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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0352 20060101AFI20241108BHJP
   H01L 31/0747 20120101ALI20241108BHJP
【FI】
H01L31/04 340
H01L31/06 455
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023081304
(22)【出願日】2023-05-17
(65)【公開番号】P2023103391
(43)【公開日】2023-07-26
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】202211337828.7
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523183389
【氏名又は名称】トリナ・ソーラー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TRINA SOLAR CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 2 Trina Road, Trina PV Park, Xinbei District, Changzhou, Jiangsu 213031, China
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホンウェイ・リー
(72)【発明者】
【氏名】グワンタオ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シュエリン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ダ-ミン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】イーフォン・チェン
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111799348(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113964229(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1601759(CN,A)
【文献】特表2015-514314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0037227(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第115207137(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02ー31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1極性又は第2極性を有するシリコン基板であって、対向する第1側と第2側を含み、前記第1極性は電子と空孔のうちの一方を伝送するためのもので、前記第2極性は電子と空孔のうちの他方を伝送するためのものであるシリコン基板と、
前記シリコン基板の第1側に設けられた第1不動態化構造であって、前記第1不動態化構造におけるシリコン基板から最も離隔した部分が第1極性を有し、所在位置が第1電極ゾーンである第1不動態化構造と、
前記シリコン基板の第1側及び前記第1不動態化構造のうち前記シリコン基板から離隔した側に設けられ、かつ少なくとも第2電極ゾーンに位置する第2不動態化構造であって、前記第2不動態化構造におけるシリコン基板から最も離隔した部分が第2極性を有する第2不動態化構造と、
前記第2不動態化構造のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、かつ第1電極ゾーンに位置する第1電極と、前記第2不動態化構造のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、かつ第2電極ゾーンに位置する第2電極と、を備え、
前記第1不動態化構造は、
トンネル不動態化サブ層と、
前記トンネル不動態化サブ層のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、第1極性を有する第1不動態化サブ層と、を備えることを特徴とする
太陽電池。
【請求項2】
前記シリコン基板は第1極性を有し、
前記第2不動態化構造はシリコン基板の第1側を完全に覆うことを特徴とする
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記トンネル不動態化サブ層の材料は、シリカ、アルミナ、窒化酸化シリコン、炭化シリコンのうちの少なくとも1つを含み、
前記第1不動態化サブ層の材料は、ドープされた多結晶シリコン、ドープされた炭化シリコンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする
請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記トンネル不動態化サブ層の厚さは1nm~3nmであり、
前記第1不動態化サブ層の厚さは10nm~200nmであることを特徴とする
請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第2不動態化構造は、
誘電体不動態化サブ層と、
前記誘電体不動態化サブ層のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、第2極性を有する第2不動態化サブ層と、を備えることを特徴とする
請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記誘電体不動態化サブ層の材料は、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、シリカのうちの少なくとも1つを含み、
前記第2不動態化サブ層の材料は、ドープされた多結晶シリコン、ドープされたアモルファスシリコン、ドープされた炭化シリコンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする
請求項5に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記誘電体不動態化サブ層の厚さは1nm~15nmであり、
前記第2不動態化サブ層の厚さは1nm~20nmであることを特徴とする
請求項5に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第2不動態化構造は、電子伝送層又は空孔伝送層であることを特徴とする
請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第2不動態化構造の厚さは10nm~200nmであることを特徴とする
請求項8に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第1電極はベースであり、
前記第2電極はエミッタであることを特徴とする
請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記第1電極ゾーンは間隔をあけた複数のストリップゾーンを含み、前記第2電極ゾーンは間隔をあけた複数のストリップゾーンを含み、前記第1電極ゾーンのストリップゾーンと第2電極ゾーンのストリップゾーンは交互に配置されることを特徴とする
請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項12】
太陽電池の製造方法であって、前記太陽電池は請求項1又は2に記載の太陽電池であり、前記製造方法は、
パターニング技術により、前記シリコン基板の第1側の第1電極ゾーンに第1不動態化構造を形成することと、
前記シリコン基板の第1側の、少なくとも前記第2電極ゾーンに第2不動態化構造を形成することと、ここにおいて、プロセス温度が前記第1不動態化構造のプロセス温度よりも低く、
パターニング技術により、前記シリコン基板の第1側の第1電極ゾーンに第1電極を形成し、第2電極ゾーンに第2電極を形成することと、を含むことを特徴とする
太陽電池の製造方法。
【請求項13】
前記シリコン基板は第1極性を有し、前記第2不動態化構造はシリコン基板の第1側を完全に覆い、
前記シリコン基板の第1側の、少なくとも前記第2電極ゾーンに第2不動態化構造を形成するステップは、前記シリコン基板の第1側に、完全に覆う第2不動態化構造を堆積することを含むことを特徴とする
請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第1不動態化構造のプロセス温度は300℃~650℃であり、
前記第2不動態化構造のプロセス温度は150℃~200℃であることを特徴とする
請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は太陽電池技術分野に属し、具体的に太陽電池及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘテロ接合バックコンタクト(HBC,Heterojunction Back Contact)型太陽電池では、シリコン基板裏面(入光側から離れた側)に真性アモルファスシリコン(a-Si)層が設けられ、ベースとエミッタはいずれも真性アモルファスシリコン層のシリコン基板から離隔した側に設けられており、真性アモルファスシリコン層表面における異なる電極に対応する箇所には、異なる極性のドーピングがそれぞれ行われる。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、新たな構造の太陽電池及びその製造方法を提供する。
【0004】
第1の態様において、本発明実施例は、
第1極性又は第2極性を有するシリコン基板であって、対向する第1側と第2側を含み、前記第1極性は電子と空孔のうちの一方を伝送するためのもので、前記第2極性は電子と空孔のうちの他方を伝送するためのものであるシリコン基板と、
前記シリコン基板の第1側に設けられた第1不動態化構造であって、前記第1不動態化構造におけるシリコン基板から最も離隔した部分が第1極性を有し、所在位置が第1電極ゾーンである第1不動態化構造と、
前記第1不動態化構造のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、かつ少なくとも第2電極ゾーンに位置する第2不動態化構造であって、前記第2不動態化構造におけるシリコン基板から最も離隔した部分が第2極性を有し、プロセス温度が前記第1不動態化構造のプロセス温度よりも低い第2不動態化構造と、
前記第2不動態化構造のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、かつ第1電極ゾーンに位置する第1電極と、前記第2不動態化構造のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、かつ第2電極ゾーンに位置する第2電極と、を備える太陽電池を提供する。
【0005】
任意で、前記シリコン基板は第1極性を有し、
前記第2不動態化構造はシリコン基板の第2側を完全に覆う。
【0006】
任意で、前記第1不動態化構造は、
トンネル不動態化サブ層と、
前記トンネル不動態化サブ層のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、第1極性を有する第1不動態化サブ層と、を備える。
【0007】
任意で、前記トンネル不動態化サブ層の材料は、シリカ、アルミナ、窒化酸化シリコン、炭化シリコンのうちの少なくとも1つを含み、
前記第1不動態化サブ層の材料は、ドープされた多結晶シリコン、ドープされた炭化シリコンのうちの少なくとも1つを含む。
【0008】
任意で、前記トンネル不動態化サブ層の厚さは1nm~3nmであり、
前記第1不動態化サブ層の厚さは10nm~200nmである。
【0009】
任意で、前記第2不動態化構造は、
誘電体不動態化サブ層と、
前記誘電体不動態化サブ層のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、第2極性を有する第2不動態化サブ層と、を備える。
【0010】
任意で、前記誘電体不動態化サブ層の材料は、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、シリカのうちの少なくとも1つを含み、
前記第2不動態化サブ層の材料は、ドープされた多結晶シリコン、ドープされたアモルファスシリコン、ドープされた炭化シリコンのうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
任意で、前記誘電体不動態化サブ層の厚さは1nm~15nmであり、
前記第2不動態化サブ層の厚さは1nm~20nmである。
【0012】
任意で、前記第2不動態化構造は、電子伝送層又は空孔伝送層である。
【0013】
任意で、前記第2不動態化構造の厚さは20nm~200nmである。
【0014】
任意で、前記第1電極はベースであり、
前記第2電極はエミッタである。
【0015】
任意で、前記第1電極ゾーンは間隔をあけた複数のストリップゾーンを含み、前記第2電極ゾーンは間隔をあけた複数のストリップゾーンを含み、前記第1電極ゾーンのストリップゾーンと第2電極ゾーンのストリップゾーンは交互に配置される。
【0016】
任意で、前記第1不動態化構造のプロセス温度は300℃~650℃であり、
前記第2不動態化構造のプロセス温度は150℃~200℃である。
【0017】
第2の態様において、本発明実施例は、太陽電池の製造方法であって、前記太陽電池は本発明実施例の何れかの太陽電池であり、前記製造方法は、
パターニング技術により、前記シリコン基板の第1側の第1電極ゾーンに第1不動態化構造を形成することと、
前記シリコン基板の第1側の、少なくとも前記第2電極ゾーンに第2不動態化構造を形成することと、
パターニング技術により、前記シリコン基板の第1側の第1電極ゾーンに第1電極を形成し、第2電極ゾーンに第2電極を形成することと、を含む太陽電池の製造方法を提供する。
【0018】
任意で、前記太陽電池における第2不動態化構造はシリコン基板の第2側を完全に覆い、
前記シリコン基板の第1側の、少なくとも前記第2電極ゾーンに第2不動態化構造を形成する前記ステップは、前記シリコン基板の第1側に、完全に覆う第2不動態化構造を堆積することを含む。
【0019】
ここから分かるように、本発明実施例において、二種類の電極はいずれもシリコン基板裏面に設けられ、かつシリコン基板における二種類の電極に対応する箇所には、極性の異なる不動態化層(第1不動態化構造と第2不動態化構造)がそれぞれ設けられているため、本発明実施例では新たな様態の「雑化」したHBC太陽電池を提供している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、いくつかの関連技術におけるHBC太陽電池の構造模式図である。
図2図2は本発明実施例の太陽電池の断面構造模式図である。
図3図3は本発明実施例の別の太陽電池の断面構造模式図である。
図4図4は本発明実施例の別の太陽電池の断面構造模式図である。
図5図5は本発明実施例の太陽電池における電極ゾーンの分布の模式図である。
図6図6は本発明実施例の太陽電池の製造方法のフローチャートである。
図7図7は本発明実施例の太陽電池の製造方法における、シリコン基板の断面構造模式図である。
図8図8は本発明実施例の太陽電池の製造方法における、反射防止層形成後の断面構造模式図である。
図9図9は本発明実施例の太陽電池の製造方法における、第1不動態化構造がパターン化された後の断面構造模式図である。
図10図10は本発明実施例の太陽電池の製造方法における、第2不動態化構造がパターン化された後の断面構造模式図である。(符号の説明)1…第1不動態化構造、11…トンネル不動態化サブ層、12…第1不動態化サブ層、 2…第2不動態化構造、21…誘電体不動態化サブ層、22…第2不動態化サブ層、31…ポジティブ誘電体不動態化層、32…反射防止層、51…N型ドープゾーン、52…P型ドープゾーン、59…真性アモルファスシリコン層、81…第1電極、82…第2電極、89…透明導電性酸化物層、9…シリコン基板、91…第1電極ゾーン、92…第2電極ゾーン。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の技術案を当業者がより良く理解できるように、図面と具体的な実施形態を組み合わせながら本発明について以下に詳細に説明する。
【0022】
ここで説明する具体的な実施例及び図面は、本開示を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではないと理解されるであろう。
【0023】
本開示の様々な実施例及び実施例における様々な特徴は、矛盾しなければ、互いに組み合わせることができると理解されるであろう。
【0024】
説明を容易にするために、本発明の図面では、本発明実施例に関連する部分のみを示し、本発明実施例に関係のない部分は図面に示さないと理解されるであろう。
【0025】
本発明実施例において、「第1極性と第2極性」は二種類の半導体の類型を指し、すなわち第1極性と第2極性は重複せず、それぞれP型(空孔を伝送する)とN型(電子を伝送する)であり、例えば、第1極性をP型として第2極性をN型とすることができ、第1極性をN型として第2極性をP型とすることもできる。
【0026】
本発明実施例において、「AはBのCから離隔した側に位置する」ということは、AとBはいずれもCの同じ側に形成され、かつAはBの後に形成されるということであるため、AとBを同時に有する位置において、AはBを覆うということを指すが、これは、すべての位置にあるAは必ずBを覆うということを意味するのではなく、すべての位置にあるBがみなAに覆われるということも意味していない。
【0027】
本発明実施例において、「構造のプロセス温度」は、この構造を形成するプロセス過程で達する必要のある最高温度を指す。
【0028】
本発明実施例において、「パターニング技術」は、特定の図形を有する構造を形成するプロセスを指し、具体的にフォトリソグラフィ工法、レーザー工法、ウェットフィルムエッチング工法などが挙げられる。
【0029】
図1を参照すると、ヘテロ接合バックコンタクト(HBC,Heterojunction Back Contact)型太陽電池は、裏面(第1側)に真性アモルファスシリコン層59が設けられたシリコン基板9を備え、真性アモルファスシリコン層59の表面に、空孔と電子をそれぞれ伝送する、交互に配置されたN型ドープゾーン51とP型ドープゾーン52とがそれぞれ形成され、二種類のドープゾーンのシリコン基板9から離れた側には、異なる類型の電極、すなわち「くし」状に分布する第1電極81(例えばベース)と第2電極82(例えばエミッタ)がそれぞれ設けられる。
【0030】
ここで、シリコン基板9の入光側(第2側)には、ポジティブ誘電体不動態化層31、反射防止層32などの構造が順に設けられてもよい。
【0031】
ここから分かるように、HBC太陽電池において、PN接合は裏面に位置し、ベースとエミッタも裏面に設けられているため、その入射側には電極がなく、電極による遮光がなく、これによりその光損失は小さく、短絡電流密度が高く、効率が高く、性能も良い。
【0032】
第1の態様では、図2~5を参照すると、本発明実施例は、
第1極性又は第2極性を有するシリコン基板9であって、対向する第1側と第2側を含み、第1極性は電子と空孔のうちの一方を伝送するためのもので、第2極性は電子と空孔のうちの他方を伝送するためのものであるシリコン基板9と、
シリコン基板9の第1側に設けられた第1不動態化構造1であって、第1不動態化構造1におけるシリコン基板9から最も離隔した部分が第1極性を有し、所在位置が第1電極ゾーン91である第1不動態化構造1と、
第1不動態化構造1のうちシリコン基板9から離隔した側に設けられ、かつ少なくとも第2電極ゾーン92に位置する第2不動態化構造2であって、第2不動態化構造2におけるシリコン基板9から最も離隔した部分が第2極性を有し、プロセス温度が第1不動態化構造1のプロセス温度よりも低い第2不動態化構造2と、
第2不動態化構造2のうちシリコン基板9から離隔した側に設けられ、かつ第1電極ゾーン91に位置する第1電極81と、第2不動態化構造2のうちシリコン基板9から離隔した側に設けられ、かつ第2電極ゾーン92に位置する第2電極82と、を備える太陽電池を提供する。
【0033】
図2を参照すると、本発明実施例の太陽電池はシリコン基板9を備え、シリコン基板9は一定の極性(第1極性又は第2極性)を有し、つまりP型ドープ又はN型ドープのシリコン系半導体である。
【0034】
図2を参照すると、シリコン基板9は対向する第1側と第2側とを有し、第2側は光が入射する「入射側」であってよく、第1側は入光側と対向する「裏面」であってよい。
【0035】
図2、5を参照すると、シリコン基板9の第1側の表面の一部のゾーンは第1電極81を設けるための第1電極ゾーン91であり、残りの部分は第2電極82を設けるための第2電極ゾーン92である。
【0036】
上記の第1電極ゾーン91と第2電極ゾーン92は異なるゾーンであり、つまり、両者は重複しなくてもよい。さらに、第1電極ゾーン91と第2電極ゾーン92はシリコン基板9の第1側「全体に広がる」ものであってよいと理解すべきである。
【0037】
第1電極ゾーン91と第2電極ゾーン92はシリコン基板9の第1側全面に広がっていなくてもよいと理解すべきである。
【0038】
任意で、第1電極ゾーン91は間隔をあけた複数のストリップゾーンを含み、第2電極ゾーン92は間隔をあけた複数のストリップゾーンを含み、第1電極ゾーン91のストリップゾーンと第2電極ゾーン92のストリップゾーンは交互に配置される。
【0039】
本発明実施例の一方式として、図5を参照すると、第1電極ゾーン91は互いに平行でかつ間隔を開けたストリップを複数含んでよく、第2電極ゾーン92も互いに平行で間隔を開けたストリップを複数含んでよく、二種類の電極ゾーンのストリップも互いに平行で、かつストリップの幅方向に沿って交互に配置される(無論、二種類の電極ゾーンのストリップは図4に示すように互いに接触してもよく、一定の間隔を開けてもよい)。これにより、第1電極ゾーン91と第2電極ゾーン92にそれぞれ位置する第1電極81と第2電極82は「くし」状に配置される。
【0040】
図2を参照すると、シリコン基板9の第1側には、第1電極ゾーン91に位置する第1不動態化構造1(不動態化層)が設けられ、すなわち第1不動態化構造1は「パターン化された」ものであり、かつその所在位置は第1電極ゾーン91である(故に、第1不動態化構造1は第1電極ゾーン91全体に広がりかつ第1電極ゾーン91を超えない)。また、この第1不動態化構造1は少なくとも、シリコン基板9から最も離隔した表層に一定の極性(第1極性)を有し、この極性はシリコン基板9の極性と同一又は逆である。
【0041】
図2を参照すると、第1不動態化構造1のシリコン基板9から離隔した側には、少なくとも第2電極ゾーン92に位置する第2不動態化構造2がさらに設けられ(故に、第2不動態化構造2は第2電極ゾーン92全体に広がるものであるが、第2電極ゾーン92を超えてよく、例えば、第2不動態化構造2は同時に第1電極ゾーン91のすべて又は一部の位置に分布してもよい)、また、この第2不動態化構造2は少なくとも、シリコン基板9から最も離隔した表層において、第1不動態化構造1と「逆」の極性(第2極性)を有する。例えば、第1不動態化構造1をP型とすると、第2不動態化構造2はN型であり、第1不動態化構造1をN型とすると、第2不動態化構造2はP型である。同時に、第1不動態化構造1と第2不動態化構造2においては、必ず一方の極性がシリコン基板9と同じであり、他方の極性はシリコン基板9とは逆である。
【0042】
ここで、第1不動態化構造1と第2不動態化構造2は各自のプロセス温度を比較することで区別され、つまり第2不動態化構造2のプロセス温度は第1不動態化構造1のプロセス温度よりも低い。したがって、第1不動態化構造1はプロセス温度の高い高温不動態化構造(高温不動態化層)であり、第2不動態化構造2はプロセス温度の低い低温不動態化構造(低温不動態化層)である。
【0043】
太陽電池製品の構造から、その中の第2不動態化構造2と第1不動態化構造1の形成順序を特定することができ、その理由は、第1不動態化構造1が先に形成されれば、第2不動態化構造2を形成する後続過程における加熱は、形成済みの第1不動態化構造1に影響を及ぼさないのに対して、第2不動態化構造2が先に形成されれば、第1不動態化構造1を形成する後続過程で加熱する際に、形成済みの第2不動態化構造2が破壊されることになるからであると理解すべきである。
【0044】
任意で、第1不動態化構造1のプロセス温度は300℃~650℃であり、第2不動態化構造2のプロセス温度は150℃~200℃である。
【0045】
本発明実施例の一方式として、第1不動態化構造1の形成過程における最高温度(プロセス温度)は300~650℃であってよく、さらには400~600℃であってもよい。これに応じて、第2不動態化構造2の形成過程における最高温度(プロセス温度)は150~200℃であってよく、さらには170~190℃であってもよい。
【0046】
図2を参照すると、第2不動態化構造2のシリコン基板9から離れた側には、第1電極ゾーン91を「超えない」第1電極81が設けられ、すなわち第1電極81は第1不動態化構造1によってシリコン基板9とつながるものであり、第2不動態化構造2のシリコン基板9から離れた側には、第2電極ゾーン92を「超えない」第2電極82がさらに設けられ、すなわち第2電極82は第2不動態化構造2によってシリコン基板9と導通するものである。
【0047】
ここで、第1電極81と第2電極82のうちの一方はエミッタで、他方はベースである。
【0048】
異なる種類の電極を互いに接触させてはならないと理解すべきである。
【0049】
ここから分かるように、本発明実施例において、二種類の電極はいずれもシリコン基板9裏面に設けられ、かつシリコン基板9における二種類の電極に対応する箇所には極性の異なる不動態化層(第1不動態化構造1と第2不動態化構造2)がそれぞれ設けられているため、本発明実施例では新たな様態の「雑化」したHBC太陽電池を提供している。
【0050】
図3、4を参照すると、任意で、シリコン基板9は第1極性を有し、
第2不動態化構造2はシリコン基板の第2側を完全に覆う。
【0051】
本発明実施例の具体的な一方式として、シリコン基板9は第1不動態化構造1と同じ極性(第1極性)を有するものであってよく、これに応じて、第2不動態化構造2の極性(第2極性)はシリコン基板9と第1不動態化構造1の極性と逆である。また、第2不動態化構造2はパターン化されていない全面積(Full Area)構造であり、つまり、第2不動態化構造2は第1電極ゾーン91と第2電極ゾーン92に同時に位置するため、第1電極ゾーン91では第1不動態化構造1を覆い、第2電極ゾーン92ではシリコン基板9を直接覆う。
【0052】
これにより、第2不動態化構造2は、シリコン基板9の裏面においてトンネル接合(Tunneling Junction)を形成することができる。
【0053】
ここで、上記方式によれば、第1電極81と、これに対応する第1不動態化構造1との間には、第1不動態化構造1の極性と異なる第2不動態化構造2がさらに設けられる。しかしながら、研究を経て、第2不動態化構造2は厚さが薄くかつ導電性が劣ることから、キャリア(空孔又は電子)はトンネリングという方式で第2不動態化構造2を通過することができるため、第2不動態化構造2の存在は、第1電極81とシリコン基板9との間のキャリアの伝送に影響を及ぼさないことが明らかになっている。
【0054】
したがって、上記方式によれば、第2不動態化構造2は、パターニング技術を行わずに、直接堆積して形成すればよい。
【0055】
図1を参照すると、関連技術において、上記のN型ドープゾーン51とP型ドープゾーン52を形成するためには、2回のパターニング技術、例えば、2回のフォトリソグラフィ工法(マスク-露光現像-エッチング-フィルム除去)、又は2回のレーザー工法(マスク+レーザー溝加工+エッチング+マスク除去)、又は2回のウェットフィルムエッチング工法(耐食層+エッチング液印刷+エッチング+耐食層除去)等をそれぞれ行う必要があるため、その製造プロセスは複雑である。また、パターニング技術は、マスク、レーザーなどを使用する必要があり、マスクは製造後に除去する(例えば溶解による除去)必要があり、この除去過程は必ず形成済の構造に一定の影響を与える。レーザーは直接照射して膜層の一部を除去するもので、熱拡散などの要因により、どんなに精確な工法であっても、レーザーが対象膜層を完全に除去すると同時に他の層に如何なるダメージも与えないことを保証するのは不可能である。
【0056】
したがって、本発明実施例の方式は、HBC太陽電池の性能の強みを維持しながら、その製造プロセスを簡素化し、処理コストを低減することができると同時に、マスク、レーザーの使用を減らしているため、プロセス過程における他の構造へのダメージと影響をさらに低減し、太陽電池の性能をさらに向上させている。
【0057】
任意で、第1電極81はベースであり、
第2電極はエミッタである。
本発明実施例の一方式として、第2不動態化構造2を全面積の形態とした場合、パターン化された(故に面積が小さい)第1不動態化構造1に対応する第1電極81をベース(裏面電界)とし、全面積(面積が大きい)の第2不動態化構造2に対応する第2電極82をエミッタとしてよい。
【0058】
任意で、第1不動態化構造1は、
トンネル不動態化サブ層11と、
トンネル不動態化サブ層11のうちシリコン基板9から離隔した側に設けられ、第1極性を有する第1不動態化サブ層12と、を備える。
【0059】
図3を参照すると、本発明実施例の一方式として、第1不動態化構造1は具体的に2つのサブ層を含んでよく、つまりシリコン基板9に接触するトンネル不動態化サブ層11と、トンネル不動態化サブ層11に設けられた第1不動態化サブ層12である。ここで、少なくとも第1不動態化サブ層12は、第2不動態化構造2と逆の第1極性を有し、例えば、P型又はN型にドープされる。
【0060】
上記のトンネル不動態化サブ層11と第1不動態化サブ層12はいずれもパターン化されたものであり、かつパターンは同一であると理解すべきである。
【0061】
任意で、トンネル不動態化サブ層11の材料は、シリカ、アルミナ、窒化酸化シリコン、炭化シリコンのうちの少なくとも1つを含み、
第1不動態化サブ層12の材料は、ドープされた多結晶シリコン、ドープされた炭化シリコンのうちの少なくとも1つを含む。
【0062】
本発明実施例の一方式として、第1不動態化構造1において、トンネル不動態化サブ層11の材料は、シリカ(SiOx)、アルミナ(AlOx)、窒化酸化シリコン(SiNOx)、炭化シリコン(SiCx)などの誘電体材料を選択することが可能である。ここで、トンネル不動態化サブ層11はドープされていないため、極性を有さない。
【0063】
第1不動態化構造1における第1不動態化サブ層12はベースに対応するため、シリコン基板9と同一の第1極性を有し、具体的に、P型又はN型にドープされた多結晶シリコン、炭化シリコンなどの材料であってよい。
【0064】
例えば、第1極性をP型とすると、第1不動態化サブ層12は、ホウ(B)素などのIII族元素を用いてドープすることができ、第1極性をN型とすると、第1不動態化サブ層12は、リン(P)素などのV族元素を用いてドープすることができる。
【0065】
ここで、第1不動態化サブ層12に、ドープされた多結晶シリコン、炭化シリコンなどが使用されることによって、光の吸収をさらに低減するとともに、より高い濃度の有効ドーピングを実現し、電極の接触抵抗を低減し、セルフィルファクターを向上させることができる。
【0066】
任意で、トンネル不動態化サブ層11の厚さは1nm~3nmであり、
第1不動態化サブ層12の厚さは10nm~200nmである。
【0067】
本発明実施例の一方式として、第1不動態化構造1におけるトンネル不動態化サブ層11の厚さ(シリコン基板9の第1側に垂直な方向での寸法)は1~3nmであってよく、さらに1.5~2nmであってもよく、第1不動態化サブ層12の厚さは10~200nmであってよく、さらに80~120nmであってもよい。
【0068】
任意で、第2不動態化構造2は、
誘電体不動態化サブ層21と、
誘電体不動態化サブ層21のうちシリコン基板9から離隔した側に設けられ、第2極性を有する第2不動態化サブ層22と、を備える。
【0069】
図3を参照すると、本発明実施例の一方式として、第2不動態化構造2は2つのサブ層を含んでもよく、つまりシリコン基板9に接近する誘電体不動態化サブ層21と、誘電体不動態化サブ層21上に設けられた第2不動態化サブ層22である。
【0070】
上記の誘電体不動態化サブ層21と第2不動態化サブ層22はいずれも全面積の構造であると理解すべきである。
【0071】
任意で、誘電体不動態化サブ層21の材料は、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、シリカのうちの少なくとも1つを含み、
第2不動態化サブ層22の材料は、ドープされた多結晶シリコン、ドープされたアモルファスシリコン、ドープされた炭化シリコンのうちの少なくとも1つを含む。
【0072】
本発明実施例の一方式として、誘電体不動態化サブ層21は、アモルファスシリコン、多結晶シリコン(ploy-Si。具体的には、微結晶シリコン、ナノ結晶シリコンであってよい)などの材料を用いることができ、これは1つの層であってもよく、材料の異なる複数種類の層による積層構造であってもよい。
【0073】
誘電体不動態化サブ層21は非極性、すなわち真性ノンドーピングであってもよい。
【0074】
第2不動態化サブ層22はエミッタに対応するため、シリコン基板9と逆の極性を有し、例えば、その材料はドープされた多結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化シリコンなどであってよく、ドープ元素はIII族元素(ホウ素など)又はV族元素(リンなど)などを用いることができる。
【0075】
任意で、誘電体不動態化サブ層21の厚さは1nm~15nmであり、
第2不動態化サブ層22の厚さは1nm~20nmである。
【0076】
本発明実施例の一方式として、第2不動態化構造2において、誘電体不動態化サブ層21の厚さは1~15nmであってよく、さらには5~8nmであってもよく、第2不動態化サブ層22の厚さは1~20nmであってよく、さらには5~15nmであってもよい。
【0077】
任意で、第2不動態化構造2は、電子伝送層又は空孔伝送層である。
【0078】
任意で、第2不動態化構造の厚さは20nm~200nmである。
【0079】
図4を参照すると、本発明実施例の他の方式として、電子伝送層(ETL,Electron Transport Layer)又は空孔伝送層(HTL,Hole Transport Layer)を第2不動態化構造2として直接採用することもできる。
【0080】
電子伝送層又は空孔伝送層自体は電子又は空孔を伝送するためのものであるため、フリードーパント(Free-Dopant)であるが、それ自体は自ずと極性を有し、すなわち電子伝送層はN型で、空孔伝送層はP型である。
【0081】
したがって、第2不動態化構造2も電子伝送層又は空孔伝送層を直接採用することができ、第2不動態化構造2の極性がシリコン基板9の極性と逆であることが保証されればよい。
【0082】
ここで、上記第2不動態化構造2(電子伝送層又は空孔伝送層)の厚さは20~200nmであってよく、さらには50~150nmであってよい。
【0083】
ここで、電子伝送層の材料は、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化カドミウム(CdO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、酸化錫(SnO2)、フッ化リチウム(LiF)、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)などから選択してよい。
【0084】
空孔伝送層の材料は、酸化モリブデン(MO3)、酸化バナジウム(V2O5)、酸化クロム(CrO3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(Cu2O)、酸化コバルト(CoO)、酸化レニウム(ReO3)などから選択してよい。
【0085】
以上の内容は本発明実施例の太陽電池の構造の一部についての示例的な説明にすぎず、本発明実施例の太陽電池はさらに他の特性を満たすこともできると理解すべきである。
【0086】
例えば、シリコン基板9は単結晶シリコン、多結晶シリコンなどの形態であってよく、所望の極性を生じるようにドープされる。
【0087】
さらに、例えば、光線の吸収を増やすために、シリコン基板9の第2側(入光側)にスエード(光トラッピング表面)を形成することができる。
【0088】
さらに、例えば、図3、4を参照すると、シリコン基板9の第2側に完全なポジティブ誘電体不動態化層31を形成することができ、これは、具体的に第2不動態化構造2の第2不動態化サブ層22と同じ材料を採用することができる。
【0089】
さらに、例えば、図3、4を参照すると、シリコン基板9の第2側に(例えばポジティブ誘電体不動態化層31外側に)、光線の射出を低減するための反射防止層32を設けてもよく、この反射防止層32は、同時に保護層(AR膜)でもあり、シリカ、窒化ケイ素、窒化酸化シリコンなどの材料における一種類以上を採用することができ、かつ1つの層或いは、屈折率の異なる複数の層による積層構造であってよい。
【0090】
さらに、例えば、図3、4を参照すると、電極と第2不動態化構造2との間には、接触抵抗を改善するための透明導電性酸化物(TCO,Transparent Conductive Oxide)層89(例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、酸化インジウムセリウム(ICO)、酸化インジウムモリブデン(IMO)、酸化インジウムハフニウム(IHO)、ジルコニウム・チタン・カルシウムがドープされた酸化インジウム(SCOT)などの材料の単一の層、又は材料の異なる複数の層による積層構造)をさらに設けることができる。
【0091】
ここで、図3、4を参照すると、透明導電性酸化物層89が異なる電極を導通しないように、異なる電極ゾーンにおける透明導電性酸化物層89の間には隙間を有してよい。
【0092】
さらに、例えば、図3、4を参照すると、第1電極81と第2電極82は、同じ層に設けられたものであってよく(同時に製造され、かつ材料も同一である)、銀、銅、アルミニウム、錫コーティング銅、銀コーティング銅などの金属材料、或いはニッケル、銅、アルミニウム、錫などの複数種類の材料による複合電極を採用することができる。
【0093】
第2の態様では、図2~10を参照すると、本発明の実施例は太陽電池の製造方法を提供し、そのうちの太陽電池は本発明実施例の何れかの太陽電池である。
【0094】
本発明実施例の製造方法は、上記の太陽電池を製造するためのものである。
【0095】
図6を参照すると、本発明実施例の太陽電池の製造方法は、
パターニング技術により、シリコン基板9の第1側の第1電極ゾーン91に第1不動態化構造1を形成するS101と、
シリコン基板9の第1側の、少なくともの第2電極ゾーン92に第2不動態化構造2を形成するS102と、
パターニング技術により、シリコン基板9の第1側の第1電極ゾーン91に第1電極81を形成し、第2電極ゾーン92に第2電極82を形成するS103と、を含む。
【0096】
上記の太陽電池を製造するために、パターニング技術により、第1電極ゾーン91に位置する第1不動態化構造1をシリコン基板9の第1側に形成し、その後、第2不動態化構造2を引き続き形成してから、第1電極ゾーン91、第2電極ゾーン92にそれぞれ位置する第1電極81と第2電極82を形成することができる。
【0097】
任意で、太陽電池における第2不動態化構造2はシリコン基板9の第2側を完全に覆う。シリコン基板9の第1側の、少なくともの第2電極ゾーン92に第2不動態化構造2を形成すること(S102)は、
シリコン基板9の第1側に、完全に覆う第2不動態化構造2を堆積するS1021を含む。
【0098】
上記第2不動態化構造2が全面積構造である場合、パターニング技術を行わずに、直接堆積して完全な第2不動態化構造2を形成することができる。
【0099】
以上の内容は本発明実施例の太陽電池の製造方法についての示例的な説明に過ぎず、本発明実施例の太陽電池の製造方法はさらに他の特性を満たすこともできると理解すべきである。
【0100】
例えば、シリコン基板9は、チョクラルスキー法(CZ)、フローティングゾーン法(FZ)、鋳造法などの方法によって形成することができる。
【0101】
さらに、例えば、他のステップを実行する前に、シリコン基板9を洗浄、研磨することもできる。
【0102】
さらに、例えば、シリコン基板9の第2側(入光側)をスエードとする場合、ウェット化学スエード製作、ドライ反応性イオンエッチング(RIE,Reactive Ion Etch)スエード製作などによってスエードを製作してもよい。
【0103】
さらに、例えば、プラズマエンハンスト化学気相成長法(PECVD,Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)又は熱線化学気相成長法(HWCVD,Hot Wire Chemical Vapor Deposition)などにより、シリコン基板9の第2側に上記ポジティブ誘電体不動態化層31を形成することができる。
【0104】
さらに、例えば、PECVDなどによりシリコン基板9の第2側に上記反射防止層32(保護膜)を形成することができる。
【0105】
さらに、例えば、上記第1不動態化構造1を製造する際に、完全な第1不動態化構造1を先に形成してから、完全な第1不動態化構造1をパターン化し、第2電極ゾーン92における第1不動態化構造1を除去することができ、この完全な第1不動態化構造1は具体的に以下のいずれかの方法で形成することができる。
【0106】
(1)低圧化学気相成長法(LPCVD,Low Pressure Chemical Vapor Deposition)を用いてトンネル不動態化サブ層11と真性アモルファスシリコン層を順に形成し、その後、高温拡散(例えば、リン拡散又はホウ素拡散)によって真性アモルファスシリコン層に対してドープを行い、第1不動態化サブ層12を形成する。
【0107】
ここで、拡散環境に酸素を含むため、第1不動態化サブ層12表面には薄いPSG(リン含有シリカ)又はBSG(ホウ素含有シリカ)構造が同期して形成され、PSG(又はBSG)構造は後続プロセスにおけるマスクとして使用することができる。
【0108】
(2)LPCVD法によりトンネル不動態化サブ層11とin situドーピングアモルファスシリコン層を順に形成し、その後、高温アニール又はエキシマレーザアニール(ELA,Excimer Laser Annealing)を用いてin situドーピングアモルファスシリコン層における多結晶シリコンを多結晶に結晶化し、その中のドーピング元素を活性化し、in situドーピングアモルファスシリコン層を第1不動態化サブ層12として形成する。
【0109】
ここで、高温アニールプロセスでは、適量の酸素(O2)を同期して導入することで、後続プロセスのマスクとして、第1不動態化サブ層12表面にPSG(又はBSG)構造を同期して形成してもよい。
【0110】
(3)PECVD法によりトンネル不動態化サブ層11とin situドーピングアモルファスシリコン層、窒化酸化シリコン層を順に形成し、その後、高温アニール又はELAを用いてin situドーピングアモルファスシリコン層におけるアモルファスシリコンを多結晶に結晶化し、その中のドーピング元素を活性化し、in situドーピングアモルファスシリコン層を第1不動態化サブ層12として形成する。
【0111】
ここで、この窒化酸化シリコン層は第1不動態化構造1に該当せず、後続プロセスにおけるマスクとして使用される。
【0112】
(4)PECVD法によりトンネル不動態化サブ層11とin situドーピングアモルファスシリコン層を順に形成し、その後、高温アニール又はELAを用いてin situドーピングアモルファスシリコン層におけるアモルファスシリコンを多結晶に結晶化し、その中のドーピング元素を活性化し、in situドーピングアモルファスシリコン層を第1不動態化サブ層12として形成する。
【0113】
ここで、このような方法はマスクが形成されない。
【0114】
さらに、例えば、完全な第1不動態化構造1を形成した後、以下のいずれかの方法でこれをパターン化することができる。
【0115】
方法1:第1不動態化構造1を上記の方法(1)~(3)のいずれかによって形成する場合、PSG(又はBSG)構造、窒化酸化シリコン層などのマスクを有するので、レーザーによる膜開きにより第2電極ゾーン92のマスクを除去し、その後、ウェットエッチングにより第2電極ゾーン92の第1不動態化構造1を除去することができ、第1電極ゾーン91の第1不動態化構造1はマスクによって保護されているのでエッチングされることはなく、これにより第1不動態化構造1のパターン化を完了し、その後、第1電極ゾーン91のマスクを除去する。
【0116】
方法2:第1不動態化構造1を上記の方法(4)によって形成し、マスクを含まない場合、インクジェット印刷により第1電極ゾーン91においてマスクとして印刷用インク(Ink)を形成してから、ウェットエッチングにより第2電極ゾーン92の第1不動態化構造1を除去し、その後、第1電極ゾーン91のインクマスクを除去する。
【0117】
ここから分かるように、上記の方法(1)と(2)によって完全な第1不動態化構造1を形成する場合、これは、第1不動態化構造1を製造すると同時にマスク(第1不動態化構造1をパターン化するためのマスク)が形成されたことに相当し、これによりマスクを個別に製造するステップが必要であり、製造技術は簡単で、マスクを製造する(例えば、インクを形成する)プロセスをさらに一回減らすことができる。
【0118】
ここから分かるように、上記の方法(1)によって完全な第1不動態化構造1を形成する場合、第1不動態化サブ層12を形成する過程において、その中の拡散元素はシリコン基板9の第2側に、リン又はホウ素を吸収する役割を果たすリン又はホウ素の拡散層を同期して形成することができるが、この拡散層は、後続で第1不動態化構造1をパターン化する(ウェットエッチング)と同時に自然に除去されるので、プロセスを増やす必要がなく、シリコン基板9の第2側の構造を変えることもない。
【0119】
さらに、例えば、第2電極ゾーン92のシリコン基板9表面の性質に対する要求に応じて、第1不動態化構造1をパターン化する際に、さらに、シリコン基板9の第2電極ゾーン92の表面を研磨面、マイクロスエード、スエードなどとして形成させるために、相応するウェットエッチング工法を選択することができる。
【0120】
さらに、例えば、第1不動態化構造1をパターン化する際に、さらに、シリコン基板9の第2電極ゾーン92の表面をスエードとして形成させる必要があれば、シリコン基板9の第2側のスエードも同期して形成することができる。
【0121】
さらに、例えば、上記第2不動態化構造2は物理気相成長法(PVD,Physical Vapor Deposition)、急速プラズマ成長法(RPD,Rapid Plasma Deposition)などによって形成することができる。
【0122】
さらに、例えば、第2不動態化構造2の第2不動態化サブ層22をドーピングする(例えばホウ素ドーピング)場合、酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)などの元素を用いてドーピングを同時に行って、そのバンドギャップのさらなる拡大、ドーピング品質の向上、光吸収の低減を図ることができる。
【0123】
また、さらに、PVD、RPDなどの工法によりシリコン基板9の第1側に上記透明導電性酸化物層89を形成して、マスクとウェットエッチング、レーザーエッチング、腐食剤エッチングなどの工法により第1電極ゾーン91と第2電極ゾーン92の透明導電性酸化物層89を分離することができる。
【0124】
また、さらに、第2不動態化サブ層22がアモルファスシリコン材料である場合、トンネル接合のトンネル抵抗を低減するために、レーザーエッチングにより第1電極ゾーン91の透明導電性酸化物層89を完全に除去するとともに、レーザーのエネルギーにより第1電極ゾーン91表面の第2不動態化サブ層22のアモルファスシリコンを結晶化することができる。
【0125】
また、さらに、上記の第1電極81と第2電極82は同層に設けてよく、スクリーン印刷、電気メッキ、PVD(例えば、蒸着)などの方法により同時に形成することが可能である。
【0126】
例1:
本発明実施例の太陽電池を製造する方法は具体的に以下のことを含む。
【0127】
A101:N型(第1極性)シリコンウェハー(シリコン基板9)を洗浄して研磨し、図7に示すような構造を得る。
【0128】
A102:シリコンウェハーの裏面(第1側)にLPCVDを用いて、シリカトンネル層(トンネル不動態化サブ層11)と真性アモルファスシリコン層を順に形成し、その後の高温でのリン拡散により、真性アモルファスシリコン層にN型(第1極性)ドーピングを形成させ、N型アモルファスシリコン層(第1不動態化サブ層12)を得、かつ表面にマスクとなるPSGを同期して生長させる。
【0129】
ここで、シリカトンネル層の厚さは1.5nmであり、N型アモルファスシリコン層の厚さは120nmである。
【0130】
A103:シリコンウェハーの入光側(第2側)にウェット化学スエード製作によってスエードを形成する。
【0131】
A104:シリコンウェハーの入光側にPECVDによりアモルファスシリコンの不動態化層(ポジティブ誘電体不動態化層31)を形成する。
【0132】
A105:シリコンウェハーの入光側にPECVDにより、シリカと窒化ケイ素を積層したAR膜(反射防止層32)を形成し、図8に示すような構造を得る。
【0133】
A106:レーザーによる膜開きにより第2電極ゾーン92のアモルファスシリコン層表面のPSGマスクを除去する。
【0134】
A107:ウェットエッチングにより第2電極ゾーン92のN型アモルファスシリコン層とシリカトンネル層を除去するとともに、シリコンウェハー裏面第2電極ゾーン92の表面にマイクロスエードを形成し、パターン化されたN型アモルファスシリコン層とシリカトンネル層(第1不動態化構造1)を得、図9に示すような構造を得る。
【0135】
その後、ウェットエッチングによりPSGマスクを除去する。
【0136】
A108:シリコンウェハーの裏面にRPDにより、全面積の真性アモルファスシリコン(誘電体不動態化サブ層21)とホウ素がドープされたP型(第2極性)アモルファスシリコン(第2不動態化サブ層22)、すなわち第2不動態化構造2を順に形成し、図10に示すような構造を得る。
【0137】
ここで、真性アモルファスシリコン層の厚さは10nmであってよく、P型アモルファスシリコン層の厚さは12nmであってよい。
【0138】
A109:シリコンウェハーの裏面に、PVDによってITO層(透明導電性酸化物層89)を形成する。
【0139】
A110:レーザーエッチングにより第1電極ゾーン91と第2電極ゾーン92の接合部に位置するITO層を除去し、すなわち第1電極81と第2電極82にそれぞれ対応するITO層を分離する。
【0140】
A111:シリコンウェハーの裏面にスクリーン印刷により第1電極ゾーン91と第2電極ゾーン92にそれぞれ位置する銀電極(第1電極81と第2電極82)を形成し、図3に示すような構造を得る。
【0141】
本発明実施例の太陽電池に対し性能テストを行ったところ、その電池光電変換効率は25.5%であることが測定された。
【0142】
ここから分かるように、本発明実施例の太陽電池は優れた性能を有する。
【0143】
例2:
本発明本発明実施例の太陽電池を製造する方法は示例1に類似する。
【0144】
相違点は、本示例2において、ステップA102の後にステップA106、A107を直接実行するという点である。
【0145】
ここで、ステップA107におけるパターン化において、シリコンウェハー裏面の第2電極ゾーン92にスエードを形成し、同時にシリコンウェハー入光側の表面にもスエードを形成するため、シリコンウェハー入光側に対して特別にスエード製作を行う必要はなく、つまりステップA103を実行する必要がなく、ステップA104、A105、A108、A109、A110、A111を引き続順に実行することができる。
【0146】
本発明実施例の太陽電池に対し性能テストを行ったところ、その電池光電変換効率は25.5%であることが測定された。
【0147】
ここから分かるように、本発明実施例の太陽電池は優れた性能を有し、かつその製造プロセスはより簡易化される。
【0148】
例3:
本発明実施例の太陽電池を製造する方法は示例1に類似する。
【0149】
相違点は、本例3のステップA108では、第2不動態化構造2としてHTL(第1極性を有する)を直接形成することで、図4に示すような太陽電池構造を最終的に得るという点である。
【0150】
ここで、HTLの具体的な材料は五酸化バナジウム(V2O5)であり、厚さは120nmである。
【0151】
本発明実施例の太陽電池に対し性能テストを行ったところ、その電池光電変換効率は25.6%であることが測定された。
【0152】
ここから分かるように、本発明実施例の太陽電池は優れた性能を有する。
【0153】
上記の実施形態は、本開示の原理を説明するための例示的な実施形態に過ぎないが、本開示はこれに限定されないと理解されるであろう。本開示の精神及び実質から逸脱することなく、当業者は様々な変形及び改良を行うことができ、これらの変形及び改良も本開示の請求範囲に含まれるとみなされる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 第1極性又は第2極性を有するシリコン基板であって、対向する第1側と第2側を含み、前記第1極性は電子と空孔のうちの一方を伝送するためのもので、前記第2極性は電子と空孔のうちの他方を伝送するためのものであるシリコン基板と、
前記シリコン基板の第1側に設けられた第1不動態化構造であって、前記第1不動態化構造におけるシリコン基板から最も離隔した部分が第1極性を有し、所在位置が第1電極ゾーンである第1不動態化構造と、
前記第1不動態化構造のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、かつ少なくとも第2電極ゾーンに位置する第2不動態化構造であって、前記第2不動態化構造におけるシリコン基板から最も離隔した部分が第2極性を有し、プロセス温度が前記第1不動態化構造のプロセス温度よりも低い第2不動態化構造と、
前記第2不動態化構造のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、かつ第1電極ゾーンに位置する第1電極と、前記第2不動態化構造のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、かつ第2電極ゾーンに位置する第2電極と、を備えることを特徴とする
太陽電池。
[2] 前記シリコン基板は第1極性を有し、
前記第2不動態化構造はシリコン基板の第2側を完全に覆うことを特徴とする
[1]に記載の太陽電池。
[3] 前記第1不動態化構造は、
トンネル不動態化サブ層と、
前記トンネル不動態化サブ層のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、第1極性を有する第1不動態化サブ層と、を備えることを特徴とする
[1]又は[2]に記載の太陽電池。
[4] 前記トンネル不動態化サブ層の材料は、シリカ、アルミナ、窒化酸化シリコン、炭化シリコンのうちの少なくとも1つを含み、
前記第1不動態化サブ層の材料は、ドープされた多結晶シリコン、ドープされた炭化シリコンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする
[3]に記載の太陽電池。
[5] 前記トンネル不動態化サブ層の厚さは1nm~3nmであり、
前記第1不動態化サブ層の厚さは10nm~200nmであることを特徴とする
[3]に記載の太陽電池。
[6] 前記第2不動態化構造は、
誘電体不動態化サブ層と、
前記誘電体不動態化サブ層のうちシリコン基板から離隔した側に設けられ、第2極性を有する第2不動態化サブ層と、を備えることを特徴とする
[1]又は[2]に記載の太陽電池。
[7] 前記誘電体不動態化サブ層の材料は、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、シリカのうちの少なくとも1つを含み、
前記第2不動態化サブ層の材料は、ドープされた多結晶シリコン、ドープされたアモルファスシリコン、ドープされた炭化シリコンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする
[6]に記載の太陽電池。
[8] 前記誘電体不動態化サブ層の厚さは1nm~15nmであり、
前記第2不動態化サブ層の厚さは1nm~20nmであることを特徴とする
[6]に記載の太陽電池。
[9] 前記第2不動態化構造は、電子伝送層又は空孔伝送層であることを特徴とする
[1]又は[2]に記載の太陽電池。
[10] 前記第2不動態化構造の厚さは10nm~200nmであることを特徴とする
[9]に記載の太陽電池。
[11] 前記第1電極はベースであり、
前記第2電極はエミッタであることを特徴とする
[1]又は[2]に記載の太陽電池。
[12] 前記第1電極ゾーンは間隔をあけた複数のストリップゾーンを含み、前記第2電極ゾーンは間隔をあけた複数のストリップゾーンを含み、前記第1電極ゾーンのストリップゾーンと第2電極ゾーンのストリップゾーンは交互に配置されることを特徴とする
[1]又は[2]に記載の太陽電池。
[13] 前記第1不動態化構造のプロセス温度は300℃~650℃であり、
前記第2不動態化構造のプロセス温度は150℃~200℃であることを特徴とする
[1]又は[2]に記載の太陽電池。
[14] 太陽電池の製造方法であって、前記太陽電池は[1]~[13]の何れか1項の太陽電池であり、前記製造方法は、
パターニング技術により、前記シリコン基板の第1側の第1電極ゾーンに第1不動態化構造を形成することと、
前記シリコン基板の第1側の、少なくとも前記第2電極ゾーンに第2不動態化構造を形成することと、
パターニング技術により、前記シリコン基板の第1側の第1電極ゾーンに第1電極を形成し、第2電極ゾーンに第2電極を形成することと、を含むことを特徴とする
太陽電池の製造方法。
[15] 前記シリコン基板は第1極性を有し、前記第2不動態化構造はシリコン基板の第2側を完全に覆い、
前記シリコン基板の第1側の、少なくとも前記第2電極ゾーンに第2不動態化構造を形成するステップは、前記シリコン基板の第1側に、完全に覆う第2不動態化構造を堆積することを含むことを特徴とする
[14]に記載の製造方法。
図1
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