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特許7584535アリピプラゾール注射用調製物を投与する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】アリピプラゾール注射用調製物を投与する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20241108BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241108BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K9/10
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/38
A61P25/18
A61P43/00 111
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022559751
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2021014192
(87)【国際公開番号】W WO2021201238
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】63/003,544
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ハーリン,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャオフォン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヤンリン
(72)【発明者】
【氏名】ラウフィニア,アラシュ
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特許第4836797(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2019/0076425(US,A1)
【文献】特表2015-514751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリピプラゾールまたはその塩を含む、統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療するための医薬組成物であって、組成物が注射用調製物の形態であり、患者に前記注射用調製物を筋肉内投与し、前記患者が前記注射用調製物の投与を2カ月ごとに1回受け、前記注射用調製物の投与が患者へ2カ月ごとに総量として960mgのアリピプラゾールを与えるように用いられることを特徴とし、前記注射用調製物が、水、ならびにポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびカルボキシメチルセルロースまたはその塩を含む懸濁化剤をさらに含む、組成物。
【請求項2】
2カ月ごとに1回が、42日~70日ごとに1回を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2カ月ごとに1回が、54日~58日ごとに1回を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
患者が統合失調症を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
患者が双極性障害I型を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
患者への筋肉内投与が、臀部筋肉で行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
リピプラゾールまたはその塩が、0.5μm~30μmの平均一次粒径を有し、アリピプラゾールまたはその塩の濃度が200mg/mL~600mg/mLである、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記水が注射用水であり、アリピプラゾールまたはその塩がアリピプラゾール一水和物であり、アリピプラゾール一水和物が2μm~5μmの平均一次粒径を有し、注射用調製物中のアリピプラゾールの濃度が、アリピプラゾールの無水物換算で、約300mg/mLである、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
患者に、アリピプラゾールまたはその塩を含む固体剤形を経口投与することをさらに含み、注射用調製物および前記固体剤形が、1日目に患者に投与され、前記固体剤形が1日目から5~15日間連続して投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
患者が、CYP2D6プアメタボライザーである場合、又はCYP2D6阻害剤、CYP3A4阻害剤、若しくはCYP3A4を14日間以上服用している場合、アリピプラゾールの用量調節を行う、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年4月1日に出願した米国仮出願第63/003,544号の優先権を主張するものであり、この出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
ドーパミン(D2)およびセロトニン5-HT1A受容体における部分アゴニスト、ならびにセロトニン5-HT2A受容体におけるアンタゴニストであるアリピプラゾールは、成人における統合失調症および双極性障害I型の治療に対して、臨床試験で有効性を実証した非定型抗精神病剤である。アリピプラゾールは7-[4-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-1-ピペラジニル]ブトキシ]-3,4-ジヒドロカルボスチリルである。実験式はC2327Clであり、その分子量は448.38である。化学構造は、
【化1】
である。
【0003】
アリピプラゾールを含む医薬組成物は、統合失調症の治療に対して有用な抗精神病剤として公知である。アリピプラゾールの筋肉内(IM)デポ製剤であるエビリファイメンテナ(Abilify Maintena)(登録商標)は、長期放出懸濁注射剤である。これは、経口アリピプラゾールで安定化された成人患者における統合失調症および双極性障害I型の維持療法に対して多くの国で承認されている。
【0004】
筋肉注射用エビリファイメンテナ(登録商標)は、アメリカ食品医薬品局(US Federal Drug Administration)より現在承認されており、160mg、200mg、300mg、および400mgの用量のアリピプラゾールまたはその塩を毎月投与するための持続放出性懸濁液を包含する。これらの組成物および方法は、これら全体すべてが本明細書に参照により組み込まれている;米国特許第7,807,680号、第8,030,313号、第8,338,427号、第8,338,428号、第8,399,469号、第8,722,679号、第8,759,351号、第8,993,761号、第9,089,567号、および第10,525,057号に記載されている。
【0005】
アリピプラゾールの持効性組成物の他の製剤は、アリピプラゾールまたはその塩、アリピプラゾールまたはその塩の結晶形態、特定の懸濁化剤(懸濁化剤(A))、および分散媒体を含む注射用調製物の使用を包含する。それら注射用調製物は、アリピプラゾールのready to use(RTU)製剤として公知である;これらは、米国特許第10,517,951号に少なくとも記載されており、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アリピプラゾールのRTU注射用調製物は、アドヒアランスに関連した再発または最適以下の治療結果により潜在的な危険性があると考えられる患者集団への投与、および経口錠剤の毎日の投薬に依存することなく治療上の血漿中濃度を達成することを可能にする。すなわち、本開示は、再発、最適以下の治療結果のうちの1つもしくは複数を最小化させ、そして/または治療上の血漿中濃度を達成する、アリピプラゾールのRTU注射用調製物の使用を対象とする。例えば、本開示は、アリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を、統合失調症または双極性障害I型を有する患者に筋肉内投与することにより、これらの患者を治療する方法であって、患者が約2カ月ごとに1回、注射用調製物の投与を受ける方法を対象とする。約2カ月ごとに1回の注射用調製物の投与は、薬物コンプライアンスを改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの態様では、本開示は、統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療する方法であって、患者にアリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を筋肉内投与することを含み、患者が約2カ月ごとに1回、注射用調製物の投与を受ける方法を対象とする。本明細書中に開示される方法では、注射用調製物は約650mg~約1200mgの範囲の量のアリピプラゾールを含む。さらに、本明細書中に開示される方法では、患者への筋肉内投与は、三角筋、臀部筋肉、およびこれらの組合せから選択される部位、例えば、臀部筋肉において行われる。
【0008】
さらなる態様において、本明細書に提供されている方法では、注射用調製物は、水、ならびにポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびカルボキシメチルセルロースまたはその塩を含む懸濁化剤をさらに含み、アリピプラゾールまたはその塩は、約0.5μm~約30μmの範囲の平均一次粒径を有し、アリピプラゾールまたはその塩の濃度は約200mg/mL~約600mg/mLの範囲である。さらに、例えば、本明細書に開示されている方法では、1種または複数の注射用調製物が投与される。
【0009】
本開示の態様では、統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療する方法は、患者の臀部筋肉に、アリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を投与することを含み、患者は、約56日(8週、または2カ月)ごとに1回、注射用調製物の投与を受け、注射用調製物中のアリピプラゾールの量は約650mg~約1200mgの範囲である。
【0010】
いくつかのさらなる態様では、本開示は、統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療する方法であって、患者の臀部筋肉にアリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を投与することを含み、患者が約56日ごとに1回注射用調製物の投与を受け、注射用調製物が水、ならびにポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびカルボキシメチルセルロースまたはその塩を含む懸濁化剤をさらに含み、注射用調製物中のアリピプラゾールの濃度が300mg/mLである方法を対象とする。
【0011】
いくつかのさらなる態様では、本開示は、統合失調症または双極性障害I型の治療における使用のためのアリピプラゾールまたはその塩を対象とし、アリピプラゾールまたはその塩は、本明細書に開示されている方法を用いて、それを必要とする患者に投与されるものである。さらに、本開示はまた、統合失調症または双極性障害I型を治療するための医薬の製造におけるアリピプラゾールまたはその塩の使用であって、アリピプラゾールまたはその塩が本明細書に開示されている方法を用いて、それを必要とする患者に投与するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、治験用医薬品の最初の投薬、すなわちアリピプラゾール2カ月(2M)RTU(「Ari 2M群」として参照される)、960mg(N=41)(56日間に注射1回)が、Ari 2M RTUの最初の投与1日目から連続して7日間のアリピプラゾールの経口投与と共に行われた後の平均(SD)薬物動態学的濃度を対象とし、基準の構成成分は、Ari IMデポ剤の最初の投与1日目から連続して14日間のアリピプラゾールの経口投与を伴うアリピプラゾール筋肉内デポ剤(「Ari IMデポ剤」または「IMデポ剤」として参照される)、400mg(N=42)(28日間に注射1回)、エビリファイメンテナ(登録商標)である。
【0013】
図2図2は、IMデポ剤、400mg(N=93)のアリピプラゾール(28日間隔)の7回目および8回目の投薬後の平均(SD)薬物動態学的濃度と比較した、Ari 2M、960mg(N=102)のアリピプラゾール(56日間隔)の4回目の投薬後の平均(SD)薬物動態学的濃度を対象とする。
【0014】
図3図3は、単回用量780mg(N=18)または1200mg(N=13)のアリピプラゾール2M RTU、ready to useの持効性注射剤を、統合失調症を有する対象の臀部筋肉に投与した後の、平均(SD)アリピプラゾール血漿中濃度時間プロファイルを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用される場合、「a」または「an」の実体は、1つまたは複数のその実体を指し、例えば、「a compound」は、別途述べられていない限り、1つもしくは複数の化合物または少なくとも1つの化合物を指す。よって、「a」(または「an」)、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は本明細書で交換可能なように使用される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、およそ、~の領域内、概略で、または周辺にあることを意味する。「約」という用語が数値的範囲と併せて使用される場合、これは、記載の数値の境界の上および下を広げることにより範囲を修正する。一般的に、「約」という用語は、数値を、述べられている値の上下5%の分散で修正するよう本明細書で使用されている。
【0017】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療している」または「治療」という用語は、障害または状態と関連して使用される場合、例えば、軽減する、減少させる、調節する、回復させる、または排除するなど、障害または状態の改善を結果として生じる任意の効果を含む。障害または状態の任意の症状の重症度の改善または軽減は、当技術分野で公知の標準的な方法および技術に従い容易に評価することができる。いくつかの実施形態では、本明細書により開示された方法を使用して、単独維持療法として、統合失調症および双極性障害I型を治療することができる。さらなる実施形態では、本明細書により開示された方法を使用して、統合失調症、双極性障害I型に伴う躁病および混合症状の発現の急性治療、大うつ病性障害(MDD)、自閉症性障害に伴う過敏性、およびトゥレット障害を治療することができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アリピプラゾール」についての参照は、アリピプラゾールまたはその塩、アリピプラゾールまたはその塩の結晶形態についての参照である。アリピプラゾールまたはその塩は一水和物形態(アリピプラゾール水和物A)または様々な無水物の形態であってよく、これらは、無水結晶B、無水結晶C、無水結晶D、無水結晶E、無水結晶F、および無水結晶Gの形態で存在することが公知である。これらの結晶形態のすべては、本開示の注射用調製物においてアリピプラゾールまたはその塩として使用することができ、さらに例えば、アリピプラゾールは一水和物形態である。本明細書で使用される場合、「アリピプラゾール」またはその塩という用語は、構造:
【化2】
を有する化合物を指す。
【0019】
本開示は、統合失調症または双極性障害I型を有する患者に、アリピプラゾールの注射用調製物を筋肉内投与することにより、これらの患者を治療する方法であって、患者が約2カ月ごとに1回、注射用調製物の投与を受ける方法を対象とする。
【0020】
実施形態:
【0021】
限定されることなく、本開示のいくつかの実施形態は以下を含む:
【0022】
1.統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療する方法であって、患者にアリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を筋肉内投与することを含み、患者が約2カ月ごとに1回、注射用調製物の投与を受ける方法。
【0023】
2.注射用調製物の投与が、患者へ2カ月ごとに総量として約650mg~約1200mgのアリピプラゾールを与える、実施形態1に記載の方法。
【0024】
3.注射用調製物の投与が、患者へ2カ月ごとに総量として約960mgのアリピプラゾールを与える、実施形態2に記載の方法。
【0025】
4.約2カ月ごとに1回が、約42日~70日ごとに1回を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0026】
5.2カ月ごとに1回が、約56日ごとに1回(例えば、54日~58日ごとに1回)を含む、実施形態4に記載の方法。
【0027】
6.患者が統合失調症を有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
7.患者が双極性障害I型を有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
8.患者への筋肉内投与が、三角筋、臀部筋肉、およびこれらの組合せから選択される部位で行われる、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
9.部位が臀部筋肉である、実施形態8に記載の方法。
【0031】
10.注射用調製物が、水、ならびにポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびカルボキシメチルセルロースまたはその塩を含む懸濁化剤をさらに含み、アリピプラゾールまたはその塩が、約0.5μm~約30μmの平均一次粒径を有し、アリピプラゾールまたはその塩の濃度が約200mg/mL~約600mg/mLである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
11.注射用調製物が、注射用水、ならびにポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびカルボキシメチルセルロースまたはその塩を含む懸濁化剤をさらに含み、アリピプラゾールまたはその塩がアリピプラゾール一水和物であり、アリピプラゾール一水和物が約2μm~約5μmの平均一次粒径を有し、アリピプラゾールの無水物の形態で計算される注射用調製物中のアリピプラゾールの濃度が、約300mg/mLである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
12.注射用調製物の複数回投与後の、時間ゼロから投与後56日までのアリピプラゾールの濃度-時間曲線(AUC)下面積が、例えば、図2に示されている通り、アリピプラゾール筋肉内(IM)デポ製剤、例えば、エビリファイメンテナ(登録商標)の約1カ月(4週または28日)ごとに1回の複数回投与後の、時間ゼロから投与後28日までのアリピプラゾールの2倍のAUCと実質的に同等である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
13.患者に、アリピプラゾールまたはその塩を含む固体剤形を経口投与することをさらに含み、注射用調製物および固体剤形が、1日目に患者に投与され、固体剤形が1日目から5~15日間連続して投与される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
14.統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療する方法であって、患者にアリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を筋肉内投与することを含み、患者が約2カ月ごとに1回、注射用調製物の投与を受け、患者への筋肉内投与が、三角筋、臀部筋肉、およびこれらの組合せから選択される部位で行われる方法。
【0036】
15.統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療する方法であって、患者にアリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を筋肉内投与することを含み、患者が約2カ月ごとに1回、注射用調製物の投与を受け、患者への筋肉内投与が、三角筋、臀部筋肉、およびこれらの組合せから選択される部位で行われ、約2カ月ごとに1回が約42日~70日ごとに1回を含む方法。
【0037】
16.統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療する方法であって、患者にアリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を筋肉内投与することを含み、患者が約2カ月ごとに1回、注射用調製物の投与を受け、患者への筋肉内投与が、三角筋、臀部筋肉、およびこれらの組合せから選択される部位で行われ、約2カ月ごとに1回が約42日~70日ごとに1回を含み、注射用調製物の投与が、患者へ2カ月ごとに総量として約650mg~約1200mgのアリピプラゾールをもたらす方法。
【0038】
17.統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療する方法であって、患者にアリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を筋肉内投与することを含み、患者が約2カ月ごとに1回、注射用調製物の投与を受け、患者への筋肉内投与が、三角筋、臀部筋肉、およびこれらの組合せから選択される部位で行われ、約2カ月ごとに1回が約42日~70日ごとに1回を含み、注射用調製物の投与が、患者へ2カ月ごとに総量として約650mg~約1200mgのアリピプラゾールをもたらし、注射用調製物が、水、ならびにポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびカルボキシメチルセルロースまたはその塩を含む懸濁化剤をさらに含み、アリピプラゾールまたはその塩が、約0.5μm~約30μmの平均一次粒径を有し、アリピプラゾールまたはその塩の濃度が約200mg/mL~約600mg/mLの範囲である方法。
【0039】
18.統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療する方法であって、患者の臀部筋肉に、アリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を投与することを含み、患者が、約56日(8週、または2カ月)ごとに1回、注射用調製物の投与を受け、注射用調製物中のアリピプラゾールの量が約650mg~約1200mgである方法。
【0040】
19.注射用調製物が、水、ならびにポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびカルボキシメチルセルロースまたはその塩を含む懸濁化剤をさらに含み、アリピプラゾールまたはその塩が約0.5μm~約30μmの平均一次粒径を有し、注射用調製物中のアリピプラゾールの濃度が約300mg/mLである、実施形態18に記載の方法。
【0041】
20.注射用調製物が、注射用水、ならびにポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびカルボキシメチルセルロースまたはその塩を含む懸濁化剤をさらに含み、アリピプラゾールまたはその塩がアリピプラゾール一水和物であり、アリピプラゾール一水和物が約2μm~約5μmの平均一次粒径を有し、アリピプラゾールの無水物の形態で計算される注射用調製物中のアリピプラゾールの濃度が、約300mg/mLである、実施形態18または19に記載の方法。
【0042】
21.注射用調製物の複数回投与後の、時間ゼロから投与後56日までのアリピプラゾールの濃度-時間曲線(AUC)下面積が、例えば、図2に示されている通り、アリピプラゾール筋肉内(IM)デポ製剤、例えば、エビリファイメンテナ(登録商標)の約1カ月(4週または28日)ごとに1回の複数回投与後の、時間ゼロから投与後28日までのアリピプラゾールのAUCの2倍と実質的に等しい、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
22.アリピプラゾールを固体剤形で経口投与することをさらに含み、注射用調製物の1回目の投与と共に、固体剤形が、1日当たり10mg~20mgの量で、連続して5~15日間投与される、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
23.注射用調製物の1回目の投与と共に、固体剤形で1日当たり10mg~20mgのアリピプラゾールを連続して7日間経口投与することをさらに含む、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
24.統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療する方法であって、患者の臀部筋肉に、アリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を投与することを含み、患者が約56日(8週、または2カ月)ごとに1回注射用調製物の投与を受け、注射用調製物が、約650mg~約1200mgのアリピプラゾールの量で患者に投与され、注射用調製物が、水、ならびにポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびカルボキシメチルセルロースまたはその塩を含む懸濁化剤をさらに含み、アリピプラゾールまたはその塩が、約0.5μm~約30μmの平均一次粒径を有する方法。
【0046】
25.アリピプラゾールを固体剤形で経口投与することをさらに含み、注射用調製物の1回目の投与と共に、固体剤形が、1日当たり10mg~20mgの量で、連続して5~15日間投与される、実施形態24に記載の方法。
【0047】
26.注射用調製物の1回目の投与と共に、固体剤形で1日当たり10~20mgのアリピプラゾールを連続して7日間経口投与することをさらに含む、実施形態24に記載の方法。
【0048】
27.アリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を、統合失調症または双極性障害I型を有する患者に投与する方法であって、
患者に、1日目から連続して5~15日間、10~20mg/日のアリピプラゾールまたはその塩を経口投与すること;
患者に、注射用調製物を約56日ごとに(約8週または2カ月ごとに)1回、筋肉内投与することを含み、
約650mg~1200mgのアリピプラゾールを含む注射用調製物が1日目に投与され、一連の投与が、例えば、少なくとも約56日間、アリピプラゾールの平均血漿レベルを90ng/mL以上で維持することを可能にする方法。
【0049】
28.アリピプラゾールまたはその塩のさらなる経口投与を含まない、実施形態27に記載の方法。
【0050】
29.アリピプラゾールまたはその塩を含む充填済み(プレフィルド)ゾルゲル形成された注射用調製物を、それを必要とする患者に投与する方法であって、
総量として50~300mgのアリピプラゾールを、1日目から15日目以内に、同時にまたは続けて投与すること;および
1日目に、650~1200mgのアリピプラゾールを含む充填済みゾルゲル形成された注射用調製物を、臀部筋肉に投与すること;これに続いて
約56日ごとに(約8週または2カ月ごとに)1回、約650mg~1200mgのアリピプラゾールを含む充填済みゾルゲル形成された注射用調製物を、臀部筋肉に投与することを含み、
一連の投与が、アリピプラゾールの平均血漿レベルを90ng/mL以上で維持することを可能にする方法。
【0051】
30.充填済みゾルゲル形成された注射用調製物が、300mg/mLのアリピプラゾールを含み、チキソトロピック特性を有する注射用調製物である、実施形態29に記載の方法。
【0052】
31.注射用調製物がポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される懸濁化剤をさらに含む、実施形態29または30に記載の方法。
【0053】
32.アリピプラゾールまたはその塩を含む持効性注射用調製物を、それを必要とする患者に投与する方法であって、
約56日ごとに(約8週または2カ月ごとに)1回、650~1200mgのアリピプラゾールを含む注射用調製物を、患者の臀部筋肉に投与することを含み、
患者が、アリピプラゾールの投与を受けることによりアリピプラゾールの安定した血漿レベルを有するが、アリピプラゾールの追加投与を必要とし、注射用調製物が充填済みゾルゲル形成された注射の剤形であり、一連の投与が、アリピプラゾールの平均血漿レベルを90ng/mL以上で維持することを可能にする方法。
【0054】
33.アリピプラゾールの安定した血漿レベルが90ng/mL以上である、実施形態32に記載の方法。
【0055】
34.統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療する方法であって、患者に、アリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を約2カ月(8週または56日)ごとに1回、筋肉内投与することを含み、注射用調製物の複数回投与後の、時間ゼロから投与後56日までのアリピプラゾールの濃度-時間曲線(AUC)下面積が、例えば、図2に示されている通り、アリピプラゾール筋肉内(IM)デポ製剤、例えば、エビリファイメンテナ(登録商標)の約1カ月(4週または28日)ごとに1回の複数回投与後の、時間ゼロから投与後28日までのアリピプラゾールのAUCの2倍と実質的に等しい、方法。
【0056】
35.アリピプラゾールまたはその塩がアリピプラゾール一水和物である、実施形態34に記載の方法。
【0057】
36.注射用調製物の複数回投与が4回以上の投与であり、アリピプラゾール筋肉内(IM)デポ製剤の複数回投与が7回以上の投与である、実施形態34または35に記載の方法。
【0058】
37.統合失調症または双極性障害I型を有する患者を治療する方法であって、患者に、アリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を約2カ月(8週または56日)ごとに1回、筋肉内投与することを含み、注射用調製物の複数回投与後の、投与後56日のアリピプラゾールの血漿中濃度が、例えば、図2に示されている通り、アリピプラゾール筋肉内(IM)デポ製剤、例えば、エビリファイメンテナ(登録商標)の約1カ月(4週または28日)ごとに1回の複数回投与から28日後のアリピプラゾールの血漿中濃度と実質的に等しい方法。
【0059】
38.アリピプラゾールまたはその塩がアリピプラゾール一水和物である、実施形態37に記載の方法。
【0060】
39.注射用調製物の複数回投与が4回以上の投与であり、アリピプラゾール筋肉内(IM)デポ製剤の複数回投与が7回以上の投与である、実施形態37または38に記載の方法。
【0061】
注射用調製物
【0062】
本開示の注射用調製物(例えば、2カ月ready to use(RTU)注射用調製物)は、アリピプラゾール、特定の懸濁化剤(懸濁化剤(A))、および分散媒体を含む組成物を含む。例えば、本開示の注射用調製物は分散媒体として少なくとも水を含む。水、または水および有機溶媒を含む水性溶媒は、少なくとも水を含む分散媒体として使用することができる。いくつかの態様では、分散媒体は水であり、さらに、例えば、注射用滅菌水である。
【0063】
本開示の注射用調製物に含有されている特定の懸濁化剤(懸濁化剤A)は、(i)および(ii):(i)ポリビニルピロリドンならびに(ii)ポリエチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースまたはその塩から選択される少なくとも1種の懸濁化剤を含む。
【0064】
いくつかの態様では、本開示の注射用調製物は、アリピプラゾールまたはその塩、水、ならびに群(i)および(ii):(i)ポリビニルピロリドンならびに(ii)ポリエチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースまたはその塩から選択される少なくとも1種の懸濁化剤を含み、アリピプラゾールまたはその塩は、約0.5μm~約30μmの範囲の平均一次粒径を有し、アリピプラゾールまたはその塩の濃度は約200mg/mL~約600mg/mLの範囲である。本明細書で開示された、2カ月ready to use(RTU)注射用調製物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,517,951号に記載されている。
【0065】
例えば、本開示の注射用調製物がアリピプラゾールまたはその塩(これより以下「本開示のアリピプラゾール注射用調製物」と呼ぶことができる)を含む場合、アリピプラゾールまたはその塩の濃度は約200mg/mL~約600mg/mLの範囲である。(α)アリピプラゾールのRTU注射用調製物は静置によりゲルとなり、アリピプラゾールの粒子の沈殿および固化は阻害することができ、よって優れた貯蔵安定性が得られる。さらに、(β)注射用調製物は、ゲルの形態でも、軽度の衝撃下におかれた場合、流動度を簡単に増加させることができるので、調製物は使用時(注射時)に簡単に注射することができる。さらに、ゲル状注射用調製物(ゲル組成物)は、単にシリンジのプランジャーを押し、シリンジ針を介して調製物を押し出すことにより、流動度を増加させる(ゾル状態を形成する)ので、調製物は、針を介してそのまま滑らかに押し出すことができる。したがって、調製物はチキソトロピック特性を有し、注射時の局所的障害および疼痛が比較的少ないまま、筋肉内または皮下によく分散させることができる。
【0066】
すなわち、その濃度が100mg/mL以下である場合、懸濁化剤Aが使用された(または時効処理がさらに実施された)としても、ゲルを形成する可能性のある注射用調製物の生成は起こり得ない。したがって、本開示の注射用調製物はアリピプラゾールまたはその塩を含み、特定の懸濁化剤(懸濁化剤A)および特定の濃度のアリピプラゾールまたはその塩(約200mg/mL~約600mg/mL、例えば、約250mg/mL~約450mg/mL、および約300mg/mL~約400mg/mL)の使用の組合せが使用される。本開示の注射用調製物がアリピプラゾールの塩を含む場合、上記に記載されている濃度はアリピプラゾールとして計算される。
【0067】
いくつかの態様では、RTU注射用調製物は、アリピプラゾールを約200mg/mL~約600mg/mLの濃度、例えば、約200mg/mL~約500mg/mL、例えば、約250mg/mL~約450mg/mL、さらに例えば、約300mg/mL~約400mg/mL、およびさらに例えば、約300mg/mLの濃度で含む。
【0068】
いくつかの態様では、本開示のアリピプラゾール注射用調製物において、(i)ポリビニルピロリドンが懸濁化剤Aとして含有された場合、ポリビニルピロリドンの濃度は、約0.1mg/mL~約100mg/mLの範囲、例えば、約1mg/mL~約50mg/mL、さらに例えば、約2mg/mL~約20mg/mLの範囲である。
【0069】
いくつかの態様では、本開示のアリピプラゾール注射用調製物が、(i)ポリビニルピロリドンを懸濁化剤Aとして含み、1種または複数の他の懸濁化剤をさらに含む場合、少なくとも1種のメンバーは、ポリエチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースまたはその塩から選択され、1つまたは複数の他の懸濁化剤として含有される。例えば、本開示のこれらの注射用調製物は、(i)ポリビニルピロリドンを懸濁化剤Aとして含み、これらが1種または複数の他の懸濁化剤をさらに含む場合、これらは、以下に示す(i-1)~(i-3)のうちの任意の組合せの懸濁化剤を含む。
【0070】
(i-1)ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコール
【0071】
(i-2)ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースまたはその塩、ならびに
【0072】
(i-3)ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびカルボキシメチルセルロースまたはその塩。
【0073】
本開示のこれらの注射用調製物が、(i-1)~(i-3)のどの組合せを含むかに関わらず、ポリビニルピロリドンの濃度は上記のように、約0.1mg/mL~約100mg/mL、例えば、約1mg/mL~約50mg/mL、さらに例えば、約2mg/mL~約20mg/mLである。(i-1)または(i-3)において、ポリエチレングリコールの濃度は約0.05mg/mL~約100mg/mLであり、例えば、約0.1mg/mL~約50mg/mLである。(i-2)または(i-3)において、カルボキシメチルセルロースまたはその塩の濃度は、約0.5mg/mL~約50mg/mL、例えば、約1mg/mL~約30mg/mL、さらに例えば、約2mg/mL~約20mg/mLである。
【0074】
カルボキシメチルセルロースまたはその塩を含有することにより、生成中の粘度の増加を抑制することができる。これは、アリピプラゾールまたはその塩が、効率的な方式で、望ましい粒径へと微粉砕されることを可能にする。いくつかの実施形態では、カルボキシメチルセルロースまたはその塩の分子量は49,000~300,000の範囲である。さらに、ポリエチレングリコールを含有することにより、生成した注射用調製物が長い期間の間貯蔵される場合でも離液を阻止することができる。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールの分子量は400~4,000の範囲である。いくつかの実施形態では、(i-3)は注射用調製物中に存在する。
【0075】
いくつかの態様では、本開示のアリピプラゾール注射用調製物が(ii)ポリエチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースまたはその塩を懸濁化剤Aとして含む場合、ポリエチレングリコールの濃度は約0.05mg/mL~約2mg/mLであり、さらに例えば、約0.1mg/mL~約1mg/mLである。カルボキシメチルセルロースまたはその塩の濃度は、約0.5mg/mL~約50mg/mL、例えば、約1mg/mL~約30mg/mL、および例えば、約2mg/mL~約20mg/mLである。
【0076】
いくつかの態様では、本開示のアリピプラゾール注射用調製物は、(ii)ポリエチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースまたはその塩を懸濁化剤Aとして含み、1種または複数の他の懸濁化剤をさらに含み、ポリビニルピロリドンは1種または複数の他の懸濁化剤として含有されてもよい。例えば、本開示の注射用調製物は、懸濁化剤Aとして、(ii)ポリエチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースまたはその塩を含み、これが1種または複数の他の懸濁化剤をさらに含む場合、(i-3)の懸濁化剤が含有される。この場合、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、およびポリビニルピロリドンの濃度は上記(i-3)に記載されている濃度と同じである。
【0077】
いくつかの態様では、本開示のアリピプラゾール注射用調製物において、(i-3)の懸濁化剤が使用される場合、組成物は約0.5mg/mL~約20mg/mLのポリビニルピロリドン、約0.1mg/mL~約100mg/mLのポリエチレングリコール、約0.5mg/mL~約50mg/mLのカルボキシメチルセルロースまたはその塩、および約250mg/mL~約450mg/mL(例えば、約300mg/mL~約400mg/mL)のアリピプラゾールまたはその塩を含む。この場合、ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール400またはポリエチレングリコール4000であってよい。いくつかの態様では、ポリビニルピロリドンは約12~約20のK値を有する。さらなる態様では、アリピプラゾールまたはその塩は約1μm~10μmの平均一次粒径を有する。
【0078】
アリピプラゾールまたはその塩の過度に大きな平均一次粒径は沈殿を引き起こす可能性があるので、平均一次粒径は約0.5μm~約30μmの範囲であり、例えば、約1μm~約20μmの範囲である。本開示の注射用調製物が2カ月ごとに1回投与される剤形である場合、アリピプラゾールまたはその塩は、約1μm~約50μm、例えば、約1μm~約10μm、およびさらに例えば、約2μm~約5μmの平均一次粒径を有する。平均二次粒径は3倍まで、ただしこれを上回らない粒径であり、さらに例えば、平均一次粒径の2倍まで、ただしこれを上回らない粒径である。
【0079】
いくつかの態様では、本開示の注射用調製物は、2カ月ごとに1回投与することができる剤形へと適切に製剤化される。例えば、2カ月ごとに1回投与される本開示の注射用調製物中のアリピプラゾールまたはその塩の濃度は、アリピプラゾールとして計算した場合、約200mg/mL~約600mg/mL、例えば、約250mg/mL~約500mg/mL、さらに例えば、約300mg/mL~400mg/mL、およびさらに例えば、約300mg/mLである。注射用調製物が2カ月ごとに1回投与される場合、投与容量は約2mL~約4mL、例えば、約2.2mL~約3.5mL、さらに例えば、約2.3mL~約3.4mL、さらに例えば、約3.2mLである。
【0080】
いくつかの態様では、本開示のアリピプラゾール注射用調製物は上記に記載されている効果(α)および(β)を達成する。これらはゲルの形態であってもよいし、またはこれらは流動度を有してもよい(すなわち、これらはゾルの形態であってもよい)。上に記載されているように、効果(α)および(β)の効果の達成は、回転式レオメーターの使用により客観的に確認することができる。注射用調製物は、充填済みゾルゲル形成された注射(また本明細書で「充填済みゾルゲル形成された注射用調製物」とも呼ばれる)の剤形へと製剤化することもできる。この注射用調製物はチキソトロピック特性を示す。さらに調製物は、静置させた場合、ゲルの形態であってよく、衝撃を受けた場合、ゾルへと変化することができる。
【0081】
いくつかの態様では、アリピプラゾール注射用調製物を製造するための方法は、出発材料の液体混合物を調製する工程、液体混合物中に含有されるアリピプラゾールまたはその塩を、所望の平均一次粒径へと微粉砕する工程を含み、これに続いて適宜、時効処理を行ってもよい。
【0082】
いくつかの態様では、本発明によるゲルアリピプラゾール注射用調製物を製造するための方法は、液体混合物を5~70℃で5分間以上静置させる工程を含み、液体混合物が、約0.5μm~約30μmの平均一次粒径を有する、約200mg/mL~約600mg/mLの濃度のアリピプラゾールまたはその塩、水、ならびに(i)および(ii):(i)ポリビニルピロリドンならびに(ii)ポリエチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースまたはその塩から選択される少なくとも1種の懸濁化剤を含む。
【0083】
例えば、いくつかのさらなる態様では、以下の工程:約200mg/mL~約600mg/mLの濃度のアリピプラゾールまたはその塩、水、ならびに(i)および(ii):(i)ポリビニルピロリドンならびに(ii)ポリエチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースまたはその塩からなる群から選択される少なくとも1種の懸濁化剤を含む液体混合物中で、アリピプラゾールまたはその塩を平均一次粒径約0.5μm~約30μmに微粉砕する工程;ならびに微粉砕した液体混合物を5℃~70℃で5分間以上静置させる工程、を含む製造方法を使用することができる。
【0084】
いくつかの態様では、本開示は、患者に、約650mg~約1200mgの範囲の総量のアリピプラゾール、例えば、約690mg~約960mg、さらに例えば、約750mg~約960mgの投与をもたらすアリピプラゾール注射用調製物の投与を含み、注射用調製物は1つまたは複数の分割注射で投与されてもよい。いくつかのさらなる態様では、アリピプラゾール注射用調製物の投与は、患者に、約960mgの総量のアリピプラゾールをもたらし、1種または複数の注射用調製物が投与される。例えば、患者に投与される960mgの総量のアリピプラゾールを得るために、300mg/mLのアリピプラゾールを含むアリピプラゾール注射用調製物の1回の注射が投与される。960mgの用量は適宜、短い間隔で複数回の注射に分けて投与されてもよい。注射の数およびアリピプラゾールの濃度は、上に記載されているように、投与されるアリピプラゾールの総量および注射用調製物のそれぞれに含有されるアリピプラゾールの濃度を考慮して変動させる。
【0085】
いくつかの態様では、アリピプラゾール注射用調製物の対象への投与は筋肉内注射による。いくつかの実施形態では、筋肉内投与は、三角筋、臀部筋肉、およびこれらの組合せから選択される部位に行われる。いくつかの実施形態では、部位は臀部筋肉である。例えば、投与のための注射の数に応じて、注射部位は、三角筋および/または臀部筋肉の様々な場所を包含し得る。
【0086】
いくつかの態様では、本明細書に開示されているアリピプラゾールの注射用調製物を投与する方法は、約2カ月ごとに1回の頻度で生じる。例えば、注射用調製物は、約42~70日ごとに1回またはこの間のおよび終点を含む任意の整数において、例えば、49~63日ごと、例えば、50~60日ごと、すなわち、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60日ごとに投与される。さらなる態様では、注射用調製物は、約56日ごとに1回、例えば、54日~58日ごとに1回投与される。さらなる態様では、注射用調製物は、約8週ごとに1回、例えば、6週~10週ごとに1回投与される。
【0087】
いくつかの態様では、本明細書に開示されている方法は、患者に、10~20mg/日のアリピプラゾールまたはその塩を、投与1日目から連続して約5~15日間、例えば、連続して約7~14日間、さらに例えば、連続して約7日間経口投与すること、および約56日ごとに(8週または2カ月ごとに)1回、患者にアリピプラゾールまたはその塩を含む注射用調製物を筋肉内投与することを含み、約650mg~1200mgのアリピプラゾールを含む注射用調製物は1日目に投与される。一連の投与は、アリピプラゾールの平均血漿レベルを90ng/mL以上で維持することを可能にする。例えば、経口投与は、10~20mg/日のアリピプラゾールまたはその塩を含む固体剤形で実行されてもよく、固体剤形は連続して5~15日間、例えば、連続して7日~14日間、さらに例えば、連続して7日間投与されてもよい。さらに例えば、固体剤形は、アリピプラゾールの総量として50mg~300mg、60mg~280mg、70mg~280mg、または70mg~140mgが患者に投与されてもよい。
【0088】
いくつかの態様では、本開示の固体剤形は経口(アリピプラゾール)錠剤である。いくつかの実施形態では、アリピプラゾールの経口錠剤は、例えば、2mg、5mg、10mg、15mg、および20mgの有効成分含量で利用可能であり、10mg~20mgから選択される単回経口投与で利用可能である。いくつかの実施形態では、アリピプラゾールの経口錠剤は不活性成分を含み得る。経口錠剤中の不活性成分としては、例えば、コーンスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ラクトース一水和物、ステアリン酸マグネシウム、および微結晶性セルロースが挙げられる。着色剤は、例えば、酸化鉄(イエローまたはレッド)およびFD&CブルーNo.2 Aluminum Lakeを含むことができる。
【0089】
いくつかの態様では、本開示の注射用調製物は、充填済みシリンジとして使用するため、そのままシリンジに充填することができる。これはシリンジの構造を簡略化し、サイズおよび重量を減少させる。本開示の注射用調製物がシリンジに充填される場合、さらなる実施形態では、ゾル懸濁液は、単にシリンジのプランジャー棒を押し、シリンジ針を介して本開示の注射用調製物を押し出すことにより投与することができる。これは、臨床的利便性および操作性を提供し、よって医学的および工業的に極めて有用な充填済みシリンジを提供する。充填済みシリンジを製造する一例は、上に記載されているような方式で注射用調製物を製造し、調製物をシリンジに予め充填し、次いで上に記載されているような方式で静置することで、注射用調製物をゲル化させることである。本開示はまた、上に記載された充填済みシリンジを備えたキットを含む。
【実施例
【0090】
臨床的薬理学治験
【0091】
実施例1
【0092】
本実施例は、統合失調症または双極性障害I型を有する成人対象の臀部筋肉に投与されるアリピプラゾール筋肉内デポ剤の第1b相、非盲検、複数回投薬、無作為化、パラレルアーム、安全性、忍容性、および薬物動態学的治験であった。治療は、治験用医薬品としてアリピプラゾール2カ月(2M)RTU(「Ari 2M群」として参照される)、960mg(56日間に注射1回)を用いて32週にわたり、基準の構成成分は、アリピプラゾール筋肉内デポ剤(「Ari IMデポ剤」または「IMデポ剤」として参照される)、400mg(28日間に注射1回)エビリファイメンテナ(登録商標)であった。主要評価項目は、(1)安全性および忍容性(例えば、有害事象(AE)、バイタル、ECG、検査、健康診断、電気生理学的検査(EPS)、VAS、注射の治験医による評価、およびC-SSR);ならびに(2)薬物動態、例えば、最終投薬後の内服投薬の最終日の血漿中濃度の類似点、および最終投薬後の投薬間隔にわたるアリピプラゾール曝露(AUC)の類似点であった。副次的評価項目は2M RTU 960mgおよびIMデポ剤400mgをそれぞれ投与した後のPKおよび有効性であった。
【0093】
アリピプラゾール2カ月(2M)RTU
【0094】
2カ月(2M)RTU注射用調製物は、アリピプラゾールIMデポ剤300mg/mLのready to useの単回用量注射として、大塚製薬株式会社により供給された。注射用調製物は、アリピプラゾール一水和物、カルボキシメチルセルロースナトリウム(5mg/mL)、ポビドンK17(4mg/mL)、ポリエチレングリコール400(1mg/mL)、リン酸一ナトリウム一水和物(0.74mg/mL)、塩化ナトリウム(6.1mg/mL)、水酸化ナトリウム(pH調整剤)、および注射用水を含んだ。注射用調製物中のアリピプラゾールの濃度は300mg/mLであった。この濃度はアリピプラゾールの無水物の形態で計算された。
【0095】
2カ月(2M)RTU持効性注射用(LAI)調製物は、注射用調製物(3.2mL/注射)中に300mg/mLのアリピプラゾールを含み、成人対象(N=41)に、56日(±2日)間隔で、32週(全部で注射4回)にわたり投与し、投与は対象の臀部筋肉部位に行った。10~20mgのアリピプラゾールを1日当たり1錠、2M RTU注射用調製物の最初の投与1日目から連続して7日間経口投与した。
【0096】
アリピプラゾール筋肉内デポ剤(基準)
【0097】
アリピプラゾール筋肉内(IM)デポ製剤は、単回用量の凍結乾燥された400mg有効成分含量バイアルとして供給された。記載の有効成分含量は無水物形態(アリピプラゾール)で計算された。いくつかの実施形態では、400mg有効成分含量製品に対する不活性成分(投与される用量ごと)は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(16.64mg)、マンニトール(83.2mg)、リン酸一ナトリウム一水和物(1.48mg)および水酸化ナトリウム(pH調整剤)を含む。400mg有効成分含量バイアル中の持続放出性注射用懸濁液を使用して、用量調節を行うことができる;すなわち、CYP2D6プアメタボライザーの患者およびCYP3A4阻害剤またはCYP2D6阻害剤を同時に服用している患者において用量調節を行うことができる。200mgおよび160mgに対する用量調節は、CYP2D6阻害剤、CYP3A4阻害剤、またはCYP3A4を14日間以上服用している患者に対して、三角筋または臀部筋肉の筋肉内注射に400mg有効成分含量バイアルを使用することによって行うことができる。
【0098】
アリピプラゾール筋肉内(IM)デポ製剤(400mg有効成分含量)を、成人対象(N=42)に、28日(±2日)間隔で、32週にわたり(全部で注射8回)投与した。10~20mgのアリピプラゾールは、IMデポ製剤の最初の投与1日目から連続して14日間、1日当たり1錠剤を経口投与した。
【0099】
傾向:表2および3に記述されているように、対象のベースライン特徴は治療群の全域でバランスがとれており、すなわち、診断、性別、人種/民族、年齢、およびボディマス指数(BMI)は同様であった。中止率(表1)は、IMデポ剤群(31%)と比較して、アリピプラゾール2M群(23%)においてより低かった。両方の治療群における中止の理由は、対象による離脱、有害事象、および追跡不能のためであった。
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】

SWN-S:Subjective Well-being under Neuroleptic Treatment Short Form;PANNS:Positive and Negative Syndrome Scale;CGI-Severity Score:Clinical Global Impression-Severity Score;YMARS:Young Mania Rating Scale;MADRS:Montgomery-Asberg Depression Rating Scale;CGI-BP:Clinical Global Impression-Bipolar Version
【0102】
安全性:この治験では、最も頻繁な有害事象は体重増加であった(Ari IMデポ剤の20.9%と比較して、Ari 2Mは22.7%)。注射部位の疼痛は2番目に頻繁に報告された有害事象であった(Ari IMデポ剤の9.0%と比較して、Ari 2Mは18.2%)。疼痛の視覚アナログ尺度(VAS)認知および注射部位の治験医による評価は、試験全体にわたり軽度であり、安定していることが見出され、これは処置群の間で同等であった。治療により発現した重篤な有害事象(TEAE)の発症率はAri 2M群(4.5%)およびIMデポ剤(6.0%)に対して同様であった。有害事象により治験用医薬品(IMP)を中止した対象は、IMデポ剤群(7.5%)で中止した対象と比較して、Ari 2M群(3.0%)でより少なかった。フリデリシアの式(QTc)>450msを使用して、大きな比率に対して内部補正されたQTの新規開始の比率が、IMデポ剤群(4.5%)よりもAri 2M群(0.7%)でより低かったことを除いて、検査、心電図(ECG)およびバイタルサインにおいて両群に対して観察された顕著な差異はなかった。
【0103】
薬物動態:薬物動態学的データは図1および2に例示されている。図1は、連続した14日間のアリピプラゾールの経口投与を伴う、アリピプラゾール400mgのIMデポ剤と比較した、連続した7日間のアリピプラゾールの経口投与を伴う、アリピプラゾール960mgのAri 2Mの1回目の投与後の平均(SD)薬物動態学的濃度を示している。以下の表4では、7日目および14日目におけるAri 2M960mgおよびIMデポ剤400mgの平均(標準偏差-SD)血漿中濃度(ng/mL)を要約している。
【0104】
表4:7日目および14日目におけるAri 2M960mgおよびIMデポ剤400mgの血漿中濃度(ng/mL)の比較。
【表4】
【0105】
図2では、7回目および8回目の投薬後のアリピプラゾール400mgのIMデポ剤と比較した、アリピプラゾール960mgのAri 2Mの4回目の投薬後の平均(SD)薬物動態学的濃度を示している。
【0106】
最後に、以下の表5および6は、PKパラメーターおよび第1次PKエンドポイントの概要をそれぞれ提供している。
【0107】
【表5】

【表6】

1:GMR(Ari 2M RTU 960mgの4回目の注射後のAUC0-56/Ari IMデポ剤 400mgの7回目および8回目の注射後のAUC0-28の合計)は、治療製剤および疾患集団を固定効果として含む対数変換PKパラメーターに対して、ANOVAから導出される。GMRは幾何平均比を指す。
2:GMR(Ari 2M RTU 960mgの4回目の注射後のC56/Ari IMデポ剤400mgの8回目の注射後のC28)は、治療製剤、PKサンプリングスケジュールおよび疾患集団を固定効果として含む対数変換PKパラメーターに対してANOVAから導出される。C56は、投与後56日のアリピプラゾールの血漿中濃度を指す。C28は、投与後28日のアリピプラゾールの血漿中濃度を指す。
3:ARI 2M RTU 960mgに対するPKパラメーターの、Ari IMデポ剤400mgに対するPKパラメーターの比率が≦0.8という無効仮説を試験するために、上記特定のANOVA内の治療製剤の片側t-検定から導出された。
【0108】
有効性:SWN-S、PANSS、MADRS、およびYMRSの合計スコアは、Ari 2MとIMデポ剤群との間で統計学的に有意な差異がないことを示した。さらに、SWN-SおよびPANSSは、統合失調症対象に対して、Ari 2M群に対するベースライン結果からの変化において数値的な改善を示した。全体的に、Ari 2M群の処置効果は、統合失調症と双極性障害I型の対象の両方に対してIMデポ剤と同等である。
【0109】
有効性結果の概要および結論:
- 両方の治療群において、治験期間の間、統合失調症を有する対象は、低いPANSSおよびCGI-Sスコアで安定したままであり、治験期間中、治療群の間で臨床的に有意な差異はなかった。
- 双極性障害I型を有する対象に対して、MADRS合計スコアまたはYMRS合計スコアに対して2つの治療群の間で臨床的に有意な差異は実証されなかった。
- 全体的な双極性疾患に対する疾患スコアのCGI-BP重症度に対するベースラインからの平均変化および全体的な双極性疾患に対する前の相のスコアからの平均変化は、すべての週において、2つの治療群の間で最小であり、同様であった。
- CGI-I平均スコアは、統合失調症を有する対象に対しておよび双極性障害I型を有する対象に対して、2つの治療群の間で同様であった。
- 統合失調症または双極性障害I型を有する対象に対するSWN-S合計スコアに対して、2つの治療群の間で臨床的に有意な差異は実証されなかった。
【0110】
全体での結論
【0111】
傾向:週32におけるAri 2M群に対する完了比は、IMデポ剤より大きかった。両方の治療群に対するトップスリーの中止理由は、対象による離脱、有害事象および追跡不能のためであった。
【0112】
安全性:アリピプラゾール2M LAI 960mgの臀部筋肉部位への複数回用量の投与は一般的に安全であり、統合失調症または双極性障害I型を有する対象において十分許容され、いかなる新規の安全性懸念も示さなかった。アリピプラゾール2M LAI 960mgの臨床的安全性は、アリピプラゾールIMデポ剤400mgと比べて、両方の治療群におけるTEAEおよび臨床試験異常の全体的に同様の発症率により実証された。注射部位疼痛および体重増加という最も頻繁に報告されたTEAE(任意の群の対象の>10%)はアリピプラゾールの公知の安全性プロファイルと一致する。
【0113】
薬物動態:
- アリピプラゾールIMデポ剤400mgの7回目および8回目の投薬後のAUC0-28の合計(GMR[90%CI(信頼区間)]:1.006[0.851、1.190])と比較して、アリピプラゾール2M LAI 960mgは、4回目の投薬後に同様のアリピプラゾールAUC0-56を有した。
- アリピプラゾールIMデポ剤400mgの8回目の投薬後のC28(GMR[90%CI]:1.011[0.893、1.145])と比較して、アリピプラゾール2M LAI 960mgは、4回目の投薬後に同様のアリピプラゾールC56を有した。
【0114】
有効性:アリピプラゾール2M LAI 960mg群の治療効果は、PANSSおよびCGI-S(統合失調症を有する対象に対して);MADRS、YMRS、およびCGI-BP(双極性障害I型を有する対象に対して);ならびにCGI-IおよびSWN-S(すべての対象に対して)において、ベースラインからの変化に関して、アリピプラゾールIMデポ剤400mg群と同等であった。
【0115】
実施例2
【0116】
統合失調症を有する成人対象の臀部筋肉に投与されるアリピプラゾール2カ月筋肉内デポ剤の薬物動態、安全性、および忍容性を決定するための第1相、非盲検、単回漸増用量、パラレルアーム治験
【0117】
本治験は、統合失調症を有する成人対象の臀部筋肉に行われるアリピプラゾール2M RTUの高用量製剤の780mg(コホート1)および1200mg(コホート2)の単回用量投与のPK、安全性、および忍容性を決定するための非盲検、単回漸増用量、パラレルアーム、多施設治験であった。本治験からのデータは補助的情報である。全体的に、アリピプラゾール2M RTUは、単回用量780mgおよび1200mgとして、統合失調症を有する成人対象にIM投与された場合十分許容される。17人の対象のサブセットにおいて、アリピプラゾール2M RTUの投与は、持続するアリピプラゾール血漿中濃度をもたらし、結果として生じるアリピプラゾール血漿中濃度は、400mgのエビリファイメンテナ(登録商標)の単回臀部筋肉投与後の平均PKプロファイルより常に上にあった。この対象のサブセットからの安全性データを評価し、エビリファイメンテナ(登録商標)の公知の安全性プロファイルと比較した。
【0118】
アリピプラゾール2M RTUは、評価した投薬レベルにおいて、2カ月ごとの投薬に対して持続放出性を提示した。アリピプラゾール2M RTUに対する投薬間隔の延長は、複数回投薬後のエビリファイメンテナ(登録商標)と同等のアリピプラゾールの最低濃度を維持しながら、主に用量の増加を介して行った。アリピプラゾール2M RTUは、現在市販/認可されているエビリファイメンテナ(登録商標)と比較して、医薬品においてより高いアリピプラゾール濃度を有し(300mg/mL対200mg/mL)、ビヒクルへのマイナーな変更を行うことで設計された。アリピプラゾール2M RTU製剤に対する、アリピプラゾールの平均粒径分布および溶出プロファイルは、エビリファイメンテナ(登録商標)製剤と同等であり、この製剤は、認可されたエビリファイメンテナ(登録商標)製剤と比較して、同様の持続放出性プロファイルを有することが予想された。単回用量780mgまたは1200mgアリピプラゾールを、統合失調症を有する対象の臀部筋肉に投与した後の平均(標準偏差[SD])アリピプラゾール血漿中濃度時間プロファイルが図3に提示されている。
【0119】
統合失調症を有する対象の臀部筋肉への単回用量の780mgまたは1200mgのアリピプラゾールの単回用量投与後のアリピプラゾールPKパラメーターの概要が以下の表7に提示されている。
【0120】
表7:統合失調症を有する対象の臀部筋肉への単回用量の780mgまたは1200mgのアリピプラゾール2M RTUの投与後の平均(SD)アリピプラゾール薬物動態学的パラメーター
【表7】
【0121】
表7から、AUC∞は、時間ゼロからの全時間で計算した濃度-時間曲線下面積である;AUCtは、時間tにおける最後の観察可能な濃度に対して計算した濃度-時間曲線下の面積である;CL/Fは血管外投与後の血漿からの薬物の明らかなクリアランスである;RTUはready to useを意味する;tmaxは最大(ピーク)血漿中濃度までの時間である;t1/2は消失半減期である。その他、中央値(最小-最大);n=14;およびn=11である。
【0122】
本明細書中に記述されているすべての刊行物および特許は、それぞれ個々の刊行物または特許が参照により組み込まれていると具体的におよび個々に示されているかのように、これら全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0123】
グループの少なくとも1つのメンバーの間に「または」または「および/または」を含む請求項または明細書は、特にそれを否定する記載がない限り、もしくはさもなければ文脈から明らかではない限り、グループメンバーのうちの1つ、1つより多く、もしくはすべてが存在し、利用される、またはさもなければ所与の生成物もしくはプロセスに関連している場合、満たされたと考えられる。本開示は、グループの正確に1つのみが存在し、利用され、またはさもなければ所与の生成物もしくはプロセスに関連している実施形態を含む。本開示は、グループメンバーの1つより多くの、またはすべてが存在し、利用され、またはさもなければ所与の生成物もしくはプロセスに関連している実施形態を含む。
【0124】
さらに、本開示は、少なくとも1つの限定、要素、項、および記述用語が列挙されたクレームのうちの少なくとも1つから、別のクレームへと導入されるすべての変化形、組合せ、および置換を包含する。例えば、別のクレームへ従属する任意のクレームは、同じ基本クレームに従属する任意の他のクレームに見出される少なくとも1つの限定を含むように修正することができる。要素がリストとして、例えば、マーカッシュ形式で提示されている場合、要素の各サブグループもまた開示され、任意の要素(複数可)はグループから除去することができる。一般的に、本開示、または本開示の態様が特定の要素および/または特徴を含むと言及されている場合、本開示の実施形態または本開示の態様は、このような要素および/または特徴からなる、または本質的になることを理解すべきである。簡単に述べると、実施形態は、本明細書において具体的に記載されていない。範囲が付与されている場合、エンドポイントが含まれる。さらに、他に指摘されていない限りまたはさもなければ文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表現される値は、文脈が他を明確に指示していない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、本開示の異なる実施形態で述べられている範囲内の任意の特定の値または下位の範囲を想定することができる。
【0125】
当業者であれば所定の実験を使用するだけで、本明細書に記載されている本開示の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するまたは確定することができる。このような均等物は特許請求の範囲により包含されることを意図する。
図1
図2
図3