(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】時限式溶出マスキング粒子およびそれを含有する経口医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20241108BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241108BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241108BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241108BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241108BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241108BHJP
A61K 9/46 20060101ALI20241108BHJP
A61K 31/538 20060101ALN20241108BHJP
A61K 31/437 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/38
A61K47/32
A61K9/20
A61K9/46
A61K31/538
A61K31/437
(21)【出願番号】P 2021528149
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2020022921
(87)【国際公開番号】W WO2020255837
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019111701
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118382
【氏名又は名称】多田 央子
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【氏名又は名称】上代 哲司
(72)【発明者】
【氏名】本庄 達哉
(72)【発明者】
【氏名】村端 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】弓樹 佳曜
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 勇
(72)【発明者】
【氏名】奥田 豊
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-138150(JP,A)
【文献】国際公開第2005/105045(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物、酸、及び炭酸塩を含む薬物含有粒子を、水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆したマスキング粒子
であり、酸が有機酸、有機酸塩、及びそれらの水和物から選ばれる少なくとも1種であり、コーティング層の含有量が薬物含有粒子の1重量部に対して0.01~2重量部であり、酸の含有量が薬物含有粒子の全量に対して3~35重量%であり、炭酸塩の含有量が薬物含有粒子の全量に対して3~35重量%である、マスキング粒子(但し、錠剤を除く。)。
【請求項2】
炭酸塩が、1種以上の水溶性炭酸塩である、請求項
1に記載のマスキング粒子。
【請求項3】
炭酸塩を、酸の1重量部に対して0.1~10重量部含む、請求項1
又は2に記載のマスキング粒子。
【請求項4】
薬物含有粒子が、薬物、酸、及び炭酸塩を含む均一粒子である、請求項1~
3の何れかに記載のマスキング粒子。
【請求項5】
薬物含有粒子が、薬物を含む部分と、酸及び炭酸塩を含む部分を別に備えるものである、請求項1~
3の何れかに記載のマスキング粒子。
【請求項6】
薬物含有粒子が、核粒子とそれを被覆する中間層からなり、薬物が核粒子に含まれ酸及び炭酸塩が中間層に含まれているか、又は酸及び炭酸塩が核粒子に含まれ薬物が中間層に含まれている、請求項
5に記載のマスキング粒子。
【請求項7】
核粒子が崩壊剤を含む、請求項
6に記載のマスキング粒子。
【請求項8】
中間層が結合剤、及び/又は流動化剤ないしは滑沢剤を含む、請求項
6又は
7に記載のマスキング粒子。
【請求項9】
薬物含有粒子が、酸を含む部分と、炭酸塩を含む部分を別に備えるものである、請求項1~
3の何れかに記載のマスキング粒子。
【請求項10】
薬物含有粒子が核粒子とそれを被覆する中間層からなり、酸と炭酸塩が核粒子と中間層の何れかに別に含まれており、薬物が、核粒子、中間層、又はその両方に含まれている、請求項
9に記載のマスキング粒子。
【請求項11】
核粒子が崩壊剤を含む、請求項
10に記載のマスキング粒子。
【請求項12】
中間層が結合剤、及び/又は流動化剤ないしは滑沢剤を含む、請求項
10又は
11に記載のマスキング粒子。
【請求項13】
薬物含有粒子が核粒子と第1及び第2の中間層からなり、薬物、酸、炭酸塩が、核粒子、第1中間層、第2中間層の何れかに別に含まれている、請求項
9に記載のマスキング粒子。
【請求項14】
核粒子が崩壊剤を含む、請求項
13に記載のマスキング粒子。
【請求項15】
第1及び第2中間層の何れか一方又は両方が、結合剤、及び/又は流動化剤ないしは滑沢剤を含む、請求項
13又は
14に記載のマスキング粒子。
【請求項16】
請求項1~
15の何れかに記載のマスキング粒子を含んでなる、錠剤、顆粒剤、細粒剤、又は散剤。
【請求項17】
請求項1~
15の何れかに記載のマスキング粒子を含んでなる、口腔内崩壊錠。
【請求項18】
薬物を含む粒子に、酸及び炭酸塩を添加すると共に、薬物、酸、及び炭酸塩を含む薬物含有粒子を水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆することにより、薬物含有粒子からの薬物の溶出又は放出を制御する方法
であり、酸が有機酸、有機酸塩、及びそれらの水和物から選ばれる少なくとも1種であり、コーティング層の被覆量が薬物含有粒子の1重量部に対して0.01~2重量部であり、酸を添加後の薬物含有粒子の全量に対する酸の含有量が3~35重量%であり、炭酸塩を添加後の薬物含有粒子の全量に対する炭酸塩の含有量が3~35重量%である方法(但し、薬物含有粒子をコーティング層で被覆することにより得られる粒子からは錠剤は除かれる。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内または咽頭部での薬物の放出を抑制し、かつ、胃や腸での薬物放出を妨げず、薬物の放出を制御できるマスキング粒子、及びそれを含む経口医薬組成物に関する。さらに具体的には、服用時に感じられる薬物の味、特に、不快な味を有する薬物の味が低減されたマスキング粒子、及びそれを含む経口医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
経口医薬製剤としては、錠剤やカプセル剤が汎用されているが、これらは嚥下力が低い高齢者や小児には飲み込み難い。このため、口腔内で速やかに崩壊する口腔内崩壊錠剤が、嚥下し易く、また、水なしでも服用できるという利便性も備えることから、注目されている。しかし、口腔内崩壊錠剤は、口腔内で崩壊するため、苦みなどの不快な味を有する薬物を含む場合は、不快な味を強く感じるという難点がある。また、顆粒剤、細粒剤、散剤などは、錠剤やカプセル剤よりサイズが小さいため、飲み込み易い剤型である。しかし、これらの製剤は、重量当たりの表面積が大きいため、不快な味を有する薬物を含む場合は、不快な味を強く感じるという難点がある。
また、口腔内崩壊錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤などは、口腔内で水分と接することで薬物が速やかに放出されるため、薬物によっては口腔や咽頭から吸収されて、急激な血中濃度の上昇により予期せぬ副作用が生じたり、薬効のバラツキが生じるという問題がある。
【0003】
服用時に感じられる医薬成分の不快な味をマスキングするためや、口腔内又は咽頭部からの医薬成分の吸収を抑制するために、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤などを、水不溶性高分子を含むコーティング剤で被覆することが行われている。経口医薬製剤にコーティングを施すと、口中で医薬成分の味は感じなくなり、また口腔内や咽頭部から医薬成分が吸収されなくなるが、薬物の放出が遅れるため、十分量の薬物が吸収されず、所望の薬効が得られない恐れがある。
薬物は、通常、胃や腸から吸収されるところ、小腸上部では、小腸下部や大腸に比べて吸収に関与する表面積が大きく、また細胞間隙経路の透過性も高いと考えられることから、腸から吸収される薬物は主に小腸上部から吸収されると考えられている。従って、経口医薬製剤は、口腔内での薬物の放出が抑制されていると共に、製剤が胃や小腸上部に到達する前又は滞留している間に薬物が放出されることが求められる。また、特に胃粘膜保護薬、制酸薬、消化薬、整腸薬、駆虫薬、胃腸鎮痛鎮痙薬、消泡薬のように胃や腸に作用させる薬物では、製剤が胃や小腸上部に到達する前又は滞留している間に薬物が放出される必要がある。
また、薬物の種類により不快な味の程度や吸収パターンが異なり、また製剤の剤型により口腔内滞留時間が異なることから、薬物の放出抑制時間を任意に制御できることが望ましい。
【0004】
口腔内での薬物の放出が抑制されている経口医薬組成物として、特許文献1は、中心部に不快な味を有する薬物を含有する核粒子と、中間層に2種類の水溶性成分である不溶化促進剤及び不溶化物質を含有する層と、最外層に水侵入制御層とを有し、中間層が塩析型不溶化促進剤と塩析不溶化物質を含有するか、又は酸型不溶化促進剤と酸不溶化物質を含有する粒子状医薬組成物を開示している。特許文献1によれば、この粒子状組成物は、水侵入制御層の存在により一定時間は水が浸入せず、不溶化促進剤が不溶化物質の不溶化を促進して薬物の溶出を抑制しているが、その後は、水の浸入により不溶化促進剤が放出されることで不溶化物質が本来の水溶性を取り戻して、薬物が放出される。
しかし、特許文献1の粒子状医薬組成物は、薬物の放出抑制時間を任意に制御することが難しく、特に、薬物の溶出が遅い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、口腔内および咽頭部での薬物の放出が十分に抑制されており、かつ嚥下後は速やかに薬物が放出され、さらに薬物の放出抑制時間を制御し易いマスキング粒子、及びそれを含む経口医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、薬物と酸と炭酸塩を含む粒子を、水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆したマスキング粒子は、コーティング層の存在により口中や咽頭部では薬物の溶出が抑制されているが、その後は、コーティング層を通して内部に徐々に水分が侵入し、酸と炭酸塩との反応により発泡してマスキング粒子が破壊されるため、薬物が速やかに放出されることを見出した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記〔1〕~〔22〕を提供する。
〔1〕 薬物、酸、及び炭酸塩を含む薬物含有粒子を、水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆したマスキング粒子。
〔2〕 酸が、1種以上の有機酸である、〔1〕に記載のマスキング粒子。
〔3〕 炭酸塩が、1種以上の水溶性炭酸塩である、〔1〕又は〔2〕に記載のマスキング粒子。
〔4〕 酸を、薬物含有粒子の全量に対して0.5~30重量%含む、〔1〕~〔3〕の何れかに記載のマスキング粒子。
〔5〕 炭酸塩を、薬物含有粒子の全量に対して0.5~35重量%含む、〔1〕~〔4〕の何れかに記載のマスキング粒子。
〔6〕 炭酸塩を、酸の1重量部に対して0.1~10重量部含む、〔1〕~〔5〕の何れかに記載のマスキング粒子。
〔7〕 コーティング層の含有量が、薬物含有粒子1重量部に対して、0.005~2重量部である、〔1〕~〔6〕の何れかに記載のマスキング粒子。
〔8〕 薬物含有粒子が、薬物、酸、及び炭酸塩を含む均一粒子である、〔1〕~〔7〕の何れかに記載のマスキング粒子。
〔9〕 薬物含有粒子が、薬物を含む部分と、酸及び炭酸塩を含む部分を別に備えるものである、〔1〕~〔7〕の何れかに記載のマスキング粒子。
〔10〕 薬物含有粒子が、核粒子とそれを被覆する中間層からなり、薬物が核粒子に含まれ酸及び炭酸塩が中間層に含まれているか、又は酸及び炭酸塩が核粒子に含まれ薬物が中間層に含まれている、〔9〕に記載のマスキング粒子。
〔11〕 核粒子が崩壊剤を含む、〔10〕に記載のマスキング粒子。
〔12〕 中間層が結合剤、及び/又は流動化剤ないしは滑沢剤を含む、〔10〕又は〔11〕に記載のマスキング粒子。
〔13〕 薬物含有粒子が、酸を含む部分と、炭酸塩を含む部分を別に備えるものである、〔1〕~〔7〕の何れかに記載のマスキング粒子。
〔14〕 薬物含有粒子が核粒子とそれを被覆する中間層からなり、酸と炭酸塩が核粒子と中間層の何れかに別に含まれており、薬物が、核粒子、中間層、又はその両方に含まれている、〔13〕に記載のマスキング粒子。
〔15〕 核粒子が崩壊剤を含む、〔14〕に記載のマスキング粒子。
〔16〕 中間層が結合剤、及び/又は流動化剤ないしは滑沢剤を含む、〔14〕又は〔15〕に記載のマスキング粒子。
〔17〕 薬物含有粒子が核粒子と第1及び第2の中間層からなり、薬物、酸、炭酸塩が、核粒子、第1中間層、第2中間層の何れかに別に含まれている、〔13〕に記載のマスキング粒子。
〔18〕 核粒子が崩壊剤を含む、〔17〕に記載のマスキング粒子。
〔19〕 第1及び第2中間層の何れか一方又は両方が、結合剤、及び/又は流動化剤ないしは滑沢剤を含む、〔17〕又は〔18〕に記載のマスキング粒子。
〔20〕 〔1〕~〔19〕の何れかに記載のマスキング粒子を含んでなる、錠剤、顆粒剤、細粒剤、又は散剤。
〔21〕 〔1〕~〔19〕の何れかに記載のマスキング粒子を含んでなる、口腔内崩壊錠。
〔22〕 薬物を含む粒子に、酸及び炭酸塩を添加すると共に、薬物、酸、及び炭酸塩を含む薬物含有粒子を水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆することにより、薬物含有粒子からの薬物の溶出又は放出を制御する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマスキング粒子は、薬物を含む粒子が水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆されているため、口中では薬物の味を感じないか、又は薬物の味が低減されている。従って、苦みなどの不快な味を有する薬物を含む医薬組成物の製造に好適に使用できる。
また、本発明のマスキング粒子は、一般に薬物の味を口中で感じやすい剤型である顆粒剤、細粒剤、又は散剤として好適に使用することができ、これらの製剤は口中で薬物の味を感じない、又は感じ難いものとなる。
さらに、本発明のマスキング粒子は、錠剤の製造用に用いることができる。本発明のマスキング粒子を用いて製造された錠剤は、口腔内崩壊錠にしても、薬物を含む粒子がコーティングされているため、口中で薬物の味を感じない、又は感じ難い。薬物の味を抑制するために錠剤をコーティングすると一般に口腔内崩壊錠剤にならないが、本発明のマスキング粒子を用いれば、薬物の味が抑制された口腔内崩壊錠剤を製造することができる。
【0010】
また、本発明のマスキング粒子は、薬物を含む粒子が水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆されているため、口腔内で水分と接することによる薬物の放出が抑制されており、従って、口腔内や咽頭部からの薬物の吸収が抑えられている。このため、口腔内や咽頭部からの薬物の吸収による予期せぬ副作用の発現や、個体間での薬効のバラツキが回避される。
また、本発明のマスキング粒子は、口腔内や咽頭部からの薬物の吸収が抑えられているため、胃溶性製剤や腸溶性製剤の製造に好適に使用できる。
【0011】
本発明のマスキング粒子は、嚥下後は、消化管内の水分がコーティング層を徐々に浸透することで、内部に水分が浸入し、酸と炭酸塩が速やかに反応し発泡してマスキング粒子が破壊され、薬物が放出される。従って、胃や腸(特に、小腸上部)から、薬物を十分に吸収させることができる。また、胃や腸をターゲットとする薬物も十分に薬効を発揮させることができる。
【0012】
本発明のマスキング粒子は、水不溶性高分子の種類、コーティング層の厚さ、酸と炭酸塩の種類や量、その他の成分の種類や量、薬物含有粒子の層構成などを調整することで、所望の時間に薬物を放出させることができる。従って、薬物の種類や剤型に応じて、薬物放出抑制時間を任意に制御できる。
また、酸と炭酸塩とは水の存在により速やかに反応して発泡するため、本発明のマスキング粒子は、薬物放出抑制時間を正確に制御できる。このため、薬物や剤型に応じた所望の薬物放出パターンの製剤とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子の薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図2】薬物含有粒子が酸を含む場合と酸を含まない場合との間で薬物溶出を比較した図である。
【
図3】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子であって、コーティング層中の水不溶性高分子の種類が
図1のマスキング粒子とは違うものの薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図4】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子であって、酸及び炭酸塩の含有量が
図1のマスキング粒子より少ないものの薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図5】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子であって、酸及び炭酸塩の含有量が
図4のマスキング粒子より少ないものの薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図6】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子であって、中間層中の結合剤の種類が
図1のマスキング粒子とは違うものの薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図7】薬物と炭酸塩を含む核粒子、酸を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子の薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図8】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子であって、核粒子中の崩壊剤の含有量が
図1のマスキング粒子とは違うものの薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図9】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子であって、酸と炭酸塩の含有比率が
図1のマスキング粒子とは違うものの薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図10】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子であって、酸と炭酸塩の含有比率が
図1のマスキング粒子とは違うものの薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図11】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子であって、酸と炭酸塩の含有比率が
図4のマスキング粒子とは違うものの薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図12】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子であって、酸と炭酸塩の含有比率が
図4のマスキング粒子とは違うものの薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図13】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子であって、酸と炭酸塩の含有比率が
図5のマスキング粒子とは違うものの薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図14】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子であって、酸と炭酸塩の含有比率が
図5のマスキング粒子とは違うものの薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図15】薬物を含む核粒子、酸を含む第1中間層、炭酸塩を含む第2中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子の薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図16】薬物をコーティングした核粒子、賦形剤からなる第1中間層、酸を含む第2中間層、炭酸塩を含む第3中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子の薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図17】薬物と酸を含む核粒子、炭酸塩を含む中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子、並びにそれを用いて製造した口腔内崩壊錠剤の薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図18】薬物をコーティングした核粒子、賦形剤からなる第1中間層、酸を含む第2中間層、炭酸塩を含む第3中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子であって、酸の種類が
図16のマスキング粒子とは違うものの薬物溶出試験結果を示す図である。
【
図19】薬物をコーティングした核粒子、酸を含む第1中間層、賦形剤からなる第2中間層、炭酸塩を含む第3中間層、及びコーティング層を備えるマスキング粒子の薬物溶出試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のマスキング粒子は、薬物、酸、及び炭酸塩を含む粒子を、水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆した粒子である。本発明のマスキング粒子は、単独で、又は添加物と混合して、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤などとすることができる。
本発明において、薬物、酸、及び炭酸塩を含む粒状の部分を「薬物含有粒子」と言い、この「薬物含有粒子」を水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆したものを「マスキング粒子」と言う。後述するように、薬物、酸、及び炭酸塩を含む粒状の部分(コーティング層を除く部分)は、単一組成の粒子である場合と、中心核及びそれを取り巻く中間層からなる場合とがあるが、何れの場合も、コーティング層を除く部分を「薬物含有粒子」と称する。
【0015】
酸
酸は、炭酸塩との反応により炭酸を生じさせる酸性物質であれば特に限定されず、薬学的に許容される酸性添加物、医薬有効成分も含まれる。通常、炭酸よりもpKa値が小さい酸性物質を用いることができ、有機酸、無機酸、又はそれらの塩が好ましい。有機酸としては、カルボン酸である酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸(ビニル性カルボン酸)、グリコール酸、アジピン酸、カルボキシメチルセルロース;スルホン酸であるトルエンスルホン酸;アミノ酸;グルコノデルタラクトンなどが挙げられる。有機酸塩としては、酒石酸カリウムなどが挙げられる。また、無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などが挙げられる。無機酸塩としては、第一リン酸カルシウムなどが挙げられる。中でも、有機酸が好ましく、カルボン酸がより好ましく、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸がさらにより好ましく、クエン酸が特に好ましい。
酸は、水和物であってもよい。
酸は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
酸の含有量は、薬物含有粒子の全量に対して、1重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらにより好ましい。また、35重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、胃や腸において、炭酸塩との反応により速やかにマスキング粒子を破壊させ、薬物を放出させることができる。
【0017】
炭酸塩
炭酸塩は、薬学的に許容される炭酸塩であればよく、水溶性の炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。また、水不溶性又は水難溶性の炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。中でも、水溶性の炭酸塩が好ましく、炭酸水素塩がより好ましく、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムがさらにより好ましい。
炭酸塩は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
炭酸塩の含有量は、薬物含有粒子の全量に対して、0.1重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらにより好ましい。また、35重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、酸との反応により速やかにマスキング粒子を破壊させ、薬物を放出させることができる。
【0019】
酸と炭酸塩の含有量比は、酸の1重量部に対して、炭酸塩が0.1重量部以上が好ましく、0.3重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらにより好ましい。また、10重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましく、1.5重量部以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、所望の薬物溶出を達成するために十分な発泡を生じさせることができる。
【0020】
薬物
薬物は、特に限定されない。中でも、苦み、酸味、刺激味などの不快な味を呈する薬物、咽頭部に刺激のある薬物、口腔内や咽頭部から吸収される薬物を好適に使用できる。
薬物として、例えば、高脂血症治療薬(アトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチンなど)、キノロン系抗菌剤(モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、トスフロキサシン、シタフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、シプロフロキサシン、フレロキサシン、ガレノキサシンなど)、マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、エリスロマイシンなど)、非ステロイド性抗炎症薬(アスピリン、メフェナム酸、イブプロフェン、ナプロキセン、ロキソプロフェン、セレコキシブなど)、高血圧治療薬(アムロジピン、ニフェジピン、アジルサルタン、オルメサルタンメドキソミル、イルベサルタン、ロサルタン、カンデサルタンシレキセチル、テルミサルタンなど)、糖尿病治療薬(メトホルミン、ミグリトール、ボグリボース、ナテグリニド、ミチグリニド、ピオグリタゾン、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン、アナグリプチン、サキサグリプチン、テネリグリプチン、イプラグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジンなど)、血管拡張薬(リマプロスト、ベラプロスト、シルデナフィル、ボセニロン、ヘプロニカート、カリジノゲナーゼ、イソクスプリンなど)、抗うつ薬(エスシタロプラム、デュロキセチン、パロキセチンなど)、抗精神病薬(オランザピン、クエチアピン、クロザピン、アリピプラゾール、リスペリドン、ブロナンセリン、ペロスピロンなど)、抗不安薬(クロチアゼパム、ロラゼパム、ジアゼパムなど)、アルツハイマー型認知症治療薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンなど)、抗てんかん薬(レベチラセタム、ガバペンチン、ラモトリギン、ゾニサミド、カルバマゼピン、フェニトイン、バルプロ酸など)、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン、ミロガバリンなど)、ドパミン作動薬(ガベルゴリン、プラミペキソール、ロピニロール、ブロモクリプチン、ペルコリド、アマンタジンなど)、抗ヒスタミン薬(レボセチリジン、セチリジン、エピナスチン、オロパタジン、ロラタジン、デスロラタジン、ルパタジン、エバスチン、ベポタスチン、ゼラスチン、フェキソフェナジン、ケトチフェン、エメダスチン、オキサトミド、メキタジン、アゼラスチンなど)、ロイコトリエン阻害薬(モンテルカスト、ザフィルルカスト、プランルカストなど)、過活動膀胱治療薬(ソリフェナシン、イミダフェナシン、トルテロジン、プロピベリン、フラボキサート、クロミプラミン、イミプラミン、アミトルプチリン、ミラベグロン、ビベグロンなど)、癌の分子標的治療薬(ボルデゾミブなど)、前立腺肥大症に伴う排尿障害治療薬(シロドシン、クロルマジノン、タムスロシン、ナフトピジルなど)、勃起不全治療薬(タダラフィル、バルデナフィルなど)、不眠症治療薬(ラメルテオン、ゾルピデム、トリアゾラム、ニメタゼパム、クアゼパムなど)、骨粗鬆症治療薬(リセドロン酸ナトリウム、アレンドロン酸など)、痛風・高尿酸血症治療薬(フェブキソスタット、トピロキソスタット、アロプリノールなど)、高リン血症治療薬(炭酸ランタンなど)など、及びこれらの塩、並びにこれらの溶媒和物が挙げられる。
【0021】
薬物の含有量は、薬物の種類により異なるが、マスキング粒子の全量に対して、例えば、90重量%以下とすることが好ましい。薬物含有量の下限値は、薬物により異なるが、マスキング粒子の全量に対して、例えば0.00001重量%程度であり得る。
【0022】
添加物
本発明のマスキング粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、薬物含有粒子中に、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤などに使用される任意の添加物を含むことができる。添加物としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤ないし流動化剤(付着防止剤)、着色剤、香料、甘味剤、保存剤ないしは防腐剤などが挙げられる。添加物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
賦形剤としては、乳糖水和物、白糖、マルトース、果糖、ブドウ糖、トレハロースのような糖類;マンニトール(特に、D-マンニトール)、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトールのような糖アルコール;デンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプンのようなデンプン類;結晶セルロースのようなセルロース類;デキストリン;デキストラン;グリセリン脂肪酸エステル;メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイトのような無機粉体などが挙げられる。
【0024】
結合剤としては、ポビドン;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、クロスカルメロースナトリウムのようなセルロース類;デンプン;ゼラチン;寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガント、キタンサンガム、アラビアゴム、プルラン、デキストリンのような増粘多糖類;ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコール移植片コポリマー;カルボキシビニルポリマー;ポリエチレンオキサイド;コポリビドン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;N-イソプロピルアクリルアミド及び/又はアクリルアミドのN位に疎水性を有する基を導入した誘導体を含む高分子;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコール;ポリビニルアルコール(部分けん化ポリビニルアルコールを含む);塩基性(メタ)アクリレートコポリマー;ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0025】
崩壊剤としては、クロスポビドン;カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロースのようなセルロース類;デンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチのようなデンプン類;デキストリン;ケイ酸カルシウム;クエン酸カルシウム;軽質無水ケイ酸などが挙げられる。
【0026】
滑沢剤ないし流動化剤(付着防止剤)としては、ステアリン酸、ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛など)、フマル酸ステアリルナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、タルク、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、酒石酸ナトリウムカリウム、カルナウバロウ、L-ロイシン、ポリエチレングリコール、硬化油、ケイ酸化合物(軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウムなど)、酸化チタンなどが挙げられる。
【0027】
着色剤としては、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、酸化チタン、黒酸化鉄、食用タール色素、天然色素(βカロチン、リボフラビンなど)などが挙げられる。
【0028】
甘味剤としては、スクラロース、マンニトール、ショ糖、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウムなどが挙げられる。
【0029】
保存剤ないしは防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、安息香酸、安息香酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0030】
コーティング層
コーティング層は、医薬製剤においてコーティング剤として用いられる水不溶性高分子を含む。本発明において「水不溶性高分子」は、水に全く溶解しないものの他、水難溶性のものも包含する。
【0031】
水不溶性高分子としては、セルロース系コーティング剤(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、フタル酸ヒプロメロース、酢酸コハク酸ヒプロメロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースなど)、ビニル系高分子(ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、酢酸フタル酸ポリビニルなど)、メタクリレートポリマー又はメタクリル酸ポリマー、ポリシロキサン系コーティング剤(ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物など)などが挙げられる。
中でも、メタクリレートポリマー又はメタクリル酸ポリマー、セルロース系コーティング剤(特に、エチルセルロース)が好ましく、メタクリレートポリマー又はメタクリル酸ポリマーがより好ましい。
【0032】
メタクリレートポリマー又はメタクリル酸ポリマーは、多種の市販品があり、例えば、レーム社のオイドラギッドEシリーズ、オイドラギッドLシリーズ、オイドラギッドSシリーズ、オイドラギッドRシリーズ、オイドラギッドNEシリーズ、オイドラギッドFSシリーズ(登録商標)などが挙げられる。具体的には、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(オイドラギットE100、EPOなど)、メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL30D-55、L100-55など)、メタクリル酸コポリマーL(オイドラギットL100など)、メタクリル酸コポリマーS(オイドラギットS100など)、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギットRL100、RLPO、RS100、RSPO、RL30D、RS30Dなど)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(オイドラギットNE30Dなど)などが挙げられる。
【0033】
水不溶性高分子は、pH非依存性高分子、腸溶性高分子、胃溶性高分子などに分類されるが、本発明では、何れも好適に使用でき、薬物ごとに望ましい放出抑制時間が得られるように選択すればよい。実施例の項目に示す通り、本発明のマスキング粒子は、コーティング層を通して少しずつ水分が浸入することで、酸と炭酸塩が反応して発泡し、マスキング粒子を破壊するため、例えば、腸溶性高分子を使用する場合も、腸まで到達する前に薬物が放出される製剤設計も可能となる。
【0034】
コーティング層は、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、結合剤、流動化剤ないしは滑沢剤(付着防止剤)、着色剤、甘味剤などの添加物を含有することができる。添加物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0035】
可塑剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン(グリセリン三酢酸)のようなグリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、ソルビタンモノラウレート、モノステアリン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、ポロキサマー、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
結合剤、流動化剤ないしは滑沢剤(付着防止剤)、着色剤、甘味剤は、薬物含有粒子の添加物として例示したものが挙げられる。
【0036】
コーティング層の含有量は、薬物含有粒子1重量部に対して、0.01重量部以上が好ましく、0.05重量部以上がより好ましく、0.1重量部以上がさらにより好ましい。また、1重量部以下が好ましく、0.5重量部以下がより好ましく、0.3重量部以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、水の浸透速度が適切になり、口腔内や咽頭部での薬物の放出を十分に抑制でき、かつその後は速やかに薬物を放出させることができる。
【0037】
粒子構造
本発明のマスキング粒子は、薬物、酸、及び炭酸塩を含む薬物含有粒子が水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆されていればよく、様々な構造の粒子にすることができる。
【0038】
(第1の態様)
マスキング粒子は、例えば、薬物、酸、及び炭酸塩を含む均一な又は単一部分からなる薬物含有粒子をコーティング層で被覆した粒子とすることができる。この態様は、酸と炭酸塩を同じ部分に含むため、コーティング層を通した水の浸入により非常に速やかに発泡し、薬物を放出させることができる。薬物含有粒子は、さらに、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤などに使用される任意の添加物を含むことができる。
【0039】
(第2の態様)
また、マスキング粒子は、薬物を含む部分と酸及び炭酸塩を含む部分とを別に備える薬物含有粒子をコーティング層で被覆した粒子とすることもできる。
【0040】
例えば、核粒子とそれを被覆する層(この層は、核粒子とコーティング層との間に存在するため、以下、「中間層」と称することがある)からなる薬物含有粒子をコーティング層で被覆した粒子とし、核粒子に薬物を配合し中間層に酸と炭酸塩を配合するか、又は核粒子に酸と炭酸塩を配合し中間層に薬物を配合したものが挙げられる。
核粒子が薬物を含む場合は、核粒子を、賦形剤などを含む中心核とそれを取り巻く薬物含有層からなるものとすることもできる。これにより、球形の薬物含有粒子を製造し易くなるため、コーティング層の形成が容易になり、また、粒度分布の狭い薬物含有粒子が得られる。
また、核粒子と上記中間層との間に、賦形剤などからなる別の中間層を設けることもできる。
この態様は、酸及び炭酸塩と薬物とを別部分に配合しているため、酸やアルカリに弱い薬物も使用し易い。また、酸と炭酸塩を同じ部分に含むため、コーティング層を通した水の浸入により非常に速やかに発泡し、薬物を放出させることができる。
【0041】
この態様でも、核粒子及び中間層は、さらに、顆粒剤、細粒剤、散剤などに使用される任意の添加物を含むことができる。
中でも、核粒子が崩壊剤を含めば、崩壊剤の吸水性により水を呼び込むため、酸と炭酸塩との反応が起こり易くなる。崩壊剤としては、クロスポビドン;カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロースのようなセルロース類が好ましく、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。また、崩壊剤の含有量は、薬物含有粒子の全量に対して、0.5~50重量%程度が好ましい。
中間層は、層形成を容易にするため結合剤を含むことが好ましい。結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ポリエチレングリコールが好ましい。また、結合剤の含有量は、薬物含有粒子の全量に対して、0.1~20重量%程度が好ましい。
また、中間層は、粒子の帯電を抑制して製造工程を円滑にするため、流動化剤ないしは滑沢剤(付着防止剤)を含むことが好ましい。中間層中の流動化剤ないしは滑沢剤の含有量は、薬物含有粒子の全量に対して、0.01~50重量%程度が好ましい。
【0042】
(第3の態様)
また、マスキング粒子は、酸を含む部分と炭酸塩を含む部分とを別に備える薬物含有粒子をコーティング層で被覆した粒子とすることもできる。
【0043】
酸と炭酸塩を同じ部分に配合した場合、溶解すると発泡が生じるため製造過程で水を使用することができず、製造方法が制限される場合がある。そこで、例えば、核粒子と中間層からなる薬物含有粒子をコーティング層で被覆した粒子状組成物とし、酸と炭酸塩を、核粒子と中間層の何れかに別々に配合することができる。この場合、酸と炭酸塩が別部分に存在するため、核粒子と中間層のそれぞれまたはいずれかを水を用いて形成することができ、特に、中間層材料を水溶解液としてコーティング(中間層形成)に用いることができる。
酸と炭酸塩は、核粒子と中間層の何れに含まれていてもよいが、酸に不安定なコーティング層も使用し易い点などで、核粒子に酸を含み中間層に炭酸塩を含む粒子が好ましい。
薬物は、核粒子と中間層の何れか一方、又は両方に配合すればよい。酸と薬物を別部分に配合すれば、酸に弱い薬物も使用し易く、炭酸塩と薬物を別部分に配合すれば、アルカリに弱い薬物も使用し易い。
【0044】
この態様でも、核粒子及び中間層は、さらに、顆粒剤、細粒剤、散剤などに使用される任意の添加物を含むことができる。核粒子は崩壊剤を含むことが好ましく、中間層は、結合剤や流動化剤ないしは滑沢剤(付着防止剤)を含むことが好ましい。崩壊剤、結合剤、流動化剤ないしは滑沢剤(付着防止剤)の好ましい種類や含有量は、第2の態様の核粒子と中間層について述べた通りである。
【0045】
第3の態様は、薬物と酸と炭酸塩とを、それぞれ別部分に含むこともできる。この場合、酸と炭酸塩が別部分に存在するため、製造時に水の使用等を制限する必要がなく、また薬物と酸、薬物と炭酸塩とが別部分に存在するため、酸やアルカリに弱い薬物も使用し易い。
例えば、核粒子とそれを被覆する2つの中間層からなる薬物含有粒子をコーティング層で被覆した粒子とし、核粒子、内側の中間層(以下、「第1中間層」ということがある。)、外側の中間層(以下、「第2中間層」ということがある。)の何れかに、薬物、酸、炭酸塩を別々に配合することができる。好ましくは、核粒子が薬物を含み、2つの中間層がそれぞれ酸と炭酸塩を含むことができる。第1中間層、第2中間層の何れに酸と炭酸塩が含まれていても良いが、第1中間層が酸を含み、第2中間層が炭酸塩を含むことが好ましい。さらに、核粒子を、賦形剤などを含む中心核とそれを取り巻く薬物含有層からなるものとすることができる。薬物を含む部分(若しくは層)と酸又は炭酸塩を含む部分(若しくは層)との間に、賦形剤などからなる別の中間層を設けることもできる。この場合、核粒子の外側の層を第1中間層、その外側の層を第2中間層、その外側の層を第3中間層ということがある。
【0046】
この態様でも、核粒子と各中間層は、さらに、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤などに使用される任意の添加物を含むことができる。核粒子は崩壊剤を含むことが好ましく、崩壊剤の好ましい種類や含有量は、第2の態様の核粒子について述べた通りである。また、各中間層は、結合剤や流動化剤ないしは滑沢剤(付着防止剤)を含むことが好ましく、結合剤、流動化剤ないしは滑沢剤(付着防止剤)の好ましい種類は、第2の態様の中間層について述べた通りである。各中間層が結合剤を含む場合の含有量は、薬物含有粒子の全量に対して、総量で0.1~20重量%が好ましい。また、各中間層が流動化剤ないしは滑沢剤(付着防止剤)を含む場合の含有量は、薬物含有粒子の全量に対して、総量で0.01~50重量%が好ましい。
【0047】
本発明のマスキング粒子は、第1~3の態様の他に、種々の構造の粒子とすることができる。
【0048】
製造方法
本発明のマスキング粒子において、薬物含有粒子、核粒子、及び賦形剤の中心核は、常法に従い、湿式又は乾式で造粒し、必要に応じて乾燥、整粒することにより製造することができる。湿式造粒法としては、流動層造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、押出造粒法、破砕造粒法、練合造粒法、連続直顆粒化法、複合型流動層造粒法などが挙げられ、乾式造粒法としては、乾式複合造粒法、圧片造粒法、ブリケット造粒法、溶融造粒法などが挙げられる。
また、中間層やコーティング層は、常法に従い、流動層コーティング機、ワースター式流動層コーティング機、遠心流動コーティング機、転動流動コーティング機などの装置を用いて製造することができる。
【0049】
性状
薬物、酸、及び炭酸塩を含む薬物含有粒子の形状は、造粒法により異なるが、球形、円柱形、長球形(長楕円体形)などとすることができる。
また、コーティング層で被覆後のマスキング粒子の粒径は、特に限定されないが、D50が50~1000μm程度、中でも100~800μm程度であればよい。また、D50は、50μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上とすることもでき、1000μm以下、800μm以下、600μm以下、400μm以下とすることもできる。本発明において、D50は、第17改正日本薬局方の粒度測定法のレーザー回折法による粒子径測定法に従い粒度を測定し、算出した値であり、具体的には、実施例の項目に記載の方法で測定した値である。
【0050】
錠剤
本発明のマスキング粒子は錠剤の製造に供することができる。従って、本発明は、本発明のマスキング粒子を用いて製造した錠剤も提供する。錠剤は、例えば、本発明のマスキング粒子をそのまま打錠するか、又は1種又は2種以上の添加物と混合して打錠することにより製造することができる。
本発明のマスキング粒子は、口中で感じる薬物の味がマスキングされているため、口腔内崩壊錠剤の製造に好適に使用できる。口腔内崩壊錠剤の製造方法は種々知られており、当業者であれば、本発明のマスキング粒子と混合する添加物の種類と量などを適宜選択することにより、口腔内崩壊錠剤を製造することができる。
本発明のマスキング粒子と添加物を混合して口腔内崩壊錠を製造する場合、本発明のマスキング粒子の含有量は、口腔内崩壊錠剤の全量に対して、1重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上とすることができる。また、90重量%以下、70重量%以下、又は60重量%以下とすることができる。
【0051】
薬物溶出率
本発明のマスキング粒子は、薬物の種類によっても異なるが、第17改正日本薬局方の溶出試験法のパドル法に従い、pH6.8の溶出試験液を用いて測定した溶出率が、試験開始後、少なくとも0.5分間、中でも少なくとも1分間、中でも少なくとも1.5分間、中でも少なくとも3分間は、実質的にゼロである(実質的に薬物が溶出しない)ことが好ましい。
また、本発明のマスキング粒子は、薬物放出のラグタイムが0.5分間以上、1分間以上、又は3分間以上であり得る。また、薬物放出のラグタイムは15分間以下、10分間以下、又は8分間以下であり得る。薬物放出のラグタイムは、実施例の項目に記載した方法で測定した値である。
また、本発明のマスキング粒子は、薬物放出速度が、1%/分以上、中でも2%/分以上、中でも10%/分以上、中でも30%/分以上であることが好ましい。また、薬物放出速度は、80%/分以下、70%/分以下、又は60%/分以下であり得る。薬物放出速度は、実施例の項目に記載した方法で測定した値である。
【0052】
薬物溶出制御方法
本発明は、薬物を含む粒子に酸及び炭酸塩を添加すると共に、薬物、酸、及び炭酸塩を含む薬物含有粒子に水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆することにより、薬物含有粒子からの薬物の溶出又は放出を一定時間遅らせる方法、即ち、薬物の溶出又は放出を一定時間抑制する方法を包含する。この方法では、薬物含有粒子に含まれる、酸、炭酸塩、及びその他の成分の種類、量、比率;コーティング層の量;コーティング層に含まれる成分の種類、量、比率などを調整することにより、薬物溶出抑制時間を調整することができる。薬物含有粒子に含まれる、酸、炭酸塩、及びその他の成分の種類、量、比率;コーティング層の量;コーティング層に含まれる成分の種類、量、比率などは、本発明のマスキング粒子について述べた通りである。従って、本発明は、薬物を含む粒子に、酸及び炭酸塩を添加すると共に、薬物、酸、及び炭酸塩を含む薬物含有粒子を水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆することにより、薬物含有粒子からの薬物の溶出又は放出を制御する方法を包含する。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(1)試験方法
(溶出試験)
日本薬局方溶出試験法第2法に従い、溶出試験を行った。パドルの回転数を50回転/分に設定し、試験液は、pH6.8のリン酸緩衝液(日本薬局方崩壊試験法第2液)900mLを使用した。レボフロキサシンを250mg含む薬物含有粒子あるいはマスキング粒子あるいは錠剤をベッセルへ投入した。試験時間1、2、3、5、10、15、30、45、90分時点で各ベッセルから10mLずつサンプリングし、紫外可視吸収度測定法にて溶出率を算出した。これを3回繰り返した平均値を平均溶出率として算出した。
【0054】
(粒度分布測定)
本発明において粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern製)を用いて、体積基準で測定した。
【0055】
(2)コーティング層の効果
実施例1~5
レボフロキサシン水和物とクエン酸水和物を含む核粒子と、炭酸水素ナトリウムを含む中間層を備えた薬物含有粒子、及びこの薬物含有粒子をコーティングしたマスキング粒子を、下記のようにして製造した。
[核粒子の調製]
レボフロキサシン水和物400g、粉砕したクエン酸水和物(サツマ化工株式会社製、以下同じ)240g、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社製;LHPC31、以下同じ)160gを撹拌混合造粒装置(株式会社パウレック製;バーチカルグラニュレーターFM-VG-05、以下同じ)に投入して混合後、撹拌しながら精製水560gをスプレー噴霧して練合物を得た。
次に、練合物を湿式押し出し造粒機マルチグラン(DALTON製;MG-55-2、以下同じ)を用いて押し出し造粒し、球形整粒機マルメライザー(DALTON製;QJ-230T-2、以下同じ)を用いて整粒した。その後、30(500μm)メッシュを通過し、42(355μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[中間層用コーティング液(1)の調製]
ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製;HPCL、以下同じ)12gを無水エタノール400g(日本アルコール産業株式会社製、以下同じ)に溶解させた液に、タルク(林化成株式会社製;タルカンハヤシ、以下同じ)25g、及び粉砕した炭酸水素ナトリウム(AGC株式会社製、以下同じ)45gを加え、攪拌し、中間層形成用のコーティング液(1)を調製した。
[薬物含有粒子の調製]
得られた核粒子150gを転動流動コーティング装置(株式会社パウレック製;マルチプレックス、以下同じ)に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層82gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング用コーティング液(2)の調製]
アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(Evonik Nutrition&care GmbH製;オイドラギットE、以下同じ)30gをエタノール270g、精製水30gの混合液に溶解させ、タルク30gを加え、攪拌し、マスキング用のコーティング液(2)を調製した。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層(水不溶性高分子を含むコーティング層をマスキング層という。以下、同様である。)の質量比が6%のものを実施例1、12%のものを実施例2、18%のものを実施例3、24%のものを実施例4、30%のものを実施例5とした。
【0056】
比較例1
実施例1~5と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例1とした。
【0057】
実施例1~5、比較例1について、溶出試験を行った。レボフロキサシン水和物の溶出率の推移を
図1に示す。
図1の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
比較例1では、発泡により薬物放出は速やかであったが、水不溶性高分子を含むコーティング層がないため、薬物放出のラグタイムがなかった。一方、実施例1~5では、水不溶性高分子を含むコーティング層によって一定時間水の浸入が防がれた後、内部に水が浸透し、発泡によって内部からの膜破壊により速やかに薬物が放出された。その結果、1~5.9分間のラグタイムと、2.3~50.9%/分の速やかな薬物放出が両立された。
【0058】
薬物放出のラグタイムは、pH6.8での溶出試験において、薬物が1%放出されるまでの時間であり、1%を跨ぐ2点の測定時点から算出した。
薬物放出速度は、pH6.8での溶出試験において、溶出率3~90%の範囲で、溶出率を測定した最初の2点の測定時点から算出した。
【0059】
(3)酸の効果
比較例2
比較例1において、クエン酸水和物をエリスリトール(物産フードサイセンス製;エリスリトール100M、以下同じ)に変えた他は同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例2とした。
比較例3
比較例2の薬物含有粒子190gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。薬物含有粒子の質量に対するマスキング層の質量比は、実施例3と同様に、18%である。
比較例3は、実施例3の核粒子内のクエン酸水和物をエリスリトールに変えた他は実施例3と同じである。
【0060】
実施例3のマスキング粒子、比較例2の薬物含有粒子、及び比較例3のマスキング粒子について、溶出試験を行った。レボフロキサシン水和物の溶出率の推移を
図2に示す。
図2の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
比較例2は、比較例1と同様に薬物放出は速やかであるが、水不溶性高分子を含むコーティング層がないため、ラグタイムがなかった。
比較例3は水不溶性高分子を含むコーティング層によって6.5分間のラグタイムがあるが、発泡による膜破壊が生じないため、緩やかな拡散によって薬物が放出され、その結果、その薬物放出速度が遅く、試験開始90分後にも十分に薬物が溶出しなかった。
薬物放出抑制後に速やかに薬物が放出されるためには、酸が必須であることが分かる。
【0061】
(4)コーティング層の水不溶性高分子の種類
実施例6、7
[マスキング用コーティング液(3)の調製]
エチルセルロース(THE DOW CHEMICAL製;エトセルスタンダード7プレミアム、以下同じ)40gをエタノール720g、精製水80gの混合液に溶解させ、タルク40gを加え、攪拌し、コーティング液(3)を調製した。
[マスキング粒子の調製]
比較例1の薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(3)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層の質量比が9%のものを実施例6、12%のものを実施例7とした。
【0062】
実施例6、7のマスキング粒子について、溶出試験を行った。レボフロキサシン水和物の溶出率の推移を
図3に示す。
図3の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
実施例6、7では、水不溶性高分子を含むコーティング層によって一定時間水の浸入が防がれた後、内部に水が浸透し、発泡によって内部からの膜破壊により速やかに薬物が放出された。その結果、1.4~5.4分間のラグタイムと、3.7~5.1%/分の速やかな薬物放出が両立された。
実施例6、7のコーティング層中の水溶性高分子はエチルセルロースであり、実施例1~5のアミノアルキルメタクリレートコポリマーEとは異なる。実施例6、7では、ラグタイム経過後に、実施例1~5に比べて緩やかな薬物放出速度が得られた。
水不溶性高分子の種類に拘わらず、一定時間の薬物放出抑制とその後の速やかな薬物放出を実現できることが分かる。また、水不溶性高分子の種類を選択することで、薬物放出抑制時間とその後の薬物放出速度を調整できることが分かる。
【0063】
(5)酸及び炭酸塩の量
実施例8~11
[核粒子の調製]
レボフロキサシン水和物422.5g、粉砕したクエン酸水和物97.5g、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース130gを撹拌混合造粒装置に投入し、混合後、撹拌しながら精製水565.5gをスプレー噴霧して練合物を得た。
次に、練合物を湿式押し出し造粒機マルチグランを用いて押し出し造粒し、球形整粒機マルメライザーを用いて整粒した。その後、30(500μm)メッシュを通過し、42(355μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[薬物含有粒子の調製]
得られた核粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層54.7gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層の質量比が12%のものを実施例8、18%のものを実施例9、24%のものを実施例10、30%のものを実施例11とした。
【0064】
比較例4
実施例8~11と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例4とした。
【0065】
実施例12~15
[核粒子の調製]
レボフロキサシン水和物487.5g、粉砕したクエン酸水和物32.5g、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース130gを撹拌混合造粒装置に投入し、混合後、撹拌しながら精製水560gをスプレー噴霧して練合物を得た。
次に、練合物を湿式押し出し造粒機マルチグランを用いて押し出し造粒し、球形整粒機マルメライザーを用いて整粒した。その後、30(500μm)メッシュを通過し、42(355μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[薬物含有粒子の調製]
得られた核粒子150gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層13.7gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子150gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層の質量比が12%のものを実施例12、18%のものを実施例13、24%のものを実施例14、30%のものを実施例15とした。
【0066】
比較例5
実施例12~15と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例5とした。
【0067】
実施例8~11のマスキング粒子、比較例4の薬物含有粒子、実施例12~15のマスキング粒子、比較例5の薬物含有粒子について、溶出試験を行った。実施例8~11のマスキング粒子と比較例4の薬物含有粒子のレボフロキサシン水和物の溶出率の推移を
図4に示し、実施例12~15のマスキング粒子と比較例5の薬物含有粒子の溶出率の推移を
図5に示す。
図4、5の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
【0068】
実施例1~5では、1錠当たりのクエン酸水和物の含有量が153.8mg、炭酸水素ナトリウムの含有量が153.8mgである。これ対して、実施例8~11では、クエン酸水和物の含有量が59.1mg、炭酸水素ナトリウムの含有量が59.1mgと少なく、実施例12~15では、クエン酸水和物の含有量が17.1mg、炭酸水素ナトリウムの含有量が17.1mgとさらに少ない。
【0069】
比較例4、5では、発泡により薬物放出は速やかであるが、水不溶性高分子を含むコーティング層がないため、ラグタイムがなかった。
これに対して、実施例8~11及び実施例12~15では、水不溶性高分子を含むコーティング層によって一定時間水の浸入が防がれた後、内部に水が浸透し、発泡によって内部からの膜破壊により速やかに薬物が放出された。その結果、実施例8~11では、1~4.2分間のラグタイムと、9.7~34.5%/分の速やかな薬物放出速度が両立された。また、実施例12~15では、1~3.4分間のラグタイムと、3.5~34.3%/分の速やかな薬物放出速度が両立された。
酸及び炭酸塩の広い範囲の配合量で、一定時間の薬物放出抑制とその後の速やかな薬物放出が得られることが分かる。また、酸及び炭酸塩の配合量を調整することで薬物放出抑制時間と薬物放出速度をコントロールできることが分かる。
【0070】
(6)結合剤の種類
実施例16
[中間層用コーティング液(4)の調製]
ポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社;マクロゴール6000、以下同じ)12gを無水エタノール171gに溶解させた液に、タルク25g、及び粉砕した炭酸水素ナトリウム45gを加え、攪拌し、コーティング液(4)を調製した。
[薬物含有粒子の調製]
実施例1~5及び比較例1と同じ核粒子150gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(4)を噴霧し、中間層82gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子190gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。薬物含有粒子に対するマスキング層の質量比は18%とした。
【0071】
比較例6
実施例16と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例6とした。
【0072】
実施例16のマスキング粒子、比較例6の薬物含有粒子について、溶出試験を行った。レボフロキサシン水和物の溶出率の推移を
図6に示す。
図6の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
実施例16は、実施例3において、中間層のヒドロキシプロピルセルロースをポリエチレングリコールに代えたものである。実施例16では、水不溶性高分子を含むコーティング層によって一定時間水の浸入が防がれた後、内部に水が浸透し、発泡によって内部からの膜破壊により速やかに薬物が放出された。その結果、2.1分間のラグタイムと、13.2%/分の速やかな薬物放出速度が両立された。結合剤の種類に拘わらず、一定時間の薬物放出抑制とその後の速やかな薬物放出を実現できることが分かる。
一方、比較例6は発泡により薬物放出は速やかであったが、水不溶性高分子を含むコーティング層がないため、ラグタイムがなかった。
【0073】
(7)酸及び炭酸塩を含有する層の変更
実施例17~20
[核粒子の調製]
レボフロキサシン水和物375g、粉砕した炭酸水素ナトリウム225g、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース150gを撹拌混合造粒装置に投入し、混合後、撹拌しながら精製水525gをスプレー噴霧して練合物を得た。
次に、練合物を湿式押し出し造粒機マルチグランを用いて押し出し造粒し、球形整粒機マルメライザーを用いて整粒した。その後、30(500μm)メッシュを通過し、42(355μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[中間層用コーティング液(5)の調製]
ヒドロキシプロピルセルロース16gを無水エタノール960gに溶解させた液に、タルク33.3gおよびクエン酸水和物60gを加え、攪拌し、コーティング液(5)を調製した。
[薬物含有粒子の調製]
得られた核粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(5)を噴霧し、中間層109.3gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。薬物含有粒子に対するマスキング層の質量比は30%である。
【0074】
実施例18~20
[マスキング粒子の調製]
実施例17と同じ薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(3)を噴霧し、マスキング粒子を得た。薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層の質量比が6%のものが実施例18、12%のものが実施例19、18%のものが実施例20である。
【0075】
比較例7
実施例17~20と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例7とした。
【0076】
実施例17~20のマスキング粒子、比較例7の薬物含有粒子について、溶出試験を行った。レボフロキサシン水和物の溶出率の推移を
図7に示す。
図7の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
実施例17~20は、実施例1~16と異なり、核粒子が炭酸水素ナトリウムを含み、中間層がクエン酸水和物を含む。実施例17~20でも、1~5.1分間のラグタイムと、3.4~30.4%/分の速やかな薬物放出速度が両立された。酸と炭酸塩を含有する部分を変えても、一定時間の薬物放出抑制とその後の速やかな薬物放出を実現できることが分かる。
一方、比較例7は発泡により薬物放出は速やかであったが、水不溶性高分子を含むコーティング層がないため、ラグタイムがなかった。
【0077】
実施例1~20及び比較例1~7の薬物含有粒子の組成を表1に示す。
【表1】
【0078】
(8)崩壊剤の含有量
実施例21
[核粒子の調製]
レボフロキサシン水和物325gおよび粉砕したクエン酸水和物195gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース32.5gおよびエリスリトール97.5gを撹拌混合造粒装置に投入して混合後、撹拌しながら精製水195gをスプレー噴霧して練合物を得た。
次に、練合物を湿式押し出し造粒機マルチグランを用いて押し出し造粒し、球形整粒機マルメライザーを用いて整粒した。その後、30(500μm)メッシュを通過し、42(355μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[薬物含有粒子の調製]
得られた上記の核粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層109.3gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対するマスキング層の質量比は18重量%とした。
【0079】
比較例8
実施例21と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例8とした。
【0080】
実施例21のマスキング粒子、比較例8の薬物含有粒子について、溶出試験を行った。レボフロキサシン水和物の溶出率の推移を
図8に示す。
図8の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
実施例21は、実施例3において、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの配合量を1/4とし、残余をエリスリトールに置き換えた処方である。実施例21でも、3.1分間のラグタイムと、9.0%/分の速やかな薬物放出速度が両立された。崩壊剤の量が少なくても、一定時間の薬物放出抑制とその後の速やかな薬物放出を実現できることが分かる。
一方、比較例8は発泡により薬物放出は速やかであったが、水不溶性高分子を含むコーティング層がないため、ラグタイムがなかった。
【0081】
(9)酸と炭酸塩の含有比率
実施例22~24
[核粒子の調製]
レボフロキサシン水和物400gおよび粉砕したクエン酸水和物240gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース160gを撹拌混合造粒装置に投入して混合後、撹拌しながら精製水560gをスプレー噴霧して練合物を得た。
次に、練合物を湿式押し出し造粒機マルチグランを用いて押し出し造粒し、球形整粒機マルメライザーを用いて整粒した。その後、30(500μm)メッシュを通過し、42(355μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[薬物含有粒子の調製]
得られた核粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層54.7gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層の質量比が18%のものを実施例22、24%のものを実施例23、30%のものを実施例24とした。
【0082】
比較例9
実施例22~24と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例9とした。
【0083】
実施例25~27
[核粒子の調製]
レボフロキサシン水和物400gおよび粉砕したクエン酸水和物240gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース160gを撹拌混合造粒装置に投入して混合後、撹拌しながら精製水560gをスプレー噴霧して練合物を得た。
次に、練合物を湿式押し出し造粒機マルチグランを用いて押し出し造粒し、球形整粒機マルメライザーを用いて整粒した。その後、30(500μm)メッシュを通過し、42(355μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[薬物含有粒子の調製]
得られた核粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層18.23gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層の質量比が18%のものを実施例25、24%のものを実施例26、30%のものを実施例27とした。
【0084】
比較例10
実施例25~27と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例10とした。
【0085】
実施例28~30
[核粒子の調製]
レボフロキサシン水和物390gおよび粉砕したクエン酸水和物90gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース180gを撹拌混合造粒装置に投入して混合後、撹拌しながら精製水480gをスプレー噴霧して練合物を得た。
次に、練合物を湿式押し出し造粒機マルチグランを用いて押し出し造粒し、球形整粒機マルメライザーを用いて整粒した。その後、30(500μm)メッシュを通過し、42(355μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[薬物含有粒子の調製]
得られた核粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層109.3gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層の質量比が12%のものを実施例28、18%のものを実施例29、24%のものを実施例30とした。
【0086】
比較例11
実施例28~30と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例11とした。
【0087】
実施例31~33
[核粒子の調製]
レボフロキサシン水和物390gおよび粉砕したクエン酸水和物90gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース180gを撹拌混合造粒装置に投入して混合後、撹拌しながら精製水480gをスプレー噴霧して練合物を得た。
次に、練合物を湿式押し出し造粒機マルチグランを用いて押し出し造粒し、球形整粒機マルメライザーを用いて整粒した。その後、30(500μm)メッシュを通過し、42(355μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[薬物含有粒子の調製]
得られた核粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層18.23gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層の質量比が18%のものを実施例31、24%のものを実施例32、30%のものを実施例33とした。
【0088】
比較例12
実施例31~33と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例12とした。
【0089】
実施例34
[核粒子の調製]
レボフロキサシン水和物600gおよび粉砕したクエン酸水和物40gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース160gを撹拌混合造粒装置に投入して混合後、撹拌しながら精製水560gをスプレー噴霧して練合物を得た。
次に、練合物を湿式押し出し造粒機マルチグランを用いて押し出し造粒し、球形整粒機マルメライザーを用いて整粒した。その後、30(500μm)メッシュを通過し、42(355μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[薬物含有粒子の調製]
得られた核粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層109.3gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層の質量比は12%とした。
【0090】
比較例13
実施例34と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例13とした。
【0091】
実施例35~36
[核粒子の調製]
レボフロキサシン水和物600gおよび粉砕したクエン酸水和物40gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース160gを撹拌混合造粒装置に投入して混合後、撹拌しながら精製水560gをスプレー噴霧して練合物を得た。
次に、練合物を湿式押し出し造粒機マルチグランを用いて押し出し造粒し、球形整粒機マルメライザーを用いて整粒した。その後、30(500μm)メッシュを通過し、42(355μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[薬物含有粒子の調製]
得られた核粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層54.7gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層の質量比が12%のものを実施例35、18%のものを実施例36とした。
【0092】
比較例14
実施例35~36と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例14とした。
【0093】
実施例22~36のマスキング粒子、比較例9~14の薬物含有粒子について、溶出試験を行った。
レボフロキサシン水和物の溶出率の推移を
図9~14に示す。
図9は、実施例22~24のマスキング粒子、比較例9の薬物含有粒子の結果であり、
図10は、実施例25~27のマスキング粒子、比較例10の薬物含有粒子の結果であり、
図11は、実施例28~30のマスキング粒子、比較例11の薬物含有粒子の結果であり、
図12は、実施例31~33のマスキング粒子、比較例12の薬物含有粒子の結果であり、
図13は、実施例34のマスキング粒子、比較例13の薬物含有粒子の結果であり、
図14は、実施例35~36のマスキング粒子、比較例14の薬物含有粒子の結果である。
図9~14の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
【0094】
実施例22~24は、実施例3~5において、炭酸水素ナトリウムの配合量を1/2にしたものである。即ち、クエン酸水和物1重量部に対する炭酸水素ナトリウムの重量比は、実施例3~5が1重量部であるのに対して、実施例22~24は0.5重量部である。
実施例25~27は、実施例3~5において、炭酸水素ナトリウムの配合量を1/6にしたものである。即ち、クエン酸水和物1重量部に対する炭酸水素ナトリウムの重量比は、実施例3~5が1重量部であるのに対して、実施例25~27は0.17重量部である。
実施例28~30は、実施例9~11において、炭酸水素ナトリウムの配合量を2倍にしたものである。即ち、クエン酸水和物1重量部に対する炭酸水素ナトリウムの重量比は、実施例9~11が1重量部であるのに対して、実施例28~30は2重量部である。
実施例31~33は、実施例9~11において、炭酸水素ナトリウムの配合量を1/3にしたものである。即ち、クエン酸水和物1重量部に対する炭酸水素ナトリウムの重量比は、実施例9~11が1重量部であるのに対して、実施例31~33は0.33重量部である。
実施例34は、実施例12において、炭酸水素ナトリウムの配合量を6倍にしたものである。即ち、クエン酸水和物1重量部に対する炭酸水素ナトリウムの重量比は、実施例12が1重量部であるのに対して、実施例34は6重量部である。
実施例35~36は、実施例12~13において、炭酸水素ナトリウムの配合量を3倍にしたものである。即ち、クエン酸水和物1重量部に対する炭酸水素ナトリウムの重量比は、実施例12~13が1重量部であるのに対して、実施例35~36は3重量部である。
【0095】
実施例22~24では、1.3~2.6分間のラグタイムと、14.8~27.3%/分の速やかな薬物放出速度が両立された(
図9)。実施例25~27では、1.1~2.2分間のラグタイムと、10.8~13.3%/分の速やかな薬物放出速度が両立された(
図10)。実施例28~30では、1.3~3.1分間のラグタイムと、3.5~14.7%/分の速やかな薬物放出速度が両立された(
図11)。実施例31~33では、1.6~1.8分間のラグタイムと、4.1~21.8%/分の速やかな薬物放出速度が両立された(
図12)。実施例34では、2.0分間のラグタイムと、7.5%/分の速やかな薬物放出速度が両立された(
図13)。実施例35~36では、1.4~2.5分間のラグタイムと、5.2~18.7%/分の速やかな薬物放出速度が両立された(
図14)。
酸の1重量部に対して炭酸塩0.17~6重量部という広い範囲で、一定時間の薬物放出抑制時間と速やかな薬物放出が得られた。
一方、比較例9~14は発泡により薬物放出は速やかであったが、水不溶性高分子を含むコーティング層がないため、ラグタイムがなかった。
【0096】
実施例21~36及び比較例8~14の薬物含有粒子の組成を表2に示す。
【表2】
【0097】
(10)薬物含有粒子の構造
核粒子と2層の中間層を有する薬物含有粒子
実施例37~39
[コーティング液(6)の調製]
無水エタノール857gにクエン酸水和物60gを加え、攪拌し、コーティング液(6)を調製した。
[中間層I粒子の調製]
比較例2の核粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(6)を噴霧し、中間層I 60gを被覆した中間層I粒子を得た。
[薬物含有粒子の調製]
得られた中間層I粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層II 84.1gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層の質量比が30%のものを実施例37、36%のものを実施例38、42%のものを実施例39とした。
【0098】
比較例15
実施例37~39と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例15とした。
【0099】
実施例37~39のマスキング粒子、比較例15の薬物含有粒子について、溶出試験を行った。
レボフロキサシン水和物の溶出率の推移を
図15に示す。
図15の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
実施例37~39は、薬物を含む核粒子にクエン酸水和物を含む中間層Iをコーティングし、その上に炭酸水素ナトリウムを含む中間層をコーティングした薬物含有粒子を、水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆したものである。実施例37~39でも、1.3~2.2分間のラグタイムと、6.0~17.5%/分の速やかな薬物放出速度が両立された。
薬物と酸と炭酸塩を別部分に含む薬物含有粒子を使用する場合も、薬物放出抑制時間と薬物放出速度を適切にコントロールすることができた。この構造のマスキング粒子は、酸やアルカリに不安定な薬物にも好適に使用できるものである。
また、薬物含有粒子に対するコーティング層の含有量比は30~42重量%であり、実施例1~36の6~30重量%に比べて多いが、適切なラグタイムと薬物放出速度が得られた。
【0100】
薬物をコーティングした核粒子と3層の中間層を有する薬物含有粒子
実施例40~42
[核粒子の調製]
D-マンニトール球状顆粒(フロイント産業株式会社;ノンパレル108(100)、以下同じ)1000gの、100(150μm)メッシュを通過し、200(75μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[コーティング液(7)の調製]
精製水158g及び無水エタノール68gの混合液に、ヒプロメロース(信越化学工業株式会社製;TC-5R、以下同じ)を加え溶解後、レボフロキサシン水和物45gを加え、攪拌し、コーティング液(7)を調製した。
[薬物層粒子の調整]
上記核粒子593.7gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(7)を噴霧し、薬物層56.3gを被覆した薬物層粒子を得た。
[コーティング液(8)の調製]
精製水276gにD-マンニトール(ROQUETTE;PEALITOL50C、以下同じ)45gを加え、攪拌し、コーティング液(8)を調製した。
[中間層I粒子の調整]
上記の薬物層粒子150gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(8)を噴霧し、中間層I 45gを被覆した中間層I粒子を得た。
[コーティング液(9)の調製]
精製水420gおよび無水エタノール180gの混合液に、クエン酸水和物60gおよびD-マンニトール30gを加え、攪拌し、コーティング液(9)を調製した。
[中間層II粒子の調製]
上記の中間層I粒子125gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(9)を噴霧し、中間層II 43.3gを被覆した中間層II粒子を得た。
[薬物含有粒子の調製]
得られた中間層II粒子125gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層III 117.2gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(2)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対し、マスキング層の質量比が54%のものを実施例40、66%のものを実施例41、78%のものを実施例42とした。
【0101】
比較例16
実施例40~42と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例16とした。
【0102】
実施例40~42のマスキング粒子、比較例16の薬物含有粒子について、溶出試験を行った。レボフロキサシン水和物の溶出率の推移を
図16に示す。
図16の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
実施例40~42は、薬物を含有するコーティングを施した賦形剤核粒子に、賦形剤からなる中間層Iをコーティングし、その上にクエン酸水和物を含む中間層IIをコーティングし、その上に炭酸水素ナトリウムを含む中間層IIIをコーティングした薬物含有粒子を、水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆したものである。実施例40~42でも、1.0~2.0分間のラグタイムと、10.9~27.2%/分の速やかな薬物放出速度が両立された。
薬物含有層と酸含有層や炭酸塩含有層との間に中間層を設けることで、薬物と酸や炭酸塩が全く接触しない薬物含有粒子を使用する場合も、薬物放出抑制時間と薬物放出速度を適切にコントロールすることができた。この構造のマスキング粒子は、酸やアルカリに極めて不安定な薬物にも好適に使用できるものである。
また、薬物含有粒子に対するコーティング層の含有量比は54~78重量%であり、実施例1~36の6~30重量%に比べて非常に多いが、適切なラグタイムと薬物放出速度が得られた。
なお、実施例40~42のマスキング粒子は、実施例1~39に比べて小さい核粒子を用いているため、マスキング粒子も細かくなっている。本技術はマスキング粒子の粒子径によらず薬物放出抑制時間と薬物放出速度を適切にコントロールすることができる。
【0103】
実施例37~39及び比較例15の薬物含有粒子の組成を表3に示し、実施例40~42及び比較例16の薬物含有粒子の組成を表4に示す。
【表3】
【0104】
【0105】
以上より、薬物、酸、及び炭酸塩を含む薬物含有粒子を、水不溶性高分子を含むコーティング層で被覆したマスキング粒子であれば、薬物含有粒子の構成に拘わらず、適切なラグタイムと速やかな薬物放出速度が得られることが分かる。
【0106】
(11)マスキング粒子を用いた口腔内崩壊錠剤の製造
実施例43
[速崩壊性顆粒の調製]
流動層造粒機にD-マンニトール374.5g、エチルセルロース10.5g、軽質無水ケイ酸5.3gを投入し、トウモロコシデンプン105.5gおよびクロスポピドン31.6gを精製水453.6gに分散した造粒液で造粒し、速崩壊性顆粒を調製した。
[錠剤の調製]
実施例3のマスキング粒子935.6mg、上記の速崩壊性粒子916.79mgを混合後、さらにステアリン酸マグネシウム18.71mgを加えて混合した後、単発式打錠機(市橋精機社;HANDTAB-200)に投入し、16mmの杵を用いて打錠し、錠厚が10.5mmの錠剤を得た。
【0107】
実施例43の口腔内崩壊錠剤、実施例3のマスキング粒子(比較例1の薬物含有粒子に対して18重量%のマスキング層を被覆した粒子)、及び比較例1の薬物含有粒子について、溶出試験を行った。レボフロキサシン水和物の溶出率の推移を
図17に示す。
図17の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
実施例43の錠剤は、実施例3のマスキング粒子とほぼ同じ溶出プロファイルを示した。本発明のマスキング粒子は錠剤製造に用いることができ、得られる錠剤は、口中での薬物放出が抑制されていると共に、その後は速やかに薬物が放出されるものとなることが分かる。
【0108】
実施例43の口腔内崩壊錠剤の組成を表5に示す。
【表5】
【0109】
(12)酸の種類・薬物の種類
実施例44
[核粒子の調製]
D-マンニトール球状顆粒1000gの、100(150μm)メッシュを通過し、200(75μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[薬物層粒子の調製]
上記の核粒子593.7gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(7)を噴霧し、薬物層56.3gを被覆した薬物層粒子を得た。
[中間層I粒子の調製]
上記の薬物層粒子150gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(8)を噴霧し、中間層I 45gを被覆した中間層I粒子を得た。
[コーティング液(10)の調製]
精製水420gおよび無水エタノール180gの混合液に、コハク酸 (和光純薬株式会社) 60gおよびD-マンニトール30gを加え、攪拌し、コーティング液(10)を調製した。
[中間層II粒子の調製]
上記の中間層I粒子125 gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(10)を噴霧し、中間層II 43.3gを被覆した中間層II粒子を得た。
[薬物含有粒子の調製]
上記の中間層II粒子125gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(1)を噴霧し、中間層III 117.2gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[コーティング液(11)の調製]
アミノアルキルメタクリレートコポリマーE 30gをエタノール210 g、精製水90 gの混合液に溶解させ、タルク30gを加え、攪拌し、コーティング液(11)を調製した。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子200gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(11)を噴霧し、マスキング粒子を得た。
薬物含有粒子の質量に対するマスキング層の質量比は54重量%とした。
【0110】
比較例17
実施例44と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例17とした。
【0111】
実施例44のマスキング粒子、比較例17の薬物含有粒子について、溶出試験を行った。レボフロキサシン水和物の溶出率の推移を
図18に示す。
図18の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
実施例44は、薬物を含まない核粒子に薬物層をコーティングし、その上に賦形剤からなる中間層Iをコーティングし、その上に酸を含む中間層IIをコーティングし、その上に炭酸塩を含む中間層IIIをコーティングしたものである。実施例44では1.1分間のラグタイムと22.7%/分の速やかな薬物放出が両立された。一方、比較例17は、水溶性高分子を含むコーティング層がないため、ラグタイムがなかった。
実施例44のマスキング粒子は、実施例42のマスキング粒子において、クエン酸をコハク酸に置き換えたものである。コハク酸はpKaが4.2/5.6であり、pKaが3.1/4.8/6.4のクエン酸より弱い酸であるが、同様の効果が得られた。このように、本技術における酸は、炭酸より強い酸であれば、その種類を限定しない。
また、実施例44のマスキング粒子は、薬物が酸及び炭酸塩と直接接触しないため、酸やアルカリに不安定な薬物に一層有用である。
なお、実施例44のマスキング粒子は、実施例1~39に比べて小さい核粒子を用いているため、マスキング粒子も細かくなっている。本技術はマスキング粒子の粒子径によらず薬物放出抑制時間と薬物放出速度を適切にコントロールすることができる。
【0112】
実施例45
[核粒子の調製]
D-マンニトール球状顆粒1000gの、100(150μm)メッシュを通過し、200(75μm)メッシュに残留したものを核粒子とした。
[コーティング液(12)の調製]
精製水770g及び無水エタノール330gの混合液に、ヒプロメロースを加え溶解後、ゾルピデム酒石酸塩220 gを加え、攪拌し、コーティング液(12)を調製した。
[薬物層粒子の調製]
上記の核粒子358 gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(12)を噴霧し、薬物層275 gを被覆した薬物層粒子を得た。
[コーティング液(13)の調製]
精製水307 gにD-マンニトール15.36 g、粉砕した酒石酸(小堺製薬社製、以下同じ) 30.72 gを加え、攪拌し、コーティング液(13)を調製した。
[中間層I粒子の調製]
上記の薬物層粒子184.3 gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(13)を噴霧し、中間層I 46.08 gを被覆した中間層I粒子を得た。
[コーティング液(14)の調製]
精製水338gに、D-マンニトール54 gを加え、攪拌し、コーティング液(14)を調製した。
[中間層II粒子の調製]
上記の中間層I粒子180 gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(14)を噴霧し、中間層II 54 gを被覆した中間層II粒子を得た。
[コーティング液(15)の調製]
HPCL 6.7 gを無水エタノール135 gに溶解させた液に、タルク(日本タルク株式会社製;ミクロエース)13.5 gおよび粉砕した炭酸水素ナトリウム24.8 gを加え、攪拌し、コーティング液(15)を調製した。
[薬物含有粒子の調製]
上記の中間層II粒子210 gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(15)を噴霧し、中間層III 45 gを被覆した薬物含有粒子を得た。
[コーティング液(16)の調製]
アミノアルキルメタクリレートコポリマーE 92 gをエタノール644 g、精製水276 gの混合液に溶解させ、黄色三二酸化鉄 (癸巳化成株式会社製) 0.92 g、タルク(日本タルク株式会社製;ミクロエース)276 gを加え、攪拌し、コーティング液(16)を調製した。
[マスキング粒子の調製]
得られた薬物含有粒子227.2 gを転動流動コーティング装置に投入し、コーティング液(16)を噴霧し、マスキング粒子を得た。60(250μm)メッシュを通過し、83(180μm)メッシュに残留したものを選択した。
薬物含有粒子の質量に対するマスキング層の質量比は90重量%とした。
【0113】
比較例18
実施例45と同様にして薬物含有粒子を調製し、比較例18とした。
【0114】
実施例45のマスキング粒子、比較例18の薬物含有粒子について、溶出試験を行った。ゾルピデム酒石酸塩の溶出率の推移を
図19に示す。
図19の上段は試験開始後30分間の結果であり、下段は試験開始後90分間の結果である。
実施例45は、薬物を含まない核粒子に薬物層をコーティングし、その上に酸を含む中間層Iをコーティングし、その上に賦形剤からなる中間層IIをコーティングし、その上に炭酸塩を含む中間層IIIをコーティングしたものである。実施例45では3分間のラグタイムと12.6%/分の速やかな薬物放出が両立された。一方、比較例18は、水溶性高分子を含むコーティング層がないため、ラグタイムがなかった。
実施例45のマスキング粒子は、実施例1~44とは異なり、薬物としてゾルピデム酒石酸塩を含む。薬物の種類に拘わらず、薬物放出抑制時間と薬物放出速度を適切にコントロールできることが分かる。
また、実施例45のマスキング粒子は、酸として、酒石酸を用いている点も、実施例1~44とは異なる。酸の種類に拘わらず、薬物放出抑制時間と薬物放出速度を適切にコントロールできることが分かる。
また、実施例45のマスキング粒子は、薬物含有粒子の質量に対するマスキング層の質量比が90%であり、マスキング層が非常に厚いがこの場合も、薬物放出抑制時間と薬物放出速度を適切にコントロールできた。
【0115】
実施例44及び比較例17の薬物含有粒子の組成を表6に示し、実施例45及び比較例18の薬物含有粒子の組成を表7に示す。
【表6】
【0116】
【0117】
(13)粒度分布測定
実施例1~42、44、45のマスキング粒子、並びに比較例1~18の核粒子、中間層被覆粒子、及び薬物層被覆粒子の粒度分布を測定した結果を、表8~10に示す。
【表8】
【0118】
【0119】
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のマスキング粒子は、服用後に口中では薬物が放出されず、不快な味を有する薬物を含む場合もその味を感じ難いと共に、口腔内や咽頭部からの薬物の吸収が抑えられる。また、嚥下後は、速やかに薬物が放出されるため、消化管内で薬物が十分に吸収される。また、薬物の放出抑制時間を任意、かつ正確に制御できるため、薬物の種類や剤型に応じて適切な製剤とすることができる。