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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】パワーモジュールおよび電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241108BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241108BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20241108BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/28 K
H01L23/36 C
H01L23/36 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023542323
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2022029905
(87)【国際公開番号】W WO2023022001
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2021134819
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】藤野 純司
(72)【発明者】
【氏名】川添 智香
(72)【発明者】
【氏名】高田 周平
(72)【発明者】
【氏名】井本 裕児
(72)【発明者】
【氏名】和田 文雄
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-214612(JP,A)
【文献】特開2015-046416(JP,A)
【文献】特開2012-204366(JP,A)
【文献】特開2014-146723(JP,A)
【文献】特開平04-164384(JP,A)
【文献】特開2017-017109(JP,A)
【文献】特開2019-140233(JP,A)
【文献】国際公開第2021/144980(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/28
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁部と、前記周壁部よりも内周側に形成され下方に凹む凹部とを有する放熱部材と、
前記凹部内に接合された複数の絶縁基板と、
複数の前記絶縁基板上に搭載された複数の半導体素子と、
外部端子を有し、前記周壁部の上端に沿って固定されたケースと、
前記外部端子と前記半導体素子との間、複数の前記半導体素子の間、および前記半導体素子と複数の前記絶縁基板との間をそれぞれ接続する電極板を含む回路形成部材と、を備え、
前記放熱部材における前記周壁部の上下方向の厚みは、前記凹部の底面を形成する底壁部の上下方向の厚みよりも厚く、
前記凹部と前記ケースの内部は封止材で充填され
隣接する各前記絶縁基板の間に配置され、前記凹部を複数に分割する仕切り部が設けられ、
前記仕切り部は、前記放熱部材と一体に形成された第1仕切り部に対して、前記ケースと一体に形成された第2仕切り部を組み合わせることで形成された、パワーモジュール。
【請求項2】
少なくとも1つの前記絶縁基板と前記放熱部材は、前記ケースの耐熱温度よりも融点の低いはんだにより接合された、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記電極板と前記ケースに形成された外部端子は、前記はんだよりも加熱温度が低い接合材により接合された、請求項2に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記回路形成部材は、隣接する各前記絶縁基板を跨ぐように配置され、
前記仕切り部のうち、前記回路形成部材と交差する部分の上下方向の厚みは、その他の部分の上下方向の厚みよりも薄い、請求項に記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記回路形成部材はN側電極板を含み、
複数の前記半導体素子は、U,V,W相回路を構成するように接続され、
複数の前記絶縁基板のうち、前記N側電極板と接続された前記半導体素子が搭載された前記絶縁基板は、前記U,V,W相回路にそれぞれ対応するように三分割された、請求項に記載のパワーモジュール。
【請求項6】
請求項1に記載のパワーモジュールを有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、
を備えた、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワーモジュールおよび電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールは、産業機器から家電および情報端末まであらゆる製品に搭載され、環境問題の高まりとともに、電気エネルギーの発電、送電、および回生のあらゆる場面で普及しつつある。その中でも、電気自動車に搭載されるパワーモジュールについては、高い放熱性能が求められるとともに、水冷ジャケットに対する締結を確実にするために高い平面度が要求される。
【0003】
また、パワーモジュールについては、動作温度が高く、効率に優れている点で今後の主流となる可能性の高いSiC半導体に適用できるパッケージ形態であることも同時に求められている。
【0004】
例えば特許文献1には、放熱フィンを有する金属ベース(放熱部材に相当する)を備えたパワーモジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/141154号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パワーモジュールでは大電流および高電圧が扱われるため、高い絶縁性能と放熱性能を有するセラミック基板が絶縁基板として用いられるが、セラミック基板を構成する基材の素材である窒化アルミおよび窒化ケイ素は、放熱部材の素材として用いられる銅およびアルミと比較して線膨張係数が著しく小さい。そのため、放熱部材と絶縁基板とを接合すると接合部には大きな熱応力が発生し、放熱部材の反りおよび温度サイクル時のクラックが発生しやすいという問題があった。
【0007】
特許文献1に記載の技術では、複数のセラミック基板が搭載される金属ベースにV溝が形成され、それぞれのセラミック基板上の半導体素子で発生する熱が干渉しない構造になっている。そのため、金属ベースの剛性が低下することで熱応力を低減させる効果が期待できるが、これとは逆に金属ベースの反りは大きくなるという懸念がある。
【0008】
そこで、本開示は、放熱部材と絶縁基板との接合による熱応力を低減し、熱応力で生じる放熱部材の反りを抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るパワーモジュールは、周壁部と、前記周壁部よりも内周側に形成され下方に凹む凹部とを有する放熱部材と、前記凹部内に接合された複数の絶縁基板と、複数の前記絶縁基板上に搭載された複数の半導体素子と、外部端子を有し、前記周壁部の上端に沿って固定されたケースと、前記外部端子と前記半導体素子との間、複数の前記半導体素子の間、および前記半導体素子と複数の前記絶縁基板との間をそれぞれ接続する電極板を含む回路形成部材とを備え、前記放熱部材における前記周壁部の上下方向の厚みは、前記凹部の底面を形成する底壁部の上下方向の厚みよりも厚く、前記凹部と前記ケースの内部は封止材で充填され、隣接する各前記絶縁基板の間に配置され、前記凹部を複数に分割する仕切り部が設けられ、前記仕切り部は、前記放熱部材と一体に形成された第1仕切り部に対して、前記ケースと一体に形成された第2仕切り部を組み合わせることで形成された

【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、放熱部材における絶縁基板が接合される凹部の底面を形成する底壁部の上下方向の厚みは、周壁部の上下方向の厚みよりも薄いため、放熱部材と絶縁基板との接合による熱応力を低減させることができる。一方、放熱部材における周壁部の上下方向の厚みは、底壁部の上下方向の厚みよりも厚いため、放熱部材の剛性を確保することができる。よって、放熱部材と絶縁基板との接合による熱応力で生じる放熱部材の反りを抑制することができる。
【0011】
この開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係るパワーモジュール(6in1)の断面図である。
図2】実施の形態1に係るパワーモジュール(6in1)の上面図である。
図3】実施の形態1に係るパワーモジュール(6in1)の製造工程を示す模式図である。
図4】実施の形態1に係るパワーモジュール(6in1)の製造工程の他の例を示す模式図である。
図5】実施の形態1の変形例1に係るパワーモジュール(6in1)の上面図と仕切り部の断面図である。
図6】実施の形態1の変形例2に係るパワーモジュール(6in1)の断面図である。
図7】実施の形態1の変形例2に係るパワーモジュール(6in1)の上面図である。
図8】実施の形態2に係るパワーモジュール(6in1)の断面図である。
図9】実施の形態2に係るパワーモジュール(6in1)の上面図である。
図10】実施の形態2の変形例に係るパワーモジュール(6in1)の断面図である。
図11】実施の形態3に係るパワーモジュール(6in1)の上面図である。
図12】実施の形態4に係る電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
<構成>
実施の形態1について、図面を用いて以下に説明する。図1は、実施の形態1に係るパワーモジュール202(6in1)の断面図である。図2は、実施の形態1に係るパワーモジュール202(6in1)の上面図である。なお、図2では図面を見やすくするために封止樹脂7が省略されている。
【0014】
図1において、X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する。以下の図に示されるX方向、Y方向およびZ方向も、互いに直交する。以下においては、X方向と、当該X方向の反対の方向である-X方向とを含む方向を「X軸方向」ともいう。また、以下においては、Y方向と、当該Y方向の反対の方向である-Y方向とを含む方向を「Y軸方向」ともいう。また、以下においては、Z方向と、当該Z方向の反対の方向である-Z方向とを含む方向を「Z軸方向」ともいう。
【0015】
図1図2に示すように、パワーモジュール202は、放熱部材14と、2つのセラミック基板10と、6つのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)21と、6つのダイオード22と、ケース5と、信号端子61と、外部端子62と、電極板63と、N側電極板64と、P側電極板65とを備えている。ここで、セラミック基板10が絶縁基板に相当し、IGBT21およびダイオード22が半導体素子に相当する。
【0016】
放熱部材14は、アルミ合金により形成され、周壁部15と、底壁部16と、仕切り部17と、複数の冷却用ピン18と、凹部19とを備えている。
【0017】
底壁部16は、Z方向から視て矩形状に形成されている。周壁部15は、Z方向から視て矩形枠状に形成され、底壁部16の外周側を囲繞している。周壁部15における、前後方向(Y軸方向)の長さは90mm、左右方向(X軸方向)の長さは70mm、上下方向(Z軸方向)の厚みは4mmである。
【0018】
凹部19は、周壁部15よりも内周側に形成され、下方(-Z方向)に凹む形状に形成されている。具体的には、凹部19は、周壁部15の内周面と、底壁部16の上面(Z方向の面)とで形成されている。
【0019】
仕切り部17は、前後方向(Y軸方向)に延在し、凹部19の左右方向(X軸方向)の中央部に設けられている。仕切り部17は、アルミ合金により底壁部16と一体に形成されている。仕切り部17の上下方向(Z軸方向)の厚みは均一に形成されている。仕切り部17の上端(Z方向の端)が仕切り部17の上方に位置する電極板63と接触しないように、仕切り部17と電極板63との間には隙間が形成されている。
【0020】
凹部19は、仕切り部17によって左右方向(X軸方向)に2つに分割されている。凹部19の左側部分(-X方向の部分)における、前後方向(Y軸方向)の長さは61mm、左右方向(X軸方向)の長さは31mm、上下方向(Z軸方向)の深さは3mmである。一方、凹部19の右側部分(X方向の部分)における、前後方向(Y軸方向)の長さは61mm、左右方向(X軸方向)の長さは34mm、上下方向(Z軸方向)の深さは3mmである。
【0021】
凹部19の左側部分(-X方向の部分)には、P側電極板65が配置され、凹部19の右側部分(X方向の部分)には、N側電極板64が配置されている。以下、凹部19の左側部分(-X方向の部分)をP側、凹部19の右側部分(X方向の部分)をN側という。
【0022】
仕切り部17の上下方向(Z軸方向)の厚みは4mmであり、周壁部15の上下方向(Z軸方向)の厚みと同じである。なお、仕切り部17は必須の構成ではなく、凹部19を2つに分割する必要がない場合には仕切り部17をなくすことも可能である。この場合、セラミック基板10についても1つだけ配置されていてもよい。また、2つ以上の仕切り部17を設けて、凹部19を3つ以上に分割することも可能である。
【0023】
底壁部16の下面(-Z方向の面)には、下方(-Z方向)に突出する180本の冷却用ピン18が配置されている。冷却用ピン18における、直径は2mm、上下方向(Z軸方向)の長さは5mmである。
【0024】
放熱部材14の全面にはニッケルめっきが施されている。底壁部16の上面(Z方向の面)は、仕切り部17によって2つに分割され、これら2つに分割された部分には、それぞれ2つのセラミック基板10がはんだ30を用いて接合されている。
【0025】
各セラミック基板10は、窒化アルミ製の基材11と、銅製の裏面導体層12と、銅製の表面導体層13とを備えている。基材11における裏面(-Z方向の面)には、裏面導体層12がろう付けによって成膜されて形成され、基材11における表面(Z方向の面)には、表面導体層13がろう付けによって成膜されて形成されている。
【0026】
P側に配置された基材11における、前後方向(Y軸方向)の長さは60mm、左右方向(X軸方向)の長さは30mm、上下方向(Z軸方向)の厚みは0.64mmである。N側に配置された基材11における、前後方向(Y軸方向)の長さは60mm、左右方向(X軸方向)の長さは33mm、上下方向(Z軸方向)の厚みは0.64mmである。
【0027】
P側に配置された裏面導体層12における、前後方向(Y軸方向)の長さは56mm、左右方向(X軸方向)の長さは26mm、上下方向(Z軸方向)の厚みは0.8mmである。N側に配置された裏面導体層12における、前後方向(Y軸方向)の長さは56mm、左右方向(X軸方向)の長さは29mm、上下方向(Z軸方向)の厚みは0.8mmである。
【0028】
P側に配置された表面導体層13における、前後方向(Y軸方向)の長さは56mm、左右方向(X軸方向)の長さは26mm、上下方向(Z軸方向)の厚みは0.8mmである。N側には、3つの表面導体層13がY軸方向に並んで形成されている。N側に配置された表面導体層13における、前後方向(Y軸方向)の長さは17mm、左右方向(X軸方向)の長さは29mm、上下方向(Z軸方向)の厚みは0.8mmである。
【0029】
P側に配置された表面導体層13の上面(Z方向の面)には、IGBT21とダイオード22がはんだ30を介して3組搭載されている。はんだ30の含有率は、スズ96.5%、銀3%、銅0.5%であり、はんだ30の融点は217℃である。
【0030】
IGBT21はシリコン製であり、IGBT21における、前後方向(Y軸方向)の長さは15mm、左右方向(X軸方向)の長さは15mm、上下方向(Z軸方向)の厚みは0.2mmである。
【0031】
ダイオード22はシリコン製であり、ダイオード22における、前後方向(Y軸方向)の長さは15mm、左右方向(X軸方向)の長さは10mm、上下方向(Z軸方向)の厚みは0.2mmである。
【0032】
3組のIGBT21とダイオード22の表面電極(図示せず)は、それぞれ銅製の3つの電極板63に対してはんだ30を用いて接合されている。電極板63の上下方向(Z軸方向)の厚みは0.5mmである。
【0033】
ケース5は、PPS(Poly Phenylene Sulfide:耐熱温度280℃)樹脂によりZ方向から視て矩形枠状に形成され、放熱部材14の周壁部15の上端(Z方向の端)に沿って接着剤(図示せず)を用いて接着されている。ケース5における、前後方向(Y軸方向)の長さは90mmであり、左右方向(X軸方向)の長さは70mmであり、上下方向(Z軸方向)の厚みは6mmである。
【0034】
ケース5におけるP側に対応する部分には、銅製の3つの外部端子62がインサート成形され、さらには銅製のP側電極板65が外部端子ごとインサート形成されている。3つの外部端子62は、それぞれU,V,W相回路に対応している。3つの電極板63は、隣接する各セラミック基板10を跨ぐように配置され、3つの電極板63の一端部は、それぞれ3つの外部端子62に対してはんだ30を用いて接合されている。
【0035】
3つの電極板63の他端部は、仕切り部17と交差し、N側に配置されたセラミック基板10の方へ延在している。具体的には、3つの電極板63の他端部は、仕切り部17の上方(Z方向)を通って、それぞれN側に配置された3つの表面導体層13に対してはんだ30を用いて接合されている。外部端子62およびP側電極板65の上下方向(Z軸方向)の厚みは0.5mmである。
【0036】
P側の共通ドレインは、銅製のP側電極板65にはんだ(図示せず)を用いて接合されている。P側電極板65の上下方向(Z軸方向)の厚みは0.5mmである。
【0037】
一方、N側に配置された3つの表面導体層13の上面(Z方向の面)には、IGBT21とダイオード22がはんだ30を介して1組ずつ搭載されている。
【0038】
ケース5におけるN側に対応する部分には、銅製のN側電極板64が外部端子ごとインサート形成されている。3組のIGBT21とダイオード22の表面電極(図示せず)は、N側電極板64に対してはんだ30を用いて接合されている。N側電極板64の上下方向(Z軸方向)の厚みは0.5mmである。
【0039】
また、ケース5におけるP側とN側に対応する部分には、銅製の信号端子61が6つずつ外部電極ごとインサート成形されている。IGBT21の信号電極211は、アルミ製のワイヤ41によって信号端子61に対して接合されている。信号端子61の上下方向(Z軸方向)の厚みは0.5mmであり、ワイヤ41の直径は0.15mmである。
【0040】
ここで、電極板63、N側電極板64、およびP側電極板65が、複数の半導体素子の間、および半導体素子とセラミック基板10との間をそれぞれ接続する回路形成部材に相当する。また、P側とN側においてIGBT21とダイオード22は、U,V,W相回路を構成するように接続されている。
【0041】
放熱部材14の凹部19とケース5の内側は、封止樹脂7により充填されることで絶縁封止されている。封止樹脂7は、シリカフィラーを分散させたエポキシ樹脂である。ここで、封止樹脂7が封止材に相当する。
【0042】
<製造工程>
次に、図3(a)~(d)を用いて、パワーモジュール202の製造工程について説明する。図3(a)~(d)は、実施の形態1に係るパワーモジュール202(6in1)の製造工程を示す模式図である。
【0043】
図3(a)に示すように、放熱部材14における底壁部16の上面(Z方向の面)に、上下方向(Z軸方向)の厚み0.3mmのシート状のはんだ30と、セラミック基板10を配置し、セラミック基板10の表面導体層13の上(Z方向)に、上下方向(Z軸方向)の厚み0.2mmのシート状のはんだ30と、IBGT21およびダイオード22を配置し、さらにそれぞれの表面電極(図示せず)上(Z方向)に上下方向(Z軸方向)の厚み0.2mmのシート状のはんだ30をそれぞれ位置決めして配置する。
【0044】
この組み立て体をリフロー炉にて260℃まで加熱してはんだ30を溶融させることで、図3(b)に示すようにはんだ接合が行われる。
【0045】
次に、図3(c)に示すように、信号端子61と外部端子62などがインサート形成されたケース5を放熱部材14に対して接着剤(図示せず)を用いて接着する。電極板63を位置決めして配置した後、この組み立て体をリフロー炉にて260℃まで加熱して、IBGT21およびダイオード22上のはんだ30を溶融させて接合を行う。このとき、ケース5の素材がPPSであり、その耐熱温度が280℃であるため、ケース5はリフロー炉の最高温度260℃に対する耐熱性を有する。はんだ30の含有率がスズ95%、アンチモン5%で融点が240℃というように、はんだ30の融点が上記において説明したよりも高く、かつ、ケース5の素材がPBT(Poly Butylene Terephthalate:耐熱温度220℃以下)である場合、はんだ付け時の熱でケース5が変形する懸念があるため、ケース5の耐熱温度は少なくともはんだ30の融点以上である必要がある。
【0046】
次に、図3(d)に示すように、ワイヤ41を用いてIGBT21の信号電極211(図2参照)と信号端子61とを接合する。その後、液状の封止樹脂7をケース5の内側に注入し、オーブンにて150℃で1時間加熱硬化させて封止を完了させる。これにより、パワーモジュール202が完成する。
【0047】
または、図3(a)~(d)の方法に代えて、図4(a)~(c)の方法でパワーモジュール202を製造することも可能である。図4(a)~(c)は、実施の形態1に係るパワーモジュール202(6in1)の製造工程の他の例を示す模式図である。
【0048】
図4(a)に示すように、放熱部材14における底壁部16の上面(Z方向の面)に、上下方向(Z軸方向)の厚み0.3mmのシート状のはんだ30と、セラミック基板10を配置し、セラミック基板10の表面導体層13の上(Z方向)に、上下方向(Z軸方向)の厚み0.2mmのシート状のはんだ30と、IBGT21およびダイオード22を配置し、それぞれの表面電極(図示せず)上(Z方向)に上下方向(Z軸方向)の厚み0.2mmのシート状のはんだ30をそれぞれ位置決めして配置する。さらに、その上(Z方向)に、電極板63およびN側電極板64を位置決め搭載する。
【0049】
この組み立て体をリフロー炉にて260℃まで加熱してはんだ30を溶融させることで、図4(b)に示すようにはんだ接合が行われる。
【0050】
次に、図4(c)に示すように、信号端子61と外部端子62などがインサート形成されたケース5を放熱部材14に対して接着剤(図示せず)を用いて接着する。導電性接着剤31(硬化条件180℃、1h)を用いて電極板63と外部端子62とを接合する。
【0051】
ワイヤ41を用いてIGBT21の信号電極211(図2参照)と信号端子61とを接合する。その後、液状の封止樹脂7をケース5の内側に注入し、オーブンにて150℃で1時間加熱硬化させて封止を完了させる。これにより、パワーモジュール202が完成する。
【0052】
ケース5を組み立て体に取り付ける前に、電極板63とN側電極板64とを搭載してはんだ接合を行うことにより、組み立て体をリフロー炉に入れる回数が1回で済む。また、導電性接着剤31を使用して電極板63と外部端子62とを接合することで、耐熱温度の低いケース素材を使用することが可能となる。ここでは、電極板63と外部端子62との接合に際して導電性接着剤31を用いたが、Bi-Sn系などの低温はんだ(融点139℃)を用いたり、TIG溶接および超音波接合などの常温接合プロセスを用いることも可能である。
【0053】
<効果>
以上のように、実施の形態1に係るパワーモジュール202は、周壁部15と、周壁部15よりも内周側に形成され下方に凹む凹部19とを有する放熱部材14と、凹部19内に接合された少なくとも1つのセラミック基板10と、少なくとも1つのセラミック基板10上に搭載された複数の半導体素子と、周壁部15の上端に沿って固定され、内部に封止樹脂7が充填されたケース5と、複数の半導体素子の間、および半導体素子と少なくとも1つのセラミック基板10との間をそれぞれ接続する電極板63,64,65を含む回路形成部材とを備え、放熱部材14における周壁部15の上下方向(Z軸方向)の厚みは、凹部19の底面を形成する底壁部16の上下方向(Z軸方向)の厚みよりも厚い。
【0054】
したがって、放熱部材14におけるセラミック基板10が接合される凹部19の底面を形成する底壁部16の上下方向(Z軸方向)の厚みは、周壁部15の上下方向(Z軸方向)の厚みよりも薄いため、放熱部材14とセラミック基板10との接合による熱応力を低減させることができる。一方、放熱部材14における周壁部15の上下方向(Z軸方向)の厚みは、底壁部16の上下方向(Z軸方向)の厚みよりも厚いため、放熱部材14の剛性を確保することができる。よって、放熱部材14とセラミック基板10との接合による熱応力で生じる放熱部材14の反りを抑制することができる。
【0055】
以上のように、放熱部材14の反りを抑制することで、パワーモジュール202の長期使用が可能となり、エネルギー消費量の削減、および生産工程の環境負荷の低減にもつながる。
【0056】
また、少なくとも1つのセラミック基板10と放熱部材14は、ケース5の耐熱温度よりも融点の低いはんだ30により接合されているため、はんだ付け時の熱でケース5が変形することを抑制できる。
【0057】
また、電極板63とケース5に形成された外部端子62は、はんだ30よりも加熱温度が低い導電性接着剤31により接合されているため、ケース5の素材として耐熱温度の低い素材を使用することが可能となる。
【0058】
また、少なくとも1つのセラミック基板10は複数のセラミック基板10を備え、放熱部材14には、隣接する各セラミック基板10の間に配置され、凹部19を複数に分割する仕切り部17が設けられている。
【0059】
したがって、凹部19に仕切り部17を設けたことで、放熱部材14の底壁部16の剛性を向上させることができるため、放熱部材14の反りをさらに抑制することができる。
【0060】
<実施の形態1の変形例>
次に、実施の形態1の変形例について説明する。図5(a)は、実施の形態1の変形例1に係るパワーモジュール202(6in1)の上面図であり、図5(b)は、仕切り部171の断面図である。
【0061】
図5(a)に示すように、パワーモジュール202は、仕切り部17に代えて、仕切り部171を備えている。仕切り部171は、仕切り部17とは上端(Z方向の端)の形状が異なっている。
【0062】
仕切り部17の上下方向(Z軸方向)の厚みは均一であったのに対して、仕切り部171のうち、電極板63と交差する部分の上下方向(Z軸方向)の厚みは、その他の部分の上下方向(Z軸方向)の厚みよりも薄く形成されている。具体的には、仕切り部171のうち、電極板63と交差する部分の上端(Z方向の端)は、その他の部分の上端(Z方向の端)よりも高さ位置(Z軸方向の位置)が低く形成されている。
【0063】
ここで、仕切り部171のうち、電極板63と交差する部分とは、仕切り部171の延在方向の両端部171aを除く部分171bであり、その他の部分とは、仕切り部171の延在方向の両端部171aである。
【0064】
実施の形態1の変形例1では、回路形成部材は、隣接する各セラミック基板10を跨ぐように配置され、仕切り部171のうち、回路形成部材と交差する部分の上下方向(Z方向)の厚みは、その他の部分の上下方向(Z方向)の厚みよりも薄い。
【0065】
したがって、仕切り部171と電極板63との絶縁距離を十分に確保しつつ、仕切り部171の上下方向(Z方向)の厚みについて薄くする部分を必要な部分のみに最小限にすることで、放熱部材14の剛性を確保することができる。
【0066】
図6は、実施の形態1の変形例2に係るパワーモジュール202(6in1)の断面図である。図7は、実施の形態1の変形例2に係るパワーモジュール202(6in1)の上面図である。なお、図7では図面を見やすくするために封止樹脂7が省略されている。
【0067】
実施の形態1では、回路形成部材として電極板63、N側電極板64、およびP側電極板65が用いられていたが、図6図7に示すように、回路形成部材としてアルミ製のワイヤ42が用いられていてもよい。ワイヤ42の直径は0.4mmである。
【0068】
この場合、N側電極板64とP側電極板65に代えて、N側端子64aとP側端子65aが設けられている。さらに、N側に配置されているセラミック基板10の表面導体層13には、IGBT21とダイオード22の表面電極に接続されるワイヤ42をまとめる導体層131が形成され、導体層131とN側端子64aはワイヤ42を用いて接続されている。また、P側に配置されているセラミック基板10の表面導体層13とP側端子65aは、ワイヤ42を用いて接続されている。
【0069】
ワイヤ42を用いて回路形成した場合、搭載されるIGBT21およびダイオード22の形状または寸法が変わってもワイヤボンダーのプログラム変更で対応可能となる。また、ワイヤ42を用いて回路形成した場合には、電極板63、N側電極板64、およびP側電極板65を用いて回路形成した場合と比較すると接合部の応力が低いため、封止樹脂7として柔軟なシリコーンゲルで回路形成部材を封止することも可能となる。
【0070】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2に係るパワーモジュール202について説明する。図8は、実施の形態2に係るパワーモジュール202(6in1)の断面図である。図9は、実施の形態2に係るパワーモジュール202(6in1)の上面図である。図9では図面を見やすくするために封止樹脂7が省略されている。なお、実施の形態2において、実施の形態1で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0071】
図8図9に示すように、実施の形態2では、パワーモジュール202は、仕切り部17に代えて、仕切り部51を備えており、仕切り部51は、ケース5と一体に形成されている。具体的には、仕切り部51は、ケース5の内部の前壁(-Y方向の壁)と後壁(Y方向の壁)における左右方向(X軸方向)の中央部同士を接続するように形成されている。
【0072】
実施の形態1の変形例1の場合と同様に、仕切り部51と電極板63との絶縁距離の確保と、仕切り部51の剛性の確保との両立を図るために、仕切り部51のうち、電極板63と交差する部分の上端(Z方向の端)は、その他の部分の上端(Z方向の端)よりも高さ位置(Z軸方向の位置)が低く形成されている。仕切り部51における延在方向の両端部の上端(Z方向の端)は、ケース5の上端(Z方向の端)と高さ位置(Z軸方向の位置)が同じである。
【0073】
また、3つの電極板63は、それぞれ3つの外部端子62と一体化され、ケース5に対してインサート形成されている。ケース5が放熱部材14に接着剤(図示せず)を用いて接着されることで、仕切り部51が凹部19の底面に接着される。
【0074】
以上のように、実施の形態2に係るパワーモジュール202では、仕切り部51は、ケース5と一体に形成されているため、ケース5の一部が放熱部材14の凹部19の仕切りとして機能し、ケース5が放熱部材14に接着剤(図示せず)で接着されることで、ケース5の一部によって放熱部材14の剛性を確保することができる。
【0075】
<実施の形態2の変形例>
図10は、実施の形態2の変形例に係るパワーモジュール202(6in1)の断面図である。図10に示すように、放熱部材14と一体に形成された仕切り部17に対して、ケース5と一体に形成された仕切り部51を組み合わせたものであってもよい。具体的には、仕切り部51は、図8図9に示した仕切り部51における延在方向の両端部に対応する部分に形成され、仕切り部17は、図8図9に示した仕切り部51における延在方向の両端部を除く部分に対応する部分に形成されている。ケース5が放熱部材14に接着剤(図示せず)を用いて接着されることで、仕切り部51と仕切り部17が接着される。この場合も、実施の形態2の場合と同様の効果が得られる。
【0076】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3に係るパワーモジュール202について説明する。図11は、実施の形態3に係るパワーモジュール(6in1)の上面図である。図11では図面を見やすくするために封止樹脂7が省略されている。なお、実施の形態3において、実施の形態1,2で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0077】
実施の形態1,2では、N側に配置されているセラミック基板10は1つであり、また、セラミック基板10を構成する表面導体層13は3つ形成されていたが、図11に示すように、実施の形態3では、N側に配置されているセラミック基板10は、U,V,W相回路にそれぞれ対応するように3つに分割されている。具体的には、N側には、3つのセラミック基板10がY軸方向に並んで配置されている。
【0078】
ドレインとして表面導体層13を共有化しているP側では、U,V,W相回路は1つのセラミック基板10に配置されている。一方、表面導体層13を絶縁するべきN側では、U,V,W相回路はそれぞれ3つのセラミック基板10に配置されている。
【0079】
以上のように、実施の形態3に係るパワーモジュール202では、回路形成部材はN側電極板64を含み、IGBT21とダイオード22は、U,V,W相回路を構成するように接続され、複数のセラミック基板10のうち、N側電極板64と接続されたIGBT21とダイオード22が搭載されたセラミック基板10は、U,V,W相回路にそれぞれ対応するように三分割されている。
【0080】
セラミック基板10の寸法が大きくなるとセラミック基板10と放熱部材14で生じる熱応力も増加するが、N側に配置されている各セラミック基板10のX軸方向とY軸方向の寸法は、P側に配置されているセラミック基板10のX軸方向とY軸方向の寸法よりも小さいため、実施の形態1,2の場合よりもセラミック基板10と放熱部材14で生じる熱応力を低減することができる。これにより、実施の形態1,2の場合よりも放熱部材14の反りを抑制することが可能となる。
【0081】
<実施の形態1~3の変形例>
上記では、セラミック基板10の基材11の素材として窒化アルミを用いたが、窒化ケイ素またはアルミナを用いても、上記の場合と同様の効果が得られる。
【0082】
上記では、裏面導体層12および表面導体層13として銅製のものを用いたが、裏面導体層12および表面導体層13がアルミ製であってもその表面をニッケルめっきなどではんだ濡れするように改質することで、上記の場合と同様の効果が得られる。
【0083】
上記では、放熱部材14の素材としてアルミ合金を用いたが、銅または銅合金を用いても、上記の場合と同様の効果が得られる。
【0084】
上記では、IGBT21とダイオード22としてシリコン製のものを用いたが、シリコンカーバイドおよび窒化ガリウムなどのワイドバンドギャップ半導体製のものを用いても、上記の場合と同様の効果が得られる。
【0085】
上記では、はんだ30として含有率がスズ96.5%、銀3%、銅0.5%で、融点が217℃のものを用いたが、含有率がスズ99.3%、銅0.7%で、融点が224℃のものまたは、含有率がスズ95%、アンチモン5%で、融点が240℃のものを用いても、上記の場合と同様の効果が得られる。また、一部をはんだ以外の接合材料である銀エポキシ接着剤、銀焼結材、またはろう付け材に置き換えても、上記の場合と同様の効果が得られる。
【0086】
上記では、ワイヤ41としてアルミ製のものを用いたが、鉄などの添加剤を微量含んだアルミ合金製または銅製のワイヤを用いても、上記の場合と同様の効果が得られる。
【0087】
上記では、ケース5としてPPS製のものを用いたが、LCP(Liquid Crystal Polymer)製に置き換えることで耐熱性を向上させることも可能である。
【0088】
上記では、各種電極板として銅製のものを用いたが、適宜ニッケルめっきが施されていたり、銅合金またはニッケルめっきアルミ製のものに置き換えても、上記の場合と同様の効果が得られる。
【0089】
上記では、封止樹脂7としてシリカフィラーを分散させたエポキシ樹脂を用いたが、アルミナなどのフィラーでもよく、エポキシ樹脂にシリコーン樹脂を混合させたものを用いても、上記の場合と同様の効果が得られる。また、シリコーン樹脂のみで封止する方法でも上記の場合と同様の効果が得られる。
【0090】
また、仕切り部17では、少なくとも延在方向の両端部の上下方向(Z軸方向)の厚みが周壁部15の上下方向(Z軸方向)の厚みと同じであることが望ましいが、わずかに厚いだけでも剛性を増す効果はある。また、接合に用いられているはんだ30の上下方向(Z軸方向)の厚みが0.3mm以上あれば、はんだ30の流れ出し抑制の効果はある。
【0091】
裏面導体層12の上下方向(Z軸方向)の厚みと基材11の上下方向(Z軸方向)の厚みとを合わせた値が1.1mmよりも薄い場合は、セラミック基板10の位置決めとしても機能しつつ、裏面導体層12と基材11とを重ね合わせることでパワーモジュール202の大型化を伴わずに反りの抑制が可能となる。
【0092】
また、異なる仕様または異なる寸法のセラミック基板10が配置される可能性があり、放熱部材14に仕切り部17の形成が困難な場合、図3(a)のはんだ付け工程において、仕切り部17に相当する部分に押さえ治具を取り付けて放熱部材14を固定しながら加熱または冷却することによって反りを抑制して接合することも可能である。放熱部材14に仕切り部17が形成されている場合でも反り抑制のための押さえ治具は有効と考えられる。
【0093】
また、実施の形態2、実施の形態2の変形例、および実施の形態3に対して、実施の形態1の変形例2のように回路形成部材としてワイヤ42が用いられていてもよい。また、実施の形態1の変形例1、実施の形態2、および実施の形態3における電極板63と外部端子62との接合に際して、図4(c)のように導電性接着剤31を用いてもよい。
【0094】
また、実施の形態3に対して、実施の形態1の変形例1のように仕切り部17に代えて、仕切り部171が設けられていてもよいし、実施の形態2のように仕切り部17に代えて、仕切り部51が設けられていてもよい。さらには、実施の形態3に対して、実施の形態2の変形例のように仕切り部17に仕切り部51を組み合わせてもよい。
【0095】
<実施の形態4>
本実施の形態は、上述した実施の形態1~3に係るパワーモジュールを電力変換装置に適用したものである。実施の形態1~3に係るパワーモジュールの適用は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態4として、三相のインバータに実施の形態1~3に係るパワーモジュールを適用した場合について説明する。
【0096】
図12は、実施の形態4に係る電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0097】
図12に示す電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源100を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0098】
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、図12に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201を制御する制御信号を主変換回路201に出力する制御回路203とを備えている。
【0099】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0100】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子(図示せず)と還流ダイオード(図示せず)を備えており、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態にかかる主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。主変換回路201の各スイッチング素子や各還流ダイオードは、上述した実施の形態1~3のいずれかに相当するパワーモジュール202によって構成する。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0101】
また、主変換回路201は、各スイッチング素子を駆動する駆動回路(図示せず)を備えているが、駆動回路はパワーモジュール202に内蔵されていてもよいし、パワーモジュール202とは別に駆動回路を備える構成であってもよい。駆動回路は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0102】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、主変換回路201が備える駆動回路に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0103】
本実施の形態に係る電力変換装置200では、主変換回路201のスイッチング素子と還流ダイオードとして実施の形態1~3に係るパワーモジュール202を適用するため、耐久性の向上を実現することができる。
【0104】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに実施の形態1~3に係るパワーモジュール202を適用する例を説明したが、実施の形態1~3に係るパワーモジュール202の適用は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルやマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに実施の形態1~3に係るパワーモジュール202を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに実施の形態1~3に係るパワーモジュール202を適用することも可能である。
【0105】
また、実施の形態1~3に係るパワーモジュール202を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0106】
この開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、限定的なものではない。例示されていない無数の変形例が、想定され得るものと解される。
【0107】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0108】
5 ケース、7 封止樹脂、10 セラミック基板、14 放熱部材、15 周壁部、16 底壁部、17 仕切り部、19 凹部、21 IGBT、22 ダイオード、30 はんだ、31 導電性接着剤、42 ワイヤ、51 仕切り部、62 外部端子、63 電極板、64 N側電極板、65 P側電極板、171 仕切り部、200 電力変換装置、201 主変換回路、202 パワーモジュール、203 制御回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12