(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】アセナピンを調製する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 491/044 20060101AFI20241108BHJP
C07D 207/08 20060101ALI20241108BHJP
A61P 25/18 20060101ALN20241108BHJP
A61K 31/407 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
C07D491/044 CSP
C07D207/08
A61P25/18
A61K31/407
(21)【出願番号】P 2022508803
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(86)【国際出願番号】 CN2020108452
(87)【国際公開番号】W WO2021027813
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】201910744003.9
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517403101
【氏名又は名称】チョーチアン オウスン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツェン,チーグオ
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/061247(WO,A1)
【文献】特表2010-503611(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104974168(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107759609(CN,A)
【文献】国際公開第2012/038975(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0107357(KR,A)
【文献】IN2015CH06331A,2017年11月24日
【文献】Organic Letters ,2018年,20 (11),3310-3313,Supporting Information S2
【文献】Polymorphism: In the Pharmaceutical Industry,John Wiley & Sons, Inc.,2006年,P1-19,ISBN: 3-527-31146-7
【文献】"新医薬品の規格及び試験方法の設定について",医薬審発第568号,2001年05月01日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
のアセナピンを調製する方法であって、下記工程
(a-1)中間体IIを塩基性条件下で分子内求核置換反応に供して環状エーテル中間体IIIを得る工程
【化2】
(式中、XはF、Cl、Br又はIであり、塩基はアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、金属水素化物、有機金属化合物又は非求核性有機強塩基である)、
(a-2)中間体IIIのニトロ基を還元して中間体IVを得る工程、
【化3】
(a-3)中間体IVをジアゾ化脱アミノ化反応に供し、次いで再結晶によって精製して式Iの純生成物アセナピンを得る工程
【化4】
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記工程(a-1)において、使用される塩基が、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、FrOH、Li
2CO
3、Na
2CO
3、K
2CO
3、Rb
2CO
3、Cs
2CO
3、LiHCO
3、NaHCO
3、KHCO
3、NaH、KH、CaH
2、ブチルリチウム、塩化メチルマグネシウム、塩化tert-ブチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム、臭化ブチルマグネシウム、LDA、LiHMDS又はNaHMDSから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の式Iのアセナピンを調製する方法。
【請求項3】
前記工程(a-1)において、反応において使用される溶媒
が、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、スルホラン、N-メチルピロリドン、DMF、DMSO、グリコールジメチルエーテル、ジグリコールジメチルエーテル又はそれらの2以上の混合物から選択される
非プロトン性溶媒であることを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載の式Iのアセナピンを調製する方法。
【請求項4】
前記工程(a-3)において、ジアゾ化脱アミノ化反応に使用される還元剤が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、次亜リン酸、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム又は亜硝酸塩であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の式Iのアセナピンを調製する方法。
【請求項5】
前記工程(a-3)において、再結晶による精製において使用される溶媒が、C
5-9アルカ
ン、芳香族炭化水素溶
媒、エステル溶
媒、ケトン溶
媒、エーテル溶
媒、アルコール溶
媒、水、又は上記溶媒の2以上の混合
物から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iのアセナピンを調製する方法。
【請求項6】
前記工程(a-3)において、再結晶による精製において使用される溶媒が、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸tert-ブチル、アセトン、ブタノン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、水、又は上記溶媒の2以上の混合物から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の式Iのアセナピンを調製する方法。
【請求項7】
前記工程(a-3)において、再結晶による精製において使用される溶媒が、n-ヘプタン又はそれと他の溶媒との混合物であることを特徴とする、請求項6に記載の式Iのアセナピンを調製する方法。
【請求項8】
式Iのアセナピンを調製する方法であって、
中間体IVをジアゾ化脱アミノ化反応に供し、次いで再結晶によって精製して式Iの純生成物アセナピンを得る下記工程
【化5】
を含む方法。
【請求項9】
前記工程において、ジアゾ化脱アミノ化反応に使用される還元剤が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、次亜リン酸、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム又は亜硝酸塩であることを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
式II
【化6】
(式中、XはF、Cl、Br又はIである)の化合物。
【請求項11】
式IIの化合物を調製する方法であって、下記工程
【化7】
(式中、XはF、Cl、Br又はIである)、
工程(b-1):化合物(V)に硫酸及びハロゲン化水素酸を作用させ、その構造中の水酸基をハロゲン原子と置換し、次いで、非プロトン性有機溶媒中でルイス酸の触媒作用下で亜リン酸トリエチルと反応させて中間体VIを得る工程、
工程(b-2):中間体VIを5-クロロサリチルアルデヒドVIIとホーナー・ワズワース・エモンズ反応によって反応させて中間体VIIIを得る工程、
工程(b-3):中間体VIIIを塩基性条件下で無水酢酸でアセチル化して中間体IXを得る工程、並びに
工程(b-4):中間体IXをトリフルオロ酢酸の触媒作用下でN-(アルコキシメチル)-N-メチル-(トリメチルシリル)メチルアミン(X)と反応させ、ヒュスゲン環化付加反応を行って中間体IIを得る工程であって、RはC
1-6アルキルである、工程
を含む方法。
【請求項12】
工程(b-1)において、使用されるハロゲン化水素酸が、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸又はヨウ化水素酸を含み、ルイス酸が、FeCl
2、FeCl
3、FeBr
3、ZnCl
2、ZnBr
2又はInBr
2であり、及び/又は非プロトン性有機溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼ
ン、又はそれらの2以上の混合物から選択されることを特徴とする、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
工程(b-2)において、使用される塩基が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、カリウムtert-ブトキシド又はナトリウムtert-ブトキシドから選択されることを特徴とする、請求項
11及び
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(b-4)における式Xの化合物において、RがC
1-4アルキ
ルであることを特徴とする、請求項
11~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程(b-4)における式Xの化合物において、Rがメチル又はn-ブチルであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式IIの化合物を調製する方法であって、下記工程
【化8】
(式中、XはF、Cl、Br又はIである)
工程(c-1):化合物(V)に硫酸及びハロゲン化水素酸を作用させ、その構造中の水酸基をハロゲン原子と置換し、次いで非プロトン性有機溶媒中でトリフェニルホスフィンと反応させて中間体XIを得る工程、
工程(c-2):中間体XIをウィッティヒ反応によって塩基性条件下で5-クロロサリチルアルデヒドVIIと反応させて中間体VIIIを得る工程、
工程(b-3):中間体VIIIを塩基性条件下で無水酢酸でアセチル化して中間体IXを得る工程、並びに
工程(b-4):中間体IXをトリフルオロ酢酸の触媒作用下でN-(アルコキシメチル)-N-メチル-(トリメチルシリル)メチルアミン
(X)と反応させ、ヒュスゲン環化付加反応を行って中間体IIを得る工程であって、RはC
1-6アルキ
ルである、工程
を含む方法。
【請求項17】
工程(b-4)における式Xの化合物において、Rがメチル又はn-ブチルであることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程(c-1)において、使用されるハロゲン化水素酸が、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸又はヨウ化水素酸から選択され、及び/又は使用される非プロトン性有機溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はそれらの2以上の混合物から選択されることを特徴とする、請求項
16及び17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
工程(c-2)において、使用される塩基が
、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド
、カリウムtert-ブトキシド
、トリエチルアミン、ピリジン、p-ジメチルアミノピリジン
又はジイソプロピルエチルアミンから選択されることを特徴とする、請求項
16~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機化合物の合成の分野に関する。特に、本発明は、抗精神病薬アセナピン、つまり、化合物トランス-5-クロロ-2-メチル-2,3,3a,12b-テトラヒドロ-1H-ジベンゾ[2,3:6,7]-オキセピノ[4,5-c]ピロール及びその新規な結晶形を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセナピンは、化合物トランス-5-クロロ-2-メチル-2,3,3a,12b-テトラヒドロ-1H-ジベンゾ[2,3:6,7]-オキセピノ[4,5-c]ピロールを指す。そのマレイン酸塩は、成人の統合失調症、躁病又は混合I型双極性障害の緊急治療に使用することができる。アセナピンの作用機構は、ドーパミンD2及びセロトニン2Aの拮抗作用に関係し得る。それは、躁病、又は統合失調症及びI型双極性障害の混合性エピソードの治療のために使用されることが適切であり、良好な抗精神病作用を有する。抗精神病薬は、現在、コレステロール降下剤後の5番目に大きな治療カテゴリーになっており、世界市場において162億米国ドルの市場規模で販売されている。中国では、抗精神病薬市場は、40%を超える年平均成長率を維持しており、抗統合失調症薬の市場占有率は約30%であり、それは9.8%の年平均成長率で成長している。従って、工業生産に適するアセナピンの新規な調製方法を研究、開発することが必要である。
【0003】
今まで、多くの文献及び特許が、アセナピンの合成を報告している。最初に、US4145434及び文献(Vader, J.; Kaspersen, F.; Sperling, E.; Schlachter, I.; Terpstra, A.;Hilberink, P.; Wagenaars, G. J. Labelled Compd. Radiopharm. 1994, 34, 845-869)は、アセナピンを調製する方法をそれぞれ報告している。その合成経路は以下のとおりである。
【0004】
【0005】
この合成経路の主な問題は、得られたアセナピンがシス異性体とトランス異性体との混合物であり、異性体の分離操作は非常に複雑であり、収率は低く、従って、この方法を工業生産において使用するのが困難であるということである。
【0006】
2008年の文献(Org. Process Res. Dev., 2008, 12 (2), 196-201)は、上記合成法の改良を報告した。その方法は以下のとおりである。
【0007】
【0008】
この方法の特徴は、強塩基を使用してラクタム環を加水分解し開環し、異性化反応が同時に起こり、次いで、閉環して所望のトランスラクタム中間体を得、最後に水素化アルミニウムリチウムによってアセナピンに還元するということである。この改良は、生成物の分離及び精製での問題を解決し、全収率を向上させる。しかし、この合成経路は長く、下記方法によって出発物質2-(5-クロロ-2-フェノキシ)フェニル酢酸を合成しなければならない。更に、上記方法は、環境に有害な試薬及び危険な試薬、例えば、水素化アルミニウムリチウムなどを使用する多段反応を含み、従って工業生産につながらない。
【0009】
【0010】
その後、2008年のUS2008009619は、原料としてo-ブロモベンジルブロミドを使用して亜リン酸トリエチルと反応させてホスホン酸ベンジルを得、次いでホーナー・ワズワース・エモンズ(Horner-Wadsworth-Emmons)反応させてサリチルアルデヒドと反応させてトランステトラヒドロピロール中間体を得、最後に分子内ウルマン(Ullmann)反応によって所望の化合物を得ることを報告した。
【0011】
【0012】
この方法は短い合成経路を有し、単一異性体が得られるが、ホスホン酸ベンジルを調製するにはo-ブロモベンジルブロミドを使用することが必要であり、それは高度に刺激性の原料であり、長時間の高温反応を必要とする。更に、最終工程でのウルマン反応は収率が低く、炭酸セシウム、ハロゲン化第一銅及びN,N-ジメチルグリシンが存在する状態で長時間の高温反応を必要とし、従って、それは環境汚染の問題だけでなく高い生産コストをもたらす。
【0013】
上記合成方法に類似して、アセナピンの新規な合成経路が2011年にCN102229613で報告された。
【0014】
【0015】
この方法では、2-ブロモ-β-ニトロ-スチレン及び2-メトキシ-5-クロロフェニル酢酸メチルエステルが出発物質として使用され、シス異性体とトランス異性体との混合物が、縮合、還元、環化及びメチル化によって得られ、次いで脱エーテル化、分子内ウルマン環化及び還元に供して所望の生成物アセナピンを得る。この合成方法は、シス異性体とトランス異性体との混合物の異性化によって単一トランス化合物を得、操作を単純化し、収率を向上させることができる。しかし、この方法は、-60℃より下の温度で制御する必要のあるn-ブチルリチウムを使用し、ラクタム還元には、引火性及び爆発性のLiAlH4が必要であり、工業生産においてその反応が制限される。
【0016】
近年、CN104974168は、2015年に、アセナピンの調製方法及びアセナピンの調製用中間体を報告した。この方法は、出発物質として2-クロロ-5-ニトロベンズアルデヒド及びo-メトキシフェニルアセトニトリルを使用し、それらは縮合、付加及び環化反応に供されて単一トランス異性体を得、次いで、所望の生成物アセナピンを置換、還元、脱エーテル化、環化及びジアゾ化によって得る。しかし、この合成方法では、毒性の強いシアニド並びに引火性及び爆発性試薬LiAlH4を使用する必要がある。工業生産において危険がある。
【0017】
【0018】
要約すると、現在報告されているアセナピンの合成方法は、操作が複雑である、環境汚染が深刻である、使用する試薬が引火性及び爆発性である、並びに合成経路が長いという欠点が一般にある。従って、工業化に適しているアセナピンの単純で効率的な合成方法を更に研究することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】US4145434
【文献】US2008009619
【文献】CN102229613
【文献】CN104974168
【非特許文献】
【0020】
【文献】J. Labelled Compd. Radiopharm. 1994, 34, 845-869
【文献】Org. Process Res. Dev., 2008, 12 (2), 196-201
【発明の概要】
【0021】
上記経路の欠点を克服するために、本発明は、アセナピンの新規な合成方法を提供する。本方法は、操作が簡便で、生成物収率が高く、中間体及び目標生成物の純度が良好であるという利点を有し、それは工業生産が容易である。
【0022】
明細書全体を通じて、下記用語は以下に示すような意味を有する。
【0023】
「C5-9アルカン」は、5~9個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルカン、例えばペンタン、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘキサン又はn-ヘプタンを表す。
【0024】
「C1-6アルキル」及び「C1-4アルキル」は、それぞれ1~6個又は1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルを表す。
【0025】
「ハロ」又は「ハロゲン」はフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0026】
「ヒュスゲン(Huisgen)環化付加反応」は、1,3-双極子とアルケン、アルキン又は対応する誘導体との間で起こる付加環化反応であり、生成物は五員複素環式化合物である。アルケン化合物は反応における親双極子と呼ばれている。ドイツの化学者ロルフ ヒュスゲン(Rolf Huisgen)は、この種の反応を大いに使用して五員複素環式化合物を調製した最初の人であり、従って、ヒュスゲン反応としても知られている。
【0027】
「ジアゾ化脱アミノ化反応」は、アミノ基のジアゾ化を、ジアゾ基を水素原子で置換する反応と組み合わせてジアゾ化脱アミノ化反応と呼ばれるアミノ基を除去する方法として使用されることを意味する。すなわち、アミノ基をジアゾ化に供してジアゾ化合物を得、次いで還元剤と反応させてジアゾ基が水素原子で置換された脱アミノ化合物を得る。
【0028】
本発明の目的は、アセナピンを調製する新規な方法を提供することであり、アセナピン遊離塩基の新規な結晶形が得られる。
【0029】
第1の態様では、本発明は、式I
【0030】
【化7】
のアセナピンを調製する方法であって、下記工程
(a-1)中間体IIを塩基性条件下で分子内求核置換反応に供して環状エーテル中間体IIIを得る工程
【0031】
【化8】
(式中、XはF、Cl、Br又はIであり、塩基はアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、金属水素化物、有機金属化合物又は非求核性有機強塩基である)、
(a-2)中間体IIIのニトロ基を還元して中間体IVを得る工程、
【0032】
【化9】
(a-3)中間体IVをジアゾ化脱アミノ化反応に供し、次いで再結晶によって精製して式Iの純生成物アセナピンを得る工程
【0033】
【0034】
前記工程(a-1)において、中間体IIを、非プロトン性溶媒中で、塩基性及び穏やかな条件下で他のベンゼン環上のフェノール性水酸基と反応させて分子内求核置換反応を行って環状エーテル中間体IIIを得る。
【0035】
この工程において使用される塩基は、アルカリ金属水酸化物LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、FrOH、アルカリ金属炭酸塩Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Rb2CO3、Cs2CO3、アルカリ金属炭酸水素塩NaHCO3、KHCO3、有機金属化合物ブチルリチウム、塩化メチルマグネシウム、塩化tert-ブチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム、臭化ブチルマグネシウム、金属水素化物NaH、KH、CaH2、及び非求核性有機強塩基LDA、LiHMDS又はNaHMDSから選択される。
【0036】
反応における溶媒は非プロトン性溶媒であり、例えば、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、スルホラン、N-メチルピロリドン、DMF、DMSO、グリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はそれらの2以上の混合物から選択される。
【0037】
反応温度は0~100℃、好ましくは20~70℃である。
【0038】
反応が完了した後、混合物を室温に冷却し、そこに飲料水を添加して生成物を析出させ、濾過し、真空下で恒量に乾燥して環状エーテル中間体IIIを得る。
【0039】
前記工程(a-2)において、中間体IIIのニトロ基を接触水素化によって還元して中間体IVを得る。
【0040】
この工程において使用される溶媒は、C1-4アルコール溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、若しくは水、又はそれらの2以上の混合物である。
【0041】
反応温度は30~70℃である。
【0042】
中間体IIIのニトロ基を反応において接触水素化によってアミノに還元し、ここで、使用される還元剤は、Pd/C、Ni、鉄、亜鉛又は硫化ナトリウムから選択されることができる。
【0043】
前記工程(a-3)において、中間体IVをジアゾ化脱アミノ化反応に供し、次いで再結晶によって精製して式Iの純生成物アセナピンを得る。
【0044】
中間体IVをジアゾ化脱アミノ化反応の還元剤に溶解し、そこにジアゾ化試薬をワンポット反応で-5~30℃で滴下する。pH値を塩基で中性に調整し、次いで固体が析出し、濾過して粗生成物を得、次いで再結晶化させて結晶形のアセナピンを得る。
【0045】
この反応において使用されるジアゾ化試薬は、亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウム又は亜硝酸カリウムである。
【0046】
この反応においてジアゾ化脱アミノ化反応に使用される還元剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、次亜リン酸、水素化ホウ素(水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムを含む)又は亜硝酸塩から選択されることができる。
【0047】
亜硝酸塩は、亜硝酸メチル、亜硝酸エチル、亜硝酸tert-ブチル、亜硝酸n-ペンチル又は亜硝酸イソアミルから選択される。
【0048】
この工程において使用される塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、水性メチルアミン又はトリエチルアミンから選択されることができる。
【0049】
再結晶による精製において使用される溶媒は、C5-9アルカン(例えば、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘキサン若しくはn-ヘプタン又はそれらの2以上の混合物)、芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はそれらの2以上の混合物)、エステル溶媒(例えば、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸tert-ブチル又はそれらの2以上の混合物)、ケトン溶媒(例えば、アセトン、ブタノン又はそれらの混合物)、エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルtertブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン又はそれらの2以上の混合物)、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール又はそれらの2以上の混合物)、水、又は上記溶媒の2以上の混合物、好ましくはn-ヘプタン又はそれと他の溶媒との混合物から選択される。
【0050】
第2の態様において、式Iのアセナピンを調製する方法であって、下記工程
【0051】
【化11】
を含み、中間体IVをジアゾ化脱アミノ化反応に供し、次いで再結晶によって精製して式Iの純生成物アセナピンを得る、方法。
【0052】
中間体IVをジアゾ化脱アミノ化反応において使用される還元剤に溶解し、そこにジアゾ化試薬をワンポット反応で-5~30℃で滴下する。pH値を塩基で中性に調整し、次いで固体が析出し、濾過して粗生成物を得、次いで再結晶化させて結晶形のアセナピンを得る。
【0053】
この反応において使用されるジアゾ化試薬は、亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウム又は亜硝酸カリウムである。
【0054】
この反応においてジアゾ化脱アミノ化反応に使用される還元剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、次亜リン酸、水素化ホウ素(水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムを含む)又は亜硝酸塩から選択されることができる。
【0055】
亜硝酸塩は、亜硝酸メチル、亜硝酸エチル、亜硝酸tert-ブチル、亜硝酸n-ペンチル又は亜硝酸イソアミルから選択される。
【0056】
第3の態様において、本発明は、式Iのアセナピンの結晶及び結晶を調製する方法を提供する。
【0057】
本発明は、粉末X線回析分析をCuKα線の実験条件下で実行する場合、2θ角度で表される特徴的な回折位置が9.0±0.2°、11.2±0.2°、18.0±0.2°、22.1±0.2°、22.4±0.2°、22.6±0.2°であることを特徴とする式Iのアセナピンの結晶形を提供する。
【0058】
更に具体的には、式Iのアセナピンの結晶のPXRDパターンにおいて、2θ角度で表される特徴的な回折位置は9.0±0.2°、10.9±0.2°、11.2±0.2°、18.0±0.2°、19.4±0.2°、19.7±0.2°、21.5±0.2、22.1±0.2°、22.4±0.2°、22.6±0.2°、25.3±0.2°である。
【0059】
式Iのアセナピンの結晶のPXRDパターンを
図1に示し、そのIRパターンを
図2に示し、そのDSCパターンを
図3に示す。
【0060】
本発明の調製方法及び精製方法を使用して式Iのアセナピンの結晶形を得、これは、粉末X線回析分析をCuKα線の実験条件下で実行する場合、回折位置2θ角度(°)又はd値(Å)、及び回折ピークの相対強度を表すピーク高さ(高さ%)又はピーク面積値(面積%)を下記のように示すことを特徴とする。
【0061】
【0062】
式Iを有するアセナピンの結晶形を調製する方法は、再結晶溶媒にアセナピンの粗生成物を溶解すること、室温で撹拌しながら結晶化させること、濾過すること、及び真空下で乾燥して前記結晶形の形態のアセナピン遊離塩基を得ることを含む。
【0063】
再結晶による精製において使用される溶媒は、C1-9アルカン(例えば、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘキサン若しくはn-ヘプタン又はそれらの2以上の混合物)、芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はそれらの2以上の混合物)、エステル溶媒(例えば、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸tert-ブチル又はそれらの2以上の混合物)、ケトン溶媒(例えば、アセトン、ブタノン又はそれらの混合物)、エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン又はそれらの2以上の混合物)、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール又はそれらの2以上の混合物)、水、又は上記溶媒の2以上の混合物、好ましくはn-ヘプタン又はそれと他の溶媒との混合物から選択される。
【0064】
1つの実施形態において、式Iを有するアセナピンの結晶形を調製する方法は、再結晶溶媒、例えばヘキサン、n-ヘキサン若しくはn-ヘプタン、又はそれらとトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはメチルテトラヒドロフランとの混合物を、粗製アセナピンに添加し、それを加熱、撹拌することによって溶解した後、冷却することによって固体を析出させ、濾過によって回収し、真空乾燥して式Iの結晶化合物を得ることを含む。
【0065】
溶解するための温度は30~70℃、好ましくは35~50℃である。
【0066】
結晶を析出させるための温度は15~25℃である。15~25℃の温度を1.0~1.5時間維持して結晶を析出させた後、温度を5~10℃/時の速度で-20~0℃に、好ましくは-20~-10℃に低下させる。混合物を1.0~1.5時間撹拌しながらその温度で維持した後、混合物を濾過し、適当量のヘキサン、n-ヘキサン又はn-ヘプタンで洗浄する。得られた生成物を濾過し、30~60℃で真空乾燥して式Iの結晶化合物を得る。
【0067】
他の実施形態では、式Iを有するアセナピンの結晶形を調製する方法は、再結晶溶媒、例えばアセトン、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールを粗製アセナピンに添加し、それを加熱、撹拌することによって溶解した後、冷却することによって固体を析出させ、又はアセトン、メタノール、エタノール、プロパノール若しくはイソプロパノールと水の混合物を、粗製アセナピンに添加し、それを加熱、撹拌することによって溶解した後、冷却することによって固体を析出させ、得られた固体を濾過によって回収し、真空乾燥して式Iの結晶化合物を得ることを含む。
【0068】
溶解するための温度は30~70℃、好ましくは35~50℃である。
【0069】
結晶を析出させるための温度は20~25℃である。20~25℃の温度を1.0~1.5時間維持して結晶を析出させた後、温度を5~10℃/時の速度で-5~15℃に、好ましくは-5~5℃に低下させる。混合物を1.0~1.5時間撹拌しながらその温度で維持した後、混合物を濾過し、適当量の再結晶溶媒で洗浄する。得られた生成物を濾過し、30~60℃で真空乾燥して式Iの結晶化合物を得る。
【0070】
式Iのアセナピンの結晶を調製する方法は、更に、アセナピン酸性塩を水又は有機溶媒で溶解し、対応する当量の塩基で中和することを含むことができる。得られた溶液を非プロトン性溶媒で抽出し、濃縮乾固し、次いで、結晶を上記再結晶方法によって調製する。
【0071】
溶解するために使用される有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N-メチルピロリドン、DMF、DMSO、アセトニトリル、テトラヒドロフラン又はメチルテトラヒドロフランから選択されることができる。
【0072】
アセナピン酸性塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩又は酒石酸塩から選択されてもよい。
【0073】
塩基は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド又はカリウムtert-ブトキシドから選択されることができる。
【0074】
非プロトン性有機溶媒は、ヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル又はそれらの2以上の混合物から選択されることができる。
【0075】
得られた式Iのアセナピンは、酸と塩を形成して薬学的に許容される塩類を調製することもできる。これは、アセナピンと塩酸とを反応して塩を形成して塩酸アセナピンを調製する、又はアセナピンとマレイン酸とを反応して塩を形成してマレイン酸アセナピンを調製することを含む。
【0076】
第4の態様では、本発明は、下記のような構造を有する式II
【0077】
【化12】
(式中、XはF、Cl、Br又はIである)の化合物を提供する。
【0078】
具体的には、式IIの化合物は、下記4つの化合物を含む。
【0079】
【0080】
更に、本発明は、下記工程を含む、式IIの化合物を調製する方法を提供する。
【0081】
【0082】
前記工程(b-1)において、2-ハロ-5-ニトロベンゼンメタノール(V)に硫酸及びハロゲン化水素酸を作用させ、その構造中の水酸基をハロゲン原子と置換し、次いで、非プロトン性有機溶媒中でルイス酸の触媒作用下で亜リン酸トリエチルと反応させて中間体VIを得る。
【0083】
この工程において使用されるハロゲン化水素酸は、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸又はヨウ化水素酸を含む。ルイス酸は、FeCl2、FeCl3、FeBr3、ZnCl2、ZnBr2又はInBr2である。
【0084】
非プロトン性有機溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等、又はそれらの2以上の混合物から選択されることができる。
【0085】
具体的には、化合物V(2-ハロ-5-ニトロ-ベンジルアルコール)、ハロゲン化水素酸及び硫酸を1.0:1.2~3.0:0.2~1.0当量の重量比で混合した後、20~55℃に加熱する。反応混合物を5~14時間撹拌しながらその温度で維持し、次いで非プロトン性溶媒で抽出し、飲料水及び弱塩基で洗浄し、乾燥剤で乾燥して水を除去して中間体溶液を得る。次いで、触媒ルイス酸及び亜リン酸トリエチルを添加し、反応溶液を30~50℃に加熱し、6~12時間撹拌する。反応が完了した後、混合物をわずかに冷却し、飲料水で洗浄し、液体を異なる層に分割する。有機層を減圧下で濃縮乾固して式VIの化合物を得、それを精製なしで次の反応工程において直接使用する。
【0086】
化合物V、ハロゲン酸及び硫酸の重量比は、化合物V:ハロゲン酸:硫酸=1.0:1.5~2.0:0.5~0.8であることが好ましい。反応時間は8~12時間であることが好ましい。
【0087】
上述した弱塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムの1つ以上から選択される。乾燥剤は無水硫酸マグネシウム又は無水硫酸ナトリウムである。
【0088】
前記工程(b-2)において、中間体VIをホーナー・ワズワース・エモンズ反応によって5-クロロサリチルアルデヒドVIIと反応させて中間体VIIIを得る。
【0089】
この工程における中間体VIと5-クロロサリチルアルデヒドとのモル比は、中間体VI:5-クロロサリチルアルデヒド=1.0:1.2である。
【0090】
使用される塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド又はそれらの2以上の混合物から選択されることができる。
【0091】
反応溶媒は非プロトン性溶媒であり、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル又はそれらの2以上の混合物から選択されてもよい。
【0092】
反応温度は-5~25℃、好ましくは-5~10℃である。
【0093】
前記工程(b-3)において、中間体VIIIを塩基性条件下で無水酢酸でアセチル化して中間体IXを得る。
【0094】
この工程における中間体VIIIと無水酢酸とのモル比は、中間体VIII:無水酢酸=1.0:1.8、好ましくは1.2:1.5である。
【0095】
使用される塩基は、有機塩基、例えばジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルエチルアミン、ピリジン若しくはp-ジメチルアミノピリジン、又は無機塩基、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム若しくは水素化カリウムから選択されてもよい。
【0096】
反応溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル又はそれらの2以上の混合物から選択されることができる。
【0097】
反応温度は5~55℃である。
【0098】
後処理に、水、メタノール、エタノール又はイソプロパノールを添加して化合物IXを析出させることができる。
【0099】
前記工程(b-4)において、中間体IXを周囲温度でトリフルオロ酢酸の触媒作用下で非プロトン性溶媒中でN-(アルコキシメチル)-N-メチル-(トリメチルシリル)メチルアミンと反応させてヒュスゲン環化付加反応を行い、次いで塩基性条件下で脱保護して中間体IIを得る。
【0100】
式Xの化合物において、RはC1-6アルキルであってもよく、Rは好ましくは-CH3及び-Bu-nである。
【0101】
この工程における中間体IXと式Xの化合物とのモル比は、中間体IX:化合物X=1.0:1.5、好ましくは1.1:1.3である。
【0102】
この工程における反応溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル又は前記溶媒の2以上の混合物から選択されることができる。
【0103】
脱アセチル化において使用される溶媒はC1-4アルコール溶媒であり、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール又はブタノールから選択される。使用される塩基はアルカリ金属水溶液であり、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液から選択されてもよい。
【0104】
第5の態様において、本発明は、式II
【0105】
【化15】
(式中、XはF、Cl、Br又はIである)の化合物を調製する他の方法を提供する。
【0106】
前記工程(c-1)において、化合物(V)に硫酸及びハロゲン化水素酸を作用させ、その構造中の水酸基をハロゲン原子と置換し、次いで非プロトン性有機溶媒中でトリフェニルホスフィンと反応させて中間体XIを得る。
【0107】
この工程において使用されるハロゲン化水素酸は、様々な濃度のフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸又はヨウ化水素酸を含む。
【0108】
使用される非プロトン性有機溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はそれらの2以上の混合物から選択されることができる。
【0109】
具体的には、化合物V(2-ハロ-5-ニトロ-ベンジルアルコール)、ハロゲン化水素酸及び硫酸を1.0:1.0~3.0:0.2~1.0当量の重量比で混合した後、20~85℃に加熱する。反応混合物を5~14時間撹拌しながらその温度で維持し、次いで非プロトン性溶媒で抽出し、飲料水及び弱塩基で洗浄し、乾燥剤で乾燥して水を除去して中間体溶液を得る。次いで、亜リン酸トリエチルを添加し、反応溶液を30~70℃に加熱し、6~12時間撹拌する。反応が完了した後、混合物を室温に冷却し、濾過して式XIの化合物を得る。
【0110】
化合物Vと、ハロゲン酸と、硫酸との重量比は、化合物V:ハロゲン酸:硫酸=1.0:1.2~1.5:0.2~0.5であることが好ましい。反応時間は8~12時間であることが好ましい。
【0111】
上述した弱塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムの1つ以上から選択される。乾燥剤は、無水硫酸マグネシウム又は無水硫酸ナトリウムである。
【0112】
前記工程(c-2)において、中間体XIをウィッティヒ(Wittig)反応によって塩基性条件下で5-クロロサリチルアルデヒドVIIと反応させて中間体VIIIを得る。
【0113】
この工程において使用される塩基は、無機塩基、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド若しくはカリウムtert-ブトキシド、又は有機塩基、例えばトリエチルアミン、ピリジン、p-ジメチルアミノピリジン若しくはジイソプロピルエチルアミンから選択されてもよい。
【0114】
この工程において、中間体XIと5-クロロサリチルアルデヒドとのモル比は1:1.05~1.5、好ましくは1:1.05~1.3である。
【0115】
反応温度は20~80℃、好ましくは40~70℃である。
【0116】
反応溶媒は非プロトン性有機溶媒であり、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はそれらの2以上の混合物から選択されてもよい。
【0117】
前記工程(b-3)において、中間体VIIIを塩基性条件下で無水酢酸でアセチル化して中間体IXを得る。
【0118】
この工程における中間体VIIIと無水酢酸とのモル比は、中間体VIII:無水酢酸=1.0:1.8、好ましくは1.2:1.5である。
【0119】
使用される塩基は、有機塩基、例えばジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルエチルアミン、ピリジン若しくはp-ジメチルアミノピリジン、又は無機塩基、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム若しくは水素化カリウムから選択されてもよい。
【0120】
反応において使用される溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル及びメチルtert-ブチルエーテルの1つ又は2以上から選択される。
【0121】
反応温度は5~55℃である。
【0122】
後処理に、水、メタノール、エタノール又はイソプロパノールを添加して化合物IXを析出させることができる。
【0123】
前記工程(b-4)において、中間体IXを周囲温度でトリフルオロ酢酸の触媒作用下で非プロトン性溶媒中でN-(アルコキシメチル)-N-メチル-(トリメチルシリル)メチルアミンと反応させてヒュスゲン環化付加反応を行い、次いで塩基性条件下で脱保護して中間体IIを得る。
【0124】
式Xの化合物において、RはC1-6アルキルであってもよく、Rは好ましくは-CH3及び-Bu-nである。
【0125】
この工程における中間体IXと式Xの化合物とのモル比は、中間体IX:化合物X=1.0:1.5、好ましくは1.1:1.3である。
【0126】
この工程における反応溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル又は前記溶媒の2以上の混合物から選択されることができる。
【0127】
脱アセチル化において使用される溶媒はC1-4アルコール溶媒であり、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール又はブタノールから選択される。使用される塩基はアルカリ金属水溶液であり、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液から選択されてもよい。
【0128】
本発明の鍵となる点は、ルイス酸の触媒作用を使用して、2-ハロ-5-ニトロベンジルハライドを穏やかな反応条件下で亜リン酸トリエチルと反応させて中間体IVを得、それによって、先行技術(US2008009619)に記載された、ホスホネートを調製するための2-ブロモ-ベンジルブロミドでの高温長時間の反応の使用を回避することを含む。中間体IIのテトラヒドロピロール-ベンゼン環上のハロゲン原子のパラ位のニトロ基の強い求電子効果によって、分子内求核置換反応が、塩基性で穏やかな条件下でハロゲン原子と他のベンゼン環上のフェノール性水酸基との間で起こり、ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5-c]ピロール環を生成し、従って、先行技術(US2008009619)におけるアセナピンのジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5-c]ピロール環の構造が長時間高温の分子内ウルマン反応を必要とする欠点を克服する。更に、アセナピンの精製方法を改善し、アセナピン遊離塩基の新規な結晶形を得る。結晶化方法及び得られた結晶は、後処理操作を単純化し、精製効率を向上し、コストを低減することができ、従って大規模な工業生産に非常に有利である。
【0129】
本発明によるアセナピンを調製する方法は、先行技術と比較して、先行技術(US4145434、Org. Process Res. Dev., 2008, 12(2), 196-201、CN102229613、CN104974168)において使用された危険で、引火性及び爆発性の還元剤LiAlH4の使用を回避し、異性体の分離及び精製の過程を回避し、それによって手順を単純化する。更に、本発明の方法は、高温長時間の反応操作(US2008009619)を必要とせず、危険で、毒性の強い試薬ブチルリチウム及びヨウ化メチル(CN102229613)の使用を回避し、ヨウ化メチル、三臭化ホウ素及びヒドラジン水和物(CN104974168)を使用しない。本発明は、穏やかな反応条件、簡易な操作、より少ない環境汚染、低コストなどを含む長所を有し、従って工業生産により適している。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【
図1】本発明のアセナピン結晶の粉末X線回折(PXRD)パターンである。
【
図2】本発明のアセナピン結晶のIRパターンである。
【
図3】本発明のアセナピン結晶のDSCパターンである。
【実施例】
【0131】
本発明の方法を以下の実施例により更に説明する。本発明をよりよく理解するのに役立つために以下の実施例を提供し、本発明の範囲を限定することを決して意図されていないことが理解されるべきである。
【0132】
[実施例1]
【0133】
【0134】
工程(b-1):化合物VIの合成
200mlの反応フラスコに、化合物V35.2g及び48%臭化水素酸水溶液63.3gを添加し、次いで、硫酸18.4gを室温で滴下した。混合物を50℃に加温し、この温度で10時間維持し、室温に冷却し、次いで、ジクロロメタン100mlを添加した。有機層を、水50ml及び炭酸ナトリウム水溶液50mlで洗浄し、硫酸ナトリウム10gを添加することによって乾燥し、濾過した。有機層に、亜リン酸トリエチル63.1g及び無水臭化亜鉛8.6gを一度に添加した。反応混合物を40℃に加熱し、10時間撹拌し、わずかに冷却し、次いで水100mlを添加し、これを洗浄した。水層を廃棄し、有機層を回収し、溶媒を減圧下で蒸発して化合物VI(54.8g、95.0%)を得た。
【0135】
工程(b-2):化合物VIIIの合成
窒素保護下で、化合物VI54.0gをテトラヒドロフラン500mlに溶解し、そこに5-クロロサリチルアルデヒド30.1gを添加した。混合物を0℃に冷却し、カリウムtert-ブトキシド39.2gを0℃で温度を維持しながら少量ずつ添加した。反応が完了した後、水300ml及びトルエン300mlを添加した。有機層を、炭酸ナトリウム溶液及び飽和塩化ナトリウム溶液200mlで洗浄した。有機層を50℃で減圧下で蒸発乾固して化合物VIII(52.9g、97.2%)を得た。
【0136】
工程(b-3):化合物IXの合成
窒素保護下で、化合物VIII52.0g、ピリジン17.1g、トルエン200mlを添加し、そこに無水酢酸21.7gを室温で滴下した。反応を一晩維持した。混合物を50℃に加温し、そこに水41ml及びエタノール13mlを添加し、温度を30分間維持した。混合物を室温に冷却し、濾過して生成物IX(58.2g、98.5%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 8.48 (d, 1H), 8.07-8.10 (dd, 1H), 8.67-8.68 (d, 1H), 7.57-7.60 (d, 1H), 7.44-7.48 (d, 1H), 7.31-7.34 (dd, 1H), 7.14-7.18 (d, 1H), 7.08-7.10 (d, 1H), 2.41 (s, 3H).
【0137】
工程(b-4):化合物IIの合成
化合物IX58.0gを反応フラスコ中でトルエン500mlに溶解し、そこにトリフルオロ酢酸0.5gを添加した。N-(メトキシメチル)-N-メチル-(トリメチルシリル)メチルアミン32.7gを1時間以内に滴下し、混合物を周囲温度で3時間維持した。有機層を真空濃縮して油を得た。油をメタノール400mlに溶解し、水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム10.5gを水90mlに溶解した)を添加した。1時間後、pHを3N塩酸で8~9に調整した。混合物を30分間撹拌し、濾過した。得られた生成物を真空下で10時間乾燥して化合物II(56.0g、92.6%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 12.39 (s, -OH), 8.26 (s, 1H), 8.04-8.06 (d, 1H), 7.52-7.54 (d, 1H), 7.05-7.06 (d, 1H), 6.81-6.83 (d, 1H), 6.76 (s, 1H), 4.13 (s, 1H), 3.67-3.70 (t, 1H), 3.31 (s, 1H), 3.24-3.26(d, 1H), 2.95-2.98(t, 1H), 2.57(s, 3H), 2.37-2.41(t, 1H).
13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ (ppm): 154.75, 147.05, 142.12, 141.12, 131.30, 131.13, 129.44, 128.45, 123.34, 123.02, 122.79, 119.43, 63.23, 61.66, 51.42, 48.24, 39.95.
【0138】
工程(a-1):化合物IIIの合成
窒素保護下で、化合物II50.0g及びテトラヒドロフラン250mlを反応フラスコに添加した。混合物を撹拌し、次いで、炭酸カリウム22.6gを添加した。混合物を50~60℃に加温し、温度を3時間維持した。混合物を周囲温度に冷却し、次いで、水750mlを滴下した。混合物を30分間撹拌し、濾過した。生成物を真空下で乾燥して化合物III(43.1g、95.6%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 8.07-8.10 (dd, 1H), 7.98-7.99 (d, 1H), 7.26-7.29 (d, 1H), 7.18-7.21 (m, 1H), 7.13-7.15 (d, 2H), 3.66-3.73 (m, 1H), 3.52-3.60 (m, 1H), 3.30-3.35 (m, 1H), 3.13-3.23 (m, 3H), 2.57 (s, 3H).
13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ (ppm): 159.71, 153.14, 143.59, 133.89, 132.45, 130.12, 127.88, 126.27, 123.58, 122.39, 121.91, 59.66, 58.35, 45.74, 44.39, 42.97.
MS (ESI): m/z = 330.08, [M + H]+= 331.08.
【0139】
工程(a-2):化合物IVの合成
化合物III42.0gをメタノール500mlに溶解し、そこに活性ニッケル湿潤生成物4.0gを添加した。空気を真空で置換し、60℃に加熱し、水素を導入して6~8時間反応させる。混合物を濾過してニッケルを除去し、反応溶液を真空濃縮して油を得た。油をメタノール250mlに溶解し、水250mlを攪拌しながら添加し、混合物を30分間撹拌し、濾過した。生成物を真空下で乾燥して化合物IV(36.4g、95.4%)を得た。
【0140】
工程(a-3):化合物I(アセナピン)の合成
化合物IV36.0gを次亜リン酸117gに溶解し、10~20℃に冷却し、そこに亜硝酸ナトリウムの30%水溶液31.2gを滴下し、3~4時間後に滴下を完了した。滴下の完了後、温度を10~20℃で保持し、混合物を6~8時間撹拌した。アンモニア溶液78.0gを30℃より下の温度を維持しながら滴下した。水層のpHを8~9に調整し、そこにn-ヘプタン156mlを添加した。有機層を水78mlで洗浄した。次いで、有機層を50℃で減圧下で蒸発乾固して粗生成物を得た。
【0141】
粗生成物に、n-ヘプタン110ml及びトルエン8.0mlを添加した。40~50℃に加熱し、撹拌して粗生成物を溶解した後、溶液を5~10℃/時の速度で冷却して結晶化させた。溶液を20~25℃に冷却し、1.0~1.5時間撹拌して結晶を析出させた。大量の固体が析出した後、溶液を-5~0℃に冷却し、温度を維持しながら1.0時間撹拌した。溶液を濾過し、結晶アセナピンを回収し、40~45℃で真空下で乾燥して結晶形の化合物(30.6g、89.5%、HPLC純度>99%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 7.14-7.20 (m, 2H), 7.11 (s, 2H), 7.05-7.09 (m, 3H), 3.58-3.68 (m, 2H), 3.18-3.25 (m, 2H), 3.08-3.16 (m, 2H), 2.55 (s, 3H).
13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ (ppm): 155.22, 151.14, 134.01, 131.88, 128.91, 127.64, 127.33, 126.79, 126.71, 124.15, 122.35, 120.90, 59.12, 59.00, 44.83, 44.72, 43.25.
MS (ESI): m/z = 285.09, [M + H]+= 286.10.
【0142】
[実施例2]
【0143】
【0144】
化合物IV73.0gを次亜リン酸220gに溶解し、0~15℃に冷却し、そこに亜硝酸ナトリウムの30%水溶液64.0gを滴下し、滴下を2~3時間後に完了した。滴下の完了後、温度を10~20℃で保持し、混合物を5~9時間撹拌した。アンモニア溶液160gを30℃より下の温度を維持しながら滴下した。水層のpHを8~9に調整し、そこにn-ヘキサン300mlを添加した。有機層を水160mlで洗浄した。次いで、有機層を45~50℃で減圧下で蒸発乾固して粗生成物を得た。
【0145】
粗生成物に、n-ヘプタン230ml及びトルエン17mlを添加した。40~50℃に加熱し、撹拌して粗生成物を溶解した後、溶液を5~10℃/時の速度で冷却して結晶化させた。溶液を20~25℃に冷却し、1.0~1.5時間撹拌して結晶を析出させた。大量の固体が析出した後、溶液を-5~0℃に冷却し、温度を維持しながら1.0時間撹拌した。溶液を濾過し、結晶アセナピンを回収し、40~45℃で真空下で乾燥して結晶形の化合物(63.3g、91.2%、HPLC純度>99%)を得た。
【0146】
[実施例3]
【0147】
【0148】
工程(c-1):化合物XIの合成
250mlの反応フラスコ中に、化合物V50.0g及び48%臭化水素酸水溶液75.0gを添加し、そこに硫酸14.0gを室温で添加した。反応混合物を60℃に加温し、温度を13時間維持した。反応混合物を室温に冷却し、そこにトルエン100mlを添加した。有機層を水35.0gで洗浄し、2.5%炭酸ナトリウム水溶液28.0gで洗浄した。溶液を放置し、層を分離した。トリフェニルホスフィン65.2gを有機層に添加した。得られた混合物を60℃で10時間撹拌し、次いで周囲温度に冷却し、濾過して化合物XI(118.8g、95.2%)を得た。
【0149】
工程(c-2):化合物VIIIの合成
窒素下で、化合物XI102.4gをテトラヒドロフラン1000mlに溶解し、5-クロロサリチルアルデヒド37.4gを添加した。ピリジン15.8gを滴下した。反応を完了した後、水600ml及びヘキサン600mlを添加した。有機層を炭酸ナトリウム溶液400mlで、次いで飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を50℃で減圧下で蒸発乾固し、化合物VIII(62.8g、92.6%)をカラムクロマトグラフィーによって分離した。
【0150】
工程(b-3):化合物IXの合成
窒素保護下で、化合物VIII60.0g、トリエチルアミン21.5g、テトラヒドロフラン230mlを添加し、そこに無水酢酸33.4gを15~30℃で滴下した。反応を一晩保持した。反応混合物を45℃に加熱し、そこに水46ml及びエタノール15mlを添加した。温度を30分間維持した。混合物を室温に冷却し、濾過して生成物IX(66.8g、98.0%)を得た。
【0151】
工程(b-4):化合物IIの合成
化合物IX65.0gを、反応フラスコ中のテトラヒドロフラン540mlに添加、溶解し、そこにトリフルオロ酢酸1.0gを添加した。N-(メトキシメチル)-N-メチル-(トリメチルシリル)メチルアミン37.0gを1時間以内に滴下した。反応混合物を周囲温度で3時間保持した。有機層を真空濃縮して油を得た。油をエタノール435mlに溶解した。水酸化カリウムの水溶液(水酸化カリウム13.7gを水117mlに溶解した)を添加した。1時間後、pHを3N塩酸で8~9に調整した。混合物を30分間撹拌し、濾過した。生成物を11時間真空下で乾燥して化合物II(62.4g、92.0%)を得た。
【0152】
[実施例4]
式Iを有するアセナピンの結晶の調製方法I
アセナピン粗生成物60.0gに、n-ヘプタン180ml及びトルエン15mlを添加した。35~45℃に加熱し、撹拌して粗生成物を溶解した後、溶液を5~10℃/時の速度で冷却して結晶化させた。溶液を15~25℃に冷却し、温度を維持しながら1.0時間撹拌した。続いて、溶液を-20~-10℃に冷却し、温度を維持しながら1.0時間撹拌した。溶液を濾過し、結晶アセナピンを回収し、35~45℃で真空下で乾燥して結晶形の式Iのアセナピン(55.2g、92.0%、HPLC純度>99%)を得た。
【0153】
[実施例5]
式Iを有するアセナピンの結晶の調製方法II
エタノール300gを粗製アセナピン95.0gに添加した。混合物を40~50℃まで加温して粗生成物を溶解した。次いで、温度を30~40℃で制御した。精製水45gを滴下した。溶液を20~25℃に冷却し、温度を1.0~1.5時間維持して結晶を析出させた。次いで、溶液を0~5℃にゆっくり冷却し、温度を維持しながら1時間撹拌した。溶液を濾過した。得られた固体を適当量のエタノール水溶液ですすぎ、濾過して乾燥し、湿潤生成物を得た。生成物を50~60℃で真空下で乾燥して結晶形の式Iのアセナピン(91.4g、96.2%、HPLC純度>99%)を得た。
【0154】
[実施例6]
式Iを有するアセナピンの結晶の調製方法III
室温で、ヘキサン400gを3.0%水酸化ナトリウム水溶液に添加し、次いで、マレイン酸アセナピン84.0gを少量ずつ添加した。混合物を攪拌して溶解した後、層を分離した。水層をヘキサン150gで抽出した。有機層を合わせ、水150gで2回洗浄した。有機層を減圧下で濃縮乾固した。ヘキサン200g及び酢酸エチル20gを反応系に添加した。混合物を45~55℃に加温し、撹拌して溶解した。溶液を15~25℃に冷却し、温度を1.5時間維持して結晶を析出させた。次いで、溶液を-15~-10℃に冷却し、濾過した。生成物を回収し、35~45℃で真空で乾燥して結晶形の式Iのアセナピン(69.3g、93.1%、HPLC純度>99%)を得た。
以下は、本発明の実施形態の一つである。
(1)式I
【化19】
のアセナピンを調製する方法であって、下記工程
(a-1)中間体IIを塩基性条件下で分子内求核置換反応に供して環状エーテル中間体IIIを得る工程
【化20】
(式中、XはF、Cl、Br又はIであり、塩基はアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、金属水素化物、有機金属化合物又は非求核性有機強塩基である)、
(a-2)中間体IIIのニトロ基を還元して中間体IVを得る工程、
【化21】
(a-3)中間体IVをジアゾ化脱アミノ化反応に供し、次いで再結晶によって精製して式Iの純生成物アセナピンを得る工程
【化22】
を含むことを特徴とする方法。
(2)前記工程(a-1)において、使用される塩基が、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、FrOH、Li
2
CO
3
、Na
2
CO
3
、K
2
CO
3
、Rb
2
CO
3
、Cs
2
CO
3
、LiHCO
3
、NaHCO
3
、KHCO
3
、NaH、KH、CaH
2
、ブチルリチウム、塩化メチルマグネシウム、塩化tert-ブチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム、臭化ブチルマグネシウム、LDA、LiHMDS又はNaHMDSから選択されることを特徴とする、(1)に記載の式Iのアセナピンを調製する方法。
(3)前記工程(a-1)において、反応において使用される溶媒が非プロトン性溶媒であり、例えば、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、スルホラン、N-メチルピロリドン、DMF、DMSO、グリコールジメチルエーテル、ジグリコールジメチルエーテル又はそれらの2以上の混合物から選択されることを特徴とする、(1)及び(2)のいずれかに記載の式Iのアセナピンを調製する方法。
(4)前記工程(a-3)において、ジアゾ化脱アミノ化反応に使用される還元剤が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、次亜リン酸、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム又は亜硝酸塩であることを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載の式Iのアセナピンを調製する方法。
(5)前記工程(a-3)において、再結晶による精製において使用される溶媒が、C
5-9
アルカン(例えば、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘキサン若しくはn-ヘプタン又はそれらの2以上の混合物)、芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はそれらの2以上の混合物)、エステル溶媒(例えば、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸tert-ブチル又はそれらの2以上の混合物)、ケトン溶媒(例えば、アセトン、ブタノン又はそれらの混合物)、エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン又はそれらの2以上の混合物)、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール又はそれらの2以上の混合物)、水、又は上記溶媒の2以上の混合物、好ましくはn-ヘプタン又はそれと他の溶媒との混合物から選択されることを特徴とする、(1)~(4)のいずれかに記載の式Iのアセナピンを調製する方法。
(6)式Iのアセナピンを調製する方法であって、
中間体IVをジアゾ化脱アミノ化反応に供し、次いで再結晶によって精製して式Iの純生成物アセナピンを得る下記工程
【化23】
を含む方法。
(7)前記工程において、ジアゾ化脱アミノ化反応に使用される還元剤が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、次亜リン酸、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム又は亜硝酸塩であることを特徴とする、(6)に記載の方法。
(8)式I
【化24】
のアセナピンの結晶であって、
粉末X線回析分析をCuKα線の実験条件下で実行する場合、9.0±0.2°、11.2±0.2°、18.0±0.2°、22.1±0.2°、22.4±0.2°、22.6±0.2°の2θ角度で表される位置に回折信号ピークを有することを特徴とする結晶。
(9)粉末X線回析分析をCuKα線の実験条件下で実行する場合、9.0±0.2°、10.9±0.2°、11.2±0.2°、18.0±0.2°、19.4±0.2°、19.7±0.2°、21.5±0.2、22.1±0.2°、22.4±0.2°、22.6±0.2°、25.3±0.2°の2θ角度で表される位置に回折信号ピークを有することを特徴とする、(8)に記載の式Iのアセナピンの結晶。
(10)式Iを有するアセナピンの結晶形を調製する方法であって、
(5)に記載の再結晶溶媒にアセナピンの粗生成物を溶解すること、
温度を低下させ、溶液を攪拌して結晶を析出させること、及び
真空下で乾燥して式Iの結晶化合物を得ること
を含む方法。
(11)ヘキサン、n-ヘキサン若しくはn-ヘプタン、又はそれらとトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはメチルテトラヒドロフランとの混合物を、粗製アセナピンに添加し、それを加熱、撹拌することによって溶解した後、冷却することによって固体を析出させ、濾過によって回収し、真空乾燥して式Iの結晶化合物を得る、(10)に記載の式Iを有するアセナピンの結晶形を調製する方法。
(12)アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールを粗製アセナピンに添加し、それを加熱することによって溶解した後、冷却することによって固体を析出させ、又はアセトン、メタノール、エタノール、プロパノール若しくはイソプロパノールと水の混合物を、粗製アセナピンに添加し、それを加熱することによって溶解した後、冷却することによって固体を析出させ、得られた固体を濾過によって回収し、真空乾燥して式Iの結晶化合物を得る、(10)に記載の式Iを有するアセナピンの結晶形を調製する方法。
(13)アセナピン酸性塩を水又は有機溶媒で溶解し、対応する当量の塩基で中和し、得られた溶液を非プロトン性溶媒で抽出し、濃縮乾固し、次いで、結晶を(11)又は(12)に記載の方法によって調製する、(10)に記載の式Iを有するアセナピンの結晶形を調製する方法。
(14)有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N-メチルピロリドン、DMF、DMSO、アセトニトリル、テトラヒドロフラン又はメチルテトラヒドロフランから選択され、アセナピン酸性塩が、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩又は酒石酸塩から選択される、(13)に記載の方法。
(15)式II
【化25】
(式中、XはF、Cl、Br又はIである)の化合物。
(16)式IIの化合物を調製する方法であって、下記工程
【化26】
(式中、XはF、Cl、Br又はIである)、
工程(b-1):化合物(V)に硫酸及びハロゲン化水素酸を作用させ、その構造中の水酸基をハロゲン原子と置換し、次いで、非プロトン性有機溶媒中でルイス酸の触媒作用下で亜リン酸トリエチルと反応させて中間体VIを得る工程、
工程(b-2):中間体VIを5-クロロサリチルアルデヒドVIIとホーナー・ワズワース・エモンズ反応によって反応させて中間体VIIIを得る工程、
工程(b-3):中間体VIIIを塩基性条件下で無水酢酸でアセチル化して中間体IXを得る工程、並びに
工程(b-4):中間体IXをトリフルオロ酢酸の触媒作用下でN-(アルコキシメチル)-N-メチル-(トリメチルシリル)メチルアミン(X)と反応させ、ヒュスゲン環化付加反応を行って中間体IIを得る工程であって、RはC
1-6
アルキルである、工程
を含む方法。
(17)工程(b-1)において、使用されるハロゲン化水素酸が、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸又はヨウ化水素酸を含み、ルイス酸が、FeCl
2
、FeCl
3
、FeBr
3
、ZnCl
2
、ZnBr
2
又はInBr
2
であり、及び/又は非プロトン性有機溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等、又はそれらの2以上の混合物から選択されることを特徴とする、(16)に記載の方法。
(18)工程(b-2)において、使用される塩基が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、カリウムtert-ブトキシド又はナトリウムtert-ブトキシドから選択されることを特徴とする、(16)及び(17)のいずれかに記載の方法。
(19)工程(b-4)における式Xの化合物において、RがC
1-4
アルキル、好ましくはメチル又はn-ブチルであることを特徴とする、(16)~(18)のいずれかに記載の方法。
(20)式IIの化合物を調製する方法であって、下記工程
【化27】
(式中、XはF、Cl、Br又はIである)
工程(c-1):化合物(V)に硫酸及びハロゲン化水素酸を作用させ、その構造中の水酸基をハロゲン原子と置換し、次いで非プロトン性有機溶媒中でトリフェニルホスフィンと反応させて中間体XIを得る工程、
工程(c-2):中間体XIをウィッティヒ反応によって塩基性条件下で5-クロロサリチルアルデヒドVIIと反応させて中間体VIIIを得る工程、
工程(b-3):中間体VIIIを塩基性条件下で無水酢酸でアセチル化して中間体IXを得る工程、並びに
工程(b-4):中間体IXをトリフルオロ酢酸の触媒作用下でN-(アルコキシメチル)-N-メチル-(トリメチルシリル)メチルアミンと反応させ、ヒュスゲン環化付加反応を行って中間体IIを得る工程であって、RはC
1-6
アルキル、好ましくはメチル又はn-ブチルである、工程
を含む方法。
(21)工程(c-1)において、使用されるハロゲン化水素酸が、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸又はヨウ化水素酸から選択され、及び/又は使用される非プロトン性有機溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はそれらの2以上の混合物から選択されることを特徴とする、(20)に記載の方法。
(22)工程(c-2)において、使用される塩基が、無機塩基、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド若しくはカリウムtert-ブトキシド、又は有機塩基、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、p-ジメチルアミノピリジン若しくはジイソプロピルエチルアミンから選択されることを特徴とする、(20)及び(21)のいずれかに記載の方法。