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特許7584488車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/12 20200101AFI20241108BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20241108BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20241108BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20241108BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B60W30/12
B60W40/06
B60W50/14
G01C21/28
G08G1/16 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022203047
(22)【出願日】2022-12-20
(65)【公開番号】P2024088067
(43)【公開日】2024-07-02
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】田村 祥
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-149321(JP,A)
【文献】特開2022-129695(JP,A)
【文献】特開2022-146247(JP,A)
【文献】特開2022-150978(JP,A)
【文献】特開2019-152667(JP,A)
【文献】特開2015-005132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00- 60/00
G08G 1/00- 99/00
B62D 6/00- 6/10
G01C 21/00- 21/36
23/00- 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺状況を検知した検知デバイスの出力に基づく第1情報と、地図情報に基づく第2情報とにより決定される走路における前記車両の走行を制御する走行制御部と、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記車両の走路を推定する走路推定部と、
前記第1情報と、前記第2情報と、前記走路推定部により推定された前記車両の走路に関する走路推定情報とに基づいて、前記車両の走路を決定する走路決定部と、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記走路推定情報を出力する学習済みモデルを備える学習部と、を備え、
前記走路推定部は、前記学習済みモデルを用いて、前記車両の走路を推定する、
両制御装置。
【請求項2】
車両の周辺状況を検知した検知デバイスの出力に基づく第1情報と、地図情報に基づく第2情報とにより決定される走路における前記車両の走行を制御する走行制御部と、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記車両の走路を推定する走路推定部と、
前記第1情報と、前記第2情報と、前記走路推定部により推定された前記車両の走路に関する走路推定情報とに基づいて、前記車両の走路を決定する走路決定部と、
前記第1情報と、前記第2情報と、真値データとに基づいて、前記第1情報および前記第2情報を入力とし、前記走路推定情報を出力とする走路推定モデルを生成する学習部と、を備え、
前記走路推定部は、前記走路推定モデルを用いて、前記第1情報と前記第2情報とに基づく前記車両の走路を推定する、
両制御装置。
【請求項3】
前記学習済みモデルは、前記第1情報と前記第2情報とを入力とする、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記走路推定部は、前記第1情報と前記第2情報との乖離度合が閾値以上である場合に、前記車両の走路を推定する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記第1情報は、前記検知デバイスの出力に基づいて認識された前記車両の走行車線を区画する第1の区画線の情報を含み、
前記第2情報は、前記車両の位置情報に基づいて前記地図情報から取得した前記車両の走行車線を区画する第2の区画線の情報を含む、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記走路推定部は、前記第1情報と、前記第2情報と、前記車両の走行状況および/または車種情報とに基づいて、前記車両の走路を推定する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記走行制御部は、前記車両の操舵または速度のうち、一方または双方を制御する運転制御を実行し、
前記運転制御は、第1の運転モードと、前記第1の運転モードよりも前記車両の運転者に課されるタスクが重度または前記第1の運転モードよりも前記運転者に対する支援の度合が小さい第2の運転モードとを含み、
前記走行制御部は、前記第1の運転モードを実行している状態において、前記乖離度合が閾値以上となる状態が所定時間以上継続した場合に、前記第1の運転モードから前記第2の運転モードへ切り替える、
請求項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記走行制御部における制御内容を前記車両の運転者に通知する通知制御部を更に備え、
前記通知制御部は、前記乖離度合が閾値以上となる状態が所定時間以上継続した場合に、前記運転モードの切り替えに応じて前記運転者に通知する内容を変更させる、
請求項に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記学習部は、前記走路推定部により推定された前記車両の走路と、前記車両が実際に走行した走路とを用いて前記走路推定モデルを再学習する、
請求項に記載の車両制御装置。
【請求項10】
コンピュータが、
車両の周辺状況を検知した検知デバイスの出力に基づく第1情報と、地図情報に基づく第2情報とにより決定される走路における前記車両の走行を制御し、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記車両の走路を推定し、
前記第1情報と、前記第2情報と、推定した前記車両の走路に関する走路推定情報とに基づいて、前記車両の走路を決定し、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記走路推定情報を出力する学習済みモデルを用いて前記車両の走路を推定する、
車両制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、
車両の周辺状況を検知した検知デバイスの出力に基づく第1情報と、地図情報に基づく第2情報とにより決定される走路における前記車両の走行を制御させ、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記車両の走路を推定させ、
前記第1情報と、前記第2情報と、推定された前記車両の走路に関する走路推定情報とに基づいて、前記車両の走路を決定させ、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記走路推定情報を出力する学習済みモデルを用いて前記車両の走路を推定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて運転支援技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。これに関連して、複数の選定自己位置を考慮して信頼度を演算することで、移動体の自動走行の運用の質を向上させる自己位置推定技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-125563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転支援技術において、周辺状況を認識する検知デバイスにより認識された情報と、位置センサが検出した車両の位置を基準に地図情報から取得した情報とを用いて車両の走路を推定する場合に、道路工事や整備不良等の影響で、実際の道路状況が地図情報と異なっていたり、トンネルや分岐等の道路状況の変化の影響により検知デバイスにより認識された走路が実際の走路と異なって認識される場合があるため、車両の走路を正確に取得できない場合があるといった課題があった。
【0005】
本発明の態様は、上記課題の解決のため、車両の走路決定の正確性を向上させることができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとしたものである。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両制御装置は、車両の周辺状況を検知した検知デバイスの出力に基づく第1情報と、地図情報に基づく第2情報とにより決定される走路における前記車両の走行を制御する走行制御部と、前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記車両の走路を推定する走路推定部と、前記第1情報と、前記第2情報と、前記走路推定部により推定された前記車両の走路に関する走路推定情報とに基づいて、前記車両の走路を決定する走路決定部と、を備える車両制御装置である。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記走路推定部は、前記第1情報と前記第2情報との乖離度合が閾値以上である場合に、前記車両の走路を推定するものである。
【0008】
(3):上記(1)の態様において、前記第1情報と、前記第2情報と、真値データとに基づいて、前記第1情報および前記第2情報を入力とし、前記走路推定情報を出力とする走路推定モデルを生成する学習部を更に備え、前記走路推定部は、前記走路推定モデルを用いて、前記第1情報と前記第2情報とに基づく前記車両の走路を推定するものである。
【0009】
(4):上記(1)の態様において、前記第1情報は、前記検知デバイスの出力に基づいて認識された前記車両の走行車線を区画する第1の区画線の情報を含み、前記第2情報は、前記車両の位置情報に基づいて前記地図情報から取得した前記車両の走行車線を区画する第2の区画線の情報を含むものである。
【0010】
(5):上記(1)の態様において、前記走路推定部は、前記第1情報と、前記第2情報と、前記車両の走行状況および/または車種情報とに基づいて、前記車両の走路を推定するものである。
【0011】
(6):上記(2)の態様において、前記走行制御部は、前記車両の操舵または速度のうち、一方または双方を制御する運転制御を実行し、前記運転制御は、第1の運転モードと、前記第1の運転モードよりも前記車両の運転者に課されるタスクが重度または前記第1の運転モードよりも前記運転者に対する支援の度合が小さい第2の運転モードとを含み、前記走行制御部は、前記第1の運転モードを実行している状態において、前記乖離度合が閾値以上となる状態が所定時間以上継続した場合に、前記第1の運転モードから前記第2の運転モードへ切り替えるものである。
【0012】
(7):上記(6)の態様において、前記走行制御部における制御内容を前記車両の運転者に通知する通知制御部を更に備え、前記通知制御部は、前記乖離度合が閾値以上となる状態が所定時間以上継続した場合に、前記運転モードの切り替えに応じて前記運転者に通知する内容を変更させるものである。
【0013】
(8):上記(3)の態様において、前記学習部は、前記走路推定部により推定された前記車両の走路と、前記車両が実際に走行した走路とを用いて前記走路推定モデルを再学習するものである。
【0014】
(9):この発明の一態様に係る車両制御方法は、コンピュータが、車両の周辺状況を検知した検知デバイスの出力に基づく第1情報と、地図情報に基づく第2情報とにより決定される走路における前記車両の走行を制御し、前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記車両の走路を推定し、前記第1情報と、前記第2情報と、推定した前記車両の走路に関する走路推定情報とに基づいて、前記車両の走路を決定する、車両制御方法である。
【0015】
(10):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、車両の周辺状況を検知した検知デバイスの出力に基づく第1情報と、地図情報に基づく第2情報とにより決定される走路における前記車両の走行を制御させ、前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記車両の走路を推定させ、前記第1情報と、前記第2情報と、推定された前記車両の走路に関する走路推定情報とに基づいて、前記車両の走路を決定させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
上記(1)~(10)の態様によれば、車両の走路決定の正確性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る車両制御装置を含む車両システム1の構成図である。
図2】第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。
図3】運転モードと車両Mの制御状態、およびタスクの対応関係の一例を示す図である。
図4】学習部180の処理について説明するための図である。
図5】認識部130と乖離判定部152の処理について説明するための図である。
図6】乖離判定部152の判定結果に基づく走路決定について説明するための図である。
図7】自動運転制御装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。以下では、一例として、車両制御装置が自動運転車両に適用された実施形態について説明する。自動運転とは、例えば、自動的に(運転者の操作に依らずに)車両の操舵または速度のうち、一方または双方を制御して運転制御を実行することである。運転制御には、例えば、LKAS(Lane Keeping Assistance System)や、ALC(Auto Lane Changing)、ACC(Adaptive Cruise Control System)、CMBS(Collision Mitigation Brake System)等といった種々の運転制御が含まれてよい。また、運転制御には、ADAS(Advanced Driver Assistance System)等の運転者に対する運転支援制御が含まれてよい。自動運転車両は、運転者の手動運転によって運転が制御されることがあってもよい。
【0019】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を含む車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両(以下、車両Mと称する)は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池等のバッテリ(蓄電池)の放電電力を使用して動作する。
【0020】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、ドライバモニタカメラ70と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。自動運転制御装置100は、「車両制御装置」の一例である。カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR14と、物体認識装置16とを組み合わせたものが「検知デバイスDD」の一例である。HMI30は、「出力部」の一例である。検知デバイスDDは、車両Mの周辺状況を検知する。
【0021】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両Mの任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面、車体の前頭部等に取り付けられる。後方を撮像する場合、カメラ10は、リアウインドシールド上部やバックドア等に取り付けられる。側方を撮像する場合、カメラ10は、ドアミラー等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0022】
レーダ装置12は、車両Mの周辺にミリ波等の電波を放射すると共に、周辺の物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0023】
LIDAR14は、車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0024】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、車両Mの周辺の物体の位置、種類、速度等を認識する。物体には、例えば、他車両(例えば、車両Mから所定距離以内に存在する周辺車両)、歩行者、自転車、道路構造物等が含まれる。道路構造物には、例えば、道路標識や交通信号機、踏切、縁石、中央分離帯、ガードレール、フェンス等が含まれる。また、道路構造物には、例えば、路面に描画または貼付された道路区画線(以下、単に「区画線」と称する)や横断歩道、自転車横断帯、一時停止線等の路面標識が含まれてもよい。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。なお、物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。その場合、車両システム1(具体的には検知デバイスDD)の構成から物体認識装置16が省略されてもよい。また、物体認識装置16は、自動運転制御装置100に含まれていてもよい。
【0025】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、LAN(Local Area Network)、WAN(WiDe Area Network)、インターネット等のネットワークを利用して、例えば、車両Mの周辺に存在する他車両、車両Mを利用する利用者の端末装置、或いは各種サーバ装置と通信する。
【0026】
HMI30は、車両Mの乗員(運転者を含む)に対して各種情報を出力すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30には、例えば、各種表示装置、タッチパネル、スイッチ、キー、スピーカ、ブザー、マイク等が含まれる。また、HMI30には、一又は複数の色で点灯または点滅可能なインジケータやランプ等の発光部が含まれてもよい。HMI30は、例えば、インストルメントパネルやステアリングホイール82等、乗員が視認可能な位置に設けられる。
【0027】
車両センサ40は、車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、ヨーレート(例えば、車両Mの重心点を通る鉛直軸回りの回転角速度)を検出するヨーレートセンサ、車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。また、車両センサ40は、車両Mの位置を検出する位置センサが設けられていてもよい。位置センサは、例えば、GPS(Global Positioning System)装置から位置情報(経度・緯度情報)を取得するセンサである。また、位置センサは、ナビゲーション装置50のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51を用いて位置情報を取得するセンサであってもよい。車両センサ40により検出した結果は、自動運転制御装置100に出力される。
【0028】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、車両Mの位置を特定する。車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。GNSS受信機51は、車両センサ40に設けられてもよい。上述の位置センサおよびGNSS受信機51は、「位置検出部」の一例である。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キー等を含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、所定区間の道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、POI(Point Of Interest)情報等を含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。ナビゲーション装置50は、決定した地図上経路を、MPU60に出力する。
【0029】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリ等の記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、例えば、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。車線は、区画線により区画されている。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0030】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、道路形状や道路構造物に関する情報等を含んでいる。道路形状には、第1地図情報54よりも更に詳細な道路形状として、例えば、分岐や合流、トンネル(入口、出口)、カーブ路(入口、出口)、道路または区画線の曲率、曲率半径、車線数、幅員、勾配等が含まれる。上記情報は、第1地図情報54に格納されていてもよい。道路構造物に関する情報には、道路構造物の種別、位置、道路の延伸方向に対する向き、大きさ、形状、色等の情報が含まれてよい。道路構造物の種別において、例えば、区画線を1つの種別としてもよく、区画線に属するレーンマークや縁石、中央分離帯等のそれぞれを異なる種別としてもよい。また、区画線の種別には、例えば、車線変更が可能であることを示す区画線と、車線変更が不可能であることを示す区画線とが含まれてもよい。区画線の種別は、例えば、リンクを基準とした道路または車線の区間ごとに設定されてもよく、1つのリンク内に複数の種別が設定されてもよい。
【0031】
また、第2地図情報62には、道路や建物の位置情報(緯度経度)、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報、後述するモードAまたはモードBが禁止される禁止区間の情報等が含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が外部装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。第1地図情報54および第2地図情報62は、地図情報として一体に設けられていてもよい。また、地図情報(第1地図情報54および第2地図情報62)は、記憶部190に記憶されていてもよい。
【0032】
ドライバモニタカメラ70は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。ドライバモニタカメラ70は、車両Mの運転席に着座した運転者や助手席や後部座席に着座した他の乗員の頭部を正面から(顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置および向きで、車両Mにおける任意の箇所に取り付けられる。例えば、ドライバモニタカメラ70は、車両Mのインストルメントパネルの中央部に設けられたディスプレイ装置の上部や、フロンドウインドシールドの上部、ルームミラー等に取り付けられる。ドライバモニタカメラ70は、例えば、周期的に繰り返し車室内を含む画像を撮像する。
【0033】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイール82の他、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。ステアリングホイール82は、「運転者による操舵操作を受け付ける操作子」の一例である。操作子は、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアリングホイールやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。ステアリングホイール82には、ステアリング把持センサ84が取り付けられている。ステアリング把持センサ84は、静電容量センサなどにより実現され、運転者がステアリングホイール82を把持している(力を加えられる状態で接していることをいう)か否かを検知可能な信号を自動運転制御装置100に出力する。また、運転操作子80には、例えば、運転者の手動運転による操舵または速度の操作量を調整する反力装置が設けられていてもよい。
【0034】
自動運転制御装置100は、車両Mの周辺状況等に基づいて車両Mの操舵または速度のうち、一方または双方を制御する運転制御を実行する。例えば、第1制御部120と、第2制御部160と、HMI制御部170と、学習部180と、記憶部190とを備える。第1制御部120と、第2制御部160と、HMI制御部170と、学習部180とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。上述のプログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM、メモリカード等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置やカードスロット等に装着されることで自動運転制御装置100の記憶装置にインストールされてもよい。HMI制御部170は、「通知制御部」の一例である。
【0035】
記憶部190は、上記の各種記憶装置、或いはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。記憶部190には、例えば、走路推定モデル192、プログラム、その他の各種情報等が格納される。走路推定モデル192は、例えば、車両Mの走路を推定するために学習部180によって学習された学習済みモデルである。また、記憶部190には、地図情報(第1地図情報54、第2地図情報62)が格納されていてもよい。
【0036】
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140と、モード決定部150とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示等がある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。また、第1制御部120は、例えば、MPU60やHMI制御部170等からの指示に基づいて車両Mの自動運転に関する制御を実行する。認識部130と、行動計画生成部140と、第2制御部160とを合わせたものが「走行制御部」の一例である。走行制御部は、例えば、車両Mの周辺状況を検知した検知デバイスの出力に基づく第1情報と、地図情報に基づく第2情報とにより決定される走路(走行可能領域)における車両Mの走行を制御する。
【0037】
認識部130は、検知デバイスDDの認識の結果(カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報)に基づいて、車両Mの周辺状況を認識する。例えば、認識部130は、車両M、および車両Mの周辺に存在する物体の種別や位置、速度、加速度等の状態を認識する。物体の種別は、例えば、物体が車両であるか、歩行者であるか等の種別であってもよく、車両ごとに識別するための種別であってもよい。物体の位置は、例えば、車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標系(以下、車両座標系)の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー、進行方向の先端部等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。速度には、例えば、走行する車線の進行方向(縦方向)に対する車両Mおよび他車両の速度(以下、縦速度と称する)と、車線の横方向に対する車両Mおよび他車両の速度(以下、横速度)とが含まれる。物体の「状態」とは、例えば、物体が他車両等の移動体である場合には、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0038】
また、認識部130は、例えば、第1認識部132と、第2認識部134とを備える。第1認識部132は、車両Mの周辺状況を検知した検知デバイスDDの出力に基づいて、車両Mの走路に関する第1情報を認識する。第2認識部134は、車両Mの位置情報と地図情報とに基づいて、車両Mの走路に関する第2情報を認識する。第1情報および第2情報のそれぞれは、例えば、車両Mの走行車線の情報(例えば、形状や種類、幅員等)や走行車線を区画する区画線情報が含まれる。また、第1情報および第2情報には、車両Mの周辺の車線(進行方向(例えば、前方)に存在する車線を含む)やその区画線情報が含まれてもよい。また、第1情報および第2情報には、車線の右側または左側等の車線内における走行可能領域の情報が含まれてもよい。
【0039】
行動計画生成部140は、認識部130の認識の結果やモード決定部150により決定された運転モード等に基づいて、自動運転等の運転制御により車両Mを走行させる行動計画を生成する。例えば、行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、認識部130による認識結果または地図情報から取得された車両Mの現在位置に基づく周辺の道路形状、区画線の認識結果等に基づいて、車両Mの周辺状況に対応できるように、車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度(および目標加速度)が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度(および目標加速度)の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0040】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。イベントには、例えば、車両Mを一定の速度で同じ車線を走行させる定速走行イベント、車両Mの前方の所定距離以内(例えば100[m]以内)に存在し、車両Mに最も近い他車両(以下、前方車両と称する)に車両Mを追従させる追従走行イベント、車両Mを自車線から隣接車線へと車線変更させる車線変更イベント、道路の分岐地点で車両Mを目的地側の車線に分岐させる分岐イベント、合流地点で車両Mを本線に合流させる合流イベント、自動運転を終了して手動運転に切り替えるためのテイクオーバーイベント等が含まれる。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0041】
モード決定部150は、車両Mの運転モードを、運転者(乗員の一例)に課されるタスクが異なる複数の運転モードの何れかに決定する。モード決定部150は、例えば、運転者状態判定部151と、乖離判定部152と、走路推定部153と、走路決定部154と、モード変更処理部155とを備える。
【0042】
図3は、運転モードと車両Mの制御状態、およびタスクの対応関係の一例を示す図である。車両Mの運転モードには、例えば、モードAからモードEの5つのモードがある。上記5つのモードにおいて、制御状態すなわち車両Mの運転制御の自動化度合いは、モードAが最も高く、次いでモードB、モードC、モードDの順に低くなり、モードEが最も低い。この逆に、運転者に課されるタスクは、モードAが最も軽度であり、次いでモードB、モードC、モードDの順に重度となり、モードEが最も重度である。なお、モードDおよびEでは自動運転でない制御状態となるため、自動運転制御装置100としては自動運転に係る制御を終了し、運転支援または手動運転に移行させるまでが責務である。以下、それぞれの運転モードの内容について例示する。
【0043】
モードAでは、自動運転の状態となり、運転者には車両Mの周辺監視、ステアリングホイール82の把持(図ではステアリング把持)の何れも課されない。周辺監視は、少なくとも車両Mの前方の監視が含まれる。但し、モードAであっても運転者は、自動運転制御装置100を中心としたシステムからの要求に応じて速やかに手動運転に移行できる体勢であることが要求される。なお、ここで言う自動運転とは、操舵、加減速の何れも運転者の操作に依らずに制御されることをいう。前方とは、フロントウインドシールドを介して視認される車両Mの進行方向の空間を意味する。モードAは、例えば、高速道路などの自動車専用道路において、所定速度(例えば50[km/h]程度)以下で車両Mが走行しており、追従対象の前走車両が存在するなどの条件が満たされる場合に実行可能な運転モードであり、TJP(Traffic Jam Pilot)と称される場合もある。この条件が満たされなくなった場合、モード決定部150は、モードBに車両Mの運転モードを変更する。
【0044】
モードBでは、運転支援の状態となり、運転者には車両Mの前方を監視するタスク(以下、前方監視)が課されるが、ステアリングホイール82を把持するタスクは課されない。モードCでは、運転支援の状態となり、運転者には前方監視のタスクと、ステアリングホイール82を把持するタスクが課される。モードDは、車両Mの操舵と加減速のうち少なくとも一方に関して、ある程度の運転者による運転操作が必要な運転モードである。例えば、モードDでは、ACCやLKASといった運転支援が行われる。モードEでは、操舵、加減速ともに運転者による運転操作が必要な手動運転の状態となる。モードD、モードEともに、当然ながら運転者には車両Mの前方を監視するタスクが課される。実施形態において、例えば、モードAが「第1の運転モード」である場合には、モードB~モードEが「第2の運転モード」の一例となる。また、モードBが「第1の運転モード」である場合には、モードC~モードEが「第2の運転モード」の一例となる。つまり、第2の運転モードでの運転者に課されるタスクは、第1の運転モードよりも重度のタスクである。
【0045】
運転モードは図3に例示したものに限らず、他の定義によって規定されてもよい。例えば、前方監視、ステアリング把持共に必要な運転モードの中に、ステアリングが把持されていると判定されるための閾値が緩いものと厳しいものがあってもよい。より具体的に、ある運転モードでは運転者の左右何れかの手がステアリングホイール82に触れていればよいが、それよりも運転者に課されるタスクが重い別の運転モードでは運転者が両手で閾値以上の強さでステアリングホイール82を掴んでいる必要があるというように運転モードが定義されてもよい。その他、運転者に課されるタスクの重度が異なる運転モードは如何様に定義されてもよい。
【0046】
また、運転モードの違いによって、車両Mの運転者に対する運転支援度合(言い換えると、自動運転の制御度合)が異なっていてもよい。例えば、第2の運転モードの場合には、第1の運転モードよりも運転者に対する運転支援度合(自動運転による制御度合)を小さくする。また、第2の運転モードであってもモードが異なる場合に、運転者に課されるタスクが重度になるモードほど運転支援度合を小さくしてもよい。運転支援度合を小さくするとは、例えば、操舵の最大支援量(例えば、最大トルク)を低下させることが含まれる。また、運転支援度合を小さくするとは、上記内容に代えて(または加えて)、速度支援において、支援可能な速度範囲(例えば速度上限値)を小さくすることが含まれてもよい。
【0047】
運転者状態判定部151は、乗員(運転者)が運転に適した状態であるか否かを判定する。例えば、運転者状態判定部151は、上記のモード変更のために乗員の状態を監視し、乗員の状態がタスクに応じた状態であるか否かを判定する。例えば、運転者状態判定部151は、ドライバモニタカメラ70が撮像した画像を解析して姿勢推定処理を行い、乗員が、システムからの要求に応じて手動運転に移行できない体勢であるか否かを判定する。また、運転者状態判定部151は、ドライバモニタカメラ70が撮像した画像を解析して視線推定処理を行い、乗員が車両Mの周辺(より具体的には、前方)を監視しているか否かを判定する。所定時間以上、タスクに応じた状態でないと判定した場合、運転者状態判定部151は、乗員がそのタスクの運転に適していない状態、または、運転モードに係るタスクが運転者により実行されていない状態であると判定する。また、タスクに応じた状態であると判定した場合、運転者状態判定部151は、乗員がそのタスクの運転に適した状態、または、運転モードに係るタスクが運転者により実行されている状態であると判定する。また、運転者状態判定部151は、乗員が、運転交代が可能な状態であるか否か判定してもよい。
【0048】
乖離判定部152は、第1認識部132により認識された第1情報と第2認識部により認識された第2情報とが乖離するか(差異があるか)否かを判定する。また、乖離判定部152は、第1情報と第2情報との乖離度合を取得してもよい。
【0049】
走路推定部153は、乖離判定部152により第1情報と第2情報とが乖離すると判定された場合に、第1情報と第2情報とに基づいて車両Mの走路を推定し、推定結果(走路推定情報)を走路決定部154に出力する。推定結果には、第1情報に含まれる車線と第2情報に含まれる車線のうち、車両Mがどちらの車線を走行していると推定したかを示す情報が含まれる。また、推定結果には、車線の右側または左側等の車線内における走行可能領域に関する情報が含まれてもよい。また、推定結果には、第1情報と第2情報のうち、どちらの情報を優先するかを示す優先情報が含まれてもよい。優先情報は、例えば、優先順位に関する情報でもよく、それぞれの情報に対する優先度合を示す情報(例えば、第1情報の優先度合0.7、第2情報の優先度合0.3等)であってもよい。
【0050】
走路決定部154は、第1情報および第2情報に基づいて、車両Mが走行する走路(走行可能領域)を決定する。例えば、走路決定部154は、乖離判定部152により第1情報と第2情報とが乖離していないと判定された場合には、第1情報と第2情報とのうち予め決められた一方または双方を用いて走路を決定し、乖離していると判定された場合には、第1情報と第2情報と走路推定部153による推定結果とに基づいて走路を決定する。乖離判定部152、走路推定部153、および走路決定部154における処理の詳細については後述する。
【0051】
モード変更処理部155は、運転者状態判定部151による判定結果や乖離判定部152による判定結果等に基づいて、車両Mが実行する運転モードを決定したり、変更したりする。例えば、モード変更処理部155は、決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに車両Mの運転モードを変更する。例えば、モードAにおいて運転者が、システムからの要求に応じて手動運転に移行できない体勢である場合(例えば許容エリア外の脇見を継続している場合や、運転困難となる予兆が検出された場合)、モード変更処理部155は、HMI30を用いて運転者に手動運転への移行を促し、運転者が応じなければ車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。自動運転を停止した後は、車両MはモードDまたはEの状態になり、運転者の手動操作によって車両Mを発進させることが可能となる。以下、「自動運転を停止」に関して同様である。モードBにおいて運転者が前方を監視していない場合、モード変更処理部155は、HMI30を用いて運転者に前方監視を促し、運転者が応じなければ車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。モードCにおいて運転者が前方を監視していない場合、或いはステアリングホイール82を把持していない場合、モード変更処理部155は、HMI30を用いて運転者に前方監視を、および/またはステアリングホイール82を把持するように促し、運転者が応じなければ車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。乖離判定部152による判定結果等に基づく運転モードの変更については、後述する。
【0052】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、車両Mの前方の道路の曲率半径(或いは曲率)に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0053】
HMI制御部170は、HMI30により乗員に所定の情報を通知する。所定の情報には、例えば、車両Mの状態に関する情報や運転制御に関する情報等の車両Mの走行に関連のある情報が含まれる。車両Mの状態に関する情報には、例えば、車両Mの速度、エンジン回転数、シフト位置等が含まれる。また、運転制御に関する情報には、走行制御部における制御内容が含まれ、例えば、自動運転による運転制御の実行の有無、自動運転を開始するか否かを問い合わせる情報、自動運転による運転制御の状況(例えば、実行中の運転モードやイベントの内容)、運転支援度合に関する情報、運転モードの切り替えに関する情報等が含まれる。また、所定の情報には、例えば、車両Mの現在位置や目的地、燃料の残量に関する情報が含まれてよい。また、所定の情報には、テレビ番組、DVD等の記憶媒体に記憶されたコンテンツ(例えば、映画)等の車両Mの走行制御に関連しない情報が含まれてもよい。
【0054】
例えば、HMI制御部170は、上述した所定の情報を含む画像を生成し、生成した画像をHMI30の表示装置に表示させもよく、所定の情報を示す音声を生成し、生成した音声をHMI30のスピーカから出力させてもよい。また、HMI制御部170は、HMI30に含まれるインジケータやランプ等の発光部を所定の色で、点灯または点滅させてもよい。また、HMI制御部170は、HMI30により受け付けられた情報を通信装置20、ナビゲーション装置50、第1制御部120等に出力してもよい。また、HMI制御部170は、HMI30に出力させる各種情報を、通信装置20を介して車両Mの乗員が利用する端末装置に送信してもよい。端末装置は、例えば、スマートフォンやタブレット端末である。
【0055】
学習部180は、第1認識部132により認識された第1情報と、第2認識部134により認識された第2情報とを入力とし、車両Mの走行車線の推定結果を出力とする走路推定モデル192を生成する。図4は、学習部180の処理について説明するための図である。例えば、学習部180は、予め用意した第1情報および第2情報と、真値(正解)データとを用いた機械学習(ニューラルネットワーク)や深層学習(ディープラーニング)等のAI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能によって、第1情報と第2情報とを入力とし、車両Mの走路の推定結果を出力とする走路推定モデル192を生成する。真値データとは、例えば、第1情報および第2情報を認識した時点において、実際に車両が走行した走路に関する情報である。
【0056】
また、学習部180は、第1情報と第2情報とに加えて、第1情報および第2情報を認識したときの走行状況に関する情報も含めることで、第1情報、第2情報、および走行状況に関する情報を入力とし、走路の推定結果を出力とする走路推定モデル192を生成してもよい。走行状況とは、例えば、車両が走行した時間帯、天候等の情報である。時間帯には、日中や夜間等の分類や月日や期間に関する情報、季節等の情報が含まれてもよい。また、走行状況には、渋滞状況等が含まれてもよい。特に検知デバイスDDの出力により認識される第1情報は、検出時の走行状況によって認識結果が異なる場合や、道路工事(例えば、夜間工事や年度末工事)や渋滞等の影響によって走路が変わる場合があるため、走行状況に関する情報も含めて学習することで、より精度の高い走路推定モデル192を生成することができる。また、学習部180は、走行状況に関する情報に加えて(または代えて)、車種情報も含めることで、第1情報、第2情報、車種(および走行状況)に関する情報を入力とし、走路の推定結果を出力とする走路推定モデル192を生成してもよい。車種ごとに検知デバイスDDの設置位置や数、認識性能等が異なり、それに伴う認識結果も異なるため、車種に関する情報も含めて学習することで、より精度の高い走路推定モデル192を生成することができる。
【0057】
また、学習部180は、走路推定部153により推定された走路(または走路決定部154により決定された走路)と、運転者が手動運転(モードE)等によって実際に走行した走路とに基づいて、走路推定モデル192を更新してもよい。例えば、走路推定部153が走路推定モデル192を用いて推定した走路が第1情報に基づく走路で、実際に運転者が手動運転で走行した走路が第2情報に基づく走路である場合に、それぞれの走路が異なるため、学習部180は、第1情報、第2情報、および実際に走行した走路の情報に基づいて再学習し、走路推定モデルを更新する。なお、再学習は、第1情報と第2情報との乖離度合が閾値以上である場合や、走路推定部153により推定した走路と運転者による手動運転操作によって車両Mが実際に走行した走路とが異なる場合に実行されてもよい。再学習を行うことで、より精度の高い走路推定モデル192を生成することができる。また、走路推定モデル192は、学習部180で生成や更新される他、ネットワークを介して外部装置から取得されてもよい。
【0058】
走行駆動力出力装置200は、車両Mが走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機等の組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のアクセルペダルから入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0059】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のブレーキペダルから入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、ブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0060】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のステアリングホイールから入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0061】
[認識部、モード決定部]
以下、認識部130およびモード決定部150に含まれる各機能(但し、運転者状態判定部151の機能は除く)の詳細について説明する。なお、以下の例では、第1認識部132により認識される第1情報および第2認識部134により認識される第2情報が区画線情報であるものとして説明する。
【0062】
図5は、認識部130と乖離判定部152の処理について説明するための図である。図5の例では、車両Mが速度VMで車線L1の延伸方向(図中X軸方向)に走行しているものとする。また、図5では、車両座標系の平面(XY平面)において第1認識部132により認識された第1の区画線LL1、RL1と、第2認識部134により認識された同一座標系の第2の区画線LL2、RL2を示している。また、図5に示す位置(X1,Y1)は、第1認識部132により第1の区画線を認識したときの車両Mの代表点を示し、位置(X2,Y2)は、第2認識部134により第2の区画線を認識したときの位置検出部により検出された車両Mの代表点を示している。
【0063】
第1認識部132は、例えば、検知デバイスDDの出力に基づいて、車両Mの走行車線を区画する左右の区画線LL1、RL1を認識する。区画線LL1、RL1は、「第1の区画線」の一例である。例えば、第1認識部132は、カメラ10により撮像された画像を解析し、画像において隣接画素との輝度差が大きいエッジ点を抽出し、エッジ点を連ねて画像平面における区画線LL1、RL1を認識する。また、第1認識部132は、車両Mの代表点(例えば、重心または中心)の位置(X1,Y1)を基準とした、区画線LL1、RL1の位置を車両座標系に変換する。また、第1認識部132は、例えば、第1の区画線LL1、RL1の曲率半径または曲率を認識してもよい。
【0064】
第2認識部134は、例えば、位置検出部により検出された車両Mの位置に基づいて地図情報から車両Mの走行車線を区画する区画線LL2、RL2を認識する。区画線LL2、RL2は、「第2の区画線」の一例である。例えば、第2認識部134は、位置検出部により検出された車両Mの位置情報を取得し、取得した位置情報(位置(X2,Y2))に基づいて第2地図情報62を参照し、第2地図情報62から車両Mの位置に存在する車線を区画する区画線LL2、RL2を認識する。また、第2認識部134は、第2地図情報62から区画線LL2およびRL2のそれぞれの曲率半径または曲率を認識する。
【0065】
乖離判定部152は、車両座標系の平面(XY平面)において、位置(X1,Y1)と位置(X2,Y2)とを重畳させると共に、車両Mの向きが同じになるように重畳させて、左右それぞれ(区画線LL1と区画線LL2、および、区画線RL1とRL2)の乖離度合を取得する。乖離とは、例えば、横位置(図中Y軸方向)の乖離(例えば、図中の区画線LL1とLL2との横ずれ量W1)でもよく、縦位置(図中X軸方向の距離の長短)の差分でもよく、その組み合わせでもよい。また、乖離とは、上記内容に代えて(または加えて)、区画線LL1とLL2とがなす角度(剥離角度)、または区画線RL1とRL2とがなす角度でもよい。乖離判定部152は、横ずれ量W1や剥離角度が大きくなるほど、乖離度合を大きくする。
【0066】
乖離判定部152は、区画線LL1とLL2、および区画線RL1とRL2とのそれぞれの乖離度合が閾値未満である場合に、第1の区画線と第2の区画線とが乖離していない(合致している)と判定し、閾値以上である場合に乖離している(合致していない)と判定する。また、乖離判定部152は、乖離度合が閾値以上となる状態が所定時間以上継続する場合に、第1の区画線と第2の区画線とが合致していないと判定してもよい。これにより、乖離度合の判定結果が頻繁に切り替わることを抑制することができるため、判定結果に基づく運転制御をより安定化させることができる。
【0067】
図6は、乖離判定部152の判定結果に基づく走路決定について説明するための図である。第1の区画線と、第2の区画線とが乖離していると判定した場合、乖離判定部152は、第1の区画線および第2の区画線の情報を走路推定部153および走路決定部154に出力する。走路推定部153は、走路推定モデル192を用いて、第1の区画線および第2の区画線の入力に対する車両Mの走路の推定結果を取得し、推定結果を走路決定部154に出力する。
【0068】
なお、走路推定部153は、車両Mまたは通信装置20を介して接続される外部装置から走行状況に関する情報(現在の時間および車両Mの周辺の天候情報等)を取得し、取得した情報も走路推定モデル192に入力して推定結果を取得してもよい。また、走路推定部153は、走行状況に関する情報に加えて(または代えて)、車両Mの車種情報も走路推定モデル192に入力して推定結果を取得してもよい。これにより、走行状況や車種に基づく認識性能等の違いに応じた推定結果を取得することができる。
【0069】
走路決定部154は、第1の区画線および第2の区画線の情報から車両Mの走路を決定する。例えば、第1の区画線と第2の区画線との乖離度合が閾値未満である場合(合致する場合)、走路決定部154は、第1の区画線または第2の区画線のうち、一方または双方を用いて車両Mが走行する走路(走行可能領域)を決定する。双方を用いるとは、例えば、両方の区画線を重畳して用いたり、一方の区画線を用いつつも他方の区画線の少なくとも一部も補間的に用いることである。
【0070】
また、第1の区画線と第2の区画線との乖離度合が閾値以上である場合(合致しない場合)、走路決定部154は、第1の区画線、第2の区画線、および走路推定部153の推定結果(例えば優先情報)に基づいて、車両Mの走路を決定する。例えば、走路決定部154は、推定結果において、第1の区画線の方が第2の区画線よりも優先順位が高い場合、第1の区画線で区画される車線を走路に決定する。また、走路決定部154は、例えば、推定結果において、第1情報が車線の右側の走行可能領域を示し、第2情報が同一車線の左側の走行可能領域を示している場合であって、且つ、第1情報の方が第2情報よりも優先順位が高い場合に、車線の右側を走路に決定する。また、走路決定部154は、第1情報および第2情報のそれぞれの優先度合に応じて走路の位置を調整して最終的な走路を決定してもよい。このように、第1の区画線と第2の区画線が乖離する場合に、走路推定モデル192と用いた走路推定を行うことで、走路決定の正確性のより向上させることができる。
【0071】
行動計画生成部140は、例えば、実行する運転モードに基づき自動運転や運転支援が実行される場合に、走路決定部154により決定された走路の中央を車両Mが走行するための目標軌道を生成し、生成した目標軌道を第2制御部160に出力して運転制御を実行させる。
【0072】
モード変更処理部155は、例えば、乖離判定部152による判定結果に基づいて、運転モードを変更する。例えば、モード変更処理部155は、第1の区画線と第2の区画線の左右両方の区画線が共に合致し(乖離度合が閾値未満であり)、且つ第1の運転モードを実行可能な他の条件を満たす場合には、第2の運転モードから第1の運転モードに変更したり、第2の運転モードの中で運転者に課するタスクが軽度なモードに変更したり、実行中の第1の運転モードを継続させる。また、モード変更処理部155は、第1の運転モードを実行している状態において、第1の区画線と第2の区画線の少なくとも左右一方の乖離度合が閾値以上である場合に、第1の運転モードから第2の運転モード(例えば、モードC~モードE)へ切り替えるための処理を実行する。なお、モード変更処理部155は、乖離度合が閾値以上となる状態が所定時間以上継続するまで、第1の運転モードから第2の運転モードへの切り替えを抑制してもよい。これにより、乖離度合が閾値以上となるのが一時的である場合の運転モードの変更を抑制し、より安定性の高い運転制御を実現できる。また、モード変更処理部155は、乖離度合が閾値以上となる状態の継続時間に応じて、第2の運転モードに含まれる複数のモードを乗員に課されるタスクがより重度となるモードに段階的に切り替えてもよい。この場合、継続時間が大きくなるほど、より重度なタスクとなるモードに切り替わる。
【0073】
HMI制御部170は、第1の区画線と第2の区画線との乖離により第1の運転モードから第2の運転モードへ切り替わる場合に、運転モードが切り替わることに加えて、切り替わる理由を示す情報をHMI30に出力させてもよい。また、HMI制御部170は、運転モードが切り替わるための乗員に課されるタスク(例えば、前方監視やステアリングホイール82の把持)に関する情報等をHMI30に出力させてもよい。また、HMI制御部170は、第1の区画線と第2の区画線との乖離により第1の運転モードから第2の運転モードへ切り替わることによって、車両Mの運転者に対する運転支援度合が異なる場合に、運転支援度合に応じた支援状態に関する情報をHMI30に出力させてもよい。また、HMI制御部170は、運転モードの変更や支援状態の変更に応じて、HMI30に含まれるインジケータやランプ等の発光部の発光態様(表示態様)を異ならせてもよい。発光態様とは、例えば、点灯や点滅、点滅周期、発光色等の態様である。これにより、運転者に、運転支援状態の変化を明確に把握させることができる。
【0074】
[変形例]
上述した実施形態において、学習部180は、通信装置20により通信可能なサーバ(外部装置)で走路推定モデル192を学習させてもよい。この場合、学習部180は、第1認識部132および第2認識部134の認識結果や走行履歴、車両Mの走行状況や車種等の情報を、通信装置20を介してサーバに送信する。サーバは、車両Mから送信された情報を受信すると共に、他の車両からも同様の情報を受信し、受信した情報を用いて走路推定モデル192を生成し、生成した走路推定モデル192を各車両に配信する。これにより、より多くの情報を用いて走路推定モデルが生成できるため、より精度の高い走路推定が実現できる。また、サーバで学習処理を実行させることで、車両Mの処理負荷を軽減できる。
【0075】
また、実施形態において、乖離判定部152は、第1情報と第2情報との乖離度合が閾値未満である場合(合致する場合)であっても第1情報および第2情報を走路推定部153に出力し、走路推定処理を実行させてもよい。この場合、走路決定部154は、第1情報と第2情報の乖離度合に関係なく、第1情報と、第2情報と、走路推定部153から得られる推定結果とに基づいて、走路を決定する。また、走路決定部154は、HMI30から入力される運転者からの指示内容に応じて、第1情報と第2情報との乖離度合が閾値未満である場合(合致する場合)に、推定結果を参照するか否かを切り替えてもよい。これにより、運転者の意図にあった走路決定処理を行うことができる。
【0076】
[処理フロー]
次に、実施形態に係る自動運転制御装置100により実行される処理の流れについて説明する。図7は、自動運転制御装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下では、自動運転制御装置100により実行される処理のうち、第1認識部132および第2認識部134により認識された区画線の乖離度合に基づいて、走路を決定したり、車両Mの運転モードを切り替える処理を中心として説明する。なお、図7に示す処理の開始時には、すでに走路推定モデル192が生成されているものとする。また、車両Mは、第1の運転モード(例えば、モードA)による運転制御が実行されているものとする。また、以下の処理では、運転者状態判定部151による判定結果において、運転者の状態は、実行中のモードまたは切り替え後のモードに適した状態である(つまり、運転者状態判定部151の判定結果に基づいて、モードの切り替えが発生しない状況である)ものとする。図7に示す処理は、所定のタイミングで繰り返し実行されてよい。
【0077】
図7の例において、第1認識部132は、検知デバイスDDの出力に基づいて車両Mの走行車線を区画する第1の区画線を認識する(ステップS100)。次に、第2認識部134は、位置検出部から得られる車両Mの位置情報に基づいて地図情報を参照し、車両Mの走行車線を区画する第2の区画線を認識する(ステップS110)。なお、ステップS100およびS110の処理は、逆の順序で行われてもよく、並行して行われてもよい。
【0078】
次に、乖離判定部152は、第1の区画線と第2の区画線とを比較し、区画線の乖離度合が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS120)。乖離度合が閾値以上ではないと判定された場合、走路決定部154は、認識された第1の区画線または第2の区画線のうち一方または双方を用いて車両Mの走路を決定する(ステップS130)。次に、走行制御部は、第1の運転モードを継続して、決定された走路を走行する走行制御を実行する(ステップS140)。
【0079】
また、ステップS120の処理において、第1の区画線と第2の区画線との乖離度合が閾値以上であると判定した場合、乖離判定部152は、乖離度合が閾値以上となる状態が所定時間以上継続しているか否かを判定する(ステップS150)。乖離度合が閾値以上となる状態が所定時間以上継続していないと判定された場合、走路推定部153は、走路推定モデルを用いて、第1の区画線および第2の区画線に基づく車両Mの走路を推定する(ステップS160)。次に、走路決定部154は、認識された区画線および推定結果に基づいて車両Mの走路を決定する(ステップS170)。次に、走行制御部は、第1の運転モードを継続して、決定された走路を走行する運転制御を実行する(ステップS180)。
【0080】
また、ステップS150の処理において、乖離度合が閾値以上となる状態が所定時間以上継続していると判定された場合、走行制御部は、第1の運転モードから第2の運転モードに切り替える運転制御を実行する(ステップS190)。次に、HMI制御部170は、車両制御(運転支援)の状態に関する情報をHMI30に出力して運転者に通知する(ステップS200)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0081】
以上説明した実施形態によれば、車両制御装置において、車両の周辺状況を検知した検知デバイスDDの出力に基づく第1情報と、地図情報に基づく第2情報とにより決定される走路における車両Mの走行を制御する走行制御部と、第1情報と第2情報とに基づいて車両Mの走路を推定する走路推定部153と、第1情報と、第2情報と、走路推定部153により推定された車両Mの走路に関する走路推定情報とに基づいて、車両Mの走路を決定する走路決定部154と、を備えることにより、車両の走路決定の正確性を向上させることができる。
【0082】
また、実施形態によれば、検知デバイスDDの出力に基づく区画線の情報と、地図情報から取得した区画線の情報とに基づいて、車両Mの走路を決定する場合に事前に学習されたモデルを用いて走路を推定し、推定した走路に基づいて最終的な車両Mの走路を決定することで、より確実で安全性の高い走路を決定することができる。また、予め学習された走路推定モデルを用いた走路推定結果を用いて走路を決定することで、予め決められた単純なルールベースで決定するよりも走行状況等の変化に応じた走路決定が実現できる。また、実施形態によれば、自車位置という範囲だけでなく、車両Mの進行方向(例えば、前方)も含めた走路を精度よく決定することができる。特に自動運転の分野においては、車両Mが将来走行する走路に対応した目標軌道が生成され、その目標軌道に沿った運転制御が実行されるため、走路決定(走路選択)の正確性を向上させることで、より適切な運転制御が実現できる。したがって、実施形態によれば、持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0083】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
車両の周辺状況を検知した検知デバイスの出力に基づく第1情報と、地図情報に基づく第2情報とにより決定される走路における前記車両の走行を制御し、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記車両の走路を推定し、
前記第1情報と、前記第2情報と、推定した前記車両の走路に関する走路推定情報とに基づいて、前記車両の走路を決定する、
車両制御装置。
【0084】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0085】
1…車両システム、10…カメラ、12…レーダ装置、14…LIDAR、16…物体認識装置、20…通信装置、30…HMI、40…車両センサ、50…ナビゲーション装置、60…MPU、70…ドライバモニタカメラ、80…運転操作子、100…自動運転制御装置、120…第1制御部、130…認識部、132…第1認識部、134…第2認識部、140…行動計画生成部、150…モード決定部、151…運転者状態判定部、152…乖離判定部、153…走路推定部、154…走路決定部、155…モード変更処理部、160…第2制御部、162…取得部、164…速度制御部、166…操舵制御部、170…HMI制御部、180…学習部、190…記憶部、200…走行駆動力出力装置、210…ブレーキ装置、220…ステアリング装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7