(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】車両の液圧ブレーキシステムのための電気機械式のブレーキ圧発生器、並びに電気機械式のブレーキ圧発生器を有する車両
(51)【国際特許分類】
B60T 13/138 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
B60T13/138 A
(21)【出願番号】P 2021563003
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020054272
(87)【国際公開番号】W WO2020216492
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】102019205958.9
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】グライナー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ライヒェルト,セバスティアン マルティン
(72)【発明者】
【氏名】エーラー,クラウス
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0265547(US,A1)
【文献】特表2014-529508(JP,A)
【文献】実開平05-022234(JP,U)
【文献】特開2017-187074(JP,A)
【文献】特開平03-005270(JP,A)
【文献】特開2019-026126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/138
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の液圧ブレーキシステム(10)のための電気機械式に駆動可能なブレーキ圧発生器(14)であって、駆動側の回転運動を並進運動に変換するための少なくとも1つのねじ駆動装置(40)と、液圧式にブレーキ圧を発生させるための、前記ねじ駆動装置(40)によって操作可能なピストン/シリンダユニット(18)とを有しており、前記ねじ駆動装置(40)が、
- 電動機(38)を介して回転可能なスピンドル(68)を有しており、
- スピンドルナット(80)を有しており、該スピンドルナット(80)は、前記スピンドル(68)の回転に伴って、前記スピンドルナット(80)およびこのスピンドルナット(80)に構成された前記ピストン/シリンダユニット(18)の液圧ピストン(92)を、軸方向で移動させることができるように、前記スピンドル(68)のねじ山(76)に配置されており、
- ハウジング(64)を有しており、該ハウジング(64)は、前記ピストン/シリンダユニット(18)の前記液圧ピストン(92)に対応する液圧シリンダ(66)を構成していて、前記ハウジング(64)内に前記スピンドルナット(80)と共に前記スピンドル(68)が受け入れられており、
- 回動防止手段(84,88)を有しており、該回動防止手段(84,88)を介して前記液圧ピストン(92)が前記スピンドル(68)の回動時に回動しないように保持されていて、
前記回動防止手段(84,88)が、前記ハウジング(64)と、前記液圧ピストン(92)とによって構成されていて、
金属より製造された前記ハウジング(64)に対する滑り特性を改善するために、少なくとも前記液圧ピストン(92)に設けられた前記回動防止手段(84,88)がプラスチックより形成されている、
車両の液圧ブレーキシステム(10)のための電気機械式のブレーキ圧発生器(14)。
【請求項2】
前記スピンドルナット(80)および前記液圧ピストン(92)が、様々な材料より成っていて、互いに同軸的に当接するように配置されていることを特徴とする、請求項
1に記載の電気機械式のブレーキ圧発生器(14)。
【請求項3】
前記回動防止手段(84,88)がさねはぎ継ぎを介して形成されていることを特徴とする、請求項1
または2に記載の電気機械式のブレーキ圧発生器(14)。
【請求項4】
前記スピンドルナット(80)の前記回動防止手段(84,88)が、半径方向で外方に延在する互いに向かい合う2つの翼(84)を形成しており、これら2つの翼(84)が前記ハウジング(64)の対応する溝(88)内に係合することを特徴とする、請求項1から
3のいずれか1項に記載の電気機械式のブレーキ圧発生器(14)。
【請求項5】
前記スピンドルナット(80)の少なくとも一部分がプラスチックより形成されていることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか1項に記載の電気機械式のブレーキ圧発生器(14)。
【請求項6】
前記スピンドルナット(80)の、プラスチックより成形された部分が、プラスチック射出成形部分として構成されていることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか1項に記載の電気機械式のブレーキ圧発生器(14)。
【請求項7】
前記ハウジング(64)がアルミニウム合金または鋼合金より形成されていることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか1項に記載の電気機械式のブレーキ圧発生器(14)。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載の、液圧ブレーキシステム(10)のための電気機械式のブレーキ圧発生器(14)を有している車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の液圧ブレーキシステムのための電気機械式に駆動可能なブレーキ圧発生器、並びに電気機械式のブレーキ圧発生器を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を制動するために、運転者の踏力は、たいていは不十分であるので、車両は一般的な形式でブレーキ倍力装置を装備している。従来のブレーキ倍力装置は、通常は内燃機関によって発生される負圧で作業する。この場合、運転者の踏力に追加してピストン/シリンダユニットのピストンロッドに増幅力を加えるために、エンジン圧力と周囲圧力との間の圧力差が利用される。
【0003】
自動車の将来的な駆動コンセプトのために、代替的なブレーキ圧発生装置が必要となる。何故ならば、負圧は、従来形式の真空ブレーキ倍力装置を駆動するためにもはや提供されないからである。このために、ここで関心をもたれた電気機械式のブレーキ圧発生器が開発されている。
【0004】
この場合、ピストン/シリンダユニットの操作力は電動機によって生ぜしめられる。このような形式の電気機械式のブレーキ圧発生器は、補助力を提供するためにだけではなく、ブレーキバイワイヤシステムに操作力を単独で提供するためにも使用され得る。従って、電気機械式のブレーキ圧発生器は、特に自律走行を考慮して有利である。
【0005】
特許文献1によれば、
図1に示された従来形式の電気機械式のブレーキ倍力装置が公知である。それとは異なり、本発明は、ブレーキペダルの操作とは無関係に制動力を加えることができる電気機械式のブレーキ圧発生器に関するものである。公知のブレーキ倍力装置1は、スピンドルナット2と、(図示していない)電気モータとを有しており、この電気モータの駆動によって、スピンドルナット2は平歯車3を介して回転運動せしめられ得るようになっている。スピンドルナット2はスピンドル4と噛み合い連動するので、スピンドル4は、回転させられたスピンドルナット2によって、そのスピンドル軸5に沿った並進運動に変換可能である。スピンドル4がスピンドルナット2の回転に基づいて一緒に回転しないようにするために、ブレーキ倍力装置1は軸受装置6を有しており、この軸受装置6にスピンドル4が堅固に結合されている。
【0006】
軸受装置6は支持部材6aを有しており、支持部材6aの縁部に2つの滑り軸受6bが配置されている。滑り軸受6bは、スピンドル軸5に対して概ね平行に延在する抗張ロッド7に沿って移動する。この軸受装置6を介して、スピンドル4は軸方向で移動可能であり、回動しないように保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、経済的に製造可能な改善された電気機械式のブレーキ圧発生器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、請求項1に記載した特徴を有する、液圧ブレーキシステムのための電気機械式にブレーキ圧発生器によって解決される。それぞれの引用された従属請求項は本発明の好適な発展形態を表す。
【0010】
本発明は、車両の液圧ブレーキシステムのための電気機械式のブレーキ圧発生器を提供する。この電気機械式のブレーキ圧発生器は、駆動側の回転運動を、ブレーキ圧を発生させるために並進運動に変換するための少なくとも1つのねじ駆動装置を有している。この場合、ねじ駆動装置は、電動機を介して回転可能なスピンドルとスピンドルナットとを有しており、このスピンドルナットは、スピンドルの回転に伴ってスピンドルナットおよびこのスピンドルナットに構成された液圧ピストンを軸方向で移動させることができるように、スピンドルのねじ山に配置されている。
【0011】
さらに、ねじ駆動装置はハウジングと、このハウジングとともに形成された回動防止手段とを有しており、前記ハウジングは、液圧ピストンに対応する液圧シリンダを構成していて、このハウジング内にスピンドルナットと共にスピンドルが受け入れられており、前記回動防止手段を介してスピンドルナットがスピンドルの回動時に回動しないように保持されている。
【0012】
スピンドルナットがスピンドルと直接接触する純粋なスピンドル駆動装置も、またボールねじ駆動装置も、ねじ駆動装置として解釈される。ボールねじ駆動装置は、スピンドルとスピンドルナットとの間に嵌め込まれたボールを有するねじ駆動装置である。2つの部分は、それぞれ1つのつる巻線状の溝を有しており、これら2つの部分は一緒に、ボールで満たされたつる巻線状のパイプを形成する。ねじ内のつる巻線に対して直交する横方向の形状締結式の結合は、純粋なスピンドル駆動装置におけるようにねじ溝とねじキーとの間で行われるのではなく、ボールを介して行われる。
【0013】
液圧ピストンは、ブレーキ液に直に当接するので、ブレーキ液は液圧ピストンを介して圧力で負荷可能である。好適な形式で、液圧ピストンはカップ形に構成されている。好適には、カップ形の切欠内にスピンドルの一部が係合する。
【0014】
回動防止手段は、例えばスピンドルナットおよびハウジングそのものによって構成されても、また追加的な部分を介して構成されてもよい。回動防止手段によって、スピンドルの回動時にスピンドルナットが一緒に回動することは阻止されているので、スピンドルナットはスピンドルの回動によってスピンドルに沿って軸方向に移動可能である。駆動されるスピンドルの利点は、スピンドルの回動によって、スピンドルナットにもたらされたトルクが、より容易に導出され得るという点にある。それによって、スピンドルナットは例えばハウジング内の簡単なガイドによってガイドされ得る。これにより、このような回動防止手段のための部分は削減されるので、このような回動防止手段はより経済的ひいてはより安価に製造可能である。これによって、削減された部品点数に基づいてより小さい構造スペースを必要とするだけであり、ひいてはより軽量な、改善された電気機械式のブレーキ圧発生器を提供することができる。
【0015】
本発明の好適な実施例では、スピンドルナットおよび液圧ピストンが、様々な材料より成っていて、互いに同軸的に当接するように配置されている。様々な材料より構成することによって、スピンドルナットおよび液圧ピストンの様々な機能のために最適な材料を選択することができる。従って、液圧ピストンのために、例えばより高い強度を有する材料を選択することができる。相応に、スピンドルナットのために、例えば良好な摩擦学的な特性を有する材料を選択することができる。
【0016】
本発明の別の好適な実施例では、回動防止手段が、ハウジングと、液圧ピストンおよび/またはスピンドルナットとによって構成されている。この場合、ハウジングと、液圧ピストンおよび/またはスピンドルナットとは、構造的なエレメントを介して、ハウジングに対するスピンドルナットの回動が避けられるように、協働する。これによって、簡単な形式で回動防止手段が形成され得る。
【0017】
好適な形式で、回動防止手段は、さねはぎ継ぎを介して形成されている。さねはぎ継ぎは特に、互いに精確に合わせられた溝およびこの溝内に受け入れ可能なキーによって特徴付けられる。この場合、溝とキーとは形状締結式に相互に入り込んで係合する。この場合、さねはぎ継ぎは、例えば互いに保持し合う構成部分に設けられた溝およびキーとして構成されていてよい。同様に、キーとして構成された追加的な部分を、保持しようとする構成部分の溝内に係合させることも可能である。
【0018】
この場合、さねはぎ継ぎは、打ち出し成形、材料除去または切削加工によって製造され得る。このようなさねはぎ継ぎは、これによって簡単かつ経済的に製造可能であり、良好な回動防止を保証する。
【0019】
好適な発展形態では、スピンドルナットの回動防止手段が、半径方向で外方に延在する互いに向かい合う2つの翼を形成しており、これら2つの翼がハウジングの対応する溝内に係合するようになっている。この場合、翼は、互いに180°の角度を成している。本発明の趣旨において、スピンドルナット本体から突き出すエレメントが翼として解釈される。このように配置された翼によって、スピンドルナットは十分に回動しないように保持され得る。追加的に、スピンドルナットは僅かな遊びを保ってセンタリングされて保持される。
【0020】
好適な形式で、スピンドルナットの少なくとも一部分がプラスチックより形成されている。この場合、この部分はスピンドルナットの主要部に固定され得る。これによって、このように製造されたスピンドルナットの費用および重量は低減され得る。
【0021】
別の好適な実施例では、スピンドルナットの、プラスチックより成形された部分が、プラスチック射出成形部分として構成されている。この場合、スピンドルナットの、プラスチックより成形された部分は、スピンドルナットの主要部に射出成形されていてよい。これによって、プラスチックの簡単な固定が可能であるので、このようなスピンドルナットは経済的に製造可能である。これによって、追加的に構成部分の点数は削減される。
【0022】
好適な形式で、ハウジングはアルミニウム合金または鋼合金より形成されている。このようなハウジングによって、発生された圧力に対する十分な強度が保証され得る。このような材料は、良好な耐摩耗性も有している。同様に、良好な放熱が保証される。アルミニウム合金を使用した場合、追加的に、その他の多数の金属に対して重量が低減され得る。さらに、アルミニウム合金は特に高い熱伝導を有している。
【0023】
別の好適な実施例によれば、金属より製造されたハウジングに対する滑り特性を改善するために、少なくともスピンドルナットおよび/または液圧ピストンに設けられた回動防止手段がプラスチックより形成されている。これによって、回動防止手段の、プラスチックより形成された側は、ハウジングの金属表面に沿って滑動する。これにより、摩耗しにくい効果的な滑り対偶が保証される。この場合、このような滑り対偶は、NVH(NVH:Noise,Vibration,Harshness,「ノイズバイブレーションハーシュネス」)に関連して最適なデザインを可能にする。
【0024】
本発明はさらに、液圧ブレーキシステムのための電気機械式のブレーキ圧発生器を有している車両を提供する。このような車両によって、電気機械式のブレーキ圧発生器で挙げられた利点を得ることができる。好適な実施例では、この車両は、自動化されたまたは完全に自律的な車両であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術により公知の電気機械式のブレーキ倍力装置を示す図である。
【
図2】電気機械式のブレーキ圧発生器を備えた車両のための液圧ブレーキシステムの概略図である。
【
図3】電気機械式のブレーキ圧発生器の本発明によるねじ駆動装置の1実施例の横断面図および縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施例を図面に示し、以下の記述において詳しく説明する。
【0027】
図2には、電気機械式のブレーキ圧発生器14を有する車両のための液圧ブレーキシステム10の概略図が示されている。液圧ブレーキシステム10は、電気機械式のブレーキ圧発生器14を有している。このブレーキ圧発生器14はピストン/シリンダユニット18を有しており、このピストン/シリンダユニット18にブレーキ液リザーバタンク22を介してブレーキ液が供給される。
【0028】
ピストン/シリンダユニット18は、運転者によって操作されるブレーキペダル26を介して制御され、得られたブレーキペダルストロークがペダルストロークセンサ30によって測定されてコントロールユニット34に転送される。
図2は原則的にブレーキ倍力装置を示しているが、ここで重要なのはブレーキペダルストロークがペダルストロークセンサ30を介して測定されることである。ブレーキ圧発生はブレーキペダルストローク無しでも可能であるので、車両は自律的な走行状態でも制動可能である。
【0029】
コントロールユニット34は、測定されたブレーキペダルストロークに基づいてブレーキ圧発生器14の電動機38のための制御信号を生成する。ブレーキ圧発生器14の(図示していない)駆動装置に接続された電動機38は、ブレーキペダル26によって加えられた制動力を制御信号に応じて増幅する。このために、ブレーキペダル26の操作に応じて、ブレーキ圧発生器14内に配置されたねじ駆動装置40が電動機38によって制御され、それによって、電動機38の回転運動が並進運動に変換される。
【0030】
ブレーキペダル26の操作によって、ブレーキ圧発生器14を用いて、ピストン/シリンダユニット18内に存在するブレーキ液が圧力にさらされる。このブレーキ圧は、ブレーキパイプ42を介してブレーキ液圧装置46に転送される。ここではボックスとしてしか示されていないブレーキ液圧装置46は、様々な弁、および例えばエレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)を形成するためのその他の構成要素によって構成されている。ブレーキ液圧装置46は追加的に少なくとも1つのホイールブレーキ装置50に接続されているので、弁を相応に切換えることによって制動力をホイールブレーキ装置50に加えることができる。
【0031】
図3は、電気機械式のブレーキ圧発生器14の本発明によるねじ駆動装置40の1実施例の横断面図および縦断面図を示す。ねじ駆動装置40は、カップ形の液圧シリンダ66を形成するハウジング64を有している。ハウジング64はこの実施例では金属より成形されている。追加的にねじ駆動装置40はスピンドル68を有しており、このスピンドル68は、
図2に示された電動機38を介して駆動可能であり、従ってスピンドル68はその縦軸線72を中心とした回転運動を実施する。
【0032】
スピンドル68のねじ山76にスピンドルナット80が配置されており、このスピンドルナット80はスピンドル68のねじ山76と噛み合う。スピンドルナット80は、概ね中空円筒形体を形成している。中空円筒形体の直径方向で互いに向き合う2つの側に、半径方向外方に延びる翼84が配置されており、この翼84は、ハウジング64の溝88内に係合し、スピンドルナット80の回動防止手段を形成する。ハウジング64内の溝88は縦溝として構成されている。
【0033】
この場合、スピンドルナット80の翼84の幅は、周方向で見て、ハウジング64の周方向に形成された溝の幅よりもやや小さい。この場合、翼84の軸方向の長さは、ハウジング64の溝88の長さよりも著しく小さい。スピンドル68の回転時に、スピンドルナット80は回動防止手段84,88によって保持されるので、スピンドルナット80は翼84と共にハウジング64内で軸方向に、ハウジング64の溝88の長さに亘る範囲内で移動可能である。
【0034】
スピンドルナット80に液圧ピストン92が配置されており、この液圧ピストン92はスピンドルナット80に接続されている。液圧ピストン92は、スピンドルナット80とは異なりスピンドル68のねじ山76に噛み合っていない。液圧ピストン92は概ねカップ形に構成されている。液圧ピストン92とハウジング64の液圧シリンダ66との間にシール96が配置されているので、液圧シリンダ66の作業室98内に圧力が発生可能である。スピンドル68の回転によって、液圧ピストン92はスピンドルナット80を介して軸方向で作業室98に向かう方向に移動せしめられ、それによって作業室98内に存在するブレーキ液が押圧され得る。
【符号の説明】
【0035】
10 液圧ブレーキシステム
14 ブレーキ圧発生器
18 ピストン/シリンダユニット
22 ブレーキ液リザーバタンク
26 ブレーキペダル
30 ペダルストロークセンサ
34 コントロールユニット
38 電動機
40 ねじ駆動装置
42 ブレーキパイプ
46 ブレーキ液圧装置
50 ホイールブレーキ装置
64 ハウジング
66 液圧シリンダ
68 スピンドル
72 縦軸線
76 ねじ山
80 スピンドルナット
84 翼、回動防止手段
88 溝、回動防止手段
92 液圧ピストン
96 シール
98 作業室