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特許7584648リチウム二次電池用非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20241108BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
H01M4/505
H01M4/525
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023526649
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 KR2022003680
(87)【国際公開番号】W WO2022197094
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0034084
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ウン・ヨム
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-134168(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107195970(CN,A)
【文献】特表2020-504434(JP,A)
【文献】特表2015-522209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052-10/0569
H01M 4/13-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩と、有機溶媒と、下記化学式1-1で表される化合物を含む添加剤と、を含む、リチウム二次電池用非水電解液:
【化1】
(前記化学式1-1中、
R1は、フッ素;または1つ以上のフッ素で置換された炭素数1~10のアルキル基であり、
R2は、炭素数1~10のアルキル基であり、
mは、0~4の何れか1つの整数である。)
【請求項2】
前記R1が、1つ以上のフッ素で置換された炭素数1~5のアルキル基である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項3】
前記R1が、1つ以上のフッ素で置換されたメチル基である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項4】
前記mが0である、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項5】
前記化学式1-1で表される化合物の含量が、前記非水電解液の全重量を基準として0.1重量%~5重量%である、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項6】
前記化学式1-1で表される化合物の含量が、前記非水電解液の全重量を基準として0.1重量%~3重量%である、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項7】
前記添加剤は、ビニレンカーボネート、1,3-プロパンスルトン、エチレンサルフェート、およびリチウムジフルオロホスフェートから選択される1種以上をさらに含むものである、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項8】
前記リチウム塩は、LiPFおよびLiN(FSOから選択される1種以上を含むものである、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項9】
前記有機溶媒は、環状カーボネート系溶媒、直鎖状カーボネート系溶媒、および直鎖状エステル系溶媒から選択される2種以上の混合物を含むものである、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項10】
正極活物質を含む正極と、
負極活物質を含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、
請求項1からのいずれか一項に記載の非水電解液と、を含むリチウム二次電池。
【請求項11】
前記正極活物質は、下記化学式2で表されるリチウム複合遷移金属酸化物を含むものである、請求項10に記載のリチウム二次電池。
[化学式2]
Li1+x(NiCoMn)O
(前記化学式2中、
Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、またはMoであり、
1+x、a、b、c、およびdは、それぞれ独立の元素の原子分率であって、
-0.2≦x≦0.2、0.50≦a<1、0<b≦0.30、0<c≦0.30、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である。)
【請求項12】
前記aが0.60≦a<1である、請求項11に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月16日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0034084号の出願日の利益を主張し、その全ての内容は本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、一般に、リチウムを含有している遷移金属酸化物からなる正極活物質を含む正極と、リチウムイオンを貯蔵可能な負極活物質を含む負極との間にセパレータを介在して電極組立体を形成し、前記電極組立体を電池ケースに挿入した後、リチウムイオンを伝達する媒介体となる非水電解液を注入してから密封する方法により製造される。
【0004】
リチウム二次電池は、小型化が可能であり、エネルギー密度および使用電圧が高いため、モバイル機器、電子製品、電気自動車などの多様な分野に適用されている。リチウム二次電池の適用分野が多様化するに伴い、求められる物性条件も益々高くなっており、特に、高温条件でも安定して駆動されることができるリチウム二次電池の開発が求められている。
【0005】
一方、高温条件でリチウム二次電池が駆動される場合、電解液に含まれているLiPFなどのリチウム塩からPF アニオンが熱分解され、PFなどのルイス酸を発生させることがあり、これは、水分と反応してHFを生成させる。かかるPF、HFなどの分解産物は、電極の表面に形成されている被膜を破壊する恐れがあるだけでなく、有機溶媒の分解反応を起こす恐れがある。また、正極活物質の分解産物と反応して遷移金属イオンを溶出させ、溶出された遷移金属イオンが負極に電着されて、負極の表面に形成されている被膜を破壊する恐れがある。
【0006】
このように破壊された被膜上で電解質の分解反応が持続されると電池の性能がさらに低下するため、高温条件でも優れた性能を維持することができる二次電池の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであって、スルホニルピリジン系添加剤を含むことで、正極被膜の形成に寄与する非水電解液、およびそれを含むリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によると、本発明は、リチウム塩と、有機溶媒と、下記化学式1で表される化合物を含む添加剤と、を含む、リチウム二次電池用非水電解液を提供する。
【0009】
【化1】
【0010】
前記化学式1中、
R1は、フッ素;または1つ以上のフッ素で置換された炭素数1~10のアルキル基であり、
R2は、炭素数1~10のアルキル基であり、
mは、0~4の何れか1つの整数である。
【0011】
他の実施形態によると、本発明は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータと、前記リチウム二次電池用非水電解液と、を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであって、正極の表面に強固な被膜を形成することで、電解液の分解反応を抑え、正極の溶出を低減することができるリチウム二次電池用非水電解液を提供することができる。
【0013】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用非水電解液を含むことで、電池の高温保管特性および寿命特性が向上したリチウム二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
一般に、リチウム二次電池用電解液に広く用いられるLiPFなどのリチウム塩に含まれているアニオンは、熱分解または水分などにより、フッ化水素(HF)とPFのような分解産物を形成することになる。かかる分解産物は酸(acid)の性質を有しており、電池内で被膜もしくは電極の表面を劣化させる。
【0016】
電解液の分解産物と、繰り返される充放電による正極の構造変化などにより、正極中の遷移金属が電解液の内部に溶出されやすく、溶出された遷移金属は正極にさらに再析出(Re-deposition)して正極の抵抗を増加させる。さらに、溶出された遷移金属が電解液を介して負極に移動する場合、負極に電着され、SEI(solid electrolyte interphase)膜の破壊、およびさらなる電解質分解反応の原因となり、これにより、リチウムイオンの消費および抵抗が増加するなどの問題が発生する。
【0017】
また、電池の初期活性化時に、電解液反応により正極および負極に保護被膜が形成されるが、被膜が上記の理由から不安定になる場合、充放電もしくは高温露出時にさらなる電解液の分解が起こり、電池の劣化を促進し、ガスを発生させる。
【0018】
かかる問題を解決するために、本発明者らは、下記化学式1で表されるスルホニルピリジン系化合物を非水電解液の添加剤として使用し、これにより、電解液の分解反応を減少させ、遷移金属の溶出およびガスの発生を抑制することができることを見出した。また、S系およびF系成分により、正/負極において効率的に正極に保護被膜を形成する効果があることを確認した。
【0019】
具体的に、上述のように、LiPFが含まれている電解液を用いたリチウム二次電池は、LiPFの分解産物であるHFにより電池が劣化するという問題があるが、前記化学式1で表される化合物に含まれているピリジン基はルイス塩基として作用し、HFが生成される前の中間誘導体且つルイス酸であるPFを安定化させる効果がある。特に、ピリジン基は、イミダゾール基などの他のNを含む構造に比べてPFとの結合エネルギーが高いため、HFの生成を減少させるのに効果的である。
【0020】
また、前記化学式1で表される化合物に含まれている-SO-R1官能基は、正/負極で分解されて電極上に形成される被膜を構成し、これは、電極と電解液との間に安定な界面が形成されるのに寄与する。この際、フッ素を含むR1が、スルホニル基ではなくピリジン基に置換される場合、R1の作用により、酸化/還元分解時にピリジン基の構造が崩れるという問題が発生し得るが、本発明のようにスルホニル基に置換される場合には、ピリジン基の構造に影響を与えないため、より円滑に被膜を形成することができる。さらに、本願の化学式1の-SO-R1官能基は、-SOに比べて、被膜の成分に役に立つ機能基であるフッ素をさらに含み得るという点から有利であり、Oに代えてFを含むことで、被膜にLiF成分が含まれ得るため、熱安定性と高電圧特性が向上した被膜の形成により有利であるという利点がある。
【0021】
以下では、本発明をなす各構成についてより詳細に説明する。
【0022】
非水電解液
(1)添加剤
本発明の非水電解液は、下記化学式1で表される化合物を含む添加剤を含む。
【0023】
【化2】
【0024】
前記化学式1中、
R1は、フッ素;または1つ以上のフッ素で置換された炭素数1~10のアルキル基であり、
R2は、炭素数1~10のアルキル基であり、
mは、0~4の何れか1つの整数である。
【0025】
本発明の一実施態様において、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1で表されてもよい。
【0026】
【化3】
【0027】
前記化学式1-1中、
R1、R2、およびmは、前記化学式1での定義のとおりである。
【0028】
本発明の一実施態様において、前記R1は、1つ以上のフッ素で置換された炭素数1~5のアルキル基、具体的に、1つ以上のフッ素で置換されたメチル基、より具体的には、ジフルオロメチル基であってもよい。置換されるフッ素の個数が多くなるほど、より多量のLiFが生成され、被膜を強化することができるが、過度に多いフッ素が置換される場合には、却って抵抗が増加する恐れがある。すなわち、正/負極の表面に形成されるLiFの量を考慮して、ジフルオロメチル基が最も好ましい。
【0029】
本発明の一実施態様において、前記R2は、炭素数1~5の直鎖または分岐鎖のアルキル基であってもよい。
【0030】
本発明の一実施態様において、前記mは、0または1、具体的には0であってもよい。
【0031】
本発明の一実施態様において、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1aで表されるものであってもよい。
【0032】
【化4】
【0033】
本発明の一実施態様において、前記化学式1で表される化合物の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として、0.1重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~3重量%、より好ましくは0.5重量%~1重量%であってもよい。
【0034】
前記化学式1で表される化合物の含量が上記の範囲である場合、好適なレベルの正/負極被膜の形成による性能向上の効果が得られる。
【0035】
具体的に、前記化学式1で表される化合物の含量が0.1重量%未満である場合、正/負極に十分な被膜を形成するには少なすぎる含量であり、5重量%を超える場合には、過量になりすぎて抵抗の増加を引き起こし、電池性能が却って劣化する恐れがある。
【0036】
本発明の非水電解液は、高電圧環境で電解液が分解されて電極の崩壊が引き起こされることを防止するか、低温高率放電特性、高温安定性、過充電防止、高温での電池膨張抑制の効果などをさらに向上させるために、必要に応じて、下記のその他の添加剤を選択的に含んでもよい。
【0037】
上記のその他の添加剤は、環状カーボネート系化合物、ハロゲン置換のカーボネート系化合物、スルトン系化合物、サルフェート系化合物、ホスフェート系またはホスファイト系化合物、ボレート系化合物、ニトリル系化合物、アミン系化合物、シラン系化合物、ベンゼン系化合物、およびリチウム塩系化合物から選択される1種以上であってもよい。
【0038】
前記環状カーボネート系化合物は、ビニレンカーボネート(VC)およびビニルエチレンカーボネート(VEC)から選択される1種以上であってもよく、具体的に、ビニレンカーボネートであってもよい。
【0039】
前記ハロゲン置換のカーボネート系化合物は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)であってもよい。
【0040】
前記スルトン系化合物は、負極の表面で還元反応による安定なSEI膜を形成することができる物質であって、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,4-ブタンスルトン、エテンスルトン、1,3-プロペンスルトン(PRS)、1,4-ブテンスルトン、および1-メチル-1,3-プロペンスルトンから選択される1種以上の化合物であってもよく、具体的に、1,3-プロパンスルトン(PS)であってもよい。
【0041】
前記サルフェート系化合物は、負極の表面で電気的に分解され、高温貯蔵時にもクラックが生じない安定なSEI膜を形成することができる物質であって、エチレンサルフェート(Ethylene Sulfate;Esa)、トリメチレンサルフェート(Trimethylene sulfate;TMS)、またはメチルトリメチレンサルフェート(Methyl trimethylene sulfate;MTMS)から選択される1種以上であってもよい。
【0042】
前記ホスフェート系またはホスファイト系化合物は、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート、およびトリス(トリフルオロエチル)ホスファイトから選択される1種以上であってもよい。
【0043】
前記ボレート系化合物は、リチウムテトラフェニルボレートであってもよい。
【0044】
前記ニトリル系化合物は、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、4-フルオロフェニルアセトニトリル、エチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル(ASA3)、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル(HTCN)、1,4-ジシアノ2-ブテン(DCB)、および1,2,3-トリス(2-シアノエチル)プロパン(TCEP)から選択される1種以上であってもよい。
【0045】
前記アミン系化合物は、トリエタノールアミンおよびエチレンジアミンから選択される1種以上であってもよく、前記シラン系化合物はテトラビニルシランであってもよい。
【0046】
前記ベンゼン系化合物は、モノフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、およびテトラフルオロベンゼンから選択される1種以上であってもよい。
【0047】
前記リチウム塩系化合物は、前記電解質に含まれるリチウム塩と異なる化合物であり、リチウムジフルオロホスフェート(LiDFP;LiPO)、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB;LiB(C)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、およびリチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート(LiDFOP)から選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0048】
好ましくは、本発明の一実施態様に係る非水電解液の添加剤は、その他の添加剤として、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,3-プロペンスルトン(PRS)、エチレンサルフェート(ESa)、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、エチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル(ASA3)、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル(HTCN)、1,4-ジシアノ2-ブテン(DCB)、1,2,3-トリス(2-シアノエチル)プロパン(TCEP)、リチウムジフルオロオキサラトボレート(LiODFB)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート(LiDFOP)、およびリチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)から選択される1種以上をさらに含んでもよい。
【0049】
より好ましくは、本発明の一実施態様に係る非水電解液の添加剤は、その他の添加剤として、ビニレンカーボネート(VC)、1,3-プロパンスルトン(PS)、エチレンサルフェート(ESa)、およびリチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)から選択される1種以上をさらに含んでもよい。この場合、前記化学式1で表される化合物が主に形成する正/負極の被膜成分に加えて、ポリメリック(polymeric)な被膜をともに形成することができるため、高温性能をさらに向上させる効果がある。
【0050】
一方、上記のその他の添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として、0.1重量%~10重量%であってもよく、好ましくは、0.3重量%~5重量%であってもよい。上記のその他の添加剤の含量が0.1重量%未満である場合、追加的な安定な被膜形成の効果が少ないため、高温容量およびガス発生の点において改善がなく、10重量%を超える場合、電池の充放電時に電解液中の副反応が過度に発生する可能性がある。特に、前記SEI膜形成用の添加剤が過剰に添加される際に、高温で十分に分解されないため、常温の電解液中で未反応物または析出されたままで存在し得る。これにより、電池の寿命または抵抗特性が低下する副反応が生じる恐れがある。
【0051】
(2)有機溶媒
本発明の非水電解液は、有機溶媒を含む。
【0052】
前記有機溶媒としては、リチウム電解質に通常用いられる種々の有機溶媒が制限されずに使用できる。例えば、前記有機溶媒は、環状カーボネート系溶媒、直鎖状カーボネート系溶媒、直鎖状エステル系溶媒、環状エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物であってもよく、好ましくは、環状カーボネート系溶媒、直鎖状カーボネート系溶媒、および直鎖状エステル系溶媒から選択される2種以上の混合物を含んでもよい。
【0053】
前記環状カーボネート系溶媒は、高粘度の有機溶媒であって、誘電率が高いため電解質中のリチウム塩をよく解離させることができ、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、およびビニレンカーボネートからなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的に、エチレンカーボネート(EC)を含んでもよい。
【0054】
また、前記直鎖状カーボネート系溶媒は、低粘度および低誘電率を有する有機溶媒であって、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネートからなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的に、エチルメチルカーボネート(EMC)を含んでもよい。
【0055】
前記有機溶媒は、高いイオン伝導率を有する電解液を製造するために、環状カーボネート系溶媒と直鎖状カーボネート系溶媒の混合物を用いることが好ましい。
【0056】
前記直鎖状エステル系溶媒は、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、およびブチルプロピオネートから選択される1種以上であってもよい。
【0057】
前記環状エステル系溶媒は、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、およびε-カプロラクトンから選択される1種以上であってもよい。
【0058】
前記ニトリル系溶媒は、スクシノニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、および4-フルオロフェニルアセトニトリルから選択される1種以上であってもよく、好ましくは、スクシノニトリルであってもよい。
【0059】
前記非水電解液の全重量中において、有機溶媒を除いた他の構成成分、例えば、前記添加剤およびリチウム塩の含量を除いた残部は、別に断らない限り、何れも有機溶媒である。
【0060】
(3)リチウム塩
本発明の非水電解液は、リチウム塩を含む。
前記リチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常用いられるものなどが制限されずに使用でき、具体的に、前記リチウム塩は、カチオンとしてLiを含み、アニオンとして、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、B10Cl10 、AlCl 、AlO 、PF 、CFSO 、CHCO 、CFCO 、AsF 、SbF 、CHSO 、(CFCFSO、(CFSO、(FSO、BF 、BC 、BFCHF、PF 、PF 、PO 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CSO 、CFCFSO 、CFCF(CFCO、(CFSOCH、CF(CFSO 、およびSCNから選択される何れか1つ以上を含んでもよい。
【0061】
具体的に、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiBF、LiN(FSO(LiFSI)、LiTFSI、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Lithium bis(pentafluoroethanesulfonyl)imide、LiBETI)、LiSOCF、LiPO、リチウムビス(オキサレート)ボレート(Lithium bis(oxalate)borate、LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(Lithium difluoro(oxalate)borate、LiFOB)、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート(Lithium difluoro(bisoxalato) phosphate、LiDFOP)、リチウムテトラフルオロ(オキサレート)ホスフェート(Lithium tetrafluoro(oxalate) phosphate、LiTFOP)、およびリチウムフルオロマロナト(ジフルオロ)ボレート(Lithium fluoromalonato(difluoro) borate、LiFMDFB)から選択される1種以上であってもよく、好ましくは、LiPFおよびLiN(FSO(LiFSI)から選択される1種以上であってもよい。
【0062】
本発明の一実施態様において、前記電解質中のリチウム塩の濃度は、0.5~4.0M、具体的に0.5M~3.0M、より具体的に0.8M~2.0Mであってもよい。リチウム塩の濃度が上記の範囲である場合、低温出力の改善およびサイクル特性の改善効果を十分に確保するとともに、粘度および表面張力が過度に高くなることを防止し、適切な電解質含浸性が得られる。
【0063】
リチウム二次電池
次に、本発明に係るリチウム二次電池について説明する。
【0064】
本発明に係るリチウム二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータと、非水電解液と、を含み、この際、前記非水電解液は上記の本発明に係る非水電解液である。非水電解液については上述のとおりであるため、これについての説明は省略し、以下では他の構成要素について説明する。
【0065】
(1)正極
本発明に係る正極は正極活物質を含み、正極活物質、バインダー、導電材、および溶媒などを含む正極スラリーを正極集電体上にコーティングした後、乾燥および圧延することで製造することができる。
【0066】
前記正極集電体としては、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが用いられてもよい。
【0067】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物であって、LCO(LiCoO);LNO(LiNiO);LMO(LiMnO);LiMn;LiCoPO;LFP(LiFePO);およびニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびマンガン(Mn)を含むリチウム複合遷移金属酸化物から選択される1種以上であってもよい。
【0068】
本発明の一実施態様において、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、LiNiCoMnO;LiNi1-x-y-zCox (MおよびMは、互いに独立して、Al、Ni、Co、Fe、Mn、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg、およびMoからなる群から選択される何れか1つであり、x、y、およびzは、互いに独立して、酸化物組成元素の原子分率であって、0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z<0.5、x+y+z=1である);および下記化学式2で表される化合物から選択される1種以上であってもよい。
【0069】
具体的に、前記正極活物質は、下記化学式2で表されるリチウム複合遷移金属酸化物を含んでもよい。
【0070】
[化学式2]
Li1+x(NiCoMn)O
【0071】
前記化学式2中、
Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、またはMoであり、
1+x、a、b、c、およびdは、それぞれ独立の元素の原子分率であって、
-0.2≦x≦0.2、0.50≦a<1、0<b≦0.30、0<c≦0.30、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である。
【0072】
前記1+xは、リチウムのモル比を表すものであり、-0.1≦x≦0.2または0≦x≦0.2であってもよい。リチウムのモル比が上記の範囲を満たす際に、リチウム複合遷移金属酸化物の結晶構造が安定して形成されることができる。
【0073】
前記aは、リチウムを除いた全金属中のニッケルのモル比を表すものであり、0.60≦a<1、0.70≦a<1、または0.80≦a<1であってもよい。ニッケルのモル比が上記の範囲を満たす際に、高いエネルギー密度を示して高容量を実現可能である。
【0074】
前記bは、リチウムを除いた全金属中のコバルトのモル比を表すものであり、0<b≦0.25、0<b≦0.20、または0<b≦0.15であってもよい。コバルトのモル比が上記の範囲を満たす際に、良好な抵抗特性および出力特性を実現することができる。
【0075】
前記cは、リチウムを除いた全金属中のマンガンのモル比を表すものであり、0<c≦0.25、0<c≦0.20、または0<c≦0.15であってもよい。マンガンのモル比が上記の範囲を満たす際に、優れた正極活物質の構造安定性を有する。
【0076】
前記dは、リチウムを除いた全金属中のドープ元素のモル比を表すものであり、0<d≦0.08、0<d≦0.05、または0<d≦0.03であってもよい。
【0077】
より具体的に、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O、およびLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oから選択される1種以上であってもよい。
【0078】
前記正極活物質は、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として、80重量%~99重量%、具体的には90重量%~99重量%で含まれてもよい。この際、前記正極活物質の含量が80重量%以下である場合には、エネルギー密度が低くなって容量が低下し得る。
【0079】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合、および集電体への結合を補助する成分であって、通常、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として、1重量%~30重量%の含量で添加されてもよい。かかるバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、またはこれらの種々の共重合体であってもよい。
【0080】
また、前記導電材は、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を付与する物質であって、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として、0.5重量%~20重量%で添加されてもよい。
【0081】
前記導電材の例としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどのカーボンブラック;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブまたはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、またはニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが挙げられる。
【0082】
また、前記正極スラリーの溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone))などの有機溶媒を含んでもよく、前記正極活物質、バインダー、および導電材などを含んだ際に好適な粘度となる量で用いられることができる。例えば、正極活物質、バインダー、および導電材を含む正極スラリー中の固形分の濃度が40重量%~90重量%、好ましくは50重量%~80重量%となるように含まれてもよい。
【0083】
(2)負極
本発明に係る負極は負極活物質を含み、負極活物質、バインダー、導電材、および溶媒などを含む負極スラリーを負極集電体上にコーティングした後、乾燥および圧延することで製造することができる。
【0084】
前記負極集電体は、一般に、3μm~500μmの厚さを有する。かかる負極集電体は、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅;ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;銅またはステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの;またはアルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成することで負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で用いられてもよい。
【0085】
また、前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質;金属またはこれらの金属とリチウムの合金;金属複合酸化物;リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質;リチウム金属;および遷移金属酸化物から選択される1つ以上を含んでもよい。
【0086】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質としては、リチウムイオン二次電池で一般に用いられる炭素系負極活物質であれば特に制限されずに使用可能であり、その代表例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらをともに用いてもよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状、または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛などのような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)、ハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0087】
前記金属またはこれらの金属とリチウムの合金としては、Cu、Ni、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、およびSnからなる群から選択される金属またはこれらの金属とリチウムの合金が使用できる。
【0088】
前記金属複合酸化物としては、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Bi、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、およびSnxMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族の元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)からなる群から選択される1種以上が使用できる。
【0089】
前記リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質としては、Si、SiO(0<x<2)、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn-Y(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、また、これらの少なくとも1つとSiOを混合して用いてもよい。前記元素Yは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db(dubnium)、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0090】
前記遷移金属酸化物の例としては、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0091】
前記負極活物質は、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として、80重量%~99重量%で含まれてもよい。
【0092】
前記バインダーは、導電材、活物質、および集電体の間の結合を補助する成分であって、通常、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として、1重量%~30重量%の含量で添加されてもよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、またはこれらの種々の共重合体などが挙げられる。
【0093】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として、0.5重量%~20重量%で添加されてもよい。このような導電材としては、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどのカーボンブラック;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブまたはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末またはニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。
【0094】
前記負極スラリーの溶媒は、水;またはNMPおよびアルコールなどの有機溶媒を含んでもよく、前記負極活物質、バインダー、および導電材などを含んだ際に好適な粘度となる量で用いられてもよい。例えば、負極活物質、バインダー、および導電材を含むスラリー中の固形分の濃度が30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~70重量%となるように含まれてもよい。
【0095】
(3)セパレータ
本発明に係るリチウム二次電池は、前記正極と負極との間にセパレータを含む。
【0096】
前記セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、リチウム二次電池でセパレータとして通常用いられるものであれば特に制限されずに使用可能であり、特に、電解液のイオンの移動に対して低抵抗であり、且つ優れた電解液含浸能力および安全性を有するものが好ましい。
【0097】
具体的には、セパレータとして、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム;またはこれらの2層以上の積層構造体が使用可能である。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれた、コーティングされたセパレータが用いられてもよく、単層または多層構造として用いられてもよい。
【0098】
上記のような本発明に係るリチウム二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器;およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用に用いられることができる。
【0099】
これにより、本発明の他の実施形態によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール、およびそれを含む電池パックが提供される。
【0100】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;および電力貯蔵用システムの何れか1つ以上の中大型デバイスの電源として利用されることができる。
【0101】
本発明のリチウム二次電池の外形は特に制限されないが、缶を用いた円筒形、角形、パウチ(pouch)形、またはコイン(coin)形などであってもよい。
【0102】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに使用可能であるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールにおける単位電池としても好適に使用可能である。
【0103】
以下、具体的な実施例により本発明を具体的に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0104】
実施例1.
(非水電解液の製造)
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した後、LiPFが1.0Mとなるように溶解させ、非水性有機溶液を製造した。前記化学式1aで表される化合物0.5wt%、ビニレンカーボネート(VC)0.5wt%、および残部の前記非水性有機溶液を混合し、非水電解液100wt%を製造した。
【0105】
(リチウム二次電池の製造)
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に、正極活物質としてLi(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O、導電材(カーボンブラック)、およびバインダー(ポリビニリデンフルオライド)を97.5:1:1.5の重量比で添加し、正極スラリー(固形分の含量:60重量%)を製造した。前記正極スラリーを、厚さ15μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行って正極を製造した。
【0106】
負極活物質(グラファイト:SiO=94.5:5.5の重量比)、バインダー(SBR-CMC)、および導電材(カーボンブラック)を95:3.5:1.5の重量比で溶媒である水に添加し、負極スラリー(固形分の含量:60重量%)を製造した。前記負極スラリーを厚さ6μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行って負極を製造した。
【0107】
前記正極、無機物粒子(Al)が塗布されたポリオレフィン系多孔性セパレータおよび負極を順に積層して電極組立体を製造した。
【0108】
パウチ形の電池ケース内に上記で組み立てられた電極組立体を収納し、前記製造された非水電解液を注液してリチウム二次電池を製造した。
【0109】
実施例2.
非水電解液の製造時に、前記化学式1aで表される化合物を1wt%添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0110】
実施例3.
非水電解液の製造時に、前記化学式1aで表される化合物を2wt%添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0111】
比較例1.
非水電解液の製造時に、前記化学式1aで表される化合物を添加しなかったことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0112】
比較例2.
非水電解液の製造時に、前記化学式1aで表される化合物の代わりにピリジンを添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0113】
比較例3.
非水電解液の製造時に、前記化学式1aで表される化合物の代わりに、ピリジンにフッ素が直接置換された構造の2-フルオロピリジン(2-Fluoro Pyridine)を添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0114】
<実験例1:高温寿命評価>
前記実施例および比較例で製造されたリチウム二次電池をそれぞれ0.1C CCで活性化した後、脱ガスを行った。
【0115】
次いで、25℃、定電流-定電圧(CC-CV)充電条件で、4.20Vまで0.33C CCで充電した後、0.05C current cutを行い、CC条件で2.5Vまで0.33Cで放電した。上記の充放電を1サイクルとし、3サイクルを行った。その後、PNE-0506充放電器(製造社:(株)PNEソリューション、5V、6A)を用いて初期放電容量を測定した。
【0116】
次に、45℃、定電流-定電圧(CC-CV)充電条件で、4.20Vまで0.33C CCで充電した後、0.05C current cutを行い、CC条件で2.50Vまで0.33Cで放電した。上記の充放電を1サイクルとし、200サイクルの充放電を行った。その後、PNE-0506充放電器(製造社:(株)PNEソリューション、5V、6A)を用いて、45℃で200サイクル後の放電容量を測定した。
【0117】
下記式(1)を用いて、高温(45℃)で200サイクル後の放電容量維持率を算出し、その結果を下記表1に示した。
【0118】
式(1):200サイクル後の放電容量維持率(%)=(200サイクル後の放電容量/初期放電容量)×100
【0119】
【表1】
【0120】
上記の表1の結果から、本発明に係る化学式1aで表される化合物を添加剤として使用した実施例1~3は、比較例1~3に比べて容量維持率が高いことが確認できる。
【0121】
このような特性は、実施例で使用された化学式1aで表されるスルホニルピリジン系添加剤が、高温環境でPFを安定化させてHFの生成を減少させるとともに、電極上に安定な被膜を形成させ、熱安定性および高電圧特性を改善したためである。
【0122】
一方、実施例1~3は、ピリジン系添加剤を含まない比較例1だけでなく、スルホニル基とフッ素が含まれていない添加剤を使用した比較例2と比較しても容量維持率が著しく向上したが、このことから、実施例1~3は、ピリジン構造によるPFの安定化効果だけでなく、化学式1aに含まれているスルホニル基およびフッ素による正/負極被膜の形成の影響により、電池の寿命特性が著しく改善されたことが分かる。
【0123】
また、実施例1~3は、スルホニル基なしにフッ素がピリジンに直接置換された添加剤を使用した比較例3と比較しても容量維持率が向上したことが確認できる。これは、比較例3は、スルホニル基による被膜形成の効果がなくなっただけでなく、前述のようにフッ素の作用により、酸化/還元分解時にピリジン環構造に影響を与え、円滑な被膜形成が困難となったためである。このことから、化学式1aが、スルホニル基およびフッ素の両方を含む際に、被膜の形成による高温寿命改善効果があることが確認できる。
【0124】
すなわち、本発明に係る化学式1aで表される化合物を含む非水電解液を適用する場合、高温寿命特性に優れたリチウムイオン電池を提供することができることが分かる。
【0125】
<実験例2:高温貯蔵評価>
前記実施例および比較例で製造されたリチウム二次電池をそれぞれ0.1C CCで活性化した後、脱ガスを行った。
【0126】
次いで、25℃、定電流-定電圧(CC-CV)充電条件で、4.20Vまで0.33C CCで充電した後、0.05C current cutを行い、CC条件で2.5Vまで0.33Cで放電した。上記の充放電を1サイクルとし、3サイクルを行った後、25℃、定電流-定電圧(CC-CV)充電条件で、4.20Vまで0.33C CCで充電してから、0.05C current cutを行った。その後、重量300gの平板測定機にて電池の初期の厚さを測定した。具体的に、平板測定機上に電池を載せ、300gの重りを電池上に載せて現れる数値を確認する方式により厚さを測定した。
【0127】
初期の厚さを測定した二次電池は、60℃のオーブン(0F-02GW、ゼイオテック(JEIO TECH)社製)にて4週間放置し、4週後にオーブンから取り出して常温で1時間冷却した後、初期と同様に300gの平板測定機で高温貯蔵後の厚さを測定した。
【0128】
下記式(2)を用いて、高温貯蔵後の電池の厚さ増加率を算出し、その結果を下記の表2に示した。
【0129】
式(2):60℃貯蔵4週後の厚さ増加率(%)=(60℃貯蔵4週後の電池の厚さ-初期の電池の厚さ)/初期の電池の厚さ×100
【0130】
【表2】
【0131】
前記表2の結果から、本発明に係る化学式1aで表される化合物を添加剤として使用した実施例1~3は、比較例1~3に比べて高温貯蔵後の厚さ増加率が低くなることが確認できる。
【0132】
このような特性は、実施例で使用された化学式1aで表されるスルホニルピリジン系添加剤が、高温環境でPFを安定化させてHFの生成を減少させるとともに、電極上に安定な被膜を形成させ、熱安定性を改善し、被膜における副反応によるガスの発生を減少させたためである。
【0133】
一方、実施例1~3は、ピリジン系添加剤を含まない比較例1だけでなく、スルホニル基とフッ素が含まれていない添加剤を使用した比較例2と比較しても高温貯蔵後の厚さ増加率が著しく減少したが、このことから、実施例1~3は、ピリジン構造によるPFの安定化効果だけでなく、化学式1aに含まれているスルホニル基およびフッ素による正/負極被膜の形成の影響により、電極界面における副反応が抑制されていることが分かる。
【0134】
また、スルホニル基なしにフッ素がピリジンに直接置換された添加剤を使用した比較例3の結果から、フッ素のみが置換される場合には、スルホニル基とフッ素の両方が置換される場合に比べて電極上における被膜形成の効果が低下するため、ガス発生量が増加することが分かる。すなわち、化学式1aがスルホニル基およびフッ素の両方を含む際に、被膜の形成によるガス発生量の低減効果があることが確認できる。
【0135】
すなわち、本発明に係る化学式1aで表される化合物を含む非水電解液を適用する場合、高温貯蔵によるガスの発生を抑える特性に優れたリチウムイオン電池を提供できることが分かる。