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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】血小板放出システム及び血小板放出方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241108BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20241108BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N5/078
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022519721
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2020078639
(87)【国際公開番号】W WO2021069747
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】1911303
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】522122802
【氏名又は名称】エタブリスモン フランセ デュ サン
(73)【特許権者】
【識別番号】522122813
【氏名又は名称】アヴィニョン ユニベルシテ
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】509228260
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ストラスブール
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ サクラメント,ヴァランタン
(72)【発明者】
【氏名】ナップ,ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】マロ,リア
(72)【発明者】
【氏名】ストラッセル,カトリーヌ
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/077964(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/164040(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/009364(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M、C12N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞質の伸展部(Ck)を含む巨核球細胞(Mk)を特に含む流体(F)から血小板を放出するためのシステム(1)であって、当該システム(1)は、
- 次のものを具備してなるデバイス(2)、即ち、
・第1開口(16)及び第2開口(18)を備える血小板放出リザーバ(10)、
・前記第1開口(16)のレベルに取り付けられると共に、前記流体(F)を前記リザーバ(10)へと注入するように適合されている第1流体接続要素(20)であって、前記流体を血小板放出リザーバ(10)へと注入するための開口部(22)、及び前記開口部(22)に向かって狭窄する部分(24)を備えており、前記注入開口部(22)と前記リザーバ(10)間に断面の急拡大部分が存在する、第1流体接続要素(20)、
並びに、
・前記第2開口(18)のレベルに取り付けられた第2流体接続要素(30)であって、流体を排出するための開口部(32)を備えている、第2流体接続要素(30)、
を具備してなるデバイス(2)と、
- 第2流体接続要素(30)又は第1流体接続要素(20)により前記リザーバ(10)と流体連通している、流体(F)を圧送するためのデバイス(60)と、
- 前記圧送デバイス(60)用の電力供給モジュール(62)と、
- 前記注入開口部(22)と前記排出開口部(32)との間で前記流体(F)の連続流れを発生させると共に、前記リザーバ(10)内部で渦の擾乱を発生させて、巨核球細胞(Mk)の細胞質の伸展部(Ck)の断片化を引き起こすように設計された1つ又は複数の血小板放出シークエンスを実践するべく、前記圧送デバイス(60)用の前記電力供給モジュール(62)を制御するように構成されたプログラミングシステム(70)と、
を備える、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記狭窄部(24)が円錐形である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1流体接続要素(20)が長手方向軸(X1)を含み、前記第2流体接続要素(30)が長手方向軸(X2)を含み、前記長手方向軸(X1,X2)が交差状態又は平行状態にあり、且つ非ゼロの距離(d)だけ離間している、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記注入開口部(22)が1mm未満の開口径を有し、前記リザーバ(10)の断面幅に対する前記注入開口部(22)の開口径の比率が0.02~0.1である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記リザーバ(10)の断面幅に対する前記注入開口部(22)の開口径の比率が0.05である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記排出開口部(32)が1mm未満の開口径を有し、前記リザーバ(10)の断面幅に対する前記排出開口部(32)の開口径の比率が0.02~0.1である、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記リザーバ(10)の断面幅に対する前記排出開口部(32)の開口径の比率が0.05である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記リザーバ(10)が球体形状を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記リザーバ(10)に供給するための前記第1流体接続要素(20)に接続されている、流体(F)を貯蔵するための供給源リザーバ(40)、および、
前記リザーバ(10)から吸引されるよう意図されている前記流体を回収するために、前記第2流体接続要素(30)に接続されている、流体(F)を受容するためのリザーバ(50)、
を備えてなる、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記圧送デバイス(60)が、前記受容リザーバ(50)内に配置されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2流体接続要素(30)は、前記圧送デバイス(60)に向かって流体を排出するための、前記開口部(32)から広がっている部分(34)を更に備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム(1)であって、当該システムは、少なくとも1つの他のデバイス(2´´)を備え、
前記他のデバイス(2´´)は、
- 第1開口(16´´)及び第2開口(18´´)を備える血小板放出リザーバ(10´´)、
- 前記第1開口(16´´)のレベルに取り付けられると共に、前記流体(F)を前記リザーバ(10´´)の内部に注入するように適合されている第1流体接続要素(20´´)であって、前記流体を注入するための開口部(22´´)及び前記流体(F)を加速可能とする第1狭窄部(24´´)を備え、前記第1狭窄部(24´´)が前記注入開口部(22´´)上に開口している、第1流体接続要素(20´´)、並びに、
- 前記第2開口(18´´)のレベルに取り付けられた第2流体接続要素(30´´)であって、流体を排出するための開口部(32´´)を備えている、第2流体接続要素(30´´)、
を備え、
前記他のデバイス(2´´)が、第1のデバイス(2)に平行に配置されると共に、前記他のデバイスの第2流体接続要素(30´´)によって前記圧送デバイスに接続されている、ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム(1)であって、当該システムは、少なくとも1つの他のデバイス(2´)を備え、
前記デバイス(2´)は、
- 第1開口(16´)及び第2開口(18´)を備える血小板放出リザーバ(10´)、
- 前記第1開口(16´)のレベルに取り付けられると共に、前記流体(F)を前記リザーバ(10´)の内部に注入するように適合されている第1流体接続要素(20´)であって、前記流体を注入するための開口部(22´)及び前記流体(F)を加速可能とする第1狭窄部(24´)を備え、前記第1狭窄部(24´)が前記注入開口部(22´)上へと開口している、第1流体接続要素(20´)、並びに、
- 前記第2開口(18´)のレベルに取り付けられた第2流体接続要素(30´)であって、流体を排出するための開口部(32´)を備えている、第2流体接続要素(30´)、
を備え、
前記他のデバイス(2´)が、第1のデバイス(2)に直列に配置されると共に、前記他のデバイス(2´)の第2流体接続要素(30´)が、前記第1のデバイス(2)の第1流体接続要素(20)と流体連通している、ことを特徴とするシステム。
【請求項14】
細胞質の伸展部(Ck)を含む巨核球細胞(Mk)を特に含む流体(F)から血小板(P)を放出するための方法(5)であって、当該方法は、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム(1)により実施されると共に、以下の工程を含む、即ち、
流体(F)に懸濁されている巨核球細胞(Mk)を含む前記流体(F)を提供する工程であって、前記巨核球細胞(Mk)が細胞質の伸展部(Ck)を含んでなる、工程(100)と、
圧送デバイス(60)に電力供給を行う工程(200)と、
1つ又は複数の血小板放出シークエンスを開始させるように、プログラミングシステム(70)を制御する工程(300)と、
を含み、
前記血小板放出シークエンスまたは各前記血小板放出シークエンスは、
注入開口部(22)と排出開口部(32)の間で流体(F)の連続流れを発生させると共に、リザーバ(10)内部に渦の擾乱を発生させて、巨核球細胞(Mk)の細胞質の伸展部(Ck)の断片化を引き起こすべく実行される、ことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記工程(200)の間、前記デバイス(2、2´、2´´)内には、-10kPa~-50kPaの相対真空が発生する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に巨核球前駆細胞、細胞質の伸展部を含む巨核球細胞を含む流体から血小板を放出するためのシステムに関する。本発明はまた、前述のシステムなどの多数のシステムに供給される組立体(アセンブリ)に関する。最後に、本発明はこうしたシステムにより血小板の連続放出を行うための方法に関する。本発明はより特定的には、工業規模での血小板のインビトロ産生に適合する。
【背景技術】
【0002】
血小板放出のインビトロ産生は、様々な医療用途で増大しつつある需要に合致している。現在、こうした特定の目的を意図したシステムには本質的に2種類のカテゴリがある。すなわち、マイクロ流体システム及び「リザーバ」システムである。血小板の放出を意図しているこうしたシステムのカテゴリは、流れの必要性を示すインサイチュ(in situ)で行われた知見に由来する。
【0003】
リザーバシステムの一例は、特許文献1に説明されている。このシステムは、処理される流体を撹拌するための手段を伴って提供されている。これは、特に巨核球細胞を含む流体のためのリザーバ、及び流体を撹拌するための少なくとも1つの手段を備えており、ここでの撹拌により、血小板の放出が発生する。この撹拌は、リザーバ自体の内部にて、例えば垂直往復パドルによって発生する。こうしたシステムの主な欠点は、上記のように得られた血小板の品質を保証する条件下で操作するのに適合していないことである。この理由としては、外部環境及びその環境に存在する汚染源から血小板が単離されておらず、そのため医療用途には不適となることが挙げられる。
【0004】
マイクロ流体システムはその名称が示すように、一般には、別々の機能を実施するための特定の配置で相互接続されているリザーバとチャネルのネットワークを含む、マイクロメートル寸法(数十ミクロンから最大で数百ミクロン)のシステムである。古典的には、これらのシステムは巨核球細胞及び巨核球の培養、及び任意選択的には血小板放出に充てられる場所を備える。この場所は、血小板の抽出/回収するように構成されたチャネルのネットワークに接続されている。こうしたシステムは、その大半が生体模倣型であるが、血小板産生を増大させるために生理学的環境を模倣しようとする。
【0005】
これらのサイズが小さいことに起因して、これらのマイクロ流体システムには固有の2つの制限が存在する。1点目は、このシステムにより得られ得る血小板流量は低量であり、典型的には1時間あたり数百マイクロリットル(μL/時間)である。一例としては、200μL/時間の流量を有するシステムは、仮に10Lの流体を処理するには、50,000時間、すなわち5.7年を必要とする。したがって同等の総流量を得るには、並行して複数のシステムに接続する必要がある。しかし上記の例では必要とされるシステムの数は非常に多く、50,000システムが必要となり、システムの複雑性は更に増大することになる。最良の状態を考えたとしても、こうしたシステムは、ある程度限られた体積の流体サンプルにのみ適している。
【0006】
2点目としては、文献に説明されているマイクロ流体デバイスは全て、巨核球を「固定」(fix)する機構/方法を実践しており、こうして血小板を抽出する。この固定相は多くの場合、薬物又は化学コーティング化合物の使用に基づいているが、そのことが欠点である。
【0007】
直近では、ピペット操作を使用して巨核球細胞から血小板を放出するための新規方法が開発されている。こうした方法は、非特許文献1にて説明されている。こうした方法では、血小板を放出するためのプロセスはピペット操作の直接的な結果である。ピペット操作は、ピペット操作が血小板の放出に必要となる撹拌状態を作り出すために必要な回数繰り返されることを除いては、巨核球細胞を含む培養液のサンプルをピペットにより採取するという点で従来型のピペット操作と類似している。この方法の結果として、血小板は処理済みの流体中に検出され、血小板の放出に対するピペット操作の能力を検証し、かつこのピペット操作を非常に容易に実践した。ただし、この方法は大規模での操作には適していない。この理由としては、ピペット操作が元々手動での操作であり、それゆえに限られた体積の流体を処理することのみに適していることが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開WO201909364号(A1)
【非特許文献】
【0009】
【文献】Strassel et al.“Aryl hydrocarbon receptor-dependent enrichment of a high potential to produce propalets”,Blood,May 5,2016,vol.127,no18
【発明の概要】
【0010】
本発明は、前述の欠点を克服することを可能とするものであり、最終的には、特に、細胞質の伸展部を含む巨核球細胞を含む流体から血小板を放出するためのシステムを提案するものである。そして、当該システムは、
- デバイスであって、
・第1開口及び第2開口を備える血小板放出リザーバと、
・当該第1開口のレベル(高さ)に取り付けられ、当該流体を当該リザーバへと注入するように適合されている第1流体接続要素であって、流体を血小板放出リザーバへと注入するための開口部、及び当該開口部に向かって狭窄している部分を備え、注入開口部とリザーバ間の断面の急拡大部分が存在する第1流体接続要素と、
・当該第1開口のレベル(高さ)に取り付けられた第2流体接続要素であって、流体を排出するための開口部を備える、第2流体接続要素と、を備える、デバイス、
- 第2流体接続要素又は第1流体接続要素により、リザーバと流体連通している流体を圧送するためのデバイス、
- 圧送デバイスのための電力供給モジュール、並びに、
- 巨核球細胞の細胞質の伸展部を断片化させるリザーバ内で、当該注入開口部と当該排出開口部との間での流体の連続流れ、及び渦の擾乱を発生させるように設計されている1つ又は複数の血小板放出シークエンスを実践するため、圧送デバイスのための電力供給モジュールを制御するように構成されたプログラミングシステム、
を備えている。
【0011】
本発明に従うシステムはしたがって、ピペットにより手動で実施されるピペット操作プロセスを再現するように構成されている。それゆえ、血小板の連続的かつ自動的な放出が可能となる。
【0012】
更に注目すべき点は、本発明が大規模で実践されるという事実である。本発明によるシステムの幾何学的形状により、大容量の流体を高流量(1時間あたり数リットルといった数値)で処理することが可能となる。こうした形状によって、このシステムは工業規模での使用に特に適した状態となる。
【0013】
加えてこのシステムにより、手動でのピペット操作により得られた血小板と少なくとも同等である、巨核球細胞から放出された多数の血小板を得ることが可能であり、このことによってシステムを特に高い血小板放出効率を有する状態とする。これは、システムの要素の形状、すなわち特に第1流体接続要素の円錐形とリザーバの大きい寸法との相乗効果、及び圧送デバイスにより発生した流速に主に起因して達成される。これにより、リザーバ内の巨核球のサイズで渦の擾乱を発生させることが可能となる。
【0014】
一緒に又は別々に取り上げられ得る本発明の様々な特徴によれば、
- 狭窄部は円錐形であり、
- 第1接続要素は長手方向軸を含み、第2接続要素は長手方向軸を含み、当該長手方向軸は交差又は平行状態のいずれかであり、したがって非ゼロ距離dだけ離され;
- 注入開口部が1mm未満の開口直径を有し;
- リザーバの断面の幅に対する注入開口部の開口径の比が0.02~0.1であり;
- リザーバの断面の幅に対する注入開口部の開口径の比が0.05であり;
- 排出開口部が1mm未満の開口径を有し、リザーバの断面の幅に対する排出開口部の開口径の比が0.02~0.1であり;
- リザーバの断面の幅に対する排出開口部の開口径の比が0.05であり:
- リザーバは球状を有し;
- システムは、流体の貯蔵用の供給源リザーバを備え、このリザーバは血小板放出用のリザーバを供給するための第1流体接続要素に接続され;
- システムは、血小板放出用のリザーバから吸引されることを意図されている当該流体を回収するため、第2流体接続要素に接続されている、流体を受容するためのリザーバを備え;
- 圧送デバイスは受容リザーバ内に配置され;
- 当該第2接続要素は、圧送デバイスに向かって流体を排出するため、当該開口部から広がっている部分を更に備え;
- システムは、その他のデバイスを1つ備えるが、当該他のデバイスが、
・第1開口及び第2開口を備える血小板放出リザーバ、
・当該第1開口のレベル(高さ)に取り付けられ、当該リザーバ内部に当該流体を注入するように適合されている第1流体接続要素であって、流体を注入するための開口部、及び流体を蓄積させることが可能であるようにするための第1狭窄部を備え、当該第1狭窄部は、当該注入開口部上に開口している、第1流体接続要素、
・当該第2開口のレベル(高さ)に取り付けられた第2流体接続要素であって、流体を排出するための開口部を備える、第2流体接続要素、を備え、
当該他のデバイスが、第1デバイスに並行して配置され、かつ当該他のデバイスの第2デバイスにより圧送デバイスに接続され、
- システムは別のデバイスを備え、当該他の(別の)デバイスが、
・第1開口及び第2開口を備える血小板放出リザーバ、
・当該第1開口のレベル(高さ)に取り付けられ、当該リザーバの内部で当該流体を注入するように適合されている第1流体接続要素であって、流体を注入するための開口部、及び流体を加速可能とするために第1狭窄部を備え、当該第1狭窄部が当該注入開口部上に開口している、第1流体接続要素、
・当該第2開口のレベル(高さ)に取り付けられている第2流体接続要素であって、流体を排出するための開口部を備える、第2流体接続要素、を備え、
当該他のデバイスは第1のデバイスと連続して配列されており、当該他のデバイスの当該第2接続要素は、当該他のデバイスの当該第2接続要素が、当該第1デバイスの当該第1流体接続要素と流体連通している。
【0015】
本発明は更に、特に、細胞質の伸展部を含む巨核球細胞を含む流体から血小板を放出するための方法に関し、当該方法が、前述の通りのシステムにより実践され、且つ、以下の工程:(即ち)
(100)当該流体に懸濁されている巨核球細胞を含む流体を提供する工程であって、当該巨核球細胞が細胞質の伸展部を含む、工程と、
(200)圧送デバイスに電力供給を行う工程と、
(300)1つ以上の血小板放出シークエンスを開始させるように、プログラミングシステムを制御する工程と、を含み、
この血小板放出シークエンス又は各血小板放出シークエンスは、巨核球細胞の細胞質の伸展部の断片化を引き起こすように、当該注入開口部と当該排出開口部の間で流体の連続流れを発生させ、リザーバ内部に渦の擾乱を発生させるべく実行される。
【0016】
有利には、工程(200)中、-10kPa~-50kPaである相対真空がデバイス内に発生する。
【0017】
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照することで、以下の説明にて更に明確となるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1a】本発明の第1の実施形態によるシステムの概略図であり、流体用のリザーバは側面図による断面図にて示されている。
図1b図1aのシステムの代替的な実施形態の概略図である。
図1c図1bに示されるシステムを備えたリザーバの拡大図である。
図2a】連続して接続されている多数のデバイスを備える、本発明の第2の実施形態によるシステムの概略図である。
図2b】連続して接続されている5つのデバイスを備える、本発明によるシステムの分解図を示す。
図2c図2a及び図2bに示されるような組立体(アセンブリ)を示す。この組立体はここでは、供給源リザーバ及び流体を受容するためのリザーバに接続されている。
図2d】並行して接続されている多数のデバイスを備える、本発明の第3の実施形態による組立体の概略図である。
図3a】本発明による方法の概略図である。
図3b】本方法を実行するための副工程が示されているところの、図3aの方法の概略図である。
図4a】前駆血小板巨核球細胞を示す。
図4b】本発明による血小板放出方法の後に得られた血小板を示す。
図5a】ピペットの使用により、及び、当該システム内での相対真空の関数としての、本発明によるシステムの使用により得られた血小板放出の効率を示す比較図である。
図5b】天然血小板(中空棒)及び培養された血小板(中実棒)に関して、-30kPaの圧力で得られた血小板の機能性の分析である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1a~図1cを参照すると、本発明は、巨核球細胞Mkを含む流体Fから血小板Pを放出(又は解放)するためのシステム1に関する。
【0020】
問題に挙がっている流体Fは、例えば巨核球前駆細胞、巨核球を含む分化の異なる段階の不死化株細胞又は非不死化株細胞から得られた細胞の集団を含有する培地である。巨核球又は巨核球細胞は大きな血球(最大100μmであり、培養液中では30μm)であり、成熟時には、細胞質の伸展部又は前駆血小板と呼ばれる長い伸展部を有する。
【0021】
血小板の形成に関与する機構は、未だ多くの研究の主題である。とりわけ、血小板放出は、Mk巨核球及び/又は細胞質の伸展部Ckを血小板へと断片化するプロセス中に生じる。これは、血流の力に起因して血液中に自然に生じる、高度に強調したインビボプロセスである。巨核球Mkは前駆細胞であるため、極めて重要な役割を担う。ただし、体内の血小板放出のプロセスはほとんど説明されていない状態のままであり、経内皮通過及び血小板の形成における血流の正確な役割について、依然として多くの疑問が存在している。このプロセスは、マイクロ流体システムによりインビトロで再現され、いくつかのインビボ機構は、マイクロ流体実験により実証されることが可能であった。このプロセスはまた、ピペットにより手動で、又は本明細書の導入部分で提示されているデバイスなどによって、インビトロで再現され得る。更にこのプロセスにより、血小板の放出に関与する機構を良好に理解することが可能となる(Strassel et al.2016)。インビトロでの血小板の産生により、血小板の形成に関与する機構の良好な理解がもたらされる。ただし一般には、血小板の放出の効率はインビボで得られるものよりも低い。本発明により提案されるデバイスにより、システム1を使用する連続運動により交換される、ピペット操作中に発生する往復運動を再現することなく、Strassel et alにより開示される手動ピペット操作によって血小板放出プロセスを模倣することが可能となる。したがって、本発明は、工業規模での巨核球Mk及び/又は細胞質の伸展部Ckの断片化プロセスを再現することを目的としており、これにより大容量の流体F(1時間あたり数リットル)を処理することが可能となる。
【0022】
本発明によるシステム1は、以下のセクションで説明されるであろう、デバイス2、圧送デバイス(ポンプデバイス)60及びプログラミングシステム70を備える。
【0023】
デバイス2は、血小板放出のリザーバ10、第1流体接続要素20及び第2流体接続要素30を備える。
【0024】
血小板放出のリザーバ10(以降、「リザーバ10」と称する)は、ミリメートル~センチメートルの長手方向寸法を有する。これはすなわち、1mm~数cmの長手方向寸法である。比較のため、本発明によるシステム1のリザーバ10の最小寸法は、従来型マイクロ流体システムの最大寸法である。こうすることで、リザーバ10は公知のマイクロ流体システムより大きなリザーバ及びより大きな許容量となる。
【0025】
図1aに示される例示的な実施形態では、リザーバ10は球形形状である。このリザーバ10は、流体Fがその内部で循環可能である空洞14を区切っている球状壁12を備える。空洞は、流体Fの循環用ゾーンであることに加え、流体Fの乱流をもたらす領域である。これはすなわち、少なくとも巨核球Mkのサイズに等しいサイズの渦の擾乱の形成をもたらすということである。言い換えれば、空洞14は、前述の通り、一方ではその寸法によって、他方ではその内部体積によって、その中で渦の擾乱の形成をもたらすように構成されている。ただし、リザーバ10は、例えば、平行六面体、円筒形などの任意の他の形状のものであり得る。最も重要なことは、当該リザーバ10は、渦の擾乱の形成をもたらすのに十分な寸法の空洞14を備えるということである。例えば、巨核球Mkを含む流体Fについて、読者がここまでで確認したように、巨核球Mkのサイズは培養液中で30μmに達し得る。それゆえ、この流体Fが例えば数百、又は数千の多数の巨核球細胞Mkを含むため、空洞14は更に大きな寸法(ミリメートル~センチメートル)を有する。
【0026】
壁12は、少なくとも第1開口16及び第2開口18を備える。第1開口16は、第1接続要素20との流体接続専用であり、一方で第2開口18は、第2接続要素30との流体接続専用である。好ましくは、システム1が閉鎖されることから、これらは壁12では専用の開口を形成する。
【0027】
第1流体接続要素20は、流体Fをリザーバ10に供給するための手段である。言い換えれば、これはリザーバ10内で流体Fのための入口である。第1流体接続要素は、リザーバ10の第1開口16のレベル(高さ)に取り付けられる。これは、流体の流れの方向に関しては、接続部分26、狭窄部24、及び流体の注入の開口部(オリフィス)22をこの順で備える。それゆえ、狭窄部24は注入開口部(注入オリフィス)22上に開口する。こうした理由から、接続部分26は、以下により良好に理解されるが、必要不可欠なものではないという点に留意されたい。したがって、図1aに示される例示的な実施形態では、第1流体接続要素20は接続部分26により第1開口16のレベル(高さ)に取り付けられるが、他の構成ではリザーバ10に取り付けられてもよい。実際に、第1流体接続要素は、注入開口部22を用いるのと同様に、狭窄部24によっても非常に容易にとりつけられ得る。後者の構成では、注入開口部22は壁12のレベル(高さ)に配置されているが、リザーバの第1開口16に対応(すなわち、ここに一致)することができることが理解されるだろう。
【0028】
上記で言及したように、部分24は狭窄している。部分24は、接続部分26から、又は代替的には接続部分26が存在しない際には、流体を注入する開口部22に向かって第1接続要素20の終端から狭窄するという点で狭窄している。言い換えれば、部分24は、当該開口部22の中心を通過している当該第1接続要素20の長手方向軸X1に対する流れの方向で狭窄する。当該部分24の狭窄形状は、流体Fをベンチュリによって加速させることが可能である。付随的に、リザーバ10に入る流体Fはそれゆえに、口広げ加工を有さない部分24を通りシステム1に入る流体と比較すると速度が高い。
【0029】
有利には、接続部分26からの狭窄部24、又は代替的には接続部分26が存在しない際には、流体を注入する開口部22に向かう第1接続要素20の終端からの狭窄部24は、実質的には連続したものであってもよい。狭窄部の連続により、摩擦を低減することが可能となり、流体の加速度を更に増大させる。この点に関しては、狭窄部24は円錐形であってもよい。有利には、円錐部24を使用することで、その多くが市販されている管状(すなわち円筒形)の流体接続手段との接続を容易にする。例として、部分24はピラミッド形状、四面体形状を有してもよい。最も重要な点として、狭窄部24は、流体を注入する開口部22に向かって第1接続要素20の接続部分26から狭窄している。この場合、リザーバ10へと排出されると、この流体Fは第1流体接続要素20、特に注入開口部22とリザーバ10との間に存在している断面における差分により、大幅に減速する。
【0030】
実際に、注入開口部22は有利には、球状型の場合には、リザーバ10の直径と比較すると、非常に小さいサイズの開口径を有する。ただし、この直径はリザーバ10に残存している粒子(すなわち、巨核球の断片化から本質的に生じる、血小板P及び他の生成物Dk)のサイズ以上である。好ましくは、開口径は1mm以下であるが、一方では読者が確認してきたように、リザーバ10はミリメートル~センチメートルの範囲で長手方向寸法を有し、いずれにせよ開口部22の直径よりもはるかに大きい。この点で、注入開口部22の形状は制限されていないことに留意されたい。ここで重要な点としては、当該注入開口部22のサイズである。
【0031】
それゆえ、急激な断面拡大部が注入開口部22とリザーバ10の間に存在する。この急激な拡大部は特異点に相当しており、流体Fの特異な流れプロファイルの上昇を生じさせる。前述のように、流体Fは注入開口部22を通り狭窄部24外で加速され、それにより、この特異点に起因して、注入開口部22からリザーバを通過する際に圧力降下を受ける(すなわち減速する)。リザーバ10の直径、又はより一般にはリザーバ10の断面幅に対する注入開口部22の直径の比率Rが1よりも小さければ小さいほど、特異点はより大きくなり、かつ圧力降下は大きくなる。これは比率が増大する場合には逆もまた同様である。既に実践された本発明によるシステム1の一例は、16mmと等しい直径を有するリザーバ10と、0.8mmと等しい直径(それゆえ、Rは0.05に等しい)を有する注入開口部22を備える。こうしたシステム1により血小板放出効率の向上が可能となる場合、1mm未満の開口径を有する注入開口部22について流体Fから血小板を放出するためには、0.02~0.1のリザーバの断面幅に対する開口部22の開口径の比率Rもまた想定され得る。有利には、Rは1mm未満の開口径で0.04~0.08である。より有利には、Rは1mm未満の開口径で0.04~0.06である。こうした理由から、更により有利には、Rは0.05に等しい。事実として、後者の場合では、血小板効率の放出の効率はより良好である。
【0032】
ただし、以下に説明されるように、流体Fがリザーバ10に入る際には減速し、この用語の忠実な意味では(レイノルズ数は、そのサイズがリザーバ10のサイズに近似する渦中央では0、注入開口部22のレベル(高さ)では1500の間で変化する)層流レジームを維持するが、圧送デバイス60により発生する流体が変位することから、当該リザーバ10内では不動ではない。それゆえリザーバ10は、単なる流体Fが通る場所に過ぎず、当該流体Fを貯蔵する場所、すなわちシステム1の動作時に流体が停滞するような場所ではない。
【0033】
この点に関しては、血小板の放出のリザーバ10に加え、システム1は、リザーバに供給するため、第1流体接続要素20に接続されている流体Fを貯蔵するための供給源リザーバ40もまた備えてもよいという点に留意されたい。そのため、流体Fは第1要素20を通過する前に供給源リザーバ40に貯蔵されてもよいが、これは必須事項ではない。したがって、リザーバ40は、流れの方向においてシステム1の最上流要素である。
【0034】
加えて、システム1はまた、流体Fを受容するリザーバ50を備えてもよい。流体を受容するリザーバ50は、リザーバから吸引された当該流体を回収するための第2流体接続要素30に接続されている。供給源リザーバ40とは対照的に、受容リザーバ50は、流れの方向におけるシステム1の最下流要素である。後者の配置は、第2流体接続要素30に関し、この後に説明されるだろう。
【0035】
それゆえ、リザーバ10は、システム1が流れの方向においてその上流に供給源リザーバ40、及びその下流に受容リザーバ50を備えてもよいという点で、重要であると見なされる。
【0036】
次に、第2流体接続要素30は、リザーバ10の外側に流体Fを排出するための手段であり、そのため、流体Fの出口チャネルを形成する。これは、その終端のうち一方を介して、受容リザーバ50と流体連通している。加えて、第2流体接続要素は、リザーバの第2開口18のレベル(高さ)に取り付けられる。これは、流体Fの流れの方向において順番に、流体を排出する開口部(オリフィス)32、排出部34、及び接続部分36を備える。第2流体接続要素は、方向は異なっているがリザーバ10に対する第1流体接続要素と同様であり、同様の構造を有する(例えば、血小板放出のリザーバ10に対する排出開口部(排出オリフィス)32のサイズ)。
【0037】
こうした理由から、流れの幾何学的形状はリザーバ10/排出開口部32界面では異なっており、これは主に特異点の種類に起因する。注入開口部22/リザーバ10界面とは対照的に、直径(又は該当する場合にはリザーバ10の周囲)が排出開口部32の直径よりもはるかに大きいことから、特異点は流れの方向での断面の急激な狭窄に存在する。接続リザーバ10及び排出開口部32の寸法を考慮した場合、こうした特異点は、リザーバ10から第2流体接続要素30まで流体Fが通過するにつれ、流体Fにより受ける圧力降下を更に増大させる。ただしこれは、以下でより詳細に説明されるように、圧送デバイス60により発生した流体変位により緩和される。この特異点により、断面の急激な狭窄が流体Fにとっての障壁として作用し、この障壁がリザーバから直接ではないにしてもリザーバ10から速やかに出ることを防止するため、リザーバ10内部の流体の滞留時間を増大させることが可能となる。こうすることによる直接的な結果は、流体Fの滞留時間が増大するにつれ、リザーバ10内部にて乱流又は渦の擾乱が形成されるのを促進することである。
【0038】
更には、リザーバ10内部での流体Fの滞留時間は、排出開口部32に対して注入開口部22をオフセットさせることにより、更に有利には増大可能である。実際に、注入開口部22及び開口部32は2本の軸により支えられているが、この平面は傾いている。すなわち、図1bの例に示されるように、この平面は水平又は垂直のどちらでもない。この点に関して、図1cに示され、図2bにて線に囲まれた領域Rの拡大図に提示され、かつ上記にて言及されるように、第1接続要素20は長手方向軸X1を備える。長手方向軸X1は、注入開口部22を通過している第1流体接続要素20の中心軸である。続いて第2流体接続要素30は、当該第2流体接続要素30に対して長手方向軸X1と同様の方法で配置されている長手方向軸X2を備える。2本の長手方向軸X1及びX2は交差又は平行状態であってもよい。流体Fの滞留時間を増大させ、渦の擾乱を増大させるため、有利には、当該長手方向軸は非ゼロ(の)距離dだけ離される。この構成により、リザーバ10に「気泡が存在しない」状態で充填されることもまた可能となる。実際に、流体Fは吸引により注入開口部22を通って入るが、当該リザーバ10中に含有されている空気が全て吸い出されると、流体Fは排出開口部を通って出る。
【0039】
そのため、排出開口部32は、長手方向軸X1及びX2に直交する軸Yの方向にて、非ゼロ距離dだけ注入開口部22から離される。好ましくは、この距離dは3~4mmである。ただし、当該開口部22、32は軸Yの方向にて距離dだけ離されてもよいが、これらは同一平面及び/又は平面XZにて軸Xの方向にて距離d´だけ離されても良い。軸Zは(図の平面外の)断面の方向にて軸Xに直交している。この中で、図1cの断面図は、第1開口16及び第2開口18、並びに注入開口部22及び排出開口部32がそれぞれ、(軸Zに直行する)異なる断面中に配置され得ることから誤解される可能性がある。
【0040】
流れの幾何学的形状が前述の特異点によって実質的に変化し、そうすることで要素の形状によりこれが変化する場合には、この形状は流速によっても変化する。デバイス2の要素の形状及び流速はしたがって相乗的に作用し、こうした流れの幾何学的形状を得る。加えて、これにより、公知のデバイスと比較すると効率が向上した状態で、巨核球細胞Mkからの血小板Pの連続放出が可能となる。読者らはここより後の部分でこの点に再び戻る。
【0041】
この点に関して、前述にて言及されるように、システム1には圧送デバイス60が設けられる(図1b参照)。圧送デバイス60は血小板放出のリザーバ10と流体連通している。こうすることで、リザーバ10内に含有されている流体Fを移動させることが可能となる。流体の変位はデバイス2内での陥没(降圧)に起因する可能性があるが、後により詳細に確認されるように、流体の排出に起因する可能性も存在する。ここで重要な点としては、流体Fは、圧送デバイス60が存在していない場合に有する速度よりも速い速度で流れ得るという点である。圧送デバイス60は例えば、真空ポンプ又は一般には、陥没(降圧)若しくはデバイス2内での流体の排出を発生させるのに適合した任意のデバイスである。例えば、圧送デバイス60はベーンポンプであるが、これは本発明の範囲を限定しようとするものでは決してない。
【0042】
代替的には、圧送デバイス60は流れの方向において、第1流体接続要素20、好ましくは供給源リザーバ40の上流に配置されてもよい。この点に関して、流体移動又はリザーバ40内での過剰圧力を使う圧送デバイス60を提供してもよい。この構成では、流体Fは所望の流れの方向で排出され、狭窄部24、注入開口部22、リザーバ10及び排出開口部32を通り連続して流れる。これは、それぞれの特異点から生じる流れの幾何学的形状に適合している。ただし、流体移動圧送デバイス60(ギアポンプ、蠕動ポンプなど)の使用は、プロセスが開始される前であっても巨核球細胞をほぼ分解させるため、血小板の放出には不利益であり得る。この種類の圧送デバイス60の使用は、排出型デバイスもまた考えられ得ることから、必須ではない。一般には、流体移動ポンプは例外である可能性があるが、任意の種類の圧送デバイス60が使用されてもよい。
【0043】
圧送デバイス60は、第2流体接続要素30によりリザーバ10と流体連通することが可能である。好ましくは、第2流体接続要素は受容リザーバ50内に配置されている。このように配置されることにより、圧送デバイス60は流体Fの流れの方向で第2流体接続要素30の下流に結果的に配置されている。こうすることで、デバイス2の特異点を最大限活用することが可能となり、リザーバ10、特にその空洞14内部に渦の擾乱を形成させるプロセスを向上させる。
【0044】
この点に関して、ここで第2接続要素30の排出部34に戻る。有利には、第2接続要素30は排出開口部32から広がっていてもよいが、これは必須ではない。こうすることでリザーバ10内部に渦の擾乱を形成させることが可能である。排出部34の口広げ加工は、その断面が圧送デバイス60の方向で(すなわち流れの方向で)流体を排出する開口部32から拡大しているという事実に起因するという点に留意されたい。排出部34の口広げ加工により、第2接続要素30の下流に配置される場合には、圧送デバイス60が流体をより効率的に移動させることが可能となる。これは単純に、第2接続要素30が、排出開口部32と当該第2要素30のもう一方の終端との間の距離として画定されているその全体の長さにわたって排出開口部32の断面領域に等しい断面領域を有する場合には、圧送ポンプは効率的ではないことが理由である。実際には、上記で言及されるように、排出開口部32は最大で1mmの直径を有する。この口広げ加工はしたがって、より効率よい吸引を可能とする以外には重要ではない。
【0045】
システム1は、圧送デバイス60の電力供給モジュール62を更に備える。電力供給モジュール62により、圧送デバイス60をモータとして作用させ、流体Fを移動させることが可能となる。加えて、電力供給モジュール62により圧送デバイス60により送達される電力、及び当業者が理解するであろう任意の他の有用なパラメータを調節することが可能となる。更には、好ましくは、圧送デバイス60によって送達される電力によってシステム1内部での流体Fの変位速度を調節可能とし、37mL/分~120mL/分以上の流体Fの流量を得ることができるように、電力供給モジュール62は構成されている。ただし、以下で確認されるように、これは流体の流量に影響する唯一のパラメータではない。更には、システム1には、電力供給モジュール62により送達される電力の関数としてリザーバ10内部の流体の流量を制御するためのフローメータ(流量計)が装備されてもよい。一例としては、こうしたフローメータは供給源リザーバ40とリザーバ10との間に配置され得る。更には、電力供給モジュール62は、圧送デバイス60に非常に近接して配置される必要はない。これは取り外され得る。
【0046】
システム1は、巨核球細胞Mkの細胞質の伸展部Ckの断片化を引き起こすため、当該注入開口部22と当該排出開口部32との間の流体Fの連続流れ、及びリザーバ10内部での渦の擾乱を発生させるために実行される1つ以上の血小板放出シークエンスを実践するべく、圧送デバイス60用の電力供給モジュール62を制御するように構成されたプログラミングシステム70を更に備える。プログラミングシステム70は、当該血小板放出シークエンスを実践するためにプログラムを実行するように適合された少なくとも1つ以上のプロセッサを備える。以下で説明されるように、血小板放出シークエンスはその持続期間、数などにおいて変更されてもよい。とはいえ、電力供給モジュール62は工業用途向けのこういったプログラミングシステム70により制御され得る一方で、操作者により手動で同様に制御され得るという点に留意されたい。
【0047】
図2a~図2dを参照すると、本発明の第2実施形態及び第3実施形態では、システム1は、第1のデバイス2に加えて、多数の更なるデバイス2´又は2´´を備える。他のデバイス2´及び2´´は、前述したデバイス2と同一である。点線矢印線は、システムにおける流体Fの運動の方向を示す。
【0048】
図2a~図2cに示される本発明によるシステム1の第2実施形態では、デバイス2は他のデバイス2´に連続して(直列に)接続されている。デバイス2、2´は互いに流体連通している。好ましくは、更なるデバイス2´の数は、デバイス2、2´の総数が1~5台であるように、1~4台である。こうした構成では、非常に有利には、システム1により特異点の数を大幅に増大させ、そうすることで血小板放出の効率を更に向上させることが可能となる。実際に、流体Fが別のデバイス2´を通過するたびに血小板放出の効率が増大するように、これはシステム1内部の乱流の数と他のデバイス2´の数とをかけ合わせられる。
【0049】
こうした組立体(アセンブリ)の一実施形態の一例は、図2bに示されている。これは、連続して(直列に)取り付けられている5台のデバイス2、2´を備える。リザーバ10´、開口16´(開口18´は対向しており、可視化されていない)は区別されている。リザーバ10´は、これらが任意の所望の形状の空洞14を有する妨げとならない立方体形状の外殻を有する。ここではリザーバ10´は球状である。示されている実施形態では、リザーバ10´には気泡を脱泡するために煙突9´が設けられている。ただしこれは必須ではない。接続要素20´、30´、少なくともそれらのそれぞれの部分24´、34´及び開口部22´、32´は組立部分に形成されており、これらはリザーバ10´の両側に配置されている。開口部22´、32´は位置合わせされていない。これはすなわち、互いにデバイス2´について、これらの開口部が流体Fの流れの方向に互いからオフセットされている。
【0050】
この点に関して、1つ以上のリザーバ10、10´、前述の組立要素及び接続要素20、20´、30、30´は、先行技術に公知の任意の適切な製造方法により製造されてもよいこともまた述べられ得る。この場合では、デバイス2、2´は、3D印刷により製造され、ねじ留めにより組み立てられた。この点に関して、デバイス2、2´はそれらの組み立てを可能とする連結手段を備えてもよい。好ましくは、これらの連結手段はポリエーテルイミド(PEI)樹脂、又は光重合性樹脂(歯科矯正器具で使用されるものなど)から作製されている。好ましくは、これは本発明によるシステム1が使用されることになる国の薬局方に準じる材料である。材料はANSM(Agence Nationale de Securite du Medicament et des Produits de Sante、フランス医薬品規制当局)、EMA(European Medicines Agency、欧州医薬品庁)、日本のPMDA(Pharmaceutical and Medical Devices Agency、医薬品医療機器総合機構)又はFDA(Food and Drug Administration、米国食品医薬品局)及び/又は米国のUSP(United States Pharmacopoeia、米国薬局方)などにより認証され得る。例えば、米国での使用については、デバイスは好ましくはUSP VI(VIはUSPクラスを指す)として分類されている生体適合性材料から作製されてもよい。USPに基づくクラス試験は、材料の生体適合性を決定するための最も一般的な試験方法の1つである。USPには6つのクラスが存在し、VIが最も厳格である。クラスVI試験は、プラスチックから放出される化学物質により生じる有害な反応又は長期身体的影響が存在しないと保証することを意図している。これらの特異性及びデバイス2´が閉鎖しているという事実を理由として、これらは医療用途に特異的な流体の処理に特に良好に適合している。
【0051】
こうした構成はまた、最適に配置されている間、システムの効率を向上させるという点でも有利である。実際に、デバイス2、2´ごとに圧送デバイス60及び電力供給62を設ける代わりに、これらの要素は2つ、3つ、又はそれ以上のデバイス2、2´に共有される。実際に、圧送デバイス60が第1デバイス2の第2流体接続要素30により当該第1デバイス2と流体連通している間、ここまでで確認されるように、他のデバイス2´は、他のデバイス2´に先行するデバイス2、2´の第1接続要素20、20´に直接接続されている。言い換えれば、第1のデバイス2のみが圧送デバイス60に接続されている。
【0052】
例えば第1のデバイス2に直接接続されている第1の他のデバイス2´を考える。当該第1の他のデバイス2´の第2流体接続要素30´は、当該第1デバイス2の当該第1流体接続要素20と流体連通している。好ましくは、この流体連通は直接的である。そのためこれは、第1デバイス2を介して圧送デバイス60と間接的に流体連通している。ここで、第1の他のデバイス2´と直接接続されている第2の他のデバイス2´を考える。当該第2の他のデバイス2´の第2流体接続要素30´は、当該第1の他のデバイス2´の当該第1流体接続要素20´と流体連通している。これはまた、他の連続するデバイス2´にも適用される。
【0053】
他の種類の組立体(すなわち、圧送デバイス60のデバイス2、2´への接続)は、本発明の発明概念を尊重しつつ、デバイス2、2´を連続して(直列に)接続するように想定され得る。
【0054】
第1の実施形態について確認されているものと同様に、第2の実施形態によるシステム1は、圧送デバイス60に加えて、圧送デバイス60用の電力供給モジュール62及び関連するプログラミングシステム70を備えるという点に留意されたい。流れの幾何学的形状は、こうしたシステム1では変更されない。事実として、単一デバイス2の回路に陥没(降圧)又は排出が発生する代わりに、流速が全てのデバイス2´に伝播することから、これは維持される。
【0055】
こうすることで、使用される圧送デバイス60に応じ、吸引力又は排出力に適合させること、より正確には、最も離れたデバイス2´に対して流体の十分な変位が得られるように吸引力又は排出力を増大させることが必要とされ得る。ただし、吸引力又は排出力が過剰に高すぎる場合には、効率は流体流量、それゆえ吸引力又は排出力の定義範囲内でのみ最適であることから、血小板放出の効率は逆に悪影響を受ける可能性がある。したがって、使用される圧送デバイス60によってシステム1内で一定の圧力を維持することができない場合には、この制約に従い上記の適合を行うことが適切である。現在市場で入手可能な大半の圧送デバイスは、一般にはこうした問題を回避可能である。
【0056】
圧送デバイス60、電力供給モジュール62及びプログラミングシステム70について上記にて言及されているものと同様の方式で、全体のシステム1について、このシステム1が1つのデバイス2、又は該当する場合には多数のデバイス2を備えるかどうかに関わらず、単一の供給源リザーバ40及び単一の受容リザーバ50のみを提供することもまた可能である。こうした実施形態は例えば、図2cに示されている。この例示的な実施形態において、供給源リザーバ40及び受容リザーバ50は可撓性のあるバッグから成る。供給源リザーバ40は、最も上流にある(すなわち、流体回路にて第1のデバイス2から最も遠く離れている)他のデバイス2´と流体連通している。受容リザーバ50に関しては、圧送デバイス60と同様、これは第2流体接続要素30により第1のデバイス2と流体連通している。有利には、圧送デバイス60は受容リザーバ50内に配置され得るということに留意されたい。
【0057】
図2dに示される本発明の第3の実施形態では、システム1は平行に(並列に)接続されているデバイス2、2´´を備える。すなわち、第1デバイス2は他のデバイス2´´と平行に(並列に)接続されている。この構成では、デバイス2、2´´は互いに接続されていない。言い換えれば、これらのデバイスは互いに独立している。各デバイス2、2´´はそれゆえ、他のデバイスと独立して動作する。1つ以上のデバイス2´´の好ましい数は限定されていない。デバイス2´´の数が増大すればするほど、処理される流体の量は増大し得る。例えば、平行に(並列に)接続されている3つのデバイス2、2´´を備えるシステム1について、1時間あたり約3リットルの流体Fを処理することが可能であり、こうすることで、先行技術で公知であるデバイス以上に考えられ得る利点を本発明にもたらす。この構成により、処理される流体Fの体積に準じて操作する際には、デバイス2、2´´の数を適合させることが可能となる。より大きい体積の供給源リザーバ40が提供され得るが、これは必要とされていない。代替的には、処理される流体を連続して送達するための手段が提供され得る。
【0058】
任意の場合では、図2bの代替的な実施形態と同様に、圧送デバイス60,電力供給モジュール62及びプログラミングシステム70は、全てのデバイスについて相互的である。ただしこの場合には、圧送デバイス60は、1組の接続部により全てのデバイス2、2´´と流体連通している状態に置かれ得る。他の種類の組立体は、本発明の発明概念を尊重しつつ、デバイス2、2´´を平行に(並列に)取り付けるように想定され得る。
【0059】
更には、本発明のシステム1は、本発明の発明概念に重ねて沿うことで、追加的な機能を統合するために適合され得る。例えば、Y字形状を有する管はリザーバ10の入口に設けられ得る。この管により、確認されるように、渦の擾乱を発生させるように構成されているリザーバ10内部で2種類の流体Fを循環させてこれを混合させる。
【0060】
本発明は更に、細胞質の伸展部Ckを含む巨核球細胞Mkを含む流体Fから、血小板Pを放出するための方法5に関する。本発明による方法5により、以下のセクションにて詳細に説明されるように、血小板を放出するために巨核球Mk、及び/又は細胞質の伸展部Ckを断片化させることを可能にする。この点に関して、方法5は、前述の通りシステム1により実践(実施)される。
【0061】
図3a及び図3bを参照すると、方法5の第1工程100中に巨核球Mkを含む流体Fが提供される。好ましくは、流体Fはこの目的のために提供されている供給源リザーバ40中に貯蔵されている。問題に上がっている流体Fは、例えば患者、特に患者の骨髄から採取された流体、又は細胞培養により得られた流体である。任意の場合には、この流体Fは巨核球Mkを含み、血小板はこの巨核球Mkから放出され得る。ただし、流体Fが何であれ、巨核球Mkが当該流体F中に懸濁されるという点、及び流体の粘度に応じて巨核球が異なって分布しているという点に留意されたい。
【0062】
処理され得る流体Fと、それに付随する、放出され得る血小板の工業的な量を考慮すると、予備的な細胞培養工程は、所望の量の流体F及び前駆体(すなわち、巨核球)を得る目的で考えられ得る。この細胞培養工程の目的は、巨核球Mkの成熟化及びそれらの増大(すなわち、それらの増殖)を可能とすることである。フランス特許文献FR第3039166号は、より詳細に細胞培養プロセスを説明している。
【0063】
例えば、流体F中に使用されている巨核球Mkは、不死化又は非不死化CD34+前駆細胞に由来する巨核球である。こうした巨核球Mkの前培養工程は、合計で11~17日間継続する2つの段階を含み得る。5~9日間継続する第1段階中、巨核球Mkは、例えば以下の薬剤:血清を含まない培地、TPOを含有するサイトカインカクテル、IL-6及びIL-9、並びにAhRアンタゴニスト、並びにLDL(CD34+細胞の増殖を刺激し、かつ巨核球形成の経路にこの細胞を関与させるように意図された低密度リポタンパク質)を含む混合物と共に培養される。AhRは有利には、巨核球Mkの成熟化を刺激する。およそ6~8日間継続するこの培養工程の第2段階では、得られた細胞はSR1とトロンボポエチンの混合物、TPO、及び任意選択的には第1段階を参照すると上記にて列挙されるような他の薬剤と共に培養される。得られた細胞は巨核球を含むが、これは排他的ではない点に留意されたい。加えて、全ての細胞が巨核球を生じるわけではないという点に留意されたい。これらの段階は所望される細胞の数、使用される薬剤などに応じ、より長い時間又はより短い時間継続し得る。
【0064】
この予備工程は本発明の主題ではなく、かつその一部を形成することもないため、これについて更に説明されることはない。本発明は、流体Fから血小板を放出させるための方法を提案することに限定されており、任意の培養工程を含む方法は提案されていない。任意の場合では、この細胞培養段階の終わりに前駆血小板巨核球(すなわち、前駆血小板と共に提供される巨核球)が得られる。これらは、簡略さを目的として、本発明では巨核球Mkと単純に称される。こうした細胞は図4aに示されている。これらの細胞は、巨核球体から伸展部を形成する前駆血小板を伴い、巨核球体を含む。細胞質の伸展部は微小管のネットワークにより支持されており、将来的に血小板となるものを予め形成するボタン状の血小板にて終結する。工程100で提供された流体Fはこうした前駆血小板巨核球を含む。
【0065】
再度図3a及び図3bを参照すると、方法5は工程100に続き、第2流体接続要素30の出口に陥没(降圧)又は排出を発生させるために圧送デバイス60に電力供給する工程200を含む。
【0066】
工程200中、圧送デバイス60のための電力供給モジュール62の電力は、吸引力又は排出力を調節するように設定され得る。具体的には、流体Fの得られた流量が37mL/分~120mL分以上になるように調節されなければならない。本発明によるシステム1のデバイスを作製する材料に応じて、流体流量は著しく増大させることが可能であるという点に留意されたい。これは、本発明による方法で最大の血小板放出効率を得るための最適な流量範囲である。適用される電力は、圧送デバイス60に使用される材料に本質的に依存している。
【0067】
工程300中、プログラミングシステム70は、上記にて定義されるような1つ以上の血小板放出シークエンスを開始させるように制御されている。有利には、プログラミングシステム70は電力供給モジュール62を制御することが可能である。このプログラミングシステム70により、血小板P放出シークエンスの時間及びその数の全体を制御することもまた可能である。血小板放出シークエンスは、所望の体積の流体を処理するため、ユーザが望む限り継続可能である。
【0068】
前述のセクションで説明されるプログラミングシステム70が、電力供給された圧送デバイス62を用いて操作される際には、陥没(降圧)、又は構成によっては排出が1つ以上のデバイス2、2´、2´´中に発生する。「陥没(降圧)」は、1つ以上のデバイス2、2´、2´´における圧力が大気圧よりも低下することを意味しており、これはすなわち、これ/これらが相対真空に供されることを意味している。「排出」は、例えばエジェクタ又はコンプレッサといった排出ポンプにより流体Fを移動するといった事実に相当する。この陥没(降圧)又はこの排出の結果として、流体Fの連続流れ(すなわち変位)は、システム1内で供給源リザーバ40から受容リザーバ50へと生じる。好ましくは、陥没(降圧)、適切である場合には排出速度、及び流体Fの流量が実質的に一定の状態に保たれるよう、圧送デバイス60の吸引力又は排出力もまた、方法5の間は一定に維持されるという点に留意されたい。しかしこの状態は、最適な血小板放出効率を得ることを可能とする制限内で方法を実践している間の電力変化を妨げることがない。
【0069】
1つ以上のシステム2、2´、2´´内で陥没(降圧)又は排出が発生するとすぐ、プログラミングシステム70における更なる動作なしに、流体は、陥没(降圧)又は排出が維持される限りは連続的に生じる異なる段階(すなわち、302、304及び306)を経由する。これらの段階は、1つ以上のシステム2、2´、2´´における流体変位による直接的な結果である。段階302は、流体Fがリザーバ10に入る前の段階に相当し、段階304は流体Fがリザーバ10に存在する際の段階に相当し、段階306は流体Fがリザーバ10から外に吸い出された後の段階に相当する。言い換えれば、流体Fの一部が処理されている際に、同時に流体Fの別の部分がリザーバ10で処理され、別の部分は、流体回路に沿ってリザーバ10の上流で(すなわち、第1接続要素20又は供給源リザーバ40で)処理されることになることから、段階302、304及び306は実際のところは同時に生じる。
【0070】
段階302の間、流体Fは第1流体接続要素20を通って吸引される。デバイス内部の圧力は一定に維持されているため、流体Fの速度は、当該狭窄部24の口広げ加工といったほかならぬ事実に起因して、この流体Fが狭窄部24を通過するにつれ増大する。こうすることで流体Fは注入開口部22を介してリザーバ10へと排出される。注入開口部22/リザーバ10界面に存在する急激な断面拡大部に起因する特異点により、流体Fがリザーバ10に入る際に流体Fの減速が生じる。
【0071】
段階304の間、流体Fは、リザーバ10を通って流れ、空洞14の制限の範囲内で圧送デバイス60により発生した陥没(降圧)又は排出を受ける。実際に、開口部22/リザーバ10界面に存在している特異点により流体は減速されるものの、この陥没(降圧)又は排出が理由で移動し続けている。流体はリザーバ外部へと直接流れないが、こうすることで、渦の擾乱といった形式で当該流体の循環が可能となる。実際に、システム1は、リザーバ10の流体Fの滞留時間が擾乱を生み出すのに十分であるように構成されている。上記にて説明されるように、排出開口部32に対する大きいサイズのリザーバ10の特異点により、十分な滞留時間が得られる。以下にて説明されるように流体Fの経路における排出開口部32に対し、注入開口部22の位置を有利にはずらすことによって滞留時間もまた増大し得るが、これはわずかな程度である。
【0072】
これらの条件下では、巨核球とおよそ同じサイズの渦の擾乱が作り出される。こうした渦の流れにより、巨核球Mk及びそれらの細胞質の伸展部Ck(前駆血小板)を断片化することが可能であり、血小板Pの放出を生じさせる。同時に、巨核球の断片化から生じる他の生成物Dkが産生される。これらの生成物は前駆血小板の破片であり、巨核球Mkの無傷の本体、又は細胞質片である。流体Fは各血小板放出シークエンスに関して経時的に連続して処理されることから、上記の現象は連続して再現され、血小板は連続して放出される。まとめると、リザーバ10に入る流体Fは細胞質の伸展部を含む巨核球細胞Mkを含むが、リザーバ10から出る流体Fは本質的には血小板P及び他の生成物Dkを含む。この点に関して、図2a~図2cに示されるように、連続するデバイス2、2´を備えるシステム1を使用することで、有利には、方法5に従い未だ無処理である巨核球の割合を低減させることが可能となる。流体Fがデバイス2´で循環するたびに、この流体Fは擾乱を受ける。したがって、単一デバイス2を備えるシステム1と比較すると、連続するシステム1の効率はより高いことは頭に留めておく必要がある。
【0073】
段階306の間、巨核球の断片化から生じる血小板P及び他の生成物を備えた流体Fは、排出開口部32を通って、より一般には第2流体接続要素30を通って吸引される。こうすることで、流体Fは受容リザーバ50に到達し、もし存在するならば圧送デバイス60に到達する。
【0074】
工程400の間、1つ以上のシークエンスは、プログラミングシステム70を用いて電力供給モジュール62の電源を切ることにより停止される。
【0075】
これらの段階は、本発明によるシステム1に存在する任意の他のデバイス2´及び/又は2´´で同様に生じる。
【0076】
血小板を放出するために、流体の流量は有利には、37mL/分~120mL/分以上でなければならない。これらの流量値は、6度の測定の平均を表す平均値である。図5aは、本発明による方法を実践することで(灰色の棒)及びピペット(黒色棒)により発生した相対真空の関数として、複数のキャリブレーションチューブ(BD Trucoun(登録商標)Tubes)、又は5000本に等しい計数管の、血小板数の放出を示す。相対真空は特に、キロパスカル(kPa)で表現される。陥没(降圧)又は排出が1つ以上のデバイス2、2´、2´´で一切発生しない際には、血小板放出効率は非常に低い状態を維持する(非常に薄い灰色)。-10kPaと同等の相対真空では、上記にて言及されるように37mL/分の最小値が得られる。こうした相対真空では、血小板放出効率は増大し、放出された血小板の数は5,000本の管あたり10,000個を超える。この血小板放出の効率は、依然として相対的に低い。相対真空が増大するにつれて、血小板放出の効率は増大する。相対真空が-30kPaと同等の際には、120mL/分である上記に言及された値が得られる。放出された血小板の数は、5,000本の巨核球管あたり20,000個超である。図5aで示されるように、得られた血小板放出効率は、従来の手動でピペットを使用して得られるものに近く、更に高いこともある。これは、満足のいく放出効率を得るために、システム1に発生する陥没(降圧)又は流体排出の重要性を示している。ここで示されている例示的な実施形態において、相対真空が-30kPaである場合には、これは-30kPa、すなわち最大50kPaを超えて増大し得る。得られた流体流量は、120mL/分をはるかに上回る。
【0077】
これは、本発明の例示的実施形態で使用される1つ以上のデバイス2、2´、2´´の特性に起因する。実際に、流量を調節するために、圧送デバイス60の吸引力又は排出力、注入開口部22のサイズ及び排出開口部32のサイズ、更には流体Fが実際にそこを通って通過する1つ以上のデバイス2、2´、2´´の要素の表面状態との間に妥協点を見出さねばならないが、これは本発明の制限の範囲内である。この最後の態様を考えると、表面状態(ミクロでの表面粗さ、表面粗さなど)が流体Fに制約を及ぼす影響が大きくなればなるほど、流体Fは減速し、その逆もまたあり得る。より高い血小板放出効率を得るためには、例えば表面状態が調節され得る。これは、流体Fがそこを通って流れる1つ以上のデバイス2、2´、2´´の要素を製造するのに用いられる材料を変性させることによって、マイクロメートル規模で構造の制御を可能とする他の製造方法を用いることによって、更には例えば血漿又はアルブミンなどの化合物をチャンバに注ぐことによって、行われ得る。
【0078】
図5bは、天然血小板(中空棒)及び培養された血小板(中実棒)に関して、-30kPaの圧力で得られた血小板の機能性の分析を示す。この相対真空では、およそ8%の天然血小板及びおよそ10%の不活性化培養された血小板は、糖タンパク質GPIIb/IIIaを発現する。約12%の天然血小板及び約16%のCRP型アゴニスト(コラーゲン関連ペプチド)で活性化された培養血小板は、糖タンパク質GPIIb/IIIaを発現する。最後に、約30%の天然血小板及び約22%のTRAP型アゴニスト(トロンビン受容体-活性化ペプチド)で活性化された培養血小板は、糖タンパク質GPIIb/IIIaを発現する。本発明による方法により得られた血小板はしたがって、良好に活性化され結果的には機能的である。
【符号の説明】
【0079】
1 システム
2 (第1の)デバイス
2´ 他のデバイス
2´´ 他のデバイス
10 血小板放出リザーバ
16 第1開口
18 第2開口
20 第1流体接続要素
22 注入開口部(注入オリフィス)
24 狭窄部
30 第2流体接続要素
32 排出開口部(排出オリフィス)
34 広がっている部分(排出部)
40 供給源リザーバ
50 受容リザーバ
60 圧送デバイス(ポンプデバイス)
62 電力供給モジュール
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b