IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タムラ製作所の特許一覧

特許7584551感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物の光硬化物及び感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物の光硬化物及び感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241108BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20241108BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20241108BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/031
G03F7/032 501
H05K3/28 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023032808
(22)【出願日】2023-03-03
(65)【公開番号】P2023143764
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2022050486
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】木村 健人
(72)【発明者】
【氏名】上杉 尚之
(72)【発明者】
【氏名】田家 史佳
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-102486(JP,A)
【文献】国際公開第2020/130155(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/161756(WO,A1)
【文献】特開2021-051297(JP,A)
【文献】特表2018-501497(JP,A)
【文献】特開2017-111453(JP,A)
【文献】特開2022-031143(JP,A)
【文献】特開平02-004867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)無機フィラーと、(C)光重合開始と、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有し、
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂が、グリシジルメタクリレート変性型クレゾールノボラック構造を有する多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂であり、 前記(B)無機フィラーが、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が、1.3μm以上2.0μm以下の、有機化合物で表面処理されていない無処理タルク、または累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が、2.0μm以上4.0μm以下の、有機化合物で表面処理されている表面処理タルクであり、
前記(C)光重合開始剤が、(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C2)オキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機化合物が、エポキシシラン化合物及び(メタ)アクリルシラン化合物からなる群から選択された少なくとも1種である請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、前記タルクを8質量部以上80質量部以下含有する請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、前記タルクを30質量部以上70質量部以下含有する請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
有機フィラーを含有しない請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、有機フィラーを含有する請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを含有する請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C2)オキシムエステル系光重合開始剤が、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシムを含有する請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
【請求項10】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材料、例えば、リジット基板やフレキシブル基板を有するプリント配線板に形成された導体回路パターンを被覆するための絶縁被覆材料として適した感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物の光硬化物、前記感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の基板上には、銅箔等の導体回路パターンが形成され、導体回路パターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載し、はんだ付けランドを除いた導体回路の部分は、保護膜としての絶縁被膜(ソルダーレジスト膜)で被覆される。特に、フレキシブル基板を有するプリント配線板の場合には、前記保護膜には柔軟性が要求される。また、前記保護膜には、艶消し外観を有することが要求されることがある。
【0003】
そこで、(A)熱硬化性樹脂、(B)酸性官能基と不飽和二重結合を有する樹脂、(C)酸性官能基を有し、かつ不飽和二重結合を有さない樹脂、(D)不飽和二重結合を有する化合物、(E)光重合開始剤、(F)有機フィラーを含有する熱硬化性・感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、(F)有機フィラー、特に、ウレタン結合を有する有機ビーズを用いることで、保護膜に繰り返し折り曲げに耐え得る柔軟性を付与している。また、有機ビーズを用いることで、保護膜に艶消し外観を付与できる。
【0004】
一方で、導体回路パターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載する実装工程では、保護膜を形成したプリント配線板上に電子部品を載置し、リフロー炉による加熱処理にてプリント配線板上に電子部品をはんだ付けする。上記実装工程では、フラックス成分が含まれているはんだが使用されることがある。フラックス成分が含まれているはんだが使用されると、はんだからフラックス成分が滲み出て、滲み出たフラックス成分が、絶縁被膜の表面部や導体回路パターンの開口部から保護膜へ浸透してしまうことがあった。
【0005】
フラックス成分が保護膜へ浸透してしまうと、保護膜がプリント配線板から剥離してしまう現象や膨れの現象が発生し、絶縁被膜に不具合が生じる場合があった。従って、保護膜には、はんだからフラックス成分が滲み出ても、保護膜がプリント配線板から剥離したり膨れたりことを防止できる、耐フラックス性が要求されることがある。
【0006】
しかし、特許文献1の感光性樹脂組成物で形成した保護膜では、有機フィラーは耐熱性が低いために、リフロー炉による加熱処理の際に、はんだからフラックス成分が滲み出ると、フラックス成分が保護膜へ浸透してしまい、保護膜がプリント配線板から剥離したり膨れたりすることがあり、耐フラックス性に改善の余地があった。
【0007】
また、感光性樹脂組成物に無機フィラーを配合することで、保護膜の耐熱性は向上するが、柔軟性が得られず、また、柔軟性を付与するために無機フィラーの粒子径を小さくすると、艶消し外観が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2022―017603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、絶縁信頼性を有しつつ、耐フラックス性、艶消し外観、柔軟性に優れた保護膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)無機フィラーと、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有し、
前記(B)無機フィラーが、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が、0.7μm以上5.5μm以下のタルクであり、
前記(C)光重合開始剤が、(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C2)オキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種を含有する感光性樹脂組成物。
[2]前記(B)無機フィラーが、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が、0.7μm以上5.5μm以下の、有機化合物で表面処理されていない無処理タルクである[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記(B)無機フィラーが、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が、1.3μm以上2.3μm以下の前記無処理タルクである[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記(B)無機フィラーが、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が、0.7μm以上5.5μm以下の、有機化合物で表面処理されている表面処理タルクである[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記(B)無機フィラーが、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が、2.0μm以上4.0μm以下の前記表面処理タルクである[4]に記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記有機化合物が、エポキシシラン化合物及び(メタ)アクリルシラン化合物からなる群から選択された少なくとも1種である[4]または[5]に記載の感光性樹脂組成物。
[7]前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、前記タルクを8質量部以上80質量部以下含有する[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、前記タルクを30質量部以上70質量部以下含有する[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[9]有機フィラーを含有しない[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[10]さらに、有機フィラーを含有する[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[11]前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂骨格を有する[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[12]前記(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを含有する[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[13]前記(C2)オキシムエステル系光重合開始剤が、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシムを含有する[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[14][1]に記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
[15][1]に記載の感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)無機フィラーと、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有し、(B)無機フィラーが、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が、0.7μm以上5.5μm以下のタルクであり、前記(C)光重合開始剤が、(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C2)オキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種を含有することにより、絶縁信頼性を有しつつ、耐フラックス性、艶消し外観、柔軟性に優れた保護膜を形成できる感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B)無機フィラーが、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が、1.3μm以上2.3μm以下の、有機化合物で表面処理されていない無処理タルクであることにより、耐フラックス性、艶消し外観及び柔軟性をバランスよく向上させることができる。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B)無機フィラーが、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が、0.7μm以上5.5μm以下の、有機化合物で表面処理されている表面処理タルクであることにより、絶縁信頼性、艶消し外観及び柔軟性が確実に向上する。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B)無機フィラーが、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が、2.0μm以上4.0μm以下の、有機化合物で表面処理されている表面処理タルクであることにより、絶縁信頼性、艶消し外観及び柔軟性がさらに確実に向上する。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記有機化合物が、エポキシシラン化合物及び(メタ)アクリルシラン化合物からなる群から選択された少なくとも1種であることにより、絶縁信頼性、艶消し外観及び柔軟性がさらに向上する。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、前記タルクを8質量部以上80質量部以下含有することにより、耐フラックス性、艶消し外観、柔軟性をより確実に得ることができる。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、前記タルクを30質量部以上70質量部以下含有することにより、耐フラックス性、艶消し外観及び柔軟性をバランスよく向上させることができる。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、有機フィラーを含有しないことにより、耐フラックス性がより確実に向上する。
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂骨格を有することにより、絶縁信頼性と耐フラックス性がより確実に向上する。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを含有することにより、耐フラックス性のさらなる向上に寄与できる。
【0021】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(C2)オキシムエステル系光重合開始剤が、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシムを含有することにより、耐フラックス性のさらなる向上に寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について、以下に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)無機フィラーと、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有し、前記(B)無機フィラーが、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が、0.7μm以上5.5μm以下のタルクであり、前記(C)光重合開始剤が、(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C2)オキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種を含有する。本発明の感光性樹脂組成物では、(B)無機フィラーとして累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が0.7μm以上5.5μm以下のタルクが配合されている。本発明の感光性樹脂組成物では、(B)無機フィラーは、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が0.7μm以上5.5μm以下のタルクからなり、硫酸バリウム、シリカ、マイカ等、他の無機フィラーを含有していない。本発明の感光性樹脂組成物では、絶縁信頼性を有しつつ、耐フラックス性、艶消し外観、柔軟性に優れた保護膜を形成できる。
【0023】
<(A)カルボキシル基含有感光性樹脂>
(A)成分であるカルボキシル基含有感光性樹脂は、感光性樹脂組成物のベース樹脂である。カルボキシル基含有感光性樹脂の構造は、特に限定されず、例えば、感光性の不飽和二重結合を1個以上と遊離のカルボキシル基とを有する樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂としては、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる構造を有する多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂が挙げられる。
【0024】
多官能エポキシ樹脂
多官能エポキシ樹脂は、カルボキシル基含有感光性樹脂の骨格を形成している。多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されず、例えば、その上限値は、3000g/eqが好ましく、2000g/eqがより好ましく、1000g/eqがさらに好ましく、500g/eqが特に好ましい。一方で、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、100g/eqが好ましく、200g/eqが特に好ましい。多官能エポキシ樹脂の化学構造としては、特に限定されず、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの多官能エポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
これらの多官能エポキシ樹脂のうち、絶縁信頼性と耐フラックス性がより確実に向上する点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、従って、カルボキシル基含有感光性樹脂が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂骨格を有することが好ましい。
【0026】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基が、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基と反応してエステル結合を形成することで、エポキシ樹脂にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸由来の感光性の不飽和二重結合が導入されて、多官能エポキシ樹脂の骨格に感光性が付与される。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(アクリル酸及び/またはメタクリル酸を「(メタ)アクリル酸」ということがある。)、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などを挙げることができる。これらのうち、反応性、入手容易性、取り扱い性の点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法は、特に限定されず、例えば、多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを適当な溶媒(例えば、不活性な有機溶媒)中で加熱する方法が挙げられる。
【0028】
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が、不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の水酸基と反応してエステル結合を形成することで、感光性樹脂に遊離のカルボキシル基が導入される。多塩基酸及び/または多塩基酸無水物は、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用することができる。多塩基酸には、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等のテトラヒドロフタル酸類、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸等のヘキサヒドロフタル酸類、ジグリコール酸等の2官能のカルボン酸、トリメリット酸等の3官能のカルボン酸、ピロメリット酸等の4官能のカルボン酸等が挙げられる。多塩基酸無水物としては、上記した多塩基酸の無水物が挙げられる。これらの多塩基酸及び多塩基酸無水物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物との反応方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物とを適当な溶媒(例えば、不活性な有機溶媒)中で加熱する方法が挙げられる。
【0030】
また、上記多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に代えて、必要に応じて、上記多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基の一部に、さらに、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物(例えば、グリシジル化合物)を反応させた化学構造を有するカルボキシル基含有感光性樹脂を使用してもよい。ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物をさらに反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂では、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の側鎖にラジカル重合性不飽和基がさらに導入されている化学構造を有している。従って、ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物を反応させた化学構造を有するカルボキシル基含有感光性樹脂は、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂よりも、光重合反応性に優れ、感光特性がさらに向上する。
【0031】
ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(アクリレート及び/またはメタクリレートを「(メタ)アクリレート」ということがある。)、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と、ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物と、の反応方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と、ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物と、を適当な溶媒(例えば、不活性な有機溶媒)中で加熱する方法が挙げられる。
【0033】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、特に限定されず、例えば、その下限値は、確実にアルカリ現像性を付与する点から、30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価の上限値は、アルカリ現像液による露光部(光硬化部)の溶解を確実に防止する点から、200mgKOH/gが好ましく、絶縁信頼性をより確実に向上させる点から、150mgKOH/gが特に好ましい。
【0034】
カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量は、特に限定されず、保護膜としての使用条件等により適宜選択可能であり、例えば、その下限値は、光硬化物の強靭性及びタック性の向上に寄与する点から、6000が好ましく、7000がより好ましく、8000が特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量の上限値は、アルカリ現像性の向上に寄与する点から、200000が好ましく、100000がより好ましく、50000が特に好ましい。なお、上記「質量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、常温で測定し、ポリスチレン換算にて算出される質量平均分子量を意味する。
【0035】
カルボキシル基含有感光性樹脂は、上記各成分を用いて上記反応工程にて調製してもよく、上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂を使用してもよい。上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂として、例えば、「リポキシSP-4621」、「リポキシSP-4785」、「リポキシSP-4785L」(以上、昭和電工株式会社)、「ZAR-2000」、「ZFR-1122」、「ZFR-1887」、「FLX-2089」、「ZCR-1569H」、「ZCR-1601H」(以上、日本化薬株式会社)、「サイクロマーP(ACA)Z-250」(株式会社ダイセル)等を挙げることができる。これらのカルボキシル基含有感光性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
<(B)無機フィラー>
(B)成分である無機フィラーが、累積体積百分率が50体積%の粒子径D50(以下、単に「D50」ということがある。)が0.7μm以上5.5μm以下のタルクである。本発明の感光性樹脂組成物では、(B)無機フィラーは、D50が0.7μm以上5.5μm以下の粒子状のタルクからなり、硫酸バリウム、シリカ、マイカ等、他の無機フィラーを含有していない。(B)無機フィラーが、0.7μm以上5.5μm以下のD50であるタルクであることにより、絶縁信頼性を有しつつ、耐フラックス性、艶消し外観、柔軟性に優れた保護膜を形成できる感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0037】
タルクとしては、例えば、有機化合物で表面処理されていない無処理タルク(以下、単に「無処理タルク」ということがある。)、有機化合物で表面処理されている表面処理タルク(以下、単に「表面処理タルク」ということがある。)が挙げられる。
【0038】
D50が0.7μm以上5.5μm以下であれば、無処理タルクであっても、表面処理タルクであっても、タルクの粒子径及び粒度分布は、特に限定されない。無処理タルクの場合、D50の下限値は、耐フラックス性と艶消し外観をさらに向上させる点から、0.9μmが好ましく、1.1μmがより好ましく、1.3μmがさらに好ましく、1.5μmが特に好ましい。一方で、D50の上限値は、柔軟性をさらに向上させる点から、5.0μmが好ましく、4.0μmがより好ましく、2.3μmがさらに好ましく、2.1μmが特に好ましい。上記から、無処理タルクのD50が、上記好ましい上限値と下限値の範囲であることにより、耐フラックス性、艶消し外観及び柔軟性をバランスよく向上させることができる。
【0039】
タルクが、表面処理タルクであることにより、絶縁信頼性、艶消し外観及び柔軟性が確実に向上する。表面処理タルクの場合、D50の下限値は、絶縁信頼性、艶消し外観及び柔軟性をさらに確実に向上させる点から、1.0μmが好ましく、1.5μmがより好ましく、2.0μmが特に好ましい。一方で、D50の上限値は、柔軟性をさらに向上させる点から、5.0μmが好ましく、4.0μmが特に好ましい。
【0040】
タルクの表面処理に用いられている有機化合物としては、例えば、シラン化合物が挙げられる。シラン化合物としては、例えば、エポキシ官能性シラン化合物、(メタ)アクリルシラン化合物、フェニルシラン化合物等が挙げられる。このうち、耐フラックス性がさらに向上する点から、(メタ)アクリルシラン化合物が好ましく、アクリルシラン化合物が特に好ましい。
【0041】
D50が0.7μm以上5.5μm以下であるタルクの配合量は、特に限定されないが、その下限値は(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部(固形分、以下同じ)に対して、耐フラックス性、艶消し外観をより確実に得る点から、8質量部が好ましく、耐フラックス性と艶消し外観をさらに向上させる点から、30質量部がより好ましく、35質量部が特に好ましい。一方で、D50が0.7μm以上5.5μm以下であるタルクの含有量の上限値は、柔軟性をより確実に得る点から、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、80質量部が好ましく、柔軟性をさらに向上させる点から、70質量部がより好ましく、60質量部が特に好ましい。上記から、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、D50が0.7μm以上5.5μm以下であるタルクを8質量部以上80質量部以下の範囲で含有することにより、耐フラックス性、艶消し外観、柔軟性をより確実に得ることができ、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、D50が0.7μm以上5.5μm以下であるタルクを30質量部以上70質量部以下含有することにより、耐フラックス性、艶消し外観及び柔軟性をバランスよく向上させることができる。
【0042】
<(C)光重合開始剤>
(C)成分である光重合開始剤が配合されることで、硬化塗膜の硬化性が向上してフラックス成分の保護膜への浸透を抑制し、耐フラックス性に優れた保護膜を形成できる。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物では、光重合開始剤として、(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C2)オキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種を含有する。
【0044】
(C1)成分であるα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中におけるRは、水素または炭素数1~5個のアルキル基を表す)で表される化合物を挙げることができる。これらのうち、保護膜の硬化性が確実に向上して耐フラックス性のさらなる向上に寄与できる点から、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤として、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノン(式(1)中におけるRがメチル基)が好ましい。これらのα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
(C2)成分であるオキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム、1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-(2-エチルヘキシル)-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)等を挙げることができる。これらのうち、硬化塗膜の硬化性が確実に向上して耐フラックス性のさらなる向上に寄与できる点から、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシムが好ましい。これらのオキシムエステル系光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種の光重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、硬化塗膜の硬化性が確実に向上して優れた耐フラックス性を確実に得ることができる点から、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.50質量部が好ましく、1.0質量部がより好ましく、1.5質量部が特に好ましい。一方で、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種の光重合開始剤の配合量の上限値は、現像性の低下とハレーションを防止する点から、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、8.0質量部が好ましく、6.0質量部がより好ましく、4.0質量部が特に好ましい。
【0047】
<(D)反応性希釈剤>
(D)成分である反応性希釈剤は、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり2つ以上の重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を補強して、感光性樹脂組成物の硬化塗膜に十分な強度、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性などを付与することに寄与する。
【0048】
反応性希釈剤としては、例えば、単官能の(メタ)アクリレート化合物、2官能の(メタ)アクリレート化合物、3官能の(メタ)アクリレート化合物、4官能以上の(メタ)アクリレート化合物等の、単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物のモノマーを挙げることができる。(メタ)アクリレート化合物のモノマーとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されないが、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上70質量部以下が好ましく、15質量部以上40質量部以下が特に好ましい。
【0050】
<(E)エポキシ化合物>
(E)成分であるエポキシ化合物は、感光性樹脂組成物の硬化物の架橋密度を上げて十分な硬度を硬化物に付与するためのものである。エポキシ化合物の架橋密度が向上することで、フラックス成分の保護膜への浸透を抑制して耐フラックス性に優れた保護膜を形成することに寄与する。
【0051】
エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、上記したカルボキシル基含有感光性樹脂の調製に使用できる多官能エポキシ樹脂と同じエポキシ樹脂を挙げることができる。具体的には、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、エポキシ樹脂以外のエポキシ化合物としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。これらのエポキシ化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。エポキシ化合物として、上記したカルボキシル基含有感光性樹脂の調製に使用した多官能エポキシ樹脂の種類と同じ種類のエポキシ樹脂を使用することができる。
【0052】
エポキシ化合物の配合量は、特に限定されないが、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上60質量部以下が好ましく、10質量部以上40質量部以下が特に好ましい。
【0053】
本発明の感光性樹脂組成物では、(B)無機フィラーとして、D50が0.7μm以上5.5μm以下のタルクが配合されていることで、優れた艶消し外観と柔軟性を有する保護膜を形成できることから、有機フィラーを含有しなくてよい。有機フィラーを含有しないことにより、耐フラックス性がより確実に向上する。一方で、必要に応じて、任意成分として、さらに有機フィラーを含有してもよい。有機フィラーを含有することで、有機フィラーを含有しない場合と比較して、若干、耐フラックス性は低下するが、柔軟性が向上する。
【0054】
有機フィラーには、例えば、ウレタン樹脂(イソシアネートとポリオールの重合体)、アクリル樹脂、ポリエチレン、スチレン・ブタジエンゴム等のスチレンとブタジエンとの共重合体及びシリコーンゴム等のシリコーン樹脂などの重合体を挙げることができる。これらの有機フィラーは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機フィラーの形状は、特に限定されないが、粒子状が好ましい。
【0055】
粒子状の有機フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、その下限値は、艶消し外観を向上させる点から、0.1μmが好ましく、0.5μmが特に好ましい。一方で、粒子状の有機フィラーの平均粒子径の上限値は、優れた柔軟性を付与する点から、20μmが好ましく、10μmが特に好ましい。
【0056】
有機フィラーの配合量の上限値は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、耐フラックス性を得る点から、20質量部が好ましく、15質量部が特に好ましい。一方で、有機フィラーを配合する場合における有機フィラーの配合量の下限値は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、柔軟性をさらに向上させる点から、1.0質量部が好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
【0057】
本発明の感光性樹脂組成物では、上記した(A)~(E)成分の他に、必要に応じて、任意成分として、さらに、(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C2)オキシムエステル系光重合開始剤以外の他の光重合開始剤を配合してもよい。他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン系;ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン系;2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトン等を挙げることができる。これらの他の光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、さらに、他の任意成分、例えば、着色剤、添加剤、消泡剤、難燃剤、非反応性希釈剤等を配合することができる。
【0059】
着色剤としては、顔料、色素等、特に限定されず、また、白色着色剤、黒色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、橙色着色剤、赤色着色剤等、所望の色彩に応じて、いずれの着色剤も使用可能である。また、着色剤を含有することで、保護膜に隠蔽力を付与することができる。着色剤には、例えば、白色着色剤である二酸化チタン、黒色着色剤であるアセチレンブラック、カーボンブラック等の無機系着色剤や、緑色着色剤であるフタロシアニングリーン及び青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルー等のフタロシアニン系、橙色着色剤であるクロモフタルオレンジ等のジケトピロロピロール系等の有機系着色剤を挙げることができる。これらの着色剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
添加剤としては、例えば、メルカプトベンゾオキサザール及びその誘導体、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、三フッ化ホウ素-アミンコンプレックス、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)、ポリアミン等の潜在性硬化剤、脂肪族ジメチルウレア等の熱硬化触媒等が挙げられる。
【0061】
消泡剤としては、例えば、シリコーン系ポリマー、炭化水素系ポリマー、アクリル系ポリマー等が挙げられる。
【0062】
難燃剤は、感光性樹脂組成物の硬化塗膜に難燃性を付与するためのものである。難燃剤としては、リン系難燃剤を挙げることができ、有機リン酸塩系の難燃剤が好ましい。リン系難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3-ジブロモプロピル-2,3-クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(以下HCA)、HCAとアクリル酸エステルの付加反応生成物、HCAとエポキシ樹脂の付加反応生成物、HCAとハイドロキノンの付加反応生成物等のHCA変性型化合物、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイ、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。
【0063】
非反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の、粘度、塗工性及び乾燥性を調整するための成分である。非反応性希釈剤としては、例えば、感光性樹脂組成物に配合されている各成分に対して不活性である有機溶剤を挙げることができる。上記有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールアセテート、エチレンジグリコールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、水酸化アルミニウム等の難燃剤としての体質顔料を配合してもよい。
【0065】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、常温(例えば、25℃)にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ニーダー等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス等の攪拌、混合手段により、配合した成分を混練または混合して製造することができる。また、混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練、予備混合を実施してもよい。
【0066】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例について説明する。ここでは、本発明の感光性樹脂組成物をプリント配線板に塗工して、絶縁保護膜(例えば、ソルダーレジスト膜等)を形成する方法を説明する。
【0067】
上記のようにして得られた感光性樹脂組成物を、例えば、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板(リジット基板またはフレキシブル基板等を有するプリント配線板)上に、スクリーン印刷、スプレーコータ、バーコータ、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、ロールコータ、グラビアコータ等、公知の塗工方法を用いて所望の厚さに塗布する。次に、塗布した感光性樹脂組成物上に、直描装置にて、直接、活性エネルギー線(例えば、レーザー光)を所望のパターンに応じて照射する露光処理を行って、該パターン状に塗膜を光硬化させる。露光量としては、例えば、50mJ/cm~2000mJ/cmが挙げられる。次に、希アルカリ水溶液で非露光領域を除去することにより塗膜を現像する。上記現像方法には、例えば、スプレー法、シャワー法等が用いられ、希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。次に、130~170℃の熱風循環式の乾燥機等で20~80分間ポストキュア(熱硬化処理)を行うことにより、現像した塗膜を熱硬化させて、目的とするパターンを有する光硬化膜(光硬化物)をプリント配線板上に形成させることができる。
【0068】
また、上記した、直描装置にて、直接、活性エネルギー線を所望のパターンに応じて照射する露光処理に代えて、感光性樹脂組成物の塗布後、60~100℃程度の温度で15~60分間程度加熱する予備乾燥を行いタックフリーとした塗膜上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルム(フォトマスク)を密着させ、その上から活性エネルギー線(例えば、波長300~400nmの範囲の紫外線)を照射させて塗膜を光硬化させる露光処理を行ってもよい。
【実施例
【0069】
実施例1~12、比較例1~5
下記表1に示す各成分を下記表1に示す割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合させて、実施例1~12、比較例1~5にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。その後、調製した感光性樹脂組成物を以下のように基板に塗工して試験体を作製した。下記表1に示す各成分の配合量は、特に断りのない限り質量部を示す。なお、下記表1中の配合量の空欄部は、配合なしを意味する。
【0070】
下記表1中の各成分についての詳細は、以下の通りである。
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
・リポキシSP-4785:グリシジルメタクリレート変性型クレゾールノボラック構造を有する多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂、固形分(樹脂分)65質量%、昭和電工株式会社
・ZCR-1601H:ビスフェノールノボラック構造を有する多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂、固形分(樹脂分)65質量%、日本化薬株式会社
・ZFR-1887:多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂、固形分(樹脂分)65質量%、日本化薬株式会社
【0071】
(B)無機フィラー
・FG-20:無処理タルク、D50は2.0μm、日本タルク株式会社
・FG-15:無処理タルク、D50は1.5μm、日本タルク株式会社
・SG-95:無処理タルク、D50は2.1μm、日本タルク株式会社
・SG-2000:無処理タルク、D50は0.9μm、日本タルク株式会社
・FH-105:無処理タルク、D50は5.0μm、富士タルク工業株式会社
・FG-20のエポキシシラン3%表面処理品:エポキシ官能性シラン化合物が3質量%となるように表面処理された表面処理タルク、D50は2.5μm、日本タルク株式会社
・FG-20のアクリルシラン5%表面処理品:アクリルシラン化合物が5質量%となるように表面処理された表面処理タルク、D50は3.0μm、日本タルク株式会社
【0072】
(C)光重合開始剤
・Omnirad379:IGM Resins B.V.社
【0073】
(D)反応性希釈剤
・KAYARAD DPCA-20:日本化薬株式会社
【0074】
(E)エポキシ化合物
・YX-4000:ビフェニル型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社
・N-695:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社
【0075】
着色剤
・カーボンブラック:東洋インキ製造株式会社
添加剤
・DICY-7:三菱化学株式会社
・U-CAT 3513N:サンアプロ株式会社
・メラミン:日産化学工業株式会社
消泡剤
・AC-2300C:信越化学工業株式会社
難燃剤
・エクソリット OP-935:トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、クラリアントジャパン株式会社
・水酸化アルミニウム
非反応性希釈剤
・EDGAC:三洋化成品株式会社
【0076】
タルク以外の無機フィラー
・B-30:硫酸バリウム、D50は0.1~0.2μm、堺化学工業株式会社
・SO-C2:シリカ、D50は0.5μm、株式会社アドマテックス
・ミニュシル5ミクロン:D50は5μm、エア・ブラウン株式会社
有機フィラー
・ウレタンビーズ:D50は3.5μm、大日精化株式会社
【0077】
試験体作製工程
以下のようにして、上記のように調製した実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を基板上に塗工して、基板上に硬化塗膜を有する試験体を作製した。
基板:2層FCCL(フレキシブル銅張積層板)(Cu箔:厚さ12.5μm、ポリイ
ミドフィルム厚さ:25μm)
表面処理:ソフトエッチング処理
塗工方法:スクリーン印刷
予備乾燥:オーブンにて、80℃、20分
DRY膜厚(20±3μm)
露光:塗膜上に100mJ/cm、露光装置:オルボテック社製の直描(DI)露光装置「Nuvogo1000R」(光源:レーザー)
ポストキュア(熱硬化処理):オーブンにて150℃、60分
【0078】
評価項目
(1)耐フラックス性
Cu箔上の硬化塗膜の開口のあるパターンにポリイミドテープを積層(厚み150μm)した枠体を設置し、枠体の内側にロジン系フラックスを充填し、フタをして、プレヒート温度150℃~180℃、80秒間、ピーク温度240℃、40秒間の条件にてリフロー炉(製品名:TNP-538EM、株式会社タムラ製作所製)を用いてリフローを行った。リフロー後にフタを取り外し、硬化塗膜の状態を目視にて観察し、以下のように評価した。△評価以上を合格と判定した。
◎:硬化塗膜に剥離や膨れが無く、硬化塗膜表面にも異常が無い。
○:硬化塗膜に剥離や膨れは無いが、硬化塗膜表面に染み込み跡が有る。
△:硬化塗膜に若干の剥離や膨れが有る。
×:硬化塗膜に大きな剥離や膨れが有る。
【0079】
(2)グロス値(艶消し外観)
試験体の硬化塗膜表面について、光沢計VG-2000(日本電色工業株式会社)を用い、60度鏡面反射率(%)を測定した。グロス値30%以下を艶消し外観ありとして合格と判定した。
【0080】
(3)柔軟性
硬化塗膜を形成した試験体をマンドレル試験により折り曲げを行い、その際の硬化塗膜におけるクラック発生状況を目視及び×200の光学顕微鏡で観察し、クラックが発生したかどうかを評価した。△評価以上を合格と判定した。
◎:φ2mmで10回折り曲げてもクラック発生無し。
○:φ2mmで1回折り曲げてもクラック発生無し、10回折り曲げ後にはクラック発生有り。
△:φ2mmで1回折り曲げ時にクラック発生有り、φ3mmで1回折り曲げ時にクラック発生無し。
×:φ3mmで1回折り曲げ時にクラック発生有り。
【0081】
(4)絶縁信頼性
上記試験体作製工程に準じ、2層FCCL基板に代えて、くし形電極(ライン幅/スペース=30μm/30μm)を用いて試験体を作製し、HAST装置を用いて、110℃、85%R.H.で24時間加湿した後の絶縁抵抗を、DC32Vを印加して測定した。判定基準は以下のとおりであり、△評価以上を合格と判定した。
◎:絶縁抵抗値が1.0×10Ω以上である。
○:絶縁抵抗値が1.0×10Ω以上1.0×10Ω未満である。
△:絶縁抵抗値が1.0×10Ω以上1.0×10Ω未満である。
×:絶縁抵抗値が1.0×10Ω未満である。
【0082】
評価結果を下記表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
上記表1に示すように、無機フィラーが、D50が0.7μm以上5.5μm以下のタルクである実施例1~12では、絶縁信頼性を有しつつ、耐フラックス性、艶消し外観、柔軟性に優れた保護膜を形成できた。
【0085】
特に、無機フィラーが、D50が1.3μm以上2.3μm以下のタルクである実施例1、4、5は、無機フィラーが、D50が0.9μm、5.0μmのタルクである実施例6、7と比較して、耐フラックス性、艶消し外観及び柔軟性をバランスよく向上させることができた。また、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、D50が0.7μm以上5.5μm以下のタルクを約50質量部配合した実施例1は、D50が0.7μm以上5.5μm以下のタルクを約20質量部配合した実施例2と比較して、耐フラックス性と艶消し外観がさらに向上した。また、カルボキシル基含有感光性樹脂がクレゾールノボラック型エポキシ樹脂骨格を有する実施例1は、カルボキシル基含有感光性樹脂がクレゾールノボラック型エポキシ樹脂骨格ではない実施例8、9と比較して、絶縁信頼性と耐フラックス性がより向上した。
【0086】
有機フィラーとしてウレタンビーズをさらに配合した実施例3では、実施例1と比較して耐フラックス性は若干低下したものの、柔軟性がさらに向上した。また、表面処理タルクを使用した実施例10、11では、絶縁信頼性、艶消し外観及び柔軟性が確実に向上し、特に、アクリルシラン化合物で表面処理された表面処理タルクである実施例11では、優れた耐フラックス性が得られた。また、表面処理タルクを使用し、さらに、有機フィラーとしてウレタンビーズを配合した実施例12では、耐フラックス性、艶消し外観及び絶縁信頼性を有しつつ、柔軟性が向上した。
【0087】
一方で、無機フィラーが、D50が0.1~0.2μmの硫酸バリウムである比較例1では、柔軟性と艶消し外観が得られなかった。無機フィラーが、D50が0.5μmのシリカである比較例2では、艶消し外観が得られなかった。無機フィラーが、D50が5μmであってもタルクではなくシリカである比較例3では、柔軟性と絶縁信頼性が得られなかった。D50が3.5μmであっても無機フィラーではなく有機フィラーであるウレタンビーズを配合した比較例4では、耐フラックス性と絶縁信頼性が得られなかった。無機フィラーも有機フィラーも配合しなかった比較例5では、艶消し外観が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の感光性樹脂組成物は、絶縁信頼性、耐フラックス性、艶消し外観、柔軟性に優れた保護膜を形成できるので、フレキシブル基板を用いたプリント配線板に設ける絶縁保護膜の分野で利用価値が高い。