(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】曲げ加工機
(51)【国際特許分類】
B21D 5/02 20060101AFI20241108BHJP
B30B 15/14 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B21D5/02 L
B21D5/02 P
B30B15/14 A
(21)【出願番号】P 2023144246
(22)【出願日】2023-09-06
【審査請求日】2024-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 英人
(72)【発明者】
【氏名】ハムタ ナランバータル
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/049930(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0070093(US,A1)
【文献】実開昭62-169719(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
B30B 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定テーブルに対して上下方向に対向して配置される可動テーブルと、
トルクを発生させる回転動力ユニットと、
前記回転動力ユニットのトルクによる回転運動を上下方向に沿った直線運動に変換することで、前記可動テーブルを上下方向に移動させる変換機構と、
前記回転動力ユニットを制御することにより、前記固定テーブル及び前記可動テーブルにそれぞれ装着された金型によってワークに曲げ加工を行う制御装置と、を備え、
前記回転動力ユニットは、
高速モータユニットと、
前記高速モータユニットよりも低速回転で高トルクを出力する加圧モータユニットと、
前記高速モータユニットのトルクを前記変換機構に伝達するとともに、前記加圧モータユニットのトルクを前記変換機構に伝達する動力伝達機構と、
前記加圧モータユニットから前記動力伝達機構へのトルクの伝達を遮断可能なクラッチと、を有し、
前記制御装置は、
切り替え可能な動作モードとして、
前記クラッチによってトルクを遮断した状態で前記高速モータユニットを駆動することによって、前記可動テーブルを移動させる高速モードと、
前記クラッチによってトルクを伝達した状態で前記加圧モータユニットを駆動することによって、前記可動テーブルを移動させる高トルクモードと、を有し、
前記高トルクモードで前記可動テーブルを下方向に移動させる場合に、前記クラッチによってトルクを伝達した状態で、前記可動テーブルを下方向に移動させるときの回転方向とは反対方向に前記高速モータユニットを駆動させる反転制御を行う
曲げ加工機。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記ワークを曲げる負荷が予め定められた閾値よりも低い低負荷曲げの場合に、前記反転制御を行う
請求項1記載の曲げ加工機。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記ワークを曲げる負荷が前記閾値以上の高負荷曲げの場合には、前記可動テーブルを下方向に移動させるときの回転方向に前記高速モータユニットを駆動させるアシスト制御を行う
請求項2記載の曲げ加工機。
【請求項4】
前記高速モータユニットは、第1駆動モータを含み、
前記加圧モータユニットは、第2駆動モータと、前記第2駆動モータのトルクを減速して出力する減速機と、を含む
請求項1から3いずれか一項記載の曲げ加工機。
【請求項5】
前記動力伝達機構は、
前記高速モータユニット及び前記加圧モータユニットがそれぞれ連結される駆動プーリと、
前記変換機構に連結された従動プーリと、
前記駆動プーリと前記従動プーリとの間に張られたベルトと、を含み、
前記高速モータユニットは、前記駆動プーリを挟んで前記加圧モータユニットの反対側に同軸上に配置される
請求項1から3いずれか一項記載の曲げ加工機。
【請求項6】
前記動力伝達機構は、
前記高速モータユニットが連結される第1駆動プーリと、
前記加圧モータユニットが連結される第2駆動プーリと、
前記変換機構に連結される従動プーリと、
前記第1駆動プーリと前記従動プーリとの間に張られた第1ベルトと、
前記第2駆動プーリと前記従動プーリとの間に張られた第2ベルトと、を含む
請求項1から3いずれか一項記載の曲げ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスブレーキは、ダイなどの金型が装着される固定テーブルに対して、パンチなどの金型が装着される可動テーブルを上下方向に移動させることにより、ワークに対して曲げ加工を行う。可動テーブルを駆動するテーブル駆動装置は、回転動力ユニットと、回転動力ユニットのトルクによる回転運動を上下方向に沿った直線運動に変換することで、可動テーブルを上下方向に移動させる変換機構と、を備えている。
【0003】
特許文献1には、モータ本体と、不思議遊星歯車機構を用いた減速機と、モータ本体と減速機との間に設けられたクラッチとを備える可変トルクモータが開示されている。この可変トルクモータは、不思議遊星歯車機構のキャリア及び第ニ内歯車をクラッチのクラッチ作用部によって選択的に固定することで、低速回転で高トルクとなるモードと、高速回転で低トルクとなるモードとを切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、歯車などの機械要素によってトルク伝達を行う構造においては、機械要素が滑らかに動作するために、機械要素間に意図的に設けられた隙間が存在する。この隙間によって機械要素が微少移動することで、可動テーブルの位置決めが不安定となり、加工精度が低下してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の曲げ加工機は、固定テーブルに対して上下方向に対向して配置される可動テーブルと、トルクを発生させる回転動力ユニットと、回転動力ユニットのトルクによる回転運動を上下方向に沿った直線運動に変換することで、可動テーブルを上下方向に移動させる変換機構と、回転動力ユニットを制御することにより、固定テーブル及び可動テーブルにそれぞれ装着された金型によってワークに曲げ加工を行う制御装置と、を備え、回転動力ユニットは、高速モータユニットと、高速モータユニットよりも低速回転で高トルクを出力する加圧モータユニットと、高速モータユニットのトルクを変換機構に伝達するとともに、加圧モータユニットのトルクを変換機構に伝達する動力伝達機構と、加圧モータユニットから動力伝達機構へのトルクの伝達を遮断可能なクラッチと、を有している。制御装置は、切り替え可能な動作モードとして、クラッチによってトルクを遮断した状態で高速モータユニットを駆動することによって、可動テーブルを移動させる高速モードと、クラッチによってトルクを伝達した状態で加圧モータユニットを駆動することによって、可動テーブルを移動させる高トルクモードと、を有し、高トルクモードで可動テーブルを下方向に移動させる場合に、クラッチによってトルクを伝達した状態で、可動テーブルを下方向に移動させるときの回転方向とは反対方向に高速モータユニットを駆動させる反転制御を行う。
【0007】
本発明の一態様の曲げ加工機によれば、高トルクモードで可動テーブルを下方向に移動させる場合に、トルクを伝達する機械要素の移動を抑制することができるので、可動テーブルの位置決めを安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、可動テーブルの位置決めが安定するので、加工精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るプレスブレーキの構造を模式的に示す正面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るプレスブレーキのテーブル駆動装置を模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、トルク伝達を行う歯車要素(機械要素)を概念的に示す図である。
【
図4】
図4は、トルク伝達を行う歯車要素(機械要素)を概念的に示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係るプレスブレーキのテーブル駆動装置を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本実施形態に係る曲げ加工機を、プレスブレーキを例示して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るプレスブレーキ1の構造を模式的に示す正面図である。
図2は、第1の実施形態に係るプレスブレーキ1のテーブル駆動装置20を模式的に示す側面図である。本明細書では、方向の定義として、左右方向、前後方向、及び上下方向を用いる。左右方向及び前後方向は水平方向において直交する2つの方向に対応し、上下方向は鉛直方向に対応する。
図1において、前後方向は紙面垂直方向に対応し、
図2において、左右方向は紙面鉛直方向に対応する。これらの方向は、本実施形態に係るプレスブレーキ1を説明するために、便宜的に用いられるに過ぎない。
【0012】
本実施形態に係るプレスブレーキ1は、下部テーブル5に対して上下方向に対向して配置される上部テーブル7と、トルクを発生させる回転動力ユニット25と、回転動力ユニット25のトルクによる回転運動を上下方向に沿った直線運動に変換することで、上部テーブル7を上下方向に移動させるボールねじ機構55と、回転動力ユニット25を制御することにより、下部テーブル5及び上部テーブル7にそれぞれ装着された金型P、Dによってワークに曲げ加工を行う制御装置100と、を備えている。回転動力ユニット25は、高速モータユニット26と、高速モータユニット26よりも低速回転で高トルクを出力する加圧モータユニット27と、高速モータユニット26のトルクをボールねじ機構55に伝達するとともに、加圧モータユニット27のトルクをボールねじ機構55に伝達する動力伝達機構35と、加圧モータユニット27から動力伝達機構35へのトルクの伝達を遮断可能なクラッチ29と、を有している。制御装置100は、切り替え可能な動作モードとして、クラッチ29によってトルクを遮断した状態で高速モータユニット26を駆動することによって、上部テーブル7を移動させる高速モードと、クラッチ29によってトルクを伝達した状態で加圧モータユニット27を駆動することによって、上部テーブル7を移動させる高トルクモードと、を有している。制御装置100は、高トルクモードで上部テーブル7を下方向に移動させる場合に、クラッチ29によってトルクを伝達した状態で、上部テーブル7を下方向に移動させるときの回転方向とは反対方向に高速モータユニット26を駆動させる反転制御を行う。
【0013】
以下、
図1及び
図2を参照し、プレスブレーキ1の詳細について説明する。
【0014】
プレスブレーキ1は、パンチなどの上金型Pと、ダイなどの下金型Dとの協働により、板金などの板状のワークに対して曲げ加工を行う曲げ加工機である。プレスブレーキ1は、左右のサイドプレート2と、固定テーブルである下部テーブル5と、可動テーブルである上部テーブル7と、左右のテーブル駆動装置20と、制御装置100と、を備えている。
【0015】
左右のサイドプレート2は、互いに対向するように、左右方向に離隔して配置されている。
【0016】
下部テーブル5は、左右方向に延在しており、左右のサイドプレート2の前側下部に支持されている。下部テーブル5の上側には、下金型Dを着脱可能に保持する下金型ホルダ6が、左右方向に沿って設けられている。
【0017】
上部テーブル7は、左右方向に延在しており、下部テーブル5に対して対向するように、左右のサイドプレート2の前側上部に支持されている。上部テーブル7は、左右のサイドプレート2に対して上下方向に移動自在に構成されている。上部テーブル7の下側には、上金型Pを着脱可能に保持する上金型ホルダ8が、左右方向に沿って設けられている。
【0018】
左右のテーブル駆動装置20は、左右のサイドプレート2の上部にそれぞれ固定されている。個々のテーブル駆動装置20は、上部テーブル7を上下方向へ移動させる駆動装置である。
図2に示すように、テーブル駆動装置20は、回転動力ユニット25と、ボールねじ機構55とを主体に構成されている。
【0019】
回転動力ユニット25は、ボールねじ機構55を動作させるためのトルクを発生させる。回転動力ユニット25は、高速モータユニット26と、加圧モータユニット27と、クラッチ29と、動力伝達機構35とで構成されている。
【0020】
高速モータユニット26は、第1駆動モータ26aで構成されている。第1駆動モータ26aは、電気エネルギーによってトルクを発生させる機器であり、例えばサーボモータである。
【0021】
加圧モータユニット27は、第2駆動モータ27aと、減速機27bとで構成されている。第1駆動モータ26aは、電気エネルギーによってトルクを発生させる機器であり、例えばサーボモータである。減速機27bは、第2駆動モータ27aの回転動力(トルク)を減速して出力する。加圧モータユニット27は、高速モータユニット26よりも低速回転で高トルクを出力する。
【0022】
クラッチ29は、加圧モータユニット27から動力伝達機構35へトルクを伝達したり、このトルクの伝達を遮断したりする。クラッチ29は、トルク伝達を歯の噛合いによって行うツースクラッチであるが、これに限定されない。
【0023】
クラッチ29は、加圧モータユニット27の減速機27bと、後述する動力伝達機構35の駆動プーリ37との間に配置されている。例えば、クラッチ29は、歯が噛み合っている状態では(伝達状態)、減速機27bの出力軸から駆動プーリ37へとトルクを伝達する。一方、クラッチ29は、歯が噛み合っていない状態では(解放状態)、減速機27bの出力軸から駆動プーリ37へのトルクの伝達を遮断する。
【0024】
クラッチ29は、第2駆動モータ27aから駆動プーリ37へと至る動力伝達経路に設けられていればよく、上述した形態に限定されない。例えば、クラッチ29は、第2駆動モータ27aと減速機27bとの間に介在していてもよい。
【0025】
動力伝達機構35は、回転動力ユニット25のトルクをボールねじ機構55に伝達する。すなわち、動力伝達機構35は、高速モータユニット26のトルクをボールねじ機構55に伝達するとともに、加圧モータユニット27のトルクをボールねじ機構55に伝達する。動力伝達機構35は、タイミングベルト36と、駆動プーリ37と、従動プーリ38とで構成されている。
【0026】
タイミングベルト36は、駆動プーリ37と従動プーリ38との間に張られている。駆動プーリ37には、高速モータユニット26の出力軸、すなわち第1駆動モータ26aの駆動軸が連結されている。また、駆動プーリ37には、クラッチ29を介して、加圧モータユニット27の出力軸、すなわち減速機27bの出力軸が連結されている。従動プーリ38には、後述するボールねじ機構55のボールねじナット56が連結されている。
【0027】
本実施形態において、高速モータユニット26は、駆動プーリ37を挟んで加圧モータユニット27の反対側に同軸上に配置されている。具体的には、高速モータユニット26は、駆動プーリ37の上側に配置され、加圧モータユニット27は、駆動プーリ37の下側に配置されている。第1駆動モータ26a、第2駆動モータ27a、減速機27b、クラッチ29はそれぞれ同軸上に配置されている。
【0028】
ボールねじ機構55は、回転動力ユニット25のトルクによる回転運動を直線運動に変換することで、上部テーブル7を上下方向に移動させる変換機構である。ボールねじ機構55は、ボールねじナット56と、ボールねじ軸57とを含んでいる。ボールねじナット56は、ボールねじ機構55の筐体内部に軸受部を介して支持されている。ボールねじナット56は、動力伝達機構35の従動プーリ38と連結されており、従動プーリ38の回転に応じて回転する。ボールねじ軸57は、ボールねじナット56に螺合しており、ボールねじナット56が正逆回転することにより、上下方向に移動する。
【0029】
ボールねじ機構55の下端、具体的にはボールねじ軸57の下端には、接続ブロック60が連結されている。接続ブロック60の下端には、上下方向に沿って垂下する吊りボルト61が取り付けられており、吊りボルト61は、上部テーブル7を前後方向に貫通する支持軸62を支持している。ボールねじ軸57は、吊りボルト61及び支持軸62を含む接続ブロック60を介して、上部テーブル7に連結されている。
【0030】
サイドプレート2には、プレスブレーキ1の動作を制御するNC(Numerical Control)装置などの制御装置100が接続アームを介して支持されている。
【0031】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを有するコンピュータによって構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。ハードウェアプロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行させることにより、制御装置100が備える種々の機能が実現される。
【0032】
制御装置100は、回転動力ユニットを制御する。制御装置100は、切り替え可能な動作モードとして、高速モードと、高トルクモードとを備えている。高速モードは、クラッチ29によってトルクを遮断した状態で高速モータユニット26を駆動することによって、上部テーブル7を移動させる動作モードである。高トルクモードは、クラッチ29によってトルクを伝達した状態で加圧モータユニット27を駆動することによって、上部テーブル7を移動させる動作モードである。
【0033】
以下、ワークに曲げ加工を行うためのプレスブレーキ1の制御について説明する。プレスブレーキ1を用いてワークの加工を行う場合、まず、下金型D上にワークが位置決めされる。このとき、上部テーブル7は、予め定められた上端位置に保持されている。クラッチ29は解放状態に設定されている。すなわち、加圧モータユニット27から動力伝達機構35へのトルクの伝達は遮断されている。
【0034】
最初に、制御装置100は、上部テーブル7を下方向に移動させるときの回転方向へと高速モータユニット26を駆動する。これにより、高速回転で低トルクを出力する高速モータユニット26の出力軸(第1駆動モータ26aの駆動軸)が回転し、上部テーブル7が高速で下降する(高速モード)。
【0035】
上部テーブル7が所定の低速切替位置(アプローチ位置)まで移動すると、制御装置100は、高速モータユニット26を停止させる。制御装置100は、クラッチ29を伝達状態に切り替える。これにより、加圧モータユニット27から動力伝達機構35へトルクが伝達される状態となる。制御装置100は、上部テーブル7を下方向に移動させるときの回転方向へと加圧モータユニット27を駆動する。これにより、低速回転で高いトルクを出力する加圧モータユニット27の出力軸(減速機27bの出力軸)が回転し、上部テーブル7が低速で下降する(高トルクモード)。
【0036】
本実施形態の特徴の一つとして、制御装置100は、高トルクモードで上部テーブル7を下方向に移動させる場合に、上部テーブル7を下方向に移動させるときの回転方向とは反対方向に高速モータユニットを駆動させる反転制御を行う。なお、反転制御の詳細については後述する。
【0037】
制御装置100は、加圧モータユニット27を制御し、所定の下端位置(ストローク位置)に合わせて上部テーブル7を停止させる。上部テーブル7が下端位置へと到達する過程においてワークは上金型Pと下金型Dとの間で加圧され、所望の角度まで折り曲げられる。
【0038】
つぎに、制御装置100は、上部テーブル7を上方向に移動させるときの回転方向へと加圧モータユニット27を駆動する。これにより、上部テーブル7は、低速で上昇する。
【0039】
上部テーブル7が所定の高速切替位置まで上昇すると、制御装置100は、加圧モータユニット27を停止させる。制御装置100は、クラッチ29を解放状態に切り替える。これにより、加圧モータユニット27から動力伝達機構35へのトルク伝達が遮断された状態となる。
【0040】
制御装置100は、上部テーブル7を上方向に移動させるときの回転方向へと高速モータユニット26を駆動する。これにより、高速モータユニット26の出力軸(第1駆動モータ26aの駆動軸)が回転し、上部テーブル7が高速で上昇する。上部テーブル7が上端位置へと移動すると、制御装置100は、高速モータユニットを停止させる。
【0041】
プレスブレーキ1では、このような一連の工程を経て、ワークに対する曲げ加工が行われる。以下、反転制御の作用について説明する。
【0042】
高トルクモードで上部テーブル7が下降する過程では、上金型Pと下金型Dとの間でワークが加圧された状態で、下端位置で停止するために上部テーブル7が減速する。上部テーブル7が低速切替位置から動きだし、一定速度で下降している場合、第2駆動モータ27aには、上部テーブル7を下側に押す方向のトルク(負側のトルク)が作用する。下端位置に近づくと、第2駆動モータ27aの減速トルクが作用することで上部テーブル7が減速し、最終的に、上部テーブル7が下端位置に位置決めされる。
【0043】
図3及び
図4は、減速機27b及びクラッチ29においてトルク伝達を行う歯車要素(機械要素)T1、T2を概念的に示す図である。同図は、軸回転する歯車要素T1、T2の要部を描いたものであり、歯車要素T1、T2の回転方向が紙面左右方向と対応している。歯車要素T1、T2のうち、歯車要素T1は、駆動プーリ37側に繋がる歯車要素であり、歯車要素T2は、第2駆動モータ27a側に繋がる歯車要素である。
【0044】
歯車要素T1、T2間には、機械が滑らかに動くための隙間が意図的に設けられている。
図3及び
図4においては、歯と歯の間にある左右方向の空間として隙間が描かれている。歯車要素T1、T2の摩擦力のみでは重量物である上部テーブル7を支えきれなくなると、歯車要素T1が微少量ΔGだけ回転してしまい、上部テーブル7が下方向へと移動してしまう。このため、制御装置100が下端位置に合わせて加圧モータユニット27を停止させたとしても、上部テーブル7が下端位置からずれてしまうという問題が発生する。
【0045】
厚板に対する曲げ加工のように高負荷での曲げ加工では、ワークから高い曲げ反力が上部テーブル7に作用するため、曲げ反力が上部テーブル7の自重を支える方向に働く。そのため、上部テーブル7の位置決めが不安定となる事象は、薄板に対する曲げ加工のように低負荷での曲げ加工において顕著に発生する。また、これ以外にも、左右のテーブル駆動装置20のうち一方のテーブル駆動装置20側が低負荷となるオフセット曲げ加工においてもこのような事象が発生することがある。
【0046】
このような事象に鑑み、制御装置100は、高トルクモードで上部テーブル7を下方向に移動させる場合に、クラッチ29によってトルクを伝達した状態で、反転制御を行うこととしている。反転制御を行うことで、加圧モータユニット27とは反対方向に高速モータユニット26が駆動するため、歯車要素T2の回転R2とは逆方向の回転R1が歯車要素T1に対して作用する。これにより、上部テーブル7が下端位置へと到達するまで歯車要素T2が歯車要素T1を押し続ける状態が維持される。歯車要素T1の微少移動が抑制されるので、上部テーブル7が下方向へと移動してしまうことを抑制することができる。したがって、上部テーブル7は、下端位置に対して正確に位置決めされる。上部テーブル7の位置決めが安定するので、加工精度の向上を図ることができる。
【0047】
なお、歯車要素T1の微少移動は、上部テーブル7を減速させる減速期間において発生する。そこで、反転制御を行う期間は、少なくとも減速期間を含めばよい。例えば、制御装置100は、上部テーブル7の減速開始タイミングに合わせて反転制御を開始してよいし、減速開始タイミングよりも一定時間だけ前から反転制御を開始してもよい。
【0048】
また、上述したように、上部テーブル7の位置決めが不安定となる事象は、薄板に対する曲げ加工のように低負荷での曲げ加工などにおいて顕著に発生する。そこで、制御装置100は、ワークを曲げる負荷が予め定められた閾値よりも低い低負荷曲げなど場合に、反転制御を行ってもよい。これにより、上部テーブル7の位置決めが不安定となる状況に対して、適切な制御を行うことができる。
【0049】
ワークを曲げる負荷が閾値以上の高負荷曲げなどの場合には、上述した反転制御は不要である。一方で、制御装置100は、上部テーブル7を下方向に移動させるときの回転方向に高速モータユニット26を駆動させるアシスト制御を行ってもよい。これにより、上部テーブル7による加圧力を高めることができるので、高い負荷が必要となるワークについても曲げ加工を行うことができる。
【0050】
このように本実施形態に係るプレスブレーキ1によれば、反転制御を行うことで、下端位置に対して上部テーブル7の位置決めを正確に行うことができる。上部テーブル7の位置決めが安定するので、加工精度の向上を図ることができる。
【0051】
また、本実施形態において、高速モータユニット26は、第1駆動モータ26aを含んでいる。加圧モータユニット27は、第2駆動モータ27aと、第2駆動モータ27aのトルクを減速して出力する減速機27bとを含んでいる。この構成によれば、加圧モータユニット27が減速機27bを含んでいるので、加圧モータユニット27によって低速回転で高トルクを得ることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、高速モータユニット26は、第1駆動モータ26aのみで構成されている。しかしながら、高速モータユニット26は、加圧モータユニット27よりも高速回転で低トルクを出力する限り、加圧モータユニット27と同様に、減速機を含んでよい。
【0053】
本実施形態において、動力伝達機構35は、高速モータユニット26及び加圧モータユニット27がそれぞれ連結される駆動プーリ37と、ボールねじ機構55に連結された従動プーリ38と、駆動プーリ37と従動プーリ38との間に張られたタイミングベルト36とを含んでいる。この場合、高速モータユニット26は、駆動プーリ37を挟んで加圧モータユニット27の反対側に同軸上に配置されている。
【0054】
この構成によれば、高速モータユニット26と加圧モータユニット27とでタイミングベルト36、駆動プーリ37などの機械部品を共有することができる。これにより、コストの増大を抑制しつつ、機械要素におけるイナーシャを小さくすることができる。また、高速モータユニット26と加圧モータユニット27とが上下方向に並んで配置されるため、左右方向及び前後方向へのスペース的な拡がりを抑制することができる。したがって、機械の省スペース化を実現することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係るプレスブレーキ1について説明する。この第2の実施形態に係るプレスブレーキ1の特徴の一つは、回転動力ユニット25及び動力伝達機構35の構成である。以下、
図5を参照し、第1の実施形態との相違点を中心に説明を行う。
図5は、第2の実施形態に係るプレスブレーキ1のテーブル駆動装置20を模式的に示す側面図である。
【0056】
本実施形態では、高速モータユニット26と、加圧モータユニット27とがそれぞれ別々の軸上に配置されている。高速モータユニット26は、その出力軸(第1駆動モータ26aの駆動軸)が上向きとなる姿勢で配置され、加圧モータユニット27も、その出力軸(減速機27bの出力軸)が上向きとなる姿勢で配置されている。
【0057】
動力伝達機構35は、第1タイミングベルト36aと、第2タイミングベルト36bと、第1駆動プーリ37aと、第2駆動プーリ37bと、従動プーリ38とで構成されている。
【0058】
第1タイミングベルト36aは、第1駆動プーリ37aと従動プーリ38との間に張られている。第2タイミングベルト36bは、第2駆動プーリ37bと従動プーリ38との間に張られている。
【0059】
第1駆動プーリ37aには、高速モータユニット26の出力軸、すなわち第1駆動モータ26aの駆動軸が連結されている。また、第2駆動プーリ37bには、クラッチ29を介して、加圧モータユニット27の出力軸、すなわち減速機27bの出力軸が連結されている。従動プーリ38には、ボールねじ機構55のボールねじナット56が連結されている。
【0060】
このような構成によれば、第1駆動プーリ37aと従動プーリ38とのプーリ径の比に応じて減速比を設定することができる。これにより、トルク及び速度の設定を柔軟に行うことができる。
【0061】
また、高速モータユニット26と加圧モータユニット27とが上下方向に並んでいないので、機械の高さを抑止することができる。
【0062】
なお、第1又は第2の実施形態では、ボールねじ機構55のボールねじナット56に回転運動が入力され、この回転運動をボールねじ軸57によって直線運動へと変換されている。しかしながら、ボールねじ軸57に回転運動を入力し、この回転運動をボールねじナット56によって直線運動へと変換してもよい。
【0063】
本実施形態を記載したが、この実施形態の一部をなす論述及び図面はこの実施形態を限定するものであると理解すべきではない。この実施形態から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0064】
1 プレスブレーキ
2 サイドプレート
5 下部テーブル(固定テーブル)
7 上部テーブル(可動テーブル)
20 テーブル駆動装置
25 回転動力ユニット
26 高速モータユニット
26a 第1駆動モータ
27 加圧モータユニット
27a 第2駆動モータ
27b 減速機
29 クラッチ
35 動力伝達機構
36 タイミングベルト
36a 第1タイミングベルト
36b 第2タイミングベルト
37 駆動プーリ
37a 第1駆動プーリ
37b 第2駆動プーリ
38 従動プーリ
55 ボールねじ機構(変換機構)
56 ボールねじナット
57 ボールねじ軸
100 制御装置
【要約】
【課題】可動テーブルの位置決めを安定させ、加工精度の向上を図ることである。
【解決手段】制御装置100は、切り替え可能な動作モードとして、高速モードと、高トルクモードとを有している。高速モードは、クラッチ29によってトルクを遮断した状態で、高速回転で低トルクを出力する高速モータユニット26を駆動することによって、上部テーブル7を移動させる。高トルクモードは、クラッチ29によってトルクを伝達した状態で、低速回転で高トルクを出力する加圧モータユニット27を駆動することによって、上部テーブル7を移動させる。制御装置100は、高トルクモードで上部テーブル7を下方向に移動させる場合に、クラッチ29によってトルクを伝達した状態で、上部テーブル7を下方向に移動させるときの回転方向とは反対方向に高速モータユニット26を駆動させる反転制御を行う。
【選択図】
図2