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特許7584538ニードルコークスを製造するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ニードルコークスを製造するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 57/04 20060101AFI20241108BHJP
   C10G 9/02 20060101ALI20241108BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20241108BHJP
   C10G 7/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C10B57/04 101
C10G9/02
C10G45/02
C10G7/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022564688
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 CN2020133569
(87)【国際公開番号】W WO2021135802
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】201911423745.8
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】501329404
【氏名又は名称】中國石油化工股▲分▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】522173712
【氏名又は名称】中石化(大連)石油化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】郭 丹
(72)【発明者】
【氏名】方 向晨
(72)【発明者】
【氏名】喬 凱
(72)【発明者】
【氏名】初 人慶
(72)【発明者】
【氏名】勾 連忠
(72)【発明者】
【氏名】陳 天佐
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103102986(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103184057(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105542846(CN,A)
【文献】特表2021-503026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0153323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 57/04
C10G 9/02
C10G 45/02
C10G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニードルコークスを製造するためのシステムであって、当該システムは、コークス・タワーと、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーと、バッファー・タンクと、コーキング分留タワーとを含んで成り、
前記コークス・タワーは、フィードストック・インレットと、オイル・ガス・アウトレットとを備えており、前記コークス・タワーでは、炭化水素を含むフィードストックを反応させることによって、ニードルコークスと、オイル・ガスとを生成し、
前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーは、オイル・ガス・インレットと、オーバーヘッド軽質フラクション・アウトレットと、ボトム・オイル・アウトレットと、サイクル・オイル・インレットとを備えており、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーでは、前記コークス・タワーからのオイル・ガスを受けて、オーバーヘッド軽質フラクションと、ボトム・オイルとに分離し、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部には、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部の圧力を調整するために、圧力コントローラが設けられており、
前記バッファー・タンクは、インレットと、第1ボトム・オイル・アウトレットと、第2ボトム・オイル・アウトレットとを備えており、前記バッファー・タンクは、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからボトム・オイルを受けて、バッファリング作用を提供するためのものであり、
前記コーキング分留タワーは、インレットと、軽油アウトレットと、重油アウトレットとを備えており、前記コーキング分留タワーでは、前記バッファー・タンクからのボトム・オイルを受けて、軽油と重油とに分離し、
当該システムでは、前記コークス・タワーのオイル・ガス・アウトレットが、パイプラインを通して、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオイル・ガス・インレットと連通しており、
前記コークス・タワーあるいは前記コークス・タワーを前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに接続するオイル・ガス・パイプラインには、前記コークス・タワーの上部において圧力を調整するための圧力コントローラは、設けられておらず、
前記バッファー・タンクのインレットは、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのボトム・オイル・アウトレットと連通しており、前記バッファー・タンクの第1ボトム・オイル・アウトレットは、パイプラインを通して、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのサイクル・オイル・インレットと連通しており、前記パイプラインは、温度アジャスタを備えており、前記バッファー・タンクの第2ボトム・オイル・アウトレットは、前記コーキング分留タワーのインレットと連通しており、
必要に応じて、前記コーキング分留タワーの重油アウトレットは、前記コークス・タワーのフィードストック・インレットと連通している、
システム。
【請求項2】
前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部にある圧力コントローラを使用して、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部で排出される軽質フラクションの流速を調整することによって、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部において圧力を調整することができ、次いで、前記コークス・タワーの上部において、設定した値で圧力を維持することができる、請求項1に記載のニードルコークスを製造するためのシステム。
【請求項3】
少なくとも2つのコークス・タワーが提供され、いつも、少なくとも1つのコークス・タワーが反応段階にあり、少なくとも1つのコークス・タワーが脱コーキング段階にある、請求項1または2に記載のニードルコークスを製造するためのシステム。
【請求項4】
前記コークス・タワーに供給される炭化水素を含むフィードストックを加熱するためのファーネスをさらに含んで成る、請求項1~3のいずれか1項に記載のニードルコークスを製造するためのシステム。
【請求項5】
前記コークス・タワーに供給される炭化水素を含むフィードストックを得るために、炭化水素を含むイニシャル・フィードストックを水素処理するための水素化反応器をさらに含んで成る、請求項1~4のいずれか1項に記載のニードルコークスを製造するためのシステム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のシステムを用いてニードルコークスを製造するための方法であって、当該方法は、以下の工程(1)~(5):
(1)ニードルコークスと、オイル・ガスとを得るために、炭化水素を含む加熱されたフィードストックを前記コークス・タワーで反応させる工程、
(2)オーバーヘッド軽質フラクションと、ボトム・オイルとを得るために、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーにおいて、前記コークス・タワーからのオイル・ガスを分離する工程、
(3)前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルを前記バッファー・タンクに送り、前記バッファー・タンクからボトム・オイルの2つのストリームを取り出す工程、
(4)前記バッファー・タンクからのボトム・オイルの第1ストリームを温度調整後に前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻す工程、
(5)前記バッファー・タンクからのボトム・オイルの第2ストリームを前記コーキング分留タワーに送り、前記コーキング分留タワーにおいて、第2ストリームを軽油と重油とに分離し、必要に応じて、さらなる反応のために、前記重油を前記コークス・タワーに戻す工程
を含み、
当該方法において、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部にある圧力コントローラによって、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部の圧力を調整し、設定した値で前記コークス・タワーの上部における圧力を維持する、
方法。
【請求項7】
前記工程(1)の前に、工程(0)をさらに含み、
前記工程(0)は、前記工程(1)で使用する炭化水素を含むフィードストックを得るために、炭化水素を含むイニシャル・フィードストックを水素処理する工程であり、
前記炭化水素を含むイニシャル・フィードストックは、接触分解スラリーオイル、接触分解デカントオイル、エチレンタール、熱分解残渣、コールタール、コールタールピッチまたはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記水素処理工程(0)の前に、前記炭化水素を含むイニシャル・フィードストックに固体除去処理を行う工程をさらに含み、前記固体除去処理は、濾過、遠心沈降、減圧蒸留、溶媒抽出またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水素処理工程(0)の反応条件として、反応温度が300~480℃であり、反応圧力が3~20MPaであり、水素/オイルの容量比が100~2500であり、液空間速度が0.1~2.0h ある、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記水素処理工程(0)の反応条件として、反応温度が330~400℃であり、反応圧力が5~10MPaであり、水素/オイルの容量比が500~1500であり、液空間速度が0.5~1.0h -1 である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(1)において炭化水素を含む加熱されたフィードストックの温度は、400~550℃であり、前記炭化水素を含むフィードストックを1~50℃/hの速度で加熱し、前記コークス・タワーの上部の圧力は、0.01~2.5MPaであり、反応時間は、10~50時間である、請求項6~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(1)において炭化水素を含む加熱されたフィードストックの温度は、440~520℃であり、前記炭化水素を含むフィードストックを2~10℃/hの速度で加熱し、前記コークス・タワーの上部の圧力は、0.2~1.5MPaであり、反応時間は、30~50時間である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(2)のオーバーヘッド軽質フラクションが、不凝結ガスと、留出オイルとを含んで成り、前記留出オイルの95%留出温度を150~430℃に制御し、
前記工程(2)において、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の10~80%となるように前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位を制御する、
請求項6~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記留出オイルの95%留出温度を230~370℃に制御する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記留出オイルの95%留出温度を230~330℃に制御する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ボトム・オイルの第1ストリームが、工程(4)における温度調整の後、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの中間部に戻され、
記ボトム・オイルの第1ストリーム/前記コークス・タワーのフィードの質量比は、0.001~1であり;かつ/または
00~380℃となるように前記ボトム・オイルの第1ストリームが前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度を制御する、
請求項6~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ボトム・オイルの第1ストリーム/前記コークス・タワーのフィードの質量比は、0.05~0.4であり;かつ/または
230~340℃となるように前記ボトム・オイルの第1ストリームが前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度を制御する、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位が、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の60%以上まで上昇し、なおかつ、前記留出オイルの95%留出温度が310℃以上に上昇する場合、前記ボトム・オイルの第1ストリームが前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度を下げて、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度を上げるか、
前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部における液位が前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の60%以上に上昇し、なおかつ、前記留出オイルの95%留出温度が240℃以下に低下する場合、前記ボトム・オイルの第1ストリームが前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度と、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度とを上げるか、
前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部における液位が前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の20%以下まで低下し、なおかつ、前記留出オイルの95%留出温度が310℃以上まで上昇する場合、前記ボトム・オイルの第1ストリームが前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度と、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度とを下げるか、または
前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部における液位が前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の20%以下に低下し、なおかつ、前記留出オイルの95%留出温度が240℃以下に低下する場合、前記ボトム・オイルの第1ストリームが前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度を上昇させ、なおかつ、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度を下げる、
請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(3)において、前記バッファー・タンクの全高の30~70%になるように前記バッファー・タンクの液位を制御し、
記工程(5)におけるボトム・オイルの第2ストリームの流速は、前記バッファー・タンクの液位に応じて制御され、前記バッファー・タンクの液位が25%よりも低い場合には、前記ボトム・オイルの第2ストリームの流速を下げ、前記液位が60%よりも高い場合には、前記ボトム・オイルの第2ストリームの流速を上げる、
請求項6~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
00~400℃になるように、前記工程(5)において前記コーキング分留タワーによって分離される軽油の95%留出温度を制御し、
該方法は、前記工程(5)においてコーキング分留タワーによって分離される軽油の一部を前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーにリサイクルし、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部の圧力および前記コークス・タワーの上部の圧力を調節することによって、設定した値で圧力を維持する工程をさらに含む、
請求項6~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
320~360℃になるように、前記工程(5)において前記コーキング分留タワーによって分離される軽油の95%留出温度を制御する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
軽油の95%留出温度と比較して少なくとも3℃高くなるように、前記工程(5)のコーキング分留タワーによって分離される重油の5%留出温度を制御し、
記工程(5)で得られる重油は、前記コークス・タワーに直接的にリサイクルされるか、または固体除去処理の後に前記コークス・タワーにリサイクルされる、請求項6~21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年12月31日に出願された「ニードルコークス製造プロセスの安定性を改善するための方法およびシステム」と題する中国特許出願第201911423745.8号の優先権を主張し、その内容は、参照により、その全体が本開示に組み込まれる(又は援用される)。
【0002】
(技術分野)
本願は、ニードルコークスを製造するための分野に関する。特に、安定性が改善されたニードルコークスを製造するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
ニードルコークスの製造は、典型的には、ディレード・コーキング・プロセスによって行われる。しかし、ニードルコークスの形成は、液相炭化理論(又はリキッド・フェーズ・カーボナイゼーション・セオリー)に従うものであり、この製造プロセスでは、温度変化運転(又は温度変化オペレーション)が適用されていることから、従来のディレード・コーキング・プロセスとは異なるものである。
【0004】
中国特許出願公開第103184057号公報(CN103184057A)は、温度変化の運転(又は温度が変化する運転)によるニードルコークスを製造するための方法を開示する。この方法では、コーキング・ファーネスの出口温度を制御することによって、コークス・タワーの温度を390~510℃に制御および維持している。第1反応段階では、コークス・タワーの温度は、390~460℃である。このシステム(または系)において、中間相の液晶を形成する。第2反応段階では、コークス・タワーの温度を450~480℃に上昇させる。そして、中間相の液晶が固化を開始する。第3反応段階では、コークス・タワーの温度を460~510℃に上昇させる。中間相の液晶は、完全に固化して、ニードルコークスを形成する。
【0005】
中国特許出願公開第104560152号公報(CN104560152A)は、温度変化(又は温度が変化する)および圧力変化(又は圧力が変化する)の運転によってニードルコークスを製造するための方法を開示する。この方法では、コーキング・ファーネス(又はコーキング炉)の出口温度が430~520℃の範囲内で制御され、コークス・タワーの圧力は、0.1~3.0MPaの範囲内で制御される。第1反応段階では、ファーネスの出口温度を低温から480℃まで上昇させて、コークス・タワーの圧力を1.5MPaに維持している。第2反応段階では、ファーネスの出口温度を連続的に上昇させる。コークス・タワーの圧力を徐々に0.5MPaまで下げ、次いで、一定に維持することで、ニードルコークスを形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ニードルコークスの製造プロセスの温度変化および圧力変化の特性のために、ニードルコークスの工業的な製造は、非常に困難である。装置(又はデバイス)の運転が不安定である。初期の反応段階において、原料(又は供給原料又はフィードストック)が低温でコークス・タワーに供給される。穏やかな反応が起こり、比較的に少ない量のオイル・ガスが生成される。コークス・タワーの液体の量が連続的に増加する。反応が進行するにつれて、ファーネスの温度が徐々に上昇する。コークス・タワーの温度が徐々にコーキング温度にまで上昇する。激しい熱分解と熱重縮合の反応が生じる。大量のオイル・ガスが分留システムに排出される。反応終了時には、コークス・タワー内の材料が実質的に固化してニードルコークスを形成する。そして、発生するオイル・ガスの量が減少する。全反応期間において、コークス・タワーの上部で排出されるオイル・ガスの量の変動が大きくなる。コークス・タワーの上部の圧力制御システムの調整範囲が広くなる。圧力制御システムを常に適正な運転範囲に維持することができない。さらに、分留ユニットの処理能力(又はスループット)の変動も大きい。その結果、分離効果が悪く、運転の安定性に影響を与える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
従来技術の欠点に対して、本願は、ニードルコークスを製造するための新しいシステムおよび方法を提供する。当該システムおよび方法によって、ニードルコークスの製造方法(又は製造プロセス)の安定性を向上させることができる。そして、全反応期間にわたって、コーキング分留ユニットにおいて、処理能力(又はスループット)の変動が小さく、高い分離精度を示し、コークス・タワーの圧力を制御することが容易になる。そのため、システム全体の運転安定性(又は操作安定性又は作動安定性)が大幅に向上する。
【0008】
1つの態様において、本願は、ニードルコークスを製造するためのシステムを提供する。当該システムは、コークス・タワー(又はコークス塔又はコークス・チャンバ)と、プレッシャー・スタビライゼーション・タワー(又は圧力安定化塔又は圧力安定塔)と、バッファー・タンク(又は緩衝タンク)と、コーキング分留タワー(又はコーキング分留塔又はコーキング分留カラム)とを含んで成る。
上記コークス・タワーは、フィードストック・インレットと、オイル・ガス・アウトレットとを備えており、上記コークス・タワーでは、炭化水素を含むフィードストック(又は供給原料又は原料)(又は炭化水素含有供給原料又は炭化水素含有原料)を反応させることによって、ニードルコークスと、ガス・オイルとを生成(又は形成)する。
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーは、オイル・ガス・インレットと、オーバーヘッド軽質フラクション・アウトレットと、ボトム・オイル・アウトレットと、サイクル・オイル・インレットとを備えており、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーでは、上記コークス・タワーからのオイル・ガスを受けて、オーバーヘッド軽質フラクションと、ボトム・オイルとに分離し、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)には、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部の圧力を調整するために、圧力コントローラが設けられている。
上記バッファー・タンクは、インレットと、第1ボトム・オイル・アウトレットと、第2ボトム・オイル・アウトレットとを備えており、上記バッファー・タンクは、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからボトム・オイルを受けて、バッファリング作用(又はバッファー作用又は緩衝作用)を提供するためのものである。
上記コーキング分留タワーは、インレットと、軽油アウトレットと、重油アウトレットとを備えており、上記コーキング分留タワーでは、上記バッファー・タンクからのボトム・オイルを受けて、軽油と重油とに分離する。
当該システムでは、上記コークス・タワーのオイル・ガス・アウトレットが、パイプラインを通して、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオイル・ガス・インレットと連通(又は連絡)している。
上記コークス・タワーあるいは上記コークス・タワーを上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに接続するオイル・ガス・パイプラインには、上記コークス・タワーの上部において圧力を調整するための圧力コントローラは、設けられていない。
上記バッファー・タンクのインレットは、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのボトム・オイル・アウトレットと連通(又は連絡)しており、上記バッファー・タンクの第1ボトム・オイル・アウトレットは、パイプラインを通して、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのサイクル・オイル・インレットと連通(又は連絡)しており、上記パイプラインは、温度アジャスタ(又は温度調節器)を備えており、上記バッファー・タンクの第2ボトム・オイル・アウトレットは、上記コーキング分留タワーのインレットと連通(又は連絡)している。
必要に応じて、上記コーキング分留タワーの重油アウトレットは、上記コークス・タワーのフィードストック・インレットと連通(又は連絡)している。
【0009】
別の態様において、本願のシステムを用いて、ニードルコークスを製造するための方法を本願は提供する。当該方法は、以下の工程(又はステップ)(1)~(5)を含む。
(1)ニードルコークスと、オイル・ガスとを得るために、炭化水素を含む加熱されたフィードストックを上記コークス・タワーで反応させる工程
(2)オーバーヘッド軽質フラクションと、ボトム・オイルとを得るために、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーにおいて、上記コークス・タワーからのオイル・ガスを分離する工程
(3)上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルを上記バッファー・タンクに送る工程と、上記バッファー・タンクからボトム・オイルの2つのストリームを取り出す(又は引き出す)工程
(4)上記バッファー・タンクからのボトム・オイルの第1ストリームを温度調整後に上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻す工程
(5)上記バッファー・タンクからのボトム・オイルの第2ストリームを上記コーキング分留タワーに送り、上記コーキング分留タワーにおいて、第2ストリームを軽油と重油とに分離し、必要に応じて、さらなる反応のために、上記重油を上記コークス・タワーに戻す工程。
当該方法において、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)にある圧力コントローラによって、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部の圧力を調整することで、設定した値で上記コークス・タワーの上部における圧力を維持するようになる。
【0010】
従来技術と比較して、ニードルコークスを製造するための当該方法およびシステムは、以下の利点を有する。
【0011】
(1)
従来技術では、ニードルコークス製造の全期間において、コークス・タワーのオイル・ガス排出速度の変動が大きく、コークス・タワーの圧力がコークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)にある圧力コントローラによって調整され、この圧力コントローラの運転範囲(又は操作範囲又は作動範囲又はオペレーション・レンジ)が広くなる。そのため、反応系の運転(又は操作又は作動又はオペレーション)によって、変動が大きくなり、不安定になる。
本願では、コークス・タワーの下流にプレッシャー・スタビライゼーション・タワーを設けている。このプレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)に圧力コントローラを設けている。なぜなら、コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)におけるオイル・ガス・アウトレットがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオイル・ガス・インレットと連通(又は連絡)しているからである。そして、コークス・タワーまたはオイル・ガス・パイプライン(コークス・タワーをプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに接続するパイプライン)には圧力コントローラは設けられていない。コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力と、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力とが密接に相互に関連付けられている。それによって、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を調整することでコークス・タワーの上部の圧力を制御することができる。その間、コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)から排出されるオイル・ガスの量に比べて、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)から排出される軽質フラクションの量は、かなり少なくなる。そうすることで、圧力コントローラの運転範囲(又は操作範囲又は作動範囲又はオペレーション・レンジ)は、大きく減少する。そして、圧力コントローラは、最適な運転範囲内で安定して維持され得る。このことは、コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)において、圧力を安定して制御する上で有利である。
【0012】
(2)
コークス・タワーからのオイル・ガスの一部は、本願において提供されるプレッシャー・スタビライゼーション・タワーで濃縮することができる。そうすることによって、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオーバーヘッド軽質フラクションの流速(又は流量又はフロー・レート)がコークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)におけるオイル・ガスの流速(又は流量又はフロー・レート)よりも小さくなる。プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)における圧力が、オーバーヘッド成分(又はオーバーヘッド・コンポーネント)の流速(又は流量又はフロー・レート)によって制御される場合、フロー・コントロール・バルブのスイッチの範囲が比較的に小さくなる。そうすることによって、当該システムにおける圧力の変動を減少させることができる。加えて、生成するオイル・ガスの量は、ニードルコークス製造プロセスの間において、連続的に変化する。従って、タワーの圧力を維持するために圧力コントロール・バルブは連続的に調整される必要がある。コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)に圧力コントロール・バルブが設けられている場合、バルブの開度を大きく変える必要があるかもしれない。コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)におけるオイル・ガスの温度は420℃以上に到達してよく、コーキングが発生しやすくなる場合がある。プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)に圧力コントロール・バルブが設けられている場合、バルブの開度を少しだけ変える必要がある。軽質フラクションの温度は、比較的に低く、コーキングの傾向は、小さくなる。そうすることで、装置(又はデバイス)の全体の運転(又は操作又は作動又はオペレーション)の安定性を改善することができる。そして、この装置(又はデバイス)の運転期間を延長することができる。
【0013】
(3)
本願のシステムおよび方法において、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位(又は液面又はリキッド・レベル)を調整する。プレッシャー・スタビライゼーション・タワーとバッファー・タンクとの協働運転ならびに温度を調整したボトム・オイルのリサイクル(又は再利用又は循環)によって、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの運転温度(又は操作温度又は作動温度又はオペレーション温度)を合理的な範囲内で確実に変動させる。そうすることで、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)における圧力を設定した値で確実に維持するようになる。
【0014】
(4)
コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)から排出されるオイル・ガスを直接的にコーキング分留タワーに送る従来技術と比べると、本願では、バッファー・タンクからコーキング分留タワーにボトム・オイルを引き抜くことによって、コーキング分留タワーの運転の変動を大幅に低減させることができる。そして、分離の精度を向上させることができる。一方、必要性の観点から、特定の流速(又は流量又はフロー・レート)で、全製造期間において、ボトム・オイルをコーキング分留タワーに送ることができる。そうすることで、供給速度(又は供給量又はフィード・レート)の不安定性によって引き起こされるコーキング分留タワーの運転への悪影響を排除することができる。他方、不凝結ガスと、軽質な液体の一部(オイル・ガス中のもの)とをボトム・オイルから除去する。そうすることによって、コーキング分留タワーへのフィード(又は供給物又は供給)の特性の変動を低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、ニードルコークスを製造するための本願のシステムおよび方法の好ましい実施形態を示す概略図である。
図2図2は、液体成分(コーキング分留タワーへのフィード中の液体成分)の5%留出温度(又は留出物温度)を、反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)の関数としてプロットしたものを示す。
図3図3は、実施例1について、コーキング分留タワーのロード(又は負荷)を反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)の関数としてプロットしたものを示す。
図4図4は、実施例2について、コーキング分留タワーのロード(又は負荷)を反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)の関数としてプロットしたものを示す。
図5図5は、比較例1について、コーキング分留タワーのロード(又は負荷)を反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)の関数としてプロットしたものを示す。
図6図6は、比較例2について、コーキング分留タワーのロード(又は負荷)を反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)の関数としてプロットしたものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
以下、本願について、その具体的な実施形態および添付の図面を参照しながら、さらに詳細に説明する。本願の具体的な実施形態は、例示の目的のみで提供されるものであり、いかなる様式(又は方法又はマナー)でも限定することを意図していないことに留意されたい。
【0017】
本願の文脈において説明される数値範囲の2つの端点を含む任意の特定の数値は、その正確な値に制限されるものではなく、当該正確な値に近い全ての値、例えば、当該正確な値の±5%以内のすべての値をさらに包含するものと解釈されるべきである。さらに、本開示に記載される任意の数値範囲に関して、当該範囲の2つの端点の間、各端点とその範囲内の任意の特定の値との間、または範囲内の任意の2つの特定の値の間で任意に組み合わされてよい。それによって、1以上の新しい数値範囲(複数可)を提供することができる。また、このような新しい数値範囲(複数可)は、本願において、具体的に記載されているものとみなされるべきである。
【0018】
他に記載しない限り、本開示で用いられる用語は、当業者が共通して理解するのと同じ意味を有する。本開示において用語が定義され、その定義が当該分野における通常の理解とは異なる場合、本開示において記載される定義を優先する。
【0019】
本願の文脈において、用語「コークス・タワー(又はコークス塔)」は、コーキング反応を介して、炭化水素を含むフィードストック(又は炭化水素含有供給原料又は炭化水素含有原料)からニードルコークスを製造するための反応機器(又は反応器具又は反応装置)を指す。コークス・タワーは、当該分野において、共通して使用される任意の形態であってよい。コークス・タワーは、本願において、特に限定されるものではない。
【0020】
本願の文脈において、用語「コーキング分留タワー(又はコーキング分別蒸留タワー又はコーキング分留塔)」とは、分留(又は分別蒸留)によって、コーキング反応の間に発生するオイル・ガスを分離するための機器(又は器具又は装置)を指す。コーキング分留タワーは、当該分野において、共通して使用される任意の形態を有してよい。コーキング分留タワーは、本願において、特に限定されるものではない。
【0021】
本願の文脈において、用語「軽油(ライト・オイル)」とは、コーキング分留タワーの上部(又は頂部又はトップ)から得られる比較的(又は相対的)に低い沸点を有する成分(コンポーネント)を指す。
用語「重油(ヘビー・オイル)」とは、コーキング分留タワーの下部(又は底部又はボトム)から得られる比較的(又は相対的)に高い沸点を有する成分(又はコンポーネント)を指す。
軽油と重油との間のカットポイントは、実際の必要性に応じて選択することができる。典型的には、「軽油」の95%留出温度(又は留出物温度)は、約300~400℃、好ましくは約320~360℃である。「重油」の5%留出温度(又は留出物温度)は、「軽油」の95%留出温度(又は留出物温度)と比較して、約3℃以上だけ高くなり得るように管理(又は制御又はコントロール)されている。
【0022】
本願の文脈において、明示的に記載される事項の他に、記載されていない事項(単数または複数)は、当該分野で知られているものと何ら変わることなく同じであるとみなされる。さらに、本開示に記載される実施形態のいずれかを本開示に記載される1以上の別の実施形態と自由に組み合わせてよい。このようにして得られる技術的な解決策または思想(又はアイデア)は、本願の当初の記載または当初の開示の一部とみなされ、このような組み合わせが明らかに不合理であることが当業者に明らかでない限り、新規事項(つまり、本明細書中に開示されていないもの、または本明細書中に記載されていないもの(又は新規なもの))であるとみなされるべきではない。
【0023】
本開示で引用する特許文献および非特許文献(教科書、雑誌論文が挙げられるが、これに限定されない)は、すべて、その全体が参照により本開示に組み込まれる(又は援用される)。
【0024】
第1の態様において、本願は、ニードルコークスを製造するためのシステムを提供する。当該システムは、以下のコークス・タワーと、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーと、バッファー・タンクと、コーキング分留タワーとを含んで成る。
コークス・タワーは、フィードストック・インレット(又はフィードストック入口)と、オイル・ガス・アウトレット(又はオイル・ガス出口)とを備える。コークス・タワーにおいて、炭化水素を含むフィードストックを反応させて、ニードルコークスとオイル・ガスとを製造(又は生成)する。
プレッシャー・スタビライゼーション・タワーは、オイル・ガス・インレット(又はオイル・ガス入口)と、オーバーヘッド軽質フラクション・アウトレット(又はオーバーヘッド軽質フラクション出口)と、ボトム・オイル・アウトレット(又はボトム・オイル出口)と、サイクル・オイル・インレット(又はサイクル・オイル入口又は循環オイル入口)とを備える。プレッシャー・スタビライゼーション・タワーにおいて、コークス・タワーからオイル・ガスを受け、オーバーヘッド軽質フラクションと、ボトム・オイルとに分離し、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)には、圧力コントローラ(又は圧力調節器)が設けられており、それによって、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を調整する。
バッファー・タンクは、インレット(又は入口)と、第1ボトム・オイル・アウトレット(又は第1ボトム・オイル出口)と、第2ボトム・オイル・アウトレット(又は第2ボトム・オイル出口)とを備える。バッファー・タンクにおいて、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルを受け、バッファリング作用(又はバッファー作用)を提供する。
コーキング分留タワーは、インレット(又は入口)と、軽油アウトレット(又は軽油出口)と、重油アウトレット(又は重油出口)とを備える。コーキング分留タワーにおいて、バッファー・タンクからのボトム・オイルを受け、軽油と重油とに分離する。
当該システムでは、コークス・タワーのオイル・ガス・アウトレットが、パイプラインを通して、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオイル・ガス・インレットと連通(又は連絡)している。コークス・タワーまたはオイル・ガス・パイプライン(コークス・タワーをプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに接続するパイプライン)には、コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を調整するための圧力コントローラは、設けられていない。
バッファー・タンクのインレットは、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのボトム・オイル・アウトレットと連通(又は連絡)している。バッファー・タンクの第1ボトム・オイル・アウトレットは、パイプライン(このパイプラインには、温度アジャスタ(又は温度調節器)が設けられている)を通して、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのサイクル・オイル・インレットと連通(又は連絡)している。バッファー・タンクの第2ボトム・オイル・アウトレットは、コーキング分留タワーのインレットと連通(又は連絡)している。
必要に応じて、コーキング分留タワーの重油アウトレットは、コークス・タワーのフィードストック・インレットと連通(又は連絡)している。
【0025】
本願のシステムでは、コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)にあるオイル・ガス・アウトレットが、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオイル・ガス・インレットと連通(又は連絡)しており、コークス・タワーまたはオイル・ガス・パイプライン(コークス・タワーをプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに接続するパイプライン)には、圧力コントローラが設けられていないことから、コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力ならびにプレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力は、密接に相互に関連している。そうすることによって、コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力は、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を調整することによって、制御することができる。
【0026】
本願によると、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーは、コークス・タワーからのオイル・ガスを受け、このオイル・ガスをオーバーヘッド軽質フラクションと、ボトム・オイルとに分離するのに適した機器(又は器具又は装置)であってもよい。プレッシャー・スタビライゼーション・タワーは、蒸留の分野で共通して使用される棚段カラム、充填カラムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。プレッシャー・スタビライゼーション・タワーは、本願において、特に限定されるものではない。
【0027】
本願によると、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)に設けられる圧力コントローラは、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を効果的に調節できるものであれば、コーキングの分野で共通して用いられる一般的な機器(又は器具又は装置)であり、本願において特に限定されるものではない。好ましい実施形態において、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)にある圧力コントローラは、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)で排出される軽質フラクションの流速(又は流量又はフロー・レート)を調整することによって(例えば、軽質フラクションの排出パイプラインにあるバルブの開度を調整することによって)、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を調節してよい。次いで、コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)での圧力を設定した値で維持することができる。
【0028】
好ましい実施形態では、少なくとも2つのコークス・タワーが提供されている。いつも(又は常に)、少なくとも1つのコークス・タワーが反応段階(又は反応ステージ)にあり、少なくとも1つのコークス・タワーが脱コーキング段階(又はデコーキング・ステージ)にある。
【0029】
本願によれば、バッファー・タンクは、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルを受け、バッファリング作用(又はバッファー作用)を提供するのに適した任意の機器(又は器具又は装置)(例えば、従来のオイル・タンク)であってよい。バッファー・タンクは、本願において、特に限定されるものではない。
【0030】
好ましい実施形態において、当該システムは、コークス・タワーに供給され得る炭化水素を含むフィードストック(又は供給原料又は原料)を加熱するためのファーネス(又は炉)をさらに含んで成る。
【0031】
好ましい実施形態では、当該システムは、水素化反応器(又はハイドロゲネーション・リアクタ)をさらに含んで成る。水素化反応器は、炭化水素を含むイニシャル・フィードストック(又は初期供給原料又は初期原料)を水素処理(又は水素化処理又はハイドロトリートメント又はハイドロトリーティング)に付して、コークス・タワーに供給され得る炭化水素を含むフィードストックを得るためのものである。
【0032】
第2の態様において、本願は、ニードルコークスを製造するための方法であって、本願のシステムを用いる方法を提供する。当該方法は、以下の工程(又はステップ)(1)~(5)を含んで成る。
(1) ニードルコークスおよびオイル・ガスを得るために、炭化水素を含む加熱したフィードストック(又は供給原料又は原料)をコークス・タワーにおいて反応させる工程(又はステップ)、
(2) オーバーヘッド軽質フラクション(又はオーバーヘッド・ライト・フラクション)およびボトム・オイルを得るために、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーにおいて、上記コークス・タワーからの上記オイル・ガスを分離する工程(又はステップ)、
(3) 上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーから上記バッファー・タンクに上記ボトム・オイルを送る工程(ステップ)と、上記バッファー・タンクからボトム・オイルのストリームを2つ取り出す(又は引き出す)工程(又はステップ)、
(4) 上記ボトム・オイルの第1ストリームを温度調整した後に上記バッファー・タンクから上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻す工程(又はステップ)、
(5) 上記ボトム・オイルの第2ストリームを上記バッファー・タンクから上記コーキング分留タワーに送る工程(又はステップ)と、上記コーキング分留タワーにおいて、第2ストリームを軽油と重油とに分離する工程(又はステップ)と、必要に応じて、さらなる反応のために上記重油を上記コークス・タワーに戻す工程(又はステップ)。
当該システムにおいて、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)における圧力は、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)にある上記圧力コントローラによって調整される。そうすることで、上記コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)における圧力が設定した値で維持されるようになる。
【0033】
好ましい実施形態において、当該方法は、工程(1)の前に工程(0)をさらに含んで成る。工程(0)は、炭化水素を含むイニシャル・フィードストックを水素処理(又は水素化処理又はハイドロトリートメント又はハイドロトリーティング)して、工程(1)で用いられる炭化水素を含むフィードストックを得るための工程(又はステップ)である。
【0034】
本願によると、炭化水素を含むイニシャル・フィードストックは、任意のフィードストック(又は供給原料又は原料)であってよい。この任意のフィードストックは、水素処理(又は水素化処理又はヒドロトリートメント)の後のニードルコークスの製造に適したものである。任意のフィードストックは、本願において、特に限定されるものではない。例えば、炭化水素を含むイニシャル・フィードストックは、接触分解スラリーオイル、接触分解デカントオイル、エチレンタール、熱分解残渣、コールタール、コールタールピッチ、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてよい。好ましくは、接触分解スラリーオイルである。
【0035】
さらなる好ましい実施形態において、当該方法は、水素処理の工程(0)の前に、炭化水素を含むイニシャル・フィードストックを固体除去処理に供する工程(又はステップ)をさらに含んで成る。固体除去処理は、任意の適切な手段によって実施されてよい。例えば、濾過、遠心沈降、減圧蒸留、溶媒抽出、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてよい。
【0036】
本願によると、水素処理の工程(0)は、当該分野で共通して使用される水素化反応器を用いて実施することができる。水素化反応器は、本願において、特に限定されるものではない。例えば、水素化反応器は、固定床式の水素化反応器、沸騰床式の水素化反応器、懸濁床式の水素化反応器、移動床式の水素化反応器、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてよい。好ましくは、固定床式の水素化反応器である。
【0037】
本願によると、水素処理のステップ(0)は、当該分野で共通して使用される任意の水素化触媒(又は水素処理触媒又はハイドロゲネーション・キャタリスト)を用いて実施することができる。水素化触媒は、本願において、特に限定されるものではない。例えば、水素化触媒は、既存の重油の水素処理触媒であってよい。水素処理触媒の担体(又はキャリア)は、典型的には、無機酸化物(例えば、アルミナ)である。活性成分(又はアクティブ・コンポーネント)は、VIB族および/またはVIII族の金属の酸化物(例えば、Mo、W、Co、Niなどの酸化物)である。また、水素化触媒は、既存の市販の触媒であってもよい(例えば、撫順石油化学研究所(又は撫順石油化工研究院(Fushun Research Institute of Petroleum and Petrochemicals)が開発したFZCシリーズの水素化触媒)。
【0038】
さらに好ましい実施形態では、水素処理の工程(0)の反応条件として、以下の条件を挙げることができる。
約300~480℃、好ましくは約330~400℃の反応温度
約3~20MPa、好ましくは約5~10MPaの反応圧力
約100~2500、好ましくは約500~1500の水素/オイルの容量比(又は体積比)
約0.1~2.0h-1、好ましくは約0.5~1.0h-1の液空間速度
【0039】
好ましい実施形態において、工程(1)の炭化水素を含む加熱されたフィードストックの温度(すなわち、ファーネスのアウトレット温度(又は出口温度))は、約400℃~約550℃、好ましくは約440℃~約520℃である。
炭化水素を含むフィードストックの温度上昇速度(又は温度上昇レート)(すなわち、ファーネスの加熱速度(又は加熱レート))は、約1℃/h~約50℃/h、好ましくは約2℃/h~約10℃/hである。
コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)における圧力は、約0.01~2.5MPa、好ましくは約0.2~1.5MPaである。
コークス・タワーは、一定の圧力または一定でない圧力(又は可変の圧力)で運転(又は操作又は作動)することができる。一定でない圧力(又は可変の圧力)で運転する場合、圧力の変化速度(又は変化率又は変化レート)は、約0.1~5MPa/hである。
反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)は、約10時間~約50時間、好ましくは約30時間~約50時間である。
【0040】
好ましい実施形態において、工程(2)のプレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオーバーヘッド軽質フラクションは、不凝結ガスと留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)とを含んで成る。留出オイルの95%留出温度(又は留出物温度)は、約150℃~約430℃、好ましくは約230℃~約370℃、より好ましくは約230℃~約330℃の範囲になり得るように制御(又は管理又はコントロール)されている。プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオーバーヘッド軽質フラクションにおける留出オイルの95%留出温度は、固定した値であっても、特定の範囲内で変動(又は上下)してもよい。
【0041】
好ましい実施形態において、工程(2)におけるプレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位(又は液面又はリキッド・レベル)は、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の約10%~約80%になり得るように制御(又は管理又はコントロール)されている。
【0042】
好ましい実施形態において、工程(4)におけるボトム・オイルの第1ストリームは、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの中間部(又は中間部分又は中段又はミドル)に戻される。その前に、第1ストリームは、温度調整(例えば、熱交換媒体(又はヒート・エクスチェンジ・メディア)(典型的には、冷却媒体(又はクーリング・メディア))との熱交換)に供されている。好ましくは、ボトム・オイルの第1ストリーム/コークス・タワーのフィード(又は供給物)の質量比は、約0.001~約1、好ましくは約0.05~約0.4である。そして/または、ボトム・オイルの第1ストリームがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度は、約200~380℃、好ましくは約230~340℃になり得るように制御(又は管理又はコントロール)されている。
【0043】
好ましい実施形態において、熱交換媒体(又はヒート・エクスチェンジ・メディア)は、炭化水素を含むイニシャル・フィードストックなどのコールド・オイル(又は冷たい油)であってよい。ボトム・オイルの第1ストリームがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度は、熱交換媒体の流速(又は流量又はフロー・レート)を調整することによって制御(又は管理又はコントロール)されている。例えば、冷却媒体(又はクーリング・メディア)を用いる場合、冷却媒体の流速(又は流量又はフロー・レート)を増加させることによって、温度(ボトム・オイルの第1ストリームがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度)をさらに下げることができる。逆に、冷却媒体の流速(又は流量又はフロー・レート)を減少させることによって、温度(ボトム・オイルの第1ストリームがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度)を上昇させることができる。
【0044】
好ましい実施形態において、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオーバーヘッド軽質フラクションにおける留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)の95%留出温度(又は留出物温度)は、ボトム・オイルの第1ストリームがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻る温度を調整することによって調節される。
具体的には、留出オイルの95%留出温度が310℃以上に上昇する場合、ボトム・オイルの第1ストリームがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻る温度を下げる(例えば、冷却媒体の流速(又は流量又はフロー・レート)を増加させることによって温度を下げる)。そうすることによって、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの蒸発部(又はエバポレーション・セクション)の温度が低下するようになる。次いで、留出オイルの95%留出温度が低下するようになる。
留出オイルの95%留出温度が240℃以下に減少する場合、ボトム・オイルの第1ストリームがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻る温度を上昇させる(例えば、冷却媒体の流速(又は流量又はフロー)を低下させることによって温度を上昇させる)。そうすることによって、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの蒸発部(又はエバポレーション・セクション)の温度が上昇するようになる。次いで、留出オイルの95%留出温度が増加するようになる。
【0045】
好ましい実施形態において、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位(又は液面又はリキッド・レベル)は、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)および/またはボトム・オイルの第1ストリームのリサイクル速度(又は循環速度又は再利用速度又は再利用速度又はリサイクル・レート)を調整することによって調節される。
具体的には、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位がプレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の60%以上に上昇する場合、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度を上昇させる。そして/または、ボトム・オイルの第1ストリームのリサイクル速度を下げる。そうすることによって、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位が低下するようになる。
プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位がプレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の20%以下に低下する場合、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度を下げる。そして/または、ボトム・オイルの第1ストリームのリサイクル速度を上昇させる。そうすることによって、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位が上昇するようになる。
【0046】
さらに好ましい実施形態において、ボトム・オイルの第1ストリームがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻る温度および流速(又は流量又はフロー・レート)を制御して、オーバーヘッド軽質フラクションにおける留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)の95%留出温度(又は留出物温度)と、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位(又は液面又はリキッド・レベル)とを同時に調節する。
【0047】
特に好ましい実施形態において、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位(又は液面又はリキッド・レベル)がプレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の60%以上に上昇し、なおかつ、留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)の95%留出温度(又は留出物温度)が310℃以上に上昇する場合、ボトム・オイルの第1ストリームをプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻す温度を下げる。そして、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)を上昇させる。
プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)における液位がプレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の60%以上に上昇し、なおかつ、留出オイルの95%留出温度が240℃以下に低下する場合、ボトム・オイルの第1ストリームがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻る温度と、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度とを増加させる。
プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)における液位(又は液面又はリキッド・レベル)がプレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の20%以下に減少し、なおかつ、留出オイルの95%留出温度が310℃以上に上昇する場合、ボトム・オイルの第1ストリームがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻る温度と、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度を下げる。
あるいは、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)における液位(又は液面又はリキッド・レベル)がプレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の20%以下に低下し、なおかつ、留出オイルの95%留出温度が240℃以下に低下する場合、ボトム・オイルの第1ストリームをプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻す温度を高くする。そして、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度を低くする。
【0048】
好ましい実施形態では、工程(3)において、バッファー・タンクの液位(又は液面又はリキッド・レベル)をバッファー・タンクの全高の約30~70%で制御(又は管理又はコントロール)する。
【0049】
好ましい実施形態では、工程(5)において、ボトム・オイルの第2ストリームの流速(又は流量又はフロー・レート)は、バッファー・タンクの液位(又は液面又はリキッド・レベル)に応じて制御される。特に、バッファー・タンクの液位が25%よりも低い場合には、ボトム・オイルの第2ストリームの流速(又は流量又はフロー・レート)を低くする。そして、バッファー・タンクの液位が60%よりも高い場合には、ボトム・オイルの第2ストリームの流速(又は流量又はフロー・レート)を高くする。
【0050】
好ましい実施形態では、工程(5)において、ボトム・オイルの第2ストリームがコーキング分留タワーに入る温度が、約370℃~約450℃、好ましくは約385℃~約420℃になり得るように制御(又は管理又はコントロール)される。
【0051】
さらに好ましい実施形態では、工程(5)において、ボトム・オイルの第2ストリームがコーキング分留タワーに入る温度が、工程(1)で得られるオイル・ガスとの熱交換、ファーネスでの加熱、またはそれらの組み合わせによって調節することができる。
【0052】
好ましい実施形態では、工程(5)において、コーキング分留タワーによって分離される軽油の95%留出温度(又は留出物温度)を約300℃~約400℃の範囲、好ましくは約320℃~約360℃の範囲になり得るように制御(又は管理又はコントロール)する。
【0053】
好ましい実施形態では、工程(5)において、コーキング分留タワーから分離される軽油を部分的にプレッシャー・スタビライゼーション・タワーにリサイクル(又は再利用又は循環)してよい。プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力と、コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力とを調節して、これらの圧力を、設定した値で維持することができる。
【0054】
好ましい実施形態では、工程(5)において、コーキング分留タワーによって分離される重油は、軽油の95%留出温度(又は留出物温度)と比較して、少なくとも約3℃高い5%留出温度(又は留出物温度)を有する。
【0055】
好ましい実施形態では、工程(5)において、コーキング分留器(又はコーキング・フラクシオネータ)によって分離される重油は、直接的にコークス・タワーにリサイクル(又は再利用又は循環)されてよい。あるいは、固体除去処理に供されてよい。次いで、コークス・タワーにリサイクル(又は再利用又は循環)されてよい。好ましくは、後者(又は固体除去処理)である。固体除去処理は、任意の適切な手段によって行われてよい。例えば、濾過、遠心沈降、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてよい。好ましくは、濾過である。
【0056】
第3の態様において、本願は、ニードルコークスの製造方法(又は製造プロセス)の安定性(又はスタビリティ)を改善するための方法を提供する。当該方法は、以下の工程(又はステップ)(i)~(iv)を含む。
(i) 本願の第1の態様に従って、ニードルコークスを製造するためのシステムを使用して、ニードルコークスを製造する工程(又はステップ)、
(ii) 上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)に提供される上記圧力コントローラを調節することによって、上記コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)における圧力を調整する工程(又はステップ)であって、そうるすことによって、上記圧力を、設定した値で維持する、工程(又はステップ)、
(iii) 上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオーバーヘッド軽質フラクションにおいて、温度(上記ボトム・オイルの第1ストリームを上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻す温度)を調節することによって、留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)の95%留出温度(又は留出物温度)を調整する工程(又はステップ)であって、そうすることによって、上記温度を、設定した値で維持する、工程(又はステップ)、および
(iv) 上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからの上記ボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)および/または上記ボトム・オイルの第1ストリームのリサイクル速度(又は循環速度又は再利用速度又は再利用速度又はリサイクル・レート)を調節することによって、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位(又は液面又はリキッド・レベル)を調整する工程(又はステップ)であって、そうすることによって、上記液位を、設定した値で維持する、工程(又はステップ)。
【0057】
好ましい実施形態において、工程(i)は、本願の第2の態様に従うニードルコークスを製造するための方法に従って実施される。その具体的な運転(又は操作又は作動又はオペレーション)については、本開示では省略する。
【0058】
好ましい実施形態において、工程(ii)は、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)からの軽質フラクションの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)を調節すること(例えば、軽質フラクションの排出パイプライン(又はディスチャージ・パイプライン)にあるバルブの開度を調整すること)によって実施される。
【0059】
好ましい実施形態において、工程(iii)は、以下の様式(又は方法又はマナー)で実施する。
留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)の95%留出温度(又は留出物温度)が310℃以上に上昇する場合、温度(ボトム・オイルの第1ストリームがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻る温度)を下げる(例えば、冷却媒体(又はクーリング・メディア)の流速(又は流量又はフロー・レート)を増加させることによって温度を下げる)。それによって、留出オイルの95%留出温度が低下する。
留出オイルの95%留出温度が240℃以下に低下する場合、温度(ボトム・オイルの第1ストリームがプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻る温度)を上昇させる(例えば、冷却媒体(又はクーリング・メディア)の流速(又は流量又はフロー・レート)を減少させることによって温度を上昇させる)。それによって、留出オイルの95%留出温度を上昇させる。
【0060】
好ましい実施形態において、工程(iv)は、以下の様式(又は方法又はマナー)で実施する。
プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位(又は液面又はリキッド・レベル)がプレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の60%以上に増加する場合、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)を上げる。そして/または、ボトム・オイルの第1ストリームのリサイクル速度(又は循環速度又は再利用速度又はリサイクル・レート)を下げる。それによって、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位を減少させる。
プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位がプレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の20%以下に低下する場合、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)を下げる。そして/または、ボトム・オイルの第1ストリームのリサイクル速度を上げる。それによって、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位を上昇させる。
【0061】
図1に示すように、好ましい実施形態において、本願のニードルコークスを製造するためのシステムは、水素化反応器(又はハイドロゲネーション・リアクタ)2、ファーネス(又は炉)4、コークス・タワー(又はコークス塔)6A/6B、プレッシャー・スタビライゼーション・タワー(又は圧力安定化塔又は圧力安定塔)8、バッファー・タンク(又は緩衝タンク)11、コーキング分留タワー(又はコーキング分留塔)14、フィルタ17、熱交換器19およびファーネス(又は炉)20を含んで構成されている。
コークス・タワー6A/6Bは、フィードストック・インレット(又はフィードストック入口又は供給原料入口又は原料入口)と、オイル・ガス・アウトレット(又はオイル・ガス出口)とを備える。
プレッシャー・スタビライゼーション・タワー8には、オイル・ガス・インレット(又はオイル・ガス入口)、オーバーヘッド軽質フラクション・アウトレット(又はオーバーヘッド軽質フラクション出口又はオーバーヘッド・ライト・フラクション・アウトレット)、ボトム・オイル・アウトレット(又はボトム・オイル出口)およびサイクル・オイル・インレット(又はサイクル・オイル入口又は循環オイル・インレット又は循環オイル入口)が設けられている。プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)には、圧力コントローラ23が設けられている(圧力コントローラ23は、例えば、オーバーヘッド軽質フラクションの排出パイプライン9に設けられている)。圧力コントローラ23は、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を調節するためのものである。
バッファー・タンク11には、インレット(又は入口)、第1ボトム・オイル・アウトレット(又は第1ボトム・オイル出口)および第2ボトム・オイル・アウトレット(又は第2ボトム・オイル出口)が設けられている。
コーキング分留タワー14には、インレット(又は入口)、軽油アウトレット(又は軽油出口)および重油アウトレット(又は重油出口)が設けられている。
コークス・タワー6A/6Bのオイル・ガス・アウトレット(又はオイル・ガス出口)は、パイプライン7を通して、プレッシャー・スタビライゼーション・タワー8のオイル・ガス・インレットと連通(又は連絡)している。コークス・タワーまたはオイル・ガス・パイプライン7(コークス・タワーをプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに接続するパイプライン)には、コークス・タワー6A/6Bの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を調整するための圧力コントローラ(又は圧力調節器)は、設けられていない。
プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのボトム・オイル・アウトレット(又はボトム・オイル出口)は、パイプライン10を通して、バッファー・タンク11のインレット(又は入口)と連通(又は連絡)している。
バッファー・タンク11の第1ボトム・オイル・アウトレットは、パイプライン13を通して、プレッシャー・スタビライゼーション・タワー8のサイクル・オイル・インレットと連通(又は連絡)している。パイプライン13には、温度アジャスタ(又は温度調節器)(例えば、熱交換器19)が設けられている。バッファー・タンクの第2ボトム・オイル・アウトレットは、パイプライン12およびパイプライン21を通して、コーキング分留タワー14のインレット(又は入口)と連通(又は連絡)している。コーキング分留タワー14の重油アウトレットは、パイプライン16、パイプライン18およびパイプライン5を通して、コークス・タワー6A/6Bのフィードストック・インレットと連通(又は連絡)している。
【0062】
図1に示す通り、本願のニードルコークスを製造するための方法の好ましい実施形態では、炭化水素を含むイニシャル・フィードストック(又は炭化水素含有初期供給原料又は炭化水素含有初期原料)(固体除去処理に供された後のもの)1を水素ガス22と混合する。次いで、水素化反応器(又はハイドロゲネーション・リアクタ)2に供給する。水素化反応器2において、混合物を水素化触媒と接触させて反応を行う。生成する精製油をパイプライン3を介してディレード・コーキング・ファーネス4に供給する。ディレード・コーキング・ファーネス4において、特定の温度まで加熱し、パイプライン5を介して、コークス・タワー6A/6Bに供給する。コークス・タワー6A/6Bで生成したコークスは、コークス・タワーの下部(又は底部又はボトム)に堆積する。生成したオイル・ガスは、パイプライン7を通して、プレッシャー・スタビライゼーション・タワー8に送られる。プレッシャー・スタビライゼーション・タワー8で分離された軽質フラクション(又はライト・フラクション)は、パイプライン9を通して、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)から排出される。ボトム・オイルは、パイプライン10を通して、バッファー・タンク11に送られる。バッファー・タンク11のボトム・オイルは、2つのストリーム(又は流れ)によって排出される。一方のストリームは、熱交換器19に送られる。熱交換器19で熱交換された後、このストリームは、パイプライン13を通して、プレッシャー・スタビライゼーション・タワー8にリサイクル(又は循環又は再利用)される。プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのパイプライン7からのコーキング・オイル・ガスと接触させることによって、物質移動(又はマス・トランスファー)と熱移動(又はヒート・トランスファー)を行う。他方のストリームは、パイプライン12を介して、ファーネス20に送られる。ファーネス20において、このストリームを特定の温度まで加熱する。次いで、パイプライン21を介して、コーキング分留タワー14に送られる。ボトム・オイルの第2ストリームは、コーキング分留タワー14において分離され、軽油(又はライト・オイル)と重油(又はヘビー・オイル)とを生成(又は形成)する。ここで、軽油は、パイプライン15を通して排出される。重油は、パイプライン16を通して、フィルタ17に送られ、重油中の固体粒子(例えば、コークス・ブリーズ)が除去される。次いで、パイプライン18を通して、パイプライン3からの精製油と混合されて、ファーネス4に送られる。プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)にある圧力コントローラ23によって、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を調節する。そうすることで、コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を設定した値で維持するようになる。
【0063】
いくつかの好ましい実施形態において、以下の技術的な解決策を本願は提供する。
【0064】
1.
ニードルコークスの製造方法(又は製造プロセス)の安定性(又はスタビリティ)を改善するための方法であって、当該方法は、以下の工程(又はステップ)を包含する:
(1) オーバーヘッド軽質フラクションとボトム・オイルとを得るために処理用のプレッシャー・スタビライゼーション・タワーにコーキング反応系からのコーキング・オイル・ガス生成物(又はコーキング・オイル・ガス・プロダクト)を供給する工程(又はステップ)、
(2) 上記工程(1)で得られるボトム・オイルをバッファー・タンクに通す(又は送る)工程(又はステップ)と、バッファー処理後にボトム・オイルを2つのストリーム(又は流れ)に分ける工程(又はステップ)であって、
上記ボトム・オイルの第1ストリームを温度調整に供し、次いで、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーにリサイクルし、
上記ボトム・オイルの第2ストリームをコーキング分留システムに送り、軽油と重油とに分離する、工程(又はステップ)。
【0065】
2.
上記工程(1)において、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)に圧力コントロール・システムを設け、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を上記コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力と相関させること(又は関連付けること)(すなわち、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を調節することによって、上記コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を制御すること)を特徴とする、第1項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するための方法。
【0066】
3.
上記工程(1)において、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオーバーヘッド軽質フラクションが、不凝結ガスと留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)とを含んで成り、上記留出オイルの95%留出温度(又は留出物温度)が150~430℃であり、好ましくは230~370℃であり、さらに好ましくは230~330℃であることを特徴とする、第1項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するための方法。
【0067】
4.
上記工程(2)において、上記コーキング分留システムによって分離された軽油の一部を上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーにリサイクルし、それによって、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力および上記コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を設定した値で維持することを特徴とする、第1項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するための方法。
【0068】
5.
上記工程(2)において、上記コーキング分留システムによって分離された重油を直接的にコーキング反応系にリサイクルするか、または固体除去処理した後にコーキング反応系にリサイクルすること、好ましくは固体除去処理した後にリサイクルすることを特徴とする、第1項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するための方法。
【0069】
6.
上記固体除去処理を濾過および/または遠心沈降によって行うことを特徴とする、第5項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するための方法。
【0070】
7.
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位(又は液面又はリキッド・レベル)が、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の10~80%であることを特徴とする、第1項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するための方法。
【0071】
8.
上記工程(2)におけるボトム・オイルの第1ストリームが、加熱または冷却された後、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの中間部(又は中間部分又は中段又はミドル)に戻され、上記ボトム・オイルの第1ストリーム/上記コークス・タワーのフィード(又は供給物)の質量比が、0.001~1、好ましくは0.05~0.4であることを特徴とする、第1項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するための方法。
【0072】
9.
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオーバーヘッド軽質フラクションの留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)の95%留出温度(又は留出物温度)と、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)の液位(又は液面又はリキッド・レベル)に応じて、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのボトム・オイルを上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻す運転モード(又は操作モード又は作動モード又はオペレーション・モード)を決定することを特徴とする、第1項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するための方法。
【0073】
10.
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)における液位が、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の60%以上まで上昇し、なおかつ、上記留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)の95%留出温度(又は留出物温度)が310℃以上に上昇する場合、上記ボトム・オイルの第1ストリームが冷却された後に上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻され、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)を上げるか、
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)における液位が上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の60%以上に上昇し、なおかつ、上記留出オイルの95%留出温度(又は留出物温度)が240℃以下に低下する場合、上記ボトム・オイルの第1ストリームが加熱された後に上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻され、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)を上げるか、
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)における液位が上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の20%以下まで低下し、なおかつ、上記留出オイルの95%留出温度が310℃以上まで上昇する場合、上記ボトム・オイルの第1ストリームが冷却された後に前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻され、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)を下げるか、
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)における液位が上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の20%以下に低下し、なおかつ、上記留出オイルの95%留出温度が240℃以下に低下する場合、上記ボトム・オイルの第1ストリームが加熱された後に上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻され、なおかつ、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)を下げることを特徴とする、第1項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するための方法。
【0074】
11.
上記バッファー・タンクの液位が上記バッファー・タンクの全高の30~70%となるように制御することを特徴とする、第1項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するための方法。
【0075】
12.
上記ステップ(4)において、上記ボトム・オイルの第2ストリームの流速(又は流量又はフロー・レート)を上記バッファー・タンクの液位に応じて制御し、上記バッファー・タンクの液位が25%よりも低い場合、上記ボトム・オイルの第2ストリームの流速(又は流量又はフロー・レート)を下げ、上記液位が60%よりも高い場合、上記ボトム・オイルの第2ストリームの流速(又は流量又はフロー・レート)を上げることを特徴とする、第1項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するための方法。
【0076】
13.
ニードルコークスの製造方法の安定性を改善するためのシステムであって、
フィードストック(又は供給原料又は原料)を受けて処理するためのコーキング反応システムと、
上記コーキング反応システムから反応生成物を受けて、上記反応生成物をオーバーヘッド軽質フラクションとボトム・オイルとに分離するためのプレッシャー・スタビライゼーション・タワーと、
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからボトム・オイルを受けて、上記ボトム・オイルを処理した後に上記ボトム・オイルを2つのストリーム(すなわち、上記ボトム・オイルの第1ストリームと、上記ボトム・オイルの第2ストリーム)に分けるためのバッファー・タンクであって、上記ボトム・オイルの第1ストリームが、パイプラインを通して、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻され、上記パイプラインに温度アジャスタが設けられている、バッファー・タンクと、
上記バッファー・タンクからのボトム・オイルの第2ストリームを受けて、第2ストリームを軽油と重油とに分離するためのコーキング分留タワーと
を含んで成る、システム。
【0077】
14.
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの運転圧力(又は操作圧力又は作動圧力又はオペレーティング・プレッシャー)は、前記コークス・タワーの運転圧力(又は操作圧力又は作動圧力又はオペレーティング・プレッシャー)と相関があり、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)には圧力コントロール・システムが設けられており、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオーバーヘッド軽質フラクションの流速(又は流量又はフロー・レート)によって圧力コントロールが行われ、それにより、上記コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)における圧力を設定した値に維持することを特徴とする、第13項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するためのシステム。
【0078】
15.
上記コーキング反応システムは、少なくとも1つのファーネスと、少なくとも2つのコークス・タワーとを含んで成り、いつも(又は常に)、少なくとも1つのコークス・タワーが反応段階にあり、少なくとも1つのコークス・タワーが脱コーキング段階にあることを特徴とする、第13項に記載のニードルコークスの製造方法の安定性を改善するためのシステム。
【0079】
16.
ニードルコークスを製造するための方法(又はプロセス)であって、以下の工程(又はステップ)(1)~(4):
(1) ニードルコークス・フィードストックと水素とを混合し、上記混合物を水素化反応ゾーンに供給して、水素化触媒と接触させて、得られる反応流出物(又は反応流出液)を分離して、ガス、ナフサおよび精製油を得る工程(又はステップ)、
(2) 上記工程(1)で得られる精製油をディレード・コーキング反応システムに供給して反応させ、得られるオイル・ガス生成物(又はオイル・ガス・プロダクト)をプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに通して、分離させて、オーバーヘッド軽質フラクションとボトム・オイルとを得る工程(又はステップ)、
(3) 上記工程(2)で得られるボトム・オイルをバッファー・タンクに通して、上記ボトム・オイルを2つのストリーム(すなわち、上記ボトム・オイルの第1ストリームと、上記ボトム・オイルの第2ストリーム)に分け、上記ボトム・オイルの第1ストリームを温度調整後に上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻す工程(又はステップ)、
(4) 上記工程(3)で得られるボトム・オイルの第2ストリームをコーキング分留システムに通して、第2ストリームを分離させて、軽油と重油とを得る工程(又はステップ)
を含む、ニードルコークスを製造するための方法。
【0080】
17.
上記工程(1)において、上記ニードルコークス・フィードストックが、接触分解スラリーオイル、接触分解デカントオイル、エチレンタール、熱分解残渣、コールタールおよびコールタールピッチから1以上が選択され、好ましくは、接触分解スラリーオイルであることを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0081】
18.
上記工程(1)において、上記ニードルコークス・フィードストックは、まず、固体除去処理に供され、上記固体除去処理が、濾過、遠心沈降、減圧蒸留および溶媒抽出のうち1つであるか、またはそれらの2以上の組み合わせであることを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0082】
19.
上記工程(1)において、上記水素化反応ゾーンの運転条件が、300~480℃、好ましくは330~400℃の反応温度、3~20MPa、好ましくは5~10MPaの反応圧力、100~2500、好ましくは500~1500の水素/オイルの容量比(又は体積比)、0.1~2.0h-1、好ましくは0.5~1.0h-1の液空間速度を含むことを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0083】
20.
上記工程(2)において、上記ディレード・コーキング反応システムが、少なくとも1つのファーネスと、少なくとも2つのコークス・タワーとを含んで成り、いつも(又は常に)、少なくとも1つのコークス・タワーが反応段階にあり、少なくとも1つのコークス・タワーが脱コーキング段階にあり、上記ファーネスの出口温度が、400~550℃、好ましくは440~520℃であり、加熱速度(又はヒーティング・レート)が、1~50℃/h、好ましくは2~10℃/hであり、上記コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力が、0.01~2.5MPa、好ましくは0.2~1.5MPaであり、反応時間が、10~50h、好ましくは30~50hであることを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0084】
21.
上記工程(2)において、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)に圧力コントロール・システムが設けられており、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)における圧力は、上記コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)における圧力と相関があること、すなわち、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を調節することによって、上記コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を制御することを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0085】
22.
上記工程(2)において、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオーバーヘッド軽質フラクションが、不凝結ガスと留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)とを含んで成り、上記留出オイルの95%留出温度(又は留出物温度)が、150~430℃、好ましくは230~370℃、さらに好ましくは230~330℃であることを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0086】
23.
上記工程(2)において、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位が、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の10~80%であることを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0087】
24.
上記工程(3)において、上記ボトム・オイルの第1ストリームは、加熱または冷却された後に上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの中間部(又は中間部分又は中段又はミドル)に戻され、上記ボトム・オイルの第1ストリーム/上記コークス・タワーのフィード(又は供給物)の質量比が、0.001~1、好ましくは0.05~0.4であることを特徴とする、第6項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0088】
25.
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオーバーヘッド軽質フラクションの留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)の95%留出温度(又は留出物温度)と、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)の液位とに応じて、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのボトム・オイルを上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻す運転モード(又は操作モード又は作動モード又はオペレーション・モード)が決定されることを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0089】
26.
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)における液位が、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の60%以上まで上昇し、なおかつ、上記留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)の95%留出温度(又は留出物温度)が310℃以上に上昇する場合、上記ボトム・オイルの第1ストリームが冷却された後に上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻され、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)を上げるか、
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)における液位が上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の60%以上に上昇し、なおかつ、上記留出オイルの95%留出温度が240℃以下に低下する場合、上記ボトム・オイルの第1ストリームが加熱された後に上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻され、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)を上げるか、
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)における液位が上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の20%以下まで低下し、なおかつ、上記留出オイルの95%留出温度が310℃以上まで上昇する場合、上記ボトム・オイルの第1ストリームが冷却された後に前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻され、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)を下げるか、
上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部(又は底部又はボトム)における液位が上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の20%以下に低下し、なおかつ、上記留出オイルの95%留出温度が240℃以下に低下する場合、上記ボトム・オイルの第1ストリームが加熱された後に上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻され、なおかつ、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度(又は排出レート又はディスチャージ・レート)を下げることを特徴とする、第25項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0090】
27.
上記ステップ(3)において、上記バッファー・タンクの液位が、上記バッファー・タンクの全高の30~70%になり得るように制御されることを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0091】
28.
上記バッファー・タンクの液位に応じて上記ボトム・オイルの第2ストリームの流速(又は流量又はフロー・レート)を制御し、上記バッファー・タンクの液位が25%よりも低い場合、上記ボトム・オイルの第2ストリームの流速(又は流量又はフロー・レート)を下げ、上記液位が60%よりも高い場合、上記ボトム・オイルの第2ストリームの流速(又は流量又はフロー・レート)を上げることを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0092】
29.
上記工程(4)において、上記コーキング分留システムによって分離される軽油は、95%留出温度(又は留出物温度)が300~400℃、好ましくは320~360℃であることを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0093】
30.
上記コーキング分留システムによって分離される軽油の一部を上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーにリサイクルして、上記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)における圧力と、上記コークス・タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力を、設定した値で維持することを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0094】
31.
上記工程(4)において、上記コーキング分留システムによって分離される重油の5%留出温度(又は留出物温度)が、軽油の95%留出温度(又は留出物温度)と比較して、少なくとも3℃高いことを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【0095】
32.
上記工程(4)において、上記コーキング分留システムで分離される重油を直接的に上記コーキング反応系にリサイクルするか、または固体除去処理の後に上記コーキング反応系にリサイクルすることを特徴とする、第16項に記載のニードルコークスを製造するための方法。
【実施例
【0096】
(実施例)
以下、実施例を参照して、本願をさらに説明するが、本願は、これらに限定されるものではない。
【0097】
以下の実施例および比較例で用いる炭化水素を含むイニシャル・フィードストック(又は炭化水素含有初期供給原料又は炭化水素含有初期原料)は、接触分解スラリーオイル(固体除去処理に供された後のもの)であった。その特性は、以下の表1に示す通りである。
【0098】
【表1】
【0099】
実施例1
図1に示すプロセスフローに従って、実験を行った。この実験では、接触分解スラリーオイル(固体除去処理に供した後のもの)を水素と混合して、水素化反応器に供給した。水素化触媒として、商品名FZC-34(市販品、撫順石油化学研究所(又は撫順石油化工研究院(Fushun Research Institute of Petroleum and Petrochemicals))によって開発されたもの)を使用した。水素化条件として以下の条件が挙げられる:反応温度385℃、反応圧力8MPa、水素/オイルの容量比1000、液空間速度0.8h-1。得られる水素化精製油をディレード・コーキング反応ユニット(ファーネスと、コークス・タワーとを含んで成るユニット)に送った。ファーネスのアウトレット温度は、450~510℃であった。コークス・タワーを可変圧力(又はバリアブル・プレッシャー)で運転(又は操作又は作動)し、タワーの上部(又は頂部又はトップ)における初期圧力は、1.2MPaであった。供給時間(又はフィード時間又はフィーディング・タイム)が反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)の60%に到達したとき、タワーの上部(又は頂部又はトップ)の圧力は、0.5MPa/hの速度において、0.2MPaまで低下した。反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)は、40時間であった。反応により生成するコーキング・オイル・ガスをプレッシャー・スタビライゼーション・タワーに送った。プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部(又は頂部又はトップ)から軽質フラクションを排出した。その留出オイル(又は留出油又は留出物オイル又は留出物油)において、95%留出温度(又は留出物温度)は、248℃であった。このタワーの下部(又は底部又はボトム)からボトム・オイルをバッファー・タンクに排出した。バッファー・タンクから取り出されたボトム・オイルは、2つのストリーム(又は流れ)に分けられた。第1ストリームは、267℃の温度に調整され、次いで、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの中間部(又は中間部分又は中段又はミドル)にリサイクルされる。第2ストリームは、コーキング分留タワーに送られた。コーキング分留タワーにおいて、軽油と重油とに分けられた。軽油において、95%留出温度は、345℃であった。重油において、5%留出温度は、352℃であった。固体除去のための濾過の後、重油をディレード・コーキング反応ユニットに戻した。コーキング分留タワーへの5%留出温度のフィード(又は供給物)を反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)の関数としてプロットした(図2参照)。反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)にわたるコーキング分留タワーのロード(又は負荷)を図3に示す。
【0100】
実施例2
実施例1に記載の通りに実験を行った。ただし、コークス・タワーは、一定の圧力(0.8MPa)で運転した。反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)にわたるコーキング分留タワーのロード(又は荷重)を図4に示す。
【0101】
比較例1
従来技術の方法を用いてニードルコークスを生成した。従来技術の方法において、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーまたはバッファー・タンクは設けなかった。コーキング反応によって生成したオイル・ガスを直接的にコーキング分留タワーに送った。
接触分解スラリーオイル(固体除去処理に供された後のもの)を水素と混合し、水素化反応器に供給した。水素化触媒として、商品名FZC-34の水素化触媒を用いた。水素化条件として、以下の条件が挙げられる:反応温度385℃、反応圧力8MPa、水素/オイルの容量比1000、液空間速度0.8h-1。生成される水素化精製油をディレード・コーキング反応ユニットに送った。ファーネスのアウトレット温度は、450~510℃であった。コークス・タワーを可変圧力(又はバリアブル・プレッシャー)で運転した。このタワーの上部(又は頂部又はトップ)におけるイニシャル・プレッシャー(又は初期圧力)は、1.0MPaであった。供給時間(又はフィード時間又はフィーディング・タイム)が反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)の60%に到達したとき、このタワーの上部(又は頂部又はトップ)における圧力は、0.4MPa/hの速度(又はレート)において、0.2MPaに低下した。反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)は、40時間であった。この反応によって生成したコーキング・オイル・ガスをコーキング分留タワーに送り、軽油と重油とに分離した。軽油の95%留出温度(又は留出物温度)は、328℃~347℃で変動した。重油の5%留出温度(又は留出物温度)は、330~359℃であった。固形分を除去するために濾過した後、重油をディレード・コーキング反応ユニットに戻した。コーキング分留タワーへのフィード(又は供給物)において、液体の5%留出温度(又は留出物温度)を反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)の関数としてプロットした(図2参照)。反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)にわたるコーキング分留タワーのロード(又は負荷)を図5に示した。
【0102】
比較例2
比較例1に記載の通りに実験を行った。ただし、一定の圧力(0.8MPa)でコークス・タワーを運転した。反応時間(又は反応期間又は反応ピリオド)にわたるコーキング分留タワーのロード(又は負荷)を図6に示した。
【0103】
図2に示すように、実施例1では、コーキング分留タワーに供給する液体原料(又はリキッド・マテリアル)の5%留出温度(又は留出物温度)の変動範囲(又は変動幅)は、約20℃である。
比較例1では、コーキング分留タワーに供給する液体原料(又はリキッド・マテリアル)の5%留出温度(又は留出物温度)の変動範囲(又は変動幅)は、約81℃である。以上の比較から、実施例1ではコーキング分留タワーへのフィード(または供給物)の組成が比較的に安定していることを示している。それに対して、比較例1では、変動範囲(又は変動幅)が大きいことを示している。
【0104】
図3図6に示すように、反応の進行に伴って、コーキング分留タワーの供給速度(又はフィード速度又はフィード・レート)が変化する。すなわち、コーキング分留タワーのロード(又は負荷)が連続的に変化する。図3に示すように、実施例1のコーキング分留タワーでは、ピーク時のロード(又は負荷)は、開始時のロード(又は負荷)の1.6倍である。図4に示すように、実施例2のコーキング分留タワーでは、ピーク時のロード(又は負荷)は、開始時のロード(又は負荷)の1.5倍である。
それとは対照的に、図5に示すように、比較例1のコーキング分留タワーでは、ピーク時のロード(又は荷重)は、開始時のロード(又は荷重)の3.3倍である。
図6に示すように、比較例2のコーキング分留タワーでは、ピーク時のロード(又は荷重)は、開始時のロード(又は荷重)の2.5倍である。
以上の比較から、比較例1~2のコーキング分留タワー(又はコーキング分留カラム)におけるロード(又は負荷)の変動は、実施例1~2での変動と比べて、著しく大きいことが示されている。
【0105】
本願は、好ましい実施形態を参照して本開示の上記に詳細に説明しているが、これらの実施形態に限定することは意図されていない。本願の発明の概念に従って種々な改変が可能であってよい。これらの改変は、本願の範囲内である。
【0106】
上記の実施形態で説明した様々な技術的な特徴は、任意の適切な様式(又は方法又はマナー)によって矛盾なく組み合わせることができることに留意されたい。不必要な繰り返しを避けるために、本願では様々な可能な組み合わせは説明していないが、そのような組み合わせも本願の範囲内である。
【0107】
また、本願の様々な実施形態は、本願の精神から逸脱しない限り、任意に組み合わせることができる。このように組み合わされた実施形態は、本願の開示としてみなされるべきである。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
ニードルコークスを製造するためのシステムであって、当該システムは、コークス・タワーと、プレッシャー・スタビライゼーション・タワーと、バッファー・タンクと、コーキング分留タワーとを含んで成り、
前記コークス・タワーは、フィードストック・インレットと、オイル・ガス・アウトレットとを備えており、前記コークス・タワーでは、炭化水素を含むフィードストックを反応させることによって、ニードルコークスと、オイル・ガスとを生成し、
前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーは、オイル・ガス・インレットと、オーバーヘッド軽質フラクション・アウトレットと、ボトム・オイル・アウトレットと、サイクル・オイル・インレットとを備えており、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーでは、前記コークス・タワーからのオイル・ガスを受けて、オーバーヘッド軽質フラクションと、ボトム・オイルとに分離し、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部には、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部の圧力を調整するために、圧力コントローラが設けられており、
前記バッファー・タンクは、インレットと、第1ボトム・オイル・アウトレットと、第2ボトム・オイル・アウトレットとを備えており、前記バッファー・タンクは、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからボトム・オイルを受けて、バッファリング作用を提供するためのものであり、
前記コーキング分留タワーは、インレットと、軽油アウトレットと、重油アウトレットとを備えており、前記コーキング分留タワーでは、前記バッファー・タンクからのボトム・オイルを受けて、軽油と重油とに分離し、
当該システムでは、前記コークス・タワーのオイル・ガス・アウトレットが、パイプラインを通して、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのオイル・ガス・インレットと連通しており、
前記コークス・タワーあるいは前記コークス・タワーを前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに接続するオイル・ガス・パイプラインには、前記コークス・タワーの上部において圧力を調整するための圧力コントローラは、設けられておらず、
前記バッファー・タンクのインレットは、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのボトム・オイル・アウトレットと連通しており、前記バッファー・タンクの第1ボトム・オイル・アウトレットは、パイプラインを通して、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーのサイクル・オイル・インレットと連通しており、前記パイプラインは、温度アジャスタを備えており、前記バッファー・タンクの第2ボトム・オイル・アウトレットは、前記コーキング分留タワーのインレットと連通しており、
必要に応じて、前記コーキング分留タワーの重油アウトレットは、前記コークス・タワーのフィードストック・インレットと連通している、
システム。
(態様2)
前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部にある圧力コントローラを使用して、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部で排出される軽質フラクションの流速を調整することによって、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部において圧力を調整することができ、次いで、前記コークス・タワーの上部において、設定した値で圧力を維持することができる、態様1に記載のニードルコークスを製造するためのシステム。
(態様3)
少なくとも2つのコークス・タワーが提供され、いつも、少なくとも1つのコークス・タワーが反応段階にあり、少なくとも1つのコークス・タワーが脱コーキング段階にある、態様1または2に記載のニードルコークスを製造するためのシステム。
(態様4)
前記コークス・タワーに供給される炭化水素を含むフィードストックを加熱するためのファーネスをさらに含んで成る、態様1~3のいずれか1項に記載のニードルコークスを製造するためのシステム。
(態様5)
前記コークス・タワーに供給される炭化水素を含むフィードストックを得るために、炭化水素を含むイニシャル・フィードストックを水素処理するための水素化反応器をさらに含んで成る、態様1~4のいずれか1項に記載のニードルコークスを製造するためのシステム。
(態様6)
態様1~5のいずれか1項に記載のシステムを用いてニードルコークスを製造するための方法であって、当該方法は、以下の工程(1)~(5):
(1)ニードルコークスと、オイル・ガスとを得るために、炭化水素を含む加熱されたフィードストックを前記コークス・タワーで反応させる工程、
(2)オーバーヘッド軽質フラクションと、ボトム・オイルとを得るために、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーにおいて、前記コークス・タワーからのオイル・ガスを分離する工程、
(3)前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルを前記バッファー・タンクに送り、前記バッファー・タンクからボトム・オイルの2つのストリームを取り出す工程、
(4)前記バッファー・タンクからのボトム・オイルの第1ストリームを温度調整後に前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻す工程、
(5)前記バッファー・タンクからのボトム・オイルの第2ストリームを前記コーキング分留タワーに送り、前記コーキング分留タワーにおいて、第2ストリームを軽油と重油とに分離し、必要に応じて、さらなる反応のために、前記重油を前記コークス・タワーに戻す工程
を含み、
当該方法において、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部にある圧力コントローラによって、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部の圧力を調整し、設定した値で前記コークス・タワーの上部における圧力を維持する、
方法。
(態様7)
前記工程(1)の前に、工程(0)をさらに含み、
前記工程(0)は、前記工程(1)で使用する炭化水素を含むフィードストックを得るために、炭化水素を含むイニシャル・フィードストックを水素処理する工程であり、
前記炭化水素を含むイニシャル・フィードストックは、好ましくは、接触分解スラリーオイル、接触分解デカントオイル、エチレンタール、熱分解残渣、コールタール、コールタールピッチまたはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、接触分解スラリーオイルであり、
好ましくは、当該方法は、前記水素処理工程(0)の前に、前記炭化水素を含むイニシャル・フィードストックに固体除去処理を行う工程をさらに含み、前記固体除去処理は、濾過、遠心沈降、減圧蒸留、溶媒抽出またはそれらの任意の組み合わせから選択される、
態様6に記載の方法。
(態様8)
前記水素処理工程(0)の反応条件として、反応温度が約300~480℃、好ましくは約330~400℃であり、反応圧力が約3~20MPa、好ましくは約5~10MPaであり、水素/オイルの容量比が約100~2500、好ましくは約500~1500であり、液空間速度が約0.1~2.0h -1 、好ましくは約0.5~1.0h -1 である、態様7に記載の方法。
(態様9)
前記工程(1)において炭化水素を含む加熱されたフィードストックの温度は、約400~550℃、好ましくは約440~520℃であり、前記炭化水素を含むフィードストックを約1~50℃/h、好ましくは約2~10℃/hの速度で加熱し、前記コークス・タワーの上部の圧力は、約0.01~2.5MPa、好ましくは約0.2~1.5MPaであり、反応時間は、約10~50時間、好ましくは約30~50時間である、態様6~8のいずれか1項に記載の方法。
(態様10)
前記工程(2)のオーバーヘッド軽質フラクションが、不凝結ガスと、留出オイルとを含んで成り、前記留出オイルの95%留出温度を約150~430℃、好ましくは約230~370℃、より好ましくは約230~330℃に制御し、
好ましくは、工程(2)において、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の約10~80%となるように前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位を制御する、
態様6~9のいずれか1項に記載の方法。
(態様11)
前記ボトム・オイルの第1ストリームが、工程(4)における温度調整の後、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの中間部に戻され、
好ましくは、前記ボトム・オイルの第1ストリーム/前記コークス・タワーのフィードの質量比は、約0.001~約1、好ましくは約0.05~約0.4であり;かつ/または
約200~380℃、好ましくは約230~340℃となるように前記ボトム・オイルの第1ストリームが前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度を制御する、
態様6~10のいずれか1項に記載の方法。
(態様12)
前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの液位が、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の60%以上まで上昇し、なおかつ、前記留出オイルの95%留出温度が310℃以上に上昇する場合、前記ボトム・オイルの第1ストリームが前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度を下げて、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度を上げるか、
前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部における液位が前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の60%以上に上昇し、なおかつ、前記留出オイルの95%留出温度が240℃以下に低下する場合、前記ボトム・オイルの第1ストリームが前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度と、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度とを上げるか、
前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部における液位が前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の20%以下まで低下し、なおかつ、前記留出オイルの95%留出温度が310℃以上まで上昇する場合、前記ボトム・オイルの第1ストリームが前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度と、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度とを下げるか、または
前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの下部における液位が前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの全高の20%以下に低下し、なおかつ、前記留出オイルの95%留出温度が240℃以下に低下する場合、前記ボトム・オイルの第1ストリームが前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーに戻される温度を上昇させ、なおかつ、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーからのボトム・オイルの排出速度を下げる、
態様6~11のいずれか1項に記載の方法。
(態様13)
前記工程(3)において、前記バッファー・タンクの全高の約30~70%になるように前記バッファー・タンクの液位を制御し、
好ましくは、前記工程(5)におけるボトム・オイルの第2ストリームの流速は、前記バッファー・タンクの液位に応じて制御され、前記バッファー・タンクの液位が25%よりも低い場合には、前記ボトム・オイルの第2ストリームの流速を下げ、前記液位が60%よりも高い場合には、前記ボトム・オイルの第2ストリームの流速を上げる、
態様6~12のいずれか1項に記載の方法。
(態様14)
約300~400℃、好ましくは約320~360℃になるように、前記工程(5)において前記コーキング分留タワーによって分離される軽油の95%留出温度を制御し、
好ましくは、当該方法は、前記工程(5)においてコーキング分留タワーによって分離される軽油の一部を前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーにリサイクルし、前記プレッシャー・スタビライゼーション・タワーの上部の圧力および前記コークス・タワーの上部の圧力を調節することによって、設定した値で圧力を維持する工程をさらに含む、
態様6~13のいずれか1項に記載の方法。
(態様15)
軽油の95%留出温度と比較して少なくとも約3℃高くなるように、前記工程(5)のコーキング分留タワーによって分離される重油の5%留出温度を制御し、
好ましくは、前記工程(5)で得られる重油は、前記コークス・タワーに直接的にリサイクルされるか、または固体除去処理の後に前記コークス・タワーにリサイクルされる、態様6~14のいずれか1項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6