(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】工作機械及び工作機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20241108BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20241108BHJP
B21D 55/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G05B19/18 X
B30B15/00 C
B30B15/00 D
B21D55/00
(21)【出願番号】P 2023082812
(22)【出願日】2023-05-19
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】天野 兼秀
(72)【発明者】
【氏名】成田 真庸
(72)【発明者】
【氏名】田中 健翔
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-064262(JP,A)
【文献】国際公開第2007/010795(WO,A1)
【文献】特開平08-309575(JP,A)
【文献】特開2018-024009(JP,A)
【文献】特開昭62-252690(JP,A)
【文献】特開2015-208775(JP,A)
【文献】特開2007-222897(JP,A)
【文献】特開2023-059150(JP,A)
【文献】特開2019-168948(JP,A)
【文献】特開平07-266271(JP,A)
【文献】特開昭57-155606(JP,A)
【文献】特開2022-027460(JP,A)
【文献】特開2004-301952(JP,A)
【文献】特開2022-027477(JP,A)
【文献】特開2019-102046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18
B30B 15/00
B21D 55/00
B23Q 11/00、06
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを曲げ加工するプレスブレーキ本体と、
前記プレスブレーキ本体を制御するNC装置と、
前記プレスブレーキ本体によって前記ワークを曲げ加工するために作業者によって操作される操作部を有し、前記作業者による前記操作部の操作を、前記NC装置または前記NC装置に接続された制御部が受け付ける操作パネルと、
を備え、
前記NC装置または前記制御部は、
前記操作部を操作する前記作業者を特定し、
特定した前記作業者が、前記プレスブレーキ本体を安全に操作するために予め受講しておくべき安全教育を受講しているか否かを示す安全教育受講履歴を確認し、
確認した前記安全教育受講履歴により前記作業者が前記安全教育を受講していれば、前記作業者に、前記プレスブレーキ本体を操作する前に、テストピースを用いて前記プレスブレーキ本体に異常がないかを確認する安全確認作業の実行を指示し、
前記作業者が前記安全確認作業を実行して前記プレスブレーキ本体に異常がないことが確認されれば、前記作業者が前記操作部を操作することによって実行される前記プレスブレーキ本体による前記ワークの曲げ加工動作を許可し、
前記作業者が前記安全確認作業を実行しなければ、前記プレスブレーキ本体による前記ワークの曲げ加工動作を不許可とする
プレスブレーキである工作機械。
【請求項2】
前記操作パネルは前記作業者を撮影するカメラをさらに有し、
前記NC装置または前記制御部は、前記カメラが撮影した前記作業者の顔と、1またはそれ以上の作業者の顔画像が記憶されている作業者情報ファイルの各顔画像とを照合することにより、前記作業者を特定する
請求項
1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記操作パネルは表示部をさらに有し、
前記NC装置または前記制御部は、
前記安全教育のための動画である安全教育動画を前記表示部に表示し、
前記安全教育動画を再生している時間内の、前記作業者の視線が前記表示部に向いている時間、前記作業者の顔を検出している時間、
前記安全教育動画の全再生時間内において前記操作部の操作を指示する全ての指示に対する、前記作業者が前記操作部を
実際に操作した回数のいずれかに基づいて、前記作業者が前記表示部に表示された前記安全教育動画を視聴したか否かを判定し、
前記作業者が前記安全教育動画を視聴したと判定すれば、前記安全教育受講履歴に、前記安全教育を受講済みであることを記録する
請求項
1に記載の工作機械。
【請求項4】
前記操作パネルは表示部をさらに有し、
前記NC装置または前記制御部は、
前記安全確認作業の実行を指示する安全確認作業指示動画を前記表示部に表示し、
前記安全確認作業指示動画を再生している時間内の前記作業者の視線が前記表示部に向いている時間または前記作業者の顔を検出している時間に基づいて、前記作業者が前記表示部に表示された前記安全確認作業指示動画を視聴したか否かを判定し、
前記作業者が前記安全確認作業指示動画を視聴したと判定し、かつ前記安全確認作業が行われて前記プレスブレーキ本体に異常がないことが確認されれば、前記プレスブレーキ本体による前記ワークの曲げ工動作を許可し、
前記作業者が前記安全確認作業指示動画を視聴したと判定しなければ、前記プレスブレーキ本体による前記ワークの曲げ加工動作を不許可とする
請求項1に記載の工作機械。
【請求項5】
プレスブレーキである工作機械が備える制御装置が、
前記プレスブレーキがワークを曲げ加工するために操作される操作部を操作する作業者を特定し、
特定した前記作業者が、前記プレスブレーキを安全に操作するために予め受講しておくべき安全教育を受講しているか否かを示す安全教育受講履歴を確認し、
確認した前記安全教育受講履歴により前記作業者が前記安全教育を受講していれば、前記作業者に、前記プレスブレーキを操作する前に、テストピースを用いて前記プレスブレーキに異常がないかを確認する安全確認作業の実行を指示し、
前記作業者が前記安全確認作業を実行して前記プレスブレーキに異常がないことが確認されれば、前記作業者が前記操作部を操作することによって実行される前記プレスブレーキによる前記ワークの曲げ加工動作を許可し、
前記作業者が前記安全確認作業を実行しなければ、前記プレスブレーキによる前記ワークの曲げ加工動作を不許可とする
プレスブレーキである工作機械の制御方法。
【請求項6】
前記制御装置は、カメラが撮影した前記作業者の顔と、1またはそれ以上の作業者の顔画像が記憶されている作業者情報ファイルの各顔画像とを照合することにより、前記作業者を特定する請求項
5に記載の工作機械の制御方法。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記安全教育のための動画である安全教育動画を表示部に表示し、
前記安全教育動画を再生している時間内の、前記作業者の視線が前記表示部に向いている時間、前記作業者の顔を検出している時間、
前記安全教育動画の全再生時間内において前記操作部の操作を指示する全ての指示に対する、前記作業者が前記操作部を
実際に操作した回数のいずれかに基づいて、前記作業者が前記表示部に表示された前記安全教育動画を視聴したか否かを判定し、
前記作業者が前記安全教育動画を視聴したと判定すれば、前記安全教育受講履歴に、前記安全教育を受講済みであることを記録する
請求項
5に記載の工作機械の制御方法。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記安全確認作業の実行を指示する安全確認作業指示動画を表示部に表示し、
前記安全確認作業指示動画を再生している時間内の前記作業者の視線が前記表示部に向いている時間または前記作業者の顔を検出している時間に基づいて、前記作業者が前記表示部に表示された前記安全確認作業指示動画を視聴したか否かを判定し、
前記作業者が前記安全確認作業指示動画を視聴したと判定し、かつ前記安全確認作業が行われて前記プレスブレーキに異常がないことが確認されれば、前記プレスブレーキによる前記ワークの曲げ工動作を許可し、
前記作業者が前記安全確認作業指示動画を視聴したと判定しなければ、前記プレスブレーキによる前記ワークの曲げ加工動作を不許可とする
請求項
5に記載の工作機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械及び工作機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、産業機械(工作機械)を操作する作業者の体温等の生体情報と、作業環境の温度または湿度等の環境情報とに基づいて作業者の安全レベルを判定して、産業機械の動作を制限したり制限を解除したりすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-64257号公報
【文献】特開2017-102687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工作機械を安全に操作するには、作業者に対する安全教育が重要である。従来においては、作業者が安全教育を受けたか否かは人的に管理される。本来は、安全教育を受けた作業者が工作機械を操作すべきであるが、工作機械の操作を、安全教育を受けた作業者に限定するか否かは現場に委ねられている。安全教育を受けていない作業者が工作機械を操作するか、安全教育を受けている作業者が工作機械を操作するかによって、工作機械の動作を異ならせることができる工作機械及び工作機械の制御方法の登場が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様は、ワークを曲げ加工するプレスブレーキ本体と、前記プレスブレーキ本体を制御するNC装置と、前記プレスブレーキ本体によって前記ワークを曲げ加工するために作業者によって操作される操作部を有し、前記作業者による前記操作部の操作を、前記NC装置または前記NC装置に接続された制御部が受け付ける操作パネルとを備え、前記NC装置または前記制御部は、前記操作部を操作する前記作業者を特定し、特定した前記作業者が、前記プレスブレーキ本体を安全に操作するために予め受講しておくべき安全教育を受講しているか否かを示す安全教育受講履歴を確認し、確認した前記安全教育受講履歴により前記作業者が前記安全教育を受講していれば、前記作業者に、前記プレスブレーキ本体を操作する前に、テストピースを用いて前記プレスブレーキ本体に異常がないかを確認する安全確認作業の実行を指示し、前記作業者が前記安全確認作業を実行して前記プレスブレーキ本体に異常がないことが確認されれば、前記作業者が前記操作部を操作することによって実行される前記プレスブレーキ本体による前記ワークの曲げ加工動作を許可し、前記作業者が前記安全確認作業を実行しなければ、前記プレスブレーキ本体による前記ワークの曲げ加工動作を不許可とするプレスブレーキである工作機械を提供する。
【0006】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、作業者が安全教育を受けているか否かという客観的な事実によって工作機械の動作が切り替えられる。
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様は、プレスブレーキである工作機械が備える制御装置が、前記プレスブレーキがワークを曲げ加工するために操作される操作部を操作する作業者を特定し、特定した前記作業者が、前記プレスブレーキを安全に操作するために予め受講しておくべき安全教育を受講しているか否かを示す安全教育受講履歴を確認し、確認した前記安全教育受講履歴により前記作業者が前記安全教育を受講していれば、前記作業者に、前記プレスブレーキを操作する前に、テストピースを用いて前記プレスブレーキに異常がないかを確認する安全確認作業の実行を指示し、前記作業者が前記安全確認作業を実行して前記プレスブレーキに異常がないことが確認されれば、前記作業者が前記操作部を操作することによって実行される前記プレスブレーキによる前記ワークの曲げ加工動作を許可し、前記作業者が前記安全確認作業を実行しなければ、前記プレスブレーキによる前記ワークの曲げ加工動作を不許可とするプレスブレーキである工作機械の制御方法を提供する。
【0008】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、作業者が安全教育を受けているか否かという客観的な事実によって工作機械の動作が切り替えられる。
【発明の効果】
【0009】
1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械及び工作機械の制御方法によれば、安全教育を受けていない作業者が工作機械を操作するか、安全教育を受けている作業者が工作機械を操作するかによって、工作機械の動作を異ならせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械の一例であるプレスブレーキを示す図である。
【
図3】
図3は、1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械が記憶する作業者情報ファイルを概念的に示す図である。
【
図4】
図4は、1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械が再生する安全教育動画ファイル及び安全確認作業指示動画ファイルを概念的に示す図である。
【
図5】
図5は、1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械が管理する安全教育受講履歴を概念的に示す図である。
【
図6】
図6は、1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械が各作業者の安全教育受講履歴を管理する処理を示すフローチャートである。
【
図7A】
図7Aは、1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械がプレスブレーキであるときに、制御装置が実行する処理を示す部分的なフローチャートである。
【
図7B】
図7Bは、1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械がプレスブレーキであるときに、制御装置が実行する処理を示す、
図7Aに続く部分的なフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7Aに示すステップS108の具体的な処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、プレスブレーキの安全確認作業で用いられるテストピースを示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図9に示すテストピースを用いて作業者が実行すべきプレスブレーキの安全確認作業を示す図である。
【
図11】
図11は、
図7Aに示すステップS110で表示部に表示されるメッセージの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、
図7Bに示すステップS117で表示部に表示されるメッセージの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、
図7Bに示すステップS120で表示部に表示されるメッセージの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械がレーザ加工機であるときに、制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、
図14に示すステップS211で表示部に表示されるメッセージの一例を示す図である。
【
図16】
図16は、
図14に示すステップS214で表示部に表示されるメッセージの一例を示す図である。
【
図17】
図17は、各作業者の安全教育受講履歴に基づく安全教育受講履歴一覧画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械は、ワークを加工する工作機械本体と、前記工作機械本体を制御するNC装置と、前記工作機械本体によって前記ワークを加工するために作業者によって操作される操作部を有し、前記作業者による前記操作部の操作を、前記NC装置または前記NC装置に接続された制御部が受け付ける操作パネルとを備える。前記NC装置または前記制御部は、前記操作部を操作する前記作業者を特定し、特定した前記作業者が、前記工作機械本体を安全に操作するために予め受講しておくべき安全教育を受講しているか否かを示す安全教育受講履歴を確認し、少なくとも確認した前記作業者の安全教育受講履歴に応じて、前記作業者が前記操作部を操作することによって実行される前記工作機械本体による前記ワークの加工動作を許可するか不許可とするかを決定する。
【0012】
1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械の制御方法は、工作機械が備える制御装置が、前記工作機械がワークを加工するために操作される操作部を操作する作業者を特定し、特定した前記作業者が、前記工作機械を安全に操作するために予め受講しておくべき安全教育を受講しているか否かを示す安全教育受講履歴を確認し、少なくとも確認した前記作業者の安全教育受講履歴に応じて、前記作業者が前記操作部を操作することによって実行される前記工作機械による前記ワークの加工動作を許可するか不許可とするかを決定する。
【0013】
以下、1またはそれ以上の実施形態に係る工作機械及び工作機械の制御方法について、添付図面を参照して具体的に説明する。
図1において、工作機械100は、NC(Numerical Control)装置11、工作機械本体12、操作パネル20を備える。工作機械100には、サーバ30、加工プログラム作成装置40、加工プログラムデータベース50が例えばネットワークによって接続されている。工作機械100は、板金を曲げ加工するプレスブレーキ、板金を切断加工するレーザ加工機、板金を打ち抜き加工するタレットパンチプレス、またはその他の任意の加工機である。
【0014】
NC装置11は、加工プログラム作成装置40が作成する加工プログラムに基づいて工作機械本体12を制御する。加工プログラム作成装置40は、CAM(Computer Aided Manufacturing)プログラムを実行するコンピュータ機器によって構成することができる。加工プログラムデータベース50は、加工プログラム作成装置40が作成した加工プログラムを記憶する。NC装置11には、加工プログラム作成装置40から加工プログラムが直接供給されてもよいし、加工プログラムデータベース50に記憶されている加工プログラムが読み出されて供給されてもよい。
【0015】
操作パネル20は、制御部21、表示部22、カメラ23、視線検出部24、操作ボタン25、記憶部26、不揮発性メモリ27を備える。制御部21はNC装置11と接続されている。制御部21には、表示部22、カメラ23、視線検出部24、操作ボタン25、記憶部26、不揮発性メモリ27が接続されている。制御部21は例えばマイクロプロセッサで構成される。表示部22は液晶パネルで構成することができ、表面にタッチパッド221が装着されているタッチパネルであってもよい。操作ボタン25及びタッチパッド221は操作部である。記憶部26は一時記憶メモリで構成される。不揮発性メモリ27には、後述する作業者情報ファイル270が記憶されている。
【0016】
サーバ30には、後述する動画ファイル31と安全教育受講履歴32が記憶されている。NC装置11または工作機械100が備える不揮発性のいずれかの記憶部に、安全教育受講履歴32が記憶されてもよい。
【0017】
図1に示す構成例においては、操作パネル20が制御部21を備え、NC装置11と制御部21とが互いに連携して工作機械100を制御するように構成されている。NC装置11が、制御部21が実行する制御を実行してもよい。制御部21が作業者による操作部(操作ボタン25またはタッチパッド221)の操作を受け付けてもよいし、NC装置11が操作を受け付けてもよい。NC装置11及び制御部21は工作機械100の動作を制御する制御装置である。工作機械100の制御装置が、作業者による操作部の操作を受け付ければよい。
【0018】
ここで、工作機械100が
図2に示すプレスブレーキ100PBである場合を例として、プレスブレーキ100PBの構成を説明する。
図2に示すように、プレスブレーキ100PBは、NC装置11とプレスブレーキ本体12PBとを含む。プレスブレーキ本体12PBは、左右のサイドフレーム120と、上部テーブル121と、下部テーブル122とを備える。上部テーブル121にはパンチホルダ123が取り付けられ、下部テーブル122にはダイホルダ124が取り付けられている。パンチホルダ123にはパンチTpが装着され、ダイホルダ124にはダイTdが装着されている。
【0019】
上部テーブル121は、左右に設けた油圧シリンダ125L及び125Rによって、上下動するように構成されている。上部テーブル121は、モータによって上下動するように構成されていてもよい。
【0020】
上部テーブル121及び下部テーブル122の後方には、バックゲージ126が設けられている。バックゲージ126は、ストレッチ128に沿って左右方向に移動する突き当て127L及び127Rを備える。突き当て127L及び127Rは高さ方向及び前後方向にも移動するように構成されている。作業者が板金WをダイTd上に配置して板金Wを曲げる前に、突き当て127L及び127RはダイTdと対応する位置に移動する。作業者は、板金Wの奥側の端部を突き当て127L及び127Rに突き当てるようにしてダイTd上に配置する。
【0021】
NC装置11には、上部テーブル121を下降させる閉フットペダル1291と上部テーブル121を上昇させる開フットペダル1292とを有するフットペダル129が接続されている。フットペダル129も操作部である。
【0022】
操作パネル20は、プレスブレーキ本体12PBの左側方に設けられているL字状のアーム201に取り付けられている。一例として、操作ボタン25は表示部22の下方に配置されており、カメラ23は表示部22の上部に取り付けられている。視線検出部24は、操作ボタン25の下方に配置されている。カメラ23及び視線検出部24の位置は一例であり、カメラ23及び視線検出部24は表示部22の近傍に配置されていればよい。
【0023】
視線検出部24は、例えば波長850nmの近赤外線を作業者の左右の目に向けて照射する左右一対の発光ダイオード241及び242と、左右の目を撮影する左右一対のカメラ243及び244とで構成することができる。詳細には、視線検出部24として特許文献2に記載の構成を用いることができる。
【0024】
視線検出部24は、制御部21が、作業者の視線の向きに基づいて、作業者が表示部22を見ているか否かを判定するために設けられている。視線検出部24を設ける代わりに、制御部21が、カメラ23が生成する撮影画像に基づいて作業者の顔を検出することにより、作業者が表示部22を見ているか否かを判定してもよい。視線検出部24による視線検出の代わりにカメラ23が生成する撮影画像による作業者の顔検出に基づいて作業者が表示部22を見ているか否かを判定すれば、操作パネル20の構成を簡略化することができる。
【0025】
以上のように構成されているプレスブレーキ本体12PBにおいて、作業者は、加工対象の板金WをダイTd上に配置する。作業者が閉フットペダル1291を押下して上部テーブル121を下降させると、板金WはパンチTpとダイTdとによって挟まれて曲げられる。但し、後述するように、プレスブレーキ100PBは、作業者が予め受講すべき安全教育を受講していなければ、板金Wを曲げ加工することができないように構成されている。
【0026】
図3は、不揮発性メモリ27に記憶されている作業者情報ファイル270を概念的に示している。作業者情報ファイル270は、作業者情報として、作業者IDに、作業者名と作業者の顔画像(顔写真)と管理権限とを対応付けて記憶している。作業者情報が作業者名及び管理権限を含むことは必須ではない。作業者情報ファイル270は、各作業者IDに対応付けて、1またはそれ以上の作業者の顔画像が記憶されていればよい。操作パネル20の制御部21は、操作ボタン25によって入力した各作業者の名前とカメラ23が撮影する各作業者の顔画像とを作業者情報ファイル270に登録することができる。
【0027】
管理権限の値0とは工作機械100を管理する権限を有さないことを示し、管理権限の値1とは工作機械100を管理する権限を有することを示す。即ち、管理権限に値1が設定されている作業者IDが0006である作業者は、工作機械100の管理者である。
【0028】
図4に示すように、サーバ30に記憶されている動画ファイル31は、例えば、安全教育動画ファイル#1~#5よりなる5つの安全教育動画ファイル311~315と、1つの安全確認作業指示動画ファイル316とを含む。安全教育動画ファイル#1~#5は、安全教育動画ファイル#1から安全教育動画ファイル#5に向かうほど高度の内容である。動画ファイル31における安全教育動画ファイルの数は、工作機械100の種類に応じて異なってよく、動画ファイル31は1またはそれ以上の安全教育動画ファイルを含む。
【0029】
動画ファイル31における安全確認作業指示動画ファイルの数も、工作機械100の種類に応じて異なってよい。工作機械100の種類に応じて、動画ファイル31は安全確認作業指示動画ファイルを含まないことがあってもよい。動画ファイル31は、安全確認作業指示動画ファイルを含まないか、1またはそれ以上の安全確認作業指示動画ファイルを含む。安全確認作業指示動画ファイル316は、プレスブレーキ100PB用の安全確認作業指示動画ファイルであるとする。
【0030】
図5は、サーバ30に記憶されている安全教育受講履歴32を概念的に示している。安全教育受講履歴32において、値0は安全教育動画ファイルを未受講であることを示し、値1は安全教育動画ファイルを受講済みであることを示す。制御部21及びNC装置11は、次のように安全教育受講履歴32を管理し、更新する。
【0031】
安全教育のための動画である安全教育動画を視聴しようとする作業者は、操作パネル20の前に立つ。すると、
図6に示すように、処理が開始されて、制御部21は、ステップS1にて、カメラ23が撮影する作業者の顔と作業者情報ファイル270に記憶されている顔画像とを照合して、操作パネル20の前に立っている作業者を認識する。即ち、作業者は顔認証される。作業者は、ステップS2にて、操作ボタン25を操作して受講しようとする安全教育動画ファイルを選択する。NC装置11は、選択された安全教育動画ファイルをサーバ30より読み出し、制御部21に供給する。制御部21は、読み出された安全教育動画ファイルを記憶部26に記憶させる。記憶部26には、ダウンロードされた安全教育動画ファイルが一時的に記憶される。
【0032】
制御部21は、ステップS3にて、再生の指示を受けて、安全教育動画ファイルを再生して安全教育動画を表示部22に表示する。制御部21は、ステップS4にて、視線検出部24が検出する作業者の視線を示す視線情報を取得する。視線検出部24を設けていない場合には、制御部21は、ステップS4にて、カメラ23が生成する撮影画像に基づいて作業者の顔を検出する。制御部21は、ステップS5にて、安全教育動画ファイルの再生が完了したか否かを判定する。再生が完了していなければ(NO)、制御部21は、ステップS3~S5の処理を繰り返す。
【0033】
ステップS5にて安全教育動画ファイルの再生が完了していれば(YES)、制御部21は、ステップS6にて、作業者は安全教育動画を視聴したか否かを判定する。制御部21は、安全教育動画ファイルの全再生時間に対する、作業者の視線が表示部22の方向に向いている時間の割合が所定の割合以上であれば、安全教育動画を視聴したと判定する。視線検出部24を設けていない場合には、制御部21は、安全教育動画ファイルの全再生時間に対する、作業者の顔を検出している時間の割合が所定の割合以上であれば、安全教育動画を視聴したと判定する。
【0034】
制御部21は、ステップS6にて作業者は安全教育動画を視聴したと判定すれば(YES)、NC装置11に、作業者IDと視聴した安全教育動画ファイルを示す情報とを通知して、安全教育受講履歴32の更新を指示する。NC装置11は、ステップS7にて、安全教育受講履歴32における認識された作業者の選択された安全教育動画ファイルの値0を値1に書き換えることにより受講済みを記録し、処理を終了させる。
【0035】
一方、制御部21は、ステップS6にて作業者は安全教育動画を再生したのみで実質的には視聴していないと判定すれば(NO)、NC装置11に、安全教育受講履歴32の非更新を指示する。NC装置11は、ステップS8にて、安全教育受講履歴32を更新せず、処理を終了させる。
【0036】
図6においては、制御部21が作業者の視線の方向に基づいて安全教育動画を視聴したと判定しているが、次のように安全教育動画を視聴したか否かを判定してもよい。安全教育動画が操作ボタン25等の操作部の操作を指示する内容を含む場合には、制御部21は、操作部が実際に操作されているか否かを判定する。制御部21は、安全教育動画ファイルの全再生時間内において操作部の操作を指示する全ての指示に対する、作業者が実際に操作した回数の割合が所定の割合以上であれば、安全教育動画を視聴したと判定する。制御部21は、作業者の視線の方向または作業者の顔の検出結果と、操作部が操作された回数との双方に基づいて、安全教育動画を視聴したか否かを判定してもよい。
【0037】
制御部21は、人工知能(AI)を利用して作業者の行動を分析して、安全教育動画を視聴したか否かを判定してもよい。制御部21がどのような条件で安全教育動画を視聴したと判定するかは限定されない。
【0038】
図7A及び
図7Bに示すフローチャートを用いて、プレスブレーキ100PBが板金Wを曲げ加工するときに、NC装置11または制御部21が実行する処理を説明する。
図7Aにおいて、プレスブレーキ100PBの電源がオンされて処理が開始されると、NC装置11は、ステップS101にて、プレスブレーキ本体12PBを原点復帰させる。NC装置11は、ステップS102にて、加工プログラム作成装置40が新規に作成した加工プログラム、または加工プログラムデータベース50に保存されている既存の加工プログラムを読み込む。
【0039】
作業者は、ステップS103にて、パンチホルダ123及びダイホルダ124の加工プログラムで指示された位置にそれぞれパンチTp及びダイTdを装着する金型段取りを実行して、加工対象の板金Wであるワークを準備する。作業者は、ステップS104にて、操作ボタン25におけるスタートボタンを押下する。制御部21は、ステップS105にて、カメラ23が作業者を撮影する撮影画像に基づき作業者を認識する。制御部21は、ステップS106にて、NC装置11に安全教育受講履歴を問い合わせる。NC装置11は、サーバ30に記憶されている安全教育受講履歴32より認識した作業者の安全教育受講履歴を制御部21に供給する。
【0040】
制御部21は、ステップS107にて、作業者が安全教育を受講しているか否かを判定する。
図5に示す安全教育受講履歴32を例にすると、制御部21は、安全教育動画ファイル#1~#5よりなる5つの安全教育動画ファイルのうちの少なくとも安全教育動画ファイル#1~#3を受講済みであれば、作業者が安全教育を受講していると判定してもよい。制御部21は、安全教育動画ファイル#1~#5の全てを受講済みであれば、作業者が安全教育を受講していると判定してもよい。5つの安全教育動画ファイルのうちのいくつの安全教育動画ファイルを受講済みであれば安全教育を受講していると判定するかは任意である。プレスブレーキ100PB(工作機械100)によるワークの加工の種類(難易度)によって受講を必要とする安全教育動画ファイルの数を異ならせてもよい。
【0041】
制御部21は、ステップS107にて作業者が安全教育を受講していれば(YES)、ステップS108にて、安全確認作業を指示する。プレスブレーキ100PBによって板金Wを曲げ加工するときには、後述するテストピースを用いてプレスブレーキ本体12PBに異常がないかを確認する安全確認作業を行うことが求められている。
図8は、ステップS108の詳細な処理を示している。
【0042】
図8において、制御部21は、NC装置11に安全確認作業指示動画ファイル316の読み出しを指示する。NC装置11は、安全確認作業指示動画ファイル316をサーバ30より読み出し、制御部21に供給する。制御部21は、安全確認作業指示動画ファイル316を記憶部26に記憶させる。記憶部26には、ダウンロードされた安全確認作業指示動画ファイル316が一時的に記憶される。制御部21は、ステップS81にて、安全確認作業指示動画ファイル316を再生して安全確認作業指示動画を表示部22に表示する。
【0043】
安全確認作業指示動画を表示部22に表示している間、制御部21は、視線検出部24が検出する作業者の視線を示す視線情報を取得する。視線検出部24を設けていない場合には、制御部21は、カメラ23が生成する撮影画像に基づいて作業者の顔を検出する。
【0044】
プレスブレーキ100PBは、上部テーブル121及び下部テーブル122の左右方向の一方の端部に設けられているレーザ光線を射出する発光部と、他方の端部に設けられている受光部とを含む安全装置を備える。発光部は、上部テーブル121と下部テーブル122との間にレーザ光線を射出する。上部テーブル121と下部テーブル122との間に例えば手が侵入すると、レーザ光線が遮られるから受光部はレーザ光線を受光しない。NC装置11は、受光部がレーザ光線を受光する状態から受光しない状態へと変化すると、上部テーブル121の下降を停止するように構成されている。
【0045】
プレスブレーキ100PBの安全確認作業とは、
図9に示すテストピース12TPを用いて安全装置が正しく動作することを確認する作業である。安全確認作業指示動画ファイル316の安全確認作業指示動画は、作業者に次のような安全確認作業を実行することを指示する動画である。
【0046】
図10に示すように、安全装置は奥側及び手前側の上段、中段、下段の発光部13a~13fを有する。上部テーブル121を上方に位置させた状態で、作業者は、テストピース12TPにおける板厚10mmの板状部側を把持して、直径14mmの円柱状部の先端をパンチTpに接触させる。このとき、上段及び中段の発光部13a、13b、13d、13eから射出されるレーザ光線は円柱状部によって遮られる。作業者は、閉フットペダル1291を押下して、上部テーブル121が下降しないことを確認する。
【0047】
図8に戻り、制御部21は、ステップS82以降で作業者が
図10に示す安全確認作業を実行したか否かを判定する。制御部21は、ステップS82にて、安全作業開始ボタンの押下によって安全確認作業が開始されたか否かを判定する。安全確認作業が開始されなければ(NO)、制御部21は処理をステップS88に移行させる。安全確認作業が開始されれば(YES)、制御部21は、ステップS83にて、スタートボタンが押下されたか否かを判定する。スタートボタンが押下されなければ(NO)、制御部21は処理をステップS88に移行させる。
【0048】
ステップS83にてスタートボタンが押下されれば(YES)、制御部21は、ステップS84にて、安全装置の指定された発光部のみが遮光されているか否かを判定する。制御部21は、安全装置の指定された受光部がレーザ光線を受光しない状態であるという情報を取得すれば、指定された発光部のみが遮光されていると判定できる。安全装置の指定された発光部のみが遮光されていなければ(NO)、制御部21は処理をステップS88に移行させる。
【0049】
ステップS84にて指定された発光部のみが遮光されていれば(YES)、制御部21は、ステップS85にて、閉フットペダル1291が押下されたか否かを判定する。制御部21は、NC装置11より閉フットペダル1291が押下されたか否かの情報を取得することにより、閉フットペダル1291が押下されたか否かを判定できる。閉フットペダル1291が押下されなければ(NO)、制御部21は処理をステップS88に移行させる。
【0050】
ステップS85にて閉フットペダル1291が押下されれば(YES)、制御部21は、ステップS86にて、上部テーブル121の下降速度が0であるか否かを判定する。上部テーブル121の下降速度が0であるということは上部テーブル121が下降していないということである。制御部21は、NC装置11より上部テーブル121の下降速度を取得することにより、上部テーブル121の下降速度が0であるか否かを判定できる。上部テーブル121の下降速度が0でなければ(NO)、制御部21は処理をステップS88に移行させる。
【0051】
ステップS86にて上部テーブル121の下降速度が0であれば(YES)、制御部21は、ステップS87にて、安全確認作業完了と判定して、処理を
図7AのステップS109に移行させる。
【0052】
制御部21は、ステップS88にて、終了ボタンの押下により、安全確認作業を終了する操作がなされたか否かを判定する。安全確認作業を終了する操作がなされなければ(NO)、制御部21は処理をステップS82に戻し、ステップS82以降の処理を繰り返す。安全確認作業を終了する操作がなされれば(YES)、制御部21は、ステップS89にて、安全確認作業未完了と判定して、処理を
図7AのステップS109に移行させる。制御部21は、ステップS109にて、例えば制御部21内に安全確認作業完了または安全確認作業未完了の作業状態を記録して、処理を
図7BのステップS112に移行させる。
【0053】
一方、
図7AにおいてステップS107にて作業者が安全教育を受講していなければ(NO)、制御部21は、ステップS110にて、
図11に示すようなメッセージM110を表示部22に表示して、ステップS111にて、作業を継続する操作がなされたか否かを判定する。一例として、メッセージM110は、「機械操作を終了するか作業者を交代してください。作業者を交代しましたか。」という文章と、「はい」と「いいえ」とを選択するタッチパッド221で操作される選択ボタンB110とを含む。
【0054】
作業者を交代して、新たな作業者が選択ボタンB110の「はい」に触れれば、制御部21は、ステップS111にて作業を継続する操作がなされた(YES)と判定して、処理をステップS105に戻す。作業者を交代せず最初の作業者が選択ボタンB110の「いいえ」に触れれば、制御部21は、ステップS111にて作業を継続する操作がなされなかった(NO)と判定して、処理を終了させる。
【0055】
図7Bにおいて、制御部21は、ステップS112にて、安全確認作業が確実に行われたか否かを判定する。少なくとも、制御部21内に安全確認作業完了の作業状態が記録されている状態が、安全確認作業が確実に行われた状態である。制御部21は、表示部22に安全確認作業指示動画を表示している間の視線検出部24が検出する作業者の視線を示す視線情報または作業者の顔の検出結果に基づいて、安全確認作業指示動画を視聴したと判定するか否かを、安全確認作業が確実に行われたか否かの判定条件に加えてもよい。
【0056】
制御部21は、安全確認作業指示動画ファイル316の全再生時間に対する、作業者の視線が表示部22の方向に向いている時間の割合が所定の割合以上であれば、安全確認作業指示動画を視聴したと判定する。または、制御部21は、安全確認作業指示動画ファイル316の全再生時間に対する、作業者の顔を検出している時間の割合が所定の割合以上であれば、安全確認作業指示動画を視聴したと判定する。
【0057】
ステップS112にて安全確認作業が確実に行われていれば(YES)、NC装置11は、ステップS113にて、制御部21からの指示に従って、プレスブレーキ本体12PBの加工動作を許可する。NC装置11は、ステップS114にて、閉フットペダル1291が押下されたか否かを判定する。閉フットペダル1291が押下されなければ(NO)、NC装置11はステップS114の処理を繰り返す。閉フットペダル1291が押下されれば(YES)、NC装置11は、ステップS115にて、ワークの実加工を実行して、処理をステップS116に移行させる。
【0058】
NC装置11は、ステップS116にて、加工を継続するか否かを判定する。加工を継続すれば(YES)、NC装置11は、ステップS122にて、金型(パンチTp及びダイTd)を交換して別の製品を加工するか否かを判定する。別の製品を加工しなければ(NO)、NC装置11はステップS113以降の処理を繰り返す。別の製品を加工すれば(YES)、NC装置11はステップS102以降の処理を繰り返す。加工を継続しなければ(NO)、NC装置11は処理を終了させる。
【0059】
一方、ステップS112にて安全確認作業が確実に行われていなければ(NO)、制御部21は、ステップS117にて、
図12に示すようなメッセージM117を表示部22に表示して、ステップS118にて、安全確認作業を再度実行する操作がなされたか否かを判定する。一例として、メッセージM117は、「安全確認作業の実行が確認できません。安全確認作業を再度実行しますか。」という文章と、「はい」と「いいえ」とを選択するタッチパッド221で操作される選択ボタンB117とを含む。
【0060】
制御部21は、制御部21内に確認作業未完了の作業状態が記録されていれば、ステップS112にて安全確認作業が確実に行われていないと判定する。制御部21は、制御部21内に安全確認作業完了の作業状態が記録されていても、視線検出部24が検出する作業者の視線を示す視線情報または作業者の顔の検出結果に基づいて実質的には安全確認作業指示動画を視聴していないと判定すれば、ステップS112にて安全確認作業が確実に行われていないと判定してもよい。
【0061】
作業者がメッセージM117の選択ボタンB117の「はい」に触れれば、制御部21は、ステップS118にて安全確認作業を再度実行する操作がなされた(YES)と判定して、処理をステップS108に戻す。作業者がメッセージM117の選択ボタンB117の「いいえ」に触れれば、制御部21は、ステップS118にて安全確認作業を再度実行する操作がなされなかった(NO)と判定して、処理をステップS119に移行させる。NC装置11は、ステップS119にて、制御部21からの指示に従って、プレスブレーキ本体12PBの加工動作を不許可とする。
【0062】
続けて、制御部21は、ステップS120にて、
図13に示すようなメッセージM120を表示部22に表示して、ステップS121にて、作業を継続する操作がなされたか否かを判定する。一例として、メッセージM120は、「機械操作を終了するか作業者を交代してください。作業者を交代しましたか。」という文章と、「はい」と「いいえ」とを選択するタッチパッド221で操作される選択ボタンB120とを含む。
【0063】
作業者を交代して、新たな作業者が選択ボタンB120の「はい」に触れれば、制御部21は、ステップS121にて作業を継続する操作がなされた(YES)と判定して、処理をステップS105に戻す。作業者を交代せず最初の作業者が選択ボタンB120の「いいえ」に触れれば、制御部21は、ステップS121にて作業を継続する操作がなされなかった(NO)と判定して、処理を終了させる。
【0064】
図14に示すフローチャートを用いて、工作機械100がレーザ加工機である場合を例として、レーザ加工機がワークを切断加工するときにNC装置11または制御部21が実行する処理を説明する。レーザ加工機においては、動画ファイルが安全確認作業指示動画ファイルを含まず、作業者がレーザ加工機を操作する前に実行すべき安全確認作業は設定されていないとする。
【0065】
図14において、レーザ加工機の電源がオンされて処理が開始されると、NC装置11は、ステップS201にて、工作機械本体12に相当するレーザ加工機の加工機本体を原点復帰させる。NC装置11は、ステップS202にて、加工プログラム作成装置40が新規に作成した加工プログラム、または加工プログラムデータベース50に保存されている既存の加工プログラムを読み込む。
【0066】
作業者は、ステップS203にて、加工対象の板金Wであるワークを準備する。作業者は、ステップS204にて、加工機本体に設けられているクランプフットペダルを押下して、テーブル上に配置されたワークが動かないように固定する。制御部21は、ステップS205にて、カメラ23が作業者を撮影する撮影画像に基づき作業者を認識する。制御部21は、ステップS206にて、NC装置11に安全教育受講履歴を問い合わせる。NC装置11は、サーバ30に記憶されている安全教育受講履歴32より認識した作業者の安全教育受講履歴を制御部21に供給する。
【0067】
制御部21は、ステップS207にて、作業者が安全教育を受講しているか否かを判定する。レーザ加工機を安全に操作するために予め受講しておくべき安全教育動画ファイルは、例えば3つの動画ファイルである。第1の動画ファイルは、レーザ加工機の全体的な安全に関する警告事項または注意事項を説明する動画ファイルである。第2の動画ファイルは、集塵装置のダストボックスを清掃する必要性及び清掃の仕方を説明する動画ファイルである。第3の動画ファイルは、スクラップボックスを清掃する必要性及び清掃の仕方を説明する動画ファイルである。制御部21は、作業者が3つの動画ファイルを全て視聴していれば、安全教育を受講済みであるとするのがよい。
【0068】
ステップS207にて作業者が安全教育を受講していれば(YES)、NC装置11は、ステップS208にて、制御部21からの指示に従って、レーザ加工機(加工機本体)の加工動作を許可する。NC装置11は、ステップS209にて、レーザ発振器と加工ヘッドとの間に設けられているレーザシャッタを開き、ステップS210にて、ワークの実加工を実行して処理を終了させる。
【0069】
一方、ステップS207にて作業者が安全教育を受講していなければ(NO)、制御部21は、ステップS211にて、
図15に示すようなメッセージM211を表示部22に表示して、ステップS212にて、作業を継続する操作がなされたか否かを判定する。一例として、メッセージM212は、「機械操作を終了するか作業者を交代してください。作業者を交代しましたか。」という文章と、「はい」と「いいえ」とを選択するタッチパッド221で操作される選択ボタンB211とを含む。
【0070】
作業者を交代して、新たな作業者が選択ボタンB211の「はい」に触れれば、制御部21は、ステップS212にて作業を継続する操作がなされた(YES)と判定して、処理をステップS205に戻す。作業者を交代せず最初の作業者が選択ボタンB211の「いいえ」に触れれば、制御部21は、ステップS212にて作業を継続する操作がなされなかった(NO)と判定して、処理をステップS213に移行させる。NC装置11は、ステップS213にて、制御部21からの指示に従って、レーザ加工機(加工機本体)の加工動作を不許可とする。
【0071】
続けて、制御部21は、ステップS214にて、
図16に示すようなメッセージM214を表示部22に表示して、処理を終了させる。一例として、メッセージM214は、「安全教育の受講が確認できませんでした。機械操作を終了します。」という文章を含む。
【0072】
以上のように、工作機械100及びその制御方法は次のように構成されている。NC装置11もしくは制御部21、またはNC装置11及び制御部21は、工作機械100を制御する制御装置である。
【0073】
制御装置は、操作ボタン25等の操作部を操作する作業者を特定する。制御装置は、特定した作業者が、工作機械本体12を安全に操作するために予め受講しておくべき安全教育を受講しているか否かを示す安全教育受講履歴32を確認する。制御装置は、少なくとも確認した作業者の安全教育受講履歴32に応じて、作業者が操作部を操作することによって実行される工作機械本体12によるワークの加工動作を許可するか不許可とするかを決定する。
【0074】
工作機械100及びその制御方法によれば、安全教育を受けていない作業者が工作機械100を操作するか、安全教育を受けている作業者が工作機械100を操作するかによって、工作機械100の動作を異ならせることができる。具体的には、安全教育を受けていない作業者が工作機械100を操作してワークを加工しようとしても、工作機械100によってワークを加工することができないか、ワークの加工が制限される。安全教育を受けている作業者が工作機械100を操作してワークを加工すれば、工作機械100によってワークを加工することができる。従って、工作機械100を使用する際の安全性を向上させることができる。
【0075】
制御装置が、カメラ23が撮影した作業者の顔と、作業者情報ファイル270の各顔画像とを照合することにより作業者を特定すれば、操作部を操作する作業者をほぼ確実に特定することができる。工作機械100の操作の途中で、安全教育を受けている作業者から安全教育を受けていない作業者への入れ替わりを防止するため、制御装置は常時または所定時間ごとに顔認証によって作業者を特定するのがよい。
【0076】
制御装置は、作業者が安全教育を受けているか否かを次のように管理するのがよい。制御装置は、安全教育動画を表示部22に表示する。制御装置は、作業者が表示部22に表示された安全教育動画を視聴したか否かを判定する。制御装置は、作業者が安全教育動画を視聴したと判定すれば、安全教育受講履歴32に、安全教育を受講済みであることを記録する。作業者が表示部22に表示された安全教育動画を視聴したか否かは、視線検出部24が検出する作業者の視線に基づいてもよいし、カメラ23が生成する撮影画像による作業者の顔検出に基づいてもよい。
【0077】
工作機械100がプレスブレーキ100PBである場合には、安全確認作業指示動画ファイル316の安全確認作業指示動画を表示部22に表示し、作業者は、安全確認作業を実行してプレスブレーキ本体12PBに異常がないかを確認することが要求される。このような場合には、制御装置は、作業者が安全教育を受講しており、かつ、作業者が安全確認作業を実行すれば、工作機械本体12によるワークの加工動作を許可する。制御装置は、作業者が安全教育を受講していても、作業者が安全確認作業を実行しなければ、工作機械本体12によるワークの加工動作を不許可とする。
【0078】
このようにすれば、工作機械100の故障または異常を事前に発見することができるから、工作機械100を使用する際の安全性をさらに向上させることができる。
【0079】
制御装置は、作業者が安全確認作業を実行したとしても、制御装置が、作業者が表示部22に表示された安全確認作業指示動画を視聴しなかったと判定すれば、ワークの加工動作を不許可としてもよい。このようにすれば、作業者の安全に対する意識を向上させることができるから、工作機械100を使用する際の安全性をさらに向上させることができる。この場合も、作業者が表示部22に表示された安全確認作業指示動画を視聴したか否かは、視線検出部24が検出する作業者の視線に基づいてもよいし、カメラ23が生成する撮影画像による作業者の顔検出に基づいてもよい。
【0080】
図3に示す管理権限に値1が設定されている作業者IDが0006である作業者(管理者)は、操作ボタン25を操作することにより、表示部22に、例えば
図17に示すような安全教育受講履歴一覧画像33を表示することができる。制御部21は、NC装置11がサーバ30より読み出した安全教育受講履歴32と、不揮発性メモリ27に記憶されている作業者情報ファイル270とに基づいて安全教育受講履歴一覧画像33を生成する。
【0081】
図17に示す安全教育受講履歴一覧画像33においては、各作業者の作業者名331及び顔画像332に、安全教育動画ファイル#1~#5における受講済みの安全教育動画ファイルを示す棒グラフ333を対応させている。各作業者の作業者名331及び顔画像332は、
図3に示す作業者情報ファイル270から取得される。棒グラフ333は、
図5に示す安全教育受講履歴32に基づいて作成される。
【0082】
管理者は、表示部22に表示される安全教育受講履歴一覧画像33を確認して、工作機械100によってワークを加工するときの作業者を選択することができる。例えば、加工の難易度が比較的低いワークを加工するときには、安全教育動画ファイル#1~#3を受講済みであれば工作機械100の操作が許可されるとする。また、加工の難易度が比較的高いワークを加工するときには、安全教育動画ファイル#1~#5の全てを受講済みでなければ工作機械100の操作が許可されないとする。このような場合、管理者は、安全教育受講履歴一覧画像33を確認して、ワークの加工の難易度に応じて作業者を選択することが可能となる。
【0083】
NC装置11は、加工プログラムによってワークの加工の難易度を判定することができる。制御部21は、ステップS107またはS207にて、作業者が安全教育を受講しているか否かを判定するときに、NC装置11から加工の難易度の判定結果を受けて、加工動作を許可する安全教育動画ファイルの数を異ならせることができる。
【0084】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。NC装置11または制御部21は、安全教育を受講していない作業者が操作パネル20を操作してワークを加工しようとしたときにアラームを発生させてもよい。NC装置11または制御部21は、アラームの解除を特定の作業者のみに許可してもよい。特定の作業者は、安全教育を受講している作業者であってもよく、管理者であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
11 NC装置
12 工作機械本体
20 操作パネル
21 制御部
22 表示部
23 カメラ
24 視線検出部
25 操作ボタン
26 記憶部
27 不揮発性メモリ
30 サーバ
31 動画ファイル
32 安全教育受講履歴
40 加工プログラム作成装置
50 加工プログラムデータベース
270 作業者情報ファイル
100 工作機械
【要約】
【課題】作業者が安全教育を受けているか否かによって動作を異ならせることができる工作機械を提供する。
【解決手段】NC装置11または制御部21は、操作ボタン25等の操作部を操作する作業者を特定する。NC装置11または制御部21は、特定した作業者が、工作機械本体12を安全に操作するために予め受講しておくべき安全教育を受講しているか否かを示す安全教育受講履歴32を確認する。NC装置11または制御部21は、少なくとも確認した作業者の安全教育受講履歴32に応じて、作業者が操作部を操作することによって実行される工作機械本体12によるワークの加工動作を許可するか不許可とするかを決定する。
【選択図】
図1