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特許7584515ツールホルダのためのクランピングデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ツールホルダのためのクランピングデバイス
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/107 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
B23B31/107 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022528009
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2020082173
(87)【国際公開番号】W WO2021099230
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】19210465.1
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マトリック, グンナル
(72)【発明者】
【氏名】ワスタールンド, ヨナス
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-69304(JP,A)
【文献】特開2001-18134(JP,A)
【文献】特開平3-98705(JP,A)
【文献】特開昭58-171232(JP,A)
【文献】米国特許第4915553(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/107、31/26
B23Q 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールホルダシャンクをリリース可能に保持するためのクランピングデバイスであって、
ハウジング(3)と、
前記ハウジング(3)の内部に回転可能に載置されており、前端と、後端と、前記前端を交差してそこから後方に伸長するボア(5)と、を有し、前記ツールホルダシャンク(71)を受容するための載置部位(7)が、前記ボア(5)の前端に提供されているスピンドル(2)と、
前記ボア(5)の内部にスライド可能に載置されており、前記ボアにおいて、その縦方向軸(L)に沿って、前進したリリース位置と引き込まれたロッキング位置との間を往復移動可能となるようになっているドローバー(8)と、
その前端にて前記ドローバー(8)の周りに配置されているかみ合い部材(20)であって、前記前進したリリース位置から前記引き込まれたロッキング位置への前記ドローバー(8)のムーブメントの効果の下で、前記ツールホルダシャンク(71)が、前記ボア(5)の前記載置部位(7)に出入することを、前記かみ合い部材(20)が可能にする第1の位置から、前記かみ合い部材(20)が、前記ツールホルダシャンク(71)とのロッキングかみ合いにあり、それを前記スピンドル(2)に固定されたままにする第2の位置に移動可能であるかみ合い部材(20)と、
前記ハウジング(3)の内部に配置されている作動部材(13)であって、前記スピンドル(2)にスライド可能に載置されており、前記スピンドル(2)に対してその前記軸方向に移動可能となるようになっている作動部材(13)と、
前記ハウジング(3)の内部に配置されているモーション転嫁メカニズム(30)であって、前記スピンドル(2)に載置されており、前記スピンドル(2)に対しての前記作動部材(13)の第1の軸方向(D)へのムーブメントを、前記ドローバー(8)の、前記前進したリリース位置から前記引き込まれたロッキング位置へのムーブメントに転嫁するよう構成されているモーション転嫁メカニズム(30)と、
を含むクランピングデバイス(1)であって、
前記スピンドル(2)の複数の異なる側において、前記ハウジング(3)内に配置又はその上に載置されており、前記作動部材(13)を、前記スピンドル(2)に対して軸方向に移動させるよう構成されている2つ又はそれ以上の油圧アクチュエータ(50)であって、1つ又はそれ以上のピストン部材(52a、52b)であって、それぞれが、前記スピンドル(2)の側にて、そこから離れて、前記油圧アクチュエータ(50)の空間(53)にスライド可能に受容されており、この前記空間(53)において、前記縦方向軸(L)と平行に、油圧によって軸方向に移動可能となるようになっている、1つ又はそれ以上のピストン部材(52a、52b)を、それぞれが含む、2つ又はそれ以上の油圧アクチュエータ(50)と、
前記ハウジング(3)の内部に少なくとも部分的に配置されており、前記作動部材(13)と前記油圧アクチュエータ(50)の前記ピストン部材(52a、52b)との間の接続を半径方向に形成するよう構成されている接続エレメント(60)であって、前記ハウジング(3)に対しての前記ピストン部材(52a、52b)の軸方向のムーブメントを、前記スピンドル(2)に対しての前記作動部材(13)の、対応する軸方向のムーブメントに転嫁するよう構成されている接続エレメント(60)と、
をさらに含むことを特徴とする、クランピングデバイス(1)。
【請求項2】
前記ドローバー(8)が、前記作動部材(13)と前記モーション転嫁メカニズム(30)との効果の下で、前記引き込まれたロッキング位置に押し込まれている際に、前記作動部材(13)は、セルフロッキングの軸方向の位置を前記スピンドル(2)内又はこの上に想定するよう構成されており、これにより、前記ドローバー(8)を前記引き込まれたロッキング位置に維持するようになっていることを特徴とする、請求項1に記載のクランピングデバイス。
【請求項3】
前記油圧アクチュエータ(50)は、その数が2つであり、前記スピンドル(2)の向かい合う側の双方において互いに向かい合って配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のクランピングデバイス。
【請求項4】
前記接続エレメント(60)は、
それを通して、前記接続エレメントが前記作動部材(13)に接続されている中央部(61)と、
それぞれが、前記油圧アクチュエータ(50)のそれぞれに対するものであり、それを通して、前記接続エレメントが、前記油圧アクチュエータの前記ピストン部材(52a、52b)に接続されている数本のアーム(62)と、
を含み、
前記アーム(62)のそれぞれは、前記中央部(61)に固定されており、前記中央部から半径方向に突出していることを特徴とする、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項5】
前記油圧アクチュエータ(50)のそれぞれは、第1及び第2のピストン部材とここで表されており、互いに向かい合って、互いに整列して配置されている2つの前記ピストン部材(52a、52b)を含み、
前記第1及び第2のピストン部材(52a、52b)のそれぞれは、他の前記ピストン部材に向いている第1の側と、他の前記ピストン部材に背を向けている反対側の第2の側と、を有し、
第1の油圧チャンバ(54a)が、前記油圧アクチュエータ(50)の前記空間(53)内に、前記第1のピストン部材(52a)の前記第2の側において形成されており、
第2の油圧チャンバ(54b)が、この空間(53)内に、前記第2のピストン部材(52b)の前記第2の側において形成されており、
前記接続エレメント(60)の前記アーム(62)のそれぞれは、関連付けられている前記油圧アクチュエータ(50)の前記第1及び第2のピストン部材(52a、52b)の間の空間に受容される一部を有し、
前記接続エレメント(60)は、前記油圧アクチュエータ(50)のそれぞれの前記第1の油圧チャンバ(54a)への作動油の供給により、前記第1の軸方向(D)に、及び、前記油圧アクチュエータ(50)のそれぞれの前記第2の油圧チャンバ(54b)への作動油の供給により、反対の第2の軸方向に移動可能であることを特徴とする、
請求項4に記載のクランピングデバイス。
【請求項6】
前記油圧アクチュエータ(50)のそれぞれの前記第1及び第2のピストン部材(52a、52b)は、共に互いに軸方向に移動可能となるために、互いに固定して接続されていることを特徴とする、請求項5に記載のクランピングデバイス。
【請求項7】
前記油圧アクチュエータ(50)のそれぞれの前記第1及び第2のピストン部材(52a、52b)は、前記第1及び第2のピストン部材の間の前記空間にわたって、この空間に受容されている前記アーム(62)の前記一部におけるリセス(64)を通して伸長するシャフト(56)を介して互いに接続されていることを特徴とする、請求項6に記載のクランピングデバイス。
【請求項8】
前記接続エレメント(60)は、前記油圧アクチュエータ(50)の前記第1及び第2のピストン部材(52a、52b)の間に配置されている前記シャフト(56)上に浮いていることを特徴とする、請求項7に記載のクランピングデバイス。
【請求項9】
前記シャフト(56)のそれぞれは、関連付けられている前記アーム(62)の前記リセス(64)に遊びを持って受容されており、
好ましくはOリングの形態での1つ又はそれ以上の弾性エレメント(65)が、前記シャフト(56)の周りに配置されており、前記リセス(64)の内部の、前記シャフト(56)と前記アーム(62)との間に、前記接続エレメント(60)と前記シャフトとの間の弾性接続を提供するために、取り付けられていることを特徴とする、
請求項8に記載のクランピングデバイス。
【請求項10】
前記アーム(62)のそれぞれは、関連付けられている前記油圧アクチュエータ(50)の前記第1及び第2のピストン部材(52a、52b)の向かい合う前記第1の側の双方における接触面(58a、58b)と、それらの前記ピストン部材(52a、52b)の間の前記空間に受容されている前記アーム(62)の前記一部の向かい合う側の双方における接触面(68a、68b)を介して接触するよう構成されており、
前記アーム(62)における前記接触面(68a、68b)又は前記第1及び第2のピストン部材(52a、52b)における前記接触面(58a、58b)は、前記アーム(62)と前記ピストン部材(52a、52b)との間の線形接触を提供するために凸状に曲がっていることを特徴とする、
請求項5から請求項9のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項11】
前記作動部材(13)は、スリーブの形態を有し、
前記作動部材(13)は、前記スピンドル(2)の周壁(14)の周りに配置されており、この周壁(14)にスライド可能に載置されており、前記スピンドル(2)に対して軸方向に移動可能となるようになっており、
前記作動部材(13)は、前記接続エレメント(60)に対して、前記スピンドル(2)と共に回転可能であることを特徴とする、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項12】
前記作動部材(13)は、前記接続エレメント(60)の前記中央部(61)において、円形の断面形状を持つリセス(63)を通して伸長することを特徴とする、請求項4と組み合わせての、請求項11に記載のクランピングデバイス。
【請求項13】
前記モーション転嫁メカニズム(30)は、前記スピンドル(2)の周方向に間隔があけられている2つ又はそれ以上のウェッジ(31)を含み、
前記ウェッジ(31)のそれぞれは、前記スピンドル(2)の前記周壁(14)を通して半径方向に伸長するアパーチャ(32)のそれぞれに受容されており、
前記ウェッジ(31)は、それらが、関連付けられている前記アパーチャ(32)において半径方向に内向きに押されている際に、前記ドローバー(8)を、前記引き込まれたロッキング位置に向けて押すよう構成されており、
前記ウェッジ(31)のそれぞれは、前記スピンドル(2)から外に向いている第1の受圧面(33)を含み、
前記作動部材(13)には、その内側において、前記ウェッジのそれぞれにおける前記第1の受圧面(33)と接触するために内に向いている第1の加圧面(34)が提供されており、
前記第1の加圧面(34)は、前記第1の軸方向(D)に見て長くなる前記縦方向軸(L)までの半径方向の距離を有し、
前記第1の加圧面(34)は、前記作動部材(13)が前記第1の軸方向(D)に動かされる際に、前記ウェッジのそれぞれにおける前記第1の受圧面(33)を押すことにより、前記ウェッジ(31)のそれぞれを、関連付けられている前記アパーチャ(32)において半径方向に内向きに押すよう構成されていることを特徴とする、
請求項11又は12に記載のクランピングデバイス。
【請求項14】
前記第1の加圧面(34)と前記第1の受圧面(33)とは、前記縦方向軸(L)に対して、前記ドローバー(8)が、前記作動部材(13)と前記ウェッジ(31)との効果の下で、前記引き込まれたロッキング位置に押し込まれている際に、前記ウェッジ(31)が、前記作動部材(13)を、前記スピンドル(2)におけるセルフロッキングの軸方向の位置に維持するそのような角度αにより傾いていることを特徴とする、請求項13に記載のクランピングデバイス。
【請求項15】
前記ドローバー(8)は、前記作動部材(13)と前記モーション転嫁メカニズム(30)との効果の下で、前記前進したリリース位置から前記引き込まれたロッキング位置に、前記スピンドル(2)の内部に配置されているリリーススプリング(17)からのスプリング力の作用に抗して移動可能であることを特徴とする、請求項11から請求項14のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツールホルダを工作機械に接続するために使用されることが意図されている、請求項1のプリアンブルに係るクランピングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
金属切削のための工作機械の分野内では、例えば、ドリル又はミリングツールの形態での、金属材料のワークピースを加工するために使用される切削ツールはしばしば、ツールホルダに固定され、これと共に回される。これはその後、工作機械の回転可能スピンドルに取り外し可能にクランプされ、そのスピンドルと共に回されてよい。そのようなツールホルダのシャンクを、スピンドルに配置されているクランピングメカニズムを用いて、回転可能スピンドルにクランプすることが、以前より知られている。切削ツールの交換が必要な際に、ツールホルダはスピンドルからリリースされ、別の切削ツールが付いた新たなツールホルダが、スピンドルにクランプされる。
【0003】
自動ツール交換作業に適合されているクランピングメカニズムを持つスピンドルを含むクランピングデバイスが、EP1468767B1から以前より知られている。EP1468767B1に係るクランピングデバイスでは、第1のドローバーの形態での作動部材が、スピンドルの内部にスライド可能に載置されており、これは、第2のドローバーの軸方向の変位を、それらのドローバー間に配置されている多くの協働ウェッジを含む力増幅メカニズムを介して達成するよう構成されている。スピンドルの内部のガススプリングは、2つのドローバーを引き込まれたロッキング位置に付勢するよう構成されている。ここでは、ツールホルダがスピンドルにクランプされている。油圧ピストンは、2つのドローバーの、ツールホルダがスピンドルからリリースされてよい前進したリリース位置への変位を達成するために、ガススプリングの後端にて、ピストンに作用するよう構成されていてよい。しかし、この以前より知られているクランピングデバイスは、比較的長い軸方向の広がりを有し、したがって、クランピングデバイスに対して利用可能な軸方向の空間が限られているツールタレットの外縁にて、ツールホルダが取り外し可能に固定されている際には、このタイプのクランピングデバイスを使用することには適していない。
【0004】
本発明の目的は、新しくて好ましいデザインを有し、工作機械のツールタレットとの使用に適している、上述するタイプのクランピングデバイスを提供することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明によると、本目的は、請求項1に画定される特徴を有するクランピングデバイスを用いて達成される。
【0006】
本発明に係るクランピングデバイスは、
ハウジングと、
ハウジングの内部に回転可能に載置されており、前端と、後端と、前端を交差してそこから後方に伸長するボアと、を有し、ツールホルダシャンクを受容するための載置部位が、ボアの前端に提供されているスピンドルと、
ボアの内部にスライド可能に載置されており、ボアにおいて、その縦方向軸に沿って、前進したリリース位置と引き込まれたロッキング位置との間を往復移動可能となるようになっているドローバーと、
その前端にてドローバーの周りに配置されているかみ合い部材であって、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置へのドローバーのムーブメントの効果の下で、ツールホルダシャンクが、ボアの載置部位に出入することを、かみ合い部材が可能にする第1の位置から、かみ合い部材が、ツールホルダシャンクとのロッキングかみ合いにあり、それをスピンドルに固定されたままにする第2の位置に移動可能であるかみ合い部材と、
ハウジングの内部に配置されている作動部材であって、スピンドルにスライド可能に載置されており、スピンドルに対してその軸方向に移動可能となるようになっている作動部材と、
ハウジングの内部に配置されているモーション転嫁メカニズムであって、スピンドルに載置されており、スピンドルに対しての作動部材の第1の軸方向へのムーブメントを、ドローバーの、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置へのムーブメントに転嫁するよう構成されているモーション転嫁メカニズムと、
スピンドルの複数の異なる側において、ハウジング内に配置又はその上に載置されており、作動部材を、スピンドルに対して軸方向に移動させるよう構成されている2つ又はそれ以上の油圧アクチュエータであって、1つ又はそれ以上のピストン部材であって、それぞれが、スピンドルの側にて、そこから離れて、油圧アクチュエータの空間にスライド可能に受容されており、この空間において、縦方向軸と平行に、油圧によって軸方向に移動可能となるようになっている、1つ又はそれ以上のピストン部材を、それぞれが含む、2つ又はそれ以上の油圧アクチュエータと、
ハウジングの内部に少なくとも部分的に配置されており、作動部材と油圧アクチュエータのピストン部材との間の接続を半径方向に形成するよう構成されている接続エレメントであって、ハウジングに対してのピストン部材の軸方向のムーブメントを、スピンドルに対しての作動部材の、対応する軸方向のムーブメントに転嫁するよう構成されている接続エレメントと、
を含む。
【0007】
その複数の異なる側において、スピンドルの側に置かれている油圧アクチュエータを用いて、ドローバーの軸方向のムーブメントを制御することにより、軸方向に多くの空間を占めるガススプリング又は同様のものは、ドローバーの軸方向のムーブメントを制御するために必要なく、これは、クランピングデバイスを軸方向にコンパクトにすることができることを暗示する。クランピングデバイスはしたがって、ツールタレットでの使用に好適となる。さらに、作動部材を移動させることと、これによる、ドローバーのムーブメントを達成することと、のための油圧アクチュエータの使用は、本発明に係るクランピングデバイスが、自動ツール交換作業での使用に好適となることを暗示する。
【0008】
本発明に係るクランピングデバイスは、工作機械のツールタレットに載置されてよい。ここでは、クランピングデバイスの回転可能スピンドルは、ツールタレットにおけるドライブメカニズムに接続されている、又は、これに接続可能である。しかし、クランピングデバイスは、ツールタレットでの使用に限定されない。それどころか、クランピングデバイスの回転可能スピンドルは、工作機械のメインスピンドルを構成し得る、又は、いずれの中間ツールタレットなく、そのようなメインスピンドルに接続され得る。
【0009】
本発明の1つの実施形態によると、ドローバーが、作動部材とモーション転嫁メカニズムとの効果の下で、引き込まれたロッキング位置に押し込まれている際に、作動部材は、セルフロッキングの軸方向の位置をスピンドル内又はこの上に想定するよう構成されており、これにより、ドローバーを引き込まれたロッキング位置に維持するようになっている。これによって、作動部材は、スピンドルの回転中、ドローバーを、引き込まれたロッキング位置に、油圧アクチュエータからのいずれの外力を必要とすることなく、維持することができる。これは、スピンドルと作動部材とが静止位置にある際に、作動部材は、ツール交換作業に関連して、油圧アクチュエータからの力のみを受ける必要があることを暗示する。これによって、スピンドルの回転中、作動部材と接続エレメントとの間、及び/又は、接続エレメントと油圧アクチュエータのピストン部材との間の摩擦力が回避されてよい、又は、少なくとも非常に低いレベルまで下げられてよい。
【0010】
本発明の別の実施形態によると、接続エレメントは、それを通して、接続エレメントが作動部材に接続されている中央部と、それぞれが、油圧アクチュエータのそれぞれに対するものであり、それを通して、接続エレメントが、油圧アクチュエータのピストン部材に接続されている数本のアームと、を含み、アームのそれぞれは、中央部に固定されており、中央部から半径方向に突出している。
【0011】
本発明の別の実施形態は、
油圧アクチュエータのそれぞれは、第1及び第2のピストン部材とここで表されており、互いに向かい合って、互いに整列して配置されている2つのそのようなピストン部材を含み、
第1及び第2のピストン部材のそれぞれは、他のピストン部材に向いている第1の側と、他のピストン部材に背を向けている反対側の第2の側と、を有し、第1の油圧チャンバが、油圧アクチュエータの空間内に、第1のピストン部材の第2の側において形成されており、第2の油圧チャンバが、この空間内に、第2のピストン部材の第2の側において形成されており、
接続エレメントのアームのそれぞれは、関連付けられている油圧アクチュエータの第1及び第2のピストン部材の間の空間に受容される一部を有し、
接続エレメントは、油圧アクチュエータのそれぞれの第1の油圧チャンバへの作動油の供給により、第1の軸方向に、及び、油圧アクチュエータのそれぞれの第2の油圧チャンバへの作動油の供給により、反対の第2の軸方向に移動可能であることを特徴とする。
【0012】
ピストン部材と接続エレメントとのこの配置により、必要な力を、ピストン部材から作動部材に、シンプルかつ確実に転嫁することが可能となる。
【0013】
本発明の別の実施形態によると、油圧アクチュエータのそれぞれの第1及び第2のピストン部材は、共に互いに軸方向に移動可能となるために、互いに固定して接続されている。油圧アクチュエータの安定性が、これによって改善される。
【0014】
本発明の別の実施形態によると、油圧アクチュエータのそれぞれの第1及び第2のピストン部材は、第1及び第2のピストン部材の間の空間にわたって、この空間に受容されているアームの一部におけるリセスを通して伸長するシャフトを介して互いに接続されている。この場合では、油圧アクチュエータのピストン部材の間のシャフトが、接続エレメントに対するサスペンションポイントとして使用されてよい。
【0015】
本発明の別の実施形態によると、そのようなシャフトのそれぞれは、関連付けられているアームのリセスに遊びを持って受容されており、好ましくはOリングの形態での1つ又はそれ以上の弾性エレメントが、シャフトの周りに配置されており、リセスの内部の、シャフトとアームとの間に、接続エレメントとシャフトとの間の弾性接続を提供するために、取り付けられている。接続エレメントのアームは、作動部材のムーブメント中、曲げモーメントを受けてよい。弾性エレメントは、接続エレメントのアームの小さい曲げムーブメントを吸収することが可能となり、これにより、ピストン部材が、接続エレメントのアームから転嫁された曲げモーメントにより悪影響を受けることを防いでよい。
【0016】
本発明の別の実施形態によると、アームのそれぞれは、関連付けられている油圧アクチュエータの第1及び第2のピストン部材の向かい合う第1の側の双方における接触面と、それらのピストン部材の間の空間に受容されているアームの一部の向かい合う側の双方における接触面を介して接触するよう構成されており、アームにおける接触面又は第1及び第2のピストン部材における接触面は、アームとピストン部材との間の線形接触を提供するために凸状に曲がっている。接触面のこの配置は、接続エレメントのアームに、ピストン部材に対して旋回する一定の自由度を与えることとなり、これは、ピストン部材が、接続エレメントのアームから転嫁された曲げモーメントによる悪影響を受けることから保護してよい。
【0017】
本発明の別の実施形態によると、作動部材は、スリーブの形状を有し、作動部材は、スピンドルの周壁の周りに配置されており、この周壁にスライド可能に載置されており、スピンドルに対して軸方向に移動可能となるようになっており、作動部材は、接続エレメントに対して、スピンドルと共に回転可能である。この場合では、作動部材は、接続エレメントの中央部において、円形の断面形状を持つリセスを通して伸長してよい。
【0018】
本発明の別の実施形態は、
モーション転嫁メカニズムは、スピンドルの周方向に間隔があけられている2つ又はそれ以上のウェッジを含み、
ウェッジのそれぞれは、スピンドルの周壁を通して半径方向に伸長するアパーチャのそれぞれに受容されており、
ウェッジは、それらが、関連付けられているアパーチャにおいて半径方向に内向きに押されている際に、ドローバーを、引き込まれたロッキング位置に向けて押すよう構成されており、
ウェッジのそれぞれは、スピンドルから外に向いている第1の受圧面を含み、
作動部材には、その内側において、ウェッジのそれぞれにおける第1の受圧面と接触するために内に向いている第1の加圧面が提供されており、
第1の加圧面は、第1の軸方向に見て長くなる縦方向軸までの半径方向の距離を有し、
第1の加圧面は、作動部材が第1の軸方向に動かされる際に、ウェッジのそれぞれにおける第1の受圧面を押すことにより、ウェッジのそれぞれを、関連付けられているアパーチャにおいて半径方向に内向きに押すよう構成されていることを特徴とする。
【0019】
第1の加圧面は、第1の軸方向に長くなる、縦方向軸までの半径方向の距離を有するため、第1の軸方向への作動部材のムーブメントは、第1の加圧面により、ウェッジのそれぞれの第1の受圧面に圧力を適用させることとなる。この圧力は、半径方向のコンポーネントを有することとなり、ウェッジのそれぞれが、半径方向に内向きに、縦方向軸に向かって押されるようなる。
【0020】
本発明の別の実施形態によると、第1の加圧面と第1の受圧面とは、縦方向軸に対して、ドローバーが、作動部材とウェッジとの効果の下で、引き込まれたロッキング位置に押し込まれている際に、ウェッジが、作動部材を、スピンドルにおけるセルフロッキングの軸方向の位置に維持するそのような角度αにより傾いている。この場合では、第1の加圧面と第1の受圧面とは双方とも、スピンドルを通る縦方向の断面に見た際に、同じ方向に伸長する。角度αは、ドローバーが、ボアの内部を、引き込まれたロッキング位置に変位している際に、作動部材が、ウェッジに対してセルフロッキングの軸方向の位置となるよう、セルフロック閾値角度未満となるよう選ばれる。セルフロッキングの軸方向の位置を得るため、角度αは、十分小さくあるべき、つまり、セルフロック閾値角度未満であるべきである。セルフロッキングの軸方向の位置とは、軸方向の位置を指す。ここでは、ウェッジのそれぞれの第1の受圧面と作動部材の第1の加圧面との間の静止摩擦力が、縦方向軸に鉛直する半径方向に、ウェッジに適用された力により引き起こされた、摩擦の面において対抗する力より大きい。したがって、セルフロッキングの軸方向の位置は、ウェッジのそれぞれの第1の受圧面と作動部材の第1の加圧面との間の摩擦の係数に依存する角度範囲内に得られる。この摩擦の係数は、使用される材料、表面コーティング、潤滑剤の使用など、各種のパラメータに依存する。したがって、セルフロック閾値角度は、そのようなパラメータによって決まる。当業者であれば、各特定のケースに適用するセルフロック閾値角度を、共通の一般知識、及び/又は、日常の実験、又は、特定の角度が、そのようなセルフロック閾値角度未満であるか否かの少なくとも予測又は査定を使用することにより、特定できるであろう。一般的に、セルフロック閾値角度を十分に下回り、これにより、セルフロッキング構成を確かなものとする角度αを選ぶことが好ましい。小さい角度αは、作動部材の比較的長い軸方向の変位が、ドローバーの比較的短い軸方向の変位をもたらすことを暗示するという事実のおかげで、小さい角度αを使用することのさらなる恩恵は、力を増幅する効果が達成されることである。しかし、小さすぎる角度αは非効率なものとなり、現実的には良好に機能しない場合がある。例えば、非常に小さい角度αは、それが、作動部材をセルフロッキングの軸方向の位置からリリースすることが難しいということを示す場合がある。角度αは、好適には、2°と10°との間にある。角度αがこの範囲内であれば、セルフロッキング効果、同様に、力を増幅する適切な効果が達成されてよい。
【0021】
本発明の別の実施形態によると、ドローバーは、作動部材とモーション転嫁メカニズムとの効果の下で、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置に、スピンドルの内部に配置されているリリーススプリングからのスプリング力の作用に抗して移動可能である。したがって、リリーススプリングは、作動部材が、第1の軸方向とは反対の第2の軸方向に動かされる際に、ドローバーを、前進したリリース位置に向けて移動させるよう構成されている。リリーススプリングは、作動部材が第2の軸方向に動かされるとすぐに、ドローバーが、前進したリリース位置に向けて押されることを確かにしてよい。リリーススプリングはまた、モーション転嫁メカニズムの異なるコンポーネントが、特定の軸方向の圧力の下で常に保たれ、これにより、互いに密着して、互いに対して、及び、作動部材とドローバーとに対して、正しい位置に維持されることをも確かにしてよい。
【0022】
本発明に係るクランピングデバイスのさらに好適な特徴が、以下の説明と、従属請求項と、からわかるであろう。
【0023】
以下の添付の図面を参照して、例として示す、本発明の実施形態の具体的な説明が以下に続く。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の1つの実施形態に係るクランピングデバイスの斜視図である。
図2図1のクランピングデバイスの前面図である。
図3図2の線III-IIIに係る切断図である。
図4図2の線IV-IVに係る切断図である。
図5図3の線V-Vに係る切断図である。
図6】ツールホルダが、クランピングデバイスのスピンドルにクランプされている、図1のクランピングデバイスに含まれる各部の部分的切断側面図である。
図7図6に示すクランピングデバイスの各部の部分的切断斜視図である。
図8】ツールホルダが、スピンドルにクランプされている、図6に示す、ツールホルダと、クランピングデバイスのいくつかの部分と、を通る縦方向の断面図である。
図9図8に示す、ツールホルダと、クランピングデバイスの各部と、の上からの平面図であるが、作動部材は、スピンドルから取り外されている。
図10】ツールホルダが、スピンドルから取り外されている、図8に示す、ツールホルダと、クランピングデバイスの各部と、の部分的切断斜視図である。
図11】ツールホルダがクランプされていない状態にある、図8に示す、ツールホルダと、クランピングデバイスの各部と、の側面図である。
図12】ツールホルダがクランプされていない状態にある、図8に示す、ツールホルダと、クランピングデバイスの各部と、を通る縦方向の断面図である。
図13図11の線XIII-XIIIに係る断面図である。
図14】本発明の別の実施形態に係るクランピングデバイスの模式的な部分的切断側面図である。
図15図14の線XV-XVに係る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の1つの実施形態に係るクランピングデバイス1を、図1から図5に示す。クランピングデバイス1は、クランピングデバイスにおいて、ツールホルダ70(図6及び図8から図12に極めて模式的に示す)を、回転可能スピンドル2にリリース可能にクランプし、ツールホルダ70に固定されている切削ツール(図示せず)を用いてのワークピースの加工を可能にするよう構成されている。
【0026】
スピンドル2は、クランピングデバイス1のハウジング3に、例えば、テーパードローラーベアリング4a及びボールベアリング4b、又は、いずれの他の適しているタイプのローリングベアリングの形態でのローリングベアリング4a、4bを用いて、回転可能に載置されている。スピンドル2は、前端2aと、後端2bと、前端2aを交差してそこから後方に伸長するボア5と、を有する。したがって、ボア5は、スピンドルの前端2aにて、入口開口5a(図1及び図10を参照されたい)を有する。
【0027】
図1から図5に示す実施形態では、クランピングデバイス1は、ハウジング3に、例えば、ボールベアリング18a及びローラーベアリング18b、又は、いずれの他の適しているタイプのローリングベアリングの形態でのローリングベアリング18a、18bを用いて、回転可能に載置されているドライブシャフト16を含む。ドライブシャフト16は、スピンドル2に向いている第1の端16aと、スピンドルに背を向けている反対側の第2の端16bと、を有する。ドライブシャフト16は、工作機械のツールタレットにおけるドライブメカニズムなどの、工作機械のドライブメカニズムに、ドライブシャフトの第2の端16bにて、接続ピン6を介して、ドライブシャフト16を、ドライブメカニズムにより回転駆動できるようにするために、接続可能である。ドライブシャフト16は、スピンドル2に、その第1の端16aにてドライブシャフト16に回転不可能に固定されている第1のベベルギア19aと、第1のベベルギア19aとかみ合いにあり、スピンドル2に回転不可能に固定されている第2のベベルギア19bと、を含むベベルギア配列19を介して駆動接続されている。
【0028】
ツールホルダ70において載置シャンク71を受容するための載置部位7(図1及び図10を参照されたい)は、ボア5の前端に提供されている。この載置シャンク71はここでは、ツールホルダシャンクと呼ぶ。
【0029】
ドローバー8は、ボア5の内部にスライド可能に載置されており、ボア5において、その縦方向軸Lに沿って、前進したリリース位置(図12を参照されたい)と引き込まれたロッキング位置(図3図4、及び図8を参照されたい)との間を往復移動可能となるようになっている。ドローバー8は、ボア5の入口開口5aに向いている前端と、反対側の後端と、を有する。ヘッド部位9とネック部位10とは、ドローバー8の前端に提供されている。ヘッド部位9は、ドローバーの縦方向に見て、ネック部位10の前に置かれており、ヘッド部位9は、ネック部位10に、ヘッド部位9において後方に向いている傾斜面11を介して接続されている。密封リング12が、ドローバー8とボア5の内面との間に配置されている。ここに示す例では、この密封リング12は、ドローバー8の外側の溝に受容されている。
【0030】
ツールホルダシャンク71は、ボア5の載置部位7に、スピンドル2の前端2aにある入口開口5aを介して挿入可能である。ドローバーのヘッド部位9は、ツールホルダシャンク71におけるかみ合いボア72に受容されており、ツールホルダシャンクの管状壁73は、ヘッド部位9とボア5の内面との間の空間に受容されている。ここに示す実施形態では、ボア5の載置部位7は円錐形状であり、同様に形成されているツールホルダシャンク71を受容するよう適合されているいくらかの「三角形」又は多角形の、非円形の断面形状を有する。この円錐形状は、ツールホルダシャンク71とスピンドル2との間の、半径方向、同様に、軸方向への、遊びのない接続を確かなものとする一方で、この非円形の断面図は、ツールホルダシャンク71の、スピンドル2への回転不可能な固定を確かなものとする。しかし、ボア5の載置部位はまた、他のタイプのツールホルダシャンクを受容するためのいずれの他の適した形状をも有し得る。
【0031】
セグメントの形態でのかみ合い部材20は、ドローバー8の周りに、その前端に配置されている。前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置へのドローバー8のムーブメントの効果の下で、かみ合い部材20は、ツールホルダシャンク71が、ボア5の載置部位に出入することを、かみ合い部材20が可能にする第1の位置(図12を参照されたい)から、かみ合い部材20が、ツールホルダシャンク71におけるかみ合いボア72において、かみ合い溝74とのロッキングかみ合いにあり、これにより、ツールホルダシャンク71をスピンドル2に固定したままとする第2の位置(図8を参照されたい)に、移動可能である。
【0032】
ここに示す実施形態では、かみ合い部材20は、ドローバー8のネック部位10の周りに配置されており、ネック部位の周りに、ボア5に配置されており、ネック部位10を取り囲んでいるリテーナリング21(図8を参照されたい)と弾性Oリング22とを用いて保持されている。かみ合い部材20のそれぞれは、リテーナリング21における内溝においてかみ合っている、外に向いているフランジ部位23を有する。Oリング22は、かみ合い部材20のそれぞれの後端にて、外に向いている溝に受容されている。圧縮スプリング24と、スラストリング25と、ストップリング26と、がまた、ボア5に配置されており、これらは、ドローバー8を取り囲むよう構成されている。圧縮スプリング24は、ドローバー8におけるショルダとスラストリング25との間に載置されており、それは、スラストリング25と、リテーナリング21と、かみ合い部材20と、を前方に付勢するよう構成されている。ボア5の入口開口に向けてのリテーナリング21の前方へのムーブメントは、ボア5の内面における溝に載置されているストップリング26により制限されている。
【0033】
その前端にて、かみ合い部材20のそれぞれには、かみ合い部材20が上述する第2の位置にある際に、ツールホルダシャンク71におけるかみ合い溝74とかみ合いにあるよう構成されている、外に向けられているかみ合いフランジ27が提供されている。ドローバー8が前進したリリース位置にある際に、かみ合い部材20の前端のそれぞれは、ドローバー8のヘッド部位9の背後に位置し、かみ合いフランジ27は、図12に示すように、ツールホルダシャンク71におけるかみ合い溝74とのかみ合いから外れている。ドローバー8がボア5においてその縦方向軸Lに沿って軸方向に後方に動かされると、ドローバーのヘッド部位9における傾斜面11が、かみ合い部材20の前端のそれぞれと接触することとなる。かみ合い部材20の前端のそれぞれは、この傾斜面11上をスライドして外向きに押され、かみ合い部材におけるかみ合いフランジ27が、ツールホルダシャンク71におけるかみ合い溝74とかみ合うようになる。その後、ツールホルダシャンク71は、ドローバー8により引かれ、ボア5の載置部位内でスピンドル2の内面と密着する。
【0034】
クランピングデバイス1は、スピンドル2と同心であり、スピンドルにスライド可能に載置されており、スピンドル2に対して縦方向軸Lに沿って軸方向に移動可能となるようになっている作動部材13をさらに含む。作動部材13は、スピンドル2に回転不可能に載置されており、つまり、スピンドル2に対しての回転が防止されており、その結果として、スピンドル2と共に回転するよう構成されている。モーション転嫁メカニズム30は、スピンドル2に載置されており、スピンドル2に対しての作動部材13の第1の軸方向Dへの軸方向のムーブメントを、ドローバー8の、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置へのムーブメントに転嫁するよう構成されている。ここに示す実施形態では、この第1の軸方向Dは、スピンドル2の後端2bに向かう方向である。したがって、この場合では、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置へのドローバー8のムーブメントは、スピンドル2に沿う後方への作動部材13の軸方向のムーブメントにより達成される。しかし、その代替として、作動部材13とモーション転嫁メカニズム30とは、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置へのドローバー8のムーブメントが、スピンドル2に沿う前方への作動部材13の軸方向のムーブメントにより達成されるよう協働するよう配置され得る。
【0035】
さらに、クランピングデバイス1は、スピンドル2の複数の異なる側において、ハウジング3内に配置又はその上に載置されており、作動部材13をスピンドル2に対して軸方向に移動させるよう構成されている2つ又はそれ以上の油圧アクチュエータ50を含む。図1から図5並びに図14及び図15に示す実施形態では、油圧アクチュエータ50は、その数が2つであり、スピンドル2の向かい合う側の双方において互いに向かい合って配置されている。しかし、スピンドル2の周りにいずれの好適な様式にて分散されている、2つを超える油圧アクチュエータ50を使用することもまた可能となるであろう。図1から図5に示す実施形態では、油圧アクチュエータ50のそれぞれは、その向かい合う側の双方においてハウジング3に固定されている別個のアクチュエータケーシング51を含む。しかし、油圧アクチュエータ50は、その代替として、図14及び図15に示すように、ハウジング3に統合されてよい。
【0036】
油圧アクチュエータ50のそれぞれは、1つ又はそれ以上のピストン部材52a、52bを含む。それらのそれぞれは、スピンドル2の側にて、そこから離れて、油圧アクチュエータ50の空間53にスライド可能に受容されており、この空間53において、縦方向軸Lと平行に、油圧によって軸方向に移動可能となるようになっている。図1から図5に示す実施形態、及び、図14及び図15に示す実施形態では、油圧アクチュエータ50のそれぞれは、第1及び第2のピストン部材とここで表されており、互いに向かい合って、互いに整列して配置されている2つのそのようなピストン部材52a、52bを含む。ピストン部材52a、52bのそれぞれは、他のピストン部材に向いている第1の側と、他のピストン部材に背を向けている反対側の第2の側と、を有する。第1の油圧チャンバ54aは、空間53内に、第1のピストン部材52aの第2の側において形成されており、第2の油圧チャンバ54bは、空間53内に、第2のピストン部材52bの第2の側において形成されている。その代替として、油圧アクチュエータ50のそれぞれは、油圧アクチュエータの関連付けられている空間を、ピストン部材の第1の側における第1の油圧チャンバと、ピストン部材の反対側の第2の側における第2の油圧チャンバと、に分け隔てるよう構成されているピストン部材を1つのみ含み得る。そのさらなる代替として、油圧アクチュエータ50のそれぞれは、作動部材を第1の軸方向Dに移動させるための第1の油圧シリンダと、作動部材を反対方向に移動させるための第2の油圧シリンダと、を含む、互いに向かい合って配置されている2つの油圧シリンダを含み得る。
【0037】
ピストン部材52a、52bのそれぞれには、ピストン部材において、外に向いている表面における溝に載置され、上述する空間53を半径方向に外向きに区切る壁のそれぞれと密着するようになっている密封リング55が提供されている。
【0038】
クランピングデバイス1はまた、ハウジング3の内部に少なくとも部分的に配置されており、作動部材13と油圧アクチュエータ50のピストン部材52a、52bとの間の接続を半径方向に形成するよう構成されている接続エレメント60をも含む。図1から図5に示す実施形態では、接続エレメント60は、ハウジング3からアクチュエータケーシング51に伸長し、図14及び図15に示す実施形態では、接続エレメント60全体が、ハウジング3の内部に置かれている。接続エレメント60は、ハウジング3に対してのピストン部材52a、52bの軸方向のムーブメントを、スピンドル2に対しての作動部材13の対応する軸方向のムーブメントに転嫁するよう構成されている。ここに示す実施形態では、第1のピストン部材52aは、第1の油圧チャンバ54aへの作動油の供給により、上述する第1の軸方向Dに、この第1の軸方向Dへの接続エレメント60と作動部材13とのムーブメントを達成するために、移動可能であり、第2のピストン部材52bは、第2の油圧チャンバ54bへの作動油の供給により、第1の軸方向Dとは反対の、第2の軸方向に、この第2の軸方向への接続エレメント60と作動部材13とのムーブメントを達成するために、移動可能である。
【0039】
ドローバー8が、作動部材13とモーション転嫁メカニズム30との効果の下で、引き込まれたロッキング位置に押し込まれている際に、作動部材13は、好ましくは、セルフロッキングの軸方向の位置をスピンドル2の上に想定するよう構成されており、これにより、作動部材13が、ドローバー8を引き込まれたロッキング位置に維持できるようになっている。これによって、油圧アクチュエータ50のピストン部材52a、52bは、ツール交換作業に関連して、スピンドル2が静止しており、ドローバー8が、引き込まれたロッキング位置から、前進したリリース位置に動かされ、続いて、引き込まれたロッキング位置に戻される際に、接続エレメント60上に力を発揮することのみを必要とする。セルフロッキングの軸方向の位置では、作動部材13と、作動部材13と接触している、モーション転嫁メカニズム30及び/又はスピンドル2の各部と、の間の摩擦力が、作動部材が軸方向に、第1の軸方向Dとは反対の方向に変位することを防ぐ。
【0040】
ここに示す実施形態では、接続エレメント60は、それを通して、接続エレメントが作動部材13に接続されている中央部61と、それぞれが、油圧アクチュエータ50のそれぞれに対するものであり、それを通して、接続エレメント60が、油圧アクチュエータのピストン部材52a、52bに接続されている数本のアーム62と、を含む。アーム62のそれぞれは、中央部61に固定されており、中央部から半径方向に突出している。アーム62のそれぞれは、関連付けられている油圧アクチュエータ50の第1及び第2のピストン部材52a、52bの間の空間に受容される一部を有する。接続エレメント60はもちろん、クランピングデバイス1の具体的な設計に依存して、多くの異なる様式にて設計されてよい。
【0041】
油圧アクチュエータ50のそれぞれの第1及び第2のピストン部材52a、52bは、好適には、共に互いに軸方向に移動可能となるために、互いに固定して接続されている。ここに示す実施形態では、油圧アクチュエータ50のそれぞれの第1及び第2のピストン部材52a、52bは、第1及び第2のピストン部材の間の空間にわたって伸長するシャフト56を介して互いに接続されている。この場合では、油圧アクチュエータ50のそれぞれの第1及び第2のピストン部材52a、52bは、例えば、ピストン部材52a、52bの間を、シャフト56におけるボアを通して伸長するスクリュの形態での固定エレメント57(図3を参照されたい)を用いて互いに固定されてよい。しかし、その代替として、第1及び第2のピストン部材52a、52bと中間シャフト56とが、一体に形成されてよい。
【0042】
図1から図13に示す実施形態では、作動部材13は、スリーブの形態を有する。この場合では、作動部材13は、スピンドル2の周壁14の周りに配置されており、この周壁にスライド可能に載置されており、スピンドルに対して軸方向に移動可能となるようになっている。この場合では、作動部材13は、接続エレメント60に対して、スピンドル2と共に回転可能である。スリーブ形状の作動部材13は、例えば、接続エレメント60の中央部61において、円形の断面形状を持つリセス63を通して伸長してよい。
【0043】
図3から図5に示す実施形態では、接続エレメント60の中央部61は、スリーブ形状の作動部材13とドライブシャフト16の第1の端16aとの間の狭い空隙に受容されている第1のセクション61aを含む。この第1のセクション61aは、この狭い空隙を通して伸長できるよう、かなり薄くなっている。ここに示す接続エレメント60はまた、作動部材13の反対側に置かれている第2のセクション61bをも含む。この第2のセクション61bは、接続エレメント60に十分な強度を与えるために、第1のセクション61aより厚く、大きくなっている。
【0044】
図3から図5に示す実施形態では、油圧アクチュエータ50のそれぞれの第1及び第2のピストン部材52a、52bの間に配置されているシャフト56は、それらのピストン部材52a、52bの間の空間に受容されている、接続エレメントのアーム62の一部におけるリセス64を通して伸長する。この場合では、接続エレメント60は、シャフト56上に浮いており、それらのシャフト56により、ハウジング3に対しての回転が防止されている。シャフト56のそれぞれは、好適には、関連付けられているアーム62のリセス64に遊びを持って受容されており、好ましくはOリングの形態での1つ又はそれ以上の弾性エレメント65が、シャフト56の周りに配置されており、リセス64の内部の、シャフト56とアーム62との間に、接続エレメント60とシャフトとの間の弾性接続を提供するために、取り付けられている。弾性エレメント65は、シャフト56のそれぞれと、関連付けられているアーム62と、の間の遊びを吸収し、シャフト56のそれぞれと、関連付けられているアーム62と、の間の一定の柔軟性を持たせている。
【0045】
アーム62のそれぞれは、関連付けられている油圧アクチュエータ50の第1及び第2のピストン部材52a、52bの向かい合う第1の側の双方における接触面58a、58b(図3を参照されたい)と、それらのピストン部材52a、52bの間の空間に受容されているアーム62の一部の向かい合う側の双方における接触面68a、68b(図6及び図7を参照されたい)を介して、接触するよう構成されている。アームにおける接触面68a、68b、又は、第1及び第2のピストン部材における接触面58a、58bは、好適には、アーム62とピストン部材52a、52bとの間の線形接触を提供するために凸状に曲がっており、これにより、アーム62が、ピストン部材52a、52bの軸方向のムーブメントに関連しての曲げモーメントを受ける際に、アーム62のそれぞれが、関連付けられているピストン部材52a、52bに対して、若干傾くことができるようになっている。ここに示す実施形態では、アームにおける接触面68a、68bが凸状に曲がっている一方で、ピストン部材52a、52bにおいて関連付けられている接触面58a、58bは平らである。しかし、その代替として、アームにおける接触面68a、68bが平らであってよく、ピストン部材52a、52bにおいて関連付けられている接触面58a、58bが凸状に曲がっていてよい。
【0046】
図3から図5に示す実施形態では、環状の内部突起66が、接続エレメント60の中央部61におけるリセス63に提供されている。さらに、環状の外部突起15が、作動部材13の外側に提供されており、ロックリング28が、作動部材13にその外側において固定されており、ロックリング28と外部突起15とは、作動スリーブ13の軸方向に間隔があけられている。接続エレメント60における内部突起66は、外部突起15とロックリング28との間に形成されている空隙に遊びを持って受容されている。この場合では、軸方向の力は、接続エレメント60から作動スリーブ13に、油圧アクチュエータ50が作動スリーブ13を第1の軸方向Dに移動させる際には、ロックリング28を介して、油圧アクチュエータが作動スリーブを反対方向に移動させる際には、外部突起15を介して、転嫁される。
【0047】
重要なことは、作動部材13が加工作業中にスピンドル2と共に高速で回転する一方で、接続エレメント60が加工作業中に静止したままとなっているという事実により、加工作業中のスリーブ形状の作動部材13と接続エレメント60との間の摩擦力を回避すること、又は、そのような摩擦力を少なくともできるだけ低く維持することである。図3から図5に示す実施形態では、接続エレメント60と作動部材13との間の界面での摩擦力が、作動部材と接続エレメントとの間に半径方向と軸方向とに小さな遊びを有することにより、回避される。その代替として、そのような摩擦力は、接続エレメント60の中央部61において、作動部材13の外側とリセス63の内側との間に配置されている、好ましくは、ボールベアリングの形態でのローリングベアリングを介して、作動部材13に接続されている接続エレメント60を有することにより、回避されてよい。
【0048】
図1から図13に示す実施形態では、好ましくは、ヘリカル圧縮スプリングの形態でのリリーススプリング17が、スピンドル2の内部の空間に載置されており、ドローバーを前進したリリース位置に向けて付勢するために、ドローバー8の後端に作用するよう構成されている。ドローバー8は、作動部材13とモーション転嫁メカニズム30との効果の下で、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置に、このリリーススプリング17からのスプリング力の作用に抗して移動可能である。リリーススプリング17は、好適には、縦方向軸Lに沿って、ドローバー8の背後に配置されている。
【0049】
モーション転嫁メカニズム30は、多くの異なる様式にて設計されてよい。図1から図13に示す実施形態では、モーション転嫁メカニズムは、スピンドル2の周方向に間隔があけられている3つのウェッジ31を含む。ウェッジ31のそれぞれは、スピンドル2の上述する周壁14を通して半径方向に伸長するアパーチャ32のそれぞれに受容されており、ウェッジ31は、それらが、関連付けられているアパーチャ32において半径方向に内向きに押されている際に、ドローバー8を、引き込まれたロッキング位置に向けて押すよう構成されている。ウェッジ31のそれぞれは、スピンドル2から外に向いている第1の受圧面33(図8及び図10を参照されたい)を含み、作動部材13には、その内側において、ウェッジのそれぞれにおける第1の受圧面33と接触するために内に向いている第1の加圧面34が提供されている。第1の加圧面34は、上述する第1の軸方向Dに見て長くなる、縦方向軸Lまでの半径方向の距離を有する。第1の加圧面34は、作動部材13が第1の軸方向Dに動かされる際に、ウェッジのそれぞれにおける第1の受圧面33を押すことにより、ウェッジ31のそれぞれを、アパーチャ32において半径方向に内向きに押すよう構成されている。
【0050】
ここに示すモーション転嫁メカニズム30はまた、半径方向に、ドローバー8から、アパーチャ32のそれぞれ1つに突出し、縦方向軸Lに沿ってドローバーと共に移動可能となるようにドローバーに固定されている、3つのウェッジかみ合い部材35をも含む。したがって、縦方向軸Lに沿うウェッジかみ合い部材35のムーブメントは、ドローバー8の対応するムーブメントを引き起こすこととなる。ウェッジかみ合い部材35のそれぞれは、ウェッジ31の1つと接触する。クランピングデバイス1の組み立てを促進するために、ここに示すウェッジかみ合い部材35は、ドローバー8における半径方向のリセスのそれぞれに載置されている別個のエレメントとして形成されている。しかし、ウェッジかみ合い部材35は、その代替として、ドローバー8に、いずれの他の好適な様式にて載置されてよく、又は、ドローバーと一体に形成されてよい。
【0051】
モーション転嫁メカニズム30は、いずれの好適な数のウェッジ31と、スピンドル2の周壁14において、対応する数のアパーチャ32を通して伸長して配置されている、関連付けられているウェッジかみ合い部材35と、を含んでよい。アパーチャ32と、関連付けられているウェッジ31と、ウェッジかみ合い部材35と、は、好ましくは、周壁14の周方向に等距離に分散されている。
【0052】
ウェッジかみ合い部材35のそれぞれは、スピンドル2の前端2aに向いているスライド面36を有し、アパーチャ32のそれぞれは、スピンドルの後端2bに向いているスライド面37を有する。さらに、ウェッジ31のそれぞれは、スピンドルの後端2bに向いている第1のウェッジ面38と、スピンドルの前端2aに向いている第2のウェッジ面39と、を有し、それらの第1及び第2のウェッジ面38、39は、縦方向軸Lに向かって半径方向に互いに接近する。ウェッジ31のそれぞれの第1のウェッジ面38は、関連付けられているウェッジかみ合い部材35のスライド面36と接触しており、ウェッジのそれぞれの第2のウェッジ面39は、関連付けられているアパーチャ32のスライド面37と接触している。ウェッジ31が、作動部材13により、アパーチャ32において半径方向に内向きに押されると、ウェッジ31のそれぞれの第1及び第2のウェッジ面38、39が、関連付けられているウェッジかみ合い部材35とアパーチャ32との対応するスライド面36、37上をスライドしてこれらを押し、これにより、ドローバー8を、引き込まれたロッキング位置に向けて移動させる。
【0053】
第1の加圧面34と第1の受圧面33とは、好ましくは、縦方向軸Lに対して、ドローバー8が、作動部材13とウェッジ31との効果の下で、引き込まれたロッキング位置に押し込まれている際に、ウェッジ31が、作動部材13を、スピンドル2におけるセルフロッキングの軸方向の位置に維持するそのような角度α(図12を参照されたい)により傾いている。
【0054】
ウェッジ31のそれぞれはまた、スピンドル2から外に向いている第2の受圧面43をも含んでよく、作動部材13には、その内側において、ウェッジのそれぞれにおける第2の受圧面43と接触するために内に向いている第2の加圧面44が提供されている。第2の加圧面44は、第1の軸方向Dに見て長くなる、縦方向軸Lまでの半径方向の距離を有する。第2の加圧面44と第2の受圧面43とは、縦方向軸Lに対して、上述する角度αより大きい角度β(図12を参照されたい)により傾いている。第1及び第2の加圧面34、44と、第1及び第2の受圧面33、43と、は、それぞれ、作動部材13と、ウェッジ31のそれぞれと、において連続して配置されており、第1の軸方向Dへの作動部材13のムーブメントの後に、第2の加圧面44が、ムーブメントの初期の第1のフェーズ中に、ウェッジのそれぞれにおける第2の受圧面43上をスライドしてこれを押すよう構成されており、その後、第1の加圧面34が、ムーブメントの、それに続く第2のフェーズ中に、ウェッジのそれぞれにおける第1の受圧面33上をスライドしてこれを押すよう構成されるようになっている。
【0055】
ウェッジかみ合い部材35のそれぞれは、スピンドル2の後端2bに向いているリリース受圧面40をさらに含み、作動部材13は、スピンドルの前端2aに向いているリリース加圧面41を含む。作動部材13のリリース加圧面41は、作動部材13が上述する第2の軸方向に動かされると、ウェッジかみ合い部材35のリリース受圧面40と接触するよう構成されており、これにより、引き込まれたロッキング位置から前進したリリース位置へのドローバーのムーブメントの最終フェーズ中に、作動部材が、前に向けられている軸方向の力を、ドローバー8上に、ウェッジかみ合い部材35を介して発揮することを可能にする。
【0056】
図1から図13に示す実施形態では、支持セグメント45とピン46とが、作動部材13とスピンドル2との間に配置されている。支持セグメント45は、図13に示すように、作動部材13の内側に配置されており、作動部材に、スクリュ47を用いて固定されている。支持セグメント45は、ウェッジ31を支持し、それらが維持され、作動部材13に対してその位置が周方向にずれることを防ぐようになっている。ピン46のそれぞれは、スピンドル2における縦方向の溝48に部分的に収められており、支持セグメント45におけるリセス49に部分的に収められている。ピン46は、スピンドル2の外側における縦方向の溝48にスライド可能に受容されており、これにより、作動部材がスピンドルに対して軸方向に動かされる際に、作動部材13と共に軸方向に移動することができる。ピン46は、作動部材13とスピンドル2との間の相互の回転を防ぐ。その結果として、スピンドル2が回されると、作動部材13は、スピンドル2と共に、同じ回転速度で回転することとなり、スピンドル2に対して周方向に変位できなくなる。
【0057】
ツールホルダ70がスピンドル2にクランプされる際に、図12に示すように、スピンドル2を静止位置にして、ドローバー8を前進したリリース位置にしたままで、ツールホルダシャンク71が、ボア5の載置部位7に挿入される。これによって、ドローバーのヘッド部位9は、ツールホルダシャンク71におけるかみ合いボア72に受容され、ツールホルダシャンク71におけるかみ合い溝74が、かみ合い部材20のかみ合いフランジ27の外側に置かれる。その後、第1のピストン部材52aを第1の軸方向Dに移動させるために、作動油が、油圧アクチュエータ50のそれぞれの第1の油圧チャンバ54aに供給され、これにより、接続エレメント60と作動部材13との対応する軸方向のムーブメントが達成される。作動部材13のこの軸方向のムーブメントの第1のフェーズ中、作動部材13における第2の加圧面44が、ウェッジ31における第2の受圧面43上をスライドしてこれらを押す。これによって、ウェッジ31が半径方向に内向きに押されることとなり、ドローバー8が軸方向に、引き込まれたロッキング位置に向けて変位することとなる。第2の加圧面及び受圧面44、43の比較的きつい傾斜βにより、ウェッジ31は初期的に、内向きにかなり速く移動することとなり、これは、ドローバー8の比較的迅速な変位をもたらす。比較的きつい角度βは、ドローバー8の初期変位に大きな力が必要でないため、好適である。第1及び第2の加圧面34、44と、第1及び第2の受圧面33、43と、は、第2の加圧面44が第2の受圧面43を通り、第1の加圧面34が第1の受圧面33に到達するような距離を、作動部材13が動かされた際に、つまり、これらのそれぞれの表面間の遷移にて、ドローバー8が、ボア5の後端にあるその最終目的地にほぼ到達するよう配置されている。したがって、大きな力が有益である最終クランピングフェーズに対して、第1の加圧面及び受圧面34、33がアクティブとなっている。このフェーズでは、作動部材13の比較的大きなムーブメントが、ウェッジ31の非常に小さい半径方向の変位と、ドローバー8のさらにより小さい軸方向の変位と、をもたらし、これはその結果として、力を増幅する効果を提供し、これにより、ドローバー8は、ツールホルダシャンク71を大きな力をもって引き、スピンドル2とのしっかりとしたかみ合いとすることを可能にする。さらに、第1の加圧面及び受圧面34、33の小さな傾斜αは、セルフロッキング効果を提供し、クランピングデバイスが、いずれの追加的なロッキング手段を必要とすることなく、クランプされた状態のままになることを確かにする。これによって、ドローバー8が引き込まれたロッキング位置に到達した際に、第1のピストン部材52aにおける油圧が解放されてよい。
【0058】
ツール交換作業が行われ、ツールホルダ70がスピンドル2からリリースされる際には、スピンドル2の回転が止められ、第2のピストン部材52bを、第1の軸方向Dとは反対の、第2の軸方向に移動させるために、作動油が、油圧アクチュエータ50のそれぞれの第2の油圧チャンバ54bに供給され、これにより、作動部材13の対応する軸方向のムーブメントが達成される。作動部材13が、油圧アクチュエータ50と接続エレメント60とにより、第2の軸方向への十分な力を受けると、作動部材13における第1の加圧面34とウェッジ31における第1の受圧面33との間のセルフロッキング摩擦かみ合いが解放され、その後、作動部材13は、油圧アクチュエータ50の効果の下で、スピンドル2に対して、第2の軸方向に移動可能となる。作動部材13がこの方向に動かされると、ドローバー8の後端においてリリーススプリング17が発揮するスプリング力が、ドローバーを軸方向に、前進したリリース位置に向けて押す。これによって、ウェッジかみ合い部材35は、ウェッジ31上に力を発揮し、それらを半径方向に外向きに押すこととなる。作動部材13が一定の距離を第2の軸方向に動かされると、作動部材13におけるリリース加圧面41が、ウェッジかみ合い部材35におけるリリース受圧面40と接触することとなる。これは、作動部材13が、軸方向の力を、ドローバー8上に、ウェッジかみ合い部材35を介して発揮することを可能にし、これが、ドローバー8のヘッド部位9の外端を、ツールホルダシャンク71におけるかみ合いボア72における表面75に押し付け、これにより、ツールホルダシャンク71をスピンドル2からリリースすることとなる。
【0059】
図14及び図15に示す実施形態では、作動部材13は、スピンドル2の内部のボア5にスライド可能に受容されており、スピンドルに対してその軸方向に移動可能となるようになっている、円形の断面形状を持つボディを含む。この場合では、接続エレメント60は、作動部材13に固定されており、スピンドル2に対してその軸方向に、作動部材13と共に移動可能となるようになっており、接続エレメント60もまた、ここで、作動部材がスピンドル2と共に回転する際に、作動部材13と共に回転するよう構成されている。接続エレメント60の中央部61は、作動部材13に固定されており、接続エレメントのアーム62は、その向かい合う側の双方において、作動部材13から半径方向に突出する。アーム62に対するアパーチャ29は、半径方向に、スピンドルの向かい合う側の双方において、スピンドル2の周壁を通して伸長し、アーム62のそれぞれは、それらのアパーチャ29のそれぞれ1つにわたって伸長する。アパーチャ29は、スピンドル2の軸方向に細長く伸長し、アーム62がスピンドル2に対してその軸方向に移動することを可能にしている。ここに示す例では、接続エレメント60は横断ピンの形態を有し、アーム62は、このピンの向かい合うエンドセクションを構成する。この場合では、接続エレメント60の中央部61は、作動部材13にわたって、その中心軸に鉛直して伸長する。
【0060】
図14及び図15に示す実施形態では、アーム62のそれぞれの外端は、油圧アクチュエータ50の第1及び第2のピストン部材52a、52bの間の空間に遊びを持って受容可能であり、これにより、アーム62のそれぞれが、油圧アクチュエータのピストン部材52a、52bの間の空間に位置する際に、ピストン部材52a、52bが、接続エレメント60上に押力を発揮することを可能にし、また、接続エレメント60が、油圧アクチュエータのピストン部材52a、52bに対して、作動部材13とスピンドル2と共に回転することを可能にする。作動油が第1の油圧チャンバ54aに供給されると、第1のピストン部材52aが接続エレメント60を押し、これにより、作動部材13を後方に、上述する第1の軸方向Dに押す。作動油が第2の油圧チャンバ54bに供給されると、第2のピストン部材52bが接続エレメント60を押し、これにより、作動部材13を前方に、反対方向に押す。この実施形態では、作動部材13は、接続エレメント13に固定されており、接続エレメントの前側からスピンドル2の前端2aに向かって突出している突出13aを介して、モーション転嫁メカニズム30に作用するよう構成されている。図14及び図15に係るクランピングデバイス1に含まれるモーション転嫁メカニズム30は、US6370995B1に説明されるタイプのものである。したがって、このモーション転嫁メカニズム30のデザインと機能とが、US6370995B1により詳しく説明されている。
【0061】
本発明はもちろん、いかなる方法によっても上記の実施形態に制限されない。それどころか、その変形例に対する多くの可能性が、添付の特許請求の範囲に画定されるような、本発明の基本的な概念から逸脱することなく、当業者には明白となるであろう。
図1
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