝子は、ATXN2またはSNCAであってもよく、組み込みのための部位は、ATXN2遺伝子またはSNCA遺伝子のイントロン内、またはエキソン-イントロン接合部であってもよい。ATXN2に組み込まれる場合、導入遺伝子は、非病原性ATXN2遺伝子のエキソン1によって産生されるペプチドをコードする部分コード配列を含むことができる。RNAiカセットは、ATXN2遺伝子のエキソン1からの転写配列を標的とするように設計することができ、部分コード配列内の対応する配列は、サイレンシングを阻止するように変異させることができる。SNCAに組み込まれる場合、導入遺伝子は、非病原性SNCA遺伝子のエキソン2によって産生されるペプチドをコードする部分コード配列を含むことができる。RNAiカセットは、SNCA遺伝子のエキソン2からの転写配列を標的とするように設計することができ、部分コード配列内の対応する配列は、サイレンシングを阻止するように変異させることができる。組み込みは、CRISPR/Cas12aヌクレアーゼもしくはCRISPR/Cas9ヌクレアーゼの使用を介して、またはCRISPR関連トランスポザーゼとの使用を介して生じ得る。CRISPR関連トランスポザーゼが使用される場合、導入遺伝子は、相同アームの代わりに、左右のトランスポゾン末端を含み得る。CRISPR関連トランスポーズは、Cas6タンパク質またはCas12kタンパク質を含み得る。本方法に記載の導入遺伝子は、ベクターに保有され得、ベクターの形式は、二本鎖直鎖DNA、二本鎖環状DNA、またはウイルスベクターから選択される。導入遺伝子は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターから選択されるウイルスベクターに保有され得る。導入遺伝子は、4.7kb以下の全長を有し得る。本方法は、標的内因性遺伝子によって産生されるペプチドをコードする部分コード配列を有する導入遺伝子を使用することを含み得る。部分コード配列は、標的内因性遺伝子のWTバージョンであり得、標的内因性遺伝子は、異常遺伝子、または病原性変異を含む遺伝子であり得る。この方法を使用して、CACNA1A、ATXN3、SOD1、TRPV4、CHRNA1、CHRND、CHRNE、CHRNB1、PRPS1、LRRK2、STIM1、FGFR3、MECP2、SNCA、ATXN1、ATXN2、CACNA1A、ATXN7、TBP、HTT、AR、FXN、DMPK、PABPN1、ATXN8、RHO、またはC9orf72を含む、機能獲得障害に関与する遺伝子を修飾することができる。
【0023】
本文書はまた、導入遺伝子を内因性遺伝子に組み込み、mRNAまたはタンパク質産物を修飾する方法を特徴とする。本方法は、導入遺伝子を投与することを含み、導入遺伝子は、第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2の部分コード配列、第1および第2のプロモーター(または双方向プロモーター)、ならびにRNA干渉カセットを含み、導入遺伝子は、内因性遺伝子内の部位を標的とする少なくとも1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼまたはトランスポザーゼと共に投与され、導入遺伝子は、内因性遺伝子内に組み込まれる。部分コード配列は、RNAiカセットによるサイレンシングを阻止する変異を含むことができる。内因性遺伝子は、ヒト細胞を含む真核細胞内にあってもよい。導入遺伝子は、第1の部分コード配列に作動可能に連結された第1のスプライスドナー、および第2の部分コード配列に作動可能に連結された第2のスプライスドナーを有することができる。また、第1の部分コード配列は、第1のプロモーターに作動可能に連結され得、第2の部分コード配列は、第2のプロモーターに作動可能に連結され得る。部分コード配列は、頭対頭配向であり得、RNAiカセットは、第1のプロモーターと第2のプロモーターとの間に配置することができる。これらの導入遺伝子は、アデノ随伴ウイルスベクター内に保有され、NHEJ媒介性の標的二本鎖切断への組み込みまたは相同組換えを介して内因性遺伝子に組み込まれ得る。導入遺伝子は、左右の相同アームをさらに含み得る。本方法に記載の導入遺伝子は、内因性遺伝子のイントロン内またはエキソン-イントロン接合部に組み込むことができる。RNAiカセットは、内因性遺伝子と相同性を有する配列に作動可能に連結されたプロモーターであり得る。RNAiカセットは、shRNAまたはsiRNAを生成することができる。RNAiカセットは、内因性遺伝子に相同的な配列を含むことができ、導入遺伝子内の部分コード配列は、内因性遺伝子と同じ配列を含むことができるが、RNAiカセットの標的部位は、サイレンシングを阻止するように変異され得る。内因性遺伝子は、ATXN2またはSNCAであってもよく、組み込みのための部位は、ATXN2遺伝子またはSNCA遺伝子のイントロン内、またはエキソン-イントロン接合部であってもよい。ATXN2に組み込まれる場合、導入遺伝子は、非病原性ATXN2遺伝子のエキソン1によって産生されるペプチドをコードする部分コード配列を含むことができる。RNAiカセットは、ATXN2遺伝子のエキソン1からの転写配列を標的とするように設計することができ、部分コード配列内の対応する配列は、サイレンシングを阻止するように変異させることができる。SNCAに組み込まれる場合、導入遺伝子は、非病原性SNCA遺伝子のエキソン2によって産生されるペプチドをコードする部分コード配列を含むことができる。RNAiカセットは、SNCA遺伝子のエキソン2からの転写配列を標的とするように設計することができ、部分コード配列内の対応する配列は、サイレンシングを阻止するように変異させることができる。組み込みは、CRISPR/Cas12aヌクレアーゼもしくはCRISPR/Cas9ヌクレアーゼの使用を介して、またはCRISPR関連トランスポザーゼとの使用を介して生じ得る。CRISPR関連トランスポザーゼが使用される場合、導入遺伝子は、相同アームの代わりに、左右のトランスポゾン末端を含み得る。CRISPR関連トランスポーズは、Cas6タンパク質またはCas12kタンパク質を含み得る。本方法に記載の導入遺伝子は、ベクターに保有され得、ベクターの形式は、二本鎖直鎖DNA、二本鎖環状DNA、またはウイルスベクターから選択される。導入遺伝子は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターから選択されるウイルスベクターに保有され得る。導入遺伝子は、4.7kb以下の全長を有し得る。本方法は、標的内因性遺伝子によって産生されるペプチドをコードする部分コード配列を有する導入遺伝子を使用することを含み得る。部分コード配列は、標的内因性遺伝子のWTバージョンであり得、標的内因性遺伝子は、異常遺伝子、または病原性変異を含む遺伝子であり得る。この方法で使用される導入遺伝子は、対応する内因性遺伝子と比較して核酸配列が異なる第1および第2の部分コード配列を有することができる。言い換えれば、部分コード配列は、内因性遺伝子に対して最小限の相同性を有するように(コドン縮重を介して)修飾され得る。この方法を使用して、CACNA1A、ATXN3、SOD1、TRPV4、CHRNA1、CHRND、CHRNE、CHRNB1、PRPS1、LRRK2、STIM1、FGFR3、MECP2、SNCA、ATXN1、ATXN2、CACNA1A、ATXN7、TBP、HTT、AR、FXN、DMPK、PABPN1、ATXN8、RHO、またはC9orf72を含む、機能獲得障害に関与する遺伝子を修飾することができる。
【0024】
本方法の実施は、本明細書に開示される組成物の調製および使用に加えて、別段の指示がない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組換えDNA、ならびに当該技術分野内の関連分野における従来の技術を使用する。これらの技術は、文献において完全に説明される。例えば、Sambrook et al.MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989および2001の第3版、Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley&Sons,New York,1987および定期更新、シリーズのMETHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press,San Diego;Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,Third edition,Academic Press,San Diego,1998、METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,“Chromatin”(P.M.Wassarman and A.P.Wolffe,eds.),Academic Press,San Diego,1999、およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,“Chromatin Protocols”(P.B.Becker,ed.)Humana Press,Totowa,1999を参照されたい。
【0025】
本明細書で使用される場合、「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され得る。核酸およびポリヌクレオチドは、直鎖または環状の立体構造、ならびに一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかで、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指すことができる。これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定的なものとして解釈されるべきではない。この用語は、天然ヌクレオチドの既知の類似体、ならびに塩基、糖、および/またはリン酸部分で修飾されるヌクレオチドを包含することができる。
【0026】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、共に共有結合されたアミノ酸残基を指すために互換的に使用され得る。この用語はまた、1つ以上のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸の化学類似体または修飾誘導体であるタンパク質にも適用される。
【0027】
「作動可能に連結された(operatively linked)」または「作動可能に連結された(operably linked)」という用語は、互換的に使用され、2つ以上の構成要素(配列要素など)の近位を指し、両方の構成要素が正常に機能し、構成要素のうちの少なくとも1つが他の構成要素のうちの少なくとも1つに作用する機能を媒介し得る可能性を可能にするように、構成要素が配置される。例示として、転写調節配列(例えば、プロモーター)は、転写調節配列が、1つ以上の転写調節因子の有無に応答してコード配列の転写のレベルを制御する場合、コード配列に作動可能に連結される。転写調節配列は、概してコード配列とシスで作動可能に連結されるが、コード配列に直接隣接している必要はない。例えば、エンハンサーは、それらが連続していないにもかかわらず、コード配列に作動可能に連結された転写調節配列である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「切断(cleavage)」という用語は、核酸分子の共有結合骨格の切断を指す。切断は、限定されないが、ホスホジエステル結合の酵素加水分解または化学加水分解を含む様々な方法によって開始され得る。切断は、一本鎖ニック(single-stranded nick)および二本鎖切断(double-stranded break)の両方を指すことができる。二本鎖切断は、2つの異なる一本鎖ニックの結果として生じ得る。核酸切断は、平滑末端または付着末端のいずれかの産生をもたらし得る。特定の実施形態では、レアカッティングエンドヌクレアーゼは、標的の二本鎖または一本鎖DNAの切断のために使用される。
【0029】
「外因性」分子は、小分子(例えば、糖、脂質、アミノ酸、脂肪酸、フェノール化合物、アルカロイド)、または高分子(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖)、もしくは上記分子の任意の修飾誘導体、あるいは細胞の外側で生成もしくは存在するか、または通常は細胞内に存在しない、上記の分子のうちの1つ以上を含む任意の複合体を指し得る。外因性分子は、細胞に導入され得る。細胞に外因性分子を導入するための方法としては、脂質媒介性輸送、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、粒子衝撃、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介性輸送、およびウイルスベクター媒介性輸送が挙げられる。
【0030】
「内因性」分子は、特定の環境条件下の、特定の発生段階の、特定の細胞に存在する小分子または高分子である。内因性分子は、核酸、染色体、ミトコンドリア、葉緑体もしくは他のオルガネラのゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸であり得る。追加の内因性分子は、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含み得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」は、遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域を含む、遺伝子産物をコードするDNA領域を指す。したがって、遺伝子は、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合部位および内部リボソーム進入部位などの翻訳調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス結合部位、および遺伝子座制御領域を含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0032】
「内因性遺伝子」は、遺伝子産物をコードする特定の細胞内に通常存在するDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域を指す。
【0033】
「遺伝子発現」は、遺伝子に含まれる情報を遺伝子産物に変換することを指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物であり得る。例えば、遺伝子産物は、限定されないが、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であり得る。遺伝子産物には、キャップ形成、ポリアデニル化、メチル化、および編集などのプロセスによって修飾されるRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化、およびグリコシル化によって修飾されるタンパク質も含まれる。
【0034】
「コードする(encoding)」は、核酸に含まれる情報を産物に変換することを指し、産物は、核酸配列の直接転写産物から生じ得る。例えば、産物は、限定されないが、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であり得る。遺伝子産物には、キャップ形成、ポリアデニル化、メチル化、および編集などのプロセスによって修飾されるRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化、およびグリコシル化によって修飾されるタンパク質も含まれる。
【0035】
「標的部位」または「標的配列」は、結合のための十分な条件が存在する場合、例えば、レアカッティングエンドヌクレアーゼまたはCRISPR関連トランスポザーゼを含むエンドヌクレアーゼまたはトランスポザーゼが存在する場合、結合分子が結合する核酸配列である。標的部位は、内因性遺伝子であり得、細胞に対して天然または異種であってもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「組換え」という用語は、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換プロセスを指す。「相同組換え(HR)」という用語は、例えば、二本鎖切断の修復中に起こり得る組換えの特殊形態を指す。相同組換えは、「ドナー」分子上に存在するヌクレオチド配列相同性を必要とする。ドナー分子は、二本鎖切断の修復のための鋳型として、細胞によって使用され得る。二本鎖切断部位、またはその近傍におけるゲノム配列とは異なるドナー分子内の情報は、細胞のゲノムDNAに安定的に組み込まれ得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、「相同」という用語は、核酸またはアミノ酸の第2の配列と類似性を有する、核酸またはアミノ酸の配列を指す。一部の実施形態では、相同配列は、互いに、少なくとも80%の配列同一性(例えば、81%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有し得る。
【0038】
「標的部位」または「標的配列」は、結合のために十分な条件が存在する場合、レアカッティングエンドヌクレアーゼまたはCRISPR関連トランスポザーゼが結合する核酸の一部を定義する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子(transgene)」という用語は、生物または細胞に輸送され得る核酸の配列を指す。導入遺伝子は、標的生物または細胞内に通常存在しない遺伝子または核酸配列を含み得る。さらに、導入遺伝子は、標的生物または細胞内に通常存在する遺伝子または核酸配列のコピーを含んでいてもよい。導入遺伝子は、標的細胞の細胞質または核に導入された外因性DNA配列であり得る。一実施形態では、本明細書に記載の導入遺伝子は、部分コード配列を含み、部分コード配列は、宿主細胞内の遺伝子によって産生されるタンパク質の一部をコードする。
【0040】
本明細書で使用される場合、「病原性」という用語は、疾患を引き起こし得る全てのものを指す。病原性変異は、疾患を引き起こす遺伝子における修飾を指し得る。病原性遺伝子は、疾患を引き起こす修飾を含む遺伝子を指す。例えば、脊髄小脳失調症2の患者における病原性ATXN2遺伝子は、拡張CAGトリヌクレオチド反復を有するATXN2遺伝子を指し、拡張CAGトリヌクレオチド反復は、疾患を引き起こす。
【0041】
本明細書で使用される「尾対尾(tail-to-tail)」という用語は、反対かつリバース方向の2つのユニットの配向を指す。2つのユニットは、各配列の3’末端が互いに隣接して配置されている、単一核酸分子上の2つの配列であり得る。例えば、5’から3’方向へ、エレメント[スプライスアクセプター1]-[部分コード配列1]-[ターミネーター1]を有する第1の核酸、およびエレメント[スプライスアクセプター2]-[部分コード配列2]-[ターミネーター2]を有する第2の核酸を、尾対尾配向で配置することができ、[スプライスアクセプター1]-[部分コード配列1]-[ターミネーター1]-[ターミネーター2 RC]-[部分コード配列2 RC]-[スプライスアクセプター2 RC]が得られる(RCは逆相補(reverse complement)を指す)。
【0042】
本明細書で使用される「頭対頭(head-to-head)」という用語は、反対かつリバース方向の2つのユニットの配向を指す。2つのユニットは、各配列の5’末端が互いに隣接して配置されている、単一核酸分子上の2つの配列であり得る。例えば、5’から3’方向へ、エレメントを有する第1の核酸:[プロモーター1]-[部分コード配列1]-[スプライスドナー1]、およびエレメントを有する第2の核酸:[プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]を、頭対頭配向で配置することができ、[スプライスドナー1 RC]-[部分コード配列1 RC]-[プロモーター1 RC][プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]が得られる(RCは逆相補(reverse complement)を指す)。
【0043】
本明細書で使用される場合、「組み込む(integrating)」という用語は、DNAをDNAの標的領域に添加するプロセスを指す。本明細書に記載されるように、組み込みは、非相同末端結合、相同組換え、または標的化転位を含む、いくつかの異なる手段によって促進され得る。例として、ユーザ提供DNA分子の標的遺伝子への組み込みは、非相同末端結合によって促進され得る。ここで、標的遺伝子内で標的二本鎖切断がなされ、ユーザ提供DNA分子が投与される。ユーザ提供DNA分子は、非相同末端結合による標的遺伝子の修復中の捕捉を促進するために、露出したDNA末端を含むことができる。露出した末端は、投与時(すなわち、直鎖DNA分子の投与時)にDNA分子上に存在し得るか、または細胞への投与時に創出され得る(すなわち、レアカッティングエンドヌクレアーゼが、細胞内でユーザ提供DNA分子を切断して、末端を露出する)。さらに、ユーザ提供DNA分子は、アデノ随伴ウイルスベクターを含むウイルスベクターに保有され得る。別の例では、組み込みは、相同組換えを介して生じる。ここで、ユーザ提供DNAは、左右の相同アームを保有し得る。別の例では、組み込みは、転位を介して生じる。ここで、ユーザ提供DNAは、トランスポゾンの左右の末端を保有する。
【0044】
「イントロン-エキソン接合部」という用語は、遺伝子内の特定の位置を指す。この特定の位置は、イントロンの最後のヌクレオチドと、それに続くエキソンの最初のヌクレオチドとの間にある。本明細書に記載の導入遺伝子を組み込む場合、導入遺伝子は、「イントロン-エキソン接合部」内に組み込まれ得る。導入遺伝子がカーゴ(cargo)を含む場合、カーゴは、イントロンの最後のヌクレオチドの直後に組み込まれる。場合によっては、イントロン-エキソン接合部内に導入遺伝子が組み込まれると、エキソン内の配列の除去(例えば、HRを介した組み込み、およびエキソン内の配列の導入遺伝子内のカーゴへの置き換え)をもたらし得る。
【0045】
「エキソン-イントロン接合部」という用語は、遺伝子内の特定の位置を指す。この特定の位置は、エキソンの最後のヌクレオチドと、それに続くイントロンの最初のヌクレオチドとの間にある。本明細書に記載の導入遺伝子を組み込む場合、導入遺伝子は、「エキソン-イントロン接合部」内に組み込まれ得る。導入遺伝子がカーゴ(cargo)を含む場合、カーゴは、イントロンの最初のヌクレオチドの直前に組み込まれる。場合によっては、エキソン-イントロン接合部内に導入遺伝子が組み込まれると、エキソン内の配列の除去(例えば、HRを介した組み込み、およびエキソン内の配列の導入遺伝子内のカーゴへの置き換え)をもたらし得る。
【0046】
本明細書で使用される「部分コード配列(partial coding sequence)」という用語は、部分タンパク質(partial protein)をコードする核酸の配列を指す。部分コード配列は、野生型タンパク質または機能性タンパク質と比較して、1つ以下のアミノ酸を含むタンパク質をコードすることができる。部分コード配列は、野生型タンパク質または機能性タンパク質と相同性を有する部分タンパク質をコードすることができる。プロモーターに作動可能に連結される「部分コード配列」を指す場合、「部分コード配列」という用語は、目的のタンパク質のN末端をコードするヌクレオチドの配列を指す。例えば、25個のエキソンを含むATXN2遺伝子の部分コード配列は、エキソン1、1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、1~15、1~16、1~17、1~18、1~19、1~20、1~21、1~22、1~23、または1~24によって産生されるペプチドをコードするヌクレオチドを含み得る。ターミネーターに作動可能に連結される「部分コード配列」を指す場合、「部分コード配列」という用語は、目的のタンパク質のC末端をコードするヌクレオチドの配列を指す。例えば、ATXN2遺伝子の部分コード配列は、エキソン2~25、3~25、4~25、5~25、6~25、7~25、8~25、9~25、10~25、11~25、12~25、13~25、14~25、15~25、16~25、17~25、18~25、19~25、20~25、21~25、22~25、23~25、24~25、または25によって産生されるペプチドをコードするヌクレオチドを含み得る。
【0047】
「サイレンシング耐性コード配列」または「サイレンシング耐性部分コード配列」という用語は、RNAが当該配列を鋳型として使用して産生されるとき、RNAが対応するRNAi分子によってサイレンシングされ得ないか、またはサイレンシングされる可能性が低い核酸の配列を指す。これは、RNAi標的部位内の変異、または部位の不在に起因し得る。
【0048】
本文書に記載の方法および組成物は、カーゴ配列を有する導入遺伝子を使用することができる。「カーゴ(cargo)」という用語は、遺伝子の完全コード配列または部分コード配列、WTまたは改変標的と比較して単一ヌクレオチド多型(single-nucleotide polymorphisms)を保有する遺伝子の部分配列、スプライスアクセプター、スプライスドナー、プロモーター、ターミネーター、転写調節エレメント、RNAiカセット、精製タグ(例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ポリ(His)、マルトース結合タンパク質、Strepタグ、Mycタグ、AviTag、HAタグ、またはキチン結合タンパク質)、またはレポーター遺伝子(例えば、GFP、RFP、lacZ、cat、ルシフェラーゼ、puro、ネオマイシン)などのエレメントを指し得る。本明細書で定義される場合、「カーゴ」は、標的部位に組み込まれる導入遺伝子内の配列を指し得る。例えば、「カーゴ」は、2つの相同アーム間、2つのレアカッティングエンドヌクレアーゼの標的部位間、または左右のトランスポゾン末端間の導入遺伝子上の配列を指し得る。
【0049】
「相同配列」(homology sequence)という用語は、第2の核酸に対する相同性を含む核酸の配列を指す。相同配列は、例えば、「相同のアーム(arm of homology)」または「相同アーム(homology arm)」としてドナー分子上に存在し得る。相同アームは、第2の核酸との相同組換えを促進するドナー分子内の核酸の配列であり得る。一実施形態では、相同配列または相同アームは、内因性遺伝子と相同性を有する。本明細書で定義される場合、相同アームは「アーム(arm)」とも称され得る。2つの相同アームを有するドナー分子では、相同アームは、「アーム1」および「アーム2」と称され得る。一態様では、カーゴ配列は、第1および第2の相同アームに隣接することができる。
【0050】
「双方向ターミネーター(bidirectional terminator)」という用語は、センス方向またはアンチセンス方向のいずれかでRNAポリメラーゼの転写を終結させることができるターミネーターを指す。尾対尾配向の2つの一方向ターミネーターとは対照的に、双方向ターミネーターは、DNAの非キメラ配列を含み得る。双方向ターミネーターの例としては、ARO4、TRP1、TRP4、ADH1、CYC1、GAL1、GAL7、およびGAL10ターミネーターが挙げられる。
【0051】
「双方向プロモーター(bidirectional promoter)」という用語は、センス方向またはアンチセンス方向のいずれかでRNAポリメラーゼの転写を開始することができるプロモーターを指す。頭対頭配向の2つの一方向プロモーターとは対照的に、双方向プロモーターは、DNAの非キメラ配列を含み得る。双方向プロモーターの例としては、Trinklein et al.,Genome Res.14:62-66,2004に記載されているプロモーターが挙げられる(その開示全体は、任意の定義、免責事項、否認、および矛盾を除いて、参照により本明細書に援用される)。
【0052】
核酸分子の5’または3’末端は、核酸の方向性および化学的配向を指す。本明細書で定義される場合、「遺伝子の5’末端」は、開始コドンを有するエキソンを含み得るが、停止コドンを有するエキソンは含まない。本明細書で定義される場合、「遺伝子の3’末端」は、停止コドンを有するエキソンを含み得るが、開始コドンを有するエキソンは含まない。
【0053】
「RNAi」という用語は、RNA干渉を指し、RNA分子を使用して遺伝子の発現または翻訳を阻害または低減するプロセスである。RNAiは、低分子干渉RNA(siRNA)または低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を使用して誘導することができる。
【0054】
「ATXN2」遺伝子という用語は、酵素アタキシン-2をコードする遺伝子を指す。ATXN2遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_011572.3および対応する配列番号56に見出すことができる。エキソンとイントロンの境界は、配列番号56に提供される配列で定義することができる。具体的には、エキソン1は、282~532の配列を含む。エキソン2は、43397~43433の配列を含む。エキソン3は、45099~45158の配列を含む。エキソン4は、46339~46410の配列を含む。エキソン5は、46886~47036の配列を含む。エキソン6は、74000~74124の配列を含む。エキソン7は、78343~78434の配列を含む。エキソン8は、79240~79437の配列を含む。エキソン9は、80889~81067の配列を含む。エキソン10は、82953~83162の配列を含む。エキソン11は、85777~85959の配列を含む。エキソン12は、88734~88931の配列を含む。エキソン13は、89318~89425の配列を含む。エキソン14は、89697~89767の配列を含む。エキソン15は、110536~110840の配列を含む。エキソン16は、112492~112555の配列を含む。エキソン17は、113451~113603の配列を含む。エキソン18は、113985~114051の配列を含む。エキソン19は、128574~128758の配列を含む。エキソン20は、129076~129208の配列を含む。エキソン21は、134601~134654の配列を含む。エキソン22は、141957~142102の配列を含む。エキソン23は、143060~143287の配列を含む。エキソン24は、145471~145639の配列を含む。エキソン25は、146476~146504の配列を含む。イントロン1は、533~43396の配列を含む。イントロン2は、43434~45098の配列を含む。イントロン3は、45159~46338の配列を含む。イントロン4は、46411~46885の配列を含む。イントロン5は、47037~73999の配列を含む。イントロン6は、74125~78342の配列を含む。イントロン7は、78435~79239の配列を含む。イントロン8は、79438~80888の配列を含む。イントロン9は、81068~82952の配列を含む。イントロン10は、83163~85776の配列を含む。イントロン11は、85960~88733の配列を含む。イントロン12は、88932~89317の配列を含む。イントロン13は、89426~89696の配列を含む。イントロン14は、89768~110535の配列を含む。イントロン15は、110841~112491の配列を含む。イントロン16は、112556~113450の配列を含む。イントロン17は、113604~113984の配列を含む。イントロン18は、114052~128573の配列を含む。イントロン19は、128759~129075の配列を含む。イントロン20は、129209~134600の配列を含む。イントロン21は、134655~141956の配列を含む。イントロン22は、142103~143059の配列を含む。イントロン23は、143288~145470の配列を含む。イントロン24は、145640~146475の配列を含む。ATXN2における病原性変異の例としては、エキソン1におけるCAGトリヌクレオチド拡張(32以上のCAG反復)が挙げられる。非病原性変異の例としては、ClinVar受託番号VCV000522367、VCV000522368、VCV000522369、VCV000522370、VCV000128509、VCV000128508、VCV000128507、VCV000218618が挙げられる。
【0055】
「SNCA」遺伝子という用語は、タンパク質シヌクレインαをコードする遺伝子を指す。SNCA遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_011851.1および対応する配列番号55に見出すことができる。エキソンとイントロンの境界は、配列番号55に提供される配列で定義することができる。具体的には、エキソン1は、1~200の配列を含む。エキソン2は、1470~1615の配列を含む。エキソン3は、8978~9019の配列を含む。エキソン4は、14774~14916の配列を含む。エキソン5は、107885~107968の配列を含む。エキソン6は、110502~113063の配列を含む。イントロン1は、201~1469の配列を含む。イントロン2は、1616~8977の配列を含む。イントロン3は、9020~14773の配列を含む。イントロン4は、14917~107884の配列を含む。イントロン5は、107969~110501の配列を含む。開始コドンは、イントロン2に存在する。SNCAにおける病原性変異の例としては、遺伝子、A53T、G51D、E46K、およびA30Pの重複または三重化が挙げられる。非病原性変異の例としては、ClinVar受託番号VCV000350063、VCV000350064、VCV000350086、およびVCV000350093が挙げられる。
【0056】
本明細書で定義される場合、SOD1遺伝子は、酵素スーパーオキシドジスムターゼを産生する遺伝子を指す。SOD1遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_008689.1および対応する配列番号57に見出すことができる。エキソンとイントロンの境界は、配列番号57に提供される配列で定義することができる。具体的には、エキソン1は、5001~5220の配列を含む。エキソン2は、9169~9265の配列を含む。エキソン3は、11828~11897の配列を含む。エキソン4は、12637~12754の配列を含む。エキソン5は、13850~14310の配列を含む。イントロン1は、5221~9168の配列を含む。イントロン2は、9170~11827の配列を含む。イントロン3は、11898~12636の配列を含む。イントロン4は、12755~12849の配列を含む。本明細書に記載の方法は、SOD1遺伝子に組み込むための導入遺伝子を提供する。導入遺伝子は、プロモーター、部分的SOD1コード配列、およびスプライスドナーを含み得、組み込み部位は、内因性SOD1遺伝子のイントロン1、2、3、または4内であり得る。さらに、導入遺伝子は、内因性SOD1転写産物を標的とするRNAiカセット、プロモーター、部分SOD1コード配列(RNAiカセットによるサイレンシングに耐性)、およびスプライスドナーを含むことができる。導入遺伝子は、内因性SOD1遺伝子のイントロン1、2、3、または4内に組み込まれ得る。また、導入遺伝子は、スプライスアクセプター、部分SOD1コード配列(RNAiカセットによるサイレンシングに耐性)、ターミネーター、および内因性SOD1転写産物を標的とするRNAiカセットを含み得る。導入遺伝子は、内因性SOD1遺伝子のうちのイントロン1、2、3、または4内に組み込まれ得る。SOD1における病原性変異の例としては、A5V、C7F、G13R、G17S、E22K、G38R、L39V、G42S、F46C、H47R、G73S、H81R、L85V、G86R、G94R、E101G、I105F、およびL107Vが挙げられる。非病原性変異の例としては、ClinVar受託番号VCV000440292、VCV000256202、VCV000586633、およびVCV000395173が挙げられる。
【0057】
本明細書で定義される場合、RHO遺伝子は、タンパク質ロドプシンを産生する遺伝子を指す。RHO遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NC_000003.12および対応する配列番号58に見出すことができる。エキソンとイントロンの境界は、配列番号58に示される配列で定義することができる。具体的には、エキソン1は、1~456の配列を含む。エキソン2は、2238~2406の配列を含む。エキソン3は、3613~3778の配列を含む。エキソン4は、3895~4134の配列を含む。エキソン5は、4970~6706の配列を含む。イントロン1は、457~2237の配列を含む。イントロン2は、2407~3612の配列を含む。イントロン3は、3779~3894の配列を含む。イントロン4は、4135~4969の配列を含む。本明細書に記載の方法は、RHO遺伝子に組み込むための導入遺伝子を提供する。導入遺伝子は、プロモーター、部分的RHOコード配列、およびスプライスドナーを含み得、組み込み部位は、内因性RHO遺伝子のイントロン1、2、3、または4内にあり得る。さらに、導入遺伝子は、内因性RHO転写産物を標的とするRNAiカセット、プロモーター、部分RHOコード配列(RNAiカセットによるサイレンシングに耐性)、およびスプライスドナーを含むことができる。導入遺伝子は、内因性RHO遺伝子のイントロン1、2、3、または4内に組み込まれ得る。また、導入遺伝子は、スプライスアクセプター、部分RHOコード配列(RNAiカセットによるサイレンシングに耐性)、ターミネーター、および内因性RHO転写産物を標的とするRNAiカセットを含み得る。導入遺伝子は、内因性RHO遺伝子のうちのイントロン1、2、3、または4内に組み込まれ得る。RHOにおける病原性変異の例としては、ClinVar受託番号VCV000013039、VCV000013031、VCV000013017、VCV000013042、VCV000013018、VCV000625297、VCV000013055、VCV000013013、VCV000013019、VCV000013047、VCV000013016、VCV000013020、VCV000013021、VCV000013045、VCV000013054、VCV000625301、VCV000013038、VCV000013022、VCV000013035、VCV000013048、VCV000373094、VCV000013028、VCV000279882、VCV000013024、VCV000013046、VCV000029875、VCV000013049、VCV000417867、VCV000013050、VCV000143080、VCV000625303、VCV000013025、VCV000196282、VCV000013033、VCV000590911、VCV000143081、VCV000013023、VCV000013026、VCV000013043、VCV000013027、VCV000013051、VCV000013034、VCV000013036、VCV000636084、VCV000013030、VCV000523376、VCV000013044、VCV000013029、VCV000419250、VCV000013056、VCV000013052、VCV000013015、VCV000013053、VCV000013032、VCV000013014、VCV000605502、VCV000605497、VCV000442401、VCV000442400、VCV000154258、およびVCV000145614が挙げられる。非病原性変異の例としては、ClinVar受託番号VCV000343272、VCV000256383、VCV000281512、VCV000256384、VCV000256382、VCV000343286、VCV000343290、VCV000343302、VCV000343303、VCV000343306、およびVCV000606153が挙げられる。
【0058】
本明細書で定義される場合、C9orf72遺伝子は、様々な組織においてタンパク質を産生し、筋萎縮性側索硬化症に関連している遺伝子を指す。C9orf72遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_031977.1および対応する配列番号59に見出すことができる。エキソンとイントロンの境界は、配列番号59に示される配列で定義することができる。具体的には、エキソン1は、1~158の配列を含む。エキソン2は、6703~7190の配列を含む。エキソン3は、8277~8336の配列を含む。エキソン4は、11391~11486の配列を含む。エキソン5は、12218~12282の配列を含む。エキソン6は、13568~13640の配列を含む。エキソン7は、15260~15376の配列を含む。エキソン8は、17071~17306の配列を含む。エキソン9は、23160~23217の配列を含む。エキソン10は、25201~25310の配列を含む。エキソン11は、25445~27321の配列を含む。イントロン1は、159~6702の配列を含む。イントロン2は、7191~8276の配列を含む。イントロン3は、8337~11390の配列を含む。イントロン4は、11487~12217の配列を含む。イントロン5は、12283~13567の配列を含む。イントロン6は、13641~15259の配列を含む。イントロン7は、15377~17070の配列を含む。イントロン8は、17307~23159の配列を含む。イントロン9は、23218~25200の配列を含む。イントロン10は、25311~25444の配列を含む。本明細書に記載の方法は、C9orf72遺伝子に組み込むための導入遺伝子を提供する。導入遺伝子は、プロモーター、部分C9orf72コード配列、およびスプライスドナーを含み得、組み込み部位は、内因性C9orf72遺伝子のイントロン1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10内であり得る。さらに、導入遺伝子は、内因性C9orf72転写産物を標的とするRNAiカセット、プロモーター、部分C9orf72コード配列(RNAiカセットによるサイレンシングに耐性)、およびスプライスドナーを含むことができる。導入遺伝子は、内因性C9orf72遺伝子のイントロン1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10内に組み込まれ得る。また、導入遺伝子は、スプライスアクセプター、部分的なC9orf72コード配列(RNAiカセットによるサイレンシングに耐性)、ターミネーター、および内因性C9orf72転写産物を標的とするRNAiカセットを含み得る。導入遺伝子は、内因性C9orf72遺伝子のイントロン1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10内に組み込まれ得る。C9orf72における病原性変異の例としては、C9or72遺伝子の重複、三重化もしくは四重化、またはGGGGCC反復の拡張が挙げられる。非病原性変異の例としては、ClinVar受託番号VCV000366486、VCV000366521、VCV000366524、VCV000183033、およびVCV000611705が挙げられる。
【0059】
本明細書で定義される場合、CHRNA1遺伝子は、タンパク質ニコチン性コリン受容体α1サブユニットを産生する遺伝子を指す。CHRNA1遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_008172.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、CHRND遺伝子は、タンパク質ニコチン性コリン受容体δサブユニットを産生する遺伝子を指す。CHRND遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_008028.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、CHRNE遺伝子は、タンパク質ニコチン性コリン受容体εサブユニットを産生する遺伝子を指す。CHRNE遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_008029.2に見出すことができる。本明細書で定義される場合、CHRNB1遺伝子は、タンパク質ニコチン性コリン受容体β1サブユニットを産生する遺伝子を指す。CHRNB1遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_008026.1.に見出すことができる。本明細書で定義される場合、PRPS1遺伝子は、タンパク質ホスホリボシルピロリン酸合成酵素1を産生する遺伝子を指す。PRPS1遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_008407.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、LRRK2遺伝子は、タンパク質ロイシンリッチ反復キナーゼ2を産生する遺伝子を指す。LRRK2遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_011709.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、STIM1遺伝子は、タンパク質間質相互作用分子1を産生する遺伝子を指す。STIM1遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_016277.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、FGFR3遺伝子は、タンパク質線維芽細胞増殖因子受容体3を産生する遺伝子を指す。FGFR3遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_012632.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、MECP2遺伝子は、タンパク質メチル化CpG結合タンパク質2を産生する遺伝子を指す。MECP2遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_007107.2に見出すことができる。本明細書で定義される場合、ATXN1遺伝子は、タンパク質アタキシン1を産生する遺伝子を指す。ATXN1遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_011571.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、ATXN3遺伝子は、タンパク質アタキシン3を産生する遺伝子を指す。ATXN3遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_008198.2に見出すことができる。本明細書で定義される場合、CACNA1A遺伝子は、タンパク質電位依存性カルシウムチャネルサブユニットα1Aを産生する遺伝子を指す。CACNA1A遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_011569.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、ATXN7遺伝子は、タンパク質アタキシン7を産生する遺伝子を指す。ATXN7遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_008227.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、TBP遺伝子は、タンパク質TATAボックス結合タンパク質を産生する遺伝子を指す。TBP遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_008165.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、HTT遺伝子は、タンパク質ハンチンチンを産生する遺伝子を指す。HTT遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_009378.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、AR遺伝子は、タンパク質アンドロゲン受容体を産生する遺伝子を指す。AR遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_009014.2に見出すことができる。本明細書で定義される場合、FXN遺伝子は、タンパク質フラタキシンを産生する遺伝子を指す。FXN遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_008845.2に見出すことができる。本明細書で定義される場合、DMPK遺伝子は、タンパク質DM1プロテインキナーゼを産生する遺伝子を指す。DMPK遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_009784.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、PABPN1遺伝子は、タンパク質ポリ(A)結合核内タンパク質1を産生する遺伝子を指す。PABPN1遺伝子の代表的な配列は、NCBI参照配列:NG_008239.1に見出すことができる。本明細書で定義される場合、ATXN8遺伝子は、タンパク質アタキシン8を産生する遺伝子を指す。ATXN8遺伝子の代表的な配列は、ゲノム座標(GRCh38):13:54,700,000-72,800,000に見出すことができる。
【0060】
本明細書に記載の「サイレンシング耐性部分コード配列」という用語は、対応する内因性遺伝子由来の相同配列と比較して変異を有する部分コード配列を指し、変異は、対応するRNAiカセットによるサイレンシングを阻止または低減するように設計される。変異は、標的RNA配列をコードするDNA配列内のヌクレオチドの挿入、置換、または欠失であり得る。変異は、RNA転写産物への短鎖RNA分子のハイブリダイゼーションを阻止または低減するのに十分であり得る。
【0061】
本明細書で定義される場合、サイレンシング耐性部分コード配列を指すとき、「配列の欠如(lack of the sequence)」は、対応するRNAi標的部位内の1つ以上のヌクレオチドの欠失を指す。例えば、RNAiが配列GGTATCAAGACTACGAAC(内因性遺伝子のエキソン内)によって産生される転写産物を標的とする場合、この配列はまた、本明細書に記載の導入遺伝子の部分コード配列内に存在し得る。修飾遺伝子のサイレンシングを阻止するために、導入遺伝子内の部分コード配列内のRNAi標的配列を修飾することができる。具体的には、部位は、部位内のヌクレオチドの挿入、置換または欠失によって変異され得る。変異が欠失である場合、ヌクレオチドのうちの1つ以上が欠失され得る。ヌクレオチドが欠失される場合、欠失は、タンパク質機能を排除しないインフレーム欠失であるように設計されることが好ましい。
【0062】
本明細書で定義される場合、「投与」は、外因性分子の細胞への送達、提供、または導入を指すことができる。導入遺伝子またはレアカッティングエンドヌクレアーゼが細胞に投与される場合、導入遺伝子またはレアカッティングエンドヌクレアーゼが細胞内に送達、提供、または導入される。レアカッティングエンドヌクレアーゼは、精製タンパク質、核酸、または精製タンパク質と核酸の混合物として投与することができる。核酸(すなわち、RNAまたはDNA)は、レアカッティングエンドヌクレアーゼ、またはレアカッティングエンドヌクレアーゼ(例えば、gRNA)の一部をコードすることができる。投与は、脂質媒介性輸送、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、粒子注入、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介性輸送、ウイルスベクター媒介性輸送、あるいは精製タンパク質もしくは核酸、または精製タンパク質および核酸の混合物を細胞に送達するのに好適な任意の手段などの方法を通して達成することができる。
【0063】
特定の核酸またはアミノ酸配列と、特定の配列識別番号によって参照される配列との間のパーセント配列同一性は、以下のように決定される。まず、核酸またはアミノ酸配列を、BLASTNバージョン2.0.14およびBLASTPバージョン2.0.14を含むBLASTZのスタンドアロンバージョンからのBLAST2配列(Bl2seq)プログラムを使用して、特定の配列識別番号で示される配列と比較する。このスタンドアロンバージョンのBLASTZは、fr.com/blastまたはncbi.nlm.nih.govからオンラインで入手することができる。Bl2seqプログラムの使用方法については、BLASTZに付属するreadmeファイルに見出すことができる。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して、2つの配列間の比較を行う。BLASTNは、核酸配列を比較するために使用され、一方、BLASTPは、アミノ酸配列を比較するために使用される。2つの核酸配列を比較するために、オプションは、以下のように設定される:-iは、比較される第1の核酸配列を含むファイル(例えば、C:¥seq1.txt)に設定され、-jは、比較される第2の核酸配列を含むファイル(例えば、C:¥seq2.txt)に設定され、-pは、blastnに設定され、-oは、任意の所望のファイル名(例えば、C:¥output.txt)に設定され、-qは、-1に設定され、-rは、2に設定され、他の全てのオプションは、それらのデフォルト設定のままである。例えば、以下のコマンドを使用して、2つの配列間の比較を含む出力ファイルを生成することができる:C:¥Bl2seq -i c:¥seq1.txt -j c:¥seq2.txt -p blastn -o c:¥output.txt -q -1 -r 2。2つのアミノ酸配列を比較するために、Bl2seqのオプションは、以下のように設定される:-iは、比較される第1のアミノ酸配列を含むファイル(例えば、C:¥seq1.txt)に設定され、-jは、比較される第2のアミノ酸配列を含むファイル(例えば、C:¥seq2.txt)に設定され、-pは、blastpに設定され、-oは、任意の所望のファイル名(例えば、C:¥output.txt)に設定され、他の全てのオプションは、それらのデフォルト設定のままである。例えば、以下のコマンドを使用して、2つのアミノ酸配列間の比較を含む出力ファイルを生成することができる:C:¥Bl2seq -i c:¥seq1.txt -j c:¥seq2.txt -p blastp -o c:¥output.txt。2つの比較配列が相同性を共有する場合、次いで、指定された出力ファイルは、それらの相同性の領域を整列配列として提示する。2つの比較配列が相同性を共有しない場合、指定された出力ファイルは整列配列を提示しない。
【0064】
整列すると、一致の数は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が両方の配列に提示されている位置の数をカウントすることによって決定される。パーセント配列同一性は、一致の数を、特定された配列に示される配列の長さで除算するか、または繋がった長さ(例えば、特定された配列に示される配列からの100個の連続するヌクレオチドまたはアミノ酸残基)のいずれかで除算し、続いて、得られた値に100を乗算することによって決定される。パーセント配列同一性の値は、最も近い10分の1に四捨五入される。
【0065】
プロモーター(複数可)を有する双方向遺伝子修復システム
一実施形態では、本文書は、導入遺伝子および内因性遺伝子の5’末端を修飾するための方法を特徴とする。導入遺伝子は、第1および第2のプロモーターを含むことができ、第1のプロモーターは、第1の部分コード配列に作動可能に連結され、第2のプロモーターは、第2の部分コード配列に作動可能に連結されている。第1および第2の部分コード配列は、それぞれ第1および第2のスプライスドナー配列に作動可能に連結され得る(図1)。第1のプロモーター、第1の部分コード配列、および第1のスプライスドナーは、第2のプロモーター、第2の部分コード配列、および第2のスプライスドナーと頭対頭配向で配置することができる。この導入遺伝子は、イントロン内またはエキソン-イントロン接合部で内因性遺伝子に組み込まれ得る。一部の実施形態では、導入遺伝子は、レアカッティングエンドヌクレアーゼまたはトランスポゾンを使用して内因性遺伝子に組み込まれ得る。一実施形態では、第1および第2のプロモーター、第1および第2の部分コード配列、ならびに第1および第2のスプライスドナーを含む導入遺伝子は、追加の配列、例えば、ウイルス逆位末端反復(例えば、アデノ随伴ウイルス逆位反復)に隣接することができる。これらの導入遺伝子は、レアカッティングエンドヌクレアーゼを使用して標的化二本鎖切断を介して内因性遺伝子に組み込まれ得る。
【0066】
別の実施形態では、第1および第2のプロモーター、第1および第2の部分コード配列、ならびに第1および第2のスプライスドナーを含む導入遺伝子は、第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位に隣接することができる。これらの導入遺伝子は、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼを使用した標的化二本鎖切断を介して内因性遺伝子に組み込むことができ、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼは、内因性遺伝子内の配列を切断し、導入遺伝子内の隣接標的部位を切断する。
【0067】
別の実施形態では、第1および第2のプロモーター、第1および第2の部分コード配列、ならびに第1および第2のスプライスドナーを含む導入遺伝子は、第1および第2の相同アームに隣接することができる。これらの導入遺伝子は、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼを使用した標的二本鎖切断を介して内因性遺伝子に組み込むことができ、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼは、内因性遺伝子を切断する。
【0068】
別の実施形態では、第1および第2のプロモーター、第1および第2の部分コード配列、ならびに第1および第2のスプライスドナーを含む導入遺伝子は、第1および第2の相同アームならびに第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位に隣接することができる。これらの導入遺伝子は、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼを使用した標的化二本鎖切断を介して内因性遺伝子に組み込むことができ、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼは、内因性遺伝子内の配列を切断し、導入遺伝子内の隣接標的部位を切断する。ベクター内の第1および第2の標的部位は、第1および第2の相同アームに隣接することができる。あるいは、第1の標的部位もしくは第2の標的部位、または第1および第2の標的部位のブースは、相同アーム内であり得る。
【0069】
別の実施形態では、第1および第2のプロモーター、第1および第2の部分コード配列、ならびに第1および第2のスプライスドナーを含む導入遺伝子は、左右のトランスポゾン末端に隣接することができる。これらの導入遺伝子は、トランスポザーゼを使用した転位を通して内因性遺伝子に組み込まれ得る。本明細書に記載されるように、トランスポザーゼは、CRISPR関連トランスポザーゼであり得る。
【0070】
一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、双方向プロモーターで置き換えることができる。他の実施形態では、導入遺伝子は、第1のプロモーターと第2のプロモーターとの間に尾対尾配向で配置された第1および第2のターミネーターをさらに含むことができる(図1)。あるいは、第1および第2のターミネーターは、双方向ターミネーターで置換することができる。
【0071】
一実施形態では、本文書は、内因性遺伝子の5’末端を修飾するための方法を特徴とし、内因性遺伝子は、2つのコードエキソン間の少なくとも1つのイントロンを有する。イントロンは、通常のメッセンジャーRNAプロセシング機構によって前駆体メッセンジャーRNAから除去される任意のイントロンであり得る。イントロンは、20bp~500kb超であり得、スプライスドナー部位、分岐配列、およびアクセプター部位を含む要素を含む。内因性遺伝子の5’末端の修飾のための本明細書に開示される導入遺伝子は、複数の機能性エレメントを含むことができ、レアカッティングエンドヌクレアーゼの標的部位、相同アーム、スプライスアクセプター配列、コード配列、プロモーター、および転写ターミネーターを含む、(図1)。
【0072】
実施形態では、導入遺伝子の組み込みのための位置は、イントロンまたはイントロン-エキソン接合部であってもよい。イントロンを標的とする場合、部分コード配列は、内因性遺伝子内の当該イントロンの前のエキソンによって産生されるペプチドをコードする配列を含むことができる。例えば、導入遺伝子が、12個のエキソンを有する内因性遺伝子のイントロン2に組み込まれるように設計される場合、部分コード配列は、内因性遺伝子のエキソン1および2によって産生されるペプチドをコードすることができる。エキソン-イントロン接合部を標的とする場合、導入遺伝子は、イントロン配列が保存されるようにエキソン-イントロン接合部に組み込まれ得る。一実施形態では、組み込み後、イントロン配列が保存され、上流のエキソン配列が保存される(すなわち、導入遺伝子由来のヌクレオチドが、エキソン内の最後のヌクレオチドとイントロン内の最初のヌクレオチドとの間に追加される)。あるいは、一実施形態では、組み込み後、イントロン配列は保存されるが、エキソン配列の1つ以上のヌクレオチドが除去される。
【0073】
一実施形態では、導入遺伝子は、レアカッティングエンドヌクレアーゼの2つの標的部位を含む。標的部位は、レアカッティングエンドヌクレアーゼによる切断に好適な配列および鎖長であり得る。標的部位は、CRISPR系、TALエフェクターヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼもしくはメガヌクレアーゼ、あるいはCRISPR系、TALEヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼもしくはメガヌクレアーゼ、または任意の他のレアカッティングエンドヌクレアーゼの組み合わせによる切断に適し得る。標的部位は、レアカッティングエンドヌクレアーゼによる切断がベクターから導入遺伝子の遊離をもたらすように位置付けすることができる。ベクターは、ウイルスベクター(例えば、アデノ随伴ベクター)または非ウイルスベクター(例えば、プラスミド、ミニサークルベクター)を含むことができる。導入遺伝子が2つの標的部位を含む場合、標的部位は、同じ配列であり得るか(すなわち、同じレアカッティングエンドヌクレアーゼによって標的化される)、またはそれらは、異なる配列であり得る(すなわち、2つ以上の異なるレアカッティングエンドヌクレアーゼによって標的化される)。
【0074】
一部の実施形態では、本明細書で提供される導入遺伝子は、トランスポザーゼにより組み込まれ得る。トランスポザーゼには、CRISPRトランスポザーゼが含まれ得る(Strecker et al.,Science 10.1126/science.aax9181,2019、Klompe et al.,Nature,10.1038/s41586-019-1323-z,2019)。トランスポザーゼは、第1および第2のスプライスアクセプター配列、第1および第2のコード配列、1つの双方向ターミネーター、または第1および第2のターミネーター(図1)、ならびにトランスポゾンの左右の末端を含む導入遺伝子と組み合わせて使用することができる。CRISPRトランスポザーゼは、タンパク質tnsB、tnsC、およびtniQと共に、TypeV-U5、C2C5 CRISPRタンパク質、Cas12kを含み得る。一部の実施形態では、Cas12kは、Scytonema hofmanni(配列番号30)またはAnabaena cylindrica(配列番号31)由来であり得る。一実施形態では、トランスポゾンの左末端(配列番号32)および右末端(配列番号33)を含む本明細書に記載の導入遺伝子は、ShCas12k、tnsB、tnsC、TniQ、およびgRNA(配列番号44)と共に細胞に送達することができる。あるいは、CRISPRトランスポザーゼは、Cas7、Cas8、およびTniQを含むヘルパータンパク質と共に、Cas6タンパク質を含み得る。一実施形態では、トランスポゾンの左末端(配列番号41)および右末端(配列番号43)を含む本明細書に記載の導入遺伝子は、Cas6(配列番号37)、Cas7(配列番号36)、Cas8(配列番号35)、TniQ(配列番号34)、TnsA(配列番号38)、TnsB(配列番号39)、TnsC(配列番号40)、およびgRNA(配列番号42)と共に真核細胞に送達され得る。タンパク質は、精製タンパク質として細胞に直接投与され得るか、RNAまたはDNAにコードされ得る。RNAまたはDNAにコードされる場合、配列は、真核細胞内での発現のためにコドンが最適化され得る。gRNA(配列番号42)をRNApolIIIプロモーターの下流に配置し、ポリ(T)ターミネーターで終結させることができる。
【0075】
一実施形態では、導入遺伝子は、第1および第2の標的部位、ならびに第1および第2の相同アームを含む。第1および第2の相同アームは、所望の組み込み部位で、またはその近傍で、ゲノム配列と相同的な配列を含むことができる。相同アームは、所望の組み込み部位の配列、またはその近傍の配列との相同組換えに関与するための好適な鎖長であり得る。各相同アームの鎖長は、50nt~10,000nt(例えば、50nt、100nt、200nt、300nt、400nt、500nt、600nt、700nt、800nt、900nt、1,000nt、2,000nt、3,000nt、4,000nt、5,000nt、6,000nt、7,000nt、8,000nt、9,000nt、10,000nt)であり得る。一実施形態では、相同アームは、レアカッティングエンドヌクレアーゼの標的部位を含む機能性エレメントを含むことができる。一実施形態では、第1の相同アーム(例えば、左の相同アーム)は、標的となるエキソンまたはイントロンと相同的な配列を含むことができ、第2の相同アームは、第1の相同アームの下流のゲノム配列と相同的な配列を含むことができる。第1の相同アームは、導入遺伝子上のプロモーターからの転写方向に対してスプライスアクセプター機能を有してはならない。配列がスプライスアクセプター機能を含むかどうかを決定するために、インシリコ分析および実験的な試験を含むいくつかのステップを行うことができる。スプライスアクセプター機能の可能性があるかどうかを決定するために、第2の相同アームに望まれる配列を、コンセンサス分岐配列(例えばYTRAC)およびスプライスアクセプター部位(例えばYリッチNCAGG)について検索することができる。分岐またはスプライスアクセプター配列が存在する場合、機能を破壊するために単一ヌクレオチド多型を導入するか、またはそのような配列を含まない異なるが隣接する配列を選択することができる。第1の相同アームがスプライスアクセプター機能を有するかどうかを実験的に決定するために、レポーター遺伝子内のイントロン内に第1の相同アームを含む合成構築物を構築することができる。次いで、構築物を適切な細胞型に投与し、レポーター遺伝子活性を評価することによって、スプライシング機能についてモニタリングすることができる。
【0076】
一実施形態では、導入遺伝子は、2つのスプライスドナー配列を含み、本明細書では、第1および第2のスプライスドナー配列と称される。第1および第2のスプライスドナー配列は、導入遺伝子内で反対方向(すなわち、頭対頭配向)、かつ隣接する内部配列(すなわち、部分コード配列およびプロモーター)に位置付けられる。導入遺伝子がフォワード方向またはリバース方向にイントロンに組み込まれると、スプライスドナー配列は、対応するプレmRNA内でのイントロンのスプライシングの開始を促進する。第1および第2のスプライスドナー配列は、同じ配列または異なる配列であり得る。片方または両方のスプライスドナー配列は、導入遺伝子が組み込まれるイントロンのスプライスドナー配列であり得る。片方または両方のスプライスドナー配列は、合成スプライスドナー配列または異なる遺伝子由来のイントロンからのスプライスドナー配列であり得る。
【0077】
一実施形態では、導入遺伝子は、第1および第2のスプライスドナー配列に作動可能に連結された第1および第2のコード配列を含む。第1および第2のコード配列は、導入遺伝子内で反対方向(すなわち、頭対頭配向)に位置付けられる。導入遺伝子がフォワード方向またはリバース方向に内因性遺伝子に組み込まれると、第1および第2のコード配列は、導入遺伝子内に位置するプロモーターによってmRNAに転写される。コード配列は、欠陥のあるコード配列を修正する、変異を導入する、または新規のペプチド配列を導入するように設計され得る。第1および第2のコード配列は、同じ核酸配列および同じタンパク質のコードであり得る。あるいは、第1および第2のコード配列は、異なる核酸配列であり、かつ同じタンパク質をコードしてもよい(すなわち、コドン縮重を使用する)。コード配列は、精製タグ(例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ポリ(His)、マルトース結合タンパク質、Strepタグ、Mycタグ、AviTag、HAタグ、またはキチン結合タンパク質)またはレポータータンパク質(例えば、GFP、RFP、lacZ、cat、ルシフェラーゼ、puro、ネオマイシン)をコードすることができる。
【0078】
一実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物を使用して、内因性遺伝子の5’末端を修飾することによって、内因性遺伝子によってコードされるタンパク質のN末端の修飾をもたらすことができる。内因性遺伝子のコード配列の5’末端の修飾は、最初のコードエキソンから最初のエキソンと最後のエキソンとの間にあるエキソンまでの置き換えを含み得る。例えば、遺伝子が12個のエキソンを含む場合、修飾は、エキソン1、または1~2、または1~3、または1~4、または1~5、または1~6、または1~7、または1~8、または1~9、または1~10、または1~11の置き換えを含み得る。一実施形態では、置換される内因性エキソンは、類似の配列で置き換えることができる。例えば、導入遺伝子の第1または第2のコード配列は、エキソン1、または1~2、または1~3、または1~4、または1~5、または1~6、または1~7、または1~8、または1~9、または1~10、または1~11を含み得る。導入遺伝子は、導入遺伝子のコード配列内の最後のエキソンであるエキソンの下流のイントロン内に、内因性遺伝子内で組み込まれ得る(図3)。あるいは、導入遺伝子は、導入遺伝子のコード配列内の最後のエキソンに対応するエキソン内に組み込まれ得る(図8)。導入遺伝子は、4.7kb以下であるように設計され、AAVベクターおよび粒子に組み込まれ、インビボで標的細胞に送達され得る。
【0079】
一実施形態では、導入遺伝子は、第1および第2のコード配列に作動可能に連結された双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーターを含むことができる。双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーターは、導入遺伝子内に反対方向(すなわち、頭対頭配向)に位置付けられる。導入遺伝子がフォワード方向またはリバース方向に内因性遺伝子に組み込まれると、双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーターは、第1および第2のコード配列の転写を開始する。第1および第2のプロモーターは、同一のプロモーターまたは異なるプロモーターであり得る。
【0080】
一実施形態では、導入遺伝子は、第1および第2のコード配列に作動可能に連結された双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーターを含むことができる。双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーターは、導入遺伝子内に反対方向(すなわち、頭対頭配向)に位置付けられる。導入遺伝子がフォワード方向またはリバース方向に内因性遺伝子に組み込まれると、双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーターは、第1および第2のコード配列の転写を開始する。第1および第2のプロモーターは、同一のプロモーターまたは異なるプロモーターであり得る。プロモーターは、例えば、CMV、EF1α、SV40、PGK1、Ubc、ヒトβアクチン、CAG、または部分コード配列の転写を開始するのに十分な活性を有する任意のプロモーターから選択され得る。理論に束縛されるものではないが、リバース方向のプロモーターは、二本鎖RNAの生成を引き起こし、それによって、組み込み部位の上流の遺伝子発現のサイレンシングをもたらし得る。さらに、フォワード方向のプロモーターは、(例えば、コード配列のコドン縮重により)同じサイレンシングを受けず、RNAの転写を開始し得る。プロモーターによってリバース方向に産生されたRNAからの潜在的なRNAiを低減するための方法も本明細書に記載される(図5)。
【0081】
一実施形態では、導入遺伝子は、第1のプロモーターと第2のプロモーターとの間に、双方向ターミネーター、または第1および第2のターミネーターを含むことができる(図1)。双方向ターミネーター、または第1および第2のターミネーターは、導入遺伝子内に反対方向(すなわち、尾対尾配向)に位置付けられる。導入遺伝子がフォワード方向またはリバース方向に内因性遺伝子に組み込まれると、双方向ターミネーター、または第1および第2のターミネーターは、内因性遺伝子のプロモーターからの転写を終結させる。第1および第2のターミネーターは、同一のターミネーターまたは異なるターミネーターであり得る。
【0082】
一実施形態では、本文書は、第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位、第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2のコード配列、ならびに1つの双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーターを含む導入遺伝子を提供する。導入遺伝子は、非相同末端結合および代替非相同末端結合を含む非相同性依存的方法を介して、またはマイクロホモロジー媒介末端結合によって、内因性遺伝子に組み込むことができる。一態様では、導入遺伝子は、内因性遺伝子内のイントロンに組み込まれる(図2)。
【0083】
別の実施形態では、本文書は、第1および第2の相同アーム、第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位、第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2のコード配列、ならびに1つの双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーターを含む導入遺伝子を提供する。導入遺伝子は、相同性に依存的な方法(例えば、合成依存性鎖アニーリングおよびマイクロホモロジー媒介末端結合)および相同性に非依存的な方法(例えば、非相同末端結合および代替非相同末端結合)の両方を介して、内因性遺伝子に組み込むことができる。一態様では、導入遺伝子は、内因性遺伝子内のイントロンに組み込まれる(図3)。別の態様では、導入遺伝子は、内因性遺伝子のエキソン内に組み込まれる(図8)。
【0084】
別の実施形態では、本文書は、第1および第2の相同アーム、第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2のコード配列、ならびに1つの双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーターを含む導入遺伝子を提供する(図1)。別の実施形態では、本文書は、第1および第2のコード配列、第1および第2のスプライスドナー配列、ならびに1つの双方向プロモーター、または第1および第2のプロモーターを含む導入遺伝子を提供する。
【0085】
別の実施形態では、本文書は、第1および第2の相同アーム、第1および第2のコード配列、第1および第2のスプライスドナー配列、1つの双方向ターミネーター、または第1および第2のターミネーター、ならびに第1および第2の追加配列を含む導入遺伝子を提供する(図1)。追加の配列は、5’末端および3’末端に導入遺伝子上に存在する任意の追加の配列であり得るが、追加の配列は、スプライスアクセプターまたはスプライスドナーとして機能する任意のエレメントを含むべきではない。追加の配列は、例えば、アデノ随伴ウイルスゲノムの逆位末端反復、または左右のトランスポゾン末端であり得る。
【0086】
別の実施形態では、本文書は、アデノ随伴ウイルスおよびアデノウイルスを含むウイルスベクター内の導入遺伝子を提供し、導入遺伝子は、第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2のコード配列、ならびに1つの双方向ターミネーター、または第1および第2のターミネーターを含む。ウイルスベクターの逆位末端反復に起因して、導入遺伝子はまた、第1および第2の追加の配列を含む。
【0087】
別の実施形態では、本文書は、アデノ随伴ウイルスおよびアデノウイルスを含むウイルスベクター内の導入遺伝子を提供し、導入遺伝子は、第1および第2の相同アーム、第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2のコード配列、ならびに1つの双方向プロモーターまたは第1および第2のプロモーターを含む。ウイルスベクターの逆位末端反復に起因して、導入遺伝子はまた、第1および第2の追加の配列を含む。
【0088】
別の態様では、組み込みのための導入遺伝子は、各結果で所望の効果を創出しながら、複数の修復経路を通して組み込むように設計され得る。例として、導入遺伝子は、第1および第2のアーム相同アーム、第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位、第1および第2のコード配列、第1および第2のプロモーターを含み得、AAVゲノム内に(すなわち、145ヌクレオチド逆位末端反復に隣接して)保有され得る。レアカッティングエンドヌクレアーゼによる発現後、以下の結果が生じ得る:1)NHEJによる標的部位におけるAAVゲノム全体のフォワードもしくはリバース方向の組み込み、2)NHEJによる標的部位における第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位間の配列のフォワードもしくはリバース方向の組み込み、3)第1および第2の相同アームを使用したHRによる組み込み、または4)上記結果の任意の組み合わせ。上述の結果のうちのいずれかを伴う組み込みの後、本明細書に記載の導入遺伝子は、内因性遺伝子によって産生されるタンパク質配列を修正または改変することができる。
【0089】
一部の実施形態では、本明細書に記載される導入遺伝子は、スプライスドナー、部分コード配列、プロモーター、相同アーム、左右のトランスポザーゼ末端、ならびにレアカッティングエンドヌクレアーゼによる切断部位を含むエレメントの組み合わせを有し得る。一実施形態では、組み合わせは、5’から3’にであり得る。
【0090】
一部の実施形態では、本明細書に記載される導入遺伝子は、スプライスアクセプター、部分コード配列、ターミネーター、相同アーム、左右のトランスポザーゼ末端、ならびにレアカッティングエンドヌクレアーゼによる切断部位を含むエレメントの組み合わせを有し得る。
【0091】
一実施形態では、組み合わせは、5’から3’へ、[スプライスドナー1 RC]-[部分コード配列1 RC]-[プロモーター1 RC]-[プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]であり得る(RCは逆相補を表す)。この組み合わせは、直鎖DNA分子またはAAV分子上に保有され得、標的遺伝子の標的切断を介してNHEJによって組み込まれ得る。
【0092】
別の実施形態では、組み合わせは、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ切断部位1]-[スプライスドナー1 RC]-[部分コード配列1 RC]-[プロモーター1 RC]-[プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ切断部位2]であり得る。
【0093】
別の実施形態では、組み合わせは、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ切断部位1]-[相同アーム1]-[スプライスドナー1 RC]-[部分コード配列1 RC]-[プロモーター1 RC]-[プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]-[相同アーム2]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ切断部位2]であり得る。この組み合わせでは、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼを使用して、HRおよびNHEJを促進することができる。例えば、単一のレアカッティングヌクレアーゼは、標的遺伝子(すなわち、所望のイントロン)を切断することができ、相同アームに隣接する切断部位は、イントロン内の同じ標的配列であるように設計することができる。
【0094】
別の実施形態では、組み合わせは、5’から3’へ、[相同アーム1+レアカッティングエンドヌクレアーゼ切断部位1]-[スプライスドナー1 RC]-[部分コード配列1 RC]-[プロモーター1 RC]-[プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]-[相同アーム2]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ切断部位2]であり得る。この組み合わせでは、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼは、HRおよびNHEJを促進することができる。例えば、単一レアカッティングヌクレアーゼは、相同アーム1内、相同アーム2の下流、およびゲノム標的部位(すなわち、相同アーム1の配列と相同性を有する部位)で切断することができる。
【0095】
別の実施形態では、組み合わせは、5’から3’へ、[トランスポザーゼの左末端]-[スプライスドナー1 RC]-[部分コード配列1 RC]-[プロモーター1 RC]-[プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]-[トランスポザーゼの右末端]であり得る。全ての実施形態では、スプライスドナー1およびスプライスドナー2は、同一または異なる配列であってもよく、部分コード配列1および部分コード配列2は、同一または異なる配列であってもよく、プロモーター1およびプロモーター2は、同一または異なる配列であってもよい。
【0096】
実施形態では、構造[レアカッティングエンドヌクレアーゼ切断部位1]-[相同アーム1]-[スプライスドナー1 RC]-[部分コード配列1]-[プロモーター1 RC]-[プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]-[相同アーム2]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ切断部位2]を含む導入遺伝子は、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼの送達を通してDNAに組み込まれ得る。1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼが送達される場合、レアカッティングエンドヌクレアーゼは、レアカッティングエンドヌクレアーゼ切断部位1および2での切断によって導入遺伝子を遊離することができる。さらに、同じレアカッティングエンドヌクレアーゼは、HRまたはNHEJを介した挿入をシミュレートする、標的遺伝子内の切断を生成することができる。
【0097】
他の実施形態では、構造[相同アーム1+レアカッティングエンドヌクレアーゼ切断部位1]-[スプライスドナー1 RC]-[部分コード配列1]-[プロモーター1 RC]-[プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]-[相同アーム2]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ切断部位1]を含む導入遺伝子は、1つ以上のレアカッティングエンドヌクレアーゼの送達によりDNAに組み込まれ得る。1つのレアカッティングエンドヌクレアーゼが送達される場合、レアカッティングエンドヌクレアーゼは、レアカッティングエンドヌクレアーゼ切断部位1および2での切断によって導入遺伝子を遊離することができる。さらに、同じレアカッティングエンドヌクレアーゼは、HRまたはNHEJを介した挿入をシミュレートする、標的遺伝子内の切断を生成することができる。HRによる組み込みは、切断が組み込み部位の上流(すなわち、相同アーム内)にあるときに生じ得る。
【0098】
実施形態では、部分コード配列は、コドン調整され得る。コドン調整は、1)二本鎖RNA対合の低減(図5)、および2)タンパク質発現の最適化を目的とすることができる。第1および第2のプロモーターに作動可能に連結された第1および第2の部分コード配列を含む導入遺伝子は、内因性遺伝子に組み込まれ、第1および第2の部分コード配列が互いに相同的で、内因性遺伝子である場合、二本鎖RNAが産生され得る(図5)。部分コード配列は、RNA対合を最小限に抑えるようにコドン調整することができる。一実施形態では、コドン最適化は、完全であり、第1および第2の部分コード配列に関して異なり得る。例えば、部分コード配列1は、部分コード配列2とは異なるヌクレオチド配列を有し得、部分コード配列1および2の両方は、目的の内因性遺伝子内の対応する配列とは異なる配列であり得る。
【0099】
別の実施形態では、コドン最適化は、第1および第2の部分コード配列間で分割され得る。例えば、第1の部分コード配列は、コドン未調整配列(すなわち、目的の内因性遺伝子内の対応する配列と相同である)と、コドン調整配列との混合物を有することができる。この実施例では、第2の部分コード配列は、反対の調整を有することができる。例えば、200ヌクレオチドの部分コード配列1および2内では、部分コード配列1のヌクレオチド1~100は、目的の内因性遺伝子内の配列と相同であり得、ヌクレオチド101~200は、目的の内因性遺伝子と最小限の配列類似性を有するようにコドン調整することができ、部分コード配列2のヌクレオチド1~100は、目的の内因性遺伝子と最小限の配列類似性を有するようにコドン調整することができ、ヌクレオチド101~200は、目的の内因性遺伝子内の配列と相同であり得る。
【0100】
一実施形態では、ゲノム修飾は、内因性ATXN2ゲノム配列中の導入遺伝子の挿入である。導入遺伝子は、ATXN2タンパク質の部分コード配列を含み得る。部分コード配列は、野生型ATXN2遺伝子内のコード配列、または野生型ATXN2遺伝子の機能性バリアント、ATXN2遺伝子のコドン調整バージョン、または変異体ATXN2遺伝子と相同であり得る。一実施形態では、部分的ATXN2タンパク質をコードする導入遺伝子は、内因性ATXN2遺伝子のイントロン1に挿入される(図3および4)。
【0101】
一実施形態では、本明細書で提供される導入遺伝子は、ATXN2遺伝子のエキソン1によって産生されるペプチドをコードする第1および第2の部分コード配列を含む(図7)。導入遺伝子は、イントロン1内の内因性ATXN2遺伝子内に、またはエキソン1-イントロン1接合部に組み込まれ得る。この実施形態は、ATXN2のエキソン1中の拡張トリヌクレオチド反復を含む細胞において特に有用である。
【0102】
本明細書に提供される方法および組成物を使用して、細胞内のタンパク質をコードする遺伝子を修飾することができる。内因性タンパク質としては、フィブリノーゲン、プロトロンビン、組織因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子(ハーゲマン因子)、第XIII因子(フィブリン安定化因子)、フォン・ヴィレブランド因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(フィッツジェラルド因子)、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII因子、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤、プラスミノーゲン、α2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2、グルコセレブロシダーゼ(GBA)、α-ガラクトシダーゼA(GLA)、イズロン酸スルファターゼ(IDS)、イズロニダーゼ(IDUA)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(SMPD1)、MMAA、MMAB、MMACHC、MMADHC(C2orf25)、MTRR、LMBRD1、MTR、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ(PCC)(PCCA、および/もしくはPCCBサブユニット)、グルコース-6-リン酸トランスポーター(G6PT)タンパク質またはグルコース-6-ホスファターゼ(G6Pase)、LDL受容体(LDLR)、ApoB、LDLRAP-1、PCSK9、ミトコンドリアタンパク質(NAGS(N-アセチルグルタミン酸合成酵素)、CPS1(カルバモイルリン酸合成酵素I)、およびOTC(オルニチントランスカルバミラーゼ)など)、ASS(アルギニノコハク酸合成酵素)、ASL(アルギニノスクシナーゼ酸リアーゼ)および/もしくはARG1(アルギナーゼ)、ならびに/または溶質担体ファミリー25(SLC25A13、アスパラギン酸/グルタミン酸担体)タンパク質、UGT1A1もしくはUDPグルクロンシルトランスフェラーゼポリペプチドA1、フマリルアセト酢酸ヒドロリアーゼ(FAH)、アラニングリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT)タンパク質、グリオキシル酸レダクターゼ/ヒドロキシピルビン酸レダクターゼ(GRHPR)タンパク質、トランスサイレチン遺伝子(TTR)タンパク質、ATP7Bタンパク質、フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)タンパク質、USH2Aタンパク質、ATXNタンパク質、ならびにリポタンパク質リアーゼ(LPL)タンパク質、が挙げられる。
【0103】
導入遺伝子は、機能喪失変異または機能獲得変異を保有する内因性遺伝子を修飾するための配列を含むことができる。変異には、以下の遺伝的疾患をもたらすものが含まれ得る:軟骨無形成症、色覚異常、酸性マルターゼ欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症、副腎白質ジストロフィー、アイカルディ症候群、α1アンチトリプシン欠損症、αサラセミア、アンドロゲン不感性症候群、アペール症候群(pert syndrome)、不整脈源性右室異形成、毛細血管拡張性運動失調症、バース症候群、βサラセミア、青色ゴム乳首様母斑症候群、カナバン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、ネコ鳴き症候群、嚢胞性線維症、ダーカム病、外胚葉異形成、ファンコニ貧血、進行性骨化性線維異形成症、脆弱X症候群、ガラクトース血症、全身性ガングリオシドーシス(例えば、GM1)、ヘモクロマトーシス、β-グロビン(HbC)の6番目のコドンにおけるヘモグロビンC変異、血友病、ハンチントン病、低ホスファターゼ症、クラインフェルター症候群、クラッベ病、ランガー・ギディオン症候群、白血球粘着不全症、白質ジストロフィー、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖症(MPS)、爪膝蓋骨症候群、腎性尿崩症、神経線維腫症、ニーマン・ピック病、骨形成不全症、ポルフィリン症、プラダー・ウィリー症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群、サンフィリッポ症候群、重症複合免疫不全症(SCID)、シュワックマン症候群、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血)、スミス・マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ・サックス病、血小板減少-橈骨欠損(TAR)症候群、トリーチャー・コリンズ症候群、トリソミー、結節性硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ワールデンブルグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット・アルドリッチ症候群、X連鎖リンパ球増殖症候群、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病、およびテイ・サックス病)、フォン・ヴィレブランド病、アッシャー症候群、多発性嚢胞腎疾患、脊髄小脳失調症2型、球脊髄性筋萎縮症、フリードライヒ運動失調症、および筋強直性ジストロフィー2型。
【0104】
本明細書に記載されるように、導入遺伝子は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクター内に保有され得る。ベクターは、環状または直鎖の二本鎖または一本鎖のDNAの形態であり得る。ドナー分子は、安定性または細胞更新(cellular update)を促進する試薬とコンジュゲートまたは会合することができる。試薬は、脂質、リン酸カルシウム、カチオン性ポリマー、DEAE-デキストラン、デンドリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過性ペプチド、ガス封入マイクロバブル、または磁気ビーズであり得る。ドナー分子は、ウイルス粒子に組み込むことができる。ウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ベクター(AAV)、単純ヘルペス、ポックスウイルス、ハイブリッドアデノウイルスベクター、エプスタイン・バーウイルス、レンチウイルス、または単純ヘルペスウイルスであり得る。
【0105】
RNAiカセットを用いた遺伝子修復系
別の実施形態では、本明細書に記載の方法は、サイレンシングに起因する失われたRNA/タンパク質を同時に置き換えながら、内因性遺伝子をサイレンシングするために使用され得る。一実施形態では、本方法は、導入遺伝子を細胞に投与することを含み得、導入遺伝子は、以下の2つの機能性エレメントを含む:1)サイレンシング配列、および2)サイレンシングされたタンパク質と相同であるが、サイレンシングに耐性であるタンパク質をコードする完全コード配列(図9)。2つの機能性エレメントは、別個の導入遺伝子上、または同一の導入遺伝子上にあり得る。別の実施形態では、本方法は、細胞に導入遺伝子を投与することを含み得、導入遺伝子は、目的の内因性遺伝子に組み込まれ、かつ1)サイレンシング配列、および2)サイレンシングに耐性である、変異遺伝子の修復のための部分的または完全なコード配列(図12~17)を含む。
【0106】
サイレンシング配列は、プロモーター、標的核酸をサイレンシングするように機能する核酸配列、およびターミネーターを含むことができる。核酸配列は、標的核酸(例えば、マイクロRNA、ヘアピンRNA、アンチセンスRNA)内で遺伝子のサイレンシングを誘導することができる形式であり得る。核酸配列は、標的遺伝子のmRNAの異なる領域を標的とすることができ、5’UTR、コード配列、または3’UTRを含む。
【0107】
一実施形態では、本文書は、図13に記載の導入遺伝子を細胞に投与し、当該導入遺伝子を目的の内因性遺伝子に組み込むことによって、目的のタンパク質の産生をサイレンシングさせ、置き換える方法を説明する。一実施形態では、導入遺伝子は、スプライスアクセプター、部分コード配列(サイレンシングに耐性である)、ターミネーター、および目的の内因性遺伝子をサイレンシングするように設計されたRNAiカセットを含むことができる。スプライスアクセプターは、ターミネーターに作動可能に連結され得る部分コード配列に作動可能に連結され得る。スプライスアクセプター、部分コード配列、ターミネーター、およびRNAiカセットは、第1および第2の相同アーム、または左右のトランスポゾン末端に隣接することができる。導入遺伝子は、目的の内因性遺伝子内のイントロンまたは目的の内因性遺伝子内のイントロン-エキソン接合部に組み込まれ得る。部分コード配列は、導入遺伝子が組み込まれる位置と比較して、残りのペプチド配列をコードすることができる。例えば、導入遺伝子が5個のエキソンを含む遺伝子のイントロン3に組み込まれる場合(図13)、部分コード配列は、内因性遺伝子のエキソン4およびエキソン5によって産生されるペプチドをコードすることができる。これらの導入遺伝子内のRNAiカセットは、エキソン4もしくは5または3’UTR内の配列を標的とすることができる。したがって、導入遺伝子内の部分コード配列内の対応する標的部位は、修飾された内因性アレルのサイレンシングを阻止するように修飾され得る。他の実施形態では、導入遺伝子は、第1および第2のスプライスアクセプター、第1および第2の部分コード配列(両方ともサイレンシングに耐性である)、第1および第2のターミネーター、ならびにRNAiカセットを含むことができる。これらの導入遺伝子は、追加の配列(例えば、ウイルスITR)、第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位、左右のトランスポゾン末端、または第1および第2の相同アームと第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位との両方に隣接することができる。一実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[相同アーム1]-[スプライスアクセプター]-[部分コード配列]-[ターミネーター]-[RNAiカセット]-[相同アーム2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[トランスポザーゼの左末端]-[スプライスアクセプター]-[部分コード配列]-[ターミネーター]-[RNAiカセット]-[トランスポザーゼの右末端]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[追加配列1]-[スプライスアクセプター1]-[部分コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[部分コード配列2 RC]-[スプライスアクセプター2 RC]-[追加配列2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位1]-[スプライスアクセプター1]-[部分コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[部分コード配列2 RC]-[スプライスアクセプター2 RC]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位1]-[相同アーム1]-[スプライスアクセプター1]-[部分コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[部分コード配列2 RC]-[スプライスアクセプター2 RC]-[相同アーム2]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[トランスポザーゼの左末端]-[スプライスアクセプター1]-[部分コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[部分コード配列2 RC]-[スプライスアクセプター2 RC]-[トランスポザーゼの右末端]であり得る。
【0108】
一実施形態では、本文書は、図14に記載の導入遺伝子を細胞に投与し、当該導入遺伝子を目的の内因性遺伝子に組み込むことによって、目的のタンパク質の産生をサイレンシングさせ、置き換える方法を説明する。一実施形態では、導入遺伝子は、スプライスアクセプター、2A配列、完全コード配列(サイレンシングに耐性である)、ターミネーター、および目的の内因性遺伝子をサイレンシングするように設計されたRNAiカセットを含むことができる。スプライスアクセプターは、2A配列に作動可能に連結され得、ターミネーターに作動可能に連結され得る完全コード配列に作動可能に連結され得る。スプライスアクセプター、2A配列、完全コード配列、ターミネーター、およびRNAiカセットは、第1および第2の相同アーム、または左右のトランスポゾン末端に隣接することができる。導入遺伝子は、目的の内因性遺伝子内のイントロンまたは目的の内因性遺伝子内のイントロン-エキソン接合部に組み込まれ得る(図14)。RNAiは、目的の内因性遺伝子の発現をサイレンシングするように設計することができ、導入遺伝子内の完全コード配列は、サイレンシングに耐性であるように設計することができる。したがって、導入遺伝子内の完全コード配列内の対応する標的部位は、サイレンシングを阻止するように修飾され得る。他の実施形態では、導入遺伝子は、第1および第2のスプライスアクセプター、第1および第2の2A配列、第1および第2のコード配列(両方ともサイレンシングに耐性である)、第1および第2のターミネーター、ならびにRNAiカセットを含むことができる。これらの導入遺伝子は、追加の配列(例えば、ウイルスITR)、第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位、左右のトランスポゾン末端、または第1および第2の相同アームと第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位との両方に隣接することができる。一実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[相同アーム1]-[スプライスアクセプター]-[2A]-[コード配列]-[ターミネーター]-[RNAiカセット]-[相同アーム2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[トランスポザーゼの左末端]-[スプライスアクセプター]-[2A]-[コード配列]-[ターミネーター]-[RNAiカセット]-[トランスポザーゼの右末端]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[追加配列1]-[スプライスアクセプター1]-[2A1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[2A2 RC]-[スプライスアクセプター2 RC]-[追加配列2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位1]-[スプライスアクセプター1]-[2A1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[2A2 RC]-[スプライスアクセプター2 RC]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位1]-[相同アーム1]-[スプライスアクセプター1]-[2A1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[2A2 RC]-[スプライスアクセプター2 RC]-[相同アーム2]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[トランスポザーゼの左末端]-[スプライスアクセプター1]-[2A1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[2A2 RC]-[スプライスアクセプター2 RC]-[トランスポザーゼの右末端]であり得る。
【0109】
一実施形態では、本文書は、図15に記載の導入遺伝子を細胞に投与し、当該導入遺伝子を目的の内因性遺伝子に組み込むことによって、目的のタンパク質の産生をサイレンシングさせ、置き換える方法を説明する。一実施形態では、導入遺伝子は、2A配列、完全コード配列(サイレンシングに耐性である)、ターミネーター、および目的の内因性遺伝子をサイレンシングするように設計されたRNAiカセットを含むことができる。2A配列は、ターミネーターに作動可能に連結され得る完全コード配列に作動可能に連結され得る。2A配列、完全コード配列、ターミネーター、およびRNAiカセットは、第1および第2の相同アーム、または左右のトランスポゾン末端に隣接することができる。導入遺伝子は、目的の内因性遺伝子内のエキソンに組み込まれ得る(図15)。RNAiは、目的の内因性遺伝子の発現をサイレンシングするように設計することができ、導入遺伝子内の完全コード配列は、サイレンシングに耐性であるように設計することができる。したがって、導入遺伝子内の完全コード配列内の対応する標的部位は、サイレンシングを阻止するように修飾され得る。他の実施形態では、導入遺伝子は、第1および第2の2A配列、第1および第2のコード配列(両方ともサイレンシングに耐性である)、第1および第2のターミネーター、ならびにRNAiカセットを含むことができる。これらの導入遺伝子は、追加の配列(例えば、ウイルスITR)、第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位、左右のトランスポゾン末端、または第1および第2の相同アームと第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位との両方に隣接することができる。一実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[相同アーム1]-[2A]-[コード配列]-[ターミネーター]-[RNAiカセット]-[相同アーム2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[トランスポザーゼの左末端]-[2A]-[コード配列]-[ターミネーター]-[RNAiカセット]-[トランスポザーゼの右末端]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[追加配列1]-[2A1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[2A2 RC]-[追加配列2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位1]-[2A1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[2A2 RC]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位1]-[相同アーム1]-[2A1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[2A2 RC]-[相同アーム2]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[トランスポザーゼの左末端]-[2A1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[2A2 RC]-[トランスポザーゼの右末端]であり得る。
【0110】
一実施形態では、本文書は、図16に記載の導入遺伝子を細胞に投与し、当該導入遺伝子を目的の内因性遺伝子に組み込むことによって、目的のタンパク質の産生をサイレンシングさせ、置き換える方法を説明する。一実施形態では、導入遺伝子は、完全なコード配列(サイレンシングに耐性であり、開始コドンを含む)、ターミネーター、および目的の内因性遺伝子をサイレンシングするように設計されたRNAiカセットを含むことができる。完全コード配列は、ターミネーターに作動可能に連結され得る。完全コード配列、ターミネーター、およびRNAiカセットは、第1および第2の相同アーム、または左右のトランスポゾン末端に隣接することができる。組み込み部位は、5’UTR内であっても、開始コドンの前であってもよい(図16)。追加の組み込み部位は、存在する場合、5’UTR内のイントロン内にあってもよいが、この実施形態内で記載される導入遺伝子は、次いで、完全コード配列(複数可)に作動可能に連結されたスプライスアクセプター配列を含む必要がある。RNAiは、目的の内因性遺伝子の発現をサイレンシングするように設計することができ、導入遺伝子内の完全コード配列は、サイレンシングに耐性であるように設計することができる。したがって、導入遺伝子内の完全コード配列内の対応する標的部位は、サイレンシングを阻止するように修飾され得る。他の実施形態では、導入遺伝子は、第1および第2のコード配列(両方ともサイレンシングに耐性である)、第1および第2のターミネーター、ならびにRNAiカセットを含むことができる。これらの導入遺伝子は、追加の配列(例えば、ウイルスITR)、第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位、左右のトランスポゾン末端、または第1および第2の相同アームと第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位との両方に隣接することができる。一実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[相同アーム1]-[コード配列]-[ターミネーター]-[RNAiカセット]-[相同アーム2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[トランスポザーゼの左末端]-[コード配列]-[ターミネーター]-[RNAiカセット]-[トランスポザーゼの右末端]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[追加配列1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[RNAiカセット]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[追加配列2]であり得る。他の実施形態では、導入遺伝子は、タンパク質産生を置き換え、内因性遺伝子をサイレンシングさせないように設計され得る。一実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位1]-[相同アーム1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[相同アーム2]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[トランスポザーゼの左末端]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[トランスポザーゼの右末端]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[相同アーム1]-[コード配列]-[ターミネーター]-[相同アーム2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[トランスポザーゼの左末端]-[コード配列]-[ターミネーター]-[トランスポザーゼの右末端]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[追加配列1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[追加配列2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位1]-[相同アーム1]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[相同アーム2]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[トランスポザーゼの左末端]-[コード配列1]-[ターミネーター1]-[ターミネーター2 RC]-[コード配列2 RC]-[トランスポザーゼの右末端]であり得る。
【0111】
一実施形態では、本文書は、図17に記載の導入遺伝子を細胞に投与し、当該導入遺伝子を目的の内因性遺伝子に組み込むことによって、目的のタンパク質の産生をサイレンシングさせ、置き換える方法を説明する。一実施形態では、導入遺伝子は、内因性遺伝子をサイレンシングするように設計されたRNAiカセット、プロモーター、部分コード配列(サイレンシングに耐性である)、およびスプライスドナー配列を含むことができる。プロモーターは、スプライスドナーに作動可能に連結され得る部分コード配列に作動可能に連結され得る。RNAiカセット、プロモーター、部分コード配列、およびスプライスドナーは、第1および第2の相同アーム、または左右のトランスポゾン末端に隣接することができる。導入遺伝子は、目的の内因性遺伝子内のエキソンまたはイントロンに組み込むことができるが(図17)、全長タンパク質の産生に必要な内因性スプライスアクセプターを破壊する部位内に組み込むことはできない。RNAiは、目的の内因性遺伝子の発現をサイレンシングするように設計することができ、導入遺伝子内の部分コード配列は、サイレンシングに耐性であるように設計することができる。したがって、導入遺伝子内の完全コード配列内の対応する標的部位は、サイレンシングを阻止するように修飾され得る。他の実施形態では、導入遺伝子は、第1および第2のスプライスドナー配列、第1および第2の部分コード配列(両方ともサイレンシングに耐性である)、第1および第2のプロモーター、ならびにRNAiカセットを含むことができる。これらの導入遺伝子は、追加の配列(例えば、ウイルスITR)、第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位、左右のトランスポゾン末端、または第1および第2の相同アームと第1および第2のレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位との両方に隣接することができる。一実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[相同アーム1]-[RNAiカセット]-[プロモーター]-[部分コード配列]-[スプライスドナー]-[相同アーム2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[トランスポゾンの左末端]-[RNAiカセット]-[プロモーター]-[部分コード配列]-[スプライスドナー]-[トランスポゾンの右末端]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[追加配列1]-[スプライスドナー1 RC]-[部分コード配列1 RC]-[プロモーター1 RC]-[RNAiカセット]-[プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]-[追加配列2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位1]-[スプライスドナー1 RC]-[部分コード配列1 RC]-[プロモーター1 RC]-[RNAiカセット]-[プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位1]-[相同アーム1]-[スプライスドナー1 RC]-[部分コード配列1 RC]-[プロモーター1 RC]-[RNAiカセット]-[プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]-[レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位2]であり得る。別の実施形態では、導入遺伝子の構造は、5’から3’へ、[トランスポザーゼの左末端]-[スプライスドナー1 RC]-[部分コード配列1 RC]-[プロモーター1 RC]-[RNAiカセット]-[プロモーター2]-[部分コード配列2]-[スプライスドナー2]-[トランスポザーゼの右末端]であり得る。導入遺伝子を使用して、SNCA遺伝子を修飾することができる。SNCAにおける変異は、パーキンソン病を引き起こすことが見出されている。本明細書に記載の導入遺伝子を使用して、SNCAの遺伝子発現を修正することができる。場合によっては、SNCAは、重複または三重であり、αシヌクレインタンパク質の過剰な産生をもたらす。他の場合では、Ala30Proなどの変異は、タンパク質の誤った折り畳みを引き起こす。本明細書に記載の導入遺伝子は、SNCAの発現をSNCAアイソフォーム(全長140aaタンパク質、126aaタンパク質、112aaタンパク質、98aaタンパク質、67aaタンパク質、および115aaタンパク質を含む、少なくとも6つのSNCAの転写産物が存在する)の一部または全てに置き換えながら、内因性SNCA発現(遺伝子重複および遺伝子内変異から)の発現を低減する方法を提供する。SNCA遺伝子は6個のエキソンを含み、エキソン2に開始コドンが含まれる。本文書は、SNCA遺伝子への組み込みのための導入遺伝子を提供する。導入遺伝子は、SNCAのエキソン1またはエキソン2を標的とするRNAiカセット、プロモーター、SNCAのエキソン2によって産生されるペプチドをコードする部分コード配列(この部分コード配列はRNAiカセットによるサイレンシングに耐性がある)、およびスプライスドナーを含むことができる。
【0112】
一実施形態では、本明細書で提供される方法は、完全機能性サイレンシング耐性コード配列およびRNAiサイレンシング配列を有する導入遺伝子の送達を説明する(図9)。機能性コード配列は、プロモーター、RNAまたはタンパク質産物を産生するように機能する核酸配列、およびターミネーターを含んでもよい。核酸配列は、サイレンシング配列によるサイレンシングを回避するようにカスタマイズされ得る(図9)。一実施形態では、導入遺伝子は、転写産物の5’UTRを標的とするサイレンシング配列を含むことができる。導入遺伝子内の機能性コード配列は、標的遺伝子に由来しない代替の5’UTRと共に、または5’UTRがない、サイレンシングされた遺伝子(WTまたはコドン調整のいずれか)のコード配列を含むことができる。別の実施形態では、導入遺伝子は、転写産物の3’UTRを標的とするサイレンシング配列を含み得る。導入遺伝子内の機能性コード配列は、標的遺伝子に由来しない代替の3’UTRと共に、または3’UTRがない、サイレンシングされた遺伝子(WTまたはコドン調整のいずれか)のコード配列を含むことができる。さらに別の実施形態では、導入遺伝子は、遺伝子のコード配列を標的とするサイレンシング配列を含むことができる。機能性コード配列は、サイレンシングされた遺伝子のコード配列を含むことができ、このコード配列全体またはコード配列の一部分は、サイレンシング配列によるサイレンシングを回避するように修飾される。修飾は、コドン最適化/コドン調整などの方法によって、または標的領域を欠失することによって達成することができる。一実施形態では、サイレンシング配列および機能性コード配列を含む本明細書に記載の導入遺伝子は、(例えば、ウイルスベクターもしくはプラスミドDNAによって)細胞に一過性に送達され得るか、または細胞のゲノム内に組み込まれ得る。一部の実施形態では、導入遺伝子は、細胞に送達され得、機能獲得変異を有する1つ以上の遺伝子を含む(図7)。機能獲得変異を有する疾患の例としては、HD(ハンチントン病)、SBMA(球脊髄性筋萎縮症)、SCA1(脊髄小脳失調症1型)、SCA2(脊髄小脳失調症2型)、SCA3(脊髄小脳失調症3型またはマシャド・ジョセフ病)、SCA6(脊髄小脳失調症6型)、SCA7(脊髄小脳失調症7型)、脆弱X症候群、脆弱XE精神遅滞、フリードライヒ運動失調症、筋強直性ジストロフィー1型、筋強直性ジストロフィー2型、脊髄小脳失調症8型、脊髄小脳失調症12型、球脊髄性筋萎縮症、JPH3、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、遺伝性運動性感覚性ニューロパチーIIC型、シナプス後スローチャネル先天性筋無力症候群、PRPS1過活動性、パーキンソン病、細管集合体ミオパチー、軟骨無形成症、ルブスX連鎖精神遅滞症候群、ならびに常染色体優性網膜色素変性症が挙げられる。
【0113】
特定の実施形態では、サイレンシング配列および機能性コード配列を含む本明細書に記載の導入遺伝子は、特定の遺伝子をサイレンシングし、遺伝子の発現を置き換えることによって機能獲得障害を修正するために使用することができる。遺伝子は、SOD1、TRPV4、CHRNA1、CHRND、CHRNE、CHRNB1、PRPS1、LRRK2、STIM1、FGFR3、MECP2、SNCA、ATXN1、ATXN2、ATXN3、CACNA1A、ATXN7、TBP、HTT、AR、FXN、DMPK、PABPN1、ATXN8、RHO、およびC9orf72を含むことができる。
【0114】
サイレンシング配列および機能性コード配列を含む本明細書に記載の導入遺伝子は、ウイルス性(例えば、AAVベクター)または非ウイルス性の方法を使用して、細胞に送達することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載されるAAVベクターは、任意のAAVに由来し得る。特定の実施形態では、AAVベクターは、欠陥および非病原性のパルボウイルス科アデノ随伴2型ウイルス由来である。かかるベクターは全て、導入遺伝子の発現カセットに隣接するAAVの145bp逆位末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入細胞のゲノムへの組み込みによる効率的な遺伝子輸送および安定した導入遺伝子送達は、このベクター系の重要な特徴である。(Wagner et al.,Lancet 351:9117 1702-3,1998;Kearns et al.,Gene Ther.9:748-55、1996)。AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、およびAAVrh.10、ならびに任意の新規のAAV血清型を含む他のAAV血清型も、本発明に従って使用することができる。一部の実施形態では、キメラAAVが使用され、ウイルス核酸の長鎖末端反復(LTR)配列のウイルス起源は、カプシド配列のウイルス起源に対して異種である。非限定的な例としては、AAV2に由来するLTRと、AAV5、AAV6、AAV8、またはAAV9に由来するカプシド(すなわち、それぞれAAV2/5、AAV2/6、AAV2/8、およびAAV2/9)とを有するキメラウイルスが挙げられる。
【0115】
また、本明細書に記載の構築物は、アデノウイルスベクター系に組み込むこともできる。アデノウイルスに基づくベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。かかるベクターにより、高力価および高レベルの発現を得ることができる。
【0116】
本明細書に記載の方法および組成物は、ゲノム修飾を通して生物を改変することが所望される任意の真核生物に適用可能である。真核生物としては、植物、藻類、動物、真菌、および原生生物が挙げられる。また、真核生物は植物細胞、藻類細胞、動物細胞、真菌細胞、および原生生物細胞を含むこともできる。
【0117】
例示的な哺乳動物細胞としては、卵母細胞、K562細胞、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、HEP-G2細胞、BaF-3細胞、シュナイダー細胞、COS細胞(SV40のT-抗原を発現するサル腎臓細胞)、CV-1細胞、HuTu80細胞、NTERA2細胞、NB4細胞、HL-60細胞、およびHeLa細胞、293細胞(例えば、Graham et al.(1977)J.Gen.Virol.36:59を参照されたい)、ならびにSP2またはNS0のような骨髄腫細胞(例えば、Galfre and Milstein(1981)Meth.Enzymol.73(B):3 46を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。また、末梢血単核細胞(PBMC)またはT細胞も使用することができ、同様に、胚幹細胞および成体幹細胞も使用することができる。例えば、使用可能な幹細胞としては、胚幹細胞(ES)、誘導多能性幹細胞(iPSC)、間葉幹細胞、造血幹細胞、肝臓幹細胞、皮膚幹細胞、および神経幹細胞が挙げられる。
【0118】
本発明の方法および組成物は、組換え生物(modified organisms)の産生に使用することができる。組換え生物は、小型哺乳動物、伴侶動物、家畜、および霊長類であり得る。げっ歯類の非限定的な例としては、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、およびモルモットが挙げられ得る。伴侶動物の非限定的な例としては、ネコ、イヌ、ウサギ、ハリネズミ、およびフェレットが挙げられ得る。家畜の非限定的な例としては、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラマ、アルパカ、およびウシが挙げられ得る。霊長類の非限定的な例としては、オマキザル、チンパンジー、キツネザル、マカクザル、マーモセット、タマリン、クモザル、リスザル、およびベルベットモンキーが挙げられ得る。本発明の方法および組成物は、ヒトに使用することができる。
【0119】
本明細書に記載の方法を使用して修飾することができる例示的な植物および植物細胞としては、限定されないが、単子葉植物(例えば、コムギ、トウモロコシ、イネ、アワ、オオムギ、サトウキビ)、双子葉植物(例えば、ダイズ、ジャガイモ、トマト、アルファルファ)、果実作物(例えば、トマト、リンゴ、セイヨウナシ、イチゴ、オレンジ)、飼料作物(例えば、アルファルファ)、根野菜作物(例えば、ニンジン、ジャガイモ、サトウダイコン、ヤムイモ)、葉野菜作物(例えば、レタス、ホウレンソウ)、消費用の植物作物(例えば、ダイズおよび他のマメ科植物、カボチャ、ピーマン、ナス、セロリなど)、顕花植物(例えば、ペチュニア、バラ、キク)、針葉樹およびマツ(例えば、マツ、モミ、スプルース)、ポプラ樹(例えば、P.tremula×P.alba)、繊維作物(ワタ、ジュート、アマ、タケ)、フィトレメディエーションに使用される植物(例えば、重金属集積植物)、油料作物(例えば、ヒマワリ、ナタネ)、ならびに実験目的で使用される植物(例えば、シロイヌナズナ)が挙げられる。本明細書に開示される方法は、アスパラガス属、カラスムギ属、アブラナ属、柑橘属、スイカ属、トウガラシ属、カボチャ属、ニンジン属、ムカシヨモギ属、ダイズ属、ワタ属、オオムギ属、アキノノゲシ属、ドクムギ属、トマト属、リンゴ属、キャッサバ属、タバコ属、ショカツサイ属、イネ属、ワニナシ属、インゲン属、エンドウ属、ナシ属、サクラ属、ダイコン属、ライムギ属、ナス属、モロコシ属、コムギ属、ブドウ属、ササゲ属、およびトウモロコシ属内で使用することができる。植物細胞という用語は、単離された植物細胞、ならびに種子、カルス、葉、および根などの全植物または全植物の一部を含む。また、本開示は、上に記載の植物の種子も包含し、本明細書に記載の組成物および/または方法を使用して、種子が修飾される。本開示は、上に記載のトランスジェニック植物の子孫、クローン、細胞株または細胞をさらに包含し、当該子孫、クローン、細胞株または細胞は、導入遺伝子または遺伝子構築物を有する。例示的な藻類種としては、微細藻類、珪藻類、Botryococcus braunii、クロレラ属、Dunaliella tertiolecta、グラシレリア属、Pleurochrysis carterae、ソルガスム属、およびアオサ属が挙げられる。
【0120】
本文書に記載の方法は、導入遺伝子分子の内因性遺伝子への相同組換えまたは非相同組み込みを刺激するためのレアカッティングエンドヌクレアーゼの使用を含むことができる。レアカッティングエンドヌクレアーゼは、CRISPR、TALEN、または亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含み得る。CRISPR系は、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cas12a(Cpf1)を含み得る。CRISPR系は、広範なPAM能力を示すバリアント(Hu et al.,Nature 556,57-63,2018;Nishimasu et al.,Science DOI:10.1126,2018)、またはより高いオンターゲット結合または切断活性を示すバリアント(Kleinstiver et al.,Nature 529:490-495,2016)を含むことができる。遺伝子編集試薬は、ヌクレアーゼ(Mali et al.,Science 339:823-826,2013、Christian et al.,Genetics 186:757-761,2010)、ニッカーゼ(Cong et al.,Science 339:819-823,2013、Wu et al.,Biochemical and Biophysical Research Communications 1:261-266,2014)、CRISPR-FokI二量体(Tsai et al.,Nature Biotechnology 32:569-576,2014)、またはCRISPR・ニッカーゼ対(Ran et al.,Cell 154:1380-1389,2013)の形式であり得る。
【0121】
本文書に記載の方法および組成物は、内因性遺伝子のコード配列の5’末端を修飾することが所望される状況で、使用することができる。例えば、SCA2を有する患者は、エキソン1に拡張したCAG反復を有する。SCA2を有する患者は、エキソン1の置き換えから利益を得ることができる。他の例では、内因性遺伝子の5’末端内の機能喪失変異に起因する遺伝性障害を有する患者は、当該遺伝子の最初のエキソンの置き換えから利益を得ることができる。
【0122】
さらに、本文書に記載の方法および組成物は、野生型タンパク質が依然として産生されることを保証しながら、機能獲得遺伝性障害を治療することが所望される状況で使用することができる。例えば、RHO遺伝子において機能獲得変異を有する網膜色素変性症を有する患者は、内因性RHO遺伝子をサイレンシングし、野生型RHOタンパク質を同時に産生することができる導入遺伝子を含む療法から利益を得ることができる。このアプローチのさらなる利点としては、機能獲得変異部位を中心としないサイレンシングのための標的部位を選択する能力が挙げられる。この利点は、効果的なサイレンシング構築物の設計(例えば、低いオフターゲティングおよび非常に効果的なオンターゲティング)を可能にし、RHO遺伝子の異なる領域における機能獲得変異を有する患者のための単独療法の設計を可能にする。さらに、本方法は、パーキンソン病およびSNCAを含む複数のアイソフォームを産生する遺伝子による機能獲得障害において特に有用であり得る。SNCA遺伝子の5’末端に機能獲得変異を有する細胞は、エキソン2を標的とするRNAiカセットを、プロモーターおよびRNAiサイレンシングに耐性のある部分コード配列を含む導入遺伝子との組み込みから利益を得ることができる。
【0123】
本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない以下の実施例でさらに説明される。
【実施例
【0124】
実施例1:ATXN2遺伝子におけるDNAの標的組み込み
ヒト細胞のATXN2遺伝子に組み込むように設計された導入遺伝子を用いて、3つのプラスミドを構築した。全ての導入遺伝子は、ATXN2遺伝子のイントロン2内に組み込まれるように設計され、全ての導入遺伝子は、双方向の部分コード配列を、個々のプロモーターと共に挿入するように設計された。部分コード配列は、ATXN2遺伝子のエキソン1によって産生されるペプチドをコードする。第1のプラスミド(pBA1141と称される)は、イントロン1の開始部と相同的な配列を有する左右の相同アームを含んだ(すなわち、成功した遺伝子標的化は、イントロン1へのpBA1141のカーゴの挿入をもたらす)。相同アーム間には、5’から3’へ、逆相補配向のスプライスドナー、逆相補配向のコドン調整を伴う部分コード配列1(ATXN2遺伝子のエキソン1によって産生されるペプチドをコードする)、逆相補配向のEF1αプロモーター、CMVプロモーター、コドン調整を伴う部分コード配列2(ATXN2遺伝子のエキソン1によって産生されるペプチドをコードする)、およびスプライスドナーが含まれた。pBA1141導入遺伝子の配列を、配列番号15に示す(図6)。2つのヌクレアーゼを設計して、pBA1141のゲノムへの組み込みを促進した:標的部位が(TGTGCAGGAGGGCCTGTTGGGGG、配列番号16)であるCas9、および標的部位が(TTTCCCTTGTGCCTCAAGTCCATCCGT、配列番号17)であるCas12a。また、標的部位もpBA1141に含めて、プラスミドからのドナー分子の遊離を促進させた。pBA1141内の個々の成分を、配列番号18~24に示す。配列番号18は、Cas9およびCas12aの両方の標的部位を含む配列である。配列番号19は、左の相同アームの配列を含む。配列番号20は、非病原性ATXN2遺伝子の逆相補コドン調整部分コード配列(エキソン1)を含む。配列番号21は、逆相補のEF1αプロモーターを含む。配列番号22は、逆相補のCMVプロモーターを含む。配列番号23は、非病原性ATXN2遺伝子のコドン調整部分コード配列(エキソン1)を含む。配列番号24は、右の相同アームの配列を含む。第2のプラスミド(pBA1142と称される)は、pBA1135と同じカーゴを含むが、相同アームが除去されている。ヌクレアーゼ標的部位は保持され、プラスミドからの導入遺伝子の遊離を促進した。プラスミドの切断に成功することで、導入遺伝子が遊離され、それによってNHEJによるATXN2遺伝子への組み込みに配列が使用されることが可能になると予想された。pBA1141の配列を、配列番号25に示す。第3のプラスミド(pBA1143と称される)は、ヌクレアーゼ標的部位を保有する配列(左の相同アームの上流)が除去され、右の相同アームが600bpに短縮されたことを除いて、pBA1141と同じ配列を含んだ。
【0125】
HEK293T細胞を使用して、トランスフェクションを行った。HEK293T細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)を補充したDMEM中で、37℃、5%COで維持した。HEK293T細胞を、2ugのドナー、2ugのガイドRNA(RNA形式)、および2ugのCas9(RNA形式)または2ugのCas12aプラスミド(DNA形式)でトランスフェクトした。エレクトロポレーションを使用して、トランスフェクションを行った。トランスフェクションの72時間後、ゲノムDNAを単離し、組み込み事象について評価した。組み込みまたはゲノムDNAを検出するために使用したプライマーのリストを、表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0126】
pBA1141、pBA1142およびpBA1143の組み込みを検出するために、ゲノムDNAに対してPCRを行った。pBA1143に関して、導入遺伝子は、HRにより正確に組み込まれるように設計された。したがって、バンドは、Cas9およびCas12aトランスフェクション試料の両方について3’接合部のPCRで検出され、イントロン1への正確な挿入を示す(図17レーン7~10)。予想されるバンドサイズは、1,225bp(レーン7および9)、および1,407bp(レーン8および10)であった。プライマーoNJB201+oNJB190、およびoNJB202+oNJB191を、3’接合部のPCRに使用した。pBA1142に関して、相同アームが存在しなかったため、導入遺伝子は、NHEJ挿入を介して挿入されることが予測された。Cas9でトランスフェクトされた試料中のNHEJによる組み込みは、図17のレーン6に見ることができる。予想されるバンドサイズは、813bpであった。プライマーoNJB202+oNJB211を、NHEJ挿入3’接合部のPCRに使用した。pBA1141に関して、相同アームおよびヌクレアーゼ切断部位の両方が、導入遺伝子上に存在した(図7)。HRによる組み込みは、図17のレーン2~4で観察され、NHEJによる組み込みは、図17のレーン5で観察された。HRによる挿入をPCRで検出するのに予想されるサイズは、1594bp(レーン2、プライマーoNJB201+oNJB190)、1775bp(レーン3、プライマーoNJB202+oNJB191)、1775bp(レーン4、プライマーoNJB202+oNJB191)であった。NHEJによる挿入をPCRで検出するのに予想されるサイズは、2067bpであった(レーン5、プライマーoNJB202+oNJB211)。
【0127】
結果は、プロモーターを有する双方向の部分コード配列を含む記載の導入遺伝子が、複数の異なる修復経路を介してゲノムDNAに組み込まれ得ることを示している。
【0128】
HEK293T細胞を使用して、トランスフェクションを行う。HEK293T細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)を補充したDMEM中で、37℃、5%COで維持する。HEK293T細胞を、2ugのドナー、2ugのガイドRNA(RNA形式)、および2ugのCas9(RNA形式)または2ugのCas12aプラスミド(DNA形式)でトランスフェクトした。エレクトロポレーションを使用して、トランスフェクションを行う。組み込みを含む単一細胞クローンを単離し、RNAを抽出する。RNA配列決定を使用して、新しい転写産物を検出することができる。
【0129】
実施例2:内因性SOD1の遺伝子発現のサイレンシングおよび置換SOD1タンパク質の発現
本文書は、内因性遺伝子の発現をサイレンシングし、置き換える目的で、RNAi、RNAi耐性コード配列、および遺伝子編集を使用するための方法を説明する。これらの方法は、SOD1遺伝子の変異を有する筋萎縮性側索硬化症を含む機能獲得障害に特に有用である。
【0130】
遺伝子のサイレンシングおよび置換を検証するために、導入遺伝子を、SOD1のエキソン2内のRNAi(shRNA)カセット標的配列で設計した。shRNAは、配列GGCCTGCATGGATTCCATGTTCAAGAGACATGGAATCCATGCAGGCC(配列番号49)を含み、これをU6プロモーターの下流に配置した。また、導入遺伝子は、CMVプロモーターの下流のSOD1コード配列も含んだ。コード配列内の配列を、shRNAのサイレンシングを回避するように修飾した。導入遺伝子(pBA1148と称される)の配列、を配列番号10に示す。スクランブルshRNA(pBA1147と称される、配列番号53)、およびWT SOD1のコード配列(pBA1149と称される、配列番号54)を含む対照ベクターを生成した。
【0131】
HEK293T細胞を使用して、トランスフェクションを行った。HEK293T細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)を補充したDMEM中で、37℃、5%COで維持した。HEK293T細胞を、2ugのプラスミドでトランスフェクトした。エレクトロポレーションを使用して、トランスフェクションを行った。トランスフェクションの48時間後、RNAを単離し、SOD1のmRNAレベルを評価する。
【0132】
遺伝子編集を使用してSOD1遺伝子の発現をサイレンシングし、置換SOD1タンパク質を産生するために、イントロン1に組み込まれるように、2つのベクターを設計する。第1のベクターは、5’から3’へ、左の相同アーム、スプライスアクセプター、エキソン2~5によって産生されるペプチドをコードするSOD1の部分コード配列(およびRNAiカセットによるサイレンシングを回避するための変異も含む)、ターミネーター、配列番号49に示されるshRNA配列を有するRNAiカセット、および右の相同アームを含む。第2のベクターは、5’から3’へ、ヌクレアーゼ標的部位、スプライスアクセプター、エキソン2~5によって産生されるペプチドをコードするSOD1の部分コード配列(およびRNAiカセットによるサイレンシングを回避するための変異も含む)、ターミネーター、配列番号49に示されるshRNA配列を有するRNAiカセット、逆相補配向の第2のターミネーター、エキソン2~5によって産生されるペプチドをコードする逆相補配向のSOD1の第2の部分コード配列(およびRNAiカセットによるサイレンシングを回避するための変異も含む)、逆相補配向の第2のスプライスアクセプター、および第2のヌクレアーゼ標的部位を含む(図12)。
【0133】
2つの追加のベクターは、SOD1遺伝子のイントロン3に組み込まれるように設計される。第1のベクターは、5’から3’へ、左の相同アーム、配列番号49に示されるshRNA配列を有するRNAiカセット、プロモーター、エキソン1および2によって産生されるペプチドをコードするSOD1の部分コード配列(およびRNAiカセットによるサイレンシングを回避するための変異も含む)、スプライスドナー、および右の相同アームを含む。第2のベクターは、5’から3’へ、ヌクレアーゼ標的部位、逆相補配向のスプライスドナー、エキソン1および2によって産生されるペプチドをコードする逆相補配向のSOD1の部分コード配列(およびRNAiカセットによるサイレンシングを回避するための変異も含む)、逆相補配向のプロモーター、配列番号49に示されるshRNA配列を有するRNAiカセット、第2のプロモーター、エキソン1および2によって産生されるペプチドをコードするSOD1の第2の部分コード配列(およびRNAiカセットによるサイレンシングを回避するための変異も含む)、スプライスドナー、および第2のヌクレアーゼ標的部位を含む(図16)。
【0134】
HEK293T細胞を使用して、トランスフェクションを行う。HEK293T細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)を補充したDMEM中で、37℃、5%COで維持する。HEK293T細胞を、2ugのプラスミド、2ugのガイドRNA(RNA形式)、および2ugのCas9(RNA形式)でトランスフェクトする。エレクトロポレーションを使用して、トランスフェクションを行う。トランスフェクションの72時間後、DNAを単離し、導入遺伝子の組み込みについて評価する。組み込み事象を含むクローンを単離し、SOD1のmRNAレベル(内因性遺伝子由来および修飾遺伝子由来の両方)について評価する。
【0135】
実施例3:内因性SNCAの遺伝子発現のサイレンシングおよび2つのSNCAタンパク質アイソフォームの発現
SNCAにおける変異は、パーキンソン病を引き起こすことが見出されている。本明細書に記載の方法は、SNCAの遺伝子発現を修正するのに使用することができる。場合によっては、SNCAは、重複または三重であり、αシヌクレインタンパク質の過剰な産生をもたらす。他の場合では、Ala30Proなどの変異は、タンパク質の誤った折り畳みを引き起こす。SNCAおよびSNCAアイソフォーム(全長140aaタンパク質、126aaタンパク質、112aaタンパク質、98aaタンパク質、67aaタンパク質、および115aaタンパク質を含む、少なくとも6つの存在するSNCAの転写産物)の一部または全てを置き換えながら、内因性SNCAの発現(遺伝子重複および遺伝子内変異から)の発現を低減する方法が、本明細書に記載される。
【0136】
導入遺伝子は、内因性SNCA遺伝子の発現をサイレンシングするために、shRNAを保有するように設計された。導入遺伝子はまた、それぞれが各アイソフォームのための2つのオープンリーディングフレームをコードすることによって、2つのSNCAタンパク質アイソフォームを置き換えるように設計した。shRNAは、SNCAのコード配列(GGTATCAAGACTACGAAC、配列番号11)の3’末端を標的とする19ntのヘアピン配列を含む。導入遺伝子内の2つのSNCAオープンリーディングフレームは、shRNA標的部位に変異を保有するように設計された。配列番号12は、発現プラスミド(pBA1153と称される)にクローニングされた導入遺伝子の核酸配列を示す。他の2つの導入遺伝子を構築した:1つ目は、shRNAおよび2つの野生型SNCAアイソフォーム(shRNAサイレンシングを阻止する変異を伴わない)を有し、2つ目は、スクランブルshRNAおよび2つの変異を伴うSNCAアイソフォームを有する。
【0137】
導入遺伝子を、HEK293細胞にトランスフェクトする。HEK293細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)および1%のペニシリンストレプトマイシン(PS)溶液(×100)が補充され、L-グルタミンとピルビン酸ナトリウムとを含まないDMEM高グルコース培地中で、37℃、5%COで維持する。HEK293細胞を、Lipofectamine3000を使用して、プラスミド構築物およびそれらの組み合わせの各々でトランスフェクトする。トランスフェクションの48時間後、RNAを抽出し、SNCAの転写レベルを評価する。内因性SNCA RNAの発現の低減、およびコドン調整SNCA配列からのRNAの発現は、導入遺伝子の機能性を示す。
【0138】
遺伝子編集を使用してSNCA遺伝子の発現をサイレンシングし、アイソフォーム産生を維持しながら置換SNCAタンパク質を産生するために、エキソン2-イントロン2接合部に組み込まれるように、2つのベクターを設計する。第1のベクターは、5’から3’へ、左の相同アーム、エキソン2転写配列を標的とするshRNA配列を有するRNAiカセット、プロモーター(1,000bpの内因性SNCAプロモーターを含む)、開始コドンおよび内因性SNCA遺伝子のエキソン2によって産生されるペプチドをコードする部分コード配列(およびRNAiカセットによるサイレンシングを回避するための変異も含む)、スプライスドナー、および右の相同アームを含む。スプライスドナーおよび右の相同アームは、内因性イントロン2の5’末端由来の配列である。第2のベクターは、5’から3’へ、ヌクレアーゼ標的部位、逆相補配向のスプライスドナー、エキソン2によって産生されるペプチドをコードする逆相補配向のSNCAの部分コード配列(およびRNAiカセットによるサイレンシングを回避するための変異も含む)、逆相補配向のプロモーター、エキソン2を標的とするshRNAを有するRNAiカセット、第2のプロモーター、エキソン2によって産生されるペプチドをコードするSNCAの第2の部分コード配列(およびRNAiカセットによるサイレンシングを回避するための変異も含む)、スプライスドナー、および第2のヌクレアーゼ標的部位を含む(図16)。スプライスドナー配列は、SNCA遺伝子のイントロン2由来のスプライスドナー配列である。ヌクレアーゼは、導入遺伝子のエキソン2-イントロン2接合部への組み込みを促進するように設計されている。
【0139】
導入遺伝子およびヌクレアーゼを、HEK293細胞にトランスフェクトする。HEK293細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)および1%のペニシリンストレプトマイシン(PS)溶液(×100)が補充され、L-グルタミンとピルビン酸ナトリウムとを含まないDMEM高グルコース培地中で、37℃、5%COで維持する。HEK293細胞を、Lipofectamine3000を使用して、プラスミド構築物およびそれらの組み合わせの各々でトランスフェクトする。組み込み事象を含むクローンを単離し、RNAを抽出する。内因性SNCA RNAの発現の低減、および修飾SNCA遺伝子からのRNAの発現は、導入遺伝子の機能性を示す。
【0140】
実施例4:内因性RHO遺伝子の発現のサイレンシングおよび置換RHOタンパク質の発現
導入遺伝子は、内因性RHO遺伝子の発現をサイレンシングするshRNA、および野生型RHOタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを保有するように設計される。RHOタンパク質の配列は、配列番号13に示される。サイレンシング配列は、内因性RHO転写産物を標的とするヘアピン配列を保有する。導入遺伝子内のRHOオープンリーディングフレームは、shRNA標的部位において最小限の配列相同性を含むようにコドン調整される。
【0141】
導入遺伝子を、HEK293細胞にトランスフェクトする。HEK293細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)および1%のペニシリンストレプトマイシン(PS)溶液(×100)が補充され、L-グルタミンとピルビン酸ナトリウムとを含まないDMEM高グルコース培地中で、37℃、5%COで維持する。HEK293細胞を、Lipofectamine3000を使用して、プラスミド構築物およびそれらの組み合わせの各々でトランスフェクトする。トランスフェクションから3日後、RNAを細胞から抽出し、転写物レベルを評価する。内因性RHO RNAの発現の低減、およびコドン調整RHO配列からのRNAの発現は、導入遺伝子の機能性を示す。
【0142】
実施例5:内因性C9orf72の遺伝子発現のサイレンシングおよび置換C9orf72タンパク質の発現
導入遺伝子は、内因性C9orf72遺伝子の発現をサイレンシングするshRNA、および野生型C9orf72タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを保有するように設計される。C9orf72タンパク質の配列は、配列番号14に示される。サイレンシング配列は、内因性C9orf72転写産物を標的とするヘアピン配列を保有する。導入遺伝子内のC9orf72のオープンリーディングフレームは、shRNAの標的部位で最小限の配列相同性を含むようにコドン調整される。
【0143】
導入遺伝子を、HEK293細胞にトランスフェクトする。HEK293細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)および1%のペニシリンストレプトマイシン(PS)溶液(×100)が補充され、L-グルタミンとピルビン酸ナトリウムとを含まないDMEM高グルコース培地中で、37℃、5%COで維持する。HEK293細胞を、Lipofectamine3000を使用して、プラスミド構築物およびそれらの組み合わせの各々でトランスフェクトする。トランスフェクションから3日後、RNAを細胞から抽出し、転写物レベルを評価する。内因性C9orf72 RNAの発現の低減、およびコドン調整C9orf72配列の発現は、導入遺伝子の機能性を示す。
【0144】
実施例6:ATXN2遺伝子におけるDNAの標的化組み込み
ATXN2を標的とする導入遺伝子が、ATXN2コード配列の5’末端を置き換えるように設計される。pBA1012-D1と称されるプラスミドは、WTコード配列をATXN2遺伝子のイントロン1に組み込むように設計された導入遺伝子で構築される(図4)。導入遺伝子は、イントロン1(配列番号2)中のスプライスドナー部位に続いて、配列に相同な第1の相同アームを含む。第1の相同アームに隣接するのは、Cas9ヌクレアーゼの標的部位である。第1の相同アームの後に、ATXN2遺伝子(非拡張CAG反復配列、配列番号3)の逆相補スプライスドナー配列およびエキソン1が続く。第1のコード配列に続いて、EF1αプロモーター(配列番号4)がある。頭対頭配向では、機能性エレメントの第2のセットが存在する。第2のセットのエレメントの開始は、ATXN2遺伝子のコドン調整エキソン1のコード配列(配列番号6)の発現を駆動するCMVプロモーター(配列番号5)を含む。コード配列の後に、スプライスドナー部位および第2の相同アームが続く。第2の相同アームは、レアカッティングエンドヌクレアーゼ標的部位(配列番号8)を含む。導入遺伝子の配列は、配列番号1に示される。
【0145】
対応するCas9ヌクレアーゼは、1)内因性ATXN2遺伝子のイントロン1内、2)pBA1012-D1導入遺伝子内の第1の相同アームに隣接部、および3)pBA1012-D1導入遺伝子内の第2の相同アーム内、の3つの二本鎖切断を生成するように設計される。Cas9ヌクレアーゼの標的配列を、配列番号8に示す。
【0146】
導入遺伝子およびCRISPRベクターの機能の確認は、HEK293細胞のトランスフェクションによって達成される。HEK293細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)および1%のペニシリンストレプトマイシン(PS)溶液(×100)が補充され、L-グルタミンとピルビン酸ナトリウムとを含まないDMEM高グルコース培地中で、37℃、5%COで維持する。HEK293細胞を、Lipofectamine3000を使用して、プラスミド構築物およびそれらの組み合わせの各々でトランスフェクトする。トランスフェクションの2日後、DNAを抽出し、ATXN2遺伝子内の変異および標的化挿入について評価する。ヌクレアーゼ活性は、Cel-Iアッセイを使用するか、またはCRISPR/Cas9標的配列を含むアンプリコンのディープ配列決定によって分析される。導入遺伝子の組み込みの成功は、PCRを使用して分析する。
【0147】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と併せて説明されているが、上述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示することを意図するものであり、限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、および変更は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
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【配列表】
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