(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20241108BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
H05K7/20 B
(21)【出願番号】P 2023187831
(22)【出願日】2023-11-01
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡伸
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-124189(JP,A)
【文献】特開2003-029878(JP,A)
【文献】特開2000-020171(JP,A)
【文献】特開2010-251386(JP,A)
【文献】特開2013-254791(JP,A)
【文献】特開2020-173662(JP,A)
【文献】特開平11-224990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/20
H05K7/20
H01L23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1材料で形成された筐体部材を有する筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
前記筐体内に設けられ、前記発熱体の熱を放熱するヒートシンクと、
を備え、
前記筐体部材は、少なくとも一部が前記ヒートシンクと上下にオーバーラップする位置の表面に凹部を有し、
前記凹部に配置され、前記第1材料よりも熱伝導率が低い第2材料で形成されたプレート状部材を備え
、
前記プレート状部材は、断熱層を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項
1に記載の電子機器であって、
前記断熱層は、空気層又は断熱材で構成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項
2に記載の電子機器であって、
前記断熱層は、前記プレート状部材の一面側を窪ませることで、前記空気層となる空間、又は前記断熱材を配置する空間を形成したものである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項
1~
3のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記プレート状部材は、
前記断熱層が設けられた第1部分と、
前記第1部分よりも剛性が高い第2部分と、
を有し、
前記プレート状部材は、前記筐体部材の一縁部に沿って延在するように設けられると共に、該プレート状部材の長手方向での端部に前記第2部分が設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項
4に記載の電子機器であって、
さらに、前記筐体に搭載され、前記筐体部材の表面に臨むキーボード装置を備え、
前記プレート状部材は、前記筐体部材の表面における前記キーボード装置の後方に配置されると共に、前記キーボード装置の左右幅方向に沿って延在している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項
5に記載の電子機器であって、
前記プレート状部材の長手方向での端面は、前記キーボード装置の前記左右幅方向での側部に沿って該キーボード装置の前後に延びる仮想直線の延長線上に略一致する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記第1材料は、金属材料であり、
前記第2材料は、樹脂材料である
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に発熱体を搭載する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPUやGPU等の発熱体を搭載している。このような電子機器は、筐体内にファンやヒートシンクを搭載し、発熱体が発生する熱を吸熱して外部に放熱する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒートシンクは発熱体から輸送された熱を放熱するものであるため、その周囲は他より高温になる。例えば特許文献1の構成は、キーボード装置の後方にヒートシンクが配置されているため、キーボード装置の後側の筐体表面も高温になる。このため、この部分が局所的に高温となり、熱設計のボトルネックになる場合がある。また、この部分は、使用中の電子機器をユーザが移動させようとした際に手で把持する場合もあり、この観点からも表面温度の抑制が求められている。すなわち、上記のような電子機器では、筐体の表面温度を抑えることができれば熱設計電力(TDP:Thermal Design Power)や使用感の向上が可能となる。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、筐体の表面温度を抑えることができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、第1材料で形成された筐体部材を有する筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記筐体内に設けられ、前記発熱体の熱を放熱するヒートシンクと、を備え、前記筐体部材は、少なくとも一部が前記ヒートシンクと上下にオーバーラップする位置の表面に凹部を有し、前記凹部に配置され、前記第1材料よりも熱伝導率が低い第2材料で形成されたプレート状部材を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、筐体の表面温度を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、筐体の後縁部及びその周辺部の拡大斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、プレート状部材を表面側から見た斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、プレート状部材を裏面側から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、第1変形例に係るプレート状部材を備える筐体の模式的な側面断面図である。
【
図8】
図8は、第2変形例に係るプレート状部材を備える筐体の模式的な側面断面図である。
【
図9】
図9は、第3変形例に係るプレート状部材を裏面側から見た斜視図である。
【
図10】
図10は、ヒートシンクの配置が異なる構成例の筐体の模式的な正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、本実施形態の電子機器10は、クラムシェル型のノート型PCである。電子機器10は、蓋体11と筐体12をヒンジ14で相対的に回動可能に連結した構成である。本実施形態ではノート型PCの電子機器10を例示している。本発明の電子機器はノート型PC以外、例えばタブレット型PC、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0011】
蓋体11は、薄い扁平な箱状の筐体である。蓋体11はディスプレイ16を搭載している。ディスプレイ16は、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイである。
【0012】
筐体12は、薄い扁平な箱体である。筐体12の上面(表面12a)にはキーボード装置18及びタッチパッド19が臨んでいる。以下、筐体12及びこれに搭載された各構成要素について、オペレータがキーボード装置18を操作する姿勢を基準とし、奥行方向を前後、厚み方向を上下、幅方向を左右と呼んで説明する。これら各方向は、説明の便宜上定めた方向であり、電子機器10の使用状態又は設置姿勢等によって変化する場合も当然にあり得る。
【0013】
筐体12は、上面及び四周側面を形成する筐体部材20と、下面を形成するカバー材21とで構成されている。筐体部材20は、筐体12の表面12aを形成するカバープレート20Aの四周縁部に立壁20Bを形成したものである。このため筐体部材20は下面が開口した略バスタブ形状を有する。カバー材21は略平板形状を有し、筐体部材20の下面開口を閉じる蓋となる。筐体部材20及びカバー材21は厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。ヒンジ14は、筐体12の後縁部に形成された凹状のヒンジ配置溝12bに設置され、筐体12と蓋体11とを連結する。
【0014】
筐体部材20は、表面12aの一部が帯板状のプレート状部材22によって形成されている。筐体部材20の表面12aには、浅い溝状の凹部20aが設けられている(
図3、
図5及び
図6参照)。本実施形態の凹部20aは表面12aの後縁部に沿って左右方向に延在している。プレート状部材22は凹部20aに埋め込まれるように配置され、固定されている。プレート状部材22及びその周辺部の具体的な構成例は後述する。
【0015】
図2は、筐体12の内部構造を模式的に示す平面図である。
図2は、カバー材21を取り外して筐体部材20の内部を下面側から見た図である。
【0016】
図2に示すように、筐体12の内部には、冷却モジュール24と、マザーボード25と、バッテリ装置26とが収容されている。筐体12の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0017】
マザーボード25は、電子機器10のメインボードとなるプリント基板である。マザーボード25は、筐体12の後寄りに配置され、左右方向に延在している。バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード25の前寄りに配置され、左右方向に延在している。
【0018】
マザーボード25は、例えばCPU(Central Processing Unit)25a及びGPU(Graphics Processing Unit)25bを実装している。マザーボード25は、さらに電源コンポーネント25c,25d及びメモリ25eを実装している。電源コンポーネント25cは、例えばCPU25aの後側に並列された複数のチップで構成され、CPU25aの電源となる。電源コンポーネント25dは、例えばGPU25bの後側に並列された複数のチップで構成され、GPU25bの電源となる。メモリ25eは、例えばGPU25bの前側に並列された複数のチップで構成され、GPU25bの記憶装置となる。マザーボード25には、さらにメモリモジュール25fや通信モジュール等の各種電子部品が実装される。メモリモジュール25fは、例えばCAMM(Compression Attached Memory Modul)やDIMM(Dual Inline Memory Module)である。マザーボード25は、例えば上面が筐体部材20に対する取付面となり、下面がCPU25a等の実装面となる。
【0019】
CPU25a及びGPU25bは、筐体12内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体である。冷却モジュール24は、CPU25a及びGPU25bが発生する熱を吸熱及び拡散し、筐体12外へと排出することができる。電源コンポーネント25c,25d、メモリ25e及びメモリモジュール25fは、CPU25a及びGPU25bに次ぐ発熱量の発熱体である。本実施形態の冷却モジュール24は、これら電源コンポーネント25c等も冷却することができる。
【0020】
図2に示すように、本実施形態の冷却モジュール24は、2本1組のヒートパイプ28と、左右一対のヒートシンク29,29と、左右一対のファン30,30とを備える。ヒートパイプ28は、一部がCPU25a及びGPU25bと熱的に接続され、CPU25a及びGPU25bが発する熱を各ヒートシンク29へと高効率に輸送する。左右のヒートシンク29は、左右のファン30の後面(吐出口30a)に対向配置される。これによりファン30の吐出口30aから送られる空気がヒートシンク29を通過し、筐体排気口32から筐体12の外部に排出される。
【0021】
筐体排気口32は、筐体部材20の後縁部の立壁20Bのうち、ヒンジ配置溝12bに対応する位置に形成されている。筐体排気口32は、例えば立壁20Bの長手方向に沿って並ぶ複数の窓状の開口部32aによって構成される(
図3参照)。筐体排気口32を形成する開口部32aは、ヒートシンク29の直後に対面するように配置されている。
【0022】
ところで、本実施形態の筐体排気口32は、立壁20Bの長手方向に沿って延在している。そこで、各ファン30は、それぞれの筐体12の中央側を向いた側面に側面吐出口30bを有してもよい(
図2参照)。側面吐出口30bから吐出された空気はマザーボード25の表面に沿って流れつつ、CPU25a、GPU25b、電源コンポーネント25c,25d、メモリ25e及びメモリモジュール25f等の各発熱体を冷却する。この空気は、筐体排気口32の左右方向での中央付近を通して筐体12外に排出することができる。冷却モジュール24の構成は上記に限定されず、各種構成を採用できる。側面吐出口30bは省略されてもよい。
【0023】
次に、プレート状部材22及びその周辺部の具体的な構成例を説明する。
【0024】
図3は、筐体12の後縁部及びその周辺部の拡大斜視図である。
図4Aは、プレート状部材22を表面22a側から見た斜視図である。
図4Bは、プレート状部材22を裏面22b側から見た斜視図である。
図5は、筐体12の模式的な正面断面図である。
図6は、筐体12の模式的な側面断面図である。
図5及び
図6は、筐体12をプレート状部材22を通過する鉛直平面で切断した断面構造を示している。
【0025】
先ず、筐体部材20は樹脂材料(プラスチック材料)又は金属材料で形成することができる。従来、このような筐体部材20の材質にはプラスチックが多用されていたが、近年は金属材料を使用することが多い。筐体12の薄型化に伴い、筐体部材20は高剛性の金属材料で形成することが好ましいからである。本実施形態の筐体部材20は、例えばマグネシウム合金やアルミニウム合金等の金属材料で形成されている。カバー材21も筐体部材20と同一又は同様な材料で形成するとよい。
【0026】
図3~
図6に示すように、凹部20aは、筐体部材20の後縁部に沿って左右方向に延在した浅い溝状の窪みである。凹部20aは、表面12aにおけるキーボード装置18の後側に隣接するベゼル部分(後部ベゼル)に形成されている。凹部20aの上下方向の深さは限定されないが、例えば2mmである。凹部20aの深さは、筐体12の薄型化を妨げない深さであることが望ましい。凹部20aの長手方向の幅は、キーボード装置18の左右幅と略一致することが好ましい。
【0027】
凹部20aは、少なくとも一部がヒートシンク29と上下にオーバーラップする位置に設けられる。本実施形態の凹部20aは、長手方向での左右端部付近がそれぞれ左右のヒートシンク29とオーバーラップしている。
【0028】
次に、本実施形態のプレート状部材22は、例えばPC-ABSアロイ等の樹脂材料で形成することができる。プレート状部材22を形成する材料は、筐体部材20を形成する材料よりも熱伝導率の低い材料である必要がある。後述するプレート状部材22による断熱効果を得るためである。筐体部材20は、例えばアルミニウム製である場合の熱伝導率は236(W/m・k)程度であり、マグネシウム製である場合の熱伝導率は156(W/m・k)程度である。プレート状部材22は、例えばPC-ABSアロイである場合の熱伝導率は0.2(W/m・k)程度であり、他の樹脂材料の場合も同程度となる。
【0029】
図3~
図6に示すように、プレート状部材22は、凹部20aに埋め込まれるように設置される。これによりプレート状部材22は、筐体部材20の表面12aにおけるキーボード装置18の後方に配置されると共に、キーボード装置18の左右幅方向に沿って延在する。プレート状部材22は、その外縁形状が凹部20aの内縁形状と略一致することが好ましく、その厚みが凹部20aの深さと略一致することが好ましい。これによりプレート状部材22は、その表面22aが筐体部材20の表面12aと略面一に設置される。プレート状部材22の固定方法は限定されないが、例えば裏面22bを凹部20aの底面20a1に対して両面粘着テープや粘着剤等を用いて固定することができる。プレート状部材22は筐体部材20と一体成形によって固定してもよい。
【0030】
上記したように、凹部20aの長手方向幅はキーボード装置18の左右幅と略一致することが好ましい。そうすると筐体12では、プレート状部材22の長手方向での端面22c,22dと、キーボード装置18の左右幅方向での側部18a,18bとの左右方向位置が略一致することになる(
図1及び
図3参照)。つまり端面22c,22dは、側部18a,18bに沿って前後に延びる仮想直線Lの延長線上に略一致する。これによりオペレータ等が電子機器10を正面から見た際、プレート状部材22の幅がキーボード装置18の幅と略一致する。このため、プレート状部材22が表面22a上で目立たつことが抑えられ、プレート状部材22が筐体12の意匠性を損なうことが抑えられる。
【0031】
プレート状部材22は、断熱層34aを有する第1部分34と、第1部分34と隣接する第2部分35とを有する構成とすることができる。
【0032】
第1部分34は、断熱層34aを有することで、第2部分35よりもプレート状部材22の厚み方向での断熱性能を高めた部分である。断熱層34aはプレート状部材22の裏面22b側を厚み方向に窪ませた凹状の空間Sによって形成される。
図4A~
図6に示す構成例の断熱層34aは、空間S内の空気によって断熱効果を発揮する空気層(空気断熱層)Aである。断熱層34a(空気層A)の厚みは限定されないが、本実施形態ではプレート状部材22の厚みが1mm~2mmであり、断熱層34aの厚みは0.5mm~1mmとしている。
【0033】
第1部分34(断熱層34a)は、少なくとも一部がヒートシンク29と上下にオーバーラップする位置に設けられることが好ましい。これにより第1部分34は、CPU25aやGPU25bからヒートパイプ28で輸送され、ヒートシンク29で放熱される熱がプレート状部材22の裏面22b側から表面22a側へと伝わることを抑制し、表面22aの温度上昇を一層抑制する。なお、本実施形態の断熱層34aは、筐体排気口32の左右方向での中央付近を跨ぐように配置されている。このため、断熱層34aは、ファン30の側面吐出口30bから吐出されて筐体排気口32の中央付近を通過する高温の空気によって表面22aが温度上昇することも抑制できる。
【0034】
第2部分35は、第1部分34よりも剛性が高い部分である。第2部分35は、空間Sを持たず、プレート状部材22を形成する樹脂材料の塊によって形成されている。これにより第2部分35は第1部分34よりも高剛性である。本実施形態の第2部分35は、プレート状部材22の長手方向での両端部、つまり端面22c,22dから所定の長さ範囲にそれぞれ設けられている。これにより
図3及び
図5に示すように、筐体12は、左右の側面(左右の立壁20B)から近い位置には剛性の高い第2部分35が配置されていることになる。
【0035】
第2部分35がある位置、つまりキーボード装置18の後側のベゼル部分の左右端部は、例えば蓋体11を筐体12から開いた使用態様で電子機器10を持ち運ぶ際にオペレータ等が手で把持することがある位置である。プレート状部材22は、この位置に高剛性の第2部分35を配置している。これにより電子機器10は、
図5に示すように手Hで筐体12を上下に挟むように掴んだ際、プレート状部材22が撓みや変形を生じることが抑制される。つまり第2部分35はプレート状部材22の補強部として機能する。
【0036】
一方で、第2部分35は、断熱層34aを持たないため、第1部分34よりも断熱性能は劣る。そして本実施形態の電子機器10は、ヒートシンク29が左右側方にそれぞれ配置されているため、その直上に第2部分35が配置されることを避けることが難しい。しかしながら、第2部分35も第1部分34と同一の樹脂材料で形成され、金属材料で形成された筐体部材20に比べて顕著に高い断熱性能を有するため、十分な断熱性能は期待できる。
【0037】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、第1材料(例えば金属材料)で形成された筐体部材20を有する筐体12と、筐体12内に設けられ、発熱体であるCPU25a等の熱を放熱するヒートシンク29とを備える。筐体部材20の表面12aには、少なくとも一部がヒートシンク29と上下にオーバーラップする位置に凹部20aが設けられる。さらに電子機器10は、凹部20aに設けられ、第1材料よりも熱伝導率が低い第2材料(例えば樹脂材料)で形成されたプレート状部材22を備える。
【0038】
このように電子機器10は、筐体12の表面12aのうち、少なくとも一部がヒートシンク29と上下にオーバーラップする部分に筐体部材20よりも熱伝導率が低い材料で形成されたプレート状部材22を備える。つまり電子機器10は、筐体12内で特に高温になり易いヒートシンク29とオーバーラップする位置に熱伝導率が低く断熱性能が高いプレート状部材22を配置している。これにより電子機器10は、ヒートシンク29とオーバーラップする筐体12の表面12aに局所的な高温部を生じることを抑制でき、熱設計電力を向上させることができる。その結果、電子機器10は、例えばプレート状部材22を持たない従来の電子機器と同一の処理能力を確保しようとする場合は、ファン30の回転数を落として静音化を図ることができる。また電子機器10は、プレート状部材22によって表面22aの温度が抑制されることで、オペレータ等が筐体12を手Hで把持した際に熱さを感じることが抑制され、使用感も向上する。
【0039】
ここで、プレート状部材22を備える本実施形態の電子機器10(実施例)と、プレート状部材22を持たない従来の電子機器(比較例)との比較実験の結果について説明する。実験は、CPU25aの出力を45(W)とし、GPU25bの出力を80(W)とし、ファン30のノイズを48(dBA)で一定とした条件で筐体12の各部温度を測定した。その結果、実施例では筐体12の後部ベゼルでの表面12aの温度が41.2(℃)であったのに対し、比較例での後部ベゼルでの表面温度は51.2(℃)であった。つまり実施例は比較例に比べて10(℃)の温度抑制効果が認められた。
【0040】
プレート状部材22は断熱層34aを有することもできる。そうするとプレート状部材22の断熱性能が一層向上し、表面12aでの温度上昇を一層抑制することができる。
【0041】
プレート状部材22は、断熱層34aを有する第1部分34と、第1部分34よりも剛性が高い第2部分35とを有することもできる。この際、プレート状部材22は筐体部材20の後縁部に沿って延在しており、第2部分35は少なくともプレート状部材22の長手方向での端部に設けられていることが好ましい。そうすると、プレート状部材22は、断熱層34aを有する第1部分34によって筐体12の表面12aでの温度上昇を一層抑制することができる。さらにプレート状部材22は、その長手方向での端部に剛性の高い第2部分35を備えることで、筐体12の側面に近い位置に高剛性の第2部分35を配置できる。そうすると電子機器10は、オペレータ等が手Hで筐体12を把持した際のプレート状部材22が撓みや変形を生じることを抑制できる。
【0042】
図7は、第1変形例に係るプレート状部材22Aを備える筐体12の模式的な側面断面図である。
図7において、
図1~
図6に示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略し、以下の各図においても同様とする。
【0043】
図7に示すプレート状部材22Aは、
図4A~
図6に示すプレート状部材22と比べて、裏面22bから下方に突出した一対の脚部38,38を有する点が相違する。脚部38は、プレート状部材22Aの短手方向(前後方向)での両端部からそれぞれ下方に向かってスカート状に突出している。脚部38はプレート状部材22Aの長手方向に沿って延在していてもよい。一対の脚部38,38は、第1部分34では断熱層34aを跨ぐように配置され、第2部分35では裏面22bの前後端部をそれぞれ突出させた構成とすることができる。
図7に示すように、プレート状部材22Aが設置される凹部20aは、各脚部38が挿入される一対の溝部39,39を有する。溝部39は凹部20aの底面20a1の前後縁部を窪ませたものであり、凹部20aの長手方向に沿って延在している。
【0044】
このようなプレート状部材22Aは、各脚部38が各溝部39にそれぞれ挿入されることで筐体部材20に対して一層強固に固定できる。脚部38は溝部39の内壁に対して粘着剤等で固定してもよい。
【0045】
図8は、第2変形例に係るプレート状部材22Bを備える筐体12の模式的な側面断面図である。
【0046】
図8に示すプレート状部材22Bは、
図4A~
図7で示したプレート状部材22,22Aと比べて、断熱層34aが空気層Aではなく、空間Sに充填された断熱材40によって形成されている点が異なる。断熱材40は、例えば発泡ウレタン等を用いることができる。
【0047】
プレート状部材22Bは、断熱材40を備えることで、断熱材40の厚みや材質によっては空気層Aよりも高い断熱性能が得られる。またプレート状部材22Bは、空間Sに断熱材40を充填したことで第1部分34での剛性が向上するという利点もある。一方、空気層Aは断熱材40が不要であるため部品点数やコストの削減効果がありながらも断熱材40と同等以上の断熱効果が期待できる。
【0048】
図9は、第3変形例に係るプレート状部材22Cを裏面22b側から見た斜視図である。
【0049】
図9に示すプレート状部材22Cは、
図4A~
図8に示すプレート状部材22,22A,22Bと比べて、第2部分35に複数のリブ42を設け、各リブ42で区画された複数の断熱層35aを備える点が異なる。断熱層35aは、上記した断熱層34aと同様でよく、例えば空気層Aや断熱材40によって形成することができる。プレート状部材22Cは、第2部分35にも断熱層35aが形成されることで、第2部分35での断熱性能が一層向上する。一方で、プレート状部材22Cは、断熱層35aと隣接するリブ42を備えるため、第2部分35の高剛性は確保することができる。
【0050】
図10は、ヒートシンク29の配置が異なる構成例の筐体12の模式的な正面断面図である。
【0051】
図10に示すように、ヒートシンク29は筐体12内の後縁部に沿う位置で左右方向での中央付近に配置される場合もある。この場合、プレート状部材22(22A~22C)は、断熱層34aがヒートシンク29を左右方向に跨ぐように配置することもできる。そうするとプレート状部材22(22A~22C)は、ヒートシンク29の直上範囲の全てを断熱層34aで覆うことができ、表面12aの温度上昇を一層抑制することができる。
【0052】
ところで、ヒートシンク29は、筐体12の後縁部ではなく、例えば左右の側縁部に沿って配置される場合もある。この場合、プレート状部材22(22A~22C)は、筐体12の左右の側縁部に沿って前後方向に延在するように設置するとよい。
【0053】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10 電子機器
11 蓋体
12 筐体
18 キーボード装置
20 筐体部材
22,22A~22C プレート状部材
25a CPU
25b GPU
29 ヒートシンク
32 筐体排気口
34 第1部分
34a,35a 断熱層
35 第2部分
【要約】
【課題】筐体の表面温度を抑えることができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、第1材料で形成された筐体部材を有する筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記筐体内に設けられ、前記発熱体の熱を放熱するヒートシンクとを備える。前記筐体部材は、少なくとも一部が前記ヒートシンクと上下にオーバーラップする位置の表面に凹部を有する。電子機器は、前記凹部に配置され、前記第1材料よりも熱伝導率が低い第2材料で形成されたプレート状部材を備える。
【選択図】
図3