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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】聴性脳幹反応の自動測定装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/38 20210101AFI20241108BHJP
【FI】
A61B5/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023178139
(22)【出願日】2023-10-16
(62)【分割の表示】P 2021562859の分割
【原出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2023179702
(43)【公開日】2023-12-19
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】201910362550.0
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521460077
【氏名又は名称】上海交通大学医学院附属第九人民医院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI NINTH PEOPLE‘S HOSPITAL AFFILIATED TO SHANGHAI JIAOTONG UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】100230086
【弁理士】
【氏名又は名称】譚 粟元
(72)【発明者】
【氏名】ファー,ユンフン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ハォ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ハォウー
(72)【発明者】
【氏名】リー,ベイ
(72)【発明者】
【氏名】ディン,シュー
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ズーウー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シュリン
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05697379(US,A)
【文献】米国特許第06071246(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開始音響強度で対応するABR記録を取得するステップA1と、
適応平均法の演算を実行し、反復が終了するまで、反復によって記録の平均回数を段階的に増加させ、
反復ごとに、現在の反復時に現在の音響強度に対応するABR記録をランダムに二つのグループに分けた後、現在の平均回数に基づいて各グループの平均曲線をそれぞれ計算し、グループの間の相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを取得し、タイムラグの絶対値がk個のデータポイントよりも小さいか否かに基づき、タイムロック特性を有するABR信号が検出されたか否かを判断し、
ABR信号が検出されておらず、かつ、反復回数が現在の音響強度での最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、現在の音響強度でのABR記録の取得を持続し、
ABR信号が検出されており、または、反復回数が現在の音響強度での最大反復回数に達してもABR信号が検出されていない場合、反復を終了し、現在の音響強度でのABR記録の取得を持続しない、ステップA2と、
ステップA2でタイムロック特性を有するABR信号が検出されているか否かを判断し、ABR信号が検出されている場合、ステップA4を実行し、ABR信号が検出されていない場合、ステップA5を実行するステップA3と、
現在の音響強度が設定された最低テスト音響強度に達しているか否かを判断し、最低テスト音響強度に達していない場合、新たな音響強度で対応するABR記録を取得して元データと組み合わせ、ステップA2を再実行し、前記新たな音響強度は、現在の音響強度から設定された間隔を差し引いた後に得られるものであり、最低テスト音響強度に達している場合、ステップA6を実行するステップA4と、
連続するP個の音響強度でABR信号が検出されていないか否かを判断し、連続するP個の音響強度でABR信号が検出されていない場合、ステップA6を実行し、そうでなければ、ステップA4の実行に移行するステップA5と、
適応平均法の演算において、各音響強度で使用される反復回数に対して関数フィッティング及び補間法によって処理を行い、ABR信号を検出するために必要とする最低音響強度を取得し、前記最低音響強度を可聴閾値として出力するステップA6とを含み、
適応平均法の演算とは、記録回数を徐々に増加させ、ランダムにグループ化して平均する方法を利用して現在のABRデータを任意の二つのグループに分けてかつ平均曲線をそれぞれ計算することによって、この二つのグループの平均曲線の相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを取得し、タイムラグの絶対値がk個のデータポイントよりも小さいか否かを判断することによって、最大反復回数まで(すなわち、信号が検出されているかまたは最大反復回数に達していても信号がない場合に反復を終了する)、安定したタイムロック信号が存在するか否かを判断し、
kは、一つの固定値であり、又は、全てのデータポイントを予め設定された比率で計算した後に得られる値である、
ことを特徴とする聴性脳幹反応の自動テスト方法。
【請求項2】
前記ABR記録は、入力タイプが繰り返される単一記録である時間曲線であり、ステップA2において、前記適応平均法の演算は、反復が終了するまで、反復によって記録の平均回数を段階的に増加させ、その中の各反復は、受信したABR記録に対してステップS1’~ステップS5’の演算プロセスの処理を行い、
ABR記録をランダムに二つのグループに分け且つ平均曲線をそれぞれ計算するステップS1’と、
二つのグループのそれぞれが平均された後の相互相関関数を計算するステップS2’と、
相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを取得するステップS3’と、
タイムラグの絶対値とk値とを比較し、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあるか否かを判断し、
タイムラグの絶対値がk値よりも小さい場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあることを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていることを示し、この場合、反復を終了し、データの取得と収集を停止し、ABR信号が検出されている場合に対応し、
タイムラグの絶対値がk値よりも小さくない場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にないことを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていないことを示し、この場合、さらにステップS5’を実行するステップS4’と、
反復回数が、現在の音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、
最大反復回数に達している場合、反復を終了し、データの取得と収集を停止し、ABR信号が検出されていない場合に対応し、最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、新たな収集データを取得して、受信したABR記録に加え、反復が終了するまで、現在の音響強度でS1’~S5’の演算プロセスを繰り返し実行するステップS5’とを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の聴性脳幹反応の自動テスト方法。
【請求項3】
前記ABR記録は、入力タイプが繰り返される単一記録である時間曲線であり、ステップA2において、前記適応平均法の演算は、反復が終了するまで、反復によって記録の平均回数を段階的に増加させ、その中の各反復は、受信したABR記録に対してQ回並行して判断し、
各回の並行判断に、まず、以下のステップS1~S4をそれぞれ実行し、
ステップS1では、ABR記録をランダムに二つのグループに分け且つ平均曲線をそれぞれ計算し、
ステップS2では、二つのグループのそれぞれが平均された後の相互相関関数を計算し、
ステップS3では、相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを取得し、
ステップS4では、タイムラグの絶対値とk値とを比較し、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあるか否かを判断し、
タイムラグの絶対値がk値よりも小さい場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあることを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていることを示し、タイムラグの絶対値がk値よりも小さくない場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にないことを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていないことを示し、
各回の並行判断に、ステップS4を完了した後、以下のステップS5をさらに実行し、
ステップS5では、Q回の並行判断のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されているか否かを判断し、
Q回のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されている場合、反復を終了し、データの取得と収集を停止し、ABR信号が検出されている場合に対応し、
Q回のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されているのではない場合、さらにステップS6を実行し、
ステップS6では、反復回数が現在の音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、
最大反復回数に達している場合、反復を終了し、データの取得と収集を停止し、ABR信号が検出されていない場合に対応し、
最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、新たな収集データを取得して、受信したABR記録に加え、現在の音響強度でQ回の並行判断のそれぞれのステップS1を繰り返して実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の聴性脳幹反応の自動テスト方法。
【請求項4】
前記ABR記録は、入力タイプが複数回の平均記録である時間曲線であり、ステップA2において、前記適応平均法の演算は、反復が終了するまで、反復によって記録の平均回数を段階的に増加させ、その中の各反復は、受信したABR記録に対してステップS1”~ステップS6”の演算プロセスの処理を行い、
受信したABR記録に対して、重みに従って現在の平均曲線avgAを計算し、
【数1】
ここでは、avgA、avgA、avgAは、それぞれQグループのABRテスト平均データであり、Mは、現在の反復回数であり、avgA は今回の反復で新たに加えられる平均曲線を表し、avgAは前回の反復の平均曲線を表す、ステップS1”と、
Qグループの現在の平均曲線avgAに対して、各二つのグループの間の相互相関関数を計算するステップS2”と、
相互相関関数の最大値に対応するQグループのタイムラグを取得するステップS3”と、
Q回の並行判断を実行し、
各グループのタイムラグの絶対値をそれぞれk値と比較し、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあるか否かを判断し、タイムラグの絶対値がk値よりも小さい場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあることを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていることを示し、タイムラグの絶対値がk値よりも小さくない場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にないことを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていないことを示すステップS4”と、
Q回の並行判断のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されているか否かを判断し、
Q回のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されている場合、反復を終了し、データの取得と収集を停止し、ABR信号が検出されている場合に対応し、
Q回のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されているのではない場合、さらにステップS6”を実行するステップS5”と、
現在の反復回数が、現在の音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、
最大反復回数に達している場合、反復を終了し、データの取得と収集を停止し、ABR信号が検出されていない場合に対応し、最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、新たなに収集データを取得して、受信したABR記録に加え、反復が終了するまで、現在の音響強度でS1”~S6”の演算プロセスを繰り返し実行するステップS6”とを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の聴性脳幹反応の自動テスト方法。
【請求項5】
各音響強度で平均曲線を計算する時に使用される平均回数は、反復回数とN値との乗算値であり、N値は、各回の反復時に新たに加えられるABR記録のグループ数に対応することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の聴性脳幹反応の自動テスト方法。
【請求項6】
ステップA6において、各音響強度で使用される反復回数に対して正規化処理を行った後、正規化処理後の反復回数に対してSigmoid関数フィッティング及び補間法による処理を行い、前記可聴閾値を得ることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の聴性脳幹反応の自動テスト方法。
【請求項7】
各音響強度でのABR記録は、動物実験データ又は臨床データであり、リアルタイムテストによって取得されるか又はオフラインで記憶されるデータであり、前記データは、音声刺激が脳波変化を誘発するときに生成される特徴波形を含み、
前記ABR記録は、
信号増幅と、
バンドパスフィルタリングと、
電極によって前記特徴波形を収集する時間区間を調整し、音声刺激が開始した後に対応する時間区間の時間曲線を分析対象としての選択と、
バックグラウンドノイズに対応する時間曲線の排除と、及び
平滑化スプラインフィッティング関数によって、低周波数バックグラウンドノイズの除去と、のうちの一つ又は複数の前処理を経ることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の聴性脳幹反応の自動テスト方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の聴性脳幹反応の自動テスト方法に用いられる聴性脳幹反応の自動テスト装置であって、
前記聴性脳幹反応の自動テスト装置は、
各音響強度の刺激で収集されたABR記録を取得する入力モジュールと、
前記入力モジュールが開始音響強度から最低テスト音響強度までの間に、各音響強度の刺激でバッチで収集されたABR記録を取得するように駆動する制御モジュールと、
適応平均法の演算を実行することによって、反復が終了するまで、反復によって記録の平均回数を段階的に増加させ、反復ごとに、現在の反復時に現在の音響強度に対応するABR記録をグループ化した後、現在の平均回数に基づいて各グループの平均曲線をそれぞれ計算し、グループの間の相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを取得し、タイムラグのずれが所定のデータポイント範囲内にあるか否かに基づき、タイムロック特性を有するABR信号が検出されたか否かを判断し、ABR信号が検出されておらず、かつ、反復回数が現在の音響強度での最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、現在の音響強度でのABR記録の取得を持続し、ABR信号が検出されており、または、ABR信号が検出されておらず、かつ、反復回数が現在の音響強度での最大反復回数に達している場合、反復を終了し、現在の音響強度でのABR記録の取得を持続しない、適応平均法演算モジュールと、
適応平均法の演算時に各音響強度で使用される反復回数を保存する記憶モジュールと、
適応平均法演算モジュールによって出力された結果に基づき、適応平均法の演算時にタイムロック特性を有するABR信号が検出されているか否かを判断し、且つ、ABR信号が検出されていると判断する場合、さらに現在の音響強度が設定された最低テスト音響強度に達しているか否かを判断するメイン判断モジュールとを含み、
最低テスト音響強度に達していないと判断する場合、メイン判断モジュールは、制御モジュールに指令を出し、制御モジュールによってさらに入力モジュールが新たな音響強度で対応するABR記録を取得するように駆動し、新たな音響強度は、現在の音響強度から間隔を差し引いた後に得られるものであり、最低テスト音響強度に達していると判断する場合、メイン判断モジュールは、制御モジュールに指令を出し、制御モジュールによって記憶モジュールから適応平均法の演算時に使用される反復回数を呼び出し、
ABRが検出されていないと判断する場合、さらに連続するP個の音響強度でABR信号が検出されていないか否かを判断し、そうでなければ、メイン判断モジュールは、制御モジュールに指令を出し、制御モジュールによってさらに入力モジュールが新たな音響強度で対応するABRデータを取得するように駆動し(新たな音響強度は、現在の音響強度から間隔を差し引いた後に得られるものである)、連続するP個の音響強度でABR信号が検出されていない場合、メイン判断モジュールは制御モジュールに指令を出し、制御モジュールによって記憶モジュールから適応平均法の演算時に使用される反復回数を呼び出し、
関数フィッティングモジュールをさらに含み、適応平均法の演算時に使用される反復回数に対して、関数フィッティング及び補間法によって処理を行い、ABR信号を検出するために必要と最低音響強度を取得し、前記最低音響強度を可聴閾値として出力する聴性脳幹反応の自動テスト装置。
【請求項9】
前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールにデータを収集する指令を出し、入力モジュールによって入力されるデータタイプが繰り返される単一記録である場合、前記適応平均法演算モジュールは、各音響強度の各回の反復に対応して1回の判断を実行するか又は複数回の並行判断を実行し、1回の判断又は複数回の並行判断のうちの各回の判断時に、現在収集されたABR記録をランダムに二つのグループに分けて平均曲線をそれぞれ計算した後に相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを計算し、タイムラグの絶対値とk値とを比較し、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあるか否かを判断し、タイムラグの絶対値がk値よりも小さい場合、安定したタイムロック信号が検出されていることを示し、タイムラグの絶対値がk値よりも小さくない場合、安定したタイムロック信号が検出されていないことを示し、
1回の判断又は複数回の並行判断のうちの各回の判断がいずれも、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されていることを示す場合、反復を終了し、前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールにデータの収集を停止する指令を出し、現在の音響強度でABR信号が検出されていることを示す戻り情報を出し、且つ記憶モジュールによって現在の反復回数を保存し、
1回の判断が現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されていないことを示すか、又は複数回の並行判断のうちの各回の判断がいずれも、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されていることを示すのではない場合、前記適応平均法演算モジュールは、さらに反復回数が現在の音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、
最大反復回数に達している場合、反復を終了し、前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールにデータの収集を停止する指令を出し、現在の音響強度でABR信号が検出されることができないことを示す戻り情報を出し、且つ記憶モジュールによって現在の反復回数を保存し、
最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、前記適応平均法演算モジュールは、さらに制御モジュールに新たなデータを加える指令を出し、且つ元データに新たに収集されたデータを加えた後に現在の音響強度で適応平均法の演算プロセスを繰り返し実行し、
ここでは、kは、予め設定された固定値であり、又は、全てのデータポイントを予め設定された比率で計算した後に得られる値であることを特徴とする請求項8(請求項4を引用する請求項8除く)に記載の聴性脳幹反応の自動テスト装置。
【請求項10】
前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールにデータを収集する指令を出し、入力モジュールによって入力されるデータタイプが複数回の平均記録である場合、反復ごとに、前記適応平均法演算モジュールは下記式で計算し、
【数2】
ここでは、avgA、avgA、avgAは、それぞれQグループのABRテスト平均データであり、Mは、現在の反復回数であり、今回の反復で新たに加えられる平均曲線avgAを、前回の反復の平均曲線avgAと組み合わせ、
前記適応平均法演算モジュールは、Qグループの現在の平均曲線avgAに対して、各二つのグループの間の相互相関関数を計算し、且つ相互相関関数の最大値に対応するQグループのタイムラグを取得し、
前記適応平均法演算モジュールはQ回の並行判断を以下のように実行し、各グループのタイムラグの絶対値をそれぞれk値と比較し、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあるか否かを判断し、タイムラグの絶対値がkよりも小さい場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあることを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていることを示し、タイムラグの絶対値がk値よりも小さくない場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にないことを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていないことを示し、
前記適応平均法演算モジュールは、Q回の並行判断のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されているか否かを判断し、Q回のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されている場合、反復を終了し、前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールにデータの収集を停止する指令を出し、現在の音響強度でABR信号が検出されていることを示す戻り情報を出し、且つ記憶モジュールによって現在の反復回数を保存し、
Q回のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されているのではない場合、さらに反復回数が現在の音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、最大反復回数に達している場合、反復を終了し、前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールにデータの収集を停止する指令を出し、現在の音響強度でABR信号が検出されていることを示す戻り情報を出し、且つ記憶モジュールによって現在の反復回数を保存し、
最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールに新たなデータを加える指令を出し、元のデータに新たに収集されたデータを加えた後、現在の音響強度で適応平均法の演算プロセスを繰り返し実行し、ここでは、kは、予め設定された固定値であり、又は、全てのデータポイントを予め設定された比率で計算した後に得られる値であることを特徴とする請求項8(請求項2,3を引用する請求項8除く)に記載の聴性脳幹反応の自動テスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理技術に関し、特に聴性脳幹反応の自動テスト装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Response、ABR)は、音声刺激によって誘発される脳波変化であり、その特徴波形は、刺激後の10ミリ秒内に発生し、人または動物のヘッド部に配置される電極によって記録される。および
ABRの特徴が非侵襲性なので、特に言語交流または肢体動作によって聴力検査をすることができない乳幼児、知的障害者および術中患者などの聴力検査・測定の手段として臨床的に広く使用されており、可聴閾値(被検者のABR特徴的な波形を誘発するために使用される最小音響強度を指す)は、すでに聴力機能を評価する重要な指標の一つになっている。
【0003】
しかし、ABR記録の信号雑音比の変化が大きく、各音響強度での波形の差異が大きいため、現在では、基本的には専門的な訓練を受けた医師が100回以上記録した後の平均に基づいて判定する。このような主観的に閾値を判断する方法は、結果の正確性が個人の経験とスキルとに依存し、かつ専門的なスキルへの依存度を増加させ、日増しに増加する臨床ニーズを満たすことができず、全国範囲内で乳幼児の聴力スクリーニングを展開することに極めて大きい困難をもたらしている。これは、ABRテストデータ分析の自動化が実現しにくいことにも繋がり、過去30~40年の間に、人々がABR聴力テストの自動化について一連の努力をして、様々な提案をしたが、未だ成熟した、信頼性の高い商業製品は登場していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、適応平均法に基づき、聴性脳幹反応測定のデータに対して、効率的で、信頼性の高い自動化処理分析を行うことができる聴性脳幹反応の自動測定装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの技術的解決策は、以下のステップを含んだ、聴性脳幹反応の自動測定方法を提供する。
開始音響強度で対応するABR記録を取得するステップA1と、
適応平均法の演算を実行し、反復が終了するまで、反復によって記録の平均回数を段階的に増加させ、
反復ごとに、現在の反復時に現在の音響強度に対応するABR記録をグループ化した後、現在の平均回数に基づいて各グループの平均曲線をそれぞれ計算し、グループの間の相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを取得し、タイムラグのずれが所定範囲内にあるか否かに基づき、タイムロック特性を有するABR信号が検出されたか否かを判断し、
ABR信号が検出されておらず、かつ、反復回数が現在の音響強度での最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、現在の音響強度でのABR記録の取得を持続し、
ABR信号が検出されており、または、ABR信号が検出されておらず、かつ、反復回数が現在の音響強度での最大反復回数に達している場合、反復を終了し、現在の音響強度でのABR記録の取得を持続しない、ステップA2と、
ステップA2でタイムロック特性を有するABR信号が検出されているか否かを判断し、ABR信号が検出されている場合、ステップA4を実行し、ABR信号が検出されていない場合、ステップA5を実行するステップA3と、
現在の音響強度が設定された最低テスト音響強度に達しているか否かを判断し、最低テスト音響強度に達していない場合、新たな音響強度で対応するABR記録を取得して元データと組み合わせ、ステップA2を再実行し、前記新たな音響強度は、現在の音響強度から設定された間隔を差し引いた後に得られるものであり、最低テスト音響強度に達している場合、ステップA6を実行するステップA4と、
連続するP個の音響強度でABR信号が検出されていないか否かを判断し、連続するP個の音響強度でABR信号が検出されていない場合、ステップA6を実行し、そうでなければ、ステップA4の実行に移行するステップA5と、
適応平均法の演算において、各音響強度で使用される反復回数に対して関数フィッティング及び補間法によって処理を行い、ABR信号を検出するために必要と最低音響強度を取得し、前記最低音響強度を可聴閾値として出力するステップA6とを含む聴性脳幹反応の自動測定方法。
【0006】
好ましい態様として、前記ABR記録は、入力タイプが繰り返される単一記録である時間曲線であり、ステップA2において、前記適応平均法の演算は、反復が終了するまで、反復によって記録の平均回数を段階的に増加させ、その中の各反復は、受信したABR記録に対して以下のプロセスの処理を行い、
ABR記録をランダムに二つのグループに分け且つ平均曲線をそれぞれ計算するステップS1’と、
二つのグループのそれぞれが平均された後の相互相関関数を計算するステップS2’と、
相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを取得するステップS3’と、
タイムラグの絶対値とk値とを比較し、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあるか否かを判断し、
タイムラグの絶対値がk値よりも小さい場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあることを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていることを示し、この場合、反復を終了し、データの取得と収集を停止し、ABR信号が検出されている場合に対応し、
タイムラグの絶対値がk値よりも小さくない場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にないことを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていないことを示し、この場合、さらにステップS5’を実行するステップS4’と、
反復回数が、現在の音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、
最大反復回数に達している場合、反復を終了し、データの取得と収集を停止し、ABR信号が検出されていない場合に対応し、最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、新たな収集データを取得して、受信したABR記録に加え、反復が終了するまで、現在の音響強度でS1’~S5’の演算プロセスを繰り返し実行するステップS5’とを含み、
ここでは、kは、予め設定された固定値であり、又は、全てのデータポイントを予め設定された比率で計算した後に得られる値である。
【0007】
好ましい態様として、前記ABR記録は、入力タイプが繰り返される単一記録である時間曲線であり、ステップA2において、前記適応平均法の演算は、反復が終了するまで、反復によって記録の平均回数を段階的に増加させ、その中の各反復は、受信したABR記録に対してQ回並行して判断し、
各回の並行判断に、まず、以下のステップS1~S4をそれぞれ実行し、
ステップS1では、ABR記録をランダムに二つのグループに分け且つ平均曲線をそれぞれ計算し、
ステップS2では、二つのグループのそれぞれが平均された後の相互相関関数を計算し、
ステップS3では、相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを取得し、
ステップS4では、タイムラグの絶対値とk値とを比較し、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあるか否かを判断し、
タイムラグの絶対値がk値よりも小さい場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあることを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていることを示し、タイムラグの絶対値がk値よりも小さくない場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にないことを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていないことを示し、
各回の並行判断に、ステップS4を完了した後、以下のステップS5をさらに実行し、
ステップS5では、Q回の並行判断のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されているか否かを判断し、
Q回のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されている場合、反復を終了し、データの取得と収集を停止し、ABR信号が検出されている場合に対応し、
Q回のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されているのではない場合、さらにステップS6を実行し、
ステップS6では、反復回数が現在の音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、
最大反復回数に達している場合、反復を終了し、データの取得と収集を停止し、ABR信号が検出されていない場合に対応し、
最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、新たな収集データを取得して、受信したABR記録に加え、現在の音響強度でQ回の並行判断のそれぞれのステップS1を繰り返して実行し、
ここでは、kは、予め設定された固定値であり、又は、全てのデータポイントを予め設定された比率で計算した後に得られる値である。
【0008】
好ましい態様として、前記ABR記録は、入力タイプが複数回の平均記録である時間曲線であり、ステップA2において、前記適応平均法の演算は、反復が終了するまで、反復によって記録の平均回数を段階的に増加させ、その中の各反復は、受信したABR記録に対して以下のプロセスの処理を行い、
受信したABR記録に対して、重みに従って現在の平均曲avgA線を計算し、
【数1】

ここでは、avgA、avgA、avgAは、それぞれQグループのABRテスト平均データであり、Mは、現在の反復回数であり、avgAは今回の反復で新たに加えられる平均曲線を表し、avgAは前回の反復の平均曲線を表す、ステップS1”と、
Qグループの現在の平均曲線avgAに対して、各二つのグループの間の相互相関関数を計算するステップS2”と、
相互相関関数の最大値に対応するQグループのタイムラグを取得するステップS3”と、
Q回の並行判断を実行し、
各グループのタイムラグの絶対値をそれぞれk値と比較し、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあるか否かを判断し、タイムラグの絶対値がk値よりも小さい場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあることを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていることを示し、タイムラグの絶対値がk値よりも小さくない場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にないことを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていないことを示すステップS4”と、
Q回の並行判断のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されているか否かを判断し、
Q回のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されている場合、反復を終了し、データの取得と収集を停止し、ABR信号が検出されている場合に対応し、
Q回のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されているのではない場合、さらにステップS6”を実行するステップS5”と、
現在の反復回数が、現在の音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、
最大反復回数に達している場合、反復を終了し、データの取得と収集を停止し、ABR信号が検出されていない場合に対応し、最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、新たなに収集データを取得して、受信したABR記録に加え、反復が終了するまで、現在の音響強度でS1”~S6”の演算プロセスを繰り返し実行するステップS6”とを含み、
ここでは、kは、予め設定された固定値であり、又は、全てのデータポイントを予め設定された比率で計算した後に得られる値である。
【0009】
好ましい態様として、各音響強度で平均曲線を計算する時に使用される平均回数は、反復回数とN値との乗算値であり、N値は、各回の反復時に新たに加えられるABR記録のグループ数に対応する。
【0010】
好ましい態様として、ステップA6において、各音響強度で使用される反復回数に対して正規化処理を行った後、正規化処理後の反復回数に対してSigmoid関数フィッティング及び補間法による処理を行い、前記可聴閾値を得る。
【0011】
好ましい態様として、各音響強度でのABR記録は、動物実験データ又は臨床データであり、リアルタイムテストによって取得されるか又はオフラインで記憶されるデータであり、前記データは、音声刺激が脳波変化を誘発するときに生成される特徴波形を含み、
前記ABR記録は、
信号増幅と、
バンドパスフィルタリングと、
電極によって前記特徴波形を収集する時間区間を調整し、音声刺激が開始した後に対応する時間区間の時間曲線を分析対象としての選択と、
バックグラウンドノイズに対応する時間曲線の排除と、及び
平滑化スプラインフィッティング関数によって、低周波数バックグラウンドノイズの除去と、のうちの一つ又は複数の前処理を経る。
【0012】
好ましい態様として、各音響強度でのABR記録は、動物実験データ又は臨床データであり、リアルタイムテストによって取得されるか又はオフラインで記憶されるデータであり、前記データは、音声刺激が脳波変化を誘発するときに生成される特徴波形を含み、
前記ABR記録は、
信号増幅と、
バンドパスフィルタリングと、
電極によって前記特徴波形を収集する時間区間を調整し、音声刺激が開始した後に対応する時間区間の時間曲線を分析対象としての選択と、
バックグラウンドノイズに対応する時間曲線の排除と、及び
平滑化スプラインフィッティング関数によって、低周波数バックグラウンドノイズの除去と、のうちの一つ又は複数の前処理を経る。
【0013】
好ましい態様として、それはさらに、関数フィッティングモジュールをさらに含み、適応平均法の演算時に使用される反復回数に対して、関数フィッティング及び補間法によって処理を行い、ABR信号を検出するために必要と最低音響強度を取得し、前記最低音響強度を可聴閾値として出力する聴性脳幹反応の自動テスト装置である。
【0014】
好ましい態様として、前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールにデータを収集する指令を出し、入力モジュールによって入力されるデータタイプが繰り返される単一記録である場合、前記適応平均法演算モジュールは、各音響強度の各回の反復に対応して1回の判断を実行するか又は複数回の並行判断を実行し、1回の判断又は複数回の並行判断のうちの各回の判断時に、現在収集されたABR記録をランダムに二つのグループに分けて平均曲線をそれぞれ計算した後に相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを計算し、タイムラグの絶対値とk値とを比較し、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあるか否かを判断し、タイムラグの絶対値がk値よりも小さい場合、安定したタイムロック信号が検出されていることを示し、タイムラグの絶対値がk値よりも小さくない場合、安定したタイムロック信号が検出されていないことを示し、
1回の判断又は複数回の並行判断のうちの各回の判断がいずれも、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されていることを示す場合、反復を終了し、前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールにデータの収集を停止する指令を出し、現在の音響強度でABR信号が検出されていることを示す戻り情報を出し、且つ記憶モジュールによって現在の反復回数を保存し、
1回の判断が現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されていないことを示すか、又は複数回の並行判断のうちの各回の判断がいずれも、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されていることを示すのではない場合、前記適応平均法演算モジュールは、さらに反復回数が現在の音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、
最大反復回数に達している場合、反復を終了し、前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールにデータの収集を停止する指令を出し、現在の音響強度でABR信号が検出されることができないことを示す戻り情報を出し、且つ記憶モジュールによって現在の反復回数を保存し、
最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、前記適応平均法演算モジュールは、さらに制御モジュールに新たなデータを加える指令を出し、且つ元データに新たに収集されたデータを加えた後に現在の音響強度で適応平均法の演算プロセスを繰り返し実行し、
ここでは、kは、予め設定された固定値であり、又は、全てのデータポイントを予め設定された比率で計算した後に得られる値である。
【0015】
好ましい態様として、前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールにデータを収集する指令を出し、入力モジュールによって入力されるデータタイプが複数回の平均記録である場合、反復ごとに、前記適応平均法演算モジュールは下記式で計算し、
【数2】

ここでは、avgA、avgA、avgAは、それぞれQグループのABRテスト平均データであり、Mは、現在の反復回数であり、今回の反復で新たに加えられる平均曲線avgAを、前回の反復の平均曲線avgAと組み合わせ、
前記適応平均法演算モジュールは、Qグループの現在の平均曲線avgAに対して、各二つのグループの間の相互相関関数を計算し、且つ相互相関関数の最大値に対応するQグループのタイムラグを取得し、
前記適応平均法演算モジュールはQ回の並行判断を以下のように実行し、各グループのタイムラグの絶対値をそれぞれk値と比較し、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあるか否かを判断し、タイムラグの絶対値がkよりも小さい場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にあることを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていることを示し、タイムラグの絶対値がk値よりも小さくない場合、タイムラグずれがk個のデータポイント内にないことを意味し、安定したタイムロック信号が検出されていないことを示し、
前記適応平均法演算モジュールは、Q回の並行判断のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されているか否かを判断し、Q回のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されている場合、反復を終了し、前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールにデータの収集を停止する指令を出し、現在の音響強度でABR信号が検出されていることを示す戻り情報を出し、且つ記憶モジュールによって現在の反復回数を保存し、
Q回のうちの各回にいずれも安定したタイムロック信号が検出されているのではない場合、さらに反復回数が現在の音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、最大反復回数に達している場合、反復を終了し、前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールにデータの収集を停止する指令を出し、現在の音響強度でABR信号が検出されていることを示す戻り情報を出し、且つ記憶モジュールによって現在の反復回数を保存し、
最大反復回数に達していない場合、次回の反復を行い、前記適応平均法演算モジュールは、制御モジュールに新たなデータを加える指令を出し、元のデータに新たに収集されたデータを加えた後、現在の音響強度で適応平均法の演算プロセスを繰り返し実行し、ここでは、kは、予め設定された固定値であり、又は、全てのデータポイントを予め設定された比率で計算した後に得られる値である。
【0016】
従来のABR測定の時は、音響強度を高音から低音へと測定し、各音響強度を一定の回数繰り返し、平均した後の信号を得て、医師によって最低を判断するが、聴性脳幹反応があると判断される音響強度は、可聴閾値である(該閾値よりも高い場合に大脳が反応し、聞こえると考えられる)。過去30~40年の間に、人為的で主観的な判断による誤診を減らすために、業界は、自動聴力測定方法を開発してきたが、成熟した商業製品が登場しておらず、その理由は、信号に対する定量分析が実験条件(例えば麻酔程度や、電極の配置位置など)の影響を受けるためである。そのため、該値よりも高い場合に信号があり、該値よりも低い場合に信号がなく、可聴閾値に対応し得る(信号雑音比、相関係数等の)絶対値を見つけるのは困難である。
【0017】
従来技術と比べて、本発明によって提供される適応平均アルゴリズムは、ABRに基づく聴力測定において発生したデータを分析するために使用され、被検対象の可聴閾値(聴力測定の主な指標)を人間の代わりに自動的に取得することができ、ここでは各音響強度の繰り返される回数を動的に調整することができる。つまり、可聴閾値に対応する正確な値がないため、まず基準を設定し、この基準に達するには平均して何回かかるかという問題を解決する。
【0018】
このため、本発明の適応平均アルゴリズムは、高音から低音までの各測定音響強度でバッチで収集されたABR記録に対して、ABR信号の検出の条件を満たすまで、反復によって記録の平均回数を段階的に増加させ、信号雑音比を向上させる。ABR信号の検出条件は、バッチで収集されたABR記録をランダムにグループ化することによって2グループの平均曲線を取得し、その相互相関関数の最大値が位置するタイムラグを計算し、き、ABR信号がタイムロックされた特性が存在するか否かはタイムラグのずれが所定範囲内にあるか否かに基づいて判断し、可聴閾値は、信号の検出に必要な音響強度の最小値、または各音響強度で実行された反復回数の関数フィッティングおよび補間法によって得られた可聴閾値に対応する音響強度として取得される。
【0019】
相互相関関数を利用して判断を行い、タイムロック信号(ABR)がある場合、理論的タイムラグが0であり(実際の計算は、k個のデータポイントがずれ、例のk=1であり、図6における黒塗り点に対応する)、信号がない場合、タイムラグが任意値である(図6における白抜き点に対応する)。本発明の適応平均アルゴリズムを使用する時、信号雑音比が高い場合、何度も平均することなく、信号が検出され、信号雑音比が低い場合、信号を検出するにはより多くの平均回数を必要とする。該アルゴリズムは、平均回数を動的に調整することができる。信号がない場合、何度平均しても、信号が検出されない(上限が設定される)、図7に示す通りである。
【0020】
一方、本発明によって取得される各測定音響強度でABR信号を検出するために必要とする反復回数は、関数フィッティングおよび補間法によってより正確な可聴閾値を得て、閾値判断の精度を向上させ、かつABR記録の繰り返される収集回数を効果的に減らすことができる。測定音響強度が5dBずつ減少する場合、従来の方法は、5dBの精度しかなかったが、本発明は、関数フィッティングによって1dBに達することができる(図8)。
【0021】
本発明は、さらに2つの異なる入力データタイプ(図2図3)、すなわち単一繰り返し記録のデータと平均した後のデータを対象とすることができ、この2つのデータのフォーマットは、臨床上の全ての機種をカバーし、本発明のアルゴリズムは、いずれも適用することができる。
【0022】
本発明の方法によると、誤差が±5dB内の精度は、基本的に100%であり、また、各音響強度が信号を検出すると、次の音響強度を実行するため、繰り返される記録を最大69%減らすことができる(図10図11)。
【発明の効果】
【0023】
以上をまとめると、本発明は、適応平均法の演算モデルを提供し、これによって効率的で、信頼性の高い聴性脳幹反応の自動測定方法を実現し、該方法で得られた可聴閾値の精度は、専門家の人為的な判断に近く、かつより客観的で再現性が良い。より重要なのは、本発明の方法は、使用プロセスにおいてデータ品質に基づいてモデルを調整する必要がないため、様々な臨床と科学研究ABR測定において幅広い適用の将来性がある。また、本発明の方法は、判断結果に基づいて反復を終了しかつハードウェアにリアルタイムにフィードバックすることができ、測定時間を短縮し、メモリ容量の浪費を避けることができるだけでなく、さらにコアモジュールとして、無人全自動ABR聴力検出装置に用いることができ、臨床医師を聴力測定の仕事から完全に解放することが期待できることは言及するに値する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の聴性脳幹反応の自動測定方法のフローチャートである。
図2】入力データタイプが単一記録である場合のモジュール1のフローチャートである。
図3】入力データタイプが平均後のデータである場合のモジュール1のフローチャートである。
図4】各音響強度で350回平均後のマウスABR時間曲線である。
図5】同一のグループのデータが適応平均法を経た後に取得した結果であり、各音響強度に対応する二つの曲線が相互相関関数を計算するための平均曲線である。
図6】反復において取得された最大相関係数に対応するタイムラグである。
図7】各音響強度で信号の検出に必要とする反復回数である。
図8】正規化された反復回数をSigmoid関数によってフィッティングして得られる対応の閾値である。
図9】本発明の聴性脳幹反応の自動測定装置の概略ブロック図である。
図10】医師が従来の平均法を採用して測定データを読み取る場合と、医師が適応アルゴリズムに必要とするデータを読み取る場合と、機械が本発明の適応アルゴリズムを適用する場合と、これら三つの方法で得られる閾値の偏差比較である。
図11】医師が従来の平均法を採用して測定データを読み取る場合と、機械が本発明の適応アルゴリズムを適用する場合と、これら二種類の方法で得られる正規化された記録総数の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
既定の音声刺激(短い音、短い純音がよく使われる)に対して、聴覚系は、一連の電位反応を起こす。聴性脳幹反応(ABR)測定は、これらの電位の波形変化を記録し、かつ各種の数字信号処理アルゴリズムを利用してそれを各種の強いノイズ背景から抽出することによって、聴覚脳幹誘発電位を得て、聴覚伝導系の完全性を評価しかつ神経系の機能を監視する重要指標とする。
【0026】
本発明は、ABR測定において取得されるデータ信号に対して自動化処理を行うことによって、聴性脳幹反応の自動測定装置および方法を実現する適応平均法に基づくアルゴリズムモデルを提供する。
【0027】
まず、従来の測定方式と本発明に係る原理を簡単に説明する。
【0028】
従来の方法で、医師によってABR測定で取得されるオリジナル記録を分析し、各測定音響強度を一定の回数繰り返して測定を行い、平滑化した後の複数の時間曲線を得る。元々は、医師によって上記データに基づき、どちらが最低であるが、聴性脳幹反応がある音響強度であるかを判断し、それを可聴閾値として、該閾値よりも高い場合に大脳が反応し、聞こえることを示すと考えられる。
【0029】
データを分析した後に、刺激音響強度が可聴閾値よりも小さい場合、ABR記録間の相関係数が0の付近に対称に分布し(相関しない)、刺激音響強度が可聴閾値よりも高い場合、相関係数の分布が+1の方向へ移動する(正相関する)ことが分かる。経験によって安定したABR波形を検出するために必要とする最小相関係数を決定し、それは、閾値の判断標準となることができる(以下に詳細に記述する)。
【0030】
実際の操作プロセスにおいて、異なる実験条件(例えば電極の配置位置、動物の麻酔程度等)によるデータの信号雑音比の差異は、相関係数のモデリングに影響を与えるため、各回の記録は、いずれもキャリブレーションによってその閾値判断の正確性を保障する必要があり、実用価値に影響を与える。上記問題に対して、本発明は、タイムロック信号の古典的な判断標準(すなわち相互相関関数の最大でのタイムラグは、0)を利用して、平均回数を変化させることによって信号雑音比を調整し、最終的にABR信号の動的検出を実現することを適応平均法と呼ぶことを提案する。すなわち、本発明は、各音響強度の繰り返し回数を動的に調整し、可聴閾値に対応する標準を設け、適応平均法によってこの標準に達し、さらに可聴閾値を得ることができるには、何回平均する必要があるかを判断する。
【0031】
このため、適応平均法の具体的なアルゴリズムにおいて、本発明は、相互相関関数を利用してタイムロックの信号(ABR)があるか否かを判断し、信号がある場合、理論的タイムラグが0であり(実際の計算は、k個のデータポイントがずれ、例示的にk=1である)、または信号がない場合、タイムラグが任意値である。
【0032】
図2の例において、本発明は、単一音声刺激によって記録されるデータに対して、ランダムグループ化平均操作を行い(図3の別の例は、平均データのみが導出される状況に適用され、以下に詳述する)、「相互相関関数の最大値のタイムラグが一つのデータ記録ポイント内にずれているか否か」(システム誤差のため、一般的には1データポイント<50マイクロ秒)を利用して、タイムロックのABR信号が現れるか否かを判断し、信号が検出されていない場合、信号が現れるまでかまたは予め設定された最大値に達するまで、反復によってデータ量を段階的増加させる。
【0033】
上記検出方法の実際の測定結果によると、刺激音響強度が可聴閾値よりも高い場合、タイムラグ条件を満たすために必要とする平均回数が比較的に低いレベルに維持され、閾値に近接する場合に必要とする平均回数が指数関数的に増加し、かつ閾値よりも低い場合に予め設定された最大数に達し、可聴閾値は、すなわち信号が検出されていない最大音響強度であることが証明される。以上から分かるように、本発明の適応平均法を使用する際、信号雑音比が高い場合、何回も平均することなく、信号が検出され、信号雑音比が低い場合、信号を検出するにはより多くの平均回数を必要として、上限が設定されるため、信号がない場合、何回平均しても、信号が検出されることはない。
【0034】
図1に示すように、本発明の聴性脳幹反応の自動測定方法は、以下のステップを含む。
開始音響強度から音声刺激を提供し、機器によって対応するABRデータを収集し、
本例は、マウスABR測定データを使用し、実験時の刺激の音響強度は、高音から低音まで(90dBから0dBまで)であり、間隔を5dBとするステップA1と、
適応平均法の演算(モジュール1に対応する)によって、平均回数を増加させるためにデータ収集を継続する必要があるか否か、または収集を中断するか否かを判断する。
適応平均法の演算(以下に詳述する)は、記録回数を徐々に増加させ、ランダムにグループ化して平均する方法を利用して現在のABRデータを任意の二つのグループに分けてかつ平均曲線をそれぞれ計算することによって、この二つのグループの平均曲線の相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを取得し、タイムラグの絶対値がk個のデータポイントよりも小さいか否かを判断することによって、最大反復回数まで(信号が検出されているかまたは最大反復回数に達していても信号がない場合に反復を終了する)、安定したタイムロック信号が存在するか否かを判断する。kは、一つの固定値であり、固定数のデータ記録ポイントに対応し、または、kは、ある比率に基づいて計算して得られる値であり(例えば全てのデータポイントが1%である)、以下には、いずれもk=1を例として説明および実験検証を行う)。実験データは、可聴閾値よりも大きい場合、タイムラグ(lag)の絶対値がk=1よりも低いレベルに維持されることを実証することができる(図6)ステップA2と、
ステップA2でABR信号が検出されているか否かを判断し、信号が検出されている場合、ステップA4を実行し、信号が検出されていない場合、ステップA5を実行するステップA3と、
現在の音響強度が設定された測定した音響強度の最小値(本例では、0dB)に達しているか否かを判断し、測定した音響強度の最小値に達していない場合、現在の音響強度から間隔(5dB)を差し引いた後に得られる新たな音響強度に対して、対応する音声刺激を与え、かつA2の操作を再実行し、測定した音響強度の最小値に達している場合、A6を実行するステップA4と、
連続するP個の音響強度でABR信号が検出されていないか否かを判断し(本例のP値を2とし、実際には状況に応じて調整可能である)、連続するP個の音響強度で信号が検出されていない場合、ステップA6を実行し、そうでなければ、ステップA4の実行に移行するステップA5と、
適応平均法の演算時に使用される反復回数を呼び出し、関数フィッティングによって閾値を取得する。
本例において、各音響強度での反復回数を出力として(図7)、正規化した後にSigmoid関数によってフィッティングし(図8)、
【数3】

係数a、Tを得ることができ、1dB間隔のデータ検証から分かるように(図8におけるイラストに示すように)、f(x)=0.9の場合のx値は、すなわち閾値であり、該結果は、人為的な判断の閾値に合致するステップA6とを含む。
【0035】
ステップA1において、ABRデータの取得および前処理は、以下を含む。
【0036】
(1)動物実験:TDTRZ6/BioSigRZシステムによって、マウス両耳の90から0dB(5dB間隔)までの短い純音(周波数16キロヘルツ、持続時間3ミリ秒)によって励起されるABRデータを収集する(オリジナル信号を20000倍増幅し、かつ50~5000ヘルツのバンドバスフィルタによってフィルタリングする)。各音響強度を500回記録し、刺激信号の速度が21回/秒であり、データ収集周波数が21kHzであり、収集の時間間隔は、音声刺激後0~15ミリ秒である。
【0037】
前記TDTRZ6/BioSigRZシステムにおいて、TDT聴覚誘発電位ワークステーションは、RZ6プロセッサ、前置増幅器とBioSigRZ実験設計分析ソフトウェアによって構成される。ワークステーションは、低インピーダンス電極、針電極、表面電極と連携し、脳幹誘発電位、耳音響放射等を含む各種の生物電気信号を記録することができる。
【0038】
臨床:データは、NIHによって助成される共有記録(www.physionet.org)に由来する。実験条件は、ABRが片耳によって100dBから30dB(5dB間隔)までの刺激音(1kHzまたは4kHzの短い純音であり、刺激速度が24回/秒である)を記録し、被験者の電極配置は、記録電極が前額に配置され、リファレンス電極が刺激耳の同じ側の耳介後方乳突に配置され、地極が刺激耳の反対側の乳突に配置される。各音響強度を1000回記録し、ABR信号を30Hzから3000Hzまでのバンドパスフィルタリングを行い、増幅器で50000倍を増幅した後に記録し、記録機器のサンプリング率が48kHzであり、収集の時間間隔は、音声刺激後の0~15ミリ秒である。上記動物実験と臨床ABRデータの取得、および記載される前処理時の各パラメータは、例に過ぎず、実際には、具体的な応用状況に応じて調整されてもよい。
【0039】
(2)ABR波形に対応する時間間隔に基づき、音声刺激が開始した後に0~6ミリ秒(マウス)または5~15ミリ秒(臨床)の間のABR時間曲線を分析対象として選択する。ここでの時間間隔は、経験値であり、実際の状況に応じて調整されてもよい。
【0040】
(3)筋肉の活動または呼吸によって引き起こされるバックグラウンドノイズは、11マイクロボルトよりも大きいまたは11マイクロボルトよりも小さい時間曲線を削除することによって除去することができる(本ステップでは選択的であり、係るパラメータ値は、使用されるハードウェアの設置に依存する)。
【0041】
(4)smoothingspline(平滑化スプライン)フィッティング関数によって、低周波数バックグラウンドノイズを除去する(本ステップでは選択的であり、例示的な平滑化パラメータは0.5である)。
【0042】
例示的に、取得されるマウスABRデータに対して、上記処理を行った後、各音響強度で350本の曲線を取り、ここでは任意の2グループの曲線の間の相関係数分布を計算することができる。計算式は、以下の通りである。
【数4】

ここでは、A、Bは、単一記録のデータであり、Nは、記録されるデータポイントの数であり、μA、μBは、単一記録の平均曲線であり、σA、σBは、単一記録の標準偏差であり、Mは、反復回数である。
【0043】
各音響強度の相関係数の中央値を取って製図し、可聴閾値よりも高い音響強度に対応する相関係数が、可聴閾値よりも低い場合と比べて大きいことが分かる。
【0044】
従来の方法で、臨床医師によって判断される閾値に基づき、閾値付近に対応する相関係数の中央値を求めて製図し、正常なマウスに対応する曲線を難聴リスクの高いマウスに対応する曲線に位置合わせし、可聴閾値に対応する相関係数(本例では0.01に近似する)を知ることができる。しかしながら異なる実験によって取得される信号雑音比が異なるため(バックグラウンドノイズを低減させることによって測定される相関係数)、得られた曲線間の再現性が低く、閾値を判断する精度が制限される。本発明は、異なる信号雑音比でABR信号を検出するために必要とする最小平均回数が等しくなく、適応平均法の演算によって、異なる測定音響強度の信号雑音比に基づき、平均回数を動的に調整し、これによって実現される聴性脳幹反応の自動測定は、人為的な判断の時に存在する上記問題を効果的に解決することができる。
【0045】
以下に、本発明のステップA2における適応平均法の演算(モジュール1に対応する)の二種類の実施例を紹介する。
【0046】
図2に示すように、入力データタイプが繰り返される単一記録の一つの実施例では、本発明の適応平均法の演算は、
現在収集されたABRデータをランダムに二つのグループに分けて、各グループの平均曲線をそれぞれ計算し、各グループのデータの平均曲線に対応するABR時間曲線(例えば図5において各音響強度での2つの曲線)を取得することができるステップS1と、
二つのグループのそれぞれが平均された後の相互相関関数を計算するステップS2と、
相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを取得するステップS3と、
タイムラグの絶対値とk=1とを比較し、タイムラグの絶対値が1よりも小さい場合、安定したタイムロック信号が検出されていることを表し(図6における黒塗り点に対応する)、タイムラグの絶対値が1よりも小さくない場合、安定したタイムロック信号が検出されていないことを表す(図6における白抜き点に対応する)ステップS4とを含む。
【0047】
本発明は、複数回並行判断することができ、各回上記S1~S4のステップを実行することによって、「バックグラウンドノイズは、非常に偶発的な場合に要求に合致するタイムラグが現れる」という問題の発生を避ける。本例において3回並行判断し、3回は、それぞれランダムにグループ化してavgA、avgB、avgA‘、avgB‘、avgA“、avgB“に平均し、それぞれavgAとavgB、avgA‘とavgB‘、avgA“とavgB“の相互相関係数を計算した後に対応するタイムラグを求め、タイムラグの絶対値が1よりも小さい(データポイント)の判断結果を「1」とし、タイムラグの絶対値が1以上(データポイント)の判断結果を「0」とする場合、さらに以下のフローを含む。
【0048】
S5、3回の判断がいずれも、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されていることを示す場合、すなわち3回の判断A、B、Cに対応する判断結果がいずれも「1」である場合、データの収集を停止してもよく、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されることができ、現在の音響強度で測定に合格したことを表し、
そうでなければ、3回の判断A、B、Cに対応する判断結果がいずれも「1」ではない場合、さらに以下のステップを実行する。
【0049】
S6、該音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、
すなわち、M=Mmaxに合致するか否かを判断し、ここでは、Mmaxは、予め設定された最大反復回数であり、Mは、現在の反復回数であり、各回ステップS1を実行する時にMを1ずつ増加させ、M<Mmaxである場合、反復を継続し、
最大反復回数に達している場合、データの収集を停止してもよく、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されることができず、現在の音響強度で測定に合格しなかったことを表し、最大反復回数に達していない場合、さらに元データに新たに収集されたNグループのデータを加え(本例ではN=50)、現在の音響強度でステップS1~S6のプロセスを繰り返し実行する。
【0050】
図4は、各音響強度で350回平均した後のマウスABR時間曲線であり、図5は、図4の同一のグループのデータを使用し、適応平均法を経た後に取得した結果であり、各音響強度での黒色線/灰色線は、相互相関関数を計算するための二つのグループの平均曲線であり、各音響強度で使用される平均回数は、図7に示される現在の反復回数MとNとの積であり(本例では×50)、図6は、反復において取得された最大相関係数に対応するタイムラグ(絶対値)であり、黒塗り点は、安定したタイムロック信号が検出されていることを表し、白抜き点は、安定したタイムロック信号が検出されていないことを表し、図6において黒塗り点から白抜き点にジャンプする時に対応する音響強度の区間に基づき、本例の可聴閾値が25~30dBの間にあることが分かり、図7は、各音響強度で信号の検出に必要とする反復回数である。信号がないことを連続して2回設ける(最大反復回数に達している)場合、可聴閾値よりも低いことを表し、試験を自動的に終了し、該図における黒塗り点は、実際の測定音響強度であり、白抜き点は、測定を必要としない音響強度である(信号が2回検出されていない場合、原則として測定を終了してもよいためである)。
【0051】
図10に示すように(左のグループと右のグループは、それぞれ動物実験データと臨床実験データに対応する)、医師は、従来の方法で全てのデータの平均曲線を読み取って閾値判断を行う方法と、医師が本発明の適応アルゴリズムの平均回数を読み取って得たデータに対して閾値判断を行う方法と、機器が本発明の適応アルゴリズムの平均回数によって得たデータに対して閾値判断を行う方法と、これら三つの方法で得られた閾値のずれを比較する。図11に示すように(左のグループと右のグループは、それぞれ動物実験データと臨床実験データに対応する)、医師が従来の方法で閾値判断を行う時に必要とする全てのデータの正規化されたデータ数(すなわち記録総数)と、本発明の適応アルゴリズムによって閾値判断を行う時に必要とするデータの正規化されたデータ数とを比較する。
【0052】
図10図11に示すように、複数の医師によって判断される可聴閾値の平均曲線と比べて、本発明の方法によれば、誤差が±5dB内の精度は、基本的には100%である。また、各音響強度がいずれも予め設定された最大平均回数を使用することと比べて、本発明は、各音響強度が信号を検出すると、すぐ次の音響強度の測定を実行するため、閾値判断に寄与しない記録を最大69%減らすことができる。
【0053】
本発明は、さらに関数フィッティングによって、可聴閾値判断の精度をさらに向上させることができる。図8は、正規化された反復回数をSigmoid関数フィッティングおよび補間法によって(ステップA6に対応する)、可聴閾値に対応する音響強度、(挿入図)閾値付近で上下に10dB、間隔が1dBのABR検出結果を得て、本例で取得される閾値は、26dBである。すなわち、測定した音響強度が5dBずつ減少する場合、従来の方法は、5dBの精度しかなかったが、本発明は、関数フィッティングによって1dBに達することができる。
【0054】
平均データのみが導出される状況に対して、図3に示される別の実施例では、本発明の適応平均法の演算(入力データタイプが複数回の平均記録である)と前述実施例との異なる所は、以下の通りである。
【0055】
各回の反復に連続して収集された3グループの平均データを加え(例えば各グループの平均回数が50回であり、グループ数が並行判断の回数に対応する)、前のデータと組み合わせ、重みに従って平均曲線を再計算し、例えば、4回目の反復に対して、
【数5】

avgA(新)は、現在の平均曲線であり、
avgA(旧)は、前回反復の平均曲線であり、
avgA(加)は、新たに加えられる平均曲線であり、
現在の3グループの更新後の平均曲線に対して、二グループ間毎の相互相関関数を計算し、相互相関関数の最大値に対応する3グループのタイムラグを取得し、タイムラグの絶対値とk=1(データポイント)との判断を実行する。3グループの判断がいずれも、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されていることを示す場合、データの収集を停止してもよく、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されることができ、現在の音響強度で測定に成功したことを表し、そうでなければ、さらに該音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、最大反復回数に達している場合、データの収集を停止し、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されることができず、現在の音響強度で測定に成功しなかったことを表し、最大反復回数に達していない場合、さらに元の平均データに新たな平均データを加え、上記プロセスを繰り返す。
【0056】
図9に示すように、本発明は、さらに聴性脳幹反応の自動測定装置を提供し、以下を含む。
入力モジュールであって、各音響強度の刺激で収集されたABRデータを取得し、本装置内に入力し、入力データのタイプは、繰り返される単一記録であってもよく、複数回の平均記録であってもよい。聴覚脳幹誘発電位収集機器に接続されて、被検対象から検出されたABRデータをリアルタイムに取得してもよく、なんらかの記憶機器から実験データを取得してオフライン処理を行ってもよい入力モジュールと、
制御モジュールであって、入力モジュールが相応な音響強度の刺激でのABRデータを取得するように駆動し、例えば、測定の異なる段階に基づき、開始音響強度から測定した音響強度の最小値(本例では90dB~0dB、5dB間隔である)において、それぞれ記録されるABR時間曲線に対応する。リアルタイムデータを取得する時、制御モジュールは、音声刺激発生装置が音響強度を段階的に調整するように駆動し、被検対象に対応する音刺激信号を提供することができ、オフラインデータを取得する時、制御モジュールは、測定プロセスに基づき、入力モジュールがより多くのグループの実験データを取得するように駆動することができる制御モジュールと、
適応平均法演算モジュール(モジュール1に対応する)であって、平均回数を増加させるためにデータ収集の取得を継続する必要があるか否か、または収集を中断するか否かを判断する。入力データのタイプの違いに応じて、適応平均法演算モジュールは、繰り返される単一記録に基づき、図2に示される演算フローを実行してもよく、または複数回の平均記録に基づき、図3に示される演算フローを実行してもよい、適応平均法演算モジュールと、
記憶モジュールであって、適応平均法の演算時に各音響強度で使用される反復回数を保存する記憶モジュールと、
メイン判断モジュールであって、適応平均法演算モジュールによって出力された結果に基づき、適応平均法の演算時にABR信号が検出されているか否かを判断し、かつ、信号が検出されていると判断した場合、さらに現在の音響強度が設定された測定した音響強度の最小値に達しているか否かを判断し、または信号が検出されていないと判断した場合、さらに連続するP個の音響強度でABR信号が検出されていないか否かを判断する。
ここでは、測定した音響強度の最小値に達していないと判断した場合、メイン判断モジュールは、制御モジュールに指令を出し、制御モジュールによってさらに入力モジュールが新たな音響強度で対応するABRデータを取得するように駆動し(新たな音響強度は、現在の音響強度から間隔(5dB)を差し引いた後に得られるものである)、または、測定した音響強度の最小値に達していると判断した場合、メイン判断モジュールは、制御モジュールに指令を出し、制御モジュールによって記憶モジュールから適応平均法の演算時に使用される反復回数を呼び出し、関数フィッティングモジュールに送信して関数フィッティングによって閾値を取得するメイン判断モジュールと、を含む。
【0057】
本例の関数フィッティングモジュールは、適応平均法の演算プロセスにおける各音響強度での反復回数に基づき(図7)、正規化した後にSigmoid関数によってフィッティングを行い(図8)、かつ補間法によって可聴閾値に対応する音響強度を得る。
【0058】
出力モジュールは、他のモジュールから対応するプロセスパラメータ、演算結果または判断結論等の情報を取得することができ、必要に応じて測定の各段階のデータまたはグラフ(図4図8)を出力し、技術者にとって記録を観察または保存するのに便利である。例えば、入力モジュールによって取得される各音響強度の刺激で収集されたABRデータに基づき、各グループのデータを平均した後のABR時間曲線を提供することができる。適応平均法の演算の結果に基づき、各音響強度で相互相関関数を計算するための二つのグループの平均曲線、安定したタイムロック信号が検出されている、または検出されていない場合に反復して取得される最大相関係数に対応するタイムラグ、可聴閾値に対応する音響強度の間隔、各音響強度で信号を検出するために必要とする反復回数、正規化された反復回数関数がフィッティングおよび補間法によって得られる閾値等を提供することができる。
【0059】
ここでは、適応平均法演算モジュールは、繰り返される単一記録に基づき、図2に示される演算フローを実行する時、制御モジュールにデータを収集する指令を出し(制御モジュールは、これによって入力モジュールが相応な音響強度、相応なタイプの測定データを取得するように駆動する)、適応平均法演算モジュールは、現在収集されたABRデータをランダムに二つのグループに分けて平均曲線をそれぞれ計算した後に相互相関関数の最大値に対応するタイムラグを計算し、タイムラグの絶対値とk=1(データポイント)とを比較し、タイムラグの絶対値が1よりも小さい場合、安定したタイムロック信号が検出されていることを表し、タイムラグの絶対値が1以上の場合、安定したタイムロック信号が検出されていないことを表す。
【0060】
好ましくは、適応平均法演算モジュールは、複数回並行判断することができ、並行判断の各回がいずれも、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されていることを示す場合、制御モジュールにデータの収集を停止する指令を出し(制御モジュールは、これによって入力モジュールがデータの取得を停止するように駆動する)、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出できないことを表し、現在の音響強度で測定に成功しなかった信号を返し、
そうでなければ、各回の並行判断が必ずしも、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されていることを示していない場合、さらに該音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断し、最大反復回数に達している場合、制御モジュールにデータの収集を停止する指令を出し、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出できないことを表し、現在の音響強度で測定に成功しなかった信号を返すことができ、最大反復回数に達していない場合、さらに制御モジュールに新たなデータを加える指令を出し(制御モジュールは、これによって入力モジュールがデータの取得を継続するように駆動し、本例では新たに収集された50グループのデータを加える)、元データに新たに収集されたデータを加えた後、適応平均法演算モジュールは、現在の音響強度で上記演算プロセスを繰り返し実行する。
【0061】
または、適応平均法演算モジュールは、複数回の平均記録に基づき、図3に示される演算フローを実行する時、制御モジュールにデータを収集する指令を出し(制御モジュールは、これによって入力モジュールが相応な音響強度、相応なタイプの測定データを取得するように駆動する)、適応平均法演算モジュールは、各回の反復に連続して収集された3グループの平均データを加え(例えば各グループの平均回数が50回であり、グループ数が並行判断の回数に対応する)、前のデータと組み合わせ、重みに従って平均曲線を再計算し、現在の各グループの更新後の平均曲線に対して、二グループ間毎の相互相関関数を計算し、相互相関関数の最大値に対応する複数のグループのタイムラグを取得し、タイムラグの絶対値とk=1(データポイント)との判断を実行する。
【0062】
各グループの判断がいずれも、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されていることを示す場合、制御モジュールにデータの収集を停止する指令を出し(制御モジュールは、入力モジュールがデータの取得を停止するように駆動する)、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出されることができることを表し、現在の音響強度で測定に成功した信号を返すことができ、そうでなければ、さらに該音響強度での最大反復回数に達しているか否かを判断する。最大反復回数に達している場合、制御モジュールにデータの収集を停止する指令を出し、現在の音響強度で安定したタイムロック信号が検出できないことを表し、現在の音響強度で測定に成功しなかった信号を返すことができ、最大反復回数に達していない場合、さらに制御モジュールに新たなデータを加える指令を出し、元の平均データに新たな平均データを加えた後、適応平均法演算モジュールは、現在の音響強度で上記演算プロセスを繰り返す。
【0063】
本発明の聴性脳幹反応自動測定装置の入力モジュール、制御モジュール、適応平均法演算モジュール、記憶モジュール、メイン判断モジュール、関数フィッティングモジュール、出力モジュール等は、以下のように使用することが理解できる。この場合、必要なソフトウェアとハードウェアとの連携によって、各モジュールの機能を独立して実現したり、またはいくつかの強力な機能の処理ユニットは、複数のモジュールの機能を実現したりすることができるが、本発明は、これに限定されない。
【0064】
本発明の内容については、上記の好ましい実施例形態を通じて詳細に説明してきたが、上記の説明は、本発明を限定するものと見なされるべきではないことを認識されたい。当業者は、上記内容を読んだ後、本発明に対して行う様々な修正および置換が明らかになるだろう。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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