(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】太陽光パネル設置部材及び太陽光パネル設置構造
(51)【国際特許分類】
H02S 20/22 20140101AFI20241108BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20241108BHJP
H02S 20/10 20140101ALI20241108BHJP
【FI】
H02S20/22
E04F13/08 Z ETD
H02S20/10 T
(21)【出願番号】P 2022129732
(22)【出願日】2022-08-16
【審査請求日】2022-08-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星▲崎▼ 友洋
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】染川 貴亮
(72)【発明者】
【氏名】奥原 弥生
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】太田 恒明
【審判官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-323625(JP,A)
【文献】特開2020-70675(JP,A)
【文献】特開2014-190033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 20/20- 20/26
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光パネルを水平面に対し立てた姿勢で保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記太陽光パネルを下方から支持する支持部と、
前記支持部の液体が重力により排出される排出部と、
を有し、
前記保持部は、前記支持部に支持されている前記太陽光パネルの幅方向の端辺側で上下方向に延在し前記太陽光パネルの厚み方向の両面に対向している部分を含んで
おり、
前記排出部は、前記支持部から連続し設置対象への設置状態で水平面に対し傾斜している傾斜面と、前記傾斜面の下端から外部に向けて開口された開口部と、を含んでいる太陽光パネル設置部材。
【請求項2】
前記支持部及び前記保持部を備え前記太陽光パネルが挿抜可能にスライドされるスライド溝、を有する
請求項1に記載の太陽光パネル設置部材。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の太陽光パネル設置部材と、
前記太陽光パネル設置部材に取り付けられた前記太陽光パネルと、
を有し、
前記太陽光パネル設置部材が建物の壁面に固定され、又は前記太陽光パネル設置部材を用いて設置された前記太陽光パネルが建物の壁面を構成している太陽光パネル設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、太陽光パネル設置部材及び太陽光パネル設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定の間隔を空けて配置された柱状部材の間に太陽電池モジュールを敷き詰め、一体に固定して壁面を形成する太陽電池の設置構造が記載されている。
【0003】
特許文献2には、鉛直方向に伸びる複数のベースフレームを互いに平行に壁面に設置し、ベースフレームに立体交差して、太陽電池パネル各々の上端部を保持する複数の保持フレームを所定の間隔で取り付け、保持フレーム各々に対して、太陽電池パネル各々の下端部を支持する支持フレームを重ねて取り付けた太陽電池架台が記載されている。
【0004】
特許文献3には、バルコニーに立設された各支柱の側面に形成された溝に、各太陽電池パネルの対向する2つの一端部を嵌挿させて支持すると共に、各支柱の上端にネジ止めされる手摺りにて各太陽電池パネルを設置固定した太陽電池パネル取付構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-67170号公報
【文献】特開2016-949号公報
【文献】特開2001-323625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽光パネルは、建物の壁面に設置されたり、太陽光パネル自体で建物の壁面を構成したりすることがある。たとえば特許文献1から特許文献3等に記載された技術では、太陽光パネルを立てた姿勢で、太陽光パネルの下部を溝や支持面等によって支持するようになっている。
【0007】
しかし、特許文献1から特許文献3等に記載された技術では、単に太陽光パネルの下部を支持部によって支持しており、これらの支持部(溝や支持面等)に雨水等の液体が溜まってしまうことがある。
【0008】
本願は上記事実を考慮し、太陽光パネルを建物の壁面に設置する構造、及び太陽光パネルで壁面を構成する構造において、太陽光パネルの下部を支持する支持部に液体が溜まることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一態様の太陽光パネル設置部材では、太陽光パネルを水平面に対し立てた姿勢で保持する保持部と、前記保持部に保持された前記太陽光パネルを下方から支持する支持部と、前記支持部の液体が重力により排出される排出部と、を有する。
【0010】
この太陽光パネル設置部材では、太陽光パネルを保持部により保持し、水平面に対し立てた姿勢を維持できる。そして、保持部で保持された太陽光パネルを、支持部により下方から支持できる。
【0011】
さらにこの太陽光パネル設置部材は、排出部を有している。支持部の液体は、排出部によって、重力により支持部の外部へ排出される。これにより、太陽光パネルの下部を支持する支持部に液体が溜まることを抑制できる。
【0012】
第二態様では、第一態様の太陽光パネル設置部材であって、前記排出部は、前記支持部から連続し設置対象への設置状態で水平面に対し傾斜している傾斜面と、前記傾斜面の下端から前記太陽光パネル設置部材の外部に開口された開口部と、を含む。
【0013】
支持部には、傾斜面が連続しており、この傾斜面は水平面に対し傾斜している。したがって、支持部の液体は傾斜面上を流下する。
【0014】
傾斜面の下端からは、太陽光パネル設置部材の外部に向けて開口部が開口されている。傾斜面状を流下して傾斜面の下端に達した液体を、排出部から太陽光パネル設置部材の外部へ排出することができる。
【0015】
第三態様では、第一態様又は第二態様において、前記支持部及び前記保持部を備え前記太陽光パネルが挿抜可能にスライドされるスライド溝、を有する。
【0016】
スライド溝に対し太陽光パネルを挿入することで、支持部により太陽光パネルを支持し、且つ、保持部により太陽光パネルを保持した状態にできる。
【0017】
第四態様の太陽光パネル設置構造では、第一から第三のいずれか一態様の太陽光パネル設置部材と、前記太陽光パネル設置部材に取り付けられた前記太陽光パネルと、を有し、前記太陽光パネル設置部材が建物の壁面に固定され、又は前記太陽光パネル設置部材を用いて設置された前記太陽光パネルが建物の壁面を構成している。
【0018】
この太陽光パネル設置構造では、太陽光パネルを太陽光パネル設置部材の保持部により保持し、水平面に対し立てた姿勢を維持できる。そして、保持部で保持された太陽光パネルを、太陽光パネル設置部材の支持部により下方から支持できる。太陽光パネル設置部材が建物の壁面に固定されることで太陽光パネルを建物の壁面に設置した状態となる。又は太陽光パネル設置部材を用いて設置された太陽光パネルにより、建物の壁面を構成した状態となる。
【0019】
この太陽光パネル設置構造に用いる太陽光パネル設置部材は、排出部を有している。支持部の液体は、排出部によって、重力により支持部の外部へ排出される。これにより、太陽光パネルの下部を支持する支持部に液体が溜まることを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本願では、太陽光パネルを建物の壁面に設置する構造、及び太陽光パネルで壁面を構成する構造において、太陽光パネルの下部を支持する支持部に液体が溜まることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は第一実施形態の太陽光パネル設置構造が外壁に適用された建物を示す正面図である。
【
図2】
図2は第一実施形態の太陽光パネル設置構造を太陽光パネル設置部材と太陽光パネルとを分離して示す斜視図である。
【
図3】
図3は第一実施形態の太陽光パネル設置構造を太陽光パネルが太陽光パネル設置部材に挿入された状態で示す斜視図である。
【
図4】
図4は第一実施形態の太陽光パネル設置構造を示す
図2の4-4線断面図である。
【
図5】
図5は第一実施形態の太陽光パネル設置構造を示す
図3の5-5線断面図である。
【
図6】
図6は第一実施形態の太陽光パネル設置構造を太陽光パネル設置部材と太陽光パネルとを分離した状態で太陽光パネルの受光面と平行な断面で示す断面図である。
【
図7】
図7は第一実施形態の太陽光パネル設置構造を太陽光パネルが太陽光パネル設置部材に挿入された状態で太陽光パネルの受光面と平行な断面で示す断面図である。
【
図8】
図8は第二実施形態の太陽光パネル設置構造を太陽光パネル設置部材と太陽光パネルとを分離した状態で太陽光パネルの受光面と平行な断面で示す断面図である。
【
図9】
図9は第三実施形態の太陽光パネル設置構造を太陽光パネル設置部材と太陽光パネルとを分離した状態で太陽光パネルの受光面と平行な断面で示す断面図である。
【
図10】
図10は第四実施形態の太陽光パネル設置構造を太陽光パネル設置部材と太陽光パネルとを分離した状態で太陽光パネルの受光面と平行な断面で示す断面図である。
【
図11】
図11は第五実施形態の太陽光パネル設置構造を太陽光パネル設置部材と太陽光パネルとを分離した状態で太陽光パネルの受光面と平行な断面で示す断面図である。
【
図12】
図12は第六実施形態の太陽光パネル設置構造を太陽光パネル設置部材と太陽光パネルとを分離して示す斜視図である。
【
図13】
図13は第六実施形態の太陽光パネル設置構造を太陽光パネルが太陽光パネル設置部材に挿入された状態で太陽光パネルの受光面と平行な断面で示す断面図である。
【
図14】
図14は第六実施形態の太陽光パネル設置構造を太陽光パネルが太陽光パネル設置部材に挿入された状態で示す鉛直方向の断面図である。
【
図15】
図15は第七実施形態の太陽光パネル設置構造を太陽光パネル設置部材と太陽光パネルとを分離した状態で示す鉛直方向の断面図である。
【
図16】
図16は第一変形例の太陽光パネル設置構造を太陽光パネル設置部材と太陽光パネルとを分離した状態で示す鉛直方向の断面図である。
【
図17】
図17は第二変形例の太陽光パネル設置構造を太陽光パネルが太陽光パネル設置部材に挿入された状態で示す斜視図である。
【
図18】
図18は第一実施形態の太陽光パネル設置構造がベランダに適用された例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本願の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0023】
図1には、第一実施形態の太陽光パネル設置構造12が外壁16に適用された建物14が示されている。
図2及び
図3には、第一実施形態の太陽光パネル設置構造12に用いられる太陽光パネル設置部材20が、部分的に斜視図にて、
図4~
図7には、同じく第一実施形態の太陽光パネル設置構造12が断面図にて、それぞれ示されている。
【0024】
建物14の外壁16には、1つ又は複数(
図1に示す例では横方向に並べて3つ)の太陽光パネル設置部材20が固定されている。
図2及び
図3に示すように、第一実施形態では、それぞれの太陽光パネル設置部材20は、外壁16への固定状態で水平方向に延在する長尺状のフレーム下部30と、このフレーム下部30の延在方向の両端(左右の両端)から鉛直方向上方に延在する長尺状の一対のフレーム側部32と、を有している。換言すれば、太陽光パネル設置部材20は、フレーム下部30と、一対のフレーム側部32と、を有することで、上部が開放された枠状(略「U」字状)の部材である。なお、各図面において、太陽光パネル設置部材20の幅方向、奥行方向及び高さ方向を、それぞれ矢印W、矢印D及び矢印Hで示す。太陽光パネル設置部材20の奥行方向は、太陽光パネル24の厚み方向と一致している。
【0025】
フレーム側部32のそれぞれの内面32N及びフレーム下部30の上面30Tには、スライド溝28が形成されている。具体的には、スライド溝28は、フレーム下部30に形成された溝下部34と、フレーム側部32に形成された溝側部36と、を有している。溝下部34の幅方向両端は、2つの溝側部36のそれぞれの下端に連続しており、スライド溝28は全体として、正面視にて略「U」字状である。
図2に示すように、スライド溝28には、上方から太陽光パネル24がスライドされて挿抜される。なお、スライド溝28は、太陽光パネル設置部材20の奥行方向では、上面30T及び内面32Nの中央に形成されている。
【0026】
太陽光パネル24は、建物14の外壁16に設置された状態で、受光面24P、すなわち発電を行うために太陽光を受ける面が外向きとなるように、スライド溝28に挿入される。
【0027】
図4~
図7に示すように、溝下部34における下面は、支持面40である。
図6に示すように、支持面40は、太陽光パネル設置部材20が外壁16に固定された状態で、水平面HPに対し所定の傾斜角θ1で傾斜している。特に、第一実施形態では、支持面40は、長手方向で傾斜している。支持面40は、本開示の技術に係る傾斜面の一例であり、排出部の一例でもある。この傾斜角θ1は、支持面40上の雨水等の液体を重力により下方に流すことが可能であればよい。傾斜角θ1の具体的数値としては、このように液体を下方に流す観点からは、たとえば、0.57度以上であればよく、1.15度以上であればより好ましい。ただし、傾斜角θ1を大きくすると、実質的に溝下部34の鉛直方向の高さも高くなり、フレーム下部30としても鉛直方向により高くする必要が生じる。したがって、フレーム下部30の寸法を鉛直方向で抑制する(過度に高くしない)観点からは、たとえば最大でも10度であればよく、5度以下であればより好ましく、3度以下であればさらに好ましい。
【0028】
なお、後述するように、太陽光パネル24はスライド溝28に対し鉛直下方に向けて挿入される。これに対し、支持面40は水平面に対し上記したように傾斜している。このため、太陽光パネル24は、スライド溝28に挿入された状態で支持面40の上端側に接触して支持される。以下では、支持面40において、太陽光パネル24が接触する部分を接触部40Tとする。接触部40Tは、本開示の技術に係る支持部の一例である。
【0029】
図5に示すように、溝側部36における奥行方向の手前側及び奥側の面は、対向面38である。対向面38は、スライド溝28に挿入された太陽光パネル24の厚み方向の両面にそれぞれ対向している。そして、対向面38はこのように太陽光パネル24に対向することで、太陽光パネル24を水平面HPに対し立てた状態で保持している。対向面38は、本開示の技術に係る保持部の一例である。
【0030】
なお、ここでいう「立てた状態」とは、太陽光パネル24が受光面24Pで太陽光を受けることで、発電が実質的に可能になる程度であり、且つ、外壁16と不用意に接触しない程度に、水平面HP(
図4参照)に対し立ち上がっている姿勢をいう。一例として、受光面24Pが水平面HPと成す角度が80度以上であれば、受光面24Pで太陽光を受けることで発電が可能であり、また、100度以下であれば、太陽光パネル設置部材20の形状にもよるが、太陽光パネル設置部材20に挿入された太陽光パネル24が外壁16と接触しない姿勢を実現できる。
【0031】
また、本実施形態では、溝側部36がフレーム側部32において鉛直方向(上下方向)に連続して形成されており、対向面38も鉛直方向に連続して形成されている、ただし、対向面38は、鉛直方向で断続的に複数形成されて、太陽光パネル24の厚み方向の両面にそれぞれ対向する形状であってもよい。さらには、太陽光パネル24の形状との関係によっては、対向面38の間に太陽光パネル24が存在しない領域があってもよい。
【0032】
図6に示すように、対向面38は、溝下部34における奥行方向の手前側及び奥側の面にも形成されている。すなわち、溝下部34においても、スライド溝28に挿入された太陽光パネル24の厚み方向の両面に対向面38がそれぞれ対向する。
【0033】
図4及び
図5に示すように、スライド溝28の内寸の溝幅W1はスライド溝28の延在方向で一定であり、太陽光パネル24の厚みT1よりもわずかに長くされている。なお、この溝幅W1は、スライド溝28の延在方向と直交する方向での、対向面38の間隔である。
【0034】
図4に示すように、スライド溝28の長さL1は、太陽光パネル24の高さH1と同程度、又は太陽光パネル24の高さH1よりも長くなるよう設定されている。なお、スライド溝28の長さL1は、スライド溝28を、スライド溝28の上端から、支持面40における接触部40Tまで鉛直方向に沿って図った長さである。
【0035】
スライド溝28の長さL1の下限としては、太陽光パネル24の高さH1の90%以上であれば、太陽光パネル24を高さ方向の広い範囲で安定的に保持でき、また、太陽光パネル設置部材20から太陽光パネル24が上方にはみ出す長さを短くできる。より好ましくは、スライド溝28の長さL1が太陽光パネル24の高さH1の100%以上であれば、スライド溝28から太陽光パネル24がはみ出さない構造を実現できる。スライド溝28の長さL1の上限としては、太陽光パネル24の高さH1の120%以下であれば、太陽光パネル24の高さ方向に対しスライド溝28が過度に高くならない。そして、太陽光パネル設置部材20も過度に高くならない構造となる。たとえば、複数の太陽光パネル24を、高さ方向に並べて配置する場合に、太陽光パネル24の相互の隙間を狭くして配置可能である。
【0036】
また、
図5に示すように、フレーム側部32におけるスライド溝28の間隔D1は、太陽光パネル24の幅W3よりも長く、且つ、フレーム側部32の内面32Nの間隔D2は、太陽光パネル24の幅W3よりも短くなるように、フレーム側部32の位置が設定されている。
【0037】
図6及び
図7に示すように、フレーム下部30には、液排出孔42が設けられている。第一実施形態では、液排出孔42は、支持面40の下端40Bから下方に向けてフレーム下部30を貫通しており、液排出孔42の下端はフレーム下部30から下向きに開口している。液排出孔42は、本開示の技術に係る排出部の一例である。
【0038】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0039】
図1及び
図4に示すように、太陽光パネル設置部材20は建物14の外壁16に固定されている。そして、
図2及び
図6にも示すように、太陽光パネル設置部材20のスライド溝28には、上方から鉛直下方に向けて太陽光パネル24をスライドさせて挿入できる。
図7に示すように、スライド溝28に挿入された太陽光パネル24は、接触部40Tに接触し支持される。また、この状態で、
図5に示すように、対向面38が太陽光パネル24に対し厚み方向に対向しており、太陽光パネル24は水平面HPに対し立てた姿勢で保持される。
【0040】
これにより、太陽光パネル24は受光面24Pを外側に向けた状態で、建物14の外壁16に設置されるので、外壁16に向けて照射する太陽光の一部を利用して、太陽光パネル24により発電することができる。
【0041】
太陽光パネル24は建物14の外壁16に設置されているので、スライド溝28には雨水が流れ込むことがある。特に、太陽光パネル24に当たった雨粒は、受光面24Pを伝って流下し、スライド溝28に流れ込むことがある。
【0042】
図6に示すように、スライド溝28において、溝側部36は鉛直方向に延在しているので、溝側部36に流れ込んだ雨水は、溝側部36内を鉛直下方に流れ、溝下部34に至る。
【0043】
溝下部34の支持面40は水平面HPに対し傾斜角θ1で傾斜しているので、溝下部34内に流れ込んだ雨水は、支持面40上を下端40Bに向けて流れる。支持面40の下端40Bからは下方に向けてフレーム下部30を貫通する液排出孔42が形成されている。したがって、支持面40の下端40Bへ流れた雨水は、液排出孔42から、太陽光パネル設置部材20の外部に排出される。これにより、本実施形態では、太陽光パネル24を支持する支持面40に、特に支持部の一例である接触部40Tに雨水が溜まることを抑制できる。なお、雨水に限らず、上記と同様の作用により、太陽光パネル24を支持する支持面40、特に接触部40Tに、液体が溜まることを抑制できる。
【0044】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素及び部材については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第二実施形態の太陽光パネル設置構造52が外壁に適用された建物としては、
図1と略同様であるため、図示を省略する。
【0045】
図8に示すように、第二実施形態の太陽光パネル設置構造52では、太陽光パネル設置部材50において、溝側部36が溝下部34に対し直角に形成されている。すなわち、溝側部36は、鉛直線VLに対し、所定の傾斜角θ2(溝下部34が水平面HPに対し傾斜する傾斜角と同角度)で傾斜している。
【0046】
したがって、第二実施形態では、太陽光パネル設置部材20のスライド溝28には、上方から鉛直下方に太陽光パネル24をスライドさせて挿入する場合に、鉛直線VLに対し、傾斜角θ2で傾斜させた向きで挿入する。
【0047】
そして、第二実施形態では、溝下部34の支持面40が水平面HPに対し傾斜角θ2で傾斜しており、同様に太陽光パネル24の下辺24Bも水平面HPに対し傾斜角θ2で傾斜している。これにより、太陽光パネル24の下辺24Bの全体を支持面40に接触させて、太陽光パネル24を支持面40で支持できる。
【0048】
なお、第二実施形態における傾斜角θ2は、第一実施形態における傾斜角θ1と同じ角度であってもよいし、異なる角度であってもよい。
【0049】
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態においても、第一実施形態と同様の要素及び部材については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第二実施形態の太陽光パネル設置構造62が外壁に適用された建物としては、
図1と略同様であるため、図示を省略する。
【0050】
図9に示すように、第三実施形態の太陽光パネル設置構造62では、太陽光パネル設置部材60において、溝下部34が、太陽光パネル設置部材60の幅方向の中心線CLに対し、対称に形成されている。特に第三実施形態では、支持面40が、幅方向の中央位置で高く、幅方向両側に向かって所定の傾斜角θ3で下がるように傾斜して形成されている。そして、支持面40における両端部が鉛直方向における下端40Bである。これら2か所の下端40Bから下方に向けて、フレーム下部30を貫通する液排出孔42が形成されている。
【0051】
したがって、第三実施形態では、接触部40Tが溝下部34において幅方向の中央に位置する。すなわち、スライド溝28に挿入された太陽光パネル24を、幅方向の中央の位置で支持できる。
【0052】
そして、溝下部34の雨水等の液体を、溝下部34の幅方向の両端に位置する液排出孔42を通じて、太陽光パネル設置部材60の外部に排出できる。
【0053】
なお、第三実施形態における傾斜角θ3は、第一実施形態における傾斜角θ1と同じ角度であってもよいし、異なる角度であってもよい。
【0054】
次に、第四実施形態について説明する。第四実施形態においても、第一実施形態と同様の要素及び部材については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第二実施形態の太陽光パネル設置構造72が外壁に適用された建物としては、
図1と略同様であるため、図示を省略する。
【0055】
図10に示すように、第四実施形態の太陽光パネル設置構造72では、太陽光パネル設置部材70の溝下部34が、太陽光パネル設置部材70の幅方向の中心線CLに対し、対称に形成されている。但し、第三実施形態と異なり、第四実施形態では、支持面40が、幅方向両側で高く、幅方向の中央位置に向かって所定の傾斜角θ4で下がるように傾斜して形成されている。そして、支持面40における中央が鉛直方向における下端40Bである。この1か所の下端40Bから下方に向けてフレーム下部30を貫通して液排出孔42が形成されている。
【0056】
したがって、第四実施形態では、接触部40Tが溝下部34において幅方向の両端部に位置する。すなわち、スライド溝28に挿入された太陽光パネル24を、幅方向の両端部の位置で支持できる。
【0057】
そして、溝下部34の雨水等の液体を、溝下部34の幅方向の中央に位置する液排出孔42を通じて、太陽光パネル設置部材70の外部に排出できる。
【0058】
なお、第四実施形態における傾斜角θ4は、第一実施形態における傾斜角θ1と同じ角度であってもよいし、異なる角度であってもよい。
【0059】
次に、第五実施形態について説明する。第五実施形態においても、第一実施形態と同様の要素及び部材については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第二実施形態の太陽光パネル設置構造82が外壁に適用された建物としては、
図1と略同様であるため、図示を省略する。
【0060】
図11に示すように、第五実施形態の太陽光パネル設置構造82では、太陽光パネル設置部材80が、幅方向の左右に分割されている。実質的に、太陽光パネル設置構造82は、フレーム側部32は有するが、フレーム下部30(
図10参照)が省略された形状である。そして、支持面40もフレーム側部32のそれぞれに分割して形成されている。支持面40は、幅方向両側で高く、幅方向の中央位置に向かって所定の傾斜角θ5で下がるように傾斜して形成されている。なお、第五実施形態では、フレーム側部32及び支持面40がこのように幅方向の両側に分割されており、フレーム側部32の間に構成される間隙GPが、本開示の技術に係る排出部として作用している。
【0061】
したがって、第五実施形態では、接触部40Tが支持面40のそれぞれにおいて、幅方向の外側端部に位置する。すなわち、スライド溝28に挿入された太陽光パネル24を、幅方向の外側端部の位置で支持できる。
【0062】
そして、支持面40の雨水等の液体を、フレーム側部32の間に構成された間隙GPから、太陽光パネル設置部材80の外部に排出できる。
【0063】
なお、第五実施形態における傾斜角θ5は、第一実施形態における傾斜角θ1と同じ角度であってもよいし、異なる角度であってもよい。
【0064】
次に、第六実施形態について説明する。第六実施形態においても、第一実施形態と同様の要素及び部材については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第二実施形態の太陽光パネル設置構造92が外壁に適用された建物としては、
図1と略同様であるため、図示を省略する。
【0065】
図12及び
図13に示すように、第六実施形態の太陽光パネル設置構造92では、太陽光パネル設置部材90が、全体として横側(
図12及び
図13に示す例では右側)に開放された「U」字状に形成されている。具体的には、フレーム下部30の幅方向の一端(
図12に示す例では左端)から鉛直方向上方に延在する長尺状の1つのフレーム側部32を有しており、さらに、フレーム側部32の上端から、フレーム下部30と同方向に延在するフレーム上部94と、を有している。
【0066】
第六実施形態においても、溝下部34における下面は、支持面40であり、支持面40は、スライド溝28に挿入された太陽光パネル24の下側の辺を支持する。支持面40は、太陽光パネル設置部材90が外壁16に固定された状態で、水平面HPに対し所定の傾斜角θ6で傾斜している。
【0067】
第六実施形態では、
図14にも示すように、フレーム上部94にもスライド溝28(溝上部96)が形成されている。溝上部96は対向面38を有している。
【0068】
このような構成とされた第六実施形態では、太陽光パネル設置部材90に対し太陽光パネル24を横方向にスライドさせて挿抜できる。
【0069】
太陽光パネル24を所定位置、たとえば太陽光パネル24の左端部(挿入先端部)が溝側部36に当たる位置まで挿入された状態で、太陽光パネル24の下辺24Bが支持面40によって支持される。また、太陽光パネル24には、厚み方向で対向面38が対向し、水平面HPに対し立てた状態で保持される。
【0070】
そして、溝下部34の雨水等の液体を、支持面40に形成された液排出孔42を通じて、太陽光パネル設置部材90の外部に排出できる。
【0071】
なお、第六実施形態における傾斜角θ6は、第一実施形態における傾斜角θ1と同じ角度であってもよいし、異なる角度であってもよい。
【0072】
次に、第七実施形態について説明する。第七実施形態においても、第一実施形態と同様の要素及び部材については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第二実施形態の太陽光パネル設置構造102が外壁に適用された建物としては、
図1と略同様であるため、図示を省略する。
【0073】
図15に示すように、第七実施形態の太陽光パネル設置構造102では、太陽光パネル設置部材100の支持面40が、厚み方向に傾斜している。
図15に示す例では、支持面40は、厚み方向の手前側に向かうに従って傾斜角θ7で下がるように傾斜している。そして、支持面40の上部は手前側に開口されている。
【0074】
したがって、第七実施形態では、太陽光パネル設置部材100に太陽光パネル24が取り付けられた状態で、支持面40上の雨水等の液体が、支持面40上を流れることで、太陽光パネル設置部材60の外部に排出できる。
【0075】
なお、第七実施形態における傾斜角θ7は、第一実施形態における傾斜角θ1と同じ角度であってもよいし、異なる角度であってもよい。
【0076】
第七実施形態において、
図16に示す第一変形例の構造とすることも可能である。すなわち、第一変形例の太陽光パネル設置構造112では、太陽光パネル設置部材110では、溝側部36が、鉛直線VLに対し厚み方向(矢印D方向)に傾斜している。具体的には、溝側部36の上部が外壁16に近づく向きで傾斜している。
【0077】
したがって、第七実施形態の変形例では、太陽光パネル24が太陽光パネル設置部材20によって外壁16に設置された状態で、太陽光パネル24の受光面24Pが、斜め上方を向く。これにより、受光面24Pにおいて効果的に太陽光を受けることができ、効果的な発電を行うことが可能となる。なお、第一変形例のように、溝側部36が鉛直線VLに対し厚み方向(矢印D方向)に傾斜している構造を、第一から第六の各実施形態に適用することも可能である。
【0078】
本開示の技術に係る各実施形態及び各変形例において、さらに、
図17に示す第二変形例の構成を併せて適用することが可能である。第二変形例の太陽光パネル設置構造122では、一例として太陽光パネル設置部材20に保持された太陽光パネル24と建物14の外壁16(
図4参照)との間にスペーサ44が配置されている。スペーサ44は、弾性的に圧縮可能な材料、たとえばゴムやスポンジ等を用いて形成されており、外壁16と太陽光パネル24との両方に接触している。
【0079】
したがって、第二変形例では、スペーサ44によって、太陽光パネル24の厚み方向へのがたつきを抑制でき、太陽光パネル24の姿勢が安定する。
【0080】
なお、
図17では、第一実施形態の太陽光パネル設置構造12にスペーサ44を適用した例を示しているが、上記したように、このスペーサ44は、他の各実施形態及び各変形例の太陽光パネル設置構造にも適用可能である。
【0081】
本開示の技術において、保持部としては、上記した対向面38に限定されない。たとえば、フレーム側部32に対し、太陽光パネル24をクリップ等によって保持する構造でもよい。
【0082】
本開示の技術において、太陽光パネル設置構造を適用する対象は、建物の外壁に限定されない。たとえば、太陽光パネル設置構造によって設置された太陽光パネルが、建物の壁面の一部を成す構成でもよい。一例として
図18に示すように、建物のベランダ46(又はバルコニー)の壁面の一部又は全部を、本開示の技術に係る太陽光パネル設置構造12によって設置された太陽光パネルで構成してもよい。この場合には、太陽光パネル設置部材20を、ベランダ46又はバルコニーの床48に立設して固定すればよい。なお、
図18では第一実施形態の太陽光パネル設置部材20を用いた例を示しているが、他の実施形態又は変形例の太陽光パネル設置部材を用いてもよい。
【0083】
本開示の技術に係る太陽光パネルの種類は、特に限定されないが、たとえば、薄型化、軽量化が図られた太陽光パネルを用いることが可能である。薄型化、軽量化された太陽光パネル24を建物14の外壁16に対し、接着剤によって直接的に接着固定してしまうと、一旦接着固定された太陽光パネル24を取り外すことは難しく、取り外しによって太陽光パネル24の破損を招くこともある。
【0084】
これに対し、本実施形態では、太陽光パネル24を外壁16に接着固定しないので、太陽光パネル24を外壁16から容易に取り外しできる。
【0085】
ただし、本開示の技術の適用対象は、薄型化、軽量化が図られた太陽光パネル24が設置された外壁16等に限定されない。すなわち、たとえば
図2~
図5に示す太陽光パネル24と比較すると厚みが厚く、且つ質量が大きい太陽光パネルに対しても、本開示の技術を適用できる。
【0086】
本開示の技術に係るこの太陽光パネル設置構造では、この太陽光パネル設置構造を用いて設置された太陽光パネルにより発電を行うことで、化石燃料の燃焼による発電を代替し、CO2排出量を削減する効果を有するものである。
【符号の説明】
【0087】
12 太陽光パネル設置構造
14 建物
16 外壁
20 太陽光パネル設置部材
24 太陽光パネル
24B 下辺
24P 受光面
28 スライド溝
30 フレーム下部
30T 上面
32 フレーム側部
32N 内面
34 溝下部
36 溝側部
38 対向面(保持部の一例)
40 支持面
40B 下端
40T 接触部(支持部の一例)
42 液排出孔(排出部の一例)
44 スペーサ
46 ベランダ
48 床
50 太陽光パネル設置部材
52 太陽光パネル設置構造
60 太陽光パネル設置部材
62 太陽光パネル設置構造
70 太陽光パネル設置部材
72 太陽光パネル設置構造
80 太陽光パネル設置部材
82 太陽光パネル設置構造
90 太陽光パネル設置部材
92 太陽光パネル設置構造
94 フレーム上部
96 溝上部
100 太陽光パネル設置部材
102 太陽光パネル設置構造
110 太陽光パネル設置部材
112 太陽光パネル設置構造
122 太陽光パネル設置構造