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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】半導体装置および3相インバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241108BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241108BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20241108BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20241108BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/56 T
H01L23/28 Z
H01L23/48 G
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023092799
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2019155452の分割
【原出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2023101835
(43)【公開日】2023-07-21
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】三井 貴夫
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-017319(JP,A)
【文献】国際公開第2016/166835(WO,A1)
【文献】特開平11-354557(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021322(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/28-23/31
H01L 23/48
H01L 23/50
H01L 25/07
H01L 25/18
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属板と、
前記第1金属板に設けられた第1半導体素子と、
前記第1金属板から離れて設けられた第2金属板と、
前記第2金属板に設けられた第2半導体素子と、
前記第1金属板に接続された第1電極と、
前記第1半導体素子の表面と前記第2金属板とに接続された中間電極と、
前記第2半導体素子の表面に接続された第2電極と、
前記第1金属板、前記第1半導体素子、前記第2金属板、前記第2半導体素子、前記第1電極、前記中間電極および前記第2電極に渡って設けられ、前記第1電極の一部、前記中間電極および前記第2電極の一部を覆う絶縁性樹脂部と
を備え、
前記絶縁性樹脂部に覆われた前記第2電極の部分である第2電極樹脂被覆部は、前記絶縁性樹脂部の高さ方向について前記中間電極から離れて設けられ、前記中間電極に対向する第2電極対向部を有し、
前記第2電極対向部は、前記中間電極よりも前記絶縁性樹脂部の表面の近くに配置され、
前記第2電極対向部と前記絶縁性樹脂部の表面との間の最短距離は、前記中間電極と前記第2電極対向部との間の最短距離よりも小さく、
前記絶縁性樹脂部を構成する絶縁性樹脂が供給される流入口の跡が前記絶縁性樹脂部に形成されており、
前記流入口の跡は、前記絶縁性樹脂部の高さ方向について前記第1金属板における前記絶縁性樹脂部の表面側の面よりも高い位置に配置されており、
前記中間電極は、
前記第2電極対向部に対向する中間電極対向部と、
前記絶縁性樹脂部の幅方向について前記中間電極対向部から突出する中間電極突出部と
を有し、
前記中間電極突出部は、前記絶縁性樹脂部の幅方向について前記中間電極対向部よりも前記流入口の跡の近くに配置されている半導体装置。
【請求項2】
前記流入口の跡は、前記絶縁性樹脂部の高さ方向について前記第2電極の位置に配置されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1金属板と前記第1半導体素子とを接合し、前記第2金属板と前記第2半導体素子とを接合する第1接合材と、
前記第1半導体素子と前記中間電極とを接合し、前記第2半導体素子と前記第2電極とを接合する第2接合材と
をさらに備え、
前記第1接合材の融点は、前記第2接合材の融点よりも高い請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記流入口の跡は、前記第2金属板よりも前記第1金属板の近くに配置されている請求項1から請求項までの何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記絶縁性樹脂部の幅方向についての前記絶縁性樹脂部の表面の中間部には、前記幅方向に延びた凹部が形成されており、
前記第2電極対向部は、前記凹部に沿って配置されている請求項1から請求項までの何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
第1金属板と、
前記第1金属板に設けられた第1半導体素子と、
前記第1金属板から離れて設けられた第2金属板と、
前記第2金属板に設けられた第2半導体素子と、
前記第1金属板に接続された第1電極と、
前記第1半導体素子の表面と前記第2金属板とに接続された中間電極と、
前記第2半導体素子の表面に接続された第2電極と、
前記第1金属板、前記第1半導体素子、前記第2金属板、前記第2半導体素子、前記第1電極、前記中間電極および前記第2電極に渡って設けられ、前記第1電極の一部、前記中間電極および前記第2電極の一部を覆う絶縁性樹脂部と
を備え、
前記絶縁性樹脂部に覆われた前記第2電極の部分である第2電極樹脂被覆部は、前記絶縁性樹脂部の高さ方向について前記中間電極から離れて設けられ、前記中間電極に対向する第2電極対向部を有し、
前記第2電極対向部は、前記中間電極よりも前記絶縁性樹脂部の表面の近くに配置され、
前記第2電極対向部と前記絶縁性樹脂部の表面との間の最短距離は、前記中間電極と前記第2電極対向部との間の最短距離よりも小さく、
前記絶縁性樹脂部を構成する絶縁性樹脂が供給される流入口の跡が前記絶縁性樹脂部に形成されており、
前記流入口の跡は、前記絶縁性樹脂部の高さ方向について前記第1金属板における前記絶縁性樹脂部の表面側の面よりも高い位置に配置されており、
前記絶縁性樹脂部の幅方向についての前記絶縁性樹脂部の表面の中間部には、前記幅方向に延びた凹部が形成されており、
前記第2電極対向部は、前記凹部に沿って配置されている半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁性樹脂部の幅方向についての前記絶縁性樹脂部の表面の中間部には、前記幅方向に延びた複数の前記凹部が形成されており、
複数の前記凹部は、前記絶縁性樹脂部の奥行方向に並べられている請求項5または請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記流入口から前記絶縁性樹脂部が流入する方向は、前記凹部が延びる方向と垂直である請求項5から請求項7までの何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2電極対向部は、
第2電極対向部本体と、
前記絶縁性樹脂部の幅方向についての前記第2電極対向部本体の端部から前記絶縁性樹脂部の表面に向かって突出する第2電極突出部と
を有している請求項1から請求項8までの何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
第1金属板と、
前記第1金属板に設けられた第1半導体素子と、
前記第1金属板から離れて設けられた第2金属板と、
前記第2金属板に設けられた第2半導体素子と、
前記第1金属板に接続された第1電極と、
前記第1半導体素子の表面と前記第2金属板とに接続された中間電極と、
前記第2半導体素子の表面に接続された第2電極と、
前記第1金属板、前記第1半導体素子、前記第2金属板、前記第2半導体素子、前記第1電極、前記中間電極および前記第2電極に渡って設けられ、前記第1電極の一部、前記中間電極および前記第2電極の一部を覆う絶縁性樹脂部と
を備え、
前記絶縁性樹脂部に覆われた前記第2電極の部分である第2電極樹脂被覆部は、前記絶縁性樹脂部の高さ方向について前記中間電極から離れて設けられ、前記中間電極に対向する第2電極対向部を有し、
前記第2電極対向部は、前記中間電極よりも前記絶縁性樹脂部の表面の近くに配置され、
前記第2電極対向部と前記絶縁性樹脂部の表面との間の最短距離は、前記中間電極と前記第2電極対向部との間の最短距離よりも小さく、
前記絶縁性樹脂部を構成する絶縁性樹脂が供給される流入口の跡が前記絶縁性樹脂部に形成されており、
前記流入口の跡は、前記絶縁性樹脂部の高さ方向について前記第1金属板における前記絶縁性樹脂部の表面側の面よりも高い位置に配置されており、
前記第2電極対向部は、
第2電極対向部本体と、
前記絶縁性樹脂部の幅方向についての前記第2電極対向部本体の端部から前記絶縁性樹脂部の表面に向かって突出する第2電極突出部と
を有している半導体装置。
【請求項11】
前記第2電極突出部は、前記幅方向についての前記第2電極対向部本体の端部から前記表面に近づく方向へ湾曲するとともに、前記幅方向について前記第2電極対向部本体から離れるようにさらに湾曲している請求項9または請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2電極対向部は、
第2電極対向部本体と、
前記絶縁性樹脂部の幅方向についての前記第2電極対向部本体の端部と前記絶縁性樹脂部の表面との間に設けられたブロックと
を有している請求項1から請求項8までの何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
第1金属板と、
前記第1金属板に設けられた第1半導体素子と、
前記第1金属板から離れて設けられた第2金属板と、
前記第2金属板に設けられた第2半導体素子と、
前記第1金属板に接続された第1電極と、
前記第1半導体素子の表面と前記第2金属板とに接続された中間電極と、
前記第2半導体素子の表面に接続された第2電極と、
前記第1金属板、前記第1半導体素子、前記第2金属板、前記第2半導体素子、前記第1電極、前記中間電極および前記第2電極に渡って設けられ、前記第1電極の一部、前記中間電極および前記第2電極の一部を覆う絶縁性樹脂部と
を備え、
前記絶縁性樹脂部に覆われた前記第2電極の部分である第2電極樹脂被覆部は、前記絶縁性樹脂部の高さ方向について前記中間電極から離れて設けられ、前記中間電極に対向する第2電極対向部を有し、
前記第2電極対向部は、前記中間電極よりも前記絶縁性樹脂部の表面の近くに配置され、
前記第2電極対向部と前記絶縁性樹脂部の表面との間の最短距離は、前記中間電極と前記第2電極対向部との間の最短距離よりも小さく、
前記絶縁性樹脂部を構成する絶縁性樹脂が供給される流入口の跡が前記絶縁性樹脂部に形成されており、
前記流入口の跡は、前記絶縁性樹脂部の高さ方向について前記第1金属板における前記絶縁性樹脂部の表面側の面よりも高い位置に配置されており、
前記第2電極対向部は、
第2電極対向部本体と、
前記絶縁性樹脂部の幅方向についての前記第2電極対向部本体の端部と前記絶縁性樹脂部の表面との間に設けられたブロックと
を有している半導体装置。
【請求項14】
前記第1半導体素子および前記第2半導体素子のそれぞれは、SiCから構成されている請求項1から請求項13までの何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
第1金属板と、
前記第1金属板に設けられた第1半導体素子と、
前記第1金属板から離れて設けられた第2金属板と、
前記第2金属板に設けられた第2半導体素子と、
前記第1金属板に接続された第1電極と、
前記第1半導体素子の表面と前記第2金属板とに接続された中間電極と、
前記第2半導体素子の表面に接続された第2電極と、
前記第1金属板、前記第1半導体素子、前記第2金属板、前記第2半導体素子、前記第1電極、前記中間電極および前記第2電極に渡って設けられ、前記第1電極の一部、前記中間電極および前記第2電極の一部を覆う絶縁性樹脂部と
を備え、
前記絶縁性樹脂部に覆われた前記第2電極の部分である第2電極樹脂被覆部は、前記絶縁性樹脂部の高さ方向について前記中間電極から離れて設けられ、前記中間電極に対向する第2電極対向部を有し、
前記第2電極対向部は、前記中間電極よりも前記絶縁性樹脂部の表面の近くに配置され、
前記第2電極対向部と前記絶縁性樹脂部の表面との間の最短距離は、前記中間電極と前記第2電極対向部との間の最短距離よりも小さく、
前記絶縁性樹脂部を構成する絶縁性樹脂が供給される流入口の跡が前記絶縁性樹脂部に形成されており、
前記流入口の跡は、前記絶縁性樹脂部の高さ方向について前記第1金属板における前記絶縁性樹脂部の表面側の面よりも高い前記第2電極の位置に配置されており、
前記第1金属板および前記第2金属板は、前記絶縁性樹脂部の幅方向について、互いに隣り合うように配置され、
前記流入口の跡は、前記流入口を通り前記絶縁性樹脂部を構成する液体の絶縁性樹脂の流れが前記絶縁性樹脂部の奥行方向となるように配置されている半導体装置。
【請求項16】
請求項1から請求項15までの何れか一項に記載の半導体装置を備えた3相インバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1電極、中間電極および第2電極を備えた半導体装置および3相インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1金属板と、第1半導体素子と、第2金属板と、第2半導体素子と、第1電極と、中間電極と、第2電極と、絶縁性樹脂部とを備えた半導体装置が知られている。第1半導体素子は、第1金属板に設けられている。第2半導体素子は、第2金属板に設けられている。第1電極は、第1金属板に接続されている。中間電極は、第1半導体素子の表面と第2金属板に接続されている。第2電極は、第2半導体素子の表面に接続されている。絶縁性樹脂部は、第1金属板、第1半導体素子、第2金属板、第2半導体素子、第1電極、中間電極および第2電極に渡って設けられている。第2電極および中間電極は、互いに対向する部分を有している。互いに対向する第2電極の一部と中間電極の一部との間の距離が短くなることによって、半導体装置の配線のインダクタンスが低減される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5924164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、互いに対向する第2電極の一部と中間電極の一部との間の距離が短くなることによって、互いに対向する第2電極の一部と中間電極の一部との間の領域への樹脂の注入が難しくなる。これにより、互いに対向する第2電極の一部と中間電極の一部との間の全領域に渡って絶縁性樹脂部を配置することが難しくなる。その結果、第2電極と中間電極との間の絶縁性能が低下するという課題があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、半導体装置の配線のインダクタンスを低減させるとともに、第2電極と中間電極との間の絶縁性能を向上させることができる半導体装置および3相インバータ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る半導体装置は、第1金属板と、第1金属板に設けられた第1半導体素子と、第1金属板から離れて設けられた第2金属板と、第2金属板に設けられた第2半導体素子と、第1金属板に接続された第1電極と、第1半導体素子の表面と第2金属板とに接続された中間電極と、第2半導体素子の表面に接続された第2電極と、第1金属板、第1半導体素子、第2金属板、第2半導体素子、第1電極、中間電極および第2電極に渡って設けられ、第1電極の一部、中間電極および第2電極の一部を覆う絶縁性樹脂部とを備え、絶縁性樹脂部に覆われた第2電極の部分である第2電極樹脂被覆部は、絶縁性樹脂部の高さ方向について中間電極から離れて設けられ、中間電極に対向する第2電極対向部を有し、第2電極対向部は、中間電極よりも絶縁性樹脂部の表面の近くに配置され、第2電極対向部と絶縁性樹脂部の表面との間の最短距離は、中間電極と第2電極対向部との間の最短距離よりも小さく、絶縁性樹脂部を構成する絶縁性樹脂が供給される流入口の跡が絶縁性樹脂部に形成されており、流入口の跡は、絶縁性樹脂部の高さ方向について第1金属板における絶縁性樹脂部の表面側の面よりも高い位置に配置されており、中間電極は、第2電極対向部に対向する中間電極対向部と、絶縁性樹脂部の幅方向について中間電極対向部から突出する中間電極突出部とを有し、中間電極突出部は、絶縁性樹脂部の幅方向について中間電極対向部よりも流入口の跡の近くに配置されている。
この発明に係る半導体装置は、第1金属板と、第1金属板に設けられた第1半導体素子と、第1金属板から離れて設けられた第2金属板と、第2金属板に設けられた第2半導体素子と、第1金属板に接続された第1電極と、第1半導体素子の表面と第2金属板とに接続された中間電極と、第2半導体素子の表面に接続された第2電極と、第1金属板、第1半導体素子、第2金属板、第2半導体素子、第1電極、中間電極および第2電極に渡って設けられ、第1電極の一部、中間電極および第2電極の一部を覆う絶縁性樹脂部とを備え、絶縁性樹脂部に覆われた第2電極の部分である第2電極樹脂被覆部は、絶縁性樹脂部の高さ方向について中間電極から離れて設けられ、中間電極に対向する第2電極対向部を有し、第2電極対向部は、中間電極よりも絶縁性樹脂部の表面の近くに配置され、第2電極対向部と絶縁性樹脂部の表面との間の最短距離は、中間電極と第2電極対向部との間の最短距離よりも小さく、絶縁性樹脂部を構成する絶縁性樹脂が供給される流入口の跡が絶縁性樹脂部に形成されており、流入口の跡は、絶縁性樹脂部の高さ方向について第1金属板における絶縁性樹脂部の表面側の面よりも高い位置に配置されており、絶縁性樹脂部の幅方向についての絶縁性樹脂部の表面の中間部には、幅方向に延びた凹部が形成されており、第2電極対向部は、凹部に沿って配置されている。
この発明に係る半導体装置は、第1金属板と、第1金属板に設けられた第1半導体素子と、第1金属板から離れて設けられた第2金属板と、第2金属板に設けられた第2半導体素子と、第1金属板に接続された第1電極と、第1半導体素子の表面と第2金属板とに接続された中間電極と、第2半導体素子の表面に接続された第2電極と、第1金属板、第1半導体素子、第2金属板、第2半導体素子、第1電極、中間電極および第2電極に渡って設けられ、第1電極の一部、中間電極および第2電極の一部を覆う絶縁性樹脂部とを備え、絶縁性樹脂部に覆われた第2電極の部分である第2電極樹脂被覆部は、絶縁性樹脂部の高さ方向について中間電極から離れて設けられ、中間電極に対向する第2電極対向部を有し、第2電極対向部は、中間電極よりも絶縁性樹脂部の表面の近くに配置され、第2電極対向部と絶縁性樹脂部の表面との間の最短距離は、中間電極と第2電極対向部との間の最短距離よりも小さく、絶縁性樹脂部を構成する絶縁性樹脂が供給される流入口の跡が絶縁性樹脂部に形成されており、流入口の跡は、絶縁性樹脂部の高さ方向について第1金属板における絶縁性樹脂部の表面側の面よりも高い位置に配置されており、第2電極対向部は、第2電極対向部本体と、絶縁性樹脂部の幅方向についての第2電極対向部本体の端部から絶縁性樹脂部の表面に向かって突出する第2電極突出部とを有している。
この発明に係る半導体装置は、第1金属板と、第1金属板に設けられた第1半導体素子と、第1金属板から離れて設けられた第2金属板と、第2金属板に設けられた第2半導体素子と、第1金属板に接続された第1電極と、第1半導体素子の表面と第2金属板とに接続された中間電極と、第2半導体素子の表面に接続された第2電極と、第1金属板、第1半導体素子、第2金属板、第2半導体素子、第1電極、中間電極および第2電極に渡って設けられ、第1電極の一部、中間電極および第2電極の一部を覆う絶縁性樹脂部とを備え、絶縁性樹脂部に覆われた第2電極の部分である第2電極樹脂被覆部は、絶縁性樹脂部の高さ方向について中間電極から離れて設けられ、中間電極に対向する第2電極対向部を有し、第2電極対向部は、中間電極よりも絶縁性樹脂部の表面の近くに配置され、第2電極対向部と絶縁性樹脂部の表面との間の最短距離は、中間電極と第2電極対向部との間の最短距離よりも小さく、絶縁性樹脂部を構成する絶縁性樹脂が供給される流入口の跡が絶縁性樹脂部に形成されており、流入口の跡は、絶縁性樹脂部の高さ方向について第1金属板における絶縁性樹脂部の表面側の面よりも高い位置に配置されており、第2電極対向部は、第2電極対向部本体と、絶縁性樹脂部の幅方向についての第2電極対向部本体の端部と絶縁性樹脂部の表面との間に設けられたブロックとを有している。
この発明に係る半導体装置は、第1金属板と、第1金属板に設けられた第1半導体素子と、第1金属板から離れて設けられた第2金属板と、第2金属板に設けられた第2半導体素子と、第1金属板に接続された第1電極と、第1半導体素子の表面と第2金属板とに接続された中間電極と、第2半導体素子の表面に接続された第2電極と、第1金属板、第1半導体素子、第2金属板、第2半導体素子、第1電極、中間電極および第2電極に渡って設けられ、第1電極の一部、中間電極および第2電極の一部を覆う絶縁性樹脂部とを備え、絶縁性樹脂部に覆われた第2電極の部分である第2電極樹脂被覆部は、絶縁性樹脂部の高さ方向について中間電極から離れて設けられ、中間電極に対向する第2電極対向部を有し、第2電極対向部は、中間電極よりも絶縁性樹脂部の表面の近くに配置され、第2電極対向部と絶縁性樹脂部の表面との間の最短距離は、中間電極と第2電極対向部との間の最短距離よりも小さく、絶縁性樹脂部を構成する絶縁性樹脂が供給される流入口の跡が絶縁性樹脂部に形成されており、流入口の跡は、絶縁性樹脂部の高さ方向について第1金属板における絶縁性樹脂部の表面側の面よりも高い第2電極の位置に配置されており、第1金属板および第2金属板は、絶縁性樹脂部の幅方向について、互いに隣り合うように配置され、流入口の跡は、流入口を通り絶縁性樹脂部を構成する液体の絶縁性樹脂の流れが絶縁性樹脂部の奥行方向となるように配置されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る半導体装置および3相インバータ装置によれば、半導体装置の配線のインダクタンスを低減させるとともに、第2電極と中間電極との間の絶縁性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態1に係る半導体装置を備えた3相インバータ装置を示す回路図である。
図2図1の半導体装置を示す平面図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4図3の第2電極対向部および中間電極対向部の間の領域の寸法と半導体装置の配線のインダクタンスとの関係を示すグラフである。
図5】この発明の実施の形態2に係る半導体装置を示す平面図である。
図6図5のVI-VI線に沿った断面図である。
図7】実施の形態2に係る半導体装置の変形例を示す平面図である。
図8】この発明の実施の形態3に係る半導体装置を示す断面図である。
図9図8の半導体装置の製造工程における液体樹脂の流動方向を示す図である。
図10】実施の形態3に係る半導体装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る半導体装置を備えた3相インバータ装置を示す回路図である。3相インバータ装置は、3つの半導体装置1を備えている。3つの半導体装置1のそれぞれは、3相インバータ装置における3つの相のそれぞれに対応している。3つの半導体装置1のそれぞれは、上アーム11と、下アーム12とを備えている。
【0010】
図2は、図1の半導体装置1を示す平面図である。図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。半導体装置1は、第1金属板である第1銅板101と、第2金属板である第2銅板102と、第1銅板101に設けられた第1半導体素子103と、第2銅板102に設けられた第2半導体素子104とを備えている。
【0011】
第1半導体素子103および第2半導体素子104のそれぞれは、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transitor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などから構成されている。また、第1半導体素子103および第2半導体素子104のそれぞれは、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)などから構成されている。半導体装置1は、第1半導体素子103および第2半導体素子104を1個ずつ、または、複数個ずつ備えている。この例では、半導体装置1は、第1半導体素子103および第2半導体素子104を3個ずつ備えている。図1では、ダイオードを備えた半導体装置1が示されているが、第1半導体素子103および第2半導体素子104がIGBTから構成されている場合には、半導体装置1は、ダイオードを備えなくてもよい。
【0012】
図2および図3に示すように、半導体装置1は、第1銅板101と第1半導体素子103の裏面とを互いに接合させる第1接合材105と、第2銅板102と第2半導体素子104の裏面とを互いに接合させる第1接合材106とを備えている。また、半導体装置1は、第1銅板101に接続された第1電極107と、第1半導体素子103の表面と第2銅板102とに接続された中間電極108とを備えている。また、半導体装置1は、第2半導体素子104の表面に接続された第2電極109と、第2銅板102に接続された出力配線110とを備えている。第1電極107は、図示しない外部電極に接続される。第2電極109は、図示しない外部電極に接続される。
【0013】
また、半導体装置1は、第1半導体素子103の表面と中間電極108とを互いに接合させる第2接合材111と、第2銅板102と中間電極108と互いに接合させる第2接合材112と、第2半導体素子104の表面と第2電極109とを互いに接合させる第2接合材113とを備えている。
【0014】
また、半導体装置1は、複数の第1制御端子114と、複数の第1ワイヤボンド115と、複数の第2制御端子116と、複数の第2ワイヤボンド117とを備えている。第1ワイヤボンド115は、第1半導体素子103の表面と第1制御端子114とに接続されている。第2ワイヤボンド117は、第2半導体素子104の表面と第2制御端子116とに接続されている。第1ワイヤボンド115および第2ワイヤボンド117のそれぞれは、アルミニウムから構成されている。第1半導体素子103の表面および第1制御端子114への第1ワイヤボンド115の接続、および、第2半導体素子104の表面および第2制御端子116への第2ワイヤボンド117の接続のそれぞれは、超音波接合によって行われる。
【0015】
また、半導体装置1は、絶縁性樹脂部118を備えている。絶縁性樹脂部118は、第1銅板101、第1半導体素子103、第2銅板102、第2半導体素子104、第1電極107、中間電極108および第2電極109に渡って設けられている。また、絶縁性樹脂部118は、第1電極107の一部、中間電極108の全体および第2電極109の一部を覆っている。また、絶縁性樹脂部118は、第1制御端子114の一部、第1ワイヤボンド115の全体、第2制御端子116の一部および第2ワイヤボンド117の全体を覆っている。
【0016】
絶縁性樹脂部118は、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などから構成されている。絶縁性樹脂部118は、トランスファーモールドまたはインジェクションモールドによって形成される。図2では、絶縁性樹脂部118が形成される際に液体の絶縁性樹脂が供給される流入口2が示されている。絶縁性樹脂部118には、流入口2にある絶縁性樹脂部118が切断されたことによって形成された流入口2の跡が形成される。したがって、絶縁性樹脂部118に対する流入口2の跡の位置が特定可能である。図2では、流入口2は、流入口2を通る液体の絶縁性樹脂の流れが絶縁性樹脂部118の奥行方向Aとなるように配置されている。なお、流入口2は、例えば、流入口2を通る液体の絶縁性樹脂の流れが絶縁性樹脂部118の高さ方向Bとなるように配置されてもよい。
【0017】
第2電極109における絶縁性樹脂部118に覆われた部分を第2電極樹脂被覆部119とする。第2電極樹脂被覆部119は、高さ方向Bについて中間電極108から離れて設けられ、中間電極108に対向する第2電極対向部120を有している。
【0018】
中間電極108は、第2電極対向部120に対向する中間電極対向部121と、絶縁性樹脂部118の幅方向Cについて中間電極対向部121から突出する中間電極突出部122とを有している。中間電極突出部122は、中間電極対向部121よりも幅方向Cについて、流入口2の近くに配置されている。言い換えれば、中間電極108は、第2電極109よりも、幅方向Cについて、流入口2の近くに配置されている。
【0019】
第2電極対向部120は、中間電極対向部121よりも絶縁性樹脂部118の表面118Aの近くに配置されている。高さ方向Bについて、第2電極対向部120と絶縁性樹脂部118の表面118Aとの間の領域aの寸法をL1とする。寸法L1は、第2電極対向部120と絶縁性樹脂部118の表面118Aとの間の最短距離である。高さ方向Bについて、中間電極対向部121と第2電極対向部120との間の領域bの寸法をL2とする。寸法L2は、中間電極対向部121と第2電極対向部120との間の最短距離である。この場合に、寸法L1は、寸法L2よりも小さい。すなわち、L1<L2が満たされている。
【0020】
第1電極107および第2電極109は、互いの電気的絶縁が確保可能な距離を保った状態で配置されている。第1電極107における絶縁性樹脂部118から突出する部分である第1電極露出部107Aおよび第2電極109における絶縁性樹脂部118から突出する部分である第2電極露出部109Aは、幅方向Cに互いに隣り合うように配置されている。
【0021】
第1銅板101および第2銅板102は、幅方向Cについて、互いに隣り合うように配置されている。第1銅板101は、第2銅板102よりも幅方向Cについて、流入口2の近くに配置されている。言い換えれば、流入口2の跡は、第2銅板102よりも第1銅板101の近くに配置されている。
【0022】
出力配線110には、図示しないモータが接続される。出力配線110は、第1電極露出部107Aおよび第2電極露出部109Aに対して、奥行方向Aについて、互いに反対方向に絶縁性樹脂部118から延びている。
【0023】
第1銅板101および第2銅板102は、絶縁物を介して互いに固定されてもよい。第1銅板101および第2銅板102のそれぞれは、例えば、絶縁シートに銅板が張り付けられたもの、絶縁物の銅パターンが設けられた絶縁基板などであってもよい。
【0024】
絶縁性樹脂部118の表面118Aに対して垂直方向に視た場合に、上アーム11および下アーム12を互いに接続する中間電極108の部分を上下アーム接続部分123とする。上下アーム接続部分123において、中間電極108および第2電極109のそれぞれの奥行方向Aの寸法が一致する場合に、半導体装置1における配線のインダクタンスが最も低減される。
【0025】
高さ方向Bについて、流入口2の位置は、第2電極109の位置と一致している。これにより、流入口2から供給された絶縁性樹脂部118を構成する液体の絶縁性樹脂は、第1銅板101の上面よりも上方から供給される。これにより、流入口2から供給された絶縁性樹脂の流れに発生する乱れが少なくなる。少なくとも、第1銅板101の上面よりも高さ方向Bについて高い位置に流入口2が配置されることによって、流入口2から注入された絶縁性樹脂が第1銅板101の側面に当たることが防止される。絶縁性樹脂が第1銅板101の側面に当たる場合には、絶縁性樹脂の流れに乱れが発生し、絶縁性樹脂が金型の全領域に行き渡ることが難しくなる。
【0026】
半導体装置1の配線のインダクタンスの大きさは、自己誘導による自己インダクタンスの大きさと、相互誘導による相互インダクタンスの大きさとの和となる。自己インダクタンスは、配線の長さに依存する。相互インダクタンスは、励起磁界に依存する。したがって、半導体装置1の配線のインダクタンスを低減させるためには、配線の長さを小さくすること、および、励起磁界を打ち消すことが重要となる。
【0027】
3相インバータ装置では、図示しない制御装置によって、第1半導体素子103および第2半導体素子104のそれぞれの通電が制御される。3相インバータ装置では、第1半導体素子103が通電された場合に、第2半導体素子104への通電が遮断される。また、3相インバータ装置では、第2半導体素子104が通電された場合に、第1半導体素子103への通電が遮断される。したがって、第1半導体素子103および第2半導体素子104には、相補に通電および通電の遮断が繰り返される。これにより、第1電極107および第2電極109には、互いに逆方向の励起磁界が発生し、第2電極109および中間電極108には、互いに逆方向の励起磁界が発生する。その結果、第1電極107および第2電極109の間と、第2電極109および中間電極108の間とにおいて、互いの励起磁界が打ち消し合う。互いの励起磁界が打ち消しあうことによって、半導体装置1の配線の相互インダクタンスが低減される。その結果、半導体装置1の配線のインダクタンスが低減される。
【0028】
しかしながら、第2電極109および中間電極108における互いに対向する部分の間には、電気的絶縁が必要である。言い換えれば、第2電極対向部120と中間電極対向部121との間には、電気的絶縁が必要である。車載用の電力変換装置では、第2電極109および中間電極108における互いに対向する部分の間では、最大1.2kV程度の電圧に耐えられる電気的絶縁が必要である。
【0029】
第2電極109および中間電極108のそれぞれには、交流電流が流れる。したがって、第2電極対向部120および中間電極対向部121の間に放電が発生する場合に、絶縁性樹脂部118に劣化が発生して、半導体装置1において絶縁破壊が発生する恐れがある。そのため、第2電極対向部120および中間電極対向部121の間の絶縁性樹脂部118の部分では、ボイドなどの欠陥が問題となる。
【0030】
第2電極対向部120と中間電極対向部121との間を確実に絶縁するために、第2電極109および中間電極108の間に絶縁紙などの絶縁物を予め挿入することが考えられる。しかしながら、熱可塑性の絶縁性樹脂によって絶縁性樹脂部118が成形される時に、挿入された絶縁物が第2電極109と中間電極108との間の領域からずれないように工夫する必要がある。また、挿入された絶縁物を第2電極109と中間電極108との間に配置する場合に、絶縁物の位置決めが難しい。したがって、絶縁物を第2電極109と中間電極108との間に挿入することによって、半導体装置1の生産性が悪化する。
【0031】
領域bへの絶縁性樹脂の注入にかかる時間は、領域bの高さ方向Bの寸法L2が小さくなるほど長くなる。領域bへの絶縁性樹脂の注入に長時間がかかる場合には、領域bへ絶縁性樹脂の注入が終わる前に、第2電極109の上面に絶縁性樹脂の圧力が作用する場合がある。この場合に、第2電極109の変形が発生する。
【0032】
実施の形態1では、高さ方向Bについて、領域aの寸法L1は、領域bの寸法L2よりも小さい。これにより、領域aを通る絶縁性樹脂の流動抵抗は、領域bを通る絶縁性樹脂の流動抵抗よりも大きくなる。したがって、領域bに確実に絶縁性樹脂が確実に注入される。
【0033】
また、実施の形態1では、中間電極108が中間電極突出部122を有している。中間電極突出部122は、流入口2から注入された絶縁性樹脂を領域bに導く。これにより、絶縁性樹脂が領域bに確実に注入される。したがって、絶縁性樹脂を注入する注型工程のみによって、第2電極109と中間電極108との間の電気的絶縁を確保することができる。
【0034】
第2電極対向部120および中間電極対向部121における互いに対向する面の面積が小さい場合には、領域bに絶縁性樹脂を確実に注入することができる。また、高さ方向Bについての領域bの寸法L2が大きい場合にも、領域bに絶縁性樹脂を確実に注入することができる。したがって、例えば、寸法L2が1mm程度である場合には、寸法L1が寸法L2よりも大きい場合であっても、領域bに絶縁性樹脂を確実に注入することができる。しかしながら、第2電極対向部120および中間電極対向部121における互いに対向する面の面積が同一であっても、高さ方向についての領域bの寸法L2が変化することによって、半導体装置1の配線のインダクタンスが変化する。
【0035】
図4は、図3の第2電極対向部120および中間電極対向部121の間の領域bの寸法L2と半導体装置1の配線のインダクタンスとの関係を示すグラフである。高さ方向についての領域bの寸法L2が小さくなるにつれて、第2電極109および中間電極108の間における互いに励起磁界を打ち消す効果が大きくなる。したがって、高さ方向についての領域bの寸法L2が小さくなることによって、相互インダクタンスを低減させる効果が大きくなる。その結果、半導体装置1の配線のインダクタンスを低減させることができる。
【0036】
半導体装置1の配線のインダクタンスが低減されることによって、第1半導体素子103および第2半導体素子104がスイッチングする場合に発生するサージ電圧を低くすることができる。これにより、第1半導体素子103および第2半導体素子104に発生する電力損失が低減される。その結果、第1半導体素子103および第2半導体素子104の小型化を図ることができ、または、第1半導体素子103および第2半導体素子104のサイズを維持したまま出力を大きくすることができる。
【0037】
第1接合材105、106の融点は、第2接合材111、112、113の融点よりも高い。第1接合材105、106としては、例えば、Agシンターが挙げられる。第1電極107、中間電極108および第2電極109は、一括して接合される。第1電極107、中間電極108および第2電極109のそれぞれが接合される時に、第1接合材105および第1接合材106が溶融する場合には、第1半導体素子103が第1銅板101から移動し、第2半導体素子104が第2銅板102から移動する可能性がある。第1半導体素子103が第1銅板101から移動し、または、第2半導体素子104が第2銅板102から移動する場合には、第1ワイヤボンド115または第2ワイヤボンド117に影響が発生する。また、第1半導体素子103が第1銅板101から移動する場合には、第2接合材111または中間電極108が第1半導体素子103における他の電位のパッドに接触する可能性がある。また、第2半導体素子104が第2銅板102から移動する場合には、第2接合材113または第2電極109が第2半導体素子104における他の電気のパッドに接触する可能性がある。これらの場合には、半導体装置1が不良となる。
【0038】
第1接合材105、106としてAgシンターのような焼結材が用いられた場合に、第1半導体素子103および第2半導体素子104のそれぞれが接合される時に、第2接合材111および第2接合材113が溶融しない。これにより、第1半導体素子103および第2半導体素子104の位置精度が向上する。第1半導体素子103および第2半導体素子104の位置精度が向上することによって、第1電極107、中間電極108および、第2電極109の位置ずれに裕度ができる。その結果、半導体装置1の生産性を向上させることができる。
【0039】
第1銅板101と中間電極108との間の領域cに対しても、液体の絶縁性樹脂を確実に注入する必要がある。領域bに注入された絶縁性樹脂が領域cに注入される。したがって、高さ方向Bについての領域cの寸法L3が、例えば、0.1mmを下回る寸法でない場合には、領域cに絶縁性樹脂が確実に注入される。
【0040】
高さ方向Bについての領域cの寸法L3が1mmを超える場合には、領域cに絶縁性樹脂がより確実に注入される。しかしながら、第1銅板101と中間電極108との間においても、互いに打ち消すような励起磁界が発生する。したがって、寸法L3が大きくなることによって、第1銅板101および中間電極108の間における配線のインダクタンスが増加する。また、寸法L3が大きくなることによって、半導体装置1の全体が大きくなり、また、絶縁性樹脂部118に用いられる絶縁性樹脂の量が多くなる。
【0041】
半導体装置1について実際の設計では、第1半導体素子103の周囲の領域であって絶縁を確保する領域の大きさ、または、必要な信頼性を満たすための第2接合材111の高さ方向Bの寸法によって、領域cの寸法L3が決定される。なお、絶縁性樹脂が円滑に注入されるように、第1電極107、中間電極108および第2電極109のそれぞれの適所に貫通孔が形成されてもよい。
【0042】
流入口2は、幅方向Cについて第2銅板102よりも第1銅板101の近くに配置されている。流入口2が幅方向Cについて第1銅板101よりも第2銅板102の近くに配置された場合には、第2電極109および中間電極108は、流入口2から注入された絶縁性樹脂の流れを妨げる。これにより、絶縁性樹脂が流入口2から第2電極109および中間電極108に到達した時に、第2電極109および中間電極108よりも下流において、絶縁性樹脂の流れに淀みが発生する。その結果、領域bおよび領域cへ絶縁性樹脂が注入されにくくなる。
【0043】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る半導体装置1によれば、第2電極対向部120は、中間電極対向部121よりも絶縁性樹脂部118の表面118Aの近くに配置されている。第2電極対向部120と絶縁性樹脂部118の表面118Aとの間の最短距離は、中間電極対向部121と第2電極対向部120との間の最短距離よりも小さい。これにより、半導体装置1の配線のインダクタンスを低減させるとともに、第2電極109と中間電極108との間の絶縁性能を向上させることができる。
【0044】
また、中間電極108は、中間電極対向部121と、幅方向Cについて中間電極対向部121から突出する中間電極突出部122とを有している。これにより、第2電極対向部120と中間電極対向部121との間に絶縁性樹脂をより確実に注入することができる。
【0045】
また、第1接合材105、106の融点は、第2接合材111、112、113の融点よりも高い。これにより、第1半導体素子103が第1銅板101から移動することを抑制することができ、第2半導体素子104が第2銅板102から移動することを抑制することができる。
【0046】
また、流入口2の跡は、第2銅板102よりも第1銅板101の近くに配置されている。これにより、領域bへの絶縁性樹脂の注入を容易にすることができる。
【0047】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2に係る半導体装置を示す平面図である。図6は、図5のVI-VI線に沿った矢視断面図である。絶縁性樹脂部118の表面118Aには、凹部124が形成されている。凹部124は、表面118Aに対して垂直方向に視た場合に、第1ワイヤボンド115および第2ワイヤボンド117における幅方向Cについて外側の部分を避けるように形成されている。言い換えれば、凹部124は、幅方向Cについて表面118Aにおける中間部に形成されている。この例では、第2電極対向部120と絶縁性樹脂部118の表面118Aとの間の領域aとは、第2電極対向部120と凹部124の底面124Aとの間の領域aである。高さ方向Bについての領域aの寸法L1は、第2電極対向部120と絶縁性樹脂部118の表面118Aとの間の最短距離である。幅方向Cについての凹部124の側面は、S字形状となることが望ましい。凹部124の側面がS字形状である場合には、幅方向Cについての凹部124の側面と底面124Aとの接続部分は湾曲しており、幅方向Cについての凹部124の側面と表面118Aとの接続部分は湾曲している。
【0048】
絶縁性樹脂部118の表面118Aに凹部124が形成されることによって、実施の形態1と比較して、高さ方向Bについての領域aの寸法L1が小さくなっている。
【0049】
半導体装置1における絶縁性樹脂部118が形成される場合に、図示しない金型に各部品がセットされて、絶縁性樹脂が金型の内部に注入され、絶縁性樹脂に圧力がかけられて成形される。したがって、半導体装置1における絶縁性樹脂部118から露出する部分である配線露出部と金型との間から絶縁性樹脂が漏れることを防止するために、配線露出部と金型との間をシールする必要がある。配線露出部としては、第1電極107、第2電極109、第1制御端子114および第2制御端子116のそれぞれの部分が挙げられる。トランスファーモールド成形によって絶縁性樹脂部118が成形される場合には、配線露出部と金型との間のシールに高い精度が必要である。
【0050】
配線露出部は、1枚の銅板を板金加工することによって形成されている。これにより、配線露出部と金型との間のシールの精度を向上させることができる。また、配線露出部を金型にセットする場合に、配線露出部の位置決め精度を向上させることができる。また、配線露出部が1枚の銅板から形成されることによって、部品点数を削減することができる。
【0051】
配線露出部が1枚の銅板から構成されることによって、第1電極107、第2電極109、第1制御端子114および第2制御端子116のそれぞれは、同一平面上に配置される。また、第1電極107、第2電極109、第1制御端子114および第2制御端子116のそれぞれは、中間電極108よりも絶縁性樹脂部118の表面118Aの近くに配置される。第1制御端子114と第1半導体素子103とには、第1ワイヤボンド115が接続され、第2制御端子116と第2半導体素子104とには、第2ワイヤボンド117が接続されている。第1ワイヤボンド115には、第1ワイヤボンド115と第1制御端子114および第1半導体素子103との接合部が破断することを抑制するために、ループ115Aが形成されている。第2ワイヤボンド117には、第2ワイヤボンド117と第2制御端子116および第2半導体素子104との接合部が破断することを抑制するために、ループ117Aが形成されている。ループ115Aおよびループ117Aのそれぞれにおける頂部は、第1制御端子114および第2制御端子116よりも1mm~2mm程度上方に配置される。
【0052】
したがって、絶縁性樹脂部118の表面118Aに凹部124が形成されていない場合には、第2電極対向部120と絶縁性樹脂部118の表面118Aとの間の領域aの寸法L1は、1.5mm~2mm程度となる。この場合には、第2電極対向部120と中間電極対向部121との間の領域bの寸法L2は、領域bに絶縁性樹脂が注入できる寸法でなくてはならない。
【0053】
絶縁性樹脂部118の表面118Aに凹部124が形成されることによって、絶縁性樹脂部118の表面118Aにおける第2電極対向部120に対向する部分を絶縁性樹脂部118の底面側に移動させることができる。これにより、第1ワイヤボンド115および第2ワイヤボンド117が表面118Aから露出することなく、寸法L1を寸法L2よりも小さくすることができる。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0054】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係る半導体装置1によれは、幅方向Cについての絶縁性樹脂部118の表面118Aの中間部には、幅方向Cに延びた凹部124が形成されている。第2電極対向部120は、凹部124に沿って配置されている。これにより、第2電極対向部120と絶縁性樹脂部118の表面118Aとの間の最短距離を、中間電極対向部121と第2電極対向部120との間の最短距離よりも容易に小さくすることができる。
【0055】
なお、実施の形態2では、絶縁性樹脂部118の表面118Aに1つの凹部124が形成された構成について説明した。しかしながら、絶縁性樹脂部118の表面118Aに複数の凹部124が形成された構成であってもよい。図7は、実施の形態2に係る半導体装置1の変形例を示す平面図である。図7では、絶縁性樹脂部118の表面118Aに3つの凹部124が形成されている。それぞれの凹部124は、幅方向Cに延びて形成されている。また、それぞれの凹部124は、奥行方向Aに並べられている。絶縁性樹脂の流入方向および凹部124が延びる方向は、互いに垂直となっている。凹部124の形状および凹部124の数は、半導体装置1のサイズによって決められる。なお、絶縁性樹脂部118の表面118Aに凹部124が形成されることによって、半導体装置1に反りが発生する場合がある。
【0056】
実施の形態3.
図8は、この発明の実施の形態3に係る半導体装置を示す断面図である。図9は、図8の半導体装置の製造工程における液体の絶縁性樹脂の流動方向を示す図である。第2電極対向部120は、第2電極対向部本体125と、幅方向Cについての第2電極対向部本体125の端部から絶縁性樹脂部118の表面118Aに向かって突出する第2電極突出部126を有している。また、第2電極対向部120は、奥行方向Aについての第2電極対向部本体125の端部から絶縁性樹脂部118の表面118Aに向かって突出する第2電極突出部127を有している。第2電極突出部126、127は、第2電極109を構成する金属板を折り曲げることによって形成されている。第2電極樹脂被覆部119が第2電極突出部126、127を有することによって、半導体装置1の製造工程における絶縁性樹脂の流動抵抗が上昇する。
【0057】
第2電極突出部126は、幅方向Cについての第2電極対向部本体125の端部から表面118Aに近づく方向へ湾曲するとともに、幅方向Cについて第2電極対向部本体125から離れるようにさらに湾曲している。言い換えれば、第2電極突出部126は、断面S字形状に形成されている。
【0058】
第2電極突出部127は、奥行方向Aについての第2電極対向部本体125の端部から表面118Aに近づく方向へ湾曲するとともに、奥行方向Aについて第2電極対向部本体125から離れるようにさらに湾曲している。言い換えれば、第2電極突出部127は、断面S字形状に形成されている。
【0059】
実施の形態3では、第2電極突出部126、127と絶縁性樹脂部118の表面118Aとの間の領域が、第2電極対向部120と絶縁性樹脂部118の表面118Aとの間の領域aとなる。第2電極突出部126、127と絶縁性樹脂部118の表面118Aとの間の最短距離が、第2電極対向部120と絶縁性樹脂部118の表面118Aとの間の最短距離となる。領域aの寸法L1は、領域bの寸法L2よりも小さい。
【0060】
第2電極突出部126、127と中間電極突出部122とによって、液体の絶縁性樹脂が第2電極109と中間電極108との間に導かれる。これにより、第2電極109と中間電極108との間に絶縁性樹脂をより確実に注入することができる。その他の構成は、実施の形態1または実施の形態2と同様である。
【0061】
以上説明したように、この発明の実施の形態3に係る半導体装置1によれは、第2電極対向部120は、幅方向Cについての第2電極対向部本体125の端部から絶縁性樹脂部118の表面118Aに向かって突出する第2電極突出部126を有している。これにより、絶縁性樹脂部118を構成する絶縁性樹脂が第2電極109と中間電極108との間に導かれる。その結果、第2電極109と中間電極108との間の電気的絶縁を確保することができる。また、実施の形態3に係る半導体装置1は、実施の形態2と比較して、半導体装置1の反りの発生を抑制することができる。
【0062】
また、第2電極突出部126は、幅方向Cについての第2電極対向部本体125の端部から表面118Aに近づく方向へ湾曲するとともに、幅方向Cについて第2電極対向部本体125から離れるようにさらに湾曲している。これにより、領域bへの絶縁性樹脂の注入を容易にすることができ、また、隙間aに注入される絶縁性樹脂の流動抵抗を上昇させることができる。
【0063】
なお、実施の形態3では、第2電極109を構成する金属板が折り曲げられることによって、第2電極突出部126、127が形成される構成について説明した。図10は、実施の形態3に係る半導体装置1の変形例を示す断面図である。第2電極109がブロック128を備えることによって、液体の絶縁性樹脂の流動抵抗を上昇させる構成であってもよい。図10では、第2電極対向部120は、幅方向Cについての第2電極対向部本体125の端部と絶縁性樹脂部118の表面118Aとの間に設けられたブロック128を有している。これにより、絶縁性樹脂部118を構成する絶縁性樹脂が第2電極109と中間電極108との間に導かれる。なお、図10に示す半導体装置1の場合、ブロック128を第2電極対向部本体125に接合する場合に、第2電極109に傾きが発生し易くなる。
【符号の説明】
【0064】
1 半導体装置、2 流入口、11 上アーム、12 下アーム、101 第1銅板、102 第2銅板、103 第1半導体素子、104 第2半導体素子、105、106 第1接合材、107 第1電極、108 中間電極、109 第2電極、110 出力配線、111、112、113 第2接合材、114 第1制御端子、115 第1ワイヤボンド、115A ループ、116 第2制御端子、117 第2ワイヤボンド、117A ループ、118 絶縁性樹脂部、118A 表面、119 第2電極樹脂被覆部、120 第2電極対向部、121 中間電極対向部、122 中間電極突出部、123 上下アーム接続部分、124 凹部、125 第2電極対向部本体、126、127 第2電極突出部、128 ブロック。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10