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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】キトサンベースのコーティングシステム
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20241108BHJP
   C09D 105/08 20060101ALI20241108BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20241108BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20241108BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20241108BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D105/08
C09D5/14
C09D5/00 Z
C09D133/00
C09D175/04
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2021568718
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 IB2020000385
(87)【国際公開番号】W WO2020234643
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】62/849,655
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521228282
【氏名又は名称】ボナ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シールマン ジョン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ぺシェル ピエトリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー エリカ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン チャールズ
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-361607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0210131(US,A1)
【文献】特開平11-106697(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0148994(US,A1)
【文献】特開2005-272649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 105/08
C09D 5/14
C09D 5/00
C09D 133/00
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
清浄剤、艶出し剤、又は仕上げ剤であるキャリア剤と、
キトサンアセテート溶液、キトサンシトレートアセテート溶液、又はこれらの組み合わせであるキトサンベースの作用物質を含む防腐剤と、
を含み、
前記防腐剤は前記キャリア剤と組み合わせられている、
コーティングシステム。
【請求項2】
前記キトサンベースの作用物質がキトサンアセテート溶液である、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項3】
前記キトサンベースの作用物質がキトサンシトレートアセテート溶液である、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項4】
0.01重量%~5重量%のキトサンベースの作用物質を含む、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項5】
0.01重量%~1.0重量%のキトサンベースの作用物質を含む、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項6】
前記キトサンベースの作用物質がキトサンアセテート溶液である、請求項5に記載のコーティングシステム。
【請求項7】
前記キトサンベースの作用物質がキトサンシトレートアセテート溶液である、請求項5に記載のコーティングシステム。
【請求項8】
前記キャリア剤が清浄剤であり、前記コーティングシステムが表面の洗浄用である、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティングシステム。
【請求項9】
0.01重量%~0.4重量%のキトサンベースの作用物質を含む、請求項8に記載のコーティングシステム。
【請求項10】
前記キトサンベースの作用物質が7未満のpHを有する、請求項8に記載のコーティングシステム。
【請求項11】
前記キャリア剤が艶出し剤であり、前記コーティングシステムが表面の艶出し用である、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティングシステム。
【請求項12】
0.01重量%~0.8重量%のキトサンベースの作用物質を含む、請求項11に記載のコーティングシステム。
【請求項13】
0.01重量%~0.5重量%のキトサンベースの作用物質を含む、請求項11に記載のコーティングシステム。
【請求項14】
前記キトサンベースの作用物質が6~9のpHを有する、請求項11に記載のコーティングシステム。
【請求項15】
前記キャリア剤が仕上げ剤であり、前記コーティングシステムが表面の仕上げ用である、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティングシステム。
【請求項16】
0.01重量%~0.8重量%のキトサンベースの作用物質を含む、請求項15に記載のコーティングシステム。
【請求項17】
0.01重量%~0.5重量%のキトサンベースの作用物質を含む、請求項15に記載のコーティングシステム。
【請求項18】
前記キトサンベースの作用物質が6~9のpHを有する、請求項15に記載のコーティングシステム。
【請求項19】
前記キトサンベースの作用物質がキレート剤としても機能する、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティングシステム。
【請求項20】
清浄剤、艶出し剤、又は仕上げ剤であり、水及び分散剤を含む、キャリア剤を準備する工程と
トサンアセテート溶液、キトサンシトレートアセテート溶液、又はこれらの組み合わせであるキトサンベースの作用物質と前記キャリア剤とを撹拌下で混合して、キトサンベースの分散溶液を形成する工程と、
前記キトサンベースの分散溶液をレオロジー調整剤及び消泡剤と
、該キトサンベースの分散溶液が安定化するまで組み合わせる工程と、
を含む、コーティングシステムを作製する方法。
【請求項21】
ウレタンを前記安定化したキトサンベースの分散溶液と組み合わせる工程と、アクリル樹脂を前記安定化したキトサンベースの分散溶液と組み合わせる工程とを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ウレタン及び前記アクリル樹脂を前記安定化したキトサンベースの分散溶液と組み合わせた後に艶消し剤を添加する工程を更に含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記コーティングシステムが低光沢仕上げ剤である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記分散剤が湿潤剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記安定化したキトサンベースの分散溶液にプレミックスを添加する工程を更に含み、該プレミックスが水、溶剤、湿潤剤、消泡剤及び可塑剤の1つ以上を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記キトサンベースの作用物質がキトサンアセテートである、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記キトサンベースの作用物質がキトサンシトレートアセテートである、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記コーティングシステムが清浄剤であり、前記キトサンベースの作用物質が7未満のpHを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記コーティングシステムが艶出し剤又は仕上げ剤であり、前記キトサンベースの作用物質が3~9のpHを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティングシステムが0.01重量%~5重量%のキトサンベースの作用物質を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
前記コーティングシステムが0.01重量%~1.0重量%のキトサンベースの作用物質を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
前記コーティングシステムが0.01重量%~0.5重量%のキトサンベースの作用物質を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
前記コーティングシステムが0.01重量%~0.4重量%のキトサンベースの作用物質を含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キトサンベースの作用物質を組み込んだコーティングシステムに関する。より詳細には、本発明は、清浄剤、艶出し剤又は仕上げ剤等のキャリア剤と、清浄剤、艶出し剤又は仕上げ剤といったコーティング剤の防腐剤及び/又はキレート剤として機能する、キトサンアセテート、ラクテート、シトレートアセテート、並びにそれらの組合せ及びそれらのそれぞれの塩等のキトサンベースの作用物質とを含む、水ベースのコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
民生用製品は、使用前に数年間保管されたままであることが多い。スタフィロコッカス・アウレウス(staphylococcus aureus)、アスペルギルス・ブラジリエンシス(aspergillus brasiliensis)、シュードモナス・エルギノーサ(pseudomonas aeruginosa)、カンジダ・アルビカンス(candida albicans)及びエシェリキア・コリ(escherichia coli)等の微生物が、しばしば製品パッケージに入り込み、清浄剤、艶出し剤及び仕上げ剤中の成分を攻撃するか又は餌とする。したがって、化粧品及びシャンプーから清浄剤、塗料及びワックスまでの水ベースの製品には、水ベースの材料製品に対するかかる微生物の攻撃を防止又は制限することで、かかる製品の貯蔵寿命及び使用寿命を延長するために防腐剤が組み込まれることが多い。
【0003】
かかる製品が、それらの意図された性能特性を維持することを確実にするためには、適切な量の防腐剤を用いる必要がある。さらに、製品に組み込む特定の防腐剤を選択する際に、かかる防腐剤が基礎製品の使用性に影響を与えず、基礎製品の計画された性能特性を変化させないことがしばしば重要となる。
【0004】
従来の防腐剤は、最終製品の性能を殆ど又は全く向上させない。むしろ、従来の防腐剤は、単に腐敗を制限するものであった。さらに、濃縮形態の従来の防腐剤配合物は、腐食性、アレルゲン、水生有害性(aquatic hazards)、又は更には変異原性若しくは発がん性等の多くの有害性を伴う。このため、防腐剤は、米国環境保護庁によって管理及び規制されており、防腐剤の商業的な承認には、かなりの科学的試験及びスクリーニングが必要とされる。
【0005】
防腐剤を清浄剤及び他のコーティング剤に組み込むことは、複雑な問題である。すなわち、清浄剤はラミネート、板張りの床、タイル、石又はセラミック材料の表面上に残留物が殆ど見えないか全く見えない状態を維持する必要がある。清浄剤に関する別の問題は、表面との有害な相互作用が時間とともに生じないように中性のpH7付近にする必要があることである。さらに、光沢のある又は非常にマットな艶出し剤及び仕上げ剤を配合する場合、不適合な材料の添加により、光沢の喪失又は凝集だけでなく、粘度変化、pHドリフト又は変色のような他の望ましくない問題が生じる恐れがある。
【0006】
本発明は、望ましくない増殖を制御し、かかる製品の貯蔵寿命及び使用寿命を延長するとともに、キレート剤の付加的な利益をもたらす天然由来のキトサンベースの作用物質を組み込んだ、水ベースのコーティング剤に関する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の幾つかの態様の基本的理解をもたらすために、本発明の簡略化した概要を以下に示す。本概要は本発明の包括的概観ではない。本概要は、本発明の重要若しくは不可欠な要素を特定するか、又は本発明の範囲を明確にすることを意図するものではない。その唯一の目的は、下記に示すより詳細な説明の前置きとして本発明の概念を簡単に示すことである。
【0008】
本発明は、コーティングシステムを含む。本発明の一実施の形態においては、コーティングシステムは、キャリア剤と、キトサンベースの作用物質を含む防腐剤とを含む。キトサンベースの作用物質は、キトサンアセテート及びその塩、キトサンシトレートアセテート及びその塩、又はそれらの組合せとすることができる。本発明の一実施の形態においては、キャリア剤は清浄剤、艶出し剤及び/又は仕上げ剤とすることができる。
【0009】
本発明の一実施の形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~5重量%のキトサンベースの作用物質を含んでもよい。本発明の別の実施の形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~1.0重量%のキトサンベースの作用物質を含んでもよい。本発明の更に別の実施の形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~0.10重量%のキトサンベースの作用物質を含んでもよい。また、本発明の更に別の実施の形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~0.8重量%のキトサンベースの作用物質を含んでもよい。
【0010】
代替的には、コーティングシステムは、0.01重量%~0.4重量%のキトサンベースの作用物質を含んでもよい。この実施の形態においては、キャリア剤を清浄剤とすることができ、キトサンベースの作用物質が7未満のpHを有することが好ましい。更に代替的には、コーティングシステムは、0.01重量%~0.5重量%のキトサンベースの作用物質を含んでもよい。この実施の形態においては、キャリア剤を艶出し剤又は仕上げ剤とすることができ、キトサンベースの作用物質が6~10のpHを有することが好ましい。
【0011】
本発明の一実施の形態においては、コーティングシステムは、2~7のpHを有する。さらに、キトサンベースの作用物質は、防腐剤及びキレート剤の両方として機能することができる。
【0012】
本発明は、コーティングシステムを製造する方法も含む。本発明の一実施の形態においては、上記方法は、水及び分散剤を準備する工程と、その後、水と分散剤とを混合して、分散溶液を形成する工程とを含む。次に、上記方法は、溶液形態のキトサンベースの作用物質と分散溶液とを撹拌下で混合して、キトサンベースの分散溶液を形成する工程を含む。さらに、キトサンベースの分散溶液をレオロジー調整剤及び消泡剤と、キトサンベースの分散溶液が安定化するまで組み合わせる。次いで、ウレタン及び/又はアクリル樹脂を、安定化したキトサンベースの分散溶液と個別に組み合わせることができる。
【0013】
低光沢仕上げ剤を製造するような本発明の一実施の形態においては、本発明の方法は、ウレタン及びアクリル樹脂を、安定化したキトサンベースの分散溶液と組み合わせた後に艶消し剤を添加する工程を更に含んでもよい。本発明の更なる実施の形態においては、上記方法は、安定化したキトサンベースの分散溶液にプレミックスを添加する工程を更に含んでもよい。例えば、プレミックスは水、溶剤、湿潤剤、消泡剤及び可塑剤の1つ以上を含んでもよい。
【0014】
本発明の一実施の形態においては、分散剤は湿潤剤とすることができる。さらに、本発明の一実施の形態においては、キトサンベースの溶液は、キトサンアセテート及びその塩、キトサンシトレートアセテート及びその塩、又はそれらの組合せとすることができる。本発明の方法のコーティングシステムは清浄剤、艶出し剤又は仕上げ剤とすることができる。コーティングシステムが清浄剤である場合、キトサンベースの作用物質のpHは、7未満とすることができる。コーティングシステムが艶出し剤又は仕上げ剤である場合、キトサンベースの作用物質のpHは、6~10とすることができる。
【0015】
本発明の方法の一実施の形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~5重量%のキトサンベースの作用物質を含む。本発明の方法の別の実施の形態においては、コーティング剤は、0.01重量%~1.0重量%のキトサンベースの作用物質を含む。本発明の方法の更に別の実施の形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~0.5重量%のキトサンベースの作用物質を含む。本発明の方法のまた更に別の実施の形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~0.4重量%のキトサンベースの作用物質を含む。
【0016】
本発明の更なる特徴は、以下の説明から明らかになるであろう。説明後、そのような特徴は、説明から部分的に明らかになるか、又は本発明の実施によって分かる可能性がある。上記の一般的説明及び下記の詳細な説明はどちらも例示的なものであり、説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載される発明を限定するものではないことを理解されたい。
項1
キャリア剤と、
キトサンベースの作用物質を含む防腐剤と、
を含むコーティングシステム。
項2
前記キトサンベースの作用物質がキトサンアセテート溶液及びその塩である、項1に記載のコーティングシステム。
項3
前記キトサンベースの作用物質がキトサンシトレートアセテート溶液及びその塩である、項1に記載のコーティングシステム。
項4
0.01重量%~5重量%のキトサンベースの作用物質を含む、項1に記載のコーティングシステム。
項5
前記キトサンベースの作用物質がキトサンアセテート及びその塩、キトサンシトレートアセテート溶液及びその塩、又はそれらの組合せである、項4に記載のコーティングシステム。
項6
0.01重量%~1.0重量%のキトサンベースの作用物質を含む、項1に記載のコーティングシステム。
項7
前記キトサンベースの作用物質がキトサンアセテート及びその塩、キトサンシトレートアセテート溶液及びその塩、又はそれらの組合せである、項6に記載のコーティングシステム。
項8
前記キャリア剤が清浄剤である、項1~7のいずれか一項に記載のコーティングシステム。
項9
0.01重量%~0.4重量%のキトサンベースの作用物質を含む、項8に記載のコーティングシステム。
項10
前記キトサンベースの作用物質が7未満のpHを有する、項8に記載のコーティングシステム。
項11
前記キャリア剤が艶出し剤である、項1~7のいずれか一項に記載のコーティングシステム。
項12
0.01重量%~0.8重量%のキトサンベースの作用物質を含む、項11に記載のコーティングシステム。
項13
0.01重量%~0.5重量%のキトサンベースの作用物質を含む、項11に記載のコーティングシステム。
項14
前記キトサンベースの作用物質が6~9のpHを有する、項11に記載のコーティングシステム。
項15
前記キャリア剤が仕上げ剤である、項1~7のいずれか一項に記載のコーティングシステム。
項16
0.01重量%~0.8重量%のキトサンベースの作用物質を含む、項15に記載のコーティングシステム。
項17
0.01重量%~0.5重量%のキトサンベースの作用物質を含む、項15に記載のコーティングシステム。
項18
前記キトサンベースの作用物質が6~9のpHを有する、項15に記載のコーティングシステム。
項19
前記キトサンベースの作用物質がキレート剤としても機能する、項1~7のいずれか一項に記載のコーティングシステム。
項20
水及び分散剤を準備する工程と、
水と前記分散剤とを混合して、分散溶液を形成する工程と、
溶液形態のキトサンベースの作用物質と前記分散溶液とを撹拌下で混合して、キトサンベースの分散溶液を形成する工程と、
前記キトサンベースの分散溶液をレオロジー調整剤及び消泡剤と
、該キトサンベースの分散溶液が安定化するまで組み合わせる工程と、
を含む、コーティングシステムを作製する方法。
項21
ウレタンを前記安定化したキトサンベースの分散溶液と組み合わせる工程と、アクリル樹脂を前記安定化したキトサンベースの分散溶液と組み合わせる工程とを更に含む、項20に記載の方法。
項22
前記ウレタン及び前記アクリル樹脂を前記安定化したキトサンベースの分散溶液と組み合わせた後に艶消し剤を添加する工程を更に含む、項20又は21に記載の方法。
項23
前記コーティングシステムが低光沢仕上げ剤である、項22に記載の方法。
項24
前記分散剤が湿潤剤である、項20に記載の方法。
項25
前記安定化したキトサンベースの分散溶液にプレミックスを添加する工程を更に含み、該プレミックスが水、溶剤、湿潤剤、消泡剤及び可塑剤の1つ以上を含む、項20に記載の方法。
項26
前記キトサンベースの作用物質がキトサンアセテート及びその塩、キトサンシトレートアセテート及びその塩、又はそれらの組合せである、項20に記載の方法。
項27
前記コーティングシステムが清浄剤、艶出し剤又は仕上げ剤である、項20に記載の方法。
項28
前記コーティングシステムが清浄剤であり、前記キトサンベースの作用物質が7未満のpHを有する、項27に記載の方法。
項29
前記コーティングシステムが艶出し剤又は仕上げ剤であり、前記キトサンベースの作用物質が3~9のpHを有する、項27に記載の方法。
項30
前記コーティングシステムが0.01重量%~5重量%のキトサンベースの作用物質を含む、項20に記載の方法。
項31
前記コーティングシステムが0.01重量%~1.0重量%のキトサンベースの作用物質を含む、項20に記載の方法。
項32
前記コーティングシステムが0.01重量%~0.5重量%のキトサンベースの作用物質を含む、項20に記載の方法。
項33
前記コーティングシステムが0.01重量%~0.4重量%のキトサンベースの作用物質を含む、項20に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、コーティングシステム及びその作製方法に関する。コーティングシステムは、基材及び表面に塗布される清浄剤、艶出し剤及び/又は仕上げ剤の形態とすることができる。本発明のコーティングシステムは、キトサンアセテート、キトサンアセテートラクテート、キトサンシトレートアセテート及びそれらの組合せ等のキトサンベースの作用物質を含む。キトサンベースの作用物質は、コーティングシステムの貯蔵寿命及び使用寿命の両方を延ばす防腐剤として機能する。特に、キトサンベースの作用物質をコーティングシステムに組み込むことで、コーティングシステムの機能特性に悪影響を与えることなく、微生物の増殖が防止される。さらに、キトサンベースの作用物質をコーティングシステムに組み込むことは、清浄剤のpHレベルを長時間維持するのを助けるようにも機能し、石鹸カスを減少させるキレート剤として機能し得る。
【0018】
本発明のコーティングシステムは、清浄剤、艶出し剤及び/又は仕上げ剤等のキャリア剤を、キトサンアセテート又はキトサンシトレートアセテート等のキトサンベースの作用物質である防腐剤と組み合わせて含むことができる。本発明のコーティングシステムは、コーティングシステムの目的の用途に応じて、更なる成分及び/又は添加剤と組み合わせることができる。
【0019】
本明細書においては、清浄剤、艶出し剤及び/又は仕上げ剤としての使用に関して主に説明するが、本発明のコーティングシステムが他の様々な用途を有し得ることは明らかである。さらに、キトサンベースの作用物質は、清浄剤、艶出し剤及び/又は仕上げ剤等のコーティングシステムの貯蔵寿命及び使用寿命を延長する一方で、追加の有利な特性及び性質も示し得る。
【0020】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される以下の用語は、以下に示す意味を有する。
【0021】
「キレート剤」は、水中に見られる金属イオンと結合を形成し、金属イオンが石鹸カスを形成するのを防ぐ分子を有する作用物質である。
【0022】
「キチン」は、一般に節足動物及び甲殻類の外骨格に由来する繊維状物質である。本発明のキチンベースの成分は、典型的には貝類に由来する。キチンはさらに、キノコ等の真菌においても発見されている。キチンは、織物及び食品等のシステムにおける増殖の防止等の様々な用途が知られているが、キチンは従来の溶剤に不溶であるため、コーティングシステムに関連して使用されてはいない。
【0023】
「キトサン」は、キチンの誘導体であり、通例、有機酸に可溶であるが、早期の沈殿を生じることなくpHが7前後の溶液に組み込むことはできない。
【0024】
「キトサンベースの作用物質」は、キトサンの誘導体であり、早期の沈殿を生じることなくpHが7前後の溶液に組み込むことができ、かかる溶液と組み合わせることで防腐剤として機能する。キトサンベースの作用物質には、少なくともキトサンアセテート、ラクテート、シトレートアセテート、並びにそれらの組合せ及びそれらの塩が含まれる。
【0025】
「防腐剤」は、組成物に、かかる物質の分解及び/又は望ましくない微生物増殖を制御するために添加される物質である。
【0026】
以下、本発明の実施形態及び例について詳細に言及する。これらの例に記載されている特定の成分及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するものと解釈されるべきではない。本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは概算であるが、特定の例に示す数値は可能な限り正確に報告する。ただし、あらゆる数値には、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差がそもそも含まれている。さらに、本明細書に開示される全ての範囲は、そこに含まれる任意のあらゆるサブ範囲を包含すると理解されるべきである。この明細書全体を通した例及び議論において、全ての割合、比率、及び比は、特に明記しない限り、重量(質量)基準である。
【0027】
上述の通り、キトサンベースの防腐剤を組み込んだコーティングシステムを開示する。コーティングシステムは、キャリア剤と、キトサンベースの作用物質の形態の防腐剤とを含む。キトサンベースの作用物質は、キトサンアセテート溶液及びその塩とすることができる。さらに、キトサンベースの防腐剤は、キトサンシトレートアセテート溶液及びその塩とすることができる。更に代替的には、キトサンベースの作用物質は、キトサンアセテート溶液及びキトサンシトレートアセテート溶液、並びにそれらのそれぞれの塩の組合せであってもよい。本発明の一実施形態においては、キャリア剤は清浄剤、艶出し剤及び/又は仕上げ剤とすることができる。
【0028】
本発明の一実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~5重量%のキトサンベースの作用物質を含んでもよい。本発明の別の実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~2.0重量%のキトサンベースの作用物質を含んでもよい。本発明の別の実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~1.0重量%のキトサンベースの作用物質を含んでもよい。本発明の更に別の実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~0.80重量%のキトサンベースの作用物質を含んでもよい。また、本発明の更に別の実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~0.1重量%のキトサンベースの作用物質を含んでもよい。
【0029】
キャリア剤が清浄剤である本発明の一実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~0.4重量%のキトサンベースの作用物質を含むことができる。さらにコーティングシステムにキトサンベースの作用物質と組み合わせて清浄剤を組み込む場合、キトサンベースの作用物質が7未満かつ2超のpHを有することが好ましい。より好ましくは、キトサンベースの作用物質は、清浄剤とともに使用するために3~7のpHを有する。代替的には、キャリア剤が艶出し剤又は仕上げ剤である本発明の一実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~0.5重量%のキトサンベースの作用物質を含むことができる。さらに、コーティングシステムにキトサンベースの作用物質と組み合わせて艶出し剤又は仕上げ剤を組み込む場合、キトサンベースの作用物質が6~10のpHを有することが好ましい。より好ましくは、キトサンベースの作用物質は、艶出し剤及び/又は仕上げ剤とともに使用するために6~9のpHを有する。
【0030】
本発明の一実施形態においては、コーティングシステムは、3~10のpHを有する。より好ましくは、コーティングシステムは、6~8のpHを有する。更により好ましくは、コーティングシステムは、6.5~7.5のpHを有する。
【0031】
本発明は、コーティングシステムを製造する方法も含む。本発明の一実施形態においては、上記方法は、水及び分散剤を準備する工程と、その後、水と分散剤とを混合して、分散溶液を形成する工程とを含む。次に、上記方法は、溶液形態のキトサンベースの作用物質と分散溶液とを撹拌下で混合して、キトサンベースの分散溶液を形成する工程を含む。さらに、キトサンベースの分散溶液をレオロジー調整剤及び消泡剤と、キトサンベースの分散溶液が安定化するまで組み合わせる。艶出し剤又は仕上げ剤コーティングシステムを形成する場合、樹脂としてのウレタン及び/又はアクリル及びアルキドを、安定化したキトサンベースの分散溶液と個別に組み合わせることができる。
【0032】
低光沢仕上げ剤を製造するような本発明の一実施形態においては、本発明の方法は、ウレタン及びアクリル樹脂を、安定化したキトサンベースの分散溶液と組み合わせた後に艶消し剤を添加する工程を更に含んでもよい。本発明の更なる実施形態においては、上記方法は、安定化したキトサンベースの分散溶液にプレミックスを添加する工程を更に含んでもよい。例えば、プレミックスは水、溶剤、湿潤剤、消泡剤及び可塑剤の1つ以上を含むことができる。
【0033】
本発明の一実施形態においては、分散剤は湿潤剤とすることができる。さらに、本発明の一実施形態においては、溶液形態のキトサンベースの作用物質は、キトサンアセテート及びその塩、キトサンシトレートアセテート及びその塩、又は/又はそれらの組合せとすることができる。本発明の方法のコーティングシステムは清浄剤、艶出し剤又は仕上げ剤とすることができる。
【0034】
本発明の方法の一実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~5重量%のキトサンベースの作用物質を含む。本発明の方法の別の実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~2.0重量%のキトサンベースの作用物質を含む。本発明の方法の別の実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~1.0重量%のキトサンベースの作用物質を含む。本発明の方法の更に別の実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~0.8重量%のキトサンベースの作用物質を含む。本発明の方法の更に別の実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~0.5重量%のキトサンベースの作用物質を含む。本発明の方法のなお更に別の実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~0.4重量%のキトサンベースの作用物質を含む。代替的には、本発明の方法の一実施形態においては、コーティングシステムは、0.01重量%~0.1重量%のキトサンベースの作用物質を含む。
【0035】
清浄剤を形成する本発明の方法の一実施形態においては、キトサンベースの作用物質は、分散溶液と混合した場合に7未満かつ2超のpHを有するのが好ましい。より好ましくは、キトサンベースの作用物質は、3~7のpHを有する。代替的には、艶出し剤又は仕上げ剤を形成する本発明の方法の一実施形態においては、キトサンベースの作用物質は、分散溶液と混合した場合に6~10のpHを有するのが好ましい。より好ましくは、キトサンベースの作用物質は、6~9のpHを有する。分散溶液は、キトサンベースの作用物質と混合した場合に6~9のpHを有するのが好ましい。
【0036】
キチン及び/又はキトサンを清浄剤、艶出し剤及び仕上げ剤等のコーティングシステムに組み込むことが、製品の効率及び透明性に対して悪影響を生じるが、本明細書に記載される或る特定の成分範囲でのキトサンアセテート及び/又はキトサンシトレートアセテート等のキトサンベースの作用物質の添加は、逆の効果を有し、コーティングシステムにとって非常に有利であることが出願人らによって決定された。
【0037】
すなわち、本発明のキトサンベースのコーティングシステムは、或る特定の清浄剤、艶出し剤及び仕上げ剤への微生物の攻撃を防ぐ。また、かかる清浄剤、艶出し剤及び仕上げ剤の粒径及びpHが維持され、このことは、表面上及び缶又はボトル内の透明性を維持するのに重要である。さらに、キトサンベースの作用物質は、長時間にわたってpHを維持する緩衝系として機能し、石鹸カスを減少させるキレート剤として機能した。
【0038】
本開示を包括的に説明したが、以下に示す特定の例を参照することにより、更なる理解を得ることができる。これらの例は、例示のみを目的として提供され、特に明記しない限り、包括的又は限定的であることを意図するものではない。
【実施例
【0039】
実施例及び試験
以下、本開示の例の組成物の調製、同定、及び試験について更に説明する。これらの例に記載されている特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するものと解釈されるべきではない。
【0040】
本発明のキトサンベースのコーティングシステムをスタフィロコッカス・アウレウス、アスペルギルス・ブラジリエンシス、シュードモナス・エルギノーサ、カンジダ・アルビカンス及びエシェリキア・コリ等の微生物に対して試験した。以下の工程を用いてコーティングシステムを調製した:(1)容器に水を添加する工程;(2)任意の湿潤剤又は分散剤をゆっくりと添加し、静かに混合する工程;(3)キトサンシトレートアセテート等のキトサンベースの作用物質の溶液を撹拌下でゆっくりと添加し、3分間~5分間静かに混合する工程;(4)任意のレオロジー調整剤及び/又はプロセス消泡剤を添加する工程。清浄剤については、キトサンベースの作用物質は、溶液と混合した際に7未満のpHを有していた。艶出し剤及び仕上げ剤については、以下の工程を組み込んでもよい:(5)レオロジー調整剤及び消泡剤が安定化した後に、ウレタン及びアクリル樹脂を一度に1つずつゆっくりと添加する工程。また、艶出し剤及び仕上げ剤については、キトサンベースの作用物質は、溶液と混合した際に6~9のpHを有し得る。低光沢仕上げ剤については、ウレタン及び/又はアクリル樹脂の添加後に艶消し剤をシステムに添加してもよい。最後に、水、溶剤、湿潤剤、消泡剤及び可塑剤を含有し得るプレミックスをプロセスの最後に組み込んでもよい。
【0041】
清浄剤を含むコーティングシステムにおいては、微生物の増殖は、配合物中少なくとも0.01重量%~0.4重量%のキトサンシトレートアセテートのレベルで防止された。
【0042】
キトサンベースの作用物質にポリウレタン-アクリル艶出し剤を組み込んだ。上記と同様の工程を用いて艶出し剤コーティングシステムを作製した。システムをスタフィロコッカス・アウレウス、アスペルギルス・ブラジリエンシス、シュードモナス・エルギノーサ、カンジダ・アルビカンス及びエシェリキア・コリ等の微生物に対して試験した。艶出し剤コーティングシステムにおいては、微生物の増殖は、配合物中少なくとも0.01重量%~0.5重量%のキトサンシトレートアセテート等のキトサンベースの作用物質のレベルで防止された。
【0043】
キトサンベースの作用物質に水ベースのポリウレタン仕上げ剤を組み込んだ。上記と同様の工程を用いて仕上げ剤コーティングシステムを作製した。システムをスタフィロコッカス・アウレウス、アスペルギルス・ブラジリエンシス、シュードモナス・エルギノーサ、カンジダ・アルビカンス及びエシェリキア・コリ等の微生物に対して試験した。仕上げ剤コーティングシステムにおいては、微生物の増殖は、配合物中少なくとも0.01重量%~0.5重量%のキトサンシトレートアセテート等のキトサンベースの作用物質のレベルで防止された。
【0044】
試験した全てのコーティングシステムにおいて、キトサンベースの作用物質は、艶出し剤及び仕上げ剤に対して緩衝能を生じた。また、キトサンベースの作用物質は、床材に勢いよく塗布した場合に製品の消泡を助けた。試験したコーティングシステムは、光沢の喪失若しくは凝集、粘度変化、pHドリフト又は変色を生じなかった。これらの問題は、50℃のオーブンの棚上での試験でも全く見られなかった。また、キトサンベースの作用物質は、試験した全てのコーティングシステムにおいてキレート剤として機能した。
【0045】
以上、本発明の様々な実施形態及び例について説明したが、これらの説明は、例示及び説明の目的で与えられたものであり、限定を目的とするものではない。開示されたシステム及び方法からの変形、変更、修正、及び逸脱は、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り採用することができる。実際、上述の説明を読んだ後、代替的な実施形態において本発明をどのように実施するかは、関連する技術分野(複数の場合もある)の当業者には明らかだろう。よって、本発明は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。
【0046】
さらに、要約書の目的は、様々な特許庁及び一般の人々、特に特許又は法律の用語又は表現に精通していない当該技術分野の科学者、技術者、及び実務者が、大まかな閲覧から、出願の技術的開示の性質と本質を迅速に判断できるようにすることである。要約書は、本発明の範囲をいかなる形でも限定することを意図していない。