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特許7584646電気接点材料およびその製造方法、遮断器並びに電磁開閉器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電気接点材料およびその製造方法、遮断器並びに電磁開閉器
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/05 20230101AFI20241108BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241108BHJP
   B22F 1/12 20220101ALI20241108BHJP
   C22C 32/00 20060101ALI20241108BHJP
   H01H 1/023 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C22C1/05 T
B22F1/00 K
B22F1/12
C22C32/00 A
H01H1/023 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023525273
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2021021143
(87)【国際公開番号】W WO2022254647
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】千葉原 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 智巳
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-055345(JP,A)
【文献】特開平09-050646(JP,A)
【文献】特開2015-196902(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1925078(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00,1/12
C22C 1/05,32/00
H01H 1/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御機器の接点に用いられる電気接点材料であって、
Ag粒子とSnO2粒子とを含むAg-SnO2焼結体中にFeOを主成分とするFe酸化物粒子が含まれていることを特徴とする電気接点材料。
【請求項2】
前記SnO2粒子に対する前記FeOの添加量の割合が0.6倍であることを特徴とする請求項1に記載の電気接点材料。
【請求項3】
アークによる熱を受けた場合に、前記FeOが酸化剤として働き、前記SnO2粒子の一部を還元し、SnO2の表面への堆積を抑制することを特徴とする請求項1または2に記載の電気接点材料。
【請求項4】
アークによる熱を受けた場合に、前記FeOが酸化剤として働き、前記SnO2粒子の一部を還元し、還元されたSnと前記Ag粒子とが合金化した成分をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の電気接点材料。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の電気接点材料によって構成される接点を備えることを特徴とする遮断器。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1つに記載の電気接点材料によって構成される接点を備えることを特徴とする電磁開閉器。
【請求項7】
制御機器の接点に用いられる電気接点材料の製造方法であって、
SnO2粉末、Fe酸化物粉末およびAg粉末を混合して混合粉末を形成する混合工程と、
前記混合粉末を成型して成型体を形成する成型工程と、
SnO2とFeOとが共存するように酸素分圧と温度とを制御して前記成型体を熱処理する熱処理工程と、
を含むことを特徴とする電気接点材料の製造方法。
【請求項8】
前記Fe酸化物粉末は、FeO粉末であり、
前記熱処理工程では、SnO2を還元させずに、FeOの形態を維持する酸素分圧および温度の条件で、前記成型体を熱処理することを特徴とする請求項7に記載の電気接点材料の製造方法。
【請求項9】
前記Fe酸化物粉末は、Fe34粉末またはFe23粉末であり、
前記熱処理工程では、SnO2を維持しながら、Fe34またはFe23をFeOに還元させる酸素分圧および温度の条件で熱処理を行い、SnO2とFeOとを含む前記成型体を形成することを特徴とする請求項7に記載の電気接点材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御機器の接点に用いられる電気接点材料およびその製造方法、遮断器並びに電磁開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中で酸化しにくい導電成分であるAg(銀)と、耐弧成分である金属酸化物と、を混合したAg-CdO(酸化カドミウム)、Ag-SnO2(酸化スズ)、Ag-ZnO(酸化亜鉛)などは、気中用の遮断器、電磁開閉器、リレーなどの制御機器の電気接点材料に用いられてきた。これらはAg-Ni(ニッケル)等の純金属の電気接点材料とは異なり、耐溶着性および耐アーク性に優れる利点があるため、50A以上の定格電流の製品に使用されることが多い。また、近年では環境および人体への影響を配慮して、カドミウムを含むAg-CdO系の電気接点材料の使用が減り、代わってカドミウムフリー材料であるAg-SnO2系の電気接点材料が広く使われるようになってきている。
【0003】
Ag-SnO2系の電気接点材料の製造方法は、粉末冶金法と、内部酸化法と、に大別される。粉末冶金法は、Ag粉末とSnO2粉末とを混合後、金型に混合した粉末を入れて適当な圧力をかけて成型し、その後、成型した粉末を焼結させてAg-SnO2系の電気接点材料を製造する方法である。粉末冶金法は、粉末焼結法とも称される。内部酸化法では、Ag-Sn合金インゴットを作製し、Ag-Sn合金インゴットを微細チップに分割する。分割された微細チップを酸化炉で加熱加圧して熱酸化させる。200℃以上の温度ではAgは酸化せず、他の添加金属のみが酸化する。ここではSnが酸化してSnO2になる。ただし、Agに混合した材料がSnのみである場合には、微細チップ内部まで酸化が進みにくいため、助剤としてIn(インジウム)、Bi(ビスマス)などの低融点金属を混合することが多い。助剤としてInを添加した場合にでき上がった電気接点材料はAg-SnO2-In23となる。この内部酸化法は、製造工程の手順によって、さらに後酸化法および前酸化法に分類される。後酸化法では、微細チップを数mmサイズの接点の実形状まで小型にして、熱酸化後、電気接点材料がそのまま接点として使用される。前酸化法では、数mm以上十数mm以下のサイズの微細チップを酸化した後、これらを固めてビレットを形成し、熱間押出によって材料を微細に混合しながら細い線材が作製され、線材が成型機で接点の形状に成型される。
【0004】
SnO2は、CdOおよびZnOと比較して分解温度が高いため、酸化物系の電気接点材料の中では耐消耗性に優れる利点がある一方、接点表面に残留して接点の接触抵抗を上昇させやすい欠点も併せ持っている。遮断時のアークによって接点表面部分が溶融して一部が蒸発し、残った溶融部分が再凝固する。製造時にSnO2は接点内で均一に分散していたが、蒸発量はAgの方が多いため、この結果、SnO2成分が多く接点表面に残留し、接点の接触抵抗が上昇する。実際の接点では、適用する製品の通電条件に照らして、接点の接触抵抗、耐溶着性、製造容易性等を考慮してSnO2の濃度が決定される。SnO2の濃度は一般的には5wt%以上20wt%以下の範囲で用いられることが多い。
【0005】
このため、Ag-SnO2-In23系の電気接点材料の接触抵抗上昇を抑制する方法が提案されている。特許文献1には、Ag-SnO2系の電気接点材料に鉄系金属のCo(コバルト)を添加した電気接点材料が提案されている。特許文献1では、内部酸化法を用いて電気接点材料を製造する際に、AgにSnだけでなくCoを添加する。これによって、Co酸化物がSnO2と共役物を構成して、安定した接触抵抗を有する接点が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭60-36636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、Ag-SnO2系の電気接点材料におけるAgは耐酸化性はあるものの、硫化しやすい材料である。このため、空気中にSO2(二酸化硫黄)等が微量に含まれる環境下では、変色し、接触抵抗が増大してしまう。特許文献1に記載の技術では、遮断時のアークによる接触抵抗の増加を抑制することはできるが、Agの耐硫化性についての開示はなされていない。このため、接触抵抗の増加を抑制しながら、Agの耐硫化性を改善する技術が求められている。
【0008】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、遮断時のアークによる接点の接触抵抗の増加を抑制しながら、耐硫化性を従来に比して高めることができる電気接点材料を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る電気接点材料は、制御機器の接点に用いられる電気接点材料であって、Ag粒子とSnO2粒子とを含むAg-SnO2焼結体中にFeOを主成分とするFe酸化物粒子が含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る電気接点材料は、遮断時のアークによる接点の接触抵抗の増加を抑制しながら、耐硫化性を従来に比して高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】FeおよびSnの酸化物についての各温度における標準生成ギブズエネルギを示すエリンガム図
図2】FeおよびSnの酸化状態を示す図
図3】実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法における酸素分圧の制御方法の一例を示す図
図4】実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図5】実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図6】実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図7】実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図8】実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図9】実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図10】実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図11】実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図12】2層成型体の構成の一例を示す斜視図
図13】実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法で使用される熱処理装置の構成の一例を模式的に示す図
図14】実施の形態1に係る電気接点材料を用いた遮断器の構成の一例を模式的に示す正面図
図15】実施の形態1による電気接点材料を用いた遮断器の構成の一例を模式的に示す断面図であり、図14のXV-XV断面図
図16】実施の形態1に係る電気接点材料を用いた電磁開閉器の構成の一例を示す断面図
図17】実施の形態2に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図18】実施の形態2に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図19】実施の形態2に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図20】実施の形態2に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図21】実施の形態2に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図22】実施の形態2に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図23】実施の形態2に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図
図24】実施例1から3および比較例1から7で製造した電気接点材料を用いた遮蔽器の遮蔽試験の測定結果を示す図
図25】FeOを含まない比較例1を基準として、SnO2に対するFeOの添加量割合における実施例1から3の遮断試験での抵抗上昇率および接点消耗量を規格化した図
図26】実施例3の電気接点材料の断面SEMによる観察結果の一例を示す図
図27】実施例1から3および比較例1から7で製造した電気接点材料を用いた遮蔽器の遮断試験後の接点表面付近におけるAg中のSn含有量の測定結果を示す図
図28】実施例4から6および比較例8から11で製造した電気接点材料を用いた遮蔽器の遮蔽試験の測定結果を示す図
図29】実施例4から6および比較例8から11で製造した電気接点材料を用いた遮蔽器の遮断試験後の接点表面付近におけるAg中のSn含有量の測定結果を示す図
図30】実施例1から3および比較例1,5から7で製造した電気接点材料を用いた遮蔽器の環境試験の測定結果を示す図
図31】実施例4から6および比較例8から11で製造した電気接点材料を用いた遮蔽器の環境試験の測定結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示の実施の形態に係る電気接点材料およびその製造方法、遮断器並びに電磁開閉器を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
実施の形態1.
実施の形態1に係る電気接点材料は、Ag粒子とSnO2粒子とを含むAg-SnO2焼結体中に、SnO2の還元効果のあるFeO(酸化鉄(II))を主成分とするFe(鉄)酸化物粒子が含まれている。すなわち、実施の形態1に係る電気接点材料は、Ag粒子の焼結体中に、SnO2粒子とFeO粒子とが共存している。この電気接点材料によって、気中用の遮断器、電磁開閉器、リレーなどの制御機器の接点を構成することで、アークの発弧時に、接点表面の温度が急上昇し、その熱で表面近傍のFeO粒子は酸化剤として働き、一部のSnO2粒子を還元し、FeO粒子自身は酸化してFe34粒子になる。SnO2粒子から還元された金属SnはAg粒子に固溶する。SnO2粒子の一部が酸化物でなくなることで、接点表面の接触抵抗増大が緩和される。また同時に、還元されたSnがAg粒子に固溶して、SnとAgとが合金化した成分であるAg-Sn合金が形成される。AgにSnを数wt%添加することで耐硫化性が改善されるため、接点の最表面の耐硫化性が向上する。
【0014】
実施の形態1に係る電気接点材料を内部酸化法または粉末焼結法によって製造することは原理的に不可能であり、熱処理時の雰囲気制御が重要になる。以下に、実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法について説明を行う。
【0015】
図1は、FeおよびSnの酸化物についての各温度における標準生成ギブズエネルギを示すエリンガム図である。この図で、横軸は温度[℃]を示し、左側の縦軸は生成ギブズエネルギ[kcal]を示し、右側の縦軸は酸素分圧[atm]を示している。エリンガム図は、FeおよびSnの酸化物について、各温度における標準生成ギブズエネルギをプロットしたものである。エリンガム図では、金属酸化物を金属に還元するためにどのような還元剤をどのような温度で作用させればよいかがわかる。また、例えば、2種の金属材料が混合されている物質について、どちらの金属が相手方を酸化または還元するのかという反応の仕方を知ることができる。エリンガム図では、複数の金属の酸化物のグラフのうち、下に示されるグラフの方が酸化物として安定している。例えば、Fe→FeOの反応系と、Sn→SnO2の反応系と、では、Fe→FeOの反応系の方が下に位置している。例えば外気が遮断された電気接点材料の内部のような状態で、金属FeとSnO2との混合物を加熱するとSnO2から金属Feが酸素を奪って酸化し、一方SnO2は還元されて金属Snに戻る。
【0016】
通常の内部酸化法では数気圧の圧力で酸化を行うため、熱処理雰囲気は、グラフの右縦軸の一番上の値である1atmになり、Snは全てSnO2になり、Feは全てFe23になって安定する。このため、SnO2と還元効果のあるFeOのような状態の両立が不可能になる。
【0017】
ここで着目するのは、エリンガム図でSn→SnO2の反応系と、FeO→Fe34の反応系と、が非常に近いところである。一例では、500℃近辺の温度の範囲で、Sn→SnO2の反応系と、FeO→Fe34の反応系と、が非常に近くなる。
【0018】
粉末焼結法でも、Ag-酸化物の電気接点材料を製造する際に、材料の粉末成型体を700℃以上900℃以下程度の温度で加熱する必要がある。図1で説明したように、Fe→FeOの反応系は生成ギブズエネルギが低いため、SnO2の還元効果はFeO→Fe34の反応系よりも大きい。しかし、例えば通常のAr(アルゴン)雰囲気中でもAg粉末とSnO2粉末とFe粉末とを混合、成型して加熱すると、この加熱処理の時点でFeがSnO2を還元してしまいAg-SnO2の電気接点材料でなくなってしまう。
【0019】
図2は、FeおよびSnの酸化状態を示す図である。図2において、横軸は雰囲気1気圧下での酸素分圧[atm]を示し、縦軸は温度[℃]を示している。図2では、酸素分圧および温度の組み合わせにおけるFeの各酸化状態を示すグラフに、Snの酸化状態を示すグラフを重ねたものである。FeOが安定している酸素分圧範囲はかなり狭いことがわかる。図2を見ると、Feの状態を維持できる酸素分圧範囲で加熱すると、SnO2は全てSnに還元されてしまうことがわかる。またFe34またはFe23が安定的に存在する酸素濃度範囲では温度を上げてもSnO2は状態を維持できるが、Fe23はそもそも還元性が無いので、電気接点材料に組み込んでも、SnO2の還元効果が期待できない。
【0020】
図3は、実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法における酸素分圧の制御方法の一例を示す図である。図3は、図2に示されるグラフに、実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法の酸素分圧の制御の経路を描き込んだ図である。破線の矢印が、酸素分圧の制御の経路を示す図である。酸素分圧の制御の経路は、SnO2とFeOとが共存する領域Rを通る。つまり、電気接点材料の製造時には、図3中の破線のような酸素分圧の制御をしながら、炉の温度を上昇させて焼結することで、SnO2とFeOとが共存した電気接点材料を製造することが可能になる。
【0021】
そこで、以下では、実施の形態1に係る電気接点材料の具体的な製造方法について説明する。電気接点材料の原料は、一例では、Ag粉末、SnO2粉末およびFe酸化物粉末であるFeO粉末である。適用する製品の通電条件に照らして、接点の接触抵抗、耐溶着性、製造容易性等を考慮して電気接点材料のSnO2の濃度が決定される。SnO2の濃度は一般的には5wt%以上20wt%以下の範囲で用いられることが多い。ここでは、Ag粉末が83wt%であり、SnO2粉末とFeO粉末との合計が17wt%である場合を例に挙げる。また、Ag粉末の平均粒径は5μmとし、SnO2粉末およびFeO粉末の平均粒径は1μmとすることができる。
【0022】
まず、乾式混合装置によって、SnO2粉末およびFeO粉末の組み合わせを15分混合する。その後、混合した粉末にAg粉末を入れて、さらに15分混合する。これによって、SnO2粉末、FeO粉末およびAg粉末を混合した混合粉末が形成される。混合粉末を形成する工程は、混合工程に対応する。
【0023】
ついで、金型に混合粉末およびAg粉末を順に入れて、2層の同時成型を行う。これによって、混合粉末からなる接点層およびAg粉末からなるAg層を有する2層成型体が形成される。遮断器の電極の銅台座へのロウ付けをする際に、Ag接点に酸化物が含まれているとロウ付け性が悪くなるために、酸化物を含まないAg層が成型される。2層成型体を形成する工程は、成型工程に対応する。
【0024】
図4から図11は、実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図である。図4に示されるように、円筒金型10のダイ11と、ダイ11に設けられる貫通孔に挿入された下パンチ12と、によって、粉末を入れる空間15が形成される。円筒金型10の径は、一例ではΦ15mmである。図5に示されるように、原料の混合粉末1がダイ11内に入れられる。図6に示されるように、すりきり板16で、ダイ11の上面よりも上側に存在する余剰な混合粉末1がすりきられる。その後、図7に示されるように、下パンチ12を予め定められた距離だけ下げてダイ11内に隙間15aが形成される。ついで、図8に示されるように、ダイ11内に形成された隙間15aにAg粉末2が入れられる。このとき、ダイ11の中に入れた混合粉末1は、完成後の接点の接点層の厚みが1.5mmになるように秤量され、混合粉末1の上に敷いたAg粉末2は、接点層の1/10の厚さになるように秤量される。図9に示されるように、すりきり板16で、ダイ11の上面よりも上側に存在する余剰なAg粉末2がすりきられる。その後、図10に示されるように、上パンチ13が取り付けられる。そして、図11に示されるように、ダイ11を上下反転させてから、予め定められた成型圧力で成型する。一例では、成型圧力は、640MPaである。これによって、2層成型体が形成される。
【0025】
図12は、2層成型体の構成の一例を示す斜視図である。図12に示されるように、2層成型体30は、円柱形状であり、混合粉末1によって形成される接点層31と、接点層31の一方の端面にAg粉末2によって形成されるAg層32と、を有する。
【0026】
2層成型体30を形成した後、酸素分圧を制御しながら熱処理を行う。図13は、実施の形態1に係る電気接点材料の製造方法で使用される熱処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。熱処理装置50は、横型環状炉51と、ヒータ52と、温度コントローラ53と、極低酸素分圧制御装置54と、Arガスボンベ55と、配管56と、ガス配管57と、バルブ58と、を備える。
【0027】
横型環状炉51の炉心管は、一例ではアルミナ製である。ヒータ52は、横型環状炉51の延在方向の中央部に設けられ、上部が開閉可能である。温度コントローラ53は、ヒータ52と接続され、ヒータ52が設けられる横型環状炉51内が予め定められた温度となるようにヒータ52を制御する。横型環状炉51と極低酸素分圧制御装置54とは、極低酸素分圧制御装置54からの酸素を含むガスが横型環状炉51を介して極低酸素分圧制御装置54へと戻る循環路を構成するように、ガス配管57によって接続される。Arガスボンベ55は、配管56を介して極低酸素分圧制御装置54に接続される。バルブ58は、ガス配管57に設けられる。
【0028】
このような構成の熱処理装置50では、Arガスボンベ55から供給されたArガスは、極低酸素分圧制御装置54を経由して、横型環状炉51に導入される。横型環状炉51に導入されたArガスは、反対側の端部から、ガス配管57を介して再び極低酸素分圧制御装置54に還流される。
【0029】
Ag層32を下にして2層成型体30をアルミナの板の上に載置し、熱処理装置50の横型環状炉51内に、2層成型体30を載置したアルミナの板を挿入する。ついで、横型環状炉51の端部のバルブ58を開けて、ガス配管57内および横型環状炉51内の気体をArガスで置換する。その後、Arガスで内部雰囲気を1atmにし、極低酸素分圧制御装置54を動作させて、Arガスを還流させ、内部の酸素分圧が1×10-27atm前後の極低酸素分圧になるまで待つ。酸素分圧が安定してから、横型環状炉51の温度を5℃/minの昇温速度で500℃まで上昇させる。その後、図3の酸素分圧の制御の経路に従ってSnO2が還元されないように、すなわち、550℃で1×10-24atmとなり、600℃で1×10-23atmとなり、650℃で1×10-21atmとなるように、炉内の温度と酸素分圧とを制御する。つまり、図3に示されるSnO2とFeOとが共存する領域R内に酸素分圧が収まるように注意しながら、横型環状炉51の温度を徐々に増加させる。これは、SnO2を還元させずに、FeOの形態を維持する酸素分圧および温度の条件で、2層成型体30を熱処理することと同等である。そして、900℃で7.3×10-15atmとなった後、この状態で2時間焼結する。
【0030】
焼結後、昇温時と同様に酸素分圧に注意しながら炉温を徐々に下げ、昇温時のように500℃で1×10-27atmとなるように、酸素分圧を低下させる。その後、横型環状炉51のヒータ52の電源を停止して、400℃まで下がるのを待ってから、ヒータ52上部を開け、1×10-27atmの低酸素分圧のまま、横型環状炉51の炉芯管を冷却させる。そして、炉芯管の実温が50℃以下になるまで待ってから、極低酸素分圧制御装置54を停止させ、横型環状炉51内のArガスを排気して、2層成型体30を取り出す。SnO2とFeOとが共存するように酸素分圧と温度とを制御して2層成型体30を熱処理する工程は、熱処理工程に対応する。
【0031】
このようにして製造される2層成型体30の接点層31を構成する電気接点材料は、SnO2とFeOとが共存した状態となる。上記したように、粉末焼結法等の方法で製造した場合には、SnO2とFeOとが共存せず、SnO2は還元されてSnとなってしまう。つまり、通常の方法では、Agに含まれるSnO2とFeOとが共存する状態は得られない。
【0032】
横型環状炉51から取り出した2層成型体30は、ワイヤ式放電加工機を用いて、気中用の遮断器、電磁開閉器、リレーなどの制御機器の接点の形状に加工される。ここでは、遮断器用の接点の形状に加工される場合を説明する。遮断器用の接点には、可動接点と固定接点とがあり、一例では、可動接点は4×6mmとなるように、固定接点は5×5mmとなるようにワイヤ式放電加工機によって加工される。次に、銀ロウ材を用いて、加工した接点を遮断器の銅電極に抵抗加熱によって溶接する。銀ロウ材の一例は、BAg-7(Ag-Cu(銅)-Zn(亜鉛)-Sn系)である。BAg-7は、日本産業規格(Japanese Industrial Standards:JIS)のZ 3261:1998に規定される銀ロウである。JIS Z 3261:1998は、国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)が制定する国際規格3677:1992(MOD)に対応する。急加熱急冷が可能な自動溶接機を使用するのは、溶接中の接点の温度上昇によって、接点内部のSnO2とFeOとの反応が進むのを抑制するためである。その後、ロウ付けを行った接点は、遮断器に組み上げられる。
【0033】
つぎに、実施の形態1に係る電気接点材料を用いた遮断器および電磁開閉器について説明する。図14は、実施の形態1に係る電気接点材料を用いた遮断器の構成の一例を模式的に示す正面図である。図15は、実施の形態1による電気接点材料を用いた遮断器の構成の一例を模式的に示す断面図であり、図14のXV-XV断面図である。図14および図15において、固定接触子71が配置される面内において、固定接触子71の延在方向をX軸方向とし、X軸方向と直交する方向をY軸方向とする。また、X軸方向およびY軸方向に垂直な方向をZ軸方向とする。
【0034】
遮断器70は、X軸方向に延在する固定接触子71と、ZX面内方向で移動可能な可動接触子73と、消弧用絶縁材料成型体75と、を備える。固定接触子71は、可動接触子73と対向する面における、固定接触子71の延在方向の一端に固定接点72を有する。可動接触子73は、可動接点74を有する。可動接点74は、固定接触子71と対向する面において、固定接点72と対応する位置に設けられている。固定接点72および可動接点74に、上記した電気接点材料が用いられる。可動接点74が固定接点72と接触した状態において、可動接触子73は、X軸方向に延在した形状を有する。一例では、可動接触子73の可動接点74が設けられる端部とは反対側の端部で、可動接触子73はZX面内方向で回動可能に固定される。
【0035】
消弧用絶縁材料成型体75は、可動接点74と固定接点72とが開離するときに可動接点74と固定接点72との間で発生するアークに曝される位置に配置される。図14および図15の例では、固定接触子71および可動接触子73のY軸方向の両側に消弧用絶縁材料成型体75が配置されている。この遮断器70の構成によって、接点表面へのSnO2の堆積およびAgの硫化による接触抵抗増大を緩和することができる。
【0036】
図16は、実施の形態1に係る電気接点材料を用いた電磁開閉器の構成の一例を示す断面図である。電磁開閉器90は、絶縁物で成型された取り付け台91aと、取り付け台91aに固定されたケイ素鋼板を積層した固定鉄心92と、を備える。
【0037】
電磁開閉器90は、同じく絶縁物で成型されたベース91bと、ベース91bに取り付けられる固定接触子93と、可動鉄心94と、操作コイル95と、クロスバー96と、を備える。可動鉄心94は、固定鉄心92と同じくケイ素鋼板を積層した鉄心で、両方の鉄心は対向配置されている。操作コイル95は、励磁時に、引き外しバネ97に抗して固定鉄心92と可動鉄心94とを吸着させる駆動力を発生する。クロスバー96は、絶縁物で形成され、角窓98が設けられている。クロスバー96は、下端で可動鉄心94を保持している。
【0038】
電磁開閉器90は、可動接触子99と、押さえバネ100と、端子ネジ101と、アークカバー102と、を備える。可動接触子99は、クロスバー96の角窓98に挿入されていて、押さえバネ100により保持されている。固定接触子93は、可動接触子99に対向して設けられていて、両者が接触すると電流が流れる状態になる。可動接触子99には可動接点103が接合されており、固定接触子93には固定接点104が接合されている。可動接点103および固定接点104に、上記した電気接点材料が用いられる。端子ネジ101は、電磁開閉器90を外部回路に接続するのに使用される。アークカバー102には、消弧室102aが設けられている。電磁開閉器90では、可動接点103と固定接点104との間にアーク107が発生する。この電磁開閉器90の構成によって、接点表面へのSnO2の堆積およびAgの硫化による接触抵抗増大を緩和することができる。
【0039】
実施の形態1の電気接点材料は、Ag-SnO2焼結体中に、SnO2の還元効果のあるFeOを主成分とするFe酸化物粒子を混合させた。これによって、FeOとSnO2の酸化ポテンシャルの差を利用して、酸化物であるSnO2をFeOを使って加熱のみで還元して、接点の接触抵抗増大を抑制することが可能になる。また、アークによる熱を受けた場合に、FeO粒子が酸化剤として働き、SnO2粒子の一部を還元し、SnO2の表面への堆積が抑制される。これによって、接点表面へのSnO2の堆積による接触抵抗増大を緩和することができる。さらに、アークによる熱を受けた場合に、FeO粒子が酸化剤として働き、SnO2粒子の一部を還元し、還元されたSnとAg粒子とが合金化した成分をさらに含む。この構成によって、接点表面のAgの硫化による接触抵抗の増大を緩和することができる。
【0040】
また、FeOとSnO2とが共存することができる温度および酸素分圧の組み合わせの条件にしたがって、熱処理を行うことによって、FeOが酸化されず、またSnO2が還元されない状態で、電気接点材料を製造することができる。すなわち、SnO2とFeOとを共存させた接点の製造が可能になる。この結果、遮断時のアークによる接点の接触抵抗の増加を抑制しながら、耐硫化性を従来に比して高めることができる電気接点材料を得ることができる。つまり、極低酸素雰囲気化でFeO粒子とSnO2粒子とを含有する電気接点材料からなる接点を形成することにより、通電試験での接点の抵抗上昇を抑制し、また耐硫化性を高めることができる。
【0041】
実施の形態2.
実施の形態1では、Ag粉末と、SnO2粉末と、FeO粉末と、を用いて、Ag-SnO2中に、SnO2の還元効果のあるFeOを主成分とするFe酸化物粒子を混合させた電気接点材料の製造方法について説明した。実施の形態2では、Ag粉末と、SnO2粉末と、Fe酸化物粉末であるFe34粉末またはFe23粉末と、を用いてAg-SnO2焼結体中に、FeOを主成分とするFe酸化物粒子を混合させた電気接点材料の製造方法について説明する。
【0042】
電気接点材料の原料は、一例では、Ag粉末、SnO2粉末およびFe34粉末である。ここでは、Ag粉末が87wt%であり、SnO2粉末とFe34粉末との合計が13wt%である場合を例に挙げる。また、Ag粉末の平均粒径は5μmとし、SnO2粉末およびFe34粉末の平均粒径は1μmとすることができる。
【0043】
まず、乾式混合装置によって、SnO2粉末およびFe34粉末の組み合わせを15分混合する。その後、混合した粉末にAg粉末を入れて、さらに15分混合する。これによって、SnO2粉末、Fe34粉末およびAg粉末を混合した混合粉末が得られる。
【0044】
ついで、Φ15mmの円筒金型10に混合粉末を入れて、密度100%のときに目的とする接点の厚さが1.5mmになるように秤量して、予め定められた成型圧力で粉末が崩れない程度に軽く成型を行う。一例では、成型圧力は、400MPaである。これによって成型体が形成される。
【0045】
つぎに、成型体をアルミナの板の上に載置し、熱処理装置50のアルミナ製の横型環状炉51内に、成型体を載置したアルミナの板を挿入する。実施の形態2で使用される熱処理装置は、実施の形態1の図13に示した熱処理装置50と同様の構成を有するが、ヒータ52の構成が異なる。実施の形態2で使用される熱処理装置では、加熱エリアを横型環状炉51の長手方向に3分割して、個々の加熱エリアを別々に制御できるヒータ52が用いられる。接点となる成型体が中央の加熱エリアに配置される。また、両側の加熱エリアに、酸素ゲッタ材が配置される。酸素ゲッタ材の一例は、1cm角程度に裁断した金属Al(アルミニウム)箔片である。ここでは、実施の形態1の図13の符号を用いて、熱処理装置50での熱処理について説明する。
【0046】
その後、横型環状炉51の端部のバルブ58を開けて、ガス配管57内および横型環状炉51内の気体をArガスで置換する。ついで、Arガスで内部雰囲気を1atmにし、極低酸素分圧制御装置54を動作させて、Arガスを還流させ、内部の酸素分圧が1×10-27atm前後の極低酸素分圧になるまで待つ。酸素分圧が安定してから、横型環状炉51の温度を5℃/minの昇温速度で500℃まで上昇させて、1回目の焼結を開始する。この極低酸素領域で500℃を超えると、Fe34がFeOに還元され始めるため、酸素分圧が増加方向に揺らぐ。このため、酸素分圧が十分に落ち着くのを待ってから、中央の加熱エリアのヒータ52を制御して炉温を少しずつ上昇させる。両側の加熱エリアのヒータ52は500℃を維持する。このとき、昇温と同時に制御酸素分圧もわずかずつ増加させる。SnO2が還元されないように、すなわち、中央の加熱エリアが、550℃で1×10-24atmとなり、600℃で1×10-23atmとなり、650℃で1×10-21atmとなるように炉内の温度と酸素分圧とを制御する。つまり、図3に示されるSnO2とFeOとが共存する領域R内に酸素分圧が収まるように注意しながら、横型環状炉51の温度を徐々に増加させる。そして、750℃で1.5×10-18atmの酸素分圧となった後、この状態を保ちながら48時間焼結する。
【0047】
1回目の焼結で、焼結温度をAgの融点よりも200℃以上低くするのは、液相焼結が起きないようにするためである。実施の形態2では、昇温中にFe34から分離したO2ガスが成型体を抜けやすくするため、元々の成型体の密度を低くしている。もしAgの融点近くまで焼結温度を上げてしまうと、成型体内の空洞部分が、溶けたAgに囲まれてクローズドポア化し、密度の低い接点が形成されてしまう。このため、液相焼結が生じない温度で焼結が行われる。
【0048】
焼結後、昇温時と同様に酸素分圧に注意しながら炉温を徐々に下げ、昇温時のように500℃で1×10-27atmまで酸素分圧を低下させる。その後、横型環状炉51の3基のヒータ52の電源を停止して、400℃まで下がるのを待ってから、ヒータ52の上部を開け、1×10-27atmの低酸素分圧のまま、横型環状炉51の炉心管を冷却させる。そして、炉心管の実温が50℃以下になるまで待ってから、極低酸素分圧制御装置54を停止し、炉内のArガスを排気して、成型体を取り出す。
【0049】
その後、取り出した成型体の一方の面にAg層を付加した2層成型体30を形成する。図17から図23は、実施の形態2に係る電気接点材料の製造方法における2層成型体の形成方法の一例を模式的に示す断面図である。図17に示されるように、円筒金型10のダイ11と、ダイ11に設けられる貫通孔に挿入された下パンチ12と、によって、成型体31aを入れる空間15bが形成される。図18に示されるように、成型体31aがダイ11内に挿入される。ついで、図19および図20に示されるように、ダイ11内の成型体31aの上にAg粉末2が入れられる。このとき、ダイ11の中に入れられたAg粉末2は、成型体31aの目的とする厚さの1/10になるように秤量される。その後、図21に示されるように、すりきり板16で、ダイ11の上面よりも上側に存在するAg粉末2の余剰分がすりきられる。ついで、図22に示されるように、上パンチ13が取り付けられる。そして、図23に示されるように、ダイ11を上下反転させてから、予め定められた成型圧力で成型する。一例では、成型圧力は、640MPaである。これによって、2層成型体が形成される。2層成型体は、接点層とAg層とを有し、接点層は、一度焼結された焼結体によって構成される。
【0050】
ついで、2層成型体30をAg層が下になるようにアルミナ板の上に載置し、熱処理装置50の横型環状炉51内に、2層成型体を載置したアルミナの板を挿入する。ここでも加熱エリアが3分割され、加熱エリアを別々に温度制御できる熱処理装置50が用いられる。接点となる2層成型体が中央の加熱エリアに配置される。また、両側の加熱エリアに、酸素ゲッタ材が配置される。酸素ゲッタ材の一例は、1cm角程度に裁断した金属Al箔片である。
【0051】
その後、横型環状炉51の端部のバルブ58を開けて、ガス配管57内および横型環状炉51内の気体をArガスで置換する。ついで、Arガスで内部雰囲気を1atmにし、極低酸素分圧制御装置54を動作させて、Arガスを還流させ、内部の酸素分圧が1×10-27atm前後の極低酸素分圧になるまで待つ。酸素分圧が安定してから、横型環状炉51の温度を5℃/minの昇温速度で一気に500℃まで上昇させ、2回目の焼結を開始する。その後、SnO2が還元されないように、すなわち、550℃で1×10-24atmとなり、600℃で1×10-23atmとなり、650℃で1×10-21atmとなるように炉内の温度と酸素分圧とを制御する。つまり、図3に示されるSnO2とFeOとが共存する領域R内に酸素分圧が収まるように注意しながら、横型環状炉51の温度を徐々に増加させる。1回目の焼結では、750℃以上に上げていないため、酸素分圧値に注意しながら徐々に昇温し、酸素分圧が増加するたびに、設定値まで酸素分圧が戻るのを待って、昇温を再開する。そして、900℃で7.3×10-15atmとなった後、この状態で2時間焼結する。
【0052】
焼結後、昇温時と同様に酸素分圧に注意しながら炉温を徐々に下げ、昇温時のように500℃で1×10-27atmまで酸素分圧を低下させる。その後、横型環状炉51の3基のヒータ52の電源を停止して、ヒータ52の上部を開け、1×10-27atmの低酸素分圧のまま横型環状炉51の炉心管を冷却させる。そして、炉心管の実温が50℃以下になるまで待ってから、極低酸素分圧制御装置54を停止し、炉内のArガスを排気して、2層成型体を取り出す。以上のように、1回目および2回目の焼結では、SnO2を維持しながら、Fe34またはFe23をFeOに還元させる酸素分圧および温度の条件で熱処理を行い、SnO2とFeOとを含む成型体が形成される。つまり、SnO2粒子とFeO粒子とが共存した状態となる電気接点材料によって構成される接点層を含む2層成型体が製造される。
【0053】
横型環状炉51から取り出した2層成型体は、ワイヤ式放電加工機を用いて、気中用の遮断器、電磁開閉器、リレーなどの制御機器の接点の形状に加工される。ここでは、遮断器用の接点の形状に加工される。遮断器用の接点には、可動接点と固定接点とがあり、一例では、可動接点は4×6mmとなるように、固定接点は5×5mmとなるようにワイヤ式放電加工機によって加工される。次に、銀ロウ材のBAg-7を用いて、加工した接点を遮断器の銅電極に抵抗加熱によって溶接する。その後、ロウ付けを行った接点は、遮断器に組み上げられる。
【0054】
なお、上記した説明では、原料粉末に平均粒径1μmのFe34粉末を用いる場合を説明したが、Fe34粉末の代わりに平均粒径1μmのFe23粉末を用いてもよい。
【0055】
実施の形態2では、Fe34またはFe23とSnO2とを含有する成型体を、SnO2が還元しない酸素分圧領域で、Fe34またはFe23をFeOに還元し、最終的にSnO2とFeOとが共存する電気接点材料とした。これによって、遮断時のアークによる接点の接触抵抗の増加を抑制しながら、耐硫化性を従来に比して高めることができる電気接点材料を得ることができる。極低酸素雰囲気化でFeOとSnO2を含有する接点を形成することにより、通電試験での接点の抵抗上昇を抑制し、また耐硫化性を高めることができる。また、SnO2を維持しながら、Fe34またはFe23をFeOに還元させる酸素分圧および温度の条件で熱処理を行い、SnO2とFeOとを含む成型体を形成することによって、接点表面へのSnO2の体積による接触抵抗の増大を緩和することができる。
【実施例
【0056】
(電気接点材料の製造方法)
[実施例1]
電気接点材料の原料として、平均粒径5μmのAg粉末、平均粒径1μmのSnO2粉末、および平均粒径1μmのFeO粉末が用意され、実施の形態1で説明した方法で、電気接点材料が製造される。実施例1では、Ag粉末は83wt%とされ、SnO2粉末は13.1wt%とされ、FeO粉末は3.9wt%とされる。また、実施の形態1で説明した方法で、電気接点材料から4×6mmのサイズの可動接点と、5×5mmのサイズの固定接点と、を加工し、遮蔽器を組み上げる。
【0057】
[実施例2]
実施例2では、Ag粉末は83wt%とされ、SnO2粉末は10.63wt%とされ、FeO粉末は6.37wt%とされる以外は、実施例1と同様である。
【0058】
[実施例3]
実施例3では、Ag粉末は83wt%とされ、SnO2粉末は8.5wt%とされ、FeO粉末は8.5wt%とされる以外は、実施例1と同様である。
【0059】
[比較例1]
電気接点材料の原料として、平均粒径5μmのAg粉末および平均粒径1μmのSnO2粉末が用意される。比較例1では、Ag粉末は83wt%とされ、SnO2粉末は17wt%とされる。比較例1では、Ag粉末とSnO2粉末とを30分混合した後、実施の形態1で説明した方法で、2層成型体30が形成され、2層成型体30を、Arガス中で900℃で2時間の焼結を行い電気接点材料を製造する。つまり、実施の形態1のように酸素分圧を制御せずに、焼結を行う。また、実施の形態1で説明した方法で、電気接点材料から4×6mmのサイズの可動接点と、5×5mmのサイズの固定接点と、を加工し、遮蔽器を組み上げる。
【0060】
[比較例2]
比較例2では、電気接点材料の原料として、FeO粉末が追加されること以外は、比較例1と同様である。比較例2では、Ag粉末は83wt%とされ、SnO2粉末は13.1wt%とされ、FeO粉末は3.9wt%とされる。
【0061】
[比較例3]
比較例3では、Ag粉末は83wt%とされ、SnO2粉末は10.63wt%とされ、FeO粉末は6.37wt%とされる以外は、比較例2と同様である。
【0062】
[比較例4]
比較例4では、Ag粉末は83wt%とされ、SnO2粉末は8.5wt%とされ、FeO粉末は8.5wt%とされる以外は、比較例2と同様である。
【0063】
[比較例5]
比較例5では、比較例2のFeO粉末が平均粒径1μmのFe34粉末に代わること以外は、比較例2と同様である。
【0064】
[比較例6]
比較例6では、比較例3のFeO粉末がFe34粉末に代わること以外は、比較例3と同様である。
【0065】
[比較例7]
比較例7では、比較例4のFeO粉末がFe34粉末に代わること以外は、比較例4と同様である。
【0066】
[実施例4]
電気接点材料の原料として、平均粒径5μmのAg粉末、平均粒径1μmのSnO2粉末、および平均粒径1μmのFe34粉末が用意され、実施の形態2で説明した方法で、電気接点材料が製造される。実施例4では、Ag粉末は87wt%とされ、SnO2粉末は10wt%とされ、Fe34粉末は3wt%とされる。また、実施の形態2で説明した方法で、電気接点材料から4×6mmのサイズの可動接点と、5×5mmのサイズの固定接点と、を加工し、遮蔽器を組み上げる。
【0067】
[実施例5]
実施例5では、Ag粉末は87wt%とされ、SnO2粉末は8.13wt%とされ、Fe34粉末は4.88wt%とされる以外は、実施例4と同様である。
【0068】
[実施例6]
実施例6では、実施例5のFe34粉末が平均粒径1μmのFe23粉末に代わること以外は、実施例5と同様である。
【0069】
[比較例8]
比較例8では、Ag粉末は87wt%とされ、SnO2粉末は13wt%とされる。Ag粉末とSnO2粉末とを30分混合した後、実施の形態1で説明した方法で、2層成型体30が形成され、2層成型体30を、Arガス中で900℃で2時間の焼結を1回行う。つまり、実施の形態2のように酸素分圧を制御した2回の焼結を行わずに、1回の焼結を行う。また、実施の形態2で説明した方法で、電気接点材料から4×6mmのサイズの可動接点と、5×5mmのサイズの固定接点と、を加工し、遮蔽器を組み上げる。
【0070】
[比較例9]
比較例9では、Ag粉末は87wt%とされ、SnO2粉末は10wt%とされ、Fe34粉末は3wt%とされ、実施の形態1で説明した方法で、2層成型体30が形成されること以外は、比較例8と同様である。
【0071】
[比較例10]
比較例10では、Ag粉末は87wt%とされ、SnO2粉末は8.13wt%とされ、Fe34粉末は4.88wt%とされる以外は、比較例9と同様である。
【0072】
[比較例11]
比較例11では、Ag粉末は87wt%とされ、SnO2粉末は6.5wt%とされ、Fe34粉末は6.5wt%とされる以外は、比較例9と同様である。
【0073】
(遮蔽試験)
[実施例1から3、比較例1から7]
組み上げた遮断器で、AC300V、5kAの条件で、遮断試験を実施する。遮断器の機構部分の個体差を減らすため、接点は閉極した状態、すなわち投入状態から通電を開始し、遮断器内部の過電流検知の引き外し装置の働きにより開極させる。また、閉極開始のタイミングに合わせて、試験電流の位相制御を行い、最大電流の点で開極が開始されるようにする。同条件で3回ずつ試験を行う。遮断試験による接点消耗量を遮断試験前後の残存面積から算出する。また、遮断試験前後の遮断器の端子間抵抗を測定する。接点消耗量は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)による遮断試験前後の接点の断面観察によって行われる。そして、これらの測定の結果を平均する。以下では、SEMによる断面観察は、断面SEMと称される。さらに、遮断試験後の遮断器の接点の表面近傍のAgを元素分析する。接点の表面から100μmの深さの範囲における任意の10か所について元素分析を行い、平均値を算出する。
【0074】
図24は、実施例1から3および比較例1から7で製造した電気接点材料を用いた遮蔽器の遮蔽試験の測定結果を示す図である。図24では、試験回数nが3である場合の結果を示している。図24には、実施例1から3および比較例1から7における電気接点材料の原料粉末の比率および焼結雰囲気も示している。焼結雰囲気で、「Ar(極低酸素)」と表記されているものは、SnO2とFeOとが共存するように、酸素分圧および温度を制御しながら焼結を行うことを示している。また、「Ar」と表記されているものは、酸素分圧および温度を制御せずに焼結を行うことを示している。
【0075】
どの条件で製造した電気接点材料でも通電によって端子間抵抗は上昇しているが、実施例1から3では、FeOを主成分とするFe酸化物を添加していない比較例1と比べて、明らかに抵抗上昇率は減少している。極低酸素分圧下で熱処理して得られる接点のうち、FeO含有量が多い方が、抵抗上昇率は小さい一方、接点の消耗量は増加傾向にあることが確認される。
【0076】
比較例2から4は、それぞれ実施例1から3と原料は同じで、熱処理雰囲気が異なる。つまり、SnO2とFeOとが共存するように酸素分圧を制御する熱処理が行われていないので、熱処理中にFeOがSnO2を還元してしまい、初めから端子間抵抗が、実施例1から3よりも大きくなる傾向が認められる。また、比較例2から4では、端子間抵抗の上昇の抑制の効果は見られない。原料粉末にFeO粉末ではなくFe34粉末を用いた比較例5から7についても、比較例2から4と同様である。接点の消耗量は、比較例2から4が実施例1から3と比べて大きくなっている。これは、FeOが熱処理中にSnO2を還元してしまい、耐弧成分のSnO2が減少し、遮断試験時に接点の消耗が増大したためであると考えられる。
【0077】
図25は、FeOを含まない比較例1を基準として、SnO2に対するFeOの添加量割合における実施例1から3の遮断試験での抵抗上昇率および接点消耗量を規格化した図である。この図において、横軸はSnO2に対するFeOの添加量割合を示し、縦軸は、FeOを含まない接点を1とした場合の変化量を示している。この図では、平均値も示している。この図から、SnO2に対するFeOの添加量割合が0.6までは抵抗上昇の変化量は減少し、0.6よりも多くなると抵抗上昇の変化量はほぼ変わらなくなる。また、SnO2に対するFeOの添加量割合が増加するほど、接点消耗量の変化量は大きくなる。このことから、SnO2に対するFeOの添加量割合が0.6倍である場合に、抵抗上昇の抑制の効果と接点消耗量の抑制の効果とのバランスがとれた接点が可能となる。
【0078】
図26は、実施例3の電気接点材料の断面SEMによる観察結果の一例を示す図である。図26は、遮蔽試験を行う前の電気接点材料を観察したものである。この図で、黒い部分がFeOであり、灰色部分がSnO2であり、最も白い部分がAgである。Agの粒界に沿って、SnO2およびFeOが存在する様子が見られる。このような特徴は、他の実施例でも同様に観察される。
【0079】
また、遮断試験後の接点表面近傍を断面SEMで観察すると、溶融再凝固したAgと酸化物との偏析が進行している。図27は、実施例1から3および比較例1から7で製造した電気接点材料を用いた遮蔽器の遮断試験後の接点表面付近におけるAg中のSn含有量の測定結果を示す図である。図27では、元素分析を行った箇所の数nが10である場合の結果を示している。図27には、実施例1から3および比較例1から7における電気接点材料の原料粉末の比率も示している。図27より、実施例1から3および比較例2から4の試料のAgには、Snが含まれていることが確認された。比較例2から4では、遮断試験前からSnがAg中に拡散していたものと考えられる。また、比較例1,5から7の試料のAgにはSnが含まれていない。
【0080】
[実施例4から6、比較例8から11]
組み上げた遮断器で、AC300V、3.5kAの条件で、遮断試験を実施する。断面SEMで接点の消耗量を確認する際、消耗量が少ないと測定誤差が大きくなるため、各接点につき遮断試験を2回実施する。実施例1から3および比較例1から7と同じく、遮断器の機構部分の個体差を減らすため、接点は閉極した状態、すなわち投入状態から通電を開始し、遮断器内部の過電流検知の引き外し装置の働きにより開極させる。また、閉極開始のタイミングに合わせて、試験電流の位相制御を行い、最大電流の点で開極が開始されるようにする。同条件で3回ずつ試験を行う。遮断試験による接点消耗量を、遮断試験前後の断面SEMを用いた観察による残存面積から算出する。また、遮断試験前後の遮断器の端子間抵抗を測定する。そして、これらの測定の結果を平均する。さらに、遮断試験後の遮断器の接点の表面近傍のAgを元素分析する。接点の表面から100μmの深さの範囲内における任意の10か所について元素分析を行い、平均値を算出する。
【0081】
図28は、実施例4から6および比較例8から11で製造した電気接点材料を用いた遮蔽器の遮蔽試験の測定結果を示す図である。図28では、試験回数nが3である場合の結果を示している。図28には、実施例4から6および比較例8から11における電気接点材料の原料粉末の比率および焼結雰囲気も示している。焼結雰囲気で、「Ar(極低酸素)、2回焼結」と表記されているものは、実施の形態2で説明したようにSnO2とFeOとが共存するように、酸素分圧および温度を制御しながら焼結を2回行うことを示している。また、「Ar」と表記されているものは、酸素分圧および温度を制御せずに焼結を行うことを示している。
【0082】
どの条件で製造した電気接点材料でも通電によって端子間抵抗は上昇しているが、実施例4から6では、比較例8と比べて、明らかに抵抗上昇率は減少している。極低酸素分圧下で熱処理して得られる接点のうち、Fe34含有量が多い方が、抵抗上昇率は小さい傾向にある。また、Fe23粉末を原料に用いた接点も、抵抗上昇率は小さい傾向にある。Fe34粉末を原料に用いた実施例5、およびFe23粉末を原料に用いた実施例6の効果は同等である。一方、Fe34含有量が増加しても接点消耗量の差はわずかであった。これは、試験電流が少ないためである可能性がある。
【0083】
比較例9,10は、それぞれ実施例4,5と原料は同じで、熱処理雰囲気が異なるが、こちらは端子間抵抗上昇の抑制の効果は見られない。また、比較例11は、比較例10よりもさらにFe34含有量を減らしているが、端子間抵抗上昇の抑制の効果は見られない。
【0084】
また、遮断試験後の接点表面近傍を断面SEMで観察すると、溶融再凝固したAgと酸化物との偏析が進行している。図29は、実施例4から6および比較例8から11で製造した電気接点材料を用いた遮蔽器の遮断試験後の接点表面付近におけるAg中のSn含有量の測定結果を示す図である。図29では、元素分析を行った箇所の数nが10である場合の結果を示している。図29には、実施例4から6および比較例8から11における電気接点材料の原料粉末の比率および焼結雰囲気も示している。図29より、実施例4から6の試料のAgには、Snが含まれていることが確認される。しかし、比較例8から11の試料のAgには、Snが含まれていないことが確認される。
【0085】
(耐硫化性の環境試験)
[実施例1から6、比較例1,5から11]
遮断試験を実施し、端子間抵抗を測定した実施例1から3および比較例1,5から7の各筐体について、気温が25℃であり、湿度が75%であり、濃度が10ppmであるH2S(硫化水素)ガス試験槽内に4日間遮断器を入れる。遮断器を取り出した後の端子間抵抗を測定し、試験槽内に入れる前に対する抵抗上昇率を確認する。
【0086】
図30は、実施例1から3および比較例1,5から7で製造した電気接点材料を用いた遮蔽器の環境試験の測定結果を示す図である。図30では、試験回数nが3である場合の結果を示している。図30には、実施例1から3および比較例1,5から7における電気接点材料の原料粉末の比率および焼結雰囲気も示している。Ag接点の硫化による接触抵抗の上昇はどの条件でも見られたが、実施例1から3で製造した電気接点材料は上昇率が特に低く抑えられていることが確認される。
【0087】
図31は、実施例4から6および比較例8から11で製造した電気接点材料を用いた遮蔽器の環境試験の測定結果を示す図である。図31では、試験回数nが3である場合の結果を示している。図31には、実施例4から6および比較例8から11における電気接点材料の原料粉末の比率および焼結雰囲気も示している。Ag接点の硫化による接触抵抗上昇はどの条件でも見られたが、実施例4から6で製造した電気接点材料は上昇率が特に低く抑えられていることが確認される。また、Fe34粉末を原料に用いた実施例5でも、Fe23粉末を原料に用いた実施例6でも、耐硫化性の効果は同等である。
【0088】
以上のことから、極低酸素雰囲気化でFeOとSnO2を含有する接点を形成することにより、通電試験での接点の抵抗上昇を抑制し、また耐硫化性を上げることができる。また、Fe34またはFe23とSnO2とを含有する接点を、SnO2が還元しない酸素分圧領域で、Fe34またはFe23からFeOに還元し、最終的にSnO2とFeOが共存する接点を形成することによっても、通電試験での接点の抵抗上昇を抑制し、また耐硫化性を上げることができる。
【0089】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 混合粉末、2 Ag粉末、10 円筒金型、11 ダイ、12 下パンチ、13 上パンチ、15,15b 空間、15a 隙間、16 すりきり板、30 2層成型体、31 接点層、31a 成型体、32 Ag層、50 熱処理装置、51 横型環状炉、52 ヒータ、53 温度コントローラ、54 極低酸素分圧制御装置、55 Arガスボンベ、56 配管、57 ガス配管、58 バルブ、70 遮断器、71,93 固定接触子、72,104 固定接点、73,99 可動接触子、74,103 可動接点、90 電磁開閉器。
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