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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】硬化性化合物製品
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/40 20060101AFI20241108BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20241108BHJP
   B32B 27/42 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08G65/40
C08G65/48
B32B27/42 101
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023528600
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 CN2020139307
(87)【国際公開番号】W WO2022133984
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ファン
(72)【発明者】
【氏名】岡野 善道
(72)【発明者】
【氏名】中谷 晃司
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-509140(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244694(WO,A1)
【文献】特開2019-218659(JP,A)
【文献】特開2019-217048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G,C08K,C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
[式中、R1、R2は、同一又は異なって下記式(r-1)で表される基又は下記式(r-2)
【化2】
(式中、QはC又はCHを示す。式中の2個のQは単結合又は二重結合を介して結合する。R3~R6は同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。R3とR4は互いに結合して環を形成していてもよい。n’は0以上の整数を示す。式中の波線を付した結合手が、D1又はD2に結合する)
で表される基を示す。D1、D2は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。Lは、下記式(L-1-1)
【化3】
(式中、m1は丸括弧内に示される繰り返し単位の平均重合度を示し、2~50である。A3は、同一又は異なって、下記式(a-1)~(a-5)
【化4】
で表される基から選択される基である。前記式(a-1)~(a-5)中の芳香環は、置換基としてアルキル基を有していても良い。)
で表される2価の基を示す。但し、Lに含まれる全てのA3のうち少なくとも1つは、上記式(a-1)~(a-4)で表される基から選択される基であって、式中の芳香環に置換基としてアルキル基を有する基、又は、上記式(a-5)で表される基である]
で表される化合物を含み、前記式(r-1)で表される基と前記式(r-2)で表される基の合計に対する前記式(r-1)で表される基の割合が97%以上である、硬化性化合物製品。
【請求項2】
式(1)中のD1、D2が、同一又は異なって、下記式(d-1)~(d-4)
【化5】
で表される構造を含む基から選択される基である、請求項1に記載の硬化性化合物製品。
【請求項3】
当該硬化性化合物製品を減圧乾燥処理に付した後、NMPに溶解して得られる、20重量%NMP溶液の粘度(η0)と、前記溶液を、23℃に保持したデシケーター内に10日間静置後の粘度(η10)が、下記式(F)を満たす、請求項1又は2に記載の硬化性化合物製品。
η10/η0<2 (F)
【請求項4】
標準ポリスチレン換算による重量平均分子量が1000~10000である、請求項1~3の何れか1項に記載の硬化性化合物製品。
【請求項5】
ガラス転移温度が80~230℃である、請求項1~4の何れか1項に記載の硬化性化合物製品。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物を含む成形物。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1項に記載の硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物と基板とが積層された構成を有する積層体。
【請求項8】
請求項1~5の何れか1項に記載の硬化性化合物製品を基板上に載置し、加熱処理を施すことで、前記硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物と基板とが積層された構成を有する積層体を得る、積層体の製造方法。
【請求項9】
プラスチック製の支持体上に、前記硬化性化合物製品の溶融物を塗布し、固化して、前記硬化性化合物製品を含む薄膜を得、得られた薄膜を前記支持体から剥離して基板上に積層し、加熱処理を施す、請求項8に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項1~5の何れか1項に記載の硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物と繊維とを含む複合材。
【請求項11】
請求項1~5の何れか1項に記載の硬化性化合物製品を含む接着剤。
【請求項12】
請求項1~5の何れか1項に記載の硬化性化合物製品を含む塗料。
【請求項13】
請求項1~5の何れか1項に記載の硬化性化合物製品を含む封止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化性化合物製品、硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物を含む成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチックは耐熱性や機械特性などを向上させたプラスチックであり、各種部品の小型化、軽量化、高性能化、高信頼性化に必須の材料として重用されている。しかし、エンジニアリングプラスチックは溶融成形時には高温で加熱することが必要である。また、エンジニアリングプラスチックは溶剤溶解性が低いため、溶液キャスト成形に付すことは困難である。従って、エンジニアリングプラスチックは成形加工が容易ではないことが問題であった。
【0003】
例えば、特許文献1等に記載のポリイミドは、卓越した耐熱性と強度特性を有するが、難溶解、難溶融であるため、溶融成形や溶液キャスト成形等の成形材料として使用することや、複合材のマトリックス樹脂として使用することは困難であった。
【0004】
特許文献2には、下記式で表される硬化性化合物が記載されており、当該化合物は低温での溶融成形が可能であり、溶剤溶解性も有するため、成形加工性に優れ、超耐熱性を有する硬化物を形成することができることが記載されている。
【化5】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-219741号公報
【文献】国際公開第2019/244694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、高速通信用基板材料として使用するエンジニアリングプラスチックには、絶縁性を有することも求められている。しかし、特許文献2に記載の硬化性化合物について本発明者等が検討した結果、絶縁性が不十分であることが分かった。また、溶液での保存安定性が不十分であり、経時で増粘する場合があることが分かった。そして、前記硬化性化合物製品を溶液キャスト法によるフィルム成形に付した場合、調製した溶液が保存中に増粘してしまい、フィルム状に成形することが困難となる事態が発生することがわかった。
【0007】
従って、本開示の目的は、加熱処理を施すことにより、耐熱性に優れ、高い絶縁性を有する硬化物を形成する硬化性化合物製品を提供することにある。
本開示の他の目的は、溶液での保存安定性に優れ、加熱処理を施すことにより、耐熱性に優れ、高い絶縁性を有する硬化物を形成する硬化性化合物製品を提供することにある。
本開示の他の目的は、成形加工性及び溶液での保存安定性に優れ、加熱処理を施すことにより、耐熱性に優れ、高い絶縁性を有する硬化物を形成する硬化性化合物製品を提供することにある。
本開示の他の目的は、耐熱性に優れ、高い絶縁性を有する硬化物、又はその半硬化物を含む成形物を提供することにある。
本開示の他の目的は、耐熱性に優れ、高い絶縁性を有する硬化物、又はその半硬化物と基板とが積層された構成を有する積層体を提供することにある。
本開示の他の目的は、耐熱性に優れ、高い絶縁性を有する硬化物、又はその半硬化物と繊維とを含む複合材を提供することにある。
本開示の他の目的は、溶液での保存安定性に優れ、加熱処理を施すことにより、耐熱性に優れ高い絶縁性を有する硬化物を形成する接着剤、封止剤、又は塗料を提供することにある。
【0008】
尚、本明細書において「製品」とは、工業的に製造され、市場に流通する形態のものを意味し、化学物質そのものを意味するものではない。従って、本開示の「硬化性化合物製品」は、ある硬化性化合物が複数個集合した集合体であり、その意味において、前記「硬化性化合物製品」は組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は鋭意検討した結果、下記式(1)で表される化合物を含む硬化性化合物製品について、以下の性質を有することを見いだした。
1.溶剤溶解性に優れること
2.イミド結合部の閉環率が97%以上であると、溶液での保存安定性が顕著に向上すること
3.低温での溶融形成が可能であること
4.溶融粘度が低いこと
5.発熱開始温度が高いこと
6.発熱開始温度以上の温度で加熱すると、耐熱性に優れ、高い絶縁性を有する硬化物が得られること
本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本開示は、下記式(1)
【化1】
[式中、R1、R2は、同一又は異なって下記式(r-1)で表される基又は下記式(r-2)
【化2】
(式中、QはC又はCHを示す。式中の2個のQは単結合又は二重結合を介して結合する。R3~R6は同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。R3とR4は互いに結合して環を形成していてもよい。n’は0以上の整数を示す。式中の波線を付した結合手が、D1又はD2に結合する)
で表される基を示す。D1、D2は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。Lは、下記式(I)で表される構造と下記式(II)
【化3】
(式中、Ar1~Ar3は、同一又は異なって、芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は2個以上の芳香環が単結合若しくは連結基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基を示す。前記芳香環はアルキル基を有していても良い。Xは-CO-、-S-、又は-SO2-を示し、Yは、同一又は異なって、-S-、-SO2-、-O-、-CO-、-COO-、又は-CONH-を示す。nは0以上の整数を示す)
で表される構造を含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。但し、Lに含まれる全てのAr1~Ar3のうち少なくとも1つはアルキル基を有する芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基である、及び/又は、Lに含まれる全てのAr1~Ar3のうち、少なくとも1つは、2個以上の芳香環がハロゲン化アルキレン基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基である]
で表される化合物を含み、前記式(r-1)で表される基と前記式(r-2)で表される基の合計に対する前記式(r-1)で表される基の割合が97%以上である、硬化性化合物製品を提供する。
【0011】
本開示は、また、式(1)中のD1、D2が、同一又は異なって、下記式(d-1)~(d-4)
【化4】
で表される構造を含む基から選択される基である前記硬化性化合物製品を提供する。
【0012】
本開示は、また、当該硬化性化合物製品を減圧乾燥処理に付した後、NMPに溶解して得られる、20重量%NMP溶液の粘度(η0)と、前記溶液を、23℃に保持したデシケーター内に10日間静置後の粘度(η10)が下記式(F)を満たす、前記硬化性化合物製品を提供する。
η10/η0<2 (F)
【0013】
本開示は、また、標準ポリスチレン換算による重量平均分子量が1000~10000である前記硬化性化合物製品を提供する。
【0014】
本開示は、また、ガラス転移温度が80~230℃である前記硬化性化合物製品を提供する。
【0015】
本開示は、また、前記硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物を含む成形物を提供する。
【0016】
本開示は、また、前記硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物と基板とが積層された構成を有する積層体を提供する。
【0017】
本開示は、また、前記硬化性化合物製品を基板上に載置し、加熱処理を施すことで、前記硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物と基板とが積層された構成を有する積層体を得る、積層体の製造方法を提供する。
【0018】
本開示は、また、プラスチック製の支持体上に、前記硬化性化合物製品の溶融物を塗布し、固化して、前記硬化性化合物製品を含む薄膜を得、得られた薄膜を前記支持体から剥離して基板上に積層し加熱処理を施す前記積層体の製造方法を提供する。
【0019】
本開示は、また、前記硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物と繊維とを含む複合材を提供する。
【0020】
本開示は、また、前記硬化性化合物製品を含む接着剤を提供する。
【0021】
本開示は、また、前記硬化性化合物製品を含む塗料を提供する。
【0022】
本開示は、また、前記硬化性化合物製品を含む封止剤を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本開示の硬化性化合物製品は溶剤溶解性に優れる。そして、前記硬化性化合物製品を溶剤に溶解させると、溶液キャスト法によるフィルム成形に適した粘度の溶液が得られる。そして、前記溶液は、長期にわたって増粘を抑制することができ、前記粘度を維持しつつ保存することができる。
【0024】
また、前記硬化性化合物製品は、低温での溶融成形が可能である。そして、溶融粘度が低く、発熱開始温度が高い。そのため、前記硬化性化合物製品を溶融成形に供する場合は、成形処理時の条件設定に関して自由度が高い。また、型枠等への注入途中で前記硬化性化合物製品が硬化するのを防止することができる。
【0025】
以上より、前記硬化性化合物製品は成形加工性に優れ、前記硬化性化合物製品を溶剤に溶解して得られた溶液は保存安定性が高い。そして、前記硬化性化合物製品を、発熱開始温度以上の温度での加熱処理に付せば、耐熱性に優れ、高い絶縁性を有する硬化物が得られる。
【0026】
そのため、前記硬化性化合物製品は、超耐熱性が求められる分野(例えば、電子情報機器、家電、自動車、精密機械、航空機、宇宙産業用機器等)において、接着剤、封止剤、塗料等に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例で得られた化合物製品(1-2)の1H-NMR測定結果を示す図である。
図2】実施例で得られた化合物製品(1-3)の1H-NMR測定結果を示す図である。
図3】実施例で得られた化合物製品(1-4)の1H-NMR測定結果を示す図である。
図4】実施例で得られた化合物製品(1-6)の1H-NMR測定結果を示す図である。
図5】比較例で得られた化合物製品(1-9)の1H-NMR測定結果を示す図である。
図6】実施例で得られた化合物製品(1-1)、(1-2)、(1-3)、及び(1-7)のDSC測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[硬化性化合物製品]
本開示の硬化性化合物製品は、下記式(1)で表される化合物を含む。
【化6】
[式中、R1、R2は、同一又は異なって下記式(r-1)で表される基又は下記式(r-2)で表される基を示す。
【化7】
(式中、QはC又はCHを示す。式中の2個のQは単結合又は二重結合を介して結合する。R3~R6は同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。R3とR4は互いに結合して環を形成していてもよい。n’は0以上の整数を示す。式中の波線を付した結合手が、D1又はD2に結合する)
【0029】
1、D2は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。Lは、下記式(I)で表される構造と下記式(II)で表される構造を含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。但し、Lに含まれる全てのAr1~Ar3のうち少なくとも1つはアルキル基を有する芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基である、及び/又は、Lに含まれる全てのAr1~Ar3のうち、少なくとも1つは、2個以上の芳香環がハロゲン化アルキレン基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基である。
【化8】
(式中、Ar1~Ar3は、同一又は異なって、芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は2個以上の芳香環が単結合若しくは連結基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基を示す。前記芳香環はアルキル基を有していても良い。Xは-CO-、-S-、又は-SO2-を示し、Yは、同一又は異なって、-S-、-SO2-、-O-、-CO-、-COO-、又は-CONH-を示す。nは0以上の整数を示す)
【0030】
上記式(r-1)、(r-2)中、QはC又はCHを示す。式中の2個のQは単結合又は二重結合を介して結合する。
【0031】
3~R6は、同一又は異なって、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基(好ましくは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基)、芳香族炭化水素基(好ましくは、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基)、又は前記飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基から選択される2個以上の基が結合した基を示す。
【0032】
3とR4は互いに結合して隣接する炭素原子(式(r-1)、(r-2)中のQ)と共に環を形成していてもよい。前記環としては、例えば、炭素数3~20の脂環、及び炭素数6~14の芳香環を挙げることができる。前記炭素数3~20の脂環には、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の3~20員(好ましくは3~15員、特に好ましくは5~8員)程度のシクロアルカン環;シクロペンテン環、シクロへキセン環等の3~20員(好ましくは3~15員、特に好ましくは5~8員)程度のシクロアルケン環;パーヒドロナフタレン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、アダマンタン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等の橋かけ環式炭化水素基等が含まれる。前記炭素数6~14の芳香環には、ベンゼン環、ナフタレン環等が含まれる。
【0033】
n’は0以上の整数であり、例えば0~3の整数、好ましくは0又は1である。
【0034】
上記式(r-1)で表される基としては、なかでも、下記式(r-1-1)~(r-1-6)で表される基から選択される基が好ましい。
【化9】
(式中の窒素原子から伸びる結合手は、式(1)中のD1又はD2と結合する)
【0035】
前記式(r-1-1)~(r-1-6)で表される基には1種又は2種以上の置換基が結合していてもよい。前記置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0036】
前記炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を挙げることができる。
【0037】
前記炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、t-ブチルオキシ基等の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基を挙げることができる。
【0038】
上記式(r-2)で表される基としては、例えば、上記式(r-1-1)~(r-1-6)で表される基に対応する基であって、上記式(r-1-1)~(r-1-6)で表される基中のイミド結合部が開環してなる基が挙げられる。
【0039】
上記式(r-1)で表される基、及び上記式(r-2)で表される基としては、特に、下記式(r-1’)で表される基、及び下記式(r-2’)で表される基が好ましい。
【化10】
(式中、Q、R3、R4は前記に同じ。式中の波線を付した結合手が、D1又はD2に結合する)
【0040】
上記式(r-1)で表される基としては、特に好ましくは上記式(r-1-1)~(r-1-5)で表される基から選択される基(=イミド結合部を含む基)、とりわけ好ましくは上記式(r-1-1)又は(r-1-5)で表される基である。
【0041】
上記式(r-2)で表される基としては、なかでも、上記式(r-1-1)~(r-1-5)で表される基に対応する基であって、上記式(r-1-1)~(r-1-5)で表される基中のイミド結合部が開環してなる基(=アミック酸構造を含む基)が好ましく、特に上記式(r-1-1)又は(r-1-5)で表される基中のイミド結合部が開環してなる基が好ましい。
【0042】
式(1)中、D1、D2は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。前記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、2価の複素環式基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、イミド結合、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
【0043】
前記2価の炭化水素基には、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、及び2価の芳香族炭化水素基が含まれる。
【0044】
前記2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、及び炭素数2~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。炭素数2~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1-メチルビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基等が挙げられる。
【0045】
前記2価の脂環式炭化水素基としては、炭素数3~18の2価の脂環式炭化水素基等が挙げられ、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
【0046】
前記2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6~14のアリーレン基等が挙げられ、例えば、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、4,4’-ビフェニレン基、3,3’-ビフェニレン基、2,6-ナフタレンジイル基、2,7-ナフタレンジイル基、1,8-ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基等が挙げられる。
【0047】
前記2価の複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、環を構成する原子に炭素原子と少なくとも1種のヘテロ原子(例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子等)を有する3~10員環(好ましくは4~6員環)、及びこれらの縮合環を挙げることができる。具体的には、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環等の3員環;オキセタン環等の4員環;フラン環、テトラヒドロフラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、γ-ブチロラクトン環等の5員環;4-オキソ-4H-ピラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環等の6員環;ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、4-オキソ-4H-クロメン環、クロマン環、イソクロマン環等の縮合環;3-オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン-2-オン環、3-オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン-2-オン環等の橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環等の5員環;4-オキソ-4H-チオピラン環等の6員環;ベンゾチオフェン環等の縮合環等)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環等の5員環;イソシアヌル環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の6員環;インドール環、インドリン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、プリン環等の縮合環等)等が挙げられる。2価の複素環式基は上記複素環の構造式から2個の水素原子を除いた基である。
【0048】
前記D1、D2としては、なかでも、特に優れた耐熱性を有する硬化物が得られる点で、2価の芳香族炭化水素基を含む基が好ましい。前記2価の芳香族炭化水素基としては、炭素数6~14の2価の芳香族炭化水素基が好ましく、より好ましくは下記式(d-1)~(d-4)で表される基から選択される基、特に好ましくは下記式(d-1)で表される基(1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、又は1,4-フェニレン基)、最も好ましくは1,4-フェニレン基である。
【化11】
【0049】
また、前記D1、D2は、前記2価の芳香族炭化水素基と共に、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、及びイミド結合からなる群より選択される少なくとも1つの基が連結した基が好ましく、とりわけ前記2価の芳香族炭化水素基にエーテル結合が連結した基が好ましい。
【0050】
従って、式(1)中のR1-D1-基、及びR2-D2-基としては、例えば、同一又は異なって、下記式(rd-1’-1)~(rd-2’-2)で表される基から選択される基であり、とりわけ好ましくは、下記式(rd-1’-2)又は下記式(rd-2’-2)で表される基である。
【化12】
(式中、Q、R3、R4は前記に同じ)
【0051】
式(1)中のLは、上記式(I)で表される構造と上記式(II)で表される構造とを含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。
【0052】
前記式(I)、及び式(II)中のAr1~Ar3は、同一又は異なって、芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は2個以上の芳香環が単結合若しくは連結基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基を示す。前記芳香環は、置換基としてアルキル基を有していても良い。
【0053】
式(1)中のLは、以下の条件1と条件2の少なくとも一方を備える。
条件1:Lに含まれる全てのAr1~Ar3のうち、少なくとも1つはアルキル基を有する芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基である。
条件2:Lに含まれる全てのAr1~Ar3のうち、少なくとも1つは、2個以上の芳香環がハロゲン化アルキレン基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基である。
【0054】
式(II)中のnは0以上の整数を示し、例えば0~5の整数、好ましくは1~5の整数、特に好ましくは1~3の整数である。
【0055】
前記芳香環(=芳香族炭化水素環)としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の炭素数6~14の芳香環が挙げられる。なかでも、ベンゼン、ナフタレン等の炭素数6~10の芳香環が好ましい。
【0056】
前記芳香環が有していても良いアルキル基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。前記アルキル基としては、高い絶縁性を有する硬化物が得られる点で、炭素数3~6の第2級アルキル基(=第3級炭素原子を有するアルキル基)又は炭素数4~6の第3級アルキル基(=第4級炭素原子を有するアルキル基)が好ましく、とりわけ、炭素数4~6の第3級アルキル基(=第4級炭素原子を有するアルキル基)が好ましい。炭素数4~6の第3級アルキル基としては、例えば、t-ブチル基、t-ペンチル基、t-ヘキシル基等が挙げられる。
【0057】
前記芳香環が有するアルキル基の数は、例えば1~4個、好ましくは2~4個、特に好ましくは2~3個である。
【0058】
前記連結基としては、例えば、炭素数1~5の2価の炭化水素基、炭素数1~5の2価の炭化水素基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基等が挙げられる。
【0059】
前記炭素数1~5の2価の炭化水素基には、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等の炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基;ビニレン基、1-メチルビニレン基、プロペニレン基等の炭素数2~5の直鎖状又は分岐鎖状アルケニレン基;エチニレン基、プロピニレン基、1-メチルプロピニレン等の炭素数2~5の直鎖状又は分岐鎖状アルキニレン基等が含まれる。なかでも、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が好ましく、特に炭素数1~5の分岐鎖状アルキレン基が好ましい。
【0060】
前記炭化水素基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基としては、例えば、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基等の、炭素数1~5のハロゲン化アルキレン基が好ましい。
【0061】
前記Ar1~Ar3としては、同一又は異なって、下記式(a-1)~(a-5)で表される基から選択される基が好ましい。下記式中の芳香環は、置換基としてアルキル基を有していても良い。尚、下記式中の結合手の付き位置は、特に制限されない。
【化13】
【0062】
式(I)中のAr1、Ar2としては、なかでも、上記式(a-1)又は(a-2)で表される基が好ましく、とりわけ上記式(a-1)で表される基が好ましい。
【0063】
Xとしては、なかでも-CO-が好ましい。
【0064】
従って、式(I)で表される構造としては、下記式(I’)で表される構造が好ましい。
【化14】
【0065】
式(I)で表される構造としては、ベンゾフェノン由来の構造の構造を含むことが好ましい。
【0066】
上記式(1)で表される化合物全量における、ベンゾフェノン由来の構造単位の占める割合は、例えば5重量%以上、好ましくは10~62重量%、特に好ましくは15~60重量%である。
【0067】
式(I)中のLに含まれる全てのAr3のうち少なくとも1つは、上記式(a-1)又は(a-3)で表される基であって、式中の芳香環がアルキル基(好ましくは、第2級又は第3級アルキル基)を有する基、又は上記式(a-5)で表される基であることが好ましく、特に好ましくは、上記式(a-1)で表される基であって、式中の芳香環がアルキル基(好ましくは、第2級又は第3級アルキル基)を有する基、又は上記式(a-5)で表される基である。
【0068】
前記Ar3は、上記式(a-1)又は(a-3)で表される基であって、式中の芳香環がアルキル基(好ましくは、第2級又は第3級アルキル基)を有する基と、上記式(a-4)又は(a-5)で表される基とを組み合わせて有していてもよい。
【0069】
Yとしては、なかでも、-S-、-SO2-、-O-、又は-CO-が好ましく、特に-O-又は-S-が好ましく、とりわけ-O-が好ましい。
【0070】
従って、式(II)で表される構造としては、絶縁性に優れた硬化物が得られる点において、下記式(II’-1)~(II’-11)から選択される少なくとも1つの構造を含むことが好ましく、下記式(II’-6)~(II’-9)から選択される少なくとも1つの構造を含むことがとりわけ好ましい。下記式中、波線を付した結合手が、式(I)で表される構造と結合する。
【化15】
【0071】
式(II)で表される構造としては、上記式(II’-1)~(II’-10)で表される構造から選択される少なくとも1つと、上記式(II’-11)で表される構造又は上記式(II’-12)で表される構造とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0072】
式(II)で表される構造が、前記の通り2種類の構造を組み合わせて含む場合において、一方の構造が上記式(II’-6)~(II’-9)から選択される少なくとも1つの構造である場合、他方の構造は、上記式(II’-11)で表される構造と上記式(II’-12)で表される構造の何れであってもよい。
【0073】
式(II)で表される構造が、前記の通り2種類の構造を組み合わせて含む場合において、一方の構造が上記式(II’-4)、(II’-5)、及び(II’-10)から選択される少なくとも1つの構造である場合は、他方の構造は、上記式(II’-11)で表される構造であることが、絶縁性に優れた硬化物が得られる点において好ましい。
【0074】
式(1)で表される化合物全量における、前記式(II)で表される構造単位の占める割合は、例えば5重量%以上、好ましくは10~55重量%、特に好ましくは15~53重量%である。
【0075】
式(1)中のLとしては、なかでも、耐熱性に特に優れた硬化物が得られる点で、下記式(L-1)で表される2価の基が好ましい。
【化16】
【0076】
上記式(L-1)中のmは、分子鎖(=上記式(L-1)で表される2価の基)中に含まれる丸括弧内に示される繰り返し単位の数、すなわち、平均重合度であり、例えば2~50、好ましくは3~40、より好ましくは4~30、特に好ましくは5~20、最も好ましくは5~10である。mが前記範囲を下回る場合は、得られる硬化物の強度や耐熱性が不十分となる傾向がある。一方、mが前記範囲を上回る場合は、ガラス転移温度が高くなる傾向がある。また、溶剤溶解性が低下する傾向もある。更に、前記硬化性化合物製品の溶融粘度(=前記硬化性化合物製品を溶融した場合の粘度)や、前記硬化性化合物製品の溶液粘度(=前記硬化性化合物製品を溶剤に溶解して得られる溶液の粘度)が高くなりすぎて、成形加工性が低下する傾向がある。尚、mの値は、GPC測定やNMRのスペクトル解析により求めることができる。また、上記式(L-1)中のn”は0以上の整数を示す。Ar1~Ar3、X、Yは上記に同じ。また、上記式(L-1)中の複数のAr1は同じ基を示す。Ar2、Ar3についても同様である。
【0077】
式(1)中のLとしては、とりわけ、下記式(L-1-1)で表される2価の基が好ましい。下記式中のAr3は上記に同じ。下記式中の[-O-Ar3-O-]で示される基は、上記式(II’-1)~(II’-11)から選択される少なくとも1つの構造を含むことが好ましい。
【化17】
【0078】
上記式中のm1は、上記式(L-1-1)で表される分子鎖中の丸括弧内に示される繰り返し単位の数、すなわち、平均重合度であり、例えば2~50、好ましくは3~40、より好ましくは4~30、特に好ましくは5~20、最も好ましくは5~10、とりわけ好ましくは5以上10未満である。尚、m1の値は、GPC測定やNMRのスペクトル解析により求めることができる。
【0079】
前記m1が上記範囲を下回ると、得られる硬化物がもろくなり機械特性が低下する傾向がある。また、前記m1が上記範囲を上回ると、溶剤への溶解性が低下したり、溶融粘度が高くなる等により、成形加工性が低下する傾向がある。
【0080】
前記硬化性化合物製品全量における、上記式(1)で表される化合物の占める割合は、例えば80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、特に好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上、とりわけ好ましくは99.5重量%以上である。尚、上限は100重量%である。
【0081】
前記硬化性化合物製品に含まれる全ての下記式(1)で表される化合物において、前記式(r-1)で表される基と前記式(r-2)で表される基の合計に対する前記式(r-1)で表される基の割合(下記式で示される割合、以後、「閉環率」と称する場合がある)は97%以上である。そのため、溶液での保存安定性に優れる。
閉環率=[前記式(r-1)で表される基のモル数/(前記式(r-1)で表される基のモル数+前記式(r-2)で表される基のモル数)]×100
【0082】
前記前記硬化性化合物製品の閉環率は、好ましくは98%以上、特に好ましくは98.5%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0083】
尚、各基のモル数は、1H-NMRスペクトルの各基に対応するピーク面積から算出することにより求めることができる。
【0084】
また、前記硬化性化合物製品1gあたりの式(r-1)で表される基のモル数(以後、「官能基濃度」と称する場合がある)は、例えば0.5×10-4~20×10-4モル/gである。前記官能基濃度の上限値は、好ましくは15×10-4モル/g、最も好ましくは10×10-4モル/gである。前記官能基濃度の下限値は、好ましくは1.0×10-4モル/g、最も好ましくは1.5×10-4モル/gである。前記硬化性化合物製品の官能基濃度が上記範囲であると、溶剤溶解性に優れ、靱性や耐熱性に優れた硬化物を形成することができる。一方、官能基濃度が上記範囲を下回ると、溶剤溶解性が低下する傾向がある。また、官能基濃度が上記範囲を上回ると、靱性に優れた硬化物が得られにくくなる傾向がある。
【0085】
前記官能基濃度は、前記硬化性化合物製品の1H-NMRスペクトルから、各ピークの面積を求め、求められた値を下記式に算入することにより得られる。
官能基濃度=[式(r-1)で表される基のピーク面積/式(r-1)で表される基のプロトン数]/Σ[(各ピーク面積/各ピークが帰属される基のプロトン数)×各ピークに対応する化学式量]
【0086】
さらに、前記硬化性化合物製品1gあたりの前記式(r-2)で表される基(=アミック酸構造を含む基)のモル数((以後、「未閉環濃度」と称する場合がある)は、例えば0.15×10-4モル/g以下、好ましくは0.10×10-4モル/g以下である。
【0087】
前記未閉環濃度は、前記硬化性化合物製品の1H-NMRスペクトルから、各ピークの面積を求め、求められた値を下記式に算入することにより得られる。
未閉環濃度=(式(r-2)で表される基のピーク面積/式(r-2)で表される基のプロトン数)/Σ[(各ピーク面積/各ピークが帰属される基のプロトン数)×各ピークに対応する化学式量]
【0088】
前記硬化性化合物製品の数平均分子量(Mn)は、例えば1000~15000である。数平均分子量(Mn)の下限値は、好ましくは1500、更に好ましくは2000、特に好ましくは2200、最も好ましくは2600、とりわけ好ましくは2700である。数平均分子量(Mn)の上限値は、好ましくは12000、より好ましくは10000、更に好ましくは7000、更に好ましくは5000、特に好ましくは4000、とりわけ好ましくは3600である。
【0089】
前記硬化性化合物製品の重量平均分子量(Mw;標準ポリスチレン換算)は、例えば1000~15000である。重量平均分子量(Mw)の下限値は、好ましくは2000、更に好ましくは2500、特に好ましくは3000、最も好ましくは4000である。重量平均分子量(Mw)の上限値は、好ましくは10000、より好ましくは9000、更に好ましくは8000、特に好ましくは7500、最も好ましくは7000、とりわけ好ましくは6500である。
【0090】
前記硬化性化合物製品全量に占める芳香環由来の構造の割合は50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、特に好ましくは65重量%以上である。尚、前記芳香環由来の構造の割合の上限値は例えば95重量%である。そのため、前記硬化性化合物製品は高い溶剤溶解性と低い溶融粘度とを有し、その硬化物は高い熱安定性を有する。芳香環由来の構造の割合が上記範囲を下回ると、硬化物の熱安定性が低下する傾向がある。一方、芳香環由来の構造の割合が上記範囲を上回ると、溶剤溶解性が低下したり、溶融粘度が高くなり、成形加工性が低下する傾向がある。
【0091】
前記硬化性化合物製品の窒素原子含有量は、例えば0.1~2.8重量%、好ましくは0.2~2.5重量%、より好ましくは0.25~2.0重量%、特に好ましくは0.3~1.8重量%である。窒素原子含有量は、CHN元素分析により求めることができる。窒素原子含有量が上記範囲である硬化性化合物製品は、溶剤溶解性に優れ、靱性や耐熱性に優れた硬化物を形成することができる。一方、窒素原子含有量が上記範囲を下回ると、靱性や耐熱性に優れた硬化物を形成することが困難となる傾向がある。また、窒素原子含有量が上記範囲を上回ると、溶剤溶解性が低下する傾向がある。
【0092】
前記硬化性化合物製品は上記分子量を有するため、溶剤への溶解性が高く、溶剤に溶解すれば、溶液キャスト成形に好適な粘度の溶液が得られる。また、溶融粘度は低く、溶融成形加工が容易である。さらに、得られる硬化物(若しくは、硬化後の成形体)が高い靱性を発現する。数平均分子量が上記範囲を下回ると、得られる硬化物の靱性が低下し、脆弱化して打ち抜き加工などを施す際に破損し易くなる傾向や、乾燥時に割れが発生し易くなる傾向がある。また、溶融プレス成形に付す場合は、金型から樹脂漏れが発生し易やすくなる傾向がある。一方、数平均分子量が上記範囲を上回ると、溶剤溶解性が低下したり、溶融粘度が高くなりすぎて、成形加工性が低下する傾向がある。尚、Mn、Mwはゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定(溶剤:クロロホルム、標準ポリスチレン換算)に付して求められる。
【0093】
前記硬化性化合物製品の溶剤に対する溶解度は、23℃において溶剤100gに対して1g以上であり、好ましくは5g以上、特に好ましくは10g以上である。前記硬化性化合物製品を溶剤に溶解して得られた溶液をキャスト法によりフィルム状に成形し、硬化させると、フィルム状の硬化物を形成することができる。
【0094】
前記溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の鎖状ケトン;シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等の環状ケトン;ホルムアミド、アセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゾトリフルオライド、ヘキサフルオロ-2-プロパノール等のハロゲン化炭化水素;ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド、ベンジルフェニルスルホキシド等のスルホキシド;テトラヒドロフラン(THF);ベンゼン、トルエン(Tol)、キシレン等の芳香族炭化水素;及びこれらの2種以上の混合液等が挙げられる。前記硬化性化合物製品は、なかでも、エーテル、鎖状ケトン、環状ケトン、アミド、ハロゲン化炭化水素、及びスルホキシドから選択される少なくとも1種の溶剤に対して優れた溶解性を示す。
【0095】
また、前記硬化性化合物製品を減圧乾燥処理に付した後、NMPに溶解して得られる20重量%NMP溶液は、低粘度で溶液キャスト成形に適する。前記20重量%NMP溶液の粘度(η0)は、例えば5~1000mPa・sである。前記粘度(η0)の下限値は、好ましくは10mPa・s、特に好ましくは15mPa・sである。前記粘度(η0)の上限値は、好ましくは700mPa・s、より好ましくは500mPa・s、更に好ましくは300mPa・s、更に好ましくは200mPa・s、更に好ましくは150mPa・s、更に好ましくは100mPa・s、特に好ましくは70mPa・s、最も好ましくは50mPa・s、とりわけ好ましくは40mPa・sである。前記粘度(η0)が低くなりすぎると厚膜フィルムの成形が困難になり、高くなりすぎると厚みムラができやすくなるなど、成形不良になりやすい。
【0096】
前記硬化性化合物製品は溶液での保存安定性に優れ、前記硬化性化合物製品を減圧乾燥処理に付した後、NMPに溶解して得られる20重量%NMP溶液を、23℃に保持したデシケーター内に10日間静置後の粘度(η10)は、例えば10~2000mPa・sである。前記粘度(η10)の下限値は、好ましくは20mPa・s、特に好ましくは30mPa・s、最も好ましくは40mPa・sである。前記粘度(η10)の上限値は、好ましくは1400mPa・s、更に好ましくは1000mPa・s、更に好ましくは600mPa・s、特に好ましくは400mPa・s、最も好ましくは300mPa・s、とりわけ好ましくは200mPa・sである。
【0097】
また、前記粘度(η0)と前記粘度(η10)は、下記式(F)を満たすことが好ましい。
η10/η0<2 (F)
【0098】
前記粘度(η0)と前記粘度(η10)は、より好ましくは下記式(F-1)を満たし、特に好ましくは下記式(F-2)を満たす。
η10/η0<1.75 (F-1)
η10/η0<1.5 (F-2)
【0099】
前記粘度(η0)と前記粘度(η10)は、好ましくは下記式(F-3)を満たす。
1≦η10/η0<2 (F-3)
【0100】
尚、前記NMP溶液の粘度は常温(例えば、23℃)、常圧下における粘度であり、E型粘度計で測定することができる。また、前記硬化性化合物製品の減圧乾燥処理は、硬化性化合物製品中の残存水分量が0.05%以下になるまで行うものとする。
【0101】
前記硬化性化合物製品の、昇温速度20℃/分(窒素中)で測定される5%重量減少温度(Td5)は300℃以上であり、好ましくは400℃以上、特に好ましくは450℃以上、最も好ましくは470℃以上である。5%重量減少温度(Td5)の上限は、例えば600℃、好ましくは550℃、特に好ましくは530℃である。
【0102】
前記硬化性化合物製品の、昇温速度20℃/分(窒素中)で測定される10%重量減少温度(Td10)は、例えば410℃以上、好ましくは460℃以上、特に好ましくは480℃以上、最も好ましくは500℃以上である。10%重量減少温度(Td10)の上限値は、例えば600℃、好ましくは550℃である。
【0103】
尚、5%重量減少温度及び10%重量減少温度は、TG/DTA(示差熱・熱重量同時測定装置)を使用して、熱重量測定(TGA)することで求められる。
【0104】
前記硬化性化合物製品のガラス転移温度(Tg)は、例えば80~230℃である。ガラス転移温度(Tg)の上限値は、好ましくは220℃、特に好ましくは200℃、最も好ましくは185℃である。また、ガラス転移温度(Tg)の下限値は、好ましくは90℃、特に好ましくは100℃である。尚、Tgは示差走査熱量分析(DSC)により求めることができる。
【0105】
前記硬化性化合物製品は、前記の通りガラス転移温度(Tg)が低いので、溶融による成形加工性に優れる。ガラス転移温度(Tg)が上記範囲を上回ると、溶融する際に高温で加熱することが必要となるため成形加工性が低下し、例えば、溶融状態の硬化性化合物製品を繊維に含浸させて複合材を製造する場合に、硬化性化合物製品の硬化反応が進行して微細な繊維間に含浸させることが困難となる恐れがある。
【0106】
前記硬化性化合物製品の発熱開始温度は、例えば220℃以上、好ましくは230℃以上、より好ましくは240℃以上、特に好ましくは250℃以上である。発熱開始温度の上限値は、例えば300℃である。尚、発熱開始温度は、DSCを用いて、昇温温度20℃/分(窒素中)で測定できる。
【0107】
前記硬化性化合物製品は、前記発熱開始温度以上の温度で加熱すると、速やかに硬化して、高度に架橋した構造を有し、超耐熱性を有する硬化物を形成することができる。また、発熱開始温度より低い温度では硬化反応が進行しないので、例えば成形加工を行う場合には、硬化性化合物製品の型枠への注入を、発熱開始温度より低い温度で行うことで、硬化性化合物製品が増粘するのを抑制しつつ注入することができ、注入作業が安定し、精度良く成形することができる。
【0108】
尚、加熱は、温度を一定に保持した状態で行ってもよく、段階的に変更して行ってもよい。加熱温度は、加熱時間に応じて適宜調整することができ、例えば、加熱時間の短縮を所望する場合は加熱温度を高めに設定することが好ましい。前記硬化性化合物製品は芳香環由来の構造の割合が高いため、高温で加熱しても分解することなく硬化物(詳細には、超耐熱性を有する硬化物)を形成することができ、高温で短時間加熱することにより優れた作業性で効率よく硬化物を形成することができる。また、加熱手段は特に制限されることがなく、公知乃至慣用の手段を利用することができる。
【0109】
また、前記発熱開始温度以上の温度で加熱することが困難な場合は、前記硬化性化合物製品にラジカル重合開始剤等の重合開始剤、前記硬化性化合物製品100重量部当たり0.05~10.0重量部程度添加すればよい。これにより、前記発熱温度より低温で硬化物を形成することができるようになる。
【0110】
前記硬化性化合物製品の硬化は、常圧下で行うこともできるし、減圧下又は加圧下で行うこともできる。
【0111】
前記硬化性化合物製品の加熱温度及び加熱時間を調整して、硬化反応を完了させず途中で停止させることにより、半硬化物(Bステージ)が得られる。前記半硬化物の硬化度は、例えば85%以下(例えば10~85%、特に好ましくは15~75%、更に好ましくは20~70%)である。
【0112】
尚、半硬化物の硬化度は、前記硬化性化合物製品の発熱量、及びその半硬化物の発熱量をDSCにより測定し、以下の式から算出できる。
硬化度(%)=[1-(半硬化物の発熱量/硬化性化合物製品の発熱量)]×100
【0113】
前記硬化性化合物製品の半硬化物は加熱することにより一時的に流動性を発現し、段差に追従させることができる。そして、更に加熱することにより耐熱性に優れた硬化物を形成することができる。
【0114】
前記硬化性化合物製品の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、例えば160~250℃である。前記ガラス転移温度の上限値は、好ましくは230℃、より好ましくは220℃、特に好ましくは210℃である。また、前記ガラス転移温度の下限値は、好ましくは165℃、特に好ましくは170℃である。尚、TgはDSC法で測定することができる。
【0115】
前記硬化性化合物製品の硬化物の、昇温速度20℃/分(窒素中)で測定される5%重量減少温度(Td5)は300℃以上であり、好ましくは400℃以上、特に好ましくは450℃以上、最も好ましくは500℃以上である。5%重量減少温度(Td5)の上限は、例えば600℃、好ましくは550℃、特に好ましくは530℃である。
【0116】
前記硬化性化合物製品の硬化物の、昇温速度20℃/分(窒素中)で測定される10%重量減少温度(Td10)は、例えば300℃以上、好ましくは400℃以上、特に好ましくは480℃以上、最も好ましくは500℃以上である。10%重量減少温度(Td10)の上限は、例えば600℃、好ましくは550℃である。
【0117】
前記硬化性化合物製品の硬化物は絶縁性に優れ、比誘電率、誘電正接の値は、それぞれ下記範囲である。
比誘電率(εr)は、周波数10GHzにおいて、例えば2.55以下、好ましくは2.50以下、特に好ましくは2.45以下である。誘電率の下限値は、例えば2.20である。
誘電正接(tanδ)は、周波数10GHzにおいて、例えば0.0045以下(例えば0.0001~0.0045)である。
【0118】
尚、前記「比誘電率」及び「誘電正接」は、空洞共振摂動法ASTM D2520に準拠して、周波数10GHz、測定温度23℃で測定される値である。
【0119】
前記硬化性化合物製品の硬化物の弾性率(JIS K7161準拠した方法による)は、例えば1000Mpa以上(好ましくは1150MPa以上、特に好ましくは1200MPa以上である。
【0120】
前記硬化性化合物製品の硬化物の降伏点応力(JIS K7161準拠した方法による)は、例えば70MPa以上(好ましくは80MPa以上)である。
【0121】
前記硬化性化合物製品の硬化物の破断点伸度(JIS K7161準拠した方法による)は、例えば10%以上である。
【0122】
前記硬化性化合物製品は上記特性を兼ね備える為、例えば、電子情報機器、家電、自動車、精密機械等の過酷な環境温度条件下で使用される複合材の成形材料や、絶縁材料、耐熱性接着剤などの機能材料として使用することができる。その他、封止剤、塗料、接着剤、インク、シーラント、レジスト、形成材[例えば、基材、電気絶縁材(絶縁膜等)、積層板、複合材(繊維強化プラスチック、プリプレグ等)、光学素子(レンズ等)、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリ等の形成材]等に好ましく使用することができる。
【0123】
前記硬化性化合物製品は上記特性を有するため、特に、従来の樹脂材料では対応することが困難であった、高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)において半導体素子を被覆する封止剤として好ましく使用することができる。
【0124】
また、前記硬化性化合物製品は上記特性を有するため、接着剤[例えば、高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)において、半導体を積層する用途に使用する耐熱性接着剤等]として好ましく使用することができる。
【0125】
また、前記硬化性化合物製品は上記特性を有するため、塗料(溶剤型塗料、若しくは粉体塗料)[例えば、高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)の塗料(溶剤型塗料、若しくは粉体塗料)等]として好ましく使用することができる。
【0126】
[硬化性化合物製品の製造方法]
前記硬化性化合物製品は、例えば、下記式(2)
【化18】
[式中、D1、D2は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。Lは、下記式(I)で表される構造と下記式(II)
【化19】
(式中、Ar1~Ar3は、同一又は異なって、芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は2個以上の芳香環が単結合若しくは連結基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基を示す。前記芳香環はアルキル基を有していても良い。Xは-CO-、-S-、又は-SO2-を示し、Yは、同一又は異なって、-S-、-SO2-、-O-、-CO-、-COO-、又は-CONH-を示す。nは0以上の整数を示す)
で表される構造とを含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。但し、Lに含まれる全てのAr1~Ar3のうち少なくとも1つはアルキル基を有する芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基である、及び/又は、Lに含まれる全てのAr1~Ar3のうち、少なくとも1つは、2個以上の芳香環がハロゲン化アルキレン基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基である]
で表される化合物と、下記式(3)
【化20】
(式中、QはC又はCHを示す。式中の2個のQは単結合又は二重結合を介して結合する。R3~R6は同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。R3とR4は互いに結合して環を形成していてもよい。n’は0以上の整数を示す)
で表される化合物を、反応させることにより製造することができる。
【0127】
式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物とを反応させると、下記式で示す通り、2段階の反応を経て、上記硬化性化合物製品が得られる。尚、下記式には、式(2)で表される化合物のD1置換基側を記載しているが、D2置換基側でも同様に反応が進行する。下記式中のL1、D1、Q、R3~R6、n’は上記に同じである。
【化21】
【0128】
上記反応は溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0129】
<1段階目>
1段階目の反応は、式(2)で表される化合物の末端基であるNH2基に式(3)で表される化合物が反応して、前記末端基が式(r-2)で表される基に変換される反応である。この反応により、式(1)で表される化合物であって、式中のR1、R2が式(r-2)で表される基である化合物が得られる。
【0130】
式(3)で表される化合物の使用量は、式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば2.0~4.0モル程度である。
【0131】
上記反応は、室温(1~40℃)で行うことができる。反応時間は、例えば1~30時間程度である。また、この反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
【0132】
また、式(2)で表される化合物や式(3)で表される化合物等の原料としては、アルカリ金属の含有量が少ないものを選択して使用することが、アルカリ金属含有量が、例えば500重量ppm以下(好ましくは100重量ppm以下、特に好ましくは50重量ppm以下、最も好ましくは35重量ppm以下)である硬化性化合物製品が得られる点で好ましい。アルカリ金属含有量が前記範囲にまで低減された硬化性化合物製品によれば、耐熱性に優れた硬化物を形成することができる。
【0133】
<2段階目;閉環反応>
2段階目の反応は、前記末端基の式(r-2)で表される基が、閉環反応により式(r-1)で表される基に変換される反応である。この反応により、式(1)で表される化合物であって、式中のR1、R2の少なくとも一方が式(r-1)で表される基である化合物が得られる。
【0134】
上記反応は、200℃以上の温度で加熱する、或いは、触媒を添加することにより進行させることができる。
【0135】
なかでも、触媒を添加することが、硬化反応の進行を抑制しつつ、閉環反応を進行することができ、閉環率が高く、溶液での保存安定性に優れた硬化性化合物製品が得られる点において好ましい。前記触媒としては、例えば、塩基触媒、酸触媒等を使用することができる。前記触媒としては、なかでも、酸触媒を用いて反応を進めることが、副反応が抑制され、副反応生成物の混入が抑制された硬化性化合物製品が製造できる点で望ましい。
【0136】
前記塩基触媒としては、例えば、アミン化合物や酢酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0137】
前記酸触媒としては、例えば、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、無水硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸などの無機酸類;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのスルホン酸類;酢酸、シュウ酸などのカルボン酸類;クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸などのハロゲン化カルボン酸類;シリカ、アルミナ、活性白土などの固体酸類;カチオン型イオン交換樹脂などが含まれる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。前記酸触媒としては、なかでも、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、及びリン酸から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0138】
前記塩基触媒の使用量は、前記式(3)で表される化合物1モルに対して、例えば0.02~1.0モル、好ましくは0.02~0.5モル、特に好ましくは0.05~0.4モルである。
【0139】
前記酸触媒の使用量は、前記式(3)で表される化合物1モルに対して、例えば0.02~1.0モル、好ましくは0.05~0.5モル、特に好ましくは0.1~0.4モルである。
【0140】
また、反応系中の触媒濃度は、例えば0.003~0.10ミリモル/g、好ましくは0.005~0.07ミリモル/g、特に好ましくは0.007~0.04ミリモル/gである。触媒の使用量が前記範囲を下回ると、硬化性化合物製品の閉環率が低下する傾向があり、閉環率の低下に伴い溶液での保存安定性が低下する傾向がある。
【0141】
また、上記反応では、反応によって副生した水を、速やかに反応系外へ除去することが、閉環反応の進行を更に促進する上で好ましい。副生した水を除去する方法としては、例えば、カルボン酸無水物のような脱水剤を使用する方法や、水と共沸する溶媒を使用する方法が挙げられる。この場合、反応容器の形状や空間容積、配管レイアウト、保温状態により、その除去効率は異なる場合がある。
【0142】
ただし、カルボン酸無水酢酸を使用して脱水する場合は、閉環反応が進行すると同時に副反応が進行して、副反応生成物が多く生成する。例えば、式(2)で表される化合物と無水マレイン酸との反応を、無水酢酸を使用して脱水しつつ行う場合には、目的化合物である下記式(I)で表される化合物と共に、下記式(I-a)、(I-b)で表される副反応生成物が生成する。そして、硬化性化合物製品に副反応生成物が混入すると発熱開始温度が低下する傾向がある。従って、カルボン酸無水物を用いて脱水する場合は、原料の使用量や原料の供給方法・供給速度を調整することで副反応の進行を抑制するとともに、生成物を十分に精製することが好ましい。下記式中、D1、D2、Lは上記に同じ。
【化22】
【0143】
酸触媒を使用する場合は、閉環反応によって生成した水を共沸によって除去することが好ましい。共沸剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等を使用することができる。
【0144】
共沸剤と前記溶媒の使用量の比(前者/後者;重量比)は、例えば25/75~45/55の範囲であることが、反応の進行を促進することができ、硬化性化合物製品の閉環率を向上させる効果が得られる点で好ましい。
【0145】
上記反応は、サンプリングして閉環率を確認する等の方法で反応が十分に進行したことを確認した上で停止することが好ましい。
【0146】
この反応終了後、得られた反応生成物は、一般的な、沈殿・洗浄・濾過により分離精製できる。
【0147】
(式(2)で表される化合物の調製)
前記硬化性化合物製品の原料として使用される上記式(2)で表される化合物のうち、例えば下記式(2-1)で表される化合物は、下記工程[1-1]、[1-2]を経て製造することができる。
工程[1-1]:下記式(4)で表される化合物と下記式(5)で表される化合物とを、塩基の存在下で反応させることにより、下記式(6)で表される化合物を得る。
工程[1-2]:下記式(6)で表される化合物に、アミノアルコール(下記式(7)で表される化合物)を反応させる
【0148】
【化23】
【0149】
上記式中、Ar1~Ar3、X、Y、nは上記に同じ。Dは連結基を示し、D1、D2における連結基と同様の例が挙げられる。mは繰り返し単位の平均重合度であり、例えば3~50、好ましくは4~30、特に好ましくは5~20である。Zはハロゲン原子を示す。
【0150】
(工程[1-1])
上記式(4)で表される化合物としては、例えば、ベンゾフェノンのハロゲン化物、及びその誘導体が挙げられる。
【0151】
上記式(5)で表される化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール、2,6-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,5-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ビスフェノールA(BisA)、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’-ビス(トリフルオロメチル)メチレンビスフェノール(BisAF)、及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0152】
上記誘導体としては、例えば、上記式(4)で表される化合物や式(5)で表される化合物の芳香族炭化水素基に置換基が結合した化合物が挙げられる。前記置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。前記アルキル基としては、なかでも、炭素数3~6の第2級アルキル基又は炭素数4~6の第3級アルキル基が好ましい。
【0153】
式(4)で表される化合物の使用量は、式(5)で表される化合物1モルに対して、1モル以上の範囲において、所望の式(6)で表される化合物における分子鎖の平均重合度に応じて調整することが望ましい。例えば、平均重合度5の場合、式(5)で表される化合物1モルに対して、式(4)で表される化合物を1.2モル程度(例えば1.19~1.21モル)、平均重合度10の場合は、式(4)で表される化合物を1.1モル程度(例えば1.09~1.11モル)、平均重合度20の場合は、式(4)で表される化合物を1.05モル程度(例えば1.04~1.06モル)使用することが好ましい。
【0154】
工程[1-1]の反応は、塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基;ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基から選択される少なくとも1種)の存在下で行われる。塩基の使用量は塩基の種類によって適宜調整することができる。例えば、水酸化カルシウム等の二酸塩基の使用量は、式(5)で表される化合物1モルに対して1.0~2.0モル程度である。
【0155】
また、工程[1-1]の反応は溶媒の存在下で行うことができる。前記溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、等の有機溶剤、或いはこれらの2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0156】
前記溶媒の使用量としては、式(4)で表される化合物と式(5)で表される化合物の合計(重量)に対して、例えば5~20重量倍程度である。溶媒の使用量が上記範囲を上回ると、反応速度が低下する傾向がある。
【0157】
工程[1-1]の反応雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。
【0158】
工程[1-1]の反応温度は、例えば100~200℃程度である。反応時間は、例えば3~24時間程度である。また、この反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
【0159】
この反応終了後、得られた反応生成物は、一般的な、沈殿・洗浄・濾過により分離精製できる。
【0160】
(工程[1-2])
上記式(7)で表される化合物としては、例えば、4-アミノフェノール、2-アミノ-6-ヒドロキシナフタレン、及びこれらの位置異性体や誘導体等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0161】
上記式(7)で表される化合物の使用量は、所望の式(2-1)で表される化合物における分子鎖の平均重合度に応じて適宜調整することができる。例えば、平均重合度5の場合、式(5)で表される化合物1モルに対して、0.4~0.6モル程度となる量、平均重合度10の場合、式(5)で表される化合物1モルに対して、0.2~0.4モル程度となる量、平均重合度20の場合、式(5)で表される化合物1モルに対して、0.1~0.15モル程度となる量である。
【0162】
工程[1-2]の反応は塩基の存在下で反応を行うことが好ましい。前記塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基;ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0163】
前記塩基の使用量は塩基の種類によって適宜調整することができる。例えば、水酸化ナトリウム等の一酸塩基の使用量は、上記式(7)で表される化合物1モルに対して1.0~3.0モル程度である。
【0164】
また、工程[1-2]の反応は溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、工程[1]において使用されるものと同様のものを使用することができる。
【0165】
工程[1-2]の反応雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。
【0166】
工程[1-2]の反応温度は、例えば100~200℃程度である。反応時間は、例えば1~15時間程度である。また、この反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
【0167】
この反応終了後、得られた反応生成物は、一般的な、沈殿・洗浄・濾過により分離精製できる。
【0168】
また、上記式(2-1)で表される化合物は、上記式(4)で表される化合物、上記式(5)で表される化合物、及び上記式(7)で表される化合物を一括で仕込み、反応させることでも製造することができる。
【0169】
前記硬化性化合物製品は、予め上記式(7)で表される化合物と上記式(3)で表される化合物との脱水的イミド化反応により、上記式(7)で表される化合物のアミノ基(-NH2)が上記式(r-1)に変換されてなる化合物(8)を得、その後、化合物(8)を上記式(4)で表される化合物、及び上記式(5)で表される化合物と一括で仕込んで反応させて製造することもできる。しかし、この方法では、仮に、化合物(8)が上記式(r-2)を含まない場合であっても、反応中に生成する水によって、上記式(r-1)で表される基が開環して、上記式(r-2)で表される基が生成する。従って、この方法で製造する場合にも、例えば共沸脱水により、反応系に生成した水を除去しつつ反応を行うことが好ましく、サンプリングして閉環率を確認する等の方法で、反応が十分に進行したことを確認した上で停止すること好ましい。
【0170】
[硬化性組成物]
本開示の硬化性組成物は、上記硬化性化合物製品を1種又は2種以上含む。前記硬化性組成物全量(若しくは、前記硬化性組成物における不揮発分全量)における上記硬化性化合物製品の含有量(2種以上含有する場合は、その総量)は、例えば30重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。尚、上限は100重量%である。すなわち、前記硬化性組成物は、上記硬化性化合物製品のみからなるものであっても良い。
【0171】
前記硬化性組成物は上記硬化性化合物製品以外にも、必要に応じて他の成分を含有していても良い。他の成分としては、例えば、上記硬化性化合物製品以外の硬化性化合物、触媒、フィラー、有機樹脂(シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂など)、溶剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、難燃助剤、補強材、核剤、カップリング剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料、顔料など)、分散剤、消泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0172】
前記硬化性組成物は、上記硬化性化合物製品以外にも、他の硬化性化合物を含有していても良いが、硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量(100重量%)における上記硬化性化合物製品の占める割合は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。尚、上限は100重量%である。
【0173】
上記硬化性化合物製品が溶剤溶解性に優れるため、前記硬化性組成物は、硬化性化合物製品が溶剤に溶解した溶剤溶解物であってもよい。前記溶剤としては、上記硬化性化合物製品が良溶解性を示す溶剤(例えば、エーテル、鎖状ケトン、環状ケトン、アミド、ハロゲン化炭化水素、及びスルホキシドから選択される少なくとも1種の溶剤)が好ましく、特に鎖状ケトン、環状ケトン、アミド、及びハロゲン化炭化水素から選択される少なくとも1種の溶剤が好ましい。
【0174】
また、前記硬化性組成物は架橋剤や硬化促進剤を含有せずとも(前記硬化性組成物全量における架橋剤及び硬化促進剤の合計含有量が、例えば3重量%以下、好ましくは1重量%未満であっても)、発熱開始温度以上の温度で加熱することにより、速やかに硬化物を形成することができる。そして、前記硬化性組成物の架橋剤や硬化促進剤の合計含有量が前記範囲であれば、未反応の硬化促進剤や、その分解物の含有量を極めて低く抑制することができるため、得られる硬化物は、架橋剤や硬化促進剤に由来するアウトガスの発生を抑制することができる。
【0175】
そして、前記硬化性組成物は、発熱開始温度以上の温度で加熱することにより、速やかに硬化して、超耐熱性と絶縁性を有する硬化物を形成することができる。尚、加熱処理条件は上述の硬化性化合物製品の硬化条件と同様の範囲で適宜設定することができる。
【0176】
前記硬化性組成物は、例えば、電子情報機器、家電、自動車、精密機械、航空機、宇宙産業用機器、エネルギー分野(油田掘削パイプ/チューブ、燃料容器)等の過酷な環境温度条件下で使用される複合材(繊維強化プラスチック、プリプレグ等)の成形材料や、遮蔽材料、伝導材料(例えば、熱伝導材料等)、絶縁材料、接着剤(例えば、耐熱性接着剤等)などの機能材料として好適に使用することができる。その他、封止剤、塗料、インク、シーラント、レジスト、造形材、形成材[スラストワッシャー、オイルフィルター、シール、ベアリング、ギア、シリンダーヘッドカバー、ベアリングリテーナー、インテークマニホールド、ペダル等の自動車部品;基材、電気絶縁材(絶縁膜等)、積層板、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリ、シリコンウェハキャリアー、ICチップトレイ、電解コンデンサトレイ、絶縁フィルム等の半導体・液晶製造装置部品;レンズ等の光学部品;ポンプ、バルブ、シール等のコンプレッサー部品;航空機のキャビン内装部品;滅菌器具、カラム、配管等の医療器具部品や食品・飲料製造設備部品;パーソナルコンピューター、携帯電話などに使用されるような筐体、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持する部材であるキーボード支持体に代表されるような電気・電子機器用部材等の形成材]等として好ましく使用できる。
【0177】
前記硬化性組成物は上記特性を有するため、特に、従来の樹脂材料では対応することが困難であった、高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)において半導体素子を被覆する封止剤として好ましく使用することができる。
【0178】
また、前記硬化性組成物は上記特性を有するため、接着剤[例えば、高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)において、半導体を積層する用途に使用する耐熱性接着剤等]として好ましく使用することができる。
【0179】
また、前記硬化性組成物は上記特性を有するため、塗料(溶剤型塗料、若しくは粉体塗料)[例えば、高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)の塗料(溶剤型塗料、若しくは粉体塗料)]として好ましく使用することができる。
【0180】
[成形物]
本開示の成形物は、上記硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物を含む。前記成形物の形状としては特に制限がなく、用途に応じて適宜選択することができ、成形物は平面状であっても立体状であってもよい。また、ペレット状或いは粒子状であってもよい。前記成形物は、上記硬化性化合物製品(若しくは、上記硬化性組成物)を射出成形、トランスファー成形、コンプレッション成形、押出成形等の成形法に付すことにより製造することができる。
【0181】
前記成形物は耐熱性に優れる。そのため、住宅・建築、スポーツ用具、自動車、航空・宇宙産業分野において、鉄やアルミニウムなどの金属に替わる材料として好適に使用できる。前記成形物が平面状の成形物(若しくは、フィルム状の成形物)である場合、電気デバイスの層間絶縁膜として好適に使用できる。
【0182】
[積層体]
本開示の積層体は、上記硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物と基板とが積層された構成を有する。前記積層体には、硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物/基板、及び基板/硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物/基板の構成が含まれる。
【0183】
前記基板の素材としては、例えば、半導体材料(例えば、セラミック、SiC、窒化ガリウム等)、紙、塗工紙、プラスチックフィルム、木材、布、不織布、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミ合金、銅)等が挙げられる。
【0184】
前記積層体は、基板が、上記硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物を含み、耐熱性及び前記基板に対する密着性に優れた接着層を介して積層された構成を有する。前記積層体は、例えば電子回路基板等として好適に使用できる。
【0185】
前記積層体は、例えば上記硬化性化合物製品を基板上に載置して、加熱処理を施すことによって製造することができる。
【0186】
前記積層体は、また、プラスチック製の支持体上に、前記硬化性化合物製品の溶融物を塗布し、固化して、前記硬化性化合物製品を含む薄膜を得、得られた薄膜を前記支持体から剥離して基板上に積層し、加熱処理を施すことによっても製造することができる。
【0187】
[複合材]
本開示の複合材は、上記硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物と繊維とを含む。複合材の形状としては、繊維状やシート状など特に制限がない。
【0188】
前記繊維としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。前記繊維は、糸状であっても、又シート状に加工されたもの(織布又は不織布)であってもよい。
【0189】
前記複合材は、例えば、上記硬化性化合物製品を溶剤に溶解した溶液や、上記硬化性化合物製品の溶融物を繊維に含浸させ、加熱処理を施すことにより製造できる。前記加熱処理により、含浸させた硬化性化合物製品を半硬化させて得られる複合材は、プリプレグ等の中間加工品として好適に使用できる。
【0190】
前記複合材は繊維の空隙に上記硬化性化合物製品が入り込んで硬化した構成を有し、軽量で高強度であり、更に耐熱性に優れる。そのため、住宅・建築、スポーツ用具、自動車、航空・宇宙産業分野において、鉄やアルミニウムなどの金属に替わる材料として好適に使用できる。その他、消防用被服(防火衣、活動服、救助服・耐熱服)材料、カーテン、敷物材料;2次電池用セパレーター、燃料電池用セパレーター等のセパレーター;産業用フィルター、車載用フィルター、医療用フィルター等のフィルター;宇宙材料等として好適に使用することができる。
【0191】
以上、本開示の各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において、適宜、構成の付加、省略、置換、及び変更が可能である。また、本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
【実施例
【0192】
以下、実施例により本開示をより具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0193】
尚、測定は下記条件で行った。
<NMR測定>
測定装置:JEOL ECA500、又はBRUKER AVANCE600MHz
測定溶剤:重DMSO、重クロロホルム、又は重クロロホルム/ペンタフルオロフェノール(PFP)=2/1(wt/wt)の混合液
化学シフト:TMSを規準とした
<GPC測定>
装置:ポンプ「LC-20AD」((株)島津製作所製)
検出器:RID-10A((株)島津製作所製)又はMODEL302TDA(Viscotek製)、及びUV2501(Viscotek製)
溶剤:THF又はクロロホルム
カラム:Shodex KF-803+Shodex KF802+Shodex KF801×2
流速:1.0mL/min
温度:40℃
試料濃度:0.1%(wt/vol)
標準ポリスチレン換算
<DSC測定>
装置:TA Instruments Q2000
昇温速度:20℃/min
雰囲気:窒素雰囲気
<TGA測定>
装置:セイコー インスツルメンツ TG/DTA6200
昇温速度:20℃/min
雰囲気:窒素雰囲気
【0194】
実施例1(化合物(1-1)製品の製造)
(工程1-1)
撹拌装置、窒素導入管、およびディーンスターク装置を備えた反応器に、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(DFBP)70.00g、ビスフェノールA(BisA)30.52g、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル(TMP)32.39g、無水炭酸カリウム(K2CO3)55.42g、N-メチルピロリドン(NMP)528.5g、およびトルエン(Tol)324.0gを入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら加熱し、130~140℃で4時間トルエンを還流させた。その後、さらに加熱して170~180℃でトルエンを留去した。さらに、170~180℃で10時間撹拌を継続した後、室温に戻した。
【0195】
(工程1-2)
その後、反応生成物が入った反応器に、4-アミノフェノール(4-AP)12.253g、無水炭酸カリウム(K2CO3)15.518g、N-メチルピロリドン(NMP)50.8g、及びトルエン(Tol)397.8gを添加し、再び窒素雰囲気下で撹拌しながら加熱し、130~140℃で3時間トルエンを還流させた。その後、加熱して170~180℃でトルエンを留去し、さらに前記温度を保持しつつ4時間撹拌を継続した。その後、室温まで冷却し、反応液を3000mLのメタノールに添加、ろ過することで粉末状固体を得た。この粉末状固体をメタノールおよび水で繰返し洗浄した後、80℃で一晩減圧乾燥して、粉末状固体のジアミン-1[Diamine-1、下記式で表される化合物(式中のAr3:BisAから2個の水酸基を除いた残基、TMPから2個の水酸基を除いた残基)]を得た。
【0196】
【化24】
【0197】
(工程2)
撹拌装置、窒素導入管、およびディーンスターク装置を備えた反応器に、工程1で得られたジアミン-1を100.00g、無水マレイン酸(MAH)11.94g、N-メチルピロリドン(NMP)289.7g、およびトルエン(Tol)150.3gを入れ、窒素雰囲気下、室温で5時間撹拌した。その後、触媒としてp-トルエンスルホン酸(pTSA)1.934gを添加し、140℃に昇温した後、8時間撹拌を継続し、トルエンを還流させて水分を除去した。反応液を室温に戻した後、反応液を3000mLのメタノールに添加することで粉末状固体を得た。この粉末状固体をメタノールおよび水で繰返し洗浄した後、80℃で一晩減圧乾燥して、化合物製品(1-1)(下記式(1-1)で表され、式中のAr3がBisAから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位と、式中のAr3がTMPから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位を有する化合物)101.5gを得た。得られた化合物製品の性状は下記表2に示す。
【0198】
【化25】
【0199】
実施例2(化合物(1-2)製品の製造)
下記表1に記載の通り条件を変更した以外は実施例1と同様にして、化合物製品(1-2)(上記式(1-1)で表され、式中のAr3がBisAから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位と、式中のAr3がDAQから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位を有する化合物)を得た。得られた化合物製品の性状は下記表2に示す。
【0200】
実施例3(化合物(1-3)製品の製造)
下記表1に記載の通り条件を変更した以外は実施例1と同様にして、化合物製品(1-3)(上記式(1-1)で表され、式中のAr3がBisAから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位と、式中のAr3がDBQから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位を有する化合物)を得た。得られた化合物製品の性状は下記表2に示す。
【0201】
実施例4(化合物(1-4)製品の製造)
下記表1に記載の通り条件を変更した以外は実施例1と同様にして、化合物(1-4)製品(上記式(1-1)で表され、式中のAr3がBisAFから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位を有する化合物)を得た。得られた化合物製品の性状は下記表2に示す。
【0202】
実施例5(化合物(1-5)製品の製造)
下記表1に記載の通り条件を変更した以外は実施例1と同様にして、化合物(1-5)製品(上記式(1-1)で表され、式中のAr3がBisAFから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位と、式中のAr3がTMPから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位を有する化合物)を得た。得られた化合物製品の性状は下記表2に示す。
【0203】
実施例6(化合物(1-6)製品の製造)
下記表1に記載の通り条件を変更した以外は実施例1と同様にして、化合物(1-6)製品(上記式(1-1)で表され、式中のAr3がBisAFから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位と、式中のAr3がDAQから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位を有する化合物)を得た。得られた化合物製品の性状は下記表2に示す。
【0204】
比較例1(化合物(1-7)製品の製造)
下記表1に記載の通り条件を変更した以外は実施例1と同様にして、化合物(1-7)製品(上記式(1-1)で表され、式中のAr3がBisAから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位を有する化合物)を得た。得られた化合物製品の性状は下記表2に示す。
【0205】
比較例2(化合物(1-8)製品の製造)
下記表1に記載の通り条件を変更した以外は実施例1と同様にして、化合物(1-8)製品(上記式(1-1)で表され、式中のAr3がBisAから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位を有する化合物)を得た。得られた化合物製品の性状は下記表2に示す。
【0206】
比較例3(化合物(1-9)製品の製造)
下記表1に記載の通り条件を変更した以外は実施例1と同様にして、化合物(1-9)製品(上記式(1-1)で表され、式中のAr3がBisAから2個の水酸基を除いた残基である繰り返し単位を有する化合物)を得た。得られた化合物製品の性状は下記表2に示す。
【0207】
【表1】
【0208】
表1中の略号を以下に説明する。
TMP:4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル
DAQ:2,5-ジ-t-ペンチルハイドロキノン
DBQ:2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン
BisAF:4,4’-ビス(トリフルオロメチル)メチレンビスフェノール
【0209】
実施例及び比較例で得られた化合物製品について、1H-NMRスペクトルのシグナルの積分強度比から、官能基濃度、未閉環濃度、及び閉環率を算出した。また、GPC測定により数平均分子量および重量平均分子量を求めた。さらに、DSC測定によりTgおよび発熱量を求め、TGA測定により5%熱重量減少温度(Td5)を求めた。
【0210】
化合物製品(1-2)、(1-3)、(1-4)、(1-6)、及び(1-9)の1H-NMR測定結果を図1~5に示す。
【0211】
また、実施例で得られた化合物製品(1-1)、(1-2)、(1-3)、及び(1-7)のDSC測定結果を図6に示す。
【0212】
また、得られた化合物製品の溶液での保存安定性を下記方法で評価した。
化合物製品は、80℃で一晩減圧乾燥した後、乾燥窒素中で室温に戻したものをサンプルとして使用した。
そして、内部を乾燥窒素で置換したバイアル瓶に前記サンプルを所定量秤量し、20重量%溶液になるようにNMP(水分低減品)を加えて、20重量%NMP溶液を得た。
得られた20重量%NMP溶液を、デシケーター内(温度:23℃)に10日間保存し、保存前の粘度(η0)と保存後の粘度(η10)の比から、保存安定性を評価した。尚、粘度はE型粘度計を用いて23℃において測定した。
【0213】
また、得られた化合物製品の溶剤溶解性を下記方法で評価した。
化合物製品(0.1g)を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)又はクロロホルム(10g)と混合し、室温(23℃)にて24時間撹拌して、溶剤への溶解性を評価した。その結果、何れも完全に溶解した。溶剤溶解性は良好であった。
【0214】
結果を下記表2にまとめて示す。
【表2】
【0215】
[溶融プレス成形]
実施例及び比較例で得られた各化合物製品を成形用金型に充填し、プレス機(30トン手動油圧真空プレス、IMC-462-3型、(株)井元製作所製)にセットして、真空に引きながら、50℃から20℃/分で280℃まで昇温して1時間保持した後、さらに20℃/分で320℃まで昇温して30分間保持した。その後、プレス機を冷却して、100℃以下になったところで成形用金型を取り出して、前記化合物製品の硬化物からなる、平板状の成形体(厚み:1mm)を得た。
【0216】
得られた成形体について、DSC測定によりTgを求めた。
【0217】
また、得られた成形体について、比誘電率及び誘電正接を下記方法で測定した。
<測定方法>
成形体を切削して幅1.5mmの試験片を作成し、空洞共振器摂動法(ASTM D2520に準拠)で比誘電率、誘電正接を測定した。周波数は10GHzで測定した。
【0218】
結果を下記表3にまとめて示す。
【表3】
【0219】
以上のまとめとして、本開示の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1] 下記式(1)
【化26】
[式中、R1、R2は、同一又は異なって下記式(r-1)で表される基又は下記式(r-2)
【化27】
(式中、QはC又はCHを示す。式中の2個のQは単結合又は二重結合を介して結合する。R3~R6は同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。R3とR4は互いに結合して環を形成していてもよい。n’は0以上の整数を示す。式中の波線を付した結合手が、D1又はD2に結合する)
で表される基を示す。D1、D2は、同一又は異なって、単結合又は連結基を示す。Lは、下記式(I)で表される構造と下記式(II)
【化28】
(式中、Ar1~Ar3は、同一又は異なって、芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基、又は2個以上の芳香環が単結合若しくは連結基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基を示す。前記芳香環はアルキル基を有していても良い。Xは-CO-、-S-、又は-SO2-を示し、Yは、同一又は異なって、-S-、-SO2-、-O-、-CO-、-COO-、又は-CONH-を示す。nは0以上の整数を示す)
で表される構造を含む繰り返し単位を有する2価の基を示す。但し、Lに含まれる全てのAr1~Ar3のうち少なくとも1つはアルキル基を有する芳香環の構造式から2個の水素原子を除いた基である、及び/又は、Lに含まれる全てのAr1~Ar3のうち、少なくとも1つは、2個以上の芳香環がハロゲン化アルキレン基を介して結合した構造式から2個の水素原子を除いた基である]
で表される化合物を含み、前記式(r-1)で表される基と前記式(r-2)で表される基の合計に対する前記式(r-1)で表される基の割合が97%以上である、硬化性化合物製品。
[2] 前記式(r-1)で表される基が、式(r-1-1)~(r-1-6)から選択される基であり、前記式(r-2)で表される基が、前記式(r-1-1)~(r-1-6)から選択される基のイミド結合部が開環してなる基である、[1]に記載の硬化性化合物製品。
[3] 前記式(r-1)で表される基が、下記式(r-1’)で表される基である、[1]又は[2]に記載の硬化性化合物製品。
【化29】
(式中、Q、R3、R4は前記に同じ。式中の波線を付した結合手が、D1又はD2に結合する)
[4] 前記式(r-2)で表される基が、式(r-2’)で表される基である、[1]~[3]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
【化30】
(式中、Q、R3、R4は前記に同じ。式中の波線を付した結合手が、D1又はD2に結合する)
[5] 式(1)中のR1-D1-基及びR2-D2-基が、同一又は異なって、式(rd-1’-1)、(rd-1’-2)、(rd-2’-1)、及び(rd-2’-2)から選択される基である、[1]~[4]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
[6] 式(1)中のR1-D1-基及びR2-D2-基が、同一又は異なって、下記式(rd-1’-2)又は下記式(rd-2’-2)で表される基である、[1]~[4]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
【化31】
(式中、Q、R3、R4は前記に同じ)
[7] 式(II)で表される構造が、式(II’-1)~(II’-10)から選択される少なくとも1つの構造と、式(II’-11)で表される構造又は式(II’-12)で表される構造とを組み合わせて含む、[1]~[6]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
[8] 式(II)で表される構造が、下記式(II’-6)~(II’-9)から選択される少なくとも1つの構造と、下記式(II’-11)又は(II’-12)で表される構造とを組み合わせて含む、[1]~[7]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
【化32】
[9] 式(II)で表される構造が、下記式(II’-4)、(II’-5)、及び(II’-10)から選択される少なくとも1つの構造と、下記式(II’-11)で表される構造とを組み合わせて含む、[1]~[8]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
【化33】
[10] 式(1)中のD1、D2が、同一又は異なって、式(d-1)~(d-4)で表される構造を含む基から選択される基である、[1]~[9]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
[11] 当該硬化性化合物製品を減圧乾燥処理に付した後、NMPに溶解して得られる、20重量%NMP溶液の粘度(η0)と、前記溶液を、23℃に保持したデシケーター内に10日間静置後の粘度(η10)が、下記式(F)を満たす、[1]~[10]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
η10/η0<2 (F)
[12] 前記粘度(η0)と前記粘度(η10)が、下記式(F-1)を満たす、[1]~[10]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
η10/η0<1.75 (F-1)
[13] 前記粘度(η0)と前記粘度(η10)が、下記式(F-2)を満たす、[1]~[10]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
η10/η0<1.5 (F-2)
[14] 前記粘度(η0)と前記粘度(η10)が、下記式(F-4)を満たす、[11]~[13]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
1≦η10/η0 (F-4)
[15] 標準ポリスチレン換算による重量平均分子量が1000~10000である、[1]~[14]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
[16] ガラス転移温度が80~230℃である、[1]~[15]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品。
[17] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物を含む成形物。
[18] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物と基板とが積層された構成を有する積層体。
[19] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品を基板上に載置し、加熱処理を施すことで、前記硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物と基板とが積層された構成を有する積層体を得る、積層体の製造方法。
[20] プラスチック製の支持体上に、前記硬化性化合物製品の溶融物を塗布し、固化して、前記硬化性化合物製品を含む薄膜を得、得られた薄膜を前記支持体から剥離して基板上に積層し、加熱処理を施す、[19]に記載の積層体の製造方法。
[21] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物と繊維とを含む複合材。
[22] [[1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品の溶剤溶解物、又は前記硬化性化合物製品の溶融物を繊維に含浸させ、加熱処理を施すことにより、前記硬化性化合物製品の硬化物又は半硬化物と繊維とを含む複合材を製造する、複合材の製造方法。
[23] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品を含む接着剤。
[24] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品の接着剤への使用。
[25] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品を用いて接着剤を製造する、接着剤の製造方法。
[26] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品を含む塗料。
[27] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品の塗料への使用。
[28] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品を用いて塗料を製造する、塗料の製造方法。
[29] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品を含む封止剤。
[30] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品の封止剤への使用。
[31] [1]~[16]の何れか1つに記載の硬化性化合物製品を用いて封止剤を製造する、封止剤の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本開示の硬化性化合物製品は成形加工性に優れ、前記硬化性化合物製品を溶剤に溶解して得られた溶液は保存安定性が高い。そして、前記硬化性化合物製品を、発熱開始温度以上の温度での加熱処理に付せば、耐熱性に優れ、高い絶縁性を有する硬化物が得られる。
そのため、前記硬化性化合物製品は、超耐熱性が求められる分野において、接着剤、封止剤、塗料等に好適に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6