(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】患者接触表面を備えるシリンジ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/46 20060101AFI20241108BHJP
A61M 5/158 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61M5/46
A61M5/158 500H
(21)【出願番号】P 2022016465
(22)【出願日】2022-02-04
(62)【分割の表示】P 2018552673の分割
【原出願日】2017-04-07
【審査請求日】2022-03-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-05
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ワッツ
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー フック
(72)【発明者】
【氏名】ランス リー ヤコービ
(72)【発明者】
【氏名】アミット ウダイ リメイエ
【合議体】
【審判長】平瀬 知明
【審判官】栗山 卓也
【審判官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-212184(JP,A)
【文献】特表2012-519546(JP,A)
【文献】特開2009-90098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0296370(US,A1)
【文献】国際公開第2016/123494(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャーを受け入れるために構成された開放近位端、および遠位出口端を有するシリンジバレル、
前記シリンジバレルの遠位端から軸方向に延びるポストであって、前記ポストは、前記シリンジバレルのキャビティと連通する軸方向通路を有し、および遠位端面を有する、ポスト、
前記ポストの前記軸方向通路内に受け入れられおよび前記シリンジバレルの前記遠位端から延びるカニューレであって、前記カニューレは、対象の皮膚内への注射のための遠位端を有する、カニューレ、
前記ポストを取り囲み、および前記シリンジバレルの前記遠位端から軸方向に延び、および前記ポストとカラーとの間に環状凹部を画定する、外側環状カラーであって、前記カラーは、患者の皮膚内への前記カニューレの挿入に際して、前記皮膚と接触するために、ある距離、前記ポストの前記遠位端面に関して位置付けられた遠位端面を有し、それによって、前記カラーの前記遠位端面および前記ポストの前記遠位端面が、前記皮膚と接触し、および前記カニューレを選択された深さまで挿入するための制御された皮膚の変形を提供する、カラー、
を含み、
前記ポストの前記遠位端面および前記カラーの前記遠位端面は、約6.0mmから約10.0mmの曲率半径を有する連続的な凸状曲線上に位置合わせされ
、
前記ポストの前記遠位端面および前記カラーの前記遠位端面が、約3.0から4.0mmの直径を有する皮膚接触表面を形成することを特徴とする一体型シリンジ。
【請求項2】
前記ポストの前記遠位端面および前記カラーの遠位端面は、挿入力を皮膚にわたって分布させる幅を有して、前記カニューレの穿通の深さを制御することを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項3】
前記ポストの前記遠位端面は、前記カラーの前記遠位端面から軸方向外側に、ある距離、間隔が空けられ、それによって、前記ポストの前記遠位端面および前記カラーの遠位端面は皮膚接触表面を画定することを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項4】
前記カニューレは、約3.5mmから約8.0mmの前記ポストから延びる長さを
有することを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項5】
前記ポストの前記遠位端面は、患者の皮膚内への前記カニューレの挿入の間に前記皮膚の表面と接触するための半径方向幅を有し、および前記カラーの前記遠位端面は、前記ポストの前記遠位端面を基準として軸方向に位置付けられており、それによって、前記ポストの前記遠位端面ならびに前記カラーの前記遠位端面は、患者内への前記カニューレの挿入に際して、挿入力を分布させるためおよび皮膚の変形を制御するための構成を備える皮膚接触表面を形成することを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項6】
前記ポストの前記遠位端面は、実質的に平坦であり、および前記シリンジバレルの長手方向軸に実質的に垂直な平面内に配向されていることを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項7】
前記カラーの前記遠位端面は、実質的に平坦でありおよび凸状の丸みが付けられた外形を備える外縁部を有し、前記実質的に平坦な前記カラーの前記遠位端面は、前記外縁部と内縁部との間に延び、前記実質的に平坦な前記カラーの前記遠位端面は、前記実質的に平坦な前記ポストの前記遠位端面と実質的に平行であることを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項8】
前記ポストの前記軸方向通路は、前記ポストの前記遠位端に円錐の形をした凹部を有し、および接着剤は、前記カニューレを前記ポストに取り付けるために、前記凹部内に受け入れられ、および前記接着剤は、前記遠位端面と実質的に同一平面であって、平坦な端面を形成することを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項9】
前記シリンジバレルは、使用者による把持のための前記シリンジバレルの近位端から半径方向外側に延びる少なくとも1つのフランジであって、前記フランジは、少なくとも1つの触知性部材を備える近位表面、および少なくとも1つの触知性部材を備える遠位表面を有する、フランジ、を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項10】
前記フランジの前記近位表面上の前記触知性部材は、前記近位表面から外側に突出するディンプルであり、および前記遠位表面上の前記触知性部材は、凹部であることを特徴とする請求項9に記載のシリンジ。
【請求項11】
前記遠位表面内の前記少なくとも1つの凹部は、突出する戻り止めを含むことを特徴とする請求項10に記載のシリンジ。
【請求項12】
前記ポストが、1.0から2.0mmの外径を有することを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項13】
前記ポストの前記遠位端面は、前記カラーの前記遠位端面から軸方向外側に、約0.3から0.7mmの距離、間隔が空けられることを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項14】
前記シリンジバレルは、使用者による把持のために前記シリンジバレルの近位端から半径方向外側に延びる少なくとも1つのフランジであって、前記フランジは、突出するディンプルによって形成される少なくとも1つの触知性部材を備える近位表面、および前記突出するディンプルの反対側に遠位に突出する戻り止めを有する凹部によって形成される触知性部材を備える近位表面を有する、フランジ、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項15】
前記カラーは、前記シリンジバレルの外径未満の外径を有することを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物または薬を患者に送達するための注射医療装置の分野のものである。具体的には、本発明は、改善された注射性能のための患者接触表面を備えるニードルベアリングハブを有する、シリンジまたはペン針を対象とする。患者接触表面は、皮膚内へのカニューレの穿通の所望の深さを促進するために構成される。ハブは、シリンジバレルと一体的であることができ、または薬物を投与するために使用される薬物ペン上に取り付けられることができるが、そのような装置と一緒の使用に限定されない。
【背景技術】
【0002】
自己投与される薬物を送達するための薬物ペンは、概して、薬物区画(medication compartment)を収容するシリンジまたはペン本体、およびペン本体に取り付けられまたはペン本体から取り外されてもよい別個のペン針、を含む。シリンジまたはペン針は、ペン本体を受け入れるための近位側の凹部を有するニードルベアリングハブ、および薬物区画にアクセスし典型的にはペン本体内の薬物カートリッジのセプタムを穿通する近位(非患者端)針を含む。ペン針組立品の遠位(患者端)は、注射部位内に挿入される針の傾斜が付けられた(beveled)遠位端を含む。
【0003】
注射は、皮内(ID)領域、皮下(SC)領域および筋肉内(IM)領域において行われてもよい。インスリンを含む多くの種類の注射可能な薬物に関して、SC領域は、注射を投与するために好まれる。例えば、Lo Prestiらによる非特許文献1を参照のこと。
【0004】
異なる長さの針、および高い頻度で4mm針および5mm針のような、より短い針は、皮下領域内の特定の目標深さへの注射を実現するのに適している。本発明は、針が、使用者が薬物ペンを用いて注射部位に接近する可能性のある角度に関わらず、その目標深さへ挿入されることを確実にすることへの必要性に対処する。
【0005】
ある先行技術のペン針において、カニューレは、ハブ上の軸方向に位置付けられたポスト内で支持される。ポストは、ペン本体が受け入れられる相対的に幅広い部分から遠位方向に延びる狭窄部分を形成する。当技術分野において知られる他のペン針において、注射部位に接して(against)置かれるハブの遠位面は、相対的に広く(large)てもよく、および縁部にわずかなテーパを備えていてもよい。しかしながら、ハブの縁部は、カニューレが注射と干渉する(interfering)角度で挿入されたときに、皮膚と係合する。
【0006】
先行技術の装置は、概して、意図される用途のために適当であるが、薬または薬剤を送達するためのカニューレの穿通を制御するための改善された装置の必要性が引き続き存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Skin and subcutaneous thickness at injecting sites in children with diabetes: ultrasound findings and recommendations for giving injection, Pediatric Diabetes (2012).
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、注射装置に関し、および特に、針ハブから延びるカニューレによる穿通の深さを制御するために構成された皮膚接触表面を備える針ハブを有するシリンジに関する。本発明は、特に、接触表面が、互いに補完する高さおよび幅を有し、通常の挿入力の下で皮膚においてインデント(indentation)の深さおよび形状を制御するのに十分な表面積(surface area)を提供することによって、カニューレの穿通の深さを制御する、針ハブ装置を対象とする。
【0009】
本発明のシリンジは、カニューレを支持するためのセンターポスト、およびポストを取り囲む外側カラーまたはリング、を備える針ハブを有する。1つの実施形態において、シリンジは、約0.3mlから0.5mlの範囲の内容物の少用量を分注するために構成されているが、体積は、注射装置の意図される用途により異なり得る。他の実施形態において、シリンジは、約1mlから3mlの体積を送達することができる。外側カラーは、典型的な挿入力の下で注射の間に皮膚の表面と接触するための寸法を有して、皮膚内へのカニューレの穿通を制御する。ポストは、カラーの遠位端に対して位置付けられてカニューレの穿通の深さの制御を提供することができる遠位端を有する。ポストは、カラーの遠位面と実質的に同一平面に位置付けられ得る。他の実施形態において、ポストの遠位端は、ポストの遠位面およびカラーの遠位面が、使用の間にカニューレが皮膚を穿通するときに、皮膚と接触しおよび皮膚の変形を制御するための形状および輪郭(contour)を提供するための接触表面を形成するように、カラーの遠位面から軸方向外側に、ある距離、間隔が空けられ得る。カラーに対するポストの寸法および場所は、皮膚表面にわたって力を分布させる寸法を有する皮膚接触表面を提供して、意図されるよりも深く皮膚を穿通するカニューレの発生を低減させる。
【0010】
1つの実施形態において、シリンジのハブは、2.0mmから8.0mmの範囲の直径を持つ遠位面を有する。ポストの遠位面を、カラーの遠位面を超えて延ばすことができ、それによって、ポストの遠位面とカラーの遠位面との間の距離は、約1.0mmから約5.0mmであり、および概して約0.3mmから約2.0mmである。他の実施形態において、ポストの遠位面を、カラーの遠位面から約0.3mmから0.7mmの距離、突き出させることができる。1つの実施形態において、ポストの遠位端を、外側カラーの遠位端と実質的に同一平面に位置合わせし(aligned)またはカラーに関して凹ませることができる。
【0011】
本発明の別の態様は、ポストおよび外側カラーによって画定される実質的に凸状の皮膚接触表面を画定する針ハブを有するシリンジである。1つの実施形態における接触表面は、約0.3mmから0.7mmの高さ、および1~4mm2の表面積を有し得る。
【0012】
本発明の1つの特徴は、カニューレを支持するためのセンターポストおよびポストを取り囲む外側カラーを有するシリンジであって、ポストの遠位端はカラーの遠位面に関して約0.3mmから0.7mm凹ませられたシリンジを提供することである。ハブは、約2.0mmから8.0mmの直径または幅を有して、カニューレによる皮膚内への穿通の制御された深さを提供するために十分な表面積および適当な形状を提供することができる。ポストの遠位面とカラーの遠位面との間の距離は、患者の皮膚が、皮膚がポストおよびカラーの面に接触する、凹ませられたポストによって画定される、凹部に入ることを可能にする。
【0013】
シリンジの針ハブの形状は、従来のシリンジ針ハブと比較して患者の注射部位と接触し、およびカニューレの穿通の深さを制御し、および過度のカニューレの穿通の発生を低減させる、より大きい表面積を提供する。患者の、より大きい快適さおよび信頼性が、注射の間に皮膚と接触する、より大きい表面積の結果として実現される。
【0014】
本発明の様々な態様および特徴は、基本的に、プランジャーを受け入れるために構成された開放近位端、および遠位出口端を有するシリンジバレルを含む一体型シリンジ(integral syringe)を提供することによって得られる。ポストは、シリンジバレルの前記遠位端から軸方向に延び、ポストは、シリンジバレルのキャビティと連通する軸方向通路を有する。カニューレは、ポストの軸方向通路内に受け入れられ、およびシリンジバレルの遠位端から延び、カニューレは、対象の皮膚内に注射するための傾斜が付けられた遠位端を有する。外側環状カラーは、ポストを取り囲み、およびシリンジバレルの遠位端から軸方向に延び、およびポストとカラーとの間に環状キャビティを画定し、カラーは、患者の皮膚内へのカニューレの挿入に際して皮膚と接触するための、ポストの遠位端に対して位置付けられた遠位端を有する。
【0015】
本発明の特徴は、さらに、薬物区画を有するシリンジバレル、プランジャーを有する近位端およびハブを有する遠位端を含むシリンジを提供することによって得られる。ハブは、遠位環状面ならびにカニューレを受け入れおよび薬物区画と連通する軸方向通路を備える軸方向に延びるポストを有する。軸方向に延びる環状カラーは、ポストを取り囲み、および遠位環状面を有する。ポストの遠位環状面およびカラーの遠位環状面は、通常の挿入力で皮膚と接触したときに患者の皮膚の変形を制御し、および前記カニューレ 患者内へのカニューレの挿入に際して穿通の深さを制御するために、皮膚接触表面を形成するように構成される。
【0016】
様々な実施形態の好ましいまたは任意選択的な特徴の各々は、他の特徴と組み合わされてもよく、および1つまたは複数の特定の特徴と組み合わせで記載された特徴は、また、他の実施形態の1つまたは複数の特徴と組み合わされてもよいことは理解されよう。本発明のこれらのおよび他の特徴は、本発明の以下の詳細な記載により明らかになり、これは図面と併せて本発明の様々な実施形態を開示する。
【0017】
以下は、図面の簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】シリンジバレルの端部から突出する針ハブを有する標準的なシリンジバレルを描く図である。
【
図3】カラーの端部と実質的に同一平面のポストを示す、本発明の第1の実施形態におけるシリンジの斜視図である。
【
図4】
図3のシリンジハブの拡大部分斜視図である。
【
図6】カニューレの穿通によって皮膚を変形させる
図3のシリンジハブの断面図である。
【
図8】本発明の別の実施形態におけるシリンジハブの斜視図である。
【
図10】カニューレの穿通の間の皮膚の変形を示す
図8のシリンジハブの断面図である。
【
図11】本発明の別の実施形態におけるシリンジハブの斜視図である。
【
図13】皮膚内へのカニューレ挿入および皮膚の変形を示す断面図である。
【
図14】シリンジ装置の別の実施形態の斜視図である。
【
図19】さらなる実施形態におけるシリンジの断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
シリンジは、インスリンのような薬物を患者に送達するための、薬物区画およびカニューレを有する装置をいうために本明細書において使用される。ペン送達装置は、典型的には、多数回投与の薬物、および別個のペン針を含有する。表現「ペン針」は、ペン針組立品の近位端が薬物区画にアクセスしおよび遠位端が1回または複数回の注射を行うために注射部位内への挿入に適しているように、薬物ペン本体に取り付けることのできる、針の付いた組立品をいう。用語「針」および「カニューレ」を、本明細書において言い換え可能に使用することができる。1つの実施形態において、カニューレは、対象の注射部位内への挿入のために構成された部材であり得る。1つの例は、患者内への挿入のために傾斜が付けられた端部を有するカニューレである。本明細書において使用される際に、「遠位」方向は、注射部位に向かう方向であり、および「近位」方向は、反対の方向である。「軸(axial)」は、針の長手方向軸に沿うまたは平行を意味し、および「半径」方向は、軸方向に垂直な方向である。
【0020】
対象の組織内の皮下層の位置および所望の注射深さは、患者の年齢、注射が投与される体の部分等によって異なる。従って、絶対的な注射深さは、本発明の重要な態様(critical aspect)とは考えられない。概して、大人における皮内(ID)層は、およそ2mmから3mmの厚さを有し、そのため、ID注射深さは、約3mmまたはそれ未満の範囲内にあり、深さは、皮膚の外側表面から測定される。皮下(SC)領域の厚さは、対象の体の注射部位の場所および対象の肥満度指数(body mass index )(BMI)により大幅に異なる。SCスペースの平均厚さは、約7mmから約12mmの範囲内にあり、そのため、SC注射深さは、約3mmから15mmの範囲内にある。SC領域は、さらに、約1mmの厚さおよび約2mmから約4mmの注射深さを有する浅皮下(shallow subcutaneous)(SSC)層、約3mmから7mmの深さで約4mmの厚さを有するSC層、ならびに約4mmの厚さおよび約7mmから約12mmの深さを有する深皮下(DSC)層に細区画されてもよい。装置からの注射が皮下スペースの上部領域(SSC)内で生じた場合、その装置を用いてID注射が生じる可能性が高い。装置からの注射が皮下スペースのより深い領域(DSC)内で生じたとき、その装置を用いてIM注射が生じる可能性が高い。インスリンは、好ましくは、SCスペースに送達される。IDまたは筋肉内(IM)スペースのいずれかに対する注射は、規定されたのとは異なるインスリンの摂取をもたらす可能性がある。
【0021】
本発明は、注射装置、および特に、所定の穿通深さまで皮膚を穿通するための所定の長さを持つカニューレを有するシリンジを対象とする。注射装置は、皮膚の表面に関する注射の様々な角度において穿通の深さを制御するのに役立つように、カニューレが皮膚を穿通したときに皮膚に接触しおよび皮膚を変形させるための皮膚接触表面を有する。接触表面は、皮膚内への穿通の深さを皮膚の所望の層に制御するための、所定の形状、幅、および高さを有する。1つの実施形態において、約3~4mmの直径を有する接触表面は、装置が、使用の間の典型的な挿入力によって皮膚に押し付けられるとき、カニューレの周りに皮膚における深いインデントを防止するのに十分な表面または接触区域を提供する。シリンジは、例えば、0.3mlシリンジまたは0.5mlシリンジであり得るが、分注される薬によって、大きめのサイズが提供され得る。
【0022】
図1および
図2を参照して、一般的に使用されるシリンジバレル10は、環状リング16から外側に突出するポスト14を備えるハブ12を有する。ポストの端面は、通常の使用の間、カニューレの挿入の間に、ポストの端部のみが皮膚に接触するように、外側リング16から位置付けられている。ポストの端面は、皮膚と接触するポストによって皮膚に深いインデントが通常形成される寸法を有する。皮膚の外側表面に形成された深いインデントは、しばしば、カニューレが、使用者によって意図されるよりも深い皮膚層へ、皮膚内により深く穿通する結果をもたらす。例として、約1mmの幅を有するポスト内に据え付けられた4.0mmカニューレは、皮膚の表面に深い凹状のくぼみを形成する接触表面をもたらす可能性があり、そのため、カニューレは、4mmよりも深く穿通する可能性があり、および使用者に痛みまたは不快を引き起こし得る、皮膚のより深い層を穿通する可能性がある。より深い穿通は、また、薬を患者に送達するのにさほど効果的ではない、薬を皮膚の層に送達するためのカニューレをもたらし、および特に小児科の患者において、筋肉内注射のリスクを増大させる可能性もある。
【0023】
本発明において、カニューレを取り囲むシリンジハブの皮膚接触表面は、より大きい表面積およびカニューレによる穿通の深さのより卓越した(greater)制御を提供するために構成された幅および高さを有する。本発明の1つの実施形態において、ペン針装置は、約4mmのカニューレ穿通を得るように構成される。皮膚接触表面は、さらに、カニューレの穿通の間に装置が皮膚に押し付けられたときに、皮膚表面の変形の形状、幅および深さを制御するように構成される。幅は、カニューレの挿入の間におよび通常の挿入力を使用する薬の注射または送達の間に皮膚と接触する外周縁部によって画定される表面積であるように決定される。高さは、接触表面の外周縁部と接触表面の近位端との間の直線距離をいう。
【0024】
本発明の1つの実施形態における皮膚接触表面は、カニューレの穿通および薬の送達の間に皮膚と接触する、実質的に凸状の形状、実質的に平坦面または凹状の面を有し得る。接触区域は、3.0mmよりも大きいおよび典型的には約4.0mmの幅または直径を有し得る。1つの実施形態における接触区域は、実質的に環状または円形の形状を有し得る。接触区域の幅は、
図5における矢印59によって示されるような、外周縁部の直径または横断寸法(transverse dimension)をいう。接触区域は、同一平面上にあることができ、または接触表面の外周縁部からポストの接触表面まで測定された約0.5mmから約1.5mmの高さまたは深さを有し得る。
【0025】
図3から
図7の実施形態において、シリンジ20は、開放近位端24および遠位端26を有するシリンジバレル22を含む。
図5に示される内部軸方向キャビティ28は、患者に送達されるべき薬剤を受け入れる。開放近位端24は、シリンジの内容物を分注するためのプランジャー30を受け入れる。ハブ32は、カニューレ34を支持しおよび皮膚接触区域を画定するために、遠位端26から軸方向に延びる。
【0026】
図4および
図5に示されるハブ32は、カニューレ34を支持するために軸方向に延びるセンターポスト36を有する。
図5に示されるように、ポスト36は、シリンジバレル22のキャビティ28と連通する軸方向通路38を有する。カニューレ34は、
図5に示されるように、軸方向通路38内に据え付けられ、および適当な接着剤40によって取り付けられる。カニューレ34は、所望の深さまで皮膚を穿通するための長手方向長さを有する。軸方向通路38の遠位端は、ポストの周縁部に向かって外側に裾広がりになって接着剤40を受け入れるための凹部42を画定する、円錐形状を有する。示される実施形態において、接着剤40は、ポストの軸方向端部が実質的に平坦でありおよび接着剤がポスト36の面から外側に染み出さないように、円錐形凹部42を満たす。示される実施形態におけるポスト36の遠位端面44は、シリンジおよびカニューレ34の長手方向軸に実質的に垂直な平面内に配向された実質的に平坦な表面を有する。示される実施形態における遠位端面44は、環状構成およびポスト36の直径に対して狭い半径方向幅を有する。接着剤40は、患者内へのカニューレの挿入の間に皮膚と接触するための平坦な遠位表面46を形成するために、接着剤がポスト36の周縁部と実質的に同一平面上にあるように、凹部42を満たす。
【0027】
ハブ32は、ポスト36を取り囲むスリーブまたはリングを形成する外側環状カラー48を含む。カラー48は、ポストと同心状であり、およびポスト36から半径方向外側に間隔を空けて、環状凹部50を画定する。示される実施形態において、環状凹部50は、カラー48の近位端およびポスト36の近位端から延び、ならびにポスト36の外側表面とカラー48の内側表面との間に延びる。環状凹部50の半径方向の寸法は、約0.5mmから3mm、および典型的には 約1.0mmであり得る。
【0028】
カラー48は、ポスト36の遠位表面から外側に間隔を空けた環状の形状の皮膚接触表面を形成する遠位面52を有する。示される実施形態において、遠位面52は、実質的に平坦であり、およびポスト36の遠位面44の平面と共平面である。遠位面52は、わずかに丸みが付けられた周縁部53を有して、使用の間に患者に、ある水準の快適さを提供する。ポスト36の遠位面44およびカラー48の遠位面52は、カニューレが患者内に挿入されたときに、皮膚接触表面を画定する。カラー48の遠位面52は、皮膚接触表面の外側寸法を画定する。カラー48の配向および寸法は、典型的な挿入および注射力の下で患者の皮膚と接触するように、および力を区域にわたって分布させて、皮膚内へのカニューレの穿通の深さを制御するように、設けられる。
【0029】
図6を参照して、カニューレ34は、所望の深さまで皮膚を穿通するように患者内へ挿入される。カラー48は、カニューレを支持するポストのみが、深いカニューレの穿通をもたらす皮膚の深いくぼみまたはインデントを形成する皮膚と係合する、先行技術のシリンジと比べて、皮膚の内側への変形またはくぼみを制限するように、皮膚の、より大きい表面積にわたって穿通力を分散または分布させるための直径を有する。ポスト36の遠位面44およびカラー48の遠位面52は、
図6に示されるように穿通力によって形成されるインデントの深さを制御するために十分な表面積にわたって力を分布させるための、実質的に平坦な接触表面を画定する。
【0030】
シリンジバレルから突出するハブの患者の皮膚との接触による最初のカニューレの穿通は、皮膚のくぼみ、および最初のカニューレ穿通深さを形成する。皮膚の表面は、次いで、
図6に示されるように弛緩し(relaxes)、そのため、皮膚の表面は、実質的に接触表面の形状に従い、およびカニューレの穿通の深さを制限する。本発明は、注射の間のカニューレの穿通の深さおよび注射装置に加えられる穿通力の制御を提供するための接触表面の形状、表面積および高さに関する。
【0031】
示される実施形態におけるカニューレは、薬、および特にインスリンの効率的な送達のための所望の深さまで皮膚を穿通するために、約4.0mmから6.0mmの長さを有し得る。他の実施形態において、カニューレは、約3.5mmから約8.0mmの長さを有し得る。なお、さらなる実施形態において、カニューレは、約2.5mmから6.0mm、および概して約4.0mmから5.0mmの長さを有し得る。カニューレは、例えば、31ゲージまたは32ゲージであり得るが、他のゲージを使用することができる。ハブの接触表面は、皮膚におけるインデントの変形および寸法を制御し、ならびに十分な区域にわたって注射力を分布させ、それによってカニューレの穿通の深さを制御する、幅および高さを有する。接触表面の形状および寸法は、皮膚表面への完全な係合に際して加えられる圧力を分布させる。輪郭は圧力分布と組み合わせて、改善された快適さを患者に提供する。ハブの高さおよび表面積ならびに周囲表面積は、所与の作動力に対する組織の圧縮および弛緩の程度に影響を及ぼす。
【0032】
ハブの寸法は、所望のカニューレの穿通の深さおよびカニューレの長さによって異なり得る。カラーは、矢印58によって示される軸方向長さを有する。カラーは、約5.0~7.0mmの長さ、および典型的には約6mmの長さを有し得る。カラーは、矢印59によって示される、約4.0mmから10.0mm、概して約3.0~5.0mm、および典型的には約4.0mmの直径を有し得る。ポスト36は、カラーの外径の約1/3の直径を有し得る。ポストは、約1.0mmから2.0mmの直径を有し得る。
【0033】
図7に示される別の実施形態において、ポスト36は、接着剤を受け入れおよびカニューレ34をポストに固定するために、軸方向通路38の遠位端に深い凹部54を有し得る。この実施形態において、凹部54は十分に深くて、接着剤40がポストの遠位端に関して凹ませられおよびカニューレ34の周りに凹部56を形成することを可能にする。
【0034】
図8から
図10は、シリンジバレル62、およびカニューレ66を支持するためのハブ64、を有するシリンジ60の代替的な実施形態を示す。ハブ64は、センターポスト68および外側カラー70によって形成される。先の実施形態におけるように、ポスト68は、シリンジバレルの遠位端から軸方向に延びる実質的に円筒の形状を有する。ポスト68は、カニューレ66をポスト68に固定するためにカニューレ66および接着剤74を受け入れるための軸方向通路72を有する。ポストの遠位端および接着剤74は、患者内へのカニューレの挿入の間に皮膚に接触するためのポストの遠位面を画定する。示される実施形態において、リブ69は、ポスト68およびカニューレ66を安定化させるために、センターポスト68と外側カラー70との間に延びる。示されるように、リブ69は、ポスト68の遠位端から内側に間隔が空けられた遠位端を有する。
【0035】
カラー70は、ポストを取り囲む円筒形状を有し、およびシリンジバレルの遠位端から延びて、環状凹部71を画定する。環状凹部71は、約1~3mmの半径方向幅を有し得る。カラー70は、環状の皮膚接触表面を形成する遠位表面76を有する。示される実施形態において、遠位表面76は、ポストの遠位面の平面に平行およびカニューレの長手方向軸に実質的に垂直な平面内に配向される実質的に平坦な接触表面を有する。カラーは、丸みが付けられたまたは湾曲した外周縁部77を有して、カラーの遠位面と側面との間のなだらかな移行を形成する。ポスト68の遠位表面79は、カラーの遠位表面76に関して凹ませられて、軽微な凹部81を形成する。
図10に示されるように、カラー70の遠位表面に対するポスト68の遠位表面の位置によって形成される凹部81は、患者の皮膚83が、患者の皮膚内へのカニューレの挿入の間に、凹部81内に変形することを可能にする。ポストの遠位表面およびカラーの遠位表面は、皮膚接触表面を形成し、および表面積を画定するための半径を有して、挿入力下での皮膚におけるインデントの深さを制御する。
図10は、皮膚のくぼみが実質的にポストおよびカラーの接触表面の形状に従うカニューレの挿入の間の皮膚の変形を示す。
【0036】
1つの実施形態において、カラー70の遠位面76とポスト68の遠位面79との間の軸方向間隔は、約1.0mmから1.5mmおよび概して約0.3mmから0.7mmであり得る。カラー70の遠位面76とポスト68の遠位面79との間の軸方向間隔は、凹部81の深さを画定する。カラー70の内縁部の直径は、凹部81の幅を画定する。
【0037】
図11から
図13は、シリンジバレル82、およびカニューレ86を支持するハブ84を有するシリンジ80の別の実施形態を示す。ハブ84は、カニューレ86を受け入れるためのセンターポスト88、および接着剤90を受け入れる円錐の形をした凹まされた端部を有する。先の実施形態におけるように、接着剤は、ポスト88の端部内の凹部を満たして、ポスト88の実質的に平坦な遠位面92を形成する。外側カラー94は、ポスト88を取り囲んで、ポスト88とカラー94との間に環状凹部96を画定する。環状凹部96は、カラー94の内面とポスト88の外面との間に延びる、約0.5mmから3.0mm、および典型的には約1.0mmの半径方向幅を有し得る。
【0038】
図12の実施形態において、ポスト88は、カラー94の軸方向長さよりも長い軸方向長さを有し、そのため、ポスト88の遠位表面92は、カラーの遠位表面96から軸方向外側に間隔が空けられる。
図13に示されるように、ポスト88は、カラーから、ある距離、間隔が空けられ、そのため、ポストの遠位表面およびカラーの遠位表面は、カニューレの挿入の間、皮膚接触表面を画定する。
図13に示されるように、ポストの遠位表面は、カラーの深さよりも深い、結果として生じるインデントの深さを生み出し、および皮膚インデントの平滑な実質的に凹状の湾曲を提供する。皮膚の変形は、挿入の間の挿入力、および患者によって通常加えられる挿入力を用いるカニューレの穿通、によって引き起こされる。1つの実施形態において、ポスト88の遠位面92は、カラー94の遠位面から約0.3mmから0.7mmの距離、軸方向に延びる。示される実施形態において、ポスト88およびカラー94は、実質的に凸状の湾曲した皮膚接触表面を形成する。ポスト88は、カラーから、ある距離、延びて、例えば、約6.0mmから10.0mmの曲率半径を有する皮膚接触表面を提供し得る。
【0039】
ハブの遠位接触面は、カニューレの穿通の深さに関する所望の制御を提供するための様々な構成を有し得る。各実施形態において、遠位接触面は、接触面の湾曲によって画定される十分な表面積および高さを提供するための幅または直径を有して、カニューレに意図されるよりも深く皮膚を穿通させる可能性のある皮膚の押し下げ(depressing)を最小にする。
【0040】
様々な実施形態において、ポストは、約1.0~3.0mm、および概して約1.0~1.5mmの直径を有し得る。ポストは、カラーの接触表面の外周から測定された際に、約1.0~1.5mmの高さを有し得る。ポストの遠位面とカラーの遠位面との間の軸方向間隔に対するポストの直径(D)の比は、約2:1から約4:1および概して約2.5:1から3:1に及び得る。より大きい比は、患者への、より大いなる快適さ、および挿入深さの強化された制御を提供する、より大きい表面積を提供する。
【0041】
図14から
図18を参照して、遠位端102および近位端104を有するシリンジバレル100を含む、注射装置のさらなる実施形態が示される。遠位端102は、
図2から
図6の実施形態と同様であり、および外側カラー106、内側ポスト108、および半径方向に(radially)、外側カラー106の内側表面とポスト108の半径方向外側表面(outer radial surface)との間に延びるリブ110を含む。
図16に示されるように、リブ110は、カラー106の端部およびポスト108の端部から間隔が空けられた遠位端112を有する。この実施形態において、カラー106は、シリンジバレル100の長手方向軸に実質的に垂直な平面内に配向される環状の遠位面114を有する。内側ポスト108は、シリンジバレルの長手方向軸に実質的に垂直な平面内に配向される遠位環状面116を有する。示される実施形態において、ポスト108の遠位面116は、カラー106の遠位面114と同一平面内に配向される。長手方向通路118は、カニューレ122を受け入れおよび支持しならびにシリンジバレル100の内部チャンバー120と連通するためのポスト108を通って延びる。カニューレ122は、先の実施形態におけるように、接着剤によってポスト106に取り付けられ、および先の実施形態におけるように、長さおよび幅を有する。
【0042】
シリンジバレル100の近位端104は、通常の方法でチャンバー120の内容物を分注するためのプランジャー(不図示)を受け入れるための開放端124を有する。示される実施形態において、シリンジバレル100の近位端104は、プランジャーの操作端(operating end)を受け入れるための軸方向に延びるカラー126を有する。
【0043】
フランジ128は、使用者が使用の間に装置を操作しおよびプランジャーを配備する(deploy)ためのフィンガーグリップまたはフィンガーフランジを形成するシリンジバレル100の間に、近位端104の反対側から半径方向外側に延びる。1つの実施形態において、
図15に示されるように、フランジ128は、互いと実質的に同一および鏡像であって、使用者によって装置を把持するために、外側に延びる。他の実施形態において、フランジは、使用者が装置を把持しおよび操作するのを手助けするための所望の触知性の(tactile)感触を提供するように、異なる形状、サイズ、および配向を備えて非対称であり得る。フランジ128は、遠位表面130および近位表面132を有する。示される実施形態において、フランジ128は、シリンジバレル100の遠位端から離れて湾曲して、近位表面132の実質的に凹状の表面を形成する。代替的な実施形態において、フランジは、シリンジの遠位端に向かって反対方向に湾曲し得る。示されるように、フランジ128は、人間工学的な握りおよび独特の感触を提供するための湾曲を有して、使用者の指に従って使用の快適さを増大させる。フランジ128の人間工学的な形状および構造(conformation)は、シリンジの保持および取り扱いを、糖尿病患者に起こり得る関節炎および神経障害のような器用さの問題を持つ人々にとってより容易にする、増大された快適さおよび触知性の確認を提供する。他の実施形態において、一方または両方のフランジは、遠位端に向かって湾曲し得る、または真っ直ぐおよび実質的に平坦であり得る。
【0044】
1つの実施形態において、フランジ128には、プランジャーの配備および薬物(substance)の送達の間に使用者を手助けするための触知性の構造が設けられている。触知性の構造は、一方または両方のフランジ上、ならびに遠位表面および近位表面のいずれかまたは両方上に存在し得る。示される実施形態において、ディンプル134は、フランジの近位表面から延びるように、フランジ128内に形成される。示される実施形態において、ディンプル134は、ディンプル134とカラー126との間に平滑な湾曲した部分128を形成するフランジ128の外縁部136に向かって配向される。他の実施形態において、ディンプルは、フランジ表面(1つまたは複数)の中心または他の場所内に位置付けられ得る。示される実施形態におけるディンプル134は、実質的に凸状、ドーム型、涙の形状を有し、ディンプルの外縁部138は、フランジ128の外縁部136で形成される。あるいはまた、ディンプルは、丸みが付けられたまたは楕円形状のような他の形状を有し得る。ディンプル134は、触知性の感触を提供するのに十分な幅、長さ、および高さを有して、使用者がシリンジを位置付けおよび握るのを手助けする。他の実施形態において、ディンプルまたは他の触知性部材(tactile member)は、フランジの端部から内側に間隔が空けられおよび他の適当な配向に設けられ得る。1つの実施形態において、ディンプルは、フランジの幅または長さを延ばしおよびフランジの一方または両方の表面上に設けられ得る。
【0045】
リッジ140は、付加的な触知性の感触を提供するように、ディンプル128の面上に提供され得る。示される実施形態において、リッジは、ディンプル134の外面にわたって延び、およびディンプル134の凸状の表面に対して外縁部に向かって位置付けられる。リッジは、ディンプルの外側表面および/または内側表面上において半径方向外側に延びるように配向され得る。他の実施形態において、突出するリッジの代わりに、凹部または他の触知性の構造が、ディンプル上に設けられ得る。
【0046】
ディンプル134は、
図18に示されるように、フランジ128の遠位表面130上に凹状の凹部142を形成する。凹部142は、また、触知性の感触を提供するために、表面内に1つまたは複数のリッジまたは凹部を有していてもよい。使用者に対して触知性の感触を提供するために外縁部136に沿って凹部を形成するように、実質的にU形状の開口部分144が外縁部に沿って形成される。突出部を形成する戻り止め(detent)146は、シリンジバレル100の遠位端に向かって突出する凹部142の凹状の表面内に形成される。
図16および
図18に示されるように、リッジ148は、凹状の凹部142の幅にわたって延びるように、戻り止め146に近接して形成され得る。戻り止め146およびリッジ148は、付加的な触知性の感触を使用者に対して提供して、シリンジバレルを握りおよび位置付けるのを手助けする。他の実施形態において、リッジは、近位表面、遠位表面または遠位表面および近位表面の両方の表面全体にわたって延びるように提供され得る。
【0047】
示される実施形態において、ディンプルは、近位表面から突出する。代替的な実施形態において、ディンプルは、近位表面上に凹部を形成するように、遠位表面から突出し得る。他の実施形態において、他の触知性の構造または部材は、使用者がシリンジを位置付けおよび操作するのを手助けするように、近位表面および/または遠位表面上に設けられ得る。
図19に示されるさらなる実施形態において、フランジ128は、シリンジの遠位端に向かって湾曲する。
図19の実施形態の構成要素(element)は、一貫性のために、同一の参照番号によって特定される。
図19の実施形態において、フランジの遠位表面からシリンジの遠位端に向かって突出するディンプル140が示される。フランジの近位表面上に形成されている凹部136が示される。さらなる実施形態において、ディンプルまたは他の触知性部材は、一方または両方のフランジの近位表面から、または一方または両方のフランジの遠位表面から、突出し得る。同様に、1つまたは複数の凹部は、近位表面、遠位表面、または近位表面および遠位表面の両方上の、一方または両方のフランジ上に形成され得る。
【0048】
フランジ128内のディンプル134は、内側ポスト108が実質的にカラー106の軸方向長さと同一の軸方向長さを有する実施形態と関連して示される。ディンプル134は、また、使用の間にシリンジに所望の触知性の感触を提供するために、ポスト68がカラー70の軸方向長さよりも短い軸方向長さを有する
図3から
図7の実施形態および
図8から
図10の実施形態に、ならびにポスト88がカラー94の軸方向長さよりも長い軸方向長さを有する
図11から
図13の実施形態に、含まれ得る。
【0049】
好ましい実施形態の上記記載は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するものとしてみなされるべきではない。開示は、当業者が、記載される本発明の変形を、本発明の範囲から逸脱することなく実施することを可能にするように意図される。この中で、本明細書および特許請求の範囲において、数的な限定は、修飾語句「約(about)」によって限定されると理解され、そのため、同等の結果を生む大したことのない逸脱(minor departures)は、本発明の範囲内である。1つの実施形態または独立項と関連して開示される特徴または従属項の限定は、本発明の範囲から逸脱することなく、別の実施形態においてまたは異なる従属項と組み合わされてもよい。