(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】予測的QRS検出およびR-Rタイミングシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/352 20210101AFI20241108BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20241108BHJP
A61M 60/139 20210101ALI20241108BHJP
【FI】
A61B5/352
A61B5/33 100
A61M60/139
(21)【出願番号】P 2021564920
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 US2020030797
(87)【国際公開番号】W WO2020223524
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-04-26
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516064091
【氏名又は名称】ニューパルスシーブイ,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】514264569
【氏名又は名称】ノース・カロライナ・ステイト・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】スミス ロバート エム.
(72)【発明者】
【氏名】チンタ ナガルジュナ レディ
(72)【発明者】
【氏名】マッコーミック ライアン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】イヴァース ダグラス エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ クラノス エム.
(72)【発明者】
【氏名】バデカ ディヴヤクマル マヒマン
(72)【発明者】
【氏名】ナグル ハバート トロイ
(72)【発明者】
【氏名】ダサリ サイ バルガヴ
(72)【発明者】
【氏名】サマディ シャミム
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第8066628(US,B1)
【文献】特開2009-082664(JP,A)
【文献】国際公開第2013/180286(WO,A1)
【文献】特表2018-538120(JP,A)
【文献】特開2018-161324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/346-5/366
A61B 5/33
A61M 60/00-60/90
A61M 25/00-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大動脈内バルーンポンプを操作するためのシステムであって、
患者の心臓の近傍に配置されるように構成された少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプと、
該少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプに構成可能に接続された少なくとも1つの制御装置と
を含み、
該少なくとも1つの制御装置が、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つの非一時的なメモリとを含み、
該少なくとも1つの制御装置が、
該患者の第1の心電図信号を受信し、
該受信された第1の心電図信号を分解することによって、第1の電力スペクトル信号を生成し、
該生成された第1の電力スペクトル信号の第1の部分を選択し、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数のサブセットに分割し、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算し、
該サブセットの該計算されたピーク値を第1の閾値バッファにおいて記憶させ、
該第1の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を計算し、
該患者の第2の心電図信号を受信し、
該受信された第2の心電図信号を分解することによって、第2の電力スペクトル信号を生成し、
該生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分を選択し、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数の第2のサブセットに分割し、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数の第2のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算し、
該サブセットの該計算されたピーク値を第2の閾値バッファにおいて記憶させ、
該第2の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第2の適応可能な閾値Rピーク値を計算し、
計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方を、生成された第2の電力スペクトル信号に適用することによって、受信された第2の心電図信号がQRS群を含むか否かを決定し、
該受信された心電図信号がQRS群を含むと決定されたとき、該計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または該計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方に基づいて、該患者の受信された第2の心電図信号中の連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示すR-R時間間隔値を計算し、かつ、
該R-R時間間隔値に基づき、該少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの、膨張および縮小のうちの少なくとも1つを誘発する
ように構成されている、
システム。
【請求項2】
少なくとも1つの制御装置が、第2の適応可能な閾値Rピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を更新するようにさらに構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも1つの制御装置が、連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示す計算されたR-R時間間隔値に基づいて、未来のRピークのタイミングの予測を生成するようにさらに構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
少なくとも1つの制御装置が、生成された未来のRピークのタイミングの予測に基づいて、少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの膨張および縮小のうちの少なくとも1つを誘発するようにさらに構成されている、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプに構成可能に接続され、少なくとも1つの制御装置に構成可能に接続された、少なくとも1つの皮膚インターフェースデバイスをさらに含み、
該少なくとも1つの制御装置が、該少なくとも1つの皮膚インターフェースデバイスから、患者のアイデンティティと1セットの患者固有情報とを受信するようにさらに構成されている、
請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記受信された第1の心電図信号を分解することが、
受信された第1の心電図信号を離散周波数信号に分解するために、少なくとも1つの変換信号を適用する工程、
該離散周波数信号の1つまたは複数の部分を選択する工程、および
該選択された離散周波数信号の1つまたは複数の部分を整列させることによって、前記第1の電力スペクトル信号を計算する工程を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも1つの変換信号が、ハールウェーブレットに基づいている、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記計算された第1の電力スペクトル信号が、離散周波数信号の第1の選択された部分と該離散周波数信号の第2の選択された部分とに基づいており、
該離散周波数信号の該第1の選択された部分が、15.625Hz~31.25Hzの第1の周波数範囲であり、
該離散周波数信号の該第2の選択された部分が、7.8125Hz~15.625Hzの第2の周波数範囲である、
請求項6記載のシステム。
【請求項9】
前記生成された第1の電力スペクトル信号は、前記第1の心電図信号に対応する時間ベースの信号であり、生成された第1の電力スペクトル信号の第1の部分が、7.5秒に及ぶ、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記生成された第2の電力スペクトル信号は、前記第2の心電図信号に対応する時間ベースの信号であり、生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分が、7.5秒に及ぶ、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記生成された第1の電力スペクトル信号は、前記第1の心電図信号に対応する時間ベースの信号であり、生成された第1の電力スペクトル信号の選択された第1の部分の1つまたは複数のサブセットにおける各サブセットが、1.5秒に及ぶ、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
前記生成された第2の電力スペクトル信号は、前記第2の心電図信号に対応する時間ベースの信号であり、生成された第2の電力スペクトル信号の選択された第1の部分の1つまたは複数の第2のサブセットにおける各サブセットが、1.5秒に及ぶ、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
大動脈内バルーンポンプを操作するための方法であって、
コンピュータが、患者の第1の心電図信号を受信する工程、
前記コンピュータが、該受信された第1の心電図信号を分解することによって、第1の電力スペクトル信号を生成する工程、
前記コンピュータが、該生成された第1の電力スペクトル信号の第1の部分を選択する工程、
前記コンピュータが、該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数のサブセットに分割する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数のサブセットにおける各サブセットについて、
前記コンピュータが、該サブセット内にある該第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算する工程、および
前記コンピュータが、該サブセットの該計算されたピーク値を第1の閾値バッファにおいて記憶させる工程、
前記コンピュータが、該第1の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を計算する工程
前記コンピュータが、該患者の第2の心電図信号を受信する工程、
前記コンピュータが、該受信された第2の心電図信号を分解することによって、第2の電力スペクトル信号を生成する工程、
前記コンピュータが、該生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分を選択する工程、
前記コンピュータが、該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数の第2のサブセットに分割する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数の第2のサブセットにおける各サブセットについて、
前記コンピュータが、該サブセット内にある該第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算する工程、および
前記コンピュータが、該サブセットの該計算されたピーク値を第2の閾値バッファにおいて記憶させる工程、
前記コンピュータが、該第2の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第2の適応可能な閾値Rピーク値を計算する工程
前記コンピュータが、計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方を、生成された第2の電力スペクトル信号に適用することによって、受信された第2の心電図信号がQRS群を含むか否かを決定する工程、
該受信された心電図信号がQRS群を含むと決定されたとき、
前記コンピュータが、該計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または該計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方に基づいて、該患者の受信された第2の心電図信号中の連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示すR-R時間間隔値を計算する工程、ならびに、
前記コンピュータが、該R-R時間間隔値に基づき、少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの、膨張および縮小のうちの少なくとも1つを誘発する工程
を含む、方法。
【請求項14】
前記コンピュータが、第2の適応可能な閾値Rピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を更新する工程
をさらに含む、請求項
13記載の方法。
【請求項15】
大動脈内バルーンポンプを操作するための方法であって、
コンピュータが、患者の第1の心電図信号を受信する工程、
前記コンピュータが、該受信された第1の心電図信号を分解することによって第1の電力スペクトル信号を生成する工程、
前記コンピュータが、該生成された第1の電力スペクトル信号の第1の部分を選択する工程、
前記コンピュータが、該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数のサブセットに分割する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数のサブセットにおける各サブセットについて、
前記コンピュータが、該サブセット内にある該第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算する工程、および
前記コンピュータが、該サブセットの該計算されたピーク値を第1の閾値バッファにおいて記憶させる工程、
前記コンピュータが、該第1の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を計算する工程、
前記コンピュータが、該患者の第2の心電図信号を受信する工程、
前記コンピュータが、該受信された第2の心電図信号を分解することによって第2の電力スペクトル信号を生成する工程、
前記コンピュータが、該生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分を選択する工程、
前記コンピュータが、該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数の第2のサブセットに分割する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数の第2のサブセットにおける各サブセットについて、
前記コンピュータが、該サブセット内にある該第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算する工程、および
前記コンピュータが、該サブセットの該計算されたピーク値を第2の閾値バッファにおいて記憶させる工程、
前記コンピュータが、該第2の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第2の適応可能な閾値Rピーク値を計算する工程、
前記コンピュータが、計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方を、該生成された第2の電力スペクトル信号に適用することによって、該受信された第2の心電図信号がQRS群を含むか否かを決定する工程、
該受信された第2の心電図信号がQRS群を含むと決定されたとき、
前記コンピュータが、該計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または該計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方に基づいて、該患者の受信された第2の心電図信号中の連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示すR-R時間間隔値を計算する工程、
前記コンピュータが、連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示す該計算されたR-R時間間隔値に基づいて、未来のRピークのタイミングの予測を生成する工程、ならびに
前記コンピュータが、該生成された未来のRピークのタイミングの予測に基づいて、少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの、膨張および縮小のうちの少なくとも1つを誘発する工程
を含む、方法。
【請求項16】
前記受信された第2の心電図信号を分解することは、
該受信された第2の心電図信号を第2の離散周波数信号に分解するために、少なくとも1つの変換信号を適用することと、
該第2の離散周波数信号の1つまたは複数の部分を選択することと、
該選択された、該第2の離散周波数信号の1つまたは複数の部分を整列させることによって、該第2の電力スペクトル信号を計算することと
を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
前記計算された第2の電力スペクトル信号が、前記第2の離散周波数信号の第1の選択された部分と該第2の離散周波数信号の第2の選択された部分とに基づいており、
該第2の離散周波数信号の該第1の選択された部分が、15.625Hz~31.25Hzの第1の周波数範囲であり、
該第2の離散周波数信号の該第2の選択された部分が、7.8125Hz~15.625Hzの第2の周波数範囲である、
請求項
16記載のシステム。
【請求項18】
前記コンピュータが、前記受信された第1の心電図信号を分解することは、
前記コンピュータが、該受信された第1の心電図信号を離散周波数信号に分解するために、少なくとも1つの変換信号を適用することと、
前記コンピュータが、該離散周波数信号の1つまたは複数の部分を選択することと、
前記コンピュータが、該選択された、離散周波数信号の1つまたは複数の部分を整列させることによって、該第1の電力スペクトル信号を計算することと
を含む、請求項
13記載の方法。
【請求項19】
前記計算された第1の電力スペクトル信号が、前記離散周波数信号の第1の選択された部分と該離散周波数信号の第2の選択された部分とに基づいており、
該離散周波数信号の該第1の選択された部分が、15.625Hz~31.25Hzの第1の周波数範囲であり、
該離散周波数信号の該第2の選択された部分が、7.8125Hz~15.625Hzの第2の周波数範囲である、
請求項
18記載の方法。
【請求項20】
前記第2の電力スペクトル信号は、
前記コンピュータが、前記受信された第2の心電図信号を第2の離散周波数信号に分解するために、少なくとも1つの変換信号を適用することと、
前記コンピュータが、該第2の離散周波数信号の1つまたは複数の部分を選択することと、
前記コンピュータが、該選択された、該第2の離散周波数信号の1つまたは複数の部分を整列させることによって、該第2の電力スペクトル信号を計算することと
により生成される、請求項
13記載の方法。
【請求項21】
前記計算された第2の電力スペクトル信号が、前記第2の離散周波数信号の第1の選択された部分と該第2の離散周波数信号の第2の選択された部分とに基づいており、
該第2の離散周波数信号の該第1の選択された部分が、15.625Hz~31.25Hzの第1の周波数範囲であり、
該第2の離散周波数信号の該第2の選択された部分が、7.8125Hz~15.625Hzの第2の周波数範囲である、
請求項
20記載の方法。
【請求項22】
前記受信された第1の心電図信号を分解することは、
該受信された第1の心電図信号を離散周波数信号に分解するために、少なくとも1つの変換信号を適用することと、
該離散周波数信号の1つまたは複数の部分を選択することと、
該選択された、離散周波数信号の1つまたは複数の部分を整列させることによって、該第1の電力スペクトル信号を計算することと
を含む、請求項
15記載の方法。
【請求項23】
前記計算された第1の電力スペクトル信号が、前記離散周波数信号の第1の選択された部分と該離散周波数信号の第2の選択された部分とに基づいており、
該離散周波数信号の該第1の選択された部分が、15.625Hz~31.25Hzの第1の周波数範囲であり、
該離散周波数信号の該第2の選択された部分が、7.8125Hz~15.625Hzの第2の周波数範囲である、
請求項
22記載の方法。
【請求項24】
前記第2の電力スペクトル信号は、
前記コンピュータが、前記受信された第2の心電図信号を第2の離散周波数信号に分解するために、少なくとも1つの変換信号を適用することと、
前記コンピュータが、該第2の離散周波数信号の1つまたは複数の部分を選択することと、
前記コンピュータが、該選択された、該第2の離散周波数信号の1つまたは複数の部分を整列させることによって、該第2の電力スペクトル信号を計算することと
により生成される、請求項
23記載の方法。
【請求項25】
前記計算された第2の電力スペクトル信号が、前記第2の離散周波数信号の第1の選択された部分と該第2の離散周波数信号の第2の選択された部分とに基づいており、
該第2の離散周波数信号の該第1の選択された部分が、15.625Hz~31.25Hzの第1の周波数範囲であり、
該第2の離散周波数信号の該第2の選択された部分が、7.8125Hz~15.625Hzの第2の周波数範囲である、
請求項
24記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの制御装置は、
複数の追加のR-R時間間隔値を取得し、
最新のR-R時間間隔値のセットの中央値に基づいて、前記少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの、膨張および縮小のうちの少なくとも1つを誘発する、
請求項1記載のシステム。
【請求項27】
前記少なくとも1つの制御装置は、
前記最新のR-R時間間隔値のセットの中央値に基づいて、未来のRピークのタイミングの予測を生成し、
該生成された未来のRピークのタイミングの予測に基づいて、前記少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの、膨張および縮小のうちの少なくとも1つを誘発する
ようにさらに構成されている、請求項
26記載のシステム。
【請求項28】
前記最新のR-R時間間隔値のセットは、5つの最新のR-R時間間隔値である、請求項
26記載のシステム。
【請求項29】
前記コンピュータが、複数の追加のR-R時間間隔値を取得することと、
前記コンピュータが、最新のR-R時間間隔値のセットの中央値に基づいて、前記少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの、膨張および縮小のうちの少なくとも1つを誘発することと
をさらに含む、請求項
13記載の方法。
【請求項30】
前記コンピュータが、最新のR-R時間間隔値のセットの中央値に基づいて、未来のRピークのタイミングの予測を生成することと、
前記コンピュータが、該生成された未来のRピークのタイミングの予測に基づいて、前記少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの、膨張および縮小のうちの少なくとも1つを誘発することと
をさらに含む、請求項
29記載の方法。
【請求項31】
前記最新のR-R時間間隔値のセットは、5つの最新のR-R時間間隔値である、請求項
29記載の方法。
【請求項32】
前記コンピュータが、複数の追加のR-R時間間隔値を取得することと、
前記コンピュータが、最新のR-R時間間隔値のセットの中央値に基づいて、未来のRピークのタイミングの予測を生成することと
をさらに含む、請求項
13記載の方法。
【請求項33】
前記最新のR-R時間間隔値のセットは、5つの最新のR-R時間間隔値である、請求項
32記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月2日付で出願された米国特許出願第16/401,368号に対する優先権を主張し、その出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
本発明は、概して、医療デバイス、特に、生理学的測定に基づいた、大動脈内バルーンポンプなどの医療デバイスの操作に関連するシステムおよび方法に関する。アメリカ疾病予防管理センターのウェブサイトによると、米国では約570万人の成人が心不全を患っている。毎年、全国で約10万人が進行性心不全と診断され、大動脈内バルーンポンプのような何らかの医療サポートを必要としている。バルーンポンプは、大動脈の内側に、典型的には近位下行大動脈内に位置付けられる。(典型的に、容量40~50ミリリットルの)バルーンポンプは、左心室の収縮に合わせて膨張され縮小される。心拡張期中、バルーンは膨張され、これにより上行大動脈および大動脈弓内の血液を冠状動脈に運んで、心筋に酸素を供給する。心収縮期中、左心室が収縮するにつれて、バルーンは後負荷を低減させるように縮小される。この技法は「カウンターパルセーション」と呼ばれる。
【発明の概要】
【0003】
[本発明1001]
大動脈内バルーンポンプを操作するためのシステムであって、
患者の心臓の近傍に配置された少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプと、
該少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプに構成可能に接続された少なくとも1つの制御装置と
を含み、
該少なくとも1つの制御装置が、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つの非一時的なメモリとを含み、
該少なくとも1つの制御装置が、
該患者のアイデンティティに基づいて、1つまたは複数のパラメータの値を初期化し、
該患者の第1の心電図信号を受信し、
該受信された第1の心電図信号を分解することによって、第1の電力スペクトル信号を生成し、
該生成された第1の電力スペクトル信号の第1の部分を選択し、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数のサブセットに分割し、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算し、
該サブセットの該計算されたピーク値を第1の閾値バッファにおいて記憶させ、
該第1の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を計算する
ように構成されている、
システム。
[本発明1002]
少なくとも1つの制御装置が、
患者の第2の心電図信号を受信し、
該受信された第2の心電図信号を分解することによって、第2の電力スペクトル信号を生成し、
該生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分を選択し、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数の第2のサブセットに分割し、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数の第2のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算し、
該サブセットの該計算されたピーク値を第2の閾値バッファにおいて記憶させ、
該第2の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第2の適応可能な閾値Rピーク値を計算する
ようにさらに構成されている、本発明1001のシステム。
[本発明1003]
少なくとも1つの制御装置が、第2の適応可能な閾値Rピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を更新するようにさらに構成されている、本発明1002のシステム。
[本発明1004]
少なくとも1つの制御装置が、
計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方を、生成された第2の電力スペクトル信号に適用することによって、受信された第2の心電図信号がQRS群を含むか否かを決定し、
該受信された心電図信号がQRS群を含むと決定されたとき、該計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または該計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方に基づいて、該患者の受信された第2の心電図信号中の連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示すR-R時間間隔値を計算する
ようにさらに構成されている、本発明1002のシステム。
[本発明1005]
少なくとも1つの制御装置が、連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示す計算されたR-R時間間隔値に基づいて、未来のRピークのタイミングの予測を生成するようにさらに構成されている、本発明1004のシステム。
[本発明1006]
少なくとも1つの制御装置が、生成された未来のRピークのタイミングの予測に基づいて、少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの膨張を誘発するようにさらに構成されている、本発明1005のシステム。
[本発明1007]
少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプに構成可能に接続され、少なくとも1つの制御装置に構成可能に接続された、少なくとも1つの皮膚インターフェースデバイス
をさらに含み、
該少なくとも1つの制御装置が、該少なくとも1つの皮膚インターフェースデバイスから、患者のアイデンティティと1セットの患者固有情報とを受信するようにさらに構成されている、
本発明1001のシステム。
[本発明1008]
第1の電力スペクトル信号が、
受信された第1の心電図信号を離散周波数信号に分解するために、少なくとも1つの変換信号を適用する工程、
該離散周波数信号の1つまたは複数の部分を選択する工程、および
該選択された離散周波数信号の1つまたは複数の部分を整列させることによって、該第1の電力スペクトル信号を計算する工程
によって生成される、本発明1001のシステム。
[本発明1009]
少なくとも1つの変換信号が、ハールウェーブレットに基づいている、本発明1008のシステム。
[本発明1010]
計算された電力信号が、離散周波数信号の第1の選択された部分と該離散周波数信号の第2の選択された部分とに基づいており、
該離散周波数信号の該第1の選択された部分が、15.625Hz~31.25Hzの第1の周波数範囲であり、
該離散周波数信号の該第2の選択された部分が、7.8125Hz~15.625Hzの第2の周波数範囲である、
本発明1008のシステム。
[本発明1011]
生成された第1の電力スペクトル信号の第1の部分が、7.5秒に及ぶ、本発明1001のシステム。
[本発明1012]
生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分が、7.5秒に及ぶ、本発明1002のシステム。
[本発明1013]
生成された第1の電力スペクトル信号の選択された第1の部分の1つまたは複数のサブセットにおける各サブセットが、1.5秒に及ぶ、本発明1001のシステム。
[本発明1014]
生成された第2の電力スペクトル信号の選択された第1の部分の1つまたは複数の第2のサブセットにおける各サブセットが、1.5秒に及ぶ、本発明1002のシステム。
[本発明1015]
1つまたは複数のパラメータが、
患者の姓名、
患者の年齢、
患者の平均心拍数、
患者の最大心拍数、
患者の最小心拍数、
患者の脈拍、
患者の平均R-R時間間隔、
患者の最大R-R時間間隔、
患者の最小R-R時間間隔、
患者の平均Rピーク、
患者の最大Rピーク、
患者の最小Rピーク、
またはこれらの任意の組み合わせ
を含む、本発明1001のシステム。
[本発明1016]
大動脈内バルーンポンプを操作するためのコンピュータ実装方法であって、
患者のアイデンティティに基づいて、1つまたは複数のパラメータの値を初期化する工程、
該患者の第1の心電図信号を受信する工程、
該受信された第1の心電図信号を分解することによって、第1の電力スペクトル信号を生成する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の第1の部分を選択する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数のサブセットに分割する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算する工程、および
該サブセットの該計算されたピーク値を第1の閾値バッファにおいて記憶させる工程、ならびに
該第1の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を計算する工程
を含む、コンピュータ実装方法。
[本発明1017]
患者の第2の心電図信号を受信する工程、
該受信された第2の心電図信号を分解することによって、第2の電力スペクトル信号を生成する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分を選択する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数の第2のサブセットに分割する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数の第2のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算する工程、および
該サブセットの該計算されたピーク値を第2の閾値バッファにおいて記憶させる工程、ならびに
該第2の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第2の適応可能な閾値Rピーク値を計算する工程
をさらに含む、本発明1016のコンピュータ実装方法。
[本発明1018]
第2の適応可能な閾値Rピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を更新する工程
をさらに含む、本発明1017のコンピュータ実装方法。
[本発明1019]
計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方を、生成された第2の電力スペクトル信号に適用することによって、受信された第2の心電図信号がQRS群を含むか否かを決定する工程、および
該受信された心電図信号がQRS群を含むと決定されたとき、該計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または該計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方に基づいて、該患者の受信された第2の心電図信号中の連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示すR-R時間間隔値を計算する工程
をさらに含む、本発明1017のコンピュータ実装方法。
[本発明1020]
大動脈内バルーンポンプを操作するためのコンピュータ実装方法であって、
患者のアイデンティティに基づいて1つまたは複数のパラメータの値を初期化する工程、
該患者の第1の心電図信号を受信する工程、
該受信された第1の心電図信号を分解することによって第1の電力スペクトル信号を生成する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の第1の部分を選択する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数のサブセットに分割する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算する工程、および
該サブセットの該計算されたピーク値を第1の閾値バッファにおいて記憶させる工程、
該第1の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を計算する工程、
該患者の第2の心電図信号を受信する工程、
該受信された第2の心電図信号を分解することによって第2の電力スペクトル信号を生成する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分を選択する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数の第2のサブセットに分割する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数の第2のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算する工程、および
該サブセットの該計算されたピーク値を第2の閾値バッファにおいて記憶させる工程、
該第2の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第2の適応可能な閾値Rピーク値を計算する工程、
該計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または該計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方に基づいて、該患者の受信された第2の心電図信号中の連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示すR-R時間間隔値を計算する工程、
連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示す該計算されたR-R時間間隔値に基づいて、未来のRピークのタイミングの予測を生成する工程、ならびに
該生成された未来のRピークのタイミングの予測に基づいて、少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの膨張を誘発する工程
を含む、コンピュータ実装方法。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、いくつかの態様を図示しており、記述とともに、開示される原理を説明するのに役立つ。図面において、以下が示される。
【
図1A】いくつかの態様にしたがった、大動脈内バルーンポンプを図示している。
【
図1B】いくつかの態様にしたがった、大動脈内バルーンポンプを図示している。
【
図2】いくつかの態様にしたがった、制御装置中に典型的に組み込まれた構成要素のいくつかを示すブロック図である。
【
図3A】いくつかの態様にしたがった、制御装置の構成要素を図示している。
【
図3B】いくつかの態様にしたがった、制御装置の状態図を示している。
【
図4A】いくつかの態様にしたがった、心電図信号におけるQRS群を図示している。
【
図4B】いくつかの態様にしたがった、制御装置の電力信号モジュールによって実行される方法を図示する流れ図である。
【
図4C】いくつかの態様にしたがった、受信されて処理された心電図信号を図示している。
【
図4D】いくつかの態様にしたがった、受信されて処理された心電図信号を図示している。
【
図4E】いくつかの態様にしたがった、変換信号を図示している。
【
図4F】いくつかの態様にしたがった、分解された心電図信号を図示している。
【
図4G】いくつかの態様にしたがった、分解された心電図信号を図示している。
【
図4H】いくつかの態様にしたがった、心電図信号および対応する分解された電力信号を図示している。
【
図4I】いくつかの態様にしたがった、心電図信号および対応する分解された電力信号を図示している。
【
図5A】いくつかの態様にしたがった、制御装置のQRS検出モジュールによって実行される方法を図示する流れ図である。
【
図5B】いくつかの態様にしたがった、閾値を計算するためのhピーク値の選択を図示している。
【
図6】いくつかの態様にしたがった、Rピークの発生を検出するための適応可能な閾値を適用した結果を図示している。
【
図7】いくつかの態様にしたがった、Rピークの発生を検出するために適応可能な閾値を適用した結果を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0005】
詳細な説明
大動脈内バルーンポンプデバイスは、典型的に、効率的かつ最適な操作のためにECG信号を処理する。ECG信号処理および大動脈内バルーンポンプ操作の最も重要な部分のうちの1つは、QRS群の解釈と、その特性を取得することである。QRS群は、典型的な心電図に見られる3つのグラフィカルな偏向の組み合わせに対する名称である。成人では、QRS群は通常0.06~0.10秒継続し、小児では、そして身体活動中は、QRS群はより短い場合がある。Q、R、およびS波は、立て続けに発生し、すべての導出に出現するわけではなく、単一の事象を反映するので通常一緒に考慮される。Q波は、P波の直後に続く任意の下向きの偏向である。R波は上向きの偏向として続き、S波は、R波の後の、任意の下向きの偏向である。T波はS波に続き、場合によっては追加のU波がT波に続く。
【0006】
R波は、本群の最も重要な部分のうちの1つであり、これは心拍リズム不整の診断において、また、心拍変動(HRV)を決定する際に不可欠な役割を有する。QRS群を検出するための従来のシステムは、差異化方法、デジタルフィルタ、神経回路網、フィルタバンク、隠れマルコフモデル、遺伝的アルゴリズム、および最大事後確率(MAP)推定量を含む。これらの方法は、ノイズに非常に敏感であり、一般的に、ECG信号におけるR波の正確なタイミングを検出する際に誤りを起こす。結果として、従来の大動脈内バルーンポンプのためのシステムおよび方法は、バルーンポンプの膨張および/または縮小のタイミングを予測できないことを欠点としている。
【0007】
R波の発生およびタイミングを正確に検出するために、従来の手法の欠陥を考慮して、本発明者らは、より正確で信頼性のある効率的なR波およびRピークタイミングを予測する新たな手法が、著しい有用性を有するであろうことを認識した。
【0008】
未来のRピークの発生のタイミングを予測して、大動脈内バルーンポンプを効率的に膨張および/または縮小するための解決策をもたらす、ソフトウェア、ハードウェア、および/またはファームウェアファシリティ(「ファシリティ」)が記述される。いくつかの態様において、ファシリティは、3つの状態:(1)初期化状態;(2)学習状態;および(3)ピーク検出状態を含む状態機械として作動する。以下で考察される方法のうちいくつかまたはすべてを実行することによって、ファシリティは、未来のRピークの予測を改善するので、対応する大動脈内バルーンポンプは、効率的で信頼性のある方法で膨張および/または縮小される。このことは結果として、患者の心臓拍動を自然に近いリズムに保つ、改善された患者治療体験となる。本明細書において記述されるQRS検出および/またはR-Rタイミングのためのファシリティは、ペースメーカ、心臓モニタ、除細動器、心拍モニタ、スマートウォッチ、アスレチックアクセサリ等を含むが、それらに限定されないさまざまなデバイスに使用されてもよい。
【0009】
図面の説明
以下の記述は、実例となる例の特定の具体的な詳細を提供する。しかしながら、当業者は、多くのこれらの詳細なしで態様が実施できることを理解するであろう。同様に、当業者はまた、本開示が、本明細書において詳細に説明されない他の多くの特徴を含み得ることも理解するであろう。さらに、よく知られたいくつかの構造または機能は、さまざまな例の関連する記述を不必要に曖昧にするのを回避するために、以下で詳細には示されないか、または説明されない場合がある。
【0010】
図面を参照して、以下でさらに詳細にいくつかの実現を考察する。ここで図面を参照すると、
図1Aおよび
図1Bは、大動脈内バルーンポンプファシリティ100の例を図示している。大動脈内バルーンポンプ100は、患者の大動脈の内側に垂下するための寸法にされ、形成されてもよい。大動脈内バルーンポンプ100は、皮膚インターフェースデバイス105に接続する内部ドライブライン103に構成可能に接続されたバルーン101を含んでもよい。
図1Bに図示されるように、外部ドライブライン107は、皮膚インターフェースデバイス105をドライバ109に接続してもよい。
【0011】
近位端において、バルーン101は、内部ドライブライン103の遠位端に接続される。皮膚インターフェースデバイス105は、内部ドライブライン103の近位端を外部ドライブライン107の遠位端に接続する。外部ドライブライン107の近位端は、ドライバ109に接続される。ドライバ109は、制御装置111を含むか、またはこれに接続されてもよい。動脈インターフェース113は、動脈壁に内部ドライブライン103を通すための寸法にされ、形成されてもよい。
【0012】
いくつかの態様では、大動脈内バルーンポンプ100は、本明細書において記述されたシステムおよび方法にしたがって構成された制御装置111を含んでもよい。制御装置111は、ポンピング媒体(例えば、空気)の流れ、ならびにバルーン101の膨張および縮小を制御するために、ドライバ109のバルブおよびベロー(図示せず)の操作を制御してもよい。制御装置111は、バルーン101および周辺領域から、1つまたは複数の信号を受信してもよい。信号は、電極、圧力センサ等から受信したもの(例えば、心電図信号)を含んでもよい。いくつかの態様において、制御装置111は、例えば、皮膚インターフェースデバイス105から、患者についての以下の1つまたは複数のデータ値:患者識別子(例えば、特有の患者識別英数字列);患者の姓名;患者の年齢;患者の平均心拍数;患者の最大心拍数;患者の最小心拍数;患者の脈拍;患者の平均R-R時間間隔;患者の最大R-R時間間隔;患者の最小R-R時間間隔;患者の平均Rピーク;患者の最大Rピーク;患者の最小Rピークなどを受信する。いくつかの態様では、制御装置111は、患者についての受信された情報のサブセットに基づいて、1つまたは複数の上記に列挙されたデータ値を取り出すおよび/または計算する。例えば、患者識別子に基づいて、制御装置111は、以下のデータ値:患者の姓名;患者の平均心拍数;患者の脈拍;および患者の平均R-R時間間隔を(例えば、通信接続されたメモリから)取り出す。
【0013】
図2は、制御装置111に典型的に組み込まれた構成要素のいくつかを示すブロック図である。さまざまな態様において、制御装置111は、以下:コンピュータプログラムを実行するための中央処理装置(「CPU」)101;ファシリティおよび関係付けられたデータ、カーネルを含むオペレーティングシステム、およびデバイスドライバを含む、それらが使用されている間プログラムおよびデータを記憶するためのコンピュータメモリ102;プログラムおよびデータ(例えば、患者関連データ)を永続的に記憶するためのハードドライブまたはフラッシュドライブなどの永続性記憶装置103;コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されたプログラムおよびデータを読み取るためのフロッピー、CD-ROM、またはDVDドライブなどのコンピュータ読み取り可能なメディアドライブ104;ならびにインターネットまたは別のネットワーク経由のような、コンピュータシステムを他のコンピュータシステムに接続してデータを送るおよび/または受信するためのネットワーク接続105と、そのネットワーキングハードウェア、例えばスイッチ、ルータ、リピータ、電気ケーブルおよび光ファイバ、発光器および受光器、無線送信機および受信機等の各々のうちのゼロまたはそれより多くを含む。例えば、ネットワーク接続105を介して、制御装置111は、遠隔データ記憶位置(例えば、クラウドデータ記憶位置)から、患者関連データを取り出すことができる。上述のように構成されたコンピュータシステムは、典型的に制御装置111の操作をサポートするために使用されるが、当業者は、ファシリティが、さまざまなタイプのデバイスおよびコンフィギュレーションを使用し、さまざまな構成要素を有して実現されてもよいことを正しく認識するであろう。
【0014】
図3Aは、いくつかの態様にしたがった、制御装置の構成要素を図示している。いくつかの態様では、制御装置が大動脈内バルーンポンプのためのドライブユニット上にあるように構成されてもよい。制御装置111は、信号受信機モジュール307、電力信号モジュール309、QRS検出モジュール311、R-Rタイミングモジュール313、およびドライブユニットモデレータモジュール315を含んでもよい。いくつかの態様において、制御装置は、
図3Bに描かれた3つの状態:(1)初期化状態325;(2)学習状態330;および(3)ピーク検出状態335を含む状態機械として作動する。
【0015】
初期化状態
制御装置の信号受信機モジュール307は、信号(例えば、アナログ心電図信号)を受信するように構成されてもよい。例えば、制御装置は、遠隔デバイス(例えば、患者の体内に埋め込まれた1つまたは複数の皮膚インターフェースデバイス(SID))から心電図信号を受信する。出願人の米国特許第9,265,871号および米国特許第10,137,230号は、適切なSIDに関するさらなる詳細を提供し、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。いくつかの態様では、信号受信機モジュール307は、受信された心電図信号をデジタル化し、および/または、1つまたは複数のフィルタを適用して、ファシリティによるさらなる処理に適したフィルタリングされた心電図信号を取得する。例示的なフィルタは、バンドパスフィルタ、微分フィルタ、二乗フィルタ、および/または、可動の窓積分を適用することを含んでもよいが、これらに限定されない。
図4Aは、いくつかの態様にしたがった(QRS群403を含む)心電図信号400の一部分を図示している。QRS群403は、心臓の脱分極を示す心電図信号の特徴である。Rピーク401は、QRS群403内の要素である。これらのピークのリアルタイムでの検出は、典型的にQRS群を表す顕著なピークと、ノイズに関係付けられ得る軽微なピークであるT波またはP波とを区別することができる適正な閾値を必要とする。本明細書において記述されるファシリティは、QRS群およびRピークを正確に検出して予測するように構成されている。初期化状態325中、制御装置は、心電図信号データを受信して、1つまたは複数の変数、バッファ、メモリ等を初期化する。例えば、制御装置は、患者識別子(例えば、特有の患者識別英数字列)を受信して、以下の1つまたは複数の変数:患者の姓名;患者の年齢;患者の平均心拍数;患者の最大心拍数;患者の最小心拍数;患者の脈拍;患者の平均R-R時間間隔;患者の最大R-R時間間隔;患者の最小R-R時間間隔;患者の平均Rピーク;患者の最大Rピーク;患者の最小Rピークなどの値を初期化する。
【0016】
学習状態
初期化状態325を完了した後、制御装置は、学習状態330に入る。学習状態330中、制御装置は、(例えば、患者についての履歴心電図信号を使用して)受信された第1の心電図信号を分解することによって、第1の電力スペクトル信号を生成する。制御装置内の電力信号モジュール309は、デジタル化されたおよび/またはフィルタリングされた心電図信号に基づいて、電力信号を生成するように構成されている。
図4Bは、いくつかの態様にしたがった、制御装置111の電力信号モジュール309によって実行される方法を図示する流れ図である。方法は、心電図(ECG)信号401を受信する動作(動作402)を含む。
図4Cおよび
図4Dは、いくつかの態様にしたがった、受信されたおよび/または処理された心電図信号410と415の一部分を図示している。動作403において、電力信号モジュール309は、受信された心電図信号を、1つまたは複数の関心対象のサブバンドまたは周波数に分解してもよい。その後、動作405では、電力信号モジュール309は、電力信号を生成するために、1つまたは複数の関心対象のサブバンドを凝集してもよい。1つまたは複数の関心対象のサブバンドは、受信された信号の特性、例えば、受信された情報ベクトルの数、心電図信号を捕捉するのに使用された電極リードの数、心電図信号を捕捉するのに使用された電極リードの位置などに基づいて選択されてもよい。
【0017】
実例となる例として、ファシリティは、(3つのベクトルに各々対応する)3本の電極リードを使用して心電図信号データを収集し、1000Hzサンプリングで監視するために(3つのベクトルのうちの1つに対応する)電極リードのうちの1本からデータを選ぶ。電力信号モジュール309は、変換信号(例えば、
図4Eに図示されたハールウェーブレット420)を適用して、選択された電極リードからの心電図信号を離散周波数信号に分解する。例えば、
図4Fおよび
図4Gは、いくつかの態様にしたがった、分解された心電図信号430と440を図示している。その後、電力信号モジュール309は、関心対象の以下のサブバンド:d5周波数範囲(15.625Hz~31.25Hz)における第1の部分と、d6周波数範囲(7.8125Hz~15.625Hz)における第2の部分とを選択する。電力信号モジュール309は、d5およびd6周波数範囲において選択された部分を整列させて、電力信号(「h信号」)=|d5.d6|を計算する。
【0018】
いくつかの態様において、ファシリティは、(3つ(またはそれ以上)のベクトルに各々対応する)3本(またはそれ以上)の電極リードを使用して心電図信号データを収集し、500Hzサンプリングで監視するために、3本すべての電極リード(3つすべてのベクトル)からデータを選ぶ。ハールウェーブレット変換を心電図データに適用した後、電力信号モジュール309は、関心対象の以下のサブバンド:d4周波数範囲(31.25Hz~62.5Hz)における第1の部分と、d5周波数範囲(15.625Hz~31.25Hz)における第2の部分とを、最良の信号特性とともにベクトルから選択する。心電図データを検出して処理することにおける遅延は、データが利用される電極(またはベクトル)の数の一次関数である(遅延=n/2、ここにおいて、nは、より高い周波数帯域の数の関数である)。例えば、選択されるより高い周波数帯域がd6となるように、単一の電極(および単一のベクトル)からのデータが、電力信号モジュール309によって使用されるとき、遅延量=32秒
である。同様に、選択されるより高い周波数帯域が5となるように、3つの電極(および3つのベクトル)からのデータが、電力信号モジュール309によって使用されるとき、遅延量=16秒
である。
【0019】
いくつかの態様では、電力信号は、QRS群におけるQからRへの上昇およびRからSへの降下に対応する2つのピークを含む。例えば、
図4Hは、対応する心電図信号445のQRS群におけるQからRへの上昇およびRからSへの降下に対応する、2つのピーク450aおよび450bを含む電力信号450を図示している。
図4Iは、心電図信号460と、その対応する分解された信号465を描く別の図表である。
【0020】
いくつかの態様では、受信された心電図信号に対応する電力信号を生成した後、制御装置内のQRS検出モジュール311は、生成された電力信号から導出された特質に向けられて、未来のRピークを検出してもよい。
図5Aは、いくつかの態様にしたがった、制御装置のQRS検出モジュール311によって実行される方法を図示する流れ図である。動作501において、QRS検出モジュール311は、計算された電力信号についての情報を収集し、非QRSおよびQRS信号に対応する値を分離する。動作503では、QRS検出モジュール311は、1つまたは複数のモデルを非QRSおよびQRS信号の分布に適合させ、初期パラメータおよび/または1つまたは複数の閾値を決定する。例えば、制御装置の学習状態中、制御装置のQRS検出モジュール311は、生成された電力スペクトル信号の第1の部分を選択し、これを生成された電力スペクトル信号の選択された部分のサブ部分を含む1つまたは複数のサブセットに分割する。
【0021】
図5Bに図示する例のように、制御装置は、心電図信号520に対応する電力スペクトル信号530の7.5秒に及ぶ一部分を選択する。制御装置は、電力信号530を、各々1.5秒に及ぶ5つのサブセット(530a、530b、530c、530d、および530e)に分割する。これらのサブセットの各々について、制御装置は、サブ部分のhピーク値を計算する。いくつかの態様では、制御装置は、サブセット内にある電力スペクトル信号の選択された部分の計算されたhピーク値(すなわち、サブセット毎の最大h信号値)を記憶する。例えば、制御装置は、第1の閾値バッファ540において、サブセットのhピーク値(535a、535b、535c、535d、および535e)を記憶する。その後、制御装置は、第1の適応可能な閾値Rピーク値を、第1の閾値バッファにおいて記憶された計算されたピーク値に基づいて計算する。例えば、制御装置は、閾値バッファ540におけるhピーク値に対する中央値(または平均値、加重平均、加重中央値など)を計算し、そして患者に対する第1の適応可能な閾値Rピーク値として中央値のパーセンテージ(例えば、40%の構成可能なパーセンテージ)を計算する。構成可能なパーセンテージは、予め決定された範囲(例えば、20%~27%)内の値であり得る。構成可能なパーセンテージ値は、自動でまたは手動で(例えば、医師によって)構成(または再構成)され得る。例えば、構成可能なパーセンテージ値は、ECG信号の信号対ノイズ比(SNR)を自動的に使用して構成(または再構成)され得る。SNRが増大するにつれて、構成可能なパーセンテージ値は低減され、これがより速い検出を導き得る。一方で、患者のノイズレベルがR波をほぼ圧倒する点に上昇したとき、構成可能なパーセンテージ値は、ノイズにポンプを誘発するのを回避するために、引き上げられ得る。別の例として、構成可能なパーセンテージ値は、R波振幅変動の測定を使用して、自動的に構成(または再構成)され得る。心室性期外収縮(PVC)、二段脈もしくは三段脈、または他の心臓症状を有する心不全患者の場合にあり得るように、患者のR波ピーク振幅が、大きくまたは何度も変化したとき、制御装置は、構成可能なパーセンテージ値を調節できるので、これは低振幅および高振幅R波の両方を検出できる。このような測定の例は、学習段階の間、または、時折検出段階で実行中、特定の持続期間の別の「検査」期間の間にさえ測定される、いくつかのセットの最大h信号ピーク値の標準偏差または分散になるかもしれない。制御装置は、更新された心電図信号値に基づいて、第1の閾値バッファ540における値を周期的に更新して、その後患者に対する第1の適応可能な閾値Rピーク値を再計算できる。
【0022】
いくつかの態様では、制御装置は、hピーク値の算出から異常値を除去する異常値検出ルーチンを実行する。この方法で、ファシリティは、hピーク値が計算されるQRS検出モジュール311によって行われるプロセスのさまざまなステージで、異常値検出を実現することによって、異常値に敏感であることで知られる従来のシステムの問題に対処する。いくつかの態様では、異常値は、中央値(または、平均値、または加重平均、または加重中央値など)の値から3つの標準偏差にあるものとして定義されてもよい。いくつかの態様において、制御装置は、計算上の簡潔さのために、そして標準偏差のさらなる正確な推定を提供するために、異常値の近似値を使用する。いくつかの態様では、異常値は、γ*平均値(ピーク)よりも大きな値として定義されてもよく、ここにおいて、γ>1である。いくつかの態様では、QRS検出モジュール311は、右側異常値(すなわち、中央値よりも著しく大きな値)を考慮するのみでもよい。
【0023】
ピーク検出状態
患者に対する第1の適応可能な閾値Rピーク値を計算した後、制御装置は、ピーク検出状態335に入る。
図5Aにおいて動作505で描かれるように、制御装置のQRS検出モジュール311は、患者の現在の/最新の心電図信号(第2の心電図信号)を受信する。学習状態330のように、ピーク検出状態335における制御装置は、受信された第2の心電図信号を分解することによって、第2の電力スペクトル信号を生成する。例えば、制御装置は、生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分を選択して、生成された第2の電力スペクトル信号の選択された第1の部分を、生成された第2の電力スペクトル信号の選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数の第2のサブセットに分割する。例えば、制御装置は、第2の電力スペクトル信号の7.5秒に及ぶ一部分を選択し、これを各々1.5秒に及ぶ5つのサブセットに分割する。これらのサブセットの各々について、制御装置は、サブセット内にある第2の電力スペクトル信号の選択された第1の部分のサブ部分のピーク値(すなわち、サブセット毎のピークh信号値)を計算する。いくつかの態様では、制御装置は、第2の閾値バッファにおいて、サブセットの計算されたピーク値を記憶する。その後、制御装置は、第2の閾値バッファにおいて記憶された計算されたピーク値に基づいて、第2の適応可能な閾値Rピーク値を計算する。例えば、制御装置は、第2の閾値バッファにおけるh信号値に対する中央値を計算し、そして、患者に対する第2の適応可能な閾値Rピーク値として、中央値のパーセンテージ(例えば、40%の構成可能なパーセンテージ値)を計算する。
【0024】
動作507において、制御装置は、学習状態の間(例えば、動作503において)学習されたモデルを第2の電力スペクトル信号に適用する。いくつかの態様では、制御装置は、第1の適応可能な閾値Rピーク値、第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方を、現在受信された心電図信号に対応する電力信号に適用することによって、現在受信された心電図信号がQRS群を含むか否かを決定する。例えば、いくつかの態様では、QRS群の存在は、電力信号が、第1の適応可能な閾値Rピーク値、第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方よりも大きいときに決定される。QRS群の欠如は、電力信号が閾値よりも小さいときに決定される。心電図信号は、その統計上の特性が経時的に変化する非定常性の信号であるので、いくつかの態様では、手法は、この閾値が信号の変化する特性とともに変化するように適応可能にするように発展させた。さらに、ファシリティは、QRSの位置についての先行情報を含むこと、どのくらい近くに隣接するQRS群が時間内にあり得るかを制限すること、そして検出における過去の誤りに基づいて未来の決定を改善することなどの、検出整合性を改善するための他の仕組みを含んでいてもよい。
【0025】
図6および
図7は、Rピークの発生を検出するために適応可能な閾値を適用した結果を図示している。例えば、
図6に図示されるように、電力信号601が生成されてもよく、これは心電図信号603を反映している。適応可能な閾値605は、電力信号601に適用されて、QRS群607を検出し、Rピーク609を推定してもよい。
図7は、同様に、Rピークの発生を検出するために適応可能な閾値を適用した結果を図示している。図示のように、電力スペクトル信号701が生成されてもよく、これは心電図信号703を反映している。図示されるように、Rピーク検出705は、電力スペクトル701上に重ねられてもよい。
【0026】
受信された心電図信号がQRS群を含むと決定されたとき、QRS信号、QRS検出、Rピーク、およびQRS検出モジュール311からの他のデータは、R-Rタイミングモジュール313に移されてもよい。R-Rタイミングモジュール313は、患者の受信された第2の心電図信号中の連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示すR-R時間間隔値を計算する。R-R時間間隔値は、7つの最新のR-R間隔のバッファの平均をとることによって決定されてもよい。いくつかの態様では、R-R時間間隔値は、5つの最新のR-R間隔の中央値として算出される。中央値を使用することは、結果として、急速に変化する心拍数に対するシステムのより速い応答とともに、中央値(対平均値)の上位の異常値棄却となってもよい。制御装置は、算出されたR-R間隔の逆数をとり、毎分脈拍(BPM)で心拍数を提供するために60を掛けることによって、患者の心拍数を決定してもよい。制御装置はまた、連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示す計算されたR-R時間間隔値に基づいて、1つまたは複数の未来のRピークのタイミングの予測を生成してもよい。いくつかの態様では、制御装置は、未来のRピークのタイミングの生成された予測に基づいて、少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの膨張を誘発する。
【0027】
未来のR要素発生の予測に基づいて、制御装置111のドライブユニットモデレータ315を使用して、大動脈内バルーンポンプのドライブユニット305または他の医療デバイスを制御してもよい。例えば、バルーンの膨張は、QRS群における未来のR要素の予測される発生にタイミングを合わされてもよい。
【0028】
制御装置は、更新された心電図信号値に基づいて、第1および/または第2の閾値バッファにおける値を周期的に更新して、その後、患者に対する第2の適応可能な閾値Rピーク値を再計算する。いくつかの態様では、制御装置は、第2の適応可能な閾値Rピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を更新するおよび/または逆も同様である(
図5A、動作509)。
【0029】
いくつかの態様では、第2の閾値バッファの内容の少なくとも一部分は、第1の閾値バッファのものによって置き換えられている(事実上、学習状態値に基づいて、適応可能な閾値計算を再設定している)。例えば、すべての再構成可能な時間間隔(例えば、30秒)の後、(ピーク検出状態中に格納された)第2の閾値バッファの内容は、(学習状態中に格納された)第1の閾値バッファの内容によって置き換えられる。いくつかの態様では、制御装置が、ある特定の時間間隔(例えば、10秒、30秒等)内にR波を検出しない場合、制御装置は、損失R波を示すコードによる警告を宣言する。損失R波警告は、(例えば、視覚インジケータ(点滅光、閃光メッセージなど)、音声インジケータ(警笛音、メッセージの読み出しなど)、もしくは他の任意の手段として)送信されるおよび/または伝達されることができる。制御装置が、損失R波警告を宣言したとき、これは初期化状態に再設定して、ピーク検出プロセスを再開してもよい。
【0030】
いくつかの態様では、QRS検出モジュール311は、1つまたは複数の訂正プロセスを含む。いくつかの態様では、訂正プロセスは、偽陰性の存在下で中央値メトリックを適応させてもよい。特に、訂正プロセスは、検出における誤りから学習してもよい。いくつかの態様では、訂正プロセスは、適応可能なサーチバックを含んでもよく、これは、QRS事象が不正確に欠損された可能性(偽陰性)を識別し、それに応じて中央値メトリックを調節するように試行する。心拍数がQRS事象からQRS事象で激しく低下しないと仮定すると、QRS事象検出の欠如は、事象が欠損された可能性(すなわち、偽陰性)のインジケータとなり得る。
【0031】
訂正プロセスは、QRS事象が窓において検出されたかどうかを決定するために、電力信号の1つまたは複数の窓に注目してもよい。QRS事象が検出されなかった場合、訂正プロセスは、有限窓に注目し、その範囲に渡って電力信号の最大値を識別してもよい。訂正プロセスは、検出に使用される閾値が高過ぎたために、QRS検出モジュール311によって欠損されたQRS事象に最大値が対応したと仮定してもよい。この欠損された検出を考慮に入れると、訂正プロセスは、この欠損QRS事象に関係付けられたピーク値を組み込んでもよく、結果となる中央値を、予め定義されたパーセンテージだけ(例えば15%)低減させる。この欠損された値の中央値への組み込みとさらなるパーセンテージ低減は、QRS検出モジュール311が、QRS事象に関係付けられたピーク値における低減の存在下で迅速に適応できるようにし、結果として拍動の欠損がより少なくなる。
【0032】
類似した訂正プロセスが、偽陽性の事象において使用されてもよい。言い換えれば、QRS検出モジュール311によって使用される中央値メトリックはまた、偽陽性の存在下で適応されてもよい。いくつかの態様では、訂正プロセスは、真のQRS事象の前または後に直接行われた不正確な検出からの結果となる偽陽性を考慮してもよい。真のQRS事象に関係付けられた電力信号におけるピーク値が、前または後QRS偽事象に属するものよりも大きなピーク値を有するであろうと仮定すると、誤検出に対応する可能性があるピークは、2つのカテゴリ:前QRS誤検出および後QRS誤検出に分離される。前QRS誤検出は、真のQRS事象が検出論理を誘発する前に、事象が時間窓(例えば、400ms)に達したときに起こる。400msの時間窓は、150bpmの仮定最大心拍数を反映する。このシナリオの下で、前QRS事象に関係付けられたピーク値およびQRS事象に関係付けられたピーク値の両方が、中央値メトリックに組み込まれるであろうことから、QRS検出モジュール311は、閾値が低過ぎるので、前QRS事象を誘発している。
【0033】
前QRS偽事象に関係付けられたピーク値の中央値メトリックへの継続的な組み込みは、この誤りを永続させるであろう。したがって、訂正プロセスを使用することで、第2のピーク(すなわち、真のQRS事象)が第1のピーク(すなわち、前QRS事象)よりも高い2つのピークが、互いの時間窓(例えば、400ms)内で識別された場合、第1のピークの値は、中央値メトリックから除去されて、結果となる中央値は、あるパーセンテージ(例えば、15%)だけ増大される。閾値におけるこの増大は、類似した偽陽性が後続の事象では起こらないであろうことを確実にするように試行する。この方法で、訂正プロセスは、前QRS偽事象について訂正してもよい。
【0034】
後QRS誤検出は、事象が、真のQRS事象の後に、時間窓(例えば、400ms)内でQRS検出モジュール311を誘発したときに起こり得る。このシナリオの下で、第1のピーク(すなわち、真のQRS事象)は、第2のピーク(すなわち、後QRS事象)よりも高くなるであろう。第2の事象を誘発するQRS検出モジュール311は、閾値が低過ぎるので、結果として偽陽性となることを示す。この後QRS偽事象に関係付けられたピーク値を組み込むことは、継続される偽陽性を導く可能性があるであろうことを考慮に入れると、第2のピークの値は、中央値メトリックに組み込まれない。中央値メトリックは再び、あるパーセンテージ(例えば、15%)だけ増大される。閾値におけるこの増大は、類似した偽陽性が後続の事象に起こらないであろうことを確実にするように試行する。
【0035】
本明細書において記述された技術は、それらがQRSおよび非QRS分布の特性を直接構築するよりもむしろ近似させることによって迅速に初期化することから、従来の方法を超えるいくつかの利点を有する。さらに、それらはQRSおよび非QRS分布を直接計算するよりもむしろ近似させることにより、従来のシステムよりも少ないメモリや処理しか必要としない。さらに、QRS検出モジュール311について記述された技術は、電力信号における突然の変化に適応するのがより速い。
【0036】
例
本技術のいくつかの局面は、便宜上番号付けされた(1,2,3,等)以下の例から明らかとなる。これらは、例として提供されているのであり、主題技術を限定するものではない。
1.大動脈内バルーンポンプを操作するためのシステムであって、
患者の心臓の近傍に配置された少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプと、
該少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプに構成可能に接続された少なくとも1つの制御装置と
を含み、
該少なくとも1つの制御装置が、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つの非一時的なメモリとを含み、
該少なくとも1つの制御装置が、
該患者のアイデンティティに基づいて、1つまたは複数のパラメータの値を初期化し、
該患者の第1の心電図信号を受信し、
該受信された第1の心電図信号を分解することによって、第1の電力スペクトル信号を生成し、
該生成された第1の電力スペクトル信号の第1の部分を選択し、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数のサブセットに分割し、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算し、
該サブセットの該計算されたピーク値を第1の閾値バッファにおいて記憶させ、
該第1の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を計算する
ように構成されている、
システム。
2.少なくとも1つの制御装置が、
患者の第2の心電図信号を受信し、
該受信された第2の心電図信号を分解することによって、第2の電力スペクトル信号を生成し、
該生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分を選択し、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数の第2のサブセットに分割し、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数の第2のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算し、
該サブセットの該計算されたピーク値を第2の閾値バッファにおいて記憶させ、
該第2の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第2の適応可能な閾値Rピーク値を計算する
ようにさらに構成されている、例1のシステム。
3.少なくとも1つの制御装置が、第2の適応可能な閾値Rピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を更新するようにさらに構成されている、例2のシステム。
4.少なくとも1つの制御装置が、
計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方を、生成された第2の電力スペクトル信号に適用することによって、受信された第2の心電図信号がQRS群を含むか否かを決定し、
該受信された心電図信号がQRS群を含むと決定されたとき、該計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または該計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方に基づいて、該患者の受信された第2の心電図信号中の連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示すR-R時間間隔値を計算する
ようにさらに構成されている、例2のシステム。
5.少なくとも1つの制御装置が、連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示す計算されたR-R時間間隔値に基づいて、未来のRピークのタイミングの予測を生成するようにさらに構成されている、例4のシステム。
6.少なくとも1つの制御装置が、生成された未来のRピークのタイミングの予測に基づいて、少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの膨張を誘発するようにさらに構成されている、例5のシステム。
7.少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプに構成可能に接続され、少なくとも1つの制御装置に構成可能に接続された、少なくとも1つの皮膚インターフェースデバイス
をさらに含み、
該少なくとも1つの制御装置が、該少なくとも1つの皮膚インターフェースデバイスから、患者のアイデンティティと1セットの患者固有情報とを受信するようにさらに構成されている、
前記例のいずれかのシステム。
8.第1の電力スペクトル信号が、
受信された第1の心電図信号を離散周波数信号に分解するために、少なくとも1つの変換信号を適用する工程、
該離散周波数信号の1つまたは複数の部分を選択する工程、および
該選択された離散周波数信号の1つまたは複数の部分を整列させることによって、該第1の電力スペクトル信号を計算する工程
によって生成される、前記例のいずれかのシステム。
9.少なくとも1つの変換信号が、ハールウェーブレットに基づいている、例8のシステム。
10.計算された電力信号が、離散周波数信号の第1の選択された部分と該離散周波数信号の第2の選択された部分とに基づいており、
該離散周波数信号の該第1の選択された部分が、15.625Hz~31.25Hzの第1の周波数範囲であり、
該離散周波数信号の該第2の選択された部分が、7.8125Hz~15.625Hzの第2の周波数範囲である、
例8のシステム。
11.生成された第1の電力スペクトル信号の第1の部分が、7.5秒に及ぶ、前記例のいずれかのシステム。
12.生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分が、7.5秒に及ぶ、例2のシステム。
13.生成された第1の電力スペクトル信号の選択された第1の部分の1つまたは複数のサブセットにおける各サブセットが、1.5秒に及ぶ、前記例のいずれかのシステム。
14.生成された第2の電力スペクトル信号の選択された第1の部分の1つまたは複数の第2のサブセットにおける各サブセットが、1.5秒に及ぶ、例2のシステム。
15.1つまたは複数のパラメータが、
患者の姓名、
患者の年齢、
患者の平均心拍数、
患者の最大心拍数、
患者の最小心拍数、
患者の脈拍、
患者の平均R-R時間間隔、
患者の最大R-R時間間隔、
患者の最小R-R時間間隔、
患者の平均Rピーク、
患者の最大Rピーク、
患者の最小Rピーク、
またはこれらの任意の組み合わせ
を含む、前記例のいずれかのシステム。
16.大動脈内バルーンポンプを操作するためのコンピュータ実装方法であって、
患者のアイデンティティに基づいて、1つまたは複数のパラメータの値を初期化する工程、
該患者の第1の心電図信号を受信する工程、
該受信された第1の心電図信号を分解することによって、第1の電力スペクトル信号を生成する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の第1の部分を選択する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数のサブセットに分割する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算する工程、および
該サブセットの該計算されたピーク値を第1の閾値バッファにおいて記憶させる工程、ならびに
該第1の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を計算する工程
を含む、コンピュータ実装方法。
17.患者の第2の心電図信号を受信する工程、
該受信された第2の心電図信号を分解することによって、第2の電力スペクトル信号を生成する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分を選択する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数の第2のサブセットに分割する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数の第2のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算する工程、および
該サブセットの該計算されたピーク値を第2の閾値バッファにおいて記憶させる工程、ならびに
該第2の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第2の適応可能な閾値Rピーク値を計算する工程
をさらに含む、例16のコンピュータ実装方法。
18.第2の適応可能な閾値Rピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を更新する工程
をさらに含む、例17のコンピュータ実装方法。
19.計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方を、生成された第2の電力スペクトル信号に適用することによって、受信された第2の心電図信号がQRS群を含むか否かを決定する工程、および
該受信された心電図信号がQRS群を含むと決定されたとき、該計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または該計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方に基づいて、該患者の受信された第2の心電図信号中の連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示すR-R時間間隔値を計算する工程
をさらに含む、例17のコンピュータ実装方法。
20.大動脈内バルーンポンプを操作するためのコンピュータ実装方法であって、
患者のアイデンティティに基づいて1つまたは複数のパラメータの値を初期化する工程、
該患者の第1の心電図信号を受信する工程、
該受信された第1の心電図信号を分解することによって第1の電力スペクトル信号を生成する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の第1の部分を選択する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数のサブセットに分割する工程、
該生成された第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第1の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算する工程、および
該サブセットの該計算されたピーク値を第1の閾値バッファにおいて記憶させる工程、
該第1の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第1の適応可能な閾値Rピーク値を計算する工程、
該患者の第2の心電図信号を受信する工程、
該受信された第2の心電図信号を分解することによって第2の電力スペクトル信号を生成する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の第1の部分を選択する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分を、該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分のサブ部分を含む1つまたは複数の第2のサブセットに分割する工程、
該生成された第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該1つまたは複数の第2のサブセットにおける各サブセットについて、
該サブセット内にある該第2の電力スペクトル信号の該選択された第1の部分の該サブ部分のピーク値を計算する工程、および
該サブセットの該計算されたピーク値を第2の閾値バッファにおいて記憶させる工程、
該第2の閾値バッファにおいて記憶された該計算されたピーク値に基づいて、第2の適応可能な閾値Rピーク値を計算する工程、
該計算された第1の適応可能な閾値Rピーク値、または該計算された第2の適応可能な閾値Rピーク値、または両方に基づいて、該患者の受信された第2の心電図信号中の連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示すR-R時間間隔値を計算する工程、
連続的なQRS群における2つの連続的なRピーク間のタイミングを示す該計算されたR-R時間間隔値に基づいて、未来のRピークのタイミングの予測を生成する工程、ならびに
該生成された未来のRピークのタイミングの予測に基づいて、少なくとも1つの大動脈内バルーンポンプの膨張を誘発する工程
を含む、コンピュータ実装方法。
【0037】
結論
実例となる態様が本明細書において記述される一方で、この範囲は、本開示に基づいて当業者によって正しく認識されるであろう、同等の要素、修正、省略、(例えば、さまざまな態様に渡る局面の)組み合わせ、適応、および/または変更を有するありとあらゆる態様を含む。例えば、例示的なシステムにおいて示される構成要素の番号および向きは、修正されてもよい。
【0038】
当業者は、
図4B、
図5A、
図5B、および
図8において示されたプロセスが、さまざまな方法で変更されてもよいことを正しく認識するであろう。例えば、動作の順序は再構成されてもよく、いくつかの動作は並行して実行されてもよく、示された動作は省略されてもよく、または他の動作が含まれてもよく、示された動作はサブ動作に分割されてもよく、または、複数の示された動作が単一の動作に結合されてもよい等である。
【0039】
上述のファシリティは、そのまま適応されるか、またはさまざまな方法で拡張されてもよいことが、当業者によって正しく認識されるであろう。前記の記述は特定の態様について言及しているが、発明の範囲は、添付の特許請求の範囲と、そこに規定された要素によってのみ定義される。