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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】コンピュータ、プログラム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/02 20060101AFI20241108BHJP
   G01J 3/36 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G01J3/02 Z
G01J3/36
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023135422
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2022500259の分割
【原出願日】2021-01-04
(65)【公開番号】P2023169165
(43)【公開日】2023-11-29
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2020022724
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】中村 共則
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078724(JP,A)
【文献】特開2006-276840(JP,A)
【文献】特開2014-235333(JP,A)
【文献】特開2011-027706(JP,A)
【文献】特開2016-031444(JP,A)
【文献】特開2015-211727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0316258(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 3/52
H04N 5/222 - H04N 5/257
H04N 9/01 - H04N 9/11
G02B 19/00 - G02B 21/00
G02B 21/06 - G02B 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長λ1と波長λ2の範囲において、波長の変化に応じて透過率がリニアに変化する光学素子を透過した光を撮像した透過画像から計測光の透過光量Tを求める透過光量算出処理と、
前記光学素子を反射した光を撮像した反射画像から前記計測光の反射光量Rを求める反射光量算出処理と、
前記光学素子の前記波長λ1及び前記波長λ2、前記透過光量T、前記反射光量Rに基づいて、前記計測光の波長重心を求める演算処理と、を実行し、
前記演算処理において、前記透過光量T及び前記反射光量Rの差分値を計測光の全光量Aで規格化し、規格化後の差分値及び前記光学素子の前記波長λ 1 及び前記波長λ 2 に基づいて、透過率が50%となる波長λ 50% に対する波長差δλを求める、コンピュータ。
【請求項2】
前記演算処理において、前記λ50%及び前記波長差δλの和から前記計測光の波長重心を求める、請求項記載のコンピュータ。
【請求項3】
前記透過光量算出処理を、前記透過画像に含まれる画素ごとに行い、前記反射光量算出処理を、前記反射画像に含まれる画素ごとに行い、前記演算処理を、前記画素ごとに行う、請求項1又は2記載のコンピュータ。
【請求項4】
前記透過画像及び前記反射画像に対し、前記光学素子への前記計測光の入射角度に応じた補正を行う処理、をさらに実行する請求項1又は2記載のコンピュータ。
【請求項5】
前記透過画像及び前記反射画像に対し、前記光学素子の光学特性に基づく補正を行う処理、をさらに実行する請求項1又は2記載のコンピュータ。
【請求項6】
素ごとのゲイン補正を行う事により、前記透過画像及び前記反射画像に対してシェーディング補正を行う処理、をさらに実行する請求項1又は2記載のコンピュータ。
【請求項7】
波長λ1と波長λ2の範囲において、波長の変化に応じて透過率がリニアに変化する光学素子を透過した光を撮像した透過画像から計測光の透過光量Tを求める透過光量算出処理と、
前記光学素子を反射した光を撮像した反射画像から前記計測光の反射光量Rを求める反射光量算出処理と、
前記光学素子の前記波長λ1及び前記波長λ2、前記透過光量T、前記反射光量Rに基づいて、前記計測光の波長重心を求める演算処理と、をコンピュータに実行させ
前記演算処理において、前記コンピュータに、前記透過光量T及び前記反射光量Rの差分値を計測光の全光量Aで規格化し、規格化後の差分値及び前記光学素子の前記波長λ 1 及び前記波長λ 2 に基づいて、透過率が50%となる波長λ 50% に対する波長差δλを求めさせる、プログラム。
【請求項8】
前記演算処理において、前記コンピュータに、前記λ50%及び前記波長差δλの和から前記計測光の波長重心を求めさせる、請求項記載のプログラム。
【請求項9】
前記コンピュータに対し、前記透過光量算出処理を、前記透過画像に含まれる画素ごとに行わせ、前記反射光量算出処理を、前記反射画像に含まれる画素ごとに行わせ、前記演算処理を、前記画素ごとに行わせる、請求項7又は8記載のプログラム。
【請求項10】
前記透過画像及び前記反射画像に対し、前記光学素子への前記計測光の入射角度に応じた補正を行う処理、を前記コンピュータにさらに実行させる請求項7又は8記載のプログラム。
【請求項11】
前記透過画像及び前記反射画像に対し、前記光学素子の光学特性に基づく補正を行う処理、を前記コンピュータにさらに実行させる請求項7又は8記載のプログラム。
【請求項12】
素ごとのゲイン補正を行う事により、前記透過画像及び前記反射画像に対してシェーディング補正を行う処理、を前記コンピュータにさらに実行させる請求項7又は8記載のプログラム。
【請求項13】
波長λ1と波長λ2の範囲において、波長の変化に応じて透過率がリニアに変化する光学素子を透過した光を撮像した透過画像から計測光の透過光量Tを求める透過光量算出ステップと、
前記光学素子を反射した光を撮像した反射画像から前記計測光の反射光量Rを求める反射光量算出ステップと、
前記光学素子の前記波長λ1及び前記波長λ2、前記透過光量T、前記反射光量Rに基づいて、前記計測光の波長重心を求める演算ステップと、を備え
前記演算ステップにおいて、前記透過光量T及び前記反射光量Rの差分値を計測光の全光量Aで規格化し、規格化後の差分値及び前記光学素子の前記波長λ 1 及び前記波長λ 2 に基づいて、透過率が50%となる波長λ 50% に対する波長差δλを求める、方法。
【請求項14】
前記演算ステップにおいて、前記λ50%及び前記波長差δλの和から前記計測光の波長重心を求める、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記透過光量算出ステップを、前記透過画像に含まれる画素ごとに行い、前記反射光量算出ステップを、前記反射画像に含まれる画素ごとに行い、前記演算ステップを、前記画素ごとに行う、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
前記透過画像及び前記反射画像に対し、前記光学素子への前記計測光の入射角度に応じた補正を行うステップ、をさらに備える請求項13又は14記載の方法。
【請求項17】
前記透過画像及び前記反射画像に対し、前記光学素子の光学特性に基づく補正を行うステップ、をさらに備える請求項13又は14記載の方法。
【請求項18】
素ごとのゲイン補正を行うことにより、前記透過画像及び前記反射画像に対してシェーディング補正を行うステップ、をさらに備える請求項13又は14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像ユニット及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物からの光を波長に応じて分離し、分離した波長を異なる撮像領域で撮像する撮像ユニットが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載された撮像ユニットでは、光学素子であるダイクロイックミラーによって、波長を分離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-235332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたダイクロイックミラーは、ある波長を基準にして該波長よりも短い波長の光と長い波長の光とを分離するものであり、概ね、透過率が波長によらず100%又は0%である。このようなダイクロイックミラーを用いる場合、例えば波長幅が狭い光を分離しようとすると、波長に応じて所望の分離ができないことが考えられる。このような波長幅が狭い光の分離にも対応する構成として、波長の変化に応じて透過率(及び反射率)が変化する波長帯の幅が広い(エッジ変移幅を有した)ダイクロイックミラーがある。エッジ変移幅を有したダイクロイックミラーは、波長幅が狭い光についても適切に分離することができる。
【0005】
ここで、エッジ変移幅を有したダイクロイックミラーでは、例えば光の入射角度に応じて光学特性が変化してしまう。このことによって、エッジ変移幅を有したダイクロイックミラーを用いた撮像ユニットでは、光の波長を正確に導出することができず、正しい撮像画像を得られないおそれがある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、光の波長を正確に導出し適切な画像を取得することができる撮像ユニット及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る撮像ユニットは、対象物からの光を波長に応じて透過又は反射することにより分離し、波長の変化に応じて透過率及び反射率が変化する波長帯の幅であるエッジ変移幅が所定の幅を有する分離光学素子と、分離光学素子において透過又は反射された光の一方を反射する反射光学素子と、分離光学素子において透過又は反射された光の他方を第1の撮像領域で撮像すると共に、反射光学素子において反射された光を第1の撮像領域とは異なる第2の撮像領域で撮像する撮像部と、分離光学素子における波長に対する透過率及び反射率の変化に係る光学特性に基づいて、第1の撮像領域及び第2の撮像領域で撮像される画像を補正する処理部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る撮像ユニットでは、エッジ変移幅が所定の幅を有する分離光学素子が用いられており、該分離光学素子における波長に対する透過率および反射率の変化に係る光学特性に基づいて撮像画像が補正されている。エッジ変移幅が所定の幅を有する分離光学素子を用いた場合には、波長幅が狭い光を適切に分離することができるものの、例えば分離光学素子に対する光の入射角度によって光学特性が変化してしまうことによって、光の波長を正確に導出し適切な画像を取得することができないおそれがある。この点、本発明の一態様に係る撮像ユニットでは、波長に対する透過率及び反射率の変化に係る光学特性、すなわち分離光学素子のエッジ変移幅に係る特性に基づいて、第1及び第2の撮像領域で撮像される画像が補正されるため、エッジ変移幅を有した分離光学素子固有の光学特性を考慮して補正された撮像画像を取得することができる。このことにより、分離光学素子によって分離された光(第1及び第2の撮像領域で撮像される光)の波長を適切に導出し、適切な(正確な)画像を取得することができる。
【0009】
処理部は、分離光学素子における波長に対する透過率及び反射率の変化に係る光学特性を考慮した補正データを予め記憶しており、該補正データを用いて、第1の撮像領域及び第2の撮像領域で撮像される画像を補正してもよい。このような構成によれば、予め記憶された補正データに基づき、容易且つ適切に撮像画像の補正を行うことができる。
【0010】
処理部は、分離光学素子における波長に対する透過率及び反射率の変化に係る光学特性を考慮した補正データを受け付け、該補正データを用いて、第1の撮像領域及び第2の撮像領域で撮像される画像を補正してもよい。このような構成によれば、例えばソフトウェアが実行されること又はインターネット等の外部から入力されることによって得た補正データに基づき、予め補正データを準備することなく、適切に撮像画像の補正を行うことができる。
【0011】
処理部は、分離光学素子に対する光の入射角度に起因する色斑を補正してもよい。エッジ変移幅を有した分離光学素子を用いた場合には、分離光学素子に対する入射角度に応じて分離光学素子の光学特性が変化してしまい撮像画像において色斑が生じることが問題となる。この点、該色斑を補正することによって、該色斑を低減した適切な画像を取得することができる。
【0012】
処理部は、波長の変化に応じて透過率及び反射率が変化する波長帯と変化しない波長帯との境界に起因する検出波長のずれを補正してもよい。このような境界は、波長の変化に応じて透過率等が変化する波長帯とは異なる光学特性となる。このため、波長の変化に応じて透過率等が変化する波長帯と同じ計算式で波長を導出すると、本来の波長とは異なる導出結果となるおそれがある。この点、このような境界に起因する検出波長のずれを補正することによって、光の波長を正確に導出し適切な画像を取得することができる。
【0013】
撮像部は、第1の撮像領域及び第2の撮像領域を有する単一の撮像素子であってもよい。これにより、単一の撮像素子を用いたシンプルな構成によって、複数の撮像画像を得ることができる。
【0014】
本発明の一態様に係る測定装置は、上述した撮像ユニットと、処理部によって補正された画像を含む撮像ユニットにおける処理結果を解析する解析部と、を備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光の波長を正確に導出し適切な画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る測定装置を模式的に示した平面図である。
図2図1の測定装置に含まれるカメラシステムを模式的に示した側面図である。
図3】光のスペクトル及び傾斜ダイクロイックミラーの特性を説明する図である。
図4】補正ユニットを模式的に示す図である。
図5】計算波長の補正を説明するためのグラフである。
図6】補正方法のフローチャートである。
図7】変形例に係る傾斜ダイクロイックミラーの特性を説明する図である。
図8】変形例に係るカメラシステムを模式的に示した図である。
図9】変形例に係るカメラシステムを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る測定装置1を模式的に示した平面図である。測定装置1は、サンプルを撮像可能に構成されたカメラユニット(撮像ユニット)である。測定装置1は、サンプルからの光(例えば観察光)を波長成分に応じて分離し、各波長成分に対応する撮像素子14,24,34によって各波長成分の光を撮像する。測定装置1は、撮像素子14,24,34によって撮像された画像(撮像結果)を解析することにより、サンプルの良否判定を行う。サンプルは、例えばLED、ミニLED、μLED、SLD素子、レーザ素子、垂直型レーザ素子(VCSEL)、OLED等の発光素子であってもよいし、ナノドット等を含む蛍光物質により発光波長を調整する発光素子であってもよい。サンプルが発光素子である場合には、サンプルの良否判定を行うとは、例えば複数の発光素子間における色斑情報に基づきサンプルの良否判定を行うことである。
【0019】
図1に示されるように、測定装置1は、カメラシステム2と、制御装置80(処理部,解析部)とを備えている。カメラシステム2の詳細について、図2も参照しながら説明する。図1はカメラシステム2を含む測定装置1の平面図であり、図2はカメラシステム2の側面図である。
【0020】
図1及び図2に示されるように、カメラシステム2は、第1撮像ユニット10と、第2撮像ユニット20と、第3撮像ユニット30と、無限遠補正レンズ40と、ダイクロイックミラー50と、ダイクロイックミラー60と、を含んで構成されている。なお、図1及び図2には図示していないが、カメラシステム2は、サンプルを観察する対物レンズ(不図示)と、所望の波長範囲外の光を取り除く一又は複数のバンドパスフィルタ(不図示)とを備えている。カメラシステム2は、概ね三原色に対応する波長成分に光を分離して、それぞれの波長成分の光を撮像する。例えば、第1撮像ユニット10は、青色の波長成分を含む380~500nmの光を撮像する。また、第2撮像ユニット20は、緑色の波長成分を含む500~650nmの光を撮像する。また、第3撮像ユニット30は、赤色の波長成分を含む650~830nmの光を撮像する。
【0021】
無限遠補正レンズ40は、入射したサンプルからの光を平行光に変換するコリメータレンズである。無限遠補正レンズ40は、平行光が得られるように収差補正されている。無限遠補正レンズ40から出力された平行光はダイクロイックミラー50に入射する。
【0022】
ダイクロイックミラー50は、特殊な光学素材を用いて作成されたミラーであり、サンプルからの光を波長に応じて透過又は反射することにより分離する。ダイクロイックミラー50は、例えば特定の波長の光を反射すると共に、その他の波長の光を透過する。具体的には、ダイクロイックミラー50は、例えば波長が500nm未満の光を反射すると共に、その他の波長の光(波長が500nm以上の光)を透過する。ダイクロイックミラー50によって反射された光は、第1撮像ユニット10に導かれる。ダイクロイックミラー50を透過した光は、ダイクロイックミラー60に入射する。
【0023】
ダイクロイックミラー60は、特殊な光学素材を用いて作成されたミラーであり、サンプルからの光を波長に応じて透過又は反射することにより分離する。ダイクロイックミラー60は、例えば特定の波長の光を反射すると共に、その他の波長の光を透過する。具体的には、ダイクロイックミラー60は、例えば波長が500nm以上且つ650nm未満の光を反射すると共に、その他の波長の光(波長が650nm以上の光)を透過する。ダイクロイックミラー60によって反射された光は、第2撮像ユニット20に導かれる。ダイクロイックミラー60を透過した光は、第3撮像ユニット30に導かれる。
【0024】
第1撮像ユニット10は、傾斜ダイクロイックミラー11(分離光学素子)と、全反射ミラー12(反射光学素子)と、結像レンズ13と、撮像素子14(撮像部)と、を含んで構成されている。
【0025】
傾斜ダイクロイックミラー11は、特殊な光学素材を用いて作成されたミラーであり、サンプルからの光を波長に応じて透過又は反射することにより分離する。傾斜ダイクロイックミラー11は、例えば特定の波長の光を反射すると共に、その他の波長の光を透過する。具体的には、傾斜ダイクロイックミラー11は、ダイクロイックミラー50において反射された500nm未満の光のうち380~500nmの光を反射すると共に、その他の波長の光を透過する。図3は、光のスペクトル及び傾斜ダイクロイックミラー11の特性を説明する図である。図3において横軸は波長を示しており、縦軸はスペクトル強度(光のスペクトルの場合)及び透過率(傾斜ダイクロイックミラー11の場合)を示している。図3の傾斜ダイクロイックミラー11の特性X4に示されるように、傾斜ダイクロイックミラー11においては、特定の波長帯(波長λ1~λ2の波長帯)では波長の変化に応じて光の透過率(及び反射率)が緩やかに変化し、該特定の波長帯以外の波長帯(すなわち、波長λ1よりも低波長側及び波長λ2よりも高波長側)では波長の変化に関わらず光の透過率(及び反射率)が一定とされている。換言すれば、特定の波長帯(波長λ~λの波長帯)では波長の変化に応じて光の透過率が単調増加(反射率が単調減少)で変化している。透過率と反射率とは、一方が大きくなる方向に変化すると他方が小さくなる方向に変化する、負の相関関係にあるため、以下では「透過率(及び反射率)」と記載せずに単に「透過率」と記載する場合がある。なお、「波長の変化に関わらず光の透過率が一定」とは、完全に一定である場合だけでなく、例えば波長1nmの変化に対する透過率の変化が0.1%以下であるような場合も含むものである。波長λ1よりも低波長側では波長の変化に関わらず光の透過率が概ね0%であり、波長λ2よりも高波長側では波長の変化に関わらず光の透過率が概ね100%である。なお、「光の透過率が概ね0%である」とは、0%+10%程度の透過率を含むものであり、「光の透過率が概ね100%である」とは、100%-10%程度の透過率を含むものである。また、以下では、波長の変化に応じて光の透過率が変化する波長帯の幅を「エッジ変移幅」として説明する場合がある。以上のように、傾斜ダイクロイックミラー11は、波長の変化に応じて透過率が変化する波長帯の幅であるエッジ変移幅が所定の幅(波長λ1~λ2の幅)を有する分離光学素子である。
【0026】
全反射ミラー12は、傾斜ダイクロイックミラー11において反射された光を結像レンズ13方向に反射する光学素子である。
【0027】
結像レンズ13は、傾斜ダイクロイックミラー11を透過した光、及び、傾斜ダイクロイックミラー11において反射されると共に全反射ミラー12において更に反射された光をそれぞれ結像させ、これらの光を撮像素子14に導くレンズである。
【0028】
撮像素子14は、傾斜ダイクロイックミラー11を透過した光を第1の撮像領域で撮像すると共に、傾斜ダイクロイックミラー11において反射されると共に全反射ミラー12において更に反射された光を第1の撮像領域とは異なる第2の撮像領域で撮像する。撮像素子14は、結像レンズ13によって結像された画像を検出することによって、傾斜ダイクロイックミラー11を透過した光及び全反射ミラー12において反射された光を撮像する。撮像素子14は、380~500nmの光を撮像するための撮像素子であり、例えばCCDやMOS等のエリアイメージセンサである。また、撮像素子14は、ラインセンサやTDI(Time Delay Integration)センサによって構成されていてもよい。本実施形態では、撮像素子14は第1の撮像領域及び第2の撮像領域を有する単一の撮像素子であるとして説明するが、第1の撮像領域に係る撮像素子と、第2の撮像領域に係る撮像素子とが別に設けられていてもよい(2組設けられていてもよい)。この場合、結像レンズについても、撮像素子に対応して2組設けられる。撮像素子14は、撮像結果である画像を制御装置80に出力する。
【0029】
第2撮像ユニット20は、第1撮像ユニット10に含まれる構成と同様の構成を含んでおり、傾斜ダイクロイックミラー21(分離光学素子)と、全反射ミラー22(反射光学素子)と、結像レンズ23と、撮像素子24(撮像部)と、を含んで構成されている。傾斜ダイクロイックミラー21は、ダイクロイックミラー60において反射された500nm以上且つ650nm未満の光のうち500~650nmの光を反射すると共に、その他の波長の光を透過する点を除いて、第1撮像ユニット10の傾斜ダイクロイックミラー11と同様の構成である。また、撮像素子24は、500~650nmの光を撮像するための撮像素子である点を除いて、第1撮像ユニット10の撮像素子14と同様の構成である。
【0030】
第3撮像ユニット30は、第1撮像ユニット10に含まれる構成と同様の構成を含んでおり、傾斜ダイクロイックミラー31(分離光学素子)と、全反射ミラー32(反射光学素子)と、結像レンズ33と、撮像素子34(撮像部)と、を含んで構成されている。傾斜ダイクロイックミラー31は、ダイクロイックミラー60を透過した650nm以上のうち650~830nmの光を反射すると共に、その他の波長の光を透過する点を除いて、第1撮像ユニット10の傾斜ダイクロイックミラー11と同様の構成である。また、撮像素子24は、650~830nmの光を撮像するための撮像素子である点を除いて、第1撮像ユニット10の撮像素子14と同様の構成である。
【0031】
図1に戻り、制御装置80は、コンピュータであって、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えて構成されている。制御装置80は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより機能する。制御装置80は、マイコンやFPGAで構成されていてもよい。
【0032】
制御装置80は、第1撮像ユニット10、第2撮像ユニット20、及び第3撮像ユニット30のそれぞれにおいて得られた撮像結果に基づいて、撮像結果である画像の各ピクセル(視野内に結像された像の各ピクセル)の光量に基づき発光波長重心を計算し出力する。以下、発光波長重心の計算原理の一例について、図2を参照して詳細に説明する。なお、第1撮像ユニット10、第2撮像ユニット20、及び第3撮像ユニット30の撮像結果に基づく発光波長重心の計算原理は同様であるので、以下では第1撮像ユニット10の撮像結果に基づく発光波長重心の計算を例に説明する。
【0033】
上述したように、傾斜ダイクロイックミラー11は、波長λ1よりも低波長側では全ての光を反射し、波長λ2よりも高波長側では全ての光を透過し、波長λ1~λ2の波長帯では光の透過率が波長に従ってリニアに変化するとする。この場合、波長λ1,λ2との関係において透過率h(λ)は以下の(1)式で示され、反射率1-h(λ)は以下の(2)式で示される。
h(λ)=(λ-λ1)/(λ21) (1)
1-h(λ)=(λ2-λ)/(λ21) (2)
【0034】
また、反射率が50%となる波長λ50%は以下の(3)式で示されることは明らかである。
λ50%=(λ21)/2 (3)
【0035】
ある発光スペクトルf(λ)が図3の波形X2で示され、λ1とλ2の間にあり、λ1より短い波長及びλ2よりも長い波長において無視できる場合(例えば、バンドパスフィルタ(不図示)の特性が図3の波形X1で示され、発光スペクトルf(λ)の波長帯が制限される場合)、反射光量と透過光量とが等しいと仮定すると以下の(4)式が成立する。
∫f(λ)h(λ)dλ=∫f(λ)(1-h(λ))dλ (4)
(4)式を変形すると、以下の(5)式になる。
2∫f(λ)h(λ)dλ=∫f(λ)dλ (5)
【0036】
(5)式に(1)式を代入すると、
2∫f(λ)(λ-λ1)/(λ21)dλ=∫f(λ)dλ
となり、さらに両辺を2∫f(λ)dλ/ (λ21)で割ると、
∫f(λ)(λ-λ1)dλ/∫f(λ)dλ= (λ21)/2
∫f(λ)λdλ/∫f(λ)dλ= (λ21)/2 (6)
となる。
【0037】
(3)式を考慮すると、(6)式の右辺はλ50%であり、左辺は一般的に任意関数であるf(λ)の重心となることは明らかである。このような(6)式の左辺をλとする。以上のことから、透過率が波長に対して線形に傾斜したダイクロイックミラーを通ったある任意のスペクトルについて、透過光量と反射光量とが等しい場合には、スペクトルの重心λはλ50%で示される。
【0038】
つづいて、第2の発光スペクトルg(λ)(図3の波形X3)について考える。発光スペクトルg(λ)についても、スペクトルがλ1とλ2の間に全て含まれている。いま、発光スペクトルf(λ)とg(λ)について、透過光と反射光の差分を規格化したものの差を算出する。f(λ)の透過光をTf、反射光をRf、全光量をAf、透過光と反射光の差分をDfとする。また、g(λ)の透過光をT、反射光をR、全光量をA、透過光と反射光の差分をDとする。また、g(λ)の重心をλとする。このとき、Tf、Rf、T、Rは計測値であり、Af、A、Df、Dは計測値から直接算出可能な値である。これらの各値は、以下の式によっても示される。
Tf=∫f(λ)h(λ)dλ=∫f(λ)(λ-λ1)/(λ21)dλ (7)
Tg=∫g(λ)h(λ)dλ=∫g(λ)(λ-λ1)/(λ21)dλ (8)
Rf=∫f(λ)(1-h(λ))dλ=∫f(λ)(λ2-λ)/(λ21)dλ (9)
Rg=∫g(λ)(1-h(λ))dλ=∫g(λ)(λ2-λ)/(λ21)dλ (10)
Af=∫f(λ)dλ (11)
Ag=∫g(λ)dλ (12)
Df=Tf-Rf
=2/(λ21)*∫λf(λ)dλ-(λ21)/(λ21)*∫f(λ)dλ (13)
Dg=Tg-Rg
=2/(λ21)*∫λg(λ)dλ-(λ21)/(λ21)*∫g(λ)dλ (14)
【0039】
ここで、透過光と反射光の差分を規格化するとは、DfをAf、DをAで割ることに相当する。それらの差をRとすると、以下の(15)式が成立する。
R=Dg/Ag-Df/Af
={∫g(λ)λdλ/∫g(λ)dλ-∫f(λ)λdλ/∫f(λ)dλ}*2/(λ21)
=2(λgf) /(λ21) (15)
【0040】
発光スペクトルf(λ)の波長重心λ及び発光スペクトルg(λ)の波長重心λの差をδλとすると、以下の(16)式及び(17)式が成立する。
R=2δλ /(λ21) (16)
δλ=R(λ21)/2 (17)
以上のように、ある2つの任意のスペクトルf(λ),g(λ)の重心の差が、透過光量及び反射光量を考慮した計算から得られることが示された。
【0041】
そして、f(λ)の重心がλ50%であるとき、反射光量と透過光量は等しくなるためDfは0となる。つまり、任意のスペクトルg(λ)の波長重心λgは以下の(18)式により示される。
λg=δλ+λ50% (18)
【0042】
このように、発光スペクトルの重心は、フィルタの設計値、透過光量、及び反射光量から計算することができる。以上の原理に基づき、各ピクセルに入射した光の波長の重心を高精度に求めることができる。
【0043】
ここで、光の波長の重心を求める際には、例えば以下の要因により導出精度が低下してしまうことが考えられる。第1に、撮像素子14のレンズの周辺は減光するため、このような個所のピクセルにおいては本来の光の波長の重心を適切に求めることができないおそれがある。第2に、傾斜ダイクロイックミラー11の光学特性は、光の入射角度によって変化するところ、光の入射角度(視野内におけるピクセルの位置)によっては光の波長の重心を適切に求めることができない(入射角度に起因する色斑が生じる)おそれがある。第3に、レンズ及び撮像素子14の感度によって波長ずれが生じるおそれがある。これらの課題に対しては、例えば、傾斜ダイクロイックミラー11への光の入射角度を予め計算し、該入射角度に応じた補正を行うことが考えられる(上記第2の課題への解決策)。また、例えば、均一単色のレーザ光を照射面(白い物体)にあてて、それが均一になるようにピクセル毎のゲイン補正を行うことによって、シェーディング補正を行うことが考えられる(上記第1及び第2の課題への解決策)。また、傾斜ダイクロイックミラー11の傾斜を抑えて、より90度に近い角度で光を反射することによって、光の波長の重心を適切に求めることが考えられる。さらに、本実施形態では、以下の補正を行っている。
【0044】
すなわち、制御装置80は、傾斜ダイクロイックミラー11における波長に対する透過率及び反射率の変化に係る光学特性に基づいて、撮像素子14の第1の撮像領域及び第2の撮像領域で撮像される画像を補正してもよい。制御装置80は、例えば傾斜ダイクロイックミラー11における波長に対する透過率及び反射率の変化に係る光学特性を考慮した補正データを予め記憶しており、該補正データを用いて、第1の撮像領域及び第2の撮像領域で撮像される画像を補正してもよい。制御装置80は、傾斜ダイクロイックミラー11における波長に対する透過率及び反射率の変化に係る光学特性を考慮した補正データを受付け、該補正データを用いて、第1の撮像領域及び第2の撮像領域で撮像される画像を補正してもよい。制御装置80は、ソフトウェアが実行されること又はインターネット等の外部から入力されることによって、上述した補正データを受付けてもよい。
【0045】
図4及び図5を参照して、上述した補正データの生成について説明する。図4は、補正データを生成する補正ユニット100を模式的に示す図である。図5は、計算波長(後述)の補正を説明するためのグラフである。第1撮像ユニット10、第2撮像ユニット20、及び第3撮像ユニット30に関して、補正データの生成に係る処理は同様であるので、以下では、第1撮像ユニット10に関する補正データの生成に係る処理を説明する。図4に示されるように、補正ユニット100は、光源101と、光ファイバ102と、FCアダプタ103と、拡散板104と、対物レンズ105と、を含んで構成されている。補正ユニット100は、測定装置1のカメラシステム2に関する補正データを生成する際に用いられる。補正ユニット100の対物レンズ105の後段(下流)には、上述したカメラシステム2の各構成(図2参照)が設けられているとする(図4には不図示)。
【0046】
光源101は、例えば、波長を変更可能な、単色/狭帯域光源である。または、光源101は、波長の異なる複数のレーザ光源であってもよいし、SLD/LEDであってもよいし、白色光源とバンドパスフィルタとを含むものであってもよい。光源101は、少なくとも傾斜ダイクロイックミラー11の傾斜範囲(波長の変化に応じて光の透過率(及び反射率)が緩やかに変化する範囲)において例えば5点以上の波長を選択できるものである。光源101から出射された光は、光ファイバ102及び拡散板104を介して対物レンズ105に導かれる。これにより、対物レンズ105によって光源101からの光が観察できる状態となる。
【0047】
補正データを生成する場合には、上述した補正ユニット100をセットした状態で、光源101から出射される光の波長を変更しながら、各波長における、撮像素子14の第1の撮像領域及び第2の撮像領域での画像を取得する。背景光等によるオフセット及びゲイン斑等の影響については除去してもよい。波長の間隔はおよそ等間隔としてもよい。そして、第1の撮像領域及び第2の撮像領域の画像に基づき、制御装置80は、各波長における波長重心(計算波長)を導出する。制御装置80は、図5(a)に示されるように、横軸に光源101の波長λ、縦軸に計算波長λ´をとる。理想的には、光源101の波長λと計算波長λ´とはリニアな関係となると考えられるが、図5(a)に示される例では、特に低波長側において計算波長λ´が理想値から大きく外れている。制御装置80は、さらに、図5(b)に示されるように、横軸に計算波長λ´、縦軸に計算波長λ´-光源101の波長λをとる。そして、制御装置80は、図5(b)のグラフの近似曲線Nを、例えば最小二乗法等により4次程度まで求めることにより、上述したような理想値から大きく外れた低波長側の計算波長λ´を適切に補正することができる。具体的には、制御装置80は、計算波長λ´と、上述した最小二乗法の4次式とに基づき、補正された計算波長を求める。例えば、制御装置80は、計算波長λ´と4次式の値とを足し合わせることにより補正された計算波長を求める。
【0048】
制御装置80は、例えば、上述した補正データを用いることにより、傾斜ダイクロイックミラー11に対する光の入射角度に起因する色斑を補正する。また、制御装置80は、例えば上述した補正データを用いることにより、波長の変化に応じて透過率及び反射率が変化する波長帯と変化しない波長帯との境界に起因する検出波長(計算波長)のずれを補正する。このような境界(図3におけるλの近傍及びλの近傍の波長帯)は、波長の変化に応じて傾斜ダイクロイックミラー11の透過率が変化する波長帯とは異なる光学特性となる場合がある。このため、このような境界に関して、波長の変化に応じて透過率が変化する波長帯と同じ計算式で波長を導出すると、本来の波長とは異なる計算結果となるおそれがある。この点、上述した補正データを用いて、理想値から外れた計算波長λ´を補正することにより、境界に起因する検出波長のずれを適切に補正することができる。制御装置80は、補正された画像を含む処理結果を解析することにより、サンプルの良否判定を行う。
【0049】
次に、上述した補正データを用いる補正方法について、図6を参照して説明する。図6は、補正方法のフローチャートである。図6の処理が実施される前提として、カメラシステム2の上流(前段)に補正ユニット100が設置される。
【0050】
図6に示されるように、最初に、光源101から出射される光の波長を変更しながら、複数の測定波長それぞれについて、撮像素子14の第1の撮像領域における画像1及び第2の撮像領域における画像2を取得する(ステップS1)。
【0051】
つづいて、ステップS1において取得した画像1及び画像2から、計算波長を求める(ステップS2)。具体的には、上述した(1)式~(18)式に基づいて、各波長における波長重心(計算波長)を求める。
【0052】
つづいて、各測定波長に関して、測定波長と計算波長との差分を求める(ステップS3)。そして、差分が最小になるように例えば最小二乗法等を4次程度まで求めることにより、計算波長を補正する(ステップS4)。以上が、補正方法である。
【0053】
なお、本発明は上記形態の補正方法を用いて波長重心を計算することに限定されない。例えば、予め補正データを含めたテーブルを演算することによって変換マップを生成しておき、この変換マップと対応する画素に入る光の比率に基づいて波長重心を算出してもよい。
【0054】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0055】
本実施形態に係る測定装置1は、サンプルからの光を波長に応じて透過又は反射することにより分離し、波長の変化に応じて透過率及び反射率が変化する波長帯の幅であるエッジ変移幅が所定の幅を有する傾斜ダイクロイックミラー11と、傾斜ダイクロイックミラー11において透過又は反射された光の一方を反射する全反射ミラー12と、傾斜ダイクロイックミラー11において透過又は反射された光の他方を第1の撮像領域で撮像すると共に、全反射ミラー12において反射された光を第1の撮像領域とは異なる第2の撮像領域で撮像する撮像素子14と、傾斜ダイクロイックミラー11における波長に対する透過率及び反射率の変化に係る光学特性に基づいて、第1の撮像領域及び第2の撮像領域で撮像される画像を補正する制御装置80と、を備える。
【0056】
測定装置1では、エッジ変移幅が所定の幅を有する傾斜ダイクロイックミラー11が用いられており、該傾斜ダイクロイックミラー11における波長に対する透過率および反射率の変化に係る光学特性に基づいて撮像画像が補正されている。エッジ変移幅が所定の幅を有する傾斜ダイクロイックミラー11を用いた場合には、波長幅が狭い光を適切に分離することができるものの、例えば傾斜ダイクロイックミラー11に対する光の入射角度によって光学特性が変化してしまうことによって、光の波長を正確に導出し適切な画像を取得することができないおそれがある。この点、本実施形態に係る測定装置1では、波長に対する透過率及び反射率の変化に係る光学特性、すなわち傾斜ダイクロイックミラー11のエッジ変移幅に係る特性に基づいて、第1及び第2の撮像領域で撮像される画像が補正されるため、エッジ変移幅を有した傾斜ダイクロイックミラー11固有の光学特性を考慮して補正された撮像画像を取得することができる。このことにより、傾斜ダイクロイックミラー11によって分離された光(第1及び第2の撮像領域で撮像される光)の波長を適切に導出し、適切な(正確な)画像を取得することができる。
【0057】
制御装置80は、傾斜ダイクロイックミラー11における波長に対する透過率及び反射率の変化に係る光学特性を考慮した補正データを予め記憶しており、該補正データを用いて、第1の撮像領域及び第2の撮像領域で撮像される画像を補正してもよい。このような構成によれば、予め記憶された補正データに基づき、容易且つ適切に撮像画像の補正を行うことができる。
【0058】
制御装置80は、傾斜ダイクロイックミラー11における波長に対する透過率及び反射率の変化に係る光学特性を考慮した補正データを受け付け、該補正データを用いて、第1の撮像領域及び第2の撮像領域で撮像される画像を補正してもよい。このような構成によれば、例えばソフトウェアが実行されること又はインターネット等の外部から入力されることによって得た補正データに基づき、予め補正データを準備することなく、適切に撮像画像の補正を行うことができる。
【0059】
制御装置80は、傾斜ダイクロイックミラー11に対する光の入射角度に起因する色斑を補正してもよい。エッジ変移幅を有した分離光学素子を用いた場合には、傾斜ダイクロイックミラー11に対する入射角度に応じて傾斜ダイクロイックミラー11の光学特性が変化してしまい撮像画像において色斑が生じることが問題となる。この点、該色斑を補正することによって、該色斑を低減した適切な画像を取得することができる。
【0060】
制御装置80は、波長の変化に応じて透過率及び反射率が変化する波長帯と変化しない波長帯との境界に起因する検出波長のずれを補正してもよい。このような境界は、波長の変化に応じて透過率等が変化する波長帯とは異なる光学特性となる。このため、波長の変化に応じて透過率等が変化する波長帯と同じ計算式で波長を導出すると、本来の波長とは異なる導出結果となるおそれがある。この点、このような境界に起因する検出波長のずれを補正することによって、光の波長を正確に導出し適切な画像を取得することができる。
【0061】
撮像素子14は、第1の撮像領域及び第2の撮像領域を有する単一の撮像素子であってもよい。これにより、単一の撮像素子を用いたシンプルな構成によって、複数の撮像画像を得ることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、ダイクロイックミラー50,60によって、サンプルからの光が、赤色の波長成分を含む光、緑色の波長成分を含む光、及び、青色の波長成分を含む光(RGB)に分離されて、それぞれが別の撮像ユニットによって撮像されるとして説明したがこれに限定されない。すなわち、RGBの三色に分離することなく、観察対象(サンプル)からの光が撮像されてもよい。
【0063】
このような構成においては、撮像素子であるエリアセンサの前段に設けられる傾斜ダイクロイックミラーは、波長の変化に応じて光の透過率(及び反射率)が変化する波長帯(エッジ遷移幅)が、RGBの三色全てに対応しており、例えば400~900nmとされる。
【0064】
図7は、変形例に係る傾斜ダイクロイックミラーの特性を説明する図である。図7において横軸は波長を示しており、縦軸は透過率(傾斜ダイクロイックミラーの場合)及びスペクトル強度(光のスペクトルの場合)を示している。図7に示される例では、特定の波長帯(400~900nmの波長帯)では波長の変化に応じて光の透過率(及び反射率)が緩やかに変化し、該特定の波長帯以外の波長帯(すなわち、400nmよりも低波長側及び900nmよりも高波長側)では波長の変化に関わらず光の透過率(及び反射率)が一定とされている。図7に示されるように、当該傾斜ダイクロイックミラーでは、波長の変化に応じて光の透過率(及び反射率)が変化する波長帯(エッジ遷移幅)が、赤色の波長成分を含む光の波長帯(図7において右側に示される波長帯)、緑色の波長成分を含む光の波長帯(図7において中央に示される波長帯)、及び、青色の波長成分を含む光の波長帯(図7において左側に示される波長帯)の全てを含んでいる。
【0065】
図7に示される特性を有する傾斜ダイクロイックミラーを用いたカメラシステム(撮像ユニット)の例について、図8を参照して説明する。図8は、変形例に係るカメラシステム90Aを模式的に示した図である。
【0066】
図8に示されるように、カメラシステム90Aは、傾斜ダイクロイックミラー91(分離光学素子)と、有限焦点レンズ(有限遠補正レンズ)92Aと、バンドパスフィルタ93と、エリアセンサ94(第2の撮像部)と、エリアセンサ95(第1の撮像部)と、を備えている。
【0067】
有限焦点レンズ92Aは、観察対象であるサンプル150(対象物)からの光(発光)を集光するレンズである。有限焦点レンズ92Aからエリアセンサ94までの距離、及び、有限焦点レンズ92Aからエリアセンサ95までの距離は、所定値とされている。有限焦点レンズ92Aを経た光は、傾斜ダイクロイックミラー91に入射する。
【0068】
バンドパスフィルタ93は、例えば有限焦点レンズ92Aの前段(上流)に設けられており、所定の波長範囲外の光を取り除くフィルタである。バンドパスフィルタ93は、例えば、400~900nmの範囲外の波長の光を取り除く。バンドパスフィルタ93は、複数設けられていてもよい。バンドパスフィルタ93は、図8において破線で示す領域、すなわち、有限焦点レンズ92Aの後段(下流)且つ傾斜ダイクロイックミラー91の前段(上流)の領域に設けられていてもよいし、エリアセンサ94,95の前段(上流)且つ傾斜ダイクロイックミラー91の後段(下流)の領域に設けられていてもよい。なお、エリアセンサ94,95の前段にそれぞれバンドパスフィルタ93が設けられる場合には、当該2つのバンドパスフィルタ93,93は、互いに同一特性とされる。また、カメラシステム90Aにおいては、サンプル150からの光に応じて切り替え可能に構成された複数のバンドパスフィルタ93が備わっていてもよい。この場合の複数のバンドパスフィルタ93は、それぞれ、互いにフィルタリングする波長帯が異なっている(詳細は後述)。
【0069】
傾斜ダイクロイックミラー91は、特殊な光学素材を用いて作成されたミラーであり、サンプル150からの光を波長に応じて透過及び反射することにより分離し、所定の波長幅において透過率及び反射率が変化するミラーである。傾斜ダイクロイックミラー91では、図7に示されるように、波長の変化に応じて光の透過率(及び反射率)が変化する波長帯(エッジ遷移幅)が、赤色の波長成分を含む光の波長帯、緑色の波長成分を含む光の波長帯、及び、青色の波長成分を含む光の波長帯の全てを含んでいる。すなわち、上述した傾斜ダイクロイックミラー91の「所定の波長幅」には、赤色の波長成分を含む光の波長帯、緑色の波長成分を含む光の波長帯、及び、青色の波長成分を含む光の波長帯の全てが含まれている。
【0070】
エリアセンサ94は、傾斜ダイクロイックミラー91において反射された光を撮像する。エリアセンサ95は、傾斜ダイクロイックミラー91において透過された光を撮像する。エリアセンサ94,95が感度を有する波長の範囲は、傾斜ダイクロイックミラー91において波長の変化に応じて光の透過率(及び反射率)が変化する波長帯(エッジ遷移幅)に対応している。エリアセンサ94,95は、例えば、モノクロセンサ又はカラーセンサである(詳細は後述)。エリアセンサ94,95による撮像結果(画像)は、制御装置(不図示)に出力される。制御装置(不図示)における波長重心を求める処理、補正処理、及び、サンプルの良否判定処理については、例えば、実施形態において説明した制御装置80における処理と同一であってもよい。
【0071】
補正処理について説明する。傾斜ダイクロイックミラー91やバンドパスフィルタ93は、斜めに光が入射する場合(対物レンズの瞳位置にない場合)、各画素に入射する光が全体ではなく一部を透過したものになり、傾斜ダイクロイックミラー91やバンドパスフィルタ93の面内均一性の斑により透過波長がずれるという問題が発生する可能性がある。反対に、複数の方向からの光が傾斜ダイクロイックミラー91に入射することによって、波長特性が直線から歪んでいた場合、波長特性にスムージングをかける効果がある。傾斜ダイクロイックミラー91やバンドパスフィルタ93の面均一性の斑に対する対策として、予め同一波長の光を視野内に均一に入射させて面内の波長分布を計算しておくことにより、入射波長からのシフト分を計測し補正することが考えられる。
【0072】
上述したカメラシステム90Aの具体的な態様として、例えば以下で説明する3つの態様が考えられる。
【0073】
第1に、カメラシステム90Aは、1種類(フィルタリングする波長帯の範囲が1種類)のバンドパスフィルタ93と、モノクロセンサであるエリアセンサ94,95とを含んで構成されていてもよい。この場合、バンドパスフィルタ93は、例えば400~900nmの範囲外の波長の光を取り除く。このような構成では、エリアセンサ94,95に入射する光にはRGB三色が混ざり得る。この場合、制御装置(不図示)は、バンドパスフィルタ93を透過した波長帯の光(RGB三色が混ざっている光)における平均化された波長重心を求める。また、互いに異なる波長帯の光(RGBそれぞれの光)が空間的に分離されている場合(画像上で重ならない場合)には、制御装置(不図示)は、各波長帯に関して、波長重心を高精度に求めることができる。具体的には、TVやディスプレイ等の各ピクセルの色の波長重心については、本態様によって、nm単位で高精度に求めることができる。
【0074】
第2に、カメラシステム90Aは、互いにフィルタリングする波長帯が異なっている複数種類のバンドパスフィルタ93と、モノクロセンサであるエリアセンサ94,95とを含んで構成されていてもよい。この場合の複数種類のバンドパスフィルタ93は、サンプル150からの発光に合わせて出し入れ(切り替え)可能に設けられている。このような構成では、サンプル150から、スペクトルの広がりがある(重ね合わせのある)発光が出力される場合において、複数種類のバンドパスフィルタ93が切り替えて用いられることによって、制御装置(不図示)は、特定の波長帯(各バンドパスフィルタ93に応じた波長帯)のみの光の波長重心を求めることができる。すなわち、制御装置(不図示)は、赤色の波長成分の波長帯(例えば700~900nm)以外の波長の光を取り除くバンドパスフィルタ93が設定されている場合には赤色の波長成分のみの波長重心を求め、緑色の波長成分の波長帯(例えば550~700nm)以外の波長の光を取り除くバンドパスフィルタ93が設定されている場合には緑色の波長成分のみの波長重心を求め、青色の波長成分の波長帯(例えば400~550nm)以外の波長の光を取り除くバンドパスフィルタ93が設定されている場合には青色の波長成分のみの波長重心を求める。具体的には、例えば青色LEDと蛍光剤とによって白色LEDを実現している光源については、当該第2の構成によって、青色LEDのみの波長重心を求めること、及び、蛍光剤のみの波長重心を求めることが可能となる。
【0075】
第3に、カメラシステム90Aは、1種類(フィルタリングする波長帯の範囲が1種類)のバンドパスフィルタ93と、カラーセンサであるエリアセンサ94,95とを含んで構成されていてもよい。この場合、バンドパスフィルタ93は、例えば400~900nmの範囲外の波長の光を取り除く。このような構成では、カラーセンサであるエリアセンサ94,95に入射する光にはRGB三色が混ざり得る。カラーセンサには、1ピクセルずつベイヤーフィルタ(RGB3色のフィルタ)が搭載されている。これにより、カラーセンサであるエリアセンサ94,95の各受光素子は、赤色の波長成分のみの光、緑色の波長成分のみの光、及び、青色の波長成分のみの光をそれぞれ取得することができる。このような構成によれば、複数の波長の重ね合わせで表現されている色について、適切に波長重心を求めることができる(すなわち、適切に検査を行うことができる)。通常、印刷や発光の色は人間の目に合わせてRGB3色の重ね合わせでできている。このように重ね合わされている各色について、波長重心を計算することによって、混合色を精度良く検査することができる。なお、撮像部として、ハイパースペクトラルカメラをさらに組み合わせることによって、より多くの波長の重心を同時に検査してもよい。ハイパースペクトルカメラは、例えば分光器と撮像部から構成される。
【0076】
図7に示される特性を有する傾斜ダイクロイックミラーを用いたカメラシステム(撮像ユニット)の他の例について、図9を参照して説明する。図9は、他の変形例に係るカメラシステム90Bを模式的に示した図である。以下では、図8に示した構成との相違点を主に説明する。
【0077】
図9に示されるように、カメラシステム90Bは、傾斜ダイクロイックミラー91(分離光学素子)と、無限焦点レンズ(無限遠補正レンズ)92Bと、バンドパスフィルタ93と、エリアセンサ94(第2の撮像部)と、エリアセンサ95(第1の撮像部)と、結像レンズ96,97と、を備えている。傾斜ダイクロイックミラー91及びエリアセンサ94,95は、上述したカメラシステム90Aにおけるこれらの構成と同様である。
【0078】
無限焦点レンズ92Bは、観察対象であるサンプル150(対象物)からの光(発光)を平行光に変換するコリメータレンズである。無限焦点レンズ92Bは、平行光が得られるように収差補正されている。無限焦点レンズ92Bから出力された平行光は傾斜ダイクロイックミラー91に入射する。
【0079】
結像レンズ96は、傾斜ダイクロイックミラー91を透過した光をエリアセンサ94に結像させるレンズである。結像レンズ97は、傾斜ダイクロイックミラー91を透過した光をエリアセンサ95に結像させるレンズである。
【0080】
バンドパスフィルタ93は、例えば無限焦点レンズ92Bの後段(下流)且つ傾斜ダイクロイックミラー91の前段(上流)に設けられており、所定の波長範囲外の光を取り除くフィルタである。バンドパスフィルタ93は、例えば、400~900nmの範囲外の波長の光を取り除く。バンドパスフィルタ93は、複数設けられていてもよい。バンドパスフィルタ93は、図9において破線で示す領域、すなわち、無限焦点レンズ92Bの前段(上流)の領域に設けられていてもよいし、エリアセンサ94,95の前段(上流)且つ結像レンズ96,97の後段(下流)の領域に設けられていてもよいし、結像レンズ96,97の前段(上流)且つ傾斜ダイクロイックミラー91の後段(下流)の領域に設けられていてもよい。なお、エリアセンサ94,95の前段にそれぞれ設けられるバンドパスフィルタ93は互いに同一特性とされ、結像レンズ96,97の前段にそれぞれ設けられるバンドパスフィルタ93は互いに同一特性とされる。
【0081】
このような、無限焦点レンズ92Bを用いたカメラシステム90Bについても、具体的な態様として、カメラシステム90Aと同様に上述した3つの態様が考えられる。
【0082】
以上説明したように、変形例に係るカメラシステム(撮像ユニット)は、対象物からの光を波長に応じて透過及び反射することにより分離し、所定の波長幅において透過率及び反射率が変化する分離光学素子と、分離光学素子において透過された光を撮像する第1の撮像部と、分離光学素子において反射された光を撮像する第2の撮像部と、を備える。
【0083】
このように、波長に応じて透過率及び反射率が変化する分離光学素子が用いられることにより、波長幅が狭い光についても適切に分離することができ、撮像部における撮像結果に応じて適切に波長重心を求めることができる。また、実施形態で説明した態様とは異なり、分離光学素子を経た光がそのまま撮像部(第1の撮像部及び第2の撮像部)で受光される構成とすることができるため、カメラシステムの小型化を実現することができる。
【0084】
また、変形例に係るカメラシステムでは、第1の撮像部及び第2の撮像部が感度を有する波長の範囲は、分離光学素子において透過率及び反射率が変化する波長の範囲に対応している。このような構成によれば、撮像部における撮像結果から波長の変化(違い)を適切に取得することができ、適切に波長重心を求めることができる。
【0085】
また、変形例に係るカメラシステムは、対象物からの光に応じて切り替え可能に構成された複数種類のバンドパスフィルタを備えている。例えば、対象物から、スペクトルの広がりがある(重ね合わせのある)発光が出力される場合において、複数種類のバンドパスフィルタが切り替えて用いられることによって、制御装置(不図示)は、特定の波長帯(各バンドパスフィルタに応じた波長帯)のみの光の波長重心を求めることができる。すなわち、制御装置(不図示)は、赤色の波長成分の波長帯以外の波長の光を取り除くバンドパスフィルタが設定されている場合には赤色の波長成分のみの波長重心を求め、緑色の波長成分の波長帯以外の波長の光を取り除くバンドパスフィルタが設定されている場合には緑色の波長成分のみの波長重心を求め、青色の波長成分の波長帯以外の波長の光を取り除くバンドパスフィルタが設定されている場合には青色の波長成分のみの波長重心を求めることができる。
【符号の説明】
【0086】
1…測定装置(撮像ユニット)、11,21,31…傾斜ダイクロイックミラー(分離光学素子)、12,22,32…全反射ミラー(反射光学素子)、14,24,34…撮像素子(撮像部)、80…制御装置(処理部,解析部)。
図1
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図9