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特許7584436PS/DVBコポリマー粒子上に親水性表面を生成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】PS/DVBコポリマー粒子上に親水性表面を生成する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/285 20060101AFI20241108BHJP
   B01J 39/04 20170101ALI20241108BHJP
   B01J 41/04 20170101ALI20241108BHJP
   C08J 7/12 20060101ALI20241108BHJP
   C08F 8/06 20060101ALI20241108BHJP
   C08F 8/30 20060101ALI20241108BHJP
   C08F 8/08 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B01J20/285 M
B01J39/04
B01J41/04
C08J7/12 Z CET
C08F8/06
C08F8/30
C08F8/08
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021559918
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2020059908
(87)【国際公開番号】W WO2020208026
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】19168303.6
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515090684
【氏名又は名称】メトローム・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】METROHM AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾイベルト,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】トリップ,ヨナタン・ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】アッシェリマン,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】オット,ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ブラント,バスティアン
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-006386(JP,A)
【文献】特開2002-249517(JP,A)
【文献】特表平04-505968(JP,A)
【文献】特開平06-023280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00- 20/281
20/30- 20/34
39/00- 49/90
C08J 7/00- 7/02
7/12- 7/18
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析または分取分離プロセスで固定相として使用するためのポリマー支持材料を修飾する方法であって、
a.少なくとも2つのビニルまたはアリル置換基を有する芳香族炭化水素化合物から少なくとも部分的に形成された、ポリマー担体材料を用意するステップと、
b.
b.1 ポリマー担体材料の酸化処理ステップ、およびその後の
b.2 ステップb.1の反応生成物の還元または加水分解処理ステップ
を含むプロセスにより、ポリマー支持材料上/中にヒドロキシ基を生成するステップと、
c.ステップb.2の生成物を、
- ヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基、ならびに
- アミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基
を含む多官能性化合物と反応させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップa、bおよびcを含み、ステップcの後にステップdが続き:
ステップdは、
d.1
- ヒドロキシ基を有する多官能性化合物との反応、または
- 加水分解、または
- それらの組み合わせ
による、ステップcで導入された前記第2の官能基の反応により、ヒドロキシ基を導入または生成するステップと、
d.2 ステップd.1の生成物を、
- ヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基、ならびに
- アミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基
を含む多官能性化合物と反応させるステップと
を含むコーティングサイクルを数回実行するステップであり、
コーティングサイクルの数が~20の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップa、bおよびcを含む請求項1に記載の方法、または請求項2に記載の方法であって、
e.ステップcまたはd.2からの反応生成物にイオン交換基を導入するステップ
をさらに含む、方法。
【請求項4】
少なくとも2つのビニルまたはアリル置換基を有する芳香族炭化水素化合物から少なくとも部分的に形成された、ステップaにおける前記ポリマー担体材料が、さらに
- エチルビニルベンゼン、
- 酢酸ビニル、
- スチレン、および
- それらの組み合わせ
からなる群から選択されるモノマーから部分的に形成されることを特徴とし、
少なくとも2つのビニルまたはアリル置換基を有する芳香族炭化水素化合物の割合は、少なくとも50重量%である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップb.1における前記酸化処理が、過酸による処理、KMnOによる処理、酸素プラズマによる処理、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基ならびにアミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基を含む、ステップcで使用される前記多官能性化合物が、エピハロヒドリンであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基ならびにアミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基を含む、ステップcで使用される前記多官能性化合物が、スペーサー分子である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基ならびにアミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基を含む、ステップd.2で使用される前記多官能性化合物が、エピハロヒドリンまたはスペーサー分子であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングサイクルの数が~10の間であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
ステップcまたはd.2の化合物を、第5主族の有機元素化合物と反応させることにより、前記イオン交換基が導入されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
ステップeの後に、アルカリ溶液中で、イオン交換基を備えた前記ポリマー支持材料を加熱することを含むステップfが続くことを特徴とする、請求項3または10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法によって得られる、分析または分取分離プロセスにおいて固定相として使用するための修飾ポリマー支持材料であって、ステップaで用意される前記ポリマー担体材料は、BJHモデルの窒素吸着によって測定可能な1~50nmの平均細孔半径を有する、修飾ポリマー支持材料
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法によって得られる、分析または分取分離プロセスにおいて固定相として使用するための修飾ポリマー支持材料であって、
ステップaで用意される前記ポリマー担体材料が、疎水性でありかつミクロポーラスまたはメソポーラスのいずれかである、修飾ポリマー支持材料。
【請求項14】
ステップaで用意される前記ポリマー担体材料が、
- 少なくとも2つのビニルまたはアリル置換基を有する芳香族炭化水素化合物由来のモノマー単位、
- エチルビニルベンゼン由来のモノマー単位、
- スチレン由来のモノマー単位、
- それらの組み合わせ
からなる群から選択されるモノマー単位から実質的に完全に構成される、請求項12または13に記載の修飾ポリマー支持材料。
【請求項15】
ステップaで用意される前記ポリマー担体材料が、BETモデルの窒素吸着によって測定可能な80~1000m/gの比表面積を有する、請求項12に記載の修飾ポリマー支持材料。
【請求項16】
ステップb.2に従って提供される前記ポリマー支持材料が、最大220barの圧力で圧力安定である、請求項12に記載の修飾ポリマー支持材料。
【請求項17】
粒子の形態である、請求項12に記載の修飾ポリマー支持材料。
【請求項18】
0~14のpH範囲で安定である、請求項12に記載の修飾ポリマー支持材料。
【請求項19】
請求項12から18のいずれか1項に記載の修飾ポリマー支持材料で充填されたクロマトグラフィーカラム。
【請求項20】
分析物を含む溶液が、請求項12から18のいずれか1項に記載の修飾ポリマー支持材料と接触することを特徴とする、分析物のクロマトグラフィー分離の方法。
【請求項21】
請求項12から18のいずれか1項に記載の、または請求項1から11のいずれか1項に記載の方法によって得られる前記ポリマー支持材料の使用であって、分析物の分析または分取分離のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析または分取分離プロセスにおいて固定相として使用するためのポリマー支持材料を修飾するためのプロセスに関し、このプロセスは、少なくとも2つのビニルまたはアリル置換基を有する芳香族炭化水素化合物から少なくとも部分的に形成されたポリマー支持材料を用意するステップと、ポリマー支持材料の酸化処理およびその後の反応生成物の還元または加水分解処理を含むプロセスによって、ポリマー支持材料上/中にヒドロキシ基を生成するステップと、先行するステップの生成物を多官能性化合物と反応させるステップとを含む。さらに本発明は、分析または分取分離プロセス、特にクロマトグラフィープロセスにおいて固定相として使用するための、本発明によるプロセスによって調製されるポリマー支持材料に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換体は通常、それらがイオンを保持できるようにそれらの表面に電荷を担持する粒子状材料で構成されている。陰イオン交換体の場合、これらはしばしばカチオン性アンモニウム化合物であるが、ホスホニウムおよびアルソニウムイオンも公知である。交換基はモノカチオン性である。純粋な静電相互作用では、保持時間はクーロンの法則によって求められる。これによると、遅滞した陰イオンの電荷のみが、その保持時間に影響を与えることになる。
【0003】
しかし、水溶液中のイオンクロマトグラフィーでは、保持挙動に影響を与える他の要因、例えば陰イオンの水和および交換基の水和が確認され得る。さらに、関与するイオンの分極率、ならびに分析物と交換体基材との間のより弱い二次相互作用も一因となる。交換基を担持するベースポリマーの親水性もその水和に影響を与えるため、その交換基のための担体材料を修飾することにより、イオン交換体の保持挙動を変えることができる。カチオン性基の直接置換も保持挙動に影響を及ぼす。
【0004】
当該技術分野には、イオン交換クロマトグラフィーのための粒子の親水性を調整するためのアプローチがすでに含まれている。均衡の取れた容量、高い理論段数、またはイオン交換材料の化学的不活性などの他の望ましいパラメータについても、選択的に説明する。
【0005】
US20050181224では、交換基を含む架橋層が、ジエポキシドおよびアミンのサイクル反応によって、スルホン化された親水性担体粒子上に堆積される。サイクルごとに、イオン交換体の容量が増加する。親水性は基本的に保証される。しかしながら、エポキシ/アミンの化学反応が交互になっているため、容量から独立してさらなる親水性を得ることはできない。
【0006】
EP3248678では、多孔質ジビニルベンゼン粒子を修飾多糖類(グリシジルフェニルエーテルと反応させたアガロース)でコーティングし、次いで修飾多糖類を多官能性架橋剤(例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル)で架橋して、表面にヒドロキシル基を有する高分子を形成する。その後、基材をジエチルアミノエチルクロリド塩酸塩でセットし、実際のイオン交換基を得る。この出願はまた、安定性(破断強度)が向上した親水性イオン交換粒子を探究している。粒子と最初にゲル状であるコーティングとの間に作用する純粋な吸着力のために、基材が不安定であることも判明している。
【0007】
EP1217012では、疎水性ビニルアルコールエステルポリマーから開始する。まず、含まれているエステルが加水分解され、アルコール基が解放される。ポリマーは親水性になる。OH基はジエポキシド、次いでアミンと反応して、基材をコーティングする。最初のステップでベースポリマーにより広範囲の加水分解を受けさせることにより、親水性をさらに増大させることができる。しかしながら、これにより粒子の機械的安定性が失われる。望ましくない膨潤挙動が発生する可能性がある。
【0008】
Caglayanら(J Sep Sci 2006、第29巻、940)による刊行物では、異なる組成のポリ(酢酸ビニル-co-ジビニルベンゼン)の粒子基材を使用することにより、理論的土壌数(theoretical soil number)、細孔径および表面膨張などの、言及されたパラメータのいくつかを最適化する試みがなされている。当該刊行論文によると、酢酸ビニルの量が増加すると(したがって、加水分解された粒子のOH基の量が増加すると)、基材が充填されたカラムが増加した流量にさらされる際、還流圧力が急激に増加する。この望ましくない戻り圧力は、粒子の機械的安定性の欠如に起因し、分離プロセス中に変形してしまう。
【0009】
US5503933は、疎水性表面に共有結合された親水性コーティングおよびそれらの調製方法を開示している。コーティングされた表面を形成するために、不飽和基を含む疎水性ドメインおよび親水性ドメインを備える化合物が提供されている。不飽和基を有する疎水性表面も提供されている。化合物の分子は疎水性表面に吸着され、化合物の分子の疎水性ドメインの不飽和基は、次いでフリーラジカル反応によって疎水性表面の不飽和基に共有結合する。一実施形態では、親水性コーティングは、ジビニルベンゼン架橋ポリスチレンに共有結合することができる。しかしながら、生成した粒子は高分子の分離にのみ好適である。他のクロマトグラフィー技術、特にイオンクロマトグラフィーで使用する場合、粒子の直径が大きいため、粒子の理論段数は不十分である。粒径が減少すると、マクロポーラス材料の機械的耐荷重容量は、そのようなクロマトグラフィープロセスで生じる圧力に対して十分ではなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、先行技術における上記の不利な点を克服することである。現在、ポリマー基材表面の親水性を、ポリマーコア基材の酸素含有量から独立して調整することができ、機械的に安定で堅牢な粒子が得られるようにポリマー基材をコーティングできる方法が欠如している。同時に、それに基づくイオン交換基材は、化学的に大部分が不活性であるべきであり、親水性と容量、または選択性と容量を互いに独立して構成することが可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を有するプロセスによって解決される。これは、分析または分取分離プロセスにおいて固定相として使用するためのポリマー支持材料を修飾するプロセスに関する。さらに本発明は、分析または分取分離プロセス、特にクロマトグラフィープロセスにおいて固定相として使用するための、本発明による方法に従って調製されるポリマー支持材料に関する。本発明は、本発明によるポリマー支持材料で充填されたクロマトグラフィーカラム、本発明によるポリマー支持材料を使用して分析物を分離するための方法、ならびに分析物の分析および分取分離のための本発明によるポリマー支持材料の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この方法は、少なくとも2つのビニルまたはアリル置換基を有する芳香族炭化水素化合物から少なくとも部分的に形成され、好ましくはジビニルベンゼンモノマーから少なくとも部分的に形成されたポリマー支持材料を用意するステップ(ステップa)と;ポリマー支持材料を酸化的に処理するステップ(ステップb.1)と、それに次いでステップb.1の反応生成物を還元または加水分解処理するステップ(ステップb.2)とを含むプロセスにより、ポリマー支持材料上/中にヒドロキシ基を生成するステップと;任意選択で、ステップb.2の生成物を、多官能性化合物、特にヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基、好ましくはハロゲン基、ならびにアミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基、好ましくはエポキシド基を有する化合物と反応させるステップ(ステップc)とを含む。
【0013】
言うまでもなく、アミンと反応する官能基は、第5主族の他の有機元素化合物、すなわちアルシンまたはホスフィンと同時に反応するか、または反応する可能性がある。
【0014】
以下でさらに説明するように、特に本発明によるプロセスに関して、本発明によるステップは、ポリマー支持材料表面の酸素含有量に影響を与える。したがって、ポリマー支持材料表面の親水性は、ポリマー支持コア基材中の酸素含有量からは独立している。
【0015】
ステップaで用意されるポリマー担体材料は、典型的には粒子として、好ましくは球形粒子として、特に好ましくは1~50μmの平均粒子径(中央値)を有する球形粒子として、より一層好ましくは2~25μmの平均粒子径、特に好ましくは3~9μmの平均粒子径を有する球形粒子として用意される。しかしながら、他のポリマー支持材料、特に膜またはモノリスの形態のポリマー支持材料も考えられる。
【0016】
ポリマー支持材料の表面の酸素含有量は、最初の酸化および還元または加水分解によって増加する。修飾によって、検出可能な酸素含有量を有しないコアポリマー支持材料上/中の酸素原子を発生させることもできる。増加した酸素含有量は、二次相互作用の性質および表出、特に生成するポリマー支持材料の親水性に影響を与える。さらに、最初の酸化および還元/加水分解に続く一連のステップを通じて、容量は表面の酸素含有量から独立して調整することができる。
【0017】
ポリマー担体材料の表面またはポリマー担体材料表面とは、本明細書では特にポリマー担体材料構造の溶液接触可能な外面、同様にこの外面に直接隣接する1~30nmの層を意味し、溶液接触可能な外面は、例えば、多孔質構造の微細構造上に部分的に配置され得る。特に、多孔質または非多孔質構造のポリマー担体材料粒子の溶液接触可能な外面を意味する。
【0018】
化学的および機械的安定性への最初の寄与は、ポリマー担体材料とコーティングとの間の共有結合によってなされる。これは、純粋な静電相互作用によって基材にラテックス粒子、したがって交換基が保持されるラテックス系イオン交換体の状況とは対照的である。共有結合により、高い化学的不活性も保証される。機械的安定性への第2の寄与は、コアポリマー支持材料が、少なくとも部分的に少なくとも2つのビニルまたはアリル置換基を有する芳香族炭化水素化合物から、好ましくは少なくとも部分的にジビニルベンゼンモノマーから形成されるという事実によってなされる。このコアポリマー支持材料の安定性は、ステップb.1およびb.2の影響を受けない。コアポリマー支持材料は、好ましくは単分散である。
【0019】
ステップc、すなわちステップb.2の生成物と多官能性化合物との反応、特にヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基ならびにアミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基を有する化合物との反応は、任意である。このステップを省略した場合、粒子は、例えばサイズ排除クロマトグラフィーでの使用に好適である。
【0020】
特に、本発明に従って修飾されたポリマー支持材料に基づく陰イオン交換クロマトグラフィーまたは陽イオン交換クロマトグラフィーで使用するためのイオン交換材料の調製を以下に記載する。ただし、粒子の使用は決してそれに限定されない。粒子は、他の分析および分取分離法、例えば他の吸着クロマトグラフィー法、HILICクロマトグラフィー(親水性相互作用液体クロマトグラフィー)、逆相クロマトグラフィー、固相抽出などでも使用できる。
【0021】
好ましい実施形態では、この方法は、上記のステップa、bおよびc、ならびにステップcに続くさらなるステップ、すなわち数回のコーティングサイクル(ステップd)を実施するステップを含む。ステップdの1回のコーティングサイクルは、アミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する第2の官能基、好ましくはステップcで導入されたエポキシド基を、ヒドロキシ基を有する多官能性化合物、特にポリオールと反応させることによって、または加水分解もしくはそれらの組み合わせによって、ヒドロキシ基を導入または生成するステップ(ステップd.1)と;ステップd.1の生成物を、多官能性化合物、特に、ヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基、好ましくはハロゲン基、ならびにアミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基、好ましくはエポキシド基を有する化合物と反応させるステップ(ステップd.2)とを含む。コーティングサイクルの数は0~20の間である。
【0022】
コーティングサイクルの数が少なくとも2である場合、最初の繰り返し以降のヒドロキシル基の導入または生成は、明らかに、ステップcで導入された官能基にもはや関係しないか、少なくとも排他的に関係しないが、主に、ステップd.2で導入された対応する官能基に関係する。これは、ステップd.1で第1のコーティングサイクルが実行される際に、ステップcからの第2の官能基が実質的に完全に反応するように条件が選択される場合に特に当てはまる。
【0023】
コーティングサイクルの数を増やすことにより、ポリマー支持材料の表面の酸素含有量をさらに増加させることができ、ポリマー支持材料に基づくイオン交換材料の親水性を増大させることができる。適切な程度の親水性を選択することにより、イオン交換材料と高度に水和したイオン(フッ化物など)との相互作用を高め、水和が非常に弱いイオン(臭素酸塩、硝酸塩、塩素酸塩など)との相互作用を低減することができる。このようにして、例えば、臭素酸塩および塩化物の保持順序に影響を与えることができるため、クロマトグラムで臭素酸塩が塩化物の前に定量的に現れるようになる。さらに、特に炭酸塩溶離液を使用する場合にも、フッ化物が注入ピークから分離することを保証できる。
【0024】
さらに、本発明による方法により、7種の標準陰イオン(フッ化物、塩化物、亜硝酸塩、臭化物、硝酸塩、リン酸塩および硫酸塩)について、信号の対称性が高い(非対称性<1.5)、カラムメーターあたり>50,000TP/m理論段の段数を有するイオン交換材料を得ることができる。上記のすべてのイオンは、全体的に短い総クロマトグラフィー時間で、クロマトグラムで互いに基線分離されて現れる。
【0025】
粒子の高い堅牢性の利点は、上記の方法によって得られたポリマー支持材料が充填されたカラムが圧力流試験に供される場合に特に明白である。このような圧力試験では、カラム内の圧力発生は、連続的に増加する流量の関数として求められる。本発明によるカラムでは、圧力は流量に線形に依存する。これは、酢酸ビニル含有量の高い親水性pDVB基材を充填した従来のカラムで得られる結果とは対照的である。従来のカラムでは、圧力は流量の関数として線形以上に増加する。例えば、関数の双曲線勾配が生じる可能性がある。これは例えば、冒頭で引用したCaglayanらによる刊行物(J Sep Sci 2006、第29巻、940)からもたらされる。
【0026】
圧力試験を実施した後の本発明によるカラムの性能も、従来のカラムと比較して良好である。一方では、従来のカラムと比較して、圧力試験を実施した後、カラムはカラム全体の圧力損失のわずかな増加しか示さない。さらに、理論上の底部の数は、本発明によるカラムへの負荷試験の過程で、従来のカラムの場合よりもはるかに少ない程度で減少する(Caglayanら、J Sep Sci 2006、第29巻、940)。高流量を使用する場合でも圧力比および段数を維持することで、効率的な高性能分離プロセスが可能になる。
【0027】
次いでこの方法は、ステップcまたはd.2の反応生成物にイオン交換基を導入するステップeをさらに含み得る。ステップeによって、ポリマー支持材料に関連する利点を実現するイオン交換材料が、ポリマー支持材料から生成される。親水性と容量、または選択性と容量は、本発明によるこのイオン交換材料において独立して調整可能である。本発明によるイオン交換材料はまた、高い理論的土壌数(number of theoretical soil)を有する。
【0028】
イオン交換基は、ポリマー支持材料表面上の荷電基、特に、荷電アミン、アルシンまたはホスフィン基であると理解される。
【0029】
少なくとも2つのビニルまたはアリル置換基を有する芳香族炭化水素化合物から少なくとも部分的に形成されるポリマー支持材料によって、ポリマー支持材料は、少なくとも2つのビニルまたはアリル置換基を有する少なくとも芳香族炭化水素化合物を含む重合反応によって調製可能であることが本発明の文脈において理解される。好ましくは、ポリマー支持材料は、ジビニルベンゼンとの重合反応によって形成される。ただし、トリビニルベンゼンおよびジビニルナフタレンならびに同等であることが当業者に公知の化合物との反応も考えられる。
【0030】
このプロセスは、少なくとも2つのビニルまたはアリル置換基を有する芳香族炭化水素化合物から少なくとも部分的に形成されるステップaのポリマー担体材料が、エチルビニルベンゼン、酢酸ビニル、スチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーからさらに部分的に形成されることを特徴とすることができる。これに関して、少なくとも2つのビニルまたはアリル置換基を有する芳香族炭化水素化合物の割合は、好ましくは少なくとも50重量%である。例えば、ステップaのポリマー支持材料は、少なくとも50重量%のジビニルベンゼン単位を含んでもよい。そのようなポリマー支持材料は、細孔構造に関して有利な特性を有し、特に、その後の表面修飾で利用可能な多数の二重結合を有する。
【0031】
このプロセスは、ステップb.1の酸化処理が、好ましくはメタクロロ過安息香酸(m-CPBA)、ペルオキシギ酸、ペルオキシ酢酸、ペルオキシトリフルオロ酢酸からなる群から選択される過酸による処理、KMnOによる処理、酸素プラズマによる処理またはそれらの組み合わせであることを特徴とすることができる。ポリマーを過酸にさらすと、存在する任意の二重結合が酸化され、その後の還元または加水分解に利用できるようになる。言うまでもなく、この効果は原則として、当業者に公知の他の酸化プロセス、例えばオゾン分解によっても達成することができる。
【0032】
ステップb.1で過酸を使用する場合は特に好ましい。過酸の利点は、例えばプラズマ処理よりも高い酸素含有量を達成できることである。酸素プラズマでは2.0%の酸素含有量を達成できるが、例えばmCPBAでは、元素分析で測定可能な3.2%の酸素含有量が達成できる。過酸を使用する場合は、懸濁液中のポリマーに添加するか、酸および過酸化水素からインサイチュで形成することができる。好ましくは、固体として取り扱うのが複雑ではないので、m-CPBAが懸濁コアポリマー支持材料、例えばPS/DVBポリマー支持材料に添加される。
【0033】
好ましい実施形態では、酸化ステップb.1からの反応生成物の還元処理は、極性結合を還元するための試薬、好ましくは金属水素化物を用いて、ステップb.2で実行される。これは、例えばNaBH、BH、LAH、NaH、CaHであり得る。水素化物の使用には、溶解した試薬が粒子の細孔に浸透できるという利点がある。これは、例えば活性炭上のパラジウムでは不可能である。エポキシドをヒドロキシレンに変換できる塩酸による加水分解(実施例3を参照)と比較すると、金属水素化物による還元は、カルボニルおよびカルボキシルをヒドロキシレンに変換することもできる。還元は、形成された酸化生成物をアルコールに変換する。好ましくは、ジエチルエーテル中の水素化アルミニウムリチウムが使用される。一実施形態では、乾燥ジエチルエーテル中の1~20%w/vのポリマー懸濁液が提示され、それに5~100%w/wのポリマー乾燥重量の水素化アルミニウムリチウムが添加される。特に好ましくは、乾燥ジエチルエーテル中の5~15%w/vのポリマー懸濁液であり、それに5~20%w/wのポリマー乾燥重量の水素化アルミニウムリチウムが添加される。25~70℃の温度、特に好ましくはジエチルエーテルの沸騰温度、および1分~72時間、特に好ましくは3時間~48時間の反応時間を選択することができる。
【0034】
ここで上記のプロセスによってポリマー支持体表面に生成されたOH基は、ステップcでの修飾に十分な数で利用可能となる。還元条件の代替として、加水分解条件を選択することもできる。
【0035】
ステップb.2の反応生成物は、多官能性化合物、特にヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基、好ましくはハロゲン基、ならびにアミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基、好ましくはエポキシド基を有する化合物と反応する。
【0036】
ヒドロキシ基と反応する第1の官能基は、OH基またはアミン基、例えばハロカーボン、エポキシド、トシレート、硫化メチル、またはそれらの混合物によって求核的に攻撃可能な構造であり得る。アミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する第2の官能基は、例えばエポキシドであり得る。好ましくは、ステップcの多官能性化合物はエピクロロヒドリン(ECH)である。例えば、基材はエピクロロヒドリンに懸濁され得る(好ましくはECH中で5~30%w/vの固形分、より好ましくはECH中で10~20%w/vの固形分)。次いで、水性アルカリおよびアルカリ土類金属水酸化物などの塩基と反応させることができる。この目的のために、NaOHの水溶液およびKOHの水溶液、特に好ましくは、ECH:NaOH(aq)=1:(0.1~10)の比率の10~50%w/wNaOHが好適であることが証明された。特に好ましくは、反応は、相間移動触媒として第四級アンモニウム塩を使用して実行される。代替として、ECHに懸濁された基材を第四級水酸化アンモニウムと反応させることができる。水酸化テトラメチルアンモニウムがこの目的に好適であることがわかった。好ましくは、ECHと同量のジメチルスルホキシド(DMSO)が、上記のように調製されたECH中のポリマーの懸濁液に添加され、好ましくは、濃縮水溶液中の1~10mmolの間の水酸化テトラメチルアンモニウムが、使用されるポリマー1グラムあたりで添加され、より好ましくは2~5mmolの間の水酸化テトラメチルアンモニウム(aq)である。
【0037】
しかしながら、ヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基、ならびにアミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基を含むステップcで使用される多官能性化合物も、スペーサー分子であり得る。
【0038】
本出願の文脈において、スペーサー分子(略してスペーサー)は、上記の少なくとも2つの官能基を有する分子を意味し、分子は、修飾されたポリマー担体材料の表面と導入されるイオン交換基との間に少なくとも3個の原子、好ましくは3~20個の原子の間隔を保証する。スペーサー分子は、完成したイオン交換材料において、一方では修飾ポリマー支持材料に結合し、他方では交換基に結合する。スペーサー分子の官能基は、OH基またはアミン基、例えばハロ炭化水素、エポキシド、トシレート、硫化メチルまたはそれらの混合物によって求核的に攻撃され得る構造であってもよい。スペーサー原子は炭素鎖でもよいが、ヘテロ原子、例えばエーテル基またはチオエーテルも含んでもよい。スペーサー分子は、基材とイオン交換基との間に間隔を提供する。スペーサーの機能は、イオンが基材と相互作用するのを防止することである。これにより、クロマトグラムの不要なピーク広がりが打ち消される。エーテル基を有する間隔を空けた炭素鎖は、それらのより高い親水性のために好ましい。特に好ましくは、スペーサーは、アミン、ホスフィン、アルシンおよび/またはヒドロキシ基と反応することができるグリシジル基を有する。特に好ましくは、スペーサー分子の1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルである。
【0039】
ステップd.1において、ヒドロキシ基を含む多官能性化合物との反応によりステップc(または任意選択でステップd.2)で導入された第2の官能基の反応によってヒドロキシ基が導入される場合、ジオールの使用が好ましい。ブタンジオールが特に好ましい。ジオールは溶媒および反応物として使用でき、反応は高温での塩基触媒作用下で行うことができる。特に好ましくは、60~160℃で1~48時間の0.1~1mol/LのKOHである。最も好ましくは、温度は100~130℃であり、反応時間は3~36時間である。このような化合物の添加により、先に基材に結合したエポキシドは、OH基を含む鎖に変換される。
【0040】
一実施形態では、ヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基ならびにアミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基を有するステップd.2で使用される多官能性化合物は、エピハロヒドリン、好ましくはエピクロロヒドリンである。これに関して、担体ポリマー粒子は、最初にエピクロロヒドリンに懸濁され得る(好ましくはECH中で5~30%w/vの固形分、より好ましくはECH中で10~30%w/vの固形分)。その後、懸濁液は、アルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物の水溶液などの塩基と反応させることができる。この目的のために、NaOHの水溶液およびKOHの水溶液、特に好ましくは、ECH:NaOH(aq)=1:(0.1~10)の比率の10~50%w/wNaOHが好適であることが証明された。特に好ましくは、反応は、相間移動触媒として第四級アンモニウム塩を使用して実行される。
【0041】
しかしながらスペーサー分子は、代替としてステップd.2で使用されてもよい。少なくともステップd.2のコーティングサイクルの最後の実行においてスペーサー分子が使用される場合、特に好ましい。
【0042】
本発明の好ましい特徴は、ともにコーティングサイクルとも称されるステップd.1およびd.2を繰り返すことができることである。コーティングサイクルの数は、0~20の間、好ましくは0~10の間であり得る。しかしながらコーティングサイクルの数は、0~5の間、より好ましくは1~3の間であることが好ましい。
【0043】
ポリマー担体材料の親水性は、サイクルごとに増加する。適切なサイクル数を選択することにより、親水性は分離すべき混合物に最適に調整できる。特に、適切な程度の親水性を選択することにより、基材と強水和イオン(フッ化物など)との親水性相互作用を高めることができ、弱水和イオン(臭素酸塩、硝酸塩、塩素酸塩など)との相互作用を低減することができる。これは、保持順序に影響を与え得る。また、各層の生成は、一方では塩素酸塩または臭素酸塩などの分極性イオンと、他方では基材との間の二次相互作用を低減する。このような二次相互作用によって観察されるシグナルピークのテーリングは大幅に減少するため、分極性イオンでさえ対称的に溶出する。交換材料の総容量は減少する。
【0044】
好ましい実施形態では、スペーサー分子、特にジエポキシド、好ましくはブタンジオールジグリシジルエーテルが、コーティングサイクルdの最終実行におけるステップd.2で多官能性化合物として使用される。スペーサー分子の利点は、ステップcに関連して上記に記載した。スペーサー分子の反応は、極性溶媒を反応混合物に添加することで好ましくは実行され、特に、好ましくはジグリシジルエーテルに対してDMSOを1:(0.1~5)の体積比で、より好ましくは1:(0.5~1.5)の比で添加する。また、相間移動触媒としての第四級アンモニウム塩の使用が好ましく、特に好ましくは、反応混合物の総体積に基づいて、好ましくは1~100mmol/L、特に好ましくは10~50mmol/Lの濃度範囲の臭化テトラブチルアンモニウムである。アルカリおよびアルカリ土類金属水酸化物ならびに炭酸塩を塩基として使用することができ、好ましくはNaOHの水溶液およびKOHの水溶液、特に好ましくは0.1~5mol/Lの濃度範囲のNaOHであり、最も好ましくは0.1~1mol/Lの濃度範囲である。ジグリシジルエーテルに対する体積比は、1:(0.1~5)、好ましくは1:(0.5~1.5)である。好ましい反応温度は0~50℃、特に好ましくは20~30℃であり、好ましい反応時間は2~40時間、特に好ましくは15~25時間である。
【0045】
好ましい実施形態では、イオン交換基は、ステップcまたはd.2の化合物を第5主族の有機元素化合物、好ましくはアミン、特に好ましくは第三級アミンと反応させることによって導入される。ただし、イオン交換基は、アミンの代わりにホスフィンまたはアルシンを含んでもよい。1ラジカルあたり1~10個のC原子の1~3個の有機ラジカルを有するアミンを含む化合物(これには環状化合物も含まれる)が、特に好適であることが証明された。環状化合物は置換基を有してもよい。好適な化合物の例としては、窒素含有複素環、例えば炭化水素またはヒドロキシ置換基を伴うまたは伴わないピリジン、一置換アルキルピロリジン、一置換アルキルピペリジンまたは二置換アルキルピペラジンが挙げられる。アミン化合物の炭化水素ラジカルはまた、ヘテロ原子、例えば酸素もしくは硫黄原子、または他の置換基を有してもよい。
【0046】
ただし、陽イオン交換クロマトグラフィーまたはHILIC法に好適な化合物を導入することも考えられる。好適なカチオン性官能基としては、スルホン酸、カルボン酸、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、導入される化合物はまた、例えばアミノ酸が導入される場合、複数の官能基を有してもよい。
【0047】
例えば、カチオン交換中心を生成するために、先行のステップでエポキシ化されたポリマーを、水および極性溶媒、好ましくはDMSOの混合物に懸濁することができ、好ましいアミンを添加することができる。好ましい反応時間は、20~70℃の好ましい温度で0.5~48時間の間である。
【0048】
イオン交換基を導入するステップeの後に、アルカリ溶液中で、イオン交換基を備えたポリマー支持材料を加熱するステップを含むさらなるステップfが続くことが好ましい。これにより、先行するステップからのイオン交換材料の選択性と容量を調整できる。この処理を、以下、除去と呼ぶ。この処理は、特に交換基を備えた粒子をアルカリ水溶液中で加熱することからなり、特に好ましくは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物または炭酸塩の水溶液、例えば水酸化ナトリウム溶液中で加熱する。NaOHの好ましい濃度は、0.1~5mol/Lの塩基の範囲であり、0.2~2mol/Lの塩基が特に好ましい。反応温度は20~100℃であり得、特に好ましくは90~100℃であり、処理時間は0.1~150時間、特に好ましくは2~6時間である。
【0049】
除去ステップは、基材と個々のイオンとの相互作用の相対強度を変化させる。特に、分極性分析物との二次相互作用を低減することができる。このような二次相互作用によって観察されるシグナルピークのテーリングが減少するため、分極性イオンも対称的に溶出する。同時に、カラムの静電相互作用容量も除去後に減少し、イオン交換材料の総容量が減少する。
【0050】
本発明の別の態様は、上記に説明したステップ、少なくともステップa、bおよびcを含むプロセスによって得られる、分析または分取分離プロセス、特にクロマトグラフィープロセスにおいて固定相として使用するためのポリマー支持材料に関する。
【0051】
本発明の別の態様は、特に、上記に説明したステップ、少なくともステップaおよびb、好ましくは少なくともステップaおよびbおよびcを含むプロセスによって得られる、分析または分取分離プロセス、クロマトグラフィープロセスにおいて固定相として使用するためのポリマー支持材料であって、ステップaで用意されるポリマー支持材料が、疎水性でありかつミクロポーラスまたはメソポーラスであるポリマー支持材料に関する。疎水性とは、ポリマー支持材料が非極性であり、すなわち>0.2Dの双極子モーメントを持つモノマー単位を有しないことが本明細書では理解される。ミクロポーラスまたはメソポーラスとは、ポリマー支持材料が最大50nmの平均細孔径を有することが本明細書では理解される。
【0052】
本発明の別の態様は、方法が少なくともステップa、b、cおよびeを含む場合、イオン交換クロマトグラフィーにおいて固定相として使用するための修飾ポリマー支持材料に関する。
【0053】
このようにして得られる修飾ポリマー支持材料は、
- それぞれの場合において最大O含有量の値から開始して、少なくとも20%の差異、好ましくは少なくとも50%の差異、特に好ましくは100%の差異が、X線光電子分光法XPSによってポリマー支持材料を通る断面において検出可能であることと、
- 酸素含有基が、コアポリマー支持材料に共有結合していることと、
- ポリマー支持材料は機械的に安定しているので、ポリマー支持材料が充填されたカラム全体の圧力損失は、増加した流量の関数として線形にのみ増加することと、
- ポリマー担体材料は、中性pHでは電荷を帯びないことと、
- ポリマー担体材料は、2%未満の窒素含有量を有することとを特徴とする。
【0054】
特に、修飾されたポリマー担体材料は、コアよりも表面でより高い酸素含有量を有する。このプロセスによって得られた修飾ポリマー支持材料も、大部分が化学的に不活性である。このようにして得られたポリマー支持材料は、程度の差はあれ酸素含有表面を有し得るという点で調整可能である。その構造と表面特性により、この材料は分析または分取分離プロセスの固定相としての使用に特に好適である。特に、基材は、やはり本発明の一部である上記の方法によって調製された粒子状イオン交換材料へのさらなる処理に好適である。しかしながら、ポリマー支持材料はまた、他の吸着クロマトグラフィー法、HILIC法、逆相クロマトグラフィー、固相抽出などで使用するためにさらに処理することができる。ミクロポーラスおよびメソポーラス粒子は、小径でも機械的に安定であり、したがって拡散経路をより短く設定することができるため、ミクロポーラスまたはメソポーラスのおかげで、修飾ポリマー支持材料は、対応する良好な分離性能を備えた高い理論段数を持つカラムの製造に好適である。
【0055】
本発明の別の態様は、上記に説明したステップを含むプロセスによって得られ、イオン交換クロマトグラフィーにおける固定相として使用するために本発明に従って修飾されたポリマー支持材料であって、イオン交換基がステップeに従ってポリマー支持材料にさらに導入されるポリマー支持材料に関する。
【0056】
このようにして得られるイオン交換材料は、
- それぞれの場合において最大O含有量の値から開始して、少なくとも20%の差異、好ましくは少なくとも50%の差異、および特に好ましくは100%の差異が、X線光電子分光法XPSによってポリマー支持材料を通る断面において検出可能であることと、
- 酸素含有基が、コアポリマー支持材料に共有結合していることと、
- イオン交換材料は機械的に安定であるため、ポリマー支持材料が充填されたカラム内の圧力損失は、増加した流量の関数として線形にのみ増加することと、
- 導入されたイオン交換基を除いて、イオン交換材料は、ホフマン脱離によって検出可能であり得るエポキシド-アミン反応による修飾に基づいていないことと、
- 任意選択で、イオン交換材料は、>50,000TP/mの段数を有することと、
- 任意選択で、選択性および容量は、除去ステップfでさらに調整可能であることとを特徴とする。
【0057】
特にイオン交換材料は、コアよりも表面で高い酸素含有量を有する。例えば、ステップcを含めてステップcまでの本発明によるプロセスに従って生成された修飾ポリマー担体材料の表面は、内部粒子領域よりも、最大O含有量の値に基づいて50%高く、好ましくは60%高い、XPS測定で検出可能な酸素含有量を有する。
【0058】
本発明によるイオン交換材料の利点は、親水性と容量、または選択性と容量を個々のステップで、すなわち互いに独立して構成することができることである。本発明による方法によって調製されたイオン交換材料は、分極性イオンとの弱い二次相互作用のみを示し、強水和イオンの保持時間を増加させる。親水化イオン交換基材が充填されたカラムは、所望の選択性を示す。材料は膨潤せず、圧力試験で有利な特性を示す。特に効率的なカラムには、イオン交換材料を充填することができる。
【0059】
上記のポリマー支持材料は、イオンクロマトグラフィープロセス、特に標準イオンのフッ化物、塩化物、亜硝酸塩、臭化物、硝酸塩、リン酸塩および硫酸塩を分離するためのクロマトグラフィープロセスにおける固定相としての使用に好適である。カラムの高いイオン交換容量は、小さな、一価または二価のイオンを分離するために特に必要である。対照的に、マクロポーラス構造によって達成される、分析物溶液の対流または灌流物質移動は望ましくない。マクロポーラス構造はまた、しばしば劣った機械的耐荷重容量と関連している。
【0060】
本発明は、ステップaで用意されるポリマー担体材料が、
- 少なくとも2つのビニルまたはアリル置換基を有する芳香族炭化水素化合物由来の、好ましくはジビニルベンゼン由来のモノマー単位、
- エチルビニルベンゼン由来のモノマー単位、
- スチレン由来のモノマー単位、
- それらの組み合わせ
の群から選択されるモノマー単位から実質的に完全に構成される、上記の修飾ポリマー担体材料にさらに関する。
【0061】
「実質的に完全に構築された」とは、ステップaで用意されるポリマー担体材料中の、列挙されたモノマー単位の総割合が、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、特に好ましくは少なくとも99重量%であることが本明細書では理解される。換言すれば、モノマー単位は、酸素原子を含まない化合物に実質的に完全に由来することができ、その結果、疎水性粒子コアが得られる。
【0062】
本発明の別の態様は、ステップaで用意されるポリマー支持材料が、BJHモデルの窒素吸着によって測定可能な1~50nm、好ましくは2~25nm、より好ましくは2~10nmの平均細孔半径を有する、上記の修飾ポリマー支持材料に関する。測定は、以下の実施例5に記載されるように実行される。
【0063】
本発明の別の態様は、ステップaで用意されるポリマー支持材料が、BETモデルの窒素吸着によって測定可能な80~1000m/g、好ましくは100~800m/g、より一層好ましくは200~600m/gの比表面積を有する、上記の修飾ポリマー支持材料に関する。測定は、以下の実施例5に記載されるように実施される。高比表面積によって、特に小イオン、例えば標準イオンを分離する場合に、カラムの容量および分解能が向上する。
【0064】
本発明の別の態様は、ステップaで用意されるポリマー支持材料が、最大220bar、好ましくは最大250barの圧力安定性を有する、上記の修飾ポリマー支持材料に関する。圧力安定性により、流量の関数としての圧力の増加は、線形にのみ挙動することが本明細書では理解される。測定は、以下の実施例6に記載されるように実行される。高い圧力安定性は、小さな粒子径サイズおよび粒子構造のミクロ/メソ孔性に起因する。
【0065】
好ましくは、修飾されたポリマー担体材料は、粒子として、好ましくは球形粒子として、より好ましくは1~50μmの平均粒子径(中央値)を有する球形粒子として存在する。特に好ましくは、粒子は2~25μmの径範囲で存在し、非常に特に好ましくは3~9μmの径範囲で存在する。この場合の粒径は、粒子の中心を通る最長直線と最短直線との間の平均値であり、走査電子顕微鏡(SEM)および自動画像評価によって測定可能である。
【0066】
粒径は、好適な撹拌速度、溶媒の選択、溶媒中のポリマーの濃度などによって調整することができる。その方法は当業者に公知である。この形状およびサイズの担体ポリマーは、交換容量にとって特に有利であることがわかっている体積/表面積比を有する。細孔への高拡散性を示し、容易に充填可能である。
【0067】
本発明の一態様は、0~14のpH範囲で安定である上記の修飾ポリマー支持材料に関する。pH安定性により、1M NaOH溶液ですすいだ後および/または1M HCl溶液ですすいだ後の修飾ポリマー支持材料が充填されたカラム中の硫酸塩の保持時間は、予め0および/または14のpH値に曝露されていない修飾ポリマー支持材料が充填されたカラム中の硫酸塩の保持時間から、8%超、好ましくは5%超、より好ましくは3%超ずれないことが本明細書では理解される。pH安定性の測定方法は、以下の実施形態例8に由来する。
【0068】
本発明の別の態様は、本発明による方法によって製造可能である、修飾ポリマー支持材料、好ましくは粒子状修飾ポリマー支持材料で充填されたイオン交換クロマトグラフィーカラムに関する。
【0069】
さらに、本発明は、分析物を含む溶液が本発明による修飾ポリマー支持材料と接触し、特に本発明によるイオン交換クロマトグラフィーカラムを通過することを特徴とする、分析物のクロマトグラフィー分離のプロセスに関する。
【0070】
したがって本発明は、本発明によるプロセスによって得られるポリマー支持材料の、分析物の分析または分取的分離のための使用、特に陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーおよび/またはHILICクロマトグラフィー(親水性相互作用液体クロマトグラフィー)における使用に関する。
【0071】
本発明をさらに例証するために、以下に例示的な実施形態を記載する。例示的な実施形態は、本発明の開示内容および特許請求の範囲に制限的な影響を及ぼさない。
【0072】
以下の図が示される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】ポリマー支持材料上の例示的な修飾順序の概略図である。
図2】修飾ステップb.1およびb.2の概略図である。
図3】修飾ステップb.1およびb.2とそれに続く例示的な修飾ステップcおよびd.1の概略図である。
図4】代替の修飾ステップcまたはd.2の概略図である。
図5】修飾ステップd.1とそれに続くBDGE(ブタンジオールジグリシジルエーテル)との反応の結果の概略図である。
図6】ステップcまたはd.2に続く、イオン交換基を導入する修飾ステップeの例の概略図である。
図7】実施形態1または4によるクロマトグラフィーカラムで得られるクロマトグラムを示す図である。
図8】修飾ステップdの繰り返し回数の増加を伴う、実施形態例1または4によるクロマトグラフィーカラムで得られるクロマトグラムを示す図である。
図9】本発明によるクロマトグラフィーカラムで測定された圧力流プロファイルを示す図である。
図10】ステップfの持続時間の増加を伴う、実施形態例1または4によるクロマトグラフィーカラムで得られるクロマトグラムを示す図である。
図11】プロセスステップb.2からの本発明によるポリマー支持材料で充填したクロマトグラフィーカラムで測定された圧力流プロファイルを示す図である。
図12】SEMによる粒径分析の結果(直径に対する数[μm])を示す図である。
【実施例
【0074】
実施例1
使用したすべての物質は「純粋」または「pa」に分類され(過酸化水素およびギ酸を除く)、ロータリーエバポレーターでの蒸留によって低揮発性成分から溶媒を分離した。
【0075】
過マンガン酸カリウムによる酸化
PS/DVB(EVB中55%DVB)10.0gを350mL硫酸化用フラスコに入れ、アセトニトリル100mLで懸濁した。次いで、水100mLに溶解した5.0gのKMnOを20分かけて添加した。反応溶液を少量の酸で酸性pHに調整した。懸濁液を25℃で120時間撹拌した。粒子を半濃塩酸で処理した後、超純水で洗浄した。生成物を真空乾燥オーブンで恒量になるまで乾燥させた。最終重量は9.7gであった。
【0076】
水素化アルミニウムリチウムによる還元
乾燥酸化粒子8.6gを500mLの反応器に入れ、THF150mLと混合した。アルゴン雰囲気下で5℃に外部冷却し、1.5gの水素化アルミニウムリチウムをゆっくり添加して、別のTHF50mLと混合した。反応器を室温に温め、17時間撹拌した。反応を停止した。水をゆっくりと添加することにより反応を停止させた。その後、水/アセトンで後処理し、希硫酸で酸性化し、水で中性洗浄した。アセトンによる最終洗浄の後、得られた固体を真空乾燥オーブンで乾燥させる。粒子8.35gが得られた。
【0077】
エピクロロヒドリン(ECH)との反応
還元乾燥粒子7.6gを、250mLの三つ口フラスコに入れる。エピクロロヒドリン35mLを添加し、混合物を3回排気し、アルゴンで曝気した。溶液を45℃に加熱した。続いて、7mLの相間移動触媒溶液(水10mL中のテトラブチルアンモニウムヒドロキシド3g)を添加し、さらに水酸化ナトリウム溶液140mLを添加した。反応物を3.5時間撹拌し、次いで水/エタノールの添加により停止した。後処理は、水/エタノールまたは水/アセトンで実施した。生成物は、乾燥せずに次のステップで直接使用した。
【0078】
ブタンジオールとの反応
次いで、上記のポリマーを、KOH1.98gとともにブタンジオール70mLに室温で懸濁し、次いで130℃で18時間撹拌した。次いで、反応混合物を数分間反応させた。反応時間の完了後、水を反応混合物に添加し、濾過した。ポリマーを水およびアセトンで数回洗浄した。濾過ケークを真空乾燥オーブンで一晩乾燥させた。ポリマー7gが得られた。
【0079】
スペーサーの取り付け
上記のポリマー6.6gをDMSO16.5mLおよびブタンジオールジグリシジルエーテル16.5mLに懸濁し、3回排気した後、曝気した。次いで、1M臭化テトラブチルアンモニウム溶液1.4mLおよび0.6M NaOH(aq)16.5mLを添加し、22時間機械的に撹拌した。溶媒を添加することにより反応を停止させた。水およびエタノールの1:1混合物を添加することにより反応を停止させた。繰り返し洗浄を水/エタノール混合物で実行した。最終的に生成物を濾過して乾固させた。ポリマーは次のステップで直接使用した。
【0080】
陰イオン交換基の導入
次いで、上記のポリマーを移行段階なしでDMSO45mLに懸濁し、続いて水45mLを添加した。懸濁液を70℃に加熱し、N-メチルピロリジン45mLを添加した。2時間の反応時間の完了後、酢酸の添加により反応を停止させた。ポリマーを濾別し、水で数回洗浄した。湿潤ポリマーは次のステップで直接使用した。
【0081】
除去
上記のポリマーを水50mLに懸濁し、40%NaOH(aq)7.5mLを添加した。次いで、懸濁液を100℃で4時間撹拌した。濾過により反応を停止させた。濾過ケークを超純水で数回洗浄し、次いで公知の高圧充填手順に従って4x100mmPEEKカラムに充填した。
【0082】
実施例2
低圧酸素プラズマによる酸化
PS/DVB(EVB中55%DVB)40gを、酸素プラズマを使用してプラズマ粉末装置(plasma powder plant)で酸化した。粒子は、処理後にさらに直接加工することができる。
【0083】
水素化アルミニウムリチウム(LAH)による還元
酸化乾燥ポリマー30gを、圧力が均等化された1000mLの反応器中の乾燥ジエチルエーテル250mLに懸濁した。25℃に調節し、水素化アルミニウムリチウム6gをアルゴン雰囲気下でゆっくりと添加し、撹拌しながら30℃に6時間加熱し、室温でさらに20時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、酢酸エチル15mLをゆっくりと添加することにより反応を停止させた。後処理は、水、希硫酸、水、NaOH溶液5w%、超純水および希塩酸で実行した。
【0084】
ポリマーを超純水で中性に洗浄し、アセトンで濾過乾燥した。生成物を真空乾燥オーブンで乾燥させた。ポリマー30gを得た。
【0085】
エピクロロヒドリンとの反応
還元乾燥粒子5.0gを250mLの三つ口フラスコに入れ、エピクロロヒドリン25mLを添加した。懸濁液を3回排気し、アルゴンで曝気した。続いて、1M相間移動触媒溶液(水中の臭化テトラブチルアンモニウム)1.75mLおよび30%水酸化ナトリウム溶液25mLを添加し、45℃に加熱し、3.5時間撹拌した。水/エタノールの添加により反応を停止させた。生成物の精製は、水/エタノールまたは水/アセトンで数回洗浄することによって行った。生成物は、乾燥せずに次のステップで直接使用した。
【0086】
ブタンジオールとの反応
次いで、上記のポリマーを、KOH1.3gとともにブタンジオール50mLに室温で懸濁し、130℃に18時間加熱した。次に、反応混合物を沈降させた。反応時間の完了後、水200mLを反応混合物に添加し、濾過した。
【0087】
濾過ケークを水およびアセトンで洗浄した。生成物を真空乾燥オーブンで乾燥させ、乾燥生成物4.2gを得た。
【0088】
スペーサーの取り付け
上記のポリマー3.8gをDMSO10mLおよびブタンジオールジグリシジルエーテル10mLに懸濁し、3回の圧力サイクルにかけ、反応容器にアルゴンを再充填した。次いで、1M臭化テトラブチルアンモニウム溶液0.8mLおよび0.6M NaOH(aq)10mLを添加し、22時間撹拌した。次いで、反応混合物を3回の圧力変化にかけた。続いて、水およびエタノールの1:1混合物200mLを反応混合物に添加し、濾過した。この洗浄手順を数回繰り返し、生成物を濾過して乾固させ、次のステップで直接使用した。
【0089】
イオン交換基の導入
上記のポリマーをDMSO30mLに懸濁し、水30mLを添加し、懸濁液を70°Cに加熱した。反応温度に達した後、N-メチルピロリジン30mLを添加し、70℃で2時間撹拌した。反応時間の完了後、濃酢酸60mLを添加し、生成物を濾別した。濾過ケークを中性水で洗浄し、除去に使用した。
【0090】
除去
上記のポリマーを水100mLに懸濁し、30%NaOH(aq)20mLと混合し、100℃で28時間撹拌した。反応時間の完了後、塩酸の添加により反応を停止させ、懸濁液を濾過し、濾過ケークを中性水で数回洗浄し、次いで公知の高圧充填手順に従って4x100mmPEEKカラムに充填した。
【0091】
実施例3
メタクロロ過安息香酸による酸化
PS/DVB(EVB中55%DVB)20gを、ねじ蓋付きの250mLガラス瓶に入れ、ジクロロメタン93gで懸濁した。次いで、メタクロロ過安息香酸5.5gを固体として添加し、反応混合物をふりまぜ機で室温にて18時間混合した。生成物をエタノールおよび水で数回洗浄し、恒量になるまで真空乾燥オーブンで乾燥させた。最終重量は19.0gであった。
【0092】
塩酸による加水分解
酸化乾燥ポリマー19gを、ねじ蓋付きの250mLのガラス瓶に入れ、アセトン52gおよび37%塩酸13gで懸濁した。反応混合物を循環空気加熱ふりまぜ機で40℃にて21時間混合した。次いで、混合物を瓶から取り出した。生成物を中性水で洗浄し、次いで水およびアセトンで数回洗浄し、真空乾燥オーブンで恒量になるまで乾燥させた。最終重量は18.5gであった。
【0093】
エピクロロヒドリンとの反応
加水分解された乾燥ポリマー11.8gを、エピクロロヒドリン60mLを含む250mLの三つ口フラスコで懸濁した。反応容器を3回の真空/アルゴンサイクルにかけた。反応混合物を撹拌しながら45℃に加熱し、次いで1M(aq)臭化テトラブチルアンモニウム溶液3mLを添加した。続いて、30%(aq)水酸化ナトリウム溶液60mLを添加し、激しく撹拌した。22時間の反応後、反応混合物を水200mLおよびエタノール200mLで希釈し、次いでポリマーを濾別した。ポリマーをアセトン、水、次いで再度アセトンで洗浄した。
【0094】
ブタンジオールとの反応
上記の生成物5gを、水酸化カリウム1.4gおよび1,4-ブタンジオール50mLとともに100mLの三つ口フラスコで懸濁し、130℃で19時間混合した。続いて、反応混合物を冷却し、水45mLと混合した。生成物を濾別し、水で中性になるまで洗浄し、次いで真空乾燥オーブンで恒量になるまで乾燥させた。最終重量は4.0gであった。
【0095】
1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとの反応
上記の生成物3.1gを、ジメチルスルホキシド8mLおよび1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル8mLを含む100mLの三つ口フラスコで懸濁した。反応容器を3回の真空/アルゴンサイクルにかけた。撹拌しながら、1M(aq)臭化テトラブチルアンモニウム溶液0.8mLおよび0.6M水酸化ナトリウム溶液8mLを反応物に添加した。22時間の反応後、水25mLおよびエタノール25mLを反応混合物に添加し、次いで濾別した。生成物を水およびエタノールで1回洗浄した。
【0096】
イオン交換基の導入
上記の生成物を、ジメチルスルホキシド15mL、水15mLおよびN-メチルピロリジン15mLとともに100mLの三つ口フラスコで懸濁した。反応混合物を70℃で1時間撹拌し、次いで冷却し、酢酸30mLを添加した。ポリマーを濾別し、水で洗浄した。
【0097】
除去
上記の生成物を、100mLの丸底フラスコ中の水50mLおよび40%(aq)水酸化ナトリウム溶液7.5mLに懸濁し、100℃に加熱した。4時間の反応後、反応混合物を冷却し、濾別した。生成物を水で2回洗浄し、次いで公知の高圧充填手順に従って4x100mmPEEKカラムに充填した。
【0098】
実施例4
ギ酸による酸化
PS/DVB(EVB中55%DVB)25.0gを、圧力を均等化した500mLの三つ口フラスコ中のギ酸188mLに懸濁した。滴下漏斗を介して35%過酸化水素54mLをゆっくりと添加し、反応溶液を外部から冷却した。反応熱が放散した後、室温で65時間撹拌を実行した。第2の反応の完了後、反応混合物を超純水により酸不使用で洗浄し、次いで真空乾燥オーブンで恒量になるまで乾燥させた。最終重量は27.78gであった。
【0099】
水素化アルミニウムリチウムによる還元
酸化乾燥ポリマー27.64gを500mLの加圧三つ口フラスコ中の乾燥ジエチルエーテル270mLに懸濁し、氷浴で0℃に冷却し、水素化アルミニウムリチウム8.8gを撹拌しながら注意深く添加した。添加が完了した後、氷浴を取り除き、反応混合物を撹拌しながら10時間還流し、室温でさらに24時間撹拌した。外部冷却ならびにジエチルエーテル、酢酸エチルおよび超純水の添加により反応を停止させた。
【0100】
残りの水素化物を反応させた後、反応混合物を氷上に置き、希釈冷却硫酸を撹拌しながら添加した。反応混合物を以下の溶液で洗浄した:水、5%NaOH溶液、水、希酢酸、水およびアセトン。濾過ケークを濾過して乾固させ、乾燥オーブンで乾燥させた。収量は26.20gであった。
【0101】
エピクロロヒドリンとの反応
ポリマー4.00gをECHおよびDMSOのそれぞれ20mLに懸濁し、超音波浴で15分間超音波処理し、次いで2回の圧力変化にかけ、反応容器にアルゴンを再充填した。水溶液中の25%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液4.30mLを添加した後、室温で2時間撹拌を実行した。反応混合物を濾過し、水および2-プロパノールの1:1混合物ならびにアセトンで洗浄した。濾過ケークを濾過して乾固させた。
【0102】
ブタンジオールとの反応
次いで上記のポリマーを、室温でKOH1.12gとともにブタンジオール40mLに懸濁し、次いで120℃で20時間撹拌した。反応混合物を水およびアセトンで数回洗浄した。反応時間の完了後、反応混合物を水およびアセトンで数回洗浄した。生成物を濾過して乾固させた。湿潤質量は13.36gであった。
【0103】
コーティングサイクル:エピクロロヒドリン(ECH)との反応
上記のステップからの依然として湿潤なポリマーを水で13.50gにし、1M臭化テトラブチルアンモニウム1mLおよびECH20mLを添加した。続いて、50%NaOH(aq)10.5mLを添加し、5.5時間撹拌した。次いで反応混合物を、水および2-プロパノールの1:1混合物、ならびにアセトンで洗浄した。濾過ケークを濾過して乾固させた。
【0104】
コーティングサイクル:ブタンジオールとの反応
上記のポリマーを、室温でKOH1.12gとともにブタンジオール40mLに懸濁し、次いで120℃で18時間撹拌した。反応混合物を水およびアセトンで数回洗浄した。反応時間の完了後、反応混合物を水およびアセトンで数回洗浄した。生成物を濾過して乾固させた。ポリマーを、さらなる反応の前に最後に乾燥させた。収量は5.66gであった。
【0105】
スペーサーの取り付け
上記のポリマー2.30gをDMSO6mLおよびブタンジオールジグリシジルエーテル6mLに懸濁し、3回の圧力サイクルにかけ、反応容器にアルゴンを再充填した。撹拌しながら、1M臭化テトラブチルアンモニウム溶液0.5mLおよび0.6M NaOH(aq)6mLを添加し、22時間撹拌した。次いで、反応混合物を3回の圧力変化にかけた。次いで、反応混合物を水および2-プロパノールの1:1混合物で洗浄し、濾過して乾固させた。
【0106】
陰イオン交換基の導入
上記のポリマーをDMSO5mLに懸濁し、水5mLおよびN-メチルピロリジン5mLと混合した。続いて、反応混合物を70℃で1時間撹拌した。水および希酢酸を添加することにより反応を停止させた。次いで濾過ケークを希塩酸、水およびアセトンで洗浄した。得られたポリマーを乾燥オーブンで60℃にて乾燥させた。収量は2.54gであった。
【0107】
除去
上記のポリマーを水50mLに懸濁し、30%NaOH(aq)5mLを添加し、100℃で2時間撹拌した。濾過した後水、希HCl、水およびアセトンで洗浄することにより反応を停止させた。濾過ケークを濾過して乾固させ、続いてポリマーを乾燥オーブンで60℃にて乾燥させた。有意な重量損失は観察されなかった。
【0108】
図1は、コアポリマー担体材料(pDVB)の異なる例示的な修飾順序を示す概略図である。最初の酸化(b.1)およびその後の還元(代替として、その後の加水分解、b.2)の後、表面にヒドロキシ基を持つポリマー担体材料(pDVB-OH)が利用可能である。次いでOH基を有するポリマー支持材料(pDVB-OH)をエピクロロヒドリン(ECH)と反応させることができる。これにより、ステップcによる化合物が得られる。代替として、OH基を備えるポリマー支持材料(pDVB-OH)を、ステップcでブタンジオールジグリシジルエーテル(BDGE)と反応させることができる。
【0109】
本発明によると、ポリマー支持材料は、ステップb.2の後に、1つまたは複数のコーティングサイクルにおいて、ECH、ジオールおよびそれに続いて再びECHまたはBDGEと反応させることができる(ステップc、d.1、d.2)。ポリマー支持材料はまた、例えば、ステップb.2の後にBDGEと直接反応させることができる。結果として、表面に好適な反応性官能基を有する修飾ポリマー支持材料が得られる。示されている例では、これらはエポキシ基である。
【0110】
原則として、ステップcおよびd.2のそれぞれのECH/BDGE修飾の任意の組み合わせ、およびステップd.1のジオール変換/加水分解の任意の組み合わせも考えられる。しかしながら、上記のように、スペーサー分子をd.2における最後のコーティングサイクル中に挿入する場合が好ましい。
【0111】
図1に示す修飾ポリマー支持材料は、その後のイオン交換基の導入に好適である。修飾ポリマー支持材料の表面の酸素含有量は、先行のセクションに列挙された変形形態(図中の上から下への変形形態)の順序で増加する。イオン交換基を各生成物に導入すると、結果として、列挙された変形形態の順序で親水性が増加するイオン交換材料が得られる。増加した親水性は、例えば、NOからClへの選択度σの低下にそれ自体現れる。
【0112】
図2から6は、本発明によるプロセスステップを説明し、非常に簡略化された形で反応順序を示すことを意図する図である。これらは完全であることを主張するものではない。焦点は、ポリマー支持材料表面のそれぞれの修飾にある。それぞれのステップで修飾されていないポリマー担体材料の部分は、球形粒子として簡略化された形で示されている。
【0113】
図2は、修飾ステップb.1およびb.2を示す概略図である。酸化および還元(代替として加水分解)後、表面にOH基を有するポリマー担体材料が提供される。ケトンだけが酸化ステップで形成され得るだけではないことは当業者に公知である。処理に応じて、特にKMnOによる処理中に、ケトンに加えて、ジオール、ジケトン、または開裂生成物としてジカルボン酸が形成される場合がある。そのようなプロセスおよび中間体は、特許請求されたプロセスに含まれ、図に示される例によって除外されることを意図していない。
【0114】
図3は、修飾ステップb.1およびb.2、それに続く例示的な修飾ステップcおよびd.1を示す概略図である。示される変形形態において、ヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基ならびにアミンおよび/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基を有する、ステップcで使用される化合物は、エピクロロヒドリンである。示される実施形態において、ステップd.1で使用されるヒドロキシ基を含む多官能性化合物は、ブタンジオールである。エピクロロヒドリンおよびブタンジオールとの交互反応からなるコーティング順序は、d.1およびd.2として繰り返すことができる。得られた粒子は、二重矢印の後に再度抽象化されて示されている。
【0115】
図4は、代替の修飾ステップcまたはd.2を概略的に示している。ステップcまたはd.2で使用され、ヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第1の官能基ならびにイオン交換基および/またはヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの第2の官能基を有する化合物は、BDGEである。
【0116】
図3に示すように、BDGEによる変換では、1つまたは複数のコーティングサイクルを完了することもできる。図5は、修飾ステップd.1の結果を概略的かつ例示的に示す図である。ステップcでECHを使用した後、ステップd.2でECHを使用してコーティングサイクルを実行した。ブタンジオールとの反応後、最後のステップd.2を、スペーサーとしてBDGEを使用して次いで実行する。結果として、図3図4のスキームから得られる支持材料よりも、他の事情が同じならば高い表面酸素含有量を有する修飾ポリマー支持材料が得られる。
【0117】
図6は、ステップcまたはd.2に続く、イオン交換基を導入する修飾ステップeの例を示す概略図である。示されている例では、イオン交換基は、1-メチルピロリジンの四級化によって形成されている。本発明による修飾を実行した後、実施例に示すような表面に側鎖を有するポリマー担体材料が得られる。
【0118】
図7は、実施例1または4によるクロマトグラフィーカラムで得られるクロマトグラムを示す図である。x軸は、実行時間を分単位で示す。y軸は、導電率をμS/cmで示す。この目的のために、乾燥基材を150x4mmのカラムに充填した。使用した溶離液は、6.0mmol/LのNaCOと1.0mmol/LのNaHCOであった。標準溶液の分析物は、基線が互いに分離して存在し、左から右への溶出順序は、フッ化物、臭素酸塩、塩化物、亜硝酸塩、臭化物、塩素酸塩、硝酸塩、アジド、リン酸塩、硫酸塩である。臭素酸塩は塩化物の前に定量的に存在し(ピークは5.2、5.7分の実行時間)、クロマトグラムは高いシグナル対称性を示す。カラムの総実行時間は短く、15分である。実施例1の条件下で調製されたクロマトグラフィーカラムは、同等のクロマトグラムを提供する。
【0119】
図8は、実施例4によるクロマトグラフィーカラムで得られた3つのクロマトグラムを示す図である。実施例1は、非常に類似するクロマトグラムを提供する。x軸は、実行時間を分単位で示す。y軸は、導電率をμS/cmで示す。曲線は、同一の標準溶液のクロマトグラムを示しており、左から右への溶出順序は、フッ化物、塩化物、亜硝酸塩、臭化物、硝酸塩、リン酸塩および硫酸塩である。修飾ステップd.1/d.2の繰り返し数が(上から下に)増加した。プロットされた曲線Aの場合、ステップ順序d.1/d.2を1回実施した。点線の曲線Bの場合、ステップ順序d.1/d.2を2回実行した。破線の曲線Cの場合、ステップ順序d.1/d.2を3回実行した。したがって、具体的には、描かれた曲線Aの場合、酸化/還元処理を受け、ECHで1回、次いで1,4-ブタンジオールで1回処理され、続いてBDGEと反応させたポリマー基材を使用した。曲線Bでは、酸化/還元処理を施し、ECH、次いで1,4-ブタンジオールで処理し、次いで再度ECH、次いで1,4-ブタンジオールで処理し、次いでBDGEと反応させたポリマー基材を使用した。曲線Cは、酸化/還元処理を受けたポリマー基材を示す。その後、以下の一連のステップを行った:ECH、1,4-ブタンジオール、ECH、1,4-ブタンジオール、ECH、1,4-ブタンジオール、BDGEとの反応。3つの事例すべてにおいて、修飾基材をその後メチルピロリジンと反応させた。クロマトグラムから、テーリングの影響を受ける陰イオン(亜硝酸塩、臭化物、硝酸塩)のシグナルは、コーティングサイクル数の増加とともに対称性を獲得することが明らかである。NOからClへの選択度σは、コーティングサイクル(plating cycle)数の増加とともに減少する。総容量は減少する。
【0120】
図9は、室温で測定された、実施例4に従って調製された、本発明によるクロマトグラフィーカラムで測定された圧力流プロファイルを示す図である。y軸は、システム圧力をMPaで示す。x軸は、流量をmL/分で示す。流量を1mL/分から2.6mL/分に徐々に増加させながら、20分の17間隔をそれぞれ測定した。圧力は流量に線形に依存する。これは、親水性pDVB基材を充填した従来のカラムで得られた結果とは対照的である。従来のカラムでは、圧力は流量の関数として線形以上に増加する。例えば、関数の双曲線勾配が生じる可能性がある。
【0121】
図10は、本発明によるクロマトグラフィーカラム、特に実施例1または4による修飾ポリマー支持材料で充填されたクロマトグラフィーカラムで得られるクロマトグラムを示す図である。x軸は、実行時間を分単位で示す。y軸は、導電率をμS/cmで示す。ステップfの持続時間を変更した。乾燥基材を100x4mmのカラムに充填した。いずれの場合も、曲線は同一の標準溶液のクロマトグラムを示しており、左から右への溶出順序は、フッ化物、塩化物、亜硝酸塩、臭化物、硝酸塩、リン酸塩および硫酸塩である。上から下に、曲線は、0分(A)、60分(B)、120分(C)、180分(D)、240分(E)および300分(F)の間にステップfでカラム基材を除去した後に利用可能であるクロマトグラムを示す。ステップfを省略すると(0分)、硝酸塩のピークおよびリン酸塩のピークが重なる。総容量は、除去時間が長くなると減少する。分析物は、基線が互いに分離して存在し、クロマトグラムは高いシグナル対称性を提供する。カラムの総実行時間は短く、約14~20分である。
【0122】
実施例5
ステップaで用意されるポリマー支持材料の平均細孔半径および比表面積の決定。
【0123】
実施例1では、本発明による修飾をPS/DVB(EVB中55%のDVB)で実行する。それにより、提供される出発ポリマー支持材料は、疎水性、およびミクロポーラスまたはメソポーラスの両方である。用意される出発ポリマー支持材料は、以下のように得られる。
【0124】
ポリビニルピロリドンで安定化し、アゾビスイソブチロニトリルで開始したエタノール中のスチレンの分散重合におけるポリスチレンシード粒子の調製。
【0125】
直径1.5μmおよびM=15kg/mol、M=55kg/molのポリスチレン粒子が得られる。得られたポリスチレン粒子を水/イソアミルアルコール中の55%ジビニルベンゼン(DVB)/45%エチルビニルベンゼン(EVB)およびトルエンの乳濁液で膨潤させ、ポリビニルアルコールで安定化し、続いてアゾビスイソブチロニトリルによって重合を開始した。半径5μmおよび多孔度1cm/gの多孔質で高度に架橋されたポリ(DVB-co-EVB)粒子が得られる。
【0126】
出発ポリマー支持材料の平均細孔半径は、BJH(Barret、Joyner、Halenda)モデルにおける窒素吸着によって求めた。比表面積は、BETモデル(Brunauer、Emmett、Teller)の窒素吸着によって求めた。PS/DVBポリマー支持材料0.0945gの試料を両方の分析に使用した。試料材料の密度は1.05g/ccであった。測定は、9mmセルのAutosorb iQ S/N:14713051301装置で実施した。浴温は77.35Kであった。最終的なガス放出温度は60℃であった。測定は、Quantachrome ASiQwinバージョン3.01で評価した。測定は2回実施し、1回は吸収時間80分、もう1回は吸収時間40分であった。ガス放出速度は、それぞれ1.0℃/分および20.0℃/分であった。細孔容積に基づくBJH法から得られた平均細孔半径は、5.060nmであった。多点BETプロットによる比表面積は、815.0m/gと計算された。
【0127】
実施例6
ステップb.2によるポリマー支持材料の圧縮安定性の測定
実施例4では、本発明による修飾を、PS/DVB(EVB中の55%DVB)で実行する。用意した出発ポリマー支持材料は、実施例5に記載されるようにして得られる。過酸化水素による酸化および水素化アルミニウムリチウムによる還元は、両方とも実施例4に記載されているように、ステップb.2の結果に従って出発ポリマー支持材料上で実施する。得られた粒子を圧縮試験にかけた。圧力試験では、250x4mmのカラムに得られた粒子を充填し、増加する流量で水をカラムに通した。図11は、室温で測定した圧力流プロファイルを示す図である。y軸は、システム圧力をbarで示す。x軸は、流量をmL/分で示す。流量を0.2mL/分から1.6mL/分に徐々に増加させながら、30秒の8間隔をそれぞれ測定した。図からわかるように、圧力は400barまたは40MPaの圧力まで流量に線形に依存している。
【0128】
実施例7
平均粒子径の測定
真円度および平均粒子径を、ステップaで用意された出発ポリマー支持材料の試料について求めた。試料を、走査型電子顕微鏡スライド上に単一粒子層でスパッタした。この目的のために、試料を走査型電子顕微鏡スライド上に単一粒子層で堆積させ、Vacubrand RZ6真空ポンプに接続されたLOT AutomaticSputterCoater MSC1スパッタコーターを使用して金でコーティングした。走査型電子顕微鏡(Phenom ProX)を使用して一連の27枚の画像を取得し、Olympus Imaging Solutions Scandiumを使用して個々の粒子を識別および測定した。同定した粒子を、球径および真円度について分析した。すべての画像は、同一の閾値および測定設定を使用してバッチ処理で分析した。合計6039個の粒子を測定し、それらの真円度は常に≧0.8であった。測定結果を図12に示す。y軸は粒子数を示し、x軸は直径をμmで示している。測定した最小半径は0.8μmであり、最大半径は10μmまでであった。平均直径(中央値)は4.59μmであり、相対標準偏差は6.23%であった。多分散度指数PDI(Mw/Mn)は1.044であった。
【0129】
実施例8
pH安定性の測定
pH安定性を、実施例5による、実施例4に従って修飾した、すなわち、ステップa~fに従って得られるポリマー材料に対応する、粒子状ポリマー支持材料の試料について求めた。この目的のために、試料をクロマトグラフィーカラム(250x4mm)に充填し、硫酸塩の保持時間を6mmol/LのNaCOおよび1mmol/LのNaHCOの溶離液での10回の測定から求めた。続いて、カラムを6mmol/LのNaCOおよび1mol/LのNaOH(pH14)の溶離液を用いて0.8mL/分で14時間すすいだ。次いで、6mmol/LのNaCOおよび1mmol/LのNaHCOの溶離液を用いて、硫酸塩保持時間の10回の測定を再度実施した。続いて、カラムを、6mmol/LのNaCOおよび1mol/LのHNO(pH0)からなる溶離液を用いて0.8mL/分で14時間すすいだ。次いで、6mmol/LのNaCOおよび1mmol/LのNaHCOの溶離液を用いて、硫酸塩保持時間の10回の測定を再度実施した。各溶離液変更時に、沈殿を防ぐために水によるすすぎを1時間実施した。硫酸塩の保持時間および段数に基づき、起こり得る変化を調査したが、両方のパラメータは、塩基性および酸性処理の両方の後に最初に求めたものから最大3%ずれていた。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12