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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/28 20060101AFI20241108BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20241108BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241108BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01L21/28 301R
H01L29/44 S
H01L21/28 B
H01L29/78 652Q
H01L29/78 658F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023503858
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008577
(87)【国際公開番号】W WO2022186192
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2021032617
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田原 雅司
(72)【発明者】
【氏名】砂本 昌利
(72)【発明者】
【氏名】上野 隆二
(72)【発明者】
【氏名】中村 祥太郎
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-251719(JP,A)
【文献】特開2017-059636(JP,A)
【文献】特開2001-177096(JP,A)
【文献】特開2011-219828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28
H01L 29/41
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子の製造方法であって、
半導体チップの少なくとも一方の主面に電極を形成する第1工程と、
前記電極上に第1接合用電極を形成する第2工程と、
前記第1接合用電極上に第2接合用電極を形成する第3工程と、を備え、
前記第1工程において、前記電極の前記第1接合用電極側の表面に凸部が形成され、
前記第2工程において、前記第1接合用電極の前記第2接合用電極側の表面が平滑に形成され、
前記第3工程において、前記第2接合用電極の前記第1接合用電極と反対側の表面が平滑に形成され、
前記第1接合用電極は、無電解ニッケルめっき法によって形成され、
前記無電解ニッケルめっき法は、4.0μm/hr以上10μm/hr以下のニッケルの析出速度で無電解ニッケルめっき処理を行う第1無電解ニッケルめっき工程と、10μm/hr超15μm/hr以下のニッケルの析出速度で無電解ニッケルめっき処理を行う第2無電解ニッケルめっき工程と、を備え、
前記第2接合用電極側の表面が平滑になるまで前記無電解ニッケルめっき法が行なわれる、製造方法。
【請求項2】
前記電極はアルミニウムまたはアルミニウム合金を含み、
前記第1接合用電極は、ニッケル、ニッケルリンまたはニッケルボロンを含み、
前記第2接合用電極は、金を含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2接合用電極は、多層からなる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2接合用電極における多層の最下層は、パラジウム、パラジウムリンまたはパラジウム合金を含み、
前記第2接合用電極における多層の最上層は、金を含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記半導体素子は、表電極と裏電極とを備える表裏導通型の半導体素子であり、
前記電極は、前記表電極を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1接合用電極および前記第2接合用電極が、前記裏電極上にも形成される、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1接合用電極は、前記無電解ニッケルめっき法およびCMP法をこの順に行うことによって形成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
半導体素子の製造方法であって、
半導体チップの少なくとも一方の主面に電極を形成する第1工程と、
前記電極上に第1接合用電極を形成する第2工程と、
前記第1接合用電極上に第2接合用電極を形成する第3工程と、を備え、
前記第1工程において、前記電極の前記第1接合用電極側の表面に凸部が形成され、
前記第2工程において、前記第1接合用電極の前記第2接合用電極側の表面が平滑に形成され、
前記第3工程において、前記第2接合用電極の前記第1接合用電極と反対側の表面が平滑に形成され、
前記第1接合用電極は、無電解ニッケルめっき法およびCMP法をこの順に行うことによって形成される、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体素子、電力変換装置および半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表裏導通型の半導体素子(特に、IGBTやダイオードといった電力変換用のパワー素子)を半導体基板に実装する場合、半導体素子の裏側は半導体基板とはんだ付けによって接合され、半導体素子の表側では、アルミニウム合金等からなる電極(表電極)がアルミニウム等のワイヤボンディングによって配線回路等に接合されていた。
【0003】
しかし、現在では、製造時間の短縮と材料費削減のため、アルミニウム合金や銅等からなる電極を半導体素子の表側に直接はんだ付けする実装方法、または、銅のワイヤボンド法が採用されている。はんだ接合時の応力緩和および電極消耗を防ぐため半導体素子の表面のアルミニウム合金等の電極(表電極)上に、ニッケル、金、銅等の接合用電極層を1μm程度より厚く形成できることが要望されている。
【0004】
しかし、蒸着やスパッタといった真空成膜法で半導体素子の表側に接合用電極層を形成する場合、アルミニウム合金等の電極上にだけパターニング成膜することは難しい。また真空成膜法による膜の厚みは通常1.0μm程度以下であり、接合用電極層の厚みの増大を図ろうとすると、めっき法よりも桁違いに成膜に時間がかかるため、製造コストが嵩んでしまう。そのため、アルミニウム合金等からなる電極上に選択的に接合用電極層を形成でき、低コストかつ高速で1.0μm程度より厚い接合用電極層を形成できる無電解めっき法が注目されている。
【0005】
特許文献1(特開2005-19829号公報)では、半導体基板と電極との間に層間絶縁膜によるコンタクトホールを意図的に設け、その形状を利用して、電極の表面にコンタクトホールと同一形状の凹部が一様に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-19829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
なお、特許文献1に記載されるような方法で、電極の表面に凹凸部を形成する場合、ニッケルめっき層および金めっき層の表面に凹凸が生じる結果、ニッケルめっき層および金めっき層の接合時にボイドが発生し、接合部の密着性が低下するため、半導体素子の長期信頼性を向上させることは難しいと考えられる。
【0008】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、半導体素子の長期信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
半導体チップと、
前記半導体チップの少なくとも一方の主面に設けられた電極と、
前記電極上に設けられた第1接合用電極と、
前記第1接合用電極上に設けられた第2接合用電極と、を備え、
前記電極は、前記第1接合用電極側の表面に凸部を有し、
前記第1接合用電極において、前記第2接合用電極側の表面は平滑であり、
前記第2接合用電極において、前記第1接合用電極と反対側の表面は平滑である、半導体素子。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、半導体素子の長期信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態1および2における半導体素子の断面概略図である。
図2図2は、実施の形態1および2における半導体素子の製造方法のフロー図である。
図3図3は、実施の形態1および2における半導体素子の製造方法を説明するための断面概略図である。
図4図4は、実施の形態1および2における半導体素子の製造方法を説明するための断面概略図である。
図5図5は、実施の形態1および2における半導体素子の製造方法を説明するための断面概略図である。
図6図6は、実施の形態1および3における無電解めっきのフロー図である。
図7図7は、実施の形態1における半導体素子の製造方法を説明するための断面概略図である。
図8図8は、実施の形態1および2に関する従来の半導体素子の断面概略図である。
図9図9は、実施の形態2および4における無電解めっきのフロー図である。
図10図10は、実施の形態2における半導体素子の製造方法を説明するための断面概略図である。
図11図11は、実施の形態3および4における半導体素子の断面概略図である。
図12図12は、実施の形態3および4における半導体素子の製造方法のフロー図である。
図13図13は、実施の形態3および4に関する従来の半導体素子の断面概略図である。
図14図14は、実施の形態5における半導体素子の断面概略図である。
図15図15は、実施の形態5における無電解めっきのフロー図である。
図16図16は、実施の形態5における従来の半導体素子の断面概略図である。
図17図17は、実施の形態6の電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について説明する。なお、図面において、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
【0013】
実施の形態1.
<半導体素子>
図1を参照して、本実施の形態の半導体素子は、
半導体チップ1と、
半導体チップ1の表側(一方の主面)に配線層として設けられた電極4(電極層)と、
電極4上(半導体チップ1と反対側の表面)に設けられた第1接合用電極6と、
第1接合用電極6上(半導体チップ1と反対側の表面)に設けられた第2接合用電極7と、を備える。
【0014】
電極4は、第1接合用電極6側の表面に凸部を有し、
第1接合用電極6において、第2接合用電極7側の表面は平滑であり、
第2接合用電極7において、第1接合用電極6と反対側の表面は平滑である。
【0015】
図1において、半導体チップ1の裏側(電極4と反対側の表面)には裏電極5(裏電極層)が設けられている。
【0016】
電極4の凸部の高さは、1.0μm以上であることが好ましい。電極4の凸部の高さは、以下の方法により算出することが可能である。すなわち、集束イオンビーム装置(FIB装置)によりガリウムイオンビームを照射して得た任意の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて5000倍で観察する。観察される凸部のうち、任意の10点の高さを測定して、その平均値を電極4の凸部の高さとみなすことができる。
【0017】
第1接合用電極6における第2接合用電極7側の表面および第2接合用電極7における第1接合用電極6と反対側の表面は実質上平滑であり、完全に平滑でなくてもよく、いくらかの高低差があってもよい。この場合、上記高低差は、0.5μm以下であることが好ましい。
【0018】
上記高低差は、以下の方法により算出することが可能である。すなわち、集束イオンビーム装置(FIB装置)によりガリウムイオンビームを照射して得た任意の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて5000倍で観察する。観察される表面の水平方向20μmの範囲内において、任意に決定した測定点を基準点とし、最も高いところと最も低いところの差を測定して、その平均値を第1接合用電極6における第2接合用電極7側の表面および第2接合用電極7における第1接合用電極6と反対側の表面の高低差とみなすことができる。
【0019】
半導体チップ1と電極4との間にはゲート酸化膜2を設けてもよく、ゲート酸化膜2内にはゲート電極3を設けてもよい。この場合、電極4の凸部は、ゲート酸化膜2の上方に位置する。
【0020】
半導体チップ1は、例えば、シリコンカーバイドから構成される。ただし、半導体チップ1の構成材料は、シリコンカーバイドに限定されず、シリコン、ガリウムヒ素、ガリウムナイトライド等であってもよく、IGBTやダイオードといった表裏導通型の半導体素子でもよい。このような場合でも、同様の効果を奏することが期待される。半導体チップ1の大きさは、例えば、7mm×14mm程度である。
【0021】
電極4は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むことが好ましい。アルミニウム合金としては、例えば、アルミニウムと、ケイ素、シリコン、銅等と、を含むアルミニウム合金が挙げられる。
【0022】
第1接合用電極6は、ニッケル、ニッケルリンまたはニッケルボロンを含むことが好ましい。第1接合用電極6としては、例えば、無電解ニッケルめっき層が挙げられる。
【0023】
第2接合用電極7は、金またはパラジウムを含むことが好ましい。第2接合用電極7としては、例えば、無電解金めっき層、無電解パラジウムめっき層が挙げられる。
【0024】
ただし、第1接合用電極6および第2接合用電極7は、ニッケルめっき層、金めっき層およびパラジウムめっき層に限定されず、電極4、第1接合用電極6および第2接合用電極7の接合を可能とするめっき層であればよい。このようなめっき層として、例えば、電解銅めっき層等を利用しても、同様の効果を奏することが期待される。
【0025】
第1接合用電極6および第2接合用電極7は、無電解めっき法によって形成されたものであることが好ましい。
【0026】
ゲート酸化膜2は、例えば、酸化シリコン等の絶縁性材料から構成される。
ゲート電極3は、例えば、ポリシリコン等の導電性材料から構成される。
【0027】
裏電極5は、複数の金属層で構成される。裏電極5は接合の用途を担う場合があるため、裏電極5として、ニッケル、または、シリコン、銅等とを含むニッケル合金からなる電極上に、接合性に優れたニッケルまたは金のめっきを施してなる電極を用いることが好ましい。
【0028】
なお、図1に示される半導体素子は、表電極(電極4)と裏電極5とを備える表裏導通型の半導体素子である。すなわち、電極4は、表裏導通型の半導体素子の表電極である。
【0029】
本実施の形態においては、電極4が、第1接合用電極6側の表面に凸部を有し、第1接合用電極6において、第2接合用電極7側の表面は平滑であり、第2接合用電極7において、第1接合用電極6と反対側の表面は平滑である。これにより、第1接合用電極6および第2接合用電極7の接合時にボイドの発生を抑制し、接合部の密着性が向上する。したがって、半導体素子の長期信頼性を向上させることができる。
【0030】
<半導体素子の製造方法>
本実施の形態における半導体素子の製造方法は、
半導体チップの少なくとも一方の主面に電極を形成する第1工程(電極形成工程)と、
電極上に第1接合用電極を形成する第2工程(第1接合用電極形成工程)と、
第1接合用電極上に第2接合用電極を形成する第3工程(第2接合用電極形成工程)と、を備える。
【0031】
第1工程において、電極における第1接合用電極側の表面に凸部が形成される。
第2工程において、第1接合用電極における第2接合用電極側の表面は平滑に形成される。
【0032】
第3工程において、第2接合用電極における第1接合用電極と反対側の表面は平滑に形成される。
【0033】
以下、図2を参照して、本実施の形態の半導体素子の製造方法の一例について説明する。
【0034】
本実施の形態の半導体素子の製造方法では、主に、半導体チップ1上への電極4の形成(第1工程)、裏電極5の形成、裏電極5のマスキング、無電解めっき処理(第2工程および第3工程)、および、マスキング剥離が、この順で実施される。
【0035】
また、図3~5は、図1に示した半導体素子の製造プロセスフローを示す断面模式図である。図3には、実施の形態1において、電極4、裏電極5、第1接合用電極6および第2接合用電極7を形成する前の半導体素子の断面構造が示される。
【0036】
以下、図2~5を参照して、図1に示される半導体素子を製造する具体的な方法を説明する。なお、実施の形態1の各工程は、全てウエハ状態で実施されることが製造効率の観点から好ましい。
【0037】
(ゲート酸化膜およびゲート電極の形成)
図3を参照して、本実施の形態の半導体素子がゲート酸化膜2およびゲート電極3を備える場合、ゲート電極3を内包するゲート酸化膜2は、まず、ゲート酸化膜2として絶縁性材料である酸化シリコンを、例えば熱酸化法または化学気相成長等の堆積法により成膜した後、例えばフォトリソグラフィまたはエッチングによりパターニングして、ゲート酸化膜2の下部(図3中、ゲート電極3より半導体チップ1側)を形成する。次に、ゲート電極3として導電性材料であるポリシリコンを、上述の方法で成膜した後、上述の方法によりパターニングして、ゲート電極3を形成する。そして、ゲート電極3を覆うように、酸化シリコンを上述の方法で成膜した後、上述の方法によりパターニングして、ゲート酸化膜2を形成する。
【0038】
ゲート電極3を内包するゲート酸化膜2の厚みは、例えば、1.0μm以上3.0μm以下であることが好ましい。
【0039】
(第1工程:電極形成工程)
図4を参照して、電極形成の工程(第1工程)では、半導体チップ1上に密着性の高い電極を形成するために、例えば、電気抵抗の低いアルミニウム合金が、プロセス制御の容易なスパッタリングでパターニング形成される。本実施の形態の半導体素子がゲート酸化膜2およびゲート電極3を備える場合、ゲート酸化膜2およびゲート電極3によって生じる凹凸を維持したまま電極4が形成されるため、電極4の上側の表面に凸部が形成される。なお、用途に応じて、半導体チップ1とアルミニウム合金の間に、および、ゲート酸化膜2とアルミニウム合金の間に、バリアメタルとして、例えば、チタンや窒化チタン等のチタン化合物が形成されてもよい。
【0040】
電極4の厚みは、例えば、0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましく、電極4の凸部の高さは、1.0μm以上であることが好ましい。電極4には、半導体チップ1がシリコンカーバイドから構成される場合、半導体チップ1との密着性をより高めるために、アルミニウムの他に例えば1質量%程度のケイ素、1質量%程度のシリコン、0.5質量%程度の銅等が添加されてもよく、その濃度は電極中で一定であることが好ましい。
【0041】
(裏電極形成)
図5を参照して、裏電極形成の工程では、電極4が形成された面とは反対の半導体チップ1上に複数の金属層で構成される裏電極5を形成するために、例えば、ニッケルが、プロセス制御の容易なスパッタリングでパターニング形成され、次に、金が、プロセス制御の容易なスパッタリングでパターニング形成される。なお、用途に応じて、半導体チップ1とニッケルの間に、バリアメタルとして、例えばチタン合金やニッケル合金等が形成されてもよい。
【0042】
裏電極5の厚みは、例えば、ニッケル層は0.3μm以上5.0μm以下であることが好ましく、金層は0.01μm以上0.2μm以下であることが好ましい。
【0043】
(裏電極マスキング)
次に、裏電極マスキングは、後に続く第1接合用電極6および第2接合用電極7の成膜処理中に、裏電極5が損傷を受けないようにするため実施する。紫外光を照射することで剥離できる接着剤を塗布したフィルムを貼付することでなされる。
【0044】
(無電解めっき)
次に、無電解めっき処理を行う。このプロセスについては、別途図6を参照して後述する。
【0045】
(マスキング剥離)
最後に、ウエハの裏電極表面に貼付したマスキングテープを剥離する。具体的には、例えば、紫外光を照射することで剥離するマスキングテープを利用して、無電解めっき処理を終えたウエハの裏面に紫外線を照射することで、マスキングテープを剥離する。
【0046】
(無電解めっきプロセス)
以下、無電解めっきプロセスの詳細について説明する。
【0047】
図6を参照して、ウエハ上の電極4上に、第1接合用電極6および第2接合用電極7を無電解めっき法により成膜するプロセスでは、脱脂、酸洗い、第1ジンケート、ジンケート剥離、第2ジンケート、無電解ニッケルめっき、および、無電解金めっきが、この順で行われる。このとき、各工程の間には十分な水洗時間を確保し、前の工程の処理液または残渣が次の工程に持ち込まれないように注意する必要がある。
【0048】
次に、各工程の概略を説明する。
最初に、脱脂を行う。脱脂は、電極4の表面に残留した軽度の有機物汚染、油脂分、酸化膜等を除去し、電極4の表面に濡れ性を付与するために行われる。残渣は、アルミニウム合金等に対するエッチング力が強いアルカリ性の薬液を利用して、油脂分を鹸化することが好ましい。
【0049】
次に、酸洗いを実施する。酸洗いは、電極4の表面の中和と、電極4の表面をエッチングし、後述するジンケート液との反応性を高め、めっきの付着力を向上させることが目的である。
【0050】
次に、ジンケート処理を実施する。ジンケート処理とは、電極(例えば、アルミニウム合金電極)の表面をエッチングしながら、酸化膜(例えば、アルミニウム酸化膜)を除去し、電極表面に亜鉛等の皮膜を形成する処理である。一般的には、亜鉛がイオンとして溶解した水溶液に、アルミニウム合金を浸漬すると、亜鉛の方がアルミニウムよりも標準酸化還元電位が貴であるため、アルミニウムがイオンとして溶解し、このときに生じた電子によって亜鉛イオンがアルミニウム合金の表面で電子を受け取り、アルミニウムの表面に亜鉛の被膜が形成される。
【0051】
この後、亜鉛で被覆されたアルミニウム合金を硝酸に浸漬し亜鉛をいったん溶解する。そして、再度、アルミニウム合金をジンケート液に浸漬することで、アルミニウムの酸化膜を除去すると共に亜鉛を均一に被覆する。この操作によって、アルミニウムの表面は平滑になる。回数を増やすほどアルミニウムの表面は均一になり、めっき層の出来栄えも良くなるため、少なくとも2回、好ましくは3回のジンケート処理を行う。このジンケート処理によって、電極4の表面に均一な亜鉛の被膜が形成されると、その後の無電解めっき処理において、健全なめっき層を付着させることができる。
【0052】
次に、第2工程(第1接合用電極形成工程)の一例として、無電解ニッケルめっきについて説明する。
【0053】
亜鉛で被覆されたアルミニウム合金を無電解ニッケルめっき液に浸漬すると、亜鉛とニッケルが標準酸化還元電位の差に基づいて亜鉛とニッケルが置換し、アルミニウム合金上にニッケルが析出する。その後、めっき液中に含まれる還元剤の作用によって、ニッケル上に自触媒的にニッケルが析出する。
【0054】
この自触媒的析出時には、還元剤の成分がめっき層に取り込まれるため、無電解ニッケルめっき層は合金となる。一般に還元剤として次亜リン酸が利用されており、このリンがめっき層中に取り込まれるため、無電解ニッケルめっき層にはリンが含まれる。
【0055】
この際、アルミニウム合金の凹凸の形成の程度(フィリング性)を向上させるため、意図的に初期のニッケルの析出速度を低下させる。図7に示すように、ニッケルの析出速度を低下させると、めっき液中に含まれる安定剤と錯化剤の働きにより電極4の凸部で反応性が低下するが、電極4の凹部では促進剤が濃縮して凸部に比べて反応性が高くなるため、無電解ニッケルめっき層は平滑に形成される。ニッケルの析出速度を下げるには、ニッケルめっき浴の低温化、または、反応面へのニッケル源および還元剤の供給を抑制することが有効である。この場合のニッケルの析出速度は、4.0μm/hr以上10μm/hr以下であることが好ましく、6.0μm/hr以上8.0μm/hr以下であることがより好ましい。後述するように、無電解ニッケルめっき層が平滑になるまで当該速度で実施する。
【0056】
一方、上述の方法でニッケルの析出速度を低下させると、生産性が低下するだけでなく、反応面へのニッケルの供給に偏りが生じて、ウエハ面内の膜厚にムラが生じる。そのため、ニッケルの初期析出により無電解ニッケルめっき層の凹凸を除去した後は、ニッケルめっき浴の温度を上昇または反応面へのニッケル源および還元剤の拡散を促進させることで、ニッケルの析出速度を上げ、凹凸部を有するアルミニウム合金に対して平滑な無電解ニッケルめっき層を析出させる。この場合のニッケルの析出速度は、10μm/hr以上15μm/hr以下であることが好ましく、11μm/hr以上13μm/hr以下であることがより好ましい。
【0057】
無電解ニッケルめっき層の厚さは、例えば、1.0μm以上7.0μm以下であることが好ましい。また、無電解ニッケルめっき層の表面に高低差がある場合、0.5μm以下であることが好ましい。
【0058】
そして、最後に、第3工程(第2接合用電極形成工程)を実施する。第3工程の一例として、無電解金めっきについて説明する。
【0059】
ここで利用する無電解金めっきは、一般的には置換型であり、ニッケルと金が置換することで金めっきが析出する。置換型の無電解金めっきは、無電解ニッケルめっき層の上に施され、めっき液中に含まれる錯化剤の作用によってニッケルと金が置換する作用を利用している。置換型であるため、ニッケルの表面が金で被覆されてしまうと反応が停止するため、めっき層を厚くするのは難しく、一般的には0.05μm程度である場合が多い。
【0060】
なお、無電解ニッケルめっき層の表面に凹凸がある場合、無電解金めっきをすることで凹部でニッケルが局所的に腐食してリンリッチとなるため、接合強度が低下し、接合信頼性が低下する。そのため、下地の無電解ニッケルめっき層は平滑であることが好ましい。
【0061】
以上説明したプロセスフローにて、無電解めっき法によって、凸部を有する電極4の表面に平滑な第1接合用電極6(ニッケルめっき層)と第2接合用電極7(金めっき層)を析出させてなる半導体素子を得ることができる。
【0062】
得られた半導体素子は、図8に示されるような無電解ニッケルめっき層および無電解金めっき層の表面に凹凸部がある場合と比べて、局所的な腐食が抑制される。また、得られた半導体素子は、図8に示されるような無電解ニッケルめっき層および無電解金めっき層の表面に凹凸部がある場合と比べて、はんだ接合時に凹部でのボイドの発生が抑制される。したがって、本実施の形態の半導体素子は、パワーモジュールに組み込んだ際のパワーサイクル試験においても動作寿命が長くなる効果が期待される。
【0063】
以上のとおり、本実施の形態においては、電極4に凹凸がある場合でも、第1接合用電極6と第2接合用電極7の表面を平滑に形成することで、局所的なニッケルの腐食およびボイドの発生を抑制されるので、はんだ付け性が向上し、半導体素子の長期信頼性を確保することできる。
【0064】
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1に示す製造方法の無電解めっき工程において、CMP(Chemical Mechanical Polishing)が追加で行われている。本実施の形態の半導体素子の構成要素については、実施の形態1で説明しているため、重複する説明は省略する。
【0065】
以下、無電解ニッケルめっきおよびCMPについて説明するが、その他の工程については実施の形態1と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0066】
図9は、実施の形態2における第1接合用電極形成工程(第2工程)のフロー図である。実施の形態2において、第二ジンケート処理までは実施の形態1と同じ手順であるが、その後に無電解ニッケルめっきおよびCMPをこの順で行う。まず、無電解ニッケルめっきについて説明する。
【0067】
亜鉛で被覆されたアルミニウム合金を無電解ニッケルめっき液に浸漬すると、亜鉛とニッケルが標準酸化還元電位の差に基づいて亜鉛とニッケルが置換し、アルミニウム合金上にニッケルが析出する。その後、めっき液中に含まれる還元剤の作用によって、ニッケル上に自触媒的にニッケルが析出する。
【0068】
この自触媒的析出時には、還元剤の成分がめっき層に取り込まれるため、無電解ニッケルめっき層は合金となる。一般に還元剤として次亜リン酸が利用されており、このリンがめっき層中に取り込まれるため、無電解ニッケルめっき層にはリンが含まれる。
【0069】
この際、図10に示すように、ニッケルめっき層はアルミニウム合金の凹凸面の影響を受けるため、無電解ニッケルめっき層の上面は凹凸形状となる。なお、次に続く工程のCMPにより無電解ニッケルめっき層が1.0μm目減りすることを考慮し、最終的に所望する無電解ニッケルめっき層よりも厚く形成しておくことが好ましい。
【0070】
次に、CMPを実施する。CMPとは、スラリーのもつ表面化学作用により機械的研磨性能を向上させることで凹凸を平坦化する処理を意味する。無電解ニッケルめっき層にCMPを行うと、凹凸面の段差にスラリーが衝突し、熱エネルギーが発生するため、段差で化学反応が促進される。したがって、段差を解消するように凸部が選択的にエッチングされ、無電解ニッケルめっき層が平坦化される。本実施の形態では、CMPにより凸部の無電解ニッケルめっき層を1.0μm研磨することにより平滑な表面形状を得ることができる。そして、実施の形態1と同様に、無電解金めっきにより平滑な無電解金めっき層が形成される。なお、実施の形態1と同様に、第2接合用電極が無電解金めっき層であることは一例であり、第2接合用電極は、例えば、無電解パラジウムめっき層であってもよい。
【0071】
以上説明したプロセスフローにて、無電解めっき法によって、平滑な第1接合用電極(ニッケルめっき層)と第2接合用電極(金めっき層)を析出させてなる半導体素子を得ることができる。
【0072】
得られた半導体素子は、図8に示されるような無電解ニッケルめっき層および無電解金めっき層の表面に凹凸部がある場合と比べて、局所的な腐食が抑制される。また、得られた半導体素子は、図8に示されるような無電解ニッケルめっき層および無電解金めっき層の表面に凹凸部がある場合と比べて、はんだ接合時に凹部でのボイドの発生が抑制される。したがって、本実施の形態の半導体素子は、パワーモジュールに組み込んだ際のパワーサイクル試験においても動作寿命が長くなる効果が期待される。
【0073】
以上のとおり、本実施の形態においては、電極に凹凸がある場合でも、第1接合用電極6と第2接合用電極7の表面を平滑に形成することで、局所的なニッケルの腐食およびボイドの発生を抑制されるので、はんだ付け性が向上し、半導体素子の長期信頼性を確保することできる。
【0074】
実施の形態3.
図11を参照して、本実施の形態の半導体素子では、実施の形態1における電極4(表電極)と同様に、裏電極5上(半導体チップ1の反対側)にも、第1接合用電極61および第2接合用電極71が形成されている。他の構成要素については、実施の形態1で説明しているため、重複する説明は省略する。
【0075】
本実施の形態においては、裏電極5は無電解めっきによりめっきが可能であるようにするため、例えば、アルミニウム(電極4と同じ材料)、または、ケイ素、シリコン、銅等を含むアルミニウム合金が使用される。
【0076】
図12を参照して、本実施の形態の半導体素子の製造方法では、主に、半導体チップ1上への電極4の形成、裏電極5の形成、および、無電解めっき処理が、この順で実施される。
【0077】
本実施の形態においては、実施の形態1で示した無電解ニッケルめっきを行うことによって、凹凸部を有する電極4および平滑な裏電極5に対して同時に平滑な無電解ニッケルめっき層を同時に析出させる。そして、無電解金めっきを行うことによって、電極4上の無電解ニッケルめっき層および裏電極5上の無電解ニッケルめっき層に対して同時に平滑な無電解金めっき層を析出させる。なお、実施の形態1と同様に、第2接合用電極が無電解金めっき層であることは一例であり、第2接合用電極は、例えば、無電解パラジウムめっき層であってもよい。
【0078】
以上説明したプロセスフローにて、無電解めっき法によって、半導体チップ1の表裏両面に第1接合用電極6,61および第2接合用電極7,71が形成された半導体素子を得ることができる。
【0079】
得られた半導体素子は、図13に示されるような無電解ニッケルめっき層および無電解金めっき層の表面に凹凸部がある場合と比べて、局所的な腐食が抑制される。また、得られた半導体素子は、図13に示されるような無電解ニッケルめっき層および無電解金めっき層の表面に凹凸部がある場合と比べて、はんだ接合時に凹部でのボイドの発生が抑制される。したがって、本実施の形態の半導体素子は、パワーモジュールに組み込んだ際のパワーサイクル試験においても動作寿命が長くなる効果が期待される。
【0080】
以上のとおり、本実施の形態においては、電極に凹凸がある場合でも、第1接合用電極と第2接合用電極の表面を平滑に形成することで、局所的なニッケルの腐食およびボイドの発生を抑制されるので、はんだ付け性が向上し、半導体素子の長期信頼性を確保することできる。
【0081】
実施の形態4.
実施の形態4では、実施の形態3に示す構成の半導体素子が形成されているが、実施の形態2に示す製造方法で電極4上に第1接合用電極6が形成されており、裏電極5上への第1接合用電極61の形成は、CMPを実施しないことを除いては、実施の形態2に示す製造方法で形成されている。他の構成要素については、実施の形態1および3で説明しているため、重複する説明は省略する。
【0082】
本実施の形態においては、裏電極5は無電解めっきによりめっきが可能であるようにするため、例えば、アルミニウム(電極4と同じ材料)、または、ケイ素、シリコン、銅等を含むアルミニウム合金が使用される。
【0083】
図12を参照して、本実施の形態の半導体素子の製造方法では、主に、半導体チップ1上への電極4の形成、裏電極5の形成、および、無電解めっき処理が、この順で実施される。
【0084】
本実施の形態においては、実施の形態2で示した無電解ニッケルめっきおよびCMPを行うことによって、凹凸部を有する電極4に対して平滑な無電解ニッケルめっき層を析出させ、実施の形態2で示したCMPを行わず、無電解ニッケルめっきを行うことによって、平滑な裏電極5に対して平滑な無電解ニッケルめっき層を析出させる。そして、無電解金めっきを行うことによって、電極4上の無電解ニッケルめっき層および裏電極5上の無電解ニッケルめっき層に対して同時に平滑な無電解金めっき層を析出させる。なお、実施の形態1と同様に、第2接合用電極が無電解金めっき層であることは一例であり、第2接合用電極は、例えば、無電解パラジウムめっき層であってもよい。
【0085】
以上説明したプロセスフローにて、無電解めっき法によって、半導体チップ1の表裏両面に第1接合用電極6,61および第2接合用電極7,71が形成された半導体素子を得ることができる。
【0086】
得られた半導体素子は、図13に示されるような無電解ニッケルめっき層および無電解金めっき層の表面に凹凸部がある場合と比べて、局所的な腐食が抑制される。また、得られた半導体素子は、図13に示されるような無電解ニッケルめっき層および無電解金めっき層の表面に凹凸部がある場合と比べて、はんだ接合時に凹部でのボイドの発生が抑制される。したがって、本実施の形態の半導体素子は、パワーモジュールに組み込んだ際のパワーサイクル試験においても動作寿命が長くなる効果が期待される。
【0087】
以上のとおり、本実施の形態においては、電極に凹凸がある場合でも、第1接合用電極と第2接合用電極の表面を平滑に形成することで、局所的なニッケルの腐食およびボイドの発生を抑制されるので、はんだ付け性が向上し、半導体素子の長期信頼性を確保することできる。
【0088】
実施の形態5.
実施の形態5では、上述した実施の形態1~4にかかる半導体素子のいずれかにおいて、第2接合用電極7が多層からなる。他の構成要素については、実施の形態1~4で説明しているため、重複する説明は省略する。
【0089】
図14を参照して、本実施の形態の半導体素子において、第2接合用電極が第1層7aおよび第2層7bからなる2層構造を有する。第1層7aは、パラジウム、パラジウムリンまたはパラジウム合金を含むことが好ましい。第1層7aとしては、例えば、無電解パラジウムめっき層が挙げられる。第2層7bは、金を含むことが好ましい。第2層7bとしては、例えば、無電解金めっき層が挙げられる。
【0090】
ただし、第1層7aおよび第2層7bは、パラジウムめっき層および金めっき層に限定されず、第1接合用電極6、第1層7aおよび第2層7bの接合を可能とするめっき層であればよい。このようなめっき層として、例えば、電解銅めっき層等を利用しても、同様の効果を奏することが期待される。
【0091】
第1層7aおよび第2層7bは、無電解めっき法によって形成されたものであることが好ましい。
【0092】
図15は、本実施の形態における無電解めっきのフロー図である。本実施の形態において、無電解ニッケルめっきまでは実施の形態1と同じ手順であるが、その後に無電解パラジウムめっきおよび無電解金めっきをこの順で行う。以下、無電解パラジウムめっきおよび無電解金めっきについて説明するが、その他の工程については実施の形態1~4で説明しているため、重複する説明は省略する。
【0093】
ここで利用する無電解パラジウムめっきは、一般的には置換型であり、ニッケルとパラジウムが置換することでパラジウムめっきが析出する。還元剤としては、ギ酸や次亜リン酸が利用される。第1層7aの厚みは、例えば、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
【0094】
この無電解パラジウムめっき層を、無電解ニッケルめっき層および無電解金めっき層の間に設けることで、熱により金めっき層の表面にニッケルが拡散することを抑制することができる。
【0095】
次に、無電解金めっきを実施する。無電解金めっきは、上述のように、一般的に置換型であるが、置換還元型でもよく、置換型および還元型を連続して実施してもよい。
【0096】
一方、いずれの方法で無電解金めっきを実施しても、無電解金めっき層は、無電解パラジウムめっき層を通して、無電解ニッケルメッキ層を局所的に腐食する。そして、無電解ニッケルめっき層の表面に凹凸がある場合、無電解パラジウムめっき層があれば、ガルバニック作用により凹部の局所的な腐食が促進される。そのため、無電解パラジウムめっき層がある場合、下地の無電解ニッケルめっき層は平滑であることが好ましい。
【0097】
以上説明したプロセスフローにて、無電解めっき法によって、凸部を有する電極4の表面に平滑な第1接合用電極6(ニッケルめっき層)と、平滑な第2接合用電極7である第1層7a(パラジウムめっき層)および第2層7b(金めっき層)と、を析出させてなる半導体素子を得ることができる。
【0098】
なお、第2接合用電極7の構成は、2層に限定されず、3層以上であってもよい。この場合、第2接合用電極7において、第1接合用電極6と接する層、すなわち、最下層は、パラジウム、パラジウムリンまたはパラジウム合金を含むことが好ましく、第1接合用電極6から最も離れた層、すなわち、最上層は、金を含むことが好ましい。例えば、第2接合用電極7が3層からなる場合、最下層を無電解パラジウムめっき層、最上層を還元型の無電解金めっき層、最上層と最下層との間の層、すなわち、中間層を置換型の無電解金めっき層、となるように構成することが挙げられる。
【0099】
得られた半導体素子は、図16に示されるような無電解ニッケルめっき層、無電解パラジウムめっき層および無電解金めっき層の表面に凹凸部がある場合と比べて、局所的な腐食が抑制される。また、無電解パラジウムめっき層が平滑であることにより、無電解金めっき層の表面へのニッケルの拡散がを防止され、はんだとの接合強度が向上する。さらに、得られた半導体素子は、図16に示されるような無電解ニッケルめっき層、無電解パラジウムめっき層および無電解金めっき層の表面に凹凸部がある場合と比べて、はんだ接合時に凹部でのボイドの発生が抑制される。したがって、本実施の形態の半導体素子は、パワーモジュールに組み込んだ際のパワーサイクル試験においても動作寿命が長くなる効果が期待される。
【0100】
以上のとおり、本実施の形態においては、電極に凹凸がある場合でも、第1接合用電極と、第2接合用電極である第1層および第2層と、の表面を平滑に形成することで、局所的なニッケルの腐食およびボイドの発生を抑制されるので、はんだ付け性が向上し、半導体素子の長期信頼性を確保することできる。
【0101】
実施の形態6.
本実施の形態は、上述した実施の形態1~5にかかる半導体素子のいずれかを電力変換装置に適用したものである。本開示は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態6として、三相のインバータに本開示を適用した場合について説明する。
【0102】
図17は、本実施の形態にかかる電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0103】
図17に示す電力変換システムは、電源100、電力変換装置200および負荷300から構成されている。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池または蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源100を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0104】
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、図17に示されるように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201を制御する制御信号を主変換回路201に出力する制御回路203とを備えている。
【0105】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道車両、エレベーター、または、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0106】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子(図示せず)と還流ダイオード(図示せず)を備えており、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態にかかる主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。主変換回路201の各スイッチング素子および各還流ダイオードの少なくともいずれかは、上述した実施の形態1~5のいずれかの半導体素子に相当する半導体装置202が有するスイッチング素子または還流ダイオードである。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0107】
また、主変換回路201は、各スイッチング素子を駆動する駆動回路(図示せず)を備えているが、駆動回路は半導体装置202に内蔵されていてもよいし、半導体装置202とは別に駆動回路を備える構成であってもよい。駆動回路は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0108】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、主変換回路201が備える駆動回路に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0109】
本実施の形態に係る電力変換装置200では、主変換回路201を構成する半導体装置202として、実施の形態1~5の半導体素子のいずれかを適用するため、本実施の形態に係る電力変換装置200は、向上された長期信頼性を実現することができる。
【0110】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに本開示を適用する例を説明したが、本開示は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルまたはマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに本開示を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに本開示を適用することも可能である。
【0111】
また、本開示を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機もしくはレーザー加工機、または、誘導加熱調理器もしくは非接触給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには、太陽光発電システムまたは蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0112】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0113】
1 半導体チップ、2 ゲート酸化膜、3 ゲート電極、4 電極、5 裏電極、6,61 第1接合用電極、7,71 第2接合用電極、7a 第1層、7b 第2層、100 電源、200 電力変換装置、201 主変換回路、202 半導体装置、203 制御回路、300 負荷。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17