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特許7584519ドップラー、高度、及び疑似距離の推定のための軌道要素を生成及び配布する方法及び装置
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  • 特許-ドップラー、高度、及び疑似距離の推定のための軌道要素を生成及び配布する方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ドップラー、高度、及び疑似距離の推定のための軌道要素を生成及び配布する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/05 20100101AFI20241108BHJP
【FI】
G01S19/05
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2022537236
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 US2020063645
(87)【国際公開番号】W WO2021126581
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】16/721,658
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520460904
【氏名又は名称】スター アリー インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フア、ワンシャン
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-529032(JP,A)
【文献】特開2013-040790(JP,A)
【文献】特開2008-191158(JP,A)
【文献】特開2008-003092(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0111738(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0238765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
19/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エフェメリスサーバであって、
プロセッサと、
広域通信ネットワークに接続された第1通信インターフェースと、
第2通信インターフェースと、
リアルタイムデータベースと、を有し、
前記プロセッサは、
(a)(i)前記第1通信インターフェースを使用して前記広域通信ネットワーク上のブロードキャスト情報のソースにアクセスすることによってブロードキャストエフェメリス情報を取得し、前記ブロードキャストエフェメリス情報は少なくとも1つのGNSSの衛星に関連し、(ii)前記ブロードキャストエフェメリス情報からそれぞれの前記衛星の軌道の軌道情報を抽出し、(iii)抽出された前記軌道情報から前記衛星のそれぞれについて修正された軌道情報を作成して前記リアルタイムデータベースに格納し、
(b)複数の指定時刻のそれぞれにおいて、前記ブロードキャストエフェメリス情報を使用して計算されたパラメータ値と、前記修正された軌道情報を使用して計算されたパラメータ値との間の推定誤差に基づく更新基準が満たされたとき、前記リアルタイムデータベース内の前記修正された軌道情報を更新し、
(c)前記第2通信インターフェースを介して複数のデバイスのそれぞれに対して、更新済の前記修正された軌道情報を提供し、前記デバイスはそれぞれ、前記修正された軌道情報を使用して前記衛星のブロードキャスト信号を処理することができるGNSS受信機を有し
計算された前記パラメータ値が、高度、疑似距離、及びドップラーのうちの1以上である、エフェメリスサーバ。
【請求項2】
前記修正された軌道情報が要求に応じて前記デバイスに提供される、請求項1に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項3】
前記第2通信インターフェースは、低電力の広域通信ネットワークにアクセスする、請求項1に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項4】
前記低電力の広域通信ネットワークがLoRaベースである、請求項3に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項5】
前記更新基準が満たされない場合、前記衛星のそれぞれについての前記修正された軌道情報は更新されない、請求項1に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項6】
前記修正された軌道情報は、前記衛星のそれぞれのケプラーエフェメリス情報を含む、請求項1に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項7】
前記ケプラーエフェメリス情報は、前記衛星のうちの1つの軌道長半径の推定値を含む、請求項に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項8】
前記軌道長半径は、前記衛星の平均運動を用いて推定される、請求項に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項9】
前記平均運動は、時間の線形関数によってモデル化される、請求項に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項10】
前記ケプラーエフェメリス情報は、前記衛星のうちの1つの軌道の平均近点角に関連するパラメータ値を含む、請求項に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項11】
前記ケプラーエフェメリス情報は、前記衛星のうちの1つの軌道面に関連する昇交点経度の推定値をさらに含む、請求項に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項12】
前記修正された軌道情報は、前記デバイスが未だ所持していない修正された軌道情報のみに関連するビットストリームで、前記デバイスのうちの1つに通信される、請求項1に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項13】
前記ビットストリームは、2以上の前記衛星の前記修正された軌道情報を含む、請求項12に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項14】
前記更新基準は第1性能基準及び第2性能基準を含み、(i)それぞれの指定時刻において、前記衛星のうちの少なくとも1つが前記第1性能基準を満たす場合にのみ、前記更新基準が満たされているとみなされ、(ii)前記更新基準が満たされているとみなされると、前記第2性能基準を満たす前記衛星の軌道情報の前記修正された軌道情報が更新される、請求項1に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項15】
前記指定時刻は一定の時間間隔で発生する、請求項1に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項16】
様々な時刻における前記リアルタイムデータベースのコピーがエフェメリスサーバから離れた1以上の場所に格納され、それによって前記エフェメリスサーバを以前の状態に復元することを可能にする、請求項1に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項17】
前記リアルタイムデータベースを前記以前の状態に続いて所望の状態に復元することを可能にするために、前記修正された軌道情報の作成のそれぞれのフェーズに関連する作成時間を前記リアルタイムデータベースにおいてさらに記録する、請求項16に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項18】
前記修正された軌道情報の参照セットとして選択された以前の時間において現在の前記修正された軌道情報を作成することによって前記リアルタイムデータベースを復元し、前記参照セット内の前記修正された軌道情報は、そのような前記修正された軌道情報が前記選択された以前の時間の後に更新された後にのみ前記デバイスに提供される、請求項17に記載のエフェメリスサーバ。
【請求項19】
エフェメリスサーバにおいて少なくとも1つのGNSSからの衛星のエフェメリス情報を提供するための方法であって、
(a)(i)広域通信ネットワーク上のブロードキャスト情報のソースにアクセスすることによってブロードキャストエフェメリス情報を取得するステップと、(ii)前記ブロードキャストエフェメリス情報からそれぞれの前記衛星の軌道の軌道情報を抽出するステップと、(iii)抽出された前記軌道情報から前記衛星のそれぞれについて修正された軌道情報を作成してリアルタイムデータベースに格納するステップと、
(b)複数の指定時刻のそれぞれにおいて、前記ブロードキャストエフェメリス情報を使用して計算されたパラメータ値と、前記修正された軌道情報を使用して計算されたパラメータ値との間の推定誤差に基づく更新基準が満たされたとき、前記リアルタイムデータベース内の前記修正された軌道情報を更新するステップと、
(c)複数のデバイスのそれぞれに対して、更新済の前記修正された軌道情報を提供するステップであって、前記デバイスはそれぞれ、前記修正された軌道情報を使用して前記衛星のブロードキャスト信号を処理することができるGNSS受信機を有している、該ステップと、を有し
計算された前記パラメータ値が、高度、疑似距離、及びドップラーのうちの1以上である方法。
【請求項20】
修正された前記軌道情報が要求に応じて前記デバイスに提供される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記デバイス及び前記エフェメリスサーバは、低電力の広域通信ネットワークを介して通信する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記低電力の広域通信ネットワークがLoRaベースである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記更新基準が満たされない場合、前記衛星のそれぞれについての修正された前記軌道情報は更新されない、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記修正された軌道情報は、前記衛星のそれぞれのケプラーエフェメリス情報を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記ケプラーエフェメリス情報は、前記衛星のうちの1つの軌道長半径の推定値を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記軌道長半径は、前記衛星の平均運動を用いて推定される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記平均運動は、時間の線形関数によってモデル化される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ケプラーエフェメリス情報は、前記衛星のうちの1つの軌道の平均近点角に関連するパラメータ値を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記ケプラーエフェメリス情報は、前記衛星のうちの1つの軌道面に関連する昇交点経度の推定値をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記修正された軌道情報は、前記デバイスが未だ所持していない修正された軌道情報のみに関連するビットストリームで、前記デバイスのうちの1つに通信される、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記ビットストリームは、2以上の前記衛星の前記修正された軌道情報を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記更新基準は第1性能基準及び第2性能基準を含み、(i)それぞれの指定時刻において、前記衛星のうちの少なくとも1つが前記第1性能基準を満たす場合にのみ、前記更新基準が満たされているとみなされ、(ii)前記更新基準が満たされているとみなされると、前記第2性能基準を満たす前記衛星の軌道情報の前記修正された軌道情報が更新される、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記指定時刻は一定の時間間隔で発生する、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
様々な時刻における前記リアルタイムデータベースのコピーが前記エフェメリスサーバから離れた1以上の場所に格納され、それによって前記エフェメリスサーバを以前の状態に復元することを可能にする、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
前記エフェメリスサーバは、前記リアルタイムデータベースを前記以前の状態に続いて所望の状態に復元することを可能にするために、前記修正された軌道情報の作成のそれぞれのフェーズに関連する作成時間を前記リアルタイムデータベースにおいてさらに記録する、請求項24に記載の方法。
【請求項36】
前記エフェメリスサーバは、前記修正された軌道情報の参照セットとして選択された以前の時間において現在の前記修正された軌道情報を作成することによって前記リアルタイムデータベースを復元し、前記参照セット内の前記修正された軌道情報は、そのような前記修正された軌道情報が前記選択された以前の時間の後に更新された後にのみ前記デバイスに提供される、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全球測位衛星システム(GNSS)に関する。本発明は、GNSSを使用する位置、速度、及び時間(PVT)の決定において使用されるエフェメリスデータの処理及び処理に関する。
【背景技術】
【0002】
取得時間を短縮するために、GNSS受信機には、GNSS内の衛星の軌道に関する事前情報(例えば位置及び速度、すなわち「エフェメリス」)が提供されている。例えば、そのような情報は、地上のソースから、またはGNSS内の各衛星によって放送されるナビゲーションメッセージから得られる。衛星のエフェメリスにより、受信機は任意の時刻における衛星の高度、ドップラー、及び疑似距離を推定することができ、これにより、受信機は、衛星が受信機の地平線上に現れたときに、衛星の周波数及び遅延探索空間を狭めることができる。その点において、200Hzという比較的狭い周波数ビンでは、約100Hzのドップラー推定誤差が許容される。しかしながら、衛星の軌道は完全には予測できないので、提供されたエフェメリスは時間の経過とともに不正確になる。GNSS受信機の場合、衛星の提供されたエフェメリスの精度が低くなるにつれて、ドップラー、疑似距離、及び高度に起因する推定誤差が増加する。結果として、衛星を取得して追跡するために必要な時間及びエネルギーは、時間の経過とともに大幅に増加し得る。典型的には、GNSSは、各衛星のナビゲーションメッセージ(「システム更新」)のブロードキャストエフェメリス情報を1-2時間で更新する。
【0003】
ドップラー、疑似距離、高度の推定と同様に、GNSSの典型的な中軌道(「MEO」)衛星は、地球の中心を1度飛行するのに約120秒かかる(すなわち、衛星の仰角(「高度」)の変化は1分あたり1/2度の単位である)ので、高度の推定誤差は比較的重要ではない。しかしながら、その間、衛星の速度は60m/秒(すなわち、約1%)変化するので、ドップラー及び疑似距離の両方の推定誤差が大きくなり得る。
【0004】
地心地球固定(ECEF)座標系において衛星の軌道を決定するためには、6つのケプラー軌道要素及び地球自転速度(Ω)が必要である。ケプラーの軌道要素は以下の通りである:(i)軌道離心率(e)、(ii)軌道長半径の長さ(A)、(iii)基準エポックにおける傾斜角(i)、(iv)基準エポックにおける軌道面の昇交点経度(Ω)、(v)近地点引数(ω)、及び(vi)基準エポックにおける平均近点角(M)。
【0005】
NAVSTAR全球測位システム(「GPS」)については、刊行物「NAVSTAR GPS Space Segment/Navigation User Segment Interfaces」(IS-GPS-200D;「インターフェース仕様」)のセクション20.3.4における表20-II、20-III、及び20-IVに、エフェメリスパラメータのECEF調整システムの定義、データ形式、及び補正がリストされている。これらのエフェメリスパラメータのほとんどは、ケプラーの軌道パラメータに関連している。GPSでは、ECEF座標系の補正により、提供されたエフェメリスパラメータ値は、それぞれの特定のフィットインターバルについて最適な軌道のフィットを提供する。
【0006】
インターフェース仕様では、以下の9つのエフェメリスパラメータが追加されている:(i)計算値からの平均運動差(Δn)、(ii)赤経の変化率(Ω)、(iii)傾斜角の変化率(IDOT)、(iv)緯度引数に対する正弦及び余弦高調波補正項の振幅(cus,cuc)、(v)軌道半径に対する正弦及び余弦高調波補正項の振幅(crs,crc)、及び(vi)傾斜角に対する正弦及び余弦高調波補正項の振幅(cis,cic)。これらの追加のエフェメリスパラメータは、ケプラーパラメータに対する「重力高調波補正項、レート及びレート補正」と呼ばれる。これらの追加のGPSパラメータは、中国の北斗システム(BDS)、ヨーロッパのガリレオシステム(GAL)、及び日本のQZSSでも使用されている。GPSでは、ナビゲーションメッセージの長さは1500ビット長であり、ナビゲーションメッセージの中で送信されるエフェメリスは、多くの場合、数日以内にのみ有効である。
【0007】
近年、このようなデバイスの位置が関連する小型のモバイルデバイスまたはセンサのための多くのアプリケーションが開発されている。多くのこのようなアプリケーション(例えば、「モノのインターネット」(IoT)アプリケーション)では、このようなデバイスの位置は、オンボードのGNSS受信機モジュールによって取得される。必然的に、IoTデバイスはバッテリ電源で動作し、通信は無線通信を使用する。実際、このような多くのアプリケーションでは、IoTデバイスは非常に低い電力要件で動作し、長距離の、非常に低いデータレートの無線通信システムを使用して通信を行う必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、エフェメリスサーバは、少なくとも1つのGNSSからの衛星のエフェメリス情報を提供するための方法を実行する。本開示による方法は、(a)(i)広域通信ネットワーク上のブロードキャスト情報のソースにアクセスすることによってブロードキャストエフェメリス情報を取得するステップと、(ii)ブロードキャストエフェメリス情報からそれぞれの衛星の軌道の軌道情報を抽出するステップと、(iii)抽出された軌道情報から衛星のそれぞれについて修正された軌道情報を作成してリアルタイムデータベースに格納するステップと、(b)複数の指定時刻のそれぞれにおいて、更新基準の評価に基づいて、リアルタイムデータベース内の修正された軌道情報を更新するステップと、(c)複数のデバイスのそれぞれに対して修正された軌道情報を提供するステップであって、デバイスはそれぞれ、修正された軌道情報を使用して衛星のブロードキャスト信号を処理することができるGNSS受信機を有している、該ステップと、を有する。
【0009】
本発明は、以下の詳細な説明及び添付の図面を考慮することにより、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による、エフェメリスサーバ101と、それぞれがGNSS受信機を有するデバイス102-1~102-nとを有するシステム100を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による、LKエフェメリスの各フィールドを示す表である。
図3】それぞれ、ストラテジー1、ストラテジー2、または、どちらでもないストラテジー(「現在のストラテジー」)下での様々なシミュレーションの結果から得られた更新数と、ビットストリームあたりの平均長とを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、図1のシステム100によってこの詳細な説明に示されている。図1は、本発明の一実施形態による、エフェメリスサーバ101と、それぞれがGNSS受信機を有するデバイス102-1~102-nとを有するシステム100を示している。システム100では、デバイス102-1、102-nはそれぞれ、そのオンボードのGNSS受信機を使用して、衛星航法関連の作業(例えば、位置、速度または時間の決定)、衛星測位関連または他の適切な作業を実行するが、航法関連の作業を容易にするために衛星エフェメリス情報をGNSS受信機に提供するべく、エフェメリスサーバ101に依存している。例えば、エフェメリスサーバ101は、広域ネットワーク104(例えば、インターネット)を介して従来のソース103(例えば、NASAのCDDIS)からシステム更新にアクセスするか、あるいはシステム更新を受信する。そのいくつかはモバイルデバイス及びセンサであり得るデバイス102-1~102-nは、1以上の広域通信ネットワーク105(例えば、LoRaベースのネットワークなどの低電力の広域ネットワーク(LPWAN))を介してエフェメリスサーバ101と通信する。これらのデバイスでは、省電力及び低帯域幅の効率的な使用が最も重要である。したがって、エフェメリスサーバ101によって提供されるエフェメリス情報は頻繁に更新されないことが強く望まれ、各更新メッセージは、実行可能な限り少ないビットを有するべきである。
【0012】
上述したように、システム更新においてエフェメリスが有効であり続ける期間は、衛星のその後の動作に依存する。高性能アプリケーションの場合、システム更新でのエフェメリスの有効寿命は最短で数時間である。本発明は、より長い寿命(「長続きするケプラーエフェメリス」すなわち「LKエフェメリス」)を有するように修正され、システム更新が利用可能な場合は常にではないが、要求に応じて、あるいは1以上の性能基準に基づいてGNSS受信機で更新される、デバイスによって選択されるエフェメリスパラメータ値を提供することにより、低電力デバイスのオンボードのGNSS受信機で使用される衛星エフェメリスの寿命を延ばす。例えば、エフェメリスサーバ101は、最新のシステム更新を使用して得られたドップラーまたは疑似距離の推定値と、LKエフェメリスを使用して得られたドップラーまたは疑似距離との間のドップラーまたは疑似距離の推定誤差を監視する。エフェメリスサーバ101は、監視された量が所定の閾値(「更新基準」)を超えた場合にのみ、LKエフェメリスを再評価する。
【0013】
通常、ドップラーの推定誤差の閾値は100Hzに設定される(つまり、有効なエフェメリスは、±約50Hz以内のドップラーの推定誤差を生じると予想される)。通信コストを削減するために、LKエフェメリスにはシステム更新の選択されたエフェメリスパラメータのみが含まれる。エフェメリスサーバ101は、効率的な方法によって符号化されたメッセージで、LKエフェメリスを各GNSS受信機に送信する。
【0014】
本発明者らは以下を観察する:
(i)衛星の移動の摂動は、大きなドップラー推定誤差をもたらさないので、高調波項(すなわち、緯度引数(cus,cuc)、軌道半径(crs,crc)、及び傾斜角(cis,cic)に対する正弦及び余弦高調波補正項の振幅)をLKエフェメリスに含める必要はない。
(ii)平均運動差Δn、赤経の変化率Ω、傾斜角の変化率IDOTは関連している。3つの項は、地球の自転速度Ω及び傾斜した極軸に大きく依存している。地球の自転速度Ωは非常にゆっくりと変化するので、衛星の軌道に対する影響は一般的に重要ではない。したがって、送信されるLKエフェメリスにこれらの項を含める必要はない。例えば、GPS衛星の場合、GNSS受信機は、いくつかのアプリケーションではこれらの項についての適切な推定値であるIDOT=0及びΩ=8.15e-9.0を使用する。
(iii)軌道偏心率e、基準エポックにおける傾斜角i、基準エポックにおける軌道面の昇交点経度Ω、近地点引数ω、及び基準エポックにおける平均近点角Mは比較的安定したパラメータであるので、これらのエフェメリスパラメータによって更新が必要とされる頻度は低いと予想される。
【0015】
しかしながら、衛星の軌道周期を決定する要因である軌道長半径Aの推定誤差により、LKエフェメリスの寿命が切れることがある。一般に、衛星の軌道の軌道長半径Aは、以下の方程式を使用して推定される。
【0016】
【数1】
【0017】
式中、nは衛星の平均運動、Δnは平均運動の推定誤差、μは地球の重力定数である。比較的長い期間(例えば、60日)であっても、平均運動nは、時間の線形関数によってモデル化され得る。平均運動nと時間の線形関数との相関が0.5を超える場合、かつ、平均運動nに関する少なくとも30日の履歴データが存在する場合、nの推定値nは以下の方程式から導出される。
【0018】
【数2】
【0019】
式中、k及びbは、例えば履歴データの線形回帰から導出可能な値である。平均運動nと時間の線形関数との相関が0.5を超えず、かつ、平均運動nに関する少なくとも30日の履歴データが存在する場合、nの推定値nは以下の方程式から導出される。
【0020】
【数3】
【0021】
推定値nは、基準エポックtrefにおける衛星の平均近点角Mに対する補正ΔMを以下の方程式によって計算するために使用される。
【0022】
【数4】
【0023】
衛星のクロック誤差の推定値Δtは、以下の方程式を使用して取得される。
【0024】
【数5】
【0025】
ドップラー推定誤差の推定値Δλは、以下の方程式を使用して取得される。
【0026】
【数6】
【0027】
式中、aは時刻tにおける視線に沿った衛星の加速度であり、amaxは時刻tにおける視線に沿った衛星の最大加速度である。GNSS受信機のドップラーの推定誤差がドップラー閾値(Δλ)max(例えば、100Hz)内にあることを確認するために、推定値nは、以下の方程式によって得られる。
【0028】
【数7】
【0029】
式中、tmaxΔMは、平均近点角Mについての最大推定誤差(ΔM)maxが発生する時刻である。
【0030】
次に、衛星の軌道の軌道長半径の長さの長期的な推定値Aは、以下の方程式を使用して取得される。
【0031】
【数8】
【0032】
基準エポックtrefにおける長期的な平均近点角M trefは、以下の方程式によって、最後のシステム更新の指定時刻tにおける平均近点角M から導出される。
【0033】
【数9】
【0034】
同様に、軌道面の昇交点の長期的な経度Ω trefは、以下の方程式にしたがって、最後のシステム更新の指定時刻tにおける軌道面の昇交点経度Ω に関連している。
【0035】
【数10】
【0036】
式中、Ωは地球自転速度であり、WNtref及びWNはそれぞれ、参照エポックのGPS週及びエフェメリス時間のGPS週である。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのGNSSから取得され、エフェメリスサーバ101からのエフェメリス更新で提供されるシステム更新に基づいて、エフェメリスサーバ101のプロセッサによって以下のエフェメリスパラメータのみが準備される:(i)システム識別(「システムID」)、(ii)衛星識別(「PRN ID」)、(iii)衛星の軌道の軌道長半径の長さの推定値A、(iv)軌道偏心率の推定値e、(v)基準エポックにおける推定傾斜角i 、(vi)基準エポックにおける軌道面の昇交点経度の推定経度Ω tref、(vii)近地点引数の推定値ω、及び(viii)基準エポックにおける平均近点角M tref。項目(iii)-(iv)は、LKエフェメリスの1つのフェーズを集合的に構成する。以下に示すように、GNSS受信機は、長期間(例えば、数週間)にわたってこれらのLKエフェメリスのみを使用して、妥当な所定の閾値(例えば、100Hzのドップラー閾値及び250マイクロ秒の遅延閾値)内で高度、疑似距離、及びドップラーを推定することができるので、GNSS受信機の頻繁な更新を回避することができる。
【0038】
理論的には、基準エポックがエフェメリスサーバ101及びGNSS受信機の両方において知られている場合には、エフェメリスサーバ101は、各LKエフェメリスのエフェメリス時間をGNSS受信機に提供する必要はない。しかしながら、実際には、量子化誤差が蓄積するので、基準エポックが明示的に提供されることが好ましい。一実施形態では、エフェメリスサーバ101は、少なくとも基準エポックのGPS週をGNSS受信機に提供する。
【0039】
一実施形態では、エフェメリスサーバ101は、推定疑似距離rを監視してもよい。例えば、GPSでは、C/Aコードは、1ミリ秒にわたって送信される1023個のチップを有している。したがって、0.25ミリ秒という疑似距離予測閾値では、コード遅延は生じ得る1023の遅延の1/4に及ぶ範囲内にあることが予想される。一般に、MEO衛星の100Hzドップラー閾値と同様に、0.25ミリ秒の疑似距離予測閾値は、数ヶ月単位で有効である。このような状況では、本発明の方法によって生成されたLKエフェメリスは、適切な疑似距離推定を提供する。しかしながら、疑似距離予測閾値が低い場合(例えば、0.02ミリ秒)には、有効な期間ははるかに短くなる(例えば、数日単位)。このように有効期間が短縮された場合、軌道長半径の履歴データベースの長さの推定値Aは不適切であり得る。しかしながら、この場合、最新のシステム更新からのエフェメリスパラメータ√Aの2乗を長さ推定値AとしてLKエフェメリスで使用してもよい。10km以上の疑似距離推定値には、衛星クロックバイアス(AF0)及びクロックドリフト(AF1)の寄与も含めるべきである。
【0040】
GNSS衛星の軌道は完全には予測できないので、LKエフェメリスに基づく高度、疑似距離、及びドップラーの推定の質は、時間の経過とともに必然的に低下する。したがって、本発明の一実施形態によれば、エフェメリスサーバ101は、これらの予測を監視する。ドップラーまたは疑似距離の推定誤差が衛星の対応する予め設定された閾値を超えると、エフェメリスサーバ101はその衛星のLKエフェメリスを更新する。
【0041】
その作業をサポートするために、エフェメリスサーバ101は、「スナップショット」として編成されたLKエフェメリスのリアルタイムデータベースを維持する。各スナップショットは、エフェメリスサーバ101によってサポートされる衛星のために最後に生成されたLKエフェメリスのセットに対応する(サポートされる衛星は、複数のGNSSから選択され得る)。一実施形態では、GNSS受信機は、指定時刻に関連する最後のスナップショットを要求する(指定時刻は、例えばUTC時刻として表される)。GNSS受信機は、指定されたスナップショット(おそらく、GNSS受信機に現在実装されているスナップショット)から最後のスナップショットへの更新を符号化するビットストリームを要求することもある。
【0042】
一実施形態では、各スナップショットはタイムスタンプによってタグ付けされる。同様に、各LKエフェメリスも、シークエンス番号の形式のタイムスタンプによってタグ付けされる。シークエンス番号は、初期化時(例えば、2017年1月1日の00:15にt=0)から開始して、再評価時間ごとに(例えば、UTC時間ごとに)1ずつ増加する整数tであってよい。したがって、これらのシークエンス番号は、1UTC時間の連続するエポックにラベルを付ける。本明細書では、時刻tにおけるスナップショットはs(t)で示され、時刻tにおいて作成された衛星j(j=1、・・・、n)のLKエフェメリスはkeph(j,t)で示される。最初に、すなわち、初期化時に、エフェメリスサーバ101は、監視されているすべての衛星の最後のシステム更新からスナップショットs(0)を作成する。したがって、スナップショットs(0)には、LKエフェメリスkeph(0,0)、keph(1,0)、・・・、keph(n,0)が含まれる。
【0043】
次の再評価時刻(すなわち、t=1)において、エフェメリスサーバ101は、スナップショットs(0)内のLKエフェメリスkeph(0,0)、keph(1,0)、・・・、keph(n,0)のうちのいずれが、各衛星の更新基準の評価に基づいて更新を必要としているかを判定する。エフェメリスサーバ101は、更新基準が満たされた場合にのみ、新たなLKエフェメリスを作成する。例えば、時刻t=1においてLKエフェメリスkeph(0,0)及びkeph(25,0)が更新を必要とする場合、エフェメリスサーバ101は、LKエフェメリスkeph(0,1)及びkeph(25,1)を作成する。エフェメリスサーバ101は、少なくとも1つのLKエフェメリスが更新を必要とする場合にのみ、再評価時刻において新たなスナップショットを作成する。したがって、スナップショットs(1)には、LKエフェメリスkeph(0,1)、keph(1,0)、・・・、keph(24,0)、keph(25,1)、keph(26,0)、・・・、keph(n,0)が含まれる。スナップショットs(0)に長続きするケプラーエフェメリスが存在しない場合、エフェメリスサーバ101はスナップショットs(1)を作成しない。この一連のアクションは、すべての再評価時刻で繰り返される。この実施形態では、スナップショット及びLKエフェメリスの両方が、それぞれの作成時間によってインデックス付けされることに留意されたい。
【0044】
上記のように、更新基準は、最新のシステム更新を使用して取得された推定疑似距離ドップラーまたは高度と、LKエフェメリスを使用して取得された対応する推定疑似距離ドップラーまたは高度との大きさの差異を評価する。差異が予め設定された閾値を超えると、更新基準が満たされる。一実施形態では、各再評価時刻において、エフェメリスサーバ101は、世界中に配置された約100の場所のそれぞれでの監視下にある各衛星について、この更新基準を検査する。衛星の更新基準が100の場所のうちの1以上で満たされると、衛星の新たなLKエフェメリスが作成される。
【0045】
しかしながら、デバイス102-1及び102-nの帯域幅が制限されているので、各デバイスは、エフェメリスサーバ101からの更新を要求した場合にのみ、オンボードLKエフェメリスに対する更新を受信する。この詳細な説明で使用される用語の数を減らすため、デバイス内のLKエフェメリスのコレクションは、「スナップショット」とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、エフェメリスサーバとシステム100内のデバイスとの間で作業が調整されないので(例えば、サーバは、以下で説明するように、いくつかの理由のいずれかのために現在のスナップショットに以前のエフェメリスを復元する)、エフェメリスサーバ上のLKエフェメリスのシークエンス番号は、デバイス内の対応するLKエフェメリスのシークエンス番号よりも小さいことがある。この場合、エフェメリスサーバ101上のスナップショットとデバイス上のスナップショットとが同一のシークエンス番号を有しているとしても、スナップショットは、LKエフェメリスの同一のコレクションを有している必要はない。
【0046】
その更新要求によって、デバイスは、その最後のスナップショットに関連付けられたタイムスタンプ(すなわち、シークエンス番号)をエフェメリスサーバ101に送信する。次に、エフェメリスサーバ101は、受信したシークエンス番号を、現在のスナップショット内の各LKエフェメリスのシークエンス番号と比較する。受信したシークエンス番号よりも大きいシークエンス番号を有するエフェメリスサーバ101の現在のスナップショット内のエフェメリスは、要求された更新のために指定される。この比較に基づいて、エフェメリスサーバ101は、それらの指定されたエフェメリスを更新するビットストリームを作成し、要求しているデバイスに送信する。例えば、デバイスのスナップショットs(25)にLKエフェメリスkeph(0,24)、keph(1,24)、・・・、keph(24,24)、keph(25,24)、keph(26,24)、・・・、keph(n、24)が含まれており、エフェメリスサーバ101がLKエフェメリスkeph(0,24)、keph(1,24)、・・・、keph(24,24)、keph(25,27)、keph(26,23)、・・・、keph(n、24)を含む現在のスナップショットs(27)を有している場合に、デバイスが時刻t=27において更新要求を送信すると仮定する。デバイスの更新要求にはシークエンス番号25が含まれる。更新要求を受信すると、エフェメリスサーバ101は、現在のスナップショットs(27)内のLKエフェメリスkeph(25,27)のみが更新要求のシークエンス番号より大きいシークエンス番号を有していると判定する。したがって、デバイスには、LKエフェメリスkeph(25,24)のみをkeph(25,27)に更新するビットストリームが必要である。デバイスは、ビットストリームを使用して、LKエフェメリスkeph(0,24)、keph(1,24)、・・・、keph(24,24)、keph(25,27)、keph(26,24)、・・・、keph(n、24)が含まれるスナップショットs(27)を作成する。
【0047】
エフェメリスサーバ101では、シークエンス番号は、任意の適切なビット長(例えば、GPS時間の場合のように、29ビット)を有していてよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、通信帯域幅が限られていること、及び他の理由のために、デバイス102-1~102-nのうちのいくつかのシークエンス番号は、エフェメリスサーバ101のシークエンス番号よりも短いビット長で実装され得る。当然、このようなデバイスのシークエンス番号は、エフェメリスサーバ101のシークエンス番号よりも頻繁に「ロールオーバー」する。換言すれば、デバイスのシークエンス番号は、modulo-2(mはビット長)として扱う必要がある。スナップショット内のLKエフェメリスのシークエンス番号(例えば、A)を更新要求内のシークエンス番号(例えば、B)と比較する場合、エフェメリスサーバ101はBを0 modulo-2からの有向距離の短い方として表す。具体的には、BはCにマッピングされ、B<2m-1の場合は値Bを取り、それ以外の場合は値(2m-1-B)を取る。エフェメリスサーバ101のスナップショット内のLKエフェメリスのシークエンス番号は、(A-C)>0の場合、更新要求のシークエンス番号よりも大きくなる。
【0048】
所定の時刻には、エフェメリスサーバ101は、処理の中断から回復するためにリセットされる必要がある。回復プロセスでは、新たなサーバを初期化して、すべてのLKエフェメリスを再生成し、処理を停止したサーバを置き換える。このようなアプローチは、新たなサーバのスナップショット内の実質的にすべてのLKエフェメリスのシークエンス番号が、デバイスのスナップショット内のものよりも大きくなるように、デバイス102-1~102-nのGNSS受信機がすべてのスナップショットを更新する結果となるため、実用的ではない。結果として生じる作業負荷は、システム100の通信帯域幅を圧倒する(通信帯域幅に対して作業負荷が大きすぎる)。
【0049】
本発明は、迅速かつ費用効果の高い回復プロセスを提供する。いくつかの実施形態では、エフェメリスサーバ101のリアルタイムデータベースは、サイト外のアーカイブから回復可能である。アーカイブされたデータベースが復元されると、回復プロセスにより、無効になった復元されたLKエフェメリスが再生成される。処理の中断が短い場合、デバイス102-1~102-nからのその後の更新要求を処理するために必要な帯域幅は完全に許容可能である。例えば、現在のエポックのスナップショットをアーカイブから復元することができ、かつ次のエポック(すなわち、次のUTC時間ごとの再評価時刻)の前に復元が完了すると、処理の中断は最小限に抑えられる。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、エフェメリスサーバ101はまた、そのシステム更新がLKエフェメリスを生成するために使用される場合、各システム更新の時間を記録する。このアプローチでは、1以上のスナップショットが失われた場合でも(回復不能であるか、あるいは処理の中断が1以上の再評価時刻に及ぶので)、復元されたスナップショットに続いて、処理の中断前のすべてのスナップショットが再作成され得る。処理の中断中に失われたスナップショットについては、中断中に発生したすべてのシステム更新を使用して再作成することができ、このようなシステム更新は、システム100の外部のソースから入手することができる。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、エフェメリスサーバ101はまた、以前のシステム更新(例えば、処理の中断より24UTC時間前における現在のシステム更新)から特別なスナップショット(「参照スナップショット」)を生成することによって回復される。参照スナップショットからのLKエフェメリスは、デバイス102-1~102-nのLKエフェメリスを更新するためには使用されない。例えば、時刻t=t^において、参照スナップショットs(*)は、LKエフェメリスkeph(0,*)、keph(1,*)、・・・、keph(n,*)を含む以前のシステム更新から作成される。その後、t=t^+p、すなわちpの再評価時刻においてそれぞれの更新基準を満たし、LKエフェメリスkeph(25,*)、keph(26,*)が更新され、スナップショットs(t^+p)にはLKエフェメリスkeph(0,*)、keph(1,*)、・・・、keph(24,*)、keph(25,t^+p)、keph(26,t^+p)、・・・、keph(n,*)が含まれる。エポックt=t^+pの間に、エフェメリスで受信された更新要求によって、衛星25、26のLKエフェメリスが要求デバイスで更新される。残りのLKエフェメリスは、その後の再評価時刻におけるそれぞれの更新基準にしたがって通常の過程で置き換えられ、デバイス101-1~101-nの対応するLKエフェメリスを更新することができる。このように、処理の回復に起因する制限された帯域幅が圧倒されることはない。いくつかの実施形態では、参照スナップショットのすべてのLKエフェメリスについて1つの基準時間で現在のシステム更新を選択するのではなく、異なる基準時間(おそらく、ランダムに選択される)を使用することにより、各衛星のLKエフェメリスを生成してもよい。
【0052】
確かに、本発明の回復方法は、デバイス102-1~102-nのいくつかにおいて性能の低下をもたらし得る。例えば、デバイスは、参照スナップショットからの対応するLKエフェメリスが通常の過程で置き換えられるまで、期限切れのLKエフェメリスを使用する必要がある。しかしながら、本発明の回復方法は、システムが時間とともに体よく回復することを確実にする。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、LKエフェメリス更新のためのビットストリームは、ヘッダ部分と本体部分とを有する。ヘッダ部分は、15ビットの「データ発行エフェメリス(IODE)」と、LKエフェメリスが更新された衛星を列挙する識別子(SID)とを含む。IODEには、更新のシークエンス番号が含まれている。SIDには、GPS、BDS、GAL、及びQZSSを(順番に)表示する4つの1ビットのGNSS識別フラグが含まれている。4つのGNSS識別フラグのうちの1つのみが設定されている場合、次の8ビットワードは、識別されたコンステレーションの衛星のリストへのインデックスである。それ以外の場合には、LKエフェメリスを含む各GNSSの衛星フラグマップが、GNSS識別フラグの順序で続く。GPSフラグが設定されている場合、その衛星マップには31のフラグが含まれ、各設定フラグはLKエフェメリスが含まれている1つの衛星を表す。衛星は、疑似乱数コードインデックス(「PRN ID」)の順に表される。同様に、BDS、GAL、及びQZSSの場合、それぞれの衛星フラグマップは、それぞれ37ビット、36ビット、及び8ビットを有している。
【0054】
ビットストリームの本体部分は、ヘッダの衛星フラグマップにおける設定されたフラグの順序にしたがって、LKエフェメリス(すなわち、軌道及びクロックのパラメータ値)の連続したリストである。図2は、本発明の一実施形態による、LKエフェメリスの各フィールドを示す表である。「週フラグ」または「(Ω)」フラグが設定されていない場合、対応する「週」フィールドまたは「Ω」フィールドはビットストリームに表示されないことに留意されたい。いくつかの実施形態では、識別された衛星のいずれかの軌道タイプ(すなわち、MEO、GEO、またはGSO)が既知であるので、「軌道タイプ」フィールドは省略される。
【0055】
いくつかの実施形態では、エフェメリスサーバ101は、更新の頻度を制御するために、LKエフェメリスにヘルスフラグを設定するかどうかを決定する。
【0056】
いくつかの実施形態では、現在のスナップショットは、各GNSS受信機が動作可能となる前に、各GNSS受信機に予めインストールされている。現在のスナップショットは、システムにおいて動作を開始したときに各GNSS受信機にインストールされてもよい。
【0057】
各LKエフェメリスの形式(例えば、フィールド及びそれぞれのビット長)は、経験的に決定される。一実施形態によれば、365UTC(協定世界時)日の実際のシステム更新が収集され、シミュレーションで使用される。最初の70日間のデータは、LKエフェメリスの各フィールドのビット長を調整するために使用される。例えば、ビット長が長いほど、ケプラーパラメータ値の精度が高くなる。そのケプラーパラメータに対する更新基準の感度が高いほど、より長いビット長が必要になる。LKエフェメリスにはパラメータの数が多いので、LKエフェメリスの形式を調整して望ましいビット長及び高い性能(すなわち、比較的まれにしか更新を必要としない)を取得するためには、相当量の試行錯誤と、知識に基づいた推測とが必要である。
【0058】
望ましいLKエフェメリス形式が取得された後、残りの295UTC日のデータが31の衛星で使用される。エフェメリスは、上記のように、本発明の一実施形態にしたがって、それらのLKエフェメリスを更新する。エフェメリスサーバは、1200UTC秒ごとに、世界中のランダムに選択された100の場所においてすべての衛星のドップラー更新基準を評価する。このシミュレーションでは、各衛星のドップラー基準は90Hzの閾値である。評価された更新基準のいずれかで閾値を超えると、次のスナップショットのためにLKエフェメリスが生成される。
【0059】
図2のLKエフェメリス形式を使用した1つの365UTC日のシミュレーションでは、いくつかのLKエフェメリスは期限切れにならなかった。最も頻繁に更新される衛星には3つの更新があった。シミュレーションの最後の295UTC日の期間には、合計41の更新が必要であった。
【0060】
第2のシミュレーションでは、500UTC日のシステム更新及び様々な疑似距離更新基準が使用される。結果は、より狭い疑似距離閾値からより高い更新頻度が生じるという仮説と一致していた(例えば、0.25ミリ秒対0.02ミリ秒)。このシミュレーションでは、50Hzというドップラー閾値が使用されたが、これは疑似距離の性能に実質的な影響を与えるようには見えなかった(すなわち、50Hzの閾値を増加させても、各疑似距離閾値の下で更新周波数が大幅に低下することはなかった)。
【0061】
一実施形態(「ストラテジー1」)では、エフェメリスサーバ101は、ビットストリームに含まれるLKエフェメリスの数が所定の数(例えば、5)を超えない限り、更新のためにビットストリームを送信しない。
【0062】
別の実施形態(「ストラテジー2」)では、広い疑似距離閾値と狭い疑似距離閾値とが同時に監視され、狭い疑似距離閾値は、広い疑似距離閾値の積であり、スケールファクタは1.0未満である。このアプローチでは、広い疑似距離閾値に基づく更新基準がいずれかの衛星で満たされると、狭い疑似距離閾値に基づく更新基準を満たしている衛星に対してLKエフェメリスが更新される。図3は、それぞれ、ストラテジー1、ストラテジー2、またはいずれでもないストラテジー(「現在のストラテジー」)での様々なシミュレーションの結果からの更新数と、ビットストリームあたりの平均長とを示している。ストラテジー2では、様々なスケールファクタをシミュレーションした。シミュレーションは、GPS、GAL、BDS、及びQZSSによる56の衛星からのエフェメリスデータを使用して実施した。
【0063】
上記の詳細な説明は、本発明の特定の実施形態を説明するために提供されており、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の範囲内での多数の変形及び修正が可能である。本発明は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3