(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】装飾効果を有する成形物品および成形物品の調製方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/26 20060101AFI20241108BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20241108BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20241108BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20241108BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241108BHJP
C08L 77/02 20060101ALI20241108BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L77/00
C08L71/02
C08L91/00
C08K3/013
C08L77/02
C08J3/22 CFG
(21)【出願番号】P 2021577474
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 US2020040223
(87)【国際公開番号】W WO2021003117
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-06-16
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】レイノソ、サラ ルイーザ
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス、ジョルジ カミネロ
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-508257(JP,A)
【文献】特開昭57-128704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/26
C08L 77/00
C08L 33/02
C08L 23/20
C08L 71/02
C08L 91/00
C08K 3/013
C08L 77/02
C08J 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾効果を有する成形物品であって、
前記成形物品の総重量に基づいて、少なくとも75重量%の中和された酸コポリマーと、
前記成形物品の総重量に基づいて、0.1重量%~5重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチであって、前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、30重量%~95重量%のポリアミド、および前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、前記ポリアミドと会合した5重量%~70重量%の第1の顔料を含む、
前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチと、
前記成形物品の総重量に基づいて、液体ベースの顔料マスターバッチに由来する0.1重量%~5重量%の第2の顔料
であって、金属着色剤または非金属着色剤である前記第2の顔料と、
前記成形物品の総重量に基づいて、前記液体ベースの顔料マスターバッチに由来する0.1重量%~0.7重量%の油ベースの担体と
を含
み、
前記中和された酸コポリマーが、前記中和された酸コポリマーの総重量に基づいて、15重量%~30重量%のアクリル酸またはメタクリル酸の共重合単位と、70重量%~85重量%のエチレンの共重合単位とを含み、
前記中和された酸コポリマーのカルボン酸基の40%~70%が、ナトリウムカチオンを含むカルボン酸塩として中和されており、
前記第2の顔料が金属着色剤であるとき、前記油ベースの担体は、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、30重量%~70重量%のポリイソブチレンと、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、30重量%~70重量%の鉱油と
を含み、
前記第2の顔料が非金属着色剤であるとき、前記油ベースの担体は、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、10重量%~30重量%のポリエチレングリコールと、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、70重量%~90重量%の鉱油と
を含む、前記成形物品。
【請求項2】
前記中和された酸コポリマーが、前記成形物品内の連続相であり、
前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチが、前記成形物品内の第1の二次相として存在しており、
前記第2の顔料が、前記成形物品内の第2の二次相として存在しており、
前記油ベースの担体は、前記成形物品内の第3の二次相として存在しており、
前記第1の二次相は、前記連続相内に均一に分布していない、請求項1に記載の成形物品。
【請求項3】
前記液体ベースの顔料マスターバッチが、
前記液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、
15重量%~60重量%の前記第2の顔料と、
前記液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、40重量%~
85重量%の前記油ベースの担体と、を含む、請求項1または2に記載の成形物品。
【請求項4】
前記中和された酸コポリマーが、ASTM D1238に従って測定され、4g/10分~6g/10分のメルトフローインデックスを有するアイオノマー樹脂である、請求項
1~3のいずれか一項に記載の成形物品。
【請求項5】
前記中和された酸コポリマーが、エチレンメタクリル酸コポリマーであり、前記エチレンメタクリル酸コポリマーにおいて、前記コポリマーのメタクリル酸基がナトリウムイオンで少なくとも部分的に中和されている、請求項
1~4のいずれか一項に記載の成形物品。
【請求項6】
前記油ベースの担体が、ポリイソブチレン、ポリエチレングリコール、鉱油、またはそれらの組み合わせを含む、請求項
1~5のいずれか一項に記載の成形物品。
【請求項7】
前記第1の顔料が、カーボンブラック、ニグロシン
、カドミウム顔料、クロム顔料、コバルト顔料、銅顔料、酸化鉄顔料、鉛顔料、マンガン顔料、水銀顔料、チタン顔料、亜鉛顔料、アルミニウム粉末、バインブラック、ランプブラック、アイボリーブラック、粘土顔料、酸化鉄、イエローオーカー、ローシェンナ、バーントシェンナ、ローアンバー、バーントアンバー、ウルトラマリン顔料、アリザリン、アリザリンクリムゾン、ガンボージ、コチニールレッド、ローズマダー、インディゴ、インディアンイエロー、ティリアンパープル、キナクリドン、マゼンタ、フタログリーン、フタロブルー、ピグメントレッド170、およびジアリライドイエローからなる群から選択される、請求項
1~6のいずれか一項に記載の成形物品。
【請求項8】
前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチが、ナイロンベースの顔料マスターバッチであり、前記ポリアミドが、ナイロン-6である、請求項
1~7のいずれか一項に記載の成形物品。
【請求項9】
前記成形物品が、ボトル用の装飾キャップである、請求項
1~8のいずれか一項に記載の成形物品。
【請求項10】
成形物品を調製するための方法であって、
中和された酸コポリマー、ポリアミドベースの顔料マスターバッチ、および液体ベースの顔料マスターバッチをドライブレンドして、初期混合物を形成することと、
前記初期混合物を射出成形装置に供給することと、
前記射出成形装置を用いて前記初期混合物を成形して、前記成形物品を形成することと、を含み、
前記初期混合物が、前記
初期混合物の総重量に基づいて、
少なくとも75重量%の前記中和された酸コポリマーと、
0.1重量%~5重量%の前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチと、
0.2重量%~5.7重量%の前記液体ベースの顔料マスターバッチと
を含み、
前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチが、前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、30重量%~95重量%のポリアミドと、前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、前記ポリアミドと会合した5重量%~70重量%の第1の顔料と、を含み、
前記液体ベースの顔料マスターバッチが、前記液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、
15重量%~60重量%の第2の顔料
であって、金属着色剤または非金属着色剤である前記第2の顔料と、前記液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、40重量%~
85重量%の油ベースの担体と、を含
み、
前記初期混合物が、前記初期混合物の総重量に基づいて、前記液体ベースの顔料マスターバッチからの0.1重量%~0.7重量%の油ベースの担体を含み、
前記中和された酸コポリマーが、前記中和された酸コポリマーの総重量に基づいて、15重量%~30重量%のアクリル酸またはメタクリル酸の共重合単位と、70重量%~85重量%のエチレンの共重合単位とを含み、
前記中和された酸コポリマーのカルボン酸基の40%~70%が、ナトリウムカチオンを含むカルボン酸塩として中和されており、
前記第2の顔料が金属着色剤であるとき、前記油ベースの担体は、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、30重量%~70重量%のポリイソブチレンと、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、30重量%~70重量%の鉱油と
を含み、
前記第2の顔料が非金属着色剤であるとき、前記油ベースの担体は、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、10重量%~30重量%のポリエチレングリコールと、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、70重量%~90重量%の鉱油と
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月2日出願の米国仮特許出願第62/869,771号の優先権を主張し、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して成形物品に関し、より具体的には、装飾効果を有する成形物品に関する。
【背景技術】
【0003】
アイオノマー樹脂などの中和された酸コポリマーは、化粧品容器および香水瓶を含むがこれらに限定されない成形物品での使用に極めて望ましい特性を有する材料である。特に、中和された酸コポリマーは、そのような物品を形成するための射出成形プロセスのタイプに好適である。そのような成形物品を装飾する能力、または成形物品で珍しいまたは顕著な視覚効果を作り出す能力は、消費者製品の製造業者および消費者自身にとって高い価値がある。
【0004】
例えば、射出成形などの成形プロセスから成形物品を成形する能力は、通常、成形される材料の多くの特性に依存する。成形される特定の材料は、未加工の形態での成形プロセスによく適している場合があるが、望ましい視覚効果を生み出すために顔料などの成分を添加すると、成形プロセスを実質的に複雑にする様式で成形される材料の特性を変化させる可能性がある。次に、特定の視覚効果の芸術的期待は、成形プロセスがそのような効果を達成するために必要とされる追加の成分を組み込むことができないことによって妨げられる可能性がある。
【0005】
成形物品の特定の非常に望ましい視覚効果の1つには、大理石などの石または自然風化もしくは変質した金属のパターンをシミュレートする色の縞を含む装飾パターンが含まれる。大理石タイプの効果は、コポリマーを伴う混合物に着色ポリアミドを含めることによって中和された酸コポリマー成形物品における限られた範囲で実現されているが、その効果は、他の場合では透明または半透明のコポリマーのマトリックスの縞状パターンに限定される。中和された酸コポリマー材料から調製された成形物品における追加の種類の装飾効果に対する継続的なニーズ、ならびに成形プロセス全体の大規模な効率的な再現性および自動化を維持しながら追加の成分を組み込む様式で成形物品を調製する方法に対する継続的なニーズが残っている。
【発明の概要】
【0006】
上記の背景に対して、本開示の実施形態は、装飾効果を有する成形物品に関する。成形物品は、成形物品の総重量に基づいて、中和された酸コポリマーの少なくとも75重量%を含む。成形物品はさらに、成形物品の総重量に基づいて、ポリアミドベースの顔料マスターバッチの0.1重量%~5重量%を含む。ポリアミドベースの顔料マスターバッチは、ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、30重量%~95重量%のポリアミド、およびポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、ポリアミドと会合した5重量%~70重量%の第1の顔料を含む。成形物品はさらに、成形物品の総重量に基づいて、液体ベースの顔料マスターバッチに由来する0.1重量%~5重量%の第2の顔料、および成形物品の総重量に基づいて、液体ベースの顔料マスターバッチに由来する0.1重量%~0.7重量%の油ベースの担体を含む。
【0007】
本開示のさらなる実施形態は、成形物品を調整するための方法、およびその方法によって製造された成形物品に関する。この方法は、中和された酸コポリマー、ポリアミドベースの顔料マスターバッチ、および液体ベースの顔料マスターバッチをドライブレンドして、初期混合物を形成することと、初期混合物を射出成形装置に供給することと、射出成形装置を用いて初期混合物を成形して、成形物品を形成することと、を含む。初期混合物は、初期混合物の総重量に基づいて、少なくとも75重量%の中和された酸コポリマーと、0.1重量%~5重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチと、0.2重量%~5.7重量%の液体ベースの顔料マスターバッチと、を含む。ポリアミドベースの顔料マスターバッチは、ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、30重量%~95重量%のポリアミド、およびポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、ポリアミドと会合した5重量%~70重量%の第1の顔料を含み得る。液体ベースの顔料マスターバッチは、液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、5重量%~60重量%の第2の顔料、および液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、40重量%~95重量%の油ベースの担体、を含み得る。
【0008】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照することにより、よりよく理解されるようになるであろう。
【0009】
本明細書に記載の実施形態の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部は、その説明から当業者に容易に明らかになるか、または以下の詳細な説明、および添付の特許請求の範囲を含むが、これらに限定されない、本明細書に記載の実施形態を実践することによって認識されるであろう。
【0010】
上記の全般的な説明および下記の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図していることを理解されたい。添付の図面が、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部に組み込まれ、それを構成する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、装飾効果を有する成形物品の実施形態を詳細に参照する。成形物品の調整するため方法については、追って説明する。
【0012】
実施形態による成形物品は、成形物品の総重量に基づいて、少なくとも75重量%の中和された酸コポリマーを含み得る。成形物品は、成形物品の総重量に基づいて、0.1重量%~5重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチをさらに含む。ポリアミドベースの顔料マスターバッチは、ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、30重量%~95重量%のポリアミドと、ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、ポリアミドと会合した5重量%~70重量%の第1の顔料と、を含み得る。いくつかの実施形態において、ポリアミドは、ナイロン-6などのナイロンである。成形物品はさらに、成形物品の総重量に基づいて、液体ベースの顔料マスターバッチに由来する0.1重量%~5重量%の第2の顔料と、成形物品の総重量に基づいて、液体ベースの顔料マスターバッチに由来する0.1重量%~0.7重量%の油ベースの担体と、を含み得る。
【0013】
実施形態による成形物品は、押出成形または射出成形などの成形プロセス中の成形物品の構成要素の相互作用から生じる装飾効果を呈する。例えば、追加の成分がない中和された酸コポリマーは、実質的に光学的に澄んだまたは透明な材料であり得る。ポリアミドベースの顔料マスターバッチ配合物と会合した第1の顔料は、成形物品の体積全体に不均一な色の筋を与え得る。液体ベースの顔料マスターバッチに基づく第2の顔料は、成形物品の体積全体にわたって実質的に均一な着色を与え得る。それに応じて、物品における装飾効果は、第2の顔料からの均一な色のブランクパレット上に第1の顔料からの縞の大理石模様を含み得る。第2の顔料によって作成された均一なブランクパレットは、別の場合は実質的に澄んだまたは透明な中和された酸ポリマーを半透明または実質的に不透明にすることができる。中和された酸ポリマーが第2の顔料から実質的に不透明である場合、第1の顔料からの色の縞は、装飾的な石または金属の物体に自然に見られる色の縞のパターンに類似している可能性がある。
【0014】
成形物品の装飾効果は、成形物品の構成要素の相形態に起因する場合がある。例えば、成形物品において、中和された酸コポリマーは、成形物品内の連続相であり得る。同じ成形物品において、例えば、第1の顔料およびナイロン-6などの会合したポリアミドを含むポリアミドベースの顔料マスターバッチは、成形物品内の第1の二次相として存在し得る。第1の二次相は、連続相内に均一に分布していない。同じ成形物品において、液体ベースの顔料マスターバッチに由来する第2の顔料は、成形物品内の第2の二次相として存在し得る。第2の二次相は、連続相内に均一に分布していてもいなくてもよい。同じ成形物品において、油ベースの担体は、成形物品内の第3の二次相として存在し得る。第3の二次相は、連続相内に均一に分布していてもいなくてもよい。いくつかの実施形態では、第1の二次相は、連続相内に均一に分布せず、第2の二次相および第3の二次相の一方または両方は、連続相内に均一に分布する。
【0015】
実施形態による成形物品の装飾効果の例には、灰色石の効果、茶色の縞を伴う白い大理石、白い縞を伴う黒い大理石、酸化金属仕上げ、古い真ちゅう、粗面の銅、オニキス仕上げ、および黒曜石仕上げが含まれるが、これらに限定されない。灰色石、白-薄茶色の大理石、または酸化金属などの所望の装飾効果に基づいて、背景色または空白のキャンバスを縞模様の色ともに選択することができ、その後、成形する配合物または初期混合物を調製するための適切な顔料を選択することができる。例えば、灰色石または白大理石の場合、白の液体顔料を背景として使用することができ、ナイロン-6などのポリアミドに基づく黒色または薄茶色の無地の濃縮物を縞模様に使用することができる。オニキスまたは黒曜石仕上げの場合、背景色は、黒の液体顔料、および縞模様用のナイロン-6などのポリアミドをベースにした白の単色濃縮物から実現することができる。金属仕上げの場合、金属の背景色を実現するために銅または銀の液体顔料を含めることができ、ナイロン-6などのポリアミドをベースにした黒および薄茶色の単色濃縮物の組み合わせを縞に使用することができる。
【0016】
実施形態によれば、成形物品の中和された酸コポリマーは、アイオノマー樹脂であり得る。いくつかの実施形態において、中和された酸コポリマーは、中和されたエチレン酸コポリマーであり得る。成形物品は、成形物品の総重量に基づいて、少なくとも75重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%の中和された酸コポリマーを含み得る。
【0017】
アイオノマー樹脂は、エチレン酸コポリマーを1つ以上の金属イオンで中和することなど、当業者に知られた任意の手段によって製造することができる。エチレン酸コポリマーは、エチレンに由来する繰返し単位と、エチレンコポリマーの総重量に基づいて、約1重量%~約50重量%、または約5重量%~約40重量%、または10重量%~25重量%のアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどのコモノマーと、を含むポリマーである。一般に、アイオノマー樹脂は当業者によく知られている。
【0018】
エチレン酸コポリマーの例は、最大35重量%の一酸化炭素、二酸化硫黄、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステル、これらの酸の塩、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルビニルエーテル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、またはアルキル基が線状または分枝状であり得る、それらの2つ以上の組み合わせなどの、任意選択のコモノマーを含み得る。
【0019】
アイオノマー樹脂の酸基は、少なくとも部分的に中和されている。アイオノマー樹脂中の酸基の中和は、例えば、総カルボン酸含有量に基づいて、金属イオンで中和されているアイオノマー樹脂中のカルボン酸基の約0.1%~約100%、または約10%~約90%、または約20%~約80%、または約30%~約60%、または約20%~約40%の範囲であり得る。金属イオンは、1価、2価、3価、多価、またはそれらの2つ以上の組み合わせであり得る。例には、Li、Na、K、Ag、Hg、Cu、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Cd、Sn、Pb、Fe、Co、Zn、Ni、Al、Sc、Hf、Ti、Zr、Ce、またはそれらの2つ以上の組み合わせが含まれる。金属イオンが多価である場合、米国特許第3,404,134号に開示されているように、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、サリチル酸塩、およびフェノラートラジカルなどの錯化剤が含まれ得る。金属イオンを中和する特定の例には、Na、Zn、またはそれらの組み合わせが含まれる。さらなる例には、NaOH、NaHCO3、Na2CO3、NaHSO4、NaH2PO4、Na2HPO3、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、フェノラートナトリウム、Zn(OH)2、ZnCO3、ZnCO3、ZnSO4、ZnHPO4、ZnHPO3、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、フェノリン酸亜鉛、Mg(OH)2、MgCO3、MgCO3、MgSO4、MgHPO4、MgHPO3、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、フェノリン酸マグネシウム、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどの塩に由来するナトリウムまたは亜鉛イオンが含まれる。
【0020】
実施形態では、成形物品の中和された酸コポリマーは、ASTM D1238に従って測定されるように、4g/10分~6g/10分のメルトフローインデックスを有するアイオノマー樹脂であり得る。実施形態において、成形物品の中和された酸コポリマーは、コポリマーのメタクリル酸基がナトリウムイオンで少なくとも部分的に中和されているエチレンメタクリル酸コポリマーであり得る。実施形態では、成形物品の中和された酸コポリマーは、中和された酸コポリマーの総重量に基づいて、15重量%~30重量%または15重量%~20重量%のアクリル酸またはメタクリル酸の共重合単位と、70重量%~85重量%のエチレンの共重合単位と、を含み得る。実施形態では、成形物品の中和された酸コポリマーは、ナトリウムカチオンを含むカルボン酸塩として中和されている中和された酸コポリマーのうちの約30%~約70%、または30%~60%、または40%~70のカルボン酸基を有し得る。
【0021】
実施形態において、中和された酸コポリマーは、部分的に中和された前駆体酸コポリマーから形成されたアイオノマーであり得る。前駆体酸コポリマーは、エチレンの共重合単位と、前駆体酸コポリマーの総重量%に基づいて、5重量%~30重量%の、3~8個の炭素原子を有するα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位と、を含む。5重量%~30重量%のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、本明細書で開示される。例えば、いくつかの実施形態において、前駆体酸コポリマーは、エチレンの共重合単位と、前駆体酸コポリマーの総重量%に基づいて、5重量%~25重量%、7重量%~25重量%、または7重量%~22重量%の、3~8個の炭素原子を有するα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位と、を含む。コモノマー含有量は、核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技術などの任意の適切な技術を使用して、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,498,282号に記載される13C NMR分析により測定されてもよい。
【0022】
3~8個の炭素原子を有する好適なα,β-不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチルマレイン酸、およびこれらの酸コモノマーの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、3~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸は、アクリル酸およびメタクリル酸を含む。他の実施形態では、3~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸は、アクリル酸を含む。
【0023】
部分的に中和された前駆体酸コポリマーは、10g/10分~4,000g/10分のメルトインデックスI2を有する。メルトインデックスI2は、190℃、2.16kgでASTM D1238に従って測定される。10g/10分~4,000g/10分のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、本明細書で開示される。例えば、いくつかの実施形態では、部分的に中和された前駆体酸コポリマーは、10g/10分~2,500g/10分、10g/10分~1,250g/10分、25g/10分~1,000g/10分、25g/10分~750g/10分、50g/10分~500g/10分、または100g/10分~450g/10分のメルトインデックスI2を有し得る。
【0024】
部分的に中和された前駆体酸コポリマーは、反応性コモノマーおよび存在するならば溶媒の各々が、開始剤と一緒に撹拌反応器に連続的に供給される連続プロセスで合成することができる。開始剤の選択は、開始剤の分解温度と組み合わされた予想される反応器温度範囲に基づいており、この選択の基準は業界でよく理解されている。一般に、エチレンと酸コモノマーとを共重合させて前駆体酸コポリマーを生成させる合成中、反応温度は、約120℃~約300℃、または約140℃~約260℃に維持され得る。反応器中の圧力は、約130MPa~約310MPa、または約165MPa~250MPaに維持され得る。
【0025】
反応器は、例えば、激しい撹拌のための手段を備えているオートクレーブ反応器のあるタイプを説明している米国特許第2,897,183号に記載されているようなオートクレーブ反応器であり得る。米国特許第2,897,183号はまた、「実質的に一定の環境」下でのエチレンの重合のための連続プロセスも記載している。この環境は、ある特定のパラメータ、例えば、圧力、温度、開始剤濃度、およびポリマー生成物と未反応エチレンとの割合を、重合反応中に、実質的に一定に保つことによって維持され得る。かかる条件は、様々な連続撹拌槽型反応器のいずれかにおいて、その中でも、例えば、連続撹拌等温反応器および連続撹拌断熱反応器のいずれかにおいて、達成することができる。
【0026】
前駆体酸コポリマーを含有する反応混合物を、激しく撹拌し、オートクレーブから連続的に取り出す。反応混合物が反応容器を出た後、得られた前駆体酸コポリマー生成物は、揮発性の未反応モノマーおよび存在するならば溶媒から、未重合材料および溶媒を、減圧下または高温で気化させるなどの従来の手順によって、分離される。前駆体酸コポリマーの非限定的な例には、ダウケミカル社から入手可能な商品名NUCREL(商標)のコポリマーが含まれる。
【0027】
一般に、部分的に中和された前駆体酸コポリマーから形成されるアイオノマーである中和された酸コポリマーを得るために、重合反応中、反応器の内容物は、単相が実質的に反応器全体に存在するような条件下で維持され得る。これは、米国特許第5,028,674号に記載されているように、反応器温度を調整することによって、反応器圧力を調整することによって、共溶媒を添加することによって、またはこれらの技術の任意の組み合わせによって、達成することができる。従来の手段を使用して、単相が実質的に反応器全体にわたって維持されているかどうかを判定することができる。例えば、Haschらは、“High-Pressure Phase Behavior of Mixtures of Poly(Ethylene-co-Methyl Acrylate)with Low-Molecular Weight Hydrocarbons”、Journal of Polymer Science:Part B:Polymer Physics,Vol.30、1365-1373(1992)において、単相条件と多相条件との間の境界を判定する際に使用することができる曇り点測定について説明している。
【0028】
本開示の実施形態による成形物品中の中和された酸コポリマーとして有用なアイオノマーを得るために、前駆体酸コポリマーは、前駆体酸コポリマー中の酸基(例えば、カルボン酸)が反応して酸性塩基(例えば、カルボン酸塩)を形成するような金属カチオンを含む塩基で中和される。本明細書の実施形態では、前駆体酸コポリマーのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸に由来する酸基の約25%~約65%、または約30%~約60%、または約35%~約60%、または約30%~約55%、または約35%~約55%が、中和される。前駆体酸コポリマーのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸に由来する酸基の中和レベルは、添加された塩基性金属化合物の量に基づいて計算するか、または赤外分光法を使用して測定することができる。実際の中和レベルは、赤外分光法を使用して、1530cm-1~1630cm-1におけるカルボキシレートアニオン伸縮振動に帰属する吸収ピークと、1690cm-1~1710cm-1におけるカルボニル伸縮振動に帰属する吸収ピークとを比較することによって、判定することができる。酸性基を中和することができる塩基性金属化合物の量は、酸コポリマー中の目標量の酸部分を中和するように計算された化学量論量の塩基性化合物を添加することによって、提供され得る。アイオノマーの非限定的な例には、ダウケミカル社から入手可能な商品名SURLYN(商標)のアイオノマーが含まれる。
【0029】
任意の安定なカチオンおよび2つ以上の安定なカチオンの任意の組み合わせが、アイオノマーの酸基に対する対イオンとして好適であると考えられる。アイオノマー中の酸基に対する対イオンには、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびいくつかの遷移金属のカチオンなどの2価および1価のカチオンが含まれ得る。いくつかの実施形態では、カチオンは、例えば、亜鉛、カルシウム、またはマグネシウムなどの2価カチオンである。他の実施形態では、カチオンは、例えば、カリウムまたはナトリウムなどの1価カチオンである。さらなる実施形態では、前駆体酸コポリマーのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸に由来する酸基は、ナトリウムイオンを含有する塩基によって中和される。ナトリウムイオンを含有する塩基は、前駆体酸の酸基の水素原子がナトリウムカチオンによって置き換えられるナトリウムアイオノマーを提供することができる。実施形態の中和された酸コポリマーとして有用なアイオノマーを得るために、前駆体酸コポリマーは、米国特許第3,404,134号および同第6,518,365号に記載されている手順などの任意の従来の手順によって中和することができる。
【0030】
実施形態によれば、成形物品は、成形物品の総重量に基づいて、0.1重量%~5重量%、または0.1重量%~2重量%、または0.1重量%~1重量%、または0.1重量%~0.7重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチを含む。ポリアミドベースの顔料マスターバッチは、ポリアミドと、ポリアミドと会合した第1の顔料と、を含む。例示的な実施形態において、ポリアミドベースの顔料マスターバッチは、ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、30重量%~95重量%のポリアミド、およびポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、ポリアミドと会合した5重量%~70重量%の第1の顔料と、を含み得る。いくつかの実施形態では、成形物品は、複数のポリアミドベースの顔料マスターバッチを含み得る。そのような実施形態では、成形物品は、成形物品の総重量に基づいて、合計で0.1重量%~5重量%、または0.1重量%~2重量%、または0.1重量%~1重量%、または0.1重量%~0.7重量%のすべてのポリアミドベースの顔料マスターバッチを含む。
【0031】
成形物品において、ポリアミドベースの顔料マスターバッチは、中和された酸コポリマーの連続相において第1の二次相を形成し得る。第1の二次相は、例えば、斑点または縞に似たパターンで、中和された酸コポリマーの体積内に分布し得る。これに関して、第1の顔料とポリアミドとの会合は、第1の顔料が第1の二次相内に留まり、浸出または漏出して中和された酸コポリマーの連続相に色を与えることはないという点で、成形物品内に発現する可能性があるが、第1の二次相を構成するポリアミドマトリックスから分離または隔離されている。第1の顔料とポリアミドとの会合は、第1の顔料の分子とポリアミドとの間の、既知の分析技術によって検出および検証可能な化学結合を含み得る。
【0032】
ポリアミドベースの顔料マスターバッチは、成形プラスチックの当業者によく知られている。ポリアミドベースの顔料マスターバッチは、一般に、ポリアミドマトリックス内に均一に分散された顔料分子であり得る。ポリアミドベースの顔料マスターバッチは、例えばペレットなどのバルク形態で入手可能である。ペレットは、例えば、押出成形または射出成形などの成形プロセスの準備として、中和された酸コポリマーのバルク形態に添加することができる。
【0033】
ポリアミドベースの顔料マスターバッチのポリアミド成分の例には、ホモポリアミド、コポリアミド、ポリアミドの混合物または配合物、またはポリアミドと別のポリマーとの混合物または配合物が含まれる。例示的なホモポリアミドおよびコポリアミドには、ω-アミノカプロン酸、ω-アミノエナント酸、ω-アミノカプリル酸、ω-アミノペラルゴン酸、ω-アミノカプリン酸、ω-アミノウンデカン酸、a)-アミノラウリン酸、カプロラクタム、ラクタム-7、ラクタム-8、ラクタム-9、ラクタム-10、ラクタム-11および/またはラウロラクタム。ポリアミドは、例えば、一方では、ジメチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミンおよびそれらの混合物から作られるポリアミドの群から選択することができ、他方では、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼラ酸、セバシン酸、ノンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、二量体脂肪酸およびそれらの混合物から作られるポリアミドの群から選択することができる。ポリアミドの具体例には、例えばナイロン-6などのナイロンが含まれる。
【0034】
いくつかの実施形態では、ポリアミドベースの顔料マスターバッチのポリアミドは、押出成形または射出成形などの成形プロセス後に中和された酸コポリマーが完全に可塑化する温度よりも低いビカット軟化点を有し得る。理論に拘束されることを意図せずに、温度におけるこの関係は、ポリアミドベースの顔料マスターバッチが中和された酸コポリマーの体積内に縞を形成する様式に影響を与え得ると考えられている。
【0035】
成形物品のポリアミドベースの顔料マスターバッチは、ポリアミドと、成形物品の第1の顔料として集合的に機能する1つ以上の適切な染料または顔料との溶融混合を含む既知のプロセスによって調製される任意のポリアミドベースの顔料マスターバッチであり得る。成形プロセス中に遭遇する高温で安定している限り、任意のタイプの染料または顔料が適している。
【0036】
例示的な染料には、モノアゾ錯体、特に、成形プロセスで遭遇する高い作業温度で十分に安定しているクロム錯体が含まれる。染料の追加の例には、ハロゲン含有トリアジニルまたはビニル基含有金属化アゾ染料、特にクロム、ニッケル、または銅で金属化されたものが含まれる。
【0037】
実施形態による成形物品のポリアミドベースの顔料マスターバッチに適した顔料のさらに別の例には、カーボンブラック、ニグロシン、カドミウム顔料(黄、赤、緑、オレンジ)などの金属ベースの顔料、クロム顔料(黄、緑)、コバルト顔料(紫、青、セルリアン、黄)、クーパー顔料(アズライト、パープル、青、緑、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン)、酸化鉄顔料(オキシドレッド、オーカー、プルシアンブルー)、鉛顔料(鉛白、黄、赤、鉛錫黄)、マンガン顔料(紫、青)、水銀顔料(朱)、チタン顔料(黄、ベージュ、白、黒);亜鉛顔料(白、フェライト、黄)、およびアルミニウム粉末が含まれる。実施形態による成形物品のポリアミドベースの顔料マスターバッチに適した顔料のさらに別の例には、カーボンブラック(バインブラック、ランプブラックを含む)、アイボリーブラック(骨炭)などの無機顔料、粘土顔料(酸化鉄、黄土、ローシェンナ、バーントシェンナ、ローアンバー、バーントアンバー)、ウルトラマリン顔料ならびにアリザリン(合成)、アリザリンクリムゾン(合成)、ガンボージ、蝸牛赤、ローズマダー、インディゴ、インディアンイエロー、ティリアンパープル、キナクリドン、マゼンタ、フタログリーン、フタロブルー、ピグメントレッド170、およびダイアリライドイエローなどの生物および非生物由来の色素が含まれる。
【0038】
実施形態による成形物品のポリアミドベースの顔料マスターバッチに適した顔料のさらに別の例には、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アンサントロン、ベンズイミダゾロン、ジアゾ縮合化合物、アゾ化合物、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、トリフェンジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、インディゴ、チオインディゴ、チアジンインディゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロン、イソビオラントロン、フラバントロン、アントラピリミジンもしくはカーボンブラック顔料、それらの混合結晶もしくは混合物などの有機もしくは無機顔料、または二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、混合金属酸化物(ニッケルルチルイエロー、クロムルチルイエロー、コバルトブルー、コバルトグリーン、亜鉛鉄ブラウン、スピネルブラックなど)、カドミウム、ビスマス、クロメート、ウルトラマリン、アイアンブルー顔料およびそれらの混合物などの無機顔料、ならびに有機顔料と無機顔料の混合物が含まれる。実施形態による成形物品のポリアミドベースの顔料マスターバッチに適した第1の顔料のさらなる例には、カーボンブラック、ピグメントイエロー192、ピグメントオレンジ68およびピグメントレッド149が含まれる。
【0039】
実施形態によれば、成形物品は、ポリアミドベースの顔料マスターバッチのポリアミドと会合した第1の顔料に加えて、第2の顔料と油ベースの担体とを含む。第2の顔料および油ベースの担体はともに液体ベースの顔料マスターバッチに由来する。ポリアミドベースの顔料マスターバッチ調合物のポリアミドと会合したままである第1の顔料とは対照的に、第2の顔料および油ベースの担体は、成形物品内で必ずしも互いに会合しているとは限らない。実施形態では、第2の顔料は、第2の二次相として成形物品中に存在し得、油ベースの担体は、第2の二次相とは別の第3の二次相として成形物品中に存在し得る。第2の顔料および油ベースの担体は、成形物品が製造されるときに、液体ベースの顔料マスターバッチが、成形プロセスの前に未加工の中和された酸コポリマーに添加されるという点で、液体ベースの顔料マスターバッチに由来する。成形プロセス中に、第2の顔料がコポリマー材料全体に分散されて、コポリマー全体に着色効果を与える。それにもかかわらず、油ベースの担体は、第2の顔料を添加する手段、すなわち液体ベースの顔料マスターバッチの検出可能なアーティファクトとして成形物品内に留まる。
【0040】
実施形態による成形物品は、成形物品の総重量に基づいて、液体ベースの顔料マスターバッチに由来する、0.1重量%~5重量%、または0.5重量%~4重量%、または0.5重量%~3重量%、または0.5重量%~2.5重量%の第2の顔料、および成形物品の総重量に基づいて、0.1%~0.7%、または0.1%~0.5%、または0.1%~0.3%、または0.1%~0.2%、または0.05重量%~0.2重量%の液体ベースの顔料マスターバッチ由来の油ベースの担体を含み得る。いくつかの実施形態では、成形物品は、各々が別個の液体ベースの着色剤に由来する複数の第2の顔料と油ベースの担体とを含み得る。そのような実施形態では、成形物品中の第2の顔料および油ベースの担体を説明する前述の重量パーセントは、成形物品中のすべての第2の顔料および油ベースの担体の総重量を指す。
【0041】
成形物品の第2の顔料および油ベースの担体が由来する液体ベースの顔料マスターバッチは、必然的に第2の顔料と、油ベースの担体と、を含む。液体ベースの顔料マスターバッチは、液体の形態であり、中和された酸コポリマーと化学的に適合性があり、押出成形または射出成形プロセスの典型的な温度で安定である任意の着色剤調合物であり得る。第2の顔料は、中和された酸コポリマーと化学的に適合性があり、かつ押出成形または射出成形プロセスの典型的な温度で安定である任意の顔料であり得る。油ベースの担体は、第2の顔料が実質的に可溶性である任意の非極性液体であり得る。
【0042】
成形物品の第2の顔料として適切な顔料の例には、有機または無機顔料が含まれるが、これらに限定されない。そのような有機または無機顔料は、黒色顔料、黄色顔料、マゼンタ顔料、赤色顔料、紫色顔料、シアン顔料、青色顔料、緑色顔料、オレンジ顔料、褐色顔料、および白色顔料から選択することができる。場合によっては、有機または無機顔料は、2つ以上の原色顔料の所定の比率の組み合わせから形成されるスポットカラー顔料を含み得る。
【0043】
適切な無機黒色顔料の非限定的な例には、カーボンブラックが含まれる。カーボンブラック顔料の例には、Mitsubishi Chemical Corporation,Japaによって製造されたもの(例えば、カーボンブラックNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、およびNo.2200Bなど)、Marietta,GaのColumbian Chemicals Companyによって製造されたRAVEN(登録商標)シリーズの様々なカーボンブラック顔料(例えば、RAVEN(登録商標)5750、RAVEN(登録商標)5250、RAVEN(登録商標)5000、RAVEN(登録商標)3500、RAVEN(登録商標)1255、およびRAVEN(登録商標)700など)、Boston,MassのCabot Corporationによって製造されたREGAL(登録商標)シリーズ、MOGUL(登録商標)シリーズ、またはMONARCH(登録商標)シリーズの様々なカーボンブラック顔料(例えば、REGAL(登録商標)400R、REGAL(登録商標)330R、REGAL(登録商標)660R、MOGUL(登録商標)L、MONARCH(登録商標)700、MONARCH(登録商標)800、MONARCH(登録商標)880、MONARCH(登録商標)900、MONARCH(登録商標)1000、MONARCH(登録商標)1100、MONARCH(登録商標)1300、およびMONARCH(登録商標)1400など)、およびParsippany,N.JのEvonik Degussa Corporationによって製造された様々な黒色顔料(例えば、カラーブラックFW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、PRINTEX(登録商標)35、PRINTEX(登録商標)U、PRINTEX(登録商標)V、PRINTEX(登録商標)140U、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4など)が含まれる。有機黒色顔料の非限定的な例には、C.I.ピグメントブラック1などのアニリンブラックが含まれる。
【0044】
適切な黄色顔料の非限定的な例には、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー4、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー6、C.I.ピグメントイエロー7、C.I.ピグメントイエロー10、C.I.ピグメントイエロー11、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー35、C.I.ピグメントイエロー37、C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー99、C.I.ピグメントイエロー108、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー113、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー124、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー133、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントイエロー172、およびC.I.ピグメントイエロー180が含まれる。
【0045】
適切なマゼンタまたは赤または紫の有機顔料の非限定的な例には、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド14、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド30、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド37、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド40、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド42、C.I.ピグメントレッド48(Ca)、C.I.ピグメントレッド48(Mn)、C.I.ピグメントレッド57(Ca)、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド219、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット33、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット38、C.I.ピグメントバイオレット43、およびC.I.ピグメントバイオレット50が含まれる。
【0046】
青またはシアンの有機顔料の非限定的な例には、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:34、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー18、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー25、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー65、C.I.ピグメントブルー66、C.I.バットブルー4、およびC.I.バットブルー60が含まれる。
【0047】
緑色有機顔料の非限定的な例には、C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン2、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン36、およびC.I.ピグメントグリーン45が含まれる。
【0048】
褐色有機顔料の非限定的な例には、C.I.ピグメントブラウン1、C.I.ピグメントブラウン5、C.I.ピグメントブラウン22、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン、C.I.ピグメントブラウン41、およびC.I.ピグメントブラウン42が含まれる。
【0049】
オレンジ有機顔料の非限定的な例には、C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ2、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ7、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ15、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ19、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ43、およびC.I.ピグメントオレンジ66が含まれる。
【0050】
第2の顔料として適切な有機顔料には、例えば、アゾ化合物、アゾメチン、メチン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインディゴ、イミノイソインドリン、ジオキサジン、イミノイソインドリノン、キナクリドン、フラバントロン、インダンスロン、およびアントラピリミジン、またはその混合物もしくは溶液が含まれ得る。
【0051】
実施形態による成形物品の第2の顔料に適した無機顔料には、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、混合金属酸化物、アンチモンイエロー、クロム酸鉛、クロム酸鉛硫酸塩、モリブデン酸鉛、ウルトラマリンブルー、コバルトブルー、マンガンブルー、酸化クロムグリーン、水和酸化クロムグリーン、コバルトグリーン、金属硫化物、カドミウムスルホセレニド、亜鉛フェライト、バナジン酸ビスマス、またはそれらの混合物が含まれ得る。
【0052】
液体ベースの顔料マスターバッチの油ベースの担体は、第2の顔料と化学的に適合性のある任意の流体担体であり得る。油ベースの担体の例には、鉱油、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、イソパラフィン系流体、ポリエチレングリコール、およびポリイソブチレン、またはこれらの混合物が含まれる。特定の例示的な実施形態では、液体ベースの顔料マスターバッチの油ベースの担体は、鉱油である。さらに特定の例示的な実施形態では、液体ベースの顔料マスターバッチの油ベースの担体は、ポリイソブチレンである。さらに特定の例示的な実施形態では、液体ベースの顔料マスターバッチの油ベースの担体は、鉱油とポリイソブチレンとの混合物である。さらに特定の例示的な実施形態では、液体ベースの顔料マスターバッチの油ベースの担体は、ポリエチレングリコールとポリイソブチレンとの混合物である。さらに特定の例示的な実施形態では、液体ベースの顔料マスターバッチの油ベースの担体は、ポリエチレングリコールと鉱油との混合物である。
【0053】
液体ベースの顔料マスターバッチの例には、液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、5%~60%、または10%~60%、または15%~60%、または20重量%~60重量%の第2の顔料、および液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、40%~95%、または40%~90%、または40%~85%、または40%~80重量%の油ベースの担体が含まれ得る。
【0054】
成形物品のいくつかの例示的な実施形態では、第2の顔料は、金属顔料であるか、金属着色剤であるか、または金属フレークを含み、油ベースの担体は、ポリイソブチレンと鉱油との混合物である。そのような実施形態では、第2の顔料および油ベースの担体は、液体ベースの顔料マスターバッチに由来し得、油ベースの担体は、油ベースの担体の総重量に基づいて、30重量%~70重量%のポリイソブチレンと、油ベースの担体の総重量に基づいて、30重量%~70重量%の鉱油と、を含む。
【0055】
成形物品のいくつかの例示的な実施形態では、第2の顔料は、非金属着色剤であり、油ベースの担体は、ポリエチレングリコールと鉱油との混合物である。そのような実施形態では、第2の顔料および油ベースの担体は、液体ベースの顔料マスターバッチに由来し得、油ベースの担体は、油ベースの担体の総重量に基づいて、10重量%~30重量%のポリエチレングリコールと、油ベースの担体の総重量に基づいて、70重量%~90重量%の鉱油と、を含む。
【0056】
実施形態による成形物品は、任意の形状またはサイズを有し得る。いくつかの実施形態では、成形物品は、化粧品産業での使用を目的とするか、または第1の顔料および第2の顔料によって与えられる装飾効果が望ましい場合がある目的のためのボトルまたはボトルのキャップであり得る。
【0057】
成形物品の実施形態を説明したので、ここで、成形物品を調製するための方法の実施形態を説明する。前述の実施形態のいずれかによる成形物品を調製するための方法は、中和された酸コポリマー、ナイロンベースの顔料マスターバッチ、および液体ベースの顔料マスターバッチをドライブレンドして、初期混合物を形成することを含み得る。中和された酸コポリマーおよびナイロンベースの顔料マスターバッチは、ペレットまたは粉末などのバルク形態であり得る。液体ベースの顔料マスターバッチは、初期混合物をもたらすドライブレンドの前に、中和された酸コポリマーとナイロンベースの顔料マスターバッチとの組み合わせに、液体の形で添加することができる。
【0058】
成形物品を調製するための方法において、初期混合物は、射出成形装置などの成形装置に供給され得る。初期混合物は成形装置で成形され、標準的なプロセス条件で任意の適切な成形技術によって成形物品を形成する。
【0059】
成形物品を調製するための方法において、初期混合物は、初期混合物の総重量に基づいて、少なくとも75重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%の中和された酸コポリマーを含み得る。初期混合物は、初期混合物の総重量に基づいて、0.1重量%~5重量%、0.1重量%~0.4重量%、0.1重量%~0.3重量%、または0.1重量%~0.2重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、初期混合物は、複数のポリアミドベースの顔料マスターバッチを含み得る。そのような実施形態では、初期混合物は、初期混合物の総重量に基づいて、合計で0.1重量%~5重量%、0.1重量%~0.4重量%、0.1重量%~0.3重量%、または0.1重量%~0.2重量%のすべてのポリアミドベースの顔料マスターバッチの総合重量を含み得る。
【0060】
成形物品を調製するための方法において、初期混合物は、初期混合物の総重量に基づいて、0.2重量%~5.7重量%、または0.2重量%~5重量%、または0.2重量%~4重量%、または0.2重量%~3重量%、または0.2重量%~2重量%、または0.2%~1.5重量%、または0.2重量%~1重量%の液体ベースの顔料マスターバッチをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、初期混合物は、複数の液体ベースの顔料マスターバッチを含み得る。そのような実施形態では、初期混合物は、初期混合物の総重量に基づいて、合計で0.2重量%~5.7重量%、または0.2重量%~5重量%、または0.2重量%~4重量%、または0.2重量%~3重量%、または0.2重量%~2重量%、または0.2重量%~1.5重量%、または0.2重量%~1重量%のすべての液体ベースの顔料マスターバッチの総合重量を含み得る。
【0061】
中和された酸コポリマー、第1の顔料とポリアミドとを含むポリアミドベースの顔料マスターバッチ、および第2の顔料と油ベースの担体とを含む液体ベースの顔料マスターバッチはすべて、成形物品の実施形態に関して前述で説明されている。
【0062】
初期混合物の成分として、ポリアミドベースの顔料マスターバッチは、ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、30重量%~95重量%のポリアミド、およびナイロンベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、ポリアミドに関連付けられた5重量%~70重量%の第1の顔料のポリアミドを含み得る。初期混合物の成分として、液体ベースの顔料マスターバッチは、液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、5重量%~60重量%の第2の顔料、および液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、40重量%~95重量%の油ベースの担体、を含み得る。実施形態では、全体としての初期混合物は、初期混合物の総重量に基づいて、0.1重量%~5重量%の第2の顔料、および0.1重量%~0.7重量%、または0.1重量%~0.6重量%、または0.1重量%~0.5重量%、または0.1重量%~0.4重量%の油ベースの担体を含み得る。理論に拘束されることを意図せずに、初期混合物中の過剰の油ベースの担体は、いくつかの状況下で初期混合物を射出成形によって成形物品に形成することができないようにし得る初期混合物の望ましくない粘度特性に寄与する可能性があると考えられる。
【0063】
本開示による成形物品の実施形態は、本開示による方法の実施形態に従って、または本開示に記載の成形物品をもたらす任意の他の適切な方法によって調製された成形物品の実施形態を含むと理解されるべきである。
【0064】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、成形物品または成形技術の分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、限定することは意図されない。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他を示していない限り、複数形も含むことが意図される。
【実施例】
【0065】
成形物品およびそれに関連付けられた調製方法の実施形態は、以下の実施例を参照することによって、よりよく理解され、これらの実施例は、例示として提供され、成形物品または成形技術の分野における当業者は、限定することを意味するものではないことを認識するであろう。
【0066】
総合的な射出成形手順
成形物品で達成し得る様々な装飾効果を実証するために、アイオノマー樹脂、少なくとも1つのポリアミドベースの顔料マスターバッチ、および少なくとも1つの液体ベースの顔料マスターバッチの混合物をドライブレンドすることにより、所定の装飾設計に従って初期混合物を調製した。次いで、ドライブレンドした混合物を射出成形装置に供給して、配合された初期混合物が成形物品の製造に適しているかどうかを評価した。
【0067】
以下の実施例のすべてのアイオノマー樹脂は、親酸コポリマーの総重量に基づいて、アクリル酸またはメタクリル酸の約15重量%~約30重量%のコポリマー単位を含むエチレン酸コポリマーであった。アイオノマーは、ASTMD 1238に従って190℃で2160gの負荷を伴って測定された約4.5g/10分のメルトフローレートを有する。アイオノマーでは、コポリマーの全カルボン酸基の約40%~約70%が、ナトリウムカチオンを含むカルボン酸塩に中和される。
【0068】
実施例におけるポリアミドベースの顔料マスターバッチは、ポリアミド成分としてナイロン-6を含む市販の配合物であった。実施例における液体ベースの顔料マトリックスは、顔料および油ベースの担体を含む市販の配合物であった。液体ベースの顔料マスターバッチにおける油ベースの担体には、1つ以上のポリエチレングリコール、鉱油、およびポリイソブチレンが、1つ以上の追加の添加剤とともに含まれていた。初期混合物中の追加の成分は、それぞれの実施例でより詳細に説明されている。
【0069】
次の表1は、すべての実施例で適用された射出成形プロセスのパラメータをまとめたものである。
【表1】
【0070】
実施例1
98.6重量%のアイオノマー樹脂と、薄茶色の第1の顔料を有する0.4重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチと、白色の第2の顔料を有する1.0重量%の液体ベースの顔料マスターバッチと、を含む初期混合物を調製した。ポリアミドベースの顔料マスターバッチは、薄茶色の第1の顔料と組み合わせたポリアミドとしてナイロン-6を含んでいた。液体ベースの顔料は、2.26g/cm3の着色剤密度を有し、約87.1重量%の第2の顔料と、約12.9重量%の油ベースの担体と、を含有していた。油ベースの担体は、約20重量%のポリエチレングリコールと、約80重量%の鉱油と、を含んでいた。したがって、初期混合物は、98.6重量%のアイオノマー樹脂と、0.4重量%のポリアミドベースの薄茶色の第1の顔料と、0.87重量%の白色の第2の顔料と、0.13重量%の油ベースの担体と、を含有していた。
【0071】
成形物品は、初期混合物を前述の総合的な射出成形手順の射出成形プロセスにかけることによって、首尾よく調製された。成形物品は、白色の大理石に似た薄茶色の縞を有する無地の白色を呈した。
【0072】
実施例2
98.7重量%のアイオノマー樹脂と、薄茶色の第1の顔料を有する0.15重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチと、白色の第1の顔料を有する0.15重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチと、黒色の第2の顔料を有する1.0重量%の液体ベースの顔料マスターバッチと、を含む初期混合物を調製した。薄茶色のポリアミドベースの顔料マスターバッチは、薄茶色の第1の顔料と組み合わせたポリアミドとしてナイロン-6を含んでいた。白色のポリアミドベースの顔料マスターバッチは、白色の第1の顔料と組み合わせたポリアミドとしてナイロン-6と、白色の顔料として約35重量%~45重量%の二酸化チタン(TiO2)と組み合わせた約55重量%~65重量%のポリアミドと、を含んでいた。したがって、初期混合物は、油ベースの担体中に、98.6重量%のアイオノマー樹脂と、合計0.6重量%のポリアミドベースの第1の顔料と、1.0重量%の第2の顔料と、を含んでいた。
【0073】
成形物品は、初期混合物を前述の総合的な射出成形手順の射出成形プロセスにかけることにより、初期混合物の重量比率を有して、首尾よく調製された。成形物品は、黒い大理石に似た白色と薄茶色の縞を有する無地の黒色を呈した。
【0074】
実施例3
98.8重量%のアイオノマー樹脂と、黒色の第1の顔料を有する0.2重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチと、白色の第2の顔料を有する1.0重量%の液体ベースの顔料マスターバッチと、を含む初期混合物を調製した。ポリアミドベースの顔料マスターバッチは、黒色の第1の顔料として約8重量%~約12重量%のカーボンブラックと組み合わせたポリアミドとして約88重量%~約92重量%のナイロン6を含んでいた。液体ベースの顔料は、2.26の着色剤密度を有し、約87.1重量%の第2の顔料と、約12.9重量%の油ベースの担体と、を含有していた。油ベースの担体は、約20重量%のポリエチレングリコールと、約80重量%の鉱油と、を含んでいた。したがって、初期混合物は、98.8重量%のアイオノマー樹脂と、0.2重量%のポリアミドベースの黒色の第1の顔料と、0.87重量%の白色の第2の顔料と、0.13重量%の油ベースの担体と、を含有していた。
【0075】
成形物品は、初期混合物を前述の総合的な射出成形手順の射出成形プロセスにかけることにより、初期混合物の重量比率を有して、首尾よく調製された。成形物品は、暗い縞模様を伴う白色の大理石に似た黒色の縞を有する無地の白色を呈した。
【0076】
実施例4
98.5重量%のアイオノマー樹脂と、薄茶色の第1の顔料を有する0.2重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチと、黒色の第1の顔料を有する0.3重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチと、金属銅の第2の顔料を有する1重量%の液体ベースの顔料マスターバッチと、を含む初期混合物を調製した。薄茶色のポリアミドベースの顔料マスターバッチは、薄茶色の第1の顔料と組み合わせたポリアミドとしてナイロン-6を含んでいた。黒色のポリアミドベースの顔料マスターバッチは、黒色の第1の顔料として約8重量%~約12重量%のカーボンブラックと組み合わせたポリアミドとして約88重量%~約92重量%のナイロン6を含んでいた。液体ベースの顔料は、1.12g/cm3の着色剤密度を有し、約60.8重量%の第2の顔料と、約39.2重量%の油ベースの担体と、を含有していた。油ベースの担体は、約50重量%のポリイソブチレンと、約50重量%の鉱油と、を含んでいた。したがって、初期混合物は、98.5重量%のアイオノマー樹脂と、合計0.5重量%のポリアミドベースの薄茶色および黒色の第1の顔料と、0.61重量%の金属銅の第2の顔料と、0.39重量%の油ベースの担体と、を含有していた。
【0077】
成形物品は、初期混合物を前述の総合的な射出成形手順の射出成形プロセスにかけることにより、初期混合物の重量比率を有して、首尾よく調製された。成形物品は、真ちゅうのような金属型板に微妙な黒色および茶色の縞模様が存在する、アンティークの真ちゅうに似た金属の装飾効果を呈した。
【0078】
実施例5
98.3重量%のアイオノマー樹脂と、薄茶色の第1の顔料を有する0.2重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチと、黒色の第1の顔料を有する0.2重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチと、金属銅の第2の顔料を有する1.3重量%の液体ベースの顔料マスターバッチと、を含む初期混合物を調製した。薄茶色のポリアミドベースの顔料マスターバッチは、薄茶色の第1の顔料と組み合わせたポリアミドとしてナイロン-6を含んでいた。黒色のポリアミドベースの顔料マスターバッチは、黒色の第1の顔料として約8重量%~約12重量%のカーボンブラックと組み合わせたポリアミドとして、約88重量%~約92重量%のナイロン6を含んでいた。液体ベースの顔料は、0.94g/cm3の着色剤密度を有し、約24.2重量%の第2の顔料と、約75.8重量%の油ベースの担体と、を含有していた。油ベースの担体は、約20重量%のポリエチレングリコールおよび約80重量%の鉱油を含有していた。したがって、初期混合物は、98.3重量%のアイオノマー樹脂と、合計0.4重量%のポリアミドベースの薄茶色および黒色の第1の顔料と、0.79重量%の金属銅の第2の顔料と、0.51重量%の油ベースの担体と、を含有していた。
【0079】
成形物品は、初期混合物を前述の総合的な射出成形手順の射出成形プロセスにかけることにより、初期混合物の重量比率を有して、首尾よく調製された。成形物品は、銅のような金属型板上に微妙な黒色および茶色の縞が存在する、粗面の銅に似た金属の装飾効果を呈した。
【0080】
比較例1
実施例4からの金属銅の第2の顔料を有する1重量%の液体ベースの顔料マスターバッチを、金属銅の第2の顔料を有する1重量%の代替の液体ベースの顔料マスターバッチで置き換えることにより、実施例4からの初期混合物の配合をわずかに変更することによって、初期混合物を調製した。実施例4からの液体ベースの顔料マスターバッチは、約60.8重量%の第2の顔料と、約50重量%のポリイソブチレンおよび約50重量%の鉱油からなる約39.2重量%の油ベースの担体と、を含有していたが、代替の液体ベースの顔料マスターバッチは、約24.2重量%の第2の顔料と、約20重量%のポリエチレングリコールおよび約80重量%の鉱油からなる約75.8重量%の油ベースの担体と、を含有していた。したがって、本実施例の初期混合物は、実施例4の初期混合物と同様に、等重量部のアイオノマー樹脂(98.5%)と、総ポリアミドベースの顔料(0.5%)と、を含んでいた。しかしながら、実施例4の初期混合物は、約0.61重量%の金属銅の第2顔料と、0.39重量%の油ベースの担体と、を含んでいたが、本実施例の初期混合物は、0.24重量%の金属銅の第2顔料と、0.76重量%の油ベースの担体と、を含んでいた。
【0081】
前述の総合的な射出成形手順では、成形プロセス中のスクリューの滑りのために、本実施例の初期混合物から成形物品を製造することができなかった。初期混合物中に存在する油ベースの担体の量の増加は、初期混合物の粘度および流動特性に悪影響を及ぼし、混合物を射出成形することができなくなったと考えられる。
【0082】
比較例2
実施例5の金属銅の第2の顔料を有する1.3重量%の液体ベースの顔料マスターバッチを、金属銅の第2の顔料を有する1.3重量%の代替の液体ベースの顔料マスターバッチで置き換えることにより、実施例5からの初期混合物の配合をわずかに変更することによって、初期混合物を調製した。実施例5からの液体ベースの顔料マスターバッチは、約60.8重量%の第2の顔料と、約50重量%のポリイソブチレンおよび約50重量%の鉱油からなる約39.2重量%の油ベースの担体と、を含有していたが、代替の液体ベースの顔料マスターバッチは、約24.2重量%の第2の顔料と、約20重量%のポリエチレングリコールおよび約80重量%の鉱油からなる約75.8重量%の油ベースの担体と、を含有していた。したがって、本実施例の初期混合物は、実施例5の初期混合物と同様に、等重量部のアイオノマー樹脂(98.3%)と、総ポリアミドベースの顔料(0.4%)と、を含んでいた。しかしながら、実施例5の初期混合物は、約0.79重量%の金属銅の第2顔料と、0.51重量%の油ベースの担体と、を含んでいたが、本実施例の初期混合物は、0.31重量%の金属銅の第2顔料と、0.99重量%の油ベースの担体と、を含んでいた。
【0083】
前述の総合的な射出成形手順では、成形プロセス中のスクリューの滑りのために、本実施例の初期混合物から成形物品を製造することができなかった。初期混合物中に存在する油ベースの担体の量の増加は、初期混合物の粘度および流動特性に悪影響を及ぼし、混合物を射出成形することができなくなったと考えられる。
【0084】
成形物品の分析的特性付け
前述の説明および実施例に従って調製された成形物品の最終組成は、既知の分析技術によって判定することができる。ここで、適切な分析技術の例を説明する。
【0085】
石油ベースの担体の判定
液体ベースの顔料マスターバッチに由来する油ベースの担体は、一般的な分析技術によって中和された酸コポリマー成形物品中で確認することができる。油ベースの担体の例には、鉱油、ポリイソブチレン(PIB)、ポリエチレングリコール(PEG)、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
成形物品中の油ベースの担体の存在を確認するために、成形物品の試料を凍結粉砕し、ヘキサンまたは塩化メチレンなどの適切な溶媒に抽出することができる。次いで、得られた溶液を、溶媒の一部または全部を蒸発させることによって濃縮する。次いで、抽出された物質を、NMRまたは二次元ガスクロマトグラフィー(GC×GC)による分析に適した溶媒に再溶解する。
【0087】
油ベースの担体からのポリエチレングリコールは、標準的な技術を使用して、1H NMRによって、100ppm未満のレベルで定性的に同定かつ定量化することができる。分析は、凍結粉砕および抽出を行わなくても、物品から調製された試料溶液に対して直接実施することができる。抽出された試料に対して分析を実施することにより、検出下限を達成することができる。ポリエチレングリコールおよびポリイソブチレンは、標準的な技術を使用して、13C NMRによって、約100ppmのレベルに定性的に同定かつ定量化することができる。分析は、凍結粉砕および抽出を行わなくても、物品から調製された試料溶液に対して直接実施することができる。抽出された試料に対して分析を実施することにより、検出下限を達成することができる。
【0088】
M.Biederman et al.,Journal of Chromatography A volume 1375(2015)、pages 146-153において詳細に説明されているように、包括的な二次元ガスクロマトグラフィー(GC×GC)は、鉱油飽和炭化水素(MOSH)およびポリマーオリゴマー飽和炭化水素(POSH)を判別することができる。化合物の同定には質量分析(MS)を使用し、定量には水素炎イオン化検出器(FID)を使用する。GC×GC-MS分析の前に、高圧液体クロマトグラフィー分画を使用することができる。
【0089】
液体ベースの顔料成形物品中の顔料重量パーセント
液体ベースの顔料マスターバッチの顔料重量パーセントは、マスターバッチ中の固形分含有量の測定値から判定することができる。既知の重量の液体ベースの顔料マスターバッチをヘキサンなどの溶媒で希釈し、固形物の回収および乾燥を可能にする条件下で遠心分離する。元のマスターバッチ中の顔料重量パーセントは、回収および乾燥した固形物の重量を、溶媒で希釈したマスターバッチの元の重量で割ったものを100で割ったものである。
【0090】
成形物品中の顔料重量パーセント
成形物品の総重量に対する中和された酸コポリマー成形物品中の顔料の総重量量の定量的判定は、成形物品の試料の熱重量分析(TGA)によって判定することができる。
【0091】
成形物品中の顔料の定性的および定量的判定
本開示および実施例による中和された酸コポリマー成形物品は、中和された酸コポリマーと、ポリアミドベースの顔料マスターバッチ(例えば、ナイロンベースの顔料マスターバッチなど)に由来する第1の顔料と、液体ベースの顔料マスターバッチに由来する第2の顔料と、を含む。成形物品中の2つの顔料の存在、ポリアミドベースのマスターバッチまたは液体ベースのマスターバッチのいずれかからの顔料の起源、および成形物品の総重量に対するそれらの重量分率は、標準的な分析技術によって判定することができる。原則として、分析技術は、ポリアミドベースの顔料マスターバッチに由来する第1の顔料が、成形物品中の離散相として、ポリアミドベースの担体と会合したままであり、中和された酸コポリマーと、液体ベースの顔料マスターバッチに由来する第2の顔料と、を含む相と分離されているか、不均質に混合されているという観察に依存している。さらに、第1の顔料および第2の顔料は、それら自体、それぞれの担体において互いに不溶性であり得る。例えば、第1の顔料は、液体ベースの顔料マスターバッチの油ベースの担体に溶解しない可能性があり、第2の顔料は、ポリアミドベースの顔料マスターバッチのポリアミドベースの担体に溶解または適合しない可能性がある。
【0092】
中和された酸コポリマー成形物品中の第1の顔料および第2の顔料の定性的および定量的判定は、成形物品を溶解することなく成形物品自体に対して実施することができる。例えば、成形物品の試料は、エネルギー分散型分光法(EDS)と組み合わせた走査型電子顕微鏡法(SEM)によって分析することができる。顕微鏡検査と元素分析との組み合わせにより、試料の元素組成の定量的空間マップが提供される。成形物品中では、ポリアミドベースの第1の顔料が成形物品のコポリマーマトリックス全体に均一に分散されていないため、第1の顔料は、連続相における第2の顔料とは独立して、試料のポリアミドドメイン内で観察される。
【0093】
中和された酸コポリマー成形物品中の第1の顔料および第2の顔料の定性的および定量的測定は、成形物品の凍結粉砕された試料に対して実施することができる。ポリアミドおよびエチレンベースのコポリマーの溶解度の実質的な違いのために、凍結粉砕された試料は、第1の顔料を含有するポリアミド相を第2の顔料を含有するコポリマー相から分離する溶媒の組み合わせで選択的に溶解され得る。得られた溶液を乾燥させ、熱重量分析(TGA)で分析して、各相における顔料含有量を判定する。カーボンブラック顔料がナイロンベースのマスターバッチに由来する、プラスチック中のカーボンブラック顔料の量を判定するためのTGAプロトコルの例は、TA Instruments Thermal Analysis Application Brief Number TA-122、「Determination of Carbon Black Pigment in Nylon 66 by TGA」で入手可能である。このTGAプロトコルは、他の顔料分子の判定および様々な成形プラスチック/コポリマーに容易に適応させることができる。
【0094】
中和された酸コポリマー成形物品中の第1の顔料および第2の顔料の定性的および定量的判定は、元素分析(CHNO)によって実施することができ、成形物品の総重量に対する顔料重量パーセントは、成形物品からのほんの数ミリグラムの試料から判定することができる。
【0095】
ポリアミドベースの顔料マスターバッチからの第1の顔料に関する元素分析を実施するために、分析に十分な成形物品のポリアミド相の一部分が、穴あけまたは研削などの機械的手段によって、成形物品から除去される。除去された部分は、従来の元素分析にかけられる。
【0096】
液体ベースの顔料マスターバッチからの第2の顔料に関する元素分析を実施するために、成形物品から除去された試料がポリアミド相の外側から、すなわち着色された酸中和されたコポリマーの連続相において除去されることを除いて、同様の技術を適用することができる。しかしながら、この分析では、中和された酸コポリマーの組成(CHNO含有量)もわかっている必要がある。それにより、連続相の元素分析からコポリマーの元素含有量を差し引いて、第2の顔料の元素含有量に到達することができる。中和された酸コポリマー組成物の判定は、当業者によく理解されている標準的な技術を使用するNMRによって正確に測定される。
【0097】
本明細書では、「実質的に」および「約」という用語は、任意の定量的比較、値、測定、または他の表現に起因し得る固有の不確実性の程度を表すために利用され得ることに留意されたい。これらの用語はまた、問題である主題の基本的な機能に変化をもたらすことなく、定量的表現が記載された基準から変化し得る程度を表すためにも、本明細書において利用される。
【0098】
特定の実施形態が、本明細書に例示および記載されているが、特許請求される主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な他の変更および修正が行われ得ることを理解されたい。さらに、特許請求される主題の様々な態様が本明細書に記載されているが、そのような態様は、組み合わせて利用される必要性はない。したがって、添付の特許請求の範囲は、特許請求される主題の範囲内にあるそのようなすべての変更および修正を包含することが意図される。
なお、本発明には下記態様が含まれることを付記する。
[態様1]
装飾効果を有する成形物品であって、
前記成形物品の総重量に基づいて、少なくとも75重量%の中和された酸コポリマーと、
前記成形物品の総重量に基づいて、0.1重量%~5重量%のポリアミドベースの顔料マスターバッチであって、前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、30重量%~95重量%のポリアミド、および前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、前記ポリアミドと会合した5重量%~70重量%の第1の顔料を含む、ポリアミドベースの顔料マスターバッチと、
前記成形物品の総重量に基づいて、液体ベースの顔料マスターバッチに由来する0.1重量%~5重量%の第2の顔料と、
前記成形物品の総重量に基づいて、前記液体ベースの顔料マスターバッチに由来する0.1重量%~0.7重量%の油ベースの担体と、を含む、成形物品。
[態様2]
前記中和された酸コポリマーが、前記成形物品内の連続相であり、
前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチが、前記成形物品内の第1の二次相として存在しており、
前記第2の顔料が、前記成形物品内の第2の二次相として存在しており、
前記油ベースの担体は、前記成形物品内の第3の二次相として存在しており、
前記第1の二次相は、前記連続相内に均一に分布していない、態様1に記載の成形物品。
[態様3]
前記液体ベースの顔料マスターバッチが、
前記液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、5重量%~60重量%の前記第2の顔料と、
前記液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、40重量%~95重量%の前記油ベースの担体と、を含む、態様1または2に記載の成形物品。
[態様4]
前記中和された酸コポリマーが、ASTM D1238に従って測定され、4g/10分~6g/10分のメルトフローインデックスを有するアイオノマー樹脂である、態様1~3のいずれか一項に記載の成形物品。
[態様5]
前記中和された酸コポリマーが、エチレンメタクリル酸コポリマーであり、前記エチレンメタクリル酸コポリマーにおいて、前記コポリマーのメタクリル酸基がナトリウムイオンで少なくとも部分的に中和されている、態様1~4のいずれか一項に記載の成形物品。
[態様6]
前記中和された酸コポリマーが、前記中和された酸コポリマーの総重量に基づいて、15重量%~30重量%のアクリル酸またはメタクリル酸の共重合単位と、70重量%~85重量%のエチレンの共重合単位と、を含み、
前記中和された酸コポリマーのカルボン酸基の40%~70%が、ナトリウムカチオンを含むカルボン酸塩として中和されている、態様1~5のいずれか一項に記載の成形物品。
[態様7]
前記油ベースの担体が、ポリイソブチレン、ポリエチレングリコール、鉱油、またはそれらの組み合わせを含む、態様1~6のいずれか一項に記載の成形物品。
[態様8]
前記第2の顔料が、金属着色剤であり、
前記油ベースの担体が、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、30重量%~70重量%のポリイソブチレンと、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、30重量%~70重量%の鉱油と、を含む、態様1~7のいずれか一項に記載の成形物品。
[態様9]
前記第2の顔料が、非金属着色剤であり、
前記油ベースの担体が、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、10重量%~30重量%のポリエチレングリコールと、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、70重量%~90重量%の鉱油と、を含む、態様1~7のいずれか一項に記載の成形物品。
[態様10]
前記第1の顔料が、カーボンブラック、ニグロシン、金属ベースの顔料カドミウム顔料、クロム顔料、コバルト顔料、銅顔料、酸化鉄顔料、鉛顔料、マンガン顔料、水銀顔料、チタン顔料、亜鉛顔料、アルミニウム粉末、バインブラック、ランプブラック、アイボリーブラック、粘土顔料、酸化鉄、イエローオーカー、ローシェンナ、バーントシェンナ、ローアンバー、バーントアンバー、ウルトラマリン顔料、アリザリン、アリザリンクリムゾン、ガンボージ、コチニールレッド、ローズマダー、インディゴ、インディアンイエロー、ティリアンパープル、キナクリドン、マゼンタ、フタログリーン、フタロブルー、ピグメントレッド170、およびジアリライドイエローからなる群から選択される、態様1~9のいずれか一項に記載の成形物品。
[態様11]
前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチが、ナイロンベースの顔料マスターバッチであり、前記ポリアミドが、ナイロン-6である、態様1~10のいずれか一項に記載の成形物品。
[態様12]
前記成形物品が、ボトル用の装飾キャップである、態様1~11のいずれか一項に記載の成形物品。
[態様13]
成形物品を調製するための方法であって、
中和された酸コポリマー、ポリアミドベースの顔料マスターバッチ、および液体ベースの顔料マスターバッチをドライブレンドして、初期混合物を形成することと、
前記初期混合物を射出成形装置に供給することと、
前記射出成形装置を用いて前記初期混合物を成形して、前記成形物品を形成することと、を含み、
前記初期混合物が、前記混合物の総重量に基づいて、
少なくとも75重量%の前記中和された酸コポリマーと、
0.1重量%~5重量%の前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチと、
0.2重量%~5.7重量%の前記液体ベースの顔料マスターバッチと、を含み、
前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチが、前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、30重量%~95重量%のポリアミドと、前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、前記ポリアミドと会合した5重量%~70重量%の第1の顔料と、を含み、
前記液体ベースの顔料マスターバッチが、前記液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、5重量%~60重量%の第2の顔料と、前記液体ベースの顔料マスターバッチの総重量に基づいて、40重量%~95重量%の油ベースの担体と、を含む、方法。
[態様14]
前記中和された酸コポリマーが、前記成形物品内の連続相であり、
前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチが、前記成形物品内の第1の二次相として存在しており、
前記第2の顔料が、前記成形物品内の第2の二次相として存在しており、
前記油ベースの担体は、前記成形物品内の第3の二次相として存在しており、
前記第1の二次相は、前記連続相内で均一に混合されていない、態様13に記載の方法。
[態様15]
前記中和された酸コポリマーが、ASTM D1238に従って測定される、4g/10分~6g/10分のメルトフローインデックスを有するアイオノマー樹脂である、態様13または14に記載の方法。
[態様16]
前記中和された酸コポリマーが、エチレンメタクリル酸コポリマーであり、前記エチレンメタクリル酸コポリマーにおいて、前記コポリマーのメタクリル酸基がナトリウムイオンで少なくとも部分的に中和されている、態様13~15のいずれか一項に記載の方法。
[態様17]
前記油ベースの担体が、ポリイソブチレン、ポリエチレングリコール、鉱油、またはそれらの組み合わせを含む、態様13~16のいずれか一項に記載の方法。
[態様18]
前記第2の顔料が、金属着色剤であり、
前記油ベースの担体が、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、30重量%~70重量%のポリイソブチレンと、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、30重量%~70重量%の鉱油と、を含む、態様13~17のいずれか一項に記載の方法。
[態様19]
前記第2の顔料が、非金属着色剤であり、
前記油ベースの担体が、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、10重量%~30重量%のポリエチレングリコールと、
前記油ベースの担体の総重量に基づいて、70重量%~90重量%の鉱油と、を含む、態様13~17のいずれか一項に記載の方法。
[態様20]
前記第1の顔料が、カーボンブラック、ニグロシン、金属ベースの顔料カドミウム顔料、クロム顔料、コバルト顔料、銅顔料、酸化鉄顔料、鉛顔料、マンガン顔料、水銀顔料、チタン顔料、亜鉛顔料、アルミニウム粉末、バインブラック、ランプブラック、アイボリーブラック、粘土顔料、酸化鉄、イエローオーカー、ローシェンナ、バーントシェンナ、ローアンバー、バーントアンバー、ウルトラマリン顔料、アリザリン、アリザリンクリムゾン、ガンボージ、コチニールレッド、ローズマダー、インディゴ、インディアンイエロー、ティリアンパープル、キナクリドン、マゼンタ、フタログリーン、フタロブルー、ピグメントレッド170、およびジアリライドイエローからなる群から選択される、態様13~19のいずれか一項に記載の方法。
[態様21]
前記ポリアミドベースの顔料マスターバッチが、ナイロンベースの顔料マスターバッチであり、前記ポリアミドが、ナイロン-6である、態様13~20のいずれか一項に記載の方法。
[態様22]
前記初期混合物が、前記初期混合物の総重量に基づいて、前記液体ベースの顔料マスターバッチからの0.1重量%~0.7重量%の油ベースの担体を含む、態様13~21のいずれか一項に記載の方法。
[態様23]
前記成形物品が、ボトル用の装飾キャップである、態様13~22のいずれか一項に記載の方法。
[態様24]
態様13~23のいずれか一項に記載の方法によって調製された、成形物品。