(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】制御装置、ユーザ装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20241108BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20241108BHJP
H04W 72/04 20230101ALI20241108BHJP
H04B 7/022 20170101ALI20241108BHJP
H04B 7/0417 20170101ALI20241108BHJP
【FI】
H04B7/06 960
H04W16/28 130
H04W72/04
H04B7/06 956
H04B7/022
H04B7/0417 100
(21)【出願番号】P 2022030078
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神渡 俊介
(72)【発明者】
【氏名】菅野 一生
(72)【発明者】
【氏名】大関 武雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 浩輔
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-107613(JP,A)
【文献】特開2015-164281(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0120529(US,A1)
【文献】国際公開第2018/173239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04W 16/28
H04W 72/04
H04B 7/022
H04B 7/0417
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散配置される複数の通信装置と複数のユーザ装置との間のビームサーチ処理を制御する制御装置であって、
通信装置が形成可能な複数の第1のビームのそれぞれにおいて異なるパラメータで複数の第1の参照信号の送信を前記通信装置に指示する第1の指示手段と、
前記複数のユーザ装置のそれぞれから、前記通信装置が前記第1の参照信号の送信に使用した前記複数の第1のビームのうち、前記複数のユーザ装置のそれぞれにおいて前記第1の参照信号の受信信号強度が高い順に、1つ以上の第1のビームの識別情報と受信信号強度との組み合わせを含む第1のフィードバック情報を取得する第1の取得手段と、
前記第1の取得手段で前記複数のユーザ装置から取得した複数の前記第1のフィードバック情報に、異なる第1のビームの識別情報が所定の数以上含まれる場合に、前記所定の数以上の第1のビームから、第2の参照信号の測定に使用する前記所定の数より少ない第1のビームを決定する第1の決定手段と、
前記第1の決定手段で測定に使用すると決定した前記所定の数より少ない第1のビームに対応する複数の第2のビームであって、前記第1のビームより狭いビーム幅を有する前記複数の第2のビームにおいて送信される前記第2の参照信号のパラメータを前記複数のユーザ装置に通知する第1の通知手段と、
を備え
、
前記第1の決定手段は、前記識別情報ごとに、前記複数のユーザ装置から取得した複数の前記第1のフィードバック情報に含まれる数が多い順に前記所定の数より少ない第1のビームを選択し、前記所定の数より少ない第1のビームに対応する第2のビームで前記第2の参照信号を測定すると決定することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第1の決定手段は、前記識別情報ごとに、前記複数のユーザ装置から取得した複数の前記第1のフィードバック情報に含まれる前記第1の参照信号の受信信号強度を加算し、加算した前記受信信号強度が高い順に前記所定の数より少ない第1のビームを選択し、前記所定の数より少ない第1のビームに対応する第2のビームで前記第2の参照信号の測定を行わせると決定することを特徴とする
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記通信装置が同時にデータを送受信可能なデータストリーム数を特定する第1の特定手段をさらに備え、
前記第1の決定手段は、前記第1の特定手段で特定した前記データストリーム数より少ない数の第1のビームに対応する前記第2のビームで前記第2の参照信号の測定を行わせると決定することを特徴とする
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記複数のユーザ装置のそれぞれが同時にデータを送受信可能なデータストリーム数を取得する第2の特定手段をさらに備え、
前記第1の決定手段は、前記複数のユーザ装置のそれぞれが、前記第2の特定手段で特定した前記データストリーム数以上の複数の通信装置から送信された参照信号を測定するように前記通信装置の第1のビームを選択し、前記所定の数より少ない第1のビームに対応する前記第2のビームで前記第2の参照信号の測定を行わせると決定することを特徴とする
請求項1から3の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記複数の第1のビームにおいて送信される前記第1の参照信号のパラメータを前記複数のユーザ装置に通知する第2の通知手段をさらに備えることを特徴とする
請求項1から4の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第1の通知手段は、前記第2の参照信号のパラメータとして、所定の第2のビームの識別情報と、前記所定の第2のビームで送信される前記第2の参照信号の測定を指示するユーザ装置の識別情報とを対応付けて通知することを特徴とする
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第1の通知手段は、前記第2の参照信号のパラメータとして、前記第2の参照信号を送信するタイミングを通知することを特徴とする
請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記複数のユーザ装置から、前記通信装置が前記第2の参照信号の送信に使用した複数の第2のビームのうち、前記複数のユーザ装置のそれぞれにおける前記第2の参照信号の受信信号強度が高い順に1つ以上の第2のビームの識別情報と前記受信信号強度との組み合わせを含む第2のフィードバック情報を取得する第2の取得手段をさらに備えることを特徴とする
請求項1から7の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記第2の取得手段で取得した前記第2のフィードバック情報に基づいて、前記複数のユーザ装置の少なくとも何れかと前記通信装置との間の通信に使用する第2のビームを決定する第2の決定手段をさらに備えることを特徴とする
請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第1の取得手段は、前記通信装置が送信した複数の前記第1の参照信号のうち、所定のユーザ装置における受信信号強度が最も高い第1の参照信号の受信信号強度との受信強度の差分と、当該第1の参照信号の送信に使用された第1のビームの識別情報との組み合わせとを含む第1のフィードバック情報を取得することを特徴とする
請求項1から9の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
制御装置によって制御される分散配置される複数の通信装置から送信されるビームの測定を行うユーザ装置であって、
前記複数の通信装置のうちの所定の通信装置が形成可能な複数の第1のビームのそれぞれにおいて送信された複数の第1の参照信号の受信信号強度を測定する第1の測定手段と、
前記第1の測定手段で測定した複数の前記第1の参照信号のうち、前記ユーザ装置における受信信号強度が高い順に、1つ以上の前記第1の参照信号の送信に使用された第1のビームの識別情報と受信信号強度との組み合わせを含む第1のフィードバック情報を前記制御装置に送信する送信手段と、
第1のビームに対応する複数の第2のビームであって、前記第1のビームより狭いビーム幅を有する前記複数の第2のビームにおいて送信される第2の参照信号のパラメータを前記制御装置から受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した前記第2の参照信号の前記パラメータが前記第1のフィードバック情報に含まれる前記第1のビームに対応する第2のビームにおいて送信される第2の参照信号のパラメータを含む場合に、前記通信装置が前記第2のビームを使用して送信した前記第2の参照信号の受信信号を測定する第2の測定手段と、
を備え
、
前記送信手段は、前記ユーザ装置が同時にデータを送受信可能なデータストリーム数を前記制御装置に通知し、
前記受信手段は、前記データストリーム数以上の前記第1のビームに対応する前記複数の第2のビームにおいて送信される第2の参照信号のパラメータを前記制御装置から受信することを特徴とするユーザ装置。
【請求項12】
分散配置される複数の通信装置と複数のユーザ装置との間のビームサーチ処理を制御する制御装置が実行する制御方法であって、
通信装置が形成可能な複数の第1のビームのそれぞれにおいて異なるパラメータで複数の第1の参照信号の送信を前記通信装置に指示することと、
前記複数のユーザ装置のそれぞれから、前記通信装置が前記第1の参照信号の送信に使用した前記複数の第1のビームのうち、前記複数のユーザ装置のそれぞれにおいて前記第1の参照信号の受信信号強度が高い順に、1つ以上の第1のビームの識別情報と受信信号強度との組み合わせを含む第1のフィードバック情報を取得することと、
前記複数のユーザ装置から取得した複数の前記第1のフィードバック情報に、異なる第1のビームの識別情報が所定の数以上含まれる場合に、前記所定の数以上の第1のビームから、第2の参照信号の測定に使用する前記所定の数より少ない第1のビームを決定することと、
測定に使用すると決定した前記所定の数より少ない第1のビームに対応する複数の第2のビームであって、前記第1のビームより狭いビーム幅を有する前記複数の第2のビームにおいて送信される前記第2の参照信号のパラメータを前記複数のユーザ装置に通知することと、
を含
み、
前記第1のビームを決定することは、前記識別情報ごとに、前記複数のユーザ装置から取得した複数の前記第1のフィードバック情報に含まれる数が多い順に前記所定の数より少ない第1のビームを選択し、前記所定の数より少ない第1のビームに対応する第2のビームで前記第2の参照信号を測定すると決定することを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
分散配置される複数の通信装置と複数のユーザ装置との間のビームサーチ処理を制御する制御装置のコンピュータに、
通信装置が形成可能な複数の第1のビームのそれぞれにおいて異なるパラメータで複数の第1の参照信号の送信を前記通信装置に指示する第1の指示工程と、
前記複数のユーザ装置のそれぞれから、前記通信装置が前記第1の参照信号の送信に使用した前記複数の第1のビームのうち、前記複数のユーザ装置のそれぞれにおいて前記第1の参照信号の受信信号強度が高い順に、1つ以上の第1のビームの識別情報と受信信号強度との組み合わせを含む第1のフィードバック情報を取得する第1の取得工程と、
前記第1の取得工程において前記複数のユーザ装置から取得した複数の前記第1のフィードバック情報に、異なる第1のビームの識別情報が所定の数以上含まれる場合に、前記所定の数以上の第1のビームから、第2の参照信号の測定に使用する前記所定の数より少ない第1のビームを決定する第1の決定工程と、
前記第1の決定工程において測定に使用すると決定した前記所定の数より少ない第1のビームに対応する複数の第2のビームであって、前記第1のビームより狭いビーム幅を有する前記複数の第2のビームにおいて送信される前記第2の参照信号のパラメータを前記複数のユーザ装置に通知する第1の通知工程と、
を実行させ
、
前記第1の決定工程において、前記識別情報ごとに、前記複数のユーザ装置から取得した複数の前記第1のフィードバック情報に含まれる数が多い順に前記所定の数より少ない第1のビームを選択し、前記所定の数より少ない第1のビームに対応する第2のビームで前記第2の参照信号を測定すると決定することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、ユーザ装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザセントリックネットワークを実現するための技術として、中央制御局(CPU)に光フロントホールで接続され、エリア内に多数配置されたアクセスポイント(AP)を介してユーザ装置(UE)と通信するセルフリー(CF)Multiple-Input Multiple-Output(MIMO)技術が検討されている(非特許文献1)。
【0003】
CF MIMO技術では、エリア内にAPが多数配置されることが前提となるため、所定のUEとの無線信号を行う可能性のあるAPの数が従来のセルラネットワークと比較して増加しうる。また、CF MIMO技術では、データストリーム単位で異なりうるAPとUEとの間で無線信号を送受信してCPUに接続しうるため、所定のUEとの間でチャネル推定を行うAPの数が従来のMIMO技術と比較して増加しうる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Wang, Zihuan, et al. "Hybrid Beamforming Design for C-RAN Based mmWave Cell-Free Systems." 2020 IEEE 92nd Vehicular Technology Conference (VTC2020-Fall), IEEE, 2020.
【文献】Kojima, Chikara, et al. "Novel two-step beam search method for multi user millimeter-wave communication" 2017 IEEE 28th Annual International Symposium on Personal, Indoor, and Mobile Radio Communications (PIMRC). IEEE, 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、APとUEとの間では、通信に使用するためにAPとUEとの間のビームを探索するビームサーチ処理(非特許文献2)を行い、探索したビームでチャネル推定を行う必要がある。しかしながら、UEと無線信号の送受信を行いうるAPの数が増加するため、CPUがUEとの通信に使用するAPを特定するためのビームサーチ処理に多くの時間がかかることが課題であった。
【0006】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、セルフリーMIMO技術におけるビームサーチ処理に係る時間を低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る制御装置は、
分散配置される複数の通信装置と複数のユーザ装置との間のビームサーチ処理を制御する制御装置であって、
通信装置が形成可能な複数の第1のビームのそれぞれにおいて異なるパラメータで複数の第1の参照信号の送信を前記通信装置に指示する第1の指示手段と、
前記複数のユーザ装置のそれぞれから、前記通信装置が前記第1の参照信号の送信に使用した前記複数の第1のビームのうち、前記複数のユーザ装置のそれぞれにおいて前記第1の参照信号の受信信号強度が高い順に、1つ以上の第1のビームの識別情報と受信信号強度との組み合わせを含む第1のフィードバック情報を取得する第1の取得手段と、
前記第1の取得手段で前記複数のユーザ装置から取得した複数の前記第1のフィードバック情報に、異なる第1のビームの識別情報が所定の数以上含まれる場合に、前記所定の数以上の第1のビームから、第2の参照信号の測定に使用する前記所定の数未満の第1のビームを決定する第1の決定手段と、
前記第1の決定手段で測定に使用すると決定した前記所定の数未満の第1のビームに対応する複数の第2のビームであって、前記第1のビームより狭いビーム幅を有する前記複数の第2のビームにおいて送信される前記第2の参照信号のパラメータを前記複数のユーザ装置に通知する第1の通知手段と、
を備え、
前記第1の決定手段は、前記識別情報ごとに、前記複数のユーザ装置から取得した複数の前記第1のフィードバック情報に含まれる数が多い順に前記所定の数より少ない第1のビームを選択し、前記所定の数より少ない第1のビームに対応する第2のビームで前記第2の参照信号を測定すると決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セルフリーMIMO技術におけるビームサーチ処理に係る時間を低減できる技術を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る無線通信システムを示す図。
【
図2】(A)は中央処理装置とアクセスポイントの構成を示す図、(B)はユーザ装置の構成を示す図。
【
図3】(A)は従来の第1段階のビーム選択を示す図、(B)は従来の第2段階のビーム選択を示す図。
【
図4】従来のビームサーチ処理のスケジュール例を示す図。
【
図5】(A)は本実施形態に係る第1段階のビーム選択を示す図、(B)は本実施形態に係る第2段階のビーム選択を示す図。
【
図6】本実施形態に係るビームサーチ処理のスケジュール例を示す図。
【
図7】本実施形態に係る中央処理装置が実行する処理例を示す図。
【
図8】第2実施形態に係る中央処理装置とアクセスポイントの構成を示す図。
【
図9】第2実施形態に係る中央処理装置が実行する処理例を示す図。
【
図10】第3実施形態に係る中央処理装置が実行する処理例を示す図。
【
図11】本実施形態に係るフィードバックレポートのメッセージ構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
<<システム構成>>
本実施形態に係る無線通信システムの構成例を
図1に示す。無線通信システム1は、一例において5Gのセルラ通信システム(移動通信ネットワーク)である。ただし、これに限られず、本システムは、例えば5G以降の後継のセルラ通信システムであってもよいし、セルラ以外の無線通信システムであってもよい。本システムは、中央処理装置10、アクセスポイント(AP)11A~11C(以下、区別せずにAP11と呼ぶ場合がある)、およびユーザ装置(UE)20A~20E(以下、区別せずにUE20と呼ぶ場合がある)を含んで構成される。なお、
図1では、3つのAP11と5つのUE20を示しているが、これらの装置の数は限定されるものではない。
【0012】
本実施形態に係る無線通信システム1は、中央処理装置10とUE20とのMIMO通信を、中央処理装置10がサービスを提供するサービスエリア内に分散配置され、中央処理装置10によって制御されるAP11を介して行う。中央処理装置10がAP11を協調動作させることで、従来の無線通信システムのように、中央処理装置10とUE20との位置関係によって通信品質が低下することを防ぐことができ、UE20からみてサービスエリアのどこにいても一定以上の品質の通信サービスを受けることができる。このようなセルフリー(CF)MIMO技術が現在検討されている。
【0013】
本実施形態に係る中央処理装置10は、AP11を統括制御する制御装置である。なお、本実施形態ではAP11とUE20との無線通信においてミリ波を用いるものとして説明する。中央処理装置10は、光フロントホールで接続されたAP11を介して、UE20との通信を行う。また、コアネットワークに接続し、UE20にインターネットアクセスを提供することができる。
【0014】
AP11は、中央処理装置10と光フロントホールで接続され、基地局からの指示に従い無線信号を送受信する送受信点である。AP11は、複数のアンテナを備え、中央処理装置10の制御に応じてビームフォーミングを行うことができる。
【0015】
<<中央処理装置の構成>>
図2(A)を参照して、中央処理装置10およびAP11の構成について説明する。
【0016】
中央処理装置10は、バス105によって相互に通信可能に接続されたプロセッサ101、メモリ102、AP制御部103、コアネットワーク(CN)通信部104を備える。
【0017】
プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを実行し、中央処理装置10の全体の動作を制御する制御部である。プロセッサ101は、CPU(中央処理装置)、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサでありうる。メモリ102は、プロセッサ101が実行するプログラムや、プロセッサ101が中央処理装置10を制御するために使用する各種データを格納する記憶部である。一例では、中央処理装置10は、プロセッサ101およびメモリ102を含むコンピュータを備える。
【0018】
AP制御部103は、AP11の制御を行うためのインタフェース(IF)であり、UE20へ送信させるデータストリームをAP11に送信し、AP11を介してUE20からデータストリームを受信する。本実施形態では、AP制御部103は光フロントホールでAP11と通信するIFである。
【0019】
CN通信部104は、中央処理装置10が通信するCN通信部104は、コアネットワークとの通信を行う有線または無線通信部である。
【0020】
AP11は、中央処理装置10から送信された信号を出力するリモート無線ヘッド(RRH)である。AP11は、AP制御部103から受信した信号を送信するとともに、UE20から受信した信号を制御IF111を介してAP制御部103に送信する。また、AP11による信号の送受信は、制御インタフェース(IF)111を介して中央処理装置10によって制御される。中央処理装置10から送信を指示されたデータは、無線通信回路112を介して、複数のアンテナ113のうちの少なくとも1つを介して無線信号を送信することで、ビームを形成することができる。中央処理装置10は、AP11が形成可能なビームを複数用いて特定のUE20へのデータ伝送を行うよう指示することでCF MIMO伝送を行うことができる。また、中央処理装置10は、複数のAP11から1つのUE20へ、1つのAP11から複数のUE20へ、複数のAP11から複数のUE20へ同時に無線信号を送信することもできる。
【0021】
<<ユーザ装置の構成>>
図2(B)を参照して、ユーザ装置(UE)20の構成について説明する。UE20は、通信バス204によって通信可能に接続されたプロセッサ201、メモリ202、並びに無線通信回路203を備える。
【0022】
プロセッサ201は、メモリ202に記憶されたプログラムを実行し、UE20の全体の動作を制御する制御部である。プロセッサ201は、CPU(中央処理装置)、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサでありうる。メモリ202は、プロセッサ201が実行するプログラムや、プロセッサ201がUE20を制御するために使用する各種データを格納する記憶部である。
【0023】
無線通信回路203は、AP11と無線信号を送受信するための無線回路であり、1つ以上のアンテナに接続される。本実施形態に係るUE20は、後述するように、AP11とのMIMO通信に使用するビームの測定を行うビームサーチ処理を実行する。ビームサーチ処理によって相関が低く、信号品質のよい複数のビームを検出し、当該複数のビームに割り当てられたストリーム上でデータを送受信することでUE20と中央処理装置10との間のスループットを向上することができる。なお、本実施形態において、UE20のアンテナ指向性は無指向性であるものとして説明するが、異なる指向性のUE20にも適用可能である。
【0024】
<<ビーム選択処理>>
続いて、
図3(A)、
図3(B)、および
図4を参照して、従来のビームサーチ処理について説明する。
【0025】
図3(A)および
図3(B)に、ビームサーチで測定されるビームの概要について説明する。ビームサーチ処理においては、
図3(A)に示すようにUE20が第1のビームの測定を行う第1のビーム測定(粗測定)と、
図3(B)に示す第1のビームよりビーム幅の狭い第2のビームの測定を行う第2のビーム測定(微細測定)との2ステップの測定が実行される。第1のビームは、広ビームとも呼ばれ、第2のビームは、狭ビームとも呼ばれる。広ビームは、例えば複数の狭ビームの組み合わせによって形成されうる。一例では、広ビームは、複数の狭ビームで同一の参照信号を同時に送信することで形成されてもよい。
【0026】
なお、中央処理装置10は第1のビーム測定のスケジュールとして、各AP11が参照信号を送信する広ビームのインデックスとそのタイミングに関するスケジュール情報(第1のスケジュール情報)をブロードキャスト送信する。UE20は、ブロードキャスト送信された第1のビーム測定のスケジュール情報を取得することで、測定すべき広ビームが送信されるタイミングを特定することができる。また、スケジュール情報には、
図4の期間402においてUE20が広ビームのベストビームを報告するリソースを指定する情報が含まれる。これによって、UE20からのフィードバックレポートの衝突を避けることができる。なお、UE20はフィードバックレポートをいずれかのAP11を介して制御チャネルにおいて中央処理装置10に送信される。
【0027】
図4の期間401の第1のビーム測定において、AP11から狭ビームよりビーム幅の広い所定数の広ビームにおいて参照信号を順番に送信し、UE20はこの広ビームにおいて送信された参照信号の受信信号強度の測定を行い、各AP11から送信された広ビームの中で最も受信信号強度の高い参照信号の送信に使用された広ビームをベスト広ビームとして報告する。例えば、
図4の期間401では、
図3(A)に示すように、AP11Aの広ビーム301~308、AP11Bの広ビーム311~318、およびAP11Cの広ビーム321~328を介して参照信号の送信を行う。UE20は、各AP11が形成可能な広ビームにおいて送信された参照信号の受信信号強度を測定し、最も高い受信信号強度の参照信号を測定したビームがベスト広ビームであると判定する。一例では、UE20は、最も高い信号対ノイズ比(SN比)の参照信号を測定したビームをベスト広ビームであると判定してもよい。
【0028】
ここで、UE20Aは広ビーム307、318、328がベスト広ビームであると判定し、UE20Bは広ビーム306、326がベスト広ビームであると判定し、UE20Cは広ビーム303、311がベスト広ビームであると判定する。また、UE20Dは広ビーム305、317、322がベスト広ビームであると判定し、UE20Eは広ビーム304、316、323がベスト広ビームであると判定する。
【0029】
続いて、
図4の期間402において、各UE20は期間401で判定したベスト広ビームのフィードバックを行う。
図11に示すように、フィードバック情報(フィードバックレポート)は、パラメータとして、UE20の識別情報1101、第1のAP11の識別情報1102、第1のAP11からの参照信号のうち、最も高い受信信号強度の参照信号の送信に使用されたビームインデックス1103、第1のAP11から受信した参照信号のうち最も高い受信信号強度1104を含む。また、別のAP11について、1105~1107に示すように識別情報、ベスト広ビームのビームインデックス、および受信信号強度の組み合わせが含まれうる。なお、本実施形態では、APごとに最も高い受信信号強度のみを報告するものとして説明するが、APごとに受信信号強度が高い順に2つ以上のビームインデックスおよび受信信号強度の組み合わせが報告されてもよい。ビームインデックス1103、1106は、AP11の参照信号の送信に使用された広ビームの識別情報である。
【0030】
これらのベスト広ビームのフィードバックレポートに基づいて、中央処理装置10はフィードバックレポートで指定されたインデックスの広ビームを分割した狭ビームの送信をAP11に指示する。また、
図4の期間403において、各UE20へ第2のビーム測定のスケジュールを設定する。これによって、UE20は、当該UE20においてベスト広ビームとして中央処理装置10に通知したAP11の広ビームに対応する狭ビームにおいて第2の参照信号が送信されるタイミングを特定することができる。そして、第2のビーム測定において参照信号が送信されるパラメータを指定するスケジュール情報(第2のスケジュール情報)をUE20にブロードキャスト送信する。なお、一例では、中央処理装置10は第2のスケジュール情報をユニキャスト送信してもよい。
【0031】
このため、
図4の期間405において、
図3(B)に示すように、AP11Aは広ビーム303に対応する狭ビーム3031~3033、広ビーム304に対応する狭ビーム3041~3043、広ビーム305に対応する狭ビーム3051~3053、広ビーム306に対応する狭ビーム3061~3063、広ビーム307に対応する狭ビーム3071~3073で第2の参照信号の送信を行う。同様に、AP11Bは広ビーム311に対応する狭ビーム3111~3113、広ビーム316に対応する狭ビーム3161~3163、広ビーム317に対応する狭ビーム3171~3173、広ビーム318に対応する狭ビーム3181~3183で第2の参照信号の送信を行う。同様に、AP11Cは広ビーム322に対応する狭ビーム3221~3223、広ビーム323に対応する狭ビーム3231~3233、広ビーム326に対応する狭ビーム3261~3263、広ビーム328に対応する狭ビーム3281~3283において参照信号の送信を行う。UE20は、広ビームと同様に、各AP11から送信された第2の参照信号の受信信号強度を測定し、最も高い受信信号強度の参照信号の送信に使用された狭ビームがベスト狭ビームであると判定する。一例では、UE20は、最も高い信号対ノイズ比(SN比)の参照信号を測定したビームをベスト狭ビームであると判定してもよい。
【0032】
ここで、UE20Aは狭ビーム3071、3181、3283がベスト狭ビームであると判定し、UE20Bは狭ビーム3061、3262がベスト狭ビームであると判定する。また、UE20Cは狭ビーム3032、3112がベスト狭ビームであると判定し、UE20Dは狭ビーム3051、3173、3222がベスト狭ビームであると判定し、UE20Eは狭ビーム3043、3162、3232がベスト狭ビームであると判定する。
【0033】
続いて、
図4の期間406において、各UE20は期間405で判定したベスト狭ビームのフィードバックを行う。これによって、中央処理装置10は各UE20に対して通信に使用するビームを把握することができる。なお、期間406で送信されるフィードバック情報(第2のフィードバック情報)も
図11と同様の構造を使用してもよい。すなわち、第2のフィードバック情報として、AP11が第2の参照信号の送信に使用した狭ビームの識別情報とその受信信号強度が中央処理装置10に送信される。
【0034】
ここで、CF MIMOにおいては、各AP11と通信しうるUE20の数が従来のMIMO通信と比較して多くなる。このため、UE20の数が増えるに従い、AP11ごとに送信しなければならない狭ビームの数が増え、2段階ビーム選択によるスイープ回数の削減の効果が低くなるという課題がある。また、CF MIMOでは、サービスエリア内にAP11が多数分散配置されることから、AP11の数が増えるという課題もある。
【0035】
さらに、スループットの向上を目的としてミリ波を使用するCF MIMOでは、より低い周波数の無線信号と比較して、ミリ波の信号では距離減衰の影響が大きくなるため、サービスエリア内により高密度にAP11を配置する必要があり、さらにAP11の数が増えるという課題がある。
【0036】
このため、本実施形態に係る無線通信システム1では、UE20に測定させるAP11のビーム数を限定することでビーム選択に係る時間を削減する。
【0037】
続いて、本実施形態に係るビーム選択の流れについて説明する。
【0038】
図5(A)は、
図3(A)と同様のため、説明を省略する。また、
図6の期間402におけるUE20からのフィードバックについても同様である。
【0039】
続いて、
図6の603において、中央処理装置10は、第2のビーム測定において各UE20が測定すべきAP11のビームを限定して期間403においてスケジューリングを行い、測定すべきAP11のビームの情報を期間404でUEに通知する。
【0040】
例えば、中央処理装置10は、UE20から期間402においてフィードバックされた広ビームのうち、閾値以上の信号強度であって、信号強度が大きい順に所定数の広ビームを送信したAP11からの狭ビームを測定するように期間603で決定する。
【0041】
これによって、期間603では、期間405において各UE20が測定すべき狭ビームの数を減らすことができる。例えば、
図5(B)に示す例では、中央処理装置10は各AP11ごとに、3つ以下の広ビームを分割した狭ビームを測定するよう判定する。例えば、広ビーム303、318、328については、UE20からベスト広ビームであると報告されるが、第2のビーム測定においては広ビーム303、318、328に対応する狭ビームにおける参照信号の測定を行わない。これによって、通信に使用可能な狭ビームを残しながら、第2のビーム測定期間の長さを短縮することができる。中央処理装置10が第2のビーム測定において測定するビーム数を限定する処理の詳細については
図7を参照して詳述する。
【0042】
<<処理例>>
続いて、
図7を参照して、本実施形態に係る中央処理装置10が実行する処理例について説明する。
図7に示す処理は、中央処理装置10のプロセッサ101がメモリ102に格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0043】
なお、
図7に示す処理とは別に、中央処理装置10は、所定の時間間隔でビーム送信のスケジュールに関する第1のスケジューリング情報およびフィードバックタイミングを指示するフィードバック条件をブロードキャスト送信している。また、第1のスケジューリング情報は、測定する広ビームの数や、参照信号の送信間隔を含んでもよく、フィードバック条件は、UE20がフィードバックすべき広ビームの信号強度の閾値を指示する情報を含んでもよい。
【0044】
まず、S701において、中央処理装置10はUE20のあらかじめ通知したタイミングでAP11を介して広ビーム(第1のビーム)において参照信号を送信する。各AP11の形成可能な広ビームの数をNbm1とし、AP11の数LとするとNbm1×Lのスイープ回数が必要となる。
【0045】
続いて、S702において、中央処理装置10はUE20から第1のフィードバック情報を受信する。例えば、第1のフィードバック情報は、
図11を参照して説明したように、ベスト広ビームのインデックスと、そのインデックスにおける参照信号の受信信号強度の組み合わせを含む。第1のフィードバック情報に含まれうるベスト広ビームのインデックスとそのインデックスにおける参照信号の受信信号強度の組み合わせの数は、フィードバック条件に含まれてもよい。あるいは、UE20は、所定の受信信号強度の閾値以上の参照信号の受信信号強度と、その参照信号の送信に使用されたビームインデックスを報告してもよい。
【0046】
続いて、S703において、中央処理装置10はUE20から受信した第1のフィードバック情報に基づいて、いずれのAP11から狭ビームを使用した参照信号の送信を行うかを決定する。
【0047】
例えば、中央処理装置10は、UE20から受信したフィードバック情報に含まれる、特定のAP11の特定の広ビームのインデックスごとに、UE20における広ビームの受信信号強度を加算する。これによって、同一のAP11の同一の広ビームが複数のUE20からベスト広ビームであるとフィードバックされた場合には、当該広ビームの加算された受信信号強度が大きくなる。そして、フィードバック情報に含まれる特定のAP11の特定の広ビームのインデックスごとに、加算された受信信号強度が小さい順に広ビームに対応する狭ビームの測定を第2のビーム測定に行わないと決定する。これによって、より多いUE20からベスト広ビームであると報告された広ビームのうち、より受信信号強度が大きい広ビームに対応する狭ビームを優先的に第2のビーム測定において測定することができる。
【0048】
また、中央処理装置10は、受信したフィードバック情報の中から、UE20ごとにベスト広ビームの中で最も大きい受信信号強度を示すAP11の広ビームについては第2の測定を行うものとしてもよい。そして、UE20ごとに最も大きい受信信号強度を示すAP11のビーム以外のAP11のビームインデックスごとに、そのビームの受信信号強度を加算してもよい。そして、フィードバック情報に含まれる特定のAP11の特定のビームインデックスごとに、加算された受信信号強度が小さい順に広ビームに対応する狭ビームの測定を行わないと決定する。これによって、UE20ごとに高いビームゲインが得られる確率の高い受信信号強度を示すベスト広ビームについては狭ビームの測定を行わせながら、より少ないUE20からベスト広ビームであると報告された広ビームのうち、より受信信号強度が小さい広ビームについて優先的に測定を行わないようにすることができる。
【0049】
そして、所定の数未満の広ビームに対応する狭ビームを第2のビーム測定において測定させると決定すると、S704で測定すべきAP11のビームインデックスと、そのAP11の狭ビームにおいて参照信号を送信するタイミングを特定可能なパラメータを含む第2のスケジュール情報を通知する(S704)。UE20は、受信した第2のスケジュール情報に基づいて、参照信号が送信されるタイミングを特定する。
【0050】
続いて、S705で中央処理装置10は、S704で通知したパラメータを使用した狭ビームにおいて参照信号の送信を行う。
【0051】
続いて、S706で中央処理装置10は、UE20からS705で送信した参照信号の測定結果を含む第2のフィードバック情報を取得する。これによって、中央処理装置10は、S707でUE20ごとにデータ伝送に使用する狭ビームを決定することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る中央処理装置は、UE20から取得した第1のビーム測定のフィードバック結果に基づいて、UE20から第2のビーム測定において送信することを要求された広ビームのうち、一部の広ビームに対応する狭ビームを第2のビーム測定において送信する。これによって、第2のビーム測定における狭ビームの測定時間を短縮することができる。
【0053】
<第2の実施形態>
AP11においてアナログビームフォーミングとデジタルビームフォーミングとを併用するハイブリッドビームフォーミングによって、UE20へのビームゲインを確保しつつ、AP11が備えるアナログ-デジタル変換器(ADC)の数を削減する技術が検討されている(非特許文献1)。ハイブリッドビームフォーミングでは、RFチェーンの数をアンテナが形成可能なビームの数より少なくすることで、ビームゲインを維持しながらAP11の無線回路規模を抑え、消費電力を低減することができる。これによって、AP11のコストを低減することができる。
【0054】
このように、AP11がハイブリッドビームフォーミングを行う場合、複数のAP11によって同時に無線信号を送受信可能なUE20の最大数は、当該複数のAP11が備えるRFチェーンの総数に対応する。これは、CF MIMOシステムにおいては、連携可能な所定範囲内の複数のAP11のRFチェーンに割り当てられるデータストリームを介して同時に1つ以上のUE20へのデータ伝送するためである。一方、AP11が備えるアンテナが形成可能なビームの数はRFチェーンより多いため、同時に通信可能なUE20の数に対してビームの測定に係る時間が従来のアナログビームフォーミング方式と比較して大きくなるという課題がある。このため、本実施形態に係る中央処理装置10は、各AP11が有するRFチェーンの数に基づいて、UE20から第1のビーム測定において報告された広ビームに対応する狭ビームのうち、第2のビーム測定においてUE20に測定させる狭ビームを限定することで、第2のビーム測定に必要な時間を短縮する。なお、第1の実施形態と同様の構成、機能、または処理については同一の参照符号を使用し、説明を省略する。
【0055】
図8に本実施形態に係る中央処理装置10およびAP11の構成を示す。
【0056】
中央処理装置10は、AP制御部103にデジタルプリコーダ801を備える。これによって、UE20に所定のデータストリームを、複数のAP11から送信された無線信号の重ね合わせによる無線チャネルに割り当てることができる。
【0057】
また、AP11は、所定数NRFのRFチェーン8101~810NRF(以下、区別することなくRFチェーン810と呼ぶ場合がある)を有し、アナログプリコーダ820を介して所定数Ntのアンテナ8301~830Nt(以下、区別せずにアンテナ830と呼ぶ場合がある)に接続されている。なお、Nt≫NRFである。本実施形態では、RFチェーン810の数と、データストリームの数は対応する。すなわち、同時に通信可能なUE20の数は、RFチェーン810の数によって制限される。
【0058】
ここで、アナログビームの探索については、すべてのAP11とUE20との間のベストビーム及びその受信電力値が必要となるため、ビームスイープに多くの時間を要するという課題がある。このため、本実施形態に係る中央処理装置10は、AP11とUE20との間のアナログビームの探索を2段階に分けて行う。例えば、第1の測定では複数のアナログビーム(狭ビーム)をまとめて広ビームとして同時に参照信号を送信し、UE20からのフィードバックに含まれるベスト広ビームのみ、広ビームに含まれる複数のアナログビームのそれぞれで順番に参照信号を送信することで、AP11とUE20との間のベストアナログビームの特定を行うことができる。なお、広ビームと狭ビームとの対応関係があらかじめ設定されている場合には、複数の狭ビームで同時に参照信号を送信せず、アナログプリコーダ820によって広ビームと狭ビームとが切り替えられてもよい。すなわち、広ビームは狭ビームの足し合わせによって形成されてもよいし、ビーム幅の制御によって異なるビームが広ビームと狭ビームに割り当てられてもよい。
【0059】
図9に本実施形態に係る中央処理装置10が実行する処理例を示す。
図9に示す処理は、中央処理装置10のプロセッサ101がメモリ102に格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0060】
なお、第1実施形態と同様に、中央処理装置10は、所定の時間間隔でビーム送信のスケジュールに関する第1のスケジューリング情報およびフィードバックタイミングを指示するフィードバック条件をブロードキャスト送信している。また、第1のスケジューリング情報は、測定する広ビームの数や、参照信号の送信間隔を含んでもよく、フィードバック条件は、UE20がフィードバックすべき広ビームの信号強度の閾値を指示する情報を含んでもよい。
【0061】
S701、S702の処理は第1の実施形態と同様のため説明を省略する。なお、S702で取得したフィードバック情報に含まれるAP11の広ビームに対応する狭ビームについては、S702の時点ではすべて第2のビーム測定において測定させるように設定する。例えば、ビームインデックスと、測定させるUE20の識別情報とを対応付けて記憶する。
【0062】
続いて、S903において、中央処理装置10は、AP11i(APi)の備えるRFチェーンの数を示す情報を取得する。例えば、APiは、中央処理装置10との接続時に、APiが備えるRFチェーンの数を中央処理装置10に通知してもよい。
【0063】
続いて、S904において、中央処理装置10は、UE20から受信したフィードバック情報に基づいて、APiが形成する広ビームをベスト広ビームであると報告したUE20の数および当該報告されたビームの受信信号強度を特定する。これによって、AP11ごとに、無線信号を送受信しうるUE20の数を特定することができる。
【0064】
続いて、S905において、APiによって参照信号の送信に使用された広ビームをベスト広ビームであるとフィードバックしたUE20の数(NUE)が、当該AP11のRFチェーンの数(NRFAP)より少ないか否かを判定する。AP11によって送信されたビームの受信強度をフィードバックしたUE20の数NUEがRFチェーンの数NRFAPより少ない場合(S905でYES)、当該AP11は、UE20に向けたアナログビームを形成することができる。このため、中央処理装置10は当該AP11については第2のビーム測定を行うとして測定するビーム数の削減を行わないと決定する。そして、処理をS907に進め、すべてのAP11についてビーム測定を行わせるUE20の数が、当該AP11のRFチェーンの数より少ないか否かを判定し終わったかを判定する。まだS905~S906の処理を行っていないAPが存在する場合(S907でNO)は、次のAP11についてS903~S906の処理を実行する。すべてのAP11についてビーム測定を行わせるUE20の数がAP11のRFチェーンの数未満になった場合は(S907でYES)は、S909以降の処理を実行する。
【0065】
一方、AP11によって送信された広ビームの受信強度をフィードバックしたUE20の数がRFチェーンの数以上である場合(S905でNO)、中央処理装置10は処理をS906に進め、当該AP11についてのUE20からのフィードバック情報のうち、小さい受信信号強度を報告したUE20へのRFチェーンの割り当てを行わないと決定する。すなわち、最も小さい受信信号強度を報告したUE20より他のUE20にRFチェーンを割り当てた方がスループットの向上が期待できる。このため、当該AP11については第2のビーム測定指示を行わない。これによって、第2のビーム測定を行っても、高いビームゲインが得られる狭ビームを見つける可能性が比較的低いUE20は第2のビーム測定を行わないようにすることができる。
【0066】
なお、S906では、所定のAP11についてのUE20からのフィードバック情報から、AP11の広ビームのビームインデックスごとに、UE20の受信信号強度を加算し、加算された受信信号強度が小さい順に当該広ビームに対応する狭ビームにおいて参照信号の測定を行わないと決定してもよい。これによって、より多いUE20からベストビームであると報告された広ビームのうち、より受信信号強度が大きい広ビームについて測定を優先して行うことができる。また、第2のビーム測定を行うと判定した広ビームについてのフィードバック情報を送信したUE20のうち、小さい受信信号強度を報告したUE20へのRFチェーンの割り当てを行わないと決定してもよい。これによって、第2のビーム測定において測定する狭ビーム数を削減しながら、RFチェーンに割り当てるUE20を限定することができる。RFチェーンへの割り当てを行わないと判定した場合には、第2のビーム測定においてUE20には割り当てられなかった広ビームに対応する狭ビームにおける参照信号の測定を行わせないことで、フィードバックレポートに必要な時間を短縮することができるほか、UE20の消費電力を低減することができる。
【0067】
S906の処理が終了すると、中央処理装置10は、処理をS905に戻し、AP11によって送信された広ビームをフィードバックしたUE20の数が、当該AP11のRFチェーンの数より少ないか否かを判定する。
【0068】
S904~S906の処理をすべてのAP11について繰り返すことで、AP11からデータストリームの割り当てが可能なUE20の数より多いUE20が当該AP11について狭ビームにおける参照信号の測定を行わないようにすることができる。これによって、RFチェーンと比較して多くの第2のビーム測定の結果に基づいてビーム測定の段階でUE20にRFチェーンを割り当てることができる。
【0069】
すべてのAP11について、RFチェーンの割り当てが可能な数より少ないUE20の数が割り当てられると、中央処理装置10は、各UE20に第2のビーム測定において測定すべきAP11のビームインデックスと、そのAP11の狭ビームにおいて参照信号を送信するタイミングを特定可能な第2のスケジュール情報を通知する(S909)。S909以降、S705~S707の処理は第1実施形態と同様のため説明を省略する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る中央処理装置は、UE20から取得した第1のビーム測定のフィードバック結果に基づいて、UE20から第2のビーム測定において送信することを要求された広ビームのうち、一部の広ビームに対応する狭ビームを第2のビーム測定において送信する。この際、AP11が備えるRFチェーンの数に基づいて第2のビーム測定において測定する狭ビームに対応する広ビームを限定する。これによって、第2のビーム測定における狭ビームの測定時間を短縮することができるとともに、データ伝送の際にAP11からアナログビームを向けられる可能性が低いUE20が当該AP11によって形成されるビームの測定を行う可能性を低減することができる。
【0071】
また、以上説明したように、ビーム測定において本実施形態に係る中央処理装置10は、高い受信信号強度をフィードバックしたUE20にRFチェーンの割り当てを行う。これによって、後続のデータ伝送において、無線通信システム1のスループットを向上することができる。
【0072】
<第3の実施形態>
第3の実施形態では、中央処理装置は、UEが同時にデータを送受信可能なデータストリームの数に基づいて測定するビームを限定する処理例について説明する。なお、第1または第2の実施形態と同様の構成、機能、処理については同一の参照符号を使用し、説明を省略する。
【0073】
図10は、本実施形態に係る中央処理装置10が実行する処理例を示す図である。
【0074】
S701およびS702は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。なお、本実施形態に係るUE20は、第1のビーム測定のフィードバックを送信する際に、UE20が同時にデータを送受信可能なデータストリーム数として、RFチェーンの数を中央処理装置10に通知する。例えば、UE20は、RFチェーンの数に応じてフィードバックレポートに含めるAP11のベスト広ビームの数を決定する。例えば、UE20が備えるRFチェーンの数の2倍の数のAP11のベスト広ビームを報告する。これによって、S1003において、中央処理装置10は、フィードバックレポートに含まれるAP11のベスト広ビームの数に基づいてUE20が備えるRFチェーンの数を特定することができる。あるいは、UE20は、制御チャネルを介して中央処理装置10にUE20が備えるRFチェーンの数を通知してもよい。
【0075】
続いて、S1004において、中央処理装置10はUE20から受信した第1のフィードバック情報に基づいて、削除候補の広ビームを判定する。S1004では、第1実施形態と同様に、ビームインデックスごとにUE20から受信した受信信号強度を加算し、加算した受信信号強度が小さい順に削除候補として判定してもよい。広ビームを削除すると、中央処理装置10は、削除した広ビームに対応する狭ビームにおいて第2の参照信号を送信しない。
【0076】
続いて、中央処理装置10は処理をS1005に進め、削除候補の広ビームをベスト広ビームであるとフィードバックしたUE20(UEk)を特定する。そして、中央処理装置10は、削除候補の広ビームを削除した場合に、S105で特定したUEkが測定するAP11数がUEkのRFチェーン数未満となるか否かを判定する(S1006)。UEkが測定するAP11数がUEkのRFチェーン数未満となる場合(S1006でYES)、広ビームに対応する狭ビームの測定を省略することによってUEkが後続のデータ伝送においてスループットを向上することができなくなる可能性がある。このため、当該ビームについては削除しないと決定し(S1007)、処理をS1009に進める。
【0077】
一方、UEkが測定するAP11数がUEkのRFチェーン数未満とならない場合(S1006でNO)、削除候補の広ビームに対応する狭ビームの測定を省略してもUEkは別のAP11との間のビームを介して後続のデータ伝送においてスループットを向上することができる。このため、当該ビームについて削除すると決定し(S1007)、処理をS1009に進める。
【0078】
S1009では、中央処理装置10はすべての削除候補の広ビームについて削除するか否かを決定したかを判定する。すべての削除候補の広ビームについて決定が終了していない場合は(S1009でNO)、中央処理装置10は処理をS1005に戻し、S1005~S1008の処理を繰り返す。
【0079】
中央処理装置10はすべての削除候補の広ビームについて削除するか否かを決定したと判定した場合は(S1009でYES)、中央処理装置10は処理をS909に進める。以降の処理は
図9と同様のため説明を省略する。
【0080】
これによって、第2のビーム測定において測定しないと決定することによって、特定のUE20のスループットが低減することを防ぎながら、第2のビーム測定に係る時間を削減することができる。
【0081】
<その他の実施形態>
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0082】
本実施形態に係るユーザ装置は、アクセスポイントごとに最も高い受信信号強度の参照信号を受信した広ビームを報告するものとして説明した。しかしながら一例では、ユーザ装置は、1つのアクセスポイントの複数の広ビームのそれぞれが異なるタイミングで受信した参照信号の複数の受信信号強度を中央処理装置にフィードバックしてもよい。また、フィードバックした複数の広ビームにもとづいて、複数の広ビームに対応する狭ビームにおいて送信された参照信号の受信信号強度が高い順に複数の狭ビームの識別情報を中央処理装置10に送信してもよい。これによって、1つのアクセスポイントから複数の狭ビームでデータを送受信するための複数の狭ビームに関するフィードバック情報を中央処理装置10に提供することができる。また、ユーザ装置は、複数の広ビームのそれぞれについて、最も強い広ビームからの信号強度の差分を送信してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1:無線通信システム、10:中央処理装置、11:アクセスポイント、20:ユーザ装置