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特許7584657炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を用いた電力変換装置
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  • 特許-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を用いた電力変換装置 図1
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  • 特許-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を用いた電力変換装置 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を用いた電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241108BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01L29/78 657D
H01L29/78 652S
H01L29/78 652N
H01L29/78 652T
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023532958
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2021025657
(87)【国際公開番号】W WO2023281669
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】川原 洸太朗
(72)【発明者】
【氏名】永久 雄一
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-060301(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155566(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/124378(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/06
H01L 29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の炭化珪素の半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の表層に設けられた第2導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域の表層部に平面視で前記ウェル領域の内部に形成された第1導電型のソース領域と、
前記ウェル領域の平面視の内部に、幅が一定のストライプ状でありその端部が折り曲げられた形状に形成された、第1導電型の第1離間領域と、
前記第1離間領域上に形成され前記第1離間領域とショットキ接続するショットキ電極と、
前記ウェル領域および前記ソース領域とオーミック接続し、前記ショットキ電極上に形成されたソース電極と、
前記ウェル領域に隣接して形成された第1導電型の第2離間領域と、
平面視で前記ソース領域と前記第2離間領域との間の前記ウェル領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と
を備えたことを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第1離間領域は、前記端部において180°折り曲げられていること
を特徴とする、請求項1記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第1離間領域は、前記第1離間領域自身と接続されないこと
を特徴とする、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第1離間領域は、前記端部の折り曲げられた箇所の外周部が曲線であること
を特徴とする、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第1離間領域は、平面視で3回以上折り曲がっていること
を特徴とする、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記ソース領域は、前記端部には形成されていないこと
を特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記ウェル領域は、前記ドリフト層の表層に複数、互いに離間して形成されたこと
を特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
平面視で前記第1離間領域を内部に備える前記ウェル領域は、前記ドリフト層の表層において、互いに接続して形成されたこと
を特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記ウェル領域内の前記第1離間領域に挟まれた領域が前記ウェル領域の一部であること
を特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
前記ウェル領域内の前記第1離間領域に挟まれた領域である前記ウェル領域の一部上に前記ソース電極が形成されたこと
を特徴とする、請求項9に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
さらに、前記ウェル領域内の前記第1離間領域を囲むように前記ウェル領域より第2導電型の不純物濃度が高い第2導電型のコンタクト領域を備えたこと
を特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置を有し、
入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記炭化珪素半導体装置の前記ゲート電極の電圧を前記ソース電極の電圧と同じにすることによってオフ動作させ、前記炭化珪素半導体装置を駆動する駆動信号を前記炭化珪素半導体装置に出力する駆動回路と、
前記駆動回路を制御する制御信号を前記駆動回路に出力する制御回路と
を備えた電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素で構成される炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を用いた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)を用いて構成されるPNダイオードに関して、順方向電流すなわちバイポーラ電流を流し続けると、結晶中に積層欠陥が発生して順方向電圧がシフトするという信頼性上の問題が知られている。これは、PNダイオードを通して注入された少数キャリアが多数キャリアと再結合する際の再結合エネルギーにより、炭化珪素基板に存在する基底面転位などを起点として、面欠陥である積層欠陥が拡張するためだと考えられている。この積層欠陥は、電流の流れを阻害するため、積層欠陥の拡張により電流が減少し順方向電圧を増加させ、半導体装置の信頼性の低下を引き起こす。
【0003】
このような順方向電圧の増加は、炭化珪素を用いた縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)においても同様に発生する。縦型MOSFETは、ソース・ドレイン間に寄生PNダイオード(ボディダイオード)を備えており、順方向電流がこのボディダイオードに流れると、縦型MOSFETにおいてもPNダイオードと同様の信頼性低下を引き起こす。SiC-MOSFETのボディダイオードをMOSFETの還流ダイオードとして用いる場合には、このMOSFET特性の低下が発生する場合がある。
【0004】
上記のような寄生PNダイオードへの順方向電流通電による信頼性上の問題を解決する方法として、MOSFET等のユニポーラ型のトランジスタである半導体装置の活性領域に、ユニポーラ型のダイオードであるショットキバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)を還流ダイオードとして内蔵させて使用する方法がある。このとき、活性領域端部周辺では、活性領域内部に比べてSBDの密度が低くなるため、優先的にボディダイオードが動作していた。
【0005】
活性領域端部周辺における優先的なボディダイオード動作を抑制するために、活性領域の周囲の終端領域に活性領域よりも高密度なSBDを配置する技術が開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2019/124378国際公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記先行技術文献の技術を適用してもなお、活性領域端周辺のSBD密度が活性領域内部に比べて小さい場合があった。活性領域端周辺のSBD密度を高くするために、SBDの断面視の幅を大きくすると、ショットキ界面に印加される電界が大きくなり逆阻止状態においてリーク電流が増加する場合があった。
【0008】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、逆阻止状態のリーク電流を増加させること無く、活性領域端周辺のSBD密度を高め、より高密度のユニポーラ電流を流すことが可能な炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示にかかる炭化珪素半導体装置および電力変換装置は、第1導電型の炭化珪素の半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層の表層に設けられた第2導電型のウェル領域と、前記ウェル領域の表層部に平面視で前記ウェル領域の内部に形成された第1導電型のソース領域と、前記ウェル領域の平面視の内部に、幅が一定のストライプ状でありその端部が折り曲げられた形状に形成された、第1導電型の第1離間領域と、前記第1離間領域上に形成され前記第1離間領域とショットキ接続するショットキ電極と、前記ウェル領域および前記ソース領域とオーミック接続し、前記ショットキ電極上に形成されたソース電極と、前記ウェル領域に隣接して形成された第1導電型の第2離間領域と、平面視で前記ソース領域と前記第2離間領域との間の前記ウェル領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示にかかる炭化珪素半導体装置によれば、信頼性の高い炭化珪素半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の平面図である。
図2】実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の断面図である。
図3】実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の参考平面図である。
図4】実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置の参考平面図である。
図5】実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置の平面図である。
図6】実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置の断面図である。
図7】実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置の変形例の平面図である。
図8】実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置の変形例の平面図である。
図9】実施の形態3に係る炭化珪素半導体装置の平面図である。
図10】実施の形態4に係る炭化珪素半導体装置の平面図である。
図11】実施の形態5に係る炭化珪素半導体装置の平面図である。
図12】実施の形態6に係る電力変換装置図の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は模式的に示されるものであり、異なる図面にそれぞれ示されている画像のサイズ及び位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得る。また、以下の説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称及び機能も同様のものとする。よって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
以下の実施の形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明するが、導電型は反対であってもよい。
【0013】
実施の形態1.
まず、本開示の実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置であるショットキバリアダイオード内蔵炭化珪素MOSFET(SBD内蔵SiC-MOSFET)の活性領域端部における炭化珪素層の表面近傍の平面図である。また、図2は、本実施の形態のSBD内蔵SiC-MOSFETの活性領域端のSBD領域を横断する面の断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態にかかるSBD内蔵SiC-MOSFETの活性領域には、ストライプ状のSBDに対応するストライプ状のn型第1離間領域21が周期的に形成されている。活性領域の周囲は、終端領域であり、終端領域には、活性領域を囲むようにp型の終端ウェル領域31が形成されている。
活性領域の端部、すなわち、活性領域と終端領域との境界付近の活性領域においては、ストライプ状の第1離間領域21が活性領域の中央部から延びる方向に対して直角に折り曲げられて形成されている。ここで、ストライプ状の第1離間領域21は、活性領域の中央部と周辺部とで同じ幅、すなわち、一定の幅で形成されている。
【0015】
各第1離間領域21の周囲には、第1離間領域21を平面視で取り囲むように、p型のウェル領域30が周期的に形成されている。つまり、n型の第1離間領域21は、ウェル領域30の平面視の内部に形成されている。各ウェル領域30の平面視の内部には、第1離間領域21側から所定の距離だけ内側に入った内部に低抵抗p型のコンタクト領域35が形成されている。また、コンタクト領域35の第1離間領域21と反対側には、低抵抗n型のソース領域40が形成されている。ソース領域40の外側には、ウェル領域30が形成されている。
コンタクト領域35とソース領域40とが形成された各ウェル領域30の外側、すなわち、第1離間領域21が形成されている側と平面視で反対側には、ウェル領域30に隣接してn型の第2離間領域22が形成されている。第2離間領域22は、ドリフト層20の一部である。
また、隣接するウェル領域30は互いに離間して形成されている。ウェル領域30と終端領域の終端ウェル領域31との間にも、第2離間領域22が形成されている。
【0016】
次に、図1の一つの第1離間領域21を横断する方向、すなわち、ストライプ状の第1離間領域21の延伸方向に対して直交する方向の断面構造を図2を用いて説明する。
図2に示すように、本実施の形態にかかるSBD内蔵SiC-MOSFETにおいては、n型で低抵抗の炭化珪素で構成される半導体基板10の表面上に、n型の炭化珪素で構成されるドリフト層20が形成されている。ドリフト層20の表層部には、断面視で離間した、p型の炭化珪素で構成される一対のウェル領域30が設けられている。一対のウェル領域30の間は、ドリフト層20の一部である、n型の第1離間領域21となっている。
【0017】
第1離間領域21を挟んでウェル領域30の反対側、すなわち、ウェル領域30の外側は、ドリフト層20の一部であり、n型の第2離間領域22となっている。第2離間領域22側から第1離間領域21に向けてウェル領域30の第2離間領域22側の端から所定の間隔だけ内部に入った位置の表層部に、n型の炭化珪素で構成されるソース領域40が形成されている。また、ソース領域40のさらに内側、すなわち、ソース領域40より第1離間領域21側のウェル領域30の表層部の内部には、低抵抗p型でウェル領域30よりp型不純物濃度が高い、p型の炭化珪素で構成されるコンタクト領域35が形成されている。ここで、イオン注入の有無によらず、炭化珪素で構成される領域、すなわち、当初ドリフト層20として形成された領域を炭化珪素層と呼ぶことにする。
ここで、ソース領域40とコンタクト領域35とは接して形成される。
【0018】
ソース領域40およびコンタクト領域35の表面上には、ウェル領域30およびソース領域40とオーミック接続するソース電極80が形成されている。第1離間領域21の表面から第1離間領域21に隣接するウェル領域30の表面にかけての上にはショットキ電極71が形成されており、ショットキ電極71と第1離間領域21とはショットキ接続されている。第1離間領域21とショットキ電極71とによりSBDを構成し、第1離間領域21とショットキ電極71との界面がショットキ界面になる。
【0019】
ウェル領域30内のソース領域40の表面上と、第2離間領域22上、および、平面視でソース領域40と第2離間領域22との間のウェル領域30上には、酸化珪素からなるゲート絶縁膜50が形成されている。平面視でソース領域40と第2離間領域22との間のウェル領域30上にはゲート絶縁膜50を介して低抵抗多結晶シリコンからなるゲート電極60が形成されている。ゲート電極60が形成されている箇所の下部で、ゲート絶縁膜50を介してゲート電極60と対向するウェル領域30の表層部がチャネル領域となる。
【0020】
ゲート電極60とゲート絶縁膜50との上には、酸化珪素からなる層間絶縁膜55が形成されている。ソース領域40上とコンタクト領域35上、および、ショットキ電極71上は、ゲート絶縁膜50と層間絶縁膜55とが除去されたコンタクトホール90になっており、コンタクトホール90内および層間絶縁膜55上には、ソース電極80が形成されている。コンタクトホール90の平面視上の位置は、図1に破線で記載されている。
ソース電極80とコンタクト領域35との間には、コンタクト領域35とソース電極80とをオーミック接続させる金属シリサイドからなるオーミック電極(図示せず)が形成されている。
【0021】
半導体基板10のドリフト層20と反対側の面には、ドレイン電極81とが形成されている。半導体基板10とドレイン電極81との間には、半導体基板10とドレイン電極81とオーミック接続させる金属シリサイドからなるオーミック電極(図示せず)が形成されている。
なお、ショットキ電極71とソース電極80とが同じ材料で形成されていてもよい。
【0022】
ここから、本開示の実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETの製造方法について、説明する。
【0023】
まず、第1の主面の面方位がオフ角(4°等)を有する(0001)面であり、4Hのポリタイプを有する、n型で低抵抗の炭化珪素からなる半導体基板10の第1の主面の上に、化学気相堆積法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)により、1×1015cm-3以上、1×1017cm-3以下の不純物濃度でn型、5μm以上、100μm以下の厚さの炭化珪素からなるドリフト層20をエピタキシャル成長させる。ドリフト層20の厚さは、炭化珪素半導体装置の耐圧によっては、100μm以上であってもよい。
【0024】
つづいて、ドリフト層20の表面の所定の領域にフォトレジスト等により注入マスクを形成し、p型の不純物であるAl(アルミニウム)をイオン注入する。このとき、Alのイオン注入の深さはドリフト層20の厚さを超えない0.5μm以上、3μm以下程度とする。また、イオン注入されたAlの不純物濃度は、1×1017cm-3以上、1×1019cm-3以下の範囲でありドリフト層20の不純物濃度より高くする。その後、注入マスクを除去する。本工程によりAlイオン注入された領域がウェル領域30となる。
【0025】
次に、ドリフト層20の表面のウェル領域30の内側の所定の箇所が開口するようにフォトレジスト等により注入マスクを形成し、n型の不純物であるN(窒素)をイオン注入する。Nのイオン注入深さはウェル領域30の厚さより浅いものとする。また、イオン注入したNの不純物濃度は、1×1018cm-3以上、1×1021cm-3以下の範囲であり、ウェル領域30のp型の不純物濃度を超えるものとする。本工程でNが注入された領域のうちn型を示す領域がソース領域40となる。その後、注入マスクを除去する。
【0026】
また、同様の方法により、ウェル領域30の内側の所定の領域にウェル領域30の不純物濃度より高い不純物濃度でAlをイオン注入することにより、コンタクト領域35を形成する。コンタクト領域35のAlの不純物濃度は、1×1018cm-3以上、1×1021cm-3以下の範囲であればよい。
【0027】
次に、熱処理装置によって、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス雰囲気中で、1300から1900℃の温度で、30秒から1時間のアニールを行なう。このアニールにより、イオン注入されたN及びAlを電気的に活性化させる。
【0028】
つづいて、ドリフト層20、ウェル領域30、ソース領域40およびコンタクト領域35の炭化珪素層の表面を熱酸化して10nm以上、300nm以下の厚さのゲート絶縁膜50である酸化珪素膜を形成する。次に、ゲート絶縁膜50の上に、導電性を有する多結晶シリコン膜を減圧CVD法により形成し、これをパターニングすることによりゲート電極60を形成する。つづいて、酸化珪素からなる層間絶縁膜55を減圧CVD法により形成する。
【0029】
次に、層間絶縁膜55とゲート絶縁膜50とを貫通し、活性領域内のコンタクト領域35とソース領域40とに到達するコンタクトホール(コンタクトホールの第1部分)をドライエッチング法により形成する。
つづいて、スパッタ法等により、ニッケル(Ni)を主成分とする金属膜を形成後、600から1100℃の温度の熱処理を行ない、Niを主成分とする金属膜と、コンタクトホール(第1部分)内の炭化珪素層とを反応させて、炭化珪素層と金属膜との間にシリサイドを形成する。金属膜がNiの場合、シリサイドはニッケルシリサイドになる。つづいて、反応してできたシリサイド以外の残留した金属膜をウェットエッチングにより除去する。ここで形成されたシリサイドが図示しないオーミック電極となる。
【0030】
次に、オーミック電極および層間絶縁膜55の表面上に、レジストマスクをフォトリソグラフィー法により形成する。
つづいて、レジストマスクが形成された状態で、フッ酸を含むエッチング液を用いて第1離間領域21の表面の上方のゲート絶縁膜50と層間絶縁膜55とをウェットエッチングする。ここでウェットエッチングされた領域もコンタクトホールの一部(コンタクトホールの第2部分)となる。その後レジストマスクを除去する。
【0031】
次に、第1離間領域21の表面上に、第1離間領域21とショットキ接続する、Ti、Moなどのショットキ電極71を形成する。また、ショットキ電極71上、オーミック電極上にAlを主成分とするソース電極80を形成する。
つづいて、裏面側の裏面オーミック電極に接して底側にドレイン電極81を形成することによって、図2に断面図を示す、本実施の形態の炭化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETを製造することができる。
【0032】
なお、第1離間領域21の折り曲げ角度は90°である必要は無く、90°に近い角度であってもよい。また、60°程度より大きな角度で折れ曲がっていれば、折り曲げ部が無いものと比較して、活性領域端周辺のSBD密度を高めることができる。
また、第1離間領域21が平面視で同じ幅で形成されていると説明してきたが、第1離間領域21が厳密に同じ幅で形成されていなくてもよい。第1離間領域21の幅は、ショットキ界面に印加される電界が増大されなければ、±1μm程度の違いがあってもよい。
【0033】
ここで、本実施の形態の炭化珪素半導体装置の還流動作においては、原則として還流電流はSBDに流れ、ウェル領域30とドリフト層20との間のpnボディダイオードには還流電流は流れない。本実施の形態のようにSBDが端部で折り曲げて形成されていなければ、活性領域と終端領域との境界近傍では、SBDの面密度が活性領域中央部と比較して小さくなり、ボディダイオードに電圧が印加されやすくボディダイオードがオンしやすくなってしまう場合があった。また、SBDの幅を拡げると、逆阻止状態のリーク電流を増加させてしまう場合があった。
【0034】
しかしながら、本実施の形態の炭化珪素半導体装置においては、活性領域端において第1離間領域21を折り曲げて形成しているため、活性領域と終端領域との境界近傍においても、SBDの面密度を活性領域中央部と同じ程度にすることができる。したがって、活性領域の端部においてボディダイオードがオンし易くなることを防止できる。
【0035】
本実施の形態の炭化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETは、ストライプ状の第1離間領域21の幅が一定であり、また、ストライプ状の第1離間領域21が活性領域で折り曲げられているので、活性領域の逆阻止状態のリーク電流を増加させること無く、活性領域端周辺のSBD密度を高め、より高密度のユニポーラ電流を流すことができる。
【0036】
なお、活性領域端周辺のSBD密度を高めるために、活性領域のSBDと別に孤立したSBDを設ける方法が考えられるが、断面視で幅を小さくしたSBD領域は、SBD領域の周囲のウェル領域30をイオン注入により形成するときにSBDとなる領域をレジストで保護して形成される。このとき、図3および図4の参考平面図のように、SBD領域が孤立して幅が狭く形成される、具体的には、第1離間領域21がウェル領域30内に分離して形成されると、イオン注入時に幅が細い直線状のレジストが倒れてパターン欠陥になる場合がある。
【0037】
しかし、本実施の形態の炭化珪素半導体装置によれば、SBD領域に対応する第1離間領域21が一つのウェル領域30に囲まれている範囲では連続して折り曲げられて形成されているため、イオン注入時に幅が細いレジストが倒れ難くなり、孤立したSBD領域を形成する場合や直線上のSBD領域を形成する場合と比較して、パターン欠陥の発生を抑制することができる。
【0038】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2の炭化珪素半導体装置における活性領域端部の炭化珪素層の表面近傍の平面図である。本実施の形態の炭化珪素半導体装置は、実施の形態1の炭化珪素半導体装置と異なり、ストライプ状の第1離間領域21が活性領域端部で2回折り曲げられている。2回折り曲げられた後のものは、活性領域の中心から延びているものに対して180°折り曲げられ、活性領域の中心から延びているものと平行に形成されている。その他の点については、実施の形態1と同じであるので、詳しい説明を省略する。
【0039】
図5に示すように、本実施の形態の炭化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETのSBDすなわち第1離間領域21は、活性領域端部で180°折り曲げられている。折り曲げられた第1離間領域21の間には、ウェル領域30が形成されている。折り曲げられた第1離間領域21の先端は、第1離間領域21自身と接続されない。
ここで、第1離間領域21が折り曲げられた領域で、一つのウェル領域30内において2本のストライプ状第1離間領域21を横断する面の断面模式図を図6に示す。図6にその断面模式図を示すように、2本のストライプ状の第1離間領域21は、ウェル領域30内に形成されており、2本の第1離間領域21の間の第1離間領域21に挟まれた領域にもp型のウェル領域30が形成されている。
【0040】
図6において、2本の第1離間領域21とその間の第1離間領域21に挟まれたウェル領域30および第1離間領域21の外側のウェル領域30の上には、ショットキ電極71が形成されている。コンタクトホール90は、図5の破線で示すように、第1離間領域21、第1離間領域21に挟まれたウェル領域30、第1離間領域21とコンタクト領域35との間のウェル領域30、コンタクト領域35、および、ソース領域40の一部の上を開口するように形成され、コンタクトホール90内と層間絶縁膜55上にはソース電極80が形成されている。コンタクト領域35上には図示しないオーミック電極も形成されている。
ウェル領域30とショットキ電極71とはショットキ接続してもよい。
【0041】
また、本実施の形態のSBD内蔵SiC-MOSFETの製造方法は、第1離間領域21とその間のウェル領域30とを合わせた領域をコンタクトホールの第2部分として製造すれば、実施の形態1のSBD内蔵SiC-MOSFETと同じ方法で製造できる。
【0042】
本実施の形態の炭化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETは、活性領域端部において、第1離間領域21が180°折り曲げられて形成されている。そのため、第1離間領域21が折り曲げられた領域では、第1離間領域21の幅を広げた場合と比較して、ショットキ界面に印加される電界が小さくなり逆阻止状態においてリーク電流が増加することを防止させつつ、第1離間領域21の延伸方向に対する長さ当たりでは、活性領域の中央部に対して2倍以上の面積のSBDを形成することができる。
【0043】
さらに、SBD領域の周囲のウェル領域30をイオン注入により形成するときに、幅の狭いイオン注入用レジストマスクが180°折り曲げられて形成されるため、レジストマスクが端で倒れにくく、パターン欠陥が発生をより抑制することができる。
【0044】
なお、180°折り曲げられた第1離間領域21の折り曲げ部分より先は、図5に示すように、第1離第1離間領域21自身とは接続されていない。しかし、図7にその平面図を示すように、折り曲げられた第1離間領域21の折り曲げ部分より先が直線状の第1離間領域21とつながっていてもよい。ここで、第1離間領域21によって平面視で囲まれた領域には、ウェル領域30が形成されている。
図7に示す構造においても、逆阻止状態においてリーク電流が増加することを防止させつつ、活性領域の端部において、活性領域の中央部に対して2倍以上の面積のSBDを形成することができる。
図7に示す構造では、逆阻止状態において図5の構造のものよりもリーク電流が少し増加するものの、製造時のレジスト倒れがより起こりにくくなり、また、活性領域の端部において、活性領域の中央部に対して2倍以上の面積のSBDを形成することができる。
【0045】
さらに、折り曲げられた第1離間領域21は、図8にその平面図を示すように、曲線的に折り曲げられてもよい。図8に示す構造においては、第1離間領域21はU字状に折り曲げられており、第1離間領域21の外周部が曲線状に形成されている。この構造によっても、逆阻止状態においてリーク電流が増加することを防止させつつ、活性領域の端部において、活性領域の中央部に対して2倍以上の面積のSBDを形成することができ、全体として活性領域端部に流れるユニポーラ電流を活性化中央部と同程度の密度にすることができる。
【0046】
実施の形態3.
図9は、実施の形態3の炭化珪素半導体装置における活性領域端部の炭化珪素層の表面近傍の平面図である。本実施の形態の炭化珪素半導体装置は、実施の形態1の炭化珪素半導体装置と異なり、ストライプ状の第1離間領域21が活性領域端部で3回以上折り曲げられている。その他の点については、実施の形態1と同じであるので、詳しい説明を省略する。
【0047】
図9にその平面図を示すように、本実施の形態の炭化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETのSBDの第1離間領域21は、活性領域端部でジグザク状、すなわち、直線が左右交互に折れ曲がった形状に形成されている。折れ曲がりの回数は、3回以上であればよい。
【0048】
本実施の形態の炭化珪素半導体装置においても、第1離間領域21が折り曲げられた領域では、第1離間領域21の幅を広げた場合と比較して、ショットキ界面に印加される電界が小さくなり逆阻止状態においてリーク電流が増加することを防止させつつ、第1離間領域21の延伸方向に対する長さ当たりでは、活性領域の中央部に対して2倍以上の面積のSBDを形成することができる。また、SBD領域の周囲のウェル領域30をイオン注入により形成するときに、幅の狭いイオン注入用レジストマスクがジグザク状に折り曲げられて形成されるため、レジストマスクが端で倒れにくく、パターン欠陥の発生をより抑制することができる。
実施の形態4.
【0049】
図10は、実施の形態4の炭化珪素半導体装置における活性領域端部の炭化珪素層の表面近傍の平面図である。本実施の形態の炭化珪素半導体装置は、実施の形態1の炭化珪素半導体装置と異なり、ウェル領域30内のソース領域40が活性領域端部の第1離間領域21が折り曲げられた領域には形成されていない。その他の点については、実施の形態2と同じであるので、詳しい説明を省略する。
【0050】
図10は、本実施の形態の化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETのSBDの炭化珪素層表面近傍の平面図である。図10に示すように、本実施の形態のSBD内蔵SiC-MOSFETは、活性領域中央部にはウェル領域30内に第1離間領域21を挟むように、ストライプ状に形成されているソース領域40が形成されているのに対し、活性領域端部の第1離間領域21が折り曲げられた領域においてはソース領域40が形成されていない。
ここで、実施の形態2でソース領域40と同様にウェル領域30内で第1離間領域21を取り囲むコンタクト領域35については、実施の形態2と同様に、第1離間領域21全体を取り囲むように形成されている。
【0051】
本実施の形態の炭化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETによれば、第1離間領域21が折り返されて形成されている領域において、ソース領域40が形成されていないので、第1離間領域21の延伸方向に直交する方向の折り返し部のウェル領域30の幅をより小さくできる。そのため、折り返し部からソース領域40を除くことによってその箇所にMOSFETが形成されなくなることによる電流減少量があったとしても、一つのウェル領域30の幅を小さくできるので単位面積当たりより多くのウェル領域30を配置でき、全体としてウェル領域30を高密度に配置できる。したがって、よりオン抵抗を低減できる。
【0052】
本実施の形態の炭化珪素半導体装置においては、実施の形態2の炭化珪素半導体装置によって得られる効果にくわえて、よりオン抵抗を低減できる。
さらに、実施の形態2の炭化珪素半導体装置と比較して、活性領域中央部における第2離間領域22の幅(第1離間領域21の延伸方向に直交する方向の長さ)を小さくできるので、第2離間領域22上に形成されるゲート絶縁膜50に印加される電界をより低減でき、炭化珪素半導体装置の信頼性を高めることができる。また、実施の形態2の炭化珪素半導体装置と比較して、活性領域全体の面積当たりの第1離間領域21、すなわち、SBD密度を高くできるので、より高密度のユニポーラ電流を流すことができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、コンタクト領域35が第1離間領域21を取り囲む構造について説明したが、コンタクト領域35は必ずしも第1離間領域21を取り囲む必要はなく、ソース領域40と同様に、折り返し部において除去しても構わない。
実施の形態5.
【0054】
図11は、実施の形態5の炭化珪素半導体装置における活性領域端部の炭化珪素層の表面近傍の平面図である。本実施の形態の炭化珪素半導体装置は、実施の形態4の炭化珪素半導体装置と異なり、第1離間領域21が折り曲げられた領域において、ウェル領域30が隣接するウェル領域30と接続されている。その他の点については、実施の形態4と同じであるので、詳しい説明を省略する。
【0055】
図11は、本実施の形態の化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETのSBDの炭化珪素層表面近傍の平面図である。図11に示すように、本実施の形態のSBD内蔵SiC-MOSFETは、各第1離間領域21を取り囲むウェル領域30、すなわち、第1離間領域20を内部に備えたウェル領域30が互いに接続されている。実施の形態1~4では、第1離間領域21の折り返し部のウェル領域30と隣接するウェル領域30の間にn型の第2離間領域22が設けられていたが、本実施の形態では、折り返し部に第2離間領域22が設けられていない。
ここで、コンタクト領域35については、実施の形態4と同様に、各第1離間領域21全体を取り囲みように形成されている。
【0056】
本実施の形態の炭化珪素半導体装置であるSBD内蔵SiC-MOSFETによれば、第1離間領域21の折り返し部において、ソース領域40を形成していないことに加え、隣接するウェル領域30が互いに接続されている。そのため、第1離間領域21の延伸方向に直交する方向の、一つの第1離間領域21を取り囲むウェル領域30の折り返し部の幅をより小さくできる。そのため、単位面積当たりに一つの第1離間領域21を取り囲むウェル領域30をより多く配置でき、よりオン抵抗を低減できる。
また、実施の形態4の炭化珪素半導体装置と比較して、活性領域中央部における第2離間領域22の幅(第1離間領域21の延伸方向に直交する方向の長さ)を小さくできるので、第2離間領域22上に形成されるゲート絶縁膜50に印加される電界をより低減でき、炭化珪素半導体装置の信頼性を高めることができる。また、実施の形態4の炭化珪素半導体装置と比較して、活性領域全体の面積当たりの第1離間領域21、すなわち、SBD密度を高くできるので、より高密度のユニポーラ電流を流すことができる。
【0057】
本実施の形態の炭化珪素半導体装置においては、実施の形態4の炭化珪素半導体装置によって得られる効果に加えて、よりオン抵抗を低減でき、より信頼性を高くすることができる。
【0058】
なお、上記実施形態においては、p型不純物としてアルミニウム(Al)を用いたが、p型不純物がホウ素(B)またはガリウム(Ga)であってもよい。n型不純物は、窒素(N)で無く燐(P)であってもよい。実施の形態1~5で説明したMOSFETにおいては、ゲート絶縁膜は、必ずしもSiOなどの酸化膜である必要はなく、酸化膜以外の絶縁膜、または、酸化膜以外の絶縁膜と酸化膜とを組み合わせたものであってもよい。また、上記実施形態では、結晶構造、主面の面方位、オフ角および各注入条件等、具体的な例を用いて説明したが、これらの数値範囲に適用範囲が限られるものではない。
【0059】
また、上記実施形態では、ドレイン電極81が半導体基板10の裏面に形成される、いわゆる縦型MOSFETの炭化珪素半導体装置にSBDを内蔵させたものについて説明したが、スーパージャンクション構造を有するMOSFETにSBDを内蔵させたものにも適用することができる。
【0060】
実施の形態6.
本実施の形態は、上述した実施の形態1~5にかかる炭化珪素半導体装置を電力変換装置に適用したものである。本開示は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態6として、三相のインバータに本開示を適用した場合について説明する。
【0061】
図12は、本実施の形態にかかる電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0062】
図12に示す電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源100を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0063】
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、図12に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201の各スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路202と、駆動回路202を制御する制御信号を駆動回路202に出力する制御回路203とを備えている。
駆動回路202は、ノーマリオフ型の各スイッチング素子を、ゲート電極の電圧とソース電極の電圧とを同電位にすることによってオフ制御している。
【0064】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種h電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0065】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子と還流ダイオードを備えており(図示せず)、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態にかかる主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。主変換回路201の各スイッチング素子には、上述した実施の形態1~5のいずれかにかかる炭化珪素半導体装置を適用する。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0066】
駆動回路202は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0067】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、駆動回路202に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路202は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
本実施の形態に係る電力変換装置では、主変換回路201のスイッチング素子として実施の形態1~5にかかる炭化珪素半導体装置を適用するため、低損失、かつ、高速スイッチングの信頼性を高めた電力変換装置を実現することができる。
【0068】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに本開示を適用する例を説明したが、本開示は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルやマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに本開示を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに本開示を適用することも可能である。
【0069】
また、本開示を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触器給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 半導体基板、20 ドリフト層、21 第1離間領域、22 第2離間領域、30 ウェル領域、31 終端ウェル領域、35 コンタクト領域、40 ソース領域、50 ゲート絶縁膜、55 層間絶縁膜、60 ゲート電極、71 ショットキ電極、80 ソース電極、81 ドレイン電極、90 コンタクトホール、100 電源、200、電力変換装置、201 主変換回路、202 駆動回路、203 制御回路、300 負荷。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12