(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20241108BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241108BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241108BHJP
G06K 19/02 20060101ALI20241108BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 613Z
H01L29/78 618G
H01L27/088 331E
H01L27/088 E
G06K19/02
G06K19/07 020
G06K19/07 230
(21)【出願番号】P 2023116445
(22)【出願日】2023-07-18
(62)【分割の表示】P 2021172259の分割
【原出願日】2010-11-09
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2009265594
(32)【優先日】2009-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 清
(72)【発明者】
【氏名】小山 潤
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-114453(JP,A)
【文献】特開2009-094492(JP,A)
【文献】特開2009-135350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 27/088
H01L 21/8234
G06K 19/02
G06K 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを有する第1のチャネル形成領域を有する第1のトランジスタと、
酸化物半導体を有する第2のチャネル形成領域を有する第2のトランジスタと、を有する半導体装置であって、
第1の絶縁層を介して前記第1のチャネル形成領域上に位置する領域を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層と同じ材料を有する第2の導電層と、
前記第1の導電層の上面と接する領域と、前記第2の導電層の上面と接する領域と、を有する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の上方に位置する領域を有し、前記第2のチャネル形成領域を有する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上方に位置する領域を有する、第3の絶縁層と、
前記第3の絶縁層の上面と接する領域を有し、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と電気的に接続された第3の導電層と、
前記第3の絶縁層の上面と接する領域を有し、前記第2のトランジスタのソース及びドレインの一方と電気的に接続された第4の導電層と、を有し、
前記第3の導電層は、前記第4の導電層と同じ材料を有し、
前記第4の導電層は、前記第2の導電層と電気的に接続される、半導体装置。
【請求項2】
シリコンを有する第1のチャネル形成領域を有する第1のトランジスタと、
酸化物半導体を有する第2のチャネル形成領域を有する第2のトランジスタと、を有する半導体装置であって、
第1の絶縁層を介して前記第1のチャネル形成領域上に位置する領域を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層と同じ材料を有する第2の導電層と、
前記第1の導電層の上面と接する領域と、前記第2の導電層の上面と接する領域と、を有する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の上方に位置する領域を有し、前記第2のチャネル形成領域を有する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上方に位置する領域を有する、第3の絶縁層と、
前記第3の絶縁層の上面と接する領域を有し、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と電気的に接続された第3の導電層と、
前記第3の絶縁層の上面と接する領域を有し、前記第2のトランジスタのソース及びドレインの一方と電気的に接続された第4の導電層と、
前記第2のチャネル形成領域上に位置する領域を有する第5の導電層と、を有し、
前記第3の導電層は、前記第4の導電層と同じ材料を有し、
前記第4の導電層は、前記第2の導電層と電気的に接続され、
前記第5の導電層の側面は、前記第3の絶縁層と接する領域を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。特に無線通信機能を有する半導体装置に関する。
【0002】
なお、本明細書において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装
置全般を指し、電気光学装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
無線でのデータの送受信が可能な無線通信機能を有する半導体装置は、様々な分野にお
いて実用化が進められている。このような半導体装置は、新しい形態の通信情報端末とし
てさらなる市場の拡大が見込まれている。実用化されている無線通信機能を有する半導体
装置は、アンテナと、半導体素子を用いて形成された集積回路とが同一基板上に形成され
ている。また、無線通信機能を有する半導体装置は、無線タグ、RF(Radio Fr
equency)タグ、RFID(Radio Frequency Identifi
cation)タグ、IC(Integrated Circuit)タグ、またはID
(Identification)タグとも呼ばれる。
【0004】
当該半導体装置は、アクティブ型と、パッシブ型の2種に大別される。前者は、半導体
装置内に電池を有し、該電池を電力供給源として動作する半導体装置であり、後者は、半
導体装置内に電池などの電力供給源が存在せず、外部の質問器(リーダ、リーダライタ、
R/Wともいう)から入力される信号を電力供給源として動作する半導体装置である。
【0005】
アクティブ型無線タグは、電力供給源を内蔵しているため、パッシブ型無線タグと比較
し質問器との通信距離を長くすることができる。ただし、アクティブ型無線タグは、応答
する質問器の有無にかかわらず常時又は定期的に動作(信号の生成)を行うため、消費電
力が大きくなる。
【0006】
アクティブ型無線タグの消費電力を低減する技術が特許文献1に開示されている。特許
文献1で開示されるアクティブ型無線タグ(アクティブ無線タグ)は、従来のアクティブ
型無線タグの構成に加えて、外部からの信号を受信する第2のアンテナと、当該信号を用
いて発電する発電器と、該発電器の出力電圧が入力される電圧検知回路とを有し、該電圧
検知回路によって間欠動作が制御される。これにより、消費電力を低減することができる
。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、間欠動作を行う半導体装置で消費される電力は、動作時における消費電
力のみならず待機時における消費電力(以下、待機電力ともいう)も含まれる。なお、こ
こでは、待機電力とは、電池が電気的に接続された素子又は回路を介した微量な放電に起
因する消費電力を指す。特に、特許文献1で開示される間欠動作を制御することが可能な
半導体装置においては、消費電力に占める待機電力の割合が高くなる。そのため、当該半
導体装置において消費電力を低減するには、待機電力を低減することが重要となる。
【0009】
そこで、本発明の一態様は、半導体装置の待機電力を低減することを課題の一とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、半導体装置を長寿命化することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、電力供給源となる電池と、特定の回路とがチャネル形成領域が酸化物半導
体によって構成されるトランジスタを介して電気的に接続されることによって解決するこ
とができる。なお、当該酸化物半導体は、電子供与体(ドナー)となる水素を除去するこ
とで、真性又は実質的に真性な半導体である。
【0012】
具体的には、当該酸化物半導体に含まれる水素が5×1019(atoms/cm3)
以下、好ましくは5×1018(atoms/cm3)以下、より好ましくは5×101
7(atoms/cm3)以下である。このように水素濃度を低減することによって、キ
ャリア密度を1×1014cm-3未満、好ましくは1×1012cm-3未満、さらに
好ましくは測定限界以下の1×1011cm-3未満とすることが可能になる。
【0013】
このように高純度化された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いるこ
とで、チャネル幅が10mmの場合でさえも、当該トランジスタのオフ状態におけるドレ
イン電流は1×10-13[A]以下となるように作用する。すなわち、高純度化された
酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に適用することによって、リーク電流を
大幅に低減することができる。
【0014】
すなわち、本発明の一態様は、アンテナと、電池と、アンテナから入力される信号を復
調する復調回路と、復調回路から入力される信号及び電池から供給される電源電圧を用い
て動作する信号処理部と、復調回路から入力される信号によって制御されるパワー制御回
路と、を有し、信号処理部は、パワー制御回路から入力される信号によってスイッチング
が制御されるトランジスタと、トランジスタを介して電池の陽極又は陰極に電気的に接続
された機能回路と、を有し、トランジスタのチャネル形成領域は、水素濃度が5×101
9(atoms/cm3)以下の酸化物半導体によって構成される半導体装置である。
【0015】
また、上記構成に含まれる復調回路はタイマーに置換することが可能である。つまり、
アンテナと、電池と、定期的に信号を出力するタイマーと、タイマーから入力される信号
及び電池から供給される電源電圧を用いて動作する信号処理部と、タイマーから入力され
る信号によって制御されるパワー制御回路と、を有し、信号処理部は、パワー制御回路か
ら入力される信号によってスイッチングが制御されるトランジスタと、トランジスタを介
して電池の陽極又は陰極に電気的に接続された機能回路と、を有し、トランジスタのチャ
ネル形成領域は、水素濃度が5×1019(atoms/cm3)以下の酸化物半導体に
よって構成される半導体装置も本発明の一態様である。
【0016】
また、上記構成における電池が二次電池であり、且つ上記構成に加えて、アンテナから
入力される信号を整流する整流回路と、整流回路から入力される信号を用いて二次電池を
充電する充電回路と、二次電池を用いて電源電圧を生成する安定化電源回路と、を有する
半導体装置も本発明の一態様である。
【0017】
なお、上記の機能回路としては、例えば論理ゲートなどが挙げられる。当該論理ゲート
は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)によって構成することが可能であるし、N型ト
ランジスタ(NMOS)のみによって構成することも可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様の半導体装置は、機能回路と、電池と、機能回路と電池の電気的な接続
を制御するトランジスタとを有する。該トランジスタのチャネル形成領域は、水素濃度が
低減された酸化物半導体によって構成される。具体的には、当該酸化物半導体の水素濃度
は、5×1019(atoms/cm3)以下である。そのため、待機状態において当該
トランジスタをオフすることにより、当該トランジスタを介した放電を抑制することがで
きる。その結果、当該半導体装置の待機電力を低減することができる。また、待機状態に
おける電池の放電を低減することで、半導体装置を長寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態1で説明する半導体装置の構成例を示す図。
【
図2】実施の形態2で説明する半導体装置の構成例を示す図。
【
図3】実施の形態3で説明する半導体装置の構成例を示す図。
【
図4】実施の形態4で説明する半導体装置の構成例を示す図。
【
図5】(A)~(C)実施の形態4で説明する半導体装置が有する論理ゲートの構成例を示す図。
【
図6】(A)~(C)実施の形態4で説明する半導体装置が有する論理ゲートの構成例を示す図。
【
図7】実施の形態5で説明するP型トランジスタ及びN型トランジスタの構成例を示す断面図。
【
図8】(A)~(H)実施の形態5で説明するP型トランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【
図9】(A)~(G)実施の形態5で説明するN型トランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【
図10】(A)~(D)実施の形態5で説明するN型トランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【
図11】実施の形態5で説明するP型トランジスタ及びN型トランジスタの構成例を示す断面図。
【
図12】(A)、(B)実施の形態5で説明するP型トランジスタ及びN型トランジスタの構成例を示す断面図。
【
図13】(A)、(B)実施の形態5で説明するP型トランジスタ及びN型トランジスタの構成例を示す断面図。
【
図14】(A)、(B)実施の形態5で説明するP型トランジスタ及びN型トランジスタの構成例を示す断面図。
【
図15】実施の形態6で説明するトランジスタの構成例を示す(A)平面図、(B)断面図。
【
図16】(A)~(E)実施の形態6で説明するトランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【
図17】(A)~(E)実施の形態7で説明するトランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【
図18】(A)~(D)実施の形態8で説明するトランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【
図19】実施の形態9で説明する半導体装置の使用例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態
および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、
本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0021】
なお、トランジスタのソース端子及びドレイン端子は、トランジスタの構造や動作条件
等によって替わるため、いずれがソース端子又はドレイン端子であるかを特定することが
困難である。そこで、本書類においては、ソース端子及びドレイン端子の一方を第1端子
、ソース端子及びドレイン端子の他方を第2端子と表記し、区別することとする。
【0022】
また、各実施の形態の図面等において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、又は領域は、
明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限
定されない。また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構
成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記
する。
【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置の一例について説明する。具体的には、電池を電力供給
源とした無線通信機能を有する半導体装置の一例について
図1を参照して説明する。
【0024】
図1に示す半導体装置は、無線信号の送受信が可能なアンテナ10と、電源電圧(VD
D)の供給源となる電池11と、アンテナ10から入力される信号を復調する復調回路1
2と、復調回路12から入力される信号及び電池11から供給される電源電圧(VDD)
を用いて動作する信号処理部13と、復調回路12から入力される信号及び信号処理部1
3から入力される信号によって制御されるパワー制御回路14とを有する。なお、本実施
の形態において、動作とは、信号処理部13又は信号処理部13の一部において行われる
信号の生成を指すこととする。
【0025】
さらに、信号処理部13は、パワー制御回路14から入力される信号によってスイッチ
ングが制御されるトランジスタ15を有する。具体的には、トランジスタ15は、復調回
路12からパワー制御回路14に入力される信号によってオフ状態からオン状態へのスイ
ッチングが制御され、信号処理部13からパワー制御回路14に入力される信号によって
オン状態からオフ状態へのスイッチングが制御される。
【0026】
また、信号処理部13は、復調回路12から入力される信号及び電源電圧(VDD)を
用いて動作する機能回路(図示しない)を有する。なお、トランジスタ15は、機能回路
と、電池11の陽極又は陰極との間に設けられる。すなわち、機能回路が、トランジスタ
15を介して、電池11の陽極又は陰極に電気的に接続されている。また、当該機能回路
は、トランジスタ15がオン状態にある期間において、動作を行うことが可能である。
【0027】
また、トランジスタ15のチャネル形成領域は、水素濃度が5×1019(atoms
/cm3)以下、好ましくは5×1018(atoms/cm3)以下、さらに好ましく
は5×1017(atoms/cm3)以下の酸化物半導体によって構成されている。す
なわち、トランジスタ15は、キャリアの供与体となる水素を極めて低濃度にまで低下さ
せた高純度化が図られた酸化物半導体をチャネル形成領域に適用したトランジスタである
。なお、当該酸化物半導体層中の水素濃度測定は、二次イオン質量分析法(SIMS:S
econdary Ion Mass Spectrometry)で行ったものである
。
【0028】
これにより、トランジスタ15のリーク電流を大幅に低減することが可能である。加え
て、本実施の形態の半導体装置は、待機状態においてトランジスタ15がオフ状態を維持
する。そのため、待機状態における電池11の放電を抑制することができる。つまり、半
導体装置の待機電力を低減することができる。また、待機状態における電池11の放電を
抑制することで、半導体装置を長寿命化することができる。
【0029】
<変形例>
なお、上述した半導体装置は、本実施の形態の半導体装置の一例であり、上述した半導
体装置と異なる点を有する半導体装置も本実施の形態には含まれる。
【0030】
例えば、上述した半導体装置においては、トランジスタ15は、機能回路と、電池11
の陽極又は陰極との間に設けられる構成について示したが、本実施の形態の半導体装置は
当該構成に限定されない。本実施の形態の半導体装置において、トランジスタ15は、機
能回路の構成要素であっても構わない。また、トランジスタ15は、必ずしも電池11と
直接接続される必要はない。直列に接続された回路又はトランジスタとの順序を入れ替え
ることで、機能を保ちつつ、当該機能回路内に設けられても構わない。
【0031】
また、上述した半導体装置においては、トランジスタ15のオン状態からオフ状態への
スイッチングは、信号処理部13の出力信号によって制御される構成について示したが、
本実施の形態の半導体装置は当該構成に限定されない。本実施の形態の半導体装置におい
て、トランジスタ15のオン状態からオフ状態へのスイッチングは、復調回路12から入
力される信号によって制御される構成であっても構わない。また、トランジスタ15がオ
フ状態からオン状態へスイッチングした時点から特定の時間が経過した後に、オン状態か
らオフ状態へのスイッチングが行われる構成であっても構わない。
【0032】
なお、本実施の形態の内容又は該内容の一部は、他の実施の形態の内容又は該内容の一
部と自由に組み合わせることが可能である。
【0033】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置の一例について説明する。具体的には、電池を電力供給
源とした無線通信機能を有する半導体装置の一例について
図2を参照して説明する。
【0034】
図2に示す半導体装置は、無線信号の送受信が可能なアンテナ20と、電源電圧(VD
D)の供給源となる電池21と、定期的に信号を出力することで当該半導体装置の間欠動
作を制御するタイマー22と、タイマー22から入力される信号及び電池21から供給さ
れる電源電圧(VDD)を用いて動作する信号処理部23と、タイマー22から入力され
る信号及び信号処理部23から入力される信号によって制御されるパワー制御回路24と
を有する。なお、本実施の形態において、動作とは、信号処理部23又は信号処理部23
の一部において行われる信号の生成を指すこととする。
【0035】
さらに、信号処理部23は、パワー制御回路24から入力される信号によってスイッチ
ングが制御されるトランジスタ25を有する。具体的には、トランジスタ25は、タイマ
ー22からパワー制御回路24に入力される信号によってオフ状態からオン状態へのスイ
ッチングが制御され、信号処理部23からパワー制御回路24に入力される信号によって
オン状態からオフ状態へのスイッチングが制御される。
【0036】
また、信号処理部23は、タイマー22の出力信号及び電源電圧(VDD)を用いて動
作する機能回路(図示しない)を有する。なお、トランジスタ25は、機能回路と、電池
21の陽極又は陰極との間に設けられる。すなわち、機能回路が、トランジスタ25を介
して、電池21の陽極又は陰極に電気的に接続されている。また、当該機能回路は、トラ
ンジスタ25がオン状態にある期間において、動作を行うことが可能である。
【0037】
また、トランジスタ25のチャネル形成領域は、水素濃度が5×1019(atoms
/cm3)以下、好ましくは5×1018(atoms/cm3)以下、さらに好ましく
は5×1017(atoms/cm3)以下の酸化物半導体によって構成されている。す
なわち、トランジスタ25は、キャリアの供与体となる水素を極めて低濃度にまで低下さ
せた高純度化が図られた酸化物半導体をチャネル形成領域に適用したトランジスタである
。なお、当該酸化物半導体層中の水素濃度測定は、二次イオン質量分析法(SIMS:S
econdary Ion Mass Spectrometry)で行ったものである
。
【0038】
これにより、トランジスタ25のリーク電流を大幅に低減することが可能である。加え
て、本実施の形態の半導体装置は、待機状態においてトランジスタ25がオフ状態を維持
する。そのため、待機状態における電池21の放電を抑制することができる。つまり、半
導体装置の待機電力を低減することができる。また、待機状態における電池21の放電を
抑制することで、半導体装置を長寿命化することができる。
【0039】
<変形例>
なお、上述した半導体装置は、本実施の形態の半導体装置の一例であり、上述した半導
体装置と異なる点を有する半導体装置も本実施の形態には含まれる。
【0040】
例えば、上述した半導体装置においては、タイマー22の出力信号が信号処理部23及
びパワー制御回路24に入力される構成について示したが、本実施の形態の半導体装置は
当該構成に限定されない。本実施の形態の半導体装置において、タイマー22の出力信号
は、パワー制御回路のみに入力される構成であっても構わない。また、信号処理部23の
出力信号がタイマー22に入力される構成であっても構わない。例えば、信号処理部23
がタイマー22のリセット信号を出力してタイマー22に入力することで、次の動作時期
を制御することが可能である。
【0041】
なお、本実施の形態の内容又は該内容の一部は、他の実施の形態の内容又は該内容の一
部と自由に組み合わせることが可能である。
【0042】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置の一例について説明する。具体的には、二次電池を電力
供給源とした無線通信機能を有する半導体装置の一例について
図3を参照して説明する。
【0043】
図3に示す半導体装置は、無線信号の送受信が可能なアンテナ30と、電力供給源とな
る二次電池31と、アンテナ30から入力される信号を整流する整流回路32と、整流回
路32から入力される信号を用いて二次電池31の充電を行う充電回路33と、二次電池
31を用いて当該半導体装置内で用いられる電源電圧(VDD)を生成する安定化電源回
路34と、アンテナ30から入力される信号を復調する復調回路35と、復調回路35か
ら入力される信号及び安定化電源回路34から供給される電源電圧(VDD)を用いて動
作する信号処理部36と、復調回路35から入力される信号及び信号処理部36から入力
される信号によって制御されるパワー制御回路37とを有する。なお、本実施の形態にお
いて、動作とは、信号処理部36又は信号処理部36の一部において行われる信号の生成
を指すこととする。
【0044】
さらに、信号処理部36は、パワー制御回路37から入力される信号によってスイッチ
ングが制御されるトランジスタ38を有する。具体的には、トランジスタ38は、復調回
路35からパワー制御回路37に入力される信号によってオフ状態からオン状態へのスイ
ッチングが制御され、信号処理部36からパワー制御回路37に入力される信号によって
オン状態からオフ状態へのスイッチングが制御される。
【0045】
また、信号処理部36は、復調回路35から入力される信号及び電源電圧(VDD)を
用いて動作する機能回路(図示しない)を有する。なお、トランジスタ38は、機能回路
と、安定化電源回路34との間に設けられる。すなわち、機能回路が、トランジスタ38
及び安定化電源回路34を介して、二次電池31の陽極又は陰極に電気的に接続されてい
る。また、当該機能回路は、トランジスタ38がオン状態にある期間において、動作を行
うことが可能である。
【0046】
また、トランジスタ38のチャネル形成領域は、水素濃度が5×1019(atoms
/cm3)以下、好ましくは5×1018(atoms/cm3)以下、さらに好ましく
は5×1017(atoms/cm3)以下の酸化物半導体によって構成されている。す
なわち、トランジスタ38は、キャリアの供与体となる水素を極めて低濃度にまで低下さ
せた高純度化が図られた酸化物半導体をチャネル形成領域に適用したトランジスタである
。なお、当該酸化物半導体層中の水素濃度測定は、二次イオン質量分析法(SIMS:S
econdary Ion Mass Spectrometry)で行ったものである
。
【0047】
これにより、トランジスタ38のリーク電流を大幅に低減することが可能である。加え
て、本実施の形態の半導体装置は、待機状態においてトランジスタ38がオフ状態を維持
する。そのため、待機状態における二次電池31の放電を抑制することができる。つまり
、半導体装置の待機電力を低減することができる。また、待機状態における二次電池31
の放電を抑制することで、半導体装置を長寿命化することができる。
【0048】
さらに、
図3に示した半導体装置は、アンテナ30から入力される信号によって二次電
池31の充電が可能である。なお、当該半導体装置は、動作時において並行して充電を行
うことが可能であるし、待機状態においてアンテナ30から入力される信号を用いて充電
を行うことも可能である。
【0049】
また、当該半導体装置において、待機電力と同程度の電力を常時充電すれば、電池切れ
は起きない。さらに、当該半導体装置は上述したようにトランジスタ38を有することで
、待機電力を低減することができる。これにより、当該半導体装置の充電可能距離を向上
させることができる。このような特性を有する本実施の形態の半導体装置は、特にアクセ
スが難しい場所(体内、放射能、劇薬の存在する空間、又は真空空間など)において有効
である。
【0050】
<変形例>
なお、上述した半導体装置は、本実施の形態の半導体装置の一例であり、上述した半導
体装置と異なる点を有する半導体装置も本実施の形態には含まれる。
【0051】
例えば、上述した半導体装置においては、1つのアンテナ30を有し、アンテナ30を
用いて無線信号の送受信及び二次電池31の充電を行う構成について示したが、本実施の
形態の半導体装置は当該構成に限定されない。本実施の形態の半導体装置において、無線
信号の送受信のアンテナと、二次電池31の充電用のアンテナを別途設ける構成であって
も構わない。
【0052】
なお、本実施の形態の内容又は該内容の一部は、他の実施の形態の内容又は該内容の一
部と自由に組み合わせることが可能である。
【0053】
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体装置の一例について説明する。具体的には、二次電池を電力
供給源とした無線通信機能を有する半導体装置の一例について
図4を参照して説明する。
【0054】
図4に示す半導体装置は、無線信号の送受信が可能なアンテナ40と、電力供給源とな
る二次電池41と、アンテナ40から入力される信号を整流する整流回路42と、整流回
路42の出力信号を用いて二次電池41の充電を行う充電回路43と、二次電池41を用
いて当該半導体装置内で用いられる電源電圧(VDD)を生成する安定化電源回路44と
、アンテナ40から入力される信号を復調する復調回路45と、復調回路45から入力さ
れる信号及び安定化電源回路44から供給される電源電圧(VDD)を用いて動作する信
号処理部46と、復調回路45から入力される信号及び信号処理部46から入力される信
号によって制御されるパワー制御回路47とを有する。なお、本実施の形態において、動
作とは、信号処理部46又は信号処理部46の一部において行われる信号の生成を指すこ
ととする。
【0055】
さらに、信号処理部46は、復調回路45から入力される信号を用いて処理を行う論理
回路48と、当該半導体装置内で用いられるクロック信号(CK)を生成するクロック生
成回路49と、特定の外部情報を信号に変換するセンサ50と、情報を記憶するメモリ回
路51と、アンテナ40に負荷変調を与える変調回路52とを有する。なお、論理回路4
8、クロック生成回路49、センサ50、メモリ回路51、及び変調回路52のそれぞれ
には、パワー制御回路47から出力されるスタンバイ信号(Stdby)が入力される。
【0056】
本実施の形態の半導体装置に含まれる各種回路は、トランジスタを有する。ここでは、
論理回路48が有する論理ゲート(インバータ(NOTゲート)、NORゲート、及びN
ANDゲート)の具体的な回路構成例について
図5を参照して説明する。
【0057】
図5(A)にインバータの具体的な回路構成例を示す。
図5(A)に示すインバータは
、P型トランジスタ80と、N型トランジスタ81と、N型トランジスタ82とを有する
。
【0058】
P型トランジスタ80は、第1端子が電源電圧(VDD)を供給する配線に電気的に接
続される。
【0059】
N型トランジスタ81は、第1端子がP型トランジスタ80の第2端子に電気的に接続
される。
【0060】
N型トランジスタ82は、ゲート端子がスタンバイ信号(Stdby)を供給する配線
に電気的に接続され、第1端子がN型トランジスタ81の第2端子に電気的に接続され、
第2端子が接地される。
【0061】
なお、
図5(A)に示すインバータにおいて、P型トランジスタ80及びN型トランジ
スタ81のゲート端子に入力信号が入力され、P型トランジスタ80の第2端子及びN型
トランジスタ81の第1端子が電気的に接続するノードの電位がインバータの出力信号と
して出力される。
【0062】
図5(B)にNORゲートの具体的な回路構成例を示す。
図5(B)に示すNORゲー
トは、P型トランジスタ83と、P型トランジスタ84と、N型トランジスタ85と、N
型トランジスタ86と、N型トランジスタ87とを有する。
【0063】
P型トランジスタ83は、第1端子が電源電圧(VDD)を供給する配線に電気的に接
続される。
【0064】
P型トランジスタ84は、第1端子がP型トランジスタ83の第2端子に電気的に接続
される。
【0065】
N型トランジスタ85は、第1端子がP型トランジスタ84の第2端子に電気的に接続
される。
【0066】
N型トランジスタ86は、第1端子がP型トランジスタ84の第2端子及びN型トラン
ジスタ85の第1端子に電気的に接続される。
【0067】
N型トランジスタ87は、ゲート端子がスタンバイ信号(Stdby)を供給する配線
に電気的に接続され、第1端子がN型トランジスタ85の第2端子及びN型トランジスタ
86の第2端子に電気的に接続され、第2端子が接地される。
【0068】
なお、
図5(B)に示すNORゲートにおいて、P型トランジスタ83及びN型トラン
ジスタ86のゲート端子に第1の入力信号が、P型トランジスタ84及びN型トランジス
タ85のゲート端子に第2の入力信号が入力され、P型トランジスタ84の第2端子、N
型トランジスタ85の第1端子、及びN型トランジスタ86の第1端子が電気的に接続す
るノードの電位がNORゲートの出力信号として出力される。
【0069】
図5(C)にNANDゲートの具体的な回路構成例を示す。
図5(C)に示すNAND
ゲートは、P型トランジスタ88と、P型トランジスタ89と、N型トランジスタ90と
、N型トランジスタ91と、N型トランジスタ92とを有する。
【0070】
P型トランジスタ88は、第1端子が電源電圧(VDD)を供給する配線に電気的に接
続される。
【0071】
P型トランジスタ89は、第1端子が電源電圧(VDD)を供給する配線に電気的に接
続される。
【0072】
N型トランジスタ90は、第1端子がP型トランジスタ88の第2端子及びP型トラン
ジスタ89の第2端子に電気的に接続される。
【0073】
N型トランジスタ91は、第1端子がN型トランジスタ90の第2端子に電気的に接続
される。
【0074】
N型トランジスタ92は、ゲート端子がスタンバイ信号(Stdby)を供給する配線
に電気的に接続され、第1端子がN型トランジスタ91の第2端子に電気的に接続され、
第2端子が接地される。
【0075】
なお、
図5(C)に示すNANDゲートにおいて、P型トランジスタ88及びN型トラ
ンジスタ90のゲート端子に第1の入力信号が、P型トランジスタ89及びN型トランジ
スタ91のゲート端子に第2の入力信号が入力され、P型トランジスタ88の第2端子、
P型トランジスタ89の第2端子、及びN型トランジスタ90の第1端子が電気的に接続
するノードの電位がNANDゲートの出力信号として出力される。
【0076】
上述した論理ゲートは、接地電位を供給する配線との電気的な接続を制御するトランジ
スタ(N型トランジスタ82、N型トランジスタ87、又はN型トランジスタ92)を有
する。また、当該論理ゲートにおいては、当該トランジスタのチャネル形成領域を水素濃
度が5×1019(atoms/cm3)以下、好ましくは5×1018(atoms/
cm3)以下、さらに好ましくは5×1017(atoms/cm3)以下の酸化物半導
体によって構成する。これにより、当該トランジスタのリーク電流を大幅に低減すること
ができる。そのため、論理ゲートを介して流れる貫通電流を低減することが可能になる。
その結果、当該半導体装置の待機電力を低減することができる。
【0077】
なお、ここでは、各論理ゲートが接地電位の入力を制御するトランジスタを有する構成
について示したが、1つのトランジスタによって複数の論理ゲートに対する接地電位の入
力を制御する構成であってもよい。
【0078】
また、上述の説明においては、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)によって論理ゲー
トを構成する例について示したが、本実施の形態の半導体装置は、N型トランジスタのみ
によって構成することもできる。
図6にN型トランジスタのみによって構成される論理ゲ
ートを示す。
図6(A)はインバータであり、
図6(B)はNORゲートであり、
図6(
C)NANDゲートである。端的に言うと、
図6に示す論理ゲートは、
図5に示した論理
ゲートが有するP型トランジスタをダイオード接続されたN型トランジスタに置換した構
成である。
【0079】
上述したように、
図6(A)~(C)に示す論理ゲートは、接地電位を供給する配線と
の電気的な接続を制御するトランジスタとして、チャネル形成領域の水素濃度が5×10
19(atoms/cm
3)以下、好ましくは5×10
18(atoms/cm
3)以下
、さらに好ましくは5×10
17(atoms/cm
3)以下の酸化物半導体によって構
成されたトランジスタを適用する。これにより、当該トランジスタのリーク電流を大幅に
低減することができる。そのため、論理ゲートを介して流れる貫通電流を低減することが
可能になる。その結果、当該半導体装置の待機電力を低減することができる。
【0080】
また、クロック生成回路49、センサ50、メモリ回路51、及び変調回路52におい
ても、従来の回路構成をもとに、当該回路と接地電位を供給する配線又は当該回路と電源
電位(VDD)を供給する配線の間にパワー制御回路47によってスイッチングが制御さ
れるトランジスタを設ける構成とすることが可能である。また、従来の回路構成を構成す
るブロック単位で、パワー制御回路47によって制御されるトランジスタを設けてもよい
し、機能回路単位で、パワー制御回路47によって制御されるトランジスタを設けてもよ
い。
【0081】
なお、本実施の形態の内容又は該内容の一部は、他の実施の形態の内容又は該内容の一
部と自由に組み合わせることが可能である。
【0082】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1乃至4に示した半導体装置が有するトランジスタの一
例について説明する。具体的には、当該半導体装置が有するP型トランジスタとして、半
導体材料を含む基板を用いて形成されるトランジスタを適用し、N型トランジスタとして
、酸化物半導体を用いて形成されるトランジスタを適用する例を示す。
【0083】
<構成例>
本実施の形態の半導体装置が有するP型トランジスタ及びN型トランジスタを
図7に示
す。
【0084】
図7に示すP型トランジスタ160は、半導体材料を含む基板100に設けられたチャ
ネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた一対の不純物領
域114a、114b及び一対の高濃度不純物領域120a、120b(これらをあわせ
て単に不純物領域とも呼ぶ)と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁層1
08aと、ゲート絶縁層108a上に設けられたゲート電極層110aと、不純物領域1
14aと電気的に接続するソース電極層130aと、不純物領域114bと電気的に接続
するドレイン電極層130bとを有する。
【0085】
なお、ゲート電極層110aの側面にはサイドウォール絶縁層118が設けられている
。また、半導体材料を含む基板100のサイドウォール絶縁層118と重ならない領域に
は、一対の高濃度不純物領域120a、120bを有し、一対の高濃度不純物領域120
a、120b上には一対の金属化合物領域124a、124bが存在する。また、基板1
00上にはP型トランジスタ160を囲むように素子分離絶縁層106が設けられており
、P型トランジスタ160を覆うように、層間絶縁層126および層間絶縁層128が設
けられている。ソース電極層130a、ドレイン電極層130bは、層間絶縁層126お
よび層間絶縁層128に形成された開口を通じて、一対の金属化合物領域124a、12
4bの一方と電気的に接続されている。つまり、ソース電極層130aは、金属化合物領
域124aを介して高濃度不純物領域120aおよび不純物領域114aと電気的に接続
され、ドレイン電極層130bは、金属化合物領域124bを介して高濃度不純物領域1
20bおよび不純物領域114bと電気的に接続されている。
【0086】
また、後述するN型トランジスタ164の下層には、ゲート絶縁層108aと同一材料
からなる絶縁層108b、ゲート電極層110aと同一材料からなる電極層110b、並
びにソース電極層130a及びドレイン電極層130bと同一材料からなる電極層130
cが設けられている。
【0087】
図7に示すN型トランジスタ164は、層間絶縁層128上に設けられたゲート電極層
136dと、ゲート電極層136d上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層
138上に設けられた酸化物半導体層140と、酸化物半導体層140上に設けられ、酸
化物半導体層140と電気的に接続されているソース電極層142aと、ドレイン電極層
142bとを有する。
【0088】
ここで、ゲート電極層136dは、層間絶縁層128上に形成された絶縁層132に、
埋め込むように設けられている。また、ゲート電極層136dと同様に、P型トランジス
タ160が有する、ソース電極層130aに接する電極層136a及びドレイン電極層1
30bに接する電極層136bが形成されている。また、電極層130cに接する電極層
136cが形成されている。
【0089】
また、N型トランジスタ164の上には、酸化物半導体層140の一部と接するように
、保護絶縁層144が設けられており、保護絶縁層144上には層間絶縁層146が設け
られている。ここで、保護絶縁層144および層間絶縁層146には、ソース電極層14
2a及びドレイン電極層142bにまで達する開口が設けられており、当該開口を通じて
、ソース電極層142aに接する電極層150d、ドレイン電極層142bに接する電極
層150eが形成されている。また、電極層150d、電極層150eと同様に、ゲート
絶縁層138、保護絶縁層144、層間絶縁層146に設けられた開口を通じて、電極層
136aに接する電極層150a、電極層136bに接する電極層150b、及び電極層
136cに接する電極層150cが形成されている。
【0090】
ここで、酸化物半導体層140は水素などの不純物が十分に除去され、高純度化されて
いる。具体的には、酸化物半導体層140の水素濃度は5×1019(atoms/cm
3)以下である。なお、酸化物半導体層140の水素濃度は、5×1018(atoms
/cm3)以下であることが望ましく、5×1017(atoms/cm3)以下である
ことがより望ましい。水素濃度が十分に低減されて高純度化された酸化物半導体層140
を用いることで、極めて優れたオフ電流特性のN型トランジスタ164を得ることができ
る。このように、水素濃度が十分に低減されて高純度化された酸化物半導体層140を適
用することで、N型トランジスタ164のリーク電流を低減することができる。なお、上
述の酸化物半導体層140中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Seco
ndary Ion Mass Spectrometry)で測定したものである。
【0091】
また、層間絶縁層146上には絶縁層152が設けられており、絶縁層152に埋め込
まれるように、電極層154a、電極層154b、電極層154c、電極層154dが設
けられている。なお、電極層154aは電極層150aと接しており、電極層154bは
電極層150bと接しており、電極層154cは電極層150cおよび電極層150dと
接しており、電極層154dは電極層150eと接している。
【0092】
本実施の形態で示すP型トランジスタ160が有するソース電極層130aは、上層領
域に設けられた電極層136a、電極層150a、及び電極層154aに電気的に接続し
ている。そのため、P型トランジスタ160のソース電極層130aは、これらの導電層
を適宜形成することにより、上層領域に設けられたN型トランジスタ164が有する電極
層のいずれかと電気的に接続させることが可能である。また、P型トランジスタが有する
ドレイン電極層130bについても同様に、上層領域に設けられたN型トランジスタ16
4が有する電極層のいずれかと電気的に接続させることが可能である。なお、
図7には図
示していないが、P型トランジスタ160が有するゲート電極層110aが、上層領域に
設けられた電極層を介して、N型トランジスタ164が有する電極層のいずれかと電気的
に接続する構成にすることもできる。
【0093】
同様に、本実施の形態で示すN型トランジスタ164が有するソース電極層142aは
、下層領域に設けられた電極層130c及び電極層110bに電気的に接続している。そ
のため、N型トランジスタ164のソース電極層130aは、これらの導電層を適宜形成
することにより、下層領域に設けられたP型トランジスタ160のゲート電極層142a
、ソース電極層130a、又はドレイン電極層130bと電気的に接続させることが可能
である。なお、
図7には図示していないが、N型トランジスタ164が有するゲート電極
層136d又はドレイン電極層142bが、下層領域に設けられた電極層を介して、P型
トランジスタ160が有する電極層のいずれかと電気的に接続する構成にすることもでき
る。
【0094】
上述したP型トランジスタ160及びN型トランジスタ164を適宜設けることによっ
て、各種回路を構成することができる。なお、当該回路が有するN型トランジスタ164
の全てを酸化物半導体を用いて形成されるトランジスタとする必要はなく、各トランジス
タに求められる特性に応じて、適宜変更することが可能である。例えば、半導体装置が有
する論理ゲートを構成するN型トランジスタとして、半導体材料を含む基板を用いて形成
されるトランジスタを適用し、当該論理ゲートと、電池の陰極との電気的な接続を制御す
るN型トランジスタとして、酸化物半導体を用いて形成されるトランジスタを適用するこ
とが可能である。
【0095】
<作製工程例>
次に、P型トランジスタ160及びN型トランジスタ164の作製方法の一例について
説明する。以下では、はじめにP型トランジスタ160の作製方法について
図8を参照し
て説明し、その後、N型トランジスタ164の作製方法について
図9および
図10を参照
して説明する。
【0096】
まず、半導体材料を含む基板100を用意する(
図8(A)参照)。半導体材料を含む
基板100としては、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基
板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することがで
きる。ここでは、半導体材料を含む基板100として、単結晶シリコン基板を用いる場合
の一例について示すものとする。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン
半導体層が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコ
ン以外の材料からなる半導体層が設けられた構成の基板をも含む概念として用いる。つま
り、「SOI基板」が有する半導体層は、シリコン半導体層に限定されない。また、SO
I基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁層を介して半導体層が設けられた構成も
含まれるものとする。
【0097】
基板100上には、素子分離絶縁層を形成するためのマスクとなる保護層102を形成
する(
図8(A)参照)。保護層102としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコン
、窒化酸化シリコンなどを材料とする絶縁層を用いることができる。なお、この工程の前
後において、半導体装置のしきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純
物元素やp型の導電性を付与する不純物元素を基板100に添加してもよい。半導体がシ
リコンの場合、n型の導電性を付与する不純物としては、例えば、リンや砒素などを用い
ることができる。また、p型の導電性を付与する不純物としては、例えば、硼素、アルミ
ニウム、ガリウムなどを用いることができる。
【0098】
次に、上記の保護層102をマスクとしてエッチングを行い、保護層102に覆われて
いない領域(露出している領域)の基板100の一部を除去する。これにより分離された
半導体領域104が形成される(
図8(B)参照)。当該エッチングには、ドライエッチ
ングを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスや
エッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0099】
次に、半導体領域104を覆うように絶縁層を形成し、半導体領域104に重畳する領
域の絶縁層を選択的に除去することで、素子分離絶縁層106を形成する(
図8(B)参
照)。当該絶縁層は、酸化シリコンや窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを用いて形成
される。絶縁層の除去方法としては、CMP(Chemical Mechanical
Polishing)などの研磨処理やエッチング処理などがあるが、そのいずれを用
いても良い。なお、半導体領域104の形成後、または、素子分離絶縁層106の形成後
には、上記保護層102を除去する。
【0100】
次に、半導体領域104上に絶縁層を形成し、当該絶縁層上に導電材料を含む層を形成
する。
【0101】
絶縁層は後のゲート絶縁層となるものであり、CVD法やスパッタリング法等を用いて
得られる酸化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミ
ニウム、酸化タンタル等を含む膜の単層構造または積層構造とすると良い。他に、高密度
プラズマ処理や熱酸化処理によって、半導体領域104の表面を酸化、窒化することによ
り、上記絶縁層を形成してもよい。高密度プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、
Xeなどの希ガスと、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などとの混合ガスを用い
て行うことができる。また、絶縁層の厚さは特に限定されないが、例えば、1nm以上1
00nm以下とすることができる。
【0102】
導電材料を含む層は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材
料を用いて形成することができる。また、導電材料を含む多結晶シリコンなどの半導体材
料を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、蒸着法、
CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる
。なお、本実施の形態では、導電材料を含む層を、金属材料を用いて形成する場合の一例
について示すものとする。
【0103】
その後、絶縁層および導電材料を含む層を選択的にエッチングして、ゲート絶縁層10
8a、ゲート電極層110aを形成する(
図8(C)参照)。
【0104】
次に、ゲート電極層110aを覆う絶縁層112を形成する(
図8(C)参照)。そし
て、半導体領域104に硼素(B)やアルミニウム(Al)などを添加して、浅い接合深
さの一対の不純物領域114a、114bを形成する(
図8(C)参照)。なお、ここで
はP型トランジスタを形成するために硼素やアルミニウムを添加しているが、N型トラン
ジスタを形成する場合には、リン(P)やヒ素(As)などの不純物元素を添加すればよ
い。なお、一対の不純物領域114a、114bの形成により、半導体領域104のゲー
ト絶縁層108a下部には、チャネル形成領域116が形成される(
図8(C)参照)。
ここで、添加する不純物の濃度は適宜設定することができるが、半導体素子が高度に微細
化される場合には、その濃度を高くすることが望ましい。また、ここでは、絶縁層112
を形成した後に一対の不純物領域114a、114bを形成する工程を採用しているが、
一対の不純物領域114a、114bを形成した後に絶縁層112を形成する工程として
も良い。
【0105】
次に、サイドウォール絶縁層118を形成する(
図8(D)参照)。サイドウォール絶
縁層118は、絶縁層112を覆うように絶縁層を形成した後に、当該絶縁層に異方性の
高いエッチング処理を適用することで、自己整合的に形成することができる。また、この
際に、絶縁層112を部分的にエッチングして、ゲート電極層110aの上面と、一対の
不純物領域114a、114bの上面を露出させると良い。
【0106】
次に、ゲート電極層110a、一対の不純物領域114a、114b、サイドウォール
絶縁層118等を覆うように、絶縁層を形成する。そして、一対の不純物領域114a、
114bの一部に対して硼素(B)やアルミニウム(Al)などを添加して、一対の高濃
度不純物領域120a、120bを形成する(
図8(E)参照)。ここでも、N型トラン
ジスタを形成する場合には、リン(P)やヒ素(As)などの不純物元素を添加すればよ
い。その後、上記絶縁層を除去し、ゲート電極層110a、サイドウォール絶縁層118
、一対の高濃度不純物領域120a、120b等を覆うように金属層122を形成する(
図8(E)参照)。金属層122は、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコート法な
どの各種成膜方法を用いて形成することができる。金属層122は、半導体領域104を
構成する半導体材料と反応して低抵抗な金属化合物となる金属材料を用いて形成すること
が望ましい。このような金属材料としては、例えば、チタン、タンタル、タングステン、
ニッケル、コバルト、白金等がある。
【0107】
次に、熱処理を施して、金属層122と半導体材料とを反応させる。これにより、一対
の高濃度不純物領域120a、120bに接する一対の金属化合物領域124a、124
bが形成される(
図8(F)参照)。なお、ゲート電極層110aとして多結晶シリコン
などを用いる場合には、ゲート電極層110aの金属層122と接触する部分にも、金属
化合物領域が形成されることになる。
【0108】
上記熱処理としては、例えば、フラッシュランプの照射による熱処理を用いることがで
きる。もちろん、その他の熱処理方法を用いても良いが、金属化合物の形成に係る化学反
応の制御性を向上させるためには、ごく短時間の熱処理が実現できる方法を用いることが
望ましい。なお、上記の金属化合物領域は、金属材料と半導体材料との反応により形成さ
れるものであり、十分に導電性が高められた領域である。当該金属化合物領域を形成する
ことで、電気抵抗を十分に低減し、素子特性を向上させることができる。なお、一対の金
属化合物領域124a、124bを形成した後には、金属層122は除去する。
【0109】
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、層間絶縁層126、層間絶縁
層128を形成する(
図8(G)参照)。層間絶縁層126や層間絶縁層128は、酸化
シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化
タンタル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。また、ポリイミド
、アクリル等の有機絶縁材料を用いて形成することも可能である。なお、ここでは、層間
絶縁層126や層間絶縁層128の二層構造としているが、層間絶縁層の構成はこれに限
定されない。層間絶縁層128の形成後には、その表面を、CMPやエッチング処理など
によって平坦化しておくことが望ましい。
【0110】
その後、上記層間絶縁層に、一対の金属化合物領域124a、124bにまで達する開
口を形成し、当該開口に、ソース電極層130a、ドレイン電極層130bを形成する(
図8(H)参照)。ソース電極層130a及びドレイン電極層130bは、例えば、開口
を含む領域にPVD法やCVD法などを用いて導電層を形成した後、エッチング処理やC
MPといった方法を用いて、上記導電層の一部を除去することにより形成することができ
る。
【0111】
なお、ソース電極層130a及びドレイン電極層130bを形成する際には、その表面
が平坦になるように加工することが望ましい。例えば、開口を含む領域にチタン膜や窒化
チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成する場合には
、その後のCMPによって、不要なタングステン、チタン、窒化チタンなどを除去すると
共に、その表面の平坦性を向上させることができる。このように、ソース電極層130a
及びドレイン電極層130bを含む表面を平坦化することにより、後の工程において、良
好な電極、配線、絶縁層、半導体層などを形成することが可能となる。
【0112】
なお、ここでは、一対の金属化合物領域124a、124bと接触するソース電極層1
30a及びドレイン電極層130bのみを示しているが、この工程において、配線として
機能する電極層(例えば、
図7における電極層130c)などをあわせて形成することが
できる。ソース電極層130a及びドレイン電極層130bとして用いることができる材
料について特に限定はなく、各種導電材料を用いることができる。例えば、モリブデン、
チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム
などの導電性材料を用いることができる。
【0113】
以上により、半導体材料を含む基板100を用いたP型トランジスタ160が形成され
る。なお、上記工程の後には、さらに電極や配線、絶縁層などを形成しても良い。配線の
構造として、層間絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線構造を採用することによ
り、高度に集積化した回路を提供することができる。また、上記工程と同様の工程によっ
て、半導体材料を含む基板100を用いたN型トランジスタも形成することが可能である
。すなわち、上述した工程において、半導体領域に添加する不純物元素をリン(P)やヒ
素(As)などの不純物元素に変更することによって、N型トランジスタを形成すること
ができる。
【0114】
次に、
図9および
図10を用いて、層間絶縁層128上にN型トランジスタ164を作
製する工程について説明する。なお、
図9および
図10は、層間絶縁層128上の各種電
極層や、N型トランジスタ164などの作製工程を示すものであるから、N型トランジス
タ164の下部に存在するP型トランジスタ160等については省略している。
【0115】
まず、層間絶縁層128、ソース電極層130a、ドレイン電極層130b、電極層1
30c上に絶縁層132を形成する(
図9(A)参照)。絶縁層132はPVD法やCV
D法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化
シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無機絶縁材料を含む材
料を用いて形成することができる。
【0116】
次に、絶縁層132に対し、ソース電極層130a、ドレイン電極層130b、および
電極層130cにまで達する開口を形成する。この際、後にゲート電極層136dが形成
される領域にも併せて開口を形成する。そして、上記開口に埋め込むように、導電層13
4を形成する(
図9(B)参照)。上記開口はマスクを用いたエッチングなどの方法で形
成することができる。当該マスクは、フォトマスクを用いた露光などの方法によって形成
することが可能である。エッチングとしてはウェットエッチング、ドライエッチングのい
ずれを用いても良いが、微細加工の観点からは、ドライエッチングを用いることが好適で
ある。導電層134の形成は、PVD法やCVD法などの成膜法を用いて行うことができ
る。導電層134の形成に用いることができる材料としては、モリブデン、チタン、クロ
ム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムなどの導電性
材料や、これらの合金、化合物(例えば窒化物)などが挙げられる。
【0117】
より具体的には、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、C
VD法により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を
形成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、
界面の酸化膜を還元し、下部電極層(ここでは、ソース電極層130a、ドレイン電極層
130b、電極層130cなど)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、その後
に形成される窒化チタン膜は、導電性材料の拡散を抑制するバリア機能を備える。また、
チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成して
もよい。
【0118】
導電層134を形成した後には、エッチング処理やCMPといった方法を用いて導電層
134の一部を除去し、絶縁層132を露出させて、電極層136a、電極層136b、
電極層136c、ゲート電極層136dを形成する(
図9(C)参照)。なお、上記導電
層134の一部を除去して電極層136a、電極層136b、電極層136c、ゲート電
極層136dを形成する際には、表面が平坦になるように加工することが望ましい。この
ように、絶縁層132、電極層136a、電極層136b、電極層136c、ゲート電極
層136dの表面を平坦化することにより、後の工程において、良好な電極、配線、絶縁
層、半導体層などを形成することが可能となる。
【0119】
次に、絶縁層132、電極層136a、電極層136b、電極層136c、ゲート電極
層136dを覆うように、ゲート絶縁層138を形成する(
図9(D)参照)。ゲート絶
縁層138は、CVD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、ゲ
ート絶縁層138は、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニ
ウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどを含むように形成するのが好適である。なお、
ゲート絶縁層138は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。例えば、原料
ガスとして、シラン(SiH
4)、酸素、窒素を用いたプラズマCVD法により、酸化窒
化珪素でなるゲート絶縁層138を形成することができる。ゲート絶縁層138の厚さは
特に限定されないが、例えば、10nm以上500nm以下とすることができる。積層構
造の場合は、例えば、膜厚50nm以上200nm以下の第1のゲート絶縁層と、第1の
ゲート絶縁層上の膜厚5nm以上300nm以下の第2のゲート絶縁層の積層とすると好
適である。
【0120】
なお、不純物を除去することによりi型化または実質的にi型化された酸化物半導体(
高純度化された酸化物半導体)は、界面準位や界面電荷に対して極めて敏感であるため、
このような酸化物半導体を酸化物半導体層に用いる場合には、ゲート絶縁層との界面は重
要である。つまり、高純度化された酸化物半導体層に接するゲート絶縁層138には、高
品質化が要求されることになる。
【0121】
例えば、μ波(2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVD法は、緻密で絶縁耐圧
の高い高品質なゲート絶縁層138を形成できる点で好適である。高純度化された酸化物
半導体層と高品質ゲート絶縁層とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を
良好なものとすることができるからである。
【0122】
もちろん、ゲート絶縁層として良質な絶縁層を形成できるものであれば、高純度化され
た酸化物半導体層を用いる場合であっても、スパッタリング法やプラズマCVD法など他
の方法を適用することができる。また、形成後の熱処理によって、膜質や界面特性が改質
される絶縁層を適用しても良い。いずれにしても、ゲート絶縁層138としての膜質が良
好であると共に、酸化物半導体層との界面準位密度を低減し、良好な界面を形成できるゲ
ート絶縁層138を形成すれば良い。
【0123】
さらに、85℃、2×106(V/cm)、12時間のゲートバイアス・熱ストレス試
験(BT試験)においては、不純物が酸化物半導体に添加されていると、不純物と酸化物
半導体の主成分との結合手が、強電界(B:バイアス)と高温(T:温度)により切断さ
れ、生成された未結合手がしきい値電圧(Vth)のドリフトを誘発することとなる。
【0124】
これに対して、酸化物半導体の不純物、特に水素や水などを極力排除し、上記のように
ゲート絶縁層との界面特性を良好にすることにより、BT試験に対しても安定なトランジ
スタを得ることが可能である。
【0125】
次いで、ゲート絶縁層138上に、酸化物半導体層を形成し、マスクを用いたエッチン
グなどの方法によって該酸化物半導体層を加工して、島状の酸化物半導体層140を形成
する(
図9(E)参照)。
【0126】
酸化物半導体層としては、In-Ga-Zn-O系、In-Sn-Zn-O系、In-
Al-Zn-O系、Sn-Ga-Zn-O系、Al-Ga-Zn-O系、Sn-Al-Z
n-O系、In-Zn-O系、Sn-Zn-O系、Al-Zn-O系、In-O系、Sn
-O系、Zn-O系の酸化物半導体層、特に非晶質酸化物半導体層を用いるのが好適であ
る。本実施の形態では、酸化物半導体層としてIn-Ga-Zn-O系の金属酸化物ター
ゲットを用いて、非晶質の酸化物半導体層をスパッタ法により形成することとする。なお
、非晶質の酸化物半導体層中にシリコンを添加することで、その結晶化を抑制することが
できるから、例えば、SiO2を2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いて酸
化物半導体層を形成しても良い。
【0127】
酸化物半導体層をスパッタリング法で作製するためのターゲットとしては、例えば、酸
化亜鉛などを主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、In、
Ga、およびZnを含む金属酸化物ターゲット(組成比として、In2O3:Ga2O3
:ZnO=1:1:1[mol比]、In:Ga:Zn=1:1:0.5[atom比]
)などを用いることもできる。また、In、Ga、およびZnを含む金属酸化物ターゲッ
トとして、In:Ga:Zn=1:1:1[atom比]、またはIn:Ga:Zn=1
:1:2[atom比]の組成比を有するターゲットなどを用いても良い。金属酸化物タ
ーゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上(例えば99.9%
)である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、緻密な酸化物半導体
層が形成される。
【0128】
酸化物半導体層の形成雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、
または、希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素との混合雰囲気とするのが好適である。具
体的には、例えば、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が、数ppm程度(望まし
くは数ppb程度)にまで除去された高純度ガスを用いるのが好適である。
【0129】
酸化物半導体層の形成の際には、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、基板
温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板を加
熱しながら酸化物半導体層を形成することにより、酸化物半導体層に含まれる不純物濃度
を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。そして、処理
室内の残留水分を除去しつつ水素および水が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化
物をターゲットとして酸化物半導体層を形成する。処理室内の残留水分を除去するために
は、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポン
プ、チタンサブリメーションポンプを用いることができる。また、排気手段としては、タ
ーボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排
気した処理室は、例えば、水素原子、水(H2O)など水素原子を含む化合物(より好ま
しくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で形成した酸化物半導
体層に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0130】
形成条件としては、例えば、基板とターゲットの間との距離が100mm、圧力が0.
6Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気が酸素(酸素流量比率100%)雰囲気
、といった条件を適用することができる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成
膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一と
なるため、好ましい。酸化物半導体層の厚さは、2nm以上200nm以下、好ましくは
5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚さは異
なるから、その厚さは用いる材料に応じて適宜選択すればよい。
【0131】
なお、酸化物半導体層をスパッタ法により形成する前には、アルゴンガスを導入してプ
ラズマを発生させる逆スパッタを行い、ゲート絶縁層138の表面に付着しているゴミを
除去するのが好適である。ここで、逆スパッタとは、通常のスパッタにおいては、スパッ
タターゲットにイオンを衝突させるところ、逆に、処理表面にイオンを衝突させることに
よってその表面を改質する方法のことをいう。処理表面にイオンを衝突させる方法として
は、アルゴン雰囲気下で処理表面側に高周波電圧を印加して、基板付近にプラズマを生成
する方法などがある。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いて
も良い。
【0132】
上記酸化物半導体層のエッチングには、ドライエッチング、ウェットエッチングのいず
れを用いても良い。もちろん、両方を組み合わせて用いることもできる。所望の形状にエ
ッチングできるよう、材料に合わせてエッチング条件(エッチングガスやエッチング液、
エッチング時間、温度等)を適宜設定する。
【0133】
ドライエッチングに用いるエッチングガスには、例えば、塩素を含むガス(塩素系ガス
、例えば塩素(Cl2)、塩化硼素(BCl3)、塩化珪素(SiCl4)、四塩化炭素
(CCl4)など)などがある。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化
炭素(CF4)、六弗化硫黄(SF6)、三弗化窒素(NF3)、トリフルオロメタン(
CHF3)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O2)、これらのガスにヘリウム(He
)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いても良い。
【0134】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etc
hing)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘
導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状にエッチングできる
ように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加され
る電力量、基板側の電極温度等)は適宜設定する。
【0135】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液な
どを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)などのエッチング液を用
いてもよい。
【0136】
次いで、酸化物半導体層に第1の熱処理を行うことが望ましい。この第1の熱処理によ
って酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行うことができる。第1の熱処理の温度は
、300℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。例えば
、抵抗発熱体などを用いた電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層140に対して窒素雰
囲気下450℃において1時間の熱処理を行う。この間、酸化物半導体層140は、大気
に触れることなく、水や水素の再混入が行われないようにする。
【0137】
なお、熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、また
は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置であっても良い。例えば、GRTA(Gas
Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid
Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal An
neal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライ
ドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧
水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置
である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。気体としては、
アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活
性気体が用いられる。
【0138】
例えば、第1の熱処理として、650℃~700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基
板を投入し、数分間加熱した後、当該不活性ガス中から基板を取り出すGRTA処理を行
ってもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、短時間
の熱処理であるため、基板の歪み点を超える温度条件であっても適用が可能となる。
【0139】
なお、第1の熱処理は、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成
分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気で行うことが望ましい。例え
ば、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を
、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわ
ち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0140】
第1の熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、酸化物半導体層が結晶
化し、微結晶または多結晶となる場合もある。例えば、結晶化率が90%以上、または8
0%以上の微結晶の酸化物半導体層となる場合もある。また、第1の熱処理の条件、また
は酸化物半導体層の材料によっては、結晶成分を含まない非晶質の酸化物半導体層となる
場合もある。
【0141】
また、非晶質の酸化物半導体(例えば、酸化物半導体層の表面)に微結晶(粒径1nm
以上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体層とな
る場合もある。
【0142】
また、非晶質中に微結晶を配列させることで、酸化物半導体層の電気的特性を変化させ
ることも可能である。例えば、In-Ga-Zn-O系の金属酸化物ターゲットを用いて
酸化物半導体層を形成する場合には、電気的異方性を有するIn2Ga2ZnO7の結晶
粒が配向した微結晶部を形成することで、酸化物半導体層の電気的特性を変化させること
ができる。
【0143】
より具体的には、例えば、In2Ga2ZnO7のc軸が酸化物半導体層の表面に垂直
な方向をとるように配向させることで、酸化物半導体層の表面に平行な方向の導電性を向
上させ、酸化物半導体層の表面に垂直な方向の絶縁性を向上させることができる。また、
このような微結晶部は、酸化物半導体層中への水や水素などの不純物の侵入を抑制する機
能を有する。
【0144】
なお、上述の微結晶部を有する酸化物半導体層は、GRTA処理による酸化物半導体層
の表面加熱によって形成することができる。また、Znの含有量がInまたはGaの含有
量より小さいスパッタターゲットを用いることで、より好適に形成することが可能である
。
【0145】
酸化物半導体層140に対する第1の熱処理は、島状の酸化物半導体層140に加工す
る前の酸化物半導体層に行うこともできる。その場合には、第1の熱処理後に、加熱装置
から基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行うことになる。
【0146】
なお、上記熱処理は、酸化物半導体層140に対する脱水化、脱水素化の効果があるか
ら、脱水化処理、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。このような脱水化処理、脱水素
化処理は、酸化物半導体層の形成後、酸化物半導体層140上にソース電極層及びドレイ
ン電極層を積層させた後、又はソース電極層及びドレイン電極層上に保護絶縁層を形成し
た後、などのタイミングにおいて行うことが可能である。また、このような脱水化処理、
脱水素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0147】
次に、酸化物半導体層140に接するように、ソース電極層142a及びドレイン電極
層142bを形成する(
図9(F)参照)。ソース電極層142a及びドレイン電極層1
42bは、酸化物半導体層140を覆うように導電層を形成した後、当該導電層を選択的
にエッチングすることにより形成することができる。
【0148】
当該導電層は、スパッタ法などのPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用い
て形成することができる。また、導電層の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タ
ンタル、チタン、モリブデン、タングステンからから選ばれた元素や、上述した元素を成
分とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリ
ウム、トリウムのいずれか一または複数から選択された材料を用いてもよい。また、アル
ミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカン
ジウムから選ばれた元素を単数、または複数組み合わせた材料を用いてもよい。導電層は
、単層構造であっても良いし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含
むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構造、チタ
ン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。
【0149】
ここで、エッチングに用いるマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やAr
Fレーザ光を用いるのが好適である。
【0150】
トランジスタのチャネル長(L)は、ソース電極層142aの下端部と、ドレイン電極
層142bの下端部との間隔によって決定される。なお、チャネル長(L)が25nm未
満の露光を行う場合には、数nm~数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extre
me Ultraviolet)を用いてマスク形成の露光を行う。超紫外線による露光
は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長
(L)を10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速
化できる。
【0151】
なお、導電層のエッチングの際には、酸化物半導体層140が除去されないように、そ
れぞれの材料およびエッチング条件を適宜調節する。なお、材料およびエッチング条件に
よっては、当該工程において、酸化物半導体層140の一部がエッチングされ、溝部(凹
部)を有する酸化物半導体層となることもある。
【0152】
また、酸化物半導体層140とソース電極層142aの間、又は酸化物半導体層140
とドレイン電極層142bの間に、酸化物導電層を形成してもよい。酸化物導電層と、ソ
ース電極層142a及びドレイン電極層142bを形成するための金属層とは、連続して
形成すること(連続成膜)が可能である。酸化物導電層は、ソース領域またはドレイン領
域として機能しうる。このような酸化物導電層を設けることで、ソース領域またはドレイ
ン領域の低抵抗化を図ることができるため、トランジスタの高速動作が実現される。
【0153】
また、上記マスクの使用数や工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露
光マスクである多階調マスクによってレジストマスクを形成し、これを用いてエッチング
工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは、複数の厚みを有
する形状(階段状)となり、アッシングによりさらに形状を変形させることができるため
、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。つまり、一枚
の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマ
スクを形成することができる。よって、露光マスク数を削減することができ、対応するフ
ォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が図れる。
【0154】
なお、上述の工程の後には、N2O、N2、またはArなどのガスを用いたプラズマ処
理を行うのが好ましい。当該プラズマ処理によって、露出している酸化物半導体層の表面
に付着した水などが除去される。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理
を行ってもよい。
【0155】
次に、大気に触れさせることなく、酸化物半導体層140の一部に接する保護絶縁層1
44を形成する(
図9(G)参照)。
【0156】
保護絶縁層144は、スパッタ法など、保護絶縁層144に水、水素等の不純物を混入
させない方法を適宜用いて形成することができる。また、その厚さは、少なくとも1nm
以上とする。保護絶縁層144に用いることができる材料としては、酸化珪素、窒化珪素
、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素などがある。また、その構造は、単層構造としても良いし
、積層構造としても良い。保護絶縁層144を形成する際の基板温度は、室温以上300
℃以下とするのが好ましく、雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲
気、または希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素の混合雰囲気とするのが好適である。
【0157】
保護絶縁層144に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層140への侵入や、
水素による酸化物半導体層140中の酸素の引き抜き、などが生じ、酸化物半導体層14
0のバックチャネル側が低抵抗化してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。
よって、保護絶縁層144はできるだけ水素を含まないように、形成方法においては水素
を用いないことが重要である。
【0158】
また、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層144を形成することが好ましい。
酸化物半導体層140および保護絶縁層144に水素、水酸基または水分が含まれないよ
うにするためである。
【0159】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい
。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いること
が好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたもので
あってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(H
2O)など水素原子を含む化合物等が除去されているため、当該処理室で形成した保護絶
縁層144に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0160】
保護絶縁層144を形成する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基また
は水素化物などの不純物が、数ppm程度(望ましくは、数ppb程度)にまで除去され
た高純度ガスを用いることが好ましい。
【0161】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の熱処理(好ましくは2
00℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行うのが望ましい。例え
ば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の熱処理を行う。第2の熱処理を行うと、ト
ランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。
【0162】
また、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下の熱処理を行って
もよい。この熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃
以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえ
して行ってもよい。また、この熱処理を、保護絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい
。減圧下で熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。なお、当該熱処理は、上
記第2の熱処理に代えて行っても良いし、第2の熱処理の前後などに行っても良い。
【0163】
次に、保護絶縁層144上に、層間絶縁層146を形成する(
図10(A)参照)。層
間絶縁層146はPVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シ
リコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タ
ンタル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。層間絶縁層146の
形成後には、その表面を、CMPやエッチングなどの方法によって平坦化しておくことが
望ましい。
【0164】
次に、層間絶縁層146、保護絶縁層144、およびゲート絶縁層138に対し、電極
層136a、電極層136b、電極層136c、ソース電極層142a、ドレイン電極層
142bにまで達する開口を形成し、当該開口に埋め込むように導電層148を形成する
(
図10(B)参照)。上記開口はマスクを用いたエッチングなどの方法で形成すること
ができる。当該マスクは、フォトマスクを用いた露光などの方法によって形成することが
可能である。エッチングとしてはウェットエッチング、ドライエッチングのいずれを用い
ても良いが、微細加工の観点からは、ドライエッチングを用いることが好適である。導電
層148の形成は、PVD法やCVD法などの成膜法を用いて行うことができる。導電層
148の形成に用いることができる材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタ
ル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムなどの導電性材料や、こ
れらの合金、化合物(例えば窒化物)などが挙げられる。
【0165】
具体的には、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CVD
法により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成
する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、界面
の酸化膜を還元し、下部電極(ここでは、電極層136a、電極層136b、電極層13
6c、ソース電極層142a、ドレイン電極層142b)との接触抵抗を低減させる機能
を有する。また、その後の形成される窒化チタン膜は、導電性材料の拡散を抑制するバリ
ア機能を備える。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ
法により銅膜を形成してもよい。
【0166】
導電層148を形成した後には、エッチングやCMPといった方法を用いて導電層14
8の一部を除去し、層間絶縁層146を露出させて、電極層150a、電極層150b、
電極層150c、電極層150d、電極層150eを形成する(
図10(C)参照)。な
お、上記導電層148の一部を除去して電極層150a、電極層150b、電極層150
c、電極層150d、電極層150eを形成する際には、表面が平坦になるように加工す
ることが望ましい。このように、層間絶縁層146、電極層150a、電極層150b、
電極層150c、電極層150d、電極層150eの表面を平坦化することにより、後の
工程において、良好な電極、配線、絶縁層、半導体層などを形成することが可能となる。
【0167】
さらに、絶縁層152を形成し、絶縁層152に、電極層150a、電極層150b、
電極層150c、電極層150d、電極層150eにまで達する開口を形成し、当該開口
に埋め込むように導電層を形成した後、エッチングやCMPなどの方法を用いて導電層の
一部を除去し、絶縁層152を露出させて、電極層154a、電極層154b、電極層1
54c、電極層154dを形成する(
図10(D)参照)。当該工程は、電極層150a
等を形成する場合と同様であるから、詳細は省略する。
【0168】
上述のような方法でN型トランジスタ164を作製した場合、酸化物半導体層140の
水素濃度は5×1019(atoms/cm3)以下となり、N型トランジスタ164の
リーク電流を低減することが可能になる。このような、優れた特性のN型トランジスタ1
64を実施の形態1乃至4に示した半導体装置に適用することによって、当該半導体装置
の待機電力を低減することが可能になる。
【0169】
<変形例>
図11乃至
図14には、N型トランジスタ164の構成の変形例を示す。つまり、P型
トランジスタ160の構成は上記と同様である。
【0170】
図11には、酸化物半導体層140の下にゲート電極層136dを有し、ソース電極層
142a及びドレイン電極層142bが、酸化物半導体層140の下側において接する構
成のN型トランジスタ164を示す。
【0171】
図11に示す構成と
図7に示す構成の大きな相違点として、ソース電極層142a及び
ドレイン電極層142bと、酸化物半導体層140との接続の位置が挙げられる。つまり
、
図7に示す構成では、酸化物半導体層140の上側表面において、ソース電極層142
a及びドレイン電極層142bと接するのに対して、
図11に示す構成では、酸化物半導
体層140の下側において、ソース電極層142a及びドレイン電極層142bと接する
。そして、この接触の相違に起因して、その他の電極層、絶縁層などの配置が異なるもの
となっている。なお、各構成要素の詳細は、
図7と同様である。
【0172】
具体的には、
図11に示すN型トランジスタ164は、層間絶縁層128上に設けられ
たゲート電極層136dと、ゲート電極層136d上に設けられたゲート絶縁層138と
、ゲート絶縁層138上に設けられた、ソース電極層142a及びドレイン電極層142
bと、ソース電極層142a及びドレイン電極層142bの上側表面に接する酸化物半導
体層140と、を有する。また、N型トランジスタ164の上には、酸化物半導体層14
0を覆うように、保護絶縁層144が設けられている。
【0173】
図12には、酸化物半導体層140の上にゲート電極層136dを有するN型トランジ
スタ164を示す。ここで、
図12(A)は、ソース電極層142a及びドレイン電極層
142bが、酸化物半導体層140の下側表面において酸化物半導体層140と接する構
成の例を示す図であり、
図12(B)は、ソース電極層142a及びドレイン電極層14
2bが、酸化物半導体層140の上側表面において酸化物半導体層140と接する構成の
例を示す図である。
【0174】
図7又は
図11に示す構成と
図12に示す構成の大きな相違点は、酸化物半導体層14
0の上にゲート電極層136dを有する点である。また、
図12(A)に示す構成と
図1
2(B)に示す構成の大きな相違点は、ソース電極層142a及びドレイン電極層142
bが、酸化物半導体層140の下側表面または上側表面のいずれにおいて接するか、とい
う点である。そして、これらの相違に起因して、その他の電極層、絶縁層などの配置が異
なるものとなっている。なお、各構成要素の詳細は、
図7などと同様である。
【0175】
具体的には、
図12(A)に示すN型トランジスタ164は、層間絶縁層128上に設
けられたソース電極層142a及びドレイン電極層142bと、ソース電極層142a及
びドレイン電極層142bの上側表面に接する酸化物半導体層140と、酸化物半導体層
140上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上の酸化物半導体層1
40と重畳する領域のゲート電極層136dと、を有する。
【0176】
また、
図12(B)に示すN型トランジスタ164は、層間絶縁層128上に設けられ
た酸化物半導体層140と、酸化物半導体層140の上側表面に接するように設けられた
ソース電極層142a及びドレイン電極層142bと、酸化物半導体層140、ソース電
極層142a、及びドレイン電極層142b上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲー
ト絶縁層138上の酸化物半導体層140と重畳する領域に設けられたゲート電極層13
6dと、を有する。
【0177】
なお、
図12に示す構成では、
図7に示す構成などと比較して、構成要素が省略される
場合がある(例えば、電極層150aや、電極層154aなど)。この場合、作製工程の
簡略化という副次的な効果も得られる。もちろん、
図7などに示す構成においても、必須
ではない構成要素を省略できることはいうまでもない。
【0178】
図13には、素子のサイズが比較的大きい場合であって、酸化物半導体層140の下に
ゲート電極層136dを有する構成のN型トランジスタ164を示す。この場合、表面の
平坦性やカバレッジに対する要求は比較的緩やかなものであるから、配線や電極などを絶
縁層中に埋め込むように形成する必要はない。例えば、導電層の形成後にパターニングを
行うことで、ゲート電極層136dなどを形成することが可能である。
【0179】
図13(A)に示す構成と
図13(B)に示す構成の大きな相違点は、ソース電極層1
42a及びドレイン電極層142bが、酸化物半導体層140の下側表面または上側表面
のいずれにおいて接するか、という点である。そして、これらの相違に起因して、その他
の電極層、絶縁層などの配置が異なるものとなっている。なお、各構成要素の詳細は、図
7などと同様である。
【0180】
具体的には、
図13(A)に示すN型トランジスタ164は、層間絶縁層128上に設
けられたゲート電極層136dと、ゲート電極層136d上に設けられたゲート絶縁層1
38と、ゲート絶縁層138上に設けられた、ソース電極層142a及びドレイン電極層
142bと、ソース電極層142a及びドレイン電極層142bの上側表面に接する酸化
物半導体層140と、を有する。
【0181】
また、
図13(B)に示すN型トランジスタ164は、層間絶縁層128上に設けられ
たゲート電極層136dと、ゲート電極層136d上に設けられたゲート絶縁層138と
、ゲート絶縁層138上のゲート電極層136dと重畳する領域に設けられた酸化物半導
体層140と、酸化物半導体層140の上側表面に接するように設けられたソース電極層
142a及びドレイン電極層142bと、を有する。
【0182】
なお、
図13に示す構成においても、
図7に示す構成などと比較して、構成要素が省略
される場合がある。この場合も、作製工程の簡略化という効果が得られる。
【0183】
図14には、素子のサイズが比較的大きい場合であって、酸化物半導体層140の上に
ゲート電極層136dを有する構成のN型トランジスタ164を示す。この場合にも、表
面の平坦性やカバレッジに対する要求は比較的緩やかなものであるから、配線や電極など
を絶縁層中に埋め込むように形成する必要はない。例えば、導電層の形成後にパターニン
グを行うことで、ゲート電極層136dなどを形成することが可能である。
【0184】
図14(A)に示す構成と
図14(B)に示す構成の大きな相違点は、ソース電極層1
42a及びドレイン電極層142bが、酸化物半導体層140の下側表面または上側表面
のいずれにおいて接するか、という点である。そして、これらの相違に起因して、その他
の電極層、絶縁層などの配置が異なるものとなっている。なお、各構成要素の詳細は、図
7などと同様である。
【0185】
具体的には、
図14(A)に示すN型トランジスタ164は、層間絶縁層128上に設
けられたソース電極層142a及びドレイン電極層142bと、ソース電極層142a及
びドレイン電極層142bの上側表面に接する酸化物半導体層140と、ソース電極層1
42a、ドレイン電極層142b、及び酸化物半導体層140上に設けられたゲート絶縁
層138と、ゲート絶縁層138上の酸化物半導体層140と重畳する領域に設けられた
ゲート電極層136dと、を有する。
【0186】
また、
図14(B)に示すN型トランジスタ164は、層間絶縁層128上に設けられ
た酸化物半導体層140と、酸化物半導体層140の上側表面に接するように設けられた
ソース電極層142a及びドレイン電極層142bと、ソース電極層142a、ドレイン
電極層142b、及び酸化物半導体層140上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲー
ト絶縁層138上の酸化物半導体層140と重畳する領域に設けられたゲート電極層13
6dと、を有する。
【0187】
なお、
図14に示す構成においても、
図7に示す構成などと比較して、構成要素が省略
される場合がある。この場合も、作製工程の簡略化という効果が得られる。
【0188】
本実施の形態では、P型トランジスタ160上にN型トランジスタ164を積層して形
成する例について説明したが、P型トランジスタ160及びN型トランジスタ164の構
成はこれに限られるものではない。例えば、同一平面上にP型トランジスタ及びN型トラ
ンジスタを形成することができる。さらに、P型トランジスタ160と、N型トランジス
タ164とを重畳して設けても良い。
【0189】
上述したN型トランジスタ164を実施の形態1乃至4に示した半導体装置が有するN
型トランジスタに適用することによって、待機状態における電池の放電を抑制することが
できる。つまり、半導体装置の待機電力を低減することができる。また、待機状態におけ
る電池の放電を抑制することで、半導体装置を長寿命化することができる。
【0190】
なお、本実施の形態の内容又は該内容の一部は、他の実施の形態の内容又は該内容の一
部と自由に組み合わせることが可能である。
【0191】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態1乃至4に示した半導体装置が有するトランジスタの一
例について説明する。具体的には、チャネル形成領域が酸化物半導体によって構成される
トランジスタの一例について説明する。
【0192】
本実施の形態のトランジスタ及びその作製方法の一形態を、
図15及び
図16を用いて
説明する。
【0193】
図15(A)、(B)にトランジスタの平面及び断面構造の一例を示す。
図15(A)
、(B)に示すトランジスタ460は、トップゲート構造のトランジスタである。
【0194】
図15(A)はトップゲート構造のトランジスタ460の平面図であり、
図15(B)
は
図15(A)の線D1-D2における断面図である。
【0195】
トランジスタ460は、絶縁表面を有する基板450上に、絶縁層457、ソース電極
層又はドレイン電極層465a(465a1、465a2)、酸化物半導体層462、ソ
ース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468、ゲート絶縁層452、ゲート電
極層461(461a、461b)を含み、ソース電極層又はドレイン電極層465a(
465a1、465a2)は配線層468を介して配線層464と電気的に接続している
。また、図示していないが、ソース電極層又はドレイン電極層465bもゲート絶縁層4
52に設けられた開口において配線層と電気的に接続する。
【0196】
以下、
図16(A)乃至(E)を用い、基板450上にトランジスタ460を作製する
工程を説明する。
【0197】
まず、絶縁表面を有する基板450上に下地膜となる絶縁層457を形成する。
【0198】
本実施の形態では、絶縁層457として、スパッタリング法により酸化シリコン層を形
成する。基板450を処理室へ搬送し、水素及び水分が除去された高純度酸素を含むスパ
ッタガスを導入しシリコンターゲット又は石英(好ましくは合成石英)を用いて、基板4
50に絶縁層457として、酸化シリコン層を成膜する。なお、スパッタガスとして酸素
又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0199】
例えば、純度が6Nであり、石英(好ましくは合成石英)を用い、基板温度108℃、
基板とターゲットの間との距離(T-S間距離)を60mm、圧力0.4Pa、高周波電
源1.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=
1:1)雰囲気下でRFスパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する。膜厚は10
0nmとする。なお、石英(好ましくは合成石英)に代えてシリコンターゲットを酸化シ
リコン膜を成膜するためのターゲットとして用いることができる。
【0200】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ絶縁層457を成膜することが好
ましい。絶縁層457に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。クラ
イオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(H2O)など水素原子
を含む化合物を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜し絶縁層457に含ま
れる不純物の濃度を低減できる。
【0201】
絶縁層457を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物な
どの不純物が、数ppm程度、数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好
ましい。
【0202】
また、絶縁層457は積層構造でもよく、例えば、基板450側から窒化シリコン層、
窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、窒化酸化アルミニウム層などの窒化物絶縁層
と、上記酸化物絶縁層との積層構造としてもよい。
【0203】
例えば、酸化シリコン層と基板との間に水素及び水分が除去された高純度窒素を含むス
パッタガスを導入しシリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を成膜する。この場合に
おいても、酸化シリコン層と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ窒化シリコン層を
成膜することが好ましい。
【0204】
次いで、絶縁層457上に、導電膜を形成し、第1のフォトリソグラフィ工程により導
電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層又はドレイ
ン電極層465a1、465a2を形成した後、レジストマスクを除去する(
図16(A
)参照)。ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2は断面図では分断さ
れて示されているが、連続した膜である。なお、形成されたソース電極層、ドレイン電極
層の端部はテーパ形状であると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ま
しい。
【0205】
ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2の材料としては、Al、Cr
、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金
か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、マンガン、マグネシウム
、ジルコニウム、ベリリウム、トリウムのいずれか一または複数から選択された材料を用
いてもよい。また、金属導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例
えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層す
る2層構造、Ti膜と、そのTi膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上に
Ti膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Alに、チタン(Ti)、タンタル
(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd
)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素を単数、又は複数組み合わせた膜、合金膜、
もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0206】
本実施の形態ではソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2としてスパ
ッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0207】
次いで、絶縁層457及びソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2上
に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜を形成する。
【0208】
次に第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層462に加工する(図
16(B)参照)。本実施の形態では、酸化物半導体膜としてIn-Ga-Zn-O系金
属酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。
【0209】
酸化物半導体膜は、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水
分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をターゲッ
トとして基板450上に酸化物半導体膜を成膜する。処理室内の残留水分を除去するため
には、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポ
ンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては
、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用い
て排気した処理室は、例えば、水素原子、水(H2O)など水素原子を含む化合物(より
好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物
半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、酸化物半導体膜成膜時に基板を加
熱してもよい。
【0210】
酸化物半導体膜を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物
などの不純物が、数ppm程度、数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが
好ましい。
【0211】
成膜条件の一例としては、基板温度室温、基板とターゲットの間との距離を60mm、
圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量15scc
m:アルゴン流量30sccm)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC
)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減で
き、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体膜は好ましくは5nm以上30
nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応
じて適宜厚みを選択すればよい。
【0212】
本実施の形態では、エッチング液として燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液を用いたウェッ
トエッチング法により、酸化物半導体膜を島状の酸化物半導体層462に加工する。
【0213】
本実施の形態では、酸化物半導体層462に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理
の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする
。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して
窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸
化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層を得る。この第1の加熱処理
によって酸化物半導体層462の脱水化または脱水素化を行うことができる。
【0214】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または
熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Ga
s Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapi
d Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal A
nneal)装置を用いることができる。例えば、第1の加熱処理として、650℃~7
00℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板
を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを
用いると短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0215】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガ
スに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する窒素
、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以
上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好
ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0216】
また、第1の加熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、結晶化し、微
結晶膜または多結晶膜となる場合もある。
【0217】
また、酸化物半導体層の第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化
物半導体膜に行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱装置から基板
を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0218】
酸化物半導体層に対する脱水化、脱水素化の効果を奏する加熱処理は、酸化物半導体層
成膜後、酸化物半導体層上にさらにソース電極及びドレイン電極を積層させた後、ソース
電極及びドレイン電極上にゲート絶縁層を形成した後、のいずれで行っても良い。
【0219】
次いで、絶縁層457及び酸化物半導体層462上に、導電膜を形成し、第3のフォト
リソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行っ
てソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468を形成した後、レジストマス
クを除去する(
図16(C)参照)。ソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層
468はソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2と同様な材料及び工程
で形成すればよい。
【0220】
本実施の形態ではソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468としてスパ
ッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。本実施の形態では、ソース電
極層又はドレイン電極層465a1、465a2とソース電極層又はドレイン電極層46
5bに同じチタン膜を用いる例のため、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、4
65a2とソース電極層又はドレイン電極層465bとはエッチングにおいて選択比がと
れない。よって、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2が、ソース電
極層又はドレイン電極層465bのエッチング時にエッチングされないように、酸化物半
導体層462に覆われないソース電極層又はドレイン電極層465a2上に配線層468
を設けている。ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2とソース電極層
又はドレイン電極層465bとにエッチング工程において高い選択比を有する異なる材料
を用いる場合には、エッチング時にソース電極層又はドレイン電極層465a2を保護す
る配線層468は必ずしも設けなくてもよい。
【0221】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層462は除去されないようにそれぞ
れの材料及びエッチング条件を適宜調節する。
【0222】
本実施の形態では、導電膜としてTi膜を用いて、酸化物半導体層462にはIn-G
a-Zn-O系酸化物半導体を用いて、エッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア
、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0223】
なお、第3のフォトリソグラフィ工程では、酸化物半導体層462は一部のみがエッチ
ングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。また、ソース電極層
又はドレイン電極層465b、配線層468を形成するためのレジストマスクをインクジ
ェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマス
クを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0224】
次いで、絶縁層457、酸化物半導体層462、ソース電極層又はドレイン電極層46
5a1、465a2、ソース電極層又はドレイン電極層465b、及び配線層468上に
ゲート絶縁層452を形成する。
【0225】
ゲート絶縁層452は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリ
コン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又は酸化アルミニ
ウム層を単層で又は積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁層452中に水素
が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法でゲート絶縁層452を成膜
することが好ましい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ター
ゲットとしてシリコンターゲット又は石英ターゲットを用い、スパッタガスとして酸素又
は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0226】
ゲート絶縁層452は、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2、ソ
ース電極層又はドレイン電極層465b側から酸化シリコン層と窒化シリコン層を積層し
た構造とすることもできる。本実施の形態では、圧力0.4Pa、高周波電源1.5kW
、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)雰囲
気下でRFスパッタリング法により膜厚100nmの酸化シリコン層を形成する。
【0227】
次いで、第4のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッ
チングを行ってゲート絶縁層452の一部を除去して、配線層468に達する開口423
を形成する(
図16(D)参照)。図示しないが開口423の形成時にソース電極層又は
ドレイン電極層465bに達する開口を形成してもよい。本実施の形態では、ソース電極
層又はドレイン電極層465bへの開口はさらに層間絶縁層を積層した後に形成し、電気
的に接続する配線層を開口に形成する例とする。
【0228】
次に、ゲート絶縁層452、及び開口423上に導電膜を形成した後、第5のフォトリ
ソグラフィ工程によりゲート電極層461(461a、461b)、配線層464を形成
する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをイ
ンクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0229】
また、ゲート電極層461(461a、461b)、配線層464の材料は、モリブデ
ン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジ
ウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成
することができる。
【0230】
本実施の形態ではゲート電極層461(461a、461b)、配線層464としてス
パッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0231】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは
200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。本実施の形態で
は、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。また、第2の加熱処理は
、トランジスタ460上に保護絶縁層や平坦化絶縁層を形成してから行ってもよい。
【0232】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行
ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、1
00℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回く
りかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行
ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。
【0233】
以上の工程で、水素、水分、水素化物、水酸化物の濃度が低減された酸化物半導体層4
62を有するトランジスタ460を形成することができる(
図16(E)参照)。
【0234】
また、トランジスタ460上に保護絶縁層や、平坦化のための平坦化絶縁層を設けても
よい。なお、図示しないが、ゲート絶縁層452、保護絶縁層や平坦化絶縁層にソース電
極層又はドレイン電極層465bに達する開口を形成し、その開口に、ソース電極層又は
ドレイン電極層465bと電気的に接続する配線層を形成する。
【0235】
上記のように酸化物半導体膜を成膜する際に、反応雰囲気中の残留水分を除去すること
で、該酸化物半導体膜中の水素及び水素化物の濃度を低減することができる。それにより
酸化物半導体膜の安定化を図ることができる。
【0236】
上述したトランジスタを実施の形態1乃至4に示した半導体装置が有するトランジスタ
に適用することによって、待機状態における電池の放電を抑制することができる。つまり
、半導体装置の待機電力を低減することができる。また、待機状態における電池の放電を
抑制することで、半導体装置を長寿命化することができる。
【0237】
さらに、実施の形態1乃至4に示した半導体装置が有するトランジスタのすべてを本実
施の形態のトランジスタによって構成することで、作製プロセスを低減し、歩留まりの向
上及び製造コストの低減を図ることができる。
【0238】
なお、本実施の形態の内容又は該内容の一部は、他の実施の形態の内容又は該内容の一
部と自由に組み合わせることが可能である。
【0239】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態1乃至4に示した半導体装置が有するトランジスタの一
例について説明する。具体的には、チャネル形成領域が酸化物半導体によって構成される
トランジスタの一例について説明する。
【0240】
本実施の形態のトランジスタ及びその作製方法の一形態を、
図17を用いて説明する。
【0241】
図17(A)乃至(E)にトランジスタの断面構造の一例を示す。
図17(A)乃至(
E)に示すトランジスタ390は、ボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型トランジス
タともいう。
【0242】
また、トランジスタ390はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、
必要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタも形成す
ることができる。
【0243】
以下、
図17(A)乃至(E)を用い、基板394上にトランジスタ390を作製する
工程を説明する。
【0244】
まず、絶縁表面を有する基板394上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフ
ィ工程によりゲート電極層391を形成する。形成されたゲート電極層391の端部はテ
ーパ形状であると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ましい。なお、
レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット
法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0245】
絶縁表面を有する基板394に使用することができる基板に大きな制限はないが、少な
くとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。バリウム
ホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板を用いることができる。
【0246】
また、ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以
上のものを用いると良い。また、ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、
アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられてい
る。一般に、酸化ホウ素と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませることで、より
実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、B2O3よりBaOを多く含むガラス基板を
用いることが好ましい
【0247】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの
絶縁体でなる基板を用いても良い。他にも、結晶化ガラス基板などを用いることができる
。また、プラスチック基板等も適宜用いることができる。
【0248】
下地膜となる絶縁膜を基板394とゲート電極層391との間に設けてもよい。下地膜
は、基板394からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シ
リコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜に
よる積層構造により形成することができる。
【0249】
また、ゲート電極層391の材料は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タング
ステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分と
する合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0250】
例えば、ゲート電極層391の2層の積層構造としては、アルミニウム層上にモリブデ
ン層が積層された2層の積層構造、銅層上にモリブデン層を積層した2層構造、銅層上に
窒化チタン層若しくは窒化タンタルを積層した2層構造、窒化チタン層とモリブデン層と
を積層した2層構造、又は窒化タングステン層とタングステン層とを積層した2層構造と
することが好ましい。3層の積層構造としては、タングステン層または窒化タングステン
と、アルミニウムとシリコンの合金またはアルミニウムとチタンの合金と、窒化チタンま
たはチタン層とを積層した積層とすることが好ましい。なお、透光性を有する導電膜を用
いてゲート電極層を形成することもできる。透光性を有する導電膜としては、透光性導電
性酸化物膜等をその例に挙げることができる。
【0251】
次いで、ゲート電極層391上にゲート絶縁層397を形成する。
【0252】
ゲート絶縁層397は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリ
コン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又は酸化アルミニ
ウム層を単層で又は積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁層397中に水素
が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法でゲート絶縁層397を成膜
することが好ましい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ター
ゲットとしてシリコンターゲット又は石英ターゲットを用い、スパッタガスとして酸素又
は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0253】
ゲート絶縁層397は、ゲート電極層391側から窒化シリコン層と酸化シリコン層を
積層した構造とすることもできる。例えば、第1のゲート絶縁層としてスパッタリング法
により膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン層(SiNy(y>0))を形成
し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層として膜厚5nm以上300nm以下の
酸化シリコン層(SiOx(x>0))を積層してゲート絶縁層とする。
【0254】
また、ゲート絶縁層397、酸化物半導体膜393に水素、水酸基及び水分がなるべく
含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で
ゲート電極層391が形成された基板394、又はゲート絶縁層397までが形成された
基板394を予備加熱し、基板394に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気す
ることが好ましい。なお、予備加熱の温度としては、100℃以上400℃以下、好まし
くは150℃以上300℃以下である。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポ
ンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。またこの予備加熱
は、酸化物絶縁層396の成膜前に、ソース電極層395a及びドレイン電極層395b
まで形成した基板394にも同様に行ってもよい。
【0255】
次いで、ゲート絶縁層397上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜3
93を形成する(
図17(A)参照)。
【0256】
なお、酸化物半導体膜393をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを
導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、ゲート絶縁層397の表面に付着して
いるゴミを除去することが好ましい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに
、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形
成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素
などを用いてもよい。
【0257】
酸化物半導体膜393はスパッタリング法により成膜する。酸化物半導体膜393は、
In-Ga-Zn-O系、In-Sn-Zn-O系、In-Al-Zn-O系、Sn-G
a-Zn-O系、Al-Ga-Zn-O系、Sn-Al-Zn-O系、In-Zn-O系
、Sn-Zn-O系、Al-Zn-O系、In-O系、Sn-O系、Zn-O系の酸化物
半導体膜を用いる。本実施の形態では、酸化物半導体膜393をIn-Ga-Zn-O系
金属酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。また、酸化物半導体膜
393は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的
にはアルゴン)及び酸素雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる
。また、スパッタリング法を用いる場合、SiO2を2重量%以上10重量%以下含むタ
ーゲットを用いて成膜を行ってもよい。
【0258】
酸化物半導体膜393をスパッタリング法で作製するためのターゲットとして、酸化亜
鉛を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、金属酸化物のタ
ーゲットの他の例としては、In、Ga、及びZnを含む金属酸化物ターゲット(組成比
として、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol比]、In:Ga:Zn
=1:1:0.5[atom比])を用いることができる。また、In、Ga、及びZn
を含む金属酸化物ターゲットとして、In:Ga:Zn=1:1:1[atom比]、又
はIn:Ga:Zn=1:1:2[atom比]の組成比を有するターゲットを用いるこ
ともできる。金属酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95
%以上99.9%以下である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、
成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0259】
減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、基板を室温以上400℃未満の温度に
加熱する。そして、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタ
ガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして基板394上に酸化物半導体膜393を成
膜する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好
ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用い
ることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えた
ものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子、水
(H2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排
気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減でき
る。また、クライオポンプにより処理室内に残留する水分を除去しながらスパッタ成膜を
行うことで、酸化物半導体膜393を成膜する際の基板温度は室温から400℃未満とす
ることができる。
【0260】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6P
a、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用
される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーテ
ィクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導
体膜は好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料によ
り適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0261】
スパッタリング法にはスパッタ用電源に高周波電源を用いるRFスパッタリング法と、
DCスパッタリング法があり、さらにパルス的にバイアスを与えるパルスDCスパッタリ
ング法もある。RFスパッタリング法は主に絶縁膜を成膜する場合に用いられ、DCスパ
ッタリング法は主に金属膜を成膜する場合に用いられる。
【0262】
また、材料の異なるターゲットを複数設置できる多元スパッタ装置もある。多元スパッ
タ装置は、同一チャンバーで異なる材料膜を積層成膜することも、同一チャンバーで複数
種類の材料を同時に放電させて成膜することもできる。
【0263】
また、チャンバー内部に磁石機構を備えたマグネトロンスパッタリング法を用いるスパ
ッタ装置や、グロー放電を使わずマイクロ波を用いて発生させたプラズマを用いるECR
スパッタリング法を用いるスパッタ装置がある。
【0264】
また、スパッタリング法を用いる成膜方法として、成膜中にターゲット物質とスパッタ
ガス成分とを化学反応させてそれらの化合物薄膜を形成するリアクティブスパッタリング
法や、成膜中に基板にも電圧をかけるバイアススパッタリング法もある。
【0265】
次いで、酸化物半導体膜を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層
399に加工する(
図17(B)参照)。また、島状の酸化物半導体層399を形成する
ためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジ
ェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0266】
また、ゲート絶縁層397にコンタクトホールを形成する場合、その工程は酸化物半導
体層399の形成時に行うことができる。
【0267】
なお、ここでの酸化物半導体膜393のエッチングは、ドライエッチングでもウェット
エッチングでもよく、両方を用いてもよい。
【0268】
ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例
えば塩素(Cl2)、塩化硼素(BCl3)、塩化珪素(SiCl4)、四塩化炭素(C
Cl4)など)が好ましい。
【0269】
また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF4)、六弗化硫黄(
SF6)、三弗化窒素(NF3)、トリフルオロメタン(CHF3)など)、臭化水素(
HBr)、酸素(O2)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希
ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0270】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etc
hing)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘
導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の加工形状にエッチングで
きるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加
される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0271】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液な
どを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0272】
また、ウェットエッチング後のエッチング液はエッチングされた材料とともに洗浄によ
って除去される。その除去された材料を含むエッチング液の廃液を精製し、含まれる材料
を再利用してもよい。当該エッチング後の廃液から酸化物半導体層に含まれるインジウム
等の材料を回収して再利用することにより、資源を有効活用し低コスト化することができ
る。
【0273】
所望の加工形状にエッチングできるように、材料に合わせてエッチング条件(エッチン
グ液、エッチング時間、温度等)を適宜調節する。
【0274】
なお、次工程の導電膜を形成する前に逆スパッタを行い、酸化物半導体層399及びゲ
ート絶縁層397の表面に付着しているレジスト残渣などを除去することが好ましい。
【0275】
次いで、ゲート絶縁層397、及び酸化物半導体層399上に、導電膜を形成する。導
電膜をスパッタリング法や真空蒸着法で形成すればよい。導電膜の材料としては、Al、
Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素、または上述した元素を成分とする
合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、マンガン、マグネシ
ウム、ジルコニウム、ベリリウム、トリウムのいずれか一または複数から選択された材料
を用いてもよい。また、金属導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい
。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積
層する2層構造、Ti膜と、そのTi膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその
上にTi膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Alに、チタン(Ti)、タン
タル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(
Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素を単数、又は複数組み合わせた膜、合金
膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0276】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエ
ッチングを行ってソース電極層395a、ドレイン電極層395bを形成した後、レジス
トマスクを除去する(
図17(C)参照)。
【0277】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrF
レーザ光やArFレーザ光を用いる。酸化物半導体層399上で隣り合うソース電極層の
下端部とドレイン電極層の下端部との間隔幅によって後に形成されるトランジスタのチャ
ネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数n
m~数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet
)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫
外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジス
タのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作
速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さいため、低消費電力化も図ることがで
きる。
【0278】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層399は除去されないようにそれぞ
れの材料及びエッチング条件を適宜調節する。
【0279】
本実施の形態では、導電膜としてTi膜を用いて、酸化物半導体層399にはIn-G
a-Zn-O系酸化物半導体を用いて、エッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア
、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0280】
なお、第3のフォトリソグラフィ工程では、酸化物半導体層399は一部のみがエッチ
ングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。また、ソース電極層
395a、ドレイン電極層395bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法
で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用
しないため、製造コストを低減できる。
【0281】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透
過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジスト
マスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジスト
マスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形する
ことができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができ
る。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対
応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することがで
き、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0282】
N2O、N2、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理によって露出している酸化
物半導体層の表面に付着した吸着水などを除去してもよい。また、酸素とアルゴンの混合
ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0283】
プラズマ処理を行った場合、大気に触れることなく、酸化物半導体層の一部に接する保
護絶縁膜となる酸化物絶縁層として酸化物絶縁層396を形成する(
図17(D)参照)
。本実施の形態では、酸化物半導体層399がソース電極層395a、ドレイン電極層3
95bと重ならない領域において、酸化物半導体層399と酸化物絶縁層396とが接す
るように形成する。
【0284】
本実施の形態では、酸化物絶縁層396として、島状の酸化物半導体層399、ソース
電極層395a、ドレイン電極層395bまで形成された基板394を室温以上100℃
未満の温度に加熱し、水素及び水分が除去された高純度酸素を含むスパッタガスを導入し
シリコンターゲットを用いて、欠陥を含む酸化シリコン層を成膜する。
【0285】
例えば、純度が6Nであり、ボロンがドープされたシリコンターゲット(抵抗値0.0
1Ωcm)を用い、基板とターゲットの間との距離(T-S間距離)を89mm、圧力0
.4Pa、直流(DC)電源6kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下でパルスD
Cスパッタリング法により酸化シリコン層を成膜する。膜厚は300nmとする。なお、
シリコンターゲットに代えて石英(好ましくは合成石英)を酸化シリコン層を成膜するた
めのターゲットとして用いることができる。なお、スパッタガスとして酸素又は、酸素及
びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0286】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層396を成膜するこ
とが好ましい。酸化物半導体層399及び酸化物絶縁層396に水素、水酸基又は水分が
含まれないようにするためである。
【0287】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい
。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いること
が好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたもので
あってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(H
2O)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物絶縁
層396に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0288】
なお、酸化物絶縁層396として、酸化シリコン層に代えて、酸化窒化シリコン層、酸
化アルミニウム層、または酸化窒化アルミニウム層などを用いることもできる。
【0289】
さらに、酸化物絶縁層396と酸化物半導体層399とを接した状態で100℃乃至4
00℃で加熱処理を行ってもよい。本実施の形態における酸化物絶縁層396は欠陥を多
く含むため、この加熱処理によって酸化物半導体層399中に含まれる水素、水分、水酸
基又は水素化物などの不純物を酸化物絶縁層396に拡散させ、酸化物半導体層399中
に含まれる該不純物をより低減させることができる。
【0290】
以上の工程で、水素、水分、水酸基又は水素化物の濃度が低減された酸化物半導体層3
92を有するトランジスタ390を形成することができる(
図17(E)参照)。
【0291】
上記のように酸化物半導体膜を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去するこ
とで、該酸化物半導体膜中の水素及び水素化物の濃度を低減することができる。それによ
り酸化物半導体膜の安定化を図ることができる。
【0292】
酸化物絶縁層上に保護絶縁層を設けてもよい。本実施の形態では、保護絶縁層398を
酸化物絶縁層396上に形成する。保護絶縁層398としては、窒化シリコン膜、窒化酸
化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などを用いる。
【0293】
保護絶縁層398として、酸化物絶縁層396まで形成された基板394を100℃~
400℃の温度に加熱し、水素及び水分が除去された高純度窒素を含むスパッタガスを導
入しシリコンターゲットを用いて窒化シリコン膜を成膜する。この場合においても、酸化
物絶縁層396と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層398を成膜する
ことが好ましい。
【0294】
保護絶縁層398を形成する場合、保護絶縁層398の成膜時に100℃~400℃に
基板394を加熱することで、酸化物半導体層中に含まれる水素若しくは水分を酸化物絶
縁層に拡散させることができる。この場合上記酸化物絶縁層396の形成後に加熱処理を
行わなくてもよい。
【0295】
酸化物絶縁層396として酸化シリコン層を形成し、保護絶縁層398として窒化シリ
コン層を積層する場合、酸化シリコン層と窒化シリコン層を同じ処理室において、共通の
シリコンターゲットを用いて成膜することができる。先に酸素を含むスパッタガスを導入
して、処理室内に装着されたシリコンターゲットを用いて酸化シリコン層を形成し、次に
スパッタガスを窒素を含むスパッタガスに切り替えて同じシリコンターゲットを用いて窒
化シリコン層を成膜する。酸化シリコン層と窒化シリコン層とを大気に曝露せずに連続し
て形成することができるため、酸化シリコン層表面に水素や水分などの不純物が吸着する
ことを防止することができる。この場合、酸化物絶縁層396として酸化シリコン層を形
成し、保護絶縁層398として窒化シリコン層を積層した後、酸化物半導体層中に含まれ
る水素若しくは水分を酸化物絶縁層に拡散させるための加熱処理(温度100℃乃至40
0℃)を行うとよい。
【0296】
保護絶縁層の形成後、さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間
以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱しても
よいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温
までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の
形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮すること
ができる。この加熱処理によって、ノーマリーオフとなるトランジスタを得ることができ
る。よって半導体装置の信頼性を向上できる。
【0297】
また、ゲート絶縁層上にチャネル形成領域とする酸化物半導体層を成膜するに際し、反
応雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体層中の水素及び水素化物の濃度
を低減することができる。
【0298】
上記の工程は、液晶表示パネル、エレクトロルミネセンス表示パネル、電子インクを用
いた表示装置などのバックプレーン(トランジスタが形成された基板)の製造に用いるこ
とができる。上記の工程は、400℃以下の温度で行われるため、厚さが1mm以下で、
一辺が1mを超えるガラス基板を用いる製造工程にも適用することができる。また、40
0℃以下の処理温度で全ての工程を行うことができるので、表示パネルを製造するために
多大なエネルギーを消費しないで済む。
【0299】
上述したトランジスタを実施の形態1乃至4に示した半導体装置が有するトランジスタ
に適用することによって、待機状態における電池の放電を抑制することができる。つまり
、半導体装置の待機電力を低減することができる。また、待機状態における電池の放電を
抑制することで、半導体装置を長寿命化することができる。
【0300】
さらに、実施の形態1乃至4に示した半導体装置が有するトランジスタのすべてを上述
したトランジスタによって構成することで、作製プロセスを低減し、歩留まりの向上及び
製造コストの低減を図ることができる。
【0301】
なお、本実施の形態の内容又は該内容の一部は、他の実施の形態の内容又は該内容の一
部と自由に組み合わせることが可能である。
【0302】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態1乃至4に示した半導体装置が有するトランジスタの一
例について説明する。具体的には、チャネル形成領域が酸化物半導体によって構成される
トランジスタの一例について説明する。
【0303】
本実施の形態のトランジスタ及びその作製方法の一形態を、
図18を用いて説明する。
【0304】
図18(A)乃至(D)にトランジスタの断面構造の一例を示す。
図18(D)に示す
トランジスタ360は、チャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)と呼ばれるボト
ムゲート構造の一つであり逆スタガ型トランジスタともいう。
【0305】
また、トランジスタ360はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、
必要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタも形成す
ることができる。
【0306】
以下、
図18(A)乃至(D)を用い、基板320上にトランジスタ360を作製する
工程を説明する。
【0307】
まず、絶縁表面を有する基板320上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフ
ィ工程によりゲート電極層361を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法
で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用
しないため、製造コストを低減できる。
【0308】
また、ゲート電極層361の材料は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タング
ステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分と
する合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0309】
次いで、ゲート電極層361上にゲート絶縁層322を形成する。
【0310】
本実施の形態では、ゲート絶縁層322としてプラズマCVD法により膜厚100nm
以下の酸化窒化珪素層を形成する。
【0311】
次いで、ゲート絶縁層322上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜を
形成し、第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。本実施
の形態では、酸化物半導体膜としてIn-Ga-Zn-O系金属酸化物ターゲットを用い
てスパッタ法により成膜する。
【0312】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物半導体膜を成膜することが
好ましい。酸化物半導体膜に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0313】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい
。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いること
が好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたもので
あってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(H
2O)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導
体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0314】
酸化物半導体膜を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物
などの不純物が、数ppm程度、数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが
好ましい。
【0315】
次いで、酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行う。脱水化または脱水素化を行う
第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪
み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半
導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れ
ることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層332を得る
(
図18(A)参照)。
【0316】
次いで、N2O、N2、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行う。このプラ
ズマ処理によって、露出している酸化物半導体層の表面に付着した吸着水などを除去する
。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0317】
次いで、ゲート絶縁層322、及び酸化物半導体層332上に、酸化物絶縁層を形成し
た後、第3のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチン
グを行って酸化物絶縁層366を形成した後、レジストマスクを除去する。
【0318】
本実施の形態では、酸化物絶縁層366として膜厚200nmの酸化珪素膜をスパッタ
法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施
の形態では100℃とする。酸化珪素膜のスパッタ法による成膜は、希ガス(代表的には
アルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲
気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲットまたは珪素
ターゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素、及び窒素雰
囲気下でスパッタ法により酸化珪素を形成することができる。
【0319】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層366を成膜するこ
とが好ましい。酸化物半導体層332及び酸化物絶縁層366に水素、水酸基又は水分が
含まれないようにするためである。
【0320】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい
。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いること
が好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたもので
あってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(H
2O)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物絶縁
層366に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0321】
酸化物絶縁層366を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素
化物などの不純物が、数ppm程度、数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いるこ
とが好ましい。
【0322】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは
200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行ってもよい。例えば
、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、
酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が酸化物絶縁層366と接した状態で加熱さ
れる。
【0323】
本実施の形態は、さらに酸化物絶縁層366が設けられ一部が露出している酸化物半導
体層332に、窒素、不活性ガス雰囲気下、又は減圧下で加熱処理を行う。酸化物絶縁層
366によって覆われていない露出された酸化物半導体層332の領域は、窒素、不活性
ガス雰囲気下、又は減圧下で加熱処理を行うと、低抵抗化することができる。例えば、窒
素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。
【0324】
酸化物絶縁層366が設けられた酸化物半導体層332に対する窒素雰囲気下の加熱処
理によって、酸化物半導体層332の露出領域は低抵抗化し、抵抗の異なる領域(
図18
(B)においては斜線領域及び白地領域で示す)を有する酸化物半導体層362となる。
【0325】
次いで、ゲート絶縁層322、酸化物半導体層362、及び酸化物絶縁層366上に、
導電膜を形成した後、第4のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選
択的にエッチングを行ってソース電極層365a、ドレイン電極層365bを形成した後
、レジストマスクを除去する(
図18(C)参照)。
【0326】
ソース電極層365a、ドレイン電極層365bの材料としては、Al、Cr、Cu、
Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、
上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、金属導電膜は、単層構造でも
、2層以上の積層構造としてもよい。
【0327】
以上の工程を経ることによって、成膜後の酸化物半導体膜に対して脱水化または脱水素
化のための加熱処理を行って低抵抗化した後、酸化物半導体膜の一部を選択的に酸素過剰
な状態とする。その結果、ゲート電極層361と重なるチャネル形成領域363は、I型
となり、ソース電極層365aに重なる高抵抗ソース領域364aと、ドレイン電極層3
65bに重なる高抵抗ドレイン領域364bとが自己整合的に形成される。以上の工程で
トランジスタ360が形成される。
【0328】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行
ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定
の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温
度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、
この加熱処理を、酸化物絶縁膜の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を
行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、酸化物半導体層から
酸化物絶縁層中に水素がとりこまれ、ノーマリーオフとなるトランジスタを得ることがで
きる。よって半導体装置の信頼性を向上できる。
【0329】
なお、ドレイン電極層365b(及びソース電極層365a)と重畳した酸化物半導体
層において高抵抗ドレイン領域364b(及び高抵抗ソース領域364a)を形成するこ
とにより、トランジスタの信頼性の向上を図ることができる。具体的には、高抵抗ドレイ
ン領域364bを形成することで、ドレイン電極層から高抵抗ドレイン領域364b、チ
ャネル形成領域363にかけて、導電性を段階的に変化させうるような構造とすることが
できる。そのため、ドレイン電極層365bに高電源電位VDDを供給する配線に接続し
て動作させる場合、ゲート電極層361とドレイン電極層365bとの間に高電圧が印加
されても高抵抗ドレイン領域がバッファとなり局所的な電解集中が生じにくく、トランジ
スタの耐圧を向上させた構成とすることができる。
【0330】
ソース電極層365a、ドレイン電極層365b、酸化物絶縁層366上に保護絶縁層
323を形成する。本実施の形態では、保護絶縁層323を、窒化珪素膜を用いて形成す
る(
図18(D)参照)。
【0331】
なお、ソース電極層365a、ドレイン電極層365b、酸化物絶縁層366上にさら
に酸化物絶縁層を形成し、該酸化物絶縁層上に保護絶縁層323を積層してもよい。
【0332】
上述したトランジスタを実施の形態1乃至4に示した半導体装置が有するトランジスタ
に適用することによって、待機状態における電池の放電を抑制することができる。つまり
、半導体装置の待機電力を低減することができる。また、待機状態における電池の放電を
抑制することで、半導体装置を長寿命化することができる。
【0333】
さらに、実施の形態1乃至4に示した半導体装置が有するトランジスタのすべてを上述
したトランジスタによって構成することで、作製プロセスを低減し、歩留まりの向上及び
製造コストの低減を図ることができる。
【0334】
なお、本実施の形態の内容又は該内容の一部は、他の実施の形態の内容又は該内容の一
部と自由に組み合わせることが可能である。
【0335】
(実施の形態9)
本実施の形態では、実施の形態1乃至4に示した半導体装置の使用例について
図19を
参照して説明する。
【0336】
図19に示すように、半導体装置の用途は広範囲にわたるが、例えば、紙幣、硬貨、有
価証券類、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、
図19(A)参照)、記録媒
体(DVDソフトやビデオテープ等、
図19(B)参照)、包装用容器類(包装紙やボト
ル等、
図19(C)参照)、乗り物類(自転車等、
図19(D)参照)、身の回り品(鞄
や眼鏡等)、食品類、植物類、動物類、人体、衣類、生活用品類、または電子機器(液晶
表示装置、EL表示装置、テレビジョン受像機、または携帯電話)等の物品、若しくは各
物品に取り付ける荷札(
図19(E)、
図19(F)参照)等に設けて使用することがで
きる。
【0337】
半導体装置1500は、プリント基板に実装、表面に貼る、または埋め込むことにより
、物品に固定される。例えば、本であれば紙に埋め込む、または有機樹脂からなるパッケ
ージであれば当該有機樹脂に埋め込み、各物品に固定される。半導体装置1500は、小
型、薄型、軽量を実現するため、物品に固定した後もその物品自体のデザイン性を損なう
ことがない。また、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、または証書類等に半導体装
置1500を設けることにより、認証機能を設けることができ、この認証機能を活用すれ
ば、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類
、衣類、生活用品類、または電子機器等に本発明の半導体装置を取り付けることにより、
検品システム等のシステムの効率化を図ることができる。また、乗り物類であっても、半
導体装置1500を取り付けることにより、盗難などに対するセキュリティを高めること
ができる。
【0338】
以上のように、上記実施の形態で説明した半導体装置を本実施の形態に挙げた各用途に
用いることにより、情報のやりとりに用いられるデータを正確の値のまま維持することが
できるため、物品の認証性、またはセキュリティを高めることができる。
【0339】
なお、本実施の形態の内容又は該内容の一部は、他の実施の形態の内容又は該内容の一
部と自由に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0340】
10 アンテナ
11 電池
12 復調回路
13 信号処理部
14 パワー制御回路
15 トランジスタ
20 アンテナ
21 電池
22 タイマー
23 信号処理部
24 パワー制御回路
25 トランジスタ
30 アンテナ
31 二次電池
32 整流回路
33 充電回路
34 安定化電源回路
35 復調回路
36 信号処理部
37 パワー制御回路
38 トランジスタ
40 アンテナ
41 二次電池
42 整流回路
43 充電回路
44 安定化電源回路
45 復調回路
46 信号処理部
47 パワー制御回路
48 論理回路
49 クロック生成回路
50 センサ
51 メモリ回路
52 変調回路
80 P型トランジスタ
81 N型トランジスタ
82 N型トランジスタ
83 P型トランジスタ
84 P型トランジスタ
85 N型トランジスタ
86 N型トランジスタ
87 N型トランジスタ
88 P型トランジスタ
89 P型トランジスタ
90 N型トランジスタ
91 N型トランジスタ
92 N型トランジスタ
100 基板
102 保護層
104 半導体領域
106 素子分離絶縁層
108a ゲート絶縁層
108b 絶縁層
110a ゲート電極層
110b 電極層
112 絶縁層
114a 不純物領域
114b 不純物領域
116 チャネル形成領域
118 サイドウォール絶縁層
120a 高濃度不純物領域
120b 高濃度不純物領域
122 金属層
124a 金属化合物領域
124b 金属化合物領域
126 層間絶縁層
128 層間絶縁層
130a ソース電極層
130b ドレイン電極層
130c 電極層
132 絶縁層
134 導電層
136a 電極層
136b 電極層
136c 電極層
136d ゲート電極層
138 ゲート絶縁層
140 酸化物半導体層
142a ソース電極層
142b ドレイン電極層
144 保護絶縁層
146 層間絶縁層
148 導電層
150a 電極層
150b 電極層
150c 電極層
150d 電極層
150e 電極層
152 絶縁層
154a 電極層
154b 電極層
154c 電極層
154d 電極層
160 P型トランジスタ
164 N型トランジスタ
320 基板
322 ゲート絶縁層
323 保護絶縁層
332 酸化物半導体層
360 トランジスタ
361 ゲート電極層
362 酸化物半導体層
363 チャネル形成領域
364a ソース領域
364b ドレイン領域
365a ソース電極層
365b ドレイン電極層
366 酸化物絶縁層
390 トランジスタ
391 ゲート電極層
392 酸化物半導体層
393 酸化物半導体膜
394 基板
395a ソース電極層
395b ドレイン電極層
396 酸化物絶縁層
397 ゲート絶縁層
398 保護絶縁層
399 酸化物半導体層
423 開口
450 基板
452 ゲート絶縁層
457 絶縁層
460 トランジスタ
461 ゲート電極層
461a ゲート電極層
461b ゲート電極層
462 酸化物半導体層
464 配線層
465a ソース電極層又はドレイン電極層
465a1 ソース電極層又はドレイン電極層
465a2 ソース電極層又はドレイン電極層
465b ソース電極層又はドレイン電極層
468 配線層
1500 半導体装置