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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】不良率を減少させるカメラ製造
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/00 20210101AFI20241108BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20241108BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20241108BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20241108BHJP
【FI】
G02B7/00 F
G03B17/02
G02B7/02 C
G06N20/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023555198
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 EP2022051079
(87)【国際公開番号】W WO2022189050
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】102021202312.6
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】ドルフミュラー,イェンス
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151575(JP,A)
【文献】特開2008-170981(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014220519(DE,A1)
【文献】国際公開第2020/158325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00
G03B 17/02
G02B 7/02
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前に製造された部品(2a、2b)が用意されるステップ(110)と、
前記事前に製造された部品(2a、2b)の少なくとも2つが、少なくとも1つの所定の最適性基準に応じて互いに対して調整されるステップ(120)と、
前記部品(2a、2b)が、調整された状態で相互に貼り付けられるステップ(130)と
を有する、カメラ(1)の製造方法(100)であって、
追加的に、
少なくとも1種類の前記事前に製造された部品(2a、2b)の具体的な個物(2a1~2a5、2b1~2b5)を特徴付ける事前データ(4a、4b)および/または互いに対して調整された前記部品(2a、2b)の組合せの光学性能に関する測定データ(5)が、トレーニングされた機械学習モデル(6)により、貼り付け後に少なくとも1つのさらなる製造ステップを実施した後で前記カメラ(1)が提供するようになる光学性能に関する予測(7)に写像されるステップ(140)と、
前記予測(7)が、製造プロセスに影響(8)を及ぼすためのフィードバックとして参照されるステップ(150)とを有し、
少なくとも1種類の部品(2a、2b)のために複数の候補個物(2a1~2a5、2b1~2b5)が用意され(111)、
前記候補個物(2a1~2a5、2b1~2b5)の各々を特徴付ける事前データ(4a、4b)を参照して、前記機械学習モデル(6)により、前記候補個物(2a1~2a5、2b1~2b5)が内包されているカメラ(1)の光学性能に関する予測(7)がそれぞれ確定され(141)、かつ
前記カメラ(1)のその後の製造のために、前記予測(7)が所定の基準を満たすような、部品(2a、2b)の個物(2a1~2a5、2b1~2b5)の1つの組合せが選択される(151)、方法(100)。
【請求項2】
事前に製造された部品(2a、2b)が用意されるステップ(110)と、
前記事前に製造された部品(2a、2b)の少なくとも2つが、少なくとも1つの所定の最適性基準に応じて互いに対して調整されるステップ(120)と、
前記部品(2a、2b)が、調整された状態で相互に貼り付けられるステップ(130)と
を有する、カメラ(1)の製造方法(100)であって、
追加的に、
少なくとも1種類の前記事前に製造された部品(2a、2b)の具体的な個物(2a1~2a5、2b1~2b5)を特徴付ける事前データ(4a、4b)および/または互いに対して調整された前記部品(2a、2b)の組合せの光学性能に関する測定データ(5)が、トレーニングされた機械学習モデル(6)により、貼り付け後に少なくとも1つのさらなる製造ステップを実施した後で前記カメラ(1)が提供するようになる光学性能に関する予測(7)に写像されるステップ(140)と、
前記予測(7)が、製造プロセスに影響(8)を及ぼすためのフィードバックとして参照されるステップ(150)とを有し、
前記調整中に複数回、前記部品(2a、2b)の組合せの、互いに対するその時々の空間的配置での光学性能に関する測定データ(5)から、前記機械学習モデル(6)により、前記部品(2a、2b)が前記配置で相互に貼り付けられる場合に生じる前記カメラ(1)の光学性能に関する予測(7)が確定され(142)、かつ
前記予測(7)が所定の基準を満たす(152)ことに応答して、前記部品(2a、2b)が相互に貼り付けられる(130、155)、方法(100)。
【請求項3】
事前に製造された部品(2a、2b)が用意されるステップ(110)と、
前記事前に製造された部品(2a、2b)の少なくとも2つが、少なくとも1つの所定の最適性基準に応じて互いに対して調整されるステップ(120)と、
前記部品(2a、2b)が、調整された状態で相互に貼り付けられるステップ(130)と
を有する、カメラ(1)の製造方法(100)であって、
追加的に、
少なくとも1種類の前記事前に製造された部品(2a、2b)の具体的な個物(2a1~2a5、2b1~2b5)を特徴付ける事前データ(4a、4b)および/または互いに対して調整された前記部品(2a、2b)の組合せの光学性能に関する測定データ(5)が、トレーニングされた機械学習モデル(6)により、貼り付け後に少なくとも1つのさらなる製造ステップを実施した後で前記カメラ(1)が提供するようになる光学性能に関する予測(7)に写像されるステップ(140)と、
前記予測(7)が、製造プロセスに影響(8)を及ぼすためのフィードバックとして参照されるステップ(150)とを有し、
前記カメラ(1)の光学性能に関する前記予測(7)が所定の基準を満たす(153)ことに応答して、前記製造プロセスが中断される(154)、方法(100)。
【請求項4】
事前に製造された部品(2a、2b)が用意されるステップ(110)と、
前記事前に製造された部品(2a、2b)の少なくとも2つが、少なくとも1つの所定の最適性基準に応じて互いに対して調整されるステップ(120)と、
前記部品(2a、2b)が、調整された状態で相互に貼り付けられるステップ(130)と
を有する、カメラ(1)の製造方法(100)であって、
追加的に、
少なくとも1種類の前記事前に製造された部品(2a、2b)の具体的な個物(2a1~2a5、2b1~2b5)を特徴付ける事前データ(4a、4b)および/または互いに対して調整された前記部品(2a、2b)の組合せの光学性能に関する測定データ(5)が、トレーニングされた機械学習モデル(6)により、貼り付け後に少なくとも1つのさらなる製造ステップを実施した後で前記カメラ(1)が提供するようになる光学性能に関する予測(7)に写像されるステップ(140)と、
前記予測(7)が、製造プロセスに影響(8)を及ぼすためのフィードバックとして参照されるステップ(150)とを有し、
前記事前データが、
光学部品(2a、2b)の変調伝達関数MTFならびに/または
事前の製造の枠内での部品(2a、2b)の品質検査からの測定結果ならびに/または
部品(2a、2b)の供給元および/もしくは部品(2a、2b)の製造に使用された少なくとも1つの工具
を特徴付ける、方法(100)。
【請求項5】
前記調整(120)中には、前記所定の最適性基準を考慮した最適化より、前記機械学習モデル(6)によってもたらされた前記予測(7)を考慮した最適化に優先権が認められる(121)、請求項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記測定データ(5)が、
互いに対して調整された前記部品(2a、2b)の組合せの変調伝達関数MTFおよび/または
互いに対して調整された前記部品(2a、2b)の空間的配置の寸法
を特徴付ける、請求項1からのいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
光学性能に関する前記予測(7)が、完成した前記カメラ(1)の変調伝達関数MTFを特徴付ける、請求項1からのいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
機械可読命令を含むコンピュータプログラムであって、前記機械可読命令が、1つまたは複数のコンピュータ上で実行される場合に、前記1つまたは複数のコンピュータに、前記1つまたは複数のコンピュータによって制御されるカメラ製造設備との関連で、請求項1からのいずれか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項に記載のコンピュータプログラムを有する機械可読のデータ記憶媒体および/またはダウンロード製品。
【請求項10】
請求項に記載のコンピュータプログラムならびに/または請求項に記載の機械可読のデータ記憶媒体および/もしくはダウンロード製品を有する1つまたは複数のコンピュータ。
【請求項11】
請求項に記載のコンピュータプログラム、請求項に記載の機械可読のデータ記憶媒体および/もしくはダウンロード製品、ならびに/または請求項10に記載の1つもしくは複数のコンピュータが備えられた、カメラ製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事前に製造された部品からカメラを製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラの光学性能は、結像されるべき景色から画像撮影に使用されるセンサまでの光線経路の実際のコンフィグレーションが、これに関する事前計画に相応することに依存する。つまり、使用される光学部品、例えばレンズおよび対物レンズが、それらのそれぞれの仕様に相応していなければならず、かつ互いに対する正しい空間的配置で組み立てられていなければならない。
【0003】
これに関し、最終的に完成したカメラの光学性能は、一方の光学部品の精密さともう一方のこれらの部品の空間的配置の精密さとの合同作用から生じる。光学部品が非常に狭い公差で製造されている場合、「ピックアンドプレース」製造技術の精度は、受け入れ可能な光学性能をもつカメラを得るために十分である。より安価な、より広い公差で製造された光学部品が使用される場合、その結果として生じる光線経路の事前計画からのズレが、製造中の部品の調整によって少なくとも部分的に補われ得る。この「アクティブアライメント」とも言う調整では、部品が1つまたは複数の自由度に応じて相互に動かされ、かつ光学性能に優れたコンフィグレーションが、部品の貼り付けによって固定化される。DE102014220519A1は、このような調整のための例示的な方法を開示している。
【発明の概要】
【0004】
本発明の枠内ではカメラの製造方法が開発された。このカメラは、とりわけ例えば、車両の周辺またはその少なくとも一部を監視するために形成され得る。このようなカメラは、例えば車両の運転者に対し、車両周辺のさもなければ見通しのきかない領域内を、例えば車両の後ろまたはミラーで捕捉されない「死角」内を見ることを可能にし得る。しかし車両の運転支援システムまたは少なくとも部分的に自動化された運転のためのシステムも、車両周辺からのカメラ画像を利用し得る。
【0005】
本方法は、事前に製造された部品が用意されることで始まる。これらの部品は、とりわけ、例えば対物レンズ、レンズ、および画像センサのような光学部品などを含み得る。しかし、例えば画像センサによって撮影された画像のさらなる評価および転送のための電子回路ならびにハウジングもこれらの部品の1つに数えられ得る。
【0006】
事前に製造された部品の少なくとも2つが、少なくとも1つの所定の最適性基準に応じて互いに対して調整される。これらの部品は、調整された状態で、つまり所定の最適性基準が満たされている場合に、相互に貼り付けられる。この貼り付けは、例えば光硬化型接着剤がUV光で活性化されることによって開始され得る。
【0007】
最適性基準は、例えば、互いに対して調整されるべき部品の組合せの、任意のメトリックに基づいて測定された光学性能が、所定の閾値より上にあることを含み得る。
これに加え、少なくとも1種類の事前に製造された部品の具体的な個物を特徴付ける事前データおよび/または互いに対して調整された部品の組合せの光学性能に関する測定データが参照される。つまり、事前データだけが、(例えば「アクティブアライメント」装置からの)測定データだけが、または事前データおよび測定データの任意の組合せも利用され得る。このデータは、トレーニングされた機械学習モデルにより、貼り付け後に少なくとも1つのさらなる製造ステップを実施した後でカメラが提供するようになる光学性能に関する予測に写像される。この予測は、製造プロセスに影響を及ぼすためのフィードバックとして参照される。
【0008】
事前に製造された部品の調整中に、光学性能に関する測定データが捕捉される場合、これが既に、カメラの最終的な光学性能がどの程度良好になるのかに関する根拠を提供する。しかしながら調整の枠内で達成された状態は、このカメラが部品の貼り付け後に実施する少なくとも1つのさらなる処理ステップによってさらに変化し得ることが分かった。例えば、既に光学部品が入っているハウジング内にもう1つの電子基板が取り付けられる場合、このハウジングが振動および/または加熱にさらされ得る。さらに、使用される接着剤は、部品の貼り付け直後にはまだ最後まで固まっていない。これらの部品は、達成された調整が、カメラの振動またはその他の取扱いによって再び完全に失われることに対して既に保護されてはいるが、接着剤はあと数分かかり得る最終的な硬化中にさらに収縮し得る。これにより、貼り付けられた部品の空間的配置はもう一度少し変化し得る。
【0009】
貼り付けと最終的な完成との間のカメラの光学性能の変化は、閉論理式では理解できない。しかしながら意外にも、一方の事前データおよび調整中に得られた測定データと、もう一方の製造プロセスの終わりのカメラの最終的な光学性能との間には、相関関係があり、これらの相関関係が、貼り付け後のさらなる製造ステップの具体的な形態に依存しないことが示された。これらの相関関係は機械学習モデルによって学習され得る。
【0010】
例えばある特定の部品、例えばレンズが、既に規格から大きくズレており、対物レンズに対し、多大な労力をもってしか、このレンズと対物レンズの組合せが鮮明な結像を可能にするようには調整され得ない場合、貼り付け後の僅かな接着剤収縮またはカメラの別の変化で既に、対物レンズおよびレンズから成る構成を非常に鮮明な最適状態から再び追い出してカメラが全体として使用できなくなる確率が高まっている。これに対し、レンズおよび対物レンズが完璧に規格に相応する場合、調整の最適状態は明らかにより広く、したがって例えば接着剤収縮に起因する変位がカメラの最終的な光学性能に及ぼす影響は明らかにより弱い。
【0011】
機械学習モデルをトレーニングするために、例えば、ある特定数のトレーニング用カメラに関し、一方では事前データおよび測定データが、もう一方ではカメラの完成後に測定された光学性能が、トレーニングデータとして使用され得る。この場合、例えば、機械学習モデルがトレーニング用カメラの各々に関してそれぞれの事前データおよび測定データを完成後のそれぞれの光学性能に正しく写像することを目標として、機械学習モデルの挙動を特徴付けるパラメータが最適化され得る。トレーニング用カメラならびに帰属の事前データおよび測定データが十分な多様性を有する場合、一般化に対する機械学習モデルの大きな力に基づき、後に初めて生産されるこれまで観測されたことのないカメラの光学性能も正しく予測されることが予想され得る。
【0012】
トレーニングされる機械学習モデルは、とりわけ例えば、ニューラルネットワークを含み得る、および/またはニューラルネットワークであり得る。ニューラルネットワークのトレーニングの際、とりわけパラメータとしての重みが最適化される。これらの重みを使って、複数のニューロンおよび/またはその他の処理ユニットに送られた入力が、重み付き和の形成により、1つのニューロンまたは処理ユニットの活性化のために統合される。この活性化から、所定の非線形性、例えばReLU関数またはシグモイド関数の適用により、この1つのニューロンまたは処理ユニットの出力が確定される。
【0013】
この予測の最終的な利用では、カメラのもしかすると予想され得る悪い光学性能が、製造プロセス内で可能な限り早めに認識され得る。この場合、予想され得る悪い性能を、製造プロセス内での適切な措置の適用によって的確に改善できることが理想である。それが不可能ならば、もう「救出」できないカメラは、そこでまたさらなる洗練化を施す処理ステップが行われる前に、少なくとも早めに不良品として放棄され得る。
【0014】
例えば調整中に、完成したカメラがきちんと機能しないであろうことがもう決定している場合、もう1つの電子基板を加えて光学部品と貼り付けることにもう意味はない。カメラが「救出」できなくなった時点以降、このカメラに費やす全てのさらなる時間は無駄遣いである。この場合、電子基板自体も無駄になり得る。というのも、新たなカメラに取り付けるため、放棄されたカメラから手作業で取り出すのには、そもそも技術的に可能であればだが、基板自体より多くの費用がかかり得る。
【0015】
この状況は、大学での勉強に少しばかり似ている。学生は、勉強の最初に基礎科目で成績への特に強いプレッシャーをかけられ、あるかもしれない弱点についてのフィードバックを受ける。このフィードバックが、弱点を的確に解消して勉強を首尾よく終わらせるのに利用され得ることが理想である。それが不可能な場合、この学生が早めに十分に審査されることで、また別の勉強または職業訓練に移ることができる。
【0016】
特に有利な一形態では、少なくとも1種類の部品のために複数の候補個物が用意される。これらの候補個物の各々を特徴付ける事前データを参照して、機械学習モデルにより、この候補個物が内包されているカメラの光学性能に関する予測がそれぞれ確定される。このカメラのその後の製造のために、この予測が所定の基準を満たすような、部品の個物の1つの組合せが選択される。
【0017】
こうすることで、事前の製造に基づく部品の個物の特性が比較的強くばらついている場合に、全体としてより多くの機能するカメラが得られる。
つまり例えば、相前後して接続された光学部品に基づく光線経路に関し、これらの部品の規格からのズレは、各々の部品が規格からどの方向にズレているかに応じて、カメラの最終的な光学性能へのこれらの部品の作用を互いに強め合うかまたは互いに弱め合うことができる。そこで、各々の部品のためにそれぞれ個物のプールがあれば、機械学習モデルに基づく予測を使って、それぞれのプールから、規格からのズレを互いに弱め合うような部品の個物を的確に相互に組み合わせることができる。こうすることで、それ自体は品質的に悪い部品からもまだ、機能を果たす能力のあるカメラが製造され得る。この場合、個々の部品の規格からのズレに関する確定的な境界線を引いて、この境界線を越えた部品を不良品として放棄することは必ずしも必要でなくなる。
【0018】
さらなる有利な一形態では、調整中に複数回、部品の組合せの、互いに対するその時々の空間的配置での光学性能に関する測定データが集められる。これらの測定データから、機械学習モデルにより、部品が互いに対するその時々の配置で相互に貼り付けられる場合に生じるカメラの光学性能に関する予測がそれぞれ確定される。この予測が所定の基準を満たすことに応答して、部品が相互に貼り付けられる。こうすることで、例えば、その後の製造ステップによってさらに生じる悪化を予測でき、貼り付け前には少なくとも部分的に補い得る。これにより、製造完了後のカメラの最終的な光学性能が改善される。これは、数週間にわたる航路で顧客へと輸送される果物が、まだ完全には熟していない状態で船で送り出されることにより、傷まないうちに顧客のところに届くことに少しばかり似ている。
【0019】
したがって、とりわけ例えば、調整中には、所定の最適性基準を考慮した最適化より、機械学習モデルによってもたらされた予測を考慮した最適化に優先権が認められ得る。
上で解説したように、カメラの光学性能に関する予測が所定の基準を満たすことに応答して、製造プロセスが中断され得る。こうすることで、既にもう「救出」できないカメラのためのさらなる時間および材料の使用が回避され得る。こうして全体として、所定量の機能するカメラがより少ない材料消費で製造され得る。
【0020】
事前データは、とりわけ例えば、
・ 光学部品の変調伝達関数MTFならびに/または
・ 事前の製造の枠内での部品の品質検査からの測定結果ならびに/または
・ 部品の供給元および/もしくは部品の製造に使用された少なくとも1つの工具
を特徴付け得る。
【0021】
変調伝達関数は、例えば、少なくとも1つのシャープなエッジをもつオブジェクトが光学部品によって結像されることで確定され得る。この結像もシャープであることが理想である。結像の実際の鮮明度に対する確定された特性値により、その後、MTFが定量化され得る。
【0022】
その他の品質検査からの測定結果は、例えば、光学部品によって引き起こされた望ましくない像面傾斜の角度を含み得る。
部品の供給元は、例えば、製造プロセスを、したがってその公差も、供給元ごとに区別するという点で重要になり得る。また例えば、1つの同じ供給元によってそれぞれ使用される工具、例えば射出成形部品のための射出成形金型は、互いに小さなズレを有し得る。これらのズレは、これらの工具でそれぞれ製造された部品の規格からのズレをある特定の方向に向け得る。
【0023】
さらなる有利な一形態では、測定データが、互いに対して調整された部品の組合せの変調伝達関数MTFおよび/または互いに対して調整された部品の空間的配置の寸法を特徴付ける。完成したカメラの光学性能がMTFで測定される場合にまさに、調整中のMTFの事前測定が、完成したカメラの性能に関する優れた根拠を提供する。調整中の部品の空間的配置を通して、規格からの部品のズレが近似的に定量化され得る。例えば、ある特定の部品が、もう1つの部品に調整するために予定の位置から特に遠くに動かなければならない場合、これは、これらの部品の一方が規格からズレている証拠である。
【0024】
本方法は、とりわけコンピュータに実装され得る。つまり、とりわけ例えば、機械可読命令を有するコンピュータプログラムに具現化され得る。これらの機械可読命令が、カメラ製造設備を制御する1つまたは複数のコンピュータによって実行される場合に、製造設備が前述の方法を実行する。
【0025】
同様に本発明は、コンピュータプログラムを有する機械可読のデータ記憶媒体および/またはダウンロード製品にも関する。ダウンロード製品は、データネットワークを介して伝送可能な、つまりデータネットワークのユーザによってダウンロード可能なデジタル製品であり、例えば即時ダウンロードのためのオンラインショップで売りに出され得る。
【0026】
さらにコンピュータが、コンピュータプログラム、機械可読のデータ記憶媒体、またはダウンロード製品で装備されていてもよい。
さらに本発明は、コンピュータプログラム、機械可読のデータ記憶媒体、ダウンロード製品、および/または1つもしくは複数のコンピュータを備えたカメラ製造設備にも関する。
【0027】
以下に、図に基づく本発明の好ましい例示的実施形態の説明と共に、本発明を改善するさらなる措置をより詳しく示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】カメラ1の製造方法100の例示的実施形態を示す図である。
図2】それぞれ公差をもって製造された部品2a、2bの個物2a1~2a5、2b1~2b5の例示的な有利なペアリングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、少なくとも1つのカメラ1の製造方法100の1つの例示的実施形態の概略的なフロー図である。
ステップ110では、事前に製造された部品2a、2bが用意される。これに関し、とりわけ例えば、ブロック111に基づき、部品2a、2bごとにそれぞれ複数の候補個物2a1~2a5または2b1~2b5が用意され得る。
【0030】
ステップ120では、事前に製造された部品2a、2bの少なくとも2つが、少なくとも1つの所定の最適性基準に応じて互いに対して調整される。ステップ130では、これらの部品2a、2bが、調整された状態で相互に貼り付けられる。
【0031】
ステップ140では、
・ 少なくとも1種類の事前に製造された部品2a、2bの具体的な個物2a1~2a5、2b1~2b5を特徴付ける事前データ4a、4bおよび/または
・ 互いに対して調整された部品2a、2bの組合せの光学性能に関する測定データ5が、
トレーニングされた機械学習モデル6により、貼り付け後に少なくとも1つのさらなる製造ステップを実施した後でカメラ1が提供するようになる光学性能に関する予測7に写像される。ステップ150では、製造プロセスへの影響8を確定して、製造プロセスに影響8を及ぼすために、この予測7がフィードバックとして参照される。この影響8は、部品2a、2bの用意110に、部品2a、2bの相互の調整120に、および/または部品の貼り付け130に及ぼされ得る。
【0032】
とりわけ例えば、ブロック141に基づき、複数の候補個物2a1~2a5、2b1~2b5の各々を特徴付ける事前データ4a、4bを参照して、機械学習モデル6により、それぞれの候補個物2a1~2a5、2b1~2b5が内包されているカメラ1の光学性能に関する予測7がそれぞれ確定され得る。その後、ブロック151に基づき、カメラ1のその後の製造のために、この予測7が所定の基準を満たすような、部品2a、2bの個物2a1~2a5、2b1~2b5の1つの組合せが選択され得る。基準は、例えば、予測7が最大になるかまたは少なくとも所定の閾値より上にあることを含み得る。個物2a1~2a5、2b1~2b5の組合せの選択は、部品2a、2bの用意110への1つの影響8である。
【0033】
ブロック142に基づき、例えば調整中に複数回、部品2a、2bの組合せの、互いに対するその時々の空間的配置での、つまり調整のその時々の状態での光学性能に関する測定データ5が捕捉され得る。これらの測定データ5から、その後、機械学習モデル6により、部品2a、2bがこの配置で相互に貼り付けられ、つまり調整のその時の状態が固定化された場合に生じるカメラ1の光学性能に関する予測7が確定される。その後、ブロック152で、この予測が所定の基準を満たすか、つまり例えば最大であるかまたは少なくとも所定の閾値を上回るかどうかが検査され得る。これがそうである(真偽値1)場合、ブロック155に基づき、部品2a、2bが相互に貼り付けられ得る。予測7に依存した貼り付け130の開始は、貼り付け130への1つの影響8である。
【0034】
またブロック121に基づき、調整120中には、所定の最適性基準を考慮した最適化より、機械学習モデル6によってもたらされた予測7を考慮した最適化に優先権が認められ得る。つまり、予測7はここでも、調整120への1つの影響8をもたらしている。
【0035】
さらにブロック153に基づき、カメラの光学性能に関する予測7が、所定の基準を満たすか、つまり例えば所定の閾値より下にあるかどうかが検査され得る。これがそうである(真偽値1)場合、ブロック154に基づき、製造プロセスが中断され得る。
【0036】
図2は、事前の製造に基づく特性がある程度の公差(ばらつき幅)をはらんでいる部品2a、2bからカメラ1を製造する際に、どのようにして、機械学習モデル6によって確定された予測7を使って、機能するカメラ1の収率を高められるか、および不良品を減らせるかを例示的に示している。
【0037】
図2に示した例では、部品2aはレンズであり、そのうちの5つの異なる個物2a1~2a5から好きに選べる。部品2bは対物レンズであり、そのうちの5つの異なる個物2b1~2b5から好きに選べる。個物2a1~2a5、2b1~2b5はそれぞれ、それぞれの部品2a、2bに関する規格からの、それぞれの個物2a1~2a5、2b1~2b5の光学パラメータの例示的なズレを示す数字で特色付けられている。図解のために例示的に、レンズ2aと対物レンズ2bとが相前後して接続される場合は、規格からのそれぞれのズレが足し合わされると仮定する。
【0038】
図2に示した例では、予測7に基づき、組合せ
・レンズ2a1と対物レンズ2b5、
・レンズ2a2と対物レンズ2b1、
・レンズ2a3と対物レンズ2b2、および
・レンズ2a5と対物レンズ2b3、
の場合に、それぞれのズレがきっちりと無効化されることが確定され得る。レンズ2a4と対物レンズ2b4との組合せは、この後に修正しなくてよい少しのズレだけを生じさせる。
図1
図2