(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体標的化ペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20241108BHJP
C07K 1/13 20060101ALI20241108BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20241108BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20241108BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20241108BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20241108BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241108BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241108BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C07K1/13
A61K47/64
A61K47/54
A61K47/60
A61K49/00
A61K45/00
A61P35/00
A61P29/00
A61P9/10
A61P19/02
G01N21/64 F
(21)【出願番号】P 2022502488
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2020070014
(87)【国際公開番号】W WO2021009237
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-06-27
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】504197592
【氏名又は名称】リグスホスピタレット
【氏名又は名称原語表記】Rigshospitalet
(73)【特許権者】
【識別番号】522017874
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ コペンハーゲン
(73)【特許権者】
【識別番号】522016811
【氏名又は名称】フルオガイド アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】ケアー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ユール,カリーナ
(72)【発明者】
【氏名】クルベゴヴィック,ソレル
(72)【発明者】
【氏名】プロウ,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲン イェンセン,クヌーズ
(72)【発明者】
【氏名】キルデガード セーレンセン,カスパー
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,アナス
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒツェン,モルテン
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/041558(WO,A1)
【文献】特表2008-514588(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107652358(CN,A)
【文献】PLOS One,2016年,vol. 11, no. 2,e0147428
【文献】Bioconjugate Chemistry,2013年,vol. 24, no. 5,pp. 811-816
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)標的化ペプチドコンジュゲートであって、
フルオロフォア、
uPARに結合するペプチド、および
リンカー基を含み、
以下の式:
【化1】
を有する、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)標的化ペプチドコンジュゲート。
【請求項2】
疾患の治療に使用するための、請求項
1に記載のuPAR標的化ペプチドコンジュゲート。
【請求項3】
疾患の診断に使用するための、請求項
1に記載のuPAR標的化ペプチドコンジュゲート。
【請求項4】
疾患の光学的イメージングまたは蛍光イメージング(FLI)に使用するための、請求項
1に記載のuPAR標的化ペプチドコンジュゲート。
【請求項5】
前記疾患が、がんおよび炎症性疾患からなる群から選択される、請求項
2~4のいずれか一項に記載の使用のためのuPAR標的化ペプチドコンジュゲート。
【請求項6】
前記uPAR標的化ペプチドコンジュゲートが、1人当たり0.1~1000mgの用量で対象に投与される、請求項
2~4のいずれか一項に記載の使用のためのuPAR標的化ペプチドコンジュゲート。
【請求項7】
請求項
1に記載のuPAR標的化ペプチドコンジュゲートを、少なくとも1つの薬学的に許容され得る担体または賦形剤と一緒に含む医薬組成物。
【請求項8】
疾患の処置に使用するための、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
疾患の検出および/または定量化に使用するための、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
疾患の診断に使用するための、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
疾患の光学的イメージングまたは蛍光イメージング(FLI)に使用するための、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記疾患が、がんおよび炎症性疾患からなる群から選択される、請求項
8~11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記がんが、神経膠腫、神経膠芽腫または他の脳腫瘍、膵臓癌、中咽頭癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、神経内分泌腫瘍、神経内分泌癌腫、前立腺癌からなる群から選択される、請求項
12に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記がんが、神経膠腫、神経膠芽腫、膵臓癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、肺癌および乳癌からなる群から選択される、請求項
12または13に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記がんが神経膠腫、神経膠芽腫または乳癌である、請求項
12~14のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
前記炎症性疾患が、関節炎およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される、請求項
12に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
癌腫瘍または転移の輪郭の描画に使用するための、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項18】
蛍光誘導腫瘍切除術または転移切除術に使用するための、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項19】
静脈内、局所的または局所的に投与される、請求項
8~
18のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項20】
前記uPAR標的化ペプチドコンジュゲートの濃度が、投与単位当たり0.1~1000mg、典型的には、投与単位当たり0.001~1000mg、投与単位当たり0.01~1000mg、投与単位当たり0.1~1000mg、投与単位当たり0.0001~500mg、投与単位当たり0.001~500mg、投与単位当たり0.01~500mg、投与単位当たり0.1~500mg、投与単位当たり0.0001~100mg、投与単位当たり0.001~100mg、投与単位当たり0.01~100mg、または投与単位当たり0.1~100mgの範囲である、請求項
8~19のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
単位投与量のuPAR標的化ペプチドコンジュゲート製剤を調製するための部品のキットであって、
単位投与量の請求項
7に記載の医薬組成物、
場合により、単位投与量の少なくとも1種の薬理活性物質、
場合により、単位投与量のアジュバント、
場合により、単位投与量の少なくとも1種の薬学的に許容され得る担体または賦形剤、
投与前に単位投与量を互いに分離するための手段、および
単位投与量を投与するための手段、
を含有する、キット。
【請求項22】
請求項21に記載の医薬組成物の単位投与量が、0.1~1000mg、典型的には0.001~1000mg、0.01~1000mg、0.1~1000mg、0.0001~500mg、0.001~500mg、0.01~500mg、0.1~500mg、0.0001~100mg、0.001~100mg、0.01~100mg又は0.1~100mgの範囲にある、請求項
21に記載の部品のキット。
【請求項23】
前記単位投与量が総体積範囲で、0.1~10.0mL、好ましくは0.1~5.0mLの範囲、好ましくは0.5~5.0mLの範囲、好ましくは0.5~1.0mLの範囲である、請求項
21または22に記載の部品のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物の体内への投与を意図した最適な薬物動態プロファイルを有するuPAR標的化ペプチドコンジュゲートに関する。さらに、光学的イメージングにおいて使用するための、ならびに疾患の診断および/または処置のための、uPAR標的化ペプチドコンジュゲートおよびuPAR標的化ペプチドコンジュゲートを含む組成物が提供される。
【背景技術】
【0002】
外科手術は、依然としてがん疾患の最も一般的な処置方法である。がん処置の目標予後とはがん組織が完全に除去されていることなので、がん手術の最良の予後は、可能であれば全てのがん細胞を除去することである。この目的を達成するためには、腫瘍周囲の一定量の健康な組織も容赦なく切除されてしまう。除去された全ての組織は、病理学者が疾患の広がりの程度および特徴を判断することを可能にする顕微鏡検査によって慎重に検査される。したがって、活動性腫瘍の周縁部の輪郭を描画することは大きな課題であり、通常、腫瘍の広がりの位置および程度は、コンピュータ断層撮影法(CT)または磁気共鳴イメージング(MRI)で術前にマッピングされる。しかしながら、リアルタイム撮像ツールがないこと、解像度が低いこと、またCTの場合には、有害なイオン化が起こることにより、連続的なリアルタイム術中撮像、すなわち、手術の進行中に、ポジトロン放出断層撮影(PET)またはCT撮像を都合のよい設定で実行することができず、これらの技術は制限される。
【0003】
一方、蛍光イメージングによれば、手術室内の対象またはスタッフを有害な電離放射線にさらすことなく、高い時間的および空間的解像度でリアルタイムでの非侵襲的インビボ視覚化が可能になる。したがって、蛍光画像は、生物および組織を、安全で、簡単、かつリアルタイムの非常に高解像度に視覚化することに使用され得る。
【0004】
神経膠芽腫(GBM)は、基本的に治癒しない重度のがん疾患であり、積極的な多様な処置を行っても、平均生存期間は残念なことに14ヶ月である。したがって、疾患の複雑さを理解し、治療法を見出すための集学的努力がなされている。しかしながら、GBMの治療における過去20年間の進歩は、全生存期間が停滞していることで控えめであった。手術は依然として重要な処置法であり、手術は単独では成り立たないが、術後生存率は切除の程度によって決まる。GBMは不規則な境界を有し、明らかに健康な組織内に延びる腱および単一細胞を有する浸潤性という性質を有しているため、健康な隣接組織を確保しながら、明確に識別して完全に切除することが困難である。5-ALAは、最近、GBM切除について食品医薬品局(FDA)によって承認されており、腫瘍内でプロトポルフィリンIXに代謝されると、635nmに発光ピークを有する蛍光になる。しかし、代謝産物は腫瘍細胞に結合せず、拡散しているため、5-ALAでは腫瘍の明確な輪郭の描画は見られず、5-ALAが神経膠腫の手術を改善するという証拠は低いか非常に低いことも分かっている。メチレンブルー、フルオレセインナトリウム、およびインドシアニングリーン(ICG)は、ヒトにおける使用がFDAから承認されているが、可視スペクトル(NIRスペクトルのICG)の波長が短く、がん特異性はない。これは、健康な組織における自己蛍光、組織吸光度、散乱、光退色および非特異的取り込みに起因して、腫瘍対バックグラウンド比(TBR)として表される透過、解像度およびコントラストを制限する。したがって、効果的なGBM輪郭の描画のための新しい外科的イメージングは非常に必要とされている。
【0005】
標的分子蛍光イメージングは、そのようなツールである。高親和性標的化分子を蛍光色素と組み合わせることにより、がん組織を特異的に標的化し、高TBRでリアルタイムに可視化し得、外科医が術中にがん組織を健康な組織と区別することを継続的に誘導し支援し得る。
【0006】
ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)は、GBM、ならびに乳癌、頭頸部扁平上皮癌、腎細胞癌、および肺癌を含むがこれらに限定されないいくつかの他のがんにおいて高発現する、よく知られたがんの標的である。この受容体は、がんの特徴の1つである浸潤および転移に関連し、その発現量はがんの攻撃性および生存予後不良と相関している。さらに、その受容体は一般に、慢性炎症を伴う活性化腫瘍間質微小環境を含む浸潤前面で高発現し、それを正確な辺縁の可視化および腫瘍の輪郭の描画を可能にする魅力的な標的としている。例えば、国際公開第2016/041558号には、uPARに結合する蛍光標識ペプチドに基づくプローブが開示されている。しかしながら、依然として改善の余地があり、がん切除のための改善された方法が必要とされている。
【0007】
本発明の1つの目的は、がん治療におけるイメージングへの適用および/または手術の前に投与するための改善された受容体標的化コンジュゲートを提供することである。
【発明の概要】
【0008】
上述された目的は、
ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)標的化ペプチドコンジュゲートであって、
フルオロフォア、
uPARに結合するペプチド、および
前記フルオロフォア、前記uPARに結合するペプチドおよびリンカー基が共有結合によって連結されたリンカー基を含み、
前記リンカー基が、場合により少なくとも1つのアミノ酸と共有結合によって連結した、オリゴエチレングリコール、またはオリゴ-グリセロール、オリゴ-乳酸もしくは炭水化物などの他の短いオリゴマーを含む、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)標的化ペプチドコンジュゲート
によって達成される。
リンカー基は、uPAR標的化ペプチドコンジュゲートの可溶化特性をもたらし、uPAR受容体に関して結合特性を高める。
【0009】
上記に関連して、国際公開第2016/041558号に示されているプローブは、受容体結合が低く血漿クリアランスが遅いために、記録された画像化における最適かつ特異的なコントラストを損なう最適な薬物動態プロファイルまたは標的親和性を提供していないことを強調すべきである。種々の代替物についてのTBR値が国際公開第2016/041558号に開示されているが、これらは、本発明によるuPAR標的化ペプチドコンジュゲートについて提供されるレベルの範囲内および範囲外の両方である。要約すると、本発明による受容体標的化コンジュゲートは、特定の投与タイプおよび適応症に最適な薬物動態プロファイルを提供する新規なプローブを示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、uPAR標的化ペプチドコンジュゲートIRDye800CW-AE344の分子構造を示す。
【
図2】
図2は、IRDye800CW-AE344のuPARに対する親和性の表面プラズモン共鳴分析を示し、上の線(1)はIRDye800CW-AE344:uPAR
wtを表し、下の線(2)はAE105:uPAR
wtを表す。
【
図3】
図3は、プローブIRDye800CW-AE344の777nmにおける実証吸収ピーク(実線)、784nmにおける励起ピーク(点線)、794nmにおける発光ピーク(破線)のスペクトル分析を示し、10nmのストークスシフトをもたらす。
【
図4】
図4は、連続レーザー露光後のIRDye800CW-AE344の光安定性を示す。
【
図5】
図5は、同所性GBMにおけるIRDye800CW-AE344のインビボにおけるイメージング特異性を示す。上段は無処置の脳を示し(NIR画像露光時間500ms)、下段は断面脳を示す(NIR画像露光時間333ms)(動物id029、6nmol、3時間)。
【
図6】
図6は、uPARのH&E染色、NIR顕微鏡検査、H&EおよびNIRを一緒に行ったもの、ならびに免疫組織化学染色を用いた脳の組織検査を示す図である。矢印は、脳の基底部における小さな軟膜転移を示し、H&E染色およびNIR顕微鏡の両方で可視である(12nmol IRDye800CW-AE344、24時間)。
【
図7】
図7は、断面脳上のGBMのエクスビボにおける動的NIRイメージングを示す。写真中の矢印は、所与の用量のIRDye800CW-AE344に対する最高のTBR(最大)を示す(全てのデータは333msの露光時間の画像に基づく)。
【
図8】
図8は、種々の用量のIRDye800CW-AE344についての腫瘍対バックグラウンド比を示し、線は、それぞれ用量1mmol(●)、3nmol(■)、6nmol(▲)および12nmol(▼)を表す。
【
図9】
図9は、種々の用量のIRDye800CW-AE344に対する腫瘍の平均蛍光強度(MFI)を示し、種々のバーは、それぞれ用量1nmol、3nmol、6nmol、および12nmolを表す。
【
図10】
図10は、TBRと比較した6nmolのIRDye800CW-AE344での腫瘍およびバックグラウンド平均蛍光強度を示し、明るい灰色(左)のバーは腫瘍を表し、暗い灰色(右)のバーはバックグラウンドを表し、線はTBRを表す。
【
図11】
図11は、(左から右へ)3nmolのIRDye800CW-AE344(活性)、3nMのIRDye800CW-AE344+600nmolのAE120(遮断)および3nMのIRDye800CW-AE354(変異)の注射1時間後の断面脳のNIR画像を示す。
【
図12】
図12は、標準化されたTBR(ref:活性プローブ)を示す。黒いバーはIRDye800CW-AE344(活性)を表し、明るい灰色のバーはAE120(遮断)を表し、暗い灰色のバーはIRDye800CW-AE354(変異)を表す。
【
図13】
図13は、注射1時間後の3nmolのIRDye800CW-AE344の蛍光強度および体内分布を表す臓器の画像を示す(露光時間:333ms)。小腸の矢印は近位端を示す。腎臓が過飽和し、したがって色補正バーの範囲外になった。
【
図14】
図14は、IRDye800CW-AE344に対する蛍光シグナルの定量を示す。左側のy軸は平均蛍光強度を表す。右側のy軸は相対体内分布を表す。さらに、黒いバーは平均シグナル強度(a.u.)を表し、灰色のバーは、相対体内分布を表す(データは、最も高い取り込みのために皮膚を基準として標準化される)。
【
図15】
図15は、画像(白色光、NIR、白色光とNIRの両者)を示す。
【
図17】
図17は、注射1時間後の全データを用いた体内分布および急性毒性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本件発明の特定された実施の形態
以下に、本発明のいくつかの特定の実施形態を提示し、さらに説明する。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、リンカー基は、場合により少なくとも1つのアミノ酸と共有結合によって連結した、オリゴエチレングリコール、またはオリゴ-グリセロール、オリゴ-乳酸もしくは炭水化物などの他の短いオリゴマーを含む。本発明の一実施形態では、リンカー基は、少なくとも1つのアミノ酸と共有結合によって連結されたオリゴエチレングリコールを含み、少なくとも1つのアミノ酸は、ペプチド結合を形成する別のアミノ酸に共有結合し得、したがってオリゴペプチドを形成し得る。したがって、本発明の一実施形態では、リンカー基は、少なくとも1つのオリゴペプチドと共有結合によって連結されたオリゴエチレングリコールを含む。したがって、リンカー基は親水性リンカー基であり得る。さらに、少なくとも1つのアミノ酸は、天然アミノ酸および合成アミノ酸を含む、タンパク質性アミノ酸および非タンパク質性アミノ酸から選択される。これに関連して、天然アミノ酸には、天然アミノ酸が、アミノイソ酪酸(Aib)などのC-アルファアルキル化アミノ酸、サルコシンなどのN-アルキル化アミノ酸およびベータ-アラニンなどの天然に存在するベータ-アミノ酸が含まれ得ることがさらに言及され得る。さらに、合成アミノ酸には、シクロヘキシルアラニン、ガンマ-アミノ酸、およびジペプチド模倣物などの非タンパク質性側鎖を有するアミノ酸が含まれ得る。ジペプチド模倣物という用語は、2つのアミノ酸側鎖を提示することによって、例えば2つの残基を一緒に連結するアミド結合が減少していることによって、ジペプチドを模倣する有機分子として解釈され得る。非タンパク質性側鎖を有するアミノ酸には、CHI空間での動きが制限された側鎖を有するアミノ酸も含まれ得る。CHI空間において動きが制限されるという用語は、側鎖基の回転における柔軟性が制限されることとして解釈され得る。オリゴペプチドは、最大50個のアミノ酸からなり得、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、およびペンタペプチドを含み得、さらにタンパク質性アミノ酸および非タンパク質性アミノ酸によって構成され得る。
【0013】
本発明の1つの具体的な実施形態によれば、リンカー基は、-Glu-Glu-NH-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CO-NH-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CO-である。O2Ocという用語が本出願を通して使用される場合、それは化学成分-NH-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CO-を意味する。したがって、O2Oc-O2Ocは、-NH-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CO-NH-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CO-を意味する。さらに、本発明は、アミド結合によって連結されているエチレングリコール単位に限定されず、実際には、各エチレン単位は、エーテルまたはアミドのいずれか、または基本的には他の共有結合によって連結され得る。エチレングリコール鎖は、様々な長さを有し得、すなわち、繰り返し単位の数は、n=1~10の範囲であり得、ここで、nは、-(CH2-CH2-O)n-に対応するリンカー中の繰り返し単位の数である。さらに、リンカー中のアミノ酸はグルタミン酸(Glu)に限定されず、酸性側鎖を有するアミノ酸、すなわちアスパラギン酸を含む他の組み合わせ、例えば、Asp-Asp、Glu-AspまたはAsp-Gluが含まれ得る。さらに、他の親水性アミノ酸の組み合わせ、すなわち、例えば、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、ヒスチジン(His)またはリジン(Lys)の組み合わせであってもよい。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、フルオロフォアは、近赤外I(NIR-I)フルオロフォアまたは近赤外II(NIR-II)フルオロフォアであり得る。フルオロフォアは、ICG、メチレンブルー、5-ALA、プロトポルフィリンIX、IRDye800CW、ZW800-1、Cy5、Cy7、Cy5.5、Cy7.5、IRDye700DX、Alexa fluor488、フルオレセインイソチオシアネート、Flab7、CH1055、Q1、Q4、H1、IR-FEP、IR-BBEP、IR-E1、IR-FGP、IR-FTAPからなる群から選択され得る。
【0015】
さらに、本発明の別の具体的な実施形態によれば、フルオロフォアは、ICG、メチレンブルー、5-ALA、プロトポルフィリンIX、IRDye800CW、ZW800-1、Cy5、Cy7、Cy5.5、Cy7.5、IRDye700DX、Alexa fluor 488、フルオレセインイソチオシアネートからなる群から選択されるNIR-Iフルオロフォアであり得る。本発明の別の具体的な実施形態によれば、フルオロフォアは、Flav7、CH1055、Q1、Q4、H1、IR-FEP、IR-BBEP、IR-E1、IR-FGP、IR-FTAPからなる群から選択されるNIR-IIフルオロフォアであり得る。本発明の1つの具体的な実施形態によれば、フルオロフォアは、IRDye800CWである。さらに、本発明のフルオロフォアは、NIR-Iフルオロフォアについては700~1200nm、700~950nm、またはNIR-IIフルオロフォアについては1000~1200nmの範囲のNIR光吸収を有し得る。同様に、フルオロフォアは、NIR-Iフルオロフォアについて700~1200nm、は700~950nm、またはNIR-IIフルオロフォアについては1000~1200nmの範囲のNIR発光を有し得る。NIRフルオロフォアは、蛍光イメージングに使用される場合、深部組織画像を生成するためのウィンドウを提供するという利点を提供する。
【0016】
本発明の別の実施形態では、受容体結合ペプチドは、-Asp-Cha-Phe-ser-arg-Tyr-Leu-Trp-Ser;および-Asp-Cha-Phe-ser-arg-Tyr-Leu-Trp-Ser-NH2からなる群から選択され得る。
【0017】
さらに、本発明の共有結合は、アミド、カルバメート、チオ尿素、エステル、エーテル、アミン、トリアゾール、または固相合成によって化学部分を結合するために一般的に使用される任意の他の共有結合からなる群から選択され得る。
【0018】
本発明の1つの具体的な実施形態によれば、uPAR標的化ペプチドコンジュゲートは、以下の式のものである。
【化1】
【0019】
本発明の別の具体的な実施形態によれば、uPAR標的化ペプチドコンジュゲートは、IRDye800CW-Glu-Glu-O2Oc-O2Oc-Asp-Cha-Phe-D-Ser-D-Arg-Tyr-Leu-Trp-Ser-OHに相当する。Chaは、β-シクロヘキシル-L-アラニンであると解釈され得る。
【0020】
本発明の別の実施形態では、uPAR標的化ペプチドコンジュゲートは、100nM未満、好ましくは50nM未満、好ましくは25nM未満のuPAR結合親和性を有する。
【0021】
上記で示唆されるように、本発明によるuPAR標的化ペプチドコンジュゲートは、特定の投与タイプおよび適応症に対して最適な薬物動態プロファイルを示す。
【0022】
薬物動態に関して、本発明の一実施形態によれば、前記uPAR標的化ペプチドコンジュゲートは、
-ヒトまたは動物の体内に全身投与され;
-少なくとも4,500分以内、好ましくは1,200分以内、より好ましくは600分以内、さらにより好ましくは300分以内に受容体結合をもたらし;
-血漿から除去して、受容体に結合したコンジュゲートを可視化し、血漿中の濃度が50%低下するのにかかる時間である血漿半減期として測定され、血漿半減期が最大4,500分、好ましくは1,200分、より好ましくは600分、さらにより好ましくは300分を有し;
-受容体結合が少なくとも30分間持続するようになされており;
前記受容体結合親和性、前記所望の受容体結合に達するのにかかる時間、前記受容体結合の持続性および血漿半減期が、少なくとも1.5のTBR(腫瘍対バックグラウンド比)に換算され、ヒトまたは動物の身体への投与後4,500分以内、好ましくは1,200分以内、より好ましくは600分以内、さらにより好ましくは300分以内に前記レベルに達し、このレベルが得られた後少なくとも30分は1.5を超えた状態が継続する。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、前記タンパク質(P)-リガンド(L)複合体が生じる速度は、以下のように定義され得る。
【数1】
(式中、K
onは結合反応の定数であり、K
offはタンパク質-リガンド複合体の解離定数であり、K
on>1×10
3M
-1s
-1および/またはK
off<1×10
-1s
-1である。)
【0024】
さらに別の実施形態によれば、受容体親和性は、リガンド/受容体結合親和性の測定値であるIC50として測定され、3000nM以下である。
【0025】
さらに、1つの具体的な実施形態によれば、受容体結合親和性は、インビトロで測定して30分の時間内に達成される。
【0026】
さらに、さらなる別の実施形態によれば、1.5を超えるTBRを使用して測定されるヒトまたは動物の体内への投与後、受容体結合は、少なくとも120分間、好ましくは少なくとも300分間続く。
【0027】
別の態様によれば、本発明は、疾患の処置において使用するためのuPAR標的化ペプチドコンジュゲートに関する。
【0028】
さらなる態様によれば、本発明は、疾患の光学的イメージングまたは蛍光イメージング(FLI)に使用するためのuPAR標的化ペプチドコンジュゲートに関する。蛍光イメージングにより、対象を有害な電離放射線にさらすことなく、高い時間分解能および空間分解能でリアルタイムに、非侵襲的なインビボ視覚化、ならびにインビトロ視覚化が可能になる。したがって、蛍光イメージングは、生体および組織の安全で長く繰り返される視覚化に使用され得る。したがって、本発明のuPAR標的化ペプチドコンジュゲートは、1人当たり0.1~1000mgの用量で対象に投与され得る。
【0029】
なおさらなる態様では、本発明は、uPAR標的化ペプチドコンジュゲートを少なくとも1つの薬学的に許容され得る担体または賦形剤と一緒に含む医薬組成物に関する。本発明はまた、疾患の処置に使用するための本発明の医薬組成物に関する。さらに、本発明は、疾患の検出および/または定量に使用するための医薬組成物に関する。さらに、本発明は、疾患の診断に使用するための医薬組成物に関する。本発明はまた、疾患の光学的イメージングまたは蛍光イメージング(FLI)に使用するための医薬組成物に関する。
【0030】
本発明の一実施形態では、疾患は、がんおよび炎症性疾患からなる群から選択され得る。さらに、uPARはGBMおよびいくつかの他のがんで高度に発現される周知のがん標的であるため、本発明により標的となるがんは、他の脳癌(中枢および末梢神経系を含む)、乳癌、頭頸部扁平上皮癌および他の頭頸部癌(例えば、口唇癌、口腔癌、喉頭癌、鼻咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌)、腎細胞癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、胃癌、肝臓癌、甲状腺癌、膀胱癌、食道癌、膵臓癌、腎臓癌、子宮体部癌、子宮頸部癌、黒色腫、卵巣癌、胆嚢癌、多発性骨髄腫、精巣癌、外陰癌、唾液腺癌、中皮腫、陰茎癌、カポジ肉腫、膣癌、神経内分泌腫瘍および神経内分泌癌を含むGBMであり得る。
【0031】
本発明の一実施形態では、がんは、神経膠腫、神経膠芽腫または他の脳腫瘍、膵臓癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、神経内分泌腫瘍、神経内分泌癌、前立腺癌からなる群から選択され得る。
【0032】
本発明の一実施形態では、がんは、神経膠腫、神経膠芽腫、膵臓癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、肺癌および乳癌からなる群から選択される。さらに、本発明の1つの具体的な実施形態では、がんは神経膠腫または神経膠芽腫である。本発明の別の具体的な実施形態において、がんは膵臓癌である。本発明のなおさらなる特定の実施形態では、がんは乳癌である。
【0033】
さらに、がん組織に対する選択性も本発明に関連して興味深い。本発明の1つの具体的な実施形態によれば、受容体標的化コンジュゲートは、がん組織に対して少なくとも60%、好ましくは70%超、より好ましくは80%超、最も好ましくは90%超の選択性を有する。したがって、コンジュゲート生成物は、好ましくは少なくとも60%、または70%、または80%、または90%のがん組織に対する選択性を有することを特徴とする。その特性の一部または全部に起因する。選択性により、外科医がその光強度/コントラストに基づいてがんであると考え除去し、その後実際にがんであることが確認された組織サンプルの相対数が確認される。一例は、外科医ががんであると考える10個の組織サンプルを除去し、そのうちの7個が組織学的にがんであることが確認され、7/10~70%の選択性が示されることである。外科医ががんであると考えて除去した組織サンプルの100%ががんであると証明された場合、選択性は100%である。外科医によって除去された組織サンプルの半分のみががんであり、残りの半分が正常組織である場合、選択性は50%である。
【0034】
本発明の別の実施形態では、炎症性疾患は、関節炎およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される。
【0035】
さらなる態様では、癌腫瘍または転移の輪郭の描写に使用するための医薬組成物が提供される。なおさらなる態様では、蛍光誘導腫瘍切除術または転移切除術に使用するための医薬組成物が提供される。この点において、医薬組成物は、静脈内、局所または局所投与され得る。uPAR標的化ペプチドコンジュゲートの濃度は、投与単位当たり0.1~1000mgである。典型的には、本発明によるuPAR標的化ペプチドコンジュゲートの濃度は、投与単位当たり0.001~1000mg、投与単位当たり0.01~1000mg、投与単位当たり0.1~1000mg、投与単位当たり0.0001~500mg、投与単位当たり0.001~500mg、投与単位当たり0.01~500mg、投与単位当たり0.1~500mg、投与単位当たり0.0001~100mg、投与単位当たり0.001~100mg、投与単位当たり0.01~100mg、または投与単位当たり0.1~100mgの範囲であり得る。
【0036】
さらなる態様では、
(i)フルオロフォアと、受容体結合ペプチドと、前記フルオロフォアを前記受容体結合ペプチドに共有結合させるリンカー基とを含み、前記受容体結合ペプチドがウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)に結合している、uPAR標的化ペプチドコンジュゲートを標的組織に投与する工程、
(ii)前記uPAR標的化ペプチドコンジュゲートが前記標的組織内に蓄積する時間を許容し、腫瘍/標的組織対バックグラウンド比を確立する工程、
(iii)前記フルオロフォアによって吸収可能な波長の近赤外光を前記標的組織に照射する工程、
(iv)前記フルオロフォアによって放出した蛍光を検出し、前記標的組織の光学画像を形成する工程
を含む、光学的イメージング方法が提供される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「組織」という用語は、単離されたインビトロおよびエクスビボの細胞および/または組織ならびにインビボの組織を指す。本発明の一実施形態では、光学的イメージング方法は、(i)uPAR標的化ペプチドコンジュゲートをインビボで標的組織に投与する工程を含む。本発明の別の実施形態では、光学的イメージング方法は、(i)uPAR標的化ペプチドコンジュゲートをインビトロで標的組織に投与する工程を含む。本発明による光学的イメージング方法は、uPAR標的化ペプチドコンジュゲートが標的組織に蓄積して、投与後最大360分、180分、120分、90分、60分、45分、30分、15分、10分または5分である十分に高いTBRを得るための時間を提供する。特定の実施形態では、標的組織におけるuPAR標的化ペプチドコンジュゲートの蓄積時間は、投与後最大60分、好ましくは45分、好ましくは30分、好ましくは15分、好ましくは10分、または好ましくは5分である。さらに、腫瘍/標的組織対バックグラウンド比は少なくとも2である。
【0038】
本発明の方法の一実施形態では、フルオロフォアは、700~800nmの範囲のNIR光吸収を有する。さらに、フルオロフォアは、750~900nmの範囲のNIR発光を有する。したがって、uPAR標的化ペプチドコンジュゲートは、NIRスペクトル内のがんにおいて首尾よく可視化され、輝度および光安定性が改善されている。さらに、本発明のuPAR標的化ペプチドコンジュゲートは、TBR、薬物動態、シグナル強度が改善され、水溶性が増加している。
【0039】
本発明の一実施形態では、光学的イメージング方法はインビボで実施される。光学的イメージング方法は、インビトロでも実施され得る。
【0040】
別の態様では、
(i)本発明のuPAR標的化ペプチドコンジュゲートを標的組織に投与する工程、
(ii)投与後1~120分の範囲内の設定時間で、前記uPAR標的化ペプチドコンジュゲートが前記標的組織に蓄積する時間を許容する工程、
(iii)前記uPAR標的化ペプチドコンジュゲートの前記フルオロフォアによって吸収可能な波長の近赤外光で前記標的組織を照射する工程、
(iv)前記uPAR標的化ペプチドコンジュゲートの前記フルオロフォアによって放出した蛍光を検出する工程、および
(v)前記標的組織の光学画像を形成し、もしくは疾患を定量するか、または光学画像を形成し、かつ疾患を定量する工程
を含む、疾患を検出する方法が提供される。
【0041】
なおさらなる態様では、がんの光学的イメージングのための本発明によるuPAR標的化ペプチドコンジュゲートまたは医薬組成物の使用が提供される。蛍光誘導腫瘍切除術もしくは転移切除術のためのuPAR標的化ペプチドコンジュゲートまたは医薬組成物の使用を提供する本発明の態様も存在する。
【0042】
本発明の一実施形態では、疾患を検出するための方法はインビボで実施される。疾患を検出するための方法は、インビトロでも実施され得る。本発明の一実施形態では、疾患を検出するための方法は、(i)uPAR標的化ペプチドコンジュゲートをインビボで標的組織に投与する工程を含む。本発明の別の実施形態では、疾患を検出するための方法は、(i)uPAR標的化ペプチドコンジュゲートをインビトロで標的組織に投与する工程を含む。
【0043】
さらなる態様は、また、
-単位投与量の本発明の医薬組成物、
-場合により、単位投与量の少なくとも1種の薬理活性物質、
-場合により、単位投与量のアジュバント、
-場合により、単位投与量の少なくとも1種の薬学的に許容され得る担体または賦形剤、
-投与前に単位投与量を互いに分離するための手段、および
-単位投与量を投与するための手段
を含有する、単位投与量のuPAR標的化ペプチドコンジュゲート製剤を調製するための部品のキットに関する。
【0044】
一実施形態では、本発明による部品のキットは、0.0001~1000mgの範囲の医薬組成物の単位投与量を提供する。典型的には、本発明による医薬組成物の単位投与量は代替的に、0.001~1000mg、0.01~1000mg、0.1~1000mg、0.0001~500mg、0.001~500mg、0.01~500mg、0.1~500mg、0.0001~100mg、0.001~100mg、0.01~100mg、または0.1~100mgの範囲であり得る。さらに、単位投与量は、0.1~10.0mLの総体積範囲、好ましくは0.1~5.0mLの範囲、好ましくは0.5~5.0mLの範囲、好ましくは0.5~1.0mLの範囲であり得る。
【0045】
図面および実施例の詳細な説明
個々の特徴は、種々の実施形態に含まれ得るが、これらは、場合により他の形に組み合わされ得、種々の実施形態に含まれることは、複数の特徴の組み合わせが実行可能でないことを含意しない.さらに、単数による言及は、複数を除外するものではない。本発明の文脈において、「a」、「an」という用語は、複数を排除するものではない。
【0046】
「コンジュゲート」という用語は、共有結合によって互いに結合した2つ以上の分子、例えばペプチドおよびリンカーならびにフルオロフォアを意味する。
【0047】
外科的誘導のための最適な蛍光プローブの重要な特徴としては、高感度、高特異性、注射直後(1時間)に達成される高TBR、低用量およびそれにもかかわらず高い蛍光シグナル、高収率での容易な合成が挙げられ、忍容性が高くなければならない(非毒性)。
【0048】
SPR実験
NHS/EDC(N-エチル-N’-[3-ジエチルアミノ)プロピル]カルボジイミド)で予め活性化したCM5チップ上に、100fmol/mm2に相当する>5000共鳴単位(RU)の表面密度を目標として10mM酢酸ナトリウム(pH5.0)に溶解した12.5μg/mlタンパク質を注入することによって、ヒト精製prouPAS356A-の共有結合固定化を達成した。カップリング後、センサーチップを1Mエタノールアミンで不活性化した。分析物としてのヒト精製uPARの結合を、ランニング緩衝液として0.05%(v/v)界面活性剤P20を含む10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA(pH7.4)を流速50μl/分で使用して、20°Cで4nM~0.25nMで測定した。サイクルの間に、センサーチップを、0.5MNaCl中の0.1M酢酸/HCl(pH2.5)を2回連続して10μl注入することによって再生した。問題の化合物の3倍希釈物の阻害を、同一のランニング条件で4nMのuPARについて測定した。全ての実験は、BiacoreT200装置で実施した。
【0049】
結果
固定化されたuPAへのuPAR結合の各阻害ペプチド阻害プロファイルについて、先行する標準曲線が作成されており、全ての計算はその標準曲線に基づく。結果を表1に要約する。
【表1】
【0050】
表1から、元のICG-EE-AE105よりも意外なほど良好な第2世代のuPAR標的化ペプチドが作製されたことが明らかである。ICG誘導体とは対照的に、AE105のIRDye800CW変異体(AE353)は両方とも、wtuPARを高い親和性で標的とし、制限されたuPAR変異体(陰性対照)に対して低い親和性を示す。親水性リンカー領域を拡大することによって、はるかに良好な溶解特性を有する生成物が得られ、そのN末端に大きなレポーター基を繋いだにもかかわらず、親ペプチド(AE105)の元の高親和性は維持されている(IRDye800CW)。
【0051】
生化学および光学特性
本発明は、
図1に示す分子構造を有する、uPAR標的化ペプチドコンジュゲートIRDye800CW-AE344に基づくuPAR標的化蛍光プローブの合成を記述する。uPARに対する結合特性が保存され、天然リガンドウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子の結合に対する競合についてIC
50=20nM±1.1nM(SD)が得られた(
図2)。
【0052】
vis/NIRスペクトル特性は、λ
abs,max=777nmでの発育不全ピーク(
図3)およびλ
excitation,max=784nmでの励起ピークを有するわずかに右にシフトした励起プロファイルを示した。蛍光発光スペクトルは、λ
emission,max=794nmでピーク発光を示し、10nmのストークスシフトをもたらした。光安定性により、1時間の連続レーザー曝露後に84%、2時間後に62%の蛍光強度が保存されることが示された(
図4)。
【0053】
インビボでのがんイメージング特異性
本発明の一実施例では、蛍光プローブIRDye800CW-AE344をインビボでのがんイメージングに供した。可視光では、同所性GBMは無処置の脳を通して可視化されなかったが、NIRイメージングで明確に可視化された(
図5)。さらに、断面化された脳では、腫瘍の範囲が健康な組織と明確に区別されて見え、腫瘍組織と健康な脳組織との区別が可能であった。組織学的評価により、H&E染色、NIR顕微鏡法、およびuPAR染色免疫組織化学(
図6)で腫瘍の程度の共局在化が明らかになり、本発明の光学プローブにより、バイオマーカー/腫瘍が高感度(全ての腫瘍が蛍光性である)かつ高特異的(全ての蛍光シグナルが腫瘍組織である)に正確に標的化されることが実証された。
【0054】
蛍光誘導手術(FGS)の場合、外科医は明確な識別(シグナル強度)および区別(TBR)に頼っている。12nmolの高用量では、同様に6.7の高いTBRが明らかになったが、ピーク時間が15時間遅延し、6nmolで腫瘍MFIが58%減少することの両方の危険にさらされることになったしたがって、理想的なプローブおよび最適な用量は、高強度および高TBRの両方をもたらすはずである。
【0055】
先行技術と比較して、uPAR標的化ペプチドコンジュゲートは、水溶性が改善され、シグナル強度がより高く、TBRが上昇している。したがって、本発明の蛍光プローブは、6nmolの注射の1時間後から12時間後まで4.5を超える高いTBRでGBMを安全に可視化し、これは柔軟をもった使用を可能にし、外科部門での標準的なワークフローに完全に準拠し、例えば手術/麻酔の準備において静脈アクセスが確立されるとすぐに、手術の直前にプローブを注射し得る。手術が開始され、長時間の手術全体にわたってでも持続する場合、有用な時間枠に到達する。最も高いTBRである7.0は、6nmolの注射3時間後に観察され、高い絶対シグナル強度を示した。さらに、蛍光プローブに循環から離れて腫瘍内に局在するまでの時間を与えることを意図した長時間のインキュベーション時間は、非常に非実用的であり、確立された臨床ワークフローに適合せず、患者は手術の数日前に追加の診察を受ける必要がある。また、手術が直前に延期または中止されることも珍しくない。
【0056】
動的イメージング
別の例では、断面での同所性GBMの動的イメージングにより、4つの用量全てで明確に腫瘍が視覚化されることが明らかになった(1、3、6および12 nmol)。6nmolの用量の注射3時間後に最も高いTBR(7.0)が観察された(
図7)。試験した他の用量は、0.5時間、1時間および15時間でそれぞれ4.4(1nmol)、6.6(3nmol)および6.7(12nmol)の最大TBRを示した(
図8)。対応する腫瘍平均蛍光強度(MFI)は、それぞれ1、3、6および12nmol用量(333msの曝露時間)について、それぞれ29、77、82および48(a.u.)であった。したがって、蛍光強度と用量との間の相関が、用量の増加に伴う強度の増加(腫瘍およびバックグラウンドの両方)と共に観察された(
図9)。腫瘍およびバックグラウンドの両者におけるMFIは、注射時に最も高く、経時的に連続的に減少した。興味深いことに、6nmolでは、TBRは最初に1時間での4.7から3時間での7.0に増加し、続いて6時間および12時間でそれぞれ6.1および4.5に減少した。同時に、腫瘍MFIは1時間での108(a.u.)から3時間での82(a.u.)に連続的に減少し、これは24%の減少に相当する(
図10)。同じ時点でのバックグラウンドMFIは24(a.u.)から11に(a.u.)に減少し、これは54%の減少に相当し、したがって、TBRの増加は、1時間~3時間の腫瘍クリアランス率と比較して高いバックグラウンドクリアランス率を示すという結果であった。
【0057】
インビボにおける結合特異性
同所性GBMを有する動物における対照リガンド(IRDye800CW-AE354;非結合性スクランブルペプチド)の競合的遮断および投与は、活性プローブと比較して、シグナル強度は、より低かった(
図11)。活性プローブ、ブロックプローブまたはスクランブルプローブを投与された群の標準化TBR値は、それぞれ1.00(基準値)、0.70(p=0.006)および0.52(p=0.001)であった(
図12)。
【0058】
薬物動態および毒性
1時間で、腎臓は、1,236(a.u.)と最も高いMFIを示し、次いで、肺、皮膚および肝臓が、それぞれ101(a.u.)、99(a.u.)、および88(a.u.)を示した。比較すると、腫瘍は65(a.u.)のシグナルを示し、脳は19(a.u.)のシグナルを示した(
図14)。体内分布は、主に皮膚および腎臓への蓄積を示し、主要臓器への取り込みを標準化すると、皮膚=100(基準)、腎臓=38.8、肺=4.2、心臓=0.4、脾臓=0.4、肝臓=12.2、膵臓=3.4、結腸=4.0、小腸=11.2、心室0.9、脳=0.7、腫瘍=0.1であった。小腸内のシグナルは腸管近位部/腸内容物に限定され、遠位部には中程度のシグナルしか見られなかった(
図13および
図17Aにも示す)。
【0059】
図17では、体内分布および急性毒性が示されている。全てのデータは注射1時間後のデータである。
図13と同様に、
図17Aには、3nmolのIRDye800CW-AE344の蛍光強度および体内分布を表す臓器の画像が示されている(露光時間:333ms)。小腸の矢印は近位端を示す。腎臓は飽和しており、したがって色較正バーでは範囲外である。
図17Bでは、肝臓の組織像(H&E染色)が示されている。さらに、
図17Cでは、腎臓組織が示されている(H&E染色)。肝臓組織は、組織学的には、炎症、線維化、胆汁うっ滞または沈着物を伴わずに小葉の形態で正常であった。腎組織は正常であり、糸球体および尿細管は保護されており、萎縮、炎症または線維化はなかった。
【0060】
蛍光シグナルの定量(データは皮膚を基準として標準化されている)を17Dに示す。
図17Eでは、0時間に標準化されたHPLCでの曲線下面積(AUC)として定量化された血漿安定性が示されている。プローブは、関連する時間枠内で安定であり、標準化された曲線下面積(AUC)値は、マウス血漿中で6時間後および12時間後にそれぞれ無傷のプローブの73%および67%あり、ヒト血漿中で6時間および12時間後にそれぞれ無傷のプローブの61%および43%であった。
【0061】
血漿安定性
1,600ulのヒト血漿およびマウス血漿を、10μlのPBS中の2.4nmolのIRDye800-AE344と共に37℃の暗所で別々にインキュベートした。0、0.5、1、2、3、6、12および24時間で、200μlのサンプルを収集した。200μlのアセトニトリルを添加することによって血漿タンパク質を沈殿させ、サンプルを10,000Gで10分間遠心分離した。上清を分析のために収集した。ヒト血清およびマウス血清の両者からの時間0からの上清を分析して、QTOF Impact HDに連結したRSLC Dionex Ultimate 3000(Thermo)装置でのHPLC-MSでの無傷のIRDye800CW-AE344の保持時間を確認した。カラムは、Aeris widepore 3.6μm C4カラム(150×4.6 mm、Phenomenex)であり、溶媒系は、溶媒A:0.1%ギ酸を含有する水;溶媒B:0.1%ギ酸を含むアセトニトリルであった。方法:0~1分に5%の溶媒Bで、1~18分に5%~50%の溶媒B、流速1mL/分。これにより、14分後に無傷の分子が溶出したことが示された。次いで、この方法、カラムおよび溶媒を、励起波長として774nmを使用し、798nmでの発光を測定する3100-FLD蛍光検出器を有する別のDionex Ultimate 3000(Thermo)に移した。次いで、上記の設定を使用して全てのサンプルについて実行し、14分のピークのAUCを使用して、これを基準としてマウス血漿およびヒト血漿の両者について0時間での分解を計算した。
【0062】
蛍光誘導切除術
術前に、腫瘍はWL(白色光)およびNIRの画像上で可視であった(
図15上段のパネル)。外科医は、全ての腫瘍組織が除去されたとみなされるまでは、WLの支援によってのみ切除を行った。次いで、手術台をFLIによって評価し、NIRシグナルは、WLにおいて同定および除去されなかった残存腫瘍組織が明らかになった(
図15中段のパネル)。NIRによる支援により、外科医はさらなる腫瘍組織を同定し、NIRシグナルが全くまたはほとんど見えなくなるまでそれを切除し、腫瘍が完全に切除されたことを示している(
図15の下段のパネル)。蛍光誘導手術のビデオもオンライン補足資料で利用可能である。
【0063】
上述のことから理解されるように、
図15には、EleVision(商標)IRシステムを用いて実施された蛍光誘導手術(3時間で6nmolのIRDye800CW-AE344)が示されている。上段パネル:画像を手術前に取得した。中断パネル:手術後に白色光で写真を取得し、残存腫瘍組織を明確に可視化した。このシグナルは、上段のパネルと比較してより強く、残りの腫瘍が現在より露出しているという事実に起因する。下段パネル:蛍光誘導手術の最後に画像を取得し、蛍光組織が完全に除去され、腫瘍が完全に切除されたことを示している。
【0064】
インビボにおける結合特異性
AE120(AE105の二量体バージョン)とのIRDye800CW-AE344結合の競合的遮断および同所性GBMにおける不活性非標的化バージョンのIRDye800CW-AE354の投与によれば、活性プローブと比較してシグナル強度が低いことが示された(
図16Aおよび16Bを参照のこと)。
図16Aでは、(左から右へ):3nmolのIRDye800CW-AE344(活性)、3nmolのIRDye800CW-AE344+1.7mgのAE120(AE105の二量体バージョン)(遮断)、および3nmolのIRDye800CW-AE354(結合不活性)の注射1時間後の断面脳のNIR画像が示されている。画像は、真の値を表すスケールバーと同様にコントラストが強調される。
図16Bでは、腫瘍およびバックグラウンドの平均蛍光強度が示されている。
【0065】
活性プローブ、遮断プローブまたは不活性プローブを投与された群に相当する標準化TBR値は、それぞれ6.6、4.6(p=0.012)および3.4(p=0.0025)であった(
図16Cを参照のこと)。
【0066】
実験
生化学、光学特性および結合特異性
IRDye(登録商標)800CWフルオロフォア(LI-COR)を小さなuPAR標的化ペプチドAE105とコンジュゲートさせることによって、腫瘍標的化NIRプローブを開発した。
【0067】
ペプチドは、自動ペプチド合成装置(Biotage(登録商標)Syro Wave)によるFmocSer(t-Bu)TentaGel S PHB0.25mmol/g樹脂を用いたFmoc固相ペプチド合成によって製造した。その後、HATU/HOATカップリングによって、5mgのIRDye(登録商標)800CWをペプチドにコンジュゲートさせた。
【0068】
未精製のプローブをRP-HPLC(フラクションコレクタを備えたDionexUltimate3000システム)での3工程プロセスによって精製した。工程1:分取C18カラム(Phenomenex Gemini、110Å5μm C18粒子、21×100 mm)、溶媒A、水+0.1% TFA、溶媒B:アセトニトリル+0.1% TFA。流速15mL/分での勾配溶出(0~5分:5%;5%~60% 5~32分)。蛍光プローブを含む画分を凍結乾燥した。工程2:分取C4カラム(Phenomenex Jupiter、300Å5μm C18粒子、21×100mm)、溶媒A:水+0.1% TFA、溶媒B:メタノール+0.1% TFA。流速15mL/分での勾配溶出(0~5分:5%;5%~60% 5~32分)。蛍光プローブを含む画分を凍結乾燥した。工程3:分取C18カラム(Phenomenex Gemini、110Å5μm C18粒子、21×100mm)、溶媒A:水+0.1% TFA、溶媒B:アセトニトリル+0.1% TFA。流速15mL/分での勾配溶出(0~5分:5%~30;30%~40% 5~40分)。蛍光プローブを含む画分を凍結乾燥した。生成物を質量分析によって検証し、純度を2段階分析RP-HPLCによって評価した。
【0069】
PTI QuantaMaster 400(株式会社堀場製作所、日本)を用いて、フルオロフォア励起および発光プロファイルを得た。励起源としてキセノンアークランプを用い、λemission=850nmで励起プロファイルを測定し、λexcitation=740nmで発光プロファイルを測定した。吸収は、Cary 300 UV-Vis(Agilent、Santa Clara、米国カリフォルニア州)で測定した。
【0070】
光安定性は、黒色96ウェルプレートに入れた100μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.23~1.8nMのIRDye800-AE344からの4つのサンプルを用いた2倍希釈系列によって評価した。ウェルを、Fluobeamをウェルプレートから23cmの距離で上部に取り付けた暗箱に入れた。画像取得は、0分、10分、15分、20分、0.5時間、1時間、2時間、3時間、6時間、10時間、15時間、24時間で行った。各希釈サンプルを時点0に対して標準化し、4つ全てのサンプルからのデータをプールした。
【0071】
基本的に説明されているように、表面プラズモン共鳴(SPR)を適用し、Biacore 3000装置を使用して、溶液中のuPAR・uPA相互作用に対するIRDye800-AE344のIC50値を測定した。簡単に説明すると;uPARの天然リガンドであるpro-uPAS356A。それを、活性部位S356Aを、それが酵素活性を有しないように変異させて(したがって、S356Aにおいて、活性部位Serを不活性Alaに置換する。)組換え生産し、非常に高い表面密度のpro-uPAを提供するCM5センサーチップ上に固定化した(>5000RU~0.1pmol pro-uPA/mm2を固定化)。これは、低濃度のuPARのみを試験した場合(ここでは0.06nM~2nM)、観察された会合速度(vobs)が溶液中の結合活性uPARの濃度に正比例するように、質量輸送が大幅に制限された反応をもたらす。分析は、IRDye800-AE344の3倍希釈系列(0.076nM~1.5μMの範囲)と共に20℃で300秒間、50μL/分の流速でインキュベートした固定uPAR濃度(2nM)のνobsを測定することによって行った。センサーチップの生物学的完全性を検証するために、最後に1つの反復濃縮点を含む標準曲線を並行して測定した(0.06nM~2nMをカバーするuPARの2倍希釈)。泳動緩衝液は、10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTAおよび0.05%(v/v)界面活性剤P20、pH7.4を含有していた。0.1M酢酸、0.5M NaClを2回注入してセンサーチップを再生した。親の九量体ペプチドアンタゴニストAE105(Asp-Cha-Phe-D-Ser-D-Arg-Tyr-Leu-Trp-Ser-OH)を陽性対照として並行して分析し、閉鎖型のuPARH47C-N259Cを、そのuPA結合空洞がAE105を収容できないので陰性対照として使用した。
【0072】
細胞株および培養。
U-87 MG-luc2細胞(Caliper,Hopkinton,MA,USA)を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを添加したGlutaMAX中、湿潤5%CO2空気中37℃で培養した。80~90%の細胞密集度に達したら、細胞を継代または回収した。
【0073】
動物モデル
動物における全ての実験手順は、The Animal Experiments Inspectorate,Denmarkによる承認に従って実施した。7~10週齢の雌ヌードマウス(株:Rj:NMRI-Foxn1nu/nu、JANVIER LABS、フランス)に、U-87 MG-luc2細胞を同所移植した。任意の外科的処置の前に、0.01ml/g体重の溶液の皮下注射によって、1:1:2の比率のHypnorm(0.315mg/mlのフェンタニル、10mg/mlのフルアニソン)+ミダゾラム(5mg/ml)+滅菌水で動物を麻酔した。
【0074】
同所性GBM腫瘍モデルは、自動マイクロインジェクションポンプUMP3(WPI,Sarasota,FL,USA)を用いた定位固定フレーム(KOPFINSTRUMENTS,Tujunga,米国カリフォルニア州)を使用して、右半球(2mmの深さでブレグマの1.5mm外側および0.5mm後方)で10μLの氷冷PBS中に500.000個の細胞を接種することによって確立された。細胞に5分間かけて注射し、シリンジを所定の位置にさらに3分間維持した後、取り除いた。その後、腫瘍の成長を、軸方向および冠状のT2強調配列を有するBioSpec7T(Bruker,米国マサチューセッツ州ビルリカ)を用いてMRIでモニタリングした。腫瘍サイズが2~17mm3に達したら、動物を蛍光イメージングプロトコルに含めた。
【0075】
蛍光イメージング
全ての画像取得は、(Fluosoftバージョン:2.2.1)(Fluoptics,フランス、グルノーブル)を用いた蛍光ビームシステムを用いて行った。インビボでの生体内分布および腫瘍イメージング特性を特徴付けるために、IRDye800-AE344を、4つの異なる用量:1nmol、3nmol、6nmolおよび12nmolで全てのGBM保有マウス(n=35)に尾静脈注射によって投与した。各時点について2匹のマウスを屠殺し、脳を取り出し、イメージングのために腫瘍を横断切片を作製した。予備試験により、高用量ではバックグラウンドのクリアランスが遅く、時間枠が延長されることが明らかになった。したがって、画像取得は、注入後の以下の時点で行った:
・1nmol:0.5時間、1時間および2時間
・3nmol:1時間、2時間、3時間および5時間
・6nmol:1時間、3時間、6時間および12時間
・12nmol:1時間、3時間、5時間、10時間、15時間および24時間
uPARに対する標的特異性を、2つの異なる方法:活性ペプチドと同様のペプチド長を有するuPAR標的化ペプチドAE120((DChaFsrYLWSG)2-βAK)、およびスクランブルペプチドAE354にコンジュゲートしたIRDye800(IRDye800CW-Glu-Glu-NH-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CO-NH-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CO-Asp-Cha-Glu-(D)Ser-(D)Arg-Tyr-Leu-Glu-Ser-OH)による競合的ブロッキングによって評価した。3nmolのIRDye800CW-AE344の静脈内注射の15~30分前に、1.4~2.8mgのAE120の競合的ブロッキング用量を腹腔内注射し、1時間で画像化した(n=5)。スクランブルペプチドを3nmolで投与し、1時間後に動物を画像化した(n=4)。
【0076】
生体内分布を、3nmolのIRDye800-AE344を投与された動物(n=2)において評価し、器官切開および画像化(露光時間:333ms)のために1時間後に安楽死させた。腎排泄のために、腎臓における蛍光シグナルは、他の全ての器官と比較してスケールアウトしていた。したがって、40msという低い露光時間で画像を取得し、その後、シグナル強度を他の器官に匹敵するように外挿した。皮膚を部分的に画像化し(1.25g)、生体内分布を皮膚の全重量(4.9g)に対して外挿した。
【0077】
画像処理および解析
画像をImageJ1.52a(NIH,米国)で分析し、処理した。Fluopticsシステムによって生成された生画像に対してシグナル測定を行った。腫瘍シグナルは、腫瘍全体の平均蛍光強度として測定し、バックグラウンドシグナルは、対側半球に腫瘍がない代表的な領域の平均として測定した。示された画像は、コントラスト強調(飽和画素:0.3%)を用いてImageJでコントラスト強調される。
【0078】
病理学的評価
病理学的評価を使用して、蛍光シグナルとがん細胞(sens+spec)の共局在化を評価した。蛍光イメージングからの断面化された脳標本を、H&EおよびIHC染色のためにパラフィン包埋し、または蛍光顕微鏡法のためにクライオスタット切片化した。エタノール中に懸濁した後、4%ホルマリン中で24時間固定し、その後パラフィン包埋することによって、パラフィン包埋を行った。包埋した組織を軸方向に厚さxxμmの切片に切断し、染色した。IHC染色を、Finsen Laboratory,Rigshospitalet(コペンハーゲン、デンマーク)によって製造された社内抗体、ポリ-ウサギ-抗-ヒト-uPARを用いて行い、H&E染色を一般的な標準的手順によって行った。染色したスライドをZEISS Axio Scan.Z1スライドスキャナ(Carl Zeiss、オーバーコッヘン、ドイツ)で画像化した。
【0079】
クライオスタット切片化は、Tissue-Tek O.C.T.中の検体をドライアイス上で固定することによって行った。固定した組織を軸方向にスライスし、即時蛍光イメージングのためにスライド上に載せた。
【0080】
肝臓および腎臓:組織をホルマリン固定し、パラフィン包埋した。厚さ2~4μmの切片を切断し、腎臓および肝臓の両者について、H&E、修正シリウス、PASおよびMassonトリクローム、腎臓について銀を含む追加のPAS、肝臓についてジアスターゼ、鉄、レティキュリンアーティサンおよび酸化オルセインを含むPASを含む日常的な染色パネルを適用した。肝臓を免疫組織化学的に染色し、Dako/Agilent製のCK7抗体、GA619(クローンOV-TL12/30)を製造者の説明書に従って使用して、厚さ3μmの切片に対する免疫組織化学的評価を行った。染色は、EnVisionFlex+検出キット(GV800)を利用してAgilentのOmnisで行った。Antibody Diluent(Dako DM830)により一次抗体を希釈し、20分間インキュベートした。切片をヘマトキシリンで対比染色した。
【0081】
ペプチド合成のための材料および手順
材料
IRDye800-Glu-Glu-O2Oc-O2Oc-Asp-Cha-Phe-D-ser-D-arg-Tyr-Leu-Trp-Ser-OH他の全ての材料は、商業的供給業者から入手した。Fmoc Ser(t-Bu)TentaGel S PHB 0.25mmol/gはRapp Polymere GmbH製であった。全てのアミノ酸は、FmocNα-アミノ保護され、側鎖保護基を担持していた:tert-ブチル(Ser、Asp、GluおよびTyr)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc、Trp用)、2,2,4,6,7ペンタメチル-ジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf、Arg用)。Fmoc-O2Oc-OH Fmoc-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]酢酸N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)(ジメチルアミノ)メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HBTU)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ピペリジン、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)は、Iris Biotech GmbH製であったが、メタノール、アセトニトリル、ギ酸、トリエチルシラン(TES)、ジクロロメタン(DCM)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート、N-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)は、Sigma-Aldrichから入手した。IRDye(登録商標)800CWカルボキシレートはLI-CORから入手した。
【0082】
ペプチド合成
ペプチドは、自動ペプチド合成装置:Biotage(登録商標)Syro WaveでのFmoc固相ペプチド合成によって製造した。0.1mmolのスケールを使用して、FmocSer(t-Bu)TentaGelSPHB0.25mmol/g樹脂で合成を行った。
【0083】
NαFmoc脱保護は、樹脂をピペリジン/DMF(2:3)溶液で3分間処理し、続いてピペリジン/DMF(1:4)溶液で15分間処理することによって、室温(RT)で2段階で行った。次いで、樹脂をNMP(3回)、DCM(1回)、次いでNMP(2回)で洗浄した。全てのアミノ酸のカップリングには、NMP中で4当量のアミノ酸およびO2Ocスペーサー、4当量のHOAt、3.9当量のHBTU、および7.4当量のDIEAを使用した。カップリング時間は室温で60分であった。全てのカップリングを繰り返して最大の組み込みを確実にし、2回目のカップリング後に樹脂をNMPで洗浄した(4回)。
【0084】
全てのアミノ酸およびO2Ocスペーサーが結合し、最後のFmoc基が除去されると、試験開裂が実施され、これは、LC-MSクロマトグラムから計算される純度が80%を超えていることを示した。合成したペプチドにフルオロフォアを結合させるために、5mgのIRDye(登録商標)800CWカルボキシレートを1mlのDMFに溶解した。これに、2mgのHATU、1mgのHOATおよび1.7μlのDIEAを添加した。溶液を5分間振盪し、次いで、合成ペプチドを含む100mgの樹脂に移し、暗所で12時間反応させた。最終反応後、樹脂をDMF(5回)およびDCM(6回)で洗浄した。次いで、95% TFA;5%の水を用い、2時間の反応時間により、樹脂からペプチドを切断した。TFAを窒素流で除去した。次いで、ペプチドを冷ジエチルエーテル中で沈殿させた。
【0085】
精製
未精製のペプチドをRP-HPLC(フラクションコレクタを備えたDionex Ultimate 3000システム)での3工程プロセスによって精製した。最初に、以下の溶媒系:溶媒A、0.1%のTFAを含有する水;溶媒B、0.1%のTFAを含有するアセトニトリルを使用して、分取C18カラム(Phenomenex Gemini、110Å 5μm C18粒子、21×100mm)でペプチドを精製した。勾配溶出(0~5分:5%;5%~60% 5~32分)を15mL/分の流量で適用した。蛍光ペプチドを含む画分を凍結乾燥した。それらを、工程2で以下の条件(溶媒系:溶媒A、0.1%のTFAを含有する水;溶媒B,0.1%のTFAを含有するメタノールを使用して、分取C4カラム(Phenomenex jupiter、300Å 5μm C18粒子、21×100mm))を使用して精製した。勾配溶出(0~5分:5%;5%~60% 5~32分)を15mL/分の流量で適用した。蛍光ペプチドを含む画分を凍結乾燥した。次いで、精製の最後の工程を、以下の溶媒系:溶媒A、0.1%のTFAを含有する水;溶媒、0.1%のTFAを含有するアセトニトリルを使用して、分取C18カラム(Phenomenex Gemini、110Å 5μm C18粒子、21×100 mm)で実施した。勾配溶出(0~5分:5%~30;30%~40% 5~40分)を15mL/分の流量で適用した。
【0086】
分析
ペプチド純度は、QTOF Impact HDに連結されたRSLC Dionex Ultimate 3000(Thermo)装置でUHPLC-MSに対して実施された2つの異なる分析方法を使用して確認した。第一の方法では、0.5 mL/分の流速を有するAeris 3.6μmワイドポアC4カラム(50×2.1mm、Phenomenex)を以下の溶媒系:溶媒A、0.1%のギ酸を含有する水;溶媒B、0.1%のギ酸を含有するメタノールで使用した。5%~75%の溶媒Bから直線勾配を用いてカラムを溶出した。
【0087】
第二の方法は、0.5mL/分の流速を有するkinetex2.6μmEVO 100Å C18カラム(50×2.1mm、Phenomenex)を含んでいた。以下の溶媒系を使用した:溶媒A、0.1%のギ酸を含有する水;溶媒B、0.1%のギ酸を含有するアセトニトリル。5%~100%の溶媒Bからの直線勾配を用いてカラムを溶出した。合成により、2mgの98%純粋なペプチドを得た。化学式:C129H173N18O41S4。推定質量2758.0888;実測値:[M+2H]2+1380.0523;[M+3H]3+920.3723;[M+4H]4+690.5289
【0088】
考察
外科的誘導に十分に適した最適な蛍光プローブの重要な特徴は、1)高い感度および特異性、2)数時間以内に達成される高いTBR、3)高い蛍光シグナルを得るために必要な用量が低いこと、および4)好ましい安全性プロファイルである。本研究において、本発明者らは、6nmolの用量を注射後1~12時間の間に4.5を超えるTBRでインビボにおいてGBMを効果的に可視化する新しいペプチドをベースとする蛍光プローブの合成に成功した。これは、柔軟な使用を可能にし、手術の直前、例えば手術の準備または麻酔の導入時にプローブを注入し得る外科部門における標準的なワークフローに準拠する。有用な時間枠は、手術が開始されるときに開始し、長い処置全体にわたって持続する。したがって、小さなペプチドベースのプローブの使用は、臨床的な術中イメージングに特に適用可能であると思われる。したがって、本発明者らは、ヒト同所性GBM異種移植片の蛍光誘導切除術が、6nmolのIRDye800CW-AE344の投与の3時間後という早期にマウスにおいて実施され得ることを示した。
【0089】
対照的に、抗体ベースのプローブは、分子サイズが大きいために、血液中を長時間(数日間)循環し、高いバックグラウンドシグナルが数日間持続するために初期時点で高いTBRを損なう。注射後数日待つだけで、十分に高いTBRを得ることができる。約24時間と報告された血中半減期を有する抗体ベースの蛍光プローブであるIRDye800CW-セツキシマブは、GBMを有するヒトで試験されており、手術の3日前に注入する必要があった(28,29)。本発明者らの観点では、これは非現実的であり得、確立された臨床ワークフローに適合せず、患者は手術の数日前に追加の診察を受けるために来院する必要がある。また、手術が直前に延期または中止されることも珍しくなく、このような場合、抗体ベースのプローブは既に注入されており、したがって無駄になってしまう。注射された抗体は、一般に、副作用、特に免疫関連有害事象のよく知られているリスクを伴う。したがって、蛍光誘導手術のための抗体ベースのプローブの使用は、それらの適用性を制限する臨床的観点から非常に不便であるようであり、最も明白なアプローチではない可能性がある。サイズを小さくすると同時に、抗体の高い結合親和性特性を維持して薬物動態プロファイルを改善するために、様々な戦略が追求されてきた。これにより、結合親和性が高く、循環時間がある程度短縮された、種々のより小さな抗体断片、例えばナノボディおよびアフィボディが得られた。
【0090】
本発明による新しいプローブは、ヒトにおいても耐容性が良好で安全であると予想される。これは、その構成要素が安全上の問題なく以前よりヒトに使用されているという事実に基づいている。第一に、本発明の結合部分は、GBM患者における進行中の第II相試験(NCT02945826)を含む複数のがん型(14,34)(NCT03278275、NCT02755675、NCT03307460、NCT02960724、NCT02805608、NCT02964988、NCT02681640、NCT02965001)においてuPAR標的化PETプローブ(68Ga-NOTA-AE105)として以前より試験が行われている。全体で、400名を超える患者がこれまでに調査されており、有害事象または毒性は観察されておらず、的確な毒性も的外れな毒性も観察されず、好ましい安全性プロファイルを示唆している。第2に、IRDye800CWは、大規模で安全であることが証明されている従来のフルオロフォアICGほど広範囲ではないが、ヒトにおいて安全であることが試験されている新規なフルオロフォアである。しかしながら、IRDye800CWは、輝度が増加し、退色が少なく、迅速な腎クリアランスを伴う優れた光学特性および薬物動態特性を有する。現在、IRDye800CW標識プローブを用いて、少なくとも10の臨床試験が行われている。これらの研究のほとんどは、IRDye800CW標識抗体を用いたものであり、標識小ペプチドを用いた研究は1つのみであった。重度の有害事象に関する報告はなく、報告された軽度の副作用は抗体反応に類似している可能性が最も高い。したがって、これらを基に、uPAR標的化ペプチドおよびIRDye800CWの安全性プロファイルに基づいて、別々に、組み合わせた2つの化合物の安全性プロファイルもヒト使用にとって安全であると合理的に仮定し得る。これの裏付けとして、本発明者らによる腎臓および肝臓の病理学的評価では、これらの器官、特にプローブが蓄積して除去される腎臓において毒性が示されないことを示す病理学的所見は示されなかった。さらに、IRDye800CWは、ICGと同様のスペクトル特性を有し、ICG用に設計された既存の撮像装置との互換性が可能になり、これは移転および臨床実施を成功させるための鍵である。