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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】アルキルシリケート
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/18 20060101AFI20241108BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08G77/18
C08G77/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023504349
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2020070678
(87)【国際公開番号】W WO2022017598
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】エルケ、フリッツ-ラングハルス
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルト、バイドナー
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137485(JP,A)
【文献】特開2017-197521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00-77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
[SiO4/2[(RO)SiO3/2[(RO)SiO3/2b’[(RO)SiO2/2[(RO)(RO)SiO2/2c’[(RO)2SiO2/2c’’[(RO)SiO1/2[(RO)(RO)SiO1/2d’[(RO)(RO)SiO1/2d’’[(RO)SiO1/2d’’’(I)
(式中、
指数a、b、b’、c、c’、c’’、d、d’、d’’、d’’’は、化合物中のそれぞれの構造単位の平均含有量を示し、それぞれ独立して0~100,000の範囲内の数であり、但し、指数の合計は2以上であり;
基Rは、それぞれ独立して、以下の条件のうち少なくとも1つを満たす基から選択され;
(a)Rは、α-炭素原子で分岐した、置換または非置換のC-C20炭化水素基である。
(b)Rは、β-炭素原子で二重に分岐した、置換または非置換のC-C20炭化水素基である。
(c)Rは、合計9個以下の炭素原子を有する、非置換またはアルキル置換されたシクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチル基である。
ここで、上記各条件において置換とは、炭化水素基が、ビニル基、エチニル基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、およびカルビノール基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有することを意味し;
式中、基Rは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)メチル基、および(iii)エチル基からなる群から選択され;
但し、シリケート中の全ての基Rのモル分率は1~15mol%の範囲内であり、Rが(i)水素である場合のモル分率は9mol%以下であり、ここで、いずれの場合も全ての基R及びRの合計のモル量を基準とする。)で表されるアルキルシリケート。
【請求項2】
前記基Rは、それぞれ独立して、(ii)メチル基または(iii)エチル基である、請求項に記載のアルキルシリケート。
【請求項3】
前記基Rは、それぞれ独立して、以下の条件のいずれかを満たす基から選択される、請求項1または2に記載のアルキルシリケート。
(a)Rは、α-炭素原子で分岐した、置換または非置換のC-C10脂肪族炭化水素基である。
(b)Rは、β-炭素原子で二重に分岐した、置換または非置換のC-C10脂肪族炭化水素基である。
(c)Rは、合計9個以下の炭素原子を有する、非置換またはアルキル置換されたシクロヘキシル基である。
【請求項4】
前記基Rは、2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-ヘプチル基、2-オクチル基、1-フェニルエチル基、1-フェニル-1-プロピル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、1,1-ジメチルエチル基、1,1-ジメチルプロピル基、シクロヘキシル基、および3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基からなる群から選択される請求項1乃至のいずれか一項に記載のアルキルシリケート。
【請求項5】
前記指数a、b、b’、c、c’、c’’、d、d’、d’’、d’’’は、それぞれ独立して0~500の範囲内の数であり、但し、前記指数の合計は2以上である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のアルキルシリケート。
【請求項6】
前記指数a、b、b’、c、c’、c’’、d、d’、d’’、d’’’は、それぞれ独立して0~10の範囲内の数であり、但し、前記指数の合計は2以上である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のアルキルシリケート。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアルキルシリケートを90重量%以上、好ましくは95重量%以上含有するアルキルシリケート含有有機ケイ素化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)で表される新規なアルキルシリケートに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンは、多くの技術分野で使用される技術的に非常に重要な製品群であるシリコーンの技術的に重要な特性、例えば低い表面張力や低い結晶性によって、炭素系ポリマーと区別される。シリコーンは、広い温度範囲で液状を保ち、非常に低いガラス転移温度を有する。
【0003】
しかし、シリコーンはSi-アルキル基を持つため、環境中で分解されにくいという特性がある。この特性により、シリコーンは使用用途が限定されてきている。そのため、原理的には加水処理が可能でありながら、実用上十分な加水分解安定性を有する、従来のシリコーンに代わる材料が求められている。
【0004】
したがって、本発明の目的は、永続的なSi-C結合を含まないにもかかわらず、シリコーンと同様のガラス転移温度、表面張力、密度、疎水性挙動などの特性を有し、シリコーンを代替できる材料を見出すことである。
【0005】
特許文献1は、一般式HO-[(OCSiO]n-x[(OR)SiO]-Cで表されるアルキルシリケートを開示している。式中、nは3、4又は5であり、xは1~6であり、及び基Rは2-フェニルエチル基、シンナミル基、チミル基、バニリル基、5-ホルミルフェニル基、オイゲニル基、サンタリル基、サンタリジル基、メンチル基、およびイソブチル基からなる群より選ばれる同一または異なる基である。これらの化合物は、繊維の改質剤として有用である。
【0006】
非特許文献1は、式[(BuO)SiO]Si(OH)で表されるトリブトキシシロキシシラノール類を調製する方法を開示し、ここでBuがtert-ブチルである場合、xは2である。また、Buが2-ブチルである場合、xは2又は3であり、yは4-xである。これらの化合物はすべてのアルキルラジカルの合計に対してR=Hのモル分率は最大50mol%に至る。
【0007】
特許文献2は、一般式R-[(OR)SiO]-ORで表されるアルキルシリケートを調製する方法を開示する。ここで、xは2、3又は4であり、それぞれの場合において、ラジカルRは3~12の炭素原子を有するアルキルラジカルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】ロシア国特許出願公開第2263115号明細書
【文献】米国特許第2758127号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Abe et al.,Bull. Soc. Chim. 1969, 42, 1118
【発明の概要】
【0010】
したがって、さらなるアルキルシリケート、特に加水分解に対して安定なアルキルシリケートを提供する必要性が依然としてある。
【0011】
この目的は、請求項1~7に記載の新規なアルキルシリケートによって達成される。
【0012】
本発明は、下記式(I)で表されるアルキルシリケートを少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%含有するアルキルシリケート含有有機ケイ素化合物を提供する。
[SiO4/2[(RO)SiO3/2[(RO)SiO3/2b’[(RO)SiO2/2
[(RO)(RO)SiO2/2c’[(RO)SiO2/2c’’[(RO)SiO1/2
[(RO)(RO)SiO1/2d’[(RO)(RO)SiO1/2d’’
[(RO)SiO1/2d’’’(I)
式中、指数a、b、b’、c、c’、c’’、d、d’、d’’、d’’’は、化合物中のそれぞれの構造単位の平均含有量を示し、それぞれ独立して0~100,000の範囲内の数であり、但し、指数の合計は2以上である。
また、基Rは、それぞれ独立して、以下の条件のうち少なくとも1つを満たす基から選択され、
(a)Rは、α-炭素原子で分岐した、置換または非置換のC-C20炭化水素基である。
(b)Rは、β-炭素原子で分岐した、置換または非置換のC-C20炭化水素基である。
(c)Rは、合計9個以下の炭素原子を有する、非置換またはアルキル置換されたシクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチル基である。
ここで、いずれの条件において置換とは、炭化水素基が、ビニル基、エチニル基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、およびカルビノール基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有することを意味する。
式中、基Rは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)メチル基、および(iii)エチル基からなる群から選択され、
但し、アルキルシリケート中の全ての基Rのモル分率は0.1~20mol%、好ましくは1~15mol%の範囲内であり、Rが(i)水素である場合のモル分率は、9mol%以下、好ましくは5mol以下であり、ここで、いずれの場合も全てのラジカルR及びRの合計のモル量を基準としている。
但し、前記アルキルシリケート含有有機ケイ素化合物は、SiC結合基を含まない。
【0013】
下記式(I)で表されるアルキルシリケートが好適である。
[SiO4/2[(RO)SiO3/2[(RO)SiO3/2b’[(RO)SiO2/2
[(RO)(RO)SiO2/2c’[(RO)SiO2/2c’’[(RO)SiO1/2
[(RO)(RO)SiO1/2d’[(RO)(RO)SiO1/2d’’[(RO)SiO1/2d’’’(I)
式中、指数a、b、b’、c、c’、c’’、d、d’、d’’、d’’’は、化合物中のそれぞれの構造単位の平均含有量を示し、それぞれ独立して0~100,000の範囲内の数であり、但し、指数の合計は2以上である。
また、基Rは、それぞれ独立して、以下の条件のうち少なくとも1つを満たす基から選択され、
(a)Rは、α-炭素原子で分岐した、置換または非置換のC-C20炭化水素基である。
(b)Rは、β-炭素原子で二重に分岐した、置換または非置換のC-C20炭化水素基である。
(c)Rは、合計9個以下の炭素原子を有する、非置換またはアルキル置換されたシクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチル基である。
ここで、いずれの条件において置換とは、炭化水素基が、ビニル基、エチニル基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、およびカルビノール基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有することを意味する。
式中、基Rは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)メチル基、および(iii)エチル基からなる群から選択される。
但し、シリケート中の全ての基Rのモル分率は0.1~20mol%、好ましくは1~15mol%の範囲内であり、Rが(i)水素である場合のモル分率は9mol%以下であり、好ましくは5mol%以下であり、ここで、いずれの場合も全ての基R及びRの合計のモル量を基準とする。
【0014】
「分岐」とは、1つの炭素原子上に2つの炭素ラジカルが存在することを意味する。「二重に分岐」とは、1つの炭素原子上に3つの炭素ラジカルが存在することを意味する。
【0015】
好ましくは、基Rは、それぞれ独立して、(ii)メチル基または(iii)エチル基である。
【0016】
好ましくは、基Rは、それぞれ独立して、以下の条件のうち少なくとも1つを満たす基から選択される。
(a)Rは、α-炭素原子で分岐した、置換または非置換のC-C10炭化水素基であり、特に、α-炭素原子で分岐した、置換または非置換のC-C10脂肪族炭化水素基である。
(b)Rは、β-炭素原子で二重に分岐した、置換または非置換のC-C10炭化水素基であり、特に、β-炭素原子で二重に分岐した、置換または非置換のC-C10脂肪族炭化水素基である。
(c)Rは、合計9個以下の炭素原子を有する、非置換またはアルキル置換されたシクロヘキシル基である。
【0017】
基Rの例としては、2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-ヘプチル基、2-オクチル基、1-フェニルエチル基、1-フェニル-1-プロピル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、1,1-ジメチルエチル基、1,1-ジメチルプロピル基、シクロヘキシル基、および3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基、シクロペンチル基およびシクロヘプチル基が挙げられる。
【0018】
基Rの好ましい例としては、2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-ヘプチル基、2-オクチル基、1-フェニルエチル基、1-フェニル-1-プロピル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、1,1-ジメチルエチル基、1,1-ジメチルプロピル基、シクロヘキシル基および3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基が挙げられる。
【0019】
基Rの特に好ましい例としては、2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-ヘプチル基、2-オクチル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、1,1-ジメチルエチル基、1,1-ジメチルプロピル基、シクロヘキシル基、および3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基が挙げられる。
【0020】
置換された基Rの例としては、
-C(CH-CH-NH、-CH(CH)-CH-NH、-CH(C)-CH-NH
-C(CH-CH-NH-CH-CH-NH、-CH(CH)-CH-NH-CH-CH-NH
-CH(C)-CH-NH-CH-CH-NH
-C(CH-CH=CH、-CH(CH)-CH=CH、-CH(C)-CH=CH
-C(CH-C≡CH、-CH(CH)-C≡CH,-CH(C)-C≡CH、およびグリシジル基が挙げられる。
【0021】
好ましくは、式(I)中の指数a、b、b’、c、c’、c’’、d、d’、d’’、d’’’は、それぞれ独立して0~500の範囲内の数であり、好ましくは0~100の範囲内の数であり、さらに好ましくは0~50の範囲内の数であり、特に好ましくは0~10の範囲内の数であり、但し、指数の合計は少なくとも2である。
【0022】
本発明によるシリケートは、例えば、一般式(II)で表される化合物(クロロシラン、アルコキシクロロシランまたはアルコキシシラン)の加水分解によって製造することができる。

(RO)Cl4-mSi(II)

ここで、m=0、1、2、3または4であり、任意に式ROHで表されるアルコールの存在下で、またはROHおよび水による化合物(RO)Siのアルコール分解によって得られ、基Rは、それぞれ独立して、式(I)においてRについて規定される条件の1つを満たす基から選択され、基Rは、それぞれ、(i)水素、(ii)メチル基、および(iii)エチル基からなる群から選択される。
【0023】
本発明のアルキルシリケートを調製するためのさらなる選択肢は、オリゴマーもしくはポリマーのメトキシ又はエトキシシリケートを、任意に触媒の存在下でアルコールROHと反応させることであり、ここで基Rは式(I)中のRについて規定される条件の1つを満たす基から選択される。好適な触媒の例は、KOHのようなアルカリ金属水酸化物、またはナトリウムメトキシドである。
【0024】
本発明による化合物は、疎水性試験で実証されるように、疎水性であり、低い表面張力を有する。Rが水素であり、すべての基RとRの合計のモル量に基づいて、9mol%以下のRを含有する化合物は、疎水性である。
この化合物は、さらに、加水分解に安定であり、熱的に安定である。例えば、140℃では、Si-OH基からSi-O-Siへの縮合は観察されなかった。
【0025】
本発明による化合物は、特にRが水素で5mol%以下である場合、より好ましくはRがメチルまたはエチル基の場合に、安定かつ疎水性である。
【0026】
さらに、本発明による化合物は、簡単な方法で調製することができ、それらはシリコーンのような低い表面張力と低いガラス転移温度を有し、特にシリコーンが使用される分野、例えば防水、消泡剤、繊維、化粧品、建築保護、および家庭用品で使用することができる。
【実施例
【0027】
(測定方法)
基RおよびRのモル分率は、特徴的なO-C -CH基、O-C 基および-O基を積分することにより、H-NMR分光法によって決定される。使用したエチルシリケートの組成および生成物の組成は、29Si-NMR分光法により決定した。
表面張力γは、20℃においてハンギングドロップ法で測定した。
ガラス転移温度は、示差熱分析により決定した。
動的粘度ηは、アントンパール社の回転粘度計Stabinger SVM3000を用いて、20℃で測定した。
【0028】
疎水性試験は、以下のように行った。セメント系石膏ボードに、調製したアルキルシリケートを順次2回塗布した。2時間後、塗布した石膏ボード上にアルキルシリケートを滴下し、塗布後室温で液滴の形状の変化を観察した。
評価基準:0(液滴が広がる、疎水性なし)、+(液滴がやや平らになる、良好な疎水性挙動)、++(液滴が変化しない、非常に良好な疎水性)。
【0029】
シリケートTES34は、34重量%のSiO含有量を有するエチルシリケートであり、エタノールとHClの存在下で、850gのテトラエトキシシリケートを38gの水と加水分解縮合させることにより調製する。
【0030】
(実施例1)2,2-ジメチル-1-プロピル基92mol%および水素基8mol%を含有するアルキルシリケートの調製
2,2-ジメチル-1-プロパノール10.4g(118mmol)をメチルtert-ブチルエーテル56gに溶解させ、ピリジン9.8gで処理した。この溶液を、メチルtert-ブチルエーテル27g中に四塩化ケイ素10.0g(59.1mmol)を含有する溶液中に、温度を-15℃~-5℃の範囲に保ちながら、40分かけて攪拌しながら滴下して添加し、メチルtert-ブチルエーテル15gでリンスした。反応物を攪拌しながらさらに1時間反応させ、室温まで温め、濾過し、透明な反応液を室温でピリジン9.8gと水1.04gの混合物で処理する。混合物を一晩放置し、再びろ過し、溶液を減圧下で蒸発させて、2,2-ジメチル-1-プロピル基(R=2,2-ジメチル-1-プロピル基)92mol%および水素基(R=H)8mol%を含有する、10.4gの生成物を得る。
=-27℃
【0031】
(実施例2)2-ブチル基92mol%および水素基8mol%を含有するアルキルシリケートの調製
2-ブタノール26.2g(353mmol)、ピリジン29.2g(369mmol)およびメチルtert-ブチルエーテル145gを含む溶液を、メチルtert-ブチルエーテル溶液216g中に四塩化ケイ素30.0g(177mmol)を含有する溶液中に、温度を-15℃~-5℃の範囲に保ちながら、1時間かけて攪拌しながら滴下して添加し、冷却せずにさらに2時間半攪拌した。反応混合物を濾過し、MTBEを標準圧力で留去する。残渣はクロロアルコキシシランの混合物からなり、これを13~15mbarの減圧下で分留する。ClSi[O(2-Bu)]およびClSi[O(2-Bu)]からなる80~82℃の沸点を有する生成物留分をメチルtert-ブチルエーテルで希釈し、ピリジン6.8gおよび水0.84gの混合物で処理し、一晩攪拌する。これを濾過し、減圧下でメチルtert-ブチルエーテルを留去する。残渣は、2-ブチル基(R=2-ブチル基)92mol%および水素基(R=H)8mol%を含有するアルキルシリケートからなる。
=-124℃、η=48.6mPa・s、γ=17.4mN/m
生成物を140℃で2時間加熱しても、水素基の含有量は変化しなかった。
調製した生成物をセメント系石膏ボードに含浸させたところ、撥水性(疎水性)を示した。疎水性の値は+である。
【0032】
(実施例3)2-ブチル基85mol%およびエチル基15mol%を含有するアルキルシリケートの調製
Wacker(登録商標) Silicate TES 40 WN(SiO約40重量%およびエチル基約60重量%を含むエチルシリケートであり、式(I)で表され、式中、R=R=エチルおよび相対比a:(b+b’):(c+c’+c’’):(d+d’+d’’+d’’’)=1:19:42:38)150gを、2-ブタノール360gとナトリウムメトキシド0.15gで処理する。生成したエタノールを40cmの充填カラムでゆっくりと留去する。過剰の2-ブタノールを除去した後、残渣を塩化アンモニウムで中和し、濾過する。生成物は、2-ブチル基(R=2-ブチル基)85mol%およびエチル基(R=エチル基)15mol%を含有し、相対比a:(b+b’):(c+c’+c’’):(d+d’+d’’+d’’’)=1:16:42:40であるアルキルシリケートからなる。
=-130℃、η=23.2mPa・s、γ=22.3mN/m
調製した生成物をセメント系石膏ボードに含浸させたところ、非常に良好な撥水性(疎水性)を示した。疎水性の値は++である。
比較のため、使用したWacker(登録商標) Silicate TES 40 WNの疎水性値は:0である。
比較のため、約35mPa・sの粘度を有するトリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンの疎水性値は:++である。
【0033】
(実施例4)2-ブチル基75mol%、2,2-ジメチル-1-プロピル基15mol%、およびエチル基8mol%を含有するアルキルシリケートの調製
シリケートTES34[式(I)中、R及びRはエチル、相対比a:(b+b’):(c+c’+c’’):(d+d’+d’’+d’’’)=0:3:23:74]78.3gを、実施例3に記載のように2-ブタノール153gと反応させる。形成されたアルキルシリケートは、2-ブチル基87mol%、およびエチル基13mol%を含む(R=エチル基)。
このアルキルシリケート21gを2,2-ジメチル-1-プロパノール16.1gと共に130~190℃に加熱し、充填カラムでエタノール、2-ブタノール、および最後に過剰の2,2-ジメチル-1-プロパノールを充填カラムで除去する。残渣を塩化アンモニウムで処理し、濾過する。生成物は、2-ブチル基(R=2-ブチル基)75mol%、2,2-ジメチル-1-プロピル基(R=2,2-ジメチル-1-プロピル基)15mol%、及びエチル基(R=エチル基)8mol%を含有するアルキルシリケートからなる。
=-134℃、η=6.65mPa・s、γ=19.4mN/m
疎水性の値は++である。
【0034】
(実施例5)3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基を含有するアルキルシリケートの調製
フラスコに、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール190.2g(1.34mol)、Wacker(登録商標) Silicate TES 40 WN(エトキシ基1.09mol含有)83.8g(1.09mol)、およびナトリウムメトキシド81mgを仕込む。反応中に生成したエタノールを留去し、底部温度は反応の過程で200℃まで上昇する。
過剰の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールは、45mbar、底部温度135℃、塔頂温度110℃で留去する。生成物は、式I(R=3,3,5-トリメチルシクロヘキシルラジカル、R=エチル、R:R=99.8:0.2、相対比a:(b+b’):(c+c’+c’’):(d+d’+d’’+d’’’)=1:28:33:38)により、無色液体として得られる。
=-43℃、η=2.46mPa・s
【0035】
(実施例6)加水分解安定性
実施例3からの生成物(結合した2-ブチル基34.5mmolおよび結合したエチル基6.13mmolを含む)4.03gを、DO4.00g(200mmol)および無水酢酸ナトリウム97.1mg(1.18mmol)で処理し、二相混合物を密閉フラスコの中で23~25℃で攪拌する。水相のpHは7.5である。51日後にH-NMR分光法で測定すると、DO相中の2-ブタノールおよびエタノールの含有量は、2-ブタノール(結合ブチル基に対して約1mol%)35μmol、およびエタノール(結合エチル基に対して約0.08mol%)4.77μmolから構成される。
【0036】
(実施例7)加水分解安定性
実施例5からの生成物4.97gを水(pH7.0)5.06g(200mmol)で処理し、混合物を23~25℃で19日間攪拌する。この混合物をジクロロメタンで抽出する。3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールの含有量は、ナフタレンを標準物質とするガスクロマトグラフィーにより測定する。3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールの含有量は、0.16%である。
【0037】
(実施例8)加水分解安定性
実施例7の反応を、トンシル(登録商標)(酸活性化漂白土)220mgを用いて繰り返す。3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールの含有量は、0.67mol%である。
【0038】
(実施例9)加水分解安定性
実施例7の反応を、酢酸ナトリウム2.08gを用いて繰り返し、pH8.8を得る。3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールの含有量は、0.29mol%である。