(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】新規製品
(51)【国際特許分類】
C09C 1/64 20060101AFI20241108BHJP
C09C 3/10 20060101ALI20241108BHJP
C09C 3/12 20060101ALI20241108BHJP
C09C 3/08 20060101ALI20241108BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C09C1/64
C09C3/10
C09C3/12
C09C3/08
C23C26/00 A
(21)【出願番号】P 2021545992
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(86)【国際出願番号】 GB2020050262
(87)【国際公開番号】W WO2020161490
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-13
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】502099902
【氏名又は名称】エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】グエン、プー クイ
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-041150(JP,A)
【文献】国際公開第2014/041692(WO,A1)
【文献】特開2002-226733(JP,A)
【文献】国際公開第2007/043453(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106167632(CN,A)
【文献】特開2011-140609(JP,A)
【文献】特表2005-519163(JP,A)
【文献】特表2016-531174(JP,A)
【文献】特開2003-183542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/64
C09C 3/10
C09C 3/12
C09C 3/08
C23C 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材をコーティングする方法であって、
(a)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を縮合型反応に供する工程、
並びにその後:
(b)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤が縮合型反応に供される1つ以上のさらなる工程
を含み、
ここで:
-基材は、金属顔料であり、
-工程(a)および(b)のそれぞれにおける無機ネットワーク形成剤は、独立してテトラアルコキシシランであり、
-工程(a)における有機官能性ネットワーク形成剤は、エポキシアルキルトリアルコキシシランまたはアミノシランであり、並びに
-工程(b)における有機官能性ネットワーク形成剤は、エポキシアルキルトリアルコキシシランであり、
並びに
-工程(a)における有機官能性ネットワーク形成剤がエポキシアルキルトリアルコキシシランであるとき、工程(b)において適用される有機官能性ネットワーク形成剤の不揮発性含有量に対する工程(a)において適用される有機官能性ネットワーク形成剤の不揮発性含有量の重量比は、1.25から2.0であり、
ここで、前記アミノシランは:
アミノアルキルトリアルコキシシラン、
N-(アルキル)-アミノアルキルトリアルコキシシラン、
N-アミノアルキル-アミノアルキル(アルキル)ジアルコキシシラン、および
N-アミノアルキル-アミノアルキルトリアルコキシシラン
から選択され、
並びにここで:
-該エポキシアルキルトリアルコキシシランおよびアミノシランにおけるアルキル部分は、それぞれ独立してC
1-6アルキルから選択され、
-該エポキシアルキルトリアルコキシシランおよびアミノシランにおけるアルコキシ部分は、それぞれ独立してC
1-6アルコキシから選択され、並びに
-該テトラアルコキシシランにおける各アルコキシ部分は、C
1-6アルコキシである、方法。
【請求項2】
パート(b)が無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤が縮合型反応に供される1つまたは2つのさらなる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基材がアルミニウム、青銅、銅または亜鉛顔料を含むか、またはこれらである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
基材がアルミニウム顔料であり、アルミニウムの割合がコーティングされていないアルミニウム顔料の総重量に基づいて≧99重量%である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
無機ネットワーク形成剤が式(I):
MX
n (I)
(式中、
- Mは、Siであり、
- Xは、メトキシまたはエトキシであり、および
- nは、4である)の化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アミノシランが:
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、
N-(n-ブチル)-3-アミノ-プロピルトリメトキシシラン、
N-(n-ブチル)-3-アミノ-プロピルトリエトキシシラン、
N-2-アミノエチル-3-アミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、
N-2-アミノエチル-3-アミノプロピル(メチル)ジエトキシシラン、
N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、および
N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン
から選択され、
各エポキシアルキルトリアルコキシシランが:
3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、および
3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
コーティングされた金属顔料が(i
)以下のコーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方
法:
(a)コーティングされた顔料を、ポリエステル粉末とともに混合容器に直接充填し、ここで、該コーティングされた顔料がレーザー回折によって測定した平均粒子サイズ(d
50
)≧20ミクロンを有する場合、その場合188gのポリマー粉末を12gのコーティングされた顔料とともに使用し、および該コーティングされた顔料がレーザー回折によって測定した平均粒子サイズ(d
50
)<20ミクロンを有する場合、その場合192gのポリマー粉末を8gのコーティングされた顔料とともに使用し;
(b)該コーティングされた顔料が全て該混合容器内の混合ツールのレベルより下にあるわけではない場合、該混合容器を振って、該コーティングされた顔料の全てを、該混合ツールのレベルより下にし;
(c)該ポリエステル粉末およびコーティングされた顔料を、周囲温度で2*30秒間ブレンドし;
(d)得られた粉末調製物を、ビニール袋に移し;
(e)該粉末調製物を、円形の金属ノズルおよび30mmのデフレクターを有する静電スプレーガンを使用し、以下のパラメーター:
粉末ホースの接続:2バール
パージエアフ(purge airf)の接続:0.5kg/cm
2
マテリアルフローコントローラー:50%
電圧:70kV
ガンパネルの距離:30 cm
を使用して、スチールパネル上に適用し;
ここで、適用される調製物の量は、以下の硬化工程(f)の後に50から75ミクロンの厚さを提供するのに十分であり
(およびここで、スプレーガンでスピッティングおよび/またはケーキングが起こった場合、その場合試験は放棄しやり直す);
(f)160℃のベーキング時間を8分間使用して、このように適用した調製物を硬化させ;
(g)得られたサンプルを、少なくとも24時間周囲温度で保ち;
(h)該サンプルを、磁気パッド上に水平に置き、以下の溶液の15から17mm滴をその上に置き:(i)塩酸の10重量%水溶液、(ii)水酸化ナトリウムの1M水溶液、および(iii)水酸化ナトリウム(NaOH)の10重量%水溶液、それによって滴は、240分後に全ての滴を同時に除去でき、並びに各溶液について該パネルは、1滴30分間、1滴60分間、1滴120分間、1滴180分間、および1滴240分間露出されているように時系列に置き;
(i)全ての滴を、水で濯ぐことによって該サンプルから同時に除去し;
(j)15個の滴領域のそれぞれを、灰色化の程度に関して視覚的に評価し、以下のスキーム:
0 攻撃(attack)なし
0.5 わずかな変化が特定の角度で観察できるのみ
1 わずかな灰色化
2 灰色化、色素沈着はまだ見える)
3 完全な灰色化、色素沈着は見えない)
に基づいて0から3のスコアを割り当て
(k)次いで各滴領域についてのスコアを合計して、0から45の総スコアを提供する;
において12以下の耐薬品性スコアを有し、(ii)≦5.0の光沢分散値(X)[式中、
- X=Y/(13-コーティングされた顔料の耐薬品性スコア)であり、
- Yは、(100*(Y1-Y2)/Y1)として計算される、顔料へのコーティングの添加から生じる光沢における変化率であり、
- Y1は、コーティングされていない顔料の光沢であり、および
- Y2は、コーティングされた顔料の光沢である
(ここで、光沢は
、コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方
法の工程(a)から(g)に従ってコーティングされたまたはコーティングされていない顔料を含むサンプルを調製し、次いで光沢計を使用して60°での光沢を測定することによって測定される)]を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
コーティングされた金属顔料が(i
)コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方
法において12未満の耐薬品性を有し、(ii)≧90の明度分散L
AまたはL
B値[式中:
- L
Aは、(100*(1+(Q2-Q1)/Q1))として計算され、
- Q1は、コーティングされていない顔料の15°での明度であり、および
- Q2は、コーティングされた顔料の15°での明度であり;
- L
Bは、(100*(1+(Q4-Q3)/Q3))として計算され、
- Q3は、コーティングされていない顔料の-15°での明度であり、および
- Q4は、コーティングされた顔料の-15°での明度である
(ここで、15°および-15°での明度は
、コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方
法の工程(a)から(g)に従ってコーティングされたまたはコーティングされていない顔料を含むサンプルを調製し、次いで光沢計を使用することによって測定される)]を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
コーティングされた金属顔料がMIE*表面積(式中、MIEは、最小発火エネルギーであり、および表面積は、BET法によって測定される表面積である)について少なくとも40mJ・m
2/
gの値を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
コーティングされた金属顔料が(i
)コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方
法において≧700
秒のガス化安定性スコアを有し、(ii)≦5.0の光沢分散値(X)[式中:
- X=Y/(13-コーティングされた顔料の耐薬品性スコア)であり、
- Yは、(100*(Y1-Y2)/Y1)として計算される、顔料へのコーティングの添加から生じる光沢における変化率であり、
- Y1は、コーティングされていない顔料の光沢であり、および
- Y2は、コーティングされた顔料の光沢である
(ここで、光沢は
、コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方
法の工程(a)から(g)に従ってコーティングされたまたはコーティングされていない顔料を含むサンプルを調製し、次いで光沢計を使用して60°での光沢を測定することによって測定される)]を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
コーティングされた金属顔料が(i
)コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方
法において≧700
秒のガス化安定性を有し、(ii)≧90の明度分散L
AまたはL
B値(式中:
- L
Aは、(100*(1+(Q2-Q1)/Q1))として計算され、
- Q1は、コーティングされていない顔料の15°での明度であり、および
- Q2は、コーティングされた顔料の15°での明度であり;
- L
Bは、(100*(1+(Q4-Q3)/Q3))として計算され、
- Q3は、コーティングされていない顔料の-15°での明度であり、および
- Q4は、コーティングされた顔料の-15°での明度である
(ここで、15°および-15°での明度は
、コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方
法の工程(a)から(g)に従ってコーティングされたまたはコーティングされていない顔料を含むサンプルを調製し、次いで光沢計を使用することによって測定される)]である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
基材がPVD金属顔料であり、コーティングされた金属顔料
がコーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方
法において12以下の耐薬品性スコアを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
基材がPVD金属顔料であり、コーティングされた金属顔料
がコーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方
法において≧700
秒のガス化安定性スコアを有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
基材がPVD金属顔料であり、コーティングされた金属顔料
が拡張ガス化試験方
法において21日後に≦5mlのガス化安定性スコアを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
基材が(i)≦30μmのd
50値および(ii)少なくとも100の平均アスペクト比を有する金属顔料である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(a)および工程(b)の後に1つ以上の表面改質剤を該コーティングされた金属顔料基材に適用するこ
とをさらに含む
、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の表面改質剤が
(a)(i)有機リン化合物、および(ii)5000以下の分子量を有する相溶化剤の両方(ここで、該有機リン化合物および相溶化剤は、同時に、別々にまたは連続して適用される);
(b)(i)脂肪酸、および(ii)5000以下の分子量を有する相溶化剤の両方(ここで、該脂肪酸および相溶化剤は、同時に、別々にまたは連続して適用される);または(c)(i)有機官能性ネットワーク形成剤、および(ii)有機リン化合物の両方(ここで、該有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物は、同時に、別々に、または連続して適用される)
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の表面改質剤が(i)有機リン化合物、および(ii)5,000以下の分子量を有する相溶化剤の両方を含み、並びに該有機リン化合物および相溶化剤が同時に、別々にまたは連続して適用される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
有機リン化合物が式(III):
I-X-P(O)(OR
1)(OR
2) (III)
[式中、
- R
1およびR
2は、それぞれ独立してH、任意に置換されたヒドロカルビル、任意に置換されたアミン、ポリエーテル、アンモニウムイオン、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属であり;
- Xは、2価であり、(a)直鎖状若しくは分岐状炭化水素鎖(ここで、前記炭化水素鎖は、O、SおよびNから選択される1つ以上のヘテロ原子によって任意に中断される)、(b)任意に置換された炭素環(ここで、前記環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールおよび縮合炭化水素基から選択される)、または(c)O、SおよびNから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む任意に置換された複素環であり;並びに
- Iは、Hまたは重合用の開始剤部分である]
の化合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
- R
1およびR
2がHであり;
- XがC
4-14アルキレンであり;並びに
- IがHである、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
相溶化剤がメラミン樹脂、イソシアネート樹脂、ポリウレタン樹脂またはアクリル樹脂である、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
相溶化剤がC
1-4アルコールエーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂またはイソホロンジイソシアネート三量体樹脂である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の表面改質剤が(i)脂肪酸、および(ii)5000以下の分子量を有する相溶化剤の両方を含み(ここで、該脂肪酸および相溶化剤は、同時に、別々にまたは連続して適用される)、該脂肪酸が式R-C(O)OH(式中、Rは、3から29個の炭素を有するアルキルまたはアルケニル基である)の化合物であり、並びに該相溶化剤が請求項21または22において定義されるとおりである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上の表面改質剤が(i)有機官能性ネットワーク形成剤、および(ii)有機リン化合物の両方を含み(ここで、該有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物は、同時に、別々にまたは連続して適用される)、該有機官能性ネットワーク形成剤がアミノアルキルトリアルコキシシランであり、並びに該有機リン化合物が請求項19または20において定義されるとおりである、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
コーティングされた金属顔料を含む製品または物品を製造する方法であって、該方法は:
・金属顔料を請求項1から6のいずれか一項に記載において定義される方法によってコーティングすること、
・任意にその後、1つ以上の表面改質剤をコーティングされた金属顔料に適用すること、・さらに該コーティングされた金属顔料を、該コーティングされた金属顔料を含む製品に加工すること
を含み、該製品は、ワニス、自動車仕上げ、塗料、印刷インク、粉末コーティング材料、建築用塗料、プラスチック、セキュリティ印刷インク、セラミック、ガラスまたは化粧品である、方法。
【請求項26】
製品がポリマーをさらに含む粉末コーティング材料である、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
製品が請求項7から14のいずれか一項に記載のコーティングされた金属顔
料を含む水性コーティング組成
物である、請求項
25に記載の方法。
【請求項28】
コーティングされた金属顔料が(a)有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物をその表面に有し、および/または(b)1つ以上の表面改質剤を顔料に同時に、別々に若しくは連続して適用することを含む方法によって得られる若しくは得ることができる、請求項
27に記載の方法(ここで、前記1つ以上の表面改質剤は、有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物を含む)。
【請求項29】
製品がコーティング材料であって、前記方法が物品をコーティングする方法であって、請求項
25または
26において定義される粉末コーティング材料を物品に静電的に適用すること、および任意に、該適用されたコーティング材料を硬化させることを含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項30】
物品が自動車である、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
コーティングされた金属顔料基材が請求項7から9、12および15のいずれか一項に記載のコーティングされた金属顔
料である、請求項
29または
30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料などの基材に適用することができる新しい形態の保護コーティングに関する。本発明はまた、それらに改善された特性を提供するために、特に本発明の新しい保護コーティングが適用された顔料を含む、顔料を処理する新しい方法に関する。特に、本発明は、光学特性(例えば光沢および/または明度)および耐薬品性の優れた組合せを有する安定化された微細顔料(例えばアルミニウム顔料)の製造を可能にする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
保護コーティングは、当技術分野において知られている。例えば、アルミニウム、青銅、酸化鉄または鋼に基づくものなどの金属効果顔料は、コーティングまたはインク配合物中の水、酸または塩基と反応し得るため、従ってそのような顔料への保護コーティングの添加は、それらの耐薬品性を改善するために使用され得る。しかしながら、そのような保護コーティングを顔料に適用することに関連する1つの欠点は、それが顔料の光学特性に悪影響を与えると一般に予想され得ることである。そのため、顔料を用いて耐薬品性を最適化することおよびまた良好な光学特性を維持することの潜在的に競合する目的の間には、しばしばトレードオフがある。例えば、既知の市販のコーティングされたアルミニウム(Al)顔料の中で、「PCU」の商品名のもとでEckartによって販売されているものは、耐薬品性の点で市場において最高のAl顔料製品であると説明されてきた。しかしながら、この有用な属性は、顔料の光学特性を犠牲にしてもたらされている。これは、例えば、2つのポリマー粉末コーティングサンプルの画像である
図2に示されている。それらの一方は、PCU1000顔料のものであり、他方は、同じ粒子サイズ(すなわち15μm)を有するが、商品名POWDAL 8500のもとでSchlenkによって販売され異なる保護コーティングを有する顔料粒子のものである。以下でより詳細に説明するように、POWDAL 8500製品は、より優れた光学特性を有するが、劣った耐薬品性を有することがわかる。
【0003】
当該技術分野において議論されてきた他のコーティングされた顔料は、CN106317969、CN106700662、WO9638506およびUS20110195244に記載されているものを含み、ポリ付加反応を使用して調製されたコーティングを含む。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、顔料をコーティングする特定の方法が、耐薬品性および光学特性の両方の驚くほど有利な組合せを有する製品につながるという知見に基づく。すなわち、本発明は、基材をコーティングする方法であって、(a)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を縮合型反応に供する工程、並びにその後(b)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤が縮合型反応に供される1つ以上のさらなる工程を含む方法を提供する。
【0005】
本発明はまた、コーティングされた基材を調製する方法であって、無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤が生成物の存在下において縮合型反応に供される1つ以上の工程を含む方法(ここで、前記生成物は、無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を基材の存在下において縮合型反応に供することによって得ることができる)を提供する。本発明のこの一面は、上記で定義された本発明の方法の工程(b)のみに焦点をあてている。本明細書において概説される本発明の好ましい一面は、対応してこの実施態様に適用される。
【0006】
この点に関して、上記のプロセスによって調製されるコーティングされた基材は、以前のコーティング方法を使用しては得ることができないと考えられる高い耐薬品性および良好な光学特性の組合せを可能にすることが見い出された。また、上記のプロセスから生じるコーティングは、以前のコーティング方法を使用して適用されたコーティングと比較して、その後の処理および取り扱い中の発火の可能性を低下させるのにより効果的であると考えられる。また、上記のプロセスから生じるコーティングは、以前のコーティング方法を使用して適用されたコーティングと比較して、ガス化安定性を改善するのにより効果的であると考えられる。しかしながら、2つの工程(a)および(b)を含む方法を使用することから生じる正確な構造の違いは、必ずしも単純で即時の特徴付けを即時にできないこともあり得るため、新規製品は、それらが示す特性の特定の組合せを参照することによって最も適切に定義される。すなわち、本発明はまた、上記で定義された本発明の方法によって得ることができるコーティングされた基材を提供する。また、本発明は、(i)以下でさらに記載する「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」において12以下の耐薬品性スコアを有し、(ii)≦5.0の光沢分散値(X)[式中:
- X=Y/(13-コーティングされた顔料の耐薬品性スコア)であり、
- Yは、(100*(Y1-Y2)/Y1)として計算される、顔料へのコーティングの添加から生じる光沢における変化率であり、
- Y1は、コーティングされていない顔料の光沢であり、および
- Y2は、コーティングされた顔料の光沢である
(ここで、光沢は、以下でさらに記載する「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」の工程(a)から(g)に従ってコーティングされたまたはコーティングされていない顔料を含むサンプルを調製し、次いで光沢計を使用して60°での光沢を測定することによって測定される)]を有する、コーティングされた金属顔料またはコーティングされた金属酸化物顔料を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、以下でさらに記載する「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」において12未満の耐薬品性を有し、(ii)≧90の明度分散LAまたはLB値[式中:
- LAは、(100*(1+(Q2-Q1)/Q1))として計算され、
- Q1は、コーティングされていない顔料の15°での明度であり、および
- Q2は、コーティングされた顔料の15°での明度であり;
- LBは、(100*(1+(Q4-Q3)/Q3))として計算され、
- Q3は、コーティングされていない顔料の-15°での明度であり、および
- Q4は、コーティングされた顔料の-15°での明度である
(ここで、15°および-15°での明度は、以下でさらに記載する「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」の工程(a)から(g)に従ってコーティングされたまたはコーティングされていない顔料を含むサンプルを調製し、次いで光沢計を使用することによって測定される)]であるコーティングされた金属顔料またはコーティングされた金属酸化物顔料を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、MIE*表面積(式中、MIEは、最小発火エネルギーであり、および表面積は、BET法によって測定される表面積である)について少なくとも40mJ・m2/g(好ましくは少なくとも55mJ・m2/g)の値を有するコーティングされた金属顔料またはコーティングされた金属酸化物顔料を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、(i)以下でさらに記載する「コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方法」において≧700秒(好ましくは≧1000秒)のガス化安定性スコアを有し、(ii)≦5.0の光沢分散値(X)[式中:
- X=Y/(13-コーティングされた顔料の耐薬品性スコア)であり、
- Yは、(100*(Y1-Y2)/Y1)として計算される、顔料へのコーティングの添加から生じる光沢における変化率であり、
- Y1は、コーティングされていない顔料の光沢であり、および
- Y2は、コーティングされた顔料の光沢である
(ここで、光沢は、以下でさらに記載する「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」の工程(a)から(g)に従ってコーティングされたまたはコーティングされていない顔料を含むサンプルを調製し、次いで光沢計を使用して60°での光沢を測定することによって測定される)]を有する、コーティングされた金属顔料またはコーティングされた金属酸化物顔料を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、(i)以下でさらに記載する「コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方法」において≧700秒(好ましくは≧1000秒)のガス化安定性を有し、(ii)≧90の明度分散LAまたはLB値(式中:
- LAは、(100*(1+(Q2-Q1)/Q1))として計算され、
- Q1は、コーティングされていない顔料の15°での明度であり、および
- Q2は、コーティングされた顔料の15°での明度であり;
- LBは、(100*(1+(Q4-Q3)/Q3))として計算され、
- Q3は、コーティングされていない顔料の-15°での明度であり、および
- Q4は、コーティングされた顔料の-15°での明度である
(ここで、15°および-15°での明度は、以下でさらに記載する「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」の工程(a)から(g)に従ってコーティングされたまたはコーティングされていない顔料を含むサンプルを調製し、次いで光沢計を使用することによって測定される)]である、コーティングされた金属顔料またはコーティングされた金属酸化物顔料を提供する。
【0011】
PVD顔料は、特に化学腐食を受けやすい傾向があり、他の顔料のタイプに適用される保護コーティングがPVD顔料上では効果的に機能しない可能性があることがわかってきた。しかしながら、本発明のコーティングは、以前に可能であったよりも高いレベルの耐薬品性を有するPVD顔料を提供すると考えられる。すなわち、本発明はまた、本明細書において記載されている「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」において12以下の耐薬品性スコアを有する、コーティングされたPVD金属顔料またはコーティングされたPVD金属酸化物顔料を提供する。
【0012】
本発明はまた、本明細書において記載されている「コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方法」において≧700秒(好ましくは≧1000秒)のガス化安定性スコアを有する、コーティングされたPVD金属顔料またはコーティングされたPVD金属酸化物顔料を提供する。
【0013】
本発明はまた、本明細書において記載されている「拡張ガス化試験方法」において21日後に≦5mlのガス化安定性スコアを有する、コーティングされたPVD金属顔料またはコーティングされたPVD金属酸化物顔料を提供する。
【0014】
本発明はまた、基材が顔料である、1つ以上の表面改質剤を上記で定義される本発明のコーティングされた基材に適用することを含む方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、基材が顔料である、
・ (i)上記で定義される方法によって基材をコーティングするか、または(ii)上記で定義される方法によってコーティングされた基材を調製すること、およびその後
・ 1つ以上の表面改質剤を該コーティングされた基材に適用すること
を含む方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、顔料を処理する方法であって、1つ以上の表面改質剤を該顔料に同時に、別々にまたは連続して適用することを含み、ここで、前記1つ以上の表面改質剤は、
(a)(i)有機リン化合物、および(ii)以下でさらに定義される相溶化剤の両方(ここで、該相溶化剤の大部分は、該顔料に共有結合するようにならない);
(b)(i)脂肪酸、および(ii)以下でさらに定義される相溶化剤の両方(ここで、該相溶化剤の大部分は、該顔料に共有結合するようにならない);または
(c)(i)有機官能性ネットワーク形成剤、および(ii)有機リン化合物の両方を含む、方法を提供する。すなわち、例として、本発明は、顔料を処理する方法であって、1つ以上の表面改質剤を該顔料に同時に、別々にまたは連続して適用することを含み、ここで、前記1つ以上の表面改質剤は、有機リン化合物および以下でさらに定義される相溶化剤を含み、並びに該相溶化剤の大部分は、該顔料に共有結合するようにならない、方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、(a)有機リン化合物および以下でさらに定義される相溶化剤(ここで、該相溶化剤の大部分は、顔料に共有結合していない);(b)脂肪酸および以下でさらに定義される相溶化剤(ここで、該相溶化剤の大部分は、顔料に共有結合していない);または(c)有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物をその表面に有する顔料を提供する。(すなわち、例として、本発明は、有機リン化合物および以下でさらに定義される相溶化剤(ここで、該相溶化剤の大部分は、顔料に共有結合していない)をその表面に有する顔料を提供する。)
【0018】
本発明はまた、本明細書において定義される本発明のコーティングされた基材を含む製品であって、ワニス、自動車仕上げ、塗料、印刷インク、粉末コーティング材料、建築用塗料、プラスチック、セキュリティ印刷インク、セラミック、ガラスまたは化粧品である製品を提供する。
【0019】
本発明はまた、粉末コーティング材料を物品に静電的に適用すること、および任意に、該適用されたコーティング材料を硬化させることを含む(ここで、該粉末コーティング材料は、本明細書において定義される本発明のコーティング基材を含む)、物品をコーティングする方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、本明細書において定義される本発明のコーティングされた基材を含む、コーティングされた物品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図面の説明
【
図1】
図1は、それぞれがポリマー粉末と本発明のコーティングされた顔料から調製され、耐薬品性試験に供された、2つの試験サンプルの画像を示す。
【
図2】
図2は、比較のために、それぞれが異なる市販の顔料から調製された、2つの対応するサンプルの画像を示す。
【
図3】
図3から5のそれぞれは、耐薬品性試験後の2つのサンプルの画像を示す。どの特定の図においても、2つのサンプルは、それらを調製するために使用される顔料の点でのみ異なる(一方は本発明のものであり、他方は市販の製品である)。(各図における)サンプルの各対についての配合は、組成および/またはそれがどのように作られるかという点で異なっていた。換言すると、本発明は、さまざまな異なる粉末コーティング環境において市販の製品と比較された。
【
図4】
図3から5のそれぞれは、耐薬品性試験後の2つのサンプルの画像を示す。どの特定の図においても、2つのサンプルは、それらを調製するために使用される顔料の点でのみ異なる(一方は本発明のものであり、他方は市販の製品である)。(各図における)サンプルの各対についての配合は、組成および/またはそれがどのように作られるかという点で異なっていた。換言すると、本発明は、さまざまな異なる粉末コーティング環境において市販の製品と比較された。
【
図5】
図3から5のそれぞれは、耐薬品性試験後の2つのサンプルの画像を示す。どの特定の図においても、2つのサンプルは、それらを調製するために使用される顔料の点でのみ異なる(一方は本発明のものであり、他方は市販の製品である)。(各図における)サンプルの各対についての配合は、組成および/またはそれがどのように作られるかという点で異なっていた。換言すると、本発明は、さまざまな異なる粉末コーティング環境において市販の製品と比較された。
【
図6】
図6は、薬品試験後の液体コーティングを使用して作成したドローダウンサンプルの画像を示す。左側のサンプルは、本発明のコーティングされた顔料を用いて作成し、右側のサンプルは、市販の顔料製品を用いて作成した。
【
図7】
図7は、実施例41Dおよび41Eに関連して以下で論じられる試験手順における使用に適したガス化リグを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
基材
本発明における使用のための基材は、特に限定されない。それは、パネルまたは桁などの大規模な材料でもあり得、または粒子状製品-例えばフレーク若しくは板状物などの小規模な材料でもあり得る。
【0023】
好ましくは、基材は、少なくとも1μm、より好ましくは少なくとも2μm、少なくとも3μm、少なくとも4μm、または少なくとも5μmのd50値を有するフレークまたは板状物製品(例えば顔料)である。d50値は、好ましくは1500μm以下、1000μm以下、500μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、または25μm以下などの2000μm以下である。d50値の典型的な範囲は、2から2000μm、好ましくは3から1000μm、より好ましくは4から500μm、さらにより好ましくは5から100μm、さらにさらに好ましくは5から50μm、およびより好ましくはさらに5から25μmである。d50値は、好ましくは、レーザー回折法によって測定される。
【0024】
好ましくは、基材は、少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、少なくとも180、少なくとも190、または少なくとも200の平均アスペクト比を有するフレークまたは板状物製品(例えば顔料)である。平均アスペクト比は、好ましくは1500以下、1000以下、または750以下などの2000以下である。平均アスペクト比の適切な範囲は、5から2000、好ましくは50から2000、より好ましくは100から2000、さらにより好ましくは120から2000、さらにさらに好ましくは150から2000およびより好ましくはさらに200から2000である。平均アスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)または原子間力顕微鏡(AFM)などの顕微鏡によって測定したフレークまたは板状物製品中の30(好ましくは50、より好ましくは100)の個々のフレークまたは板状物の平均(平均値)アスペクト比をとることによって測定し得、ここで、特定のフレークまたは板状物の該アスペクト比は、フレークまたは板状物の最長直径を厚さで割ったものとして定義される。好ましくは、個々のフレークまたは板状物製品のアスペクト比は、例えばHitachi TM 4000PLUS装置を使用する、走査型電子顕微鏡法によって測定される。
【0025】
好ましくは、基材は、少なくとも100(少なくとも120などの)のアスペクト比および50μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、または25μm以下のd50値を有する。
【0026】
好ましくは、基材は、≧2m2/gまたは≧3m2/gなどの≧1m2/gのBET法によって測定される表面積を有する。いくつかの実施態様においては、それは、≧4m2/gまたは≧5m2/gなどのさらにより高くあり得る。
【0027】
好ましくは、基材は、35μm以下(30μm以下または25μm以下などの)のd50値および少なくとも150、または少なくとも200などの少なくとも120のアスペクト比を有する。
【0028】
基材は、雲母またはガラスなどの無機材料を含み(またはから実質的に構成され)得、および/またはそれは、元素または合金のいずれかの金属を含み(またはから実質的に構成され)得る。基材は、1つ以上の金属酸化物層のコーティングを有する無機材料または金属を含み(またはから実質的に構成され)得る。好ましくは、基材は、金属または金属酸化物である。より好ましくは、基材は、金属フレークまたは金属板状物であり、ここで、金属は、好ましくはアルミニウム、青銅、銅または亜鉛であり、および最も好ましくは、アルミニウムである。適切なアルミニウム顔料の例は、Silberline Manufacturing Co.,USから入手可能なSPARKLE SILVER Elite 010、SPARKLE SILVER Elite 012、SPARKLE SILVER Elite 011 LMおよびSPARKLE SILVER Elite 015 LMである。
【0029】
好ましい実施態様においては、基材は、金属顔料、より好ましくはアルミニウム、青銅、銅または亜鉛顔料、最も好ましくはアルミニウム顔料である。基材が金属(例えばAl)顔料であるとき、金属(例えばAl)の割合は、好ましくはコーティングされていない金属(例えばAl)顔料の総重量の≧95、≧98、≧99、≧99.5または≧99.9などの≧90重量%である。
【0030】
本発明における使用のための基材(例えば金属フレーク顔料または金属板状物顔料)は、既知の手段によって製造し得る。例えば、金属フレーク顔料または金属板状物顔料は、ボールミル粉砕などの粉砕プロセスによって製造し得る。別の実施態様においては、金属フレーク顔料または金属板状物顔料は、物理蒸着(PVD)によるなどの真空金属化プロセスによって製造し得る。さらなる実施態様においては、金属フレーク顔料または金属板状物顔料は、上記の粉砕または真空金属化プロセスの生成物上に金属酸化物層を形成することによって製造し得る。
【0031】
無機ネットワーク形成剤
誤解を避けるために、特許請求の範囲および明細書は、一般に「1つの」無機ネットワーク形成剤の存在に言及するが、もちろん本発明の方法の特定の工程において複数の異なるタイプの無機ネットワーク形成剤が存在することは可能である。すなわち、本明細書における「無機ネットワーク形成剤」への言及は、1つの無機ネットワーク形成剤が単独で存在するか、または2つ以上の無機ネットワーク形成剤が一緒に存在する状況を指すことを意図する。
【0032】
無機ネットワーク形成剤は、好ましくは式(I)
MXn
(I)
(式中、
- Mは、Si、Al、Ti、Zr、B、Fe、Mg、Mn、Sb、Cr、Znおよび/またはCeであり、
- 各Xは、独立して、ハロゲン、-OH、若しくは-ORから選択される任意に加水分解性および/若しくは縮合性の基であり、並びに/またはX部分の1、2若しくは3対は、一緒に2価のキレート配位子を表し、ここで、各R基は、炭素鎖がN、OおよびSから選択される1つ以上のヘテロ原子によって任意に中断されているC1-10アルキル基であり、並びに
- nは、2から6の整数であり、Mの酸化状態に対応する)の化合物である。
【0033】
当然、nの全ての可能な値(2から6)がMの全ての選択肢について常に可能であるとは限らないであろう。当業者は、Mについての特定の選択肢の可能な酸化状態を考慮して、Mのその選択肢についてnのどの選択肢が可能であるかを認識するであろう。例えば、MがSb(V)である場合、nは、好ましくは5であり得;MがSi、TiまたはZrである場合、nは、好ましくは4であり得;MがAl、Ce、Fe(III)、SB(III)またはBである場合、nは、好ましくは3であり得;およびMがZn、Fe(II)またはMgである場合、nは、好ましくは2であり得る。
【0034】
好ましい実施態様においては、無機ネットワーク形成剤は、MがSi、Al、Ti、ZrまたはFeである式(I)の化合物であり;各Xは、C1-6アルコキシであり;nは、2、3または4である。さらに好ましい実施態様においては、Mは、Siであり;Xは、メトキシまたはエトキシであり;nは、4である。典型的には、無機ネットワーク形成剤は、テトラエトキシシラン(TEOS)である。
【0035】
有機官能性ネットワーク形成剤
誤解を避けるために、特許請求の範囲および明細書は、一般に「1つの」有機官能性ネットワーク形成剤の存在に言及するが、もちろん本発明の方法の特定の工程において複数の異なるタイプの有機官能性ネットワーク形成剤が存在することは可能である。すなわち、本明細書における「有機官能性ネットワーク形成剤」への言及は、1つの有機官能性ネットワーク形成剤が単独で存在するか、または2つ以上の有機官能性ネットワーク形成剤が一緒に存在する状況を指すことを意図する。
【0036】
有機官能性ネットワーク形成剤は、好ましくは式(II)
R1
iR2
jR3
kSiX(4-i-j-k) (II)
(式中、
- i、jおよびkのそれぞれは、独立して0または1であり、ただし、i、jおよびkの少なくとも1つは1であり、
- R1、R2およびR3のそれぞれは、独立して有機基であり、ただし、R1、R2およびR3の少なくとも1つは反応性有機基であり、並びに
- 各Xは、独立して、ハロゲン、-OH、-OR7、若しくは-Yから選択される任意に加水分解性および/若しくは縮合性の基であり、並びに/またはX部分の1対は、一緒に2価のキレート配位子を表し、ここで、
〇 各R7は、独立して有機基であり、好ましくは炭素鎖が任意にN、OおよびSから選択される1つ以上のヘテロ原子によって中断されているC1-10アルキル基であり、および
〇 各Yは、独立して-(O-R4-O-Si(R5)m(X’)2-m-)nR6であり、ここで、
■ 各R4は、独立して2価の有機基であり、
■ 各R5は、独立して有機基であり、
■ 各mは、独立して0、1または2であり、
■ 各X’は、ハロゲン、-OH、若しくは-OR7から選択される任意に加水分解性および/若しくは縮合性の基であり、並びに/またはジェミナルX’部分の1つ以上の対は、一緒に2価のキレート配位子を表し、ここで、各R7は、独立して有機基であり、
■ nは、1から10であり、並びに
■ R6は、有機基である)の化合物である。
【0037】
式(II)の上記化合物の反応性有機基は、好ましくはエポキシ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、カルボン酸無水物、イソシアネート、シアネート、ウレイドおよびカルバメートから選択される1つ以上の置換基を有するヒドロカルビル基である。
【0038】
好ましくは、有機官能性ネットワーク形成剤は、アミノアルキルトリアルコキシシラン、N-(アルキル)-アミノアルキルトリアルコキシシラン、N-アミノアルキル-アミノアルキル(アルキル)ジアルコキシシラン、N-アミノアルキル-アミノアルキルトリアルコキシシラン、エポキシアルキルトリアルコキシシラン、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン、アルカクリロキシアルキルトリアルコキシシラン(例えばメタクリロキシアルキルトリアルコキシシラン)およびウレイドアルキルトリアルコキシシランから選択される化合物である。好ましくはアルキル部分は、それぞれ独立して、C1-10アルキル、より好ましくはC1-4アルキルなどのC1-6アルキルから選択される。好ましくは、アルコキシ部分は、C1-10アルコキシ、より好ましくはC1-4アルコキシなどのC1-6アルコキシである(典型的にはそれらは、エトキシまたはメトキシ、最も一般的にはエトキシである)。
【0039】
例えば、適切な有機官能性ネットワーク形成剤は、以下:
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノ-プロピルトリメトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノ-プロピルトリエトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピル(メチル)ジエトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、および3-ウレイドプロピルトリエトキシシランを含む。
【0040】
この点に関する適切な薬剤は、市販されている。例えば、エポキシ基を有する薬剤は、Dynasylan(登録商標) GLYEOおよびDynasylan(登録商標) GLYMOなどのDynasylan(登録商標)の商品名のもとでEvonik Resource Efficiency GmbH、Germanyから入手可能であり、並びにアミノ基を有する薬剤もまた、Dynasylan(登録商標) AMEO(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)Dynasylan(登録商標) AMMO(3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、Dynasylan(登録商標) DAMO(N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)およびDynasylan(登録商標) TRIAMO(トリアミノ官能性プロピルトリメトキシシラン)などのDynasylan(登録商標)の商品名のもとでEvonik Resource Efficiency GmbH、Germanyから入手可能である。
【0041】
方法
上記のように、本発明は、基材をコーティングする方法であって、
(a)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を縮合型反応に供する工程、
並びにその後:
(b)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤が縮合型反応に供される1つ以上(例えば1つまたは2つ)のさらなる工程
を含む方法を提供する。
【0042】
この方法においてハイブリッドコーティングを適用すること、すなわち無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を縮合型反応に供する2つ以上の別個の工程を使用することは、(例えば)同等の総量の無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を単一の工程において縮合型反応に供することによって調製される対応するコーティングされた基材と比較して驚くほど優れた特性を有するコーティングされた基材を生じることが見い出された(該特性は、基材がアルミニウム顔料などの金属顔料であるときに特に有益である)。この1つの理由は、試薬を2つの工程において導入することが、工程(a)の後に基材上に存在する有機官能性部分と、工程(b)において使用される有機官能性ネットワーク形成剤の有機官能性部分との間の化学結合の形成を促進できた事実に関連し得ると考えられる。例えば工程(a)における有機官能性ネットワーク形成剤がエポキシ部分を特徴とする場合、その場合工程(a)の縮合型反応は、末端ヒドロキシル基を有する基材を生じると予想され得る。工程(b)における有機官能性ネットワーク形成剤がエポキシ部分を特徴とする場合、その場合それらの部分は、工程(a)の後に存在する末端ヒドロキシル基と反応し得る。すなわち、好ましい一面においては、工程(b)における有機官能性ネットワーク形成剤は、共有結合などの化学結合を形成するために、工程(a)の後に基材表面に存在する(および工程(a)において使用される有機官能性ネットワーク形成剤に由来する)有機官能性部分と反応することができる(および実際に反応する)有機官能性部分を含む。そうは言っても、(有機官能性部分間の化学結合形成の潜在的な促進に関連する)この考えられる説明は、本発明の方法が優れたコーティングを提供する多くの理由の1つにすぎないとも考えられ、および従って、本発明の利点のいくつかを享受するために、工程(b)における有機官能性ネットワーク形成剤が、工程(a)の後に基材表面に存在する1つ以上の有機官能性部分と反応して化学結合を形成することができることは、好ましいかもしれないが必須ではない可能性がある。
【0043】
例えば、好ましい実施態様は、
- 工程(a)における有機官能性ネットワーク形成剤が1つ以上のエポキシ、アミノ、メルカプト、および/またはウレイド部分を含み、並びに
工程(b)における有機官能性ネットワーク形成剤が1つ以上のエポキシまたはアルカクリル(例えばメタクリル)部分を含む;または
- 工程(a)における有機官能性ネットワーク形成剤が1つ以上のアルカクリル(例えばメタクリル)部分を含み、並びに
工程(b)における有機官能性ネットワーク形成剤が1つ以上のアミノ、メルカプト、および/またはウレイド部分(好ましくは1つ以上のアミノ部分)を含む
ものを含む。
【0044】
さらに好ましい実施態様は、工程(a)における有機官能性ネットワーク形成剤が1つ以上のエポキシまたはアミノ部分を含み;および工程(b)における有機官能性ネットワーク形成剤が1つ以上のエポキシまたはアルカクリル(例えばメタクリル)部分(好ましくは1つ以上のエポキシ部分)を含むものを含む。
【0045】
本発明の方法の1つの好ましい実施態様においては:
- 工程(a)および(b)のそれぞれにおける無機ネットワーク形成剤は、テトラアルコキシシランであり、
- 工程(a)における有機官能性ネットワーク形成剤は、エポキシシランまたはアミノシランであり、および
- 工程(b)における有機官能性ネットワーク形成剤は、エポキシシランである。
【0046】
上記の本発明の方法の定義、および特にそれが基材をコーティングする方法であるという事実から、工程(a)は、(コーティングされる)基材の存在下において行われるべきであり、および同様に工程(b)は、工程(a)の間にすでにコーティングされた基材の存在下において行われるべきであることが理解されるであろう。すなわち基材をコーティングする(本発明の)本方法は、(a)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を該基材の存在下において縮合型反応に供することによって基材をコーティングする工程、およびその後に(b)工程(a)においてコーティングされた基材の存在下において、無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を縮合型反応に供することによって該基材がさらにコーティングされる1つ以上のさらなる工程を含む。
【0047】
上に示したように、本発明の方法は、2つより多い縮合型反応、例えば3つのよりそのような反応を含み得る。例えば、一つの実施態様においては、本発明の方法は、
(a)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を縮合型反応に供する工程、
並びにその後:
(b)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を縮合型反応に供する第1のさらなる工程、および次いでその後無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を縮合型反応に供する第2の(および任意にそれ以上の)さらなる工程を含む。
【0048】
3つ以上のそのような縮合型反応工程を行うことは、コーティングされた顔料にさらに強化された特性を与え得る。しかしながら、この点に関して、上に示したように、それは、より厚い(およびすなわちより保護的な)全体的な層を作成するための追加の反応を行う場合だけではない。むしろ、本発明の方法の利点は、同じ量の全体的なコーティングが、単一の工程においてなどのより少ない工程において適用される対応する製品に対して生じる。
【0049】
工程(a)における縮合型反応は、工程(b)におけるその後の縮合型反応の前に、かなりの程度の完全性(例えば≧30%の完全性、≧40%の完全性、≧50%の完全性、≧60%の完全性、≧70%の完全性、≧80%の完全性、または≧90%完全性)まで進行することが好ましい。工程(b)が無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤が縮合型反応に供される複数の工程を含む場合、各縮合型反応がいかなるその後の縮合型反応の前にもかなりの程度の完全性(すなわち≧30%の完全性、≧40%の完全性、≧50%の完全性、≧60%の完全性、≧70%の完全性、≧80%の完全性、または≧90%完全性)まで進行することがさらに好ましい。
【0050】
好ましくは、工程(a)における縮合型反応は、工程(b)の前に、≧10分、≧15分、≧20分、≧30分、≧45分、≧60分、≧75分、≧90分、または≧120分以上などの≧5分進行する。工程(b)が無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤が縮合型反応に供される複数の工程を含む場合、各縮合型反応がいかなるその後の縮合型反応の前にもかなりの程度の完全性まで進行すること(例えば≧10分、≧15分、≧20分、≧30分、≧45分、≧60分、≧75分、≧90分、または≧120分以上などの≧5分進行すること)がさらに好ましい。両方の工程において、反応の長さに特定の上限はないが、一般的に、追加の利点は何も期待されないであろうがため、例えば10時間を超えて反応を続けることは不必要である(典型的には反応は≦4時間または≦3時間などの≦5時間後に停止し得る)。
【0051】
好ましい実施態様においては、本発明の方法における工程(a)および/または(b)における縮合型反応(好ましくは全てのそのような反応)は、触媒の存在下において行われる。触媒は、酸または塩基であり得る。好ましくは、触媒は、ブレンステッド塩基性またはルイス塩基性触媒、好ましくは窒素ベースのブレンステッド塩基性または窒素ベースのルイス塩基性触媒である。適切な窒素ベースのブレンステッド塩基性または窒素ベースのルイス塩基性触媒は、アンモニア、アミン(ポリアミンを含む)、アミノアルコールまたは窒素含有芳香族若しくは複素環式芳香族化合物であり得る。特に好ましい窒素ベースのブレンステッド塩基性または窒素ベースのルイス塩基性触媒は、エチレンジアミン(EDA)、モノエタノールアミン(MEA)およびN-メチルイミダゾール(NMI)を含む。そのような薬剤は、直接または溶媒と混合して使用し得る。
【0052】
好ましい実施態様においては、本発明の方法における工程(a)および/または(b)における縮合型反応(好ましくは全てのそのような反応)は、溶媒中で行われる。好ましくは、溶媒は、非プロトン性溶媒、より好ましくはC1-6アルカノールまたはC1-6アルコキシ-C1-6アルカノールなどのアルコールである。適切な溶媒は、イソプロパノール(IPA)および1-メトキシ-2-プロパノールを含む。
【0053】
好ましい実施態様においては、本発明の方法における工程(a)および/または(b)における縮合型反応(好ましくは全てのそのような反応)は、高温で行われる。適切な温度は、存在する特定の試薬、および特に使用し得る任意の溶媒に依存するであろう。好ましい温度は、≧60℃、≧70℃、または≧80℃などの≧50℃の温度である。温度は、好ましくは≦170℃、≦150℃、または≦130℃などの≦200℃である。
【0054】
本発明の方法における工程(a)および/または(b)(好ましくは両方)において、無機ネットワーク形成剤の有機官能性ネットワーク形成剤とのモル比は、X:1として定義し得る。好ましくはXは、≧1、≧2、≧3、≧4、≧5、≧6、≧7、または≧8などの≧0.5である。好ましくはXは、≦160、≦140、≦120、≦110、または≦100などの≦200である。典型的な範囲は、1から120、または5から120である。
【0055】
使用される無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤の絶対量は、コーティングされる基材の利用可能な表面積に依存するであろう。顔料基材については、表面積は、当然粒子サイズに依存するであろう。これらの薬剤は、コーティングがYの厚さを有するコーティングされた基材を提供する量で使用し得る。好ましくはYは、≧3nm、≧4nm、≧5nm、≧6nm、≧7nm、または≧8nmなどの≧2nmである。好ましくはYは、≦250、≦200、≦150、≦120、≦100、≦90、≦90、≦80、≦70、≦60、または≦50nmなどの≦300nmである。典型的な範囲は、5~70nmである。
【0056】
本発明の方法によって得ることができるコーティングは、比較的高いシリコン含有量を有し得る。好ましい一面においては、コーティングのシリコン含有量は、EDSによって測定可能であるように、≧13%、≧14%、または≧15%などの≧12%であり得る。
【0057】
本発明の方法において使用される無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤の総量を考慮すると、工程(a)対工程(b)において使用されるそれぞれの割合の点で変動の範囲がある(特に工程(b)が複数の別個の縮合型反応を含むとき)。しかしながら、無機ネットワーク形成剤およびまた有機官能性ネットワーク形成剤の両方について、方法における縮合型反応において使用される量の、同じ方法における任意の他の縮合型反応において使用される量との比をZ:1として定義する場合、その場合好ましくはZは、0.2から5などの0.1から10の範囲内にある。
【0058】
本発明の方法における工程(a)および(b)のそれぞれにおいて、縮合型反応は、好ましくはゾルゲルプロセスを介して、本来は(主に)無機であるが、有機官能性ネットワーク形成剤に由来する有機部分も含むネットワークの形成につながる。例えば、無機ネットワーク形成剤がテトラアルコキシシランである好ましい状況においては、反応は、SiおよびOに基づくが、有機官能性ネットワーク形成剤に由来する有機部分も含むネットワークの形成につながり得る。
【0059】
本発明の方法の好ましい一面においては、工程(a)において、縮合型反応は、分散剤の存在下において起こる。分散剤は、好ましくは金属酸化物粒子-例えばEvonikから入手可能なAEROXIDE Alu C、AEROXIDE Alu 130、AEROSIL 200またはACEMATT OK412などのアモルファス金属酸化物粒子などの不活性粒子から構成される薬剤である。好ましくは分散剤は、ナノ粒子の形態である。適切な薬剤は、ヒュームドシリカおよびコロイダルシリカを含む。分散剤の存在は、処理を促進することができ、コーティングされた基材の耐薬品性を増加させるのにも役立つことができる。
【0060】
特に好ましい一面においては、基材をコーティングする(本発明の)方法は、
(a)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を溶媒および触媒の存在下において縮合型反応に供する工程(ここで、該反応は、好ましくは≧5分進行する)、
およびその後
(b)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤が溶媒および触媒の存在下において縮合型反応に供される1つ以上のさらなる工程
[ここで:
- 該基材は、アルミニウム顔料であり;
- 各無機ネットワーク形成剤は、独立してテトラアルコキシシランであり;
- 各有機官能性ネットワーク形成剤は、独立してアミノアルキルトリアルコキシシラン、N-(アルキル)-アミノアルキルトリアルコキシシラン、N-アミノアルキル-アミノアルキル(アルキル)ジアルコキシシラン、N-アミノアルキル-アミノアルキルトリアルコキシシラン、エポキシアルキルトリアルコキシシラン、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン、アルカクリロキシアルキルトリアルコキシシラン(例えばメタクリロキシアルキルトリアルコキシシラン)およびウレイドアルキルトリアルコキシシランから選択される化合物であり、ここで、アルキル部分は、それぞれ独立してC1-10アルキルから選択され、およびアルコキシ部分は、それぞれ独立してC1-10アルコキシから選択され(および好ましくは、工程(b)における有機官能性ネットワーク形成剤は、化学結合を形成するために、工程(a)の後の基材表面に存在し工程(a)において使用される有機官能性ネットワーク形成剤に由来する有機官能性部分と反応する有機官能性部分を含む);並びに
- 工程(a)および(b)のそれぞれにおいて、無機ネットワーク形成剤の有機官能性ネットワーク形成剤とのモル比は、X:1であり、ここで、Xは、1から120である]
を含む。
【0061】
コーティングされた基材
上で述べたように、本発明は、本明細書において定義される本発明の方法によって得ることができるコーティングされた基材を提供する(誤解を避けるために、これは、以下でさらに説明するように、1つ以上の表面改質剤が適用されたコーティングされた基材を含む)。前のおよび次のセクションに記載されている本発明の好ましい特徴は、本発明のコーティングされた基材に同様に適用される。例えば、本発明のコーティングされた基材におけるコーティングは、厚さYを有し得、ここで、好ましくはYは≧3nm、≧4nm、≧5nm、≧6nm、≧7nm、または≧8nmなどの≧2nmであり、および好ましくはYは、≦250、≦200、≦150、≦120、≦100、≦90、≦90、≦80、≦70、≦60、または≦50nmなどの≦300nmである。典型的な範囲は、5~70nmである。
【0062】
コーティングされた基材は、好ましくはコーティングされたアルミニウム顔料である。この点に関して、上に示したように、本発明の方法は、以前のコーティング方法を使用しては得ることができないと考えられる高い耐薬品性および良好な光学特性の組合せを有するアルミニウム顔料の調製を可能にし、およびまた以前のコーティング方法を使用して適用されたコーティングと比較して、その後の処理および取り扱い中の発火の可能性を低下させるのにより効果的なコーティングの適用を可能にすると考えられており、およびまた以前のコーティング方法を使用して適用されたコーティングと比較してガス化安定性を改善するのにより効果的なコーティングの適用、プラス以前のコーティング方法を使用しては得ることができないと考えられる耐薬品性を有するPVDアルミニウム顔料を可能にすると考えられる。この目的のために、本発明によって提供される製品は、以下を含む:
- (i)以下でさらに定義される「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」において12以下の耐薬品性スコアを有し、(ii)≦5.0の上記で定義される光沢分散値(X)を有する、コーティングされた金属顔料またはコーティングされた金属酸化物顔料(このタイプの製品を、以下では第1の顔料という);
- (i)以下でさらに定義される「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」において12未満の耐薬品性を有し、(ii)≧90の上記で定義される明度分散LAまたはLB値である、コーティングされた金属顔料またはコーティングされた金属酸化物顔料(このタイプの製品を、以下では第2の顔料という);
- MIE*表面積(式中、MIEは、最小発火エネルギーであり、および表面積は、BET法によって測定される表面積である)について少なくとも40mJ・m2/g(好ましくは少なくとも55mJ・m2/g)の値を有する、コーティングされた金属顔料またはコーティングされた金属酸化物顔料(このタイプの製品を、以下では第3の顔料という);
- (i)以下でさらに記載する「コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方法」において≧700秒(好ましくは≧1000秒)のガス化安定性スコアを有し、(ii)≦5.0の上記で定義される光沢分散値(X)を有する、コーティングされた金属顔料またはコーティングされた金属酸化物顔料(このタイプの製品を、以下では第4の顔料という);
- (i)以下でさらに記載する「コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方法」において≧700秒(好ましくは≧1000秒)のガス化安定性スコアを有し、(ii)≧90の上記で定義される明度分散LAまたはLB値を有する、コーティングされた金属顔料またはコーティングされた金属酸化物顔料(このタイプの製品を、以下では第5の顔料という);
- 以下でさらに定義される「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」において12以下の耐薬品性スコアを有する、コーティングされたPVD金属顔料またはコーティングされたPVD金属酸化物顔料(このタイプの製品を、以下では第6の顔料という);
- 以下でさらに記載する「コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方法」において≧700秒(好ましくは≧1000秒)のガス化安定性スコアを有する、コーティングされたPVD金属顔料またはコーティングされたPVD金属酸化物顔料(このタイプの製品を、以下では第7の顔料という);および
- 実施例41において以下でさらに定義される拡張ガス化試験方法において21日後に≦5mlのガス化安定性スコアを有する、コーティングされたPVD金属顔料またはコーティングされたPVD金属酸化物顔料(このタイプの製品を、以下では第8の顔料という)。
【0063】
これらの実施態様のそれぞれにおける顔料の好ましい一面は、独立して、本発明の方法における使用のための基材に関連して上記されているものと同じである(基材が顔料であるとき)。すなわち、金属および金属酸化物についての好ましい選択肢は、本発明の方法における使用のための基材について上で述べたものと同じである。アルミニウムおよび酸化銅が特に好ましく、アルミニウムが最も好ましい。これらの実施態様のそれぞれについてのさらに好ましい一面を、以下に記載する。
【0064】
第1および第6の顔料のそれぞれについては、(独立して)顔料が上記の試験において11以下などの11.5以下の耐薬品性スコアを有することが好ましい。
【0065】
第2の顔料については、上記の試験における耐薬品性スコアが11以下であることが好ましい。
【0066】
第3、第4、第5第7および第8の顔料のそれぞれについては、(独立して)顔料が以下でさらに定義される「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」において12以下、より好ましくは11以下などの11.5以下の耐薬品性スコアを有することが好ましい。
【0067】
第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の顔料のそれぞれについてのいくつかの特に好ましい一面においては、耐薬品性スコアは、(独立して)10.5以下、10以下、9.5以下、9以下、8.5以下、または8以下などのさらに低くあり得る。
【0068】
第2、第3、第5、第6、第7および第8の顔料のそれぞれについては、(独立して)顔料が(第1の顔料に関連して)≦5.0の上記で定義された光沢分散値(X)を有することが好ましい。
【0069】
第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の顔料のそれぞれについては、(独立して)光沢分散値(X)が≦4.0または≦3.5などの≦4.5以下であることが好ましい。典型的にはコーティングを顔料に適用するとき通常顔料の光沢は減少するため光沢分散は正の数であるが、光沢分散値(X)に特に下限はない。光沢分散値の典型的な範囲は、0.2から4.5、0.3から4.0、0.4から3.5または0.5から3.5などの0.1から5.0である。
【0070】
第1、第3、第4、第6、第7および第8の顔料のそれぞれについては、(独立して)(第2の顔料に関連して)上記で定義された明度分散LA値が≧90%であることが好ましい。
【0071】
第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の顔料のそれぞれについては、(独立して)LAが≧92%、例えば≧94%、≧96%、≧98%、≧100%、≧102%、≧104%または≧105%であることが特に好ましい。
【0072】
第1、第3、第4、第6、第7および第8の顔料のそれぞれについては、(独立して)上記で定義された明度分散LB値が≧90%であることが好ましい。
【0073】
第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の顔料のそれぞれについては、(独立して)LBが≧92%、例えば≧94%、≧96%、≧98%、≧100%、≧102%、≧104%または≧105%であることが特に好ましい。
【0074】
すなわち、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の顔料のそれぞれについては、(独立して)LAおよびLBの少なくとも1つ(および典型的には両方)が≧92%、≧94%、≧96%、≧98%、≧100%、≧102%、≧104%または≧105%などの≧90%であることが好ましい。好ましくは、LAおよびLBのいずれも>150%ではなく、より好ましくはLAおよびLBのいずれも>140%ではなく、およびより好ましくはさらにLAおよびLBのいずれも>130%ではない。LAの典型的な範囲は、92から135%、94から130%、または96から125%などの90から140%である。LBの典型的な範囲は、92から135%、94から130%、または96から125%などの90から140%である。好ましくは、LAおよびLBは、両方とも90から140%、または92から135%、または94から130%、または96から125%の範囲中にある。
【0075】
第1、第2、第4、第5、第6、第7および第8の顔料のそれぞれについては、(独立して)MIE*表面積(式中、MIEは、最小発火エネルギーであり、および表面積は、BET法によって測定される表面積である)について少なくとも40mJ・m2/g(好ましくは少なくとも55mJ・m2/g)の値を有する顔料が好ましい。
【0076】
第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の顔料のそれぞれについては、(独立して)顔料がMIE*表面積について少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100などの少なくとも50mJ・m2/gの値を有することが好ましい。いくつかの一面においては、顔料は、MIE*表面積について少なくとも110、または少なくとも120mJ・m2/gなどのさらにより高い値を有し得る。一般には、顔料がMIE*表面積について少なくとも55mJ・m2/gの値を有することが好ましい。
【0077】
第1、第2、第3、第6および第8の顔料のそれぞれについては、(独立して)顔料が以下でさらに記載する「コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方法」において≧700秒(好ましくは≧1000秒)のガス化安定性スコアを有することが好ましい。
【0078】
第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の顔料のそれぞれについては、(独立して)顔料が以下でさらに記載する「コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方法」において≧800秒、より好ましくは≧900秒、およびより好ましくはさらに≧1000秒のガス化安定性スコアを有することが好ましい。いくつかの実施態様においては、それは、≧1100、≧1200、≧1300、または≧1400秒などのさらにより高くあり得る。
【0079】
特定の実施態様においては、本発明は、MIE*表面積(式中、MIEは、最小発火エネルギーであり、および表面積は、BET法によって測定される表面積である)について≧40mJ・m2/g(好ましくは≧60、≧70、≧80、≧90、≧100、≧110、または≧120などの≧50mJ・m2/g)の値を有し、顔料が≦5.0(好ましくは≦4.0または≦3.5などの≦4.5)の上記で定義された光沢分散値(X)を有する、コーティングされた金属顔料またはコーティングされた金属酸化物顔料を提供する。この点に関して、顔料がMIE*表面積について少なくとも55mJ・m2/gの値を有することが、一般的に好ましい。
【0080】
別の実施態様においては、本発明は、MIE*表面積(式中、MIEは、最小発火エネルギーであり、および表面積は、BET法によって測定される表面積である)について≧40mJ・m2/g(好ましくは≧60、≧70、≧80、≧90、≧100、≧110、または≧120などの≧50mJ・m2/g)の値を有し、顔料が≧90の上記で定義された明度分散LAまたはLB値を有する(上記のLAおよびLBについてのさらに好ましい選択肢もこの実施態様に適用される)、コーティングされた金属顔料またはコーティングされた金属酸化物顔料を提供する。この点に関して、顔料がMIE*表面積について少なくとも55mJ・m2/gの値を有することが、一般的に好ましい。
【0081】
上記の本発明のコーティングされた金属顔料およびコーティングされた金属酸化物顔料の全てについて、MIEは、好ましくは≧6mJ、≧7mJ、≧8mJ、≧9mJ、または≧10mJなどの≧5mJである。
【0082】
上記の本発明のコーティングされた金属顔料およびコーティングされた金属酸化物顔料の全てについて、表面積は、好ましくは≧2m2/gまたは≧3m2/gなどの≧1m2/gである。いくつかの実施態様においては、それは、≧4m2/gまたは≧5m2/gなどのさらにより高くあり得る。
【0083】
上記の本発明のコーティングされた金属顔料およびコーティングされた金属酸化物顔料の全てについて、顔料が実施例41において以下に記載される「拡張ガス化試験方法」において21日後に≦5ml、より好ましくは≦4ml、より好ましくはさらに≦3ml、さらにより好ましくは≦2ml、および最も好ましくは21日後に≦1mlのガス化安定性スコアを有することが好ましい。典型的には、それは、0mlである。これは、特にPVD顔料についての場合である。
【0084】
コーティングされた基材の表面改質
本発明は、1つ以上の表面改質剤を上記で定義された本発明のコーティングされた基材に適用することを含む方法を提供する。本発明はまた、上記で定義された本発明の方法によって基材をコーティングし、およびその後1つ以上の表面改質剤を該コーティングされた基材に適用することを含む方法を提供する。
【0085】
好ましくは、前記1つ以上の表面改質剤は:
(a)(i)有機リン化合物、および(ii)5000以下の分子量を有する相溶化剤の両方(ここで、該有機リン化合物および相溶化剤は、同時に、別々にまたは連続して適用される);
(b)(i)脂肪酸、および(ii)5000以下の分子量を有する相溶化剤の両方(ここで、該脂肪酸および相溶化剤は、同時に、別々にまたは連続して適用される);
(c)(i)有機官能性ネットワーク形成剤、および(ii)有機リン化合物の両方(ここで、該有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物は、同時に、別々に、または連続して適用される)
を含む。
【0086】
1つの好ましい一面においては、前記1つ以上の表面改質剤は、(i)有機リン化合物、および(ii)5,000以下の分子量を有する相溶化剤の両方を含み、並びにここで、該有機リン化合物および相溶化剤は、同時に、別々にまたは連続して適用される。
【0087】
別の好ましい一面においては、前記1つ以上の表面修飾剤は、(i)脂肪酸、および(ii)5,000以下の分子量を有する相溶化剤の両方を含み、並びにここで、該有機リン化合物および相溶化剤は、同時に、別々にまたは連続して適用される。
【0088】
別の好ましい一面においては、前記1つ以上の表面改質剤は、(i)有機官能性ネットワーク形成剤、および(ii)有機リン化合物の両方を含み、並びにここで、該有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物は、同時に、別々にまたは連続して適用される。
【0089】
有機リン化合物は、好ましくは、式(III):
I-X-P(O)(OR1)(OR2) (III)
[式中、
- R1およびR2は、それぞれ独立してH、任意に置換されたヒドロカルビル、任意に置換されたアミン、ポリエーテル、アンモニウムイオン、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属であり(好ましくはR1およびR2は、Hである)、
- Xは、2価であり、(a)直鎖状若しくは分岐状炭化水素鎖(ここで、前記炭化水素鎖は、O、SおよびNから選択される1つ以上のヘテロ原子によって任意に中断される)、(b)任意に置換された炭素環(ここで、前記環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールおよび縮合炭化水素基から選択される)、または(c)O、SおよびNから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む任意に置換された複素環であり(好ましくはXは、C4-14アルキレンである);並びに
- Iは、Hまたは重合用の開始剤部分である(好ましくはIは、Hである)]
の化合物である。
【0090】
相溶化剤は好ましくは、≦4,000、≦3,000、≦2,000、または≦1,500などの≦5,000の分子量を有する。相溶化剤は好ましくは、≧300、≧400、または≧500などの≧200の分子量を有する。
【0091】
相溶化剤は、好ましくは有機化合物、より好ましくは樹脂である。より好ましくはさらに、相溶化剤は、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、ポリウレタン樹脂またはアクリル樹脂、最も好ましくはC1-4アルコールエーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(この実施態様におけるアルコールについての好ましい選択肢は、メタノール、エタノールおよびプロパノールである)またはイソホロンジイソシアネートトリマー樹脂である。適切な市販の相溶化剤の例は、BASF,Germanyから入手可能なLuwipal(登録商標) 072である。
【0092】
脂肪酸は、好ましくは式R-C(O)OH(式中、Rは、脂肪族飽和または不飽和炭化水素基である)の化合物である。すなわち、Rは、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり得る。好ましくはRは、アルキルまたはアルケニル基である。
【0093】
Rは、典型的には直鎖状であるが、直鎖状でも分岐状でもあり得る。
【0094】
好ましくはRは、3から29個の炭素を有し、すなわち脂肪酸は、C4-30脂肪酸である。より好ましくはRは、3から27個の炭素原子を有し、例えばそれは、直鎖状C3-27アルキル基または直鎖状C3-27アルケニル基であり得る。Rは、しばしば10から24個の炭素原子を有する直鎖状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、例えば直鎖状C11-25アルキル基または直鎖状C11-25アルケニル基である。不飽和脂肪族炭化水素基は、1から4個の二重結合、例えば1または2個の二重結合、および典型的には1個の二重結合などの複数の二重結合を含み得る。
【0095】
飽和脂肪酸の例は、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、ノナデシル酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ヘンイコシル酸(C21)、ベヘン酸(C22)、トリコシル酸(C23)、リグノセリン酸(C24)、ペンタコシル酸(C25)、セロチン酸(C26)、ヘプタコシル酸(C27)およびモンタン酸(C28)を含む。
【0096】
不飽和脂肪酸の例は、α-リノレン酸(C18:3)、ステアリドン酸(C18:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)、リノール酸(C18:2)、γ-リノレン酸(C18:3)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3)、アラキドン酸(C20:4)、アドレン酸(C22:4)、パルミトレイン酸(C16:1)、バクセン酸(C18:1)、パウリン酸(C20:1)、オレイン酸(C18:1)、エライジン酸(Cトランス-18:1)、ゴンドン酸(C20:1)、エルシン酸(C22:1)、ネルボン酸(C24:1)およびミード酸(C20:3)を含む。
【0097】
本明細書において使用される表記CM:N脂肪(ここで、MおよびNは、整数である)は、脂肪酸がM個の炭素原子およびN個の二重結合を含むことを意味する。2つの二重結合は、通常隣接している(すなわち同じ炭素原子に結合している)ことはないが、N個の二重結合は、任意の位置にあり得る(シスまたはトランス配置)。すなわち、C18:0(または単にC18)は、オクタデカン酸(ステアリン酸)のみをカバーし、およびC18:1は、オレイン酸((Z)-オクタデカ-9-エン酸)およびバクセン酸((E)-オクタデカ-11-エン酸)などの18個の炭素および1個の二重結合を有する全ての脂肪酸を含む。
【0098】
使用するのに便利な脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸およびバクセン酸、そして特にオレイン酸を含む。脂肪酸の混合物を使用することも、ときどき便利であり得る。
【0099】
表面改質剤としのて使用のための有機官能性ネットワーク形成剤は、好ましくは本発明の方法(すなわち基材をコーティングする方法)の文脈において上にあるのと同じ方法で定義される。すなわち、好ましくは有機官能性ネットワーク形成剤は、上記で定義される式(II)の化合物であり、その中における反応性有機基は、好ましくはエポキシ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、無水カルボン酸、イソシアナート、シアネート、ウレイドおよびカルバメート(アミノが最も好ましい)から選択される1つ以上の置換基を有するヒドロカルビル基である。すなわち、有機官能性ネットワーク形成剤は、アミノアルキルトリアルコキシシラン、N-(アルキル)-アミノアルキルトリアルコキシシラン、N-アミノアルキル-アミノアルキル(アルキル)ジアルコキシシラン、N-アミノアルキル-アミノアルキルトリアルコキシシラン、エポキシアルキルトリアルコキシシラン、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン、アルカクリロキシアルキルトリアルコキシシラン(例えばメタクリロキシアルキルトリアルコキシシラン)およびウレイドアルキルトリアルコキシシラン(アミノアルキルトリアルコキシシランが最も好ましい)から選択される化合物であり得る。好ましくはアルキル部分は、それぞれ独立して、C1-10アルキル、より好ましくはC1-4アルキルなどのC1-6アルキルから選択される。好ましくはアルコキシ部分は、C1-10アルコキシ、より好ましくはC1-4アルコキシなどのC1-6アルコキシである(典型的にはそれらは、エトキシまたはメトキシ、最も一般的にはエトキシである)。および、適切な有機官能性ネットワーク形成剤の具体例は、以下:
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノ-プロピルトリメトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノ-プロピルトリエトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピル(メチル)ジエトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、および3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(中でもアミノ含有選択肢が最も好ましく、特に3-アミノプロピルトリメトキシシランおよび3-アミノプロピルトリエトキシシラン)
を含む。
【0100】
有機リン化合物は、好ましくはコーティングされた顔料の総重量に基づいて≧0.04重量%、≧0.08重量%、≧0.1重量%、または≧0.2重量%などの≧0.01重量%の量で使用される。有機リン化合物は、好ましくはコーティングされた顔料の総重量に基づいて≦10重量%、≦5重量%、≦4重量%、≦3重量%、≦2重量%、または≦1重量%などの≦15重量%の量で使用される。すなわち、好ましい量は、0.1から10重量%であり得る。
【0101】
相溶化剤は、好ましくはコーティングされた顔料の総重量に基づいて≧0.04重量%、≧0.08重量%、≧0.1重量%、または≧0.2重量%などの≧0.01重量%の量で使用される。相溶化剤は、好ましくはコーティングされた顔料の総重量に基づいて≦10重量%、≦5重量%、≦4重量%、≦3重量%、≦2重量%、または≦1重量%などの≦15重量%の量で使用される。すなわち、好ましい量は、0.1から10重量%であり得る。
【0102】
脂肪酸は、好ましくはコーティングされた顔料の総重量に基づいて≧0.04重量%、≧0.08重量%、≧0.1重量%、または≧0.2重量%などの≧0.01重量%の量で使用される。脂肪酸は、好ましくはコーティングされた顔料の総重量に基づいて≦10重量%、≦5重量%、≦4重量%、≦3重量%、≦2重量%、または≦1重量%などの≦15重量%の量で使用される。すなわち、好ましい量は、0.1から10重量%であり得る。
【0103】
有機官能性ネットワーク形成剤(表面改質剤として使用されるとき)は、好ましくはコーティングされた顔料の総重量に基づいて≧0.04重量%、≧0.08重量%、≧0.1重量%、または≧0.2重量%などの≧0.01重量%の量で使用される。有機官能性ネットワーク形成剤は、好ましくはコーティングされた顔料の総重量に基づいて≦10重量%、≦5重量%、≦4重量%、≦3重量%、≦2重量%、または≦1重量%などの≦15重量%の量で使用される。すなわち、好ましい量は、0.1から10重量%であり得る。
【0104】
有機リン化合物の相溶化剤との重量比(両方を組み合わせて使用する一面における)は、好ましくは5:1から1:5、3:1から1:3、または2:1から1:2などの10:1から1:10である。
【0105】
脂肪酸の相溶化剤との重量比(両方を組み合わせて使用する一面における)は、好ましくは5:1から1:5、5:1から1:3、または4:1から1:2などの10:1から1:10である。
【0106】
有機官能性ネットワーク形成剤の有機リン化合物との重量比(両方を組み合わせて使用する一面における)は、好ましくは5:1から1:5、3:1から1:3、または2:1から1:2などの10:1から1:10である。
【0107】
本発明の一つの面においては、有機リン化合物および相溶化剤を適用するとき、上記の方法は、有機リン化合物を顔料に適用する工程、およびその後相溶化剤を該顔料に適用する工程を含む。しかしながら、より典型的には、有機リン化合物および相溶化剤を適用するとき、上記の方法は、相溶化剤を顔料に適用する工程、およびその後有機リン化合物を該顔料に適用する工程を含む。
【0108】
本発明の一つの面においては、脂肪酸および相溶化剤を適用するとき、上記の方法は、脂肪酸を顔料に適用する工程、およびその後相溶化剤を該顔料に適用する工程を含む。しかしながら、より典型的には、脂肪酸および相溶化剤を適用するとき、上記の方法は、相溶化剤を顔料に適用する工程、およびその後脂肪酸を該顔料に適用する工程を含む。
【0109】
本発明の一つの面においては、有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物を適用するとき、上記の方法は、有機リン化合物を顔料に適用する工程、およびその後有機官能性ネットワーク形成剤を顔料に適用する工程を含む。しかしながら、より典型的には、有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物を適用するとき、上記の方法は、有機官能性ネットワーク形成剤を顔料に適用する工程、およびその後有機リン化合物を該顔料に適用する工程を含む。
【0110】
有機リン化合物をコーティングされた基材に適用するとき、塩基性触媒を好ましくは使用し得る。好ましい塩基性触媒は、EDA、MEAおよびNMIである。そのような薬剤は、直接または溶媒と混合して使用し得る。
【0111】
脂肪酸をコーティングされた基材に適用するとき、塩基性触媒を好ましくは使用し得る。好ましい塩基性触媒は、EDA、MEAおよびNMIである。そのような薬剤は、直接または溶媒と混合して使用し得る。
【0112】
相溶化剤をコーティングされた基材に適用するとき、塩基性触媒を好ましくは使用し得る。好ましい塩基性触媒は、EDA、MEAおよびNMIである。そのような薬剤は、直接または溶媒と混合して使用し得る。
【0113】
有機官能性ネットワーク形成剤をコーティングされた基材に適用するとき、塩基性触媒が好ましくは使用され得る。好ましい塩基性触媒は、EDA、MEAおよびNMIである。そのような薬剤は、直接または溶媒と混合して使用することができる。
【0114】
顔料、特にコーティングされた顔料についての表面改質剤としての上記で定義された有機リン化合物および相溶化剤の組合せの使用は、ポリマー粉末適用において使用されるときの剪断効果に耐える顔料の能力の点で驚くべき利点を提供することが見い出された。顔料、特にコーティングされた顔料の表面改質剤としての上記で定義された脂肪酸および相溶化剤の組合せの使用は、有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物の組合せと同様の利点を提供すると考えられる。さらに、顔料(特にコーティングされた顔料)の表面改質剤としての、(a)有機リン化合物および上記で定義された相溶化剤、(b)脂肪酸および上記で定義された相溶化剤、または(c)有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物の組合せの使用は、水系適用におけるガス発生を回避する顔料の能力の点で驚くべき利点を提供することが見い出された。これらの利点は、一般に顔料で生じ、本明細書において定義される本発明のコーティングされた顔料に限定されないと考えられる。従って、上で述べたように:
-一つの実施態様においては、本発明は、顔料(任意の顔料、しかし好ましくは本発明のコーティングされた顔料などのコーティングされた顔料)を処理する方法であって、1つ以上の表面改質剤を該顔料に同時に、別々にまたは連続して適用することを含み、ここで、前記1つ以上の表面改質剤は、有機リン化合物および上記で定義された相溶化剤を含み、並びにここで、該相溶化剤の大部分は、該顔料に共有結合するようにならない方法を提供し;
-別の実施態様においては、本発明は、顔料(任意の顔料、しかし好ましくは本発明のコーティングされた顔料などのコーティングされた顔料)を処理する方法であって、1つ以上の表面改質剤を該顔料に同時に、別々にまたは連続して適用することを含み、ここで、前記1つ以上の表面改質剤は、脂肪酸および上記で定義された相溶化剤を含み、並びにここで、該相溶化剤の大部分は、該顔料に共有結合するようにならない方法を提供し;並びに
-別の実施態様においては、本発明は、顔料(任意の顔料、しかし好ましくは本発明のコーティングされた顔料などのコーティングされた顔料)を処理する方法であって、1つ以上の表面改質剤を該顔料に同時に、別々にまたは連続して適用することを含み、ここで、前記1つ以上の表面改質剤は、有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物を含む方法を提供する。
【0115】
上記で定義された本発明の表面改質の好ましい一面は、(独立して)これらの3つの実施態様のそれぞれに同様に適用される。
【0116】
さらなる実施態様においては、本発明は、有機リン化合物および上記で定義された相溶化剤をその表面に有する顔料(好ましくは本発明のコーティングされた顔料)を提供する(ここで、該相溶化剤の大部分は、該顔料に共有結合していない)。上記で定義された本発明の表面改質の好ましい一面は、この実施態様に同様に適用される。
【0117】
さらなる実施態様においては、本発明は、脂肪酸および上記で定義された相溶化剤をその表面に有する顔料(好ましくは本発明のコーティングされた顔料)を提供する(ここで、該相溶化剤の大部分は、該顔料に共有結合していない)。上記で定義された本発明の表面改質の好ましい一面は、この実施態様に同様に適用される。
【0118】
さらなる実施態様においては、本発明は、有機官能性ネットワーク形成剤および上記で定義された有機リン化合物をその表面に有する顔料(好ましくは本発明のコーティングされた顔料)を提供する。上記で定義された本発明の表面改質の好ましい一面は、この実施態様に同様に適用される。
【0119】
コーティングされた顔料の適用および使用
本発明のコーティングされた顔料は、それらの有益な特性を考慮して、広範囲の目的に使用し得る。すなわち、それらは、ワニス、自動車仕上げ、塗料、印刷インク、粉末コーティング材料、建築用塗料、プラスチック、セキュリティ印刷インク、セラミック、ガラスまたは化粧品などの製品に組み込み得る。1つの好ましい実施態様においては、本発明は、本明細書において定義される本発明のコーティングされた顔料を含み、およびさらにポリマーを含む粉末コーティング材料を提供する。
【0120】
別の好ましい実施態様においては、本発明は、本明細書において定義される本発明のコーティングされた顔料を含む水性コーティング組成物(塗料などの)を提供する。この実施態様の文脈において特に好ましい顔料は、(a)顔料が有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物をその表面に有する、および/または(b)顔料が1つ以上の表面改質剤を顔料に同時に、別々に若しくは連続して適用することを含む方法によって得られる若しくは得ることができるものを含み、ここで、前記1つ以上の表面改質剤は、有機官能性ネットワーク形成剤および有機リン化合物を含む。「コーティングされた基材の表面改質」と題するセクションにおいて上記した本発明の好ましい一面は、ケース(a)および(b)の両方に等しく適用される。また、ケース(a)および(b)の両方において、顔料は、好ましくは本発明のコーティングされた顔料、すなわち「コーティングされた基材」と題するセクションにおいて上記で定義された顔料であることが留意され得る。すなわち、この実施態様においては、顔料は、好ましくは顔料基材をコーティングし、次いで1つ以上の表面改質剤を(そのようにして得られた)コーティングされた顔料基材に適用する方法によって得ることができ、ここで、
-顔料基材をコーティングする方法は、(a)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を縮合型反応に供する工程、並びにその後(b)無機ネットワーク形成剤および有機官能性ネットワーク形成剤を縮合型反応に供する1つ以上のさらなる工程、並びに1つ以上の表面改質剤を(そのようにしてして得られた)コーティングされた顔料基材に適用することを含み、ここで、前記1つ以上の表面改質剤は、(i)有機官能性ネットワーク形成剤、および(ii)有機リン化合物の両方を含む。
【0121】
本発明のコーティングされた顔料は、粉末コーティング材料の形態で有利に使用し得る。すなわち、本発明は、物品をコーティングする方法であって、本明細書において定義される本発明のコーティングされた顔料(および任意にポリマー)を含む粉末コーティング材料を物品に静電的に適用し、および、任意に、該適用されたコーティング材料を硬化させることを含む。物品は、自動車であり得るであろう。
【0122】
本発明はまた、本明細書において定義される本発明のコーティングされた基材を含むコーティングされた物品を提供する。
【実施例】
【0123】
実施例1から9-コーティングされた基材の調製
以下の実施例は、本発明の特定のコーティングされた顔料の製造に関する詳細を提供する。
【0124】
実施例1 2つの層(第1のエポキシ官能化、第2のエポキシ官能化)
反応物:
初期供給: ペースト状の0.1kgのAlフレーク、10と15μmとの間のd50(量は、不揮発性含有量を指す)
第1の層適用: 0.1kgのテトラエチルシリケート(TEOS)
3gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
第2の層適用: 0.1kgのTEOS
5gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
表面処理パートA: イソブタノール中の1gのアルコールエーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(量は、樹脂の量を指す)
表面処理パートB: IPA中で希釈した2gのオクチルホスホン酸
処理:
【0125】
【0126】
実施例2 2つの層(第1のアミノ官能化、第2のエポキシ官能化)
反応物:
コーティングされた顔料は、第1の層の適用において3gのエポキシアルキルトリアルコキシシランの代わりに2gのN-アミノアルキル-アミノアルキルトリアルコキシシランを使用して、実施例1と同じ方法で調製した。工程8における濾液は、黄色で、透明なpH8~9であった。生成物の収量は、158gであった。
【0127】
実施例3 2つの層(第1のエポキシ官能化、第2のエポキシ官能化)
反応物:
初期供給: ペースト状の0.1kgのAlフレーク、10と15μmとの間のd50(量は、不揮発性含有量を指す)
第1の層適用: 0.1kgのテトラエチルシリケート(TEOS)
3gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
第2の層適用: 0.1kgのTEOS
6gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
表面処理パートA: イソブタノール中の1gのアルコールエーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(量は、樹脂の量を指す)
表面処理パートB: 1-メトキシ-2-プロパノール中で希釈した3gのオクチルホスホン酸(水中の80%溶液)(量は、水中のオクチルホスホン酸の量を指す)
処理:
【0128】
【0129】
実施例4 3つの層(第1、第2および第3のエポキシ官能化)
反応物:
初期供給: ペースト状の0.1kgのAlフレーク、10と15μmとの間のd50(量は、不揮発性含有量を指す)
第1の層適用: 0.1kgのテトラエチルシリケート(TEOS)
2gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
第2の層適用: 0.1kgのTEOS
3gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
第3の層適用: 0.03kgのTEOS
5gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
表面処理パートA: イソブタノール中の1gのアルコールエーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(量は、樹脂の量を指す)
表面処理パートB: IPA中で希釈した3gのオクチルホスホン酸(水中の80%溶液)(量は、水中のオクチルホスホン酸の量を指す)
処理:
【0130】
【0131】
実施例5 3つの層(第1、第2および第3のエポキシ官能化)
反応物:
初期供給: ペースト状の0.1kgのAlフレーク、10と15μmとの間のd50(量は、不揮発性含有量を指す)
第1の層適用: 0.1kgのテトラエチルシリケート(TEOS)
2gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
第2の層適用: 0.1kgのTEOS
3gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
第3の層適用: 0.03kgのTEOS
5gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
表面処理パートA: イソブタノール中の1gのアルコールエーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(量は、樹脂の量を指す)
表面処理パートB: 1-メトキシ-2-プロパノール中で希釈した3gのオクチルホスホン酸(水中の80%溶液)(量は、水中のオクチルホスホン酸の量を指す)
処理:
【0132】
【0133】
実施例6 1つの層(エポキシ官能化)[比較実施例]
反応物:
初期供給: ペースト状の0.1kgのAlフレーク、10と15μmとの間のd50(量は、不揮発性含有量を指す)
第1(唯一)の層適用:0.2kgのテトラエチルシリケート(TEOS)
9gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
表面処理パートA: イソブタノール中の1gのアルコールエーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(量は、樹脂の量を指す)
表面処理パートB: 1-メトキシ-2-プロパノール中で希釈した3gのオクチルホスホン酸(水中の80%溶液)(量は、水中のオクチルホスホン酸の量を指す)
処理:
【0134】
【0135】
実施例7 2つの層(第1のエポキシ官能化、第2のエポキシ官能化)
反応物:
初期供給: ペースト状の0.1kgのAlフレーク、10と15μmとの間のd50(量は、不揮発性含有量を指す)
第1の層適用: 0.1kgのテトラエチルシリケート(TEOS)
4gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
第2の層適用: 0.1kgのTEOS
5gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
表面処理パートA: イソブタノール中の1gのアルコールエーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(量は、樹脂の量を指す)
表面処理パートB: 1-メトキシ-2-プロパノール中で希釈した3gのオクチルホスホン酸(水中の80%溶液)(量は、水中のオクチルホスホン酸の量を指す)
処理:
【0136】
【0137】
実施例8 3つの層(第1、第2および第3のエポキシ官能化)
反応物:
初期供給: ペースト状の0.1kgのAlフレーク、10と15μmとの間のd50(量は、不揮発性含有量を指す)
第1の層適用: 0.1kgのテトラエチルシリケート(TEOS)
2gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
第2の層適用: 0.1kgのTEOS
3gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
第3の層適用: 0.03kgのTEOS
5gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
表面処理パートA: イソブタノール中の1gのアルコールエーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(量は、樹脂の量を指す)
表面処理パートB: 1-メトキシ-2-プロパノール中で希釈した3gのオクチルホスホン酸(水中の80%溶液)(量は、水中のオクチルホスホン酸の量を指す)
処理:
【0138】
【0139】
実施例9 3つの層(第1、第2および第3のエポキシ官能化)
反応物:
初期供給: ペースト状の0.1kgのAlフレーク、10と15μmとの間のd50(量は、不揮発性含有量を指す)
第1の層適用: 0.1kgのテトラエチルシリケート(TEOS)
2gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
第2の層適用: 0.1kgのTEOS
3gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
第3の層適用: 0.03kgのTEOS
5gのエポキシアルキルトリアルコキシシラン
表面処理パートA: イソブタノール中の1gのアルコールエーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(量は、樹脂の量を指す)
表面処理パートB: 1-メトキシ-2-プロパノール中で希釈した3gのオクチルホスホン酸(水中の80%溶液)(量は、水中のオクチルホスホン酸の量を指す)
処理:
【0140】
【0141】
実施例10から40-コーティングされた顔料の適用および評価
以下のセクションは、本発明のコーティングされた顔料をどのように粉末コーティングに配合し、その後物品に適用し得るかを説明する。
【0142】
コーティングされた顔料の耐薬品性の測定
基本的な方法は、粉末顔料を粉末コーティングとブレンドし、それらをスプレーガンで表面に適用し、次いで酸および塩基の滴を異なる期間適用し、その影響を評価することである。該方法のより詳細な説明は、以下のとおりである。
【0143】
コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法
耐薬品性スコアは、以下の方法によって決定し得る:
(a)コーティングされた顔料を、ポリエステル粉末とともに混合容器に直接充填し、ここで、該コーティングされた顔料がレーザー回折によって測定した平均粒子サイズ(d50)≧20ミクロンを有する場合、その場合188gのポリマー粉末を12gのコーティングされた顔料とともに使用し、および該コーティングされた顔料がレーザー回折によって測定した平均粒子サイズ(d50)<20ミクロンを有する場合、その場合192gのポリマー粉末を8gのコーティングされた顔料とともに使用し;
(b)該コーティングされた顔料が全て該混合容器内の混合ツールのレベルより下にあるわけではない場合、該混合容器を振って、該コーティングされた顔料の全てを、該混合ツールのレベルより下にし;
(c)該ポリエステル粉末およびコーティングされた顔料を、周囲温度で2*30秒間ブレンドし(好ましい装置は、混合をブレンダーレベル1で行うThermomix TM 3300,company Vorwerkである);
(d)得られた粉末調製物を、ビニール袋に移し;
(e)該粉末調製物を、円形の金属ノズルおよび30mmのデフレクターを有する静電スプレーガン(適切なスプレーガンは、Typ:WX-101 TCである)を使用し、以下のパラメーター:
粉末ホースの接続:2バール
パージエアフ(purge airf)の接続:0.5kg/cm2
マテリアルフローコントローラー:50%
電圧:70kV
ガンパネルの距離:30 cm
を使用して、スチールパネル(適切なパネルは、Q-Lab社から入手可能な10*15cmパネル、Typ D-46である)上に適用し;
ここで、適用される調製物の量は、以下の硬化工程(f)の後に50から75ミクロンの厚さを提供するのに十分であり
(およびここで、スプレーガンでスピッティングおよび/またはケーキングが起こった場合、その場合試験は放棄しやり直す);
【0144】
(f)160℃のベーキング時間を8分間使用して、このように適用した調製物を硬化させ;
(g)得られたサンプルを、少なくとも24時間周囲温度で保ち;
(h)該サンプルを、磁気パッド上に水平に置き、以下の溶液の15から17mm滴をその上に置き:(i)塩酸の10重量%水溶液、(ii)水酸化ナトリウムの1M水溶液、および(iii)水酸化ナトリウム(NaOH)の10重量%水溶液、それによって滴は、240分後に全ての滴を同時に除去でき、並びに各溶液について該パネルは、1滴30分間、1滴60分間、1滴120分間、1滴180分間、および1滴240分間露出されているように時系列に置き;
(i)全ての滴を、水で濯ぐことによって該サンプルから同時に除去し;
(j)15個の滴領域のそれぞれを、灰色化の程度に関して視覚的に評価し、以下のスキーム:
0 攻撃(attack)なし
0.5 わずかな変化が特定の角度で観察できるのみ
1 わずかな灰色化
2 灰色化、色素沈着はまだ見える)
3 完全な灰色化、色素沈着は見えない)
に基づいて0から3のスコアを割り当て
(k)次いで各滴領域についてのスコアを合計して、0から45の総スコアを提供する。
【0145】
工程(a)から(g)はまた、本明細書において定義される明度低下値の測定に関連して、コーティングされていない顔料を使用して行われ得る。ポリエステル粉末は、その目的がコーティングされた顔料用の担体として作用することだけであるため、この文脈においては特に限定されない。使用するのに便利なポリエステル粉末は、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)を含まず、光沢塗料フィルムを製造するのに適しており、および/または高い流動被覆特性を有しているものである(例えばGanzlin Beschichtungspulver GmbHから入手可能なFA-9005-GL412粉末)。
【0146】
コーティングされた顔料の光沢を測定するための試験方法
光沢は、説明において記載されている「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」の工程(a)から(g)に従ってコーティングされたまたはコーティングされていない顔料を含むサンプルを調製し、次いで光沢計を使用して60°での光沢を測定することによって測定し得る。適切な光沢計の例は、Rhopoint Instruments Novo-Gloss 60°光沢計である。
【0147】
コーティングされた顔料の明度を測定するための試験方法
15°および-15°での明度は、説明において記載されている「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」の工程(a)から(g)に従ってコーティングされたまたはコーティングされていない顔料を含むサンプルを調製し、次いで分光光度計を使用することによって測定し得る。適切な分光光度計の例は、BYK-mac i 23mm分光光度計である。
【0148】
コーティングされた顔料の最小発火エネルギー(MIE)を測定するための試験方法
MIEは、指定された試験条件下で粒子状物質の雲の発火という結果になるであろう電気火花の最小エネルギーの測定値を提供する。MIEを測定するために、粒子状物質を、雲を形成するために爆発容器中に分散させて、既知のエネルギーの火花に該雲を通過させる。粒子の濃度、乱流のレベルおよび火花エネルギーを変化させることによって、雲に発火させることができる最低のエネルギーを決定することができる。MIEは、好ましくはBS ISO/IEC 80079-20-2に従って測定する。
【0149】
コーティングされた顔料の表面積を測定するための試験方法
本明細書において使用される場合、表面積への言及は、BET法によって決定される表面積を指すことを意図する。そのような表面積は、ASTM B922-17に従って測定し得る。
【0150】
実施例10から26-コーティングされた顔料の耐薬品性および光学特性
さまざまな顔料を、上記の試験方法に従って試験し、その結果を以下の表に記載する。実施例10から21は、本発明のものである。これらの実施例について試験したサンプルは、それぞれ、(i)上記の実施例の1つにおいて記載されたコーティングされた顔料の1つ、または(ii)異なる試薬を使用して同様の方法で調製した代替のコーティングされた顔料のいずれかを使用して調製した(違いは、表において述べられている)。実施例22は、コーティングを全く欠いた対応する顔料であり、比較実施例として含んだ。実施例23から26は、コーティングが本発明のプロセスを使用して行われなかったコーティングされた顔料を含んだ-再び、違いは、表において述べられている。
【0151】
【0152】
上記の表における結果から、本発明の実施例は、高い耐薬品性および良好な光学特性の優れた組合せを享受することがわかる。また、実施例16および19の耐薬品性スコアの比較は、表面改質のための有機リン化合物(相溶化剤との組合せでの)の使用がポリマー粉末適用において使用されるときの剪断効果に耐える顔料の能力を増強する効果を有することを明らかにする。
【0153】
実施例27から30-市販製品との比較
本発明をさらに説明し、およびまた本発明のコーティングと当技術分野において使用されるコーティングとの間の違いを実証するために、本発明の2つのコーティングされた顔料を、2つの主要な市販のコーティングされた顔料と比較した。顔料は、上記の「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」の修正版を使用する耐薬品性試験に供し、ここで、異なるポリマー粉末、すなわちAxalta Coatingsから市販されているAlesta AP RAL 9005 HAAを、指定されたポリエステルのものに使用し、並びにここで、2つの溶液、すなわち溶液(iv)(5%NaOH水溶液)および(v)(20%HCl水溶液)のみを工程(h)において使用し、並びに溶液の滴は、(工程(h)において述べられている期間の代わりに)1、2、3および24時間の期間サンプル上に残した。試験後のサンプルの画像を、
図1および2に再現する。サンプルは、異なるコーティングされた顔料を使用して、全て同じ方法で調製し試験した-そのために、各サンプルにおいて使用されたコーティングされた顔料は、以下のとおりであった:
・「35-1」とラベル付けされたサンプルは、実施例1のコーティングされた顔料を使用して調製し(このサンプルは、以下、実施例27と呼ばれる)、
・「35-2」とラベル付けされたサンプルは、実施例2のコーティングされた顔料を使用して調製し(このサンプルは、以下、実施例28と呼ばれる)、
・「PCU1000」とラベル付けされたサンプルは、耐薬品性の点で市場において最高のAl顔料製品であると説明され(ある程度その光学特性を犠牲にしているが)、TEOSに由来する内側の無機コーティングとアクリレートに基づく外側の有機コーティングを特徴としていると考えられる、Eckartが販売する市販製品PCU 1000 Aluminium Powderを使用して調製し(このサンプルは、以下、実施例29と呼ばれ、比較例である)、および
・「POWDAL8500」とラベル付けされたサンプルは、主にSiO
2に基づき得ると考えられるSchlenkが販売する市販のコーティングされたAl顔料製品POWDAL 8500を使用して調製した(このサンプルは、以下、実施例30と呼ばれ、比較例である)。
【0154】
図1および2に示すサンプルの4つ全てにおいて、滴の配置は、POWDAL 8500を含むサンプルについて示されているのと同じであり、すなわち水酸化ナトリウムの滴を各サンプルの左側に置き、塩酸の滴を右に置いた。それぞれの場合においてコーティングされた顔料は、同等の粒子サイズであった-画像において示されるように、コーティングされた顔料は、実施例27、28、29および30において、それぞれ13.5μm、15.5μm、15μmおよび15μmの粒子サイズ(d
50)を有していたことも留意され得る。
【0155】
結果の点では、実施例29および30についての画像(
図2における)から、予想どおり、PCU 1000製品を使用して調製したサンプルは、酸および塩基の両方の存在下において耐薬品性の点でPOWDAL 8500を使用して調製したサンプルよりも優れるが、また画像の明るさおよび明確さの点ではより劣る光学的外観を有することがわかる。しかしながら、実施例27および28における本発明のコーティングされた顔料を使用して調製された2つのサンプル(
図1における)は、市販製品を使用して調製されたサンプルのいずれよりも著しく良好に機能し、およびこれにもかかわらず、それらはまた、POWDAL 8500を使用して調製されたサンプルのそれと同等の優れた光学的外観を有する。
【0156】
実施例31から34-市販製品とのさらなる比較
本発明をさらに説明し、およびまた実施例1のコーティングされた顔料と市販のコーティングされた顔料PCU 1000(上記の実施例29において論じた)との間の違いを実証するために、両方のコーティングされた顔料を、それぞれがクリアコートポリマー粉末、すなわち、Ganzlin Beschichtungspulver GmbHから入手可能なポリエステル粉末AR-0134-GL440 021 Transparent,PT 910を使用する、上記の「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」の修正版である、3つの異なる試験において比較した。試験後のサンプルの画像を、
図4および5に再現する。それぞれの個々の図において、2つの隣接するサンプルは、同じ方法で調製し、使用するコーティングされた顔料の点でのみ異なった。
図4および5におけるサンプルを調製するために使用した方法は、有意な剪断を適用したかどうかの点で異なり、
図4におけるサンプルは、ブレンダー装置を使用することなく(すなわち有意な剪断を適用していない)ブレンド/混合し、一方
図5におけるサンプルは、ブレンダー装置においてブレンド/混合した(すなわちかなりのせん断を適用した)。実施例1のコーティングされた顔料を使用して調製したサンプルは、
図4および5のそれぞれの左側に表れ、以下、それぞれ実施例31および33と呼ぶ。コーティングされた顔料PCU 1000を使用して調製したサンプルは、
図4および5のそれぞれの右側に表れ、以下、それぞれ実施例32および34と呼ぶ(これらは、比較実施例である)。
【0157】
図4および5に示すサンプルにおいては、滴の配置は、
図3に示されているのと同じであった。それぞれの場合においてコーティングされた顔料が同等の粒子サイズであったことも留意され得る(上記実施例27から30においてすでに報告しているように)。
【0158】
実施例27から30において見られる結果と一致して、実施例31および33のサンプル(実施例1のコーティングされた顔料を使用して調製した)は、耐薬品性の点で一貫して実施例32および34のサンプル(市販のPCU 1000を使用して調製した)と同等またはそれより良好である(サンプルのそれぞれで、優れた結果が1M水酸化ナトリウム(NaOH)を使用する試験の初期段階においてわかる)が、また画像の明るさおよび明確さの点で優れた光学的外観を有することがわかる。
【0159】
実施例35および36-市販製品とのさらなる比較
本発明をさらに説明し、およびまた本発明のコーティングされた顔料と市販のコーティングされた顔料PCU 1000(上記の実施例29において論じた)との間の違いを実証するために、両方のコーティングされた顔料を、上記の「コーティングされた顔料の耐薬品性を測定するための試験方法」に従って行ったさらなる試験において比較し、試験後のサンプルの画像を、
図3に再現する。
図3における2つのサンプルは、同じ方法で調製し、使用したコーティングされた顔料の点でのみ異なった。本発明の実施例(以下、実施例35と呼ぶ)は、実施例1のコーティングされた顔料を使用して調製した。比較実施例(以下、実施例36と呼ぶ)は、PCU 1000でコーティングされた顔料を使用して調製した。
【0160】
実施例27から34において見られる結果と一致して、実施例35のサンプルは、耐薬品性の点で、実施例36のサンプルよりも著しく良好に機能することがわかる。実施例35のサンプルはまた、画像の明るさおよび明確さによって証明されるように、優れた光学的外観を有することがわかる。
【0161】
実施例37および38-市販製品とのさらなる比較
マグネチックスターラーを使用して、9.5gの水性塗料(商品番号74254.XでPlantag Coatingsから入手できる)中に0.5gの顔料を分散させることによって作成した液体コーティングを使用して調製した対応するドローダウンサンプル。これは、(i)顔料として実施例1のコーティングされた顔料(これは、
図6においてMA35-13 74524.Xとラベル付けされたサンプルであり、以下、実施例37と呼ぶ)、および(ii)上記の実施例29において論じた市販のコーティングされた顔料PCU 1000(これは、PCU1000 WCとラベル付けされたサンプルであり、以下、実施例38と呼ぶ)を使用して行った。サンプルは、コーティングされた顔料の同一性の点でのみ異なった。
【0162】
実施例27から36において見られる結果と一致して、実施例37のサンプルは、耐薬品性の点で、実施例38のサンプルよりも著しく良好に機能することがわかる。実施例37のサンプルはまた、画像の明るさおよび明確さによって証明されるように、優れた光学的外観を有することがわかる。
【0163】
実施例39および40-最小発火エネルギー(MIE)試験
まず、実施例39として、上記の実施例15のコーティングされた顔料を、MIE試験に供した。第2に、実施例40として、MIEを、コーティングを上記の実施例15におけるのと同じ方法で、しかし異なるAl基材フレーク、すなわち約10μmのd50を有するものを使用して適用した、コーティングされた顔料について、試験した。両方のコーティングされた顔料は、約7m2/gの表面積を有する基材粒子から調製した。MIEは、BS ISO/IEC 80079-20-2に従って測定した。
【0164】
実施例39および40のコーティングされた顔料は、両方とも10と20mJとの間のMIEを有することが見い出された。これは、例えば、市販のコーティングされた顔料PCU 1000(d50=15μm、MIEは>3および<10mJとして報告されている)およびPCUplus 800(d50=8μm、MIEは>1しかし<3mJとして報告されている)と比べて好ましい。
【0165】
実施例41-ガス化安定性
実施例41Aから41C-加速ガス化試験方法におけるコーティングされた顔料のガス化安定性の測定
金属顔料は、水と反応して水素を生成することができる。例えば、Al顔料は、2Al+6H2O→2Al(OH)3+3H2の式に従って水と反応することができる。該反応は、酸性またはアルカリ性の溶液でより速く進行する。H2の発生の程度は、コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するために使用することができる。この点に関しては、その詳細は以下に続く加速ガス化方法を使用し得る。
【0166】
コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方法
(a)ペースト状の0.5gの顔料を250mlの三角フラスコに量り入れ(量は、不揮発性含有量を指す);
(b)10mlのブチルグリコールを測り取って、それを該ペーストに添加し;
(c)マグネチックスターラーバーをフラスコに入れて、それを29℃のウォーターバスにセットし;
(d)混合物を完全に分散するまで250rpmで撹拌して、電子温度計プローブで分散液の温度をモニターし;
(e)該混合物が完全に分散し29℃で平衡化したら、測定シリンダーを使用して29℃に予熱した50mlの水酸化ナトリウム/ブチルグリコール溶液を該分散液に添加し(該水酸化ナトリウム/ブチルグリコール溶液を調製するために、5.00gの水酸化ナトリウムを1リットルのフラスコに量り入れ、500gの脱イオン水を添加し、次いで5.00gのブチルグリコールを添加し、次いでさらに490gの脱イオン水を添加し、次いで完全に溶解するまで撹拌する);
(f)30mlの水で満たされたバブルカウンターを取り、(すばやく)該バブルカウンターのヘッドをフラスコに取り付け、同時に電子タイマーを開始し;および
(g)水の全てが該バブルカウンターの下部チャンバーから移動したら、タイマーを止める。
【0167】
反応フラスコは、反応中に形成し得る堆積物を除去するために、再利用する前に少量の1モル塩酸で洗浄すべきである(ガラス上の残留物は、将来の結果に影響を与え得る)。
【0168】
実施例41A
反応物:
初期供給: 140gのアルミニウムペースト、ミネラルスピリット中70%(固形分で98g)、d50 8~20μm
第1の層適用: 30gのテトラエチルシリケート(TEOS)
0.2gの3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
第2の層適用: 15gのTEOS
0.5gの3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
表面処理パートA: イソブタノール中の0.8gのアルコールエーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(量は、樹脂の量を指す)
表面処理パートB: 2.7gのオレイン酸
処理:
【0169】
【0170】
実施例41B
コーティングされた顔料は、表面処理パートBとして2.0gのオクチルホスホン酸を使用して、実施例41Aにおけるのと同じ方法で調製した。工程6における濾液は、黄色で、透明なpH8~9であった。生成物の収量は、158gであった。
【0171】
実施例41C
コーティングされた顔料は、表面処理パートAとして1.0gの3-アミノプロピルトリエトキシシランおよび表面処理パートBとして2.0gのオクチルホスホン酸を使用して、実施例41Aにおけるのと同じ方法で調製した。工程6における濾液は、黄色で、透明なpH8~9であった。生成物の収量は、153gであった。
【0172】
実施例41Aから41Cのサンプルは、上で概説した「コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方法」手順に従って試験した。Hydrolan 2156という名前のもとでEckartによって販売されている市販のコーティングされた顔料製品もまた、試験した(比較のため)。サンプルが30mlの水素を生成する時間を記録した。
加速ガス化試験結果:
【0173】
【0174】
実施例41Dおよび41E-拡張ガス化試験方法におけるコーティングされた顔料のガス化安定性の測定
コーティングされた顔料はまた、以下で記載する工程を含む拡張ガス化試験方法に従って、および
図7に示す装置を使用して試験し得る(誤解を避けるために、以下で記載する試験は、本明細書における他の場所で参照されている「コーティングされた顔料のガス化安定性を測定するための試験方法」ではない):
【0175】
拡張ガス化試験方法
10.0gの顔料を、塊を何も含まない滑らかでクリーミーな分散液を作成するためにパレットナイフを使用して400mlビーカー中で10.0gのプロピレングリコールメチルエーテル/1-メトキシ-2-プロパノール(Dowanol PMとして市販)およびプロピレングリコールn-ブチルエーテル(Dowanol PnBとして市販)の1:1混合物に添加する(ブチルグリコールを2つの言及されたエーテルの組合せの可能な代替として使用し得る)。得られた混合物に、(i)ビーカー中で3部のアクリルエマルジョン(Joncryl 537樹脂分散液として市販)を1部の蒸留水に混合し、および(ii)機械式パドルスターラーを使用して速く撹拌することによって作成することができる200gの溶液を添加する。次いで得られた混合物を、マグネチックスターラーを使用して10分間撹拌する。次いで200gの得られた混合物を、塗料が一切首の接合部[ここで、これは、Leddeヘッド(該Leddeヘッドは、水を、ピペットを使用して上部チャンバー中の中央ガラス管を介して下部チャンバーに移すことによって調製でき、該下部チャンバー中の水位は、管の首のすぐ下である)につながる]に付着しないことを確認しながら200mlの円筒形フラスコに添加する。次いでLeddeヘッドのキャップを交換して、ゆるく閉じる。次いでLeddeヘッドおよび(充填した)円筒形フラスコを、52℃に事前設定したオーブンに入れる(別個のオーブン、理想的にはインキュベーターオーブンを使用することが好ましい)。次いで温度を、安定させる-安定温度は、塗料がインキュベーターオーブン中にある場合は2時間、または塗料が対流式オーブン中にある場合は3時間である)。この2(または3)時間の再ゼロ時点で、Leddeヘッドをオーブンから取り外し(熱損失を最小化するために取り外し後オーブンのドアを閉じる)、いくらかのシリコンベースのグリースをテーパーベースに適用する。次いで(第2の)オーブンドアを開き、Leddeヘッドをゆっくりホームをねじることによって円筒形フラスコに接続する(2つの間の良好な密閉を示す、水が下部チャンバーから中央チューブを上って上部チャンバーに向かって/中に移動することに留意されたい)。次いでクイックフィットジョイントクランプを、適用する。次いで上部のスクリューキャップを締めた後、1/4回転緩め直し、わずかな通気を可能にする。次いでオーブンのドアを閉め、温度をさらに10分間安定させる。この後、ドアをすばやく開き、ガスリグを取り外し、Leddeヘッドの上部チャンバー中の移動したいかなる水をもピペットで排出する。次いでキャップを(緩く)交換し、リグをオーブンに戻し、そこからガスの発生を測定する。目視検査は、塗料の温度を乱すことなく、インキュベーターの内部ガラスドアを通して行うことができる。最終的なガス発生は、Leddeヘッドキャップを緩め、移動した水を上部チャンバーから事前に風袋引きされたビーカーにピペットで移すことによって測定することができる。取り出した水の重量は、mlで表す。
【0176】
実施例41Dおよび41E-拡張ガス化試験方法におけるコーティングされたPVD顔料のガス化安定性の測定
実施例41D
反応物:
初期供給: 170.0gのアルミニウムペースト、1-メトキシ-2-プロパノール中10%(固形分17g)、d50 6~15μm
第1の層適用: 6.0gのテトラエチルシリケート(TEOS)
0.2gの3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
第2の層適用: 3gのTEOS
0.4gの3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
表面処理パートA: イソブタノール中の0.7gのアルコールエーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(量は、樹脂の量を指す)
表面処理パートB: 0.8gのオクチルホスホン酸
処理:
【0177】
【0178】
実施例41E
コーティングされた顔料は、表面処理パートAとして0.4gの3-アミノプロピルトリエトキシシランを使用して、実施例41Dにおけるのと同じ方法で調製した。工程6における濾液は、黄色で、透明なpH8~9であった。生成物の収量は、180gであった。
【0179】
実施例41Dおよび41Eのサンプルは、上で概説した拡張ガス化試験手順に従って試験した。HYDROSHINE WS3003の商品名のもとでEckartによって販売されている市販のコーティングされた顔料製品もまた、試験した(比較のため)。5および21日後の結果を、以下に記載する。
【0180】